物理学の哲学(9)(アノマリー)
「物理学の哲学」の続きです。
今回も余談抜きです。
さて,これまでの記事内容と重複するかも
知れませんが,粒子の散乱などの量子遷移現象
において,初期状態,or 始状態を,|i>,終状態を
|f>で記述すると.|i>から|f>への散乱行列
(S行列)要素:Sfiは,ユニタリ変換だけ異なる
2つの完全系:incomibg漸近場の状態と
outgoing漸近場の状態によって,
Sfi=<f;out|i;in>=<f;in|S^|i:in>
で定義されます。そして,S^演算子は,<f;in|
=<f;out|S^で定義されます。
今のπ0→2γの崩壊過程では,|i>=|π0 >
であり,|f>=|γ(k1,ε1)γ(k2,ε2)>です。
そして,これに,LSZの還元公式を用いると,
Sfi=i∫d4x(2π)-3/2(2q0)-1/2exp(-iqx)
(□x+μ2)<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|π0r(x)|0>
と書けます。ただしπ0r(x)は,くりこまれた中性の
π0中間子の場(擬スカラー場)であり,μはπ0の質量
です。そして,Klein-Gordon演算子:(□+μ2)を挿入
しているのは,始状態で,入射するπ0のincoming漸近場:
π0in(x)が,その自由場と同じ方程式に従うため,
(□+μ2)π0in=0のKlein-Gordon方程式を満たす
からです。
ここで,本ブログの過去記事「LSZの公式(4)」から,
LSZ(Lehmann-Synmanzik-Zimmerman)の公式の
紹介記事を,今のπ0中間子の崩壊過程に適用するため,
少し修正して再掲載します。
参考にしたのは,J.D.Bjorken とS。D。Drellの共著
「Relativistic Quanrum Field」(McGrawHill) です。
これは私が学生の頃の場の量子論の標準的テキスト
でした。(※もっとも,当時は1ドル360円の時代で,洋書
は高価で貧乏学生だった私は,研究室図書館の蔵書を青焼き
コピーしてファイルににして使ってました。これを買えた
のは,サラリーマンに就職後です。※)
※さて,以下は修正した再掲記事です。
粒子群:αに4元運動量がpのπ中間子1個
が加わった入射粒子群のincomingの漸近状態を
意味する:|αp;in>から,終状態の粒子群:βの
outgoing漸近状態のKet:<β;out|への遷移振幅
を示すS行列要素(散乱業辣要素)を与えるS行列
要素:Sβ(αp)=<β;out|αp;in>を考察します。
以下,漸近条件を用いて,始状態:|αp;in>と
終状態|β;out>の両方から1粒子pを差し引く
代わりに,適当な場の演算子を挿入した式が
得られることを示します
質量がμのπ中間子の漸近場の消滅演算子;
ain^(p),および,aout^(p)は,それぞれ,
ain^(p)=i∫d3xfp*(x)∂0⇔πin(x),
および,aout^(p)=i∫d3xfp*(x)∂0⇔πout(x)
という表式で書けることを用います。
他方,これら漸近場の生成演算子:ain^+(p)と
aout^+(p)の方は,上式の両辺のHermite共役を
取れば得られます。
ただし,fp(x)=(2π)-3/2(2ωp)-1/2
exp(-ipx)です。(ωp=p0=(p2+μ2)1/2)
一方、fp*(x)=(2π)-3/2(2ωp)-1/2exp(ipx)
で,これらは,(□+μ2)fp=0,(□+μ2)fp*=0
を満たす平面スカラー波の解です。
また,任煮,の2つのtの関数:a(t),b(t)に
対して,a(t)∂⇔0b(t)で与えられる関数を,
a(t)∂⇔0b(t)=a(t){∂b(t)/∂t}
-[∂a(t)/∂t}b(t) で定義しています。
そこで,<β;out|αp;in>
=<β;out|ain^+(p)|α;in>
=<β;out|aout^+p)|α;in>
+<β;out|ain^+(p)-aout^+(p)|α;in>
=<β-p;out|α;in>
-i<β;out|∫d3x[fp(x)∂0⇔
[πin(x)-πout(x)]]|α;in>と書けます。
|β-p;out>は,もしも集合:βの中にp
が存在する場合は,βからpを除いた終状態を
表わしますが,βの中にpが存在しない場合は,
この項はゼロで消えてなくなります。
また,|αp;in>が,初期に2粒子がある場合の
散乱を表現しているなら,<β-p;out|α;in>
は入射粒子と標的粒子が運動量を含め,それら
の量子数を保存する前方弾性散乱のみに寄与
します。つまり,<β-p;out|α;in>
=δ(β-p)αです。
(※ 何故なら|α;in>が1粒子の場合は,
<β-p;out|P^2|α;in>
=α2<β-p;out|α;in>
=(β-p)2<β-p;out|α;in>なので,
<β-p;out|α;in>≠0である場合は,
(β-p)2=α2=μ2ですから,|β-p;out>
も同じ1粒子の終状態です。
そして,また,<β-p;out|P^μ|α;in>
=αμ<β-p;out|α;in>
=(β-p)μ<β-p;out|α;in>
ですから,<β-p;out|α;in>≠0のときは,
(β-p)μ=αμ,つまり,βμ=(α+p)μと,
4元運動量が不変な弾性散乱で,しかも方向を
変えず素通りする前方散乱のみの振幅を意味
するからです。※)
さて,<β;out|αp;in>
=<β-p;out|α;in>
-i<β;out|∫d3x[fp(x)∂0⇔
{πin(x)-πout(x)}]|α;in> の右辺の
項:-i∫d3x<β;out|fp(x)∂0⇔
{πin(x)-πout(x)}|α;in>
は「Greenの定理」によって時間tに依存しません。
そして,始状態,終状態の散乱状態の粒子たちが
波束のように,あるf(x)≠0の形の有限な台に
局所化されていることを保証する漸近条件:
limt→-∞<α|πf(t)|β>=Z1/2<α|πinf(t)|β>,
limt→+∞<α|πf(t)|β>=Z1/2<α|πoutf(t)|β>
の要請,を満たすことから,t=x0→ -∞ の極限では,
πin(x,t)を,Z-1/2π(x,t)で,また,t=x0→ +∞
の極限でも,πout(x,t)を,やはり,Z-1/2π(x,t)
で置き換えることが許されます。
(※Zは,π(x)のくりこみ定数を意味しています。)
それ故,結局,<β;out|αp;in>
=<β-p;out|α;in>
+(iZ-1/2(limx0→ +∞-limx0→-∞)
<β;out|∫d3xfp(x)∂0⇔π(x)|α;in>
と書くことができます。
これが,Reduction手続きの最初の段階です。
これから,より便利な形を得るために,公式:
(lim x0→ +∞-lim x0→ -∞)∫d3xg1(x)∂0⇔g2(x)
=∫-∞∞d4x[∂0{g1(x)∂0⇔g2(x)}]
=∫-∞∞d4x[g1(x)∂02g2(x)
-{∂02g1(x)}g2(x)]が成立すること
を用います。
そこで,g1(x)=fp(x),g2(x)
=π(x)として,これに代入すると,
g1(x)=fP(x)は,(□+μ2)fp(x)=0
を満たすので,∂02fp(x)=(∇2-μ2)fp(x)
Gが成立します。
よって,Z-1/2(lim x0→+∞-limx0→-∞)∫d3x
<β;out|fp(x)∂0⇔π(x)|α;in>
=iZ-1/2∫-∞∞d4x<β;out|
fp(x)∂02π(x)-{∂02fp(x)}π(x)|α;in>
=iZ-1/2∫-∞∞d4x<β;out|fp(x)
(∂02+μ2)π(x)-(∇2fp(x))π(x)]|α;in>
となります。
結局,Z-1/2(lim x0→+∞-limx0→-∞)∫d3x
=iZ-1/2∫-∞∞d4xfp(x)(□+μ2)
<β;out|π(x)|α;in> なる表式を得ます。
ここで,最後の式変形では部分積分に対する
「Greenの公式」を用いました。
したがって,元のS行列要素の始状態,終状態
の両方から1粒子を減ずる還元公式の最終式
として,Sβ(αp)=<β;out|αp;in>
=<β-p;out|α;in>
+iZ-1/2∫-∞∞d4xfp(x)(□+μ2)
<β:out,|π(x)|α;in>
が得られました。 (再掲記事終了※)
今のπ0中間子の崩壊のS行列要素:
Sfi =<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);out|π0in>
=<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|S^|π0in>
に対するLSZの公式を考えると,上記で,
<β;out|=<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);out|
とし,|αp;in>=|π0in>として,それ故,
|α:in>は,真空:|0>を意味するので,上記
の最終形の式で,π中間子の場π(x)を,π0中間子
の場:π0(x)に置き換え,そのくりこまれた場
を,π0r(x)と書いて,π0r(x)=Z1/2π0(x)
と乗法的に定義されているなら,入射π0粒子の
4元運動量がpμでなく,qμの場合の崩壊の
S行列要素として,
Sfi=<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);out|π0;in>
=i∫d4xfq(x)(□+μ2)
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);out|π0r|0>
なる表式が得られます。
ここで,始状態,および.終状態を共に
incomingの漸近状態のx座標表示で表わすと,
それぞれ,<x|π0 ;in>=fq(x)
=(2π)-3/2(2q0)-1/2exp(-iqx),および,
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|x>σρ
=(2π)-3(4k10k20)-1/2ε1σ*ε2ρ*
exp(ik1x)exp(ik2x) です。
そこで,S行列要素:Sfi=i∫d4xfq(x)
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);out|(□+μ2)π0r|0>
を,このx表示で書けば,未知の因子を
Sσρ(k1,k2:q)として,Sfi=i∫d4x(2π)-9/2
(2q0)-1/2exp{-i(q-k1-k2)x}
(4k10k20)-1/2ε1σ*ε2ρ*Sσρ(k1,k2:q)
なる形に書けるはずです。
そこで,(2π)-1/2(2q0)-1/24k10k20)-1/2
ε1σ*ε2ρ*Sσρ(k1,k2:q)が,fq(x)
×<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|(□+μ2)π0r|0>
のFourier変換(運動量表示)になっています。
それ故,(4k10k20)-1/2ε1σ*ε2ρ*(2π)×
Sσρ(k1,k2:q)がが,S行列要素の,運動量表示
fq(x)<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|
(□+μ2)π0r|0>から,|π0;;in>から,波動関数
fq(x)=(2π)-3/2(2q0)-1/2exp(-iqx)
を除いた因子である
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|(□+μ2)qπ0r|0>
のFourier変換(運動量表示になっている
と考えられます。
そこで,Sfi=i∫d4xfq(x)(□+μ2)
<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|π0r|0>
の被積分関数を[(2π)-9/2(2q0)-1/2
exp{-i(q-k1-k2)x}
(4k10k20)-1/2ε1σ*ε2ρ*k1ξk2τε1σ*ε2ρ*
εξτσρFπ(k1k2)と書いて,
Sfi=i∫d4x(2π)-9/2(2q0)-1/2
exp{-i(q-k1-k2)x}(4k10k20)-1/2
ε1σ*ε2ρ*Sσρ(k1,k2:q)の被積分関数
と等置すれば,(2π)SσΡ(k1,k2,:q)
=k1ξk2τεξτσρFπ(k1k2) となります。
今回は,ここで終わります。(つづく)
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