ガロア理論の復習(6) )
※2021年11月23日(火)開始→12月2日(木)
※(余談)11月29日は,1869年だったかな?
シャイアン族大虐殺の悲劇があった日です。1970年
当時20歳の学生だった私,ベ平連など戦争反対のデモ
に参加していた頃,に,珍しく封切りで「ソルジャー・
ブルー」という米映画を見ました。
酋長が白旗を掲げていたのにも関わらず,ネイティブ
が女子供を中心に数百人も青い服の騎兵隊に蹂躙され,
惨殺されるのを見て,実話に基づいた映画とはいえ義憤
を感じ,若い心が慄えた記憶があります。
キャンディス・バーゲンが出てlましたね。野性的な
女優でした。当時,可愛さだけなら,D・ホフマン主演の
「卒業」に出ていたキャサリン・ロスの方が私的には好み
でしたが,まあそんなこと考える映画じゃなかったですね。
私は最近,よくセキや低血糖の発作が起きて,転倒など
がキッカケで容態急変,ということも有り得る事態です。
全くの無神論者なので,あと何日で石に還らずにこの世に
いられるるんだろうか?私の残り時間は?と自問する毎日
です。今朝(12/2)も,急に気分が悪くなり朝飯は全部嘔吐
してしまいました。今は小康です。(余談終わり※)
※さて,本題の続きです。
※「第5章 体の拡大」の続きからです。
[定理5-9](基本定理)
体Fの体F~の上への写像σが環準同型である
とき,すなわち,x,y∈Fに対して,σ(x+y)
=σ(x)+σ(y),,かつ,σ(xy)=σ(x)σ(y)
のとき,σはFからF~の上への同型写像である。
,この同型写像を,σ:F→F~と表わす。
このとき,σは,(1)σ(0)=0.,σ(1)=1,および,
(2)σ(-x)=-σ(x),かつ,σ(x-1)={σ(x)}-1
という性質を持つ。
(証明)まず,kerσ={x∈F,σ(x)=0}={0}なので,
F,F~を環と見たとき,[環の準同型定理]によって,
{F~/kerσ)}~F(同型)であり,しかも(F~/{0})=F~
ですから,F~~F(同型)です。。つまり,σは,Fから
F~の上への同型写像となっています。
(※何故なら,和(加法)も積(乗法)も保存され,後述
するように,σ(1)=1なので,もしもx=n∈Zなら
σ(x)=σ(n)=nσ(1)=n=xです。また,xが
有理数で.x=(p/q)∈Q(q≠0)の場合なら,1=σ(1)
=q{σ(1/q)},かつ,σ(x)=p{σ(1/q)}ですから,
σ(x)=(p/q)=xです。
xを有理数体Qから,実数体Rの元へと拡張しても同じ
で.σ(x)=xと考えられます。
よって,σ(x)=0なら,x=0が成立するはずです。
(※↑性質(1)の逆命題)
そして,このことは,kerσ=|0}を意味し,写像σが1対1
の写像(単射)であることを意味します。※)
次に,σの性質(1),(2)を証明します。
まず,(1)は,σ(x)=σ(x+0)=σ(x)+σ(0)
⇒σ(0)=0,,および,σ(x)=σ(x)σ(1)(x≠0)より
σ(1)=1,です。次に,(2)は,0=σ(0)=σ{x+(-x)}
=σ(x)+σ(-x) ⇒σ(-x)=-σ(x)であり,
また,1=σ(1)=σ(x-1x)=σ(x-1)σ(x)
⇒σ(x-1)={σ(x)}-1 です。(証明終わり)
[定義5-9]F上の整式(多項式):f(x)∈F[x]が,
f(x)=a0xn+a1xn-1+..+an ;ただし,0≦j≦n
のjについてaj∈F,かつ,a0≠0なる形で与えられる
とき,これの係数に左からσを施し,F~上の整式として,:
σ(a0)xn+σ(a1)xn-1+..+σ(an)をつくる。
この整式を(σf)(x),または,単に(σf)と表わす。
[定理5-10]:∀f(x),g(x)∈F[x]に対して,
次の性質:(1) σ(f+g)=σf+σg,および,
(2) σ(fg)=(σf)(σg) が成立する。
(証明)これは,σが体Fの上で同型写像なので明らかです。
すなわち,f(x)=Σj=0najxn-j,g(x)=Σk=0mbkxm-k
なる具体的形であれば,和の写像の場合,{σ(f+g)}(x)
=Σk{σ(ak+bk)xn-k}=(σf+σg)(x) です。
積の場合も,詳細は略しますが,2重有限数列の積の
公式から,σ(fg)=ΣjΣk{σ(ajbk)}xn+m-j-k と
なって,右辺={σf(x){σg(x)}です。
(証明終わり)
[定理5-11]:p(x)がF上で既約のとき(σp)(x)も,
F~上で既約である。
(証明)もしも(σp)がF~上可約なら,σp=(σq)(σr)
の因数分解が可能です。σは全単射なので,対応するF[x]
の元q,rが存在するため,右辺=σ(qr)であり,これは
p=qrと書けることを意味しpも可約になって,pが既約
という仮定に反します。(証明終わり)
[定義5-10](同型写像の延長)
σ:F→F~とし,体Eを体Fの拡大体とする。
τがEからF~の拡大体E~の上への同型写像であり,
Eの部分体Fの上では,τ=σであるとき,τはσのE
への「延長」である,という。
[定理5-12](同型写像の延長定理1)
σ:F→F~とし,体Eを体Fの拡大体とする。
τ:E→E~が,σのEへの延長であるとき,(E~/F~)
=(E/F)である
(証明)ω1,..,ωnFが,F上独立なEの基底をなすとき,
(τω1),,.,(τωn)は,F~上独立なE~の基底をなします。
何故なら,τがEからE~への同型写像なので,E~の元:
β=a1(τω1)+..+an(τωn)には,β=ταとなるE
の元αが,α=τ-1β=a1ω1+..+anωn で与えられる
ことに同値であるからです。(※β=0ならα=0で,
1次独立性の条件を与える自明な関係式も同値です。)
故に,n=(E/F)=(E~/F~)です。(証明終わり)
[定理5-13](同型写像の延長定理2)
同型:σをσ:F→F~とし,p(x)をFの既約多項式
とする。αはp(x)=0の根であり,βは(σp)(x)=0
の根である,とする。そして,E=F(α),E~=F~(β)
とすると,写像τ: Σi(aiαi)→Σi{σ(ai)βi}は,Eから
E~への同型写像であり,τはσのEへの延長である。
逆に,σのEへの延長は,上記のτのようなものに限る。
(証明)degp(x)=nとする。
Fの拡大体E=F(α)は,1,α,..αn-1で張られる線型
空間であるため,その元は次数(n-1)のF[x]の多項式
f(x)によって,f(α)という形に表わされます。
そして,τの定義によれば,τ{f(α)}=(σf)(β)で
あり,σはF~の上への写像なので,∀γ∈F~(β)対して,
γ=Σi(a~iβi)=τ[Σi(aiαi)]=τ{f(α)};ただし,
ai=σ-1(a~1) or a~i=σ(ai)と書けます。
よって,τはE~=F~(β)の上への写像です。
τがE=F(α)からE~=F~(β)への環準同型写像
であることも,容易に示せます。
結局,τはEからE~の上への同型写像です。
しかも,γ=Σi=0n-1(aiβi)のa~1=..=a~n-1=0
で,γ=a0(定数)であり,γ∈F~の場合は.γ=τ(a0)
=σ(a0) (a0∈F)であり,F上では,τ=σとなって
いるので.τはσのEへの延長です。
この 逆が成立するというτの一意性も,Eの基底
の写像がE~の基底に,一意に写されるので自明です。
(証明終わり)
[系]:p(x)がFの既約多項式で,α,βがp(x)=0
の根のとき,αをβに写像し,Fの元は不変に保つ写像,:
つまり,∀a∈Fに対してはτ(a)=aであるような
F(α)から,F(β)への同型写像:τが存在する。
(証明)σとして恒等写像を選べば.a∈Fに対して,
σ(a)=aであり,τとして,[Σiaiαi]を[Σiaiβi]
に写す延長を選べば.これが求める同型写像です。
(証明終わり)
[定義5-12](不変体,or固定体)
体EからEのある拡大体Ωの中への相異なるn個
の同型写像:σ1,σ2..,σnが与えられたとき,
F={a∈E:σ1(a)=σ2(a)=...=σn(a)}は,
Eの1つの部分体である。
これを,σσ1,σ2..,σnの「不変体(固定体)」という。
(※このとき, 0∈F,1∈F,および,a∈Fなら,
(-a)∈F,a-1∈Fが成立することは自明です。※)
[補助定理]:不変体Fの元:a1,a2..,anがあり,∀x∈E
に対して,a1σ1(x)+a2σ2(x)+..+anσn(x)=0..(1)
が成立するのは,a1,=a2.=.,=an=0のときである
。つまり,n個のσ1,σ2..,σnは,F上1次独立である。
(証明)(ⅰ)n=1のとき(1)は,a1σ1(x)=0ですが,
x≠0のとき,σ(x)≠0なのでa1=0を得ます。
(ⅱ)n>1のときk≦(n-1)に対しては
a1σ1(x)+a2σ2(x)+..+akσk(x)=0.なら,
a1=a2=..=ak=0と,補助定理が成立すると仮定
します。 そして,k=nに対して;
a1σ1(x)+a2σ2(x)+..+anσn(x)=0と,
- 式が成立するとします。
仮定から,0≦i≦(n-1)の全てのiについてσi≠σn
であり,σi(α)≠σn(α)となるα∈Eが存在します、
このαについて(1)式のxに(αx)を代入すれば.
(1)は,次のようになります。すなわち,
a1σ1(α)σ1(x)+...+anσn(x)σn(x)=0.(2)
です。他方,(1)の両辺に左からσn(α)を掛けると,
a1σn(α)σ1(x)+..+anσn(α)σn(x)=0..(3)
です。(2)式から(3)式を辺々引き算すれば,
a1σ{σ1(α)-σn(α)}σ1(x)+..
+an-1{σn-1(α)-σn(α)}σn-1(x)=0.を得ます。
これは,k=(n-1)<nの自明な1次関係式なので,
帰納法の仮定から,ai{σi(α)-σn(α)}=0ですが
σi(α)≠σn(α)なので.i=1,...(n-1)について.
ai=0です。それ故,anσn(x)=0となるので,an=0
も得られます。
したがって,帰納法により[補助定理]の成立が証明
されました。(証明終わり)
[定理5-14]:(E/F)≧nである。
(証明)(E/F)=mで,m<nと仮定します。
体F上のベクトル空間としてのEのF上の生成系
を,ω1,ω2,..,ωmとします。次の,連立方程式
σ1(ω1)x1+σ2(ω1)x2+..+σn(ω1)xn=0,
・・・・・・・・・
σ1(ω1m)x1+σ2(ωm)x2+..+σn(ωm)xn=0,
を考えると,これは,n個の未知数xjをnよりも少ない
m個の方程式系で求める連立1次方程式なので,自明で
ない解(少なくとも1つはゼロでない解)として,n個
の解の組:(x1,x2,..,xn)を持ちます。
一方,∀α∈Eは,α=a1ω1+a2ω2+..+anωn,
(a1,a2,..an∈F)で表わされます。
上の連立方程式の第1式に.σ1(a1)を掛け,第2式に
σ2(a2)を掛け,以下,第m式まで同様な操作を続けると,
Fは不変体ですから,σ1(aj)=…=σn(aj)なので,
σ1(a1ω1)x1+σ2(a1ω1)x2+..+σn(a1ω1)xn=0
・・・・・・・・,・・・
σ1(amωm)x1+σ2(amωm)x2+..+σn(amωm)xn=0
を得ます:これら全ての式を加えれば,∀α∈Eに対し,
非自明な組:(x1,x2,::xn)に対する等式として,
σ1(α)x1+σ2(α)x2+..+σn(α)xn=0を得ます。
一方,[補助定理]によれば,これは全てがゼロの自明な
n個の組:x1=x2=..=xn=0でのみ成立する等式です。
したがって,矛盾が生じます。よって,m≧nです。
(証明終わり)
第6章ガロア拡大体,ガロア群
[定義6-1](自己同型写像)
体EからE自身への同型写像を自己同型写像
という。Eの自己同型写像全体は明らかに群を
つくる。Eの自己同型(写像)の集合Gが有限群
をつくるとき,当然,Gは恒等写像を含む。
そして,F={a∈E;σ(a)=a for∀σ∈G}
を.群Gの不変体(固定体)という。
また,Eの元αに対して,G=[σ1,σ2,..σn}なら,
S(α)=ΣGσ(a)(ΣGはG全体をわたる総和)
=σ1(α)+σ2(α)+..+σn(α)で与えられる
Eの元を,αのスプ-ル(spur;対角和)という。
[定理6-1]:S(α)は不変体Fの元である。
そして,EにはS(α)≠0であるような元αが存在
する。
(証明)β=S(α)とし,τをGの任意の元とすると
τ(β)=τ{Σσ(α)}=Σσ(α)=βより,β∈Fです。
何故なら,∀τ∈Gに対し,σj≠σkならτσj≠τσk
より,G={σ1,σ2,..σn}={τσ1,τσ2,..τσn}
であることが明らかだからです。
そして,∀α∈Eに対して,S(α)=0なら,αの恒等式
として,1次関係式σ1(α)+σ2(α)+..+σn(α)=0を
得ますが,これはαをxに代えると,先の[補助定理]に
矛盾します。故に,S(α)≠0なるα∈Eが存在します。
(証明終わり)
[定義6-2](ガロア(Galois)拡大体とガロア群)
体Eの自己同型写像のつくる群をGとし,Gの不変体
をFとするとき,EはFの「ガロア拡大体」であるという。
ぞして,GをEのF上の「ガロア群」という。
[定理6-2];体EがFのガロア拡大体のとき,その拡大次数
はガロア群Gの位数に等しい。
つまり,(E/F)=|G|=(G:1)である。
(証明)(E/F)=m,|G|=nとすれば.[定理5-14]
により,m≧nですから,m≦nを示せば十分です。
それにはEの(n+1)個の元α1,α2,..αn,αn+1が
1次従属であることを示せばいいです。
そこで.次の連立方程式を考えます。
x1σ1-1(α1)+x2σ1-1(α2)+..+xn+1σ1-1(αn+1)=0
x1σ2-1(α1)+x2σ2-1(α2)+..+xn+1σ121(αn+1)=0
・・・・・・・・・・
x1σn-1(α1)+x2σn-1(α2)+..+xn+1σ1n-1(αn+1)=0
簡略式では,Σk=0n+1xkσj-1(αk)=0(1≦j≦n)で
表わされます。そして,これらは,(n+1)個の未知数が,
それより少ないn個の方程式で与えられる系なのでEの
中に,非自明な解:(x1,x2,..xn+1)を持ちます。
xjの少なくとも1つは非ゼロなので,一般性を失うこ
となくx1≠0と仮定しいぇおきます。
このとき,∀α∈Eに対して(αx1,αx2,..αxn+1)
もまた,この同次連立方程式の解です。
そこで,αx1がS(αx1)≠0を満たすように,αを選び
その後に,(αx1αx2,..αxn+1)を,改めて(x1,x2,..xn+1)
と定義し直します。するとまず,S(x1)≠0です。
そして,方程式系:Σk=0n+1[xkσj-1(αk:)]=0(1≦j≦n)
に,左からそれぞれσjを施せば,Σk=0n+1[σj(xk)αk]=0
(1≦j≦n)を得ます。さらに,これらn個を全て加えると,
Σk=0n+[S(xk)αk]=0となります。
ところが,S(xk)∈Fであり,S(x1)≠0なので,結局,
これは,α1,α2,..αn,αn+1が1次従属であることを意味
します。それ故,m≦nであるべきすから(E/F)=n
=|G|です。(証明終わり)
[定義6-3]:σが体Fを元ごとに不変にするとき,σはFを
不変にする,とか,σはE/Fの同型写像である,という。
[定理6-2の系]:EがFのガロア拡大体で.GがFを不変体
とするガロア群のとき,Gは体Fを不変にするEの同型写像
の全体集合である。
(証明)Fを不変にするEの自己同型写像σがGに属さない
ならば,Fは,(n+1)個の自己同型写像の不変体となって,
[定理6-2]に矛盾します。故に,このσも.Gに属します。
(証明終わり)
[定理6-3]:G1,G2が体Eの自己同型写像の群で G1≠G2
のとき,これらの不変体は異なる。
(証明) G1,G2が同じ不変体Fを持つと仮定すると.
n=(E/F)=|G1|=|G2|ですから,G1≠G2の場合は,
(G1∪G2)がnよりも多い元を持つことになります。
しかし,(G1∪G2)の不変体も明らかにFですから,
(E/F)=|G1∪G2|>nとなって,矛盾します。(終わり)
[定理6-4](基本定理)
EをFのガロア拡大体とし,その自己同型群をG,
つまり,自己同型写像全体のつくる群をGとする。
E/Fの中間体:Bに対してBを不変にするGの元
の全体のつくる部分群をUとすると,Uの不変体は
Bである。そしてBにUを対応させる対応は,E/F
の中間体と,Gの部分群との間の1対1対応である。
(証明)中間体Bを不変にするGの部分群をUとし、
その位数を,|U|=rとします。
そして,Uの不変体をB~とします。
するとBはUで不変なので,B⊂B~であり(E/B~)=r
ですから.(E/B)≧rです。
それ故.B=B~を示すには,(E/B)=rを示せば
よいことがわかります。
,さて,σ∈GをBに施すと,BはEの中に同型に写像
されます。すなわち,B~σ(B)(同型)です。
さて,σ1,σ2∈G,,σ1≠σ2なら,∀β∈Bに対して
σ1(β)=σ2(β)であるための条件は,σ1-1σ2(β)=β,
つまり,(σ1-1σ2)∈U,あるいは,σ2∈(σ1U)です。
同一の剰余類(σU)に属する自己同型写像が,体Bに
同じ同型写像を誘導するわけです。
つまり,σ2∈(σ1U)が,∀β∈Bでσ1(β)=σ2(β)
すなわち,B上で同じ同型写像である,ための条件です。
{G{=nのとき,n=rsなら,異なる剰余類(σU)
の個数はsです。つまりs=(G;U)=||G|/|U|です。
異なるs個の剰余類(σU)の代表元をτ1,τ2..τsと
すると,これらは,体Bの上の自己同型写像と見なすこと
ができて,その不変体はFです。
何故なら,(τj)j=1sの不変体をF~とすると,τj∈G
より.∀a∈Fに対しτj(a)=aなので,まず.F⊂F~
です。他方.a∈F~で,τj(a)=aならτjは,aを
不変に保つGの元でもあるので,aはGの不変体に属し
a∈Fです。それ故,F~⊂F~も成立するため,F~=F
です。したがって,(B/F)≧sです。
この不等式を先に得た(E/B)≧rと合わせると
(E/F)=(E/B)(B/F)≧(rs)を得ます。
しかし,実際には(E/F)=n=(rs)なので,結局.
(E/B)=r,かつ,(B/F)=sであると結論されます。
以上から,E/Fの中間体Bに対して.Bを不変にする
Gの元全体のつくる部分群Uが一意に対応します。
また,Gの部分群Uに対して,Bを不変体とする中間体
Bが存在して対応する,という逆命題も成立します・
UはBを不変にするGの元の全体であり,Uに対して
Bは一意的に定まります。 (証明終わり)
[基本定理の系]::中間体BからEへのF上の同型写像
は,群Gの部分群Uによる剰余類から誘導されるものだけ
である。また,BはFのガロア拡大体である。
(証明)Gの元から誘導される(B/F)個以外に,BからE
への同型写像が1つでもあれば{(B/F)+1}個の同型写像
の不変体がBであることになるため.BのF上の次元と同型
写像の総数が一致するという定理に矛盾します。故に,
そうした同型写像は存在しません。そして,BはUの不変体
ですから,EはBのガロア拡大体です。(証明終わり)
(※[基本定理]における対応は,Gの部分群に,その不変体
を対応させるものです。Gには,体F,Uには,体B,単位群
{e}には,体Eが対応します。)
※EはBのガロア拡大体ですが,BはFのガロア拡大体とは
限りません。以下では,UがGの正規部分群で(σUσ-1)=U
であることが,UがFを不変体とするBのガロア群であるため
の必要十分条件であることを示します。
[定理6-5]:体Eは体Fのガロア拡大体あり,Gはガロア群
であるとする。そして,中間体Bに対応するGの部分群を
Uとする。∀σ∈Gに対して(σB)もE/Fの中間体であり,
対応するGの分群は(σUσ-1)である。
さらに,体Bが体Fのガロア拡大体であるための必要十分
条件は,UがGの正規部分となることである。
このとき,そのガロア群は.(G/U)に同型である。
(証明)σ∈GならσはEの自己同型写像ですから,(σB)
もBと同じく,E/Fの中間体です。
何故なら,BはEの部分体なので(σB)⊂Eであり,
(σB)も体であることは明らかです。一方,FはGの
不変体なので,(σF)=FであるからσBが中間体の
場合も同じ不変体です。
そして,(σB)の元はσ(β)((β∈B)と表わされます。
故に,τ∈Gが,全てのσ(β)を不変にするのは,∀β∈B
に対して,τ{σ(β)}=σ(β),つまり(σ-1τσ)(β)=β
となることが必要十分です。これは.(σ-1τσ)がBを不変
にすることを意味します。
それ故,τが(σB)を不変にする条件は,(σ-1τσ)∈U
が成立することであり,これはτ∈(σUσ-1)と値です。
したがって,(σUσ-1)が中間体(σB)に対応するGの
部分群です。
ところが,UがGの正規部分群なら,∀σ∈Gに対して,,
(σUσ-1)=Uです。中間体と部分群は1対1に対応する
ので,∀σ∈Gに対して,対応するGの部分群が同じなら.
中間体も一致するため,(σB)=Bとなり,σはEの上の
自己同型写像であると同時に,Bの上の自己同型写像でも
あることになります。ただし,(σB)の元を不変にする
自己同型写像:τは,(σU)の元ですが,Uが正規部分群
なら,τ∈Uでもあります。UがGの正規部分群である
ときは,UがB内でFを不変体とするガロアa群となり
Bがガロア拡大体となるための必要十分条件です。
そして,Bを不変にするガロア群の元:τは(G/U)
の剰余類(σU)の代表元として,1対1に対応する
ため,ガロア群と商群(G/U)は同型です。
逆に,BがFのガロア拡大体であるとき,UがGの
正規部分群でないなら,(σUσ-1)≠Uであるような
σ∈Gが存在し,σB≠Bです。よって(B/F)個の
ガロア群Uの元以外に(σF)=Fを満たす写像が
存在するわけです。このσはEの自己同型写像です
が,Bの自己同型写像ではありません。
これはガロア拡大体の条件に矛盾します。
したがって,UがGの正規部分群であることがBが
Fのガロア拡大体であるための必要十分条件です。
(証明終わり)
[定理6-6]:E/Fの中間体:B1,B2,にそれぞれ
自己同型部分群U1,U2が対応するとき,B1⊃B2
とU1⊂U2が同値である。
(証明) B1⊃B2のとき,σ∈U1なら,∀β∈B2に
対して,β∈B1より,σ(β)=βですからσ∈U2
です。それ故,U1⊂U2です。逆に,B2⊃B1なら
U1⊃U2が成立します。
[定理6-7]:体Fのガロア拡大体Eのガロア群を
Gとする。2つの中間体:B1,B2に対し,B1,B2を
含む最小の体を(B1B2)とし,共通部分を(B1∩B2)
とする。B1,B2,にれ対応するガロア群をU1,U2と
するとき,(1)(B1B2)には,(U1∩U2)が対応する。
(2)(B1∩B2)には,U1,U2を含む最小の部分群:W
が対応する。
(証明)(1)σ∈Gとします。
σが(B1B2)を不変にすることは,B1とB2を
共に不変にすることを意味し.これは,σ∈U1,かつ,
σ∈U2,つまり,σ∈(U1∩U2)に対応します。
- 次に,中間体:(B1∩B2)に対応するGの部分群
をVとします。
すると,(B1∩B2)⊂B1,かつ,(B1∩B2)⊂B2です。
故に,[定理6-2]から,V⊃U1,かつ,V⊃U2です。
ところが,仮定により,WはU1,U2を含む最小の
Gの部分群ですからW⊂Vです。
そこで,Wに対応する中間体をBとすると,W⊂⊃U1,
かつ,W⊃U2より,B⊂B1,かつ,B⊂B2ですから.
B⊂(B1∩B2)です。故にW⊃Vであり,結局,
W=Vです。(証明終わり)
※途中ですが,今回はここで終わります。(つづく)
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