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2021年11月22日 (月)

ガロア理論の復習(5)

※2021年11月14日(日)開始→11月22日(月)

※(余談) やっと代数方程式の本題に入れる段階に

なりました。

19世紀のアーベリやガロアによる「5次以上の

代数方程式のベキ根による一般解法の不可能性」

については.物理学のアインシュタインらによる

「相対性理論」同様,高校時代に,そうしたトピック

があるのを知ってから,淡い興味を抱いてました。

40歳くらいまでの真面目な?サラリーマンの頃は

生活に追われ,毎日アルコール依存症のように飲酒を

続け,将棋や,少し余分な収入があるとオーディオや

PCなど受動的な趣味で,ストレス解消してました。

酒のセイか?39歳で糖尿病になり,42歳後半に厄年

でバブルが終わる頃,フリーター?(プータロー)となり

金無しヒマ有り,の状況になった機会に,お金が不要な

趣味の1つとして,学生時代研究者になる道もめざして

いた理論物理学や数学の専門書,啓蒙書の読書三昧を

再開したのでした。そうして,約25年以上前の昔その

課題を思い出して独学し,そのエッセンスを15年前

に本ヌログ開始の2006年に「ガロア理論」のシリ-ズ

記事として書きました。

老化もあり,どの記憶も時と共に薄れていくものです

が,他のトピックと異なり理解したツモリになってても

本当には体得してはいない曖昧な理解だったセイか?

2006年から15年の今,記憶をたどっても,結局,最初の

用語の定義からコツコツとたどるしか理解の道はない

ようです。幸い,何とか判読可能な大きさの文字の自作

ノートがあったのでね。(※ルーペでやっとわかる程度)

まあ,余談以外の内容は,死ぬ前の独居老人の自己満足

の勉強履歴.自己確認に過ぎませんが,食う寝る以外の

生きろモチベーションの1つにはなります。(余談終わり)

※さて,本題の続きです。

※第5章 体の拡大

[定義5-1](部分体,拡大体,中間体)

体Eが体Fを含むとき,つまり,集合としてF⊂E

であり,FがEで定義された2項演算(加法,乗法)で

体をなすとき,Fは「Eの部分体」であるといい,

逆に,Eは「Fの拡大体」であるという。

このとき,F⊂B⊂Eの関係にある体Bがあれば.

Bを「E/Fの中間体」という。

 F⊂Eのとき,E,および,E/Fの中間体は全てF上

のベクトル空間となる。Eがn次元空間のとき,Eは

F上有限次拡大,特にn次拡大という。

このnをEのF上の次数といい,これを記号(E/F)

で表記する。つまり,(E/F)=nと書く。

[例5-1]:mが,1より大きい整数で平方数の倍数

ではないとする。Qを有理数体(有理数集合の体)

とし,E={a+b√m:a,b∈Q}とすると,E

はQ上2次の拡大体である。

(証明)√m∈Qと仮定すると,√m=p/q(既約分数)

と書けるので.q2=mp2です。

そこで,mが,m=p1j12j2・・prjr;ただし,1≦j≦r

のjについてpは素数,と素因数分解できたとすると

2=mp2により,q2もpjを素因数に含みますが,これは

q自身がpjを素因数とすることを意味するので,結果,p2

もpj2を因数に含むため,あるpj≧2はp,qの公約数となり

p/qが既約分数であるという仮定に矛盾します。

故に,√mはQの元(有理数)では有り得ないです。

それ故,1と√mはQ上で1次独立です。つまり,

a+b√m=0ならa=b=0です。

ただし,b=0なら(a+b√m)∈Qですから,

Q⊂Eですが,a+b√mは.1と√mを基底として

Qの上で2次元のベクトル空間をなすため,EはQ

の2次の拡大体です。Eは,1と√mで生成される体

である,といわれ,(E/Q)=2です。(終わり)

[定義5-2](整域)

零因子0を持ち,自明なもの:{0}以外の可換環を

整域という。これは,整数環Zの拡張である。

[定義5-3](単項式,多項式と整式,多項式環)

不定元(文字):x,y,.のべき乗の積と係数の積で

得られる単一の文字式を「単項式」といい,単項式の

2つ以上の代数和で与えられる式を「多項式」という。

そして,単項式と多項式を総称して「整式」という。

不定元がxのみの多項式f(x)は,その有限個の係数:

0,a1,..anが,全て体Kの元である場合,具体的には,

f(x)=a0n+a1n-1..+an,という形になる。

f(x)が恒等的にはゼロではなく,最高次xnの係数が

0≠0なら,f(x)はn次多項式であるといい,f(x)の

次元はnである,あるいは,degf=nであるという。

これらf(x)全体の集合は通常の加法,乗法で可換環

をなす。これを体K上の1変数の「多項式環」と呼び,

K[x]と表記する。f(x)∈K[x]である。

特に,最高次の係数が1の1変数の多項式,つまり,

f(x)=x n+c1n-1..+cn,をモニック(monic),

または,モニック多項式という。

多項式f(x)=a0n+a1n-1..+anは,a0≠0

なら,cj=aj/a0(1≦j≦n)としてf(x)=a00(x)

0(x)=xn+c1n-1..+cnのように,モニックf0(x)

のa0倍で表わすことができる。

[定義5-5](単項イデアル整域)

Rを環,AをRの部分集合とするとき,Aを含む最小の

イデアルIを,Aで生成されるイデアルという。

生成元の集合Aの位数が有限で,A={a1,..am}と書ける

とき,Iは有限生成のイデアルであるという。

そこで,IがAによる有限生成の左イデアルなら,

I={x11+..+xmm:xj∈R}と表わすことができる。

特にイデアルIの生成元が単一のa∈Rの場合,Iが

左イデアルなら,I={xa:x∈R},Iが右イデアルなら.

I={ax:x∈R}である。

生成元がaのみのイデアルIが両側イデアルの場合には.

これを単項イデアル(主イデアル)といい,I=(a)と表わす。

Rが可換環なら,Rのイデルは,常に両側イデアルである。

可換環:Rが零因子を持ちR≠{0}のとき,Rは整域と

いわれるが,Rのイデアルが全て単項イデアルなら,Rは,

「単項イデアル整域」である,という。あるいは,

Principal Ideal Domain,である。略してPIDである,

という。

[例5-2]:Zを整数環とするとき,a,b∈Zに対して

I={ax+by:x,y∈Z}は.a,bで生成される

Zのイデアルですが,以前の章で示したようにa,b

の最大公約数をd∈Z,つまり,d=(a,b)とすると

Iの元は全てdの倍数ですから,Iは単項イデアルで

あり,I=(d)です。特にa,bが互いに素でd=1

ならば,I=Zです。

これを拡張して,I={x11+..+xmm:xj∈Z}を

考えると,これはd=(a1,..am)(最大公約数)とすると,

単項イデアルであり,I=(d)です。(終わり)

[定理5-2]:体K上の多項式環K[x]はPIDである。

(証明)IをK[x]の{0}でない任意のイデアルとする。

すると恒等的にはゼロでないIの元f(x)が存在します。

このうち,degfが最小のf(x)∈Iをp(x)とします。

このとき,∀f(x)∈Iは多項式式の除法の公式により,

f(x)=p(x)q(x)+r(x)(degr<degr)と表わす

ことができます。

以下,簡単のため,変数xを省略します。

するとf=pq+rとなりますが,f,p∈Iでq∈K

であり,IはKのイデアルなのでr=(f-pq)∈Iです。

故に,r≠0ならr∈Iがdegr<degpのゼロでない

Iの多項式となり矛盾を生じるため,r≡0です。

それ故,f=pqです。

したがって,IはI=(p)の単項イデアルです。

変数xを復活させると,I=(p(x))であり,Iは単項

イデアルですが,IはK[x]の{0}でない任意のイデアル

であったので,xの多項式環:K[x]はPIDです。

つまり,単項イデア整域です。(証明終わり)

[定義5-6](体の代数的拡大)

体Fのゼロでない1変数xの多項式f(x)を

f(x)=a0n+a1n-1..+an,とする。

これは,係数:a0,a1,..anが全て体Fの元の恒等的

にはゼロでない多項式である。

このf(x)に対して,Fの拡大体E⊃Fの1つの元α

が,f(α)=0を満たすとき, すなわち,α∈Eが,

f(α)=a0αn+a1αn-1..+an=0を満たすとき,

αはf(x)=0の根(root)であるという。

そして,こもときαは「F上代数的」である。という。

Eの全ての元がF上代数的であるとき;EはF上,

「代数的(拡大体)」であるという。

[定理5-3];EがF上,有限次なら.EはF上代数的である。

(証明)(E/F)=nとすると,EはF上n次のベクトル

空間なので,∀α∈Eのベキで構成される.Eの(n+1)

個の元:αnn-1,..,α,1は1次従属です。

故に,少なくとも1つはゼロでないFの(n+1)個の

元:a0.a1,..anを用いて,a0αn+a1αn-1..+an=0

なる自明でない1次関係式が成立します。

それ故,f(x)=a0n+a1n-1+..+an,とおけば,

f(x)は恒等的にゼロではないFの整式で,f(α)=0

なので,αは(x)=0の根となるため,αはF上代数的です。

0≠0の場合はf(x)はn次の多項式です。(証明終わり)

[定理5-4]:BがE/Fの中間体でF上有限次,EはB上

有限次のとき,EはF上有限次である。

特(に(E/F)=(B/F)(E/B)である。

(証明)(B/F)=m,(E/B)=nとします。

BはF上でm個の基底:α1,.,αmを持ち,EはB上で

n個の基底:β1,.,βnを持ちます。

このとき,i=1,m,および,j=1,.nに対する

異なる(mn)個の元;αiβjについて考察します。

ij∈F(i=1,,m,j=1,.,n)とし,関係式

Σi,j(cijαiβj)=0を考えます。

これは変形すると,Σj=1n{(Σi=1mijαij}=0

となりますが,(Σi=1mijαi)∈Bであり,β1,.,βn

はB上1次独立ですからΣi=1mijαi=0(j=1,.n)

です。すると,cij∈Fでα1,.αmはF上1次独立

なので,全てのi,jについてcij=0を得ます。

それ故,αiβj(i=1,..m,j=1,..n)はF上で,

1次独立です。

そして∀ω∈Eについて,ω=Σj=1njβj(x∈B),

,と表わすことができて,xj=Σi=1mijαi(cij∈F)

と表わせるので,結局,ω=Σi,j(cijαiβj)と書けます。

よって,mn個の独立な(αiβj)がEのF上の基底

となるため,(E/F)=mn=(E/B)(B/F)です。

(証明終わり)

[定理5-5]:EがFの有限次拡大体で,Bが中間体の

とき,EはB上,BはF上,有限次である。

(証明)EのF上の基底をγ1,..γnとすると,γ1,.,γ

はBの生成元です。何故なら,∀ω∈Eをω=Σjjγj

と展開したとき,係数cj∈F,および,基底γj∈Fは,

B⊃Fより,全てBの元でもありますから,{γj}j=1n

中で,Bにおいて1次独立な最大の部分集合は,Eの

Bにおける有限個の基底をなすからです。

それ以外のFの基底によるcijγjの各項はBに

おいては,1次従属ですから,今採用したB上の基底

の1次結合で表わせます。・

それ故,EはB上でも有限次ベクトル空間です。

また,B上の基底は,F上の基底の部分集合ですから,

ベクトル空間として,BはEの部分空間です。

(証明終わり)

[定義5-4](既約多項式,モニック)

体Kの上の多項式f(x1,.xm)が;定数ではない変数

の1次以上のKの多項式g(x1,.xm)とh(x1,.xm)の

積でf=ghと因数分解できるときfは可約であると

いい,そうでないうきは既約であるという。

そして,fが既約なら.これを「既約多項式」という。

[定理5-6]:体Fの拡大体Eの元αが,F上代数的で

あるとき,J={f(x)∈F[x];f(α)=0}は可換環

(多項式環):F[x]の{0}でないイデアルである。

J=(p(x))とすると,多項式p(x)はF上既約である。

(証明)まず,f(x)∈J,g(x)∈F[x]とすると,

g(α)f(α)=0より,g(x)f(x)∈Jですから,Jは

F[x]のイデアルです。そして,αはF上代数的なので,

恒等的には0でないf(x)∈Jが存在するためJ≠{0}

です。

次に,p(x)=p1(x)p2(x),p1(x),p2(x)∈F[x],

と因数分解できるなら,degp=degp1+degp2ですから,

1,p2が共に定数でないとき,0<degp1<degpであり,

かつ,0<degp2<degpです。

ところが,p(α)=p1(α)p2α)=0よりp1(α)=0

または,p2(α)=0です。そこでp1(x)∈J,または,

2(x)∈Jです。しかし,J=(p(x))ですから,

これはdegp1≧degp,または,degp2≧degpを意味し,

矛盾です。したがって,このような因数分解は不可能

でaありp(x)は既約です。

かくして,E⊃Fの元αが,体F上の多項式環F[x]

の根となるイデアル:J={f(x)∈F[x]:f(α)=0}

は,F上で既約な多項式p(x)で生成され,J=(p(x))

と書けるとわかりましたが,p(x)の最高次の係数がa

でa≠0なら,(p(x))=(a-1p(x))であり,a-1p(x)

は既約なモニックです。そこで,このモニックを改めて

p(x)と定義すれば,Jはモニックで生成されるイデアル

ということになります。。

以下,一般性を失うことなくJはに常にモニックで生成

されるイデアルであると見なせます。(証明終わり)

[系]:[定理5-5]のαに対するJ=(p(x))の生成モニック

p(x)は,αに対して一意的に定まる。

(証明)f(x)∈J=(p(x))ならf(x)=p(x)q(x)と

なるので,degp≦degfでありp(x)∈F[x]は,p(α)=0

を満たす既約な最低次数のモニックでですから,これが一意的

であるのは自明です。これを最小多項式ともいいます。

(証明終わり)

[定義5-7]; E⊃Fの元αが,体F上の多項式環F[x]

の根となるイデアル:J={f(x)∈F[x]:f(α)=0}

は,αに対し一意に定まるF上で既約なモニックp(x)

で生成され,J=(p(x))となるが,このp(x)の次数

がnなら,αはF上n次である,または,nはαのF上の

次数である,という。

[定理5-6]:体Fの拡大体Eの元αがF上n次のとき,

n個の元;1,α,..αn-1がF上で張る,ベクトル空間:

F(α)={c0+c1α+..+cn-1αn-1:cj∈F}は,Fの

n次の代数的拡大体である。

(証明)まず,c0+c1α+..+cn-1αn-1=0でF上の係数:

0,c1..cn-1の少なくとも1つがゼロでない場合には,,

f(x)=c0+c1x+..+cn-1n-1:とおけば.これは次数

が(n-1)以下のゼロでない多項式でf(α)=0となり,

p(α)=0を満たす最低次の多項式がp(x)でdegp=n

であることに矛盾します。

それ故,1,α,..αn-1は,F上で1次独立です。

次に,∀f(x)∈F[x]はf(x)=p(x)q(x)+r(x),

ただし,degr(x)<degp(x)=n.と表わせます。

すると,p(α)=0なのでf(α)=r(α)となります。

ところがdegr(x)≦(n-1)なので,r(x)∈F[x]は,

r(x)=c0+c1x+..+cn-1n-1,のように(n-1)次以下

の多項式で表わされます。ただし,j=1,.,(n-1)について

係数;c∈Fの少なくとも1つはゼロでないです。

それ故,結局,f(α)=r(α)=c0+c1α+..+cn-1αn-1

と書けるため,任意のf(x)に対して,f(α)∈F(α)が

成立します。そこで,F[x]からF(α)への写像Φを,

Φ{f(x)}=f(α)で定義すると,これはF[x]からF(α)

の上への準同型写像です。

そして,f(α)=0ならr(α)=0 ⇒c0=c1=..=cn-1=0

なので,多項式としてr(x)≡0より,これはf(x)がp(x)

で割り切れて,f(x)=p(x)q(x)(q(x)∈F[x])となる

ことを意味します。

そこでΦ{f(x)}=f(α)=0は,f(x)∈(p(x))と同値

です。故に,Φの核:kerΦ={f()∈F[x]:φ{f(x)}=0}

が,イデアルI=(p(x))に等しくなります。

したがって,準同型定理により,Φから誘導される

{F[x]/(p(x))}からF(α)の上への同型写像;Φ~が存在

します。つまり,Φ~{C(f)}=Φ{f(x)}=f(α)∈F(α)

で定義されるΦ~はF(α)の上への同型です。

多項式環F[x]のイデアルI=(p(x))による剰余類を

C(f)と書けば,C(0)=C(p)=(p()x))が剰余類零元で

あり,C(f)≠C(0)なら,p(x)が既約故,f(x)とp(x)は

互いに素です。

よって,f(x)q(x)+p(x)r(x)=1を満たす

q(x),r(x)∈F[x]が存在してC(fq)=1であり

C(f)C(q)=1より,C(q)が,C(f)の乗法の逆元

{C(f)}-1です。F[x]/(p(x))-{C(0)}が単位元と

逆元を持ち,乗法群をなすため,F[x]/(p(x))は,

体をなすとわかります。

よって,これに同型なF(α)も体をなし.これはn個の

独立な元で張られるベクトル空間ですから,結局,F(α)

はFのn次の代数的拡大体です。(証明終わり)

[定理5-7]:F上のn次の多項式はFの拡大体Eにおいて,

高々n個の根を持つ。

(証明)f(x)∈F[x]が(n+1)個の根α12,..αnn+1

を持つとすると,f(x)は,(x-αj)(1≦j≦(n+1))

なる因数を持つxのn次式なので.1≦j≦nの因数を

採用してf(x)=a(x-α1)(x-α2)・・(x-αn)

とすると,これは,さらにf(αn1)=0を満足します。

すなわち,a(αn+1-α1)(αn+1-α2)・・(αn+1-αn)=0

です。そこで.もしもαn+1≠αj(1≦j≦n)ならa=0

が必要条件で,f()≡0となりf(x)がn次でsるという

仮定に矛盾します。

それ故,(n+1)個のα12,.αnn+1の全てが異なる

わけではないので,異なる根の数はn以下です。

(※体Fが複素数体Cなら代数学の基本定理から少なくとも

1つの根α∈Cが存在して(x-α)という因数を持つこと

から,帰納的に,n次多項式がCにn個以下の根を持つのは

自明なのですが,抽象的な体Fの上では.事情が違います。)

(証明終わり)

[例5-3]:Qを有理数体とするとき,(Q(3√2)/Q)=3である、

(証明)(3√2)はQ上で既約な3次多項式(x6-2)の根です

から,(Q(3√2))/Q)=3であり,Q(3√2)の,Q上の基底は,

1,3√2,,3√22の3つです。(終わり)

[定義5-7](添加された拡大体)

F(α)を体Fにαを添加した体という。

F上代数的な有限個の元:α12,..αmがあるとき.

Fに.順に,これらの元を添加した体の拡大列として,

F(α1)⊂F(α12)⊂…⊂F(α12,..αm)を

得ることができる。

[定理5-8]:F(α12,..αm)は,F上代数的拡大体

である。すなわち,この体の元はF上のある代数方程式

の根である。

(証明)まず,F(α)はn個の基底:1,α,α2,.,αn-1

張られるn次元ベクトル空間で,しかもFの拡大体です。

そこで,[定理5-3]でEが(E/F)=nのFの拡大体

なら,α∈Eのとき(n+1)個の元:1,α,α2,.,αn-1n

は1次従属なので,f(x)=c0+c1x+..+cnnは,

f(α)=c0+c1α+..+cnαn=0という自明でない

関係式を満たすため,αは恒等的にはゼロでないn次

以下の多項式f(x)の根となるという証明をしたもと

同様に,F(α)はF上のn次元ベクトル空間であり,

γ∈⊂F(α)なら,F(α)も体なので,1,γ,..γn-1n

も全てF(α)の元であり.1次従属なのでg(γ)=0を

満たすn次以下のg(x)∈F[x]が存在してγはF上

代数的であり,故に,F(α)はFの代数的拡大体です。

そこでまず,F(α1)はF上有限次で代数的です。

同様にF(α12)はF(α1)上有限次代数拡大です。

{F(α12)/F}={F(α12)/F(α1)}{F(α1)/F}

より,結局,F(α12)はF上でも有限次拡大です。

後は,これを繰り返せば,帰納的にF(α1α,α2,..α)

はF上の有限次代数的拡大体であることがわかります。

(証明終わり)

[例5-4]:ωを1の立方根とすれば,Q(3√2,ω)を考える。

[例5-3]で見たように{Q(3√2)/Q}=3です。

また,ωはQ上x2+x+1=0も根ですからQ上2次で

Q(3√2)上でも高々2次です。

実際にはx2-x+1は,Q(3√2)上でも2次ですから

{Q(3√2,ω)/Q(3√2)}=2なので,{Q(3√2,ω)/Q}=6

と結論されます。(終わり)

[定理5-8]:体Fの多項式;f(x)∈F[x]に対して,

f(x)=a(x-α1)(x-α2)・・(x-αn)(αj∈E)

のように,f(x)のxの1次式の積への分解が可能になる

Fの拡大体Eが存在する。

(証明)f(x)の既約因子p(x)をとる。

変数tの多項式環F[t]のp(tによる剰余体Kを

K=F[t]/(p(t))で定義しgます。

Kにおいて,F[t]の元g(t)の剰余類を{g(t) mod p(t)}

と表わすことにします。

a∈Fのとき,aに{a mod p(t)}∈Kを対応させると

体Fから体Kの中への写像で同型対応が得られます。

a∈Fを{a mod p(t)}∈Kと同一視するとF⊂Kです。

そして,F上の多項式はKの部分体と考えたFの多項式と

考えられます。特に,Kの元{t mod p(t)}をα1と表記

すればKの元としてp(α1)=0となります。

つまり,p(α1)={p(t) mod p(t)}=0です。

それ故,K内の既約多項式として,p(x)=(x-α1)

×p1(x)と書けます。

p(x)はf(x)の既約因子であったので,f(x)は,

f(x)=(x-α1)f1(x)(f1(x)∈K[x])となり

1(x)の既約因子は,また,Kの適当な拡大体をとると

1(x)=(x-α2)f2(x)となり.帰納的に,Fの拡大体

Eが存在して,f(x)=a(x-α1)(x-α2)..(x-αn),

a∈Fa≠0;αj∈E(1≦j≦n)とできます。(証明終わり)

[定義5-8](分解体)

上記[定理5-8]の,f(x)の全ての根を含む拡大体:

E=F(α12,..,αn)をf(x)の分解体」という。

※途中ですがキリもいいし今回は,ここで終わります。

(つづく)

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