115. 素粒子論

2020年12月30日 (水)

くりこみ理論(第2部)(2)

「くりこみ理論(第2部)」の続きで

第8章の§8-1「くりこみ群と演算子積

展開」の続きです。

※(余談):いろいろとバタバタしている

うちに,ブログの原稿書きもさぼっていて,投稿は久しぶりです。とうとう明日は

2020年の大晦日で,急に寒くなりました

が,何とか生きたまま,年を越せそうです。

(余談終わり)

※以下,本文です。

さて,運動方程式とWT恒等式の項目

に入ります。

当面の目的はあくまで演算子積(複合

演算子)に対する「Wilsonの演算子積展開」の成立を証明することにあり,少し寄り道

とはなりますが,この証明にとっても重要なので,BPHZの枠内で運動方程式の使い方と,WT恒等式についてのコメントです。

粒子場:φ(x)から成る系のBPHZの

意味での有効Lagrangian:

与えられたとき,系の従う運動方程式

(Euler-Lagrange eq.)は,

/∂φ-∂μ{∂/∂(∂μφ)}

=δS/δφ=0  (21) です。

何故なら,は,作用原理を満たすべき

作用SをS=∫d4によって

定めるLagranfian密度を意味する

からです。

しかしながら,これは,必ずしも

演算子等式の成立を意味しない。と

考えられるので,Green関数中に因子

(δS/δφ)」が現われたからと

いって,Green関数を直ちにゼロとする

ことはできないことがわかります。

(※これは,Green関数中のT積

(時間順序積)は,実はT*積を意味する

ので,階段関数θ(t)の微分などが

消えずに単純な等式の成立を邪魔る

からです。)

そこで,BPHZの手続きで有限に

されGreen関数を,真空期待値:

<0|T[…]|0>>>のような形に

記すことにすれば,

上記のEuler-lagrangeの運動方程式

よりも,むしろ,次式の成立を主張する

方が,系の運動を記述する方程式として

ふさわしい。ということを示したい

と考えます。

すなわち,Green関数に対する

方程式:<0|T([φ(z){δS/δφ(z)]dφ(x1),,φ(xn)|0>

=iΣr=1n4(z-xr)

<0|T(φ(x1)..^φ(xr).φ(xn)|0> (22)が成立するとするわけです。

ただし,^φ(xr)は,全体の積から,

φ(xr)のみを除くことを意味する記号

です。

この(22)式は,次元dが,複合演算子:

[φ(z){δS/δφ(z)}]の正しい次元:

4以上の場合なら,常に,そして最初の

因子φ(z)を両辺で,その微分:∂μ1.

μkφ(z)に置き換えても(dをその

正しい次元以上にする限り)成立します。

この式は,演算子型式で正準交換関係

を用いて得られる式と,ほぼ同じですが,

T積が実はT積であることや,因子:

[φδS/δφ]が,機能的に導入された

正規積であることなど,あくまでBPHZ

の枠内での等式となることに着目します。

※(注2-1):以下,(22)をFeynmanグラフ

的に証明します。

ただし,今は,たび重なるココログフリーのリニューアルや,OS()Windows)の

バージュンの変化でブログ記事の上で

用いていた,図を書くスキルなどを失っているため,文章のみの,頭の中に仮想的に

描いた図での説明しか,できませんが。。

さて,まず,φ(δS/δφ)

=φ[-(□+μ2)φ-(λ/3!)φ3]の

うち,V={-φ(□+μ2)φ}として,V

のみを挿入した裸のGreen関数:GV(n)

に効くFeynmanグラフを運動量表示で

考察します。

グラフのV頂点(Vを含む頂点)

のKlein-Gordon演算子の掛かった場:

[-φ(□+μ2)φ]が出る線は,一般に

直接,外線p1,p2,.pのどれかに

つながるか?または,λφ4相互作用の

頂点につながるか?のどちらかです。

-(□+μ2)φから出る線は全く相互

作用が無いグラフと,(この場合λφ4

無い)相互作用をしているグラフに

つながるか?のいずれかしかありません。)

ところが,-(□+μ2)φの演算子:

-(□+μ2)は,運動量表示ではp2-μ2)

であり,丁度:伝播関数:-(□+μ2)-1

(これは運動量表示では,i/(p2-μ2))

を相殺して単なる数因子;iに変える

働きを持つことに注意すれば,結局

のところ,(22)式の<0|T([φ(z)

δS/δφ(z)]dφ(x1),,φ(xn)|0>

=iΣr=1n4(z-xr)

<0|T(φ(x1)..^φ(xr).. φ(xn)|0>,で,φ(δS/δφ)=φ[-(□+μ2

-(λ/3!)φ3])とした等式が成立する

ことがわかります。

すなわち,グラフ表現の等式の両辺で,

V頂点に次元dを付与したBPHZの

R演算を施します。

これは,グラフのV頂点に

[-φ(□+μ2)φ]を挿入したGreen

関数に対する等式を与えます。

第1項:つまりV頂点が相互作用無し

で直接n個の外線の1つにつながって

いて,残りとは無関係の場合には,V頂点

を囲むくりこみ部分は存在しないので,

通常のR演算を受けて,(22)の右辺の

総和式を得るわけです。

(※この第1項のV頂点因子は,単に,

(p2-μ2)×{i/(p2-μ2)}=i

と,(-iλ/3!)の積の数因子です。)

他方,残る第2項は,V頂点が

φ・i(―iλφ)/3!)=φ・λφ3/の

複合場となっていて,Vを含む部分は,

元の{-φ(□+μ2)φ]と同様,Vを

次元dであると見なしたTaylor引き算

を受けます。

それ故,R演算後の第2項は,次元d

の正規積:[φ・λφ3/3!]を挿入した

Green関数:<0|T[{φ・λφ3/3!}dφ(x1)..φ(xn)]|0>を与え,これを左辺に移項

して[―φ(□+μ2]φ-λφ3/3!]

挿入項にまとめられて,(22)の左辺を

与えるわけです。(証明終わり 

(注2-1終わり※)

BPHZの枠内では(22)の等式は大変有用なモノであり,例えばカレント保存則から従うWT恒等式もこの範疇に含まれて

います。  

最も簡単な例として,複素スカラー場φ

から成る系で有効Lagrangianが

=∂μφμφ-μ2φφ

-(λ/2)(φφ)2で与えられる場合を

考えます。

このときU(1)カレント;jμ(x)

=i{φ(x)∂μφ(x)-{∂μφ(x)}

φ(x)}=iφ(x)∂μφ(x)(23)

は,素朴な(1)の運動方程式を用いて,

保存することがわかります、

すなわち

μμ=i{φ*□φ-(□φ*)φ}

=-i{φ*(δS/δφ)-(δS/δφ)φ}.(24)ですから素朴な運動方程式:

δS/δφ=δS/δφ=0から,右辺は

ゼロとなります。素朴にはそうです、

等式:<0|T([φ(z)δS/δφ(z)]d

φ(x1),,φ(xn)|0>

=iΣr=1n4(z-xr)

<0|T(φ(x1)..^φ(xr)...φ(xn)|0>は,<0|T([φi(z)|δS/δφk(z)]]d

φi1(1i2(x2).φim(xm)|0>

=iΣr=1n4(z-xrkir

<0|T(φ(z)φi1(x1)..^φir(xr)

..φim(x)|0> (25)となることが

容易にわかります。

さらに、一般に正規積[O]に対して

μ[O]=[∂μO]d+1.(26)の等式が

成立します。

何故なら,グラフγのω次のTaylor

項演算子をtγω.,γの外線運動量因子

の1つをqμとするとき

ɤ(ω+1)μ=qμγωとなるからです。

そこで,(23)を正しい次元3を付与

した正規積[jμ]3として,それを挿入

したGreen関数の発散∂μを計算

すれば,(26),(25),(24)の等式を用いて

次式を得ます。すなわち,

zμ<0|T{[jμ(z)]3φ(x1)..φ(x)

φ(y1),.φ(yn)}|0>

=∂<0|T{[φ{δS/δφ}

-{δS/δφ(z)]4

φ(x1)..φ(x)

φ(y1)...φ(yn)}|0>

=-Σr=1nδ4(z-xr)

<0|T{φ(z)φ(x1)..φ(x)

φ(y1)...φ(yn)}|0>

+Σr=1nδ4(z-yr)

<0|T{φ(z)φ(x1)..φ(x)

φ(y1)..φ(yn)}|0>..(27)

です。

この式が,BPHZ定式化における

WT恒等式であり,形式上,演算子形式

で素朴に(紫外発散の問題を考慮しない)

正準交換関係を用いて求めたWT恒等式

を再現したものとなっています。

U(1)カレントの正規積[jμ]3

代わりに,次元4のエネルギー・運動量

テンソルのそれ[Tμν]4の場合も同様です

。また,,次元3以下のソフトな破れがある

カレントの場合も同様な等式で分析

できます、

  • さて,続いて演算子積展開に戻ります。

準備が整ったので先のWilsonの

OPEの公式(1):

A(x)B(x)

=limx→yii(x―y)

i((x+y)/2)],(Ciはc-数関数)を

,BPHZ定式化を用いて証明することを

始めます。

一般的な場合も本質的には同じなので,

ここでは最も簡単な場合:λφ4理論で,

AもBも場φ自身である場合のみを

考えます。

すなわち,Tφ(x+ξ)φ(x-ξ)

=Σii(ξ)[Oi(x)]di  (28)

(diはCiの正しい次元)の形の展開式

の成立を証明します。問題としている2

つの演算子の積:φ(x+ξ)φ(x-ξ)

を挿入した(くりこまれた)Green関数:

(n)φ(x+ξ)φ(x-ξ)は,今の場合,

単に,(n+2)点Green関数:(n+2)

です。

つまり,<0|T{[φ(x+ξ)φ(x-ξ)

φ(y1)..φ(y)}|0>=∫d4qd4

(2π)-8×Πj=1n4ik(2π)-4

exp(-iqx-ik・2ξ)

×exp-iΣj=1njj)(2π)4

δ4(q+Σj=1nj)

(n+2)(q/2+k,q/2-k,)..(29)

です。ここで,φ(x+ξ)および,

φ(x-ξ)の運動量をそれぞれ,

(q/2)+k,および,(q/2)-k(つまり,

重心運動量がq,相対運動量がkとなる

ように)置き,その他の運動量を

­=(p1..p)としました。

(29)で,ξ→0での挙動を今から

調べたいのですが,(29)は,ξ=0では

∫d4k(2π)-4がloop積分の形になり

新たな紫外発散が生じる。という構造

になっています。そこで,演算子積:

φ(x+ξ)φ(x-ξ)に対し,これは

離れた2点の場の積なのますが,先の

局所積の場合と同様,正規積:

[φ(x+ξ)φ(x^ξ)]というもの

を,次のように導入します。

まず,ΓをG(n+2)に効く任意のグラフ

とするとき,端点:x1=x+ξと,

x-ξを一致させて得られる

グラフΔをΔ=Γ~.(30)と記述します。

新たに生じた点x=x1=x2のφ2頂点

Vと呼びます、しかし,この操作は

(29)のG(n+2) →G~(n+2)のFeynman

グラフに効く被積分関数:]ΓはIΓ→,IΔ.(31)

としてほとんど何の変更もしてないことに

注意すべきです。

(29)の被積分関数をIΓと思うかIΔと思うかは

後から行なう∫d4k(2π)-4exp(-2ikξ)が単

なるFourier積分か,ξ=0とおいたloop積分に

なるか,の違いだけです。

そこで,次数がdの正規積:

[φ(z1)φ(x2)]を次のように定義

します。

すなわち,あるグラフΓの寄与として,

<0|T{{φ(x1)φ(x2)}φ~(p1).

.φ~(pn)}}0>Γ (x1=x+ξ,x2=x-ξ)

=∫d4qd4k(2π)-8

exp(-iqx-2ikξ)(2π)4

δ4(q+Σii)]∫Πj=124j

Δ(d)(q/2+k,q/2-k,,d)]..

(32)とします。

途中ですがここで今年は終わりです。

※(参考文献):九後汰一郎著

「ゲージ場の量子論Ⅱ」(培風館)

| | コメント (0)

2020年11月 3日 (火)

物理学の哲学(15)(終)(アノマリー)

「物理学の哲学(14)」からの続きです。

(※余談):今日は11/3(火)祝日です。時差があります

から,まだでしょうがアメリカでは重要な大統領選挙

の投票日ですね

実は先月の10/28(水)に,このシリーズ記事の(14)を

アップした直後,続いて分割した残りの記事を(15)

としてアップしようとしたところ,コピペの操作を間違え

,つい全部消えてしまいました。落ち込んでいるときに,

丁度,訪問医が来て,何事か?と心配されましたが,落ち

込みの理由を聞いて大したことない,と慰められました。

こうしたことは前にもあって,アップの前にバックアップ

を取る習慣になってましたが,これでこの記事シリーズ

が終わりになるので,ちょっとあせったようです。

まあ,仕方がないので消えた部分は,記憶に頼って書き直す

しかなく,再掲記事部分以外は少し変わったはずですが

今日11月3日までかかりました。今度は忘れずに先に

バックアップを取ります。

消えたモノも業者に頼れば復活するはずですが,貧乏人

私にそんな余分なお金はないのでね。(余談終わり※)

※さて,以下は本題です。

アノマリーは,運動方程式からのアプロ-チに

よっても得られることがわかりました。これは軸性

ベクトルカレントに現われる特異な演算子積を注意

深く扱えばいえることです。

※(注):j(x,ε)は,外場との相互作用があるので

真空期待値はゼロではなく,<0|j(x,ε)ελ|0>

=<0|ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)ελ|0>

×exp{-∫x-ε/2x+ε/2dξ(ξ)}ですが,これの

εの2次以上のオーダーを無視します。

<0|ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)|0>

=(γμγ5)αβ

<0|ψ~α(x+ε/2)ψβ(x-ε/2)|0>

=-(γμγ5)αβ

<0|T[ψβ(x-ε/2)ψ~α(x+ε/2)|0>

=-Tr{γμγ5iSF~(-ε)}です。

Fermionの伝播関数:S~(x-y)を外場:μ(x)

で展開すると,自由Fermion伝播関数:SF(x-y)

がベキで出現します。

まず,φ(x)を,Klein-Gordon方程式

(□+02)φ(x)=0を満たす自由複素スカラー場

とすると,その自由Feynman伝播関数:ΔF(x)は,

F(x)=<0|θ(x0)φ(x)φ(0)

+θ(-x0(0)φ(x)|0>

=θ(x0)∫d3(2π)-3(2ωk)-1exp(-ikx)

+θ(-x0)∫d3(2π)-3(2ωk)-1exp(ikx)

ただしωk=(2+m02)1/2で,与えられます。

そして,SF(x)は,このΔF(x)を用いて,

F(x)=(iγμμ+m0F(x)と表わすこと

もできます。(※自由Green関数として満足する

方程式は,(□+m02)ΔF(x)=-δ4(x)ですから,

これから,(iγμμ-m0)F(x)=δ4(x)です。)

ここで,iΔ(+)(x)=∫d3(2π)-3(2ωk)-1

exp(-ikx)と置くと,iΔ(+)(x)=(2π)-20dk

[{k2(2ωk)-1exp(-iωk0)}

×∫-11d(cosθ)exp(ikrcosθ)

=(2πi)-1(4πr)-10dk[kexp(-iωk0)

×{exp(ikr)-exp(-ikr)}/ωk]

(2πi)-1(4πr)-1-dk

[kexp{-i(ωk0+kr)}/ωk]

=-(4πr)-1(∂/∂r)(2π)-1-∞dk

[exp{-i(ωk0+kr)}/ωk]と書けます。

同様に,iΔ(-)(x)=∫d3(2π)-3(2ωk)-1

exp(ikx)]と置くと

(-)(x)=-(4πr)-1(∂/∂r)

[(2π)-1-∞dk[exp{i(ωk0+kr)}/ωk]

です。

ところで,f(x)=f(x0,r)

=(2π)-1-∞dk[exp{i(ωk0+kr)}/ωk] 

とすると,右辺=(2π)-1-∞dk

[exp{i(ωk0+kr)}/(k2+m02)1/2]であり,

k=m0sinhφと置けば,dk=m0coshφdφ

で,(k2+m02)1/2=m0coshφです。

k:-∞ → ∞は,φ:-∞ → ∞に対応するため,

f(x)=(2π)-1-dφ

[exp{im0(x0coshφ+rsinhφ)}となります。

ここで,さらに,λ=x2=(x0)2-r2と置きます。

すると,

(ⅰ)x0>0 かつ,x0>rのとき,

λ>0 なので,x0=λ1/2coshφ0,r=λ1/2sinhφ0

と置くことができて,f(x)=(2π)-1-∞dφ

[exp{im0λ1/2cosh(φ+φ0)}]

=π-10dφ exp(im0λ1/2coshφ)です。

故に. f(x)=(i/2)H0[m0λ1/2]

=(i/2){J0[m0λ1/2]+iN0[m0λ1/2]}

(※ J0は0次Bessel関数,N0は0次の

Neumann関数,H0は0次Hankel関数です。)

(ⅱ) x0>0 かつ,x0<rのとき,

λ<0 なので,x0=(-λ)1/2sinhφ0,

r=(-λ)1/2coshφ0と置くことができて,

f(x)=(2π)-1-∞dφ

[exp{im0(-λ)1/2sinh(φ+φ0)}です。

故に.f(x)=(1/π)K0[(m0(-λ)1/2]

=(i/2)H0[(m0(-λ)1/2]

=(i/2){J0([m0(-λ)1/2]+iN0[(m0(-λ)1/2]}

(※ K0は0次の第2種変形Bessel関数です。)

(ⅲ) x0<0 かつ,|x0|>rのとき,

f(x)=(-i/2)H0[m0λ1/2]

=(-i/2){J0[m0λ1/2]+iN0[m0λ1/2]}

(ⅳ) x0<0 かつ,|x0|<rのとき,

f(x)=(1/π)K0[(m0(-λ)1/2]  です。

つまり, λ=(x0)2-r2>0なら

f(x)=(-1/2)N0[m0λ1/2]

+(i/2)ε(x0)J0[m0λ1/2]で,λ<0なら,

f(x)=(1/π)K0[(m0(-λ)1/2]です。

(+)(x)=-(4πr)-1(∂f/∂r)

=(2π)-1(∂f/∂λ)

={i/(4π)}ε(x0)δ(λ)

+θ(λ){m0/(8πλ1/2)}{N1[m0λ1/2]

+iε(x0)J1[m0λ1/2]}

+θ(-λ){m0/(4π2(-λ)1/2)}{K1[m0λ1/2]}

同様に,iΔ(-)(x)={-i/(4π)}ε(+iε(x0)

1[m0λx0)δ(λ)

+θ(λ){m0/(8πλ1/2)}{N1[m0λ1/2]1/2]}

+θ(-λ){m0/(4π2(-λ)1/2)}{K1[m0λ1/2]}

です。

故に,iΔF(x)=<0|T{φ(x)φ(0)|0>

=θ(x0)iΔ(+)(x)+θ(-x0)iΔ(-)(x)

なので,F(x)

{i/(4π)}δ(λ)+θ(λ){m0/(8πλ1/2)}

{N1[m0λ1/2]+iε(x0)J1[m0λ1/2]}

+θ(-λ){m0/(4π2(-λ)1/2)}{K1[m0λ1/2]}

を得ます。

数学公式によれば,J1[z]=z/2-1/2)(z/2)3

+O(z5),N1[z]=-1/(4πz)

+{z/π-(1/π)(z/2)3}ln(z/2)

+(C/π){z-(z/2)3}+O(z5 lnz)+O(z5)

1[z]={z+(1/2)(z/2)3}ln(z/2)

+(C/2){z-(z/2)3}+1/(4z)+O(z5)

F(x)=={i/(4π)}δ(λ)-1/(4π2λ)

-{im02/(16π)}θ(λ)+{m02C/(8π2)

+{m02/(8π2)}ln(m0|λ|1/2/2)

+O(|λ|1/2ln|λ|)

F(x)=(iγμμ+m0F(x)

=2iγμμ[{1/(4π)}δ’(λ)

+1/(4π22)

-{m02/(16π)}δ(λ)-{im02/(16π2λ)}

+O(|λ|-1/2ln|λ|)]

+m

{1/(4π)}δ(λ)-1/(4π2iλ)

-{m02/(16π)}θ(λ)+{m02C/(8π2)

-{im02/(8π2)}ln(m0|λ|1/2/2)

+O(|λ|1/2ln|λ|)です。

以上から, SF(x)は,xμ→ 0 のとき,

μ(1/λ2)~ 1/x3のように挙動することが

わかりました。

普通に,光子の外場Aμ(x)とだけ相互作用する

iSF~(x)を,Aμ(x)とiSF(x)で摂動展開すると,

iSF~(x―ε/2,x+ε/2)=iSF’(―ε)

=iSF(―ε)

+(-ie0)∫d4y[iSF(x―ε/2―y)γα

iSF(y-x―ε/2)Aα(y)]

+(-ie0)2∫d4yd4z[iSF(x―ε/2―y)γα

iSF(y-z)γβF(z―ε/2)Aα(y)Aβ(z)]

+O(lnε)です。

上述のように,SF(x―ε/2,x+ε/2)

=S。(―ε)がεμ/{(-ε)2}2のように挙動する

ことから,kを積分の個数,Fermion伝播関数の個数

とする発散次数:Dの次数勘定定理はD=4k-3f

となり,D>0ならεμ→ 0 のとき収束し,D=0なら

lnε発散をし,D=-1,-2,-3..なら,ε-1-2-3..

と挙動するのが明らかです。

ただし, <0|ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)|0>

=-Tr{γμγ5iSF~(-ε)}ですが,

左辺=<0|j(x,ε)|0>

=(1/2)<0|[ψ~(x+ε/2),γμγ5ψ(x-ε/2)]|0>

で,右辺の真空:|0>で挟んだ場の交換子は,最低次

では,正規積(normal-producy)となっていて寄与は

ゼロになり,それ故,摂動展開の第1項のSF(-ε),

すなわち,ε→0でのtadpoleは,<0|j(x,ε)|0>

に寄与しません。あるいは,実際に計算しても,

F(―ε)=∫d4p(2π)-4 exp(ipε)/(-m0)

ですが,Tr{γμγ5/(-m0)}=0より,

-Tr{γμγ5iSF(-ε)}=0で,明らかに

-Tr{γμγ5iSF~(-ε)}に寄与しません。

また, O(lnε)も<0|j(x,ε)ελ|0>

では,ε→0でελO(lnε)→ 0で消えます。

また,第3項=(-ie0)2∫d4yd4

[iSF(x―ε/2―y)γαiSF(y-z)

γβF(z―ε/2)Aα(y)Aβ(z)]ですが,

<0|j(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)全体の

荷電共役不変性から,この項は寄与しません。

具体的にはj(x,ε)は荷電共役偶で外場:

μ(x)は荷電共役奇etc.ですが,詳細は省略

します。残るのは,第2項=(-ie0)∫d4

[iSF(x―ε/2―y)(y)iSF(y-x―ε/2)(y)]

=ie0 ∫d4pd4q(2π)-8 [exp(ipε)exp(iqx)

×{(/2-m0)-1(q)(/2-m0) -1}]

です。

それ故,<0|j(x,ε)ελ|0>

=-Tr{ελγμγ5iSF~(-ε)}

=(-ie0)Tr[ελγμγ5∫d4pd4q(2π)-8 exp(ipε)

exp(iqx)(/2-m0)-1(q)(/2-m0) -1]

+O(εlnε)

=e0Tr[γμγ5∫d4pd4q(2π)-8 exp(ipε)exp(iqx)

(∂/∂pλ){(/2-m0)-1(q)

(/2-m0) -1}]+O(εlnε)です。

したがって,limε→ 0<0|j(x,ε)ελ|0>

=e0∫d4pd4q(2π)- 3exp(ipε)exp(iqx)

(∂/∂pλ)Tr[γμγ5(/2+m0)(q)

(/2+m0){(p+q/2)2-m02}-1

{(/2)2-m02}-1]

=4ie0εαβγδαμ∫d4q(2π)- 4exp(iqx)

δγ(q)∫d4p(2π)- 4(∂/∂pλ)

[pβ(p+q/2)2-m02}-1{(/2)2-m02}-1]

が得られます。

ところで,∫d4p{∂f(p)/∂pλ}は,

もしも,pμ=(p0,p1,p2,p3)を;p0=ip4として,

μ=(p1,p2,p3,p4)と書いてEuclid化し,4次元

のGauss積分定理を適用すると,積分領域

を半径Rの4次元球の内部として,

∫d4p{∂f(p)/∂pλ}

=(i2π22){pλ<f(p)>}|p|=Rを得ます。

ただし,|p|=Rは,Minkowski空間ではp2=-R2,

を意味し,<f(p)>は半径Rの球面上のf(p)の

平均値を意味します。

故に,∫d4p(2π)- 4

(∂/∂pλ)[pβ{(p+q/2)2-m02}-1

{(/2)2-m02}-1]

=limR→∞[(i2π22)Rλβ(-R2-m02)-2](2π)- 4

=igλβ/(32π2)を得ます。

(※ ここで,対称性からlimR→∞(Rμν/2)

=(1/4)gμνとなることを用いました。 )

一方,∫d4q(2π)- 4exp(iqx)qδγ(q)

=i∂δγ(x)です。

したがって,limε→0<0|j(x,ε)ελ|0>

=-ie0εμλγδ{∂δγ(x)}/(8π2)

=-ie0 εμλξηξη/(16π2)と書けます。

以上から, limε→0<0|∂μ(x,ε)|0>

=2im0 limε→0<0|j5(x,ε)|0>

+{e02/(16π2)}εμλξημλξη

=2im0 limε→0<0|j5(x,ε)|0>

+{α0/(4π)}εμλξημλξη

となり,先の∂μ<0|j(x,ε)|0>

=ie0<0|j5μ(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)

+2im0<0|j5(x,ε)|0>+O(ε2).および,

ie0<0|j(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)

={α0/(4π)}εμλξημλ(x) Fξτ(x)+O(ε)

が確かに証明されました。 (注終わり※)

40年前の1975~1976年当時のノートはここで

終わっています。本当はこれからが本題で当時も

ノートは,これで終わってはいても,結論まで理解して

いたはずです。が,長くなったし切りがいいので,

今日はここで終わります。次からは,第3章で

1995年のノートに移ります。(※再掲記事終了)

と書いて終わっています。

結局のところ,「物理学の哲学」シリーズの初期の

副題「止まると死ぬ。」というのは(5)でも述べた

ように,Heisenbergの不確定性原理:ΔpΔx~hの

ため,期待値として,位置を原点に固定:<Δx>=0で,

かつ,速度も<Δp>=0と,古典的には静止状態でも,

ゆらぎ(分散)は<(Δx)2>=0なら,<(Δp)2>=∞

となり,運動量(速度)は絶対的不確定という点粒子の

静止できないという宿命があるのが根源です。

そもそも,素粒子を大きさのない(構造を持たない)

点である,とすることに無理があるので,こうし無限大

を生じる原因がある,と考えられるのです。

軸性ベクトルカレントは,4次元発散にアノマリー

があるのが真であり,これが例えばπ0中間子の崩壊率

に正しい寄与を与えるのを見ても,j(x)のように,

1時空点xでの場の局所的双1次形式で与えられる

物理量は,実はj(x,ε)(ε>0)の非局所カレントの

形の方が現実の姿であって,ε=0の局所カレントでは

有り得ないのではないか?と考えるわけです。

ガリレイ,ニュートンに始まる自然科学では,物体を

大きさのない質点と近似し理想化したおかげで力学が

発展しました。また,水や空気を流体という連続体と

考えて定式化しましたが,実は後に原子論が出現して

わかったように,これらは莫大な分子という粒子の集まり

を近似したものでした。古典電磁気学も原子内の電子の

運動による効果などを連続的な場と概念を用いて定式化

しました。厳密には,連続体は近似であったのです。

この我々の宇宙:4次元時空も普通に連続的な多様体で

ある,と考えられてはいますが,格子点のように単純では

ないにしても,実は,ある臨界のε>0よりも小さい距離

には分割できない離散的時空の近似ではないか?

というのが結論です。

学生時代に,初めて接した紫外発散を除去するくりこみ

手法の本質には,このアノマリーのメカニズムが関与するの

では?と思って興味を持ったのは,こうした動機からでした。

素粒子は宇宙全体でも離散個数しかないはずなのに粒子

の場が連続的なものとして定式化されているのも問題です

が,こうした疑問に,未だにこだわってるのは三つ子の魂百

までですね。

さて70歳になった私のブログでの遺言(遺構)は第1弾

の「どこかの馬の骨の伝記」に続いて,この「物理学の哲学」

シリーズで,第2弾が終わりました。

あとは,第3弾のオリジナル理論で終わる予定です。

命の方が持つかな?

| | コメント (0)

2020年10月28日 (水)

物理学の哲学(14)(アノマリー)

「物理学の哲学」の続きです。

前回記事までで,スピノル場の軸性ベクトル

カレントの4次元発散の部分的保存(PCAC)関係

に2光子頂点と軸性頂点の三角グラフの寄与の

評価から出現する量子アノマリーの存在が確認

され,その値を「低エネルギー定理」で評価した後

場の理論のσ模型へと一般化することから,π0→2γ

崩壊の崩壊率(1/τ)が,そのσ模型の三角アノマリー

の寄与として予測計算が可能であるということを

見出しました。

この天下り的に与えられたように見えるσ模型が

実は,最初は対称性を持っていて,やがてそれが自発的

に破れる「南部Jonalashino模型」の(アイソスピン)

カイラル対称性の破れによって,得られる系であり,

さらに,π0中間子は,その対称性の破れに伴って出現

したゼロ質量の擬スカラー・NGボソンと同定される

π中間子の1つ,中性のそれであって,局所ゲージ対称性

の破れに伴う「Higgs機構」で現実の質量を獲得した

粒子である,というストーリーが,一応,完結しました。

ただ,心残りは,参考に用いた弱い相互作用の扱いが,

古いFermiの現象論であることで,弱ゲージ粒子の媒介

する電弱理論ではないことですが,これについては,深入

りせず,またの機会に譲ることにしました。

しかし,最初,私が25~26歳(1975~1976年)の学生時代

に興味を持ち,それから15年間の普通のサラリーマン生活

を経て,42歳でクビとなり,フリーターになったのを機会に

40歳代での暇な時間に,主に物理学や数学の勉強を再開して

ここまで到達した結果の1つが,これまでのシリーズ記事

の内容ですが,学生時代に特に着目していたのは.このブロ

グ記事シリーズの最初の副題(止まると死ぬ)というテ-マ

の端緒となった問題でした。

これについては,詳しい記述を追加したいと考えますが

実は,この課題も既に,本ブログの2017年にアップした過去

記事:「摂動論のアノマリー(9)」で詳述しています。

そこで,これを再掲記事としてアップし,現在,気になる部分

を修正し追加することで,お茶を濁して今回の記事とします。

この注目の問題とは,「アノマリーの座標空間での計算」

に関わる記述です。

※ 以下,再掲記事です。

さて,これまでは,運動量空間での扱いが主でしたが,

ここまでの考察から.ア,ノマリーを含む,座標空間での

PCAC式:∂μ(x)=2im05(x)

+{α0/(4π)}Fξσ(x)Fτρ(x)εξστρが成立して,

最後のアノマリー項も単純な形で表わされることが,

わかりました。

この事実は,座標空間でのアノマリーの導出と,

その解釈が可能であることを示唆しています。

座標空間での論議を進めるに当たり,光子について

は量子化されてないc数の電磁場の半古典論に話を

限り,軸性ベクトルカレント:jが場:ψ~とψが

離れた2時空点にある場の積という非局所カレント

((bilocal current)の形の局所極限である。と見なす

ことにします。つまり,軸性カレントは.j(x)

=limε→0(x,ε)で与えられるとするわけです。

ただし,j(x,ε)

=ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)

×exp{-ie0x-ε/2x++/2dξ(ξ)} です。

ここで,右辺の最後の指数関数因子内の

積分:∫x-ε/2x++/2dξ(ξ)は,線積分:

x-ε/2x++/2dξλλ(ξ)を意味します。

そして因子:exp{-ie0x-ε/2x++/2dξ(ξ)}は

局所ゲージ変換:ψ(x)→ exp{-ie0Λ(x)}ψ(x),

かつ.Aμ(x)→Aμ(x)+∂μΛ(x)の下でのj

不変性を保証するために,必要な因子です。

この指数関数因子を,微小な正の数εの1次の

オーダーまで展開し,さらに,運動方程式を用いて

の4次元発散を計算します。

まず,j(x,ε)のεによる展開は,

5μ(x,ε)=ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)

×{1-ie0ελλ(x)}+(εの2次以上の微小項)

となります、

そこで,∂μ(x,ε)

=ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)

×[-ie0ελμλ(x)

-ie0{Aμ(x+ε/2)-Aμ(x-ε/2)}]

+2im05(x,ε)+(εの2次以上の微小項)

となります。

結局,∂μ(x,ε)

=j(x,ε)e0ελμλ(x)+2im05(x,ε)

+(εの2次以上の微小項)という式が得られます。

※(注1):この結果は,電磁場:Aμ(x)が線積分に

おいて,経路依存であるために得られるもので,

しかも積分路が直線分であることが,本質的な意味

を持っています。

以下に,これの厳密で詳細な計算を書き下します。

すなわち,∂μ(x,ε)

={∂μψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)

+ψ~(x+ε/2)γμγ5μψ(x-ε/2)}

×exp{-ie0x-ε/2x++/2dξ(ξ)}

+ψ~(x+ε/2)γ5γμψ(x-ε/2)

μexp{-ie0x-ε/2x++/2dξ(ξ)}

です。

ここでDiracの運動方程式:

(iγμμ-e0γμμ-m0)ψ(x)=0

を用いると,γμμψ(x)=-im0ψ(x)

-ie0γμμ(x)ψ(x),かつ,

μψ~(x)γμ=im0ψ~(x)

+ie0ψ~(x)γμμ(x) です。

故に,∂μψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)

=im0ψ~(x+ε/2)γ5ψ(x-ε/2)

+ie0ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)

×Aμ(x+ε/2),かつ,

ψ~(x+ε/2)γμγ5μψ(x-ε/2)

=im0ψ~(x+ε/2)γ5ψ(x-ε/2)

-ie0ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)

×Aμ(x-ε/2) です。

そこで,[ψ~(x+ε/2)γ5ψ(x-ε/2)

×exp{-ie0x-ε/2x++/2ξ(ξ)}}

をj5(x,ε)と定義すれば,

μ(x,ε)=2im05(x,ε)

+ie0ψ~(x+ε/2)γμγ5ψ(x-ε/2)

×{Aμ(x+ε/2)-Aμ(x-ε/2)

-∂μx-ε/2x++/2dξ(ξ)} となります。

それ故,もしも,∫x-ε/2x++/2dξ(ξ)が積分

経路に独立な関数なら,最後の{ }の因子はゼロ

となることを示します。

すなわち,まず,∂μx-ε/2x++/2dξA(ξ)

=limh→0

{∫x+gλμh-ελ/2-ε/2x+gλμh+ελ/2-∫x-ε/2x++/2}

dξ(ξ)]/h

=Aμ(x+ε/2)-Aμ(x-ε/2)が成立します。,

最右辺は.電磁場:Aμが連続関数なのでε→0の

極限では,ゼロとなります。

そこで,もしも,∫x-ε/2x++/2dξμ(ξ)が積分経路

に独立なら,∂μ(x)=2im05(x)が成立づるわけ

です、これは,ベクトル解析のStokesの定理によれば,

μの4次元回転::rotν(Aμ)=∂νμ-∂μν

が,全てゼロの渦なしのポテンシャル場(保存力場)で

あるなら,スカラー場:φが存在してAμ=-∂μφと

表現できる場合に相当します。

しかし,電磁場が静電場でないなら,ゼロでない

rotν(Aμ)=Fνμが存在して,それらが電磁場の強さ

である電場:と,磁場:を表わすことは,電磁気学で

よく知られた事実です。

そこで積分は経路に依存するので,線積分の積分路

を特に直線分:lα={lα(τ):lα(τ)

=lα(0)+εατ,lα(0)=xα-εα/2,(0≦τ≦1)}と

選択すると,∫x-ε/2 x+ε/2dξA(ξ)

=εν01dτAν(l(τ)) となります。

また,積分路を直線分:Lα={Lα(τ):Lα(τ)

=Lα(0)+εατ,Lα(0)=xα-δαμΔx-εα/2,

(0≦τ≦1)} と選択すると.

x+Δx-ε/2x+Δx+ε/2dξ(ξ)

=εν01dτAν(L(τ))

μx-ε/2x++/2dξA(ξ)

=limΔx→0ν/Δx)[∫01dτAν(L(τ))

-∫01dτAν(l(τ))]

=limΔx→0ν[∫01dτ[{Aν(L(τ))-Aν(l(τ))

/{L(τ)-l(τ)}]=ενμν+ενO(ε),です。

一方,Aμ(x+ε/2)-Aμ(x-ε/2)

=εννμ+O(ε),

μ(x+ε/2)-Aμ(x-ε/2)

-∂μ-ε/2x++/2dξ(ξ)

=εν{∂νμ(x)-∂μν(x)}+ενO(ε)

を得ます。

以上から,式:∂μ(x,ε)

=j(x,ε)ie0ελμλ(x)+2im05(x,ε)

+O(ε2)が確かに得られました。(注1終わり※)

この式の真空期待値を取ると,単一の閉ループ

を通して,軸性ベクトルカレントがc数の任意個

の光子外場とcoupleする相互作用を記述する

生成汎関数の発散方程式を得ます。

すなわち,∂μ<0|j(x,ε)|0

=ie0<0|j(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)

+2im0<0|j5(x,ε)|0>+O(ε2) です。

この右辺の第1項は,形式的にはεのオーダー

であり,「摂動論のアノマリー(4)」において,

μ(x)

=ψ~(x){im0+ie0γμμ(x)}γ5ψ(x)

+ψ~(x)γ5{im0+ie0γμμ(x)}ψ(x)

=2im05(x),j5(x)≡ψ~(x)γ5ψ(x)

として.素朴にWT恒等式を導出したときには

無視されるべきものでした。

しかし,摂動グラフとしての注意深い計算に

よれば,<0|j(x,ε)|0>は,ε→+0 のとき

ε-1のオーダーで発散し,それ故,実際には右辺の

第1項の<0|j5μ(x,ε)ελ|0>の因子は,有限な

寄与をします。

詳細計算を実行すると,

ie0<0|j(x,ε)ελ|0>Fμλ(x)

={α0/(4π)}εμλξημλ(x)Fξτ(x)+O(ε)

となって,先の(アノマリーを含むPCAC式の真空

期待値に一致します。

長くなったので,以下は次の記事にします。

(つづく)

| | コメント (0)

2020年10月10日 (土)

物理学の哲学(13)(アノマリー)

物理学の哲学」の続きです。

余談は抜きで即本文です。

 前回の記事の最後では,

※この後,残っている問題は,カイラル対称性の自発的

破れによって,出現する擬スカラ-の零質量NGボソン

と同定される粒子場:πが現実の135~140 MeV程度の

ゼロでない観測質量を持つπ中間子であるため,には,

質量を獲得する必要があり,この質量を得るに至る

メカニズムを解明することだけです。

という内容のことを書きました。

この最後の課題自体が,大きなテーマの一つなので

質量獲得に関連する「Higgs現象」について

詳述した本ブログの過去記事「対称性の自発的破れと南部

-Goldstone粒子(12)」の全文を,不要部分を削除し修正

して再掲載します。

※以下は再掲の過去記事です。

素粒子論は,少なくともPoincare’不変性,(つまり,

並進,および,Lorentz不変性)を満たす理論ですから,

対称性の自発的破れが起これば,「南部-Goldstone

定理」が常に適用できるはずです。

しかし,現実において厳密にゼロ質量の粒子として

観測されている素粒子は,光子とニュートリノ?くらい

しか存在しません。(※今までは発見されていません。)

光子や(未発見の)重力子(graviton)などは力を媒介

するゲージ粒子場として記述される。とされています。

確かに,光子,重力子は,それぞれ,ベクトル粒子,テンソル

粒子であり,対称性の自発的破れに伴なうNGボソンと

して理解されています。

しかし,ニュートリノについては。スピノル対称性

(超対称性)に対応するNGフェルミオンと考えると.

低エネルギー定理の予言と矛盾する,ことが確かめられ,

NGフェルミオンなどというモノではなさそうです。

(※事実,厳密にはゼロ質量ではないことの証拠とされる

「ニュートリノ振動」という現象が確認されています。)

また,「近似的に」ゼロ質量の粒子としてはπ中間子が

存在します。実際,南部-JonaLasinoが素粒子論において

初めて対称性の自発的破れの概念を提唱し,NGボソンで

あると指摘したのは,π中間子でした。

実際,π中間子が近似的カイラル対称性の自発的破れに

対応するNGボソンであることは,その後の1960年代の10

年間に、カレント代数,低エネルギー定理などの多くの成功

により確かめられ,強い相互作用の解明に多くの寄与を

しました。

では,この零質量NGボソンの希少性は,対称性の自発的

破れが,現実には比較的稀な現象であることを意味している

のでしょうか?

答は否です。実は,「ゲージ理論の場合には対称性の自発的

破れと,観測される零質量NGボソンの間に1対1対応が成立

しない。」というのが,真なのです。

ゲージ理論において,共変ゲージの場合には,もちろん,

対称性が自発的に破れれば,零質量NG粒子が出現します

が,「南部-Goldstoneの定理」は,その出現するNG粒子

が,「正定値計量を持った物理的粒子」であることを主張

していません。

そして,もしも,それが「不定計量」を持ち,BRS不変

でないモードであれば,物理的状態空間;physでは.観測に

かからないことになります。

他方,Coulombゲージ;∇=0 や,時間的軸性ゲージ

0=0などの「非共変ゲージ」の場合は,正定値計量です

から粒子は観測にかかる粒子のはずですが,今度は

「南部-Goldstoneの定理」に要求される明白なLorentz

共変性の仮定が,元から破れているため,,必ずしも対称性

の自発的破れに伴なってNG粒子が出現するとは限らない

からです。こうした可能性は,Higgs-Kibbleらにより初めて

指摘されました。

このことを,具体的に示す最も簡単な模型は,

「Goldstone模型」のU(1)対称性をゲージ化して,電磁場

を導入する「Higgs模型」です。

これより前に,対称性の自発的破れを起こす最も単純な例

として「南部-Goldstone模型」を紹介しましたが,これは

系のLagrangian密度:が次式:,

=∂μφμφ+μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 

で与えられる模型でした。

この系での荷電スカラー粒子の複素場,φ,φの組を,

2成分のφ=[φ12]とφで記述し,さらに電磁場Aμ

も共存する,ここでの出発点となる系のLagrangian密度

を,=(-1/4)Fμνμν+(Dμφ)μφ+μ2φφ

-(λ/2)(φφ)2 としたモノを考察します。

ただし,Fμν=(∂μν-∂νμ)とします。またμ

は共変微分で,Dμφ=(∂μ-ieAμ)φと定義されます。

このとき,単純な「南部-Goldstone模型」の場合と同様

ここでも,treeグラフのレベルで,場:φについて,

<0|φ(x)|0>=v/√2=(μ2/λ)1/2となって,ゼロでない

真空期待値を生じます。

ここで,便宜上,複素場:φ(x)のシフトをφ(x)

={v+ψ(x)+iχ(x)}/√2,(ただしψ(x),χ(x)

は真空期待値がゼロの実スカラー場)としたものから,

変更して,極分解と呼ばれる次の形に取ります。

すなわち,φ(x)

={v+ρ(x)}exp{iπ(x)/v}/√2,です。

ここで,ρ(x)は真空期待値がゼロの実スカラー場,

であり,位相部分:exp{iπ(x)/v}は,G/Hの

非線型表現のNGボソン場パラメータ化として,

ξ(π)=exp{iπ(x)/f};π(x)

=Σa∈()πa(x)Xa とした,ξ(π)の

今のG/H=U(1)/{1}に対応するものです。

このとき,φの運動項は,

μφ=(∂μ-ieAμ)[(v+ρ)exp(iπ/v)/√2

=exp(iπ/v)[∂μ-ie{Aμ-∂μπ/(ev)(v+ρ)

/√2なので,(Dμφ)=exp(-iπ/v)

{∂μ+ie{Aμ-∂μπ/(ev)}(v+ρ)]/√2

です。それ故,(Dμφ)μφ=(1/2)∂μρ∂μρ

+(1/2)e2(ρ+v)2{Aμ-∂μπ/(ev)}

{Aμ-∂μπ/(ev)} です。

そこで,φφ=(1/2)(ρ+v)2より,

μ2φφ-(λ/2)(φφ)2

=(μ2/2)(ρ+v)2-(λ/8)(ρ+v)4

=(μ2/2)ρ2+(μ2/2)v2+μ2vρ

-(λ/8)(ρ4+4vρ3+6v2ρ2+4v3ρ+v4)

=(μ2/2-3λv2/4)ρ2-(λ/8)ρ4

-(λv/2)ρ3+(μ2v-λv3/2)ρ-V0[v/√2]

です。ただし,-V0[v/√2]

=(1/2)μ22-(λ/8)v4です。

v=(2μ2/λ)1/2=|μ|(2/λ)1/2なら

μ2v-λv3/2=0で,μ2/2-3λv2/4=-μ2より,

2=2μ2=λv2とし,M=ev=|μ|(2e2/λ)1/2

とおけば,=(-1/4)Fμν2

+(1/2)M2{(1+eρ/M)2{Aμ-M-1(∂μπ)}2

+(1/2)|(∂μρ)2-m2ρ2}

-m√λρ3-(λ/8)ρ4-V0[v/√2]です。

さらに,Uμ=Aμ-M-1(∂μπ)と定義します。

すると,Fμν=∂μν-∂νμなので,

=(-1/4)(∂μν-∂νμ)2

+(1/2)M2μ2(1+eρ/M)2+(ρ場の項)

となり,π(x)は完全に姿を消します。

しかも,ベクトル場:Uμは質量:Mを獲得

しています。

これを,Higgs現象(Higgs-Mechanism)と呼びます。

が,この現象を,もう少し詳しく見てみます。

まず,φ=(v+ρ)exp(iπ/v)/√2

→(v+ρ)/√2,および,Aμ → Aμ-M-1μπ=Uμ 

の変数変換は,ゲージパラメータ:θ(x)を,q数の場;

-1π(x)と置いた.「q数ゲージ変換」になっている

ことに注意します。

すなわち,零質量のベクトル場:Aμが,NGボソン場:

πを吸収して質量Mを持つベクトル場(Proca場):Uμ

になったのです。

(※=(-1/4)(∂μν-∂νμ)2+(1/2)M2μ2

で記述される有質量ベクトル場をProca場と呼びます。)

ここで,電磁相互作用を切ったとき,つまり,e=0と

したとき:e≠0の物理的粒子の自由度の収支を勘定

すれば,次のようになっています。

M=evですが,e=0では,零質量のAμ(2自由度),

零質量のπ(1自由度),零質量のρ(1自由度)であった

のが,e≠0では,質量MのUμ(3自由度),質量mのρ

(1自由度)となっています。

スピンが1の物理的モードは零質量のときはHelicity

が±1の2自由度しかないですが,質量を得ると静止系も

存在して,モードが1,0,-1の3自由度になることで,

不足している1自由度は,NGボソン場:πにより供給

されます。

e≠0では,は既にゲージ不変ではなくρ(x)や

μ(x)は,いわゆるゲージが固定された場です。

それ故,ρやUμのみで表わされたLagrangian密度は,

ある種のゲージ固定化がなされたものであり,通常,それ

をユニタリゲージと呼びます。

ユニタリゲージは理論の物理的内容が明白でよいの

ですが,Proca場の伝播関数

(gνν-kμν/M2)/(k2-M2)の紫外部:

k→∞での挙動が悪いため,理論が,くりこみ不可能です。

そこで,くりこみ可能な共変げ-ジの同じ理論に考え

直します、

「くり込み可能共変ゲージ」の項に入ります。

複素場;φのパラメータ化として,上の極分解の代わりに,

先に「Goldstone模型」で取った分解を用います。

すなわち,φ(x)={v+ψ(x)+iχ(x)}/√2とします。

このとき,Dμφ=(∂μ-ieAμ)(v+ψ+iχ)/√2

=[∂μψ-i{eAμ(v+ψ)+∂μχ}+eAμχ]/√2

(Dμφ)=[∂μψ+i{eAμ(v+ψ)+∂μχ}

+eAμχ]/√2より,

(Dμφ)μφ2=(1/2)[(∂μψ+eAμχ)(∂μψ+eAμχ)

+{eAμ(v+ψ)+∂μχ}{eAμ(v+ψ)+∂μχ}]

=(1/2)(∂μψ2)2+eAμ(χ∂μψ-ψ∂μχ)

+(1/2)e2μ2χ2+(1/2)e2μ2ψ2+(1/2)M2(Aμ

+M-1μχ)2+eMAμψ(Aμ-M-1μχ) です。

一方,φφ=(1/2)(v+ψ)2+(1/2)χ2

=(1/2)(ψ2+χ2)+vψ+(1/2)v2より,

φ)2=(1/4)(ψ2+χ2)2+v2ψ2+(1/4)v4

+(1/2)v22+χ2)+vψ(ψ2+χ2)+v3ψ

です。

μ2=λv2/2,m2=2μ2ですから,v=m/√λ

で,λv=m√λであり,μ2-(λ/2)v3=0,

-(λ/2)v2ψ2=-(1/2)m2ψ2 です。

それ故,μ2φφ-(λ/2)(φφ)2

=-(1/2)m2ψ2-(1/2)m√λψ(ψ2+χ2)

―(λ/8)(ψ2+χ2)2―V0[v/√2] を得ます。

ただし-V0[v/√2]=(1/2)μ22-(λ/8)v4)

です。

そこで,Lagrangian密度は,

=(-1/4)Fμν2+(1/2)M2{Aμ-M-1(∂μχ)}2

+(1/2)|(∂μψ)2-m2ψ2}+eAμ(χ∂μψ-ψ∂μχ)

+eMAμ2ψ+(1/2)e2μ22+χ2)

-(1/2)m√λψ(ψ2+χ2)―(λ/8)(ψ2+χ2)2

-V0[v/√2] と書けます。

この時点では,ゲージ固定がなされていないので,

ゲージ固定処方に従って,この0に,

GF+FP=-iδ[c~(∂μμ+(1/2)αB)]

=B∂μμ+(α/2)B2+ic~∂μμ

を付加したものを改めてとします。

これは普通の共変ゲージ条件です。

この可換群:U(1)に基づくHiggs模型では,この

共変ゲージの場合,FPゴースト:c,c~は全くの

自由場となりますから,必ずしも導入の必要はあり

ません。

上の,F+FP=-iδ[c~(∂μμ+(1/2)αB)]

=B∂μμ+(α/2)αB2+ic~∂μμ

とは別の,Rξゲージと呼ばれる便利な共変ゲージ

があります。

まず,Lagrangian密度:0の第2項にゲージ場

μとNGボソン場;χの遷移項:MAμμχがある

ことに注意します。

遷移項があると場の混合が起こり面倒ですから,

ゲージ固定項をうまくとって,これを相殺すること

を考えます。

複素場:φ(x)のゲージ変換:

δφ=-eθ(x)φ(x)は,φ(x)

={v+ψ(x)+iχ(x)}/√2 により,

2成分の場(ψ(x),χ(x))に対して,

δψ=-eθ(x)χ(x),

δχ=-eθ(x){v+ψ(x)}

と分解されます。

ところが,BRS変換:δはこの式で

θ(x)→ c(x)(FPゴースト場)とするものです。

ゲ-ジ固定項を次のようにとります。

RξGF+FP=-iδ[c~(∂μμ+αMχ

+(1/2)αB)]=B(∂μμαMχ)

+(α/2)B2+ic~(□+αM2+eαMψ)c

とします。

最後の変形では,ev=Mを用いました。

NL場:BをGauss経路積分,または運動方程式

を用いて消去します。 0 Rξ+Fに,

対する運動方程式:∂/∂B=∂μμ+αMχ+αB

=0 から,B=-(1/α)(∂μμ+αMχ)より,

RξF+F=-{1/(2α)}(∂μμ+αMχ)2

+ic~(□+αM2)c+ieαMc~cψ と

なります。

そこで,Aμとχの交差項:Mχ(∂μμ)が現われる

ため,これと0の遷移項:MAμμχと合わせて,

全微分項=4次元発散項: M∂μ(χAμ)

=MAμμχ+M∂μ(χAμ)となって作用積分では,

これらは落ちることになります。

このRξゲージでは,たとえ,可換群U(1)の場合でも

FPゴーストがc~cψの相互作用項を持つので,

もはや落とすことはできない,というデメリットは

あります。  (再掲記事終了※)

以上,過去記事のコピーで,お茶を濁してサボりました。

これには,続きの記事(13)gって,まだ共変ゲージで

BRS不変な系の対称性の的破れとNGボソンの考察

なこもありますが,今のゼロ質量粒子の希少性と質量獲得

の機構を理解するには,ここまでで十分です。

単純な「Doldsyone模型」で,<0|φ(x)|0>=v/√2

≠0の真空期待値が現われて,結果,U(1)対称性の自発的

破れが生じて,Φ=v/√2+(ψ+iχ)}/√2 により,

<0|ψ|0>=0,<0|χ|0>=0を満たす無矛盾な実スカラー

場のψとχへのシフトが必要が生じ,ψの方に-/1/2)m2ψ2

の,質量mの質量項が現われます。

そして電磁場と共存したU(1)局所ゲージ不変性が,

自発的に破れると,ゼロ質量ゲージ粒子の光子Aμも,

質量を獲得してProva場:Uμのベクトル中間子に

なることが,上述のHiggs機構の説明で解明された

と言えます。

今回はここまでです。このシリーズも終わりに

近づきした。(つづく)

| | コメント (0)

2020年10月 8日 (木)

物理学の哲学(12)(アノマリー)

「物理学の哲学」の続きです。

チョッと間があきましたが,前回の記事までで,

場の理論のσ模型を用いて軸性ベクトルカレント

の一般的な4次元発散に対するPCAC(部分的保存

の)式:∂μ=(fπ/√2)π+(アノマリー項)

を見出し,これを利用して中性のπ0中間子

の崩壊:π0→2γの崩壊率:1/τの予測計算

をすることが,可能となりました。

しかし,唐突にσ模型という場理論の模型

を提示されて,この系のカイラル対称性を仮定

した軸性ベクトルカレントが,現実のπ中間子

の場に関連すると書かれていた,ここまで参照

してきた1975年の学生時代から読んでいた論文

「Lectures on Elementary Particles and

Quantum Field Theory;(1970 Brandeis

University Summer Institute in Theoretical

 Physics)Volume!.」」に基づいて,ほぼそれに

忠実に過去記事も現在の記事も議論をたどって

記述してきましたが,実のところ,私には以前

から,急にこのσ模型なるモノが出てくる根拠

がよく理解できていませんでした。

そこで,ここからは,恐らくσ模型の原型である

だろうと思われた「南部-Jonalashino模型」に

ついて,考察してみます。

そのため,まず,本ブログの2017年8月末頃

にアップした過去記事「対称性の自発的破れと

南部-Goldostone粒子」のシリーズから必要部分

を再掲引用しながら,記述します。

さて,対称性の自発的破れを起こす例としては

まず,「南部-Goldstone模型」があります

これは系のLagrangian密度が,

=∂μφμφ+μ2φφ-(λ/2)(φφ)2 

で与えられる模型で,単一の複素スカラー場:φ

のφ4-相互作用系であり,ただし,質量項:(μ2φΦ)

の符号が通常粒子のそれと逆であるのが,通常の系

との本質的な違いになっています。

それ故,通常の<0|φ(x)|0>=0を満たす真空:

|0>の上では,φの場の励起モードは,負の2乗質量:

-μ2(<0(虚数質量:±iμ)を持つ,いわゆるタキオン

(Takiyon)となります。

ここでは,これよりは自明でない例として,

「南部-Jonalashino模型」(略してNJ模型)を

考察します。

「南部-Jonalashino模型」のLagrangian密度

は,Ψ~iγμμΨ+(G/N)[(Ψ~Ψ)2

+(Ψ~iγ5Ψ)2]で与えられます。

ここでは,以下の近似の意味を明確にするため,

Fermion場:ΨはN個のDirac場:ψi(i=1…N)

のSU(N)変換群の基本表現を示す列ベクトルで

あるとします。すなわち,Ψ=[ψ1,..ψ]とします。

そして,Ψ~ΓΨ=Σj=1ψj~Γψjと規約します。

元々のNJ模型は.N=1の単純な模型でした。

※「南部-Goldsyone粒子」関係のブログ過去記事の

シリーズをアップしたたのは,2017年頃(67歳の頃)

ですが,この「対称性の自発的破れ」について勉強

していたのは参考ノートによると1990年代(40歳代)

の頃で,確かそのときに1975年前後の学生時代に量子

アノマリーについて記述していた論文中で,出会った

σ模型というのは,これが元になっているのでは?

と思ったのでした。

この関連の過去記事では,N-Fermion系なのに,

N=1の1-パラメータθの位相変換群:U(1)の変換::

Ψ→ exp(-iθ)Ψ,および,カイラルU(1)変換:

Ψ→ exp(-iγ5θ)Ψの下での不変性を論じていた

のですが,ここでは,θをN-パラメータのベクトル

θ=(θ1,.,.θ)に,一般化したSU(N)のゲージ

変換:Ψ→ exp(-iθ)Ψ,および,カイラルSU(N)

ゲージ変換:Ψ→ exp(-iγ5θ)Ψを考えることに

します。こうすれば,N=2のアイソスピンSU(2)

不変性や,(p,n,λ)の3クォークを仮定したN=3

のフレイバーSU(3)不変な,N-Fermion系のσ模型

に対応することになる。と思います。

そして,SU(N)×SU(N)対称性群のうち,

カイラル対称性のSU(N)不変性が成立するには

に,(-mΨ~Ψ)(mはゼロでない固有値を持つ

質量行列)のようなFermionの質量項が存在しない,

という必要があります。

そこで,系の動力学により.Fermopnの質量項が

出現して,その結果,カイラルSU(N)対称性のみ

が,自発的に破れる可能性を調べます。

これは,系における4次のFermion相互作用項

(G/N)(Ψ~Ψ)2の形を考慮すると,複合場(Ψ~Ψ)

がゼロでない真空期待値:すなわち,<0|Ψ~Ψ|0

=-{N/(2G)} ≠0 を実現するなら,(-mΨ~Ψ)

の質量項を獲得した,という解釈で,可能になると期待

されます。つまり,Ψ~ΨΨ^~Ψ^-{N/(2G)}

置くことができれば,この,新たなΨ^については,真空

期待値が,<0|Ψ^~Ψ^|0>=0 と無矛盾となり,この

Ψ~Ψ=Ψ^~Ψ^-{N/(2G)}を満たすΨ^を,改めて

Ψと定義し直せば,質量項(-(Ψ~Ψ)が出現した。と

解釈できるわけです。

このとき,Ψ→ exp(-iγ5θ)Ψ に対する(Ψ~Ψ),

および,(Ψ~iiγ5Ψ)の変換則は,それぞれ,(Ψ~Ψ)

→(Ψ~Ψ)cos(2θ)-(Ψ~iγ5Ψ)sin(2θ),および,

(Ψ~iγ5Ψ)→ (Ψ~Ψ)sin(2θ)+(Ψ~iγ5Ψ)cos(2θ)

です。そして,カイラルカレント:jΨμγ5Ψ

によるカイラルチャージ:Q5=∫d3xj50(x) により,

[iQ5,Ψ~(x)iγ5Ψ(x)]

=∫d3[j50(y),Ψ~(x)iγ5Ψ(x)]

=2Ψ~(x)Ψ(x)なる交換関係が得られます。

何故なら,θ=ε>0が無限小カイラル変換:U(ε)

=exp(-iγ5ε)=1-iγ5εの場合を想定すると,,

Ψ→Ψ+δΨ=U(ε)Ψ, δΨ=-iγ5εΨなので,

(Ψ~Ψ)→ (Ψ~Ψ)-2ε(Ψ~iγ5Ψ),かつ,

(Ψ~iγ5Ψ)→(Ψ~iγ5Ψ)+ 2ε(Ψ~Ψ)であり,

[iεQ5,Ψ~(x)iγ5Ψ(x)]=2εΨ~(x)Ψ(x)

となるからです。 

それ故,<0|Ψ~Ψ|0>がゼロでないのは,カイラル

チャージ:Q5が矛盾なく定義できる対称性が,自発的

に破れていることを意味します。

そして,これは「南部-Goldstoneの定理」から,

カイラルSU(N)の破れに対応する擬スカラーの

複合場:(Ψ~iγ5Ψ)のチャネルに,(N2-1)個の

擬スカラーの南部-Goldstoneボソン,略して

NGボソンが現われることを意味します。

この,元のLagrangian密度の中には「素Heisenberg場」

のみでNGボソンは粒子場としてて用意されていないので

動力学的にに結合状態として供給される必要があります。

そこで,この問題を扱うには,補助場の方法と呼ばれる

技法を用います。

まず,Grassman数の外場:η,η~を導入して系の

FermionのGreen関数の生成汎関数を,経路積分の

形で,Z[η,η~]

=∫ΨΨ~[expi∫d4x{+η~Ψ+ηΨ~}]

によって与えます。

これの意味は,Zは係数がGreen関数:G(m,n)

η,η~のベキ級数の和である。ということです。

つまり,仮にZが1外場変数:ηのみの関数なら,

それをηでn回微分してη=0と置いたものが

n点Greenn関数:G(n)を与えるえるあるような

汎関数であり,Z[η,η~]は,さらに2変数に拡張

したものです。これにGauss積分の1を表わす因子:

1=∫σ~π~[expi∫d4

[-{N/(2λ){σ~2+π~2}]を挿入して、さらに

積分変数:σ~(x),π~(x)を次のようにσ(x),

π(x)に変数置換します。

すなわち,σ~=σ+(λ/N)(Ψ~Ψ),および,

π~=π+(λ/N)(Ψ~iγ5Ψ)とします。

すると,この変換で積分測度は不変:つまり

σ~π~=σπです。

故に,Z[η,η~]=∫ΨΨ~σπ

[expi∫d4x{(Ψ,Ψ~,σ,π)+η~Ψ+ηΨ~}

なる表現相木が得られます。

ただし,(Ψ,Ψ~,σ,π)

=Ψ~iγμμΨ+(G/N)(Ψ~Ψ)2

+(G/N)(Ψ~iγ5Ψ)2-{N/(2λ)}(σ2+π2)

-{λ/(2N)}(Ψ~Ψを)2-{λ/(2N)}(Ψ~iγ5Ψ)

です。このを湯川Lagrangianと呼べば,これに

対するσ,πについてのEuler-Lagrange方程式は,

σ=-(λ/N)(Ψ~Ψ),および

π=-(λ/N)(Ψ~iγ5Ψ)という式mになり,

これらをに代入し返すと,元のに帰着するため

LとLが等価なことが確かめられます。

において,特に,N=1としてΨをψと記すと,

このとき,=ψ~iγμμψ+G(ψ~ψ)

+G(ψ~iγ5ψ)2-{1/(2λ)}(σ2+π2)

-{λ/(2)}(ψ~ψ)2-{λ/(2)}(ψ~iγ5ψ)2

-Gψ~(σ+iγ5π)ψとなります、

さらに,補助場:σ=-(ψ~ψ,).π=-λ(ψ~iγ5ψ)

を導入して,代入すると,

=ψ~iγμμψ-Gψ~(σ+iγ5π)ψ

+(G/λ2)(σ2+π2)-{1/(2λ3)}(σ2+π2)

-({1//(2λ)}(σ2+π2) と書けます。

ところが一方,素朴なN=1のσ模型は,次のLagrangian

密度を持ちます。これは,陽子pのスピノル場:ψ(x)

中性π0中間子の場:π(x),および,スカラー中間子の場

σ(x)のみを含む単純な系のそれです。すなわち,

=ψ~{iγμμψ-G0ψ~(g0-1+σ+iπγ5)}ψ

+λ0{4σ2+4g0σ(σ2+π2)+g022+π2)2}

+(μ02/2)(2g0-1σ+σ2+π2)

+(1/2){(∂π)2+(∂σ)2}-(μ12/2)(π2+σ2)

です。

このσ模型のの表式と,先のN=1の

「南部-jonalashino模型」でのを比較して

類似点,相違点を見てみます。

まず,「南部-Jonalashino模型」は自発的破れが

生じる前には正確にカイラル対称性を持っている系

なので,元々,Fermion場:ψの質量項がない系である

としていますが,σ模型の実際の核子(p,n)のような

Fermionには裸の質量:m0≠0があり,m0=G0/g0

置けば,質量項:-m0ψ~ψ=-G00-1ψ~ψが存在する

はずです。

「南部-Jonalashino模型」のの第1行は,

[ψ~iγμμψ-Gψ~(σ+iγ5π)ψ]ですが,

これに,この質量項を加えると,

[ψ~iγμμψ-ψ~G(g0-1+σ+iγ5π)ψ]

となって,σ模型のLの第1行と一致します。

第2行以下の,σ,πの相互作用項は,σ模型の

項の方が複雑で,明らかに両者一致はしませんが

重要な共通点があります。

先のGreen関数の生成汎関数を再掲すると,

Z[η,η~]=∫ΨDΨ~σπ

[expi∫d4x{(Ψ,Ψ~,σ,π)+η~Ψ+ηΨ~}

ですが,これで先にDηDη~積分を実行したものを

単にZと書き,これをσ,πの1粒子既約グラフの総和

として,Legendre変換で変数を外場からσ,πに変換

したもの,または,摂動展開した項の(hc)のオーダー

のn次の展開係数の運動量表示がn点頂点関数:Γ(n)

となる有効作用:Γ[σ,π]から,時間tへの依存性を

はずした有効ポテンシャル:V[σ,π]を比較します。

これは,もはや演算子の関数ではなく期待値の関数

を意味します。

有効ポテンシャルについて上に,複雑な定義

書きましたが,要するに力学の系のLagrangian

が,L=T-Vと表現されるときの運動項を除く

相互作用ポテンシャル:Vを,量子論的に述べただけ

です。そこで,σ模型のと,南部-Jonalashino模型

のLでは,V[σ,π]は(σ,π)平面上の回転体で

あり,ワイン瓶底状の形で,結合係数λが大きくなる

と,(σ,π)=(0,0)以外に,V[σ,π]が停留置を取る

(σ,π)値が存在します。特に,では,π=0のとき.

σ=σ0≠0に最小値があります。

そして,V[σ0,0]<V[0,0]が成立するため,対称で

あったσ=0の真空(基底準位)が新たな真空に相転移

する,「対称性の自発的破れ」が生じるわけです。

これが,σ模型と南部-Jonalaxhino模型の両者の

有効ポテンシャルVが持つ,共通の性質です。

ただし,実際は「南部pJpnalashino模型」は,

場の演算子σが当然,満たすべき,<0|σ|0>=0

という真空の対称性条件が破れ,<0|σ|0>=σ0<0

となることから<0|ψ~ψ|0>=-σ0/λ>0の質量項

が出現してカイラル不変性が破れるのでしたが.σ模型

では,元々,∂μ=-μ120-1πのPCAC式しか成立

せず,カイラル対称性を持たない系です。

σ模型は,あらゆる次数までで,<0|σ|0>=0となる

ように,模型が全体に平行移動された形式を選択している

からです。つまり,σ模型は「南部-Jonalashino模型」

の系のカイラル対称性が破れた結果として得られる系

であると解釈されます。

※これで,後,残る問題は対称性が破れた時点では,

πがゼロ質量のNG・擬スカラーボソンに対応して

おたはずなのに,実際は135~140MeVのゼロでない

観測質量μを持つ粒子となるに至った,メカニズム

を解明するだけです。しかし,キリもいいし,この

問題は,次回に譲って,今回はここまでにします。(つ

| | コメント (0)

2020年9月25日 (金)

物留学の哲学(11)(アノマリー)

物理学の哲学」の続きです。

(※余談):今日は9月25日(金)です。

けさはゴミ出しに行くともう肌寒かったです。

温暖化で日本も亜熱帯気候に近くなり,日本

にはいないはずの動植物やデング熱,マラリア

などの細菌やウィルスもいて驚きます。

今年も秋は短かく,すぐに冬がくるのでしょうね。

今度は,時代劇で笠置シズ子が出てるのを見て

泣けました。時代劇チャンネルは,昭和の今は亡き

出演者が多くて,まだ,若くて元気なのかと勘違い

しますね。懐かしいですが。(余談終わり※)

※さて本題です。前回の記事では,このシリーズ

書いてきた内容を,自分の中で改めて整理する

ために長い要約を書き記しました。

今回は,その続きとして,まず,要約記事の直前の

前々回の記事を思い出し,その最後の部分を再掲載

して,そこから話の続きを進めたいと思います。

  • 以下は,まず再掲載記事の部分です。

前々回の記事「物理学の哲学(9)」の最後では,

中性のπ0中間子崩壊:π02γにおいて,入射

する,または静止状態のπ0中間子の運動量がqμ

の場合の,崩壊のS行列要素fiを書き下した式

を考察しました。これはLSZの公式により,

fi=<γ(k11)γ(k2,ε2);out|π0;in>

=i∫d4xf(x)(□+μ2)

<γ(k11)γ(k22);in|π0r|0>という

式で与えられますが,これはx表示ではincoming

漸近状態のπ0中間子の平面波の基本波動関数:

(x)=(2π)-3/2(2q0)-1/2exp(-iqx),および

崩壊して出てゆく2光子のincomingの状態関数:

(2π)-3(4k1020)-1/2ε1σ*ε2ρ*

×exp{i(k1+k2)x}によって,

fi=i∫d4x[(2π)-9/2exp{-i(q-k1-k2)}

(2q0)-1/2(4k1020)-1/2ε1σ*ε2ρ*σρ(k1,k2,q)]

と書けるはずです。

ただし,Sσρ(k1,k2:q)は,3粒子の運動量k1,k2

qに依存する部分の指数関数以外の因子です。

そこで,(2π)-1/2(2q0)-1/2(4k1020)-1/2ε1σ*ε2ρ*

σρ(k1,k2,q)は,上記Sfiの積分表示の被積分関数:

if(x)<γ(1,ε1)γ(k2,ε2);in|□+μ2)π0r|0>

のFourier変換の形になっています。

それ故,(2π)(4k1020)-1/2ε1σ*ε2ρ*σρ(k1,k2,q)

は,f(x)<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|(□+μ2)π0r|0>

から,,π0の波動関数f(x)をはずした2光子の状態

の振幅:<γ(k11)γ(k22);in|(□+μ20r|0>

のFourier変換(運動量表示であると考えられます。

他方,<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2):in|(□+μ20r|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρπ(k12)

によって関数Fπ(k12)を定義します。

すると,2種類のSfiの積分表示の比較から,

(2π)SσΡ(k1,k2,:q)=k1ξ2τεξτσρπ(k12)

なる等式の成立がわかります。

と書いたところて記事は終わりました。 

(※以上,再掲記事終わり※)

ここからが,今回の続きの記事です。

さて,これまでは電磁場の存在しない場合の

σ模型を論じてきましたが,これに電磁場:Aμ(x)

を含めるには,元のσ模型のLagrangian密度:

に,-(1/4)Fμνμνと,-e0ψ~γμψμ

2項を加えるだけです。

すると,三角グラフの存在のために,PCACの素朴

な方程式:∂μ=(fπ/√2)πは,次のように

アノマリーを持ち形に修正されます。

すなわち,∂μ=(fπ/√2)π

+(1/2){α0/(4π)}Fξστρεξστρ  です。

ただし,右辺最後のアノマリー項の因子:(1/2)

は,単にσ模型の軸性カレントの具体的な表式:

=(1/2)ψ~γμγ5ψ+σ(∂μπ)-π(∂μσ)

+g0-1(∂μπ)の最初の核子項に現われる因子

の(1/2)を反映したものです。

そこで,適切に正規化された(くり込まれた)Feynman

規則を導入し,QEDでの論旨を同様に実行することに

より,これが電磁相互作用と強い相互作用の両方の

摂動論の全ての次数まで正しいことを示せます。

つまり,三角グラフへの如何なる仮想光子,仮想中間子

の輻射補正もアノマリー項とそのの係数を変えること

はないわけです。

上述の考察の全ては,先のσ模型では,アイソスピン

対称性変換群のSU(2)群の基本表現の核子(p,n)系を

想定していましたが,これを,ハドロンのクォークの

フレイバーSU(3)群の基本表現(p,n,λ)系への一般化

に持ち込むことができます。

(※ 現在では(u,d,s,c,t,b)の6種の存在が

認められているクォークは,過去の記事で参照した論文

出版時の1970年当時には,)u,d,sの,3種だけと

考えられていて,(p,n,λ)と記すのが慣習でした。)

(p,n,λ)を基底とするSU(3)のケースなら,Ψは

3成分でψ=(ψ123)に置き換えられ,スカラー

中間子σと:擬スカラー中間子πは9重項の中間子

(1重項+8重項)に置き換えられるため,軸性ベクトル

カレントは,8成分のカレントとなり,π0に対応

するのは,その第3成分:5μ(3)になります。

それ故,π0に対してのアノマリーを持つPCAC方程式

は,∂μ5μ(3)=(fπ/√2)π0r+S{α0/(4π)}Fξστρ

×εξστρ と書けます。

ただし,係数Sは,S=Σiii2で定義されています。

ここにQiはJ5μ(3)の中に素粒子場として現われる

i番目のFermion(クォ―ク) の電荷であり,giは,

その結合定数です。つまり,J5μ(3)=Σiiψ~iγμγ5ψj

+(中間子項)という表式でのgiを意味します。

これも摂動論の全ての有限次まで正しい式です。

Sに対する表現:S=Σiii2の解釈はアノマリー

へのトータルの寄与は,個々の素Fermi粒子を全て

巻き込む,各々の三角グラフの寄与の総和による

と考えるからです。

PCACB関係式:μ5μ(3)=(fπ/√2)π0r

+S{α0/(4π)}Fξστρεξστρ は,素朴な4次元

発散が,乗法的くり込み可能な任意のくり込まれた

場の理論において,正しいと予測されます。

したがって,正しいPCAC式は,μ5μ(3)

(fπ/√2)π0r+S{α0/(4π)}Fξστρεξστρ.

よなりますが,これはσ模型のような特殊な場理論

の模型でなく,一般的なクラスの模型でも成立する.

正確な方程式である,と考えられます。

そして,次は「摂動論のアノマリー(20)」の

「π0 崩壊の低エネルギー定理」という項目

から引用した議論です。

アノマリーを持つ4次元発散の真空から2光子への

行列要素としての正確な「低エネルギー定理」を考える

ため,まず,∂μ5μ(3)=(fπ/√2)π0r

+S{α0/(4π)}Fξστρεξστρ.における素朴な

4次元発散の値:(fπ/√2)π0rがπ0中間子の場

であることに着目します。

この場合「低エネルギー定理」は,π0中間子の質量

がゼロでのoff-shellに外挿されたπ0 → 2γの振幅に

ついての命題が得られます。

π0 → 2γの振幅:Fπ(k12)の標準定義は,

<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2):in|(□+μ20r|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρπ(k12)であったことを思い起こします。

そして,くり返しになりますが,別の過去記事では,

<γ(k11)γ(k22):in|μ|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρF(k12),

<γ(k1,ε)γ(k22);in|2im05|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σε2ρ*

×εξτσρG(k12),

<γ(k11)γ(k22):in|{α0^/(4π)}

(Fξσ+FRξσ)(Fτρ+FRτρξστρ|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρH(k12)

として,(k12)の関数:F,G,Hを定義し,これら

は実は対数発散するので,切断Λを入れて正規化した

Λ,GΛ,HΛのくり込まれた量であるF~,G~,H~,

つまり,F~(k12)=limΛ→∞Λ(k12) etc.

に対して,F~(0)=0,G~(0)=-H~(0)=-2α/π

が成立する。という「低エネルギー定理」

を得ています。今の場合はアノマリー項の因子Sを

含めるように,係数Hを定義し直すとH~(0)=2αS/π

となるので,G~(0)=-H^(0)=-2αS/πです。

そしてF(k12),G(k12),H(k12)の

定義式を,Fπ(k12)の定義式:

<γ(k11)γ(k22)in|(□+μ20r|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

εξτσρ×Fπ(k12)と比較して,(k12)=0の場合を

考えると,上記の「低エネルギー定理」

は,G~(0)=-2αS/π=(μ-2π/√2)Fπ(0)

となります。

すなわち,π0崩壊のSg等列要素の真空から2光子

への因子:Fπに対しては,正確な「低エネルギー定理」

は,Fπ(0)=-(2√2μ2αS)/(πfπ)を意味する

ことがわかります。

何故なら,π0の運動量:qμ=k1μ+k2において.

2=(k1+k2)2=0,つまり,(k12)=0の

低エネルギーは.質量がゼロのoff-Shel(質量殻外に

ある仮想π中間子状態意味しますが,このときには,

<γ(k11)γ(k22);in|(□+μ20r|0>

={-(k1+k2)2+μ2)}

×<γ(k11)γ(k22)|π0|0>

=μ2<γ(k11)γ(k22)|π0r|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ

×Fπ(0)となります。

ところが,π0を含むPCAC関係式:∂μJ 5μ(3)

=(fπ/√2)π0r+S{α0/(4π)}Fξστρ

×εξστρ.によれば,

μ2π0r=(√2μ2/fπ)∂μJ 5μ(3)

-(√2μ2S/fπ){α0/(4π)}Fξστρεξστρ.

です。

それ故.μ2<γ(k11)γ(k22);in|π0|0>

=(√2μ2/fπ)

×<γ(k11)γ(k22);ih|∂μ(3)|0

(√2μ2/fπ)0/(4π)}

<γ(k11)γ(k22);in|Fξστρεξστρ|0>

と書けます。

そして,この式の両辺の各項から,共通因子

の(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρ除けば,Fπ(0)=(√2μ2/fπ)F(0)

-(√2μ2/fπ)H(0)を得ますが,これはくりこんだ

は,π(0)=(√2μ2/fπ)F~(0)-(√2μ2/fπ)

×H~(0)となります。そして,この右辺第1項の

 ~(0)は,<γ(k11)γ(k22);in|∂μ5μ(3)|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρF(k12)の係数Fをくりこんだ量

ですが,これは,低エネルギーのq2=(k1+k2)2

=0ではF(k12)=F(0)=0,であり,

F~(0)=0です。

したがって,結局,π(0)=-(√2μ2π)H~(0)

を得ます、

 ここで先の「低エネルギー定理」によれば,

0=F~(0)=G~(0)+H~(0)であって

H~(0)=2αS/πより,G~(0)=-H~(0)

=-2αS/πなので,π(0)=(√2μ2/fπ)G~(0)

-(2√2μ2αS)/(πfπ)が得られます。

ところで,

<γ(k11)γ(k22);in|(□+μ20r|0>

={-(k1+k2)2+μ2}

×<γ(k11)γ(k22)|π0|0>

ですから,(k1+k2)2=μ2の(on-shell;

量殻上)にあるときは,(k12)=μ2/2

なのですが, このと両辺がゼロで,左辺は

π(k12)=Fπ2/2)に比例する量なので,

π2/2)=0となりそうですが,実際には,

<γ(k11)γ(k22)|π0r|0>が,(k1+k2)2=μ2

に極を持つ,と考えられるので、この質量殻上での

π,(μ2/2)は。一般にゼロにはなりません。

しかし,<γ(k11)γ(k22)|π0|0>は,

質量殻外の(k1+k2)2=0 には、極を持たない

ので.(k1+k2)2=0  のとき,

(k1+k2)2<γ(k11)γ(k22)|π0|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρG~(k12)(k1+k2)2は,ゼロです。

またまた,くり返しになりますが,π0 → 2γ

の崩壊行列要素は,Sfi

=<γ(k11)γ(k22);in|(□+μ20r(x)|0>

=i∫d4x(2π)-4 exp{-i(q-k1-k2)x}

(2π)-3/2(2q0)-1/2

×<γ(k11)γ(k22)|(□+μ20|0> 

で与えられますが,他方,

<γ(k11)γ(k2,ε2)|(□+μ20r|0>

=(4k1020)-1/2ったので,

1ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ

×Fπ(k12)であπ(0)

=-(2√2μ2αS)/(πfπ)は,低エネルギー

でのπ0 → 2γの振幅が,直接:∂μJ 5μ(3)

(fπ/√2)π0r+S{α0/(4π)}Fξστρ

×εξστρ.のアノマリー項に比例することを

示しています。

この項はSに依存します。そして,Sは

素Fermi粒子の電荷Qと,その軸性カレント

での結合定数gからS=Σjj2 によって

決まります。

さて,求めるべき,π0の崩壊率:1/τ(τは崩壊寿命)

については,次の公式があります。

すなわち,1/τ=(μ3/64π)|Fπ2/2)|2..です。

これは,崩壊の反応体積をV,時間をTとすると,

単位体積当たりの遷移速度は,|Sfi|2/(VT)

(2π)4δ4(q-k1-k2)(2π)-9(8k1020q)

|Fπ2/2)|2

ε1,ε2|k1ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ|2]

で与えられます。ただし,E0=q0で,これは

π0中間子のエネルギーです。

※(注):何故なら,まず,Sfiは4元運動量保存の因子:

(2π)4δ4(q-k1-k2)を含み,VT=(2π)4δ4(0)

と同定されるので.|Sfi|2/(VT)は,因子:

(2π)4δ4(q-k1-k2)を1個含みます。

π0 →2γ反応では,Sfiが規格化因子:

(2π)-3/2(2k10)-1/2(2π)-3/2(2k20)-1/2

(2π)-3/2(2E0)-1/2を持つため,これは

|Sfi|2(VT)には(2π)-9(8k1020q)-1

の寄与をします。

そして,(k1+k2)2=μ2 のときk12=k22=0

より,(k12)=μ2/2なので,係数:Fπ(k12)

寄与はFπ2/2)です。

そして,π0の静止系を想定するとqμ=(Eq,)

=(μ,0)です。そこで,12とおくと,

k=||=μ/2ですから,k10=k20=k=μ/2です。

よっての向きを3軸(z軸)に取って=k3

すると,k1ξ2τで.ゼロでないのは,ξ=0,τ=3か,

ξ=3,τ=0のみです。

さらに,k1ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ=2k2ε0 3σρ

においてε12は横波を示すので,ε11=ε22=0,

より,ゼロでないのは,(σ,ρ)=(1,2),(2,1)のみで,

このとき,ε1σ*ε2ρ*=1です。

結局,Σε1,ε2|k1ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ|2

=|2k2ε0 312|2+|2k2ε0 321|2=8k4 

得ます。全空間Vに1個のπ0が存在する,という

規格化を考慮してπ0の1個当たりの崩壊確率を

求めると,1/τ(1/2!)∫d3132{V|Sfi|2

/(VT)}=(μ3/64π)|Fπ2/2)|2が得られます。

因子:(1/2!)は,2光子の区別不可能性による因子

です。こうして得られた評価式1/τ-1

=(μ3/64π)|Fπ2/2)|2において,Fπ2/2)

をFπ(0)=-(2√2μ2αS)/(πfπ)で近似すると,

結局,π0崩壊の崩壊率の近似計算値が,

1/τ=(μ3/64π)|8μ4α22/(π2π2)

=S2μ7α2/(8π3π2)で与えられることが

わかりました。

これに,具体的な物理定数の近似値:α~1/137,

μ~135 MeV,および,fπ~√2aπμ2/r,に

π=0.87μ~0.97μを代入,過去記事「弱い相互

作用の旧理論(7)」からの引用でr~1.21の代入

から得られるfπ=1.02μ3 ~1.13μ3をも,1/τを

与える式に代入すれば,崩壊率の近似計算値として

,1/τ=22.74S2eV~30.21S2eVを得ます。

一方,Rosenfeldによって引用されたπ0崩壊の

崩壊率の実験値は,

1/τexp=(1.12±0.22)×1016sec-1

=(7.37±1.5)eVです。(※つまり,π0

崩壊寿命は,τ~10-16sec程度です。また,現在

でのより正確な実験値は,1/τexp=(7.48±0.32)eV

です。)

そこで,仮にS2=1/4であれば,計算値が,

1/τ=5.68 eV~7.55eVと予測されます。

この結果からは,S2=1/4のときに実験値との

著しい一致を見ることになります。

ところが,π0が関わる軸性ベクトルカレント

では,クォークの基本3粒子の場:Ψ=(ψ123)

=(p,n,λ)の結合定数について,ストレンジ粒子

λは無関係で(g1,g2,g3)=(1/2,-1/2,0) です。

そして電磁カレントの[Uスピン不変性]から,

基本粒子の(p,n,λ)の電荷は,(Q1,Q2,Q3)

=(Q,Q-1,Q-1)というパターンを持ち,

Q=2/3とすると(Q1,Q2,Q3)=(2/3,-1/3.-1/3)

なのでS=Σjj2=1/6となります。

しかし,現在の見地では,クォークにはフレイバー

自由度とは独立に,カラー自由度が存在して,カラー

SU(3)対称性を持つことが知られており,この自由度

3により,S=(1/6)×3=1/2となるため,確かに

2=1/4を満たします。。 

現在,ハドロンを構成する基本粒子のクォーク

はフレイバー自由度も3個ではなく6個の

(u,d,s,c,t,b)=(up,down,strange,charm,

top,bottom)が存在すると,されていますが,

1970年当時は,そのうちの3個(p,n,λ)

=(u,d,s)の3種だけで基本クォークが

構成されると予想されていました。しかし

π中間子と関わるカレントのクォーク成分は

(u,d)=(p,n)だけなので,全体のフレイバー

自由度が3から6に増加しても,カラーを考量

したS=1/2という値には変わりなく実験値との

矛盾はないことになります。

荷電π中間子π±の平均寿命が,τ~2.6×10-8sec

観測されているのに対し,中性のπ0中間子の

平均寿命は,τ~10-16 sec程度と,はるかに短かく

π0→2γの崩壊は,π→μ+ν~の崩壊とは異なる作用

で,アノマリー項の寄与によるものと考えられると

いうのが,最終結論です。

そもそも,π中間子は,カイラルゲージ対称性を持つ

系の対称性の自発的破れで「南部-oldstonの定理」に

従って出現したゼロ質量の粒子(NG粒子)が,ゲージ

対称性の破れという特殊性で,Higgsメカニズムに

よって質量を獲得した粒子と解釈されています。

 それ故,元々質量は大きくなく,もしも本当にゼロ質量

なら中性π0の場合,理論上崩壊は禁止されるので,実際に

崩壊が生じるのはアノマリー存在のためと考えられます。

アノマリーは,ゴーストや仮想粒子のように,存在しても

実在として観測されないモノではなく,現実に観測され,

崩壊寿命の計算などに必要なモノです。

ここで,キリもいいので今回はここまでです。(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| | コメント (0)

2020年9月18日 (金)

物理学の哲学(10)(アノマリー)

「物理学の哲学」の続きです。

(※余談):今日は9月18日(金)です。

先日,私と同学年の岸部シローさんが亡くなられた

ようです。元GSのタイガースのメンバーで岸部一徳

さんの弟,時代劇では関西弁のキャラで面白かったの

ですが。。今年に入って,コロナで,志村けんさんも

亡くなられました。昨年は,ショ-ケン(萩原健一さん

,ちょっと前には,関西のやしきたかじんさんと,

1949/4~1950/3生まれの私と同学年の芸能人が

次々と病死されています。

有名人じゃなくても,ここ数年,同年代の身近な飲み

友達など,数人がガンなどの病気で他界しました。

皆,70歳以上で,諸行無常とはいえ,さみしいことです。

ところで,時代劇といえば,つい先日,専門チャンネル

を視ていると,昭和30年代,テレビを見始めた頃に映画

やTVで活躍されていた嵐寛寿郎さん(アラカン)と,

上原謙さんが「必殺」に出ていて,私,つい涙が出そうに

なりました。近衛十四郎さんもいたら完璧でしたがね。

結局,無名の馬の骨,有象無象の私だけが70歳にして

まだ,何とか,生きています。

「憎まれっ子,夜(ヨル)にハバカリ」とかね。。。

その昔,池袋の専門学校の講義で,このオヤジギャグ

をカマしても「ハバカリって何?」ということで全く

ウケませんでした。

ハバカリとは,便所,ご不浄,お手洗い,化粧室,雪隠

(セッチン),川屋(カワヤ),トイレ、W.C.(water-closet,

orウンコとシッコ)でんがな。。。(以上,余談終わり※)

 

※さて,本題です。

崩壊:π0→2γの崩壊率を求める問題は,今,初めて

考察してブログ記事を作っているのじゃなく,本ブログ

の過去に書いた記事を,ストーリーに従って並べ直して

いるだけです。

昔の記事をコピペしては,修正しながらアップして

いるうち,自分でも混乱してきたので,ここで,これまで

の記事の経過を,詳細を省いて主な結論だけを要約して

頭の中にあるストーリーを,整理してみました。

※ブログサイトの改編や,セキュリティ強化で図や写真

も入れたいけど,昔ほど簡単には挿入できず,文章ばかり

の内容なのも,混迷と退屈の原因カモね。)

さて,まず,裸の質量がm0,で,スピンが1/2の電子eや

陽子pなどのスピノル場:ψ(x)で記述されるFermionの

荷電粒子の場と電磁場(光子の場)Aμが共存する系で,

ψによる軸性ベクトルカレントの演算子:

(x)=ψ~(x)γμγ5ψ(x)を考えると,もしもm0=0

(質量がゼロ)なら,カイラルゲージ変換に対する系の

不変性が成立して,∂μ」」=0と,その軸性ルカレント

の4次元発散がゼロとなって,カレントの保存が成立

するのですが,一般には,m0≠0なので,∂μ

=2im05≠0であり,このカレントは,時間的に保存

される物理量ではありません。ただし,」5(x)

=ψ~(x)γ5ψ(x)です。この式はPCAC(部分的保存)

の関係式と呼ばれます。

ところが,電磁場の存在の下で頂点関数に対して成立

するはずのWard-高橋の恒等式(WT恒等式)を考察する

ために,カイラルの軸性頂点γμγを含むVVA三角ブラフ

(vector-vwctor-Axialvsctor diagram)の寄与を調べると

純粋にQEDの計算だけから得られた関係に,余分な項

アノマリー項(量子異常項)が存在することがわかり

ます。そして,これは簡単には除去できない本質的意味

がある項であることがわかります。

このWT恒等式のアノマリーは,実は.軸性カレント

のPCAC式に,アノマリー項が存在することに由来して

います。すなわち,∂μ=2im05

+{α0/(4π)}Fξστρεξστρなる関係式に起因

しています。

これら両辺の各項は,摂動論のFeynmanグラフの計算

では,対数発散し,有意な量とみるには正規化して補正

する必要がありますが,それはアノマリー項だけに効く

ので,補正率をCとすると,∂μ=2im05

+(1+C){α0/(4π)}Fξστρεξστρ と修正されます。

これがπ0→ 2γ崩壊率に如何に関係するか?を見るため

そのS行列要素:Sfi=<f;out|i;in>

=<γ(k11),γ(k22);out|π0;in>を考えると,

LSZの公式からSfi=i∫d4xfq(x)(□+μ2)

<γ(k11),γ(k22):in|π0r(x)|0>なる表式を

得ます。ただし,π0r(x)は,π0r(x)=(Z3π)1/2π0(x)

で定義される,π0中間子の(裸の)場:π0(x)のくりこまれた

であり,μは,π0の質量を意味します。

一方,後の便宜のため,∂μ=2im05

+(1+C){α0/(4π)}Fξστρεξστρ の両辺の各項

を,<γ(k11),γ(k22);in>|と,真空:|0>で

挟んだ行列要素を考えます。

これらは全てk1ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρに比例する

と考えられるので,それぞれ,

<γ(k11)γ(k2,ε2)|:in|μ|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρF(k12)

<γ(1,ε1)γ(k2,ε2);in|2im05|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρG(k12)

<γ(k11)γ(k22):in|

{α0/(4π)}Fξστρεξστρ|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρH(k12) と置きます。

すると,先の軸性ベクトルカレントのPCAC関係式

は,F(k12)=G(k12)+(1+C)H(k12)

に帰着します。

そして,F(k12)∝(k12)なる性質があるので,

2光子の4元運動量k1,k2が,k1~0,k2~0.である

ような低エネルギー極限では,F(0)=0であり,その

領域では補正Cは無視できるので

0=F(0)=G(0)+H(0),または,G(0)=-H(0)を

得ます。アノマリー項の低エネルギーでの寄与:

H(0)は,VVA三角グラフで,具体的に計算できて,

H(0)=2α0/πであり,故にG()=-2α0/πです。

しかし,実際にはF,G,Hは対数発散するので

切断Λを入れて正則化した量をFΛ,GΛ,HΛとして

これらのくり込まれた量をF~,G~,H~とします。

つまり,F~(k12)=limkΛ→∞Λ(k12).etc.です。

すると,k1~0.k2 ~0の低エネルギー極限では,

F~(0)=0,H~(0)=2α/πであり,G~(0)=-2α/π

になる,という定理を得ます。

これがQEDの軸性ベクトルカレントのPCACとVVA

アノマリーに関する「低エネルギー定理」です。

これらQEDのVVA三角アノマリーと「低エネルギー定理」

の結果を,π0中間子の崩壊と関連付けるため,一般化して,

場の理論のアイソスピン対称性を持つσ模型を導入します。

その系のLagrangian密度:のカイラル変換に対応する

Noetherカレント:jμ(x)=-δ)は軸性カレント

なので,これをj(x)と書くと,QEDの軸性カレントの

PCAC式と同じ形のカレントの4次元発散に対する関係式:

μ=(μ12/g0)πを得ます。(※ここでは5μπ

アイソスピンが1の,アイソベクトルです。)

さらに,π中間子の(裸の)場:πのくりこまれた場:πrと,

くりこみ定数Z3πを,,πr(x)=(Z3π)1/2π(x)で定義すると,

μ=(μ12/g0)(Z3π)-1/2πrとなります。

次に,π中間子の崩壊振幅:fπを次式で定義します。

すなわち,<π(q)|j|0>=(2q0)-1/2(-iqμ2)

×(fπ/√2.)とします。そして,これの4次元発散を

取り <π-(q)|πr|0>=(2q0-1/2因子をはずして

演算子式として,先の∂μ=(μ12/g0)(Z3π)-1/2πr

と右辺を比較すると,(μ12/g0)(Z3π)-1/2=fπ/√2

なる等式を得ます。

そこで,∂μ=(μ12/g0)(Z3π)-1/2πrのくり込み

定数が除去されて,物理量だけで書き表わしたPCAC

の関係式が得られて,∂μ=(fπ/√2)π

書けます。

ところが,中性子のβ崩壊:n→p+e+ν~に代表

される,弱い相互作用の現象論的Fermi理論では,荷電

π中間子の崩壊:π→μ+ν~の崩壊率を求めるには,

現象論的相互作用Hamiltonian:Hπ→μνの1次の効果で

ある,<Hπ→μν>=(G/√2)∫d4

<0|∂μπ(x)>{μ~(x)γμ(1-γ5)ν(x)}

という計算式を用いて行います。

(※ν~はニュートリノ:νの反粒子を意味します。)

しかし,π→μ+ν~に寄与するのは,V-Aカレントの

うち,Aの部分のみで,レプトン因子のA=軸性カレント

を,L^μ(x)=μ~(x)γμγ5ν(x)と表わせば,

崩壊振幅への実際の寄与は,(G/√2)∫d4

<0|∂μπ(x)>L^μ(x)となります。

そして,πの4元運動量がqμの粒子状態

への寄与を<0|∂μπ(x)>

=(2π)-3/2(20)-1(iqμ)(aπ)として,π中間子の雲

の振幅:aπを定義すると,崩壊:π→μ+ν~の振幅は,

<μν~|L^μ{0>

<0|(Gaπ/√2)(∂μπ)|π><π(q)>

と表現されます。そして,これによって崩壊率:1/τを

計算すると,1/τ={G2π2/(8πμ)}(mμ/μ)2 となり

ますが,これが実験値 1/τ ~3.84×107sec-1と合致する

には,,|aπ|=0.87μ~.97μである,ことが必要である,

と評価されています。

一方,擬スカラー場:πから作られる軸性ベクトル

μπの弱軸性カレントjに相当する寄与率:r

=g/gを考慮して,これから上述の崩壊振幅を

得るには,r<0|j(x)|π(q)>

=aπ<0|∂μπ(q)>となることが必要十分

です。この式の左辺で4次元発散を取れば,

r<0|∂μ(x)|π(q)>=aπ<0|□π(q)>

=-aπμ2<0|π(q)>となりますから,fπ/√2

=-aπμ2/rとすれば,∂μ=(fπ√2)πを得ます。

この式の右辺のπ中間子の場:π(x)を,くりこまれた場

π-r(x)である,と解釈するなら,これは,∂μ

=(fπ√2)π-r となります。

他方.σ模型のPCAC関係式はアイソベクトルπについて,

μj5μ=(μ12/g0)(3π)-1/2πrでしたから,両者の関係式

が一致することを要請すれば,再び,(μ12/g0)(Z3π)-1/2

=fπ/√2が成立するはずです。

このPCAC式が,荷電π中間子πだけでなく,中性の

π0中間子でも成立するなら,∂μ=(fπ/√2)π0rです。

そこで,中性のπ0中間子においても,係数fπは荷電π

中間子の崩壊率に比例する量であるとが証明されました。

結局,QEDではないσ模型でも,三角グラフを通して

2光子と相互作用する電気的に中性な軸性ベクトルカレント

がPCACの条件を満足するとき,その4次元発散:

μが,πの場に比例するという結果を得ました。

(※ここまでが,これまでの記事の要約です。)

今回は,これ以上進むと長くなるので,(9)までの

要約のみでした。(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| | コメント (0)

2020年9月12日 (土)

物理学の哲学(9)(アノマリー)

物理学の哲学」の続きです。

 今回も余談抜きです。

さて,これまでの記事内容と重複するかも

知れませんが,粒子の散乱などの量子遷移現象

において,初期状態,or 始状態を,|i>,終状態を

|f>で記述すると.|i>から|f>への散乱行列

(S行列)要素:Sfiは,ユニタリ変換だけ異なる

2つの完全系:incomibg漸近場の状態と

outgoing漸近場の状態によって,

fi=<f;out|i;in>=<f;in|S^|i:in>

で定義されます。そして,S^演算子は,<f;in|

=<f;out|S^で定義されます。

今のπ0→2γの崩壊過程では,|i>=|π0

であり,|f>=|γ(11)γ(k2,ε2)>です。

そして,これに,LSZの還元公式を用いると,

fii∫d4x(2π)-3/2(2q0)-1/2exp(-iqx)

(□x+μ2)<γ(k1,ε1)γ(2,ε2);in|π0r(x)|0>

と書けます。ただしπ0r(x)は,くりこまれた中性の

π0中間子の場(擬スカラー場)であり,μはπ0の質量

です。そして,Klein-Gordon演算子:(□+μ2)を挿入

しているのは,始状態で,入射するπ0のincoming漸近場:

π0in(x)が,その自由場と同じ方程式に従うため,

(□+μ20in=0のKlein-Gordon方程式を満たす

からです。

ここで,本ブログの過去記事「LSZの公式(4)」から,

LSZ(Lehmann-Synmanzik-Zimmerman)の公式の

紹介記事を,今のπ0中間子の崩壊過程に適用するため,

少し修正して再掲載します。

 参考にしたのは,J.D.Bjorken とS。D。Drellの共著

「Relativistic Quanrum Field」(McGrawHill) です。

これは私が学生の頃の場の量子論の標準的テキスト

でした。(※もっとも,当時は1ドル360円の時代で,洋書

は高価で貧乏学生だった私は,研究室図書館の蔵書を青焼き

コピーしてファイルににして使ってました。これを買えた

のは,サラリーマンに就職後です。※)

※さて,以下は修正した再掲記事です。

粒子群:αに4元運動量がpのπ中間子1個

が加わった入射粒子群のincomingの漸近状態を

意味する:|αp;in>から,終状態の粒子群:βの

outgoing漸近状態のKet:<β;out|への遷移振幅

を示すS行列要素(散乱業辣要素)を与えるS行列

要素:Sβ(αp)=<β;out|αp;in>を考察します。

以下,漸近条件を用いて,始状態:|αp;in>と

終状態|β;out>の両方から1粒子pを差し引く

代わりに,適当な場の演算子を挿入した式が

得られることを示します

質量がμのπ中間子の漸近場の消滅演算子;

in^(p),および,aout^(p)は,それぞれ,

in^()=i∫d3(x)∂0πin(x),

および,aout^()=i∫d3(x)∂0πout(x)

という表式で書けることを用います。

他方,これら漸近場の生成演算子:ain^(p)と

out^(p)の方は,上式の両辺のHermite共役を

取れば得られます。

ただし,f(x)=(2π)-3/2(2ωp)-1/2

exp(-ipx)です。(ω=p0=(2+μ2)1/2)

一方、f(x)=(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(ip)

で,これらは,(□+μ2)f=0,(□+μ2)f*=0

を満たす平面スカラー波の解です

 また,任煮,の2つのtの関数:a(t),b(t)に

対して,a(t)0b(t)で与えられる関数を,

a(t)∂0b(t)=a(t){∂b(t)/∂t}

-[∂a(t)/∂t}b(t) で定義しています。

そこで,<β;out|αp;in>

=<β;out|ain^(p)|α;in>

=<β;out|aout^p)|α;in>

+<β;out|ain^(p)-aout^(p)|α;in>

=<β-p;out|α;in>

-i<β;out|∫d3x[p(x)∂0

in(x)-πout(x)]]|α;in>と書けます。

 |β-p;out>は,もしも集合:βの中にp

が存在する場合は,βからpを除いた終状態を

表わしますが,βの中にpが存在しない場合は,

この項はゼロで消えてなくなります。

また,|αp;in>が,初期に2粒子がある場合の

散乱を表現しているなら,<β-p;out|α;in>

は入射粒子と標的粒子が運動量を含め,それら

の量子数を保存する前方弾性散乱のみに寄与

します。つまり,<β-p;out|α;in>

=δ(β-p)αです。

(※ 何故なら|α;in>が1粒子の場合は,

<β-p;out|P^2|α;in>

=α2<β-p;out|α;in>

=(β-p)2<β-p;out|α;in>なので,

<β-p;out|α;in>≠0である場合は,

(β-p)2=α2=μ2ですから,|β-p;out>

も同じ1粒子の終状態です。

そして,また,<β-p;out|P^μ|α;in>

=αμ<β-p;out|α;in>

=(β-p)μ<β-p;out|α;in>

ですから,<β-p;out|α;in>≠0のときは,

(β-p)μ=αμ,つまり,βμ=(α+p)μと,

4元運動量が不変な弾性散乱で,しかも方向を

変えず素通りする前方散乱のみの振幅を意味

するからです。※)

さて,<β;out|αp;in>

=<β-p;out|α;in>

-i<β;out|∫d3x[(x)0

in(x)-πout(x)}]|α;in> の右辺の

項:-i∫d3<β;out|fp(x)∂0

in(x)-πout(x)}|α;in>

は「Greenの定理」によって時間tに依存しません。

そして,始状態,終状態の散乱状態の粒子たちが

波束のように,あるf(x)≠0の形の有限な台に

局所化されていることを保証する漸近条件:

limt→-∞<α|π(t)|β>=Z1/2<α|πin(t)|β>,

limt→+∞<α|πf(t)|β>=Z1/2<α|πoutf(t)|β>

の要請,を満たすことから,t=x0→ -∞ の極限では,

πin(,t)を,Z-1/2π(,t)で,また,t=x0→ +∞

の極限でも,πout(x,)を,やはり,Z-1/2π(,t)

で置き換えることが許されます。

(※Zは,π(x)のくりこみ定数を意味しています。)

 それ故,結局,<β;out|αp;in>

=<β-p;out|α;in>

+(iZ-1/2(lim0→ +∞-limx0→-∞)

<β;out|∫d3(x)∂0π(x)|α;in>

と書くことができます。

これが,Reduction手続きの最初の段階です。

これから,より便利な形を得るために,公式:

(lim x0→ +∞-lim x0→ -∞)∫d31(x)∂02(x)

=∫-∞4x[∂0{g1(x)∂02(x)}]

=∫-∞4x[g1(x)∂022(x)

-{∂021(x)}g2(x)]が成立すること

を用います。

そこで,g1(x)=f(x),g2(x)

=π(x)として,これに代入すると,

1(x)=fP(x)は,(□+μ2)f(x)=0

を満たすので,∂02(x)=(∇2-μ2)f(x)

Gが成立します。

 よって,Z-1/2(lim x0→+-limx0→-∞)∫d3

<β;out|f(x)∂0π(x)|α;in>

=iZ-1/2-∞4x<β;out|

(x)∂02π(x){∂02p(x)}π(x)|α;in>

=iZ-1/2-∞4x<β;out|f(x)

(∂02+μ2)π(x)-(∇2(x))π(x)]|α;in>

となります。

 結局,Z-1/2(lim x0→+-limx0→-∞)∫d3

=iZ-1/2-∞4xfp(x)(□+μ2)

<β;out|π(x)|α;in> なる表式を得ます。

ここで,最後の式変形では部分積分に対する

「Greenの公式」を用いました。

したがって,元のS行列要素の始状態,終状態

の両方から1粒子を減ずる還元公式の最終式

として,Sβ(αp)=<β;out|αp;in>

=<β-p;out|α;in>

+iZ-1/2-∞4xf(x)(□+μ2)

<β:out,|π(x)|α;in>

が得られました。 (再掲記事終了※)

今のπ0中間子の崩壊のS行列要素:

fi =<γ(k11)γ(k2,ε2);out|π0in>

=<γ(k11)γ(k22);in|S^|π0in>

に対するLSZの公式を考えると,上記で,

<β;out|=<γ(k11)γ(k22);out|

とし,|αp;in>=|π0in>として,それ故,

|α:in>は,真空:|0>を意味するので,上記

の最終形の式で,π中間子の場π(x)を,π0中間子

の場:π0(x)に置き換え,そのくりこまれた場

を,π0r(x)と書いて,π0r(x)=Z1/2π0(x)

と乗法的に定義されているなら,入射π0粒子の

4元運動量がpμでなく,qμの場合の崩壊の

S行列要素として,

i=<γ(k11)γ(k2,ε2);out|π0;in>

=i∫d4xf(x)(□+μ2)

<γ(k11)γ(k22);out|π0r|0>

なる表式が得られます。

ここで,始状態,および.終状態を共に

incomingの漸近状態のx座標表示で表わすと,

それぞれ,<x|π0 ;in>=f(x)

=(2π)-3/2(2q0)-1/2exp(-iqx),および,

γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);in|x>σρ

=(2π)-3(4k1020)-1/2ε1σ*ε2ρ*

exp(ik1x)exp(ik2x) です。

そこで,S行列要素:fii∫d4xf(x)

<γ(k1,ε1)γ(k2,ε2);out|(□+μ2)π0|0>

を,このx表示で書けば,未知の因子を

σρ(k1,k2:q)として,Sfi=i∫d4x(2π)-9/2

(2q0)-1/2exp{-i(q-k1-k2)x}

(4k1020)-1/2ε1σ*ε2ρ*σρ(k1,k2:q)

なる形に書けるはずです。

そこで,(2π)-1/2(2q0)-1/24k1020)-1/2

ε1σ*ε2ρ*σρ(k1,k2:q)が,f(x)

×<γ(1,ε1)γ(k2,ε2);in|(□+μ2)π0r|0>

のFourier変換(運動量表示)になっています。

それ故,(4k1020)-1/2ε1σ*ε2ρ*(2π)×

σρ(k1,k2:q)がが,S行列要素の,運動量表示

(x)<γ(1,ε1)γ(k2,ε2);in|

(□+μ2)π0|0>から,|π0;;in>から,波動関数

(x)=(2π)-3/2(2q0)-1/2exp(-iqx)

を除いた因子である

<γ(k11)γ(k22);in|(□+μ2)qπ0r|0>

のFourier変換(運動量表示になっている

と考えられます。

そこで,Sfi=i∫d4xf(x)(□+μ2)

<γ(k11)γ(k22);in|π0r|0>

の被積分関数を[(2π)-9/2(2q0)-1/2

exp{-i(q-k1-k2)x}

(4k1020)-1/2ε1σ*ε2ρ*1ξ2τε1σε2ρ*

εξτσρπ(k12)と書いて,

fi=i∫d4x(2π)-9/2(2q0)-1/2

exp{-i(q-k1-k2)x}(4k1020)-1/2

ε1σ*ε2ρ*σρ(k1,k2:q)の被積分関数

と等置すれば,(2π)SσΡ(k1,k2,:q)

=k1ξ2τεξτσρπ(k12) となります。

今回は,ここで終わります。(つづく)

| | コメント (0)

2020年9月11日 (金)

物理学の哲学(8)(アノマリー)

物理学の哲学」の続きです。

余談は省略で,さっそく本題の続きに入ります。

 前回は,QED以外に,部分的保存(PCAC)を満たす

場理論のσ模型を導入して,π中間子の崩壊振幅

πを,次式で定義しました。

すなわち,<π(q)|j|0>

=(2q0)-1/2(-iqμ2)(π/√2.)です。

ここで,μはπ中間子の質量です。

アイソベクトル場:πを含むσ模型では,πもj

も中性成分だけでなく荷電成分を持つため,fπ

丁度,荷電π中間子の弱い崩壊振幅に等しいもので

あることがわかります。

特に,中性のπ0に対する先の「不完全版」の

σ模型の中性軸性べクトルカレントj(x)は,アイソ

軸性ベクトルカレントj(x)の,アイソ第3成分です

から,それを5μ(3)(x)と記し.中性カレントでの表現:

<π(q)|j|0>=(2q0)-1/2(-iqμ2)fπ/√2.

を,<π0(q)|5μ(3)|0>=(2q0)-1/2(-iqμ2)fπ/√2.

と書き直します。

荷電π中間子の場の演算子は,π=(π1-iπ2)√2,

および,π=(π1+iπ2)/√2,ですが,,一方,粒子の

状態ベクトルとしては,|π>=|π1+iπ2>/√2,

および,{π>=|π1-iπ2>/√2でしたから,

πの崩壊:π→ μ+νμ~, π→ e+νe~

おける行列要素:<α|π>の向きを逆転させた

要素:<π{α>は,<π{α>=<α|π

なるはずです。これは,つまり,Bra:,|π

=|π1-iπ2>/√2に対し,Ket<π|=<π1+iπ2|/√2

が対応することを示している,と考えられます。

そこで,軸性ベクトルカレントの第3成分は,

5μ(3)Ψ~γμγ5τ3Ψ+σ(∂μπ3)-π3(∂μσ)

+g0-1(∂μπ3)なる演算子で与えられますが,これを

アイソ回転して得られるアイソカレントの+成分は

第3成分:j5μ(3)τ3ではなく,τを対応

せたj5μ(+)=(1/2)Ψ~γμγ5τΨ+σ(∂μπ)

-π(∂μσ)+g0-1(∂μπ),(τ=(τ1-iτ2)/√2,

π=(π1―iπ2)/√2.)となるはずです。

それ故,<π(q)|j5μ(+)|0>

=<π12)(q)|(j5μ(1)ij5μ(2))|0>/2

(2q0)-1/2(-iqμ2)(fπ/√2) となります。

ここで,k=1,2,3の各々のπはkが同じカレント

5μ(k)のみ相互作用することができて,kに関わらず,

<π|j5μ(k)|0>=(2q0)-1/2(-iqμ2)(fπ/√2.)

になるという対称性を仮定しました。

そして,<π(q)|j|0>

=(2q0)-1/2(-iqμ2)fπ/√2の4次元発散を

取り,∂μ=(μ12/g0)(Z3π)1/2πrを代入して,

<π(q)|(π(q)>=(2q0)-1/2を用いると次式

を得ます。すなわち,(μ12/g0)(Z3π)1/2=fπ/√2

です。

そこで,∂μ=(μ12/g0)(Z3π)1/2πrのくり込み

定数は除去されて,このPGAG方程式を完全に物理量

だけで書き表わせます。

結局,重要なPCAC関係式として,

μ=(fπ/√2)πなる結果が得られました。

と書いたところで前回記事は終わりました。

※さて,ここからが,今回追加の記事内容です。

先に与えたfπが,丁度,荷電π中間子の弱い相互作用

による崩壊振幅に等しいことを,検証します。

そのため,本ブログでPCACの意味とπの意味に

ついて,「(岩波講座)現代物理学の基礎(11)素粒子論」

という古い本を参照して書いた過去記事を再掲載します。

40年以上前に買ったこの本を,昔,読んだときの覚え

書きで,今では解釈が間違っているかもも知れません。

※以下は再掲記事です。

さて,π中間子の運動量がqの1粒子状態は,

(q)>=|π>|π>|π(q)>

+ΣNN~|NN~><NN~|π(q)>と,完全系に展開

できる,とします。

崩壊:π→μ+νμ~は,第1項の振幅と見ても,

第2項以下の振幅で見ても同じであると仮定します。

つまり,|π(q)>=|π>|π>|π(q)>,

であり,かつ, |π(q)>

=ΣNN~|NN~><NN~|π(q)>でもある

というわけですから,|π->の{μν~>への崩壊は

|NN~>の中間状態を通してのみ可能な反応である

と考えるわけです。

ということは,実は,展開の第1項と第2項以下は,

同じモノで,どちらかの項はゼロロとして消していい

ということになります。

そこで,展開の右辺第1項,または第2項以下を評価

すればいいのですが,これは現象論的弱い相互作用:

π(∂μπ){μ~γμ(1-γ5)ν}による,

摂動Hamiltonian:π→μνの1次の崩壊振幅で

あり,

<Hπ→μν>=(G/√2)∫d4x<0|∂μπ(x)>

×{μ~(x)γμ(1-γ5)ν(x)}なる計算式で

与えられます。ここで,<0|∂μπ(x)>

=(2π)-3/2(20)-1(iqμ)aπ で,現象論的な

Fermiのカレント-カレント相互作用の弱い結合係数:

Gに対する中間子πのカレントに相当する(∂μπ)の寄与

の比率係数πを定義しておきます。

この現象論的弱い相互作用での最低次近似による

π→μ+νe~の崩壊率,1/τπ→μνの計算」結果と

その実験値を比較すると,

(1/τの計算値)={G2π2/(8πμ)}(mμ/μ)2であり

(1/τの実験地)~3.84×107sec-1です。

(※μは,πの質量,mμは,μ粒子の質量です。)

この比較によれば,aπの大きさは|aπ|~0.97μ

と評価されます。(※本ブログの2016年3/21の過去

記事:「弱い相互作用の旧理論(Fermi理論)(12)」で,

荷電π中間子の崩壊について記述しましたが,そこ

では,今のaπを単にaと記し,|a|~ 0.87μ,または,

|a|~ 0.93μと評価されましたが,これらは上記の

|aπ|~0.97μと,誤差の範囲内で一致していると

見えます。そして,この|a|は,核子1個当たりのπ中間子

の雲の存在確率振幅を意味すると解釈されていました。※)

レプトンの軸性カレントの因子:{μ~γμ(1-γ5)ν}を

L^μと表わせば,π→μ+νμ~の崩壊振幅は,

<μν~|L^μ{0><0|(Gaπ/√2)(∂μπ)|π

×<π(q)> と表わされます。

他方,これが,|π(q)>=|π>|π>|π(q)>

+ΣNN~|NN~><NN~|π(q)>における右辺の

第1項のみ,または,第2項以下の強い相互作用を仮定

したNの中間状態の寄与の総和:ΣNN~<μν~|L^μ{0>

<0|(Gaπ/√2)(∂μπ)|NN~><NN~|π(q)>

=<μν~|L^μ{0>

<0|(g/g)(Gaπ/√2)j(x)|π(q)>

の両者が一致して,いずれかが象論的Fermiも弱い

相互作用に寄与なるというのが,過去記事の

内容でした。

 πの方のカレント相互作用の因子:(G/√2)(aπμπ)

が,レプトンのV-Aカレント因子のA(軸性ベクトルカレント)

の部分:(G/√2)aπ(g/g)j(x)のみと作用すると

見るのは.π-が擬スカラー粒子なので相互作用因子aπμπ

は,Fermi粒子のNやレプトンのV-Aの弱カレントのうちの,

Aのみと相互作用する,軸性ベクトルカレントに相当する

と考えられるからです。

それ故,第1項=第2項Vいう同一視の仮定が満足

されるためには,V-AカレントのVに対するAの比率を

=g/gとして,aπ<0|∂μπ(q)>

=r<0|j(x)|π(q)> が成立することが必要

かつ,十分です。

そして,この式の両辺の4次元発散を取れば,

<0|∂μ(x){π(q)>

=aπ<0|□π(q)>=-aπμ2<0|π(q)>

を得ます。ここで,1粒子の実π中間子は,自由なπ中間子

の運動方程式であるKlein-Gordon方程式::(□+μ2=0

を満たすはずなので,□π=-μ2πと書けることを

用いました。それ故,fπ/√2=aπμ2/r,

(r=g/g)と置けば,状態ベクトルを外した演算子

方程式として,∂μ=(fπ√2)πなる式を得ます。

アイソスピン対称性から,これが荷電π中間子に対する

だけでなく,中性のπ0中間子に対しても成立するなら,

μ5μ=(fπ/√2)π0ですから,先のPCAC関係式と一致

するため,fπは確かに荷電π中間子の崩壊率に比例する

量であること,がわかります。

ただし,ここでのπについての場の演算子:π^および

π0は,既に,輻射補正されて,くりこまれた場:π―r,

および,π0rであると解釈しています。再掲載終了※)

今回は,キリもいいのでここまでにします。(つづく)

 

| | コメント (0)

2020年9月 7日 (月)

物理学の哲学(7)(アノマリー)

物理学の哲学」の続きです。

副題の(止まると死ぬ)は,だんだん記事の意図

から外れてきたので,副題を(アノマリー)に変更

しました。

(※余談):9/7(月)夜です。九州には大型台風

がきてるらしいけど,私は,餅じゃなく,カリン糖

が喉に詰まる誤嚥で呼吸困難になってしばらく

一人で七転八倒したりして,相変わらず死と隣り合

わせの状態が日常的に起こるので,先は長くない

ですね。体はボロボロで頭ばかり冴えてます。

(余談終わり※)

  さて,少し飛躍して量子アノマリーを研究

する目的の1つであった,π0 →2γ崩壊の

S行列要素 →崩壊率の評価を考えます。

まず,過去記事「摂動論のアノマリー」

の(13)を参照します。

(※以下,再掲載記事)

粒子の散乱などの量子遷移現象において,

初期状態,or始状態(initial stare)を|i>,

終状態(final stateを|f>で記述すると,

今のπ0→2γの崩壊過程では,|i>=|π0

であり,|f>=|γ(k11)γ(k2,ε2)>です。

ただし,k1,k2は,終状態の2個の光子(2γ)

の運動量,または波数であり,ε12は偏極

(偏光)を示しています。

一般の散乱行列(S行列)要素Sfi,および,S^

演算子は,ユニタリ変換だけ異なる2つの完全系:

incomibgの漸近場の状態とoutgoingの漸近場

の状態(散乱状態)によって,

fi=<f;out|i;in>=<f;in|S^|i:in>

で定義されます。

そこで,S^演算子は,<f:in|=<f;out|S^

で定義されます。

今のπ0崩壊の場合は,

fi =<γ(k11)γ(k22);out|π0in>

=<γ(k11)γ(k22);in|S^|π0in>

であり,|i>から|f>への遷移確率を示す

fiは,散乱行列要素というより,π0 → 2γ

の崩壊行列要素を意味します。

このS行列要素と,ここまで論じてきた電磁場

が存在する場合の裸の質量m0の軸性ベクトル

カレント:j(x)=ψ~(x)γμγ5ψ(x)の

部分的保存(PCAC)を意味する4次元発散の式:

μ(x)=2im05x)

+{α0/(4π)}Fξστρεξστρ.

 ただし,j5(x)=ψ~(x)γ5ψ(x)とが,

どのように関連付けられるかを見るため,過去

記事「摂動論のアノマリー」(16)」において,

これを次式に置き換えることによって,三角

グラフの輻射補正に由来するアノマリーの

可能性を考慮に入れると,

μ5μ(x)=2im05

0/(4π)}(1+C)Fξσ(x)Fτρ(x)εξστρ

と書けます。(※Cは輻射補正の寄与率)

以下,上記の式を「低エネルギー定理」

基礎式として用います。

そして,4元運動量:k1,k2と偏極(偏光):

ε12を持つ2光子の状態のKetベクトル:

<γ(k11)γ(k22)|と,真空:|0>による

これら各項の行列要素を取ってみます。

 4元運動量:k1,k2と偏光:ε12から構成

することができる唯一の擬スカラー量は定係数

因子を除けば,k1ξ2τε1σ*ε2ρ*εξτσρ

のみです。

それ故,軸性ベクトルの4次元発散の両辺の

項の行列要素は,因子として,この表現を含む

はずです。そこで,

<γ(k11)γ(k22)|∂μ|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρF(k1,k2) ....(1)

<γ(k11)γ(k22)|2im05|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρG(k1,k2) .....(2)

<γ(k11)γ(k22)|

0/(4π)}Fξστρεξστρ|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρH(k1,k2) ....(3)と書きます。

F(k1,2),G(k1,k2),H(k1,k2)は,

スカラー量:(k1)2,(k2)2,(k1+k2)2

関数ですが,2光子状態の光子は,共に質量が

ゼロの実光子であるとしているので,

(k1)2=0,かつ,(k2)2=0であり,結局,

F,G,Hは(k12)のみの関数であると

見ることができます。

そこで,軸性ベクトルカレントの4次元発散式

の行列要素での表現は,F,G,Hによって,

F(k12)=G(k12)+(1+C)H(k12)

と書き直せます。

これから「低エネルギー定理」というものを

導出するために,行列要素:μ=(4k1020)-1/2

<γ(k11)γ(k22)|j|0>の注目すべき

運動学的性質を用います。それは,Lorentz不変性,

ゲージ不変性,Bose統計の要請ですが,これらから

次の一般形式をとることが要求されます。

以下,これらの性質から軸性カレントの

4次元発散の行列要素,

<γ(k11)γ(k22)|∂μ|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

×εξτσρF(k12)が,(k1+k2)μμに比例し,

(k1+k2)μ<γ(k11)γ(k22)|j|0>

の定数倍であることがわかります。

これからF(k12)∝(k12)と結論されます。

故に,F(0)=0が成立します。

このことが,素朴な発散の(真空 →2光子の

行列要素:<γ(k11)γ(k22)|2im05|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

εξτσρG(k12)のG(k12)を,演算子:

0/(4π)}Fξστρεξστρの行列要素,

<γ(k11)γ(k22)|{α0/(4π)}

ξστρεξστρ|0>

=(4k1020)-1/21ξ2τε1σ*ε2ρ*

εξτσρH(k12)のH(k12)に関係付ける

「低エネルギー定理」を与えます。

すなわち,F(k12)=G(k12)

+(1+C)H(k12)が成立することから,

0=F(0)=G(0)+(1+C)H(0) を得ます。

したがって,G(0)=-(1+C)H(0)です。

ただし,摂動論の最低次(treeレベル)では輻射補正

Cは無視します。

ところが,H(0)については,j,j5,および,

アノマリー項:{α0/(4π)}Fξστρεξστρのグラフ

に対するFeynman規則を用いて,評価することができて

H(0)=2α0/πであること,がわかります。

そしてG(0)=-(1+C)H(0)ですが,k1→0.2→ 0

の低エネルギー極限では,C=0となることから,

G(0)=-H(0)=-2α0/πなる評価を得ます。

この,G(0)に対する結果は,大した面倒もなく,

直接,具体的な最低次のグラフのGの表現式:,

σρ=k1ξ2τεξτσρ1,B1=8π2000(k1,2)

からも導出できるものです。

すなわち,具体的計算でも,確かに

G(0)­=[iε1σ*ε2ρ*(-ie02)(2π)-4

(2m0σρ)/k1ξ2τε1σ*ε2ρ*ε

×εξτσρ]k1,k2→ 0=e02(2π)-4(2m01) k1,k2→ 0

-e02/(2π2)=-2α0/π を得ます。

そこで,実際には発散する係数Gに切断Λを入れて

有限化した,GΛの Λを無原大とした極限の

くり込まれた量をG~,つまり,

G~(k12)=limkΛ→∞Λ(k1k2)と書くと,

1~0.k2 ~0の低エネルギー極限では,裸の

微細構造定数:α0を,観測量αに置き換えた関係:

G~(0)=-2α/πになる,という定理:を得ます。

これが,求めたかった「低エネルギ定理」です。

※ここで,これまでのQEDでのVVA三角アノマリーと

今の「低エネルギー定理」の結果を一般化した場の

理論の,いわゆる σ模型を導入してこれを考察します。

σ模型もQEDのそれと同じく,正確な演算子恒等式と

して,部分的保存条件(PCAC)を満足します。

上に導出した「低エネルギー定理」の,この種の模型

への拡張は,π0 → 2γの崩壊率の予測に導き,結果,

その予測計算値と実験値との比較を可能にします。

σ模型は,PCACが演算子関係式として成立する場理論

模型の特殊なケースです。

基本的に興味あるのは,三角グラフを通して2光子と

相互作用ができる電気的に中性の軸性ベクトルカレント

です。そこで,過去記事では,まず,電気的に中性の軸性

ベクトルカレントのみを含むσ模型の「不完全版」を

考察しました。この模型では,系のLagrangian密度

は次式で与えられます。すなわち,

=ψ~{iγμμ-G0(g0-1+σ+iπγ5)}ψ

+λ0{4σ2+4g0σ(σ2+π2)+g022+π2)2}

+(μ02/2)(2g0-1σ+σ2+π2)

+(1/2){(∂π)2+(∂σ)2}

-(μ12/2)(π2+σ2) です。

これは,陽子pのスピノル場:ψ(x),中性π中間子π0

の場:π(x),および,スカラー中間子の場σ(x)のみ

含みます。

 過去記事では,この「不完全版」からスタートして

議論を展開しましたが,ここでは,最初から,中性の

軸性ベクトルカレントだけでなく,荷電軸性ベクトル

カレントも含み,π中間子も荷電π中間子も含む

「完全版」のσ模型を想定します。

 すなわち,強い相互作用の荷電独立性

(アイソスピン対称性)が,このσ模型でも成立する

と仮定して.不完全版」の陽子pのスピノル場:

Ψ(x)を,核子:(p,n)のアイソスピノル場:

Ψ=(ψ)で置き換え,単一のπ0中間子の場

であったπ(x)を,アイソベクトル場:π=(π123)

で置き換えます。σ(x)については電気的に中性のみの

アイソスカラーでアイソスピンはゼロの場とします。

よって,「完全版」のσ模型でのLagrangian密度は,

=Ψ~「[iγμμ-G0({g0-1+σ+i(τπ5}]Ψ

+λ0{4σ2+4g0σ(σ2π2)+g022π2)2}

+(μ02/2)(2g0-1σ+σ2π2)

+(1/2){(∂π)2+(∂σ)2}-(μ12/2)(π2+σ2)

となります。

このとき,実際に観測されているπ中間子の

0)の粒子状態は,アイソベクトル場;

π=(π123)の状態;|π>(k=1,2,3)

により,|π>=(|π1+i|π2>)/√2,

=(|π1>-i|π2>)/√2,および,|π0

=|π3>なる線形結合で与えられます。

ここで,係数(1/√2)は状態を規格化する

ための因子です。

ただし,πの1粒子状態は,|π>=(π)|0>

(k=1.2、3)のように,真空:|0>に場の生成演算子

)を作用させて得られるので,上記の粒子状態

の表現は,粒子の消滅演算子を意味す粒子場:πでは

π=(π1―iπ2)/√2,,π=(π12)/√2,

π0πです。

この模型のの場合,カイラルゲージ変換は無限小の

局所ゲージパラメータ:(x)をアイソ空間のベクトル

として,アイソスピノル Ψ=(ψ)に対しては,

Ψ → {1+{(i/2)γ5(τv)}Ψなる変換となり,対応

して,アイソベクトル場:π=(π123)

,π → π(g0-1+σ) なる変換です。

そこで,特に中性のπ0中間子の場:π0=π3は,

π→ π3+v3(g0-1+σ)と変換します。ここで,

Pauliのスピン行列を導入しこれをτ=(τ12,τ3)

表記して用いました。また,σについての変換

は,σ → σ+(vπ)です。

そして「Noether(ネーター)の定理」の応用でこの変換

に対応するカレントは軸性なのでこれを,

=-δ/δ(∂μ)で定義すると,今の場合,この

軸性ベクトルカレントもアイソベクトルで,

=(1/2)Ψ~γμγ5τΨ+σ(∂μπ)

π(∂μσ)+g0-1(∂μπ).で与えられます。

この変換で,Lが不変なら,これは∂μ5μ=0を満たす

保存カレントであるはずですが,残念ながらは不変

ではなく,余分な項:(-μ12/g0)πがあるため,これまで

論じてきたQEDでの質量m0≠0の場合の軸性ベクトル

カレントの4次元発散のケースと同じく,部分的保存

(PCAC)のみが成立します。

つまり,この場合は∂μ=-δ/δv=(μ12/g0)π≠0

となります。

こうして,σ模型は演算子恒等式としてPCACの条件を満足

する,との先の言明通り軸性ベクトルカレント

4次元発散:∂μが,πの場に比例する,という重要な

式を得ました。

σ模型について,その他色々と詳細な話ありますが,

重要なのは,このPCACの関係が成立することです。

また,摂動論のあらゆる次数までで,<0|σ|0>=0.

となるように,σ模型が全体に平行移動された形式

を選択しました。もしも,最初に選択した場:σでは.

<0|σ|0>=σ0≠0の場合,σ → σ~=σ-σと平行

移動して,このσ~を改めてσに採用することで,常に

<0|σ|0>=0 としておきます

パラメータ:μ12はσの裸の伝播関数(q2-μ12+iε)-1

に現われる裸のσ中間子質量の平方です。

σについての Euler-Lagrange方程式:

λ{∂/δ(∂λσ)}-(∂L/∂σ)=0 を書き下すと,

□σ+(μ12-μ02)σ=-G0ψ~ψ+g0-1μ02

+λ0{8σ+4g0(3σ2+π2)+4g02σ(σ2+π2)2}です。

そこで,<0|δ/δ(∂λσ)|0>=0は,□<0|σ|0>=0

を意味し.大域的にこれが成立することは,0|σ|0>が

時空点に依存しない定数であることを意味します。

それ故,恒等的に<0|σ(x)|0>=0 と表わすことが

できます。σの生成,消滅の両Fourier成分を持つ

σのincoming漸近場:σinによって,|σ>=σin|0>

書けば,<0|int(x)|σ>=<0|int(x)σin(x)|0>

=0であることを意味します。これから,

<0|T[Hin(t1in(t2)..Hin(tin(x)|0>=0,

つまり,<|S^σin|0>=0となり,摂動の全ての次数で

<0|σ|0>=0が保証されるわけです。

さらなる作業のため,σ模型のPCAC方程式:

μ=-δ=(μ12/g0)πを,次のように

書き換えます。

すなわち∂μ=(μ12/g0)(Z3π)1/2πr 

とします。つまり,π=(Z3π)1/2πrで,くりこみ係数:

3πと,くりこまれたπの場:πrを定義するわけです。

次に,π中間子の崩壊振幅fπを次式で定義します。

すなわち,<π(q)|j|0>=(2q0)-1/2(-iqμ2)

×(fπ/√2.)です。ここで,μはπ中間子の質量です。

アイソベクトル場:πを含む完全版σ模型では,π

も中性成分だけでなく荷電成分を持つため,fπ

は丁度,荷電π中間子の弱い崩壊振幅に等しいもの

であることがわかります。

特に,中性のπ0に対する,先の「不完全版」の中性

軸性べクトルカレント:j(x)は,アイソ軸性ベクトル

カレント:(x)の,アイソ第3成分ですから,それを

5μ(3)(x)と表わし.中性カレントの<π(q)|j|0>

=(2q0)-1/2(-iqμ2)fπ/√2 なる表現を,

<π0(q)|j5μ(3)|0>=(2q0)-1/2(-iqμ2)

×fπ/√2. と書き直します。

荷電π中間子の場の演算子は,π=(π1-iπ2)/√2,

および,π=(π1+iπ2)/√2,ですが,

その粒子の状態ベクトルは,|π>=|π1+iπ2>/√2,

および,π>=|π1-iπ2>/√2でしたから,π

崩壊における行列要素:<α|π>の向きを逆転させた

π|α>は,その複素共役で与えられます。

つまり,Bra:|π>=|π1-iπ2>/√2に対して,

Ket:<π|=<π1+iπ2|/√2が対応すると

考えられます。

そして,軸性ベクトルカレントのアイソ第3成分は

5μ(3) =(1/2)Ψ~γμγ5τ3Ψ+σ(∂μπ3)-π3(∂μσ)

+g0-1(∂μπ3)で与えられますが,これをアイソ回転する

ことで得られる+成分は,そのτ3をτ+ではなく,τ-とする

ことにより,5μ(+)(1/2)Ψ~γμγ5τΨ+σ(∂μπ)

-π(∂μσ)+g0-1(∂μπ) になるはずです。

ただし,τ=(τ1-iτ2)/√2,かつ

π=(π1―iπ2)/√2です。

そこで,<π(q)|j5μ(+)|0>

=<(π1+iπ2)(q)|(j5μ(1)-ij5μ(2))|0>/2

=(2q0)-1/2(-iqμ2)(fπ/√2)となります。

ここで,k=1,2,3の各々のπはkが同じカレント

5μ(k)のみとcoupleすることができてkに関わらず,

<π|j5μ(k)|0>=(2q0)-1/2(-iqμ2)(fπ/√2)

になる,という対称性を仮定しました。

因子:(-iqμ)は,πの崩壊相互作用部分の行列要素

が,<πi(q)|g0-1μπ|0>=(2q0)-1(-iqμ)F(q2)

なる形で与えられるという現象論的推論から出てきます。

σを含む項の寄与は先に述べた通り項が,演算子πと

交換するのでゼロです。

<π(q)|j|0>=(2q0)-1/2(-iqμ2)fπ/√2

の4次元発散を取り,∂μ=(μ12/g0)(Z3π)1/2πr

を代入して,<π(q)|π|0>=(2q0)-1/2を用いると

次式を得ます。

すなわち,(μ12/g0)(Z3π)1/2=fπ/√2です。

そこで,∂μ=(μ12/g0)(Z3π)1/2πrのくり込み定数

は,除去されて,このPCAC方程式を完全に物理量だけで書き

表わせます。結局,∂μ=(fπ/√2)πとなる,という

重要な結果得られました。

まだまだ先が長いので今回はここまでにします。

 

 

 

| | コメント (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

001. 目次 002. 募金・ボランティア 003. 日記・回想 004 訃報 005. 心身・思想・哲学 006. 社会・経済・政治 007. 病気(診察・薬) 008. 恋愛・異性 009 宗教・神話 010 歴史(日本,世界) 011. 将棋 012. TV(ニュース・ドラマ) 013 スポーツ(ニュース・イベント) 014 ノン・フィクション 015 小説・詩・評論 016 漫画・劇画・アニメ 017 演劇・映画・舞踊 018 音楽(日本・西洋・他) 019 タレント(俳優・お笑い) 020 ミュージシャン 021 アイドル・ヒーロー 022 創作 023 シャレ・ギャグ等 024 競馬・toto・賭け事 025 ファッション・風俗 100. 物理学一般 101 教育・学校(物理) 102. 力学・解析力学 103. 電磁気学・光学 104. 熱力学・統計力学 105. 相対性理論 106. 星・ブラックホール・一般相対性 107. 重力・宇宙・一般相対性 108. 連続体・流体力学 109. 物性物理 110. 複雑系・確率過程・非線型・非平衡 111. 量子論 112. 原子・分子物理 113. 原子核物理 114 . 場理論・QED 115. 素粒子論 116. 弦理論 118. 観測問題・量子もつれ 119. 電気回路 200. 問題・解答 201. 自然科学一般 202. 気象・地学・環境 203. 生物学・生理学・生化学 204. 経済学(ミクロ・マクロ・マルクス) 300 数学一般・算数 301. 集合・位相 302. 論理学・数学基礎論 303. 代数学・数論 304. 解析学 305. 複素数・複素関数論 306. 線型代数学 307. 幾何学(トポロジー・他) 308. 微分方程式 309. 確率・統計 310. 関数解析・超関数 311 .数値計算・調和解析・離散数学 312. 公式・特殊関数 501. 商用宣伝・アフィリエイト