くりこみ理論第2部(1)
今日は11月11日です。
長い記事を一気にアップします。
「くりこみ理論(次元正則化)」シリーズは,2020年
8月に記事:(1)~(16)をアップして終了しました。
それらは,参考テキスト「ゲージ場の量子論Ⅱ」
(九後汰一論著)の「第7章くりこみ」を.私が49歳
の1999年3/20から1999年5/7に,詳読したときの
行間埋め覚え書きの履歴のノートの内容でした。
20年以上前のノートの反芻は,老化した70歳の自分
の頭脳には,温故知新で新鮮な刺激となっています。
続いて「第8章くりこみ群と演算子積展開」から,
くりこみ理論の補遺として記事をアップします。
参照ノートの開始日は,前章の終了日と同じ1999年
の5/7でした。
(※余談):この1999年の頃は「1999-7の月に
ハルマゲドンで人類は滅びる。」という五島勉氏著の
ベストセラー「ノストラダムスの大予言」がはやって
いて,7月にはこの世の終わりがくるのか?とかを,半分
本気で心配していましたね。
幽霊やUFO,超能力など現時点では,まだ,ちゃんと
した存在証明も不存在証明もできていない,と思っている
超常現象など,自分では見たりしたとかの経験もない物事
については,頭から否定するわけでもなく.とにかく昔も
今も半信半疑状態です。
自分は現代の自然科学のレベルはまだ低いと思って
いて,これに全面的信頼を持つほど単純ではないですから,
何の文明的なモノも避難場所もない荒野のようなところ
に,一人で闇夜に放り出されたとしたら,文明世界しか
知らない自分は,魑魅魍魎が出てくるかも?と本能的な
恐怖におののくことでしょうね。
増え続ける人類は,「あらゆる生物種は自らの増加が
食料不足をもたらして減少する。」という食物連鎖
の輪廻の「神の摂理」から離れて,人類には共食い
という戦争もなくなり医学の進歩により疫病を予防
しても,結局,新しいウィルスという天敵が現われ自殺
やLGBTなどの少子化文化でも追い付かず,環境破壊
などによる災害,そして科学文明が反逆するという滅び
の道が現在のハルマゲドンとして避けられないのでは
ないか?と思います。(余談終わり※)
※以下は,本文です。
第8章の「繰り込み群と演算子積展開」という新しい
項目に入るに当たり,テーマの説明と機付けとして
この間「物理学の哲学」というシリーズ記事を
書きました。ここからは,新しく第2部とします。
- 8-1:(複合演算子のくりこみと演算子積展開)
場の理論の種々の現象論的応用において,しばしば,
場の局所的演算子(一般には複合演算子)A(x),B(y)
の積:A(x)B(y)が2点xとyを同一点(x=y)
(または光円錐:(x-y)2=0)の近傍に近づけたとき,
どのように挙動するか?を知る必要が生じます。
Wilsonは,この問題に対して,直観的に,ある種の
局所演算子の完全系:{Oi(x)}が存在して;
一般に,A(x)B(x)
=limx→y[ΣiCi(x―y)Oi((x+y)/2)],(1)
(Ciはc-数関数)と展開できることを主張し,
その意味と応用について議論しました。
Wilson自身は上記の展開式(1)を,必ずしも摂動論
の枠内に限らず成立する,演算子間の等式として提唱
したもので,今日,(1)はWilsonの「演算子積展開」
(operator-product expansion),略してOPEと
呼ばれています。
演算子A,B,Oiの次元をdA,dB,diとすると
z=x-yの関数としての展開係数Ciは,Ci(z)
~(1/z)(dA+dB-di)のように挙動すると考えられる
ので,短距離のz=(x-y)~ 0の同一点の極限では
展開(1)の無限個の項のうち,次元diが低い初めの方
の数項だけを分析すれば十分なはずです。
そして,摂動論の枠内で初めて(1)の展開を厳密に
証明したのはZimmermannでした。
本節では,彼に従って,摂動論において(1)の展開式
を導きます。以下では,簡単のため,もっぱらλφ4
理論で話をしますが,他の場合でも本質的には同様
です。
まず,複合演算子の厳密な定義からです。
展開式(1)の右辺にある演算子Oiは,一般に
φn(x),φn(x)∂μφ(x)などのような場の
同一時空点の積であって,局所演算子積,
(lobal operation product),または,単に複合
演算子(composite operator)と呼ばれるものです。
しかし,こうした局所積は場の理論では特異性を
持っているので,そのままではWell-defimed(無矛盾)
ではなく,(1)の展開,つまりOPEを証明するには,
まず,そうした局所積を正確に定義するところから
始める必要があります。
複合演算子:Oを直接,演算子として定義する代わり
に,Zimmermannに従って,正規積(normal product)と
呼ばれる演算子:[O]d(またはNd(O))を機能的に定義
します。
すなわち,[O]dを含む全てのGreen関数を定義
することによって,逆に,演算子:[O]dを定義します。
Oはφn,∂μφ∂μφ,φ(∂μφ∂νφ)などの
ように,一般の場φと,その微分から構成される
単項式であり,O=O(φ)を含むGreen関数は,
GO(n)(x1,x2..xn)
=<TO(φ)φ(x1)φ(x2)..φ(xn)>
=∫Dφ{O(φ)φ(x1)φ(x2)..φ(xn)
×expi{∫d4xL}.(2)で定義されます。
ただし,Lagrangian密度Lは相殺項なしの有限な
L=(1/2)(∂μφ∂μφ-μ2φ2)-(λ/4)φ4 .(3)
であり,これはBPHZの枠内で有効Lagrangian
と呼ばれるものです。
このとき,先の乗法的くりこみの場合の相殺項に
相当するものはLに陽に加えないで,BPHZの
Taylor演算:(-tγ)で機能的に行なうものです。
(※Tayllor演算:(-tγ)で自動的に満足される,
「p=0での(中間的)くりこみ条件」以外の
くりこみ条件を設定したいときには,(3)式のLに,
さらに有限係数の(hcのベキ級数を係数とする)
相殺項を加えたものを,改めて有効lagrangian
とする,わけです。)
もう1つ,第4章「経路積分と摂動論」で述べた
ように,定義(2)で用いているT積(時間順序積)は
T*積の意味です。本節で用いるT積は全てT*積
を意味することに注意しておきます。(※つまり,
T積への左からの演算は,Tを飛び越えて内部への
直接演算を意味するわけです。)。
以下,Green関数:GO(n)を議論する代わりに,その
1粒子既約な(1PI)グラフのみの寄与で,かつ,n点
x1..xnの各脚から出る伝播関数iΔFを取り去って
得られるn点頂点関数:ΓO(n)を議論します。
すなわち,<TO(φ)φ(x1)..φ(xn)>1PI
=[Πi=1n{∫d4yiiΔF(xi-yi)}]ΓO(n)(y1..yn).(4)
と書けるとします。
ΓO(n)を論じるには,まず,再び,第5章§5-6で
したように,φ,Oの外場J,Kを導入して,頂点関数
の生成汎関数をexpiW[J,K]
=∫Dφ[expi{∫d4xL+J・φ+K・O(φ)}] (5)
で定義し:W[J,K]を,外場Jについてのみ,Legendre
変換して,Γ[φ,K]=W[J,K]-J・φを,定義
します。するとn頂点関数は,ΓO(x)(n)(x1,.xn)
=δ(n+1)Γ[φ,K]
/{δK(x)δφ(x1)..δφ(xn)}|φ=K=0.(6)
としても,得られる量です。
※(注1-1):つまり,生成汎関数の定義から,
expiW[J,K]=Σn{(1/n!)ΓO(n)(x1..xn)
φ(x1)..φ(xn)}です。
そして,δ(expiW[J,K])/δK
=(δW[J,K]/δK)expiW[J,K]ですから
δW/δK=NΣn{(1/n!)ΓO(n)(x1..xn)
×φ(x1)..φ(xn)}(Nは規格化定数)と
なりますが,(δΓ[φ,K]/δK)φ
=(δW[J.K]/δK)φ,かつ,
(δΓ[φ,K]/δφ)K=-Jですから,
δΓ[φ,K]/δK=NΣn{(1/n!)
ΓO(n)(x1..xn)φ(x1)..φ(xn)}です。
それ故,N~1として(6)式の,
ΓO(x)(n)(x1,.xn)=δ(n+1)Γ[φ,K]
/{δK(x)δφ(x1)..δφ(xn)}|φ=K=0.
と,(δΓ/δK)の展開係数:ΓO(n)(x1.xn)
は同じものであるとわかります。
(注1-1終わり※)
ΓO(n)を,Oが挿入された頂点関数
(O-inserted vertex function)と呼びます。
Oの正規積:[O]dの頂点関数Γ[O]d(n)は,
ΓO(n)に効くグラフGの各々に対して,その
Feynmanの被積分関数IG(ΓO(n))を,それに
R演算を施した,RG(Γ[O]d(n))
=ΣU∈F(G){Πγ∈U(-tγ)}IG(ΓO(n))(7)
で置き換えて得られる量として定義します。
ただし,このグラフGのくりこみ部分γとしては,
Oの頂点を囲むものも含みます。その場合,演算子
[O]dは,実際の次元(※例えば,O=(∂μφ∂μφ)
なら次元は4)には関係なく,次元dを持つ演算子
と見なします。すなわち,[O]d頂点には,指標:
(d-4)を付与するか,または,見かけの発散次数
の公式§7-3の(7)に従って,[O]d頂点を含む部分
グラフγは見かけの発散次数:ω(γ)
=4-nγ+(d-4)=d-nγ≧0.(8)(nγはγの
外線数)(8)のとき,くりこみ部分と見なし,tγは
ω(γ)のTaylor演算子とします。
このようにして得られるΓ[O]d(n)は,dがOの
本当の次元dO以上であれば,有限な無矛盾なもの
となります。
何故なら,GOの生成汎関数を(5)のexpiW[J,K]
=∫Dφ[expi{∫d4xL+J・φ+K・O(φ)}]
のように書けば,{L+KO(φ)}全体を系の有効
Lagranguanと見なすことができて,その場合,
O頂点を含むグラフも普通のグラフであって,普通
のBPHZくりこみで有限になるからです。
(※収束定理を参照)
もちろん,このときにはO頂点を囲む部分グラフ
の見かけの発散では,Oの本当の次元dOを勘定し,
tγもそれに見合ったものですから,上のように
して得られる量は,d=dOとした正規積:[O]dO
の場合の頂点関数Γ[O]dO(n)です。
d>dOの[O]dの場合は,必要以上の引き算を
しますが,ともかく有限ではあります。
そして,d>dOの場合の[O]dを引き過ぎ
演算子(oversubtracted operator)」と呼び,
d=dOの正しい次元を付与した正規積を,
通常の正規積と呼びます。
引き過ぎ演算子:[O]d(d>dO)は,実は次元
がd以下の.通常の正規積演算子:[O^]dOの線形
和で表わすことができます。
これを.[φ2]dを例に取って説明します。
この場合,示すべきは,α,β,γを定数として,
[φ2]4=[φ2]2+α[φ4]4+β[∂μφ∂μφ]4
+γ[φ□φ]4.(9)の式です。
一般に,[O]dと同じ形の[O]dOは,係数1で
現われ,それに混じる他の演算子は,全てOと
同じLorentz変換性.および,内部対称性を
持ちます。
頂点関数:Γ[O]d(n)は,ΓO(n)に効くグラフ
のFeynman積分の被積分間数をR演算を
用いて,RG(Γ[O]d(n))
=ΣU∈F(G){Πγ∈U(-tγ)}IG(ΓO(n))(7)
に置き換えて得られる量であると,先に定義
しました。
そこで,Γ[φ2]4(n)については,φ2頂点を,
次元4と見なしたTaylor演算子をt(4)γと
記すと,その寄与はRG(Γ[φ2]4(n))
=ΣU∈F(G){Πγ∈U(-t(4)γ)}IG(Γφ2(n))
(10)の積分で与えられます。
φ2頂点を含むγに対して,t(4)γはφ2に
正しい次元2を付与する通常のtγ=t(2)γ
より,2次だけ余計に取り出すので,t(4)γ
=t(2)γ+t^γ.(11)と書けます。
ところで,一般に順序付けられた積:
Πi=1n(xi+yi)=(xn+yn)(xn-1+yn-1)
..(x1+y1)に対して,その展開の各単項式
の中に含まれるylのうち,最小添字を持つ
ものに着目して,項をまとめると,
Πi=1n(xi+yi)=Πi=1nxi+yn(Πi=1n-1xi)
+(xn+yn)yn-1(Πi=1n-2xi)
+(xn+yn)(xn-1+yn-1)yn-2(Πi=1n-3)+..
+{Πi=2n(xi+yi)}y1.(12)の形の等式
を得ます。
それ故,(10)の表式:RG(Γ[φ2]4(n))
=ΣU∈F(G){Πγ∈U(-t(4)γ)}IG(Γφ2(n)
の中のグラフGの森:Uのそれぞれの中で,
φ2を含むくりこみ部分γ1,..γnは小さい
ものから.大きいものへと,右から順に並んで
いるとし,対応するΠi=1n(-t(4)γi)
=Πi=1n(-t(2))γi-t^γi)に,(12)の形の等式
を適用すれば(10)におけるTaylor演算子の積
のあらゆる可能な森Uにわたる和が次のように
書き直せます。
すなわち,ΣU∈F(G)Πγ∈U(-t(4)γ)
=ΣU∈F(G)Πγ∈U(-t(2)γ)
+Στ∈T[ΣU1∈F(G/τ)Πγ∈U1(-t(4)γ)(-t^γ)
{ΣU2∈F(τ)Πγ∈U2(-t(2)γ)}].(13)です。
ただし,Tは,フラフGのφ2頂点を含む,
くり込み部分:τの全ての集合,F(G/τ)は
τを1点に縮約したグラフ:(G/τ)のあらゆる
森:U1の集合,F(τ)は,あらゆるτ森:U2の
集合です。
公式(12)から,元々,U2がτの正規な森(τ
自身を含まない森)に限られる式も得られるの
ですが,満杯の森の場合には,必ず含まれるt(2)τ
はτの外線運動量のω(τ)=(2-nτ)次元以下
の多項式を与えるため,(4-nτ)次項を取り出す
(-t^τ)演算子の後ろでは,効きません,
つまり,t^τt(2)τ=0なので,このゼロ寄与も
加えたあらゆるτ森にわたる和としてもいい
のです。
さて,再掲(13):ΣU∈F(G)Πγ∈U(-t(4)γ)
=ΣU∈F(G)Πγ∈U(-t(2)γ)
+Στ∈T[ΣU1∈F(G/τ)Πγ∈U1(-t(4)γ)(-t^γ)
{ΣU2∈F(τ)Πγ∈U2(-t(2)γ)}].の右辺の演算を
φ2を含むグラフGのFeynman被積分関数:
IG(Γφ2(n))に,左から演算します。
このとき,(13)の右辺第2項を演算する場合
には,IG=IG/τ・Iτの積の形に書けること
を用います。
さらに,[φ2]4頂点を含むくりこみ部分τは,
公式(8)より:ω(τ)=4-nτ≧0.
(nτはτの外線数)に従ってω(τ)で,4-nτ≧0
のときが,くりこみ部分ですが,これは,τの外線数:
nτが2,または4の場合のみです。
その場合,t^τ=t(4)τ-t(2)τは,nτ=2のときは,
τの外線運動量に関してt(4)τは(4-nτ)=2次
まで,t(2)τは(2-nτ)=0次までのTaylor演算子
ですから2次の部分のみを,nτ=4のときは,
t(2)γ=0なので0次の部分のみを,それぞれ,引き算
する演算であること注意します。
(※ 何故なら,1次の部分はLorentz不変性ゆえ,
出てきません。つまり,外線nτ=2なら2つのφ
に対し1次で効くのは∂μφとφから成る運動量
表示でpμに比例する部分ですから,それにかかる,
Taylor演算のp2=0での定数係数Aμを考えると,
これは4元ベクトルで,かつ,定数ということなので
不可能です。※)
こうして(13)の両辺をIGに演算して次の(14)
が得られます。
すなわち,(10)の表式:RG(Γ[φ2]4(n))
=ΣU∈F(G){Πγ∈U(-t(4)γ)}IG(Γφ2(n))
において,(13)のΣU∈F(G)Πγ∈U(-t(4)γ)
=ΣU∈F(G)Πγ∈U(-t(2)γ)
+Στ∈T[ΣU1∈F(G/τ)Πγ∈U1(-t(4)γ)(-t^γ)
{ΣU2∈F(τ)Πγ∈U2(-t(2)γ)}].を代入すれば,:
RG(Γ[φ2]4(n))=RG(Γ[φ2]2(n))
-Στ∈T4RG/τ(Γ[φ4]4(n))Rτ(Γ[φ2]2(4))|p=0
-Στ∈T2[RG/τ(Γ[∂μφ∂νφ]4(n))
{(i2/2)(∂2/∂p1μ∂p2ν)Rτ(Γ[φ2]2(4))|p=0}
+RG/τ(Γ[∂μ∂νφ・Φ]4(n))
×{(i2/2)(∂2/∂p1μ∂p1ν)Rτ(Γ[φ2]2(4)))|p=0]
+RG/τ(Γ[φ(∂μ∂νφ)]4(n))
×{(i2/2)(∂2/∂p2μ∂p2ν)Rτ(Γ[φ2]2(4)))|p=0]]
(14)を得ます。
ただし,T2,T4は,それぞれ外線数nτが2,4の
φ2項を含むくりこみ部分でp1,p2はτ∈T2の2本
の外線運動量であり(..)|p=0はτの外線運動量が
全てゼロであることを意味します。
(※∂μφ∂νφの相互作用頂点からは,(G/τ)の
グラフとして,(-ip1μ)(-ip2ν)の因子を含むと
考えられます。)
ここでRτ(..)|p=0etc.は,外線運動量pに依らない
定数係数です。それ故,(14)をloop積分し,あらゆる
G,および,τについて和を取れば,
Γ[φ2]4(n)=Γ[φ2]2(n)+αΓ[φ4]4(n)
+βΓ[∂μφ∂μφ]4(n)+γΓ[φ□φ]4(n)。(15)
となります。
ただし,Lorentz不変性により
(∂2/∂p1μ∂p2ν)Rτ(Γ[φ2]2(4))|p=0}∝gμν
となること,および,[φ□φ]4=[(□φ)φ]4
であることを用いました。
そして,定係数α,β,γは
α=Σ∀GRτ(Γ[φ2]2(4))|p=0}.(6).,etc.
で与えられます。
こうして,(15)が任意のn点頂点関数について
成立するので,結局,求める,引き過ぎ演算子[φ2]4
が通常の正規積の線形和で書ける,という式(9):
[φ2]4=[φ2]2+α[φ4]4+β[∂μφ∂μφ]4
+γ[φ□φ]4.(α,β,γは定数)が証明された
わけです。
※(注1-2):そもそも,局所演算子積や複合演算子
を考える必要が何故あるのか?の動機付けを述べて
おきます。
私が現役の院生の頃,素粒子論では,カレント代数
という分野がありました。いまもあるのかは
知りません。
Fermionカレントはスピノルの双1次形式,
つまりスピノル場の演算子の局所積で与えられ
ますが,これを一般の物理屋は同一点の積の
特異性を深く考えずに考察していました。
例えばカイラル軸性カレントは
j5μ(x)=ψ~(ⅹ)γ5γμψ(x)
であり複合演算子(局所演算[子積]です。
特異性を意識してεだけ離した
Bilocal currentでは,
j5μ(x,ε)
=ψ~(ⅹ-ε/2)γ5γμψ(x+ε/2)
×{∫x-ε/2x+ε/2Aμ(y)dyμ}です。
そこで,当時,私が専門に研究していた
のはQEDにおける三角アノマリー
(Adler-Jackew anomaly)というテーマ
でした,この不思議な現象を解析すれば,
紫外発散を除去するくりこみという操作
の理論的メカニズムが明快に理解できる
のでは?と期待したからです。
しかし,このテーマは当時,素粒子論の
端緒を齧った程度の身で,一人でやるには
壮大過ぎて,結局,卒業(終了)には間に合わず,
仕方なく1974年(24歳)のとき発見された
(J/ψ)新粒子(後にcharmクォークを含む
重中間子と同定)に関連してカラー一重項
の粒子-反粒子対(中間子)と3体クォーク
(重粒子)のみが観測されて,例えばカラー
多重項や4体以上のexotic 粒子が観測され
ない理由について考察した「三重三元
クォーク模型の束縛ポテンシャル」という
卒業論文しか書けませんでした。
一方,量子アノマリーは,私のその後の普通
の社会人に就職した後もアマチュアとして
細々と考察していたのを嘲笑うかのように
世界的には解明され,例えば、本参考書の
第9章「アノマリー」であるようにゲージ
不変な次元正則化を行なうときγ5を含む
軸性カレントの存在がネックとなって出現
する余分な項である,とか,経路積分で変数
置換する際,γ5の存在のためにヤコービ行列
に現われる異常項である,という意味で解決
されました。まあ,自分が解決できなくても
理解できればいいというスタンスですから
それで満足ですが,実験観測データを説明
できる偉大な対症療法である「くりこみ理論」
を原因両方に変えたい,という構想と
アノマリーに大した関係がないという意味
で,40第の頃,がっかりしたのでした。
VVA三角アノマーに興味持ったのは,電荷を
持たない中性中間子であるπ0の電磁崩壊
π0→γ+γの崩壊に興味を持ったからでした。
電荷を持たないので摂動の1次では光子
(電磁場)と相互作用はできないので
π0→e-+e+→2γのように弱い相互作用
のV-Aカレントを経る2次の過程のはずです。
電子eのようなレプトンカレントの必要はなく
p-p~(陽子反陽子対) π0→p+p~→2γ
でもいいのです。当時は自分にクォークを想定
する習慣ないので実荷電粒子の陽子を挟みました
がnクオークでも1/3の電荷があるので,可能です。
そして,e~(1-γ5)γμeのようなV-Aカレント
の頂点:(1-γ5)γμがeとeに分かれて
それから,それぞれγν.γσの電磁頂点
から光子が出ていくというfeynmanグラフ
の三角グラフを考えます。そもそも純粋は
QFDだけではこういうのはありません。
しかもFurryの定理によりVVVグラフの寄与
はゼロなのでVVAだけ残ります。
ここまで書きましたが,ここからの話は,結局,
途中で追加したシリーズ記事「物理学の哲学」
の重複になるもで割愛します。(注1-2終わり※)
※次に(複合演算子の乗法的くりこみ解釈)
という項に入ります。
演算子挿入がない通常の場合のBPHZくりこみ
が裸のLagrangianを組み変えて相殺項を用意する
乗法的くりこみと解釈できることは,既に記述した
通りですが,今の演算子挿入で定義される複合演算子
の場合も乗法的くりこみで理解できます。
BPHZ流にくり込こんだΓ[O]d(n)のFeynman積分の
被積分関数の定義式(7):RG(Γ[O]d(n))
=ΣU∈F(G){Πγ∈U(-tγ)}IG(ΓO(n))において,
Taylor演算子:(-tγ)は,γが[O]d頂点を囲まない
場合は,通常のLagrangianからの相殺項の寄与を引く
のと同等でしたが,γが[O]d頂点を囲む場合は,新しい
相殺項を引くことに相当します。
この相殺項の演算子O^はTaylor演算子tγの次数
がω(γ)=(d-nγ)ですから,高々ω(γ)階微分
を持った場:φについてnγ次の局所演算子:
O^=(∂)k(φ(x))nγ (17)
,(k=0,1,2,..ω(γ)=(d-nγ)の形を持って
います。このO^は,次元がk+nγ≦dです。
特に正しい次元:d=dOを付与された正規積:
[O]dOのみを考えることにして,それをくりこんだ
複合演算子:Orenと呼ぶことにします。
そうすれば,BPHZくりこみは,結局,ある次元;diの
演算子Oirenを,その次元以下の裸の演算子の完全系:
{O0j}を用いて,次のように,Oiren=Σdj≦diZijO0j,
Zij=δij+hcZij(1)+hc2Zij(2)+..(18)として,
乗法的くりこみを行なったのと等価であることが
わかります。
つまり,左辺の展開のhcnZij(n)O0j(n≧1)の
寄与がBPJZのTaylor演算(-tγ)に,対応した乗法
くりこみの相殺項として働きます。
ただ,この場合,乗法的くりこみ因子:Zijは,単に
定数ではなく,行列(要素)となっていることが,従前の
乗法的くりこみと少し異なります。
BPJZ処方でくりこまれたOiren=[Oi]diの場合は,
外線運動量がゼロの点での「(中間的)くりこみ条件」
を満たしています。
例えば,O=φ4の場合,O点に入る運動量をqとして,
Γ[φ4]4(4)(q=0,P=0)=4!,Γ[φ4]4(2)(q=0,P=0)
=0.∂piμ∂Γ[φ4]4(2)(q=0,P=0)=0.
∂pjμ∂pjνΓ[φ4]4(2)(q=0,P=0)=0
(18)なる条件です。
ただし,P=(p1,p2,p3,p4)です。
もちろん,このタイプ以外のくりこみ条件で
くりこまれた複合演算子{O^jren}も定義できて
{Ojren}とは,(18)と同じ下三角行列による有限
くりこみの関係でつながります。
すなわち,O^iren=Σdj≦di zijOjren.(20)です。
途中ですが,今日はこれで長い記事を終わります、
(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」
(培風館)
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