物理学の哲学(15)(終)(アノマリー)
「物理学の哲学(14)」からの続きです。
(※余談):今日は11/3(火)祝日です。時差があります
から,まだでしょうがアメリカでは重要な大統領選挙
の投票日ですね
実は先月の10/28(水)に,このシリーズ記事の(14)を
アップした直後,続いて分割した残りの記事を(15)
としてアップしようとしたところ,コピペの操作を間違え
,つい全部消えてしまいました。落ち込んでいるときに,
丁度,訪問医が来て,何事か?と心配されましたが,落ち
込みの理由を聞いて大したことない,と慰められました。
こうしたことは前にもあって,アップの前にバックアップ
を取る習慣になってましたが,これでこの記事シリーズ
が終わりになるので,ちょっとあせったようです。
まあ,仕方がないので消えた部分は,記憶に頼って書き直す
しかなく,再掲記事部分以外は少し変わったはずですが
今日11月3日までかかりました。今度は忘れずに先に
バックアップを取ります。
消えたモノも業者に頼れば復活するはずですが,貧乏人
の私にそんな余分なお金はないのでね。(余談終わり※)
※さて,以下は本題です。
アノマリーは,運動方程式からのアプロ-チに
よっても得られることがわかりました。これは軸性
ベクトルカレントに現われる特異な演算子積を注意
深く扱えばいえることです。
※(注):j5μ(x,ε)は,外場との相互作用があるので
真空期待値はゼロではなく,<0|j5μ(x,ε)ελ|0>
=<0|ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)ελ|0>
×exp{-∫x-ε/2x+ε/2dξA(ξ)}ですが,これの
εの2次以上のオーダーを無視します。
<0|ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)|0>
=(γμγ5)αβ
<0|ψ~α(x+ε/2)ψβ(x-ε/2)|0>
=-(γμγ5)αβ
<0|T[ψβ(x-ε/2)ψ~α(x+ε/2)|0>
=-Tr{γμγ5iSF~(-ε)}です。
Fermionの伝播関数:SF~(x-y)を外場:Aμ(x)
で展開すると,自由Fermion伝播関数:SF(x-y)
がベキで出現します。
まず,φ(x)を,Klein-Gordon方程式
(□+m02)φ(x)=0を満たす自由複素スカラー場
とすると,その自由Feynman伝播関数:ΔF(x)は,
iΔF(x)=<0|θ(x0)φ(x)φ*(0)
+θ(-x0)φ*(0)φ(x)|0>
=θ(x0)∫d3k(2π)-3(2ωk)-1exp(-ikx)
+θ(-x0)∫d3k(2π)-3(2ωk)-1exp(ikx)
ただしωk=(k2+m02)1/2で,与えられます。
そして,SF(x)は,このΔF(x)を用いて,
SF(x)=(iγμ∂μ+m0)ΔF(x)と表わすこと
もできます。(※自由Green関数として満足する
方程式は,(□+m02)ΔF(x)=-δ4(x)ですから,
これから,(iγμ∂μ-m0)SF(x)=δ4(x)です。)
ここで,iΔ(+)(x)=∫d3k(2π)-3(2ωk)-1
exp(-ikx)と置くと,iΔ(+)(x)=(2π)-2∫0∞dk
[{k2(2ωk)-1exp(-iωkx0)}
×∫-11d(cosθ)exp(ikrcosθ)
=(2πi)-1(4πr)-1∫0∞dk[kexp(-iωkx0)
×{exp(ikr)-exp(-ikr)}/ωk]
=(2πi)-1(4πr)-1∫-∞∞dk
[kexp{-i(ωkx0+kr)}/ωk]
=-(4πr)-1(∂/∂r)(2π)-1∫-∞∞dk
[exp{-i(ωkx0+kr)}/ωk]と書けます。
同様に,iΔ(-)(x)=∫d3k(2π)-3(2ωk)-1
exp(ikx)]と置くと
iΔ(-)(x)=-(4πr)-1(∂/∂r)
[(2π)-1∫-∞∞dk[exp{i(ωkx0+kr)}/ωk]
です。
ところで,f(x)=f(x0,r)
=(2π)-1∫-∞∞dk[exp{i(ωkx0+kr)}/ωk]
とすると,右辺=(2π)-1∫-∞∞dk
[exp{i(ωkx0+kr)}/(k2+m02)1/2]であり,
k=m0sinhφと置けば,dk=m0coshφdφ
で,(k2+m02)1/2=m0coshφです。
k:-∞ → ∞は,φ:-∞ → ∞に対応するため,
f(x)=(2π)-1∫-∞∞dφ
[exp{im0(x0coshφ+rsinhφ)}となります。
ここで,さらに,λ=x2=(x0)2-r2と置きます。
すると,
(ⅰ)x0>0 かつ,x0>rのとき,
λ>0 なので,x0=λ1/2coshφ0,r=λ1/2sinhφ0
と置くことができて,f(x)=(2π)-1∫-∞∞dφ
[exp{im0λ1/2cosh(φ+φ0)}]
=π-1∫0∞dφ exp(im0λ1/2coshφ)です。
故に. f(x)=(i/2)H0[m0λ1/2]
=(i/2){J0[m0λ1/2]+iN0[m0λ1/2]}
(※ J0は0次Bessel関数,N0は0次の
Neumann関数,H0は0次Hankel関数です。)
(ⅱ) x0>0 かつ,x0<rのとき,
λ<0 なので,x0=(-λ)1/2sinhφ0,
r=(-λ)1/2coshφ0と置くことができて,
f(x)=(2π)-1∫-∞∞dφ
[exp{im0(-λ)1/2sinh(φ+φ0)}です。
故に.f(x)=(1/π)K0[(m0(-λ)1/2]
=(i/2)H0[(m0(-λ)1/2]
=(i/2){J0([m0(-λ)1/2]+iN0[(m0(-λ)1/2]}
(※ K0は0次の第2種変形Bessel関数です。)
(ⅲ) x0<0 かつ,|x0|>rのとき,
f(x)=(-i/2)H0[m0λ1/2]
=(-i/2){J0[m0λ1/2]+iN0[m0λ1/2]}
(ⅳ) x0<0 かつ,|x0|<rのとき,
f(x)=(1/π)K0[(m0(-λ)1/2] です。
つまり, λ=(x0)2-r2>0なら
f(x)=(-1/2)N0[m0λ1/2]
+(i/2)ε(x0)J0[m0λ1/2]で,λ<0なら,
f(x)=(1/π)K0[(m0(-λ)1/2]です。
iΔ(+)(x)=-(4πr)-1(∂f/∂r)
=(2π)-1(∂f/∂λ)
={i/(4π)}ε(x0)δ(λ)
+θ(λ){m0/(8πλ1/2)}{N1[m0λ1/2]
+iε(x0)J1[m0λ1/2]}
+θ(-λ){m0/(4π2(-λ)1/2)}{K1[m0λ1/2]}
同様に,iΔ(-)(x)={-i/(4π)}ε(+iε(x0)
J1[m0λx0)δ(λ)
+θ(λ){m0/(8πλ1/2)}{N1[m0λ1/2]1/2]}
+θ(-λ){m0/(4π2(-λ)1/2)}{K1[m0λ1/2]}
です。
故に,iΔF(x)=<0|T{φ(x)φ*(0)|0>
=θ(x0)iΔ(+)(x)+θ(-x0)iΔ(-)(x)
なので,iΔF(x)
={i/(4π)}δ(λ)+θ(λ){m0/(8πλ1/2)}
{N1[m0λ1/2]+iε(x0)J1[m0λ1/2]}
+θ(-λ){m0/(4π2(-λ)1/2)}{K1[m0λ1/2]}
を得ます。
数学公式によれば,J1[z]=z/2-1/2)(z/2)3
+O(z5),N1[z]=-1/(4πz)
+{z/π-(1/π)(z/2)3}ln(z/2)
+(C/π){z-(z/2)3}+O(z5 lnz)+O(z5)
K1[z]={z+(1/2)(z/2)3}ln(z/2)
+(C/2){z-(z/2)3}+1/(4z)+O(z5)
iΔF(x)=={i/(4π)}δ(λ)-1/(4π2λ)
-{im02/(16π)}θ(λ)+{m02C/(8π2)
+{m02/(8π2)}ln(m0|λ|1/2/2)
+O(|λ|1/2ln|λ|)
SF(x)=(iγμ∂μ+m0)ΔF(x)
=2iγμxμ[{1/(4π)}δ’(λ)
+1/(4π2iλ2)
-{m02/(16π)}δ(λ)-{im02/(16π2λ)}
+O(|λ|-1/2ln|λ|)]
+m
{1/(4π)}δ(λ)-1/(4π2iλ)
-{m02/(16π)}θ(λ)+{m02C/(8π2)
-{im02/(8π2)}ln(m0|λ|1/2/2)
+O(|λ|1/2ln|λ|)です。
以上から, SF(x)は,xμ→ 0 のとき,
xμ(1/λ2)~ 1/x3のように挙動することが
わかりました。
普通に,光子の外場Aμ(x)とだけ相互作用する
iSF~(x)を,Aμ(x)とiSF(x)で摂動展開すると,
iSF~(x―ε/2,x+ε/2)=iSF’(―ε)
=iSF(―ε)
+(-ie0)∫d4y[iSF(x―ε/2―y)γα
iSF(y-x―ε/2)Aα(y)]
+(-ie0)2∫d4yd4z[iSF(x―ε/2―y)γα
iSF(y-z)γβSF(z―ε/2)Aα(y)Aβ(z)]
+O(lnε)です。
上述のように,SF(x―ε/2,x+ε/2)
=S。(―ε)がεμ/{(-ε)2}2のように挙動する
ことから,kを積分の個数,Fermion伝播関数の個数
とする発散次数:Dの次数勘定定理はD=4k-3f
となり,D>0ならεμ→ 0 のとき収束し,D=0なら
lnε発散をし,D=-1,-2,-3..なら,ε-1,ε-2,ε-3..
と挙動するのが明らかです。
ただし, <0|ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)|0>
=-Tr{γμγ5iSF~(-ε)}ですが,
左辺=<0|j5μ(x,ε)|0>
=(1/2)<0|[ψ~(x+ε/2),γμγ5ψ(x-ε/2)]|0>
で,右辺の真空:|0>で挟んだ場の交換子は,最低次
では,正規積(normal-producy)となっていて寄与は
ゼロになり,それ故,摂動展開の第1項のSF(-ε),
すなわち,ε→0でのtadpoleは,<0|j5μ(x,ε)|0>
に寄与しません。あるいは,実際に計算しても,
SF(―ε)=∫d4p(2π)-4 exp(ipε)/(p-m0)
ですが,Tr{γμγ5/(p-m0)}=0より,
-Tr{γμγ5iSF(-ε)}=0で,明らかに
-Tr{γμγ5iSF~(-ε)}に寄与しません。
また, O(lnε)も<0|j5μ(x,ε)ελ|0>
では,ε→0でελO(lnε)→ 0で消えます。
また,第3項=(-ie0)2∫d4yd4z
[iSF(x―ε/2―y)γαiSF(y-z)
γβSF(z―ε/2)Aα(y)Aβ(z)]ですが,
<0|j5μ(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)全体の
荷電共役不変性から,この項は寄与しません。
具体的にはj5μ(x,ε)は荷電共役偶で外場:
Aμ(x)は荷電共役奇etc.ですが,詳細は省略
します。残るのは,第2項=(-ie0)∫d4y
[iSF(x―ε/2―y)A(y)iSF(y-x―ε/2)A(y)]
=ie0 ∫d4pd4q(2π)-8 [exp(ipε)exp(iqx)
×{(p+q/2-m0)-1A(q)(p-q/2-m0) -1}]
です。
それ故,<0|j5μ(x,ε)ελ|0>
=-Tr{ελγμγ5iSF~(-ε)}
=(-ie0)Tr[ελγμγ5∫d4pd4q(2π)-8 exp(ipε)
exp(iqx)(p+q/2-m0)-1A(q)(p-q/2-m0) -1]
+O(εlnε)
=e0Tr[γμγ5∫d4pd4q(2π)-8 exp(ipε)exp(iqx)
(∂/∂pλ){(p+q/2-m0)-1A(q)
(p-q/2-m0) -1}]+O(εlnε)です。
したがって,limε→ 0<0|j5μ(x,ε)ελ|0>
=e0∫d4pd4q(2π)- 3exp(ipε)exp(iqx)
(∂/∂pλ)Tr[γμγ5(p+q/2+m0)A(q)
(p-q/2+m0){(p+q/2)2-m02}-1
{(p-q/2)2-m02}-1]
=4ie0εαβγδgαμ∫d4q(2π)- 4exp(iqx)
qδAγ(q)∫d4p(2π)- 4(∂/∂pλ)
[pβ(p+q/2)2-m02}-1{(p-q/2)2-m02}-1]
が得られます。
ところで,∫d4p{∂f(p)/∂pλ}は,
もしも,pμ=(p0,p1,p2,p3)を;p0=ip4として,
pμ=(p1,p2,p3,p4)と書いてEuclid化し,4次元
のGauss積分定理を適用すると,積分領域
を半径Rの4次元球の内部として,
∫d4p{∂f(p)/∂pλ}
=(i2π2R2){pλ<f(p)>}|p|=Rを得ます。
ただし,|p|=Rは,Minkowski空間ではp2=-R2,
を意味し,<f(p)>は半径Rの球面上のf(p)の
平均値を意味します。
故に,∫d4p(2π)- 4
(∂/∂pλ)[pβ{(p+q/2)2-m02}-1
{(p-q/2)2-m02}-1]
=limR→∞[(i2π2R2)RλRβ(-R2-m02)-2](2π)- 4
=igλβ/(32π2)を得ます。
(※ ここで,対称性からlimR→∞(RμRν/R2)
=(1/4)gμνとなることを用いました。 )
一方,∫d4q(2π)- 4exp(iqx)qδAγ(q)
=i∂δAγ(x)です。
したがって,limε→0<0|j5μ(x,ε)ελ|0>
=-ie0εμλγδ{∂δAγ(x)}/(8π2)
=-ie0 εμλξηFξη/(16π2)と書けます。
以上から, limε→0<0|∂μj5μ(x,ε)|0>
=2im0 limε→0<0|j5(x,ε)|0>
+{e02/(16π2)}εμλξηFμλFξη
=2im0 limε→0<0|j5(x,ε)|0>
+{α0/(4π)}εμλξηFμλFξη
となり,先の∂μ<0|j5μ(x,ε)|0>
=ie0<0|j5μ(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)
+2im0<0|j5(x,ε)|0>+O(ε2).および,
ie0<0|j5μ(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)
={α0/(4π)}εμλξηFμλ(x) Fξτ(x)+O(ε)
が確かに証明されました。 (注終わり※)
40年前の1975~1976年当時のノートはここで
終わっています。本当はこれからが本題で当時も
ノートは,これで終わってはいても,結論まで理解して
いたはずです。が,長くなったし切りがいいので,
今日はここで終わります。次からは,第3章で
1995年のノートに移ります。(※再掲記事終了)
と書いて終わっています。
結局のところ,「物理学の哲学」シリーズの初期の
副題「止まると死ぬ。」というのは(5)でも述べた
ように,Heisenbergの不確定性原理:ΔpΔx~hの
ため,期待値として,位置を原点に固定:<Δx>=0で,
かつ,速度も<Δp>=0と,古典的には静止状態でも,
ゆらぎ(分散)は<(Δx)2>=0なら,<(Δp)2>=∞
となり,運動量(速度)は絶対的不確定という点粒子の
静止できないという宿命があるのが根源です。
そもそも,素粒子を大きさのない(構造を持たない)
点である,とすることに無理があるので,こうし無限大
を生じる原因がある,と考えられるのです。
軸性ベクトルカレントは,4次元発散にアノマリー
があるのが真であり,これが例えばπ0中間子の崩壊率
に正しい寄与を与えるのを見ても,j5μ(x)のように,
1時空点xでの場の局所的双1次形式で与えられる
物理量は,実はj5μ(x,ε)(ε>0)の非局所カレントの
形の方が現実の姿であって,ε=0の局所カレントでは
有り得ないのではないか?と考えるわけです。
ガリレイ,ニュートンに始まる自然科学では,物体を
大きさのない質点と近似し理想化したおかげで力学が
発展しました。また,水や空気を流体という連続体と
考えて定式化しましたが,実は後に原子論が出現して
わかったように,これらは莫大な分子という粒子の集まり
を近似したものでした。古典電磁気学も原子内の電子の
運動による効果などを連続的な場と概念を用いて定式化
しました。厳密には,連続体は近似であったのです。
この我々の宇宙:4次元時空も普通に連続的な多様体で
ある,と考えられてはいますが,格子点のように単純では
ないにしても,実は,ある臨界のε>0よりも小さい距離
には分割できない離散的時空の近似ではないか?
というのが結論です。
学生時代に,初めて接した紫外発散を除去するくりこみ
手法の本質には,このアノマリーのメカニズムが関与するの
では?と思って興味を持ったのは,こうした動機からでした。
素粒子は宇宙全体でも離散個数しかないはずなのに粒子
の場が連続的なものとして定式化されているのも問題です
が,こうした疑問に,未だにこだわってるのは三つ子の魂百
までですね。
さて70歳になった私のブログでの遺言(遺構)は第1弾
の「どこかの馬の骨の伝記」に続いて,この「物理学の哲学」
シリーズで,第2弾が終わりました。
あとは,第3弾のオリジナル理論で終わる予定です。
命の方が持つかな?
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