くりこみ理論(第2部)(2)
「くりこみ理論(第2部)」の続きで
第8章の§8-1「くりこみ群と演算子積
展開」の続きです。
※(余談):いろいろとバタバタしている
うちに,ブログの原稿書きもさぼっていて,投稿は久しぶりです。とうとう明日は
2020年の大晦日で,急に寒くなりました
が,何とか生きたまま,年を越せそうです。
(余談終わり)
※以下,本文です。
さて,運動方程式とWT恒等式の項目
に入ります。
当面の目的はあくまで演算子積(複合
演算子)に対する「Wilsonの演算子積展開」の成立を証明することにあり,少し寄り道
とはなりますが,この証明にとっても重要なので,BPHZの枠内で運動方程式の使い方と,WT恒等式についてのコメントです。
粒子場:φ(x)から成る系のBPHZの
意味での有効Lagrangian:Lが
与えられたとき,系の従う運動方程式
(Euler-Lagrange eq.)は,
∂L/∂φ-∂μ{∂L/∂(∂μφ)}
=δS/δφ=0 (21) です。
何故なら,Lは,作用原理を満たすべき
作用SをS=∫d4xLによって
定めるLagranfian密度を意味する
からです。
しかしながら,これは,必ずしも
演算子等式の成立を意味しない。と
考えられるので,Green関数中に因子
(δS/δφ)」が現われたからと
いって,Green関数を直ちにゼロとする
ことはできないことがわかります。
(※これは,Green関数中のT積
(時間順序積)は,実はT*積を意味する
ので,階段関数θ(t)の微分などが
消えずに単純な等式の成立を邪魔る
からです。)
そこで,BPHZの手続きで有限に
されGreen関数を,真空期待値:
<0|T[…]|0>>>のような形に
記すことにすれば,
上記のEuler-lagrangeの運動方程式
よりも,むしろ,次式の成立を主張する
方が,系の運動を記述する方程式として
ふさわしい。ということを示したい
と考えます。
すなわち,Green関数に対する
方程式:<0|T([φ(z){δS/δφ(z)]dφ(x1),,φ(xn)|0>
=iΣr=1n[δ4(z-xr)
<0|T(φ(x1)..^φ(xr).φ(xn)|0> (22)が成立するとするわけです。
ただし,^φ(xr)は,全体の積から,
φ(xr)のみを除くことを意味する記号
です。
この(22)式は,次元dが,複合演算子:
[φ(z){δS/δφ(z)}]の正しい次元:
4以上の場合なら,常に,そして最初の
因子φ(z)を両辺で,その微分:∂μ1.
∂μkφ(z)に置き換えても(dをその
正しい次元以上にする限り)成立します。
この式は,演算子型式で正準交換関係
を用いて得られる式と,ほぼ同じですが,
T積が実はT*積であることや,因子:
[φδS/δφ]dが,機能的に導入された
正規積であることなど,あくまでBPHZ
の枠内での等式となることに着目します。
※(注2-1):以下,(22)をFeynmanグラフ
的に証明します。
ただし,今は,たび重なるココログフリーのリニューアルや,OS()Windows)の
バージュンの変化でブログ記事の上で
用いていた,図を書くスキルなどを失っているため,文章のみの,頭の中に仮想的に
描いた図での説明しか,できませんが。。
さて,まず,φ(δS/δφ)
=φ[-(□+μ2)φ-(λ/3!)φ3]の
うち,V={-φ(□+μ2)φ}として,V
のみを挿入した裸のGreen関数:GV(n)
に効くFeynmanグラフを運動量表示で
考察します。
グラフのV頂点(Vを含む頂点)
のKlein-Gordon演算子の掛かった場:
[-φ(□+μ2)φ]が出る線は,一般に
直接,外線p1,p2,.pnのどれかに
つながるか?または,λφ4相互作用の
頂点につながるか?のどちらかです。
-(□+μ2)φから出る線は全く相互
作用が無いグラフと,(この場合λφ4が
無い)相互作用をしているグラフに
つながるか?のいずれかしかありません。)
ところが,-(□+μ2)φの演算子:
-(□+μ2)は,運動量表示ではp2-μ2)
であり,丁度:伝播関数:-(□+μ2)-1
(これは運動量表示では,i/(p2-μ2))
を相殺して単なる数因子;iに変える
働きを持つことに注意すれば,結局
のところ,(22)式の<0|T([φ(z)
δS/δφ(z)]dφ(x1),,φ(xn)|0>
=iΣr=1n[δ4(z-xr)
<0|T(φ(x1)..^φ(xr).. φ(xn)|0>,で,φ(δS/δφ)=φ[-(□+μ2)φ
-(λ/3!)φ3])とした等式が成立する
ことがわかります。
すなわち,グラフ表現の等式の両辺で,
V頂点に次元dを付与したBPHZの
R演算を施します。
これは,グラフのV頂点に
[-φ(□+μ2)φ]dを挿入したGreen
関数に対する等式を与えます。
第1項:つまりV頂点が相互作用無し
で直接n個の外線の1つにつながって
いて,残りとは無関係の場合には,V頂点
を囲むくりこみ部分は存在しないので,
通常のR演算を受けて,(22)の右辺の
総和式を得るわけです。
(※この第1項のV頂点因子は,単に,
(p2-μ2)×{i/(p2-μ2)}=i
と,(-iλ/3!)の積の数因子です。)
他方,残る第2項は,V頂点が
φ・i(―iλφ)/3!)=φ・λφ3/の
複合場となっていて,Vを含む部分は,
元の{-φ(□+μ2)φ]と同様,Vを
次元dであると見なしたTaylor引き算
を受けます。
それ故,R演算後の第2項は,次元d
の正規積:[φ・λφ3/3!]dを挿入した
Green関数:<0|T[{φ・λφ3/3!}dφ(x1)..φ(xn)]|0>を与え,これを左辺に移項
して[―φ(□+μ2]φ-λφ3/3!]dの
挿入項にまとめられて,(22)の左辺を
与えるわけです。(証明終わり
(注2-1終わり※)
BPHZの枠内では(22)の等式は大変有用なモノであり,例えばカレント保存則から従うWT恒等式もこの範疇に含まれて
います。
最も簡単な例として,複素スカラー場φ
から成る系で有効Lagrangianが
L=∂μφ*∂μφ-μ2φ*φ
-(λ/2)(φ*φ)2で与えられる場合を
考えます。
このときU(1)カレント;jμ(x)
=i{φ*(x)∂μφ(x)-{∂μφ*(x)}
φ(x)}=iφ*(x)∂⇔μφ(x)(23)
は,素朴な(1)の運動方程式を用いて,
保存することがわかります、
すなわち
∂μjμ=i{φ*□φ-(□φ*)φ}
=-i{φ*(δS/δφ*)-(δS/δφ)φ}.(24)ですから素朴な運動方程式:
δS/δφ=δS/δφ*=0から,右辺は
ゼロとなります。素朴にはそうです、
等式:<0|T([φ(z)δS/δφ(z)]d
φ(x1),,φ(xn)|0>
=iΣr=1n[δ4(z-xr)
<0|T(φ(x1)..^φ(xr)...φ(xn)|0>は,<0|T([φi(z)|δS/δφk(z)]]d
φi1(x1)φi2(x2).φim(xm)|0>
=iΣr=1n[δ4(z-xr)δkir
<0|T(φj(z)φi1(x1)..^φir(xr)
..φim(xm)|0> (25)となることが
容易にわかります。
さらに、一般に正規積[O]dに対して
∂μ[O]d=[∂μO]d+1.(26)の等式が
成立します。
何故なら,グラフγのω次のTaylor
項演算子をtγω.,γの外線運動量因子
の1つをqμとするとき
tɤ(ω+1)qμ=qμtγωとなるからです。
そこで,(23)を正しい次元3を付与
した正規積[jμ]3として,それを挿入
したGreen関数の発散∂μを計算
すれば,(26),(25),(24)の等式を用いて
次式を得ます。すなわち,
∂zμ<0|T{[jμ(z)]3φ(x1)..φ(xn)
φ+(y1),.φ+(yn)}|0>
=∂zμ<0|T{[φ{δS/δφ}
-{δS/δφ+}φ+(z)]4
φ(x1)..φ(xn)
φ+(y1)...φ+(yn)}|0>
=-Σr=1nδ4(z-xr)
<0|T{φ(z)φ(x1)..φ(xn)
φ+(y1)...φ+(yn)}|0>
+Σr=1nδ4(z-yr)
<0|T{φ(z)φ(x1)..φ(xn)
φ+(y1)..φ+(yn)}|0>..(27)
です。
この式が,BPHZ定式化における
WT恒等式であり,形式上,演算子形式
で素朴に(紫外発散の問題を考慮しない)
正準交換関係を用いて求めたWT恒等式
を再現したものとなっています。
U(1)カレントの正規積[jμ]3の
代わりに,次元4のエネルギー・運動量
テンソルのそれ[Tμν]4の場合も同様です
。また,,次元3以下のソフトな破れがある
カレントの場合も同様な等式で分析
できます、
- さて,続いて演算子積展開に戻ります。
準備が整ったので先のWilsonの
OPEの公式(1):
A(x)B(x)
=limx→y[ΣiCi(x―y)
Oi((x+y)/2)],(Ciはc-数関数)を
,BPHZ定式化を用いて証明することを
始めます。
一般的な場合も本質的には同じなので,
ここでは最も簡単な場合:λφ4理論で,
AもBも場φ自身である場合のみを
考えます。
すなわち,Tφ(x+ξ)φ(x-ξ)
=ΣiCi(ξ)[Oi(x)]di (28)
(diはCiの正しい次元)の形の展開式
の成立を証明します。問題としている2
つの演算子の積:φ(x+ξ)φ(x-ξ)
を挿入した(くりこまれた)Green関数:
G(n)φ(x+ξ)φ(x-ξ)は,今の場合,
単に,(n+2)点Green関数:G(n+2)
です。
つまり,<0|T{[φ(x+ξ)φ(x-ξ)
φ(y1)..φ(yn)}|0>=∫d4qd4k
(2π)-8×Πj=1nd4pik(2π)-4
exp(-iqx-ik・2ξ)
×exp-iΣj=1npjyj)(2π)4
δ4(q+Σj=1npj)
G(n+2)(q/2+k,q/2-k,p)..(29)
です。ここで,φ(x+ξ)および,
φ(x-ξ)の運動量をそれぞれ,
(q/2)+k,および,(q/2)-k(つまり,
重心運動量がq,相対運動量がkとなる
ように)置き,その他の運動量を
p=(p1..pn)としました。
(29)で,ξ→0での挙動を今から
調べたいのですが,(29)は,ξ=0では
∫d4k(2π)-4がloop積分の形になり
新たな紫外発散が生じる。という構造
になっています。そこで,演算子積:
φ(x+ξ)φ(x-ξ)に対し,これは
離れた2点の場の積なのますが,先の
局所積の場合と同様,正規積:
[φ(x+ξ)φ(x^ξ)]dというもの
を,次のように導入します。
まず,ΓをG(n+2)に効く任意のグラフ
とするとき,端点:x1=x+ξと,
x2=x-ξを一致させて得られる
グラフΔをΔ=Γ~.(30)と記述します。
新たに生じた点x=x1=x2のφ2頂点
をVと呼びます、しかし,この操作は
(29)のG(n+2) →G~(n+2)のFeynman
グラフに効く被積分関数:]ΓはIΓ→,IΔ.(31)
としてほとんど何の変更もしてないことに
注意すべきです。
(29)の被積分関数をIΓと思うかIΔと思うかは
後から行なう∫d4k(2π)-4exp(-2ikξ)が単
なるFourier積分か,ξ=0とおいたloop積分に
なるか,の違いだけです。
そこで,次数がdの正規積:
[φ(z1)φ(x2)]dを次のように定義
します。
すなわち,あるグラフΓの寄与として,
<0|T{{φ(x1)φ(x2)}dφ~(p1).
.φ~(pn)}}0>Γ (x1=x+ξ,x2=x-ξ)
=∫d4qd4k(2π)-8
exp(-iqx-2ikξ)(2π)4
δ4(q+Σipi)]∫Πj=12d4lj
RΔ(d)(q/2+k,q/2-k,p,d)]..
(32)とします。
途中ですがここで今年は終わりです。
※(参考文献):九後汰一郎著
「ゲージ場の量子論Ⅱ」(培風館)
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