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2020年10月10日 (土)

物理学の哲学(13)(アノマリー)

物理学の哲学」の続きです。

余談は抜きで即本文です。

 前回の記事の最後では,

※この後,残っている問題は,カイラル対称性の自発的

破れによって,出現する擬スカラ-の零質量NGボソン

と同定される粒子場:πが現実の135~140 MeV程度の

ゼロでない観測質量を持つπ中間子であるため,には,

質量を獲得する必要があり,この質量を得るに至る

メカニズムを解明することだけです。

という内容のことを書きました。

この最後の課題自体が,大きなテーマの一つなので

質量獲得に関連する「Higgs現象」について

詳述した本ブログの過去記事「対称性の自発的破れと南部

-Goldstone粒子(12)」の全文を,不要部分を削除し修正

して再掲載します。

※以下は再掲の過去記事です。

素粒子論は,少なくともPoincare’不変性,(つまり,

並進,および,Lorentz不変性)を満たす理論ですから,

対称性の自発的破れが起これば,「南部-Goldstone

定理」が常に適用できるはずです。

しかし,現実において厳密にゼロ質量の粒子として

観測されている素粒子は,光子とニュートリノ?くらい

しか存在しません。(※今までは発見されていません。)

光子や(未発見の)重力子(graviton)などは力を媒介

するゲージ粒子場として記述される。とされています。

確かに,光子,重力子は,それぞれ,ベクトル粒子,テンソル

粒子であり,対称性の自発的破れに伴なうNGボソンと

して理解されています。

しかし,ニュートリノについては。スピノル対称性

(超対称性)に対応するNGフェルミオンと考えると.

低エネルギー定理の予言と矛盾する,ことが確かめられ,

NGフェルミオンなどというモノではなさそうです。

(※事実,厳密にはゼロ質量ではないことの証拠とされる

「ニュートリノ振動」という現象が確認されています。)

また,「近似的に」ゼロ質量の粒子としてはπ中間子が

存在します。実際,南部-JonaLasinoが素粒子論において

初めて対称性の自発的破れの概念を提唱し,NGボソンで

あると指摘したのは,π中間子でした。

実際,π中間子が近似的カイラル対称性の自発的破れに

対応するNGボソンであることは,その後の1960年代の10

年間に、カレント代数,低エネルギー定理などの多くの成功

により確かめられ,強い相互作用の解明に多くの寄与を

しました。

では,この零質量NGボソンの希少性は,対称性の自発的

破れが,現実には比較的稀な現象であることを意味している

のでしょうか?

答は否です。実は,「ゲージ理論の場合には対称性の自発的

破れと,観測される零質量NGボソンの間に1対1対応が成立

しない。」というのが,真なのです。

ゲージ理論において,共変ゲージの場合には,もちろん,

対称性が自発的に破れれば,零質量NG粒子が出現します

が,「南部-Goldstoneの定理」は,その出現するNG粒子

が,「正定値計量を持った物理的粒子」であることを主張

していません。

そして,もしも,それが「不定計量」を持ち,BRS不変

でないモードであれば,物理的状態空間;physでは.観測に

かからないことになります。

他方,Coulombゲージ;∇=0 や,時間的軸性ゲージ

0=0などの「非共変ゲージ」の場合は,正定値計量です

から粒子は観測にかかる粒子のはずですが,今度は

「南部-Goldstoneの定理」に要求される明白なLorentz

共変性の仮定が,元から破れているため,,必ずしも対称性

の自発的破れに伴なってNG粒子が出現するとは限らない

からです。こうした可能性は,Higgs-Kibbleらにより初めて

指摘されました。

このことを,具体的に示す最も簡単な模型は,

「Goldstone模型」のU(1)対称性をゲージ化して,電磁場

を導入する「Higgs模型」です。

これより前に,対称性の自発的破れを起こす最も単純な例

として「南部-Goldstone模型」を紹介しましたが,これは

系のLagrangian密度:が次式:,

=∂μφμφ+μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 

で与えられる模型でした。

この系での荷電スカラー粒子の複素場,φ,φの組を,

2成分のφ=[φ12]とφで記述し,さらに電磁場Aμ

も共存する,ここでの出発点となる系のLagrangian密度

を,=(-1/4)Fμνμν+(Dμφ)μφ+μ2φφ

-(λ/2)(φφ)2 としたモノを考察します。

ただし,Fμν=(∂μν-∂νμ)とします。またμ

は共変微分で,Dμφ=(∂μ-ieAμ)φと定義されます。

このとき,単純な「南部-Goldstone模型」の場合と同様

ここでも,treeグラフのレベルで,場:φについて,

<0|φ(x)|0>=v/√2=(μ2/λ)1/2となって,ゼロでない

真空期待値を生じます。

ここで,便宜上,複素場:φ(x)のシフトをφ(x)

={v+ψ(x)+iχ(x)}/√2,(ただしψ(x),χ(x)

は真空期待値がゼロの実スカラー場)としたものから,

変更して,極分解と呼ばれる次の形に取ります。

すなわち,φ(x)

={v+ρ(x)}exp{iπ(x)/v}/√2,です。

ここで,ρ(x)は真空期待値がゼロの実スカラー場,

であり,位相部分:exp{iπ(x)/v}は,G/Hの

非線型表現のNGボソン場パラメータ化として,

ξ(π)=exp{iπ(x)/f};π(x)

=Σa∈()πa(x)Xa とした,ξ(π)の

今のG/H=U(1)/{1}に対応するものです。

このとき,φの運動項は,

μφ=(∂μ-ieAμ)[(v+ρ)exp(iπ/v)/√2

=exp(iπ/v)[∂μ-ie{Aμ-∂μπ/(ev)(v+ρ)

/√2なので,(Dμφ)=exp(-iπ/v)

{∂μ+ie{Aμ-∂μπ/(ev)}(v+ρ)]/√2

です。それ故,(Dμφ)μφ=(1/2)∂μρ∂μρ

+(1/2)e2(ρ+v)2{Aμ-∂μπ/(ev)}

{Aμ-∂μπ/(ev)} です。

そこで,φφ=(1/2)(ρ+v)2より,

μ2φφ-(λ/2)(φφ)2

=(μ2/2)(ρ+v)2-(λ/8)(ρ+v)4

=(μ2/2)ρ2+(μ2/2)v2+μ2vρ

-(λ/8)(ρ4+4vρ3+6v2ρ2+4v3ρ+v4)

=(μ2/2-3λv2/4)ρ2-(λ/8)ρ4

-(λv/2)ρ3+(μ2v-λv3/2)ρ-V0[v/√2]

です。ただし,-V0[v/√2]

=(1/2)μ22-(λ/8)v4です。

v=(2μ2/λ)1/2=|μ|(2/λ)1/2なら

μ2v-λv3/2=0で,μ2/2-3λv2/4=-μ2より,

2=2μ2=λv2とし,M=ev=|μ|(2e2/λ)1/2

とおけば,=(-1/4)Fμν2

+(1/2)M2{(1+eρ/M)2{Aμ-M-1(∂μπ)}2

+(1/2)|(∂μρ)2-m2ρ2}

-m√λρ3-(λ/8)ρ4-V0[v/√2]です。

さらに,Uμ=Aμ-M-1(∂μπ)と定義します。

すると,Fμν=∂μν-∂νμなので,

=(-1/4)(∂μν-∂νμ)2

+(1/2)M2μ2(1+eρ/M)2+(ρ場の項)

となり,π(x)は完全に姿を消します。

しかも,ベクトル場:Uμは質量:Mを獲得

しています。

これを,Higgs現象(Higgs-Mechanism)と呼びます。

が,この現象を,もう少し詳しく見てみます。

まず,φ=(v+ρ)exp(iπ/v)/√2

→(v+ρ)/√2,および,Aμ → Aμ-M-1μπ=Uμ 

の変数変換は,ゲージパラメータ:θ(x)を,q数の場;

-1π(x)と置いた.「q数ゲージ変換」になっている

ことに注意します。

すなわち,零質量のベクトル場:Aμが,NGボソン場:

πを吸収して質量Mを持つベクトル場(Proca場):Uμ

になったのです。

(※=(-1/4)(∂μν-∂νμ)2+(1/2)M2μ2

で記述される有質量ベクトル場をProca場と呼びます。)

ここで,電磁相互作用を切ったとき,つまり,e=0と

したとき:e≠0の物理的粒子の自由度の収支を勘定

すれば,次のようになっています。

M=evですが,e=0では,零質量のAμ(2自由度),

零質量のπ(1自由度),零質量のρ(1自由度)であった

のが,e≠0では,質量MのUμ(3自由度),質量mのρ

(1自由度)となっています。

スピンが1の物理的モードは零質量のときはHelicity

が±1の2自由度しかないですが,質量を得ると静止系も

存在して,モードが1,0,-1の3自由度になることで,

不足している1自由度は,NGボソン場:πにより供給

されます。

e≠0では,は既にゲージ不変ではなくρ(x)や

μ(x)は,いわゆるゲージが固定された場です。

それ故,ρやUμのみで表わされたLagrangian密度は,

ある種のゲージ固定化がなされたものであり,通常,それ

をユニタリゲージと呼びます。

ユニタリゲージは理論の物理的内容が明白でよいの

ですが,Proca場の伝播関数

(gνν-kμν/M2)/(k2-M2)の紫外部:

k→∞での挙動が悪いため,理論が,くりこみ不可能です。

そこで,くりこみ可能な共変げ-ジの同じ理論に考え

直します、

「くり込み可能共変ゲージ」の項に入ります。

複素場;φのパラメータ化として,上の極分解の代わりに,

先に「Goldstone模型」で取った分解を用います。

すなわち,φ(x)={v+ψ(x)+iχ(x)}/√2とします。

このとき,Dμφ=(∂μ-ieAμ)(v+ψ+iχ)/√2

=[∂μψ-i{eAμ(v+ψ)+∂μχ}+eAμχ]/√2

(Dμφ)=[∂μψ+i{eAμ(v+ψ)+∂μχ}

+eAμχ]/√2より,

(Dμφ)μφ2=(1/2)[(∂μψ+eAμχ)(∂μψ+eAμχ)

+{eAμ(v+ψ)+∂μχ}{eAμ(v+ψ)+∂μχ}]

=(1/2)(∂μψ2)2+eAμ(χ∂μψ-ψ∂μχ)

+(1/2)e2μ2χ2+(1/2)e2μ2ψ2+(1/2)M2(Aμ

+M-1μχ)2+eMAμψ(Aμ-M-1μχ) です。

一方,φφ=(1/2)(v+ψ)2+(1/2)χ2

=(1/2)(ψ2+χ2)+vψ+(1/2)v2より,

φ)2=(1/4)(ψ2+χ2)2+v2ψ2+(1/4)v4

+(1/2)v22+χ2)+vψ(ψ2+χ2)+v3ψ

です。

μ2=λv2/2,m2=2μ2ですから,v=m/√λ

で,λv=m√λであり,μ2-(λ/2)v3=0,

-(λ/2)v2ψ2=-(1/2)m2ψ2 です。

それ故,μ2φφ-(λ/2)(φφ)2

=-(1/2)m2ψ2-(1/2)m√λψ(ψ2+χ2)

―(λ/8)(ψ2+χ2)2―V0[v/√2] を得ます。

ただし-V0[v/√2]=(1/2)μ22-(λ/8)v4)

です。

そこで,Lagrangian密度は,

=(-1/4)Fμν2+(1/2)M2{Aμ-M-1(∂μχ)}2

+(1/2)|(∂μψ)2-m2ψ2}+eAμ(χ∂μψ-ψ∂μχ)

+eMAμ2ψ+(1/2)e2μ22+χ2)

-(1/2)m√λψ(ψ2+χ2)―(λ/8)(ψ2+χ2)2

-V0[v/√2] と書けます。

この時点では,ゲージ固定がなされていないので,

ゲージ固定処方に従って,この0に,

GF+FP=-iδ[c~(∂μμ+(1/2)αB)]

=B∂μμ+(α/2)B2+ic~∂μμ

を付加したものを改めてとします。

これは普通の共変ゲージ条件です。

この可換群:U(1)に基づくHiggs模型では,この

共変ゲージの場合,FPゴースト:c,c~は全くの

自由場となりますから,必ずしも導入の必要はあり

ません。

上の,F+FP=-iδ[c~(∂μμ+(1/2)αB)]

=B∂μμ+(α/2)αB2+ic~∂μμ

とは別の,Rξゲージと呼ばれる便利な共変ゲージ

があります。

まず,Lagrangian密度:0の第2項にゲージ場

μとNGボソン場;χの遷移項:MAμμχがある

ことに注意します。

遷移項があると場の混合が起こり面倒ですから,

ゲージ固定項をうまくとって,これを相殺すること

を考えます。

複素場:φ(x)のゲージ変換:

δφ=-eθ(x)φ(x)は,φ(x)

={v+ψ(x)+iχ(x)}/√2 により,

2成分の場(ψ(x),χ(x))に対して,

δψ=-eθ(x)χ(x),

δχ=-eθ(x){v+ψ(x)}

と分解されます。

ところが,BRS変換:δはこの式で

θ(x)→ c(x)(FPゴースト場)とするものです。

ゲ-ジ固定項を次のようにとります。

RξGF+FP=-iδ[c~(∂μμ+αMχ

+(1/2)αB)]=B(∂μμαMχ)

+(α/2)B2+ic~(□+αM2+eαMψ)c

とします。

最後の変形では,ev=Mを用いました。

NL場:BをGauss経路積分,または運動方程式

を用いて消去します。 0 Rξ+Fに,

対する運動方程式:∂/∂B=∂μμ+αMχ+αB

=0 から,B=-(1/α)(∂μμ+αMχ)より,

RξF+F=-{1/(2α)}(∂μμ+αMχ)2

+ic~(□+αM2)c+ieαMc~cψ と

なります。

そこで,Aμとχの交差項:Mχ(∂μμ)が現われる

ため,これと0の遷移項:MAμμχと合わせて,

全微分項=4次元発散項: M∂μ(χAμ)

=MAμμχ+M∂μ(χAμ)となって作用積分では,

これらは落ちることになります。

このRξゲージでは,たとえ,可換群U(1)の場合でも

FPゴーストがc~cψの相互作用項を持つので,

もはや落とすことはできない,というデメリットは

あります。  (再掲記事終了※)

以上,過去記事のコピーで,お茶を濁してサボりました。

これには,続きの記事(13)gって,まだ共変ゲージで

BRS不変な系の対称性の的破れとNGボソンの考察

なこもありますが,今のゼロ質量粒子の希少性と質量獲得

の機構を理解するには,ここまでで十分です。

単純な「Doldsyone模型」で,<0|φ(x)|0>=v/√2

≠0の真空期待値が現われて,結果,U(1)対称性の自発的

破れが生じて,Φ=v/√2+(ψ+iχ)}/√2 により,

<0|ψ|0>=0,<0|χ|0>=0を満たす無矛盾な実スカラー

場のψとχへのシフトが必要が生じ,ψの方に-/1/2)m2ψ2

の,質量mの質量項が現われます。

そして電磁場と共存したU(1)局所ゲージ不変性が,

自発的に破れると,ゼロ質量ゲージ粒子の光子Aμも,

質量を獲得してProva場:Uμのベクトル中間子に

なることが,上述のHiggs機構の説明で解明された

と言えます。

今回はここまでです。このシリーズも終わりに

近づきした。(つづく)

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