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2020年10月

2020年10月10日 (土)

物理学の哲学(13)(アノマリー)

物理学の哲学」の続きです。

余談は抜きで即本文です。

 前回の記事の最後では,

※この後,残っている問題は,カイラル対称性の自発的

破れによって,出現する擬スカラ-の零質量NGボソン

と同定される粒子場:πが現実の135~140 MeV程度の

ゼロでない観測質量を持つπ中間子であるため,には,

質量を獲得する必要があり,この質量を得るに至る

メカニズムを解明することだけです。

という内容のことを書きました。

この最後の課題自体が,大きなテーマの一つなので

質量獲得に関連する「Higgs現象」について

詳述した本ブログの過去記事「対称性の自発的破れと南部

-Goldstone粒子(12)」の全文を,不要部分を削除し修正

して再掲載します。

※以下は再掲の過去記事です。

素粒子論は,少なくともPoincare’不変性,(つまり,

並進,および,Lorentz不変性)を満たす理論ですから,

対称性の自発的破れが起これば,「南部-Goldstone

定理」が常に適用できるはずです。

しかし,現実において厳密にゼロ質量の粒子として

観測されている素粒子は,光子とニュートリノ?くらい

しか存在しません。(※今までは発見されていません。)

光子や(未発見の)重力子(graviton)などは力を媒介

するゲージ粒子場として記述される。とされています。

確かに,光子,重力子は,それぞれ,ベクトル粒子,テンソル

粒子であり,対称性の自発的破れに伴なうNGボソンと

して理解されています。

しかし,ニュートリノについては。スピノル対称性

(超対称性)に対応するNGフェルミオンと考えると.

低エネルギー定理の予言と矛盾する,ことが確かめられ,

NGフェルミオンなどというモノではなさそうです。

(※事実,厳密にはゼロ質量ではないことの証拠とされる

「ニュートリノ振動」という現象が確認されています。)

また,「近似的に」ゼロ質量の粒子としてはπ中間子が

存在します。実際,南部-JonaLasinoが素粒子論において

初めて対称性の自発的破れの概念を提唱し,NGボソンで

あると指摘したのは,π中間子でした。

実際,π中間子が近似的カイラル対称性の自発的破れに

対応するNGボソンであることは,その後の1960年代の10

年間に、カレント代数,低エネルギー定理などの多くの成功

により確かめられ,強い相互作用の解明に多くの寄与を

しました。

では,この零質量NGボソンの希少性は,対称性の自発的

破れが,現実には比較的稀な現象であることを意味している

のでしょうか?

答は否です。実は,「ゲージ理論の場合には対称性の自発的

破れと,観測される零質量NGボソンの間に1対1対応が成立

しない。」というのが,真なのです。

ゲージ理論において,共変ゲージの場合には,もちろん,

対称性が自発的に破れれば,零質量NG粒子が出現します

が,「南部-Goldstoneの定理」は,その出現するNG粒子

が,「正定値計量を持った物理的粒子」であることを主張

していません。

そして,もしも,それが「不定計量」を持ち,BRS不変

でないモードであれば,物理的状態空間;physでは.観測に

かからないことになります。

他方,Coulombゲージ;∇=0 や,時間的軸性ゲージ

0=0などの「非共変ゲージ」の場合は,正定値計量です

から粒子は観測にかかる粒子のはずですが,今度は

「南部-Goldstoneの定理」に要求される明白なLorentz

共変性の仮定が,元から破れているため,,必ずしも対称性

の自発的破れに伴なってNG粒子が出現するとは限らない

からです。こうした可能性は,Higgs-Kibbleらにより初めて

指摘されました。

このことを,具体的に示す最も簡単な模型は,

「Goldstone模型」のU(1)対称性をゲージ化して,電磁場

を導入する「Higgs模型」です。

これより前に,対称性の自発的破れを起こす最も単純な例

として「南部-Goldstone模型」を紹介しましたが,これは

系のLagrangian密度:が次式:,

=∂μφμφ+μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 

で与えられる模型でした。

この系での荷電スカラー粒子の複素場,φ,φの組を,

2成分のφ=[φ12]とφで記述し,さらに電磁場Aμ

も共存する,ここでの出発点となる系のLagrangian密度

を,=(-1/4)Fμνμν+(Dμφ)μφ+μ2φφ

-(λ/2)(φφ)2 としたモノを考察します。

ただし,Fμν=(∂μν-∂νμ)とします。またμ

は共変微分で,Dμφ=(∂μ-ieAμ)φと定義されます。

このとき,単純な「南部-Goldstone模型」の場合と同様

ここでも,treeグラフのレベルで,場:φについて,

<0|φ(x)|0>=v/√2=(μ2/λ)1/2となって,ゼロでない

真空期待値を生じます。

ここで,便宜上,複素場:φ(x)のシフトをφ(x)

={v+ψ(x)+iχ(x)}/√2,(ただしψ(x),χ(x)

は真空期待値がゼロの実スカラー場)としたものから,

変更して,極分解と呼ばれる次の形に取ります。

すなわち,φ(x)

={v+ρ(x)}exp{iπ(x)/v}/√2,です。

ここで,ρ(x)は真空期待値がゼロの実スカラー場,

であり,位相部分:exp{iπ(x)/v}は,G/Hの

非線型表現のNGボソン場パラメータ化として,

ξ(π)=exp{iπ(x)/f};π(x)

=Σa∈()πa(x)Xa とした,ξ(π)の

今のG/H=U(1)/{1}に対応するものです。

このとき,φの運動項は,

μφ=(∂μ-ieAμ)[(v+ρ)exp(iπ/v)/√2

=exp(iπ/v)[∂μ-ie{Aμ-∂μπ/(ev)(v+ρ)

/√2なので,(Dμφ)=exp(-iπ/v)

{∂μ+ie{Aμ-∂μπ/(ev)}(v+ρ)]/√2

です。それ故,(Dμφ)μφ=(1/2)∂μρ∂μρ

+(1/2)e2(ρ+v)2{Aμ-∂μπ/(ev)}

{Aμ-∂μπ/(ev)} です。

そこで,φφ=(1/2)(ρ+v)2より,

μ2φφ-(λ/2)(φφ)2

=(μ2/2)(ρ+v)2-(λ/8)(ρ+v)4

=(μ2/2)ρ2+(μ2/2)v2+μ2vρ

-(λ/8)(ρ4+4vρ3+6v2ρ2+4v3ρ+v4)

=(μ2/2-3λv2/4)ρ2-(λ/8)ρ4

-(λv/2)ρ3+(μ2v-λv3/2)ρ-V0[v/√2]

です。ただし,-V0[v/√2]

=(1/2)μ22-(λ/8)v4です。

v=(2μ2/λ)1/2=|μ|(2/λ)1/2なら

μ2v-λv3/2=0で,μ2/2-3λv2/4=-μ2より,

2=2μ2=λv2とし,M=ev=|μ|(2e2/λ)1/2

とおけば,=(-1/4)Fμν2

+(1/2)M2{(1+eρ/M)2{Aμ-M-1(∂μπ)}2

+(1/2)|(∂μρ)2-m2ρ2}

-m√λρ3-(λ/8)ρ4-V0[v/√2]です。

さらに,Uμ=Aμ-M-1(∂μπ)と定義します。

すると,Fμν=∂μν-∂νμなので,

=(-1/4)(∂μν-∂νμ)2

+(1/2)M2μ2(1+eρ/M)2+(ρ場の項)

となり,π(x)は完全に姿を消します。

しかも,ベクトル場:Uμは質量:Mを獲得

しています。

これを,Higgs現象(Higgs-Mechanism)と呼びます。

が,この現象を,もう少し詳しく見てみます。

まず,φ=(v+ρ)exp(iπ/v)/√2

→(v+ρ)/√2,および,Aμ → Aμ-M-1μπ=Uμ 

の変数変換は,ゲージパラメータ:θ(x)を,q数の場;

-1π(x)と置いた.「q数ゲージ変換」になっている

ことに注意します。

すなわち,零質量のベクトル場:Aμが,NGボソン場:

πを吸収して質量Mを持つベクトル場(Proca場):Uμ

になったのです。

(※=(-1/4)(∂μν-∂νμ)2+(1/2)M2μ2

で記述される有質量ベクトル場をProca場と呼びます。)

ここで,電磁相互作用を切ったとき,つまり,e=0と

したとき:e≠0の物理的粒子の自由度の収支を勘定

すれば,次のようになっています。

M=evですが,e=0では,零質量のAμ(2自由度),

零質量のπ(1自由度),零質量のρ(1自由度)であった

のが,e≠0では,質量MのUμ(3自由度),質量mのρ

(1自由度)となっています。

スピンが1の物理的モードは零質量のときはHelicity

が±1の2自由度しかないですが,質量を得ると静止系も

存在して,モードが1,0,-1の3自由度になることで,

不足している1自由度は,NGボソン場:πにより供給

されます。

e≠0では,は既にゲージ不変ではなくρ(x)や

μ(x)は,いわゆるゲージが固定された場です。

それ故,ρやUμのみで表わされたLagrangian密度は,

ある種のゲージ固定化がなされたものであり,通常,それ

をユニタリゲージと呼びます。

ユニタリゲージは理論の物理的内容が明白でよいの

ですが,Proca場の伝播関数

(gνν-kμν/M2)/(k2-M2)の紫外部:

k→∞での挙動が悪いため,理論が,くりこみ不可能です。

そこで,くりこみ可能な共変げ-ジの同じ理論に考え

直します、

「くり込み可能共変ゲージ」の項に入ります。

複素場;φのパラメータ化として,上の極分解の代わりに,

先に「Goldstone模型」で取った分解を用います。

すなわち,φ(x)={v+ψ(x)+iχ(x)}/√2とします。

このとき,Dμφ=(∂μ-ieAμ)(v+ψ+iχ)/√2

=[∂μψ-i{eAμ(v+ψ)+∂μχ}+eAμχ]/√2

(Dμφ)=[∂μψ+i{eAμ(v+ψ)+∂μχ}

+eAμχ]/√2より,

(Dμφ)μφ2=(1/2)[(∂μψ+eAμχ)(∂μψ+eAμχ)

+{eAμ(v+ψ)+∂μχ}{eAμ(v+ψ)+∂μχ}]

=(1/2)(∂μψ2)2+eAμ(χ∂μψ-ψ∂μχ)

+(1/2)e2μ2χ2+(1/2)e2μ2ψ2+(1/2)M2(Aμ

+M-1μχ)2+eMAμψ(Aμ-M-1μχ) です。

一方,φφ=(1/2)(v+ψ)2+(1/2)χ2

=(1/2)(ψ2+χ2)+vψ+(1/2)v2より,

φ)2=(1/4)(ψ2+χ2)2+v2ψ2+(1/4)v4

+(1/2)v22+χ2)+vψ(ψ2+χ2)+v3ψ

です。

μ2=λv2/2,m2=2μ2ですから,v=m/√λ

で,λv=m√λであり,μ2-(λ/2)v3=0,

-(λ/2)v2ψ2=-(1/2)m2ψ2 です。

それ故,μ2φφ-(λ/2)(φφ)2

=-(1/2)m2ψ2-(1/2)m√λψ(ψ2+χ2)

―(λ/8)(ψ2+χ2)2―V0[v/√2] を得ます。

ただし-V0[v/√2]=(1/2)μ22-(λ/8)v4)

です。

そこで,Lagrangian密度は,

=(-1/4)Fμν2+(1/2)M2{Aμ-M-1(∂μχ)}2

+(1/2)|(∂μψ)2-m2ψ2}+eAμ(χ∂μψ-ψ∂μχ)

+eMAμ2ψ+(1/2)e2μ22+χ2)

-(1/2)m√λψ(ψ2+χ2)―(λ/8)(ψ2+χ2)2

-V0[v/√2] と書けます。

この時点では,ゲージ固定がなされていないので,

ゲージ固定処方に従って,この0に,

GF+FP=-iδ[c~(∂μμ+(1/2)αB)]

=B∂μμ+(α/2)B2+ic~∂μμ

を付加したものを改めてとします。

これは普通の共変ゲージ条件です。

この可換群:U(1)に基づくHiggs模型では,この

共変ゲージの場合,FPゴースト:c,c~は全くの

自由場となりますから,必ずしも導入の必要はあり

ません。

上の,F+FP=-iδ[c~(∂μμ+(1/2)αB)]

=B∂μμ+(α/2)αB2+ic~∂μμ

とは別の,Rξゲージと呼ばれる便利な共変ゲージ

があります。

まず,Lagrangian密度:0の第2項にゲージ場

μとNGボソン場;χの遷移項:MAμμχがある

ことに注意します。

遷移項があると場の混合が起こり面倒ですから,

ゲージ固定項をうまくとって,これを相殺すること

を考えます。

複素場:φ(x)のゲージ変換:

δφ=-eθ(x)φ(x)は,φ(x)

={v+ψ(x)+iχ(x)}/√2 により,

2成分の場(ψ(x),χ(x))に対して,

δψ=-eθ(x)χ(x),

δχ=-eθ(x){v+ψ(x)}

と分解されます。

ところが,BRS変換:δはこの式で

θ(x)→ c(x)(FPゴースト場)とするものです。

ゲ-ジ固定項を次のようにとります。

RξGF+FP=-iδ[c~(∂μμ+αMχ

+(1/2)αB)]=B(∂μμαMχ)

+(α/2)B2+ic~(□+αM2+eαMψ)c

とします。

最後の変形では,ev=Mを用いました。

NL場:BをGauss経路積分,または運動方程式

を用いて消去します。 0 Rξ+Fに,

対する運動方程式:∂/∂B=∂μμ+αMχ+αB

=0 から,B=-(1/α)(∂μμ+αMχ)より,

RξF+F=-{1/(2α)}(∂μμ+αMχ)2

+ic~(□+αM2)c+ieαMc~cψ と

なります。

そこで,Aμとχの交差項:Mχ(∂μμ)が現われる

ため,これと0の遷移項:MAμμχと合わせて,

全微分項=4次元発散項: M∂μ(χAμ)

=MAμμχ+M∂μ(χAμ)となって作用積分では,

これらは落ちることになります。

このRξゲージでは,たとえ,可換群U(1)の場合でも

FPゴーストがc~cψの相互作用項を持つので,

もはや落とすことはできない,というデメリットは

あります。  (再掲記事終了※)

以上,過去記事のコピーで,お茶を濁してサボりました。

これには,続きの記事(13)gって,まだ共変ゲージで

BRS不変な系の対称性の的破れとNGボソンの考察

なこもありますが,今のゼロ質量粒子の希少性と質量獲得

の機構を理解するには,ここまでで十分です。

単純な「Doldsyone模型」で,<0|φ(x)|0>=v/√2

≠0の真空期待値が現われて,結果,U(1)対称性の自発的

破れが生じて,Φ=v/√2+(ψ+iχ)}/√2 により,

<0|ψ|0>=0,<0|χ|0>=0を満たす無矛盾な実スカラー

場のψとχへのシフトが必要が生じ,ψの方に-/1/2)m2ψ2

の,質量mの質量項が現われます。

そして電磁場と共存したU(1)局所ゲージ不変性が,

自発的に破れると,ゼロ質量ゲージ粒子の光子Aμも,

質量を獲得してProva場:Uμのベクトル中間子に

なることが,上述のHiggs機構の説明で解明された

と言えます。

今回はここまでです。このシリーズも終わりに

近づきした。(つづく)

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2020年10月 8日 (木)

物理学の哲学(12)(アノマリー)

「物理学の哲学」の続きです。

チョッと間があきましたが,前回の記事までで,

場の理論のσ模型を用いて軸性ベクトルカレント

の一般的な4次元発散に対するPCAC(部分的保存

の)式:∂μ=(fπ/√2)π+(アノマリー項)

を見出し,これを利用して中性のπ0中間子

の崩壊:π0→2γの崩壊率:1/τの予測計算

をすることが,可能となりました。

しかし,唐突にσ模型という場理論の模型

を提示されて,この系のカイラル対称性を仮定

した軸性ベクトルカレントが,現実のπ中間子

の場に関連すると書かれていた,ここまで参照

してきた1975年の学生時代から読んでいた論文

「Lectures on Elementary Particles and

Quantum Field Theory;(1970 Brandeis

University Summer Institute in Theoretical

 Physics)Volume!.」」に基づいて,ほぼそれに

忠実に過去記事も現在の記事も議論をたどって

記述してきましたが,実のところ,私には以前

から,急にこのσ模型なるモノが出てくる根拠

がよく理解できていませんでした。

そこで,ここからは,恐らくσ模型の原型である

だろうと思われた「南部-Jonalashino模型」に

ついて,考察してみます。

そのため,まず,本ブログの2017年8月末頃

にアップした過去記事「対称性の自発的破れと

南部-Goldostone粒子」のシリーズから必要部分

を再掲引用しながら,記述します。

さて,対称性の自発的破れを起こす例としては

まず,「南部-Goldstone模型」があります

これは系のLagrangian密度が,

=∂μφμφ+μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 

で与えられる模型で,単一の複素スカラー場:φ

のφ4-相互作用系であり,ただし,質量項:(μ2φΦ)

の符号が通常粒子のそれと逆であるのが,通常の系

との本質的な違いになっています。

それ故,通常の<0|φ(x)|0>=0を満たす真空:

|0>の上では,φの場の励起モードは,負の2乗質量:

-μ2(<0(虚数質量:±iμ)を持つ,いわゆるタキオン

(Takiyon)となります。

ここでは,これよりは自明でない例として,

「南部-Jonalashino模型」(略してNJ模型)を

考察します。

「南部-Jonalashino模型」のLagrangian密度

は,Ψ~iγμμΨ+(G/N)[(Ψ~Ψ)2

+(Ψ~iγ5Ψ)2]で与えられます。

ここでは,以下の近似の意味を明確にするため,

Fermion場:ΨはN個のDirac場:ψi(i=1…N)

のSU(N)変換群の基本表現を示す列ベクトルで

あるとします。すなわち,Ψ=[ψ1,..ψ]とします。

そして,Ψ~ΓΨ=Σj=1ψj~Γψjと規約します。

元々のNJ模型は.N=1の単純な模型でした。

※「南部-Goldsyone粒子」関係のブログ過去記事の

シリーズをアップしたたのは,2017年頃(67歳の頃)

ですが,この「対称性の自発的破れ」について勉強

していたのは参考ノートによると1990年代(40歳代)

の頃で,確かそのときに1975年前後の学生時代に量子

アノマリーについて記述していた論文中で,出会った

σ模型というのは,これが元になっているのでは?

と思ったのでした。

この関連の過去記事では,N-Fermion系なのに,

N=1の1-パラメータθの位相変換群:U(1)の変換::

Ψ→ exp(-iθ)Ψ,および,カイラルU(1)変換:

Ψ→ exp(-iγ5θ)Ψの下での不変性を論じていた

のですが,ここでは,θをN-パラメータのベクトル

θ=(θ1,.,.θ)に,一般化したSU(N)のゲージ

変換:Ψ→ exp(-iθ)Ψ,および,カイラルSU(N)

ゲージ変換:Ψ→ exp(-iγ5θ)Ψを考えることに

します。こうすれば,N=2のアイソスピンSU(2)

不変性や,(p,n,λ)の3クォークを仮定したN=3

のフレイバーSU(3)不変な,N-Fermion系のσ模型

に対応することになる。と思います。

そして,SU(N)×SU(N)対称性群のうち,

カイラル対称性のSU(N)不変性が成立するには

に,(-mΨ~Ψ)(mはゼロでない固有値を持つ

質量行列)のようなFermionの質量項が存在しない,

という必要があります。

そこで,系の動力学により.Fermopnの質量項が

出現して,その結果,カイラルSU(N)対称性のみ

が,自発的に破れる可能性を調べます。

これは,系における4次のFermion相互作用項

(G/N)(Ψ~Ψ)2の形を考慮すると,複合場(Ψ~Ψ)

がゼロでない真空期待値:すなわち,<0|Ψ~Ψ|0

=-{N/(2G)} ≠0 を実現するなら,(-mΨ~Ψ)

の質量項を獲得した,という解釈で,可能になると期待

されます。つまり,Ψ~ΨΨ^~Ψ^-{N/(2G)}

置くことができれば,この,新たなΨ^については,真空

期待値が,<0|Ψ^~Ψ^|0>=0 と無矛盾となり,この

Ψ~Ψ=Ψ^~Ψ^-{N/(2G)}を満たすΨ^を,改めて

Ψと定義し直せば,質量項(-(Ψ~Ψ)が出現した。と

解釈できるわけです。

このとき,Ψ→ exp(-iγ5θ)Ψ に対する(Ψ~Ψ),

および,(Ψ~iiγ5Ψ)の変換則は,それぞれ,(Ψ~Ψ)

→(Ψ~Ψ)cos(2θ)-(Ψ~iγ5Ψ)sin(2θ),および,

(Ψ~iγ5Ψ)→ (Ψ~Ψ)sin(2θ)+(Ψ~iγ5Ψ)cos(2θ)

です。そして,カイラルカレント:jΨμγ5Ψ

によるカイラルチャージ:Q5=∫d3xj50(x) により,

[iQ5,Ψ~(x)iγ5Ψ(x)]

=∫d3[j50(y),Ψ~(x)iγ5Ψ(x)]

=2Ψ~(x)Ψ(x)なる交換関係が得られます。

何故なら,θ=ε>0が無限小カイラル変換:U(ε)

=exp(-iγ5ε)=1-iγ5εの場合を想定すると,,

Ψ→Ψ+δΨ=U(ε)Ψ, δΨ=-iγ5εΨなので,

(Ψ~Ψ)→ (Ψ~Ψ)-2ε(Ψ~iγ5Ψ),かつ,

(Ψ~iγ5Ψ)→(Ψ~iγ5Ψ)+ 2ε(Ψ~Ψ)であり,

[iεQ5,Ψ~(x)iγ5Ψ(x)]=2εΨ~(x)Ψ(x)

となるからです。 

それ故,<0|Ψ~Ψ|0>がゼロでないのは,カイラル

チャージ:Q5が矛盾なく定義できる対称性が,自発的

に破れていることを意味します。

そして,これは「南部-Goldstoneの定理」から,

カイラルSU(N)の破れに対応する擬スカラーの

複合場:(Ψ~iγ5Ψ)のチャネルに,(N2-1)個の

擬スカラーの南部-Goldstoneボソン,略して

NGボソンが現われることを意味します。

この,元のLagrangian密度の中には「素Heisenberg場」

のみでNGボソンは粒子場としてて用意されていないので

動力学的にに結合状態として供給される必要があります。

そこで,この問題を扱うには,補助場の方法と呼ばれる

技法を用います。

まず,Grassman数の外場:η,η~を導入して系の

FermionのGreen関数の生成汎関数を,経路積分の

形で,Z[η,η~]

=∫ΨΨ~[expi∫d4x{+η~Ψ+ηΨ~}]

によって与えます。

これの意味は,Zは係数がGreen関数:G(m,n)

η,η~のベキ級数の和である。ということです。

つまり,仮にZが1外場変数:ηのみの関数なら,

それをηでn回微分してη=0と置いたものが

n点Greenn関数:G(n)を与えるえるあるような

汎関数であり,Z[η,η~]は,さらに2変数に拡張

したものです。これにGauss積分の1を表わす因子:

1=∫σ~π~[expi∫d4

[-{N/(2λ){σ~2+π~2}]を挿入して、さらに

積分変数:σ~(x),π~(x)を次のようにσ(x),

π(x)に変数置換します。

すなわち,σ~=σ+(λ/N)(Ψ~Ψ),および,

π~=π+(λ/N)(Ψ~iγ5Ψ)とします。

すると,この変換で積分測度は不変:つまり

σ~π~=σπです。

故に,Z[η,η~]=∫ΨΨ~σπ

[expi∫d4x{(Ψ,Ψ~,σ,π)+η~Ψ+ηΨ~}

なる表現相木が得られます。

ただし,(Ψ,Ψ~,σ,π)

=Ψ~iγμμΨ+(G/N)(Ψ~Ψ)2

+(G/N)(Ψ~iγ5Ψ)2-{N/(2λ)}(σ2+π2)

-{λ/(2N)}(Ψ~Ψを)2-{λ/(2N)}(Ψ~iγ5Ψ)

です。このを湯川Lagrangianと呼べば,これに

対するσ,πについてのEuler-Lagrange方程式は,

σ=-(λ/N)(Ψ~Ψ),および

π=-(λ/N)(Ψ~iγ5Ψ)という式mになり,

これらをに代入し返すと,元のに帰着するため

LとLが等価なことが確かめられます。

において,特に,N=1としてΨをψと記すと,

このとき,=ψ~iγμμψ+G(ψ~ψ)

+G(ψ~iγ5ψ)2-{1/(2λ)}(σ2+π2)

-{λ/(2)}(ψ~ψ)2-{λ/(2)}(ψ~iγ5ψ)2

-Gψ~(σ+iγ5π)ψとなります、

さらに,補助場:σ=-(ψ~ψ,).π=-λ(ψ~iγ5ψ)

を導入して,代入すると,

=ψ~iγμμψ-Gψ~(σ+iγ5π)ψ

+(G/λ2)(σ2+π2)-{1/(2λ3)}(σ2+π2)

-({1//(2λ)}(σ2+π2) と書けます。

ところが一方,素朴なN=1のσ模型は,次のLagrangian

密度を持ちます。これは,陽子pのスピノル場:ψ(x)

中性π0中間子の場:π(x),および,スカラー中間子の場

σ(x)のみを含む単純な系のそれです。すなわち,

=ψ~{iγμμψ-G0ψ~(g0-1+σ+iπγ5)}ψ

+λ0{4σ2+4g0σ(σ2+π2)+g022+π2)2}

+(μ02/2)(2g0-1σ+σ2+π2)

+(1/2){(∂π)2+(∂σ)2}-(μ12/2)(π2+σ2)

です。

このσ模型のの表式と,先のN=1の

「南部-jonalashino模型」でのを比較して

類似点,相違点を見てみます。

まず,「南部-Jonalashino模型」は自発的破れが

生じる前には正確にカイラル対称性を持っている系

なので,元々,Fermion場:ψの質量項がない系である

としていますが,σ模型の実際の核子(p,n)のような

Fermionには裸の質量:m0≠0があり,m0=G0/g0

置けば,質量項:-m0ψ~ψ=-G00-1ψ~ψが存在する

はずです。

「南部-Jonalashino模型」のの第1行は,

[ψ~iγμμψ-Gψ~(σ+iγ5π)ψ]ですが,

これに,この質量項を加えると,

[ψ~iγμμψ-ψ~G(g0-1+σ+iγ5π)ψ]

となって,σ模型のLの第1行と一致します。

第2行以下の,σ,πの相互作用項は,σ模型の

項の方が複雑で,明らかに両者一致はしませんが

重要な共通点があります。

先のGreen関数の生成汎関数を再掲すると,

Z[η,η~]=∫ΨDΨ~σπ

[expi∫d4x{(Ψ,Ψ~,σ,π)+η~Ψ+ηΨ~}

ですが,これで先にDηDη~積分を実行したものを

単にZと書き,これをσ,πの1粒子既約グラフの総和

として,Legendre変換で変数を外場からσ,πに変換

したもの,または,摂動展開した項の(hc)のオーダー

のn次の展開係数の運動量表示がn点頂点関数:Γ(n)

となる有効作用:Γ[σ,π]から,時間tへの依存性を

はずした有効ポテンシャル:V[σ,π]を比較します。

これは,もはや演算子の関数ではなく期待値の関数

を意味します。

有効ポテンシャルについて上に,複雑な定義

書きましたが,要するに力学の系のLagrangian

が,L=T-Vと表現されるときの運動項を除く

相互作用ポテンシャル:Vを,量子論的に述べただけ

です。そこで,σ模型のと,南部-Jonalashino模型

のLでは,V[σ,π]は(σ,π)平面上の回転体で

あり,ワイン瓶底状の形で,結合係数λが大きくなる

と,(σ,π)=(0,0)以外に,V[σ,π]が停留置を取る

(σ,π)値が存在します。特に,では,π=0のとき.

σ=σ0≠0に最小値があります。

そして,V[σ0,0]<V[0,0]が成立するため,対称で

あったσ=0の真空(基底準位)が新たな真空に相転移

する,「対称性の自発的破れ」が生じるわけです。

これが,σ模型と南部-Jonalaxhino模型の両者の

有効ポテンシャルVが持つ,共通の性質です。

ただし,実際は「南部pJpnalashino模型」は,

場の演算子σが当然,満たすべき,<0|σ|0>=0

という真空の対称性条件が破れ,<0|σ|0>=σ0<0

となることから<0|ψ~ψ|0>=-σ0/λ>0の質量項

が出現してカイラル不変性が破れるのでしたが.σ模型

では,元々,∂μ=-μ120-1πのPCAC式しか成立

せず,カイラル対称性を持たない系です。

σ模型は,あらゆる次数までで,<0|σ|0>=0となる

ように,模型が全体に平行移動された形式を選択している

からです。つまり,σ模型は「南部-Jonalashino模型」

の系のカイラル対称性が破れた結果として得られる系

であると解釈されます。

※これで,後,残る問題は対称性が破れた時点では,

πがゼロ質量のNG・擬スカラーボソンに対応して

おたはずなのに,実際は135~140MeVのゼロでない

観測質量μを持つ粒子となるに至った,メカニズム

を解明するだけです。しかし,キリもいいし,この

問題は,次回に譲って,今回はここまでにします。(つ

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