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2021年12月

2021年12月13日 (月)

ガロア理論の復習(7)

2021年12月3日(金)開始→12月13日(月)

※(余談)1941年(昭和16年)12脱8日は,日本軍

のハワイ真珠湾の奇襲攻撃で,アメリカとの戦争

が始まった日でした。もう80年も前ですか?風化

はしないんだろうなぁ。昔,DVDで「トラトラトラ」

という日米合作映画を見たら,アメリカの情報部は

全て知っていて放置したらしいです。

2001年9月11日のニューヨーク貿易センター

ビルへのテロ事件も「華氏911」という映画では,

政府上層部は,事前にわかっていて防ぐことを

しなかったたらしいし,戦争したい米上層部とか

死の商人たちは,その正当防衛とか報復とかの

口実ためには,多数の国民の命の犠牲など,何

とも思ってないらしい。と感じました。

映画はフォクションかもしれないですけどね。

まあ,火のないところに煙は立たず,とも言います。

さて,9月末頃には日本での「コロナ自然消滅仮設」

の記事をブログに書きました。ネットにはフ,ェイク

やデマが氾濫していて,取捨選択せずに鵜呑みにする

と危険なことは承知なのですが,楽観的見方として,

「オミクロン=Xマスプレゼント説」というものが

ありました。コロナ変種のオミクロン株は,あまり

にも大きい突然変異,言い換えると,大きなコピー

ミスの結果であり,不安定で感染力はデルタより

はるかに強いけれど,今のところデータでは症状

は無症状か軽症で,高々風邪の発熱やセキと同じ

程度で酸素吸入も不要で重症化率もごく低いと

いうので,この「善玉ウイルス」が「悪玉デルタ株」

を駆逐し去って,コロナも終焉を迎えるのでは?

と,無責任なアウトアサイダーの私は,淡い期待を

抱いています。(※オミクロン無害説)

何でもかんでも感染したら入院だと,ただの風邪

でも医療はパンクするのでしょうがね。

さて,命の残り時間が少ない私は,何事にもアセリを

感じています。所詮,無駄な抵抗ですが。。。

今日(12/12)は,何故か頭痛,と消化不良か?嘔吐,下痢

の連続で本稿アップも日を超えてしまいました。もう

長くはないなぁ。。(余談終わり※)

※さて,ガロア理論の本題の続きです。

第7章 複素数体Cの部分体

※本章ではすべての体は,複素数体Cの部分体と

します。何故,複素数体の部分体に限定するか?

というと,今の古典的なガロアの代数方程式の

可解性の理論では重要とは思われない?体の

「標数」という概念があるからです。標数は後述

の有限体に対して定義される素数であり,複素数体

のような無限体では,標数はゼロと規定されています

が,標数がゼロでない場合,以下の,体に対する定理が

成立しないこともあります。

※既約多項式の分離性

[定義7-1](導関数の定義)

体F上のn次多項式:

f(x)=ann+an-1n-1...+a0

(0≦j≦nのjについてaj∈F,かつ,an≠0)

の導関数:f’(x)を次のように定義する。

f’(x)=nann-1+(n-1)an-1n-2..+a1

[定理7-1]:f(x),g(x)をF上の多項式とすると,

その和:(fLg)(x),積:(fg)(x)=f(x)g(x)

の導関数は次の性質を有する。

すなわち,

(1){f(x)+g(x)}’=f’(x)+g’(x),

(2){f(x)g(x)}’=f’(x)g(x)+f(x)g’(x)

である。

(証明)この命題の成立は,明らかで証明は簡単なので,

省略します。(終わり)

[定理7-2]:f(x)が体F上の1次以上の多項式である

場合,代数数方程式:f(x)=0が重根を持つための必要

十分条件はf(x)とf’(x)の最大公約数(最大公約式)

が1次以上の多項式になることである。

(証明)体Fに対して,f(x)∈F[x]とする。

f(x)=0が根(解)を持つとき,体K=F(α)の上では,

f(x)=(x-α)kg(x)(k≧1,g(α)≠0)と書けます。

これを,K[x]の多項式(係数にαを含む多項式)と

して,その導関数をとると,

f’(x)=k(x-α)k-1g(x)+(x-α)kg’(x)

となります。

故に,αがf(x)=0の重根で,k≧2であるためには,

f’(x)が(x-α)の1次以上の因数を持つことが必要

十分条件です。つまり,f(x)とf’(x)がK=F(α)

において.1次以上の公約数として(x-α)を持つこと

が,f(x)=0が重根αを持つために必要,かつ,十分な

条件です。(証明終わり)

[系]:f(x)∈F(x)がFで既約な多項式であるときは,

f(x)=0は重根を持たない。

(証明)f(x)が体Fの上で既約多項式であるのに重根:

αを持つと仮定します。[定理7-1]によれば,f(x)=0

が重根αを持てばf(x)とf’(x)がある共通根αを持ち,

f(x)は既約なので,体Fでは因数を持やないが,体F(α)

では1次因子(x-α)を持ち,これは.f’(x)と共通の

因子となります。

ここでdegf(x)=nとするとdegf’(x)=(n-1)<n

ですから,F内でf(x)をf‘(x)で割って商をq(x),余り

をr(x)とすると,f(x)=f’(x)q(x)+r(x);

ただし,degr(x)≦(n-2),と表わすことができます。

このとき,もしもr(x)≡0ならf(x)=f’(x)q(x)

となって,「(x)はF上で可約となり,Fで既約という仮定

に反します。故に,剰余;r(x)は(n-2)次以下の恒等的には

ゼロでない多項式ですがf(α)=f’(α)=0なのでr(α)=0

であり,r(x)も,F(α)において1次因子(x-α)を持ちます。

さらに,f’(x)をr(x)で除してf’(x)=r(x)q1(x)

+r1(x)(degr1(x)≦(n-3))と,剰余:r1(x)を求め,次に,

r(x)=r1(x)q2(x)+r2(x)..と除法の操作を繰り返す

「ユークリッドの互除法」でr(x),r1(x),r2(x)…と剰余

の次数を1ずつ下げていく列をつくると,結局最後はに剰余が

がゼロとなる場合もありこのときはf(x)のFでの既約性に

反します。一方,もしも剰余がゼロにならない場合,最後には

剰余はxの1次式となり,それがf(x),f’(x)の最大公約数

であり,(x-α)の定数倍に一致するはずですが,剰余の列:

r(x),r1(x),r2(x),..は,全てF[x]の元なので,最後

の(x-α)の定数倍もFの多項式となり,やはり,f(x)が

F上で既約多項式であるという仮定に矛盾します。

したがって,f(x)がF上で既約多項式ならf(x)=0

は重根を持たない,ことが示されました。(証明終わり)

※ガロア拡大体の条件

[定理7-2]:体Eを体Fのガロア拡大体とする。α∈E

のF上の既約多項式は,Eにおいて1次因数の積に分解

される。

(証明)αにガロア群Gの元(自己同型)を施して得られる

像のうち,異なるものの全体を,α12,..,αr,(α1=α)

とし,p(x)=(x-α1)(x-α2)・・(x-αr)とします。

このとき,∀σ∈Gに対し,σ(α1),σ(α2),//σ(αr)は

全て相異なります。r=|G|です。

何故なら,σ(αi)=σ(αj)であれば,両辺にσ-1を施すと,

αi=αjを得るからです。

しかも,これらはGの元によるαの像ですから,最大r個

から成るα1,…αrの1つの順列(置換)を与えます。

一方,p(x)はp(α)=0を満たすFの多項式なので,その

係数は,Gの不変体Fの元であり,σを施しても不変です。

そして,p(α)=0ですからp(x)=0はαを根に持ちます。

ここで,f(x)をf(α)=0を満たす任意のF内の多項式と

すると,∀σ∈Gに対し,σ{f(α)}=f{σ(α)}=0です。

つまり。σ(α)もf(x)=0の根となります。

各々のσ∈Gに対してσ(α)は,相異なるp(x)=0のr個

の根:α12,..,αr,のどれかに一致するため,f(x)はp(x)

の根を全て含むことになります。

それ故,f(x)はp(x)を因数として持ち,f(x)∈(p(x))

です。つまり,J={f(x)∈F[x];f(α)=0}}とするとき,

Jは,p(x)を最大公約数とするイデアルで,J=(@(x))です。

何故ならf(x)が可約でf(z)=p1(x)p2(x)とFの多項式

の積に因数分解できるとき,αがf,(x)=0のの根でf(α)=0

となるのは,p1(α)=0でp1(x)∈(p(x))であるか,p2(α)=0

でp2(x)∈(p(x))のいずれか,または両方であることを

意味し,p(x)は既約なので最大公約因子です。

つまり,f(x)∈(p(x))です。

p(x)はF上既約多項式なので重根を持たず,単根として

α12,..αrを持ち,しかも,これら以外には根を持ちません。

したがって,p(x)=an(x-α1)(x-α2)・・(x-αr),

(an∈F,an≠0)と書けます。(証明終わり)

[定義7-2](分解体):体F上の多項式f(x)が,拡大体K上

の1次因子の積に分解されるとする。

すなわち,f(x)=an(x-α1)(x-α2)・・(x-αN)

とする。このとき,Fの拡大体:F(α12,..,αn)をf(x)

の「分解体」という。,

[定理7-3];EがFのガロア拡大体ならば,EはF内のある

多項式の分解体となる。逆に,体F上の多項式のF上の

分解体はFのガロア拡大体である。

(証明)EをFのガロア拡大体とし,Gをガロア群とします。

,そして,(E/F)=|G|=nとし,Fのベクトル空間として

のEの生成元(基底)をω12,..,ωnとします。

前定理により,ωのF上の既約多項式をそれぞれ,pj(x)

とすると,pj(x)はEにおいて1次因子の積に分解されます。

それ故,任意の多項式f(x)∈F[x]の因数分解を

f(x)=ap1(x)p2(x)・・pn(x)(a≠0,pj(x)は

規約モニック)とおくと,f(x)はE上で1次因子の積に

分解されます。

(※このとき,f(x)は「分離的」である,といいます。),

※ここで,少しくどいとも思える説明を加えます。

例えば,σi1)=σj2)なら,ω2=σj-1σi1);

ij∈G)ですから,σ=σj-1σi∈Gのような,

あるGの元σが存在してω2=σk1)となります。

1(x)=0の根ω1と,p2(x)=0の根ω2がGの自己同型

写像:σkで互いに写像される関係なので,既約多項式モニック

として,p1(x)とp2(x)は同じものです。

そこで,こうしたダブルカウントのp2(x)を因数から除く

必要があります。

実際には,集合S={σij):i,j=1,2,..,n},;

ただし,σi∈G(1≦i≦n)の元のうち,相異なるもの

の全体を{α12,..,αn}とすると,∀σ∈Gに対して,

σk1),σk2),..σkn)もまた,Sの元であり,

しかも,全て相異なるので,Eの元の集合として

12,..,αn}={σk1),σ2),..,σkn)}です;

任意のf(x)でf(x)=a(x-α1)(x-α2)・(x-αn)

=a{x-σl1)}{x-σk2)}・・{x-σkn)}なる

等式が∀σk∈Gに対して成立することになります。

そして,αi∈S(1≦i≦n)はある(k,j)で,αi=σj)

であることを意味しますから,ω12,..,ωnは全てf(x)=0

の根に含まれます。つまり,{ω12,..,ωn}⊂{α12,.,αn}

となります。(蛇足的な説明終わり)※

f(x)の(最小)分解体はF(α12,..,αn)ですが,結局,

E=F(ω12,..,ωn)⊂F(α12,..,αn)⊂Eです。

したがって,Fのガロア拡大体Eは,あるf(x)の分解体

つまり,Fにf(x)=0の根を全て添加した体となります。

逆に,Eがf(x)∈F[x]の分解体であるとします。

そして,Fの元を不変にするEの自己同型写像のつくる群

をGとします。

ここで,Fから分解体E=F(α12,..αn)までの間の

中間体の列を想定します。F=E0⊂E1⊂..⊂En=E,

i=F(α12,..αi)=Ei-1i)(1≦i≦n)でます。

ところが,f(αi)=0でありf(x)は,体Ei-1の多項式

ですから,αiはEi-1で代数的です。故に,(Ei/Ei-1)は有限

です。そこで,|G|=(E/F)=Πi=1n(Ei/Ei-1)より,群Gは

有限群です。

次に,Gの不変体がFであることを示します

多項式f(x)∈F[x]のf(x)=0の根が全てFに属する

なら,E=Fであり,Gの任意の元はFの任意の元を不変に

します。そのようなαの全体はFから出ることはないので

E=Fが,Gの不変体であることは明らかです。

このときは,(E/F)=1であり,Gの元は単位元(恒等写像)

のみです。次に,f(x)=0の根のうち,n個(n≧1)が,体F

に含まれていないとします。,

さらに帰納法の仮定としてFに含まれない根の個数がnより

小さいときには,定理が成立する,つまり,FがGの不変体である

とします。

ここで,αをFに含まれないf(x)=0の根としtてf(x)

を体F(α)の多項式と見たときも,Eはf(x)の分解体です。

このとき,f(x)=0のの根のうち,F(α)に含まれないもの

の個数はnより小さいので,帰納法の仮定により,Eの自己同型群

はF(α)を不変にします。このF(α)を不変にするEの自己同型

写像の群をUとすると,UはF(α)を不変体とし,それ故,もちろん

Fを不変にしますから,U⊂Gです。

θを群Gの不変体の元とします。

θは,Uの全ての元で不変ですから,θ∈F(α)です。

αのF上の既約多項式p(x)の次数をsとすると,θ

は.θ=c0+c1α+c2α2+..+ca-1αs-1,(ただし,

j∈F,0≦j≦(s-1))と表わされます。

p(x)=0は重根を持たないのでp(x)の根をα1,.αs

とすると,αをαjに写すF(α)からF(α)への同型写像:

σが存在します。同型写像の延長を繰り返して,σをEから

Eの上への同型写像,つまりGの元:τへと延長できます。

このτ∈Gをθに作用させると,τ(θ)=c0+c1αi

+c2αi2+..+cs-1αis-1.(i=1,2,.s)となります。

故に方程式cs-1s-1+cs-2s-2+..+c1x+(c0-θ)

=0は,s個の相異なる根:α12,..,αを持ちますが,

これは,根の個数sが方程式の次数(s-1)より多いので

方程式ではなく恒等式であることを意味するため,全て

の係数はゼロです。

特に,c0=θですから,τ(θ)=θ∈Fです。θはG

の不変体の任意の元でしたから,FがGの不変体です。

以上から,GはFを不変体とするガロア群で,Eは

ガロア拡大体,であることが示されました。(証明終わり)

[定理7-4]:体Fの2次の拡大体Eはガロア拡大体

である。

(証明)(E/F)=2とすると,Fに含まれないω∈Eが存在

します。このとき,1,ω,ω2は1次従属です。

故にa0+a1ω+a2ω2=0という自明でない関係式

が成立し,ωはf(x)=a22+a1x+a0∈F[x]の根

です。もしも,a2=0ならa0+a1ω=0となり

0=a1=0で自明な式となるため,a2≠0です。

f(x)=0の他の根は,{-(a1/a2-)-ω}∈Eですから

Eはf(x)の分解体です。そしておmrががFの元

でないので,{-(a1/a2-)-ω}もFの元ではないため

f(x)はF上既約な多項式ですからEは分離的

分解体です。よってE/Fはガロア拡大です。。

(証明終わり)

[定義7-3](単純(単)拡大の定義)

体Fの拡大体KがFにαを添加した体で,K=F(α)

と表わされるようなαが存在するとき,この拡大を単純

(単)拡大といい,体Kを単純(単)拡大体という。

※複素数体C内では「ガウスによる代数学の基本定理」

を仮定すると,体F上の∀f(x)∈F[x]は複素数体C

の中で1次因数の積に分解します。その根を全てFに

添加した体Eをつくると,Eはf(x)の分解体です。

つまり,複素数体の部分体F上の多項式は複素数体の

中に必ず,分解体を持ちます。

[定理7-5](原始元定理)

体Fの有限次拡大体Kには,K=F(γ)のようなγが

存在する。つまり有限次拡大体KはFの単純拡大体である。)

(証明)KがF上有限次なら,KのF上の基底をα12,.,.αn

とすると,K=F(α12,.,.αn)です。

帰納法を用いて証明できますが,結局,n=2も場合

に定理の成立を示せば十分であるとわかります。

何故なら,F=E0⊂E1⊂E2⊂...⊂En=Kなる拡大

する体の列を.Ei=Ei-1i),,.,En=F(α12,.,.αn-1)(αn)

によって,つくると.もしもE2=F(α12)=F(γ)とできる

ことが示せたなら,E3=F(α123)=F(γ,α3)=F(γ2)

も成立することがわかる,からです。

そこで,n=2の場合として,K=F(α,β)とします。

α,βを根とするF上の既約多項式をそれぞれ,g(x),

h(x)とします。g(x)≠h(x)の場合,f(x)=g(x)h(x)

の分解体をEとするとg(x),h(x)がFで既約なのでf(x)

は分離的です。(※f(x)はE上単根の1次因子の積に分解

されます。)

ところで,前の[定理7-2]により,分解体EはFのガロア拡大体

です。そしてKはE/Fの中間体です。ガロア拡大体の中間体

はEのガロア群Gの部分群と1対1に対応るので中間体の個数

は有限です。つまり,(E/F)=|G|が有限なので,中間体の個数も

有限です。

そこで,∀c∈Fに対してγ=α+cβとおいて,体K

=F(γc)で定義すると.これらはE/Fの中間体ですが,C

の部分体であるFは無限体なので,c∈Fの取り方は無数に

あります。しかし,中間体Kcの個数は有限ですからKd=K

を満たすFの元dで,d≠cであるものが存在します。

するとK=F(γ)=K=F(γc)でγ=α+dβです

から,γcd∈Kcであり,故に(c-d)β=(γc-γ)∈K

(g-d)≠0ですから,β∈Kcです。

そこで,α=(γc―cβ)∈Kcも成立します。

それ故,K=F(α,β)⊂Kcですが,γ=(α+cβ)がF(α,β)

=Kの元であることは,明らですからKc=F(γc)⊂Kであり

結局,Kc=Kです。

したがって,γ=γとおけばK=F(γ)と表わせることになり

,KがFのの単純拡大体であることが示されました。

(証明終わり)

[系]:複素数体の中ではFの有限次拡大体は単純拡大体

である。(これは自明です。)

[定理7-5]:EがFのガロアア拡大体であることは,Fの複素数体

内へのF上の同型写像が,全てEの自己同型写像であることに

同値である。

(証明まず,F上の同型写像とは,Fの元を不変に保つ同型写像

のことです。そして,EにおけるF上の同型写像の数をmと

すると,,m≦(E/F)=n=|G|です。(※EはFの有限次(n次)

拡大体とします。)

故に,全ての同型写像はEの自己同型写像でGに含まれます

何故なら,GはFを不変体とするEの自己同型写像の全体

であり,そのn個の元はm個の中に含まれているので,,自己同型

写像でないF上の同型写像があるとm>nとなって矛盾する

からです。

逆に,F上の同型写像が全てEの自己同型写像とします。

EはFの有限次拡大体ですからE=F(γ)と書けます。

γのF上の既約多項式をp(x)とします。このとき.pは2次

以上でp(x)=0の2根をγ,δとすると,γをδに対応させる

F(γ)からF(δ)への同型写像が存在します。

これが,Eの自己同型写像ですから,δ∈E=F(γ)です。

つまり,F上の既約多項式p(x)の根が全てEに含まれる

のでEはp(x)の分解体であり,よってE/Fはガロア拡大

です。(証明終わり

[例7-1]:次のα,βに対してQ(α,β)=Q(γ)となるγを

求めます。Qは有理数体で,α=√5i,β=√2,です。

(解)γ=√5i-√2とすると,(γ-√2)2=―5,

γ2-2√2γ+7=0,故に,β=√2={(γ2+7)/(2γ)}∈Q(γ)

よって,α=√5i=(γ-β)∈Q(γ),です。()終わり

[例7-2]:(x4-2)は,有理数体Q上の既約多項式です。

その分躯体は,E=Q(21/4,2,-21/4,21/4i,-21/4i)

ですが,これは明らかにQ(21/4,i)に等しいです。

そして{Q(21/4)/Q}=4,{Q(21/4,i)/Q(21/4)}=2

より,(EQ)={Q(21/4,i)/Q}=8です。

EはQ上8次のガロア拡大体です。

E内のQを不変体とする自己同型写像は

21/4を±21/4,±21/4iに,写す4通り,,iを

±iに写す2通りの,σ:σ(21/4)=i21/4,σ(i)=i

と,τ:τ(21/4)=-21/4,τ(i)=-iの2種から

G={1,σ,σ23,τ,στ,σ2τ,σ3τ}です。

※途中ですが,今回はここで終わります。(つづく)

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2021年12月 2日 (木)

ガロア理論の復習(6) )

※2021年11月23日(火)開始→12月2日(木)

※(余談)11月29日は,1869年だったかな?

シャイアン族大虐殺の悲劇があった日です。1970年

当時20歳の学生だった私,ベ平連など戦争反対のデモ

に参加していた頃,に,珍しく封切りで「ソルジャー・

ブルー」という米映画を見ました。

酋長が白旗を掲げていたのにも関わらず,ネイティブ

が女子供を中心に数百人も青い服の騎兵隊に蹂躙され,

惨殺されるのを見て,実話に基づいた映画とはいえ義憤

を感じ,若い心が慄えた記憶があります。

キャンディス・バーゲンが出てlましたね。野性的な

女優でした。当時,可愛さだけなら,D・ホフマン主演の

「卒業」に出ていたキャサリン・ロスの方が私的には好み

でしたが,まあそんなこと考える映画じゃなかったですね。

私は最近,よくセキや低血糖の発作が起きて,転倒など

がキッカケで容態急変,ということも有り得る事態です。

全くの無神論者なので,あと何日で石に還らずにこの世に

いられるるんだろうか?私の残り時間は?と自問する毎日

です。今朝(12/2)も,急に気分が悪くなり朝飯は全部嘔吐

してしまいました。今は小康です。(余談終わり※)

※さて,本題の続きです。

※「第5章 体の拡大」の続きからです。

[定理5-9](基本定理)

体Fの体F~の上への写像σが環準同型である

とき,すなわち,x,y∈Fに対して,σ(x+y)

=σ(x)+σ(y),,かつ,σ(xy)=σ(x)σ(y)

のとき,σはFからF~の上への同型写像である。

,この同型写像を,σ:F→F~と表わす。

このとき,σは,(1)σ(0)=0.,σ(1)=1,および,

(2)σ(-x)=-σ(x),かつ,σ(x-1)={σ(x)}-1 

という性質を持つ。

(証明)まず,kerσ={x∈F,σ(x)=0}={0}なので,

F,F~を環と見たとき,[環の準同型定理]によって,

{F~/kerσ)}~F(同型)であり,しかも(F~/{0})=F~

ですから,F~~F(同型)です。。つまり,σは,Fから

F~の上への同型写像となっています。

(※何故なら,和(加法)も積(乗法)も保存され,後述

するように,σ(1)=1なので,もしもx=n∈Zなら

σ(x)=σ(n)=nσ(1)=n=xです。また,xが

有理数で.x=(p/q)∈Q(q≠0)の場合なら,1=σ(1)

=q{σ(1/q)},かつ,σ(x)=p{σ(1/q)}ですから,

σ(x)=(p/q)=xです。

xを有理数体Qから,実数体Rの元へと拡張しても同じ

で.σ(x)=xと考えられます。

よって,σ(x)=0なら,x=0が成立するはずです。

(※↑性質(1)の逆命題)

そして,このことは,kerσ=|0}を意味し,写像σが1対1

の写像(単射)であることを意味します。※)

次に,σの性質(1),(2)を証明します。

まず,(1)は,σ(x)=σ(x+0)=σ(x)+σ(0)

⇒σ(0)=0,,および,σ(x)=σ(x)σ(1)(x≠0)より

σ(1)=1,です。次に,(2)は,0=σ(0)=σ{x+(-x)}

=σ(x)+σ(-x) ⇒σ(-x)=-σ(x)であり,

また,1=σ(1)=σ(x-1x)=σ(x-1)σ(x)

⇒σ(x-1)={σ(x)}-1 です。(証明終わり)

[定義5-9]F上の整式(多項式):f(x)∈F[x]が,

f(x)=a0n+a1n-1..+an  ;ただし,0≦j≦n

のjについてaj∈F,かつ,a0≠0なる形で与えられる

とき,これの係数に左からσを施し,F~上の整式として,:

σ(a0)xn+σ(a1)xn-1..+σ(an)をつくる。

この整式を(σf)(x),または,単に(σf)と表わす。

[定理5-10]:∀f(x),g(x)∈F[x]に対して,

次の性質:(1) σ(f+g)=σf+σg,および,

(2) σ(fg)=(σf)(σg) が成立する。

(証明)これは,σが体Fの上で同型写像なので明らかです。

すなわち,f(x)=Σj=0njn-j,g(x)=Σk=0mkm-k

なる具体的形であれば,和の写像の場合,{σ(f+g)}(x)

=Σk{σ(a+b)xn-k}=(σf+σg)(x) です。

積の場合も,詳細は略しますが,2重有限数列の積の

公式から,σ(fg)=ΣjΣk{σ(aj)}xn+m-j-k 

なって,右辺={σf(x){σg(x)}です。

(証明終わり)

[定理5-11]:p(x)がF上で既約のとき(σp)(x)も,

F~上で既約である。

(証明)もしも(σp)がF~上可約なら,σp=(σq)(σr)

の因数分解が可能です。σは全単射なので,対応するF[x]

の元q,rが存在するため,右辺=σ(qr)であり,これは

p=qrと書けることを意味しpも可約になって,pが既約

という仮定に反します。(証明終わり)

[定義5-10](同型写像の延長)

σ:F→F~とし,体Eを体Fの拡大体とする。

τがEからF~の拡大体E~の上への同型写像であり,

Eの部分体Fの上では,τ=σであるとき,τはσのE

への「延長」である,という。

[定理5-12](同型写像の延長定理1)

σ:F→F~とし,体Eを体Fの拡大体とする。

τ:E→E~が,σのEへの延長であるとき,(E~/F~)

=(E/F)である

(証明)ω1,..,ωnFが,F上独立なEの基底をなすとき,

(τω1),,.,(τωn)は,F~上独立なE~の基底をなします。

何故なら,τがEからE~への同型写像なので,E~の元:

β=a1(τω1)+..+an(τωn)には,β=ταとなるE

の元αが,α=τ-1β=a1ω1+..+anωn で与えられる

ことに同値であるからです。(※β=0ならα=0で,

1次独立性の条件を与える自明な関係式も同値です。)

故に,n=(E/F)=(E~/F~)です。(証明終わり)

[定理5-13](同型写像の延長定理2)

同型:σをσ:F→F~とし,p(x)をFの既約多項式

とする。αはp(x)=0の根であり,βは(σp)(x)=0

の根である,とする。そして,E=F(α),E~=F~(β)

とすると,写像τ: Σi(aiαi)→Σi{σ(aii}は,Eから

E~への同型写像であり,τはσのEへの延長である。

逆に,σのEへの延長は,上記のτのようなものに限る。

(証明)degp(x)=nとする。

Fの拡大体E=F(α)は,1,α,..αn-1で張られる線型

空間であるため,その元は次数(n-1)のF[x]の多項式

f(x)によって,f(α)という形に表わされます。

そして,τの定義によれば,τ{f(α)}=(σf)(β)で

あり,σはF~の上への写像なので,∀γ∈F~(β)対して,

γ=Σi(a~iβi)=τ[Σi(aiαi)]=τ{f(α)};ただし,

i=σ-1(a~1) or a~i=σ(ai)と書けます。

よって,τはE~=F~(β)の上への写像です。

τがE=F(α)からE~=F~(β)への環準同型写像

であることも,容易に示せます。

結局,τはEからE~の上への同型写像です。

 しかも,γ=Σi=0n-1(aiβi)のa~1=..=a~n-1=0

で,γ=a0(定数)であり,γ∈F~の場合は.γ=τ(a0)

=σ(a0) (a0∈F)であり,F上では,τ=σとなって

いるので.τはσのEへの延長です。

この 逆が成立するというτの一意性も,Eの基底

の写像がE~の基底に,一意に写されるので自明です。

(証明終わり)

[系]:p(x)がFの既約多項式で,α,βがp(x)=0

の根のとき,αをβに写像し,Fの元は不変に保つ写像,:

つまり,∀a∈Fに対してはτ(a)=aであるような

F(α)から,F(β)への同型写像:τが存在する。

(証明)σとして恒等写像を選べば.a∈Fに対して,

σ(a)=aであり,τとして,[Σiiαi]を[Σiiβi]

に写す延長を選べば.これが求める同型写像です。

(証明終わり)

[定義5-12](不変体,or固定体)

体EからEのある拡大体Ωの中への相異なるn個

の同型写像:σ12..,σnが与えられたとき,

F={a∈E:σ1(a)=σ2(a)=...=σn(a)}は,

Eの1つの部分体である。

これを,σσ12..,σnの「不変体(固定体)」という。

(※このとき, 0∈F,1∈F,および,a∈Fなら,

(-a)∈F,a-1∈Fが成立することは自明です。※)

[補助定理]:不変体Fの元:a1,a2..,anがあり,∀x∈E

に対して,a1σ1(x)+a2σ2(x)+..+anσn(x)=0..(1)

が成立するのは,a1,=a2.=.,=an=0のときである

。つまり,n個のσ12..,σnは,F上1次独立である。

(証明)(ⅰ)n=1のとき(1)は,a1σ1(x)=0ですが,

x≠0のとき,σ(x)≠0なのでa1=0を得ます。

(ⅱ)n>1のときk≦(n-1)に対しては

1σ1(x)+a2σ2(x)+..+aσ(x)=0.なら,

1=a2=..=ak=0と,補助定理が成立すると仮定

します。 そして,k=nに対して;

1σ1(x)+a2σ2(x)+..+anσn(x)=0と,

  • 式が成立するとします。

仮定から,0≦i≦(n-1)の全てのiについてσi≠σn

であり,σi(α)≠σn(α)となるα∈Eが存在します、

このαについて(1)式のxに(αx)を代入すれば.

(1)は,次のようになります。すなわち,

1σ1(α)σ1(x)+...+anσn(x)σn(x)=0.(2)

です。他方,(1)の両辺に左からσn(α)を掛けると,

1σn(α)σ1(x)+..+anσn(α)σn(x)=0..(3)

です。(2)式から(3)式を辺々引き算すれば,

1σ{σ1(α)-σn(α)}σ1(x)+..

+an-1n-1(α)-σn(α)}σn-1(x)=0.を得ます。

これは,k=(n-1)<nの自明な1次関係式なので,

帰納法の仮定から,ai{σi(α)-σn(α)}=0ですが

σi(α)≠σn(α)なので.i=1,...(n-1)について.

i=0です。それ故,anσn(x)=0となるので,a=0

も得られます。

したがって,帰納法により[補助定理]の成立が証明

されました。(証明終わり)

[定理5-14]:(E/F)≧nである。

(証明)(E/F)=mで,m<nと仮定します。

体F上のベクトル空間としてのEのF上の生成系

を,ω12,..,ωmとします。次の,連立方程式

 σ11)x1+σ21)x2+..+σn1)xn=0,

・・・・・・・・・

 σ11m)x1+σ2m)x2+..+σnm)xn=0,

を考えると,これは,n個の未知数xjをnよりも少ない

m個の方程式系で求める連立1次方程式なので,自明で

ない解(少なくとも1つはゼロでない解)として,n個

の解の組:(x1,x2,..,xn)を持ちます。

一方,∀α∈Eは,α=a1ω1+a2ω2+..+anωn,

(a1,a2,..an∈F)で表わされます。

上の連立方程式の第1式に.σ1(a1)を掛け,第2式に

σ2(a2)を掛け,以下,第m式まで同様な操作を続けると,

Fは不変体ですから,σ1(aj)=…=σn(aj)なので,

σ1(a1ω1)x1+σ2(a1ω1)x2+..+σn(a1ω1)xn=0

・・・・・・・・,・・・

σ1(amωm)x1+σ2(amωm)x2+..+σn(amω)xn=0

を得ます:これら全ての式を加えれば,∀α∈Eに対し,

非自明な組:(x1,x2,::xn)に対する等式として,

σ1(α)x1+σ2(α)x2+..+σn(α)xn=0を得ます。

一方,[補助定理]によれば,これは全てがゼロの自明な

n個の組:x1=x2=..=xn=0でのみ成立する等式です。

したがって,矛盾が生じます。よって,m≧nです。

(証明終わり)

 

第6章ガロア拡大体,ガロア群

[定義6-1](自己同型写像)

体EからE自身への同型写像を自己同型写像

という。Eの自己同型写像全体は明らかに群を

つくる。Eの自己同型(写像)の集合Gが有限群

をつくるとき,当然,Gは恒等写像を含む。

そして,F={a∈E;σ(a)=a for∀σ∈G}

を.群Gの不変体(固定体)という。

また,Eの元αに対して,G=[σ12,..σn}なら,

S(α)=ΣGσ(a)(ΣGはG全体をわたる総和)

=σ1(α)+σ2(α)+..+σn(α)で与えられる

Eの元を,αのスプ-ル(spur;対角和)という。

[定理6-1]:S(α)は不変体Fの元である。

そして,EにはS(α)≠0であるような元αが存在

する。

(証明)β=S(α)とし,τをGの任意の元とすると

τ(β)=τ{Σσ(α)}=Σσ(α)=βより,β∈Fです。

何故なら,∀τ∈Gに対し,σj≠σならτσ≠τσk

より,G={σ12,..σn}={τσ1,τσ2,..τσn}

であることが明らかだからです。

そして,∀α∈Eに対して,S(α)=0なら,αの恒等式

として,1次関係式σ1(α)+σ2(α)+..+σn(α)=0を

得ますが,これはαをxに代えると,先の[補助定理]に

矛盾します。故に,S(α)≠0なるα∈Eが存在します。

(証明終わり)

[定義6-2](ガロア(Galois)拡大体とガロア群)

 体Eの自己同型写像のつくる群をGとし,Gの不変体

をFとするとき,EはFの「ガロア拡大体」であるという。

ぞして,GをEのF上の「ガロア群」という。

[定理6-2];体EがFのガロア拡大体のとき,その拡大次数

はガロア群Gの位数に等しい。

つまり,(E/F)=|G|=(G:1)である。

(証明)(E/F)=m,|G|=nとすれば.[定理5-14]

により,m≧nですから,m≦nを示せば十分です。

それにはEの(n+1)個の元α1,α2,..αnn+1

1次従属であることを示せばいいです。

そこで.次の連立方程式を考えます。

1σ1-11)+x2σ1-12)+..+xn+1σ1-1n+1)=0

1σ2-11)+x2σ2-12)+..+xn+1σ121n+1)=0

・・・・・・・・・・

1σn-11)+x2σn-12)+..+xn+1σ1n-1n+1)=0

簡略式では,Σk=0n+1kσj-1)=0(1≦j≦n)で

表わされます。そして,これらは,(n+1)個の未知数が,

それより少ないn個の方程式で与えられる系なのでEの

中に,非自明な解:(x1,x2,..xn+1)を持ちます。

jの少なくとも1つは非ゼロなので,一般性を失うこ

となくx1≠0と仮定しいぇおきます。

このとき,∀α∈Eに対して(αx1,αx2,..αxn+1)

もまた,この同次連立方程式の解です。

そこで,αx1がS(αx1)≠0を満たすように,αを選び

その後に,(αx1αx2,..αxn+1)を,改めて(x1,x2,..xn+1)

と定義し直します。するとまず,(x1)0です。

そして,方程式系:Σk=0n+1[xkσj-1k:)]=0(1≦j≦n)

に,左からそれぞれσjを施せば,Σk=0n+1j(xk]=0

(1≦j≦n)を得ます。さらに,これらn個を全て加えると,

Σk=0n+[S(xk]=0となります。

ところが,S(xk)∈Fであり,S(x1)≠0なので,結局,

これは,α1,α2,..αnn+1が1次従属であることを意味

します。それ故,m≦nであるべきすから(E/F)=n

=|G|です。(証明終わり)

[定義6-3]:σが体Fを元ごとに不変にするとき,σはFを

不変にする,とか,σはE/Fの同型写像である,という。

[定理6-2の系]:EがFのガロア拡大体で.GがFを不変体

とするガロア群のとき,Gは体Fを不変にするEの同型写像

の全体集合である。

(証明)Fを不変にするEの自己同型写像σがGに属さない

ならば,Fは,(n+1)個の自己同型写像の不変体となって,

[定理6-2]に矛盾します。故に,このσも.Gに属します。

(証明終わり)

[定理6-3]:G1,G2が体Eの自己同型写像の群で G1≠G2

のとき,これらの不変体は異なる。

(証明) G1,G2が同じ不変体Fを持つと仮定すると.

n=(E/F)=|G1|=|G2|ですから,G1≠G2の場合は,

(G1∪G2)がnよりも多い元を持つことになります。

しかし,(G1∪G2)の不変体も明らかにFですから,

(E/F)=|G1∪G2|>nとなって,矛盾します。(終わり)

[定理6-4](基本定理)

 EをFのガロア拡大体とし,その自己同型群をG,

つまり,自己同型写像全体のつくる群をGとする。

E/Fの中間体:Bに対してBを不変にするGの元

の全体のつくる部分群をUとすると,Uの不変体は

Bである。そしてBにUを対応させる対応は,E/F

の中間体と,Gの部分群との間の1対1対応である。

(証明)中間体Bを不変にするGの部分群をUとし、

その位数を,|U|=rとします。

そして,Uの不変体をB~とします。

するとBはUで不変なので,B⊂B~であり(E/B~)=r

ですから.(E/B)≧rです。

それ故.B=B~を示すには,(E/B)=rを示せば

よいことがわかります。

,さて,σ∈GをBに施すと,BはEの中に同型に写像

されます。すなわち,B~σ(B)(同型)です。

さて,σ12∈G,,σ1≠σ2なら,∀β∈Bに対して

σ1(β)=σ2(β)であるための条件は,σ1-1σ2(β)=β,

つまり,(σ1-1σ2)∈U,あるいは,σ2∈(σ1U)です。

同一の剰余類(σU)に属する自己同型写像が,体Bに

同じ同型写像を誘導するわけです。

つまり,σ2∈(σ1U)が,∀β∈Bでσ1(β)=σ2(β)

すなわち,B上で同じ同型写像である,ための条件です。

{G{=nのとき,n=rsなら,異なる剰余類(σU)

の個数はsです。つまりs=(G;U)=||G|/|U|です。

異なるs個の剰余類(σU)の代表元をτ12..τs

すると,これらは,体Bの上の自己同型写像と見なすこと

ができて,その不変体はFです。

何故なら,(τj)j=1sの不変体をF~とすると,τj∈G

より.∀a∈Fに対しτj(a)=aなので,まず.F⊂F~

です。他方.a∈F~で,τj(a)=aならτjは,aを

不変に保つGの元でもあるので,aはGの不変体に属し

a∈Fです。それ故,F~⊂F~も成立するため,F~=F

です。したがって,(B/F)≧sです。

この不等式を先に得た(E/B)≧rと合わせると

(E/F)=(E/B)(B/F)≧(rs)を得ます。

しかし,実際には(E/F)=n=(rs)なので,結局.

(E/B)=r,かつ,(B/F)=sであると結論されます。

以上から,E/Fの中間体Bに対して.Bを不変にする

Gの元全体のつくる部分群Uが一意に対応します。

また,Gの部分群Uに対して,Bを不変体とする中間体

Bが存在して対応する,という逆命題も成立します・

UはBを不変にするGの元の全体であり,Uに対して

Bは一意的に定まります。 (証明終わり)

[基本定理の系]::中間体BからEへのF上の同型写像

は,群Gの部分群Uによる剰余類から誘導されるものだけ

である。また,BはFのガロア拡大体である。

(証明)Gの元から誘導される(B/F)個以外に,BからE

への同型写像が1つでもあれば{(B/F)+1}個の同型写像

の不変体がBであることになるため.BのF上の次元と同型

写像の総数が一致するという定理に矛盾します。故に,

そうした同型写像は存在しません。そして,BはUの不変体

ですから,EはBのガロア拡大体です。(証明終わり)

(※[基本定理]における対応は,Gの部分群に,その不変体

を対応させるものです。Gには,体F,Uには,体B,単位群

{e}には,体Eが対応します。)

※EはBのガロア拡大体ですが,BはFのガロア拡大体とは

限りません。以下では,UがGの正規部分群で(σUσ-1)=U

であることが,UがFを不変体とするBのガロア群であるため

の必要十分条件であることを示します。

[定理6-5]:体Eは体Fのガロア拡大体あり,Gはガロア群

であるとする。そして,中間体Bに対応するGの部分群を

Uとする。∀σ∈Gに対して(σB)もE/Fの中間体であり,

対応するGの分群は(σUσ-1)である。

さらに,体Bが体Fのガロア拡大体であるための必要十分

条件は,UがGの正規部分となることである。

このとき,そのガロア群は.(G/U)に同型である。

(証明)σ∈GならσはEの自己同型写像ですから,(σB)

もBと同じく,E/Fの中間体です。

何故なら,BはEの部分体なので(σB)⊂Eであり,

(σB)も体であることは明らかです。一方,FはGの

不変体なので,(σF)=FであるからσBが中間体の

場合も同じ不変体です。

そして,(σB)の元はσ(β)((β∈B)と表わされます。

故に,τ∈Gが,全てのσ(β)を不変にするのは,∀β∈B

に対して,τ{σ(β)}=σ(β),つまり(σ-1τσ)(β)=β

となることが必要十分です。これは.(σ-1τσ)がBを不変

にすることを意味します。

それ故,τが(σB)を不変にする条件は,(σ-1τσ)∈U

が成立することであり,これはτ∈(σUσ-1)と値です。

したがって,(σUσ-1)が中間体(σB)に対応するGの

部分群です。

ところが,UがGの正規部分群なら,∀σ∈Gに対して,,

(σUσ-1)=Uです。中間体と部分群は1対1に対応する

ので,∀σ∈Gに対して,対応するGの部分群が同じなら.

中間体も一致するため,(σB)=Bとなり,σはEの上の

自己同型写像であると同時に,Bの上の自己同型写像でも

あることになります。ただし,(σB)の元を不変にする

自己同型写像:τは,(σU)の元ですが,Uが正規部分群

なら,τ∈Uでもあります。UがGの正規部分群である

ときは,UがB内でFを不変体とするガロアa群となり

Bがガロア拡大体となるための必要十分条件です。

そして,Bを不変にするガロア群の元:τは(G/U)

の剰余類(σU)の代表元として,1対1に対応する

ため,ガロア群と商群(G/U)は同型です。

逆に,BがFのガロア拡大体であるとき,UがGの

正規部分群でないなら,(σUσ-1)≠Uであるような

σ∈Gが存在し,σB≠Bです。よって(B/F)個の

ガロア群Uの元以外に(σF)=Fを満たす写像が

存在するわけです。このσはEの自己同型写像です

が,Bの自己同型写像ではありません。

これはガロア拡大体の条件に矛盾します。

したがって,UがGの正規部分群であることがBが

Fのガロア拡大体であるための必要十分条件です。

(証明終わり)

[定理6-6]:E/Fの中間体:B1,B2,にそれぞれ

自己同型部分群U1,U2が対応するとき,B1⊃B2

とU1⊂U2が同値である。

(証明) B1⊃B2のとき,σ∈U1なら,∀β∈B2

対して,β∈B1より,σ(β)=βですからσ∈U2

です。それ故,U1⊂U2です。逆に,B2⊃B1なら

1⊃U2が成立します。

[定理6-7]:体Fのガロア拡大体Eのガロア群を

Gとする。2つの中間体:B1,B2に対し,B1,B2

含む最小の体を(B12)とし,共通部分を(B1∩B2)

とする。B1,B2,にれ対応するガロア群をU1,U2

するとき,(1)(B12)には,(U1∩U2)が対応する。

(2)(B1∩B2)には,U1,U2を含む最小の部分群:W

が対応する。

(証明)(1)σ∈Gとします。

σが(B1B2)を不変にすることは,B1とB2を

共に不変にすることを意味し.これは,σ∈U1,かつ,

σ∈U2,つまり,σ∈(U1∩U2)に対応します。

  • 次に,中間体:(B1∩B2)に対応するGの部分群

をVとします。

すると,(B1∩B2)⊂B1,かつ,(B1∩B2)⊂B2です。

故に,[定理6-2]から,V⊃U1,かつ,V⊃U2です。

ところが,仮定により,WはU1,U2を含む最小の

Gの部分群ですからW⊂Vです。

そこで,Wに対応する中間体をBとすると,W⊂⊃U1,

かつ,W⊃U2より,B⊂B1,かつ,B⊂B2ですから.

B⊂(B1∩B2)です。故にW⊃Vであり,結局,

W=Vです。(証明終わり)

※途中ですが,今回はここで終わります。(つづく)

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