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2020年11月 3日 (火)

物理学の哲学(15)(終)(アノマリー)

「物理学の哲学(14)」からの続きです。

(※余談):今日は11/3(火)祝日です。時差があります

から,まだでしょうがアメリカでは重要な大統領選挙

の投票日ですね

実は先月の10/28(水)に,このシリーズ記事の(14)を

アップした直後,続いて分割した残りの記事を(15)

としてアップしようとしたところ,コピペの操作を間違え

,つい全部消えてしまいました。落ち込んでいるときに,

丁度,訪問医が来て,何事か?と心配されましたが,落ち

込みの理由を聞いて大したことない,と慰められました。

こうしたことは前にもあって,アップの前にバックアップ

を取る習慣になってましたが,これでこの記事シリーズ

が終わりになるので,ちょっとあせったようです。

まあ,仕方がないので消えた部分は,記憶に頼って書き直す

しかなく,再掲記事部分以外は少し変わったはずですが

今日11月3日までかかりました。今度は忘れずに先に

バックアップを取ります。

消えたモノも業者に頼れば復活するはずですが,貧乏人

私にそんな余分なお金はないのでね。(余談終わり※)

※さて,以下は本題です。

アノマリーは,運動方程式からのアプロ-チに

よっても得られることがわかりました。これは軸性

ベクトルカレントに現われる特異な演算子積を注意

深く扱えばいえることです。

※(注):j(x,ε)は,外場との相互作用があるので

真空期待値はゼロではなく,<0|j(x,ε)ελ|0>

=<0|ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)ελ|0>

×exp{-∫x-ε/2x+ε/2dξ(ξ)}ですが,これの

εの2次以上のオーダーを無視します。

<0|ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)|0>

=(γμγ5)αβ

<0|ψ~α(x+ε/2)ψβ(x-ε/2)|0>

=-(γμγ5)αβ

<0|T[ψβ(x-ε/2)ψ~α(x+ε/2)|0>

=-Tr{γμγ5iSF~(-ε)}です。

Fermionの伝播関数:S~(x-y)を外場:μ(x)

で展開すると,自由Fermion伝播関数:SF(x-y)

がベキで出現します。

まず,φ(x)を,Klein-Gordon方程式

(□+02)φ(x)=0を満たす自由複素スカラー場

とすると,その自由Feynman伝播関数:ΔF(x)は,

F(x)=<0|θ(x0)φ(x)φ(0)

+θ(-x0(0)φ(x)|0>

=θ(x0)∫d3(2π)-3(2ωk)-1exp(-ikx)

+θ(-x0)∫d3(2π)-3(2ωk)-1exp(ikx)

ただしωk=(2+m02)1/2で,与えられます。

そして,SF(x)は,このΔF(x)を用いて,

F(x)=(iγμμ+m0F(x)と表わすこと

もできます。(※自由Green関数として満足する

方程式は,(□+m02)ΔF(x)=-δ4(x)ですから,

これから,(iγμμ-m0)F(x)=δ4(x)です。)

ここで,iΔ(+)(x)=∫d3(2π)-3(2ωk)-1

exp(-ikx)と置くと,iΔ(+)(x)=(2π)-20dk

[{k2(2ωk)-1exp(-iωk0)}

×∫-11d(cosθ)exp(ikrcosθ)

=(2πi)-1(4πr)-10dk[kexp(-iωk0)

×{exp(ikr)-exp(-ikr)}/ωk]

(2πi)-1(4πr)-1-dk

[kexp{-i(ωk0+kr)}/ωk]

=-(4πr)-1(∂/∂r)(2π)-1-∞dk

[exp{-i(ωk0+kr)}/ωk]と書けます。

同様に,iΔ(-)(x)=∫d3(2π)-3(2ωk)-1

exp(ikx)]と置くと

(-)(x)=-(4πr)-1(∂/∂r)

[(2π)-1-∞dk[exp{i(ωk0+kr)}/ωk]

です。

ところで,f(x)=f(x0,r)

=(2π)-1-∞dk[exp{i(ωk0+kr)}/ωk] 

とすると,右辺=(2π)-1-∞dk

[exp{i(ωk0+kr)}/(k2+m02)1/2]であり,

k=m0sinhφと置けば,dk=m0coshφdφ

で,(k2+m02)1/2=m0coshφです。

k:-∞ → ∞は,φ:-∞ → ∞に対応するため,

f(x)=(2π)-1-dφ

[exp{im0(x0coshφ+rsinhφ)}となります。

ここで,さらに,λ=x2=(x0)2-r2と置きます。

すると,

(ⅰ)x0>0 かつ,x0>rのとき,

λ>0 なので,x0=λ1/2coshφ0,r=λ1/2sinhφ0

と置くことができて,f(x)=(2π)-1-∞dφ

[exp{im0λ1/2cosh(φ+φ0)}]

=π-10dφ exp(im0λ1/2coshφ)です。

故に. f(x)=(i/2)H0[m0λ1/2]

=(i/2){J0[m0λ1/2]+iN0[m0λ1/2]}

(※ J0は0次Bessel関数,N0は0次の

Neumann関数,H0は0次Hankel関数です。)

(ⅱ) x0>0 かつ,x0<rのとき,

λ<0 なので,x0=(-λ)1/2sinhφ0,

r=(-λ)1/2coshφ0と置くことができて,

f(x)=(2π)-1-∞dφ

[exp{im0(-λ)1/2sinh(φ+φ0)}です。

故に.f(x)=(1/π)K0[(m0(-λ)1/2]

=(i/2)H0[(m0(-λ)1/2]

=(i/2){J0([m0(-λ)1/2]+iN0[(m0(-λ)1/2]}

(※ K0は0次の第2種変形Bessel関数です。)

(ⅲ) x0<0 かつ,|x0|>rのとき,

f(x)=(-i/2)H0[m0λ1/2]

=(-i/2){J0[m0λ1/2]+iN0[m0λ1/2]}

(ⅳ) x0<0 かつ,|x0|<rのとき,

f(x)=(1/π)K0[(m0(-λ)1/2]  です。

つまり, λ=(x0)2-r2>0なら

f(x)=(-1/2)N0[m0λ1/2]

+(i/2)ε(x0)J0[m0λ1/2]で,λ<0なら,

f(x)=(1/π)K0[(m0(-λ)1/2]です。

(+)(x)=-(4πr)-1(∂f/∂r)

=(2π)-1(∂f/∂λ)

={i/(4π)}ε(x0)δ(λ)

+θ(λ){m0/(8πλ1/2)}{N1[m0λ1/2]

+iε(x0)J1[m0λ1/2]}

+θ(-λ){m0/(4π2(-λ)1/2)}{K1[m0λ1/2]}

同様に,iΔ(-)(x)={-i/(4π)}ε(+iε(x0)

1[m0λx0)δ(λ)

+θ(λ){m0/(8πλ1/2)}{N1[m0λ1/2]1/2]}

+θ(-λ){m0/(4π2(-λ)1/2)}{K1[m0λ1/2]}

です。

故に,iΔF(x)=<0|T{φ(x)φ(0)|0>

=θ(x0)iΔ(+)(x)+θ(-x0)iΔ(-)(x)

なので,F(x)

{i/(4π)}δ(λ)+θ(λ){m0/(8πλ1/2)}

{N1[m0λ1/2]+iε(x0)J1[m0λ1/2]}

+θ(-λ){m0/(4π2(-λ)1/2)}{K1[m0λ1/2]}

を得ます。

数学公式によれば,J1[z]=z/2-1/2)(z/2)3

+O(z5),N1[z]=-1/(4πz)

+{z/π-(1/π)(z/2)3}ln(z/2)

+(C/π){z-(z/2)3}+O(z5 lnz)+O(z5)

1[z]={z+(1/2)(z/2)3}ln(z/2)

+(C/2){z-(z/2)3}+1/(4z)+O(z5)

F(x)=={i/(4π)}δ(λ)-1/(4π2λ)

-{im02/(16π)}θ(λ)+{m02C/(8π2)

+{m02/(8π2)}ln(m0|λ|1/2/2)

+O(|λ|1/2ln|λ|)

F(x)=(iγμμ+m0F(x)

=2iγμμ[{1/(4π)}δ’(λ)

+1/(4π22)

-{m02/(16π)}δ(λ)-{im02/(16π2λ)}

+O(|λ|-1/2ln|λ|)]

+m

{1/(4π)}δ(λ)-1/(4π2iλ)

-{m02/(16π)}θ(λ)+{m02C/(8π2)

-{im02/(8π2)}ln(m0|λ|1/2/2)

+O(|λ|1/2ln|λ|)です。

以上から, SF(x)は,xμ→ 0 のとき,

μ(1/λ2)~ 1/x3のように挙動することが

わかりました。

普通に,光子の外場Aμ(x)とだけ相互作用する

iSF~(x)を,Aμ(x)とiSF(x)で摂動展開すると,

iSF~(x―ε/2,x+ε/2)=iSF’(―ε)

=iSF(―ε)

+(-ie0)∫d4y[iSF(x―ε/2―y)γα

iSF(y-x―ε/2)Aα(y)]

+(-ie0)2∫d4yd4z[iSF(x―ε/2―y)γα

iSF(y-z)γβF(z―ε/2)Aα(y)Aβ(z)]

+O(lnε)です。

上述のように,SF(x―ε/2,x+ε/2)

=S。(―ε)がεμ/{(-ε)2}2のように挙動する

ことから,kを積分の個数,Fermion伝播関数の個数

とする発散次数:Dの次数勘定定理はD=4k-3f

となり,D>0ならεμ→ 0 のとき収束し,D=0なら

lnε発散をし,D=-1,-2,-3..なら,ε-1-2-3..

と挙動するのが明らかです。

ただし, <0|ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)|0>

=-Tr{γμγ5iSF~(-ε)}ですが,

左辺=<0|j(x,ε)|0>

=(1/2)<0|[ψ~(x+ε/2),γμγ5ψ(x-ε/2)]|0>

で,右辺の真空:|0>で挟んだ場の交換子は,最低次

では,正規積(normal-producy)となっていて寄与は

ゼロになり,それ故,摂動展開の第1項のSF(-ε),

すなわち,ε→0でのtadpoleは,<0|j(x,ε)|0>

に寄与しません。あるいは,実際に計算しても,

F(―ε)=∫d4p(2π)-4 exp(ipε)/(-m0)

ですが,Tr{γμγ5/(-m0)}=0より,

-Tr{γμγ5iSF(-ε)}=0で,明らかに

-Tr{γμγ5iSF~(-ε)}に寄与しません。

また, O(lnε)も<0|j(x,ε)ελ|0>

では,ε→0でελO(lnε)→ 0で消えます。

また,第3項=(-ie0)2∫d4yd4

[iSF(x―ε/2―y)γαiSF(y-z)

γβF(z―ε/2)Aα(y)Aβ(z)]ですが,

<0|j(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)全体の

荷電共役不変性から,この項は寄与しません。

具体的にはj(x,ε)は荷電共役偶で外場:

μ(x)は荷電共役奇etc.ですが,詳細は省略

します。残るのは,第2項=(-ie0)∫d4

[iSF(x―ε/2―y)(y)iSF(y-x―ε/2)(y)]

=ie0 ∫d4pd4q(2π)-8 [exp(ipε)exp(iqx)

×{(/2-m0)-1(q)(/2-m0) -1}]

です。

それ故,<0|j(x,ε)ελ|0>

=-Tr{ελγμγ5iSF~(-ε)}

=(-ie0)Tr[ελγμγ5∫d4pd4q(2π)-8 exp(ipε)

exp(iqx)(/2-m0)-1(q)(/2-m0) -1]

+O(εlnε)

=e0Tr[γμγ5∫d4pd4q(2π)-8 exp(ipε)exp(iqx)

(∂/∂pλ){(/2-m0)-1(q)

(/2-m0) -1}]+O(εlnε)です。

したがって,limε→ 0<0|j(x,ε)ελ|0>

=e0∫d4pd4q(2π)- 3exp(ipε)exp(iqx)

(∂/∂pλ)Tr[γμγ5(/2+m0)(q)

(/2+m0){(p+q/2)2-m02}-1

{(/2)2-m02}-1]

=4ie0εαβγδαμ∫d4q(2π)- 4exp(iqx)

δγ(q)∫d4p(2π)- 4(∂/∂pλ)

[pβ(p+q/2)2-m02}-1{(/2)2-m02}-1]

が得られます。

ところで,∫d4p{∂f(p)/∂pλ}は,

もしも,pμ=(p0,p1,p2,p3)を;p0=ip4として,

μ=(p1,p2,p3,p4)と書いてEuclid化し,4次元

のGauss積分定理を適用すると,積分領域

を半径Rの4次元球の内部として,

∫d4p{∂f(p)/∂pλ}

=(i2π22){pλ<f(p)>}|p|=Rを得ます。

ただし,|p|=Rは,Minkowski空間ではp2=-R2,

を意味し,<f(p)>は半径Rの球面上のf(p)の

平均値を意味します。

故に,∫d4p(2π)- 4

(∂/∂pλ)[pβ{(p+q/2)2-m02}-1

{(/2)2-m02}-1]

=limR→∞[(i2π22)Rλβ(-R2-m02)-2](2π)- 4

=igλβ/(32π2)を得ます。

(※ ここで,対称性からlimR→∞(Rμν/2)

=(1/4)gμνとなることを用いました。 )

一方,∫d4q(2π)- 4exp(iqx)qδγ(q)

=i∂δγ(x)です。

したがって,limε→0<0|j(x,ε)ελ|0>

=-ie0εμλγδ{∂δγ(x)}/(8π2)

=-ie0 εμλξηξη/(16π2)と書けます。

以上から, limε→0<0|∂μ(x,ε)|0>

=2im0 limε→0<0|j5(x,ε)|0>

+{e02/(16π2)}εμλξημλξη

=2im0 limε→0<0|j5(x,ε)|0>

+{α0/(4π)}εμλξημλξη

となり,先の∂μ<0|j(x,ε)|0>

=ie0<0|j5μ(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)

+2im0<0|j5(x,ε)|0>+O(ε2).および,

ie0<0|j(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)

={α0/(4π)}εμλξημλ(x) Fξτ(x)+O(ε)

が確かに証明されました。 (注終わり※)

40年前の1975~1976年当時のノートはここで

終わっています。本当はこれからが本題で当時も

ノートは,これで終わってはいても,結論まで理解して

いたはずです。が,長くなったし切りがいいので,

今日はここで終わります。次からは,第3章で

1995年のノートに移ります。(※再掲記事終了)

と書いて終わっています。

結局のところ,「物理学の哲学」シリーズの初期の

副題「止まると死ぬ。」というのは(5)でも述べた

ように,Heisenbergの不確定性原理:ΔpΔx~hの

ため,期待値として,位置を原点に固定:<Δx>=0で,

かつ,速度も<Δp>=0と,古典的には静止状態でも,

ゆらぎ(分散)は<(Δx)2>=0なら,<(Δp)2>=∞

となり,運動量(速度)は絶対的不確定という点粒子の

静止できないという宿命があるのが根源です。

そもそも,素粒子を大きさのない(構造を持たない)

点である,とすることに無理があるので,こうし無限大

を生じる原因がある,と考えられるのです。

軸性ベクトルカレントは,4次元発散にアノマリー

があるのが真であり,これが例えばπ0中間子の崩壊率

に正しい寄与を与えるのを見ても,j(x)のように,

1時空点xでの場の局所的双1次形式で与えられる

物理量は,実はj(x,ε)(ε>0)の非局所カレントの

形の方が現実の姿であって,ε=0の局所カレントでは

有り得ないのではないか?と考えるわけです。

ガリレイ,ニュートンに始まる自然科学では,物体を

大きさのない質点と近似し理想化したおかげで力学が

発展しました。また,水や空気を流体という連続体と

考えて定式化しましたが,実は後に原子論が出現して

わかったように,これらは莫大な分子という粒子の集まり

を近似したものでした。古典電磁気学も原子内の電子の

運動による効果などを連続的な場と概念を用いて定式化

しました。厳密には,連続体は近似であったのです。

この我々の宇宙:4次元時空も普通に連続的な多様体で

ある,と考えられてはいますが,格子点のように単純では

ないにしても,実は,ある臨界のε>0よりも小さい距離

には分割できない離散的時空の近似ではないか?

というのが結論です。

学生時代に,初めて接した紫外発散を除去するくりこみ

手法の本質には,このアノマリーのメカニズムが関与するの

では?と思って興味を持ったのは,こうした動機からでした。

素粒子は宇宙全体でも離散個数しかないはずなのに粒子

の場が連続的なものとして定式化されているのも問題です

が,こうした疑問に,未だにこだわってるのは三つ子の魂百

までですね。

さて70歳になった私のブログでの遺言(遺構)は第1弾

の「どこかの馬の骨の伝記」に続いて,この「物理学の哲学」

シリーズで,第2弾が終わりました。

あとは,第3弾のオリジナル理論で終わる予定です。

命の方が持つかな?

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