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2020年10月 8日 (木)

物理学の哲学(12)(アノマリー)

「物理学の哲学」の続きです。

チョッと間があきましたが,前回の記事までで,

場の理論のσ模型を用いて軸性ベクトルカレント

の一般的な4次元発散に対するPCAC(部分的保存

の)式:∂μ=(fπ/√2)π+(アノマリー項)

を見出し,これを利用して中性のπ0中間子

の崩壊:π0→2γの崩壊率:1/τの予測計算

をすることが,可能となりました。

しかし,唐突にσ模型という場理論の模型

を提示されて,この系のカイラル対称性を仮定

した軸性ベクトルカレントが,現実のπ中間子

の場に関連すると書かれていた,ここまで参照

してきた1975年の学生時代から読んでいた論文

「Lectures on Elementary Particles and

Quantum Field Theory;(1970 Brandeis

University Summer Institute in Theoretical

 Physics)Volume!.」」に基づいて,ほぼそれに

忠実に過去記事も現在の記事も議論をたどって

記述してきましたが,実のところ,私には以前

から,急にこのσ模型なるモノが出てくる根拠

がよく理解できていませんでした。

そこで,ここからは,恐らくσ模型の原型である

だろうと思われた「南部-Jonalashino模型」に

ついて,考察してみます。

そのため,まず,本ブログの2017年8月末頃

にアップした過去記事「対称性の自発的破れと

南部-Goldostone粒子」のシリーズから必要部分

を再掲引用しながら,記述します。

さて,対称性の自発的破れを起こす例としては

まず,「南部-Goldstone模型」があります

これは系のLagrangian密度が,

=∂μφμφ+μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 

で与えられる模型で,単一の複素スカラー場:φ

のφ4-相互作用系であり,ただし,質量項:(μ2φΦ)

の符号が通常粒子のそれと逆であるのが,通常の系

との本質的な違いになっています。

それ故,通常の<0|φ(x)|0>=0を満たす真空:

|0>の上では,φの場の励起モードは,負の2乗質量:

-μ2(<0(虚数質量:±iμ)を持つ,いわゆるタキオン

(Takiyon)となります。

ここでは,これよりは自明でない例として,

「南部-Jonalashino模型」(略してNJ模型)を

考察します。

「南部-Jonalashino模型」のLagrangian密度

は,Ψ~iγμμΨ+(G/N)[(Ψ~Ψ)2

+(Ψ~iγ5Ψ)2]で与えられます。

ここでは,以下の近似の意味を明確にするため,

Fermion場:ΨはN個のDirac場:ψi(i=1…N)

のSU(N)変換群の基本表現を示す列ベクトルで

あるとします。すなわち,Ψ=[ψ1,..ψ]とします。

そして,Ψ~ΓΨ=Σj=1ψj~Γψjと規約します。

元々のNJ模型は.N=1の単純な模型でした。

※「南部-Goldsyone粒子」関係のブログ過去記事の

シリーズをアップしたたのは,2017年頃(67歳の頃)

ですが,この「対称性の自発的破れ」について勉強

していたのは参考ノートによると1990年代(40歳代)

の頃で,確かそのときに1975年前後の学生時代に量子

アノマリーについて記述していた論文中で,出会った

σ模型というのは,これが元になっているのでは?

と思ったのでした。

この関連の過去記事では,N-Fermion系なのに,

N=1の1-パラメータθの位相変換群:U(1)の変換::

Ψ→ exp(-iθ)Ψ,および,カイラルU(1)変換:

Ψ→ exp(-iγ5θ)Ψの下での不変性を論じていた

のですが,ここでは,θをN-パラメータのベクトル

θ=(θ1,.,.θ)に,一般化したSU(N)のゲージ

変換:Ψ→ exp(-iθ)Ψ,および,カイラルSU(N)

ゲージ変換:Ψ→ exp(-iγ5θ)Ψを考えることに

します。こうすれば,N=2のアイソスピンSU(2)

不変性や,(p,n,λ)の3クォークを仮定したN=3

のフレイバーSU(3)不変な,N-Fermion系のσ模型

に対応することになる。と思います。

そして,SU(N)×SU(N)対称性群のうち,

カイラル対称性のSU(N)不変性が成立するには

に,(-mΨ~Ψ)(mはゼロでない固有値を持つ

質量行列)のようなFermionの質量項が存在しない,

という必要があります。

そこで,系の動力学により.Fermopnの質量項が

出現して,その結果,カイラルSU(N)対称性のみ

が,自発的に破れる可能性を調べます。

これは,系における4次のFermion相互作用項

(G/N)(Ψ~Ψ)2の形を考慮すると,複合場(Ψ~Ψ)

がゼロでない真空期待値:すなわち,<0|Ψ~Ψ|0

=-{N/(2G)} ≠0 を実現するなら,(-mΨ~Ψ)

の質量項を獲得した,という解釈で,可能になると期待

されます。つまり,Ψ~ΨΨ^~Ψ^-{N/(2G)}

置くことができれば,この,新たなΨ^については,真空

期待値が,<0|Ψ^~Ψ^|0>=0 と無矛盾となり,この

Ψ~Ψ=Ψ^~Ψ^-{N/(2G)}を満たすΨ^を,改めて

Ψと定義し直せば,質量項(-(Ψ~Ψ)が出現した。と

解釈できるわけです。

このとき,Ψ→ exp(-iγ5θ)Ψ に対する(Ψ~Ψ),

および,(Ψ~iiγ5Ψ)の変換則は,それぞれ,(Ψ~Ψ)

→(Ψ~Ψ)cos(2θ)-(Ψ~iγ5Ψ)sin(2θ),および,

(Ψ~iγ5Ψ)→ (Ψ~Ψ)sin(2θ)+(Ψ~iγ5Ψ)cos(2θ)

です。そして,カイラルカレント:jΨμγ5Ψ

によるカイラルチャージ:Q5=∫d3xj50(x) により,

[iQ5,Ψ~(x)iγ5Ψ(x)]

=∫d3[j50(y),Ψ~(x)iγ5Ψ(x)]

=2Ψ~(x)Ψ(x)なる交換関係が得られます。

何故なら,θ=ε>0が無限小カイラル変換:U(ε)

=exp(-iγ5ε)=1-iγ5εの場合を想定すると,,

Ψ→Ψ+δΨ=U(ε)Ψ, δΨ=-iγ5εΨなので,

(Ψ~Ψ)→ (Ψ~Ψ)-2ε(Ψ~iγ5Ψ),かつ,

(Ψ~iγ5Ψ)→(Ψ~iγ5Ψ)+ 2ε(Ψ~Ψ)であり,

[iεQ5,Ψ~(x)iγ5Ψ(x)]=2εΨ~(x)Ψ(x)

となるからです。 

それ故,<0|Ψ~Ψ|0>がゼロでないのは,カイラル

チャージ:Q5が矛盾なく定義できる対称性が,自発的

に破れていることを意味します。

そして,これは「南部-Goldstoneの定理」から,

カイラルSU(N)の破れに対応する擬スカラーの

複合場:(Ψ~iγ5Ψ)のチャネルに,(N2-1)個の

擬スカラーの南部-Goldstoneボソン,略して

NGボソンが現われることを意味します。

この,元のLagrangian密度の中には「素Heisenberg場」

のみでNGボソンは粒子場としてて用意されていないので

動力学的にに結合状態として供給される必要があります。

そこで,この問題を扱うには,補助場の方法と呼ばれる

技法を用います。

まず,Grassman数の外場:η,η~を導入して系の

FermionのGreen関数の生成汎関数を,経路積分の

形で,Z[η,η~]

=∫ΨΨ~[expi∫d4x{+η~Ψ+ηΨ~}]

によって与えます。

これの意味は,Zは係数がGreen関数:G(m,n)

η,η~のベキ級数の和である。ということです。

つまり,仮にZが1外場変数:ηのみの関数なら,

それをηでn回微分してη=0と置いたものが

n点Greenn関数:G(n)を与えるえるあるような

汎関数であり,Z[η,η~]は,さらに2変数に拡張

したものです。これにGauss積分の1を表わす因子:

1=∫σ~π~[expi∫d4

[-{N/(2λ){σ~2+π~2}]を挿入して、さらに

積分変数:σ~(x),π~(x)を次のようにσ(x),

π(x)に変数置換します。

すなわち,σ~=σ+(λ/N)(Ψ~Ψ),および,

π~=π+(λ/N)(Ψ~iγ5Ψ)とします。

すると,この変換で積分測度は不変:つまり

σ~π~=σπです。

故に,Z[η,η~]=∫ΨΨ~σπ

[expi∫d4x{(Ψ,Ψ~,σ,π)+η~Ψ+ηΨ~}

なる表現相木が得られます。

ただし,(Ψ,Ψ~,σ,π)

=Ψ~iγμμΨ+(G/N)(Ψ~Ψ)2

+(G/N)(Ψ~iγ5Ψ)2-{N/(2λ)}(σ2+π2)

-{λ/(2N)}(Ψ~Ψを)2-{λ/(2N)}(Ψ~iγ5Ψ)

です。このを湯川Lagrangianと呼べば,これに

対するσ,πについてのEuler-Lagrange方程式は,

σ=-(λ/N)(Ψ~Ψ),および

π=-(λ/N)(Ψ~iγ5Ψ)という式mになり,

これらをに代入し返すと,元のに帰着するため

LとLが等価なことが確かめられます。

において,特に,N=1としてΨをψと記すと,

このとき,=ψ~iγμμψ+G(ψ~ψ)

+G(ψ~iγ5ψ)2-{1/(2λ)}(σ2+π2)

-{λ/(2)}(ψ~ψ)2-{λ/(2)}(ψ~iγ5ψ)2

-Gψ~(σ+iγ5π)ψとなります、

さらに,補助場:σ=-(ψ~ψ,).π=-λ(ψ~iγ5ψ)

を導入して,代入すると,

=ψ~iγμμψ-Gψ~(σ+iγ5π)ψ

+(G/λ2)(σ2+π2)-{1/(2λ3)}(σ2+π2)

-({1//(2λ)}(σ2+π2) と書けます。

ところが一方,素朴なN=1のσ模型は,次のLagrangian

密度を持ちます。これは,陽子pのスピノル場:ψ(x)

中性π0中間子の場:π(x),および,スカラー中間子の場

σ(x)のみを含む単純な系のそれです。すなわち,

=ψ~{iγμμψ-G0ψ~(g0-1+σ+iπγ5)}ψ

+λ0{4σ2+4g0σ(σ2+π2)+g022+π2)2}

+(μ02/2)(2g0-1σ+σ2+π2)

+(1/2){(∂π)2+(∂σ)2}-(μ12/2)(π2+σ2)

です。

このσ模型のの表式と,先のN=1の

「南部-jonalashino模型」でのを比較して

類似点,相違点を見てみます。

まず,「南部-Jonalashino模型」は自発的破れが

生じる前には正確にカイラル対称性を持っている系

なので,元々,Fermion場:ψの質量項がない系である

としていますが,σ模型の実際の核子(p,n)のような

Fermionには裸の質量:m0≠0があり,m0=G0/g0

置けば,質量項:-m0ψ~ψ=-G00-1ψ~ψが存在する

はずです。

「南部-Jonalashino模型」のの第1行は,

[ψ~iγμμψ-Gψ~(σ+iγ5π)ψ]ですが,

これに,この質量項を加えると,

[ψ~iγμμψ-ψ~G(g0-1+σ+iγ5π)ψ]

となって,σ模型のLの第1行と一致します。

第2行以下の,σ,πの相互作用項は,σ模型の

項の方が複雑で,明らかに両者一致はしませんが

重要な共通点があります。

先のGreen関数の生成汎関数を再掲すると,

Z[η,η~]=∫ΨDΨ~σπ

[expi∫d4x{(Ψ,Ψ~,σ,π)+η~Ψ+ηΨ~}

ですが,これで先にDηDη~積分を実行したものを

単にZと書き,これをσ,πの1粒子既約グラフの総和

として,Legendre変換で変数を外場からσ,πに変換

したもの,または,摂動展開した項の(hc)のオーダー

のn次の展開係数の運動量表示がn点頂点関数:Γ(n)

となる有効作用:Γ[σ,π]から,時間tへの依存性を

はずした有効ポテンシャル:V[σ,π]を比較します。

これは,もはや演算子の関数ではなく期待値の関数

を意味します。

有効ポテンシャルについて上に,複雑な定義

書きましたが,要するに力学の系のLagrangian

が,L=T-Vと表現されるときの運動項を除く

相互作用ポテンシャル:Vを,量子論的に述べただけ

です。そこで,σ模型のと,南部-Jonalashino模型

のLでは,V[σ,π]は(σ,π)平面上の回転体で

あり,ワイン瓶底状の形で,結合係数λが大きくなる

と,(σ,π)=(0,0)以外に,V[σ,π]が停留置を取る

(σ,π)値が存在します。特に,では,π=0のとき.

σ=σ0≠0に最小値があります。

そして,V[σ0,0]<V[0,0]が成立するため,対称で

あったσ=0の真空(基底準位)が新たな真空に相転移

する,「対称性の自発的破れ」が生じるわけです。

これが,σ模型と南部-Jonalaxhino模型の両者の

有効ポテンシャルVが持つ,共通の性質です。

ただし,実際は「南部pJpnalashino模型」は,

場の演算子σが当然,満たすべき,<0|σ|0>=0

という真空の対称性条件が破れ,<0|σ|0>=σ0<0

となることから<0|ψ~ψ|0>=-σ0/λ>0の質量項

が出現してカイラル不変性が破れるのでしたが.σ模型

では,元々,∂μ=-μ120-1πのPCAC式しか成立

せず,カイラル対称性を持たない系です。

σ模型は,あらゆる次数までで,<0|σ|0>=0となる

ように,模型が全体に平行移動された形式を選択している

からです。つまり,σ模型は「南部-Jonalashino模型」

の系のカイラル対称性が破れた結果として得られる系

であると解釈されます。

※これで,後,残る問題は対称性が破れた時点では,

πがゼロ質量のNG・擬スカラーボソンに対応して

おたはずなのに,実際は135~140MeVのゼロでない

観測質量μを持つ粒子となるに至った,メカニズム

を解明するだけです。しかし,キリもいいし,この

問題は,次回に譲って,今回はここまでにします。(つ

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