115. 素粒子論

2016年12月 5日 (月)

赤外発散の論文(1961)の詳解(2)

赤外発散論文詳解の続きです。


   
赤外発散問題の完全な量子力学的扱いは,古典的扱いよりも

いくらか難しいです。

   
実光子と仮想光子のαの低次での赤外発散の相殺は,特殊な

プロセス(Coulomb散乱とか聖堂輻射など)について多くの計算で

証明されてきています。

   
文献におけるいくつかの例は次のようなプロセスへの輻射

補正です。

  
すなわち,ポテンシャル中の低次のCoulomb散乱(5),

Compton散乱(6),ポテンシャル中での2次のCoulomb散乱(7,8),

電子―電子散乱(9,10),広角対生成(11),

および,制動輻射  (Bremsstrahlung)(12,13)です。


  摂動の全ての次数までの相殺の一般的証明はJauch

Roelich(2)よって与えられました。

   
本論文は,ある意味で彼らの仕事の精密化です。
 

このタイプの発散相殺の証明の主な要素を以下,手短に述べて

おきます。

   
まず,赤外発散は,荷電粒子外線から放出,吸収される実,

または仮想の軟光子に関連することを示します。

これは物理的に,もっともらしいことです。
 

何故なら,長波長光子は荷電カレント(電流)の分布の大規模

な特徴のみを感知するのに対して,粒子内線からの放出は,

空間の小領域でのカレントからの小規模な放出に対応する

からです。 

(↑※エネルギーゼロの長波長の軟光子は有限個では寄与せず

無限個数の寄与の総体が発散るので元々大規模なのです。)
 

それ故,軟光子の放出に対する行列要素は,単に古典表現

(1.1) ,基本過程を記述する行列要素に掛けたもので

与えられる,ということは,驚くべきことではありません。

(※再掲(1.1):{(εp'/kp')(εp/kp)} )
 

そこで,実軟光子放出の断面積は,基本過程の行列に(1.2)

を掛けたもので与えられます。
 

(※再掲(1.2)(1.1)の平方: 

()3k ~{α/(2π)3}{(εp'/kp')(εp/kp)}2 

×dΩdk/k )
 

同様に仮想軟光子放出と再吸収に対する行列要素は,近似的

,基本行列要素に外線にのみ依存する簡単な因子を掛けた

もので与えられます。
 

これが軟光子の寄与の完全な扱いを許す赤外発散の抜粋で

あり,特に赤外発散の完全な相殺を明らかにすることを許す

ものです。

    
最後の相殺を示す前には,ある種の赤外切断を用いる必要

がありますが,これは慣習的には微小な光子質量か?

最小エネルギーを仮定するかのいずれかです。


     本論文では光子質量の方を採用しています。
 

今回のアプローチが参考文献(2)の改良,精密化になっていると

信ずる2つの事由があります。
 

第1の改良は,赤外発散因子の抜き出しについてのより良い論拠

です。そこでは重なり合う赤外発散も無視されません。 

この新論旨は,恐らく証明と考えられるほど十分強いもの

ではないですが,赤外発散の因子化についてのあらゆる理論的

疑念を除去すると期待されます。

   
この論旨は,より平明なことを除いて,以前にYennieSuura

より,文献(14)で与えられたものと同等です。
 

第2の改良は,実際に摂動展開の意味での非赤外寄与の系統的

扱いを与える文献(2)のそれの拡張です。


   そしてまた,なされる
個々の赤外因子分離が,実光子,仮想光子

の両方についてゲージ不変であることも注目さるべきです。
 

仮想光子については.その手法はまた(赤外切断に光子質量

採用するなら)(相対論的に)共変です。
 

さらに赤外因子は,残りの摂動展開のくり込みが通常の方法

で進むよう,完全にくり込まれています。
 

赤外発散の相殺の別の扱いは,Nakanishi(中西)の文献(5)

によって与えらえました。


   この扱いは今回の本論文の扱い
よりも厳密に見えます。

 しかし,それは全断面積のトピックに制限されていて,

エネルギー解像度を持つ微分断面積については言及されて

いません。
 

本論文での主要な目的は,たった今輪郭を与えた一般的

アプローチに従って現代的なQECの枠組みの中で,赤外発散現象

の完全な取扱いを与えることです。
 

最終的結果が,任意の過程について赤外因子が荷電粒子外線

の4元運動量のみを含むもので与えられ,詳細な内部構造を

含まないような計算方法の提供です。

   
この最終的結果には,もはや赤外切断も現われていない

はずです。他方,残りの摂動展開では赤外発散は全く生じず,

赤外切断が不要な積分で与えられます。
 

本論文で我々が強調するのは,手法の一般性と完全性について

ではありますが,実際的問題での具体的計算値という結果も

得られます。

   
多くの実際的問題においては,輻射補正の必要性はエネルギー

の分母が小さい領域に由来しています。

    
結局,全てのプロセスへの輻射補正の偏り全体を評価する

のに,我々が得た結果を用いることができます。
 

これらは,一般的に,αln(/)ln(ΔE/ε)とか,

α{ln(/)}2の基本断面積というような"二重対数項"の

因子を含みます。



       
こうした項の寄与は,実験配列にとても敏感で有り得ます。
 

実際の実験条件の非常に注意深い扱いが,とても重要です。
 

そうした計算の例が文献(10..11)に与えられています。

一方,実験状況を認識していないが故に,容易には実験に

適用できると思えない計算例が文献(6.9)に含まれています。
 

赤外寄与が,(紫外寄与の)高エネルギーでの輻射補正を

支配している,といえば,これは逆説的に聞こえるかも

しれません。

       
例えば,1つのポテンシャルによる高エネルギー荷電粒子

の散乱においてはLorentz収縮した粒子を囲む場は,非常

に短時間のうちに,粒子から大きな距離まで変化する必要

があります。


        しかし,全電磁場
,そうしたように急激には変化できない

ので,補償するための輻射場が生成されます。これらの場

の生成は実光子の放出に対応します。

光子放出のない散乱は不可能なので,仮想光子と関わる

負の輻射反応が必要です。


        これは始状態と終状態のLorentz収縮した粒子場の間
 

の適切な重なりの欠如によって生じます。


         かくして,実光子と仮想光子
の両方がk値のある領域に

ついて(dk/)なる形のスペクトルで支配されます。
 

このスペクトルは主要な屈折が生じるか(ka~1),粒子

の量子力学的性質が重要になるような領域(k~E)の長さ

を比較してできるほど波長が小さくなるとき,除去される

必要があります。

         
ただし,この領域の規模aはポテンシャルのレンジである

必要はないことが指摘さるべきです。
 

例えばCoulombポテンシャル(レンジは無限大)による

広角散乱では主要な屈折は非常に小さい距離で生じます。

(dk/)のスペクトルを保持した下での条件の量子力学

的議論に対して,Londonの論文(4)を参照してください。


     彼はk<<Eに対して,これが良い近似であるという

結論に到達しています。

     
オーダーαまでの完全ん亜輻射補正は,かくして近似的

にαAln(ΔE/)で与えられます。


     Aの方は,粒子場の強いLorentz収縮を反映して.

わたる角度積分の強いピークによる対数を含みます。
 

因子:ln(ΔE/),(dk/)の積分に由来しますが,

ΔEよりも小さいエネルギーの実光子と仮想光子の寄与

は互いに相殺すること,そしてまた,仮想光子のスペクトル

,とにかく.k>>Eについて切断されねばならないことを,

取り入れています。

     こうして,赤外項は,2つの対数項に寄与し,それ故,輻射

補正を支配します。高エネルギー極限での,赤外項のより

精密化された扱いを使用すると,輻射補正へのいくつかの

単一の対数因子の寄与もまた得られます。
 

ここでの評価では論じる予定にない,ある磁気項と相まって

これらは対数オーダーのあらゆる寄与を与えると思われます。
 

したがって,全てのプロセスにおいての輻射補正の良い評価

を与えます。

     
赤外因子を抜き出すことに関連する論旨は.付録

(Appendix)に含まれています。


     完全に厳密とされる試みは実行しませんが,二重の

赤外発散の正しい処理の重要性を強調しておきます。
 

そして,赤外因子が抜き出されると.残りの計算因子は

全く病的な性質を持たないということがもっともらしい

こと,が示されます。

     
§2では外部ポテンシャル中の電子散乱について,全て

の議論が与えられます。§3では,他のいくつかの例がより

手短なやり方で扱われます。§4は赤外問題の一般的取扱い

に入る種々の考察の議論を含みます。
 

赤外発散の一般的証明が与えられ,そして,いくつかの

さらなる例が簡単に論じられます。§5では,いくつかの

純粋に理論的な赤外発散現象の含意が論じられます。
 

ここでは,あらゆるオーダーでの赤外因子の知見が

高エネルギー極限での理論的問題へのいくつかの限られた

洞察を与えます。この極限では赤外因子は特に大きくなり,

そして他の全ての寄与よりも赤外因子についてのはるかに

詳細な情報を得ることになります。

     
最後に§6は議論の要約(まとめ)を与えます。
 

 専門用語についての少しの言葉が補助になるかも

しれません。


     
本論文では行列要素(または断面積)「赤外の」

というのは赤外依存が特殊なやり方で因子化される

ような部分を意味します。


    
そして,「非赤外の」というのは,その残りの依存性の

ことです。
 

「赤外光子」とは「軟光子」と同義語ではありません。 

赤外寄与が,その挙動に良い近似を与えるならその光子

を「軟らかい(soft)と定義します。
 

付録Aの最後での議論によれば,運動量がその過程の典型的

な遷移運動量と比べて小さいなら「軟らかい」といいます。


     そして,高エネルギーでの
広角電子散乱では,それは電子

のエネルギーの数パーセントを除去しても光子は「軟光子」

です。

    
しかし,小角散乱では,その運動量が遷移運動量;

(2sinθ/2∝pθ)比較できる大きさで「硬光子」

になります。

     
これでやっと文章が中心の序文が終わりました。 

序文はまとめと同じく本論の全内容を紹介するもので

すから,これだけでは,よくわからない部分もあります。
 

そうしたことの詳細は次回からの記述予定の§2から

の本論で具体的に理解できるはずです。

    今日はここで終わります。

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赤外発散の論文(1961)の詳解(1)

※ 10月初めに引っ越してから丁度2か月,

もう年の瀬となってしまいました
 

この間.本やノート類も大量にあった引っ越し荷物の整理にかまけて

通常の日記的ブログは書いても科学記事は敬遠してきました。

 しかし,
 そろそろ落ち着いてきたので,これも再開して元のペース

に戻ろうと思います。こういうこともやらないと,つい楽をして寝

たきりでもなりそうですし。。
 

実は,前の部屋の立ち退き話もまだ知らなかった7月頃に構想して,

9月くらいには少しずつ書いていた比較的新しいテーマ「赤外発散」

についての草稿があったので少し手直ししてこれからアップします。

相変わらず,素粒子論ネタですが。。※
 

さて,常識的には,実体がないのと同等で無意味と見えるにも関

わらす,素粒子の散乱振幅等の計算の上では無限大に発散する

著しい寄与を示す,エネルギーゼロ(振動数ゼロ,波長無限大)

光子の起こす困難を,赤外破局(Infrared Catastroph),または,

赤外発散と呼びます。

 恐らく,エネルギーが無限大(振動数無限大,波長ゼロ)の極限

での発散の困難を紫外発散(Ultraviolet Divergence)と呼ぶの

に対照して命名されたのでしょう。

 紫外発散の困難の方は.これを克服するために 1948年頃

から「くり込み理論(Renormalization)」と呼ばれる壮大な体系

が発展し,これは一応の解決を見ました。

(↑※Feynman,朝永,Schwinger、Dysonなどの仕事です。。)
 

これに対し,赤外発散の困難は,ある意味,こうした実体のない

光子などは元々存在しない。としてカットするのが,紫外発散

の高エネルギー光子をカット(切断)するという手法より感覚的

に容易なことと考えられたためか?,問題発見の当初から,

さほど深刻な問題と取られなかった節があります。
 

こうした赤外発散の困難については,本ブログでは,まず,

200612/16記事:「赤外発散の問題(エネルギーゼロの光子)

で紹介しました。

 
次に,この記事において紹介した1937年の初期の代表的論文; 

 F.Bloch A.Nordsieck

"Note on the Radiation Field of the Electron"について,

本ブログの201010/30,11/4,11/8の「赤外発散の初期論文」 

(1),(2),(3)においてで紹介し,解説しました。
 

この論文は,学生の頃から所持していて,ときどき,その読解に

挑戦していましたが,古い論文は,Notationも古典的で,現在では

普通に使用されている近代的な計算手法もまだ使われていなか

ったなどの理由もあり,何回読んでも途中で私には解読不能な箇所

に遭遇して,何度も挫折していました。
 

しかし,それ以前に中西㐮著「場の量子論」(培風館)など日本語

でのより読みやすい解説書などを読んで,摂動の低次まででは

赤外発散は計算上は相殺して,結果は有限値になって解消される

ことを理解していたこともあり,まあ,これが解読できなくても

仕方がないな,程度に軽く考えていました。

 
しかし,その後,2010年に,少しヒマがあってブログで紹介したい

という気持ちが生じて,本腰を入れて読んだので,ブログ記事

では何とか形になりましたが,未だにややスッキリしない感も

あります。
 

一方,同じ過去記事「赤外発散の問題(エネルギーゼロの光子)

において,赤外発散解決の決定板である,と書いた

Yenie,Frauti,Suura1961年の74ページに及ぶ論文の方は,

ブログを開始する3年前の20031/4から3/19までの2ヶ月余り

,根をつめて読了したときにまとめたノートがあります。
 

(※私のまとめたノートは,A4,本文84ページ+付録34ぺージに

なっていますから,元の英文より約5割増しですね。

どうしても翻訳すると元の英文より日本語文の方が長くなるし,

さらに行間を埋める自己流の注釈が一杯追加されていますからね。
 

.ある時期から,後で元文献を参照しなくてもノートだけで事

が足りるようにノートを作る習慣になっていました。

 今は眼が悪くなって,種となる本や論文
の字は小さく読みにくい

けど,ノートの自分の字は何とか見えるので,この習慣は今と

なっては正解でした。
 

本が紛失したとしても,お金さえあればまた入手可能なモノ

なので,さほどショックはない,と思うけれど,大事なノートが

無くなったら泣いちゃうかも。。※)
 

この論文の内容は,図で説明すべきことが多いのでここまで敬遠

していましたが,以前と違って,私も若干,自力で図を描くスキル

ができてきたので,このノートの内容もブログで紹介してみたい

と思ったわけです。
 

さて,正式なこの論文の表題は, 

”The Infrared Divergence and High Energy Processes” 

(赤外発散と高エネルギー過程) です。
 

著者は,D.R.Yennie,S.C.Frauchi,H.Suura  

出典は,Annuals of Physics Vol.13 pp279-452(1961)です。
 

以下は本文です。
 

※前文(Preface)
 

QED(量子電磁力学)における赤外発散の問題の一般的扱いを

与えます。

  
この本論文の扱いの主な特徴は,赤外発散の寄与を,摂動の全て

の次数までの寄与の掛け算因子と,赤外発散を持たない因子へ

残りの収束する摂動展開の寄与に分離することにあります。
 

その結果,赤外切断のような,処方,規約としてカットして

捨てるというような操作は無用となることがわかります。
 

赤外因子については,それは指数関数形を取りますが,実光子

と仮想光子から生じる指数発散が通常の意味で相殺します。
 

それ故,これらの因子は単に始状態,終状態の荷電粒子の運動量

,検知されない光子に用いられる位相空間領域にわたる積分

によって表現されます。

  
そして,これらは個々の相互作用の詳細に依存しません。
 

特に,扱いやすい静電ポテンシャルによる電子散乱については,

詳細に論じ,他の具体例については手短かに論じます。
 

 一般的扱いの重要な副産物として,赤外寄与を特殊な手法で分離

したとき,それらは高エネルギーの輻射補正と,ある”磁気項”を

支配し,真空偏極補正log(E/)に比例する,あらゆる寄与を

与えるように見えます。
 

 そして,こうした補正の全ては,(大抵の場合,)単に荷電粒子の

外線運動量の知識だけから容易に評価できます。
 

そこで,これは非常に強力で正確な高エネルギー過程の輻射補正

を評価する方法を提供します。
 

§1.序文(Introduction)
 

赤外発散問題を理解するための本質的考察は,20余年前に出版

されたBlochNordseekの有名な論文によって,初めてもたら

されました。

  
この論文での考察は,端的に言えば,荷電粒子を含むどの

ような実際の実験においても,系の終状態を完全に指定すること

は不可能であるということです。
 

個々の光子は,くらでも小さい任意のエネルギ-を持って放出

され得るので,(検出装置の精度限界もあるため)いくつかの光子

は検知を逃れる可能性が常にあります。
 

実際,この著者は有限個の光子が検知されない確率は厳密にゼロ

であることを示しました。

  これは,軟らかい仮想光子(soft virtual-photon)に関わる
赤外

発散のせいです。

(soft-photon(軟光子)とは,振動数が小さいエネルギーがほぼ

ゼロの光子を意味します。)

  
他方,非検知光子の可能性をも含む比較可能な全ての終状態に

わたる微分断面積の総和を取ると,これは消えない結果を与える

ことになります。

  
実際,彼らは観測される微分断面積は,あらゆる輻射補正を無視

したときに得られる断面積に非常に近い,ことを示しました。

これは,実光子の赤外発散と仮想光子のそれの間の相殺としてよく

知られています。
 

赤外発散現象の現代的な場理論による取扱いを与えることが

本論文の趣旨です。
 

ただし,完全な,歴史的なレビューを与える試みなどは全くしない

予定です。そうした過去のレビューや参考文献については,

Jauch-Roelich優れた論文(文献(2))を参照してください。
 

さて,以下の論理の方向を定める目的で,赤外発散現象を予言する 

準古典的議論を手短かに想起します。
 

例えば,運動中の電子がポテンシャルとの相互作用で進路を 

逸らされる。と仮定します。
 

電子に付随するLorentz収縮した場は衝突によって変化し,

その場の変化は電磁輻射として放出されます。十分長波長の

輻射については輻射の効果は散乱領域の詳細な知識がなくても

計算可能です。
 

それは,単に電子の始状態,終状態の運動量と,輻射が観測される

方向にのみ依存します。

(電子の散乱域で時間の遅れはないと仮定します。
 

よく知られているように,この長波長の極限では単位振動数

当たりに放出されるエネルギーは振動数に依存しません。
 

光子による記述に翻訳すれば,単位振動数当たりに放出される光子 

の数は振動数に反比例することが明らかです。

すなわち,光子スペクトルはdk/kの形をしているため,k→ 0では

発散します。
 

これが実光子による赤外発散現象です。
 

角分布もまた,準古典的論拠によって理解できます。

超相対論的極限では場は電荷の運動方向に垂直な平面の近傍の

小さな領域内にLorentz収縮して電荷に沿って動くと思われます。
 

これは運動電荷の入射()方向か,終方向のどちらかに平行な輻射

強いピークを示す,ということにつながります。
 

こうした特徴は,{(εp'/kp')(εp/kp)}..(1.1) 

となる式に比例する輻射放出の古典振幅,の中に現われています。
 

 これは,それぞれ,始状態,終状態の運動量p'のどちらかに

平行なについて,強いピークを示します。

  散乱が生じたと仮定するとき,運動量
の光子が放出される確率は

(1.1)を平方してそれに[(2π)32]-1を掛けることで得られます。
 

すなわち,k~k+dkの範囲の光子が放出される確率:

()3,

()3k ~{α/(2π)3}{(εp'/kp')(εp/kp)}2 

×dΩdk/..(1.2)なる形で与えられます。
 

この式は,k→ 0での典型的な赤外発散の挙動が(dk/)なる

因子として出現し,入射電子運動量:と散乱電子運動量:p'

方向のまわりで強い角度依存性のピ-クを作ることを示して

います。

   
光子の方向にわたって積分したエネルギーレンジ:dkへの

光子放出の確率は,2dk∫P()dΩ=dAdk/..(1.3)

です。

   
ここで,Aは,

A ~ (2/π)[ln{2(2pp’)/2}1] ..(1.4) 

で与えられる量です。
 

かくして,光子放出の確率はエネルギーEの増大と共に対数的

に増加します。これはまた,散乱角が大きいほど重要です。
 

このことは古典的論拠からも予期されることです。
 

何故なら,電子に付随する場は,小さい角度のずれの遷移に対し

より容易に調整することができるからです。
 

この問題についての正しい量子力学的扱いは,準古典的議論から

予測されるのと同じ定性的な特徴へと誘導されると予想する

のが理にかなっています。

    
非常に長い波長の極限に関心があるのですが,このプロセス

は空間の大きい領域での散乱粒子の挙動によって支配されます。 

(※運動量kのk~ 0の小空間は座標空間ではx~ ∞の大空間

に対応します。)
 

この波長の長い軟光子の放出,吸収は,目立つほどには荷電粒子

の運動を乱すことはありません。


   これは軟光子は独立に放出,吸収され,実光子,仮想光子の

双方について個数分布がPoisson分布に従うことを

意味します。
 

このことは何人かの著者が,散乱粒子の電流(カレント)

純粋に古典的に扱われる近似に基づいて赤外発散を扱うこと

につながりました。
 

これらの方法では輻射補正の無い粒子の運動が計算され,

輻射補正の動力学的効果は無視されています。

こうしたタイプの最も精密な扱いはLondonその共著者により,

文献()で与えられています。
 

彼らは硬光子による輻射補正の力学的効果も含めた定式化

を展開しました。
 

こうした準古典的方法では,常に硬光子と軟光子の間の

任意の手法の分離があります。軟光子の寄与は粒子運動への

力学的補正を無視して,全てのオーダーまで正確に扱われます

,一方,例えばLondonの扱いでは硬光子の効果は基本的な

断面積の計算に組み込まれ,摂動論のあるオーダーまで 

の近似計算です。

    
そこで,硬光子と軟光子の分離が生じる場所は,これに

よって生じる誤差を最小にするように選択されます。


     このアプローチの典型的な
結果として,notation

いくつかの違いはありますが,

Londonを引用すると,エネルギーがEの光子による断面積

σの形式は, 

σ(ΔE,,θ~(ΔE/εC)αAσn(ε,,θ)..(1.5)

です。
 

ただし,εは上記の分離する場所のエネルギー,ΔEは

検知器のエネルギー解像度, σnは光子エネルギーの

下切をεとする摂動のn次までの断面積,

CはEuler定数,θは散乱角です。
 

彼らは(1.5)式において,実際の状況では極めて1に近い

因子F(α,)を除外しています。

    
この因子は次節の(2.45)式で与える予定ですが,これは

最初,LondonShawより単純な関数で評価されました。
 

この評価計算は§2で再現します。(つづく)
 

§1の序文はまだ続くのですが,長くなったのでここで2つに

分けました。
 

なお,論文の一番最後の付録のそのまた後にまとめて,記載

されているReference(参考文献)を予めアップしておきます。
 

ここで一旦終わりますが原稿はできているので,すぐに続き

もアップします。
 

参考文献:
 

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18.S.N.Gupta,Phys.Rev.Vol.98,p1502(1955)

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19.H.Frauchi and D.R.Yennie,submitted to Nuclear Phys. 

20.G.RacaH,Nuovo ciment.Vol.11,p461(1934)

21.L.I.Schiff.Low,Phys.Rev,Vol.87,p760(1952) 

22.L.L.Foldy,K.W.Enau,and.R.Yennie,Phys.Rev,

Vol.113,p1147(1959) 

23.R.H.Dalitz,Proc.Pfys.Soc.A306,p600(1951) 

24.C.Kacser,Nupvo ciment,Vol.13,p303(1959) 

25.G.Kallen,Kpl.Dunske,Viedenskab.Selakab,

Mat-fys.Medd.27,No.12(1954) 

26.S.G.Dasiorowicz,D.R.Yennie,and .Suura,

Phys.Rev,Lett.Vol.2,p513(1950) 

27.K.Johnson,Phys.Rev,Vol.112,p1367(1958) 

28.G.Kallen,Zentr.Math,Vol.83,p225(1960) 

29.K.Johnson,and B.Sumino,Phys.Rev,Lett.

Vol.3,p351(1951:B.Zumino(peprint)) 

30.G.Kallen,In Proceding of the CERN.Symposium

on High-Energy Accelarators and Pion Physics Vol.,

p187,Europian Organization of Nuclear Research,Geneva

1956

31.S.Kamefuchi,Kgl Dunske Viedenskab.Selakab, 

Mat,fys. Medd.Vol.31,No.6(1957) 

32.J.C.Ward,Phys.Rev,Vol.77,p293(1950),Vol.78,p182(1950) 33.H.M.Fried,and D.R.Yennie,Phys.Rev,Vol.112,p1391(1958) 

34.A.A.Arrikosiv,J,Exptl,Theoret.Phys.(U.S.S.R.)

Vol.30,p96(1956),Soviet.Phys.JETP,Vol.3,p71(1956) 

I.P.Gorkov,J,Exptl,Theoret.Phys.(U.S.S.R.)

Vol.30,p790(1956),Soviet.Phys.JETP,Vol.3,p762(1956) 

R.V.Tevikian,J,Exptl,Theoret.Phys.(U.S.S.R.)

Vol.32,p1575(1957),Soviet.Phys.JETP,Vol.5,p1284(1957)
 

35.I.D.Landau and I.M.Kharatnikov,Theoret.Phys.

(U.S.S.R.) Vol.29,p89(1955),Soviet.Phys.JETP,

Vol.3,p762(1956)

36.R\P\Feynman,Phys.Rev.Vol.76,P769(1950) 

以上です。

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2016年9月14日 (水)

非線型自由粒子構想(2)(遺構)

こういうモノって(つづく)と書いていても続きが無かったり,

(1)書いていても,(2)は永久に無い。。とかいうジンクス

めいたものがあるらしいので,取りあえず,つなぎで続きを

アップしておきます。
 

§3。λφ4以外の非線型項の模索
 

4元運動量がkの中間子線上の1個の点zに,2本の中間子

内線(または外線)が接続する形は.必然的に1つのループに

ならざるを得ず,計4個の線が,ただ1個の点zにつながる

ものはTad-poleと呼ばれるグラフになります。


 

この寄与を真面目に摂動論のFeynmanルールに従って計算

しようとすれば,これには,伝播関数:Δ(z-z)=ΔF(0)

を付与することになります。
 

 しかしながら,普通の自由粒子Feynman伝播関数は, 

ΔF()=∫d4(2π)-4 exp(ikx)/(2-μ2iε) 

ですから,このループを回る運動量(=単なる積分変数)

をlとすると,ΔF(0)=∫d4(2π)-4{1/(l2-μ2iε)}

となりますが,これは計算すると明らかに発散します。
 

ΔF(0)の代わりに.ΔFλ(0)としても,

ΔFλ()=∫d4(2π)-4exp{ikx-λ(2)2}

/(2-μ2iε)により,

ΔFλ(0)=∫d4(2π)-4{ exp{-λ(2)2}/(l2-μ2iε) 

2πexp(-λμ4)0dl[2/(2+μ2)1/2]

となるため,やはり発散します。
 

最初の思いつきのアイディアの,普通の伝播関数に因子:

exp{-λ(2)2}を加える修正では,2=k022より,

2-μ2=k022-μ2

{0(2+μ2)1/2}{0(2+μ2)1/2}なので,

∫d4kのうち∫dk0を実行すると,留数の関係から,

exp{-λ(2)2}因子が単にexp(-λμ4)となってkを

含まなくなります。
 

そこで,,残りの3次元空間積分∫d3kでは,この因子には

全く,紫外切断の減衰効果がありません。
 

それ故,exp{-λ(2)2}の代わりに,例えば空間ベクトル

だけの因子:exp (-λ2)で置き換えれば,これは∫dk0

には無関係なので,この場合には積分結果は確かに有限には

なりますが, Lorentz共変では無いのが気になります。

(※ちょっと見の思いつきですからねえ。。)
 

いずれにしろ,こうしたTad-poleでは,

たとえ発散せずに収束して有限な寄与:σになったとしても,

運動量空間において4元運動量:kで伝播する中間子線との

エネルギー・運動量の保存を考慮したとき,

  
ループの運ぶ運動量:lがkとは無関係なので,寄与σは

量子電磁力学のくり込みこみにおける電子の自己質量:

Σ()や光子の真空偏極のΠ(2)とは異なってkを含まず

単なる定数になります。

(※↓2011年4/27の過去記事

「量子電磁力学の輻射補正(5)(電子自己質量-1)」から)


 

(※↓2011年4/13の過去記事

「量子電磁力学の輻射補正(3)(真空偏極-2)」から)

 

ところで,伝播関数の減衰因子のアイディアと直接には

無関係な問題なのですが。。。

自己相互作用のλφ4模型では,z頂点にφ()4が付与

され,これとxからyへと進む運動量kの中間子線が入るのと

出るのとで2本;結局,zには計6本が接続する6重点となり

Tad-poleとしてはループが2個になります。



 このグラフのTad-poleループの寄与は単純に2乗になります。
 

こうした寄与が連結した外線の運動量kに無関係なら,伝播関数

への寄与と真空泡:0||0>への寄与が一致し,Sの再規格化:

/0||0>においては,分子と分母でこの因子は相殺して,

結局,無意味かもしれません。


 

したがって,有意なモデルとするには,Tad-Pole以外の,

少なくとも2端点を持つ非線型自己相互作用を考えるか?

あるいは,そもそも非線型ですから「重ね合わせの原理」

とか級数和に展開できるとかの線形性は成立せず,そうした

操作に頼る摂動論以外の方策を考えるべきとも思われます。
 

今のところ,このアイディアのメリットとして身のありそう

なものは,「非線型自由粒子=ソリトン」の構想以外には何

もありませんが。。。後は構想倒れ。。
 

σ(,)をk→∞と共に∞に増大する何らかのkとxの関数

として一般化て自由伝播関数の模型を, 

ΔFλ()=∫d4(2π)-4exp{ikx -λσ(,)}

/(2-μ2iε)と書けば,

(□+μ2)ΔFλ()

=-∫d4(2π)-4exp{ikx -λσ(,)}です。

ただし,ΔFλ()=<0|[φ()φ(0)]|0>です。
 

これを満たすような,非線型方程式:

(□+μ2)φ=f(λ,φ)の形を模索して得た解について

楕円積分の可能性を考察.そのλ→0での具体的計算を 

追求したりしているノートなどもあるのですが,整理

ができず,

 
また
引っ越しなど身のまわりが忙しくなってきたので,

Pendingです。(つづく)。。。。
 

続かないかも。。。。



PS:引っ越しのときはいつも手伝ってくれてた音信不通

 のN目クンがなつかしい。。

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2016年9月 4日 (日)

非線型自由粒子構想(1)(遺稿)

§1序論
 

数年前から目がよく見えないこともあり,長期入院しても,

細かい読書がままならないので,アリストテレスの形而上学

ではないけれど経験や参考書物などに頼らず,ただ沈思黙想

して,頭の中の思いつきをノートに書き殴り,それを基にした

計算に勤しんだりしていました。

 

 そうした徒然(つれづれ),いくらかまとめて記述してみます。
 

 最もモデル化が簡単な,質量がμで自由場φがKlein-Gordon

 方程式:(□+μ2)φ=0 の解であるスピンがゼロのスカラー

または擬スカラー粒子の自由Feynman伝播関数:ΔF, 

ΔF(x-y)=∫d4(2π)-4exp{i(x-y)}

/(2-μ2iε) で与えられます。
 

これは自由場の時間順序積(T積)の真空期待値:

0|(φ()φ()|0であり,

(□+μ2)ΔF(x-y)=-δ4(x-y)を満たす2点

Green関数です。 
 

もしも,これが如何なるkのベキが分子に掛かっても

元々発散する積分である

∫d4(2π)-4nexp{i(x-y)}/(2-μ2iε) 

が常に収束するように微小な正のパラメータλによる

因子:exp{-λ(2)2}を持っていれば?という思いつき

の発想。。から出発します。
 

(※↑恐らく,他にも同様のことを先人が提案し,考察の

結果ボツにした。とか。。または,そういう理論は有名

だが寡聞にして私が知らないだけである。。とか?
 

いずれにしても今の自分の身では確かめるスベもなく,

しかし,こうしたことを誰かに聞いたか,どこかで見た。。

という記憶が理由でした発想であるにしても,自分では

決して盗作の意識はなく発案したと思っています。

 

尤も,盗作を問題にするほどのシロモノじゃなく陳腐で

些末で識者には相手にされないツマラナイ話かも。。。

それはそれでも仕方ないが。。。ピエロやドンキホーテ

裸の王様は正直嫌だな。。※)
 

さて, 自由Feynman伝播関数:ΔFはをλを含むそれ:

ΔFλ(x-y)に修正します。

 ΔFλ(x-y)
=∫d4(2π)-4exp{i(x-y) -λ(2)2}

/(2-μ2iε)です。 

これはλ→+0の極限でΔは,F(x-y)に帰着します。

 

しかし,λが如何に小さくてもセロでない限り. 

k→±∞で急激にknexp{-λ(2)2}0となり, 

積分:∫d4(2π)-4exp{i(x-y) -λ(2)2}

/(2-μ2iε)は有限となるはずですが,

 
他方λ=0のときのknexp{-λ(2)2}=knは無限大
 

なので.こうした積分は発散します。
 

という意味で先にkの積分を実行し,その後にλ→+0

の極限を取れば有限ですが,先にλ→+0として後で積分

を実行すると無限大に発散する。という極限操作の順序

によって結果が異なる例になっています。
 

それ故,これは切断や次元正則化に似た,Feynman積分の

くり込みの別の正則化の方法を与えるモノと見えるかも

しれません。

 実際,エネルギー・運動量:kが大きい紫外部の寄与が

カットされるという意味では切断と同じ役割を果たします。

 

しかし,摂動の各次数の項の振幅計算の後にλ→+0 

とするという極限操作の手続きをせず,極く小さいλ>0

が実在している。という仮説を採るのではいかが

でしょうか?
 

(□+μ2)ΔFλ(x-y)

=-∫d4(2π)-4exp{i(x-y)-λk2} であり

右辺 → -δ4(x-y) as λ→+0 です。
 

特に,x=yで(□+μ2)ΔFλ(x-y)

=-∫d4(2π)-4exp(-λk2)です。
 

質量がμの自由粒子の場;φ()(□+μ2)φ=0を満たす

ということは,運動量空間では,2=E22=μ2という

Einsteinの相対論的関係式を満たすことを意味するので,

Klein-Gordon方程式を (□+μ2)φ=f(φ,λ)のような式

に修正するということは,22=μ2というEinstein

相対論的関係は厳密には成立しない。

というある意味では,不遜な主張です。
 

Heisenbergの不確定性原理:ΔpΔx~hから,運動量が完全

に確定して,Newtonの第一法則により永遠に等速度運動をする

質点という概念は,Δp=0を意味し,それ故,Δx=∞であって,

量子論ではこの"質点"は理想的には全宇宙に拡がっていて如何

なる位置に存在しているか?が全く不明な平面波を意味します。
 

これを,常識的に古典的に解釈しようとして,初期にはBorn

パイロット波の仮説やNelsonの確率過程論に基づく方程式

などの試みがあり、結局,量子論ではこれまで粒子として見て

いたものが,実は描像として粒子ではなく波動をも含めた

二重性を持つ量子というものなので,そもそも古典的な実在

として理解することは不可能であるという解釈されそれ以上

の追及の必要はないとする。のが正統派とされています。
 

しかし, 運動量が一定の自由粒子が(□+μ2)φ=0のの解で

ある平面波ではなく,何やら非線型な方程式:

(□+μ2)φ-f(φ,λ)0の解で与えられるなら,

 
(φ,λ)
が重力波のオーダーのような,如何に微小な項

あろうと,大いに解に影響して,ソリトン(Soliton:孤立波:

4次元波ならinstanton)のような局在化された古典的粒子

描像に合致する存在となる可能性がある推測されます。
 

この非線型な項の存在を,実在空間の空間軸,時間軸が

実は連続自由度ではなく格子定数(格子間隔)がλ程度の

離散的で高々可算の自由度しか持たないとする格子上の

場理論とも相通じるのではないか?とも思っていますが,

 
λ>0が実在で消えない値と考えるか?最後に
λ→+0

極限をとるか?どうかというのは,本質的な差異のような 

気がしています。
 

まあ,くりこみ群を考察して,くりこみ点まで考慮し,

離散的格子であるが故に,デジタルコンピュータでの

実際の数値計算まで確立された理論と,まだ,計算が

思い通りにいかない単なる思いつき構想段階のもの

を比較するのは,おこがましいかも知れませんね。。
 

§2.φ4理論とサイン・ゴルドン(sin-Gordon)方程式
 

L=∫3により自由Lagrangian:Lを与える

Lagrangian密度:,

(1/2)μφ∂μφ-(1/2)μ2φ2

なる形で与えられたとき,
 

両端点固定の作用積分:S=∫t1t2Ldt=∫124

が最小値(停留値)となるような変分原理(作用原理)から

得られる,Euler-Lagrange方程式:

μ{/(μφ)}-∂/∂φ=0 自由スカラー場:

φ()の基本方程式であるKlein-Gordon 方程式:

(□+μ2)φ=(μμ+μ2)φ=です。

 

そして場の量子化は,共役運動量:

π()=∂(0φ)=∂0φ=∂φ/∂tを定義して,

φとπの同時刻正準交換関係: 

[φ(,),π(,)]iδ3(),その他の交換関係

を与えることでなされる。

というのが演繹的な自由スカラー場の正準理論です。
 

そして,従来からあるφ4理論というのは自由場の 

(1/2)μφ∂μφ-(1/2)μ2φ2にφ4に比例

する項:(1/4|)λφ4を加えて,

(1/2)μφ∂μφ-(1/2)μ2φ2(1/4|)λφ4

とする模型を考察するものです。
 

この場合,最小作用の原理に基づく

Euler-Lagrange方程式:

μ{/(μφ)}-∂/∂φ=0 は, 

(□+μ2)φ=(1/3|)λφ3となり,素朴Klein-Gordon

方程式余分な非線型な相互作用項が付加されます。
 

この相互作用項は自分自身の場φのみから構成され.

他の粒子場と相互作用するわけではないので,謂わゆる

自己相互作用の一種です。
 

一般に古典的にはLagrangianは保存力場の場合,その

保存力場のポテンシャル(位置エネルギー)をV,粒子の運動

エネルギーをTとして,L=T-Vで与えられます。
 

例えば,質量mの質点が,歪みの大きさ(伸縮長さ):xに単純

に比例するという線型弾性体模型のHookの法則に従い,

弾性力FがF=-kxで与えられる(理想的な質量がゼロで

それ自体には運動エネルギーが無い)バネの端に結び付け

られた調和振動子の系の場合なら,

 
位置エネルギー=弾性エネルギーVがV=(1/2)kx2,

運動エネルギーTは,T=(1/2)mv2(1/2)(dx/dt)2 

ですから,

L=T-V=(1/2)(dx/dt)2(1/2)kx2で, 

S=∫t1t2Ldt=を最小にする軌道は,

Euler-Lagrange方程式:

(/dt)(∂L/∂v)-∂L/∂x=0 の解です。
 

これは確かに,(2/dt2)=-dV/dx=-kx

というNewtonの運動方程式に一致します。
 

この系のL=T-V=(1/2)(dx/dt)2(1/2)kx2

での歪みxを時刻tでの連続的な空間点における局所場:

φ(,)置き換えたときのLagrangian密度が質量μの

スカラー場のそれ:(1/2)μφ∂μφ-(1/2)μ2φ2

一致するというのが,

 
量子場が無数の調和振動子の集まりに等しいという場理論

の骨子です。
 

そこで,1次元調和振動子のV=-(1/2)kx2のアナロジー

,このVの代わりに,(1/2)μ2φ2と書くと, 

(1/2)μφ∂μφ-()です。
 

調和振動子では,系のエネルギーはE=H=T+V 

(1/2)(dx/dt)2(1/2)kx2であって,これが

最小になるのはv=dx/dt=0,かつ,x=0,つまり

静止しているときです。

 特にVの最小値はx=0のときで,そのときV=0です 。

 

ただし,量子論では不確定性原理から位置xと速度vが

同時に確定値ゼロをとることは不可能なので最小でも正の

零点エネルギーなるものが存在し,これが原因で無数の

調和振動子の集まりで定式化された量子場の最低エネルギー 

準位である真空にも,無限大の零点エネルギー

(Dirac場では負の無限大)という困難がありますが。。
 

自由スカラー場のHa,iltonian密度は, 

(1/2)μφ∂μφ+(1/2)μ2φ2(1/2)μφ∂μφ

()で与えられ,位置エネルギー:()(1/2)μ2φ2

が最小なのはφ=0 場合です。
 

一方,φ4-模型では,()(1/2)μ2φ2(1/4!)λφ4 

=-(1/4!){φ2(6λ/μ2)}2(3/2)λ2/μ4であり,

この最小値がゼロでなく正であることが, 最低エネルギー

レベルである真空期待値のエネルギーはゼロで必然的に

対称性を持つべきであるという場理論の理論構成に矛盾し

この模型が自発的に破れる原因とされています。
 

そこで,φ4-模型は,南部-Goldstonの自発的対称性の破れ 

(spontaneously-broken symmetry)の1モデルとして寄与

します。
 

しかし,それだけではなく,この自己相互作用を摂動

Hamiltonian密度:int()=-(1/4!)λφ4として摂動展開

される真のくりこまれた場のGreen関数の評価などに利用

される理論などあったはずですが,これ以上の詳しいこと 

は知りません。
 

 いずれにしろ,この4乗項はFeynmanグラフではTad-pole

しての意味しかなく極めて局所的なので真面目に計算すると

発散する寄与しかないはずですからこれ自身を有限にくりこ

まないと摂動論では議論が進みません。



 自己相互作用int()=-(1/4!)λφ4を含む真の場φ

による2点Green関数:

τ(x,y)=<0|T[φ(x)φ(y)]|0>=ΔF'(x-y)

は,incomingの漸近場φinによる摂動展開が可能なら,

τ(x,y)

=<0|T[φin(x)φin(y)exp∫intin(z))4z]|0> 

となり,最低次のグラフでは頂点にλφin4(z)が接続して 

ループの同一の局所点zに接続する伝播関数:ΔF(z-z) 

が因子として寄与し,これのzによる積分は発散します。 
 

 したがって,無限大に発散するこの量を.有限にくり込める量:σ

であると仮想して全てのオーダーの寄与を摂動論的に加えると,,

伝播関数などに掛かる 因子として,

1+σ+σ2/2!+σ/3!+..=exp(σ)  を得ます。(下図参照)

 あるいは伝播関数:ΔF(z-z)を急減少因子で修正された 

ΔFλ(z-z)に置き換えれば,Tad-poleでのようなものでさえ

計算は有限に収束すると考えられます。

 この寄与も,やはり1つの固有グラフの寄与を上と同じくσで

表わすと,トータルで,exp(σ)の因子が得られますが,

もしも,これらのσが,σ=-λ(k2)2で与えられると仮定すれば,

ΔF'(x-y)=ΔFλ(x-y) となって無矛盾,自己無撞着です。


※ 図の真空泡グラフの方は,外線がn個接続するn点Green関数

τ(x1,x2,,..,.xn)=<0|T[φ(x1)φ(x2)...φ(xn)]|0>

=<0|T[φin(x1in(x2)...φin(xn)]|0>

とは異なり,外線のない真空期待値:<0||0>に寄与するもの

です。

本来S行列の定義に矛盾がないなら<0||0>=1であるはず 

ですが,実際にはλφ4の寄与も含めあらゆるグラフの寄与が

あって通常の摂動論の計算上では無限大になるためS演算子

を,S/<0||0>で再定義するのが慣例です。

  再規格化前の元の定義のSでは,
 

τ(x1,x2,,..,.xn)=<0|T[φin(x1in(x2)...φin(xn)]|0><0||0>

.です。

  なお,kの増加で急減少する修正自由伝播関数という発想:
 

ΔFλ(x-y)=∫d4(2π)-4exp{i(x-y) -λ(2)2} 

/(2-μ2iε)と,非線型相互作用の例としてのλφ4模型 

を並列して記述しましたが,これらは別々の独立な話です。


 私がアイディアの端緒として単純な
λφ4模型が,
この修正

伝播関数を具現してくれるかも知れない。。という希望的推論を

したときの試算を記述しただけに過ぎません。

 あくまで出発点の近傍でウロウロしていただけです。。※



 さて話は変わって,λφ4模型の修正された自由Lagrabgian

から得られた方程式::(□+μ2)φ―(1/3!)λφ30を解く

には,これがλ~  のときには,解法が既知の,一般に

sin-Gordon方程式呼ばれている方程式:

□φ+bsin(aφ)0 に一致することを利用したい

思います。
 

すなわち,sinx=x-(1/3!)3(1/5!)5..ですから 

aが微小なら,sin(aφ)=aφ-(1/3!)3φ3です。
 

そこで,a~0なら,□φ+bsin(aφ)0は近似的に, 

(□+ba)φ-(1/3|)ba3φ30 となります。
 

それ故.μ2=ba,λ=ba3と置けば,

□φ+bsin(aφ)0 はφ4-模型の方程式:

(□+μ2)φ=(1/3|)λφ3に一致します。
 

(※a=λ1/2/μ~ 0,b=μ3/λ1/2で,λ~0かつ

a~0です。b~∞が気になりますが,最後にλ→0とする

のでないならbは非常に大きい数ですが有限であるという

ことで問題なしです。※)
 

sin-Gordon方程式:□φ+bsin(aφ)0,非線型方程式です 

が解析的に解けます。
 

φには位相速度がの定常波の解が存在すると仮定して, 

ξ=x-tという変数変換を行い,φはξのみの関数と

します。
 

□φ()(2/∂t2-∇2)φ(,)=-bsin(aφ), 

でξ=x-vtとおいて,φ(,)=φ(ξ)とすれば, 

∂φ/∂t=-vdφ/dξ,∇φ=dφ/dξ 

2φ/∂t2=v22φ/dξ2,2φ=d2φ/dξ2 

ですから,
 

□φ()(2/∂t2-∇2)φ(,)

=-bsin(aφ),

(21)2φ/dξ2=-bsin(aφ) に帰着します。
 

この常微分方程式の両辺にdφ/dξを掛けると. 

(1/2)(21)(/dξ)(dφ/dξ)2

=-bsin(aφ)dφ/dξです。


 故に,(1/2)(21)(dφ/dξ)2

=-b∫sin(aφ)dφ 

(/)3cos(aφ)-C/2と書けます。

Cは積分定数です。
 

一般に,vが本当に波の位相速度である場合,vは

,||1(­1=光速c)を満たすはずなので.  

dφ/dξ=±[{C-(2/)cos(aφ)}/(1-v2)]1/2 

であり.∫dφ{C-(2/)cos(aφ)} -1/2=±(1-v2)1/2ξ

です。
 

これも,真面目に左辺の三角関数の平方根の積分

=楕円積分?を考えなくてもaφが微小なので,

cos(aφ)1-a2φ2/2とすれば,

C-(2/)cos(aφ){C-(2/)}+abφ2 

より,

∫dφ[{C-(2/)}+abφ2] -1/2=±(1-v2)1/2ξ, 

∫dφ[{C-(2/)}+abφ2] -1/2=±{ab(1-v2)}1/2ξ 

A={C-(2/)}/(ab)です。
 

積分公式:{1/(2+A)}dx

log|x+√x2+A|+Cを用いるtと,

og|φ+√φ2+A|=±{ab(1-v2)}1/2(ξ-ξ0) 

となります。
 

 ところで,log|x+√x2+A|sinh-1(/1/2)ですから 

log|φ+√φ2+A|=±{ab(1-v2)}1/2(ξ-ξ0) は, 

±sinh[{ab(1-v2)}1/2(ξ-ξ0)]=φ/1/2 

φ=±A1/2sinh[{ab(1-v2)}1/2(ξ-ξ0)], 

1/2{C-(2/)}1/2/(ab)1/2と書けます。
 

a=λ1/2/μ~ 0,b=μ3/λ1/2 

→ ab=μ2,/a=μ4/λ{ab(1-v2)}1/2

=μ(1-v2)1/2, 

1/2{C-(2μ4/λ)}1/2/μ,ξ=ξ0でφ=0,かつ, 

dφ/dξ=A1/2{ab(1-v2)}1/2=U(最大),1/2

(/μ)(1-v2)-1/2,

U={C-(2μ4/λ)}1/2(1-v2)1/2 です。
 

そこで,φ

 =±(/μ)(1-v2)-1/2sinh[μ(1-v2)1/2(ξ-ξ0)]
 

ξ=x-vt,t=0でξ=ξ00なら,

φ=±(/μ)(1-v2)-1/2sinh[μ(1-v2)1/2()]
 

正弦波であれば,同じ振幅を繰り返す周期波ですが

この双曲線波は.()が大きいと際限なく増幅

されます。
 

しかし,実は,U={C-(2μ4/λ)}1/2(1-v2)1/2,

λ→0ではiの純虚数です。

 このとき,1/2(/μ)(1-v2)-1/2,も純虚数で

sinhx → -isinxです。
 

改めて,UをiUと書き直すと, 

φ=±(/μ)(1-v2)-1/2sin[μ(1-v2)1/2(ξ-ξ0)] 

これは正弦波です。。。 

これだと正弦波で線形波だから非線型波に矛盾する。。?
 

しかしλ=0では無いので方程式は非線型だし。。。。

位相速度が一定の正弦波というわけではないので。。

etc.???
 

(参考):本ブログの過去記事の「水の波」シリーズ後半: 

20097/12の「水の波(6)(有限振幅の波:非線型波1) 

/17の「水の波(7) (有限振幅の波:非線型波2) 

7/24の「水の波(8) (有限振幅の波:非線型波3)」では, 

既に現在の構想のために,ソリトン(Soliton)について

言及しています。
 

非線型な波の方程式であるK-dV方程式

(Korteweg-Vreis方程式):

(∂u/∂t+u(∂u/∂x)+μ(3/∂x3)0 

定常波:(,) 

=u1+Usech2[{/(12μ)}1/2{x-(1+U/3)}], 

U=u3-u1,孤立波として,あたかも独立な粒子の

ように挙動することからソリトンと呼ばれるように

なったことなどを紹介しています。
 

今日は,ここで終わります。(つづく)

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2016年9月 1日 (木)

クライン・ゴルドン方程式(8)

クライン・ゴルドン方程式(Klein-Gordon eq.)の続きです。
 

外電磁場Aμ()があるときの一般的ケースに移ります。


 このケースについて,中間子の波動関数φ()
の満たす

基本方程式を示すため,まず,自由粒子の方程式:

(□+μ2)φ=0 (μμ-μ2)φ=0と書き直し,,

さらに,運動量演算子の微分表示:μiμにより,

(2-μ2)φ=0 と書き直します。p2=pμμです。
 

この表現では,極小相互作用変換:μ → pμ-eAμ

を適用できて,(p2-μ2)φ=0 は電磁場:μ()がある

ときは,[(μ-eA)2-μ2]φ=0 と変形されます。
 

これは,pμiμに戻せば,

[(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)-μ2]φ=0 

とも表現できます。
 

これが,電磁場Aμがあるときのスピンゼロの中間子の波動関数

が満たす基本方程式です。

 (※↑
これは,既に2016年5/30の過去記事:

クライン・ゴルドン方程式(3)」において記述していた

ことです。

そして,先に示したように自由中間子が満たすKlein-Gordon

方程式:(□+μ2)φ=(μμ-μ2)φ=0 φ[θ,χ]T

と2成分縦ベクトル表示して,i(φ/∂t)Hφ,および,

(ηρ){2/(2μ)}+μη (η,ρは2×2行列)

の形表わしたときには,
,

p=(,),μ=(Φ,)として, 

極小相互作用変換: -e,H→H-eΦにより,

i(φ/∂t)Hφ,

(ηρ){(-e)2/(2μ)}+μη+eΦ 

を得ます。

 これは,
[(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)-μ2]φ=0

同値なSchroedinger型の方程式です。
 

ここで,Π-eと置けば,

(ηρ){Π2/(2μ)}+μη+eΦ

と書けます。
 

そこで,基本方程式を,さらに具体的に書けば, 

i(φ/∂t)

[(ηρ){Π2/(2μ)}+μη+eΦ]φ

となります。
 

そして,特に,ΘρΠ2/(2μ),ε=eΦ+ηΠ2/(2μ)

と置き,をodd演算子とeven演算子に分離して,

Θεημと表現します。
 

(8-1):φ'exp(i)φ, 

∂φ'/∂t=[exp(i){(i/∂t))}exp(i)]φ'

'φ’です。
 

参考テキストの第4:本ブログでは最近の2016年8/10,

8/14の記事;「Dirac方程式の非相対論極限近似(1).(2)」

で述べたように,上記のH'は求めたいオ-ダー:O[1/μ4]

までで次のように展開されます。
 

'i[,](1/2)[,[,]]

(i/6)[,[,[,]]]

(1/24)[,[,[,[,ημ]]]] 

d(1/2)[,d](1/6)[,[,d]] です。
 

特に,1次近似まででは.

'(1i)(ημ+εΘ)(1i) 

ημ+εΘi[,η]μ+i[,Θ]i[,ε]

です。
 

ここで,ηΘ=-Θη,η21, ηεεηが成立する

ことに注意します。
 

このオーダーでρを含むodd:Θが消えることを要求

します。
 

ΘρΠ2/(2μ)(1/μ),ε=eΦ+ηΠ2/(2μ)=O(1) 

ですが,S=O(1/μ2)を仮定すると,[,Θ](1/μ3) 

[,ε] =O(1/μ2)であり,他方,[,η]μ=O(1/μ)

です。
 

よって,オーダーが(1/μ2)以下の項を無視すると,

'ημ+εΘi[,η]μ です。
 

ηΘ=-Θη,より,[η,Θ]2ηΘですから,

=-iηΘ/(2μ)と置けば,i[,η]μ=-Θ

なって,Θが相殺され,'ημ+εが得られます。
 

より高次の項にも,このSを用いると,

i[,]=-Θ+ηΘ2/μ2[Θ,η]/(2μ) 

(1/2)[,[,]]=-ηΘ2/(2μ)[Θ,[Θ.ε]]/(8μ2)

-Θ3/(2μ2),
 

(i/6)[,[,[,]]]

=Θ3/(6μ2)-ηΘ4/(6μ2) 

-η[Θ,[Θ,[Θ.ε]]]/(48μ2) 

(※ただし,この最終項はO(1/μ4)なので無視します。)
 

さらに,(1/24)[,[,[,[,ημ]]]]

=ηΘ4/(24μ3)+Θ5/(24μ4) → これは無視

 

diηΘd/(2μ),

(1/2)[,d]=-i[Θ,Θd]/(8μ2), 


 +(1/6)[,[,d]]

=-iη[Θ,[Θ,Θd]]/(48μ2)~O(1/μ6)→ これも無視

 

結局,H'=η{μ+Θ2/(2μ)-Θ4/(8μ2)}+ε

[Θ,[Θ.ε]]/(8μ2)i[Θ,Θd]/(8μ2)[Θ,η]/(2μ)

-Θ3/(3μ2)ημ+ε'Θ',


 ただし,ε'εη{Θ2/(2μ)Θ4/(8μ2)}
 

[Θ,[Θ.ε]]/(8μ2)i[Θ,Θd]/(8μ2), 

Θ'[Θ,η]/(2μ)Θ3/(3μ2)=O(1/μ2)

す。
 

そこで,=-iηΘ'/(2μ)として, 

"=[exp(iS'){'(i/∂t))}exp(i')

ημ+ε'+Θ" 

η{μ+Θ2/(2μ)Θ4/(8μ2)}+ε'+Θ",
 

Θ”=η[Θ',ε']/(2μ)iηΘ'd/(2μ)=O(1/μ3)
 

さらに."=-iηΘ"/(2μ)として,  

(3)[exp(i){"(i/∂t))}exp(i") 

ημ+ε(3)Θ(3)であって,Θ(3)=O(1/μ5)です。 


(
8-1終わり)

 

結局,特別な静的外電磁場:μ(Φ,)の存在下では, 

オーダー:1/μ4までで,φ'exp(i)φ,

i(∂φ'/∂t)=H'φ',
 

'η{μ+Π2/(2μ)Π4/(8μ2)Π8/(128μ7)..}+eΦ 

[Π2,[Π2.eΦ]]/(32μ4)ηΠ6/(16μ5)

i[Π2,(Π2)d]/(8μ2)+O(1/μ5) が得られます。

 ただし,Πです。

 

上記の'の右辺第1項:

η{μ+Π2/(2μ)-Π4/(8μ2)-Π8/(128μ7)..} 

,Dirac理論の場合と同じく,相対論的質量の増加,
 

つまり(μ2+Π2)1/2(Π2/μ)による二項展開です。
 

また,[Π2,[Π2.eΦ]]/(32μ4)は.Darwin項であり,

Dirac理論で.Zitterbewegung(ジグザグ運動)補正と

述べたもののアナロジーであり,古典点電荷の静電

相互作用:eφの補正です。
 

しかしながら,Dirac理論とは異なり,これは(1/μ4)

のオーダーで初めて出現する小さい項です。

※(注8-2):Dirac理論では,展開Hamiltonianの最終形は, 

(3)β{m+Θ2/(2)―Θ4/(83)}+ε

[Θ,[Θ,ε]]/(82) 

i[Θ.Θd]/(82) (Θ=α(-e)αΠ) 

または,(3)=β{m+(-e)2/(2)4/(82)}

+eΦ{eβ(2)}σB-{i/(82)}σ(∇×E) 

{/(42)}σ(×){/(82)}∇E 

でした。 (注8-2終わり)※
 

こうして,問題をFoldy-Woutheysen展開が収束するような

物理的状況:そして,これらHamiltonianの展開の最初の数項

で正しい記述となるケースに限定する限り,

中間子の相互作用も非相対論的量子力学の問題として論じる

ことができることが,わかりました。
 

この'のこの精度までの表現では,正振動数部分と

負振動数部分の混合は無く,HamiltonianHermite,

通常の非相対論的量子力学の確率解釈が可能です。
 

例として,この表示での正振動数解を,前記事の自由中間子

正振動数解:φ(+)()exp(iωp)(+)()[1,0]T

修正した形で,φn (+)()exp(in)ψn(+)()[1,0]T

と書くと,

{μ+Π2/(2μ)-Π4/(8μ2)-Π8/(128μ7)..}+eΦ 

[Π2,[Π2. eΦ]]/(32μ4)..]ψn(+)()

=Enψn(+)() です。
 

この正エネルギー中間子の存在確率密度は, 

(+)()|φn (+)()|2|ψn(+)()|2で与えられ

,

また,エネルギー固有値:nは,

n=∫ψn(+)()'(,)ψn(+)()3となって 

 H'の期待値に一致します。
 

 ただし,'(,)=η{μ+Π2/(2μ)-Π4/(8μ2)

 -Π8/(128μ7)..}+eΦ[Π2,[Π2. eΦ]]/(32μ4)..

 であって,これは単にHamiltonian:',eの関数の演算子

 であることを強調して明記しただけです。

 

 同様にこの表示での負振動数解を,前記事の自由中間子の 

 負振動数解:φ(-)()exp(iωp)(-)()[0,1]Tを修正

 した形,φn(-)()exp(in)ψn(-)()[0,1]Tと書くと,
 

 η[0,1]T=-[0,1]T であり,i∂φn(-)/∂t=-Enφn(-)

 ですから,'(,-e)ψn(-)()=Enψn(-)()

 です。

(※ 何故なら,'(,-e)=H'(,-e)です。)
 

故にH '(,-e)ψn(-)()=Enψn(-)() です。
 

こうして,電荷の符号が正反対の反粒子の正振動波動関数

,粒子の負振動数解の複素共役で表現できることが

わかります。
 

そして,この反粒子の存在確率密度は, 

(-)()|φn (-)()|2|ψn(-)()|2で与えられ, 

また,n=-∫ψn(-)()ψn(-)()3xです。
 

'(,)ψn(+)=EnΨn(+),および,

'(,-e)ψn(-)=EnΨn(-)より,正振動数解ψn(+)

負振動数解ψn(-),電荷の符号だけが異なるだけの 

Hamiltonianの同じエネルギー固有値Enに属するもの,

と見ることもできるわけです。
 

そこで,対角成分が1,-1の対角行列ηを挿入して 

Foldy-Woutheysen変換表示の確率密度とエネルギー

期待値を再定義してみたい。

という発想駆られます。
 

すなわち,確率密度を

n(±)()=φn(±)()ηφn (±)(), 

エネルギー期待値を

n(±)=∫φn(±)()η'φn(±)()3 

(複号同順)と定義してみます。
 

この再定義は,正振動数解については,何も変えませんが,

負振動数解については,確率密度もエネルギー期待値も

前の定義から,その符号を変えます。
 

エネルギー固有値については,正負両方の解で正となり

合理的ですが,n(±)(),負振動数解では負となるので,

これは確率密度ではなく(粒子の電荷eを掛けて)それぞれ,

粒子と反粒子電荷密度を与えるものと解釈されます。
 

'の展開での(1/μ)のベキ級数が収束する近似までで,

標準の非相対論的量子力学と同じ定式化ができる

Foldy-Woutheysen表示,さらに論議を進めることが

できます。
 

π中間子で構成される原子のエネルギー準位や遷移率は

例えばSchoroedinger理論への相対論的質量とDaewin項補正

のH'を用いた,i(∂φ'/∂t)'φ'から計算できるはず

です。
 

そしてまた,古典論対応が立証できてEhrenfestの関係が 

導出可能です。
 

すなわち,を任意の線型演算子(物理量)として, 

d</dt=i[',]>+<∂/∂t>

の成立を示すことができます。
 

1粒子の確率解釈は,,-振動数解を

Foldy-Woutheysen手法で分離できるようなケース

のみに限定されます。
 

それは,ππペアの存在を定義しなければならない

ような強く急激に変動する場に関する物理的問題など

ではふさわしくないと考えられます。
 

しかしながら,()=φ'()ηφ'(), 

E=∫φ'()η'φ'()3なる内積表現

,こうした一般のケースにも適用できるであろう

という目算で,
 

弱変動での近似のFoldy-Woutheysen変換の全てを

帳消しにして,元の

(ηρ){Π2/(2μ)}+μη+eΦと,

φ=exp(i)φ'に戻って,これら内積表現の構造

を探求します。
 

前述したように,exp(i),Hermite()

ではないので,一般にはユニタリ(unitary)ではなく

注意を要します。
 

自由粒子の0(ηρ){2/(2μ)}+μηに対する

exp(i)の最初の(iμ)の1次の近似では,

S=ηρθ(),

θ()=-(i/2)Tanh-1[{2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)}]

純虚数なので,=-でした。
 

 また,Sηρθ()より,ηS=-Sηなので,

 運動量が自由中間子のエネルギー固有値:ωp

 ついては,0'exp()0exp(i)に対して, 

 ωp∫φp(±)'()η0'φp(±)'()3 

 =∫φp(±)()η0φp(±)()3 

 なる式が成立することがわかります。
 

 電荷については,

 φ()[θ,χ]T,φ'()exp(i)φ()について,

 ()3=∫φ'()ηφ'()3 

 =∫φ()ηφ()3 

 =∫d3{θ()θ()-χ()χ()} 

 ={i/(2μ)}∫d3[φ()0φ()] 

 と書けます。
 

 同様な結果は,自由粒子でなく,電磁相互作用が存在する

 ときにも得られます。

 Foldy-Woutheysen変換から,'exp()exp(i) 

 H'=η{μ+Π2/(2μ)-Π4/(8μ2)-Π8/(128μ7)..}

 +eΦ[Π2,[Π2.eΦ]]/(32μ4)(Π-)ですが,

 やはりηS=-Sηなの,

  
電荷については,
 

 ∫()3=∫φ'()ηφ'()3 

 =∫φ()ηφ()3

 ={i/(2μ)}∫d3{(02eA0)φ} です。
 

 それ故,ηを挿入して再定義された電荷密度は,この近似

 が有効な物理的状況ではプライムのない元の表示でのそれ

 と一致し,しかも以前,Klein-Gordon粒子に対して与えた

 電荷の表式:Q=∫d3{φ(02eA0)φ}

 一致します。
 
 

 係数が違うと見えるのは,非相対論の波動関数φ(),

 相対論での同じ波動関数:φ()=fp()の規格化因子

 が異なるためです。
 

 同様に,静的外電磁場内の荷電π中間子のエネルギー固有値

 について=∫φ'()ηH'φ'()3

 =∫φ()ηHφ()3x です。
 

 こうしたプライム系と元の系の2つの表示の期待値の

 単純な対応は,一般的な物理量Oの期待値においても

 行列ηを挿入すべきことを示唆しています。
 
 

 すなわち,

 <O'>=∫φ'()ηO'φ'()3 

 =∫φ()ηOφ()3x=<O> です。
 

 ただし,'exp()exp(i)です。
 

 行列ηの存在無しには.こうした2つの表示の間の対応

 の単純性を得ることはできません。
 

 定義:<O>=∫φ()ηOφ()3へのηの導入

 の物理的効果,負振動数状態にある系に対して,

 物理的観測量の期待値に(-1)を掛けることです。
 

 これは負振動数解が過去に伝播し,それ故,放出と吸収

 の役割が逆になり.物理的観測量を負エネルギー解の

 パラメータと()で結び付けるという要請に連関して

 います。

  
陽電子の理論では,負エネルギーに対する過去への伝播

 の境界条件は空孔理論によって保証されていました。
 

 しかし,Bose粒子に対しては空孔理論のようなものは無く,

 これの根拠は伝播関数のFeynmanの解釈という論旨で満足

 するか,あるいは,場の量子論に頼らなければなりません。
 

 こうした結論で論題を終了するに当たって,

 Foldy-Woutheusen手法が収束するようなBose粒子の物理的

 問題に,結局,確率解釈を与えるという所期の目標を達成

 できた。ということを思い出します。
 

 特に,自由粒子に対しては正振動数解,負振動数解,または,

 粒子解,反粒子解を分離する正確な変換を作ることが

 できました。
 

 これは確率振幅としてのS行列の解釈である次の3種の

 S行列要素:π散乱:

 p’plimt→∞∫d3p()()i0φ()

 =δ3(')i∫d4yfp()()^()φ(),
 

 π-πの対消滅:

 p-p+=-limt→-∞∫d3p-()()i0φ() 

=-i∫d4yfp-(-)()^()φ()  

 および, π散乱: 

 Spp=δ3(')

 i∫d4yfp()()^()φ(),の式の関係

 を正当化します。


 

 

 Bose粒子をその反粒子と区別する電荷(Charge),実は

 通常の電気的なそれ,である)必要はありません。
 

 例えば,自然界にはK0中間子とK0~中間子という共に

 電気的には中性の.しかし,互いに粒子,反粒子の関係

 にあるとされる粒子対がありますが,これらを区別する

 のは,"奇妙さの量子数(Strangeness-Charge)"の符号の

 違いだけです。
 

 そしてまた,粒子がそれの反粒子と一致するケースもあり,

 その場合には,それは常に,電気的に中性で,またどんな

 他の量子数も持ちません。
 
 

 そして,例えばπ0中間子はそうした粒子の例です。この場合

 は中間子の波動関数は実関数で,電荷密度;()0です。
 

 さて.以上で波動関数がKlein-Gordon方程式に従うスピン

 がゼロBose粒子(中間子),電荷を持つ場合の電磁相互作用

 の量子力学について論じた参考テキストの第9章の記述は

 完了しました。
 

 テキストでは,次は最終10章の非電磁相互作用(強い相互作用

 弱い相互作用)の初期理論の紹介ですが,これの私的ノートの 

 ブログ記事化は,前後しましたが,既に終わっています。
 

今日はここで終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

”Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

PS:糖尿病が長いので.それが原因で体中にかゆみがあり,汗を

かくとかゆいということは真冬以外にはよくありますが,今年

は,特に今頃,夜にひどくかゆくて背中や腕にかきむしった跡

ができて,これはダニのせいじゃないか?と疑っています。
 

 何の役にも立たない,「社会のゴミ,ダニ」のようなジジイ

 に本物のダニがついて,共食い状態。。でしょうかね?
 

 しょうがないので.ダニ取りマットならベッドまわりに

 置いてありましたが,今度は金が入ったとき,UV付きの

 布団掃除機の安いものでも買いますかね。。
 

 取りあえず,かゆくてたまらないときは頻繁にシャワーを

 浴びて,これまで使っていた,かゆみ止めを塗っています。
 

 さて,一段落して続きの科学記事は,場理論など他のテーマ

 を書くのも時間残っていれればやる予定ですが。。。

  ここ数年,目が悪くなって本の
小さい字が読めなくなって

 きているため,病院入院中なども読書の楽しみが失せて,

 頭の中で考えたアイディアをノートに計算してきたもの

 などを「遺構」として書いてまとめた記事草稿: 

 =「ライフワークの最後の残り火」でもそろそろアップ

 しようかな。。とも考えています。。

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2016年8月23日 (火)

クライン・ゴルドン方程式(7)

クライン・ゴルドン方程式(Klein-Gordon eq.)の続きです。
 

今回は,Dirac方程式と同じく,lein-Gordon方程式に

ついても 非相対論的近似を与えて確率解釈できるという

ことについて記述します。
 

§9.7 クライン・ゴルドン方程式の非相対論極限変形と解釈 

(Nonrelativistic Reduction and Interpretation of  

Klein-Gordon Equation)
 

ここまで論じてきたKlein-Gordon方程式に従うπ中間子

について,1粒子の従来の確率解釈を持った(非相対論的)

量子力学による近似的な記述が求められるような物理的

状況が存在します。
 

例えば,π中間子で構成された原子とか,物質内の原子の

電磁場や外場と荷電π中間子の相互作用などが,こうした

観点から研究できます。
 

これらは1粒子のDiracの電子論が成功裡に適用され,解釈

されてきた際の物理的状況に類似しています。
 

こうしたケースについて,古典的対応の極限だけではなく

Schroedinger方程式への非相対論的な帰着と解釈を示したい

と考えます。
 

確率解釈を持つ正確な1粒子の(相対論的)量子力学を構成

することは不可能である。ということに直面して,最初の章

ではこの2次のKlein-Gordon方程式を捨てるという方向へ

と誘導されました。
 

そして,非相対論的Schrooedinger理論におけるように,時間

ついて1次の導関数のみを含む方程式の形の,Dirac方程式

基本方程式として採用する道を選択したのでした。
 

しかしながら,今までにDirac方程式の1粒子像では,

正エネルギーと負エネルギーのスペクトルの間には広い

ギャップ2mc2,なお.残っていて,弱く,ゆっくり

と変動する場のような限られた環境の中でのみ,

正エネルギー粒子状態で生き残れることを見てきました。
 

しかし,今や,代わって一旦は捨てたKlein-Gorson方程式

の適切な1粒子量子力学像を探索すべき状況に至っている

と思われます。
 

Klein-Gordon方程式を1次の時間微分のみを含む

Scheordinger方程式の形へと,近似的に変形すること

を試みます。
 

その最初のステップは,(□+μ2)φ=0 を1次の方程式

のペアに書き直すことです。
 

これは,ξ=φd≡∂φ/∂tと書き,(□+μ2)φ=0, 

ξd=∂ξ/∂t=(2-μ2)φと書き直すことでなすこと 

ができます。
 

これで目論見通り,時間微分についての2次方程式:

(□+μ2)φ=0 を,ξ=∂φ/∂t,∂ξ/∂t=(2-μ2)φ

という1次方程式のペア=連立1次方程式に書き直すことが

できたわけでず。
 

次に,θ=(φ+iφd/μ)/2,χ=(φ-iφd/μ)/2という 

2つのφとφd=∂φ/∂tの線形結合を導入します。
 

この,θとχは単純な非相対論的極限で解釈できる描像を持つ 

ことがわかります。
 

すなわち,質量μで静止した粒子では,∇φ=0 (0)なので, 

(□+μ2)φ=0 ,2φ/∂t2=-μ2φ と書けます。
 

これの正エネルギー粒子(正質量)の解は, 

φ ∝ exp(iμt)iφd/μとなるため, 

θ=φ ∝ exp(iμt),かつ,χ=0 です。
 

一方,負エネルギー粒子(負質量)の解は,

φ ∝ exp(iμt)=-iφd/μとなり,逆に,

θ=0,かつ,χ=φ ∝ exp(iμt) です。
 

したがって,Dirac方程式の4成分スピノルを2成分ごと

に分解した際の大成分,小成分た類似した役割を,ここでの

θ,χが果たしていると見えます。
 

(7-1):質量がμでスピンが1/2の粒子なら,それが

満たすDirac方程式は(iγμμ-μ)ψ=0です。
 

その際,非相対論的極限でのDirac粒子の近似的な1粒子描像

を見るため,正確な解である4成分スピノル:ψを,ψ=[θ,χ]T

なる形に分解,2成分スピノル;θ,χをψが正エネルギー解

の場合のそれぞれの大きさに基づいて,それぞれ,大成分,小成分

と呼んだのでした。  (7-1終わり)
 

さて,θ=(φ+iφd/μ)/2,χ=(φ-iφd/μ)/2によって 

Klein-Gordon方程式:∂φd/∂t=(2-μ2)φ は, 

i(∂θ/∂t)=-∇2(θ+χ)/(2μ)+μθ, 

i(∂χ/∂t)=+∇2(θ+χ)/(2μ)-μχ 

と分解されます。
 

(7-2):φ=θ+χ,φd=-iμ(θ-χ)より,  

φd=∂φ/∂tは,{(θ+χ)/∂t}=-iμ(θ-χ)
 

∂φd/∂t=(2-μ2)φ は, 

{(θ-χ)/∂t}iμ-1(2-μ2)(θ+χ) 

と書けます。
 

得られたものを,辺々加えて2で割ると 

i(∂θ/∂t)=-∇2(θ+χ)/(2μ)+μθ,
 

一方,前者から後者を引いて2で割ると

i(∂χ/∂t)=+∇2(θ+χ)/(2μ)-μχ 

が得られるわけです。  (7-2終わり)
 

ここで,よりcompactな形式を得るため,θ,χを2つの成分 

とする縦ベクトル表示を導入します。
 

すなわち,波動関数φの代わりに.φ[θ,χ]Tとして,

波動方程式を見掛け上,Schroedinger型の方程式:

i(φ/∂t)0φとするわけです。
 

このとき,Hamiltonian:0,,Bを2×2行列として 

0{-∇2/(2μ)}+μと定義されます。
 

ここでAは1行目が[1,1],2行目が[1,1]の行列,

Bは対角成分が1とー1の対角行列です。
 

i(φ/∂t)0φSchroedinger形ですが,

(□+μ2)φ=0 アナロジーとして得られたもので,

保存する正定置の確率という描像には至りません。
 

これは0Hermite演算子ではないからです。
 

(7-3):i(φ/∂t)0Φから,

-i(φ/∂t)=Φ0なので,

i∂(φφ)/∂t

{φ(φ/∂t)+i(φ/∂t)φ} 

φ(00)φ です。
 

それ故,0Hermite:00なら

∂∂(φφ)/∂t)/∂t=0 

が成立し,:(φφ)を保存される正定置な確率密度

と解釈することができるのですが0Hermite:でないなら,

(φφ)が時間的に保存される,という保証はありません。
 

行列演算子として0{-∇2/(2μ)}+μBについて

0(0)T0が成立しない理由は,対角行列でない

Aに原因があって,これはφ[θ,χ]Tの大成分θと小成分

χを混合させます。
 

ゆっくり運動している粒子(=-i∇ ~ 0)に対する最低次

の近似で∇2を無視すれば,0~μとなって,これはHermite行列

なのでi(φ/∂t)0φは確率解釈可能なSchroedinger方程式

となり,


   
先に与えたKlein-Gordon方程式の静止状態の解: 

θ=φ ∝ exp(iμt),χ=0,および,

θ=0,χ=φ ∝ exp(iμt)がそれぞれ,

i(φ/∂t)0φφ[θ,χ]Tの正エネルギー 

(正振動数)の解, 負エネルギー(負振動数)の確率解釈可能

な解となっています。
 

Dirac理論から,直接,Foldy-Wouthuysen変換のテクニック

を借用することによって,系統的に運動エネルギー項の存在

による補正を導入します。
 

4×4行列βのアナロジーとして対角成分が1,-1の2×2

対角行列:ηを導入します。また,反対角成分がσ,-σk

反対角行列:α(k=1,2,3)のアナロジーで,反対角成分が

,-1の2×2反対角行列:ρを導入します。
 

Dirac理論の非相対論極限近似を求める際に用いた大成分

と小成分を混合させるodd演算子を除去するユニタリ変換

の演算子:Fexp(i)のアナロジーで,π中間子の波動関数

2成分縦ベクトル表示:φφ'=exp(i)φなる変換を実行

します。
 

単刀直入に結論を述べると,S=ηρθ(),

θ()=-(i/2)Tanh-1[{2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)}] 

と置けば,Hamiltonian:0(ηρ){2/(2μ)}+μη

からodd演算子ρを除去できます。
 

(7-2):i(φ/∂t)0φ,φ'=exp(i)φより, 

Sがtに依存しないなら,i(φ'/∂t)exp(i)0φ

exp(i)0exp(i)φ'0'φ',

0'=exp(i)0exp(i)です。
 

0(ηρ){-∇2/(2μ)}+μη

(ηρ){2/(2μ)}+μη ですが,ηρθと

おくとき,θがの関数θ=Θ()なら, 

[θ(),2]0,[θ(),μ]0ですが, 可換ではない

行列の係数があるため,[,0]0 ではないです。
 

そして,S=ηρθなら(ηρ)21なので, 

exp(i)=Σn=0(1/!)(iηρθ)n 

=Σk=0[{1/(2)!(1)θ2k

(iηρ){1/(2k+1)!}(1)θ2k1} 

=cosθ+(iηρ)sinθです。
 

同様にexp(i)cosθ-(iηρ)sinθです。
 

0'exp(i)0exp(i) 

=[{2/(2μ)}{cosθ(iηρ)sinθ}(ηρ)

{cosθ-(iηρ)sinθ} 

+μ{cosθ+(iηρ)sinθ}η{ cosθ-(iηρ)sinθ}
 

具体的な計算から,exp(i)ηexp(i)

ηcos(2θ)(iρ)sin(2θ),

exp(i)ρexp(i)ρcos(2θ)(iη)sin(2θ) です。

したがって,H0'exp(i)0exp(i) 

η[{2/(2μ)+μ}cos(2θ)i{2/(2μ)}sin(2θ)] 

+ρ[({2/(2μ)}cos(2θ)i{2/(2μ)+μ}sin(2θ)]

です。
 

ρの係数がゼロ:つまり, 

({2/(2μ)}cos(2θ)i{2/(2μ)+μ}sin(2θ)0 

となるような, 

isin(2θ)/cos(2θ){2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)} 

を満たすθが存在すれば,そのθに対して行列ρは除去

できます。
 

しかし,そのような実数θは存在しません。

θが実数でなく純虚数:θ=-iω(ωは実数)であるとすれば

そうしたθが存在します。
 

ただし,そのときは,S=ηρθがHermiteではなく,

exp(i)はユニタリではありません。
 

すなわち,cos(2θ){exp(i2θ)exp(i2θ)}/2 

{exp(2ω)exp(2ω)}/2cosh(2ω), 

isin(2θ){exp(i2θ)exp(i2θ)}/2 

{exp(2ω)exp(2ω)}/2sinh(2ω)

です、
 

よって,isin(2θ)/cos(2θ){2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)} 

,sinh(2ω)/cosh(2ω){2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)} 


  つまり,tanh(2ω){2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)}
 

を意味します。
 

そのとき,0'exp(i)0exp(i) 

η[{2/(2μ)+μ}cosh(2ω){2/(2μ)}sinh(2ω)] 

ηcosh(2ω)[{2/(2μ)+μ}2{2/(2μ)} 2]

/{μ+2/(2μ)} です。
 

双曲線関数の公式:1/cosh2(2ω)1tanh2(2ω)より. 

1/cosh2(2ω)

[{2/(2μ)+μ}2{2/(2μ)}2]/{2/(2μ)+μ}2  

(2+μ2 )/{2/(2μ)+μ}2ですから,  

cosh(2ω){2/(2μ)+μ}/(2+μ2 )1/2

です。
 

ぃたがって, 

0' η[{2/(2μ)+μ}2{2/(2μ)} 2]/(2+μ2 )1/2 

η(2+μ2)/(2+μ2 )1/2η(2+μ2 )1/2 

を得ます。  (7-3終わり)
 

S=ηρθ(),

θ()=-(i/2)Tanh-1[{2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)}] 

なら,≠SでありSはHermiteではないので,

U=exp(i)に対し,-1exp(i)≠Uexp(i)

であって.Uはユニタリでないため, 
 

0'= U0-1exp(i)0exp(i)η(2+μ2)1/2 

,φ'=Uφexp(i)φi(φ/∂t)0φのとき 

i(φ'/∂t)0'φ'は成立しますが,


  φ
'φ'=φφ
は成立せず,φφφ'φ'を確率密度

とする解釈は,非相対論での近似的な意味でしか成立しない

のでは?と思われます。
 

さて,0'η(2+μ2)1/2,i(φ'/∂t)0'φ'の形式

では.φ'の大成分=正エネルギー解と,小成分=負エネルギー

解は完全に分離され,エネルギー・運動量の関係は自由電子

に対するそれと同じです。
 

電子との唯一の違いはスピン自由度に対する解の二重化が

ないことです。
 

正エネルギー解をφ'()

φ(+)()exp(iωpt)(+)()[1,0]Tとします。

すると,

i(φ(+)/∂t)0'φ(+)η(2+μ2)1/2φ(+) 

,ωp(+)()(2+μ2)1/2(+)()

を意味します。
 

そして,このとき,(+)()=|(+)()|2が正エネルギー粒子

の存在確率密度を表わすと考えられ,

ωp=∫φ(+)()0'φ(+)()3が,粒子の正エネルギー 

の値を表わします。
 

同様に,負エネルギー解をφ'()

φ(-)()exp(iωpt)(-)()[0,1]Tとします。

すると,

i(φ(-)/∂t)0'φ(-)η(2+μ2)1/2φ(-) 

,-ωp(-)()=-(2+μ2)1/2(-)()

を意味します。
 

このとき,(-)()=|(-)()|2が負エネルギー粒子

の存在確率密度を表わすと考えられ,

-ωp=∫φ(-)()0'φ(-)()3がその粒子の

エネルギーを表わしていて,これは負になります。
 

ここで,φ(-)()exp(iωpt)(-)()[0,1]T,

正エネルギー固有値を持つ反粒子の波動関数と解釈

します。
 

i(φ(-)/∂t)0'φ(-)η(2+μ2)1/2φ(-)

複素共役をとってi(φ(-)/∂t)0'φ()

η(2+μ2 )1/2φ(-)であり,0'0'より

i(φ(-)/∂t)=-0'φ()=-η(2+μ2)1/2φ(-) 

です。

  これは,時間の過去に伝播する負エネルギー粒子の

複素共役が時間の未来に伝播する正エネルギー反粒子

という描像に合致します。
 

そして,自由粒子ではなくて外電磁場Aμ(x)がある

一般の場合には,もはやodd演算子を除去してHamiltonian

を対角化するSを求めることは不可能です。
 

しかし,この論議は次回にまわして今日はここで

終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell著 

 "Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

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2016年7月27日 (水)

クライン・ゴルドン方程式(6)

前後しますが,「弱い相互作用の旧理論」については一応

終わったので,クライン・ゴルドン方程式(Klein-Gordon eq.)

の続きに移ります。
 

ただし, 「弱い相互作用の旧理論」の最後のCVC

の記事とPCACの記事では,自分の中でまだ納得してない

不完全燃焼の部分が残っているのでPending状態ですが。。。 

 それに,急いでもないのに後回しですが。。。

 以下,本題です。
 

§9.6 高次のプロセス(Higher-order Processes) 

ここまで,主として電子に対する伝播関数の理論を模倣して

きましたが,この理論展開を,さらに続けることができて,前の

例から高次の計算法則が推測できます。
 

すなわち,電子のケースのFeynmanルールから,荷電π中間子

に対するルールへの主要な変更は,次のように書けるとが

わかります。
 

.9.6に示すように,運動量pからp'へとπ中間子を散乱

する電磁頂点では,時間的に未来,過去の両方向に対して,電子

頂点からπ頂点への変更の結果は,次のような置き換えと

なります。


 

すなわち,eγμ → e(μ+p'μ) です。
 

(ただし,eは,eγμでは電子の電荷,(μ+p'μ)では,

荷電π中間子の電荷を意味します。)
 
. 2次の相互作用項:(-e2μμ)に対応する光子2個連結

のπ頂点,2i2μνなる因子として寄与します。


 

これは,先のπのCompton散乱のS行列要素: 

pfpi(i2ε0-2)(2π)-6(16ωiωf0k'0)-1/2 

(2π)4δ4(f+k'-pi-k) 

×[{ε(2i+k)}{(i+k)2―μ2}-1{ε'(2f+k')} 

{ε'(2i-k')}{(i-k')2―μ2}-1{ε(2f-k)} 

2εε']


 において,[ ]の中の最後の項に反映されています。
 

2i2μνの因子i,この項に対する摂動展開のパラメータです。
 

このS行列要素の式はe2のオーダーの計算ですが,(μ+p'μ) 

については摂動の2次なのに,この項は摂動の1次の計算なので

現われるため出現する因子です。
 

つまり,通常の積分方程式のn回の反復近似から得られるn次の

摂動項では,因子:(i)nが出現するため,(μ+p'μ)の寄与を

nのオーダーまで計算するとき,-e2μμ項が計算にm回

出現するなら,このiは因子:(i)n-2mim(i)n-m×(1)mとして

寄与するわけです。
 

(6-1);電子のFeynman規則では,実は1頂点には,単にeγμでは 

なく(i)という因子も伴なった(ieγμ)が対応します。
 

それ故,πの頂点でもe(μ+p'μ)だけでなく,正確には 

{i(μ+p'μ)}が対応するのですが,この余分の(i)

,摂動級数の4元座標変数積分の前に掛かる(i)因子に

起因します。
 

したがって,光子がn個連結した頂点には通常はenに因子:(i)n 

が付随します。
 

しかしながら,(-e2μμ)がm個挟まってトータルでenの寄与

頂点ならルールは修正されて,n-2mに寄与する(n-2)重の 

(μ+p'μ)からの摂動級数因子:(i)n-2,m重の

(-e2μμ)からの摂動因子(i),および,(-e2)から

2mを除いた(1) を掛け合わせたiの寄与があります。
 

結果的には,(i)n-2×(i)2×(i)(i)n-2×i

(i)n-なる係数がenのオーダーの項の係数として寄与する

はずです。
 

したがって,(-e2μμ)1個当たりの虚数係数の寄与

としてはiです。 (6-1終わり)
 

2i2μνの係数因子2は,この頂点での崩壊や散乱において

生成,または消滅される量子(光子)が常に2個であるために

出現します。 (9.7参照)
 

ちなみに,ゲージ不変性のテストは,与えられたeの任意

オーダーに寄与するあらゆるグラフの総和を示す相互作用

振幅に対して適用されます。
 

前の例でも見たように,摂動級数の各eのオーダーごとに

ゲージ不変性が成立するため,これはp^A+Ap^とAA

に由来する項の相対因子が正しいかどうか?の簡単で有用

なチェックを与えます。
 

.運動量がpの内線に対応する伝播関数については,次のように 

置換します。

 i/(-m+iε)i(+m)/(2-m2iε)
→ i/(2-μ2iε)

です。
 

.外線に付与する規格化因子は電子スピノルのそれに取って

代わって次のようにします。

 (/)1/2() {1/(2ω)}1/2 です。
 

他の全ての因子:特にiと(2π)のべき乗については厳密に電子に

対するものと同一です。
 

最後に.同種粒子線を交換しただけのグラフの振幅に相対的

マイナス符号を付与するかどうか?という問題が残っています。
 

電子については,2つの同種粒子の交換を反対称とする

というPauliの原理によって,電子が交換されたグラフに

相対的なマイナス符号が導入されました。
 

一方,実験的検証の示すとところによれば,π中間子は

Bose粒子です。すなわち,それはBose-Einsteinの対称

統計を満足する粒子です。
 

特に,反応:→ π+π+πでは,2つのπ

中間子は1つの相対的S状態に放出されます。
 

さらに,Pauliによって初めて与えられた強い理論的根拠が

あります。
 

つまり,スピンと統計の間には密接な関係があって,スピン

が半奇数の粒子達はFermi統計に従がって排他原理を満たし,

整数スピンの粒子達はBose統計に従う故に,対称化される,

ということです。
 

こうした論旨は後に述べる予定の場の量子論の枠組みの

中で最もうまく論じることができます。
 

しかし,ここでは単に今記述しようとしているスピンがゼロ

の粒子はBose-Einsteinの対称統計に従う粒子であることを

意味するBose粒子であると仮定します。
 

このことはBose粒子の交換だけが異なるグラフの振幅の間

の関係は,相対的()符号ではなく()符号でなければなら

ないことを意味します。
 

したがって,もはや閉じたループ上の積分や,散乱グラフと

消滅・生成グラフとの間に,電子のケースのような(1)

因子は出現しません。
 

これらの(1)の因子は,8.1()や図8.1()の電子の過程

に対応する振幅において空孔理論の状態へのPauliの排他原理

の適用によって導入された因子でした。


 

しかし,Bose粒子に対しては,状態が全て満たされている

負エネルギー粒子の海などは無く,空孔理論とは異なる道筋

,こうした相対的符号を論じる必要があります。
 

同種のBose粒子のCoulomb散乱においては,9.8の2つの

グラフの振幅間の相対的符号はプラスです。


 

これら,2つの線のエネルギーの符号を変えることで

Bose粒子の粒子-反粒子散乱に対する振幅を得ることが

できます。
 

例えば,入れ換え;q2 ⇔ -p2 によって,9.9に示された

グラフの振幅が得られます。


 

9.9のグラフに対応する2つの振幅間の相対符号は

入れ換え;2 ⇔ ―p2が単に,散乱グラフの図9.8から図9.9

に移行する変化なら,正のままです。
 

この入れ換え;q2 ⇔ ーp2,電子のプロセスにおいて, 

1⇔p1, 1⇔p1,2⇔-q1,2⇔-q1,なる

入れ換えで,既に遭遇した法則と同じ置換法則の一つの例であり

これによって,中間子(Bose粒子)の振幅に拡張されます。
 

こうした法則は図9.10の全ての3つのグラフの振幅に対して

相対的符号プラスへと誘導します。


 

9.10()と図9.10()は頂点yの下では同等であり,それ故,

それらの間では相対的符号は()です。
 

一方,9.10()に相対的に,9.10()uvの間に付加

した散乱相互作用の導入は,符号変化は伴わないため,先述

したように,9.10()の閉ループに伴なって(1)因子が生じる

ことはないと結論されます。
 

π中間子やK中間子のようなスピンゼロBose粒子の電磁

相互作用の高次の計算については,また,くり込みの効果を

示すという課題があります。
 

これは,テキストの第8:本ブログでは

「量子電磁力学の輻射補正」シリーズ記事において電子に

対して行なったものの完全なアナロジーとして追跡すること

ができます。
 

しかし,実際にこうしたアナロジー追跡の詳細に立ち入ることは

しません。
 

このことの主な理由は,電子とは異なり中間子π,Kにはそれら

自身や核子:,nとの,電磁相互作用よりはるかに強い相互作用

があるためです。
 

したがって,計算結果の物理的観測との比較が可能となる前に,

この強い相互作用の効果をも含まれなければならないからです。
 

そこで,高次の電磁相互作用の効果の詳細よりも,これら非電磁

相互作用の論議の方が重要です。

 そして実際,この章の続きとし
て強い相互作用,弱い相互作用

のトピックに移り,これも本ブログ記事で紹介しました。
 

今日はここで終わります。
 

次回は,lein-Gordon方程式の非相対論的近似について

述べる予定です。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

"Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

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2016年7月20日 (水)

弱い相互作用の旧理論(17)(Fermi理論)

 「弱い相互作用の旧理論」の続きです。


  前回のCVC仮説(=ベクトルカレントの保存)について

 ブログ記事を書くついでに20年以上ぶりに考察して細かい

 計算などチェックしつつ、まだで納得できない部分もあり

 ますが,取りあえず次のPCACの項目に移ります。
 

§10.17 軸性ベクトル相互作用の部分的保存(PCAC) 

(Partialy Conserved Axial vector Coupling)
 

核子の周りの中間子の雲は,軸性ベクトル,またはβ崩壊相互

作用のGamow-Teller部分にもまた影響すると考えられます。
 

α~1.21という数は,中間子の雲の影響に由来して,ベクトルの

結合定数に軸性ベクトルの強さを関連付けるものであると解釈

します。
 

αは1に近い数で,仮想の中間子の雲による結合の強さの

くり込み計算は対数的に発散する値を与えます。
 

これは,軸性ベクトルのβ崩壊結合に対しても,恐らくは近似的

な保存則が成立しているだろうこと,を示唆しています。
 

現時点では,このおぼろげなアイデアも,他の如何なるアイデア

に基づいても,αの大きさを説明するための進歩は,なされて

いません。
 

そこで,αの値の説明そのものについては,ここでは,これ以上

考えないことにします。
 

しかし,弱い崩壊振幅における核子の部分的に保存する

軸性ベクトルカレントに結合するレプトンカレントという

アイデアは,以下に論じるように,荷電π中間子の観測寿命

に適合するよう予測計算を行なうことにおいて,幾らかの

成功を得ています。
 

軸性ベクトルカレントへの最も単純な輻射補正は,10.22

に示すように単一のπ中間子を含むグラフです。


 

ここまでのFeynmanルールによれば,これはβ崩壊の不変振幅

に次のような項として寄与します。
 

すなわち,

in(Ga/2)(ig√2)[p~(p)iγ5(n)](2-μ2)-1 

×(iμ)[e~(e)γμ(1-γ5)ν(ν~)] です。
 

ただし,(Ga/2),前に与えたπ中間子崩壊のS行列要素: 

fi(π)(-i)(2π)-9/2{/(4k~)}1/2(Ga/2) 

μ~(e)γμ(1-γ5)(~)(2π)δ(π-pe-k~) 

における結合定数を示しています。
 

また,gはπ-Nの強い相互作用の結合定数であり.追加の因子 

2は荷電π放出のアイソスピン行列に由来する係数です。
 

弱い相互作用の1次のオーダーで,10.23に示すようなグラフ 

に由来する,多くの追加の寄与があります。

こうした全てのグラフの寄与は次のような形に書けます。

すなわち,=Fμ(+)(Pp,Pn)u~(peμ(1-γ5)v(k~)

です。

  
ただし,μ()(p,n)(Ga/2) ~(p) 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)+pμγ53(2)](n) 

q=Pn-Pp=pe+k~,p=Pp+Pn です。
 

この形式の特徴は,電磁カレントに対して作成したものに同様

です。唯一の違いは,軸性ベクトルカレントを作成するために

γ5が挿入されていることです。
 

もしも,μ()(p,n)への寄与が,10.23のように, 

アイソベクトルの()成分として変換すると仮定するならば, 

このことを示すことによって,この形をさらに簡単にすること

できます。
 

すなわち,3(2)0 です。
 

これは,強い相互作用の荷電共役(Charge cobhugatuon)不変性

アイソスピン不変性に基づくものです。
 

これを示すため,10.23()の頂点τをτ3にし,10.23()

でのレプトンに結合するπ中間子の放出頂点でも,τをτ3

に変えることによってμ()(p,n)をアイソ空間で回転させます。
 

強い相互作用の荷電独立性のために,これはμ()(p,n) 

アイソベクトルの第3成分に変換させます。
 

特に,陽子pについては, 

μ3(P',)(Ga/2) ~(P') 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)+pμγ53(2)]() 

 q=P-P,p=P+P となります。
 

強い相互作用の荷電共役不変性によれば,10.23のグラフに 

由来するμ()(p,n)(Ga/2) ~(p) 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)+pμγ53(2)](n) 

なる付加的寄与においては,
 

陽子が反陽子に置き換えられた場合でも,"裸の"陽子カレント

と同様,μ()(p,n)μ3(’,)に帰着させられる必要があります。
 

つまり,運動量PμからP'μの状態へと散乱される反陽子

の荷電共役遷移については,

  
参考テキストでは.第6章伝播関数.
本ブログでは,

散乱の伝播関数の理論」で論じているように,

運動量(-P'μ)から(-Pμ)の状態へと散乱され,

時間的な前方,つまり過去へと伝播する負エネルギーの

陽子に対応する下図10.24グラフで記述されます。
 

これに対応する頂点がγμγ5の素朴な軸性カレント: 

μ(P',)=u~(P')γμγ5(),荷電共役変換

:Cで,~()γμγ5(P')

=-u()-1γμγ5Cu~(P')exp{iδ(P',)} 

=-u~(P')γμγ5()exp{iδ(P',)} なる等式

を満たします。
 

これは,つまり,

Aμ(-P,-P')=-JAμ(P',)exp{iδ(P',)} 

を意味しています。
 

200912/20の過去記事:Diracの空孔理論(2)」によれば, 

Dirac方程式に従う陽子の荷電共役変換演算子:Cは,行列表示で 

C=iγ2γ0=-iγ2γ0と選択することができます。

  
このとき,-1=C=-Cであり,陽子の正エネルギー

Pのspinor:(,),と負エネルギー:(-P)spinor:

(,)のスピンSを省略した表現では,

exp{iδ()}()=Cu~(),よって, 

exp{iδ()}()=γ0()-1, 

or exp{iδ()}~()=γ0()-1γ0と書けます。
 

これから,~()γμγ5(P') 

=γ0()-1γ0γμγ5Cu~(P')

exp[i{δ()-δ(P')}]となりますが,

  
γ0()γ0=u(),(γ0)21,γ0-1γ0=-C-1

より位相変化をδ(P',)=≡δ()-δ(P')で定義

すれば,
  
~()γμγ5(P') 

 =-u()-1γμγ5Cu~(P')exp{iδ(P',)}

 を得ます。
 

さらに,()-1γμγ5Cu~(P')

[()-1γμγ5Cu~(P')] 

=u~(P'){-1γμγ5}()ですが,

 
C=iγ2γ0より,
-1=C,(-1)=C なので,

{-1γμγ5}=C-1γ5γμ=γ5-1γμ

=-γ5γμ=γμγ5より,

-u()-1γμγ5Cu~(P')=-u~(P')γμγ5() 

が得られるわけです。 (17-1終わり)
 

(17-2):より詳細にDirac粒子の荷電共役不変性

 (Chargeconjigation)の意味について振り返るため,

200912/20の過去記事:Diracの空孔論(2)から一部を抜粋

して再掲し,粒子と反粒子の対称性を意味する荷電共役不変性

の項目を復習しておきます。
 

(再掲開始↓) 

Diracの空孔理論は,取り得る全ての負エネルギー状態が完全に占有 

された負エネルギー電子の海(=真空)において,エネルギー:(-E) 

(E>0),および,電荷e(電子の場合はe=-||0)を持つ電子1 

の欠損を示す,負エネルギーの海における1個の空孔(hole),1個の 

正エネルギーの陽電子の存在に同等である,と解釈する理論です。
 

 そこで,この解釈では電磁場Aμがある場合の質量mの電子波動関数

 Ψが従うDirac方程式:(i-e-m)Ψ=0 の負エネルギー解

 と,正エネルギー陽電子の固有状態を示す波動関数が1対1に

  対応するはずです。
 

ただし,≡γμμ,iiγμμiγμ(/∂xμ),

≡γμμです。
 

μ^i(/∂xμ)ですから,^iであり, 

自由電子のDirac方程式に,極小相互作用変換:

μ^→ pμ^-eAμ施して得られるものが,μ

存在する場合の上記の電子波動関数に対する 

波動方程式です。
 

こうした解釈により,陽電子の波動関数Ψcは電子とは正の電荷

(-e)を持つだけ異なる,電子と同じ波動方程式を満たすはず

なので,それは,(i+e-m)Ψc0 の正エネルギー解である

と考えられます。
 

 このことから,2つの方程式を互いに変換させる演算子を作る

という発想に導かれます。
 

これを遂行するためには,変換の結果として,2つの演算子;

^iの間の相対的符号が変換前と異なるようになる

ことが必要ですが,これは単に複素共役を取ることで可能です。
 

 すなわち,{i(/∂xμ)}=-(/∂xμ),μ=Aμ

 なので,(i-e-m)Ψ=0, or

{γμ(iμ-eAμ)ーm}Ψ=0,両辺の複素共役を取ることで

{(iμ+eAμ)γμ*+m}Ψ0 となります。
 

もしも,(Cγ0)γμ*(Cγ0)-1=-γμなる代数関係を満たす 

正則行列Cγ0を見出すことができれば, 

{(iμ+eAμ)(Cγ0)γμ*(Cγ0)-1+m}(Cγ0Ψ)0

より,{(iμ+eAμ)γμ-m}(Cγ0Ψ)0 となります。
 

 ところで,Ψ~=Ψγ0より,γ0Ψ=Ψ~ですから,

このCγ0用いてΨc≡Cγ0Ψ=CΨ~と定義すれば,上記

方程式は,{(iμ+eAμ)γμ-m}Ψc0となり,

陽電子の波動関数をΨcとしたときに,それが満たすベキ方程式

に一致します。
 

 今,用いているDiracガンマ行列の表示では,C=iγ2γ0と選択

すれば,C=-C-1=-C=-Cであり,(γμ)-1=-γμ,

または-1γμC=-(γμ)となり,それ故, 

(Cγ0)γμ*(Cγ0)-1=γ0γμ +γ0=-γμです。
 

したがって,C=iγ2γ0,上記の(Cγ0)γμ*(Cγ0)-1

=-γμなる条件を確かに満足します。
 

任意の表示はユニタリ同値なことから,これは任意の表示の

変換でも常に(Cγ0)γμ*(Cγ0)-1=-γμを満たすCを作る

ことが可能なことを示すに十分です。
 

しかし,(i+e-m)Ψc0を満たすような

Ψc≡Cγ0Ψ=CΨ~を与える荷電共役演算子:Cの定義に

おいては,位相の任意性があることに気付きます。
 

例えば,今の行列でのC=iγ2γ0なる陽な表現では,Ψciγ2Ψ

です。そこで,静止した負エネルギー電子:

Ψ=(2π)3/2[0,0,0,1]exp(imt)であれば,

Ψciγ2Ψ(2π)3/2[1.0,0,0,1]exp(imt)

となります。
 

これは,静止したspin-downの負エネルギー電子の欠損が.

静止したspin-upの正エネルギー電子の存在に等価という描像

に対応しています。
 

この場合には,荷電共役変換後に位相変化は無いように

見えますが,一般には,

exp{iδ(,)}(,)=Cu~(,), 

exp{iδ(,)}(,)=Cv~(,) となって 

(,)とu(,)が互いに位相因子:exp{iδ(,)}

を伴なう運動量表示の荷電共役spinorの対になると

考えられます。
 

波動関数の位相には何の物理的意味も無いように見えますが,

実はこれにも重要な意味が隠されている場合があります。  

(再掲載終了)  (17-2終了)※ 
 

陽子pの素朴な軸性カレントにおける荷電共役不変性: 

~()γμγ5(P')

=-u~(P')γμγ5()exp{iδ(P',)},
 

または,Aμ(-P,-P')=-JAμ(P',)exp{iδ(P',)} 

での位相因子:exp{iδ(P',)},運動量とスピンから決まる

量です。
 

一方,β崩壊のハドロンカレント因子での強い相互作用のπの雲など 

の高次補正を含む軸性カレントの第3成分: 

μ3(’,)(Ga/2)u~(P') 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)+pμγ53(2)]()

, こうした補正前の素朴なカレント:Aμ(P',)

と同じ荷電共役変換性を持つと考えられます。
 

すなわち,μ3(-P',-P)=-Fμ3(P',)exp{iδ(P',)}です。
 

これから,容易に,3(2)0となることが結論されます。
 

(17-3): μ3(-P',-P)(Ga/2)~() 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)-pμγ53(2)](P') 

ですが,


 
一方,μ3(P',)(Ga/2)~(P')
 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)+pμγ53(2)]()

です。ただし,q=P'-P,p=P'+Pです。
 

そして,荷電共役によって, 

~()γμγ5(P')=-u~(P')γμγ5()exp{iδ(P',)}, 

かつv~()γ5(P')=-u~(’)γ5()exp{iδ(’,)} 

が成立します。


    故に,μ3(P',)exp{iδ(P',)}(Ga/2)~()
 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)+pμγ53(2)](P') 

です。 

これが,μ3C(-,-P')(Ga/2)~() 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)-pμγ53(2)](P') 

に恒等式的に等しいことから,

  
3(2)0 が結論されます。(注17-2終わり)※
 

軸性ベクトル部分の図10.23()のようなグラフに由来する

β崩壊の振幅への寄与は,10.22のグラフの最低次の

不変振幅: 

 Min(Ga/2)(ig√2)[p~(p)iγ5(n)](2-μ2)-1 

 ×(iμ)[e~(e)γμ(1-γ5)ν(ν~)]

 に,あるq2のスカラー関数(2)を掛けたもので与えられる

 と考えられます。ただし,ここではq=Pn-Ppです。
 

 よってβ崩壊でのπ-N頂点の寄与による摂動の全ての次数 

 の修正の総和は,上記振幅での[p~(p)iγ5(n)]の因子

 を,[p~(p)iγ5(2)(n)]なる形の相互作用因子に

 置き換えることで得られると考えられます。
 

  ここに,(2),不変運動量遷移q2の不変関数です。
 

 これは,奇数個のγ5頂点があるとき, pnDirac

 自由粒子外線の次に位置するところまで右から左に交換

 させ移動させて,核子の質量Mに置換できるという事実

 から従います。
 

  こうして,核子の雲の中に単一のπ中間子が,直接レプトン

 と結合する図10.23(b)のようなグラフの寄与は,μγ5

 比例するため,

 Fμ()(p,n)(Ga/2) ~(p) 

 ×[γμγ51(2)+qμγ52(2)](n)

 の右辺の2(2)にのみ寄与します。
 

 そこで,2(2)から図10.23()のようなグラフの寄与

 を分離して,

 F2(2)=2~(2)(-ag√2)(2)/(2-μ2) 

 と書きます。
 

定数aは,以前に荷電π中間子崩壊の論議で予測計算値が

πの観測寿命に合致するよう導入された,結合定数Gの

係数です。
 

形状因子:(2),2=μ2において,§10.8のπ-N散乱

で論じられた,π-N結合定数:gの観測される強さによって

より明確にされます。
 

gは,物理的に観測された結合定数の評価:

2/(4π)14一致するように取られる定数であり,

 

(2),2=μ21に規格化されます。

(μ2)1です。
 

2(2)については,何の情報もありません。しかし,これは, 

軸性カレントqμγ5の係数であって,反跳補正:/

に等しいのでβ崩壊では観測されません。
 

一方,これまでの論議から1(0)=-α~ -1.21であること

がわかっています。
 

こうした準備に基づいて,PCAC=軸性ベクトルカレント

の部分的保存という課題を考察します。
 

もしも軸性カレントも,(極性)ベクトルのカレントと同様に

正確に保存するなら,qμμ()(p,n)0 が成立します。
 

この式と,μ()(p,n)の形状因子構造 

μ()(p,n)(Ga/2)~(p)

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)](n) 

を組み合わせると,

21(2)+q22(2)0 が得られます。
 

(17-4):何故なら,  

μ~(p)[γμγ51(2)+qμγ52(2)](n) 

=u~(p)γ51(2)(n)+q2~(p)γ52(2)(n) 

ですが,


  u~(p)γ51(2)(n)=u~(p)(np)γ51(2)(n) 

=-u~(p)pγ51(2)(n)-u~(p)γ51(2)n(n) 

=-2Mu~(p)γ51(2)(n) です。

  故に,
μμ()(p,n)0,~(p),(n)について恒等的に 

~(p)γ5[21(2)+q22(2)](n)0 

が成立することを意味するため,

 21(2)+q22(2)0 です。 (注17-4終わり)※
 

したがって,もしも正確に軸性カレントが保存うると仮定

すれば,2(2)=21(2)/2となるのですが,これは

1(0)≠0より,2(2)がq20に極を持つことを意味

します。

  
これはつまり,2(2)が関わる相互作用では,質量がゼロ

擬スカラー粒子の交換が寄与することを意味しています。
 

この2(2)のq20の極を,

2(2)=2~(2)(-ag√2)(2)/(2-μ2)

なる表現におけるπ中間子交換の極:2=μ2と関連

付けよう,という発想は魅力的です。
 

つまり,π中間子の質量がゼロなら,軸性カレントも正確に

保存されるはずでしたが,πのゼロでない質量μの存在で,

このカレントの保存が破られているのでは?という連想が

生じるわけです。
 

そこで,qμμ(+)(Pp,Pn)=0 の代わりに,

修正された仮説:

0=limμ→0[qμμ()(p,n)]limnμ→0[u~(Pp5

×{ 21(2)+q22(2)ag√2)(2)/(2-μ2)}

u(Pn)] を採用します。


  この構造が,現実のπ質量のμ≠0でも,q2=0においてほとんど

ずれがなく成立すると仮定すれば,


  
近似的に,
2Mα=ー21(0)~ag√2が成立すること

になります。(※(0)=μ2?。。)

  
数値的にはα~1.21,2/(4π)14より 

 |a| 0.87μなる予測値を得ます。

(※(注17-5):私の計算では.g√2~(104π)1/2,M~940MeV.

μ~140MeVより,a=2Mα/g√21~26.137MeV=0.90μ

です。  (注17-5終わり)※

  これは,以前にπ±崩壊の論議で,π±の観測された平均寿命

から評価された|| 0.93μと10%以内の誤差で一致

します。

   
こうしたπ中間子の崩壊率,Fermi定数Gとπ-N結合定数

gの間の関係は,GoldbergerとTreimanによって初めて導出

されたものです。
 

次いでこれがPCACの帰結であると論じたのは,

南部(Nambu),Bernsteinによるものです。

 

以上,「)弱い相互作用の旧理論(Fermi理論)」については,

これで終わります。
 

実は参考テキスト(Mechanics;量子力学)もこれが最後

です。

   
私のノートではこれの読了期日は1994年4/27(44)

となっています。これは22年前バブルも終わりかけて,私は

定職を離れて本格的なプータロー生活となった頃です。

  金無し,ヒマありでしたから,過去の専門に戻るというこの

変態趣味にふける,くらいしか,自己実現の道がなかった

と当時は考えたようです。結局,今も続いてますが。。。
 

さて,同じ著者:B-Jのテキストの続きは,がもう1巻,11

から始まるもの(ield;場理論)があり,実は私は,この順で

順序良く読んだのではなく,学生時代に両方ともテキストと

して使用していた当時から,並行して読んでいました。
 

弱い相互作用については,古典的なFermi理論はこれで

終わりますが,新理論というのは,ニュートリノに質量がある

ということも含むのが条件でしょうが,
 

その中間にあるWeinberg-Salam理論や,その予想通り実際

に発見された弱い相互作用のゲージ粒子(-Boson),

カラー「クォークを含む最近の旧理論なども,できれば

別記事として紹介する予定です。。
 

まだ,命があれば。。。。。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)

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2016年7月 6日 (水)

中性子の平均寿命の計算(Fermi理論) Pending

                             

弱い相互作用の旧理論に基づいて,具体的に中性子nの 

β崩壊:n→p+e+ν~の崩壊率を求めてみようと

思います。

 まず.Fermi理論に基づく,nのβ崩壊S行列要素 

,fi(-i)(2π)-6-2{np/(2npeν~)}1/2 

×(2π)4δ4(-P-p-pν~)fi  

と書けます。
 

ただし,fi,この崩壊反応の不変振幅です。
 

元運動量:ν~で作用領域から出ていく反ニュートリノ: 

ν~,4元運動量:-pν~で入ってくる負エネルギーの 

ニュートリノ:νのスピノル:ν(ν~)で表現されます。
 

核子の散乱振幅が,核子:(,)のV-Aカレントと, 

レプトン:(,ν)のV-Aカレントの積で与えられる 

という.これまでの論議を適用すると,

 
不変振幅は,

fi(/2)[up~(pμ(1-αγ5)un(n)]

×[ue~(eμ(1-γ5)vν(ν~)] 

と書けます。
 

,Tをそれぞれ,β崩壊相互作用の体積,反応時間 

とすると,中性子nが単独で自由に存在するというi

(始状態)から,,,ν~が存在するf(終状態)への

上記S行列要素:fiの絶対値の平方に,

  
終状態の陽子
pの密度:(2π)-3Vd3p,電子eの密度:

(2π)-3Vd3e,反ニュートリノν~の密度: 

(2π)-3Vd3ν~を掛けると,

  
その微小領域への
遷移確率は,

|fi|2(2π)-933p33ν~で与えられる

と考えられます。
 

これを,体積Vと時間Tの積:VTで割った単位体積当りの 

遷移速度を,始状態の中性子nの密度:(1/)で割ったもの 

,中性子1個当たりの単位時間当たりの,

3p33ν~ への崩壊確率:dωを与えます。
 

ただし,崩壊現象では,VをV=∞の全空間として, 

V=(2π)3δ3(0),TをT=∞=(-∞,)の全時間 

として,T=(2π)δ(0)とし,VT=(2π)4δ4(0) 

同定します。
 

また,粒子がVの中に1個だけあるという波動関数の 

規格化でなく,全空間でのデルタ関数式規格化では, 

最後にV=(2π)3とします。
 

そこで, 

dω={|fi|2(2π)-933p33ν~}/(VT) 

(2π)-9(2π)4δ4(-Pp-pe-pν~)

3p33ν~ {np/(2npeν~)}|M |2 

です。
 

ここで,右辺を一般的方法では観測にかからない終状態の

反ニュートリノν~の状態について総和するため,3ν~

を実行します。
 

ところが,3ν~/(2ν~)=∫d4ν~θ(ν~0)δ(ν~2) 

なる公式があるので,3ν~を実行すると,

∫d4ν~ によりδ4(-P-p-pν~)因子が消えて, 

因子:θ(ν~0)δ(ν~2)が残ります。
 

さらに,eの状態の総和では, 

3||EdEdΩ=β2dEdΩです。
 

よって,dω=(2π)-5{np/(npe)}θ(ν~) 

×δ(ν~2)|fi|23p||dEdΩe  

 と書けます。
 

右辺の|fi|2については,特定偏極を仮定した場合 

|fi|2(2/2)|up~pμ(1-αγ5)un(n)|2 

 ×|e~(μ(1-γ5)vν(ν~)|2   

 の代わりに,
 

 核子:(.)のスピン,および,電子と反ニュートリノ:

 (.ν~)のスピンで総和を取って,中性子nのスピンで平均

したもの::

つまり.(1/2)SpSne,sν~|fi|2 

(2/2)(1/2)SpSn|u~(pμ(1-αγ5)u(n)| 2 

×SpSn|(ue~(eμ(1-γ5)vν(pν~)| 2 

   

(2/4){1/(8pn)} 

μνr[(+mp)γ μ(1-αγ5)(n+mn)γ ν(1-αγ5)] 

×Tr[νγ μ(1-γ5)(+m)γν(1-γ5)]] 

を不変振幅による確率密度の因子と考えて,この値を 

|fi|2に置き換えます。

 

核子部分のトレースは, 

r[(p+mp)γ μ(1-αγ5)(n+mn)γ ν(1-αγ5)] 

=Tr[(p+mp)γ μ(1+α22αγ5)nγ ν 

+mn(1-α2)r[(p+mp)γ μγν] 

(1+α2)r(pγ μnγ ν)2αTr(γ5pγ μnγ ν) 

+mpn