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2020年11月11日 (水)

くりこみ理論第2部(1)

今日は11月11日です。

長い記事を一気にアップします。

「くりこみ理論(次元正則化)」シリーズは,2020年

8月に記事:(1)~(16)をアップして終了しました。

それらは,参考テキスト「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(九後汰一論著)の「第7章くりこみ」を.私が49歳

の1999年3/20から1999年5/7に,詳読したときの

行間埋め覚え書きの履歴のノートの内容でした。

20年以上前のノートの反芻は,老化した70歳の自分

の頭脳には,温故知新で新鮮な刺激となっています。

続いて「第8章くりこみ群と演算子積展開」から,

くりこみ理論の補遺として記事をアップします。

参照ノートの開始日は,前章の終了日と同じ1999年

の5/7でした。

(※余談):この1999年の頃は「1999-7の月に

ハルマゲドンで人類は滅びる。」という五島勉氏著の

ベストセラー「ノストラダムスの大予言」がはやって

いて,7月にはこの世の終わりがくるのか?とかを,半分

本気で心配していましたね。

幽霊やUFO,超能力など現時点では,まだ,ちゃんと

した存在証明も不存在証明もできていない,と思っている

超常現象など,自分では見たりしたとかの経験もない物事

については,頭から否定するわけでもなく.とにかく昔も

今も半信半疑状態です。

自分は現代の自然科学のレベルはまだ低いと思って

いて,これに全面的信頼を持つほど単純ではないですから,

何の文明的なモノも避難場所もない荒野のようなところ

に,一人で闇夜に放り出されたとしたら,文明世界しか

知らない自分は,魑魅魍魎が出てくるかも?と本能的な

恐怖におののくことでしょうね。

増え続ける人類は,「あらゆる生物種は自らの増加が

食料不足をもたらして減少する。」という食物連鎖

の輪廻の「神の摂理」から離れて,人類には共食い

という戦争もなくなり医学の進歩により疫病を予防

しても,結局,新しいウィルスという天敵が現われ自殺

やLGBTなどの少子化文化でも追い付かず,環境破壊

などによる災害,そして科学文明が反逆するという滅び

の道が現在のハルマゲドンとして避けられないのでは

ないか?と思います。(余談終わり※)

※以下は,本文です。

第8章の「繰り込み群と演算子積展開」という新しい

項目に入るに当たり,テーマの説明と機付けとして

この間「物理学の哲学」というシリーズ記事を

書きました。ここからは,新しく第2部とします。

  • 8-1:(複合演算子のくりこみと演算子積展開)

場の理論の種々の現象論的応用において,しばしば,

場の局所的演算子(一般には複合演算子)A(x),B(y)

の積:A(x)B(y)が2点xとyを同一点(x=y)

(または光円錐:(x-y)2=0)の近傍に近づけたとき,

どのように挙動するか?を知る必要が生じます。

Wilsonは,この問題に対して,直観的に,ある種の

局所演算子の完全系:{Oi(x)}が存在して;

一般に,A(x)B(x)

=limx→yii(x―y)Oi((x+y)/2)],(1)

(Ciはc-数関数)と展開できることを主張し,

その意味と応用について議論しました。

Wilson自身は上記の展開式(1)を,必ずしも摂動論

の枠内に限らず成立する,演算子間の等式として提唱

したもので,今日,(1)はWilsonの「演算子積展開」

(operator-product expansion),略してOPEと

呼ばれています。

演算子A,B,Oiの次元をd,d,diとすると

z=x-yの関数としての展開係数Ciは,Ci(z)

~(1/z)(dA+dB-di)のように挙動すると考えられる

ので,短距離のz=(x-y)~ 0の同一点の極限では

展開(1)の無限個の項のうち,次元diが低い初めの方

の数項だけを分析すれば十分なはずです。

そして,摂動論の枠内で初めて(1)の展開を厳密に

証明したのはZimmermannでした。

本節では,彼に従って,摂動論において(1)の展開式

を導きます。以下では,簡単のため,もっぱらλφ4

理論で話をしますが,他の場合でも本質的には同様

です。

まず,複合演算子の厳密な定義からです。

展開式(1)の右辺にある演算子Oiは,一般に

φ(x),φ(x)∂μφ(x)などのような場の

同一時空点の積であって,局所演算子積,

(lobal operation product),または,単に複合

演算子(composite operator)と呼ばれるものです。

しかし,こうした局所積は場の理論では特異性を

持っているので,そのままではWell-defimed(無矛盾)

ではなく,(1)の展開,つまりOPEを証明するには,

まず,そうした局所積を正確に定義するところから

始める必要があります。

複合演算子:Oを直接,演算子として定義する代わり

に,Zimmermannに従って,正規積(normal product)と

呼ばれる演算子:[O]d(またはN(O))を機能的に定義

します。

すなわち,[O]を含む全てのGreen関数を定義

することによって,逆に,演算子:[O]を定義します。

Oはφ,∂μφ∂μφ,φ(∂μφ∂νφ)などの

ように,一般の場φと,その微分から構成される

単項式であり,O=O(φ)を含むGreen関数は,

(n)(x1,x2..xn)

=<TO(φ)φ(x1)φ(x2)..φ(xn)>

=∫Dφ{O(φ)φ(x1)φ(x2)..φ(xn)

×expi{∫d4}.(2)で定義されます。

ただし,Lagrangian密度は相殺項なしの有限な

=(1/2)(∂μφ∂μφ-μ2φ2)-(λ/4)φ4 .(3)

であり,これはBPHZの枠内で有効Lagrangian

と呼ばれるものです。

このとき,先の乗法的くりこみの場合の相殺項に

相当するものはに陽に加えないで,BPHZの

Taylor演算:(-tγ)で機能的に行なうものです。

(※Tayllor演算:(-tγ)で自動的に満足される,

「p=0での(中間的)くりこみ条件」以外の

くりこみ条件を設定したいときには,(3)式のに,

さらに有限係数の(hcのベキ級数を係数とする)

相殺項を加えたものを,改めて有効lagrangian

とする,わけです。)

もう1つ,第4章「経路積分と摂動論」で述べた

ように,定義(2)で用いているT積(時間順序積)は

*積の意味です。本節で用いるT積は全てT*積

を意味することに注意しておきます。(※つまり,

T積への左からの演算は,Tを飛び越えて内部への

直接演算を意味するわけです。)。

以下,Green関数:G(n)を議論する代わりに,その

1粒子既約な(1PI)グラフのみの寄与で,かつ,n点

1..xの各脚から出る伝播関数iΔを取り去って

得られるn点頂点関数:Γ(n)を議論します。

すなわち,<TO(φ)φ(x1)..φ(xn)>1PI

=[Πi=1n{∫d4i(xi-yi)}]Γ(n)(y1..yn).(4)

と書けるとします。

Γ(n)を論じるには,まず,再び,第5章§5-6で

したように,φ,Oの外場J,Kを導入して,頂点関数

の生成汎関数をexpiW[J,K]

=∫Dφ[expi{∫d4+J・φ+K・O(φ)}] (5)

で定義し:W[J,K]を,外場Jについてのみ,Legendre

変換して,Γ[φ,K]=W[J,K]-J・φを,定義

します。するとn頂点関数は,ΓO(x)(n)(x1,.xn)

=δ(n+1)Γ[φ,K]

/{δK(x)δφ(x1)..δφ(x)}|φ=K=0.(6)

としても,得られる量です。

※(注1-1):つまり,生成汎関数の定義から,

expiW[J,K]­=Σ{(1/n!)Γ(n)(x1..xn)

φ(x1)..φ(xn)}です。

そして,δ(expiW[J,K])/δK

=(δW[J,K]/δK)expiW[J,K]ですから

δW/δK=NΣ{(1/n!)Γ(n)(x1..xn)

×φ(x1)..φ(xn)}(Nは規格化定数)と

なりますが,(δΓ[φ,K]/δK)φ

=(δW[J.K]/δK)φ,かつ,

(δΓ[φ,K]/δφ)=-Jですから,

δΓ[φ,K]/δK=NΣ{(1/n!)

Γ(n)(x1..xn)φ(x1)..φ(xn)}です。

それ故,N~1として(6)式の,

ΓO(x)(n)(x1,.xn)=δ(n+1)Γ[φ,K]

/{δK(x)δφ(x1)..δφ(x)}|φ=K=0.

と,(δΓ/δK)の展開係数:Γ(n)(x1.xn)

は同じものであるとわかります。

(注1-1終わり※)

Γ(n)を,Oが挿入された頂点関数

(O-inserted vertex function)と呼びます。

Oの正規積:[O]の頂点関数Γ[O]d(n)は,

Γ(n)に効くグラフGの各々に対して,その

Feynmanの被積分関数I(n))を,それに

R演算を施した,R[O]d(n))

=ΣU∈(G)γ∈U(-tγ)}I(n))(7)

で置き換えて得られる量として定義します。

ただし,このグラフGのくりこみ部分γとしては,

Oの頂点を囲むものも含みます。その場合,演算子

[O]dは,実際の次元(※例えば,O=(∂μφ∂μφ)

なら次元は4)には関係なく,次元dを持つ演算子

と見なします。すなわち,[O]d頂点には,指標:

(d-4)を付与するか,または,見かけの発散次数

の公式§7-3の(7)に従って,[O]d頂点を含む部分

グラフγは見かけの発散次数:ω(γ)

=4-nγ+(d-4)=d-nγ≧0.(8)(nγはγの

外線数)(8)のとき,くりこみ部分と見なし,tγ

ω(γ)のTaylor演算子とします。

このようにして得られるΓ[O]d(n)は,dがOの

本当の次元d以上であれば,有限な無矛盾なもの

となります。

何故なら,Gの生成汎関数を(5)のexpiW[J,K]

=∫Dφ[expi{∫d4+J・φ+K・O(φ)}]

のように書けば,{+KO(φ)}全体を系の有効

Lagranguanと見なすことができて,その場合,

O頂点を含むグラフも普通のグラフであって,普通

のBPHZくりこみで有限になるからです。

(※収束定理を参照)

もちろん,このときにはO頂点を囲む部分グラフ

の見かけの発散では,Oの本当の次元dを勘定し,

γもそれに見合ったものですから,上のように

して得られる量は,d=dとした正規積:[O]dO

の場合の頂点関数Γ[O]dO(n)です。

d>dの[O]dの場合は,必要以上の引き算を

しますが,ともかく有限ではあります。

そして,d>dの場合の[O]を引き過ぎ

演算子(oversubtracted operator)」と呼び,

d=dの正しい次元を付与した正規積を,

通常の正規積と呼びます。

引き過ぎ演算子:[O]d(d>d)は,実は次元

がd以下の.通常の正規積演算子:[O^]dの線形

和で表わすことができます。

これを.[φ2]dを例に取って説明します。

この場合,示すべきは,α,β,γを定数として,

2]4=[φ2]2+α[φ4]4+β[∂μφ∂μφ]4

+γ[φ□φ]4.(9)の式です。

一般に,[O]dと同じ形の[O]dOは,係数1で

現われ,それに混じる他の演算子は,全てOと

同じLorentz変換性.および,内部対称性を

持ちます。

頂点関数:Γ[O]d(n)は,Γ(n)に効くグラフ

のFeynman積分の被積分間数をR演算を

用いて,R[O]d(n))

=ΣU∈(G)γ∈U(-tγ)}I(n))(7)

に置き換えて得られる量であると,先に定義

しました。

そこで,Γ[φ2]4(n)については,φ2頂点を,

次元4と見なしたTaylor演算子をt(4)γ

記すと,その寄与はR[φ2]4(n))

=ΣU∈(G)γ∈U(-t(4)γ)}Iφ2(n))

(10)の積分で与えられます。

φ2頂点を含むγに対して,t(4)γはφ2

正しい次元2を付与する通常のtγ=t(2)γ

より,2次だけ余計に取り出すので,t(4)γ

=t(2)γ+t^γ.(11)と書けます。

ところで,一般に順序付けられた積:

Πi=1(xi+yi)=(xn+yn)(xn-1+yn-1)

..(x1+y1)に対して,その展開の各単項式

の中に含まれるylのうち,最小添字を持つ

ものに着目して,項をまとめると,

Πi=1(xi+yi)=Πi=1ni+yni=1n-1i)

+(xn+yn)yn-1i=1n-2i)

+(xn+yn)(xn-1+yn-1)yn-2i=1n-3)+..

+{Πi=2n(xi+yi)}y1.(12)の形の等式

を得ます。

それ故,(10)の表式:R[φ2]4(n))

=ΣU∈(G)γ∈U(-t(4)γ)}Iφ2(n)

の中のグラフGの森:Uのそれぞれの中で,

φ2を含むくりこみ部分γ1,..γは小さい

ものから.大きいものへと,右から順に並んで

いるとし,対応するΠi=1n(-t(4)γi)

=Πi=1n(-t(2))γi-t^γi)に,(12)の形の等式

を適用すれば(10)におけるTaylor演算子の積

のあらゆる可能な森Uにわたる和が次のように

書き直せます。

すなわち,ΣU∈(G)Πγ∈U(-t(4)γ)

=ΣU∈(G)Πγ∈U(-t(2)γ)

+Στ∈TU1∈(G/τ)Πγ∈U1(-t(4)γ)(-t^γ)

U2∈(τ)Πγ∈U2(-t(2)γ)}].(13)です。

ただし,Tは,フラフGのφ2頂点を含む,

くり込み部分:τの全ての集合,(G/τ)は

τを1点に縮約したグラフ:(G/τ)のあらゆる

森:U1の集合,(τ)は,あらゆるτ森:U2

集合です。

公式(12)から,元々,U2がτの正規な森(τ

自身を含まない森)に限られる式も得られるの

ですが,満杯の森の場合には,必ず含まれるt(2)τ

はτの外線運動量のω(τ)=(2-nτ)次元以下

の多項式を与えるため,(4-nτ)次項を取り出す

(-t^τ)演算子の後ろでは,効きません,

つまり,t^τ(2)τ=0なので,このゼロ寄与も

加えたあらゆるτ森にわたる和としてもいい

のです。

さて,再掲(13):ΣU∈(G)Πγ∈U(-t(4)γ)

=ΣU∈(G)Πγ∈U(-t(2)γ)

+Στ∈TU1∈(G/τ)Πγ∈U1(-t(4)γ)(-t^γ)

U2∈(τ)Πγ∈U2(-t(2)γ)}].の右辺の演算を

φ2を含むグラフGのFeynman被積分関数:

φ2(n))に,左から演算します。

このとき,(13)の右辺第2項を演算する場合

には,I=IG/τ・Iτの積の形に書けること

を用います。

さらに,[φ2]4頂点を含むくりこみ部分τは,

公式(8)より:ω(τ)=4-nτ≧0.

(nτはτの外線数)に従ってω(τ)で,4-nτ≧0

のときが,くりこみ部分ですが,これは,τの外線数:

τが2,または4の場合のみです。

その場合,t^τ=t(4)τ-t(2)τは,nτ=2のときは,

τの外線運動量に関してt(4)τは(4-nτ)=2次

まで,t(2)τは(2-nτ)=0次までのTaylor演算子

ですから2次の部分のみを,nτ­=4のときは,

(2)γ=0なので0次の部分のみを,それぞれ,引き算

する演算であること注意します。

(※ 何故なら,1次の部分はLorentz不変性ゆえ,

出てきません。つまり,外線nτ=2なら2つのφ

に対し1次で効くのは∂μφとφから成る運動量

表示でpμに比例する部分ですから,それにかかる,

Taylor演算のp2=0での定数係数Aμを考えると,

これは4元ベクトルで,かつ,定数ということなので

不可能です。※)

こうして(13)の両辺をIに演算して次の(14)

が得られます。

すなわち,(10)の表式:R[φ2]4(n))

=ΣU∈(G)γ∈U(-t(4)γ)}Iφ2(n))

において,(13)のΣU∈(G)Πγ∈U(-t(4)γ)

=ΣU∈(G)Πγ∈U(-t(2)γ)

+Στ∈TU1∈(G/τ)Πγ∈U1(-t(4)γ)(-t^γ)

U2∈(τ)Πγ∈U2(-t(2)γ)}].を代入すれば,:

[φ2]4(n))=R[φ2]2(n))

-Στ∈T4G/τ[φ4]4(n))Rτ[φ2]2(4))|p=0

-Στ∈T2[RG/τ[∂μφ∂νφ]4(n))

{(i2/2)(∂2/∂p1μ∂p2ν)Rτ[φ2]2(4))|p=0}

+RG/τ[∂μ∂νφ・Φ]4(n))

×{(i2/2)(∂2/∂p1μ∂p1ν)Rτ[φ2]2(4)))|p=0]

+RG/τ[φ(∂μ∂νφ)]4(n))

×{(i2/2)(∂2/∂p2μ∂p2ν)Rτ[φ2]2(4)))|p=0]]

(14)を得ます。

ただし,T2,T4は,それぞれ外線数nτが2,4の

φ2項を含むくりこみ部分でp1,p2はτ∈T2の2本

の外線運動量であり(..)|p­=0はτの外線運動量が

全てゼロであることを意味します。

(※∂μφ∂νφの相互作用頂点からは,(G/τ)の

グラフとして,(-ip1μ)(-ip2ν)の因子を含むと

考えられます。)

ここでRτ(..)|p=0etc.は,外線運動量pに依らない

定数係数です。それ故,(14)をloop積分し,あらゆる

G,および,τについて和を取れば,

Γ2]4(n)=Γ[φ2]2(n)+αΓ[φ4]4(n)

+βΓ[∂μφ∂μφ]4(n)+γΓ[φ□φ]4(n)。(15)

となります。

ただし,Lorentz不変性により

(∂2/∂p1μ∂p2ν)Rτ[φ2]2(4))|p=0}∝gμν

となること,および,[φ□φ]4=[(□φ)φ]4

であることを用いました。

そして,定係数α,β,γは

α=Σ∀Gτ[φ2]2(4))|p=0}.(6).,etc.

で与えられます。

こうして,(15)が任意のn点頂点関数について

成立するので,結局,求める,引き過ぎ演算子[φ2]4

が通常の正規積の線形和で書ける,という式(9):

2]4=[φ2]2+α[φ4]4+β[∂μφ∂μφ]4

+γ[φ□φ]4.(α,β,γは定数)が証明された

わけです。

※(注1-2):そもそも,局所演算子積や複合演算子

を考える必要が何故あるのか?の動機付けを述べて

おきます。

私が現役の院生の頃,素粒子論では,カレント代数

という分野がありました。いまもあるのかは

知りません。

Fermionカレントはスピノルの双1次形式,

つまりスピノル場の演算子の局所積で与えられ

ますが,これを一般の物理屋は同一点の積の

特異性を深く考えずに考察していました。

例えばカイラル軸性カレントは

(x)=ψ~(ⅹ)γ5γμψ(x)

であり複合演算子(局所演算[子積]です。

特異性を意識してεだけ離した

Bilocal currentでは,

(x,ε)

=ψ~(ⅹ-ε/2)γ5γμψ(x+ε/2)

×{∫x-ε/2x+ε/2μ(y)dyμ}です。

そこで,当時,私が専門に研究していた

のはQEDにおける三角アノマリー

(Adler-Jackew anomaly)というテーマ

でした,この不思議な現象を解析すれば,

紫外発散を除去するくりこみという操作

の理論的メカニズムが明快に理解できる

のでは?と期待したからです。

しかし,このテーマは当時,素粒子論の

端緒を齧った程度の身で,一人でやるには

壮大過ぎて,結局,卒業(終了)には間に合わず,

仕方なく1974年(24歳)のとき発見された

(J/ψ)新粒子(後にcharmクォークを含む

重中間子と同定)に関連してカラー一重項

の粒子-反粒子対(中間子)と3体クォーク

(重粒子)のみが観測されて,例えばカラー

多重項や4体以上のexotic 粒子が観測され

ない理由について考察した「三重三元

クォーク模型の束縛ポテンシャル」という

卒業論文しか書けませんでした。

一方,量子アノマリーは,私のその後の普通

の社会人に就職した後もアマチュアとして

細々と考察していたのを嘲笑うかのように

世界的には解明され,例えば、本参考書の

第9章「アノマリー」であるようにゲージ

不変な次元正則化を行なうときγ5を含む

軸性カレントの存在がネックとなって出現

する余分な項である,とか,経路積分で変数

置換する際,γ5の存在のためにヤコービ行列

に現われる異常項である,という意味で解決

されました。まあ,自分が解決できなくても

理解できればいいというスタンスですから

それで満足ですが,実験観測データを説明

できる偉大な対症療法である「くりこみ理論」

を原因両方に変えたい,という構想と

アノマリーに大した関係がないという意味

で,40第の頃,がっかりしたのでした。

VVA三角アノマーに興味持ったのは,電荷を

持たない中性中間子であるπ0の電磁崩壊

π0→γ+γの崩壊に興味を持ったからでした。

電荷を持たないので摂動の1次では光子

(電磁場)と相互作用はできないので

π0→e+e→2γのように弱い相互作用

のV-Aカレントを経る2次の過程のはずです。

電子eのようなレプトンカレントの必要はなく

p-p~(陽子反陽子対) π0→p+p~→2γ

でもいいのです。当時は自分にクォークを想定

する習慣ないので実荷電粒子の陽子を挟みました

がnクオークでも1/3の電荷があるので,可能です。

そして,e~(1-γ5μeのようなV-Aカレント

の頂点:(1-γ5μがeとeに分かれて

それから,それぞれγνσの電磁頂点

から光子が出ていくというfeynmanグラフ

の三角グラフを考えます。そもそも純粋は

QFDだけではこういうのはありません。

しかもFurryの定理によりVVVグラフの寄与

はゼロなのでVVAだけ残ります。

ここまで書きましたが,ここからの話は,結局,

途中で追加したシリーズ記事「物理学の哲学」

の重複になるもで割愛します。(注1-2終わり※)

※次に(複合演算子の乗法的くりこみ解釈)

という項に入ります。

演算子挿入がない通常の場合のBPHZくりこみ

が裸のLagrangianを組み変えて相殺項を用意する

乗法的くりこみと解釈できることは,既に記述した

通りですが,今の演算子挿入で定義される複合演算子

の場合も乗法的くりこみで理解できます。

BPHZ流にくり込こんだΓ[O]d(n)のFeynman積分の

被積分関数の定義式(7):R[O]d(n))

=ΣU∈(G)γ∈U(-tγ)}I(n))において,

Taylor演算子:(-tγ)は,γが[O]d頂点を囲まない

場合は,通常のLagrangianからの相殺項の寄与を引く

のと同等でしたが,γが[O]d頂点を囲む場合は,新しい

相殺項を引くことに相当します。

この相殺項の演算子O^はTaylor演算子tγの次数

がω(γ)=(d-nγ)ですから,高々ω(γ)階微分

を持った場:φについてnγ次の局所演算子:

O^=(∂)(φ(x))nγ (17)

,(k=0,1,2,..ω(γ)=(d-nγ)の形を持って

います。このO^は,次元がk+nγ≦dです。

特に正しい次元:d=dを付与された正規積:

[O]dOのみを考えることにして,それをくりこんだ

複合演算子:Orenと呼ぶことにします。

そうすれば,BPHZくりこみは,結局,ある次元;di

演算子Oirenを,その次元以下の裸の演算子の完全系:

{O0j}を用いて,次のように,Oiren=Σdj≦diij0j,

ij=δij+hcij(1)+hc2ij(2)+..(18)として,

乗法的くりこみを行なったのと等価であることが

わかります。

つまり,左辺の展開のhcij(n)0j(n≧1)の

寄与がBPJZのTaylor演算(-tγ)に,対応した乗法

くりこみの相殺項として働きます。

ただ,この場合,乗法的くりこみ因子:Zijは,単に

定数ではなく,行列(要素)となっていることが,従前の

乗法的くりこみと少し異なります。

BPJZ処方でくりこまれたOiren=[Oi]diの場合は,

外線運動量がゼロの点での「(中間的)くりこみ条件」

を満たしています。

例えば,O=φ4の場合,O点に入る運動量をqとして,

Γ[φ4]4(4)(=0,P=0)=4!,Γ[φ4]4(2)(=0,P=0)

=0.piμ∂Γ[φ4]4(2)(=0,P=0)=0.

pjμ∂pjνΓ[φ4]4(2)(=0,P=0)=0

(18)なる条件です。

ただし,P=(1,2,3,4)です。

もちろん,このタイプ以外のくりこみ条件で

くりこまれた複合演算子{O^jren}も定義できて

{Ojren}とは,(18)と同じ下三角行列による有限

くりこみの関係でつながります。

すなわち,O^iren=Σdj≦di ijjren.(20)です。

途中ですが,今日はこれで長い記事を終わります、

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

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