相対論

2009年8月25日 (火)

束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(9)

 ベーテ・サルピーター方程式(B-S.eq.)の続きです。

前回は,Wick回転(Wick-rotation)された部分波(partial wave)のB-S.eq.として,{ma2||2(4a√s)2}{mb2||2(4b√s)2}ψνLl(||,p4;s)={2λνLl(s)/π}∫0d|'|∫-∞dp4'Ql[{μ2||2|'|2(p4-p4')2}/(2|||'|)]ψνLl(|'|,p4';s)を求めました。

 Ql(z)は第2種のルジャンドル(Legendre)関数で,これは第1種のルジャンドル関数Pl(z)から,Ql(z)=(1/2)∫-11dζ{Pl(ζ)/(z-ζ)}で与えられます。

右辺の積分核(kernel)のトレースは有限ですから,この積分方程式には,古典Fredholm理論を適用できます。

 固有値λνLl(s)を除く積分核部分のトレースをσl(s)=(2/π)∫0d||∫-∞dp4(Ql(1+μ2/(2||2))/[{ma2||2(4a√s)2}{mb2||2(4b√s)2}])と書けば,これは収束する積分として与えられます。

幾つかの操作の後にσl(s)=∫01dx101dx201dx3[x3'δ(1-x1-x2-x3)/(x1a22b2+x3μ2-x31a223b2-x12)]を得ます。

これは,3'を除けば,正確に三角グラフに対する質量殻の上のFeymanパラメーター積分に対応しています。

この式を証明するために,Feyman積分の公式,(ABC)-1=2∫01dx101dx201dx3[δ(1-x1-x2-x3)/(Ax1+Bx2+Cx3)3]を用いて,σl(s)=(4/π)∫01dx101dx201dx3-11dζPl(ζ)δ(1-x1-x2-x3)∫0d||∫-∞dp4[x1{ma2||2(4a√s)2}+x2{mb2||2(4b√s)2}+x3{1+μ2/(2||2)-ζ}]-3としました。

右辺の被積分関数の分母の[ ]の中は,x1{ma2||2(4a√s)2}+x2{mb2||2(4b√s)2}+x3/Ql(1+μ2/(2||2))=x1(ma2||2)+x2(mb2||2)+(x12){p4i√s(x1ηa-x2ηb)/(x12)}212/(x12)+3{1+μ2/(2||2)-ζ}です。

さらに∫-∞dp4積分を実行してσl(s)=(3/2)∫01dx101dx201dx3-11dζPl(ζ)[δ(1-x1-x2-x3)(12)-1/20||{x1a22b23(1-ζ)+(12)||23μ2/(2||2)-12/(12)}-5/2]としました

そして,∫0d||積分を実行すればσl(s)=∫01dx101dx201dx3-11dζPl(ζ)δ(1-x1-x2-x3)(12)-1[x1a22b23(1-ζ)-12/(12)-{2(12)3μ2}1/2]-2となる。

 

というところまで書きました。

ここで,行き詰まってPendingになっていたのですが,結局,水曜日(8/18)に永田町の国会図書館に行って,中西さんの1963年の部分波B-S.eq.の原論文を参照することにしました。

 

ところが,午前中に都営三田線内幸町から都バスという障害者無料の都営交通経路で図書館まで行き,当該論文を検索すると東京の図書館が手狭になったため,当該資料の掲載されているPhysical Reviewなど洋雑誌は全て京都の関西館に移管されていて,それを見るには電送でコピー,または郵送で本雑誌を取り寄せるしかないとのことでした。

電送だと即日で午後までには届くということでしたが,コピーされたものが届くまで内容をチェックすることもできず,しかも電送コピーでは普通のコピー(A4だと1枚24円+消費税)の倍の料金を取られ,最大40ページまでとのことでした。

まあ,この程度の計算を書いた論文が10ページを超えることはめったにないので,それでもよかったのですが,もしかして40ページだと2000円超えるし,これまで国会図書館でやってきたように予め内容を確認して場合によっては必要部分だけのコピーを取りたかったので,土曜日(8/22)に出直すことにしました。

 

4日遅れましたが同じルートで再び土曜日午前中に国会図書館に出向いて実際に1963年のPhysical Reviewの本文を見るとたった6ページだったので,即日複写で151円の料金を払ってコピーを受け取りました。

というわけで,原論文のコピーを入手したのですが,その日は残暑の中往復しただけで体がすっかり疲れてしまい帰宅して寝てしまいました。

 

かつて,このシリーズのタネ本である"1969年の中西さんの論文=ProgressのsupplementのB-S.eq.のレビュー"を最初に読んだ34年前(1975年)の学生の頃にも,確か同じ箇所の計算でつまづいて,それをきっかけに,まあいいやと読むのをやめた記憶があります。

 

もしも,その頃ちゃんと読む気になっていれば,当時の大学の素粒子や物性理論など理論物理学の研究室のある階の私の部屋の4つくらい右隣の部屋には図書室があり,Phys.Rev,Phys.Rev.Letters,それにNovtiment(Novciment?)やProgressくらいの主だった論文や著書は全て揃っていました。

 

理論なので,特別な実験環境は不要とはいえ,やはり大学とか研究関係の組織に属していた方が,参考論文などを苦労せずにいくらでもタダで参照できる環境にあるとはいえますね。

 

もっとも,今回,国会図書館で会員登録(無料)をしてIDとPasswordを作ったので次回からは,有料ですがオンラインで自宅にいながら資料取り寄せることもできるらしいです。

 

クレジットカードが失効していなければ,以前のように別ルートでネットで気軽に論文をダウンロードする道もあったのですが。。。

 

というわけで,たった5ページちょっとだし,その論文の記述順序を変更したり,表記を書き直したりして今のブログ本文につなげるのも面倒なので,改めて関連部分を直接要約することにします。

まず,部分波のB-S.eq.ですが,Wick回転した{ma2||2(4a√s)2}{mb2||2(4b√s)2}ψνLl(||,p4;s)={2λνLl(s)/π}∫0d|'|∫-∞dp4'Ql[{μ2||2|'|2(p4-p4')2}/(2|||'|)]ψνLl(|'|,p4';s)ではなく,回転する前のηa=ηb1/2のB-S.eq.から出発します。  

すなわち,ηa=ηbP=P/2,0=P0/2=√s/2,{ma22(0-k0)2}{mb22-(0+k0)2}ψl(||,p0)={2λ/(πi)}∫0d||∫-∞dq0l[{μ222(p0-q0)2}/(2||||)]ψl(||,q0)が出発点です。

そして,積分核のトレースもσl(s)=(2/π)∫0d||∫-∞dp4(Ql(1+μ2/(2||2))/[{ma2||2(4a√s)2}{mb2||2(4b√s)2}])ではなく,σl{2/(πi)}∫0d||∫-∞dp(Ql(1+μ2/(22))/[{ma22(0-k0)2}]{mb22(0+k0)2}])とします。 

 ここで,Ql(β)=(1/2)∫-11dζ{Pl(ζ)/(β-ζ)},β≡1+μ2/(22)より,σl={1/(πi)}∫0d||∫-∞dp-11dζPl(ζ)/[(β-ζ){ma22(0-k0)2}{mb22(0+k0)2}]です。 

Feyman積分の公式,(AB)-1=∫01dx101dx2[δ(1-x1-x2)/(Ax1+Bx2)2]=∫01dx1{Ax1+B(1-x1)}-2でx1=(1+z)/2とすれば(1/2)∫-11dz{A(1+z)/2+B(1-z)/2}-2です。

そこで,∫-∞dx(x2+A2)-2=(π/2)A-3より∫-∞dp[{ma22(0-k0)2}{mb22(0+k0)2}])-1=(1/2)∫-∞dp{ma2(1+z)/2+b2(1-z)/22(0+k0)2(1-z2)(k0)2}-2(πi/4)∫-11dz{2ρ(z)}-3/2を得ます。

 

ρ(z)≡a2(1+z)/2+b2(1-z)/2(1-z2)(k0)2です。

したがって,σl(1/2)∫-11dz∫-11dζPl(ζ)∫0d||(2/[{2ρ(z)}3/2222(1-ζ)}])と書けます。 

一方,一般のB-S.eq.はここまで{ma22-(ηa0+p0)2}{mb22-(ηb0-p0)2}φBr(p,P)={λB(s)/(iπ2)}∫d4[φBr(q,P)/{μ2(p-q)2iε}]と表記してきました。

 

ここでは,これも上記式中のB-S振幅:φBr(q,P)を,単に(q)と表記して今回得た原論文におけるB-S.eq.の形式:{ma2-(p+k)2}{mb2-(p-k)2}(p)={λ/(iπ2)}∫d4[(q)/{μ2(p-q)2iε}]に変更します。

そして,B-S振幅:(p)の体球関数lm()≡||llm(θ,φ)による展開係数を積分形にして,(p)=lm()∫-11dz∫-∞dα(φl(n)(z,α)/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])n+2)と積分表示できると仮定します。

ここにs≡(p+k)2,t≡(p-)2です。

nは,右辺のFeynman積分が収束するように,つまり(n+2)>l/2となるように選択します。また,右辺の積分が意味を持つように,limα→∞[φl(n)(z,α)/αn+1]=0,φl(n)(z,-∞)=0 と仮定します。

そして,(p)=lm()∫-11dz∫-∞dα(φl(n)(z,α)/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])n+2)の因子を部分積分します。

-∞dα(φl(n)(z,α)/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])n+2)=-(n+1)-1φl(n)(z,α)/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])n+1|-∞(n+1)-1-∞dα({φl(n)(z,α)/∂α}/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])n+1)=(n+1)-1-∞dα[{φl(n)(z,α)/∂α}/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε]]n+1]ですね。

これは,(p)=lm()∫-11dz∫-∞dα(φl(n-1)(z,α)/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])n+1)の因子に一致するはずですから,漸化式φl(n-1)(z,α)=(n+1)-1{φl(n)(z,α)/∂α}を得ます。

さらに,lm()≡||llm(θ,φ)より,任意関数Fに対して両辺の積分が収束するなら,∫dF(2)lm()=lm()∫dF(2)が成立することが簡単にわかります。

(注)簡単にわかると書いてありましたが,私にはなかなかわからないので,この式の証明はPendingです。※)

 

(p)=lm()∫-11dz∫-∞dα(φl(n+1)(z,α)/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])n+3)を{ma2-(p+k)2}{mb2-(p-k)2}(p)={λ/(iπ2)}∫d4[(q)/{μ2(p-q)2iε}]に代入します。

 

変形していくと,結局(p)={(n+2)/2}lm()λ∫-11dz'∫-∞dα'φl(n)(z',α')∫-11dz∫-∞dα∫01dxxl-n-1{g(α',z',x)}-n-1αn{θ(α)-θ(α-R(z,z')g(α',z',x))}[α-(1-z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])-n-3)となります。

  

ここに,g(α',z',x)≡x-1{α'+(1-x)ρ(z')}+(1-x)-1μ2,R(z,z')≡(1―z)/(1-z') (z>z'),(1+z)/(1+z') (z<z')です。

 

(証明)f()=lm()(-11dz∫-∞dα(φl(n+1)(z,α)/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])n+3)の表式に,漸化式φl(n)(z,α)=(n+2)-1{φl(n+1)(z,α)/∂α}によるφl(n+1)(z,α)=(n+2)∫-∞αdα'φl(n)(z,α')を代入します。

 

(p)=(n+2)lm()∫-11dz∫-∞dαθ(α)∫-∞dα'φl(n)(z,α')[α-(1-z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])-n-3)となります。

一方,g(α',z',x)=x-1{α'+(1-x)ρ(z')}+(1-x)-1μ2なので,01dxxl-n-1{g(α',z',x)}-n-1=∫01dxxl[{α'+(1-x)ρ(z')}+xμ2/(1-x)]-n-1です。

 

また,(p)=lm()∫-11dz∫-∞dα(φl(n+1)(z,α)/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])n+3)を,{ma2-(p+k)2}{mb2-(p-k)2}(p)={λ/(iπ2)}∫d4[(q)/{μ2(p-q)2iε}]の両辺に代入します。

左辺は{ma2-(p+k)2}{mb2-(p-k)2}(p)={ma2-(p+k)2}{mb2-(p-k)2}lm()∫-11dz∫-∞dα(φl(n+1)(z,α)/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])n+3)です。 

右辺は{λ/(iπ2)}∫dq0∫d[lm()/{μ2()2(p0-q0)2iε}]∫-11dz∫-∞dα(φl(n+1)(z,α)/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])n+3]={λ/(iπ2)}∫dq0lm()∫d[1/{μ22(p0-q0)2iε}]∫-11dz∫-∞dα(φl(n+1)(z,α)/[α-(1+z)(s-a2)/2+(1-z)(t-b2)/2-iε])n+3]です。(Pending)

途中ですが,今日はここで終わります。 

 参考文献:(1) Noboru Nakanishi "Partial-Wave Bethe-Salpeter Equation",Physical Review,Vol.130,No.3,pp1230-1235(1963),

(2) Noboru Nakanishi "A General survey of the Theory of the Bethe-Salpeter Equation" Progress of Theoretical Physics, supplement,No.43(1969)

 

PS:本当に世間では信じられないことをいつまでもやってるなあ。。

 

 逮捕状が出て逮捕されても,起訴されるかどうかもわからないんだから,裁判の被告でさえないんだよ。

 

 起訴されて被告となることが確定しても,まだ裁判結果で有罪になるまでは,法律的には犯罪者ではないんだし無罪の可能性もあるんだよ。

 

 さらに,ついこの前もあったけど,本人が犯行を自供して17年間も服役しても,実は捜査の方が間違いで無罪どころか無実もあるんだよ。

 

 だから,こんな起訴されるかどうかの本来は秘密であるべき警察という密室の中で行われている捜査段階の情報の垂れ流しは異常だよ。。

 

 例えば,密室の中では本人が「やってない。」と主張しても警察側が確かな情報としてリークすると,世論にオモねることで金儲けにつながる御用マスコミが大した裏も取らず流すと大体信用してしまう。

 

 こんなの40年くらい昔の話ですが,東京で16キロもの路上デモの間,ずーっと機動隊にサンドイッチ規制されて,両側の人間はまわりから見えない場所では,こづかれたり蹴られたりされ続け,痛いからこちらが手でよけようとしたら公務執行妨害で逮捕するというような昔からの汚い官憲の手口を知ってれば,全部鵜呑みにする方がオカシイと思う。。

 

 こちらが,警察に殴られたとか言っても全然通らないし,防御で手を出したのも暴行したことにされるし。。。白も黒になる一方的なデマばっかしだった。。

 

(体に傷は残らないので物的証拠も残らず,交代で番をして容疑者が眠ったら起こすという眠らせない拷問をやられると,それでやがて死刑になるとしても,その場で眠りたいからやってない殺人でもやったと言ってしまうだろう。。

 

 戦時中のパルチザンとかレジスタンスとか言っても,拷問に耐え切れず仲間を売ってしまう。後で解放されても裏切り者で仲間にリンチされパージされる。。

 

 しかし拷問に耐えられなかったからといって誰が非難できるのだろう。。人間なんてそんなに強くない。

 

 日本の警察じゃないし,一応事実に基づくフィクションということですが,かつて見たイヴ・モンタン主演の仏映画「Z」や,南アフリカのアパルトヘイトが主題の映画「ワールドアパート」でも似たような状況があったと記憶しています。。← また脱線やらかしてる。。)

 

(後者は,まだ南アが人種差別支持の時代にLDで買って見たものです。そのLDはまだ所持していますが,もう古いしDVDで出てないだろうなあ。破防法で捕まって執行猶予中の友人?に見せたら「どこの国の官憲も同じだなあ。。」と言っていた。。)

 

 そして,当時の大抵のマスコミはヘルメットかぶってデモする奴の方が悪いという報道(世論)に都合のいいデマゴギーの方だけをそのまま報道するしという時代だった。。

 

 そもそも,デモンストレーション(示威行動)というのは宣伝してもらいたいから派手にやってるのに,なかなか報道されませんでしたね。。

 

 逆に,今回の事件はつかまった側が頼んでもいないのに派手に宣伝するからね。。有名人だから普通人以上に悪影響があるって?。。

 

 それじゃ何でいつまでも派手に報道してるんだよ。え? きれいごと言うんじゃねえよ。結局はそれでニュースが売れてスポンサー様が喜ぶからだろ。。。

 

(それが証拠にかわいそうに?一方の押尾君の扱いはかなり小さい。)

  

 そういうのも,自分が悪いのを他人のせいにする一種の逆恨みっていうやつだよ。。

 

PS2:福見ちゃん,前から谷亮子よりカワイかったけど柔道ばっかやってるせいか24歳にもなっても高校生のトキと同じロリ顔ですな。。

 

 そういえば,去年の北京五輪で唯一私が気に入った銀メダルの塚田真希ちゃんもデブで決して美形とは思わないけど,笑顔と泣き顔は絶品で輝いていましたね。。 http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_65ed.html

  

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2009年8月10日 (月)

束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(8)

 色々あって,ずいぶん間が開きましたが,"束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(Bethe-Salpeter方程式)=B-S.eq."シリーズの続きです。

§6.ウィック・カトコスキー模型(Wick–Cutkosky model)の途中から再開継続する予定でしたが,その前に是非必要な中西先生自身のオリジナルとして得られたB-S振幅の積分表示を解説したいと思います。

前記事2009年3/30の「束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(7)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/7-2e32.html では,B-S振幅の積分表示式について,根拠を示すことなく論文の内容をそのまま書きました。

 "一般に,B-S振幅は∫-11dz∫0dγ[φ(z,γ,p,P)/{γ+(1+z)(ma2-v)/2+(1-z)(mb2-w)/2-iε}2]と表現されます。ここで,φは多項式的にp=pμに依存します。

この積分の被積分関数の分母は,p00 で(-iε)を除いて正定値,すなわち,Wick回転の結果,|P0|<min(ma/|ηa|,mb/|ηb|)を満たすなら,如何なる特異点に遭遇することもなくp0について必要な解析性を得ることができます。

ここでは,もはやs≧0 なる物理的制約もないことがわかります。"

 

と書きました。ただし,v≡(ηaP+p)2,w≡(ηbP-p)2です。

以下では,これの根拠を示します。

 

まず,通常のミンコフスキー(Minkowski)空間での束縛状態の"はしご近似(ladder approximation)"でのB-S.eq.:{ma2-(ηaP+p)2}{mb22-(ηbP-p)2}φBr(p,P)={λB(s)/(iπ2)}∫d4p'[φBr(p',P)/{μ2(p-p')2iε}]を考えます。

慣性中心系:0,ミンコフスキー空間の4元ベクトルpμ(p0,)をユークリッド空間の4元ベクトルp~μ(,p4)etc.で表現すれば,B-S.eq.が{ma22+(4a0)2}{mb22+(4b0)2}φ~Br(p~,P)={λB(s)/π2}∫d4~'[φ~Br(p~',P)/{μ2(p~-p~')2iε}]とユークリッド化されることを見ました。

 

これが,Wick回転の意味するところです。

さて,2009年2/7の記事「束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(4)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/4-27ef.htmlでは,次のように書きました。

(※再掲開始)

Nakanishi(中西;1965)は,小群(little group)の体調和関数(solid harmonics)の概念を導入しました。

n重に縮退した束縛状態のB-S振幅は,φBr(xa,xb;PB)=<0|T[φa(xab(xb)]|B,r>,(r=1,2,..,n)で与えられますが,これはポアンカレ群,すなわち非斉次ローレンツ群の有限次元表現の表現空間を形成します。

空間反転,時間反転を含む斉次ローレンツ変換の群をとします。

ローレンツ変換の部分集合として,P=Pμ(P0,)を不変に保つ部分群(P)を(P)≡{Λ∈|ΛP=P}で定義します。(P)は,いわゆるPに属する小群と呼ばれるもので,ウィグナー(Wigner)の導入したものです。

-S振幅の運動量表示:φBr(p,PB)はΛPB=PBを満足する(PB)の元Λに対してのみ相互に変換できます。

 

これは,{φBr(p,PB)}r=1n(PB)の表現空間の基底であることを意味します。

(P)≡{Λ∈|ΛP=P}は次のようなP依存性を持ちます。(以下では,s=P2(P0)22です。)

[1]Pμが時間的(time-like):s>0 なら,(P)~O(3)です。

 

(※何故なら,このときはPμ(m,0)(m≠0)と取れば,明らかに(P)は通常の3次元空間の回転群O(3)を意味します。)

[2]Pμが空間的(space-like):s<0 なら,(P)~O(2,1)です。

[3]Pμ0 なら,(P)~O(3,1)=全体です。

[4]Pμが光的(light-like):s=0 なら(P)~E(2)です。

(※(訳注):光のようにm=0 なら,Pμ(m,0)(m≠0)とは取れないので,s=0 を満たすようにPμ(1,0,0,1)と取れば,(P)は自由度が2の回転群:E(2)(2次元ユークリッド群)になります。)

そして,通常の体球関数の定義を一般化することにより,次のようにして小群(P)の体調和関数Xl(p)を定義します。

l(p)は,(∂/∂p)2l(p)=0,およびPμ(∂/∂pμ)Xl(p)=0 を同時に満足するp0,p1,p2,p3のl次の同次多項式とします。

 

固定されたlに対して,Xl(p)の全体は(P)の有限次元既約表現の空間を張ることが容易にわかります。

ここで,Pμは反変ベクトル,∂/∂pμは共変ベクトルです。

μ/∂pμ≡P0/∂p0+ P1/∂p1+P2/∂p2+P3/∂p3ですが,Xl(p)はpμのl次の同次式です。対称性から,これはpμ(∂/∂pμ)Xl(p)=lXl(p)なる不変な等式を満たします。

まず,特殊なローレンツ系でXl(p)の標準形を求めます。

[1] s>0 の場合:Pμ(√s, 0)とします。

 

 このとき,Pμ(∂/∂pμ)Xl(p)=0 から,√s(∂/∂p0)Xl(p)=0 により,Xl(p)はp0に依存しないことがわかります。                          

そこで,この準拠系では(∂/∂p)2l(p)=0 はラプラス方程式:∇p2l(p)=0 になります。故に,Xl(p)の定義は通常の球関数lm()と一致します。

 

このlm()は,定係数を除いて||llm(θ,φ)と同じ関数です。

ここに,θ,φはの極座標です。そしてYlm(θ,φ)は通常の球面調和関数(球関数)です。

 このlm()はゲーゲンバウアー(Gegenbauer)多項式:Ckα(z)によって表現するのも便利です。

すなわち,lm()=[(2l+1)(l-|m|)!/{(4π)(l+|m|)!}]1/2(2|m|-1)!!(p1±ip2)|m|||l-ml-|m||m|+1/2(p3/||) (m=-l,-l+1,..,l)ですね。

ただし,±iはm/|m|を意味し(2k-1)!!はΠj=1k(2j-1)によって定義されます。

 

規格化因子はゲーゲンバウアー多項式の直交性:∫-11dz(1-z2)α-1/2kα(z)Ck’α(z)=πΓ(2α+k)δkk’/{22α-1!(α+k)Γ(α)2}から計算されます。(再掲終わり※)

 以上から,s>0 ではPμ(√s, 0)におけるユークリッド化された部分波B-S振幅を体調和関数としてφ~νLlm(p~,P)=Ylm(θ,φ)||-1ψνLl(||,p4,;s)(L≧l≧|m|)と書けることがわかります。

 

 このφ~νLlm(p~,P)を,先に書いたB-Seq:{ma22(4a0)2}{mb22(4b0)2}φ~Br(p~,P)={λB(s)/π2}∫d4~'[φ~Br(p~',P)/{μ2(p~-p~')2iε}]に,両辺のφ~Br(p~,P)に代わる因子として代入します。

 すると,部分波のB-Seq.として,{ma2||2(4a√s)2}{mb2||2(4b√s)2}ψνLl(||,p4,;s)={2λνLl(s)/π}∫0d|'|∫-∞dp4'Ql[{μ2||2|'|2(p4-p4')2}/(2|||'|)]ψνLl(|'|,p4';s)が得られます。

 ここで,Ql(z)は第2種のルジャンドル(Legendre)関数で,z→∞ではz-l-1のように挙動します。第1種のルジャンドル関数(ルジャンドル多項式)Pl(z)とはQl(z)=(1/2)∫-11dζ{Pl(ζ)/(z-ζ)}によって関連付けられます。

(※訳注):右辺のうち,'空間全体の積分は,∫0d|'||'|2-11d(cosθ')∫0dφ'Ylm(θ',φ')|'|-1ψνLl(|'|,p4';s)/[μ2||2|'|2(p4-p4')22|||'|{cosθcosθ'+ sinθsinsθ'cos(φ-φ')}]です。

ここで,具体的に,球関数をYlm(θ,φ)≡Clmexp(imφ)Pl(m)(cosθ)(Pl(m)(z)はルジャンドル陪関数,Clmは規格化定数)と表現し,また極軸(θ=0)をの向きに取ると,上の積分はClm0|'||'|ψνLl(|'|,p4';s)∫-11d(cosθ')∫0dφ'exp(imφ')Pl(m)(cosθ')/[μ2||2|'|2(p4-p4')22|||'|cosθ']です。

ところが,右辺のdφ'積分がゼロでない結果を与えるのはm=0 のときのみであり,そのとき,Pl(m)(z)は第1種のルジャンドル関数Pl(z)になります。

そこで,上の積分は,2πClm0|'||'|ψνLl(|'|,p4';s)∫-11dζ[Pl(ζ)/{μ2||2|'|2(p4-p4')22|||'|ζ}=2πClm0|'||'|(2|||'|)-1ψνLl(|'|,p4';s)∫-11dζ{Pl(ζ)/(z-ζ)}=2πClm||-10d|'|ψνLl(|'|,p4';s)Ql(z)}に帰着します。

ただし,最後の式ではz≡{μ2||2|'|2(p4-p4')2}/(2|||'|)と置きました。

 よって,B-S.eq.{ma22(4a√s)2}{mb22(4b√s)2}φ~Br(p~,P)={λB(s)/π2}∫d4~'[φ~Br(p~',P)/{μ2(p~-p~')2iε}]に代入して,両辺に共通なClm||-1などの因子を簡約した結果,次式を得ます。

すなわち,{ma2||2(4a√s)2}{mb2||2(4b√s)2}ψνLl(||,p4,;s)={2λνLl(s)/π}∫0d|'|∫-∞∫dp4'Ql[{μ2||2|'|2(p4-p4')2}/(2|||'|)]ψνLl(|'|,p4';s)です。(訳注終わり※)

 さて,積分方程式:{ma2||2(4a√s)2}{mb2||2(4b√s)2}ψνLl(||,p4,;s)={2λνLl(s)/π}∫0d|'|∫-∞∫dp4'Ql[{μ2||2|'|2(p4-p4')2}/(2|||'|)]ψνLl(|'|,p4';s)の右辺の核(kernel)のトレース(trace)は有限です。

 そこで,この積分方程式には,古典Fredholm理論を適用できます。

 実際,固有値λνLl(s)を除く積分核の部分のトレースを,σl(s)と書けば,これは収束する積分で与えられます。

すなわちl(s)=(2/π)∫0d||∫-∞dp4(Ql(1+μ2/(2||2))/[{ma2||2(4a√s)2}{mb2||2(4b√s)2}])です。

これから,幾つかの操作の後に,σl(s)=∫01dx101dx201dx3[x3'δ(1-x1-x2-x3)/(x1a22b2+x3μ2-x31a223b2-x12)]なる表現式が得られます

これは,3'を除けば,正確に三角グラフに対する質量殻上のFeymanパラメーター積分に対応しています。

(※訳注):Feymanパラメーター積分の公式:(ABC)-1=2∫01dx101dx201dx3[δ(1-x1-x2-x3)/(Ax1+Bx2+Cx3)3]から,σl(s)=(4/π)∫01dx101dx201dx3-11dζPl(ζ)[δ(1-x1-x2-x3)∫0d||∫-∞dp4[x1{ma2||2(4a√s)2}+x2{mb2||2(4b√s)2}+x3{1+μ2/(2||2)-ζ}]-3と書けます。

右辺の被積分関数の分母の[ ]の中は,x1{ma2||2(4a√s)2}+x2{mb2||2(4b√s)2}+x3{1+μ2/(2||2)-ζ}=x1(ma2||2)+x2(mb2||2)+(x12){p4i√s(x1ηa-x2ηb)/(x12)}212/(x12)+3{1+μ2/(2||2)-ζ}です。

  

そして,定積分の式∫-∞dx[(x-c)2+A2]}-3=(3π/8)A-5を用いて-∞dp4積分を実行すれば,σl(s)=(3/2)∫01dx101dx201dx3-11dζPl(ζ)[δ(1-x1-x2-x3)(x12)-1/20d||[{x1a2+x2b2+x3(1-ζ)+(x1+x2)||23μ2/(2||2)-12/(x12)}-5/2]となります。

 

さらに,∫0dx(ax2+b+c/x2)-5/2=∫0dx[x5/(ax4+bx2+c)5/2]=(1/2)∫0dt[t2/(at2+bt+c)5/2]=(2/3)a-1/2{b-(4ac)1/2}-2を用いて0d||積分を実行します。

  

すると,σl(s)=∫01dx101dx201dx3-11dζPl(ζ)δ(1-x1-x2-x3)(x12)-1[x1a2+x2b2+x3(1-ζ)-12/(x12)-{2(x1+x2)3μ2}1/2]-2が得られます。

  

因子δ(1-x1-x2-x3)があるので,被積分関数の中では(x1+x2)を(1-x3)と同一視することもできます。(Pending)

途中ですが今日はここで終わります。

参考文献:Noboru Nakanishi "A General survey of the Theory of the Bethe-Salpeter Equation" Progress of Theoretical Physics, supplement,No.43(1969)

 

PS:上の本文で結構苦労して考えている計算も中西さんの1963年のphys.Levの元論文や関連文献のコピーをネットで購入できるお金があればはるかに簡単なのですが。。。

 

 ワザワザ永田町の国会図書館まで足を運ぶのも面倒だし。。あるいは,知り合いの大学関係者に気軽に研究室の図書館からコピーを頼めればいいのですが。。。

  

PS2:今朝(8月10日(月))は,いつもの病院で初めて外科の先生に診てもらいました。(初診のK先生は若い頃の将棋の中原名人のようなかわいい顔の人なつこい印象の人でした。)

 

 2年前の心臓手術当時の,以前の内科の主治医がよく「Tさんが思っているのとは違って,本当はいつ逝ってもオカシクない瀬戸際なんですよ。」と言ってたように,私が思っている以上に病気はヒドイというのが真実らしく,今回も動脈硬化の足の血管を外科的に助けようとすると逆に心臓が助からないので奨めないということでした。

 

 足と心臓のどちらを助けるか選べと言われて,足を取るバカもいないでしょうね。足の方を選んだら命がないのですから。。

 

 というわけで,血管が細すぎて無理だと言われたカテーテルも含め外科的な方法はあきらめることにしました。

 

 また,骨髄から取った遺伝子を注射するという白血病で用いるような方法も糖尿性網膜症があるのでできないそうです。(これも失明しても良ければ可能でしょうから,いずれも究極の選択ですね。)

 

 要するに足が全く無くなるなら別に心臓には負担かからないけれど,足の血流を急に正常にしたなら,それを維持できるほどの心臓のポンプの能力がないので,現状の心臓では耐えられないということです。

 

 むしろ,今現在は足に血を通わせないおかげで,心臓がポンプとして持っているということらしいです。

  

 内科的には,現在の薬物投与を効率的な点滴による投薬に変更するために入院する方法はあるけれど,血流を改善するバイパスのような外科手術には耐えられないので,日常的に足が痛いのを我慢してセッセと歩くことで,心臓と共存できる自然な血管細胞の再生を促すという方法があるくらいだそうです。

 

 私にたくさん蓄えがあるとか身内が裕福とかで,ただ命を永らえる手段だけを模索して,ノンビリ湯治でもできる楽隠居の身分ならいいのですが。。。。

 

 生憎く私は性格がアリさんでなくキリギリスであったせいで(現在もそうです)日々の生活の糧を得るためには,病気という理由で遊んでいるわけにもいかないので,飯を食べるのにも窮々としています。

  

 もっとも,楽しいことが全然なくて苦しいだけの生活なら,別に命を永らえる必要もないですがね。。。

   

 (↑フン,病気になったのも金がないのも自業自得だぜ!!)

    

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2009年5月 9日 (土)

超弦理論(22)(2-11)

 超弦理論(superstring theory)の続きです。

 

 これまでは共変ゲージαβ=ηαβで物理的状態になるべき補助条件としてヴィラソロ条件(Virasoro条件)を課して自由ボソン弦の量子化を調べてきました。

 しかし,以前に指摘したように計量(metric)をhαβ=ηαβと固定した後に,なお特殊な弦の座標選択を可能にするゲージ対称性が残っています。

 実際,特殊な非共変選択をすることによってヴィラソロ拘束方程式を陽に解き,物理的自由度のみを記述するフォック空間の理論を展開できるようになります。

 以下で述べる自発的に破れたゲージ理論のユニタリゲージに類似した定式化は元々1973年にGoddard,Goldstone,Rebbi,Thornによって展開されたものです。

 これは光錐(光円錐)定式化(light-cone定式化)と呼ばれるものです。この定式化は明白に共変なわけではありませんが明白にゴースト・フリー(ghost-free)です。

 

 逆に,ゴースト・フリーではないけれど明白に共変な共変定式化とこれの同等性を証明することによって,「ゴースト非存在の定理(no-ghost theorem)」の厳密な証明を得ることができます。

 光錐定式化を,ここで述べるのには他にも多くの理由があります。

歴史的には,双対模型(dual model)が弦理論であるということを確立させたのも光錐量子化でした。

 

光錐描像は非常に物理的なものです。そしてまた,多くの計算やa=1,D=26という選択の必要性を理解する上で有益な理論的枠組みを与えるものです。

 さて,既に見たように,共変ゲージhαβ=ηαβで開弦の境界条件を満たす弦座標:Xμ(μ=0,1,..,D-1)は,Xμ(σ,τ)=xμ+pμτ+iΣn≠0[(αnμ/n)exp(-inτ)cos(nσ)なるモード展開の形で表わされます。

 そして,これがヴィラソロ補助条件T++=T--=0 を満足することにも留意しておきましょう。

 

 さらに,世界面の再パラメータ化:σα→σα+δσα (δσα=ξα)において,∂αξβ+∂βξα=Ληαβを満たす任意の変換,または生成子V≡ξ)(∂/∂σ),V≡ξ)(∂/∂σ)で生成される変換に対応するゲージ対称性が残っていることを見ました。

この残りの対称性を追加のゲージ条件として用いるわけです。これは非共変ですがとても便利なものです。

まず,時空において光錐座標として,,X導入することから始めます。

 

,XをX≡(X0+XD-1)/21/2,X≡(X0-XD-1)/21/2で定義します。これらは,以前弦の世界面に導入した光錐座標σ±に似ていますが大きな違いがあります。

時空においては,D個の座標があり,それらの中で2つ,X0とXD-1を任意の非共変な方法で選抜することを伴ないます。

 

一方,世界面上では,元々たった2つしか座標がなく,σ±を定義する選択に何の任意性の余地もありません。

さて,光錐座標ではD個の時空座標はX±と残りの横波の空間座標Xi(i=1,2,..,D-2)です。

 

ここでミンコフスキー計量(Minkowski metric)ημνのゼロでない成分はη+-=η-+=1,ηii=-1 (i=1,2,..,D-2)です。

この座標系では,任意のベクトルVμの成分もV±=(V0±VD-1)/21/2とVi (i=1,2,..,D-2)になります。

 

2つのベクトルVとWの内積はVW=V+V-Viiで与えられます。また,反変⇔共変の添字の上げ下げは,V=V,V=V,Vi=-Viなるルールに従います。

それでは,残るゲージ対称性からは,どのような簡単化が可能なのでしょうか?

これに関し,2009年3/14の過去記事「超弦理論(14)(2-3)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/142-3-4d1f.htmlにおいて,以下のような記述があります。

 

"共変ゲージの典型的な形としてhαβ=ηαβと置くだけではまだゲージ自由度を完全には使い尽くしていません。

 

αξβ+∂βξα=Ληαβを満たす任意の組合わせに対する再パラメータ化:σα→σα+δσα (δσα=ξα)をすれば,この(再パラメータ化)+(ワイルスケーリング:Weil-scaling)の後で,なお特殊な共変ゲージ選択hαβ=ηαβが保持されます。

このとき,∂τξ0=∂σξ1=Λ/2,∂τξ1=∂σξ0より∂τ0+ξ1)=∂σ0+ξ1),∂τ0-ξ1)=∂σ1-ξ0)です。

 

これは,ξ±=ξ0±ξ1なる光錐系の言葉では,∂ξ=0 ,∂ξ=0 なること,つまりξはσ=τ+σの任意関数であり,ξはσ=τ-σの任意関数であることを意味します。"

すなわち,世界面の光錐座標σ±=τ±σで表現すると,残りのゲージ不変性は任意の再パラメータ化の可能性:σ→σ~),σ→σ~)に対応します。

 

閉弦ではσとσは独立に再パラメータ化されますが開弦の場合には両者は境界条件でつながっています。

つまり,τ=(σ+σ)/2 → τ~=[σ~(τ+σ)+σ~(τ-σ)]/2,σ=(σ-σ)/2 → σ~=[σ~(τ+σ)-σ~(τ-σ)]/2なる再パラメータ化が許されます。

  

これはτ~が質量のない自由な波動方程式:(∂2/∂σ2-∂2/∂τ2)τ~=0 の任意の解であることを意味しますから,τ~が決まればσ~も完全に決まります。

では質量のない自由な波動方程式の解τ~を選ぶ自然な方法とはどんなものでしょうか?

τ~について唯一要求される条件は,それが自由な波動方程式:(∂2/∂σ2-∂2/∂τ2)τ~=0 の解であることです。

 

この方程式は以前に見た共形ゲージ(conformalゲージ)で,時空座標Xμ(σ,τ)が従うべき方程式:□Xμ=(∂2/∂τ2-∂2/∂σ2)Xμ=0 と全く同じ形をしています。

そこで,残るゲージ自由度は,望むならパラメータτ~が正確に弦の座標Xμの1つに一致するように再パラメータ化してもよい,という事実に対応します。

 

これは,光錐ゲージではτ~=X/p+const.と選んでもよいことを意味します。通常これはX(σ,τ)=x+pτなる光錐ゲージ選択をすることで表現されます。

このことは古典的記述において,n≠0 の振動子座標αnを全てゼロと置くことに相当します。

 

弦座標のX成分は弦が無限大運動量で運動するような系で見られる時間座標に対応します。このゲージ選択ではXがσに依存しないので,弦のあらゆる点が同じ時間での値を取るという概念的な利点を有します。

そこで,X(σ,τ)=x+pτによってX(σ,τ)を固定することにします。

 

このとき,ヴィラソロ拘束方程式(d±')2=0 はX-d±X'={Σi=1D-2(Xid±Xi')2}/(2p)となります。

この式から簡単に陽に解くことができて,これをXiと未知の積分定数で表わせることがわかります。

 

つまり光錐ゲージでは,XとXの両方を消去できて,横波の振動子Xiのみが残ります。

(訳注48):すぐ前で参照した「超弦理論(14)(2-3)」にあるように,世界面光錐座標でのエネルギー運動量のゼロでない成分はT++=-∂,T--=-∂です。

 

 ∂=∂LLd,∂=∂RRdですから,これらはT++=-(Ld)2,T--=-(Rd)2と書けます。

そこで,拘束条件:T--=T++=0 は(Rd)2=(Ld)2=0 なることを意味します。

 

逆に,(Rd)2=(Ld)2=0 は∂X==0 であり,∂±=(∂τ±∂σ)/2 ですから,元の拘束条件は(d±')2=0 とも表現できます。

 

(訳注48終わり)※

開弦のXのモード展開は,Xμ=xμ+pμτ+n≠0[(αnμ/n)exp(-inτ)cos(nσ)]から,X=x+pτ+iΣn≠0[(αn/n)exp(-inτ)cos(nσ)]となります。

 

そこで,X-d±X'={Σi=1D-2(Xid±Xi')2}/(2p)から得られるαnの陽な解は,αn=(1/p)[(1/2){Σi=1D-2Σm=-∞n-miαmi:}-aδn]となります。

 

ここで共変的扱いとしてα0に未知の正規順序(normal-ordering)定数:aを導入しました。

(訳注49):X-d±X'={Σi=1D-2(Xid±Xi')2}/(2p)にX=x+pτ+iΣn≠0[(αn/n)exp(-inτ)cos(nσ)]を代入すると,p+Σn≠0nexp{-in(τ±σ)}]=[Σi=1D-2Σm,n=-∞αm-niαniexp{-im(τ±σ)}]/(2p)となります。

そこで,この式の左辺のn=0 と右辺のm=0 の項を比較して等置すると,α0=p={Σi=1D-2Σm=-∞α-miαmi}/(2p)=(1/p)[(1/2){Σi=1D-2Σm=-∞-miαni:}-a]を得ます。

 

左辺のn≠0 の項からはαn={Σi=1D-2Σm=-∞n-miαmi}/(2p)=(1/p)[(1/2){Σi=1D-2Σm=-∞n-miαni:}が得られます。

 

(訳注49終わり)※

光錐ゲージではα0とpを同一視することは質量殻条件そのものを意味します。

 

実際,α0=p=(1/p)[(1/2){Σi=1D-2Σm=-∞n-miαmi:}-a]から,Mを質量としてM2=2p-Σi=1D-2ii=2(N-a),N=Σi=1D-2Σn=1α-niαniが得られます。

以下では,縮約の規則を採用し,必要がある場合を除いてΣi=1D-2iiをpiiと書くことにします。こうすれば,質量殻条件はM2=2p-pii=2(N-a),N=Σn=1α-niαniと簡単になります。

また,この式は22p-pii=-2a+2Σn=1α-niαniと表現できますから,先に共変的扱いで見出されたM2=-2a-2Σn=1α-nαn (ただしα-nαnα-nμαnμ)と同じ質量殻条件です。

 

もっとも今の場合,N=Σn=1α-niαniには横波振動子のみが寄与するという違いがあります。(「超弦理論(17)」参照)

ところで,量pαn=(1/2){Σm=-∞n-miαmi:}-aδnはヴィラソロ代数を満足します。

 

すなわち,交換関係:[pαm,pαn]=(m-n)pαm+n+[{(D-2)/12}(m3-m)+2am]δm+nが成立します。

 

これを得るための計算は共変量子化でのヴィラソロ代数の論議と正確に同じです。これは光錐量子化における基本公式と考えられます。

(訳注50):[pαm,pαn]=(m-n)pαm+n+A(m)δm+nと書けば「超弦理論(18)」と同様にして,(m)=c33+c1mですが,[pα1,pα-1]=2pα0+c3+c1で,かつ2pα0= 2p=pii-2a+2Σn=1α-niαniです。

n≠0 なら,pαn=(1/2){Σm=-∞n-miαmi:}ですから,0=<0;0|[pα1,pα-1]|0;0>=-2a+c3+c1です。

 

また,[pα2,pα-2]=4pα0+8c3+2c1より(D-2)/2=<0;0|[pα2,pα-2]|0;0>=-4a+8c3+2c1を得ます。

それ故,c1=-(D-2)/12+2a,c3=(D-2)/12が得られます。すなわち,A(m)={(D-2)/12}(m3-m)+2amです。

 

(訳注50終わり)※

さて,理論がこの光錐ゲージで本当にローレンツ共変かどうかを調べたいと思います。

 

素朴に考えると,そうあるはずです。

 

なぜなら,これはローレンツ共変性が基本にあるゲージ不変な理論において,単にゲージを1つに固定することによって得られたものであるからです。

aとDの幾つかの値に対して理論に何か不都合があるとすれば,それはローレンツ不変性が陽には維持されない光錐ゲージにおいて,具体的にローレンツ不変性の欠如を示す良い機会を与えると考えられます。

さて,光錐ゲージにおいては,全ての弦の励起は横波振動子αniによって生成されます。

 

例えば,第1励起状態はα-1i|0;p>で与えられます。これは横波による(D-2)次元回転群SO(D-2)の(D-2)成分のベクトル表現です。

横に偏極した運動量ベクトルでも,質量がゼロでないなら一般にローレンツ変換によって縦の偏極成分を獲得します。

 

これは,"質量のある粒子のスピンはSO(D-1)の既約表現で分類され,一方,質量の無い粒子はSO(D-2)の既約表現に対応する。"というよく知られた事実の言明です。

 

(ただし今はボーズ粒子の弦ですが,フェルミ粒子の話なら,これをカバーする群であるスピン群:Spin(D-1)とSpin(D-2)を回転群SO(D-1)とSO(D-2)の代わりに用いる必要があります。)

したがって,もしもベクトル状態:α-1i|0;p>が質量の無い粒子状態でないなら光錐ゲージにおいてローレンツ共変な弦理論を与えることができないことは明らかです。

 

それ故,理論がローレンツ共変であるためには,状態α-1i|0;p>に対するM2=2p-pii=2(N-a)の固有値がゼロであることが要求されます。

 

そこで,N=Σn=1α-niαniからNα-1i|0;p>=1より,結局a=1でなければならないと結論されます。

次に時空次元Dに対する制限を理解するというより困難な問題に向かいます。

最初に,たった今得たローレンツ共変な弦理論であるための必要条件:a=1を用いた発見的な議論をします。

そのために,正規順序定数aを直接計算で求めることを試みます。

まず,[αmμnν]=-mδm+nημνより,横波成分については[αminj]=mδm+nδijですから,[αn-n]=[αni-ni]=n(D-2)が得られます。

 

そこで,(1/2){Σn=-∞α-niαni}=(1/2){Σn=-∞-niαni:}+{(D-2)/2}{Σn=-1n}です。

 

もちろん第2項の和は発散するので何らかの正則化がなされる必要があります。

  その正則化の1つの方法として,一般的な場の理論でも同様な正規順序の問題でよく用いられる'ゼータ関数正則化'を使用してみます

一般的な和n=-1-sを考えます。Res>1に対しては,この和はリーマンのゼータ関数ζ(s)として知られている関数に収束します。

 

そしてゼータ関数ζ(s)の方は点s=-1にも一意的に解析接続できて,ζ(-1)=-1/12となります。

そこでn=-1-sにおいてs=-1とおいた和:Σn=-1nに,このζ(-1)の値-1/12を強引に'代入する'と{(D-2)/2}{Σn=-1n}=-(D-2)/24なる式が得られます。

 

(これは,もちろん正しい等式ではありませんが,"くりこみ"における擬似等式ではそれは承知の上です。)

ところで,我々は既にα0=(1/2){Σn=-∞α-niαni}=(1/2){Σn=-∞-niαni:}-aの定数aが1であるべきことを知っているので,(D-2)/24=1と等置することから,時空次元Dが26であることが示唆されます。

こうしたゼータ関数正則化は幾らか形式的なものですが,後章で零点エネルギーを正則化するという,より物理的な方法からも同じ答を得ることになります。

今日はここまでにします。

参考文献:M.B.Green,J.H.Schwarz,& E.Witten著「superstring theory」(Cambridge University Press)

 

PS:しかし,ビーチバレーの報道でよく思うのですが,浅尾・西堀ペアのスポーツニュースではいつも浅尾さんばかりがクローズアップされるのが少し不満です。

 

 私は昔から双子の西堀姉妹のお姉さん?の方の「西堀健実」さんの方がはるかに好みのタイプです。

  http://ameblo.jp/takemi0820/  

 

 まあ「浅尾美和」さんの方が圧倒的に人気があるのかも知れませんが,ペアの勝敗などのニュースでも,浅尾さん1人だけのインタビューや1人だけの映像でニュースが終わってしまうのには,個人的にいつも不満に思っています。

 

 西堀さんの方は,なんとなく私の姪の「N子=ハンドル名:いくよくるよ」や,ときどきここにコメントくれる「れな(れい)ちゃん」にも似ているようで親しみを感じますしね。。。

 

http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。

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2009年4月21日 (火)

超弦理論(21)(2-10)

超弦理論(superstring theory)の続きです。

物理的状態を解析するという現在の目的にとって明確な共形次元を持つ演算子の導入が有益な理由は,こうした演算子はその作用によって古い物理的状態から新しい物理的状態を作るという作業に使用可能であるということです。

実際,|φ>が物理的状態である,つまり(Lm-aδm)|φ>=0 (m≧0)を満たすとき,演算子A(τ)が明確な共形次元J=1を持つなら,定義式[Lm,An]={m(J-1)-n}Am+nにJ=1を代入すると,[Lm,An]=-nAm+nとなりますから[Lm,A0]=0 となることがわかります。

 

このことから,|φ'>≡A0|φ>もまた(Lm-aδm)|φ'>=0 (m≧0)を満たすので,|φ'>も物理的状態の条件を満たします。

 反応1→1'+2における質量固有状態2の放出と関わる頂点演算子は,物理的始状態1を物理的終状態1'に写すべきなので,上の|φ'>≡A0|φ>による|φ>→|φ'>の物理的状態間の移行規則は,開弦放出の頂点演算子の共形次元が1であるべきことを示唆しています。

既に記術した記事「超弦理論(1)~(11)」の序章(introduction)においては,開弦の頂点演算子が次元1の局所演算子であるべきことを別の方法で学びました。

すなわち,2009年1/6の記事「超弦理論(10)(開弦,チャン・パトン因子)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/10-a483.htmlにおいて,"外粒子の開弦は世界面の境界にのみ挿入されているため,V=∫dτ[hττ1/2U(τ)]の形の頂点演算子の挿入で記述されるはずです。

ここでのτは単に世界面の境界上の1つのパラメータを示しているだけです。そしてhττ→ (expφ)hττなる計量(metric)の共形的再縮尺の下での演算子Vの不変性は開弦の場合にはU=U(τ)の次元が1であるべきことを要求します。"と書きました。

さて,ある時刻τとσ=0 で運動量が(-kμ)の物理的粒子の放出,または運動量がkμの物理的粒子の吸収に対する頂点演算子:V(k,τ)≡V(k,0,τ)は,その演算子が如何なる運動量状態に作用するときでも,運動量の総量をkμだけ増加させる必要があります。

それ故,弦の波動の質量中心座標への依存性は,exp{-ikμμ(τ)}のようである必要があります。

 

ここでxμ(τ)=xμ+pμτであり,これは時刻τにおける弦の質量中心のD次元時空内での位置を示しています。

弦という環境の下で,これを実現するための明確なやり方はV(k,τ)にexp{-ikμμ(0,τ)}なる因子を持たせることです。

 

実際,世界面パラメータ(σ,τ)=(0,τ)に対応する時空位置Xμ(0,τ)において運動量kμの質量固有状態を吸収する弦がexp{-ikμμ(0,τ)}なる因子で修正された波動関数を持つのは当然です。

もしも,吸収または放出される粒子としての弦が,状態として運動量の他には個を区別する量子数を全く持たないなら,頂点演算子V(k,τ)は単にV(k,τ)=exp{-ikμμ(0,τ)}で与えられるとしてもいいと思われます。

 

実際には,これだけではダメで正規順序による表現を併用することも必要です。

開弦ではXμ(σ,τ)=xμ+pμτ+iΣn≠0[(αnμ/n)exp(-inτ)cos(nσ)]より,Xμ(0,τ)=xμ(τ)+iΣn≠0[(αnμ/n)exp(-inτ)]です。

 

それ故,V(k,τ)=:exp{-ikμμ(0,τ)}:≡exp(-kΣn=1[(α-n/n)exp(inτ)]exp{-ikμμ(τ)}exp(kΣn=1[(αn/n)exp(-inτ)]と定義します。

この定義式での指数関数の指数は"正規順序=::"を取らなかった場合の値とは,発散する総和項α'k2Σn(1/n)だけ異なっています。

 

(それ故,k2=0 の特別なケースには正規順序の効果は無しです。)

(訳注42):線型演算子A,Bの交換子:[A,B]が[A,[A,B]]=0,または[B,[A,B]]=0 を満たすなら,expA・expB=exp(A+B+[A,B]/2)なる公式が成立します。

 

(これについては2006年10/27のブログ過去記事「量子力学の交換関係の問題(その2)」 http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_ada9.html を参照ください。)

 そして,A=-lkΣn=1[(α-n/n)exp(inτ),B=lkΣn=1[(αn/n)exp(-inτ)とおけば,[αmn]=-mδm+nより,[A,B]=-l22Σmn[{1/(mn)}[α-mn]exp{-i(m-n)τ}]=2α'k2Σn(1/n)となって,A,Bの交換子:[A,B]は無限大に発散します。

 

 それでも,ともかく[A,B]は単なるc-数ですから,expA・expB=exp(A+B+[A,B]/2)が成立します。

それ故,:exp(A+B):≡expA・expB=exp(A+B)exp([A,B]/2)なる等式が得られます。

 

これは,exp(A+B)の正規順序を取らなかった場合と,因子にしてexp([A,B]/2),指数にして[A,B]/2=α'k2Σn(1/n)だけ異なります。

 

(訳注42終わり)※

そして,正規順序で定義した頂点演算子V(k,τ)の共形次元を計算してみます。

先に示したように,Xμ(τ)は共形次元J=0 を持つので,Xμ(τ)Xν(τ)のような積や,より一般のXμ(τ)の任意関数f(Xμ(τ))のような形の合成演算子もまた共形次元:J=0 を持つと予想されます。

実際,演算子A(τ)がA(τ)=Σm=-∞m exp(-imτ)なる形にモード展開が可能なとき,[Lm,An]={m(J-1)-n}Am+nが成立すればA(τ)が明確な共形次元Jを持つという性質があります

 

これを直接用いると,もしも2つの演算子A1(τ),A2(τ)がそれぞれ共形次元J1,J2を持つなら,積A1(τ)A2(τ)は共形次元(J1+J2)を持つことを示すことができます。

(訳注43):A1(τ)=Σm=-∞1mexp(-imτ),A2(τ)=Σm=-∞2mexp(-imτ)と展開されるとき,B(τ)=Σn=-∞n exp(-inτ)≡A1(τ)A2(τ)=Σj,k[A1j2kexp{-i(j-k)τ}]とすれば,Bn=Σj+k=n1j2kと書けます。

 そして,[Lm,A1n]={m(J1-1)-n}A1,m+n,[Lm,A2n]={m(J2-1)-n}A2,m+nと仮定します。

 

 このとき,[Lm,A1j2k]=[Lm,A1j]A2k+A1j[Lm,A2k]={m(J1-1)-j}A1,m+j2k+{m(J2-1)-k}A1j2,m+kですから,[Lm,Bn]=Σj+k=n[Lm,A1j2k]=Σj+k=n[{m(J1-1)-j}A1,m+j2k+{m(J2-1)-k}A1j2,m+k]=Σk[{m(J1-1)-(n-k)}A1,m+n-k2k+Σj[{m(J2-1)-(n-j)}A1j2,m+n-j]=Σj[{m(J1-1)-(j-m)+m(J2-1)-(n-j)}A1j2,m+n-j]が得られます。

それ故,B(τ)=A1(τ)A2(τ)のフーリエ・モード:Bnに対し形式的には,[Lm,Bn]=Σj[{m(J1+J2-1)-n}A1j2,m+n-j]=Σj+k=m+n[{m(J1+J2-1)-n}A1j2k]={m(J1+J2-1)-n}Bm+nが成立します。

 

(訳注43終わり)※

これは,演算子A1(τ)とA2(τ)を別々に定義するために必要とされるもの以外には,どんな"引き算"や"くりこみ"といった曖昧な手続きなしに積A1(τ)A2(τ)が明確に定義されて,well-definedな場合,

 

言い換えると,2点演算子積A1(τ)A2(τ')がτ'→τの極限で如何なる近距離特異性も持たない場合には,いつでも真なる性質です。

実際には,:Xμ(τ)Xν(τ):のような典型的な正規順序積は明確な共形次元を持ちません。

 

しかし,V(k,τ)=:exp{-ikμμ(τ)}:はゼロでない明確な共形次元を持つことがわかります。

(k,τ)において演算子の順序を変える効果の足跡を保持することに留意すれば,直接的に各振動子項の操作から[Lm,V(k,τ)]を計算することで,(k,τ)の共形次元を決定することができます。

(k,τ)=exp[-kΣn=1{(α-n/n)exp(inτ)}]exp{-ikμμ(τ)}exp[kΣn=1{(αn/n)exp(-inτ)}]に対して[Lm,V(k,τ)]を評価するためには,まず[αpμ,exp(-kα-n)]=pδp-nμexp(-kα-n)なる式が成立することに着目します。

(※これはp=0 のときにも成り立つ式です。これの証明については,2006年10/16のブログ過去記事「量子力学の交換関係の問題 http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_cf85.html を参考にしてください。)

pμ,exp(-kα-n)]=pδp-nμexp(-kα-n)とヴィラソロ演算子Lmの表現式Lm=(-1/2)Σqαm-qαqを用いると,[Lm,exp(-kα-n)]=(-1/2)Σqm-qq,exp(-kα-n)]+[αm-q,exp(-kα-n)]αq}=(-1/2)Σq{nkαm-n,exp(-kα-n)}となります。

 

ただし,最右辺の括弧の記号{ , }は反交換子:{A,B}≡AB+BAを意味します。

これを,V(k,τ)=exp[-kΣn=1{(α-n/n)exp(inτ)}]exp{-ikμμ(τ)}exp[kΣn=1{(αn/n)exp(-inτ)}]に対して,[Lm,V(k,τ)]を評価するのに用いるに際して,m>0と仮定します。(m<0 の場合にも論旨は同じです。)

フーリエ・モードに頼らない表現では,演算子A(τ)が共形次元Jを持つという性質は[Lm,A(τ)]=exp(imτ){-i(d/dτ)+mJ}A(τ)で与えられます。

 

そして,もしも"正規順序という論点を無視するなら"計算結果からは頂点演算子V(k,τ)が共形次元J=0 を持つという結果:[Lm,V(k,τ)]=(-i)exp(imτ)(dV/dτ)を得ます。

(訳注44):正規順序を無視して頂点演算子を,V(k,τ)≡exp{-ikμμ(τ)}=exp[-kμΣn≠0{(α-nμ/n)exp(inτ)-ikμμ(τ)}]と定義するなら,(-i)(dV/dτ)=-kμΣnα-nμexp(inτ)V(k,τ)が得られます。

 

 一方,[Lm,V(k,τ)]=-kμΣnαm-nμexp(inτ)V(k,τ)=-kμΣnα-nμexp{i(m+n)τ}V(k,τ)=exp(imτ)[-kμΣnα-nμexp(inτ)V(k,τ)]より,確かに[Lm,V(k,τ)]=(-i)exp(imτ)(dV/dτ)が成立します。

 

 (訳注44終わり)※

しかし,実際には頂点演算子V(k,τ)は,正規順序表現V(k,τ)=:exp{-ikμμ(τ)}:で定義され,これはVの微分dV/dτもまた自動的に正規順序であることを意味します。

しかし,交換子[Lm,V(k,τ)]を得るために,[Lm,exp(-kα-n)]=(-1/2)Σq{nkαm-n,exp(-kα-n)}を用いると,こちらの方はV(k,τ)が正規順序でも一般には正規順序ではない表現を得ます。

すなわち,V(k,τ)=exp[-kΣn=1{(α-n/n)exp(inτ)}]exp{-ikμμ(τ)}exp[kΣn=1{(αn/n)exp(-inτ)}]の無限積の各項に対する[Lm,exp(-kα-n)]=(-1/2)Σq{nkαm-n,exp(-kα-n)}の右辺の寄与のうち,有限個については正規順序の形になりません。

それら個々の項は,V(k,τ)において,モードを下げる(消滅)演算子を上げる(生成)演算子の左側に持ちます。

 

それは,[(-1/2)Σn=1mkαm-nexp(inτ)]V(k,τ)です。

 

これらは,正規順序表現での値に加えて,別に交換子の寄与[(-1/2)Σn=1mkαm-nexp(inτ),V(k,τ)]=(-1/2)Σn=1m2 exp(imτ)V(k,τ)=(-1/2)mk2exp(imτ)V(k,τ)を与えます。

(訳注45):[αm-n,exp{-(kα-l/l)exp(ilτ)}]=(m-n)δm-n-l(kμ/l)exp{-(kα-j/l)exp(ilτ)}ですから,[(-1/2)Σn=1mkαm-nexp(inτ),exp{-kΣl-l/l)exp(ilτ)}]=(-kμ/2)kμexp(inτ)exp{i(m-n)τ}exp{-kΣl-l/l)exp(ilτ)}=[(-1/2)Σn=1m2exp(imτ)]exp{-kΣl-l/l)exp(ilτ)}を得ます。

 

 (訳注45終わり)※

 こうして,結局[Lm,V(k,τ)]=exp(imτ){-i(d/dτ)-mk2/2}V(k,τ)なる評価式が得られます。

 

 これを演算子A(τ)が共形次元Jを持つという定義式[Lm,A(τ)]=exp(imτ){-i(d/dτ)+mJ}A(τ)と比較すると,頂点演算子V(k,τ)の共形次元JがJ=-k2/2で与えられることが導かれます。

序章では2点関数の計算によって,同じ演算子exp(-ikμμ)の異常次元を計算しました。

 

そして,閉弦境界へ挿入したときには,この演算子はJ=-k2/4,開弦境界へ挿入したときには,J=-k2/2の異常次元を与えるという結果を得ました。

 

(2008年12/14の記事http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/9-153a.html および,2009年1/6の記事 http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/10-a483.html を参照)

一方,たった今振動子による方法から得た値:J=-k2/2が,序章において開弦について得た結果と完全に一致することに着目すると,これまでの弦についての手法の正当性に関して心強いものがあります。

 以上から,もしもk2=-2ならJ=1が得られ,V(k,τ)=Σm=-∞m(k)exp(-imτ)と展開したときの係数について,共形次元がJ=1で[Lm,V0(k)]=0 を満たす物理的な頂点演算子V0(k)を与えることがわかります。

 

 これは具体的には平方質量を試験的にM2=-2と割り当てた基底状態タキオン(tachyon)の放出に対する頂点演算子です。

 V(k,τ)が正規順序を要求しない唯一の場合はk2=0 の場合です。

 この場合はV(k,τ)=:exp(-ikX):の共形次元Jはゼロです。

 

 しかしk2=0 の条件は,質量がゼロのベクトル・メソンに対してのみ正しい条件ですから,この場合には頂点演算子としては共形次元のJ=0 は不適切な次元です。

 

 (※なぜなら,質量殻条件は,-α'k2-Σn=1α-nαn=L0=a=1によりα'k2=n-1ですから,質量殻の上にある物理的粒子でk2=0 ならこれはn=1(ベクトル)を意味します。)

 前に述べたように,dXμ/dτの共形次元は1なので,Vξ(k,τ)≡-ξμ(dXμ/dτ)exp(-ikX)が偏極ξμ(k)を持つゼロ質量のベクトル中間子放出に対する頂点演算子と解釈するのが自然です。

 

 そして,このようにVξ(k,τ)が,{ξμ(dXμ/dτ)}とexp(-ikX)の演算子積から成ることは,kξ=kμξμ=0 なら,Vξ(k,τ)の共形次元Jが1になることを保証します。

 

 また,これらには近距離特異性もありません。

 質量がゼロのベクトル粒子には制限があって,許される偏極は限られているというのはQED(量子電磁力学)ではお馴染みの事実であり,前に物理的状態スペクトルの解析でも遭遇しました。

 

 ここでのこうした出現は,共形次元が1の頂点演算子が物理的状態と1対1対応するという事実の実例です。

 スペクトルにおいて出現する他の状態に対応する頂点演算子は,より複雑です。

 

 質量殻条件α'2=n-1を満たす物理的粒子状態に対応する頂点演算子は,一般に:f(Xd,X2d,..,)exp(-ikX):なる形をしています。

 

 ここでfの中にあるXのτ微分の総数がnとなります。しかし,J=1なる完全な状態を得るためには,さらに付加的制限が必要です。

 次に,ゼロノルム状態に対する頂点演算子は次のように記述されることがわかります。

 まず,W(k,τ)が因子:exp(-ikX):を含む共形次元がゼロの演算子であるとすれば,V(k,τ)≡-i{dW(k,τ)/dτ}=[L0,W(k,τ)]の共形次元はJ=1で与えられます。

(訳注46):なぜなら,Lmはτによらない演算子なので,[Lm,W(k,τ)]=(-i){exp(imτ)(dW/dτ)}により,[Lm,V(k,τ)]=[Lm,-i{dW(k,τ)/dτ}]=(-i)(d/dτ)(-i)exp(imτ)(dW/dτ)=(-i)exp(imτ)(dV/dτ)+m・exp(imτ)Vです。

 

 [Lm,V(k,τ)]=exp(imτ){-i(d/dτ)+m}V(k,τ)です。

 

 (訳注46終わり)※

 そして,例えばk2=0 のW(k,τ)=exp(-ikX)なるJがゼロの演算子を取り上げれば,V(k,τ)=-i{dW(k,τ)/dτ}は縦偏極:ξμ=kμを持つゼロ質量中間子の放出に対する頂点演算子を与えると考えられます。

 実際にWがJ=0 を持つときのV(k,τ)=-i(dW/dτ)の形の演算子は,常にゼロノルム状態の放出を記述します。

 

(なぜなら,V(k,τ)=-i(dW/dτ)の偏極は,必ず縦偏極kμであり,J=-k2/2=0 からk2=0ですが偏極がkμであることと合わせうとこれはノルムがゼロなることを意味します。)

 論旨がかなり先の話まで飛躍することを承知で,ゼロノルム状態が分離される理由を述べると,V=-i(dW/dτ)は1つのτによる全微分項であるため,物理的状態|φ>を物理的状態V0|φ>に移すVのゼロ振動数成分V0は消えるという事実にその理由があることです。

 さらなる例として,α'k2=1を持つ第2励起レベルの状態の放出についての頂点を考えます。

 

 この場合,因子V0(k)はJ=-1を持ち,それ故ξμνμdνd:exp(-ikX):は,もしもこの演算子積に近距離特異性がないならJ=1を持ちます。そして,これはkμξμν=Trξ=0 (トレースレス=対角和がゼロ)のケースです。

 

 これらは,ξμν(k)が質量を持つスピンが2の状態の偏極テンソル:SO(D-1)の対称トレースレステンソルとなるための条件です。

 同じ質量レベルでスピン1と偏極ημの物理的状態に対する頂点演算子Yk,η=ημ(dXμd/dτ)exp(-ikX)の存在も仮定できます。

 

 しかし,ημμ=0 ならημμd:exp(-ikX):のτによる全微分(-i)[d{ημμd:exp(-ikX):}/dτ]={-iημ(dXμd/dτ)-ημμdννd}:exp(-ikX):の記述するところは,L-1ημα-1μ|0;k>で表わされるゼロノルム状態の放出と,Yの(D-1)個の可能な成分を説明します。

(訳注47):先に述べたように,J=0 のWに対して-i(dW/dτ)は常にゼロノルム状態の放出を意味します。

 

 W=ημμd:exp(-ikX):とすると,Wはημα-1μ|0;k>の頂点ですから,この物理的状態に対して,これの最も簡単なゼロノルム状態はL-1ημα-1μ|0;k>です。

 

 一方, (-i)[d{ημμd:exp(-ikX):}/dτ]={-iημ(dXμd/dτ)-ημμdννd}:exp(-ikX):の右辺第1項はημμ=0 の条件1つを持つ1個の頂点演算子Yk,ηです。(訳注47終わり)※

 それ故,Yのこれらの成分はξμνμdνd:exp(-ikX):の形の表現とゼロノルムに対応する成分だけ異なっており,残りの偏極はημ=kμに対応しています。

 D=26のケースには,これは新しい物理的状態の放出を与えません。

 

 なぜなら,こうしたYは,ξμνμdνd:exp(-ikX):の形の状態の放出とゼロノルム状態:{L-2+(3/2)L-12}|0;k>の放出の線型結合に対応しているからです。

 

 それ故,26次元の第2励起質量レベルでは,総じて唯一の適切な開弦頂点演算子はξμνμdνd:exp(-ikX):の形です。

 

 これはスピン2の質量のある粒子(k2=1/α’),すなわち,SO(25)の対称トレースレス2階テンソルとして変換する粒子の放出,または吸収を記述します。

今日はここまでにして,次回からは共変ゲージではなく,電磁場ならクーロンゲージに相当する光(円)錐(light-cone)ゲージの定式化について述べる予定です。

参考文献:M.B.Green,J.H.Schwarz,& E.Witten著「superstring theory」(Cambridge University Press)

 

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2009年4月18日 (土)

超弦理論(20)(2-9)

超弦理論(superstring theory)の続きです。取りあえずここまで来たら,行き詰まるところまで行きましょうか。

この時点で序文(introduction)で紹介した弦のグラフにおける頂点演算子について考察します。

開弦の相互作用はツリーグラフでは基本的に単一の弦が2つに分岐したり,逆に2つの弦が結合して1つになるというプロセスと見ることができます。これらは3つの開弦の世界面が真ん中で連結したグラフになります。

一般的な相互作用としては,こうした過程に関係する3つの開弦の全てが質量殻の上にはないと予期しますが,特に3つの開弦のうちの1つは物理的な質量殻の固有状態であるような場合について考察します。

3つの開弦の状態を1,1',2と名付けて1→1'+2という反応過程を考え,特に2は質量固有状態であるとします。1と1'については質量固有状態にあるかもしれないしそうでないかもしれません。

 

弦の質量固有状態というのは量子力学的概念であって,古典的概念ではありません。単位としてプランク定数"hc=h/(2π)"を復活させるなら質量固有状態はhcのオーダーの幅と平方質量を持つはずです。

 

それ故,古典的極限では弦の如何なる質量固有状態もある意味では点粒子に類似していると言えます。

質量殻状態2の放出を伴なう1→1'の遷移過程では,弦1'の量子状態は,ある線型変換によって弦1の量子状態と関連付けられる必要があります。

 

そして,この線形変換は弦2の状態に依存するはずです。変換が線型であるのは量子力学を論じているからです。

2が質量固有状態であり従って点状であることから,弦1'は弦1から2が放出された端点において,ある局所演算子の作用によって得られると考えるのが自然です。

 

この局所演算子は質量殻状態2の放出に対する頂点演算子ですが,状態2と関わる頂点の演算子なので通常V2と表記します。

発見的議論の導くところによれば,序章で異なるやり方で論じたように任意の質量殻状態|φ>には適切な頂点演算子Vφを結び付けるべきであろうと推察されます。

頂点演算子を論じるに当たって,我々がここで目指すゴールは実際に相互作用を解析して具体的に計算することではありません。これは後章での課題です。

 

今の目的は取りあえず物理的状態のスペクトルを解析できる道具を開発することです。

以下で論じる話は序章で述べたことへの有用な補完となるはずです。ここでの目的のためには,議論の対象を開弦のみに集中することで十分であると思われます。

 

頂点演算子は閉弦理論においても重要であることに変わりはないですが,ここで開弦について論じることは閉弦に直線的に流用できます。

さて,開弦状態を与えるヒルベルト空間の元に作用する一般の局所演算子A(σ,τ)を考察します。ここでは,特にσ=0 とおいて弦の端点での演算子A(0,τ)を調べます。簡単のためにA(0,τ)を単にA(τ)と書くことにします。

物理的状態であるための拘束条件を与える開弦の"エネルギー運動量テンソルTのフーリエ・モード=ヴィラソロ(Virasoro)演算子"Lmの第ゼロ成分(周波数によらない部分)(L0-a)はハミルトニアンHに等しいので,局所演算子A(τ)はA(τ)=exp(iτH)A(0)exp(-iτH)=exp(iτL0)A(0)exp(-iτL0)と表現されます。

我々が関心あるのはヴィラソロ代数によって自分自身に変換される演算子A(τ)です。

 

演算子A(τ)は,変数τの任意の変換τ→τ'(τ)の下でA(τ)→ A'(τ')=(dτ/dτ')JA(τ)なる変換を受けるとき,そのときに限って共形次元Jを持つと定義されます。

 

ここでの共形次元という概念は,以前2008年12/14の記事「超弦理論(9)(タキオン(続き)と重力子の散乱振幅)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/9-153a.html において論じた閉弦における頂点演算子exp{-ikX(z)}の"異常次元=アノーマリー次元"と同じものです。

この記事では,閉弦での頂点演算子:exp(-ikX)の異常次元を求める際,スケール不変な理論では次元がpを持つ演算子Yの2点関数が<Y(z)Y+(0)>=C|z|-2pとなるべきであるという論旨から,exp(-ikX)は異常次元として-k2/4を持つべきことが導かれ,

 

別の論点からexp(-ikX)の次元は2であるべきという要求があることと合わせて閉弦の基底状態のタキオン(tachyon)の質量がm2=k2=-8であると結論されました。

また,2009年1/6の記事「超弦理論(10)(開弦,チャン・パトン因子:Chan-Paton factor)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/10-a483.html において,開弦では頂点演算子exp{-ikX(x)}の座標変数が1次元の実変数xになることから,これの異常次元が-k2/2で与えられ,一方別の論点からexp(-ikX)の次元は1であるべきという要求があることと合わせて開弦の基底状態タキオンの質量はm2=k2=-2であると結論されています。

さて,τの変換が無限小変換τ→ τ'=τ+ε(τ)であるケースを考えると,共形次元がJの場A(τ)の変換規則:A(τ)→ A'(τ)=A(τ)+δAはδA=-ε(dA/dτ)-JA(dε/dτ)で与えられます。

(訳注38):無限小変換:τ→ τ'=τ+ε(τ)においてはdτ'/dτ=1+dε/dτですから,(dτ/dτ')J=1-J(dε/dτ)です。

 

 そこで,共形次元Jの定義によればA'(τ')=(dτ/dτ')JA(τ)=A(τ)-JA(dε/dτ)です。

 

 一方,場の変分δAはδA≡A'(τ)-A(τ)で定義されます。

それ故,A'(τ')-A(τ)=A'(τ')-A'(τ)+δAですが,τ→ τ'=τ+ε(τ)はε(τ)が無限小の無限小変換なので,A'(τ')-A'(τ)=A(τ')-A(τ)=ε(dA/dτ)が成立します。

 

そこで,A'(τ')-A(τ)=ε(dA/dτ)+δA=-JA(dε/dτ)となりますから,結局δA=-ε(dA/dτ)-JA(dε/dτ)が得られます。

 

(訳注38終わり)※

ヴィラソロ演算子mはε(τ)=exp(imτ)に対して,τ→ τ'=τ+ε(τ)なる変換を生成します。すなわち,共形次元Jを持つ任意の演算子A(τ)に対して[Lm,A(τ)]=exp(imτ){-i(d/dτ)+mJ}A(τ)を成立させます。

(訳注39):δA=-ε(dA/dτ)-JA(dε/dτ)にε=exp(imτ)を代入すると,δA=-exp(imτ)(dA/dτ)-imexp(imτ)JA=(-i)exp(imτ){-i(d/dτ)+mJ}A(τ)となります。

一方,演算子Lmが変換を生成するということはA(τ')=A(τ)+δA(τ)=exp(-iLm)A(τ)exp(iLm)を意味しますが,これはもしも(iLm)が無限小なら(1-iLm)A(τ)(1+iLm)=A(τ)+δA(τ),または[Lm,A(τ)]=iδA(τ)と解釈されます。

しかし,これでは私は納得できません。

 

私が腑に落ちないのは前の論旨では変換τ→ τ'=τ+ε(τ)が無限小変換であると仮定していたのに,今のε(τ)=exp(imτ)という設定では,右辺の絶対値が常に1なのでε(τ)は無限小では有り得ないということです。

そこで,通常仮定するようにεm>0 を任意の無限小定数のパラメータとし,ε(τ)=exp(imτ)ではなくε(τ)≡εm exp(imτ)とします。

すると,前の一連の式は単にεがεm倍されるに過ぎないので,δA(τ)=-ε(dA/dτ)-JA(dε/dτ)=(-iεm)exp(imτ){-i(d/dτ)+mJ}A(τ)となります。

そして,通常の生成子の定義のように,LmをA(τ)+δA(τ)=exp(-iLmεm)A(τ)exp(iLmεm)を与える演算子とすれば,(iLmεm)は確かに無限小なので,exp(-iLmεm)A(τ)exp(iLmεm)=A(τ)-iεm[Lm,A(τ)]となります。

 

そこで,δA(τ)=(-iεm)exp(imτ){-i(d/dτ)+mJ}A(τ)をexp(-iLmεm)A(τ)exp(iLmεm)-A(τ)=-iεm[Lm,A(τ)]に等置すれば,前と同じ式:[Lm,A(τ)]=exp(imτ){-i(d/dτ)+mJ}A(τ)が得られます。

 

私は,こちらの解釈の方が辻褄が合うと思うので,そう解釈します。

 

 (訳注39終わり)※

さて,この局所演算子A(τ)がフーリエ・モード展開:A(τ)=Σm=-∞m exp(-imτ)を有するなら,上の関係式[Lm,A(τ)]=exp(imτ){-i(d/dτ)+mJ}A(τ)はフーリエ・モードの係数演算子に対する式:[Lm,An]={m(J-1)-n}Am+nに帰着します。

これは容易に証明できて,ヴィラソロ代数やヤコービ恒等式などと共立します。

(訳注40):実際,[Lm,A(τ)]=exp(imτ){-i(d/dτ)+mJ}A(τ)にA(τ)=Σm=-∞m exp(-imτ)を代入すると,Σn=-∞[Lm,An]exp(-inτ)=Σn=-∞exp{i(m-n)τ}{-n+mJ}Anです。

 

 そこで,右辺のnをn→m+nとシフトすれば,Σn=-∞exp{i(m-n)τ}{-n+mJ}An=Σn=-∞exp(-inτ){m(J-1)-n}Am+nとなり,確かに[Lm,An]={m(J-1)-n}Am+nが得られます。

 

 (訳注40終わり)※

 [Lm,A(τ)]=exp(imτ){-i(d/dτ)+mJ}A(τ),または[Lm,An]={m(J-1)-n}Am+nによる演算子A(τ)の共形次元Jの定義によれば,例えば弦座標Xμ(τ)は次元J=0 を持ち,運動量演算子(係数略)Xμd(τ)≡dXμ(τ)/dτは次元J=1を持つことがわかります。

(訳注41):開弦の座標のフーリエ展開はXμ(τ)=Xμ(0,τ)=xμ+l2μτ+ilΣn≠0{(αnμ/n)exp(-inτ)} 0μ=lpμ)なので,Xnμ≡ilαnμ/n(n≠0)と置けば,Xμ(τ)=xμ+lα0μτ+Σn≠0nμexp(-inτ)となります。

そして,Xnμd≡lαnμと定義すれば,Xμd(τ)=dXμ(τ)/dτ=lα0μ+lΣn≠0αnμexp(-inτ)=Σn=-∞nμdexp(-inτ)と書けます。

 一方,Lm=(-1/2)Σk=-∞αm-kαkですから,[AB,C]=ABC-CAB=A[B,C]+[A,C]B,および[αmn]=-mδm+nを用いると,[Lmn]=(-1/2)Σk=-∞m-kkn]+[αm-knk)=-nαm+n,つまり[Lmn]=-nαm+nを得ます。

 そこで,[Lm,Xn]=-ilαm+n=-(m+n)Xm+n (n≠0),および [Lm,Xnd]=-nlαm+n=-nXm+ndが成立します。

 

 これらは,次元Jの定義式[Lm,An]={m(J-1)-n}Am+nにおいて,An=Xn,J=0 ,およびAn=Xnd,J=1を代入したものです。

ただし,Xnのn=0 の項:X0については定義されていませんが,n→ 0 の極限でXnμexp(-inτ)→ X0μ(1-inτ)=xμ+lα0μτとなるとでも考えれば,X0μ≡xμ=lim n→0(ilαnμ/n)とか何とかで定義可能と思えます。

 

しかし,[Lmn]=-nαm+nを用いると,n→ 0 の極限を先に取るか後で取るか次第で,[Lm,X0]=-ilαm=-mXmであると考えるべきか,[Lm,X0]=0 であると考えるべきか微妙ですね。

 

(訳注41終わり)※

(後で,ゲージ固定に必要なFPゴースト(Fadeev-Popov ghost)を論じる際には,ゴーストcの座標はJ=-1を反ゴーストbのそれはJ=2を持つことを見ることになります。)

 

ある明確なJの値について,[Lm,A(τ)]=exp(imτ){-i(d/dτ)+mJ}A(τ)のように変換する演算子は一定の共形次元を持つといわれますが,それらはヴィラソロ代数の下で"うまく"変換するものです。

 

(一般には,このように一定の共形次元を持つ演算子の方がむしろ特殊であり珍しいものです。)

 

短かいですが今日はここまでにします。 

参考文献:M.B.Green,J.H.Schwarz,& E.Witten著「superstring theory」(Cambridge University Press)

 

PS:別にP&Gという会社のまわしものじゃないですが,ここのところ「ジョイ」という台所用洗剤を使ってみて,今まで使っていた洗剤と比べてかなり気に入りました。。。

 

 ここは個人の日記ですからCMではないし,万人にとっていいかどうかはわかりませんが,ウソじゃなく私がいいと思ったものをいいと書いて文句を言われる筋合いはないですね。。←何突っ張ってるんだ?ソデの下でも当てにしてんのかい?

 

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2009年4月13日 (月)

超弦理論(19)(2-8)

超弦理論(superstring theory)の続きです。

 

ツナギ,ツナギと言いながら,ずーっとこればっかしですみません。今は丁度木の芽どきでもあり,なぜか精神に余裕がなくブログも滞りがちです。

 さて,ヴィラソロ条件(Virasoro-condition)(Lm-aδm0)|φ>=0 (m≧0)が課された場合,負ノルムの物理的状態が全く存在しないことを保証するような定数パラメータaと時空次元Dの満たすべき条件について予備的な検査をしてみます。

結果として,aとDのある領域では負ノルム状態が存在し,他の領域では負ノルム状態は全く存在しないという結論が得られます。

 

以下,その内容を詳述します。

 物理的ヒルベルト空間に全く負ノルム状態がないようなパラメータaとDの領域を記述するためには,ゼロノルムの物理的状態を探すことが非常に有用な手段になります。

物理的ヒルベルト空間が非負定値ノルムを持つ領域から負ノルムを持つ領域までを横切ってaとDを変動させれば,それら2つの領域間の境界にはゼロノルムを与える物理的領域が存在すると考えられます。

 そして後述する理由のために,これらある意味では余分のゼロノルム状態が重要な物理的原理に関連付けられ,最も関心のある物理的ヒルベルト空間が発展する際のゴースト状態の縁にある臨界の場合に相当するという結論を得ることになります。

 以下の理論展開では開弦のみを対象にしますが,振動子とヴィラソロ条件を二重にすれば,閉弦の話もほとんど同じです。

 

 実際,拘束Σn=1α-nαn=Σn=1α~-nα~nを除けば,閉弦のn番目の質量レベルは左移動演算子から作られる物理的状態のヒルベルト空間の元と,右移動演算子から作られる物理的状態のヒルベルト空間の元のテンソル積で表現されます。

したがって,左移動と右移動の物理的状態は開弦の物理的状態と全く同等ですから,負ノルム状態を探すという今の論題においても開弦と同等であり,開弦のみが対象の理論展開は,そのまま閉弦にも当てはまるといえます。

さて,運動量kμを持つ開弦の基底状態を|0;k>で記述します。

 

このとき,L0=(-1/2)Σ-∞α-nαn=-α'p2-Σn=1α-nαn,およびp2|0;k>=k2,かつαn|0;k>=0 によって,質量殻条件(L0-a)|0;k>=0,またはL0=aは,α'k2=-aなる等式を意味します。

 

(パラメータα'は後に1/2と置きます。)

基底状態|0;k>からの第1励起レベルの状態ξα-1|0;k>を考えます。ここで,ξ=ξμ(k)はゲージ拘束を考慮する前には,D個の独立成分を持つ偏極ベクトルであり,ξα-1|0;k>なる状態は,詳しく表現すればξμ(k)α-1μ|0;k>です。

この第1励起状態に対して,質量殻条件L0=-α'p2-Σn=1α-nαn=aは-α'k2=a-1を与えます。

 

また,L1補助条件L1(ξα-1)|0;k>=0 は,L1=(-1/2)Σ-∞α1-nαnによって,ξk=ξμμ=0 を与えます。

 

後者のξk=ξμμ=0 は,ゲージ拘束条件であり,D個の成分を持つ一般のベクトルξ=(ξμ)において,実際に許される独立な偏極の数は(D-1)個であることを示しています。

状態:ξα-10;k>のノルムは,-ξ2=-ξμξμです。そこで,特に,ベクトルk=(kμ)が(0,1)平面内にある,つまりk=(kμ)=(k0,k1,0,0,..,0)であるような座標系を選択すれば,kに垂直で空間的な偏極を持つ(D-2)個の状態は正のノルムを持ちます。

例えば,ξ=μ)=(0,0,1,0,0,..,0),(0,0,0,1,0,..,0),..,(0,0,0,0,0,..,1)のような(D-2)個の空間的偏極ベクトルを考えることができます。

そして,もしも状態がk2=M2<0 のタキオンなら,ベクトルkは空間的なので時間成分k0がゼロであるようにkの座標を選ぶことができます。すると,最後の(D-1)個目の状態の偏極ξ=(ξμ)は時間的(time-like)であり,-ξ2=-ξμξμ<0 となってノルムは負になります。

すなわち,ξk=ξμμ=0 を与える最後の偏極ベクトルとして例えば,ξ=(ξμ)=(1,0,0,0,0,..,0)と取ることができるわけです。

一方,もしもk2=M2>0 なら最後の(D-1)個目の状態のξも他の(D-2)個の状態と同じく空間的で,偏極ξは-ξ2=-ξμξμ>0 を満たし正のノルムを持ちます。(例えばξ=(ξμ)=(0,1,0,0,0,..,0)と選べます。)

最後に質量がゼロ,つまりk2=M2=0 (光的)なら(0,1)平面内のベクトルkの成分はk0=±k1となります。

 

このとき,ξμμ=ξ00-ξ11=0 なる必要条件から,(D-1)個目の偏極ベクトルはξ=(ξμ)=(ξ01,0,0,..,0),ξ0=±ξ1,例えばξ=(ξμ)=(1,1,0,0,0,..,0)と選ぶことができて,-ξ2=-ξμξμ=0 となり,この状態のノルムはゼロです。

以上から,-ξ2=-ξμξμ<0 によって負ノルムが生じない条件はベクトルkが空間的または光的であること,つまりk2=M2≧0 であることが必要と考えられます。

 

この条件は,等式-α'k2=a-1 により,a-1≦0 を意味します。よって,ゴーストが存在しないための最初の条件:a≦1が得られます。

特に,この条件の境界のa=1 の場合には,スカラー基底状態|0;k>はα'k2=-a=-1 により,k2=M2=-1/α'<0 のタキオン状態ですが,最初の励起状態であるξα-1|0;k>ではk2=M2=0 となるので,これの示すベクトル粒子の質量はゼロです。

質量がゼロのベクトル粒子のケースにはL1補助条件:L1(ξα-1)|0;k>=0 ,またはξk=ξμμ=0 は丁度質量がゼロの光子(電磁場Aμ)のQED(量子電磁力学)における共変ゲージ条件∂μμ=0 に対応しています。

そして,丁度,QEDの共変グプタ・ブロイラー(Gupta-Bleuler )量子化での∂μμ=0 と同じように,L1補助条件ξk=ξμμ=0 は"横偏極を持つ(D-2)個の正ノルム状態=(D-2)個の横波状態"と1個のゼロノルムの縦波状態:ξμ=kμを許される偏極として残します。

そして,観測にかかるS行列からは最後の縦波のゼロノルム状態が解離することを示す必要があります。

場の理論では縦波ゼロノルム状態の解離はゲージ不変性とカレントの保存から導かれましたが,弦理論でもこのことを具体的に証明することは可能です。

 

(第1章序文(introduction)では重力のワード・高橋恒等式(Ward-Takahashi identity)の項目の議論で,これを証明する1つのアプローチをスケッチしました。)

しかし,我々は今のところ明らかにされているより深い構造について不完全な理解にしか到達していません。

aが臨界値a=1を取るときの最初の励起レベルξα-1|0;k>は,一般には無限個存在する"ゼロノルム状態=ヌル状態"の最初の例を与えています。この特殊な励起状態に関して見出される結果は,以下の考察によって一般化することができます。

任意の状態|φ>は,それが拘束:Lm|φ>=0 (m>0),かつ(L0-a)|φ>=0 を満たすなら物理的状態と呼ばれます。

 

一方,(L0-a)|ψ>=0 に従う状態|ψ>が,あらゆる物理的状態|φ>と直交するとき,すなわち,|ψ>が全ての物理的状態|φ>に対して<φ|ψ>=0 を満たすなら,これは"擬似状態"であるといわれます。

任意の擬似状態|ψ>は,(L0-a+n)|χn>=0 に従う状態|χn>を用いて,常に|ψ>=Σn>0-nn>と表わすことができることがわかります。

(訳注30):(L0-a)L-nn>={[L0,L-n]+L-n(L0-a)}|χn>=L-n(L0-a+n)|χn>=0 より,|ψ>=Σn>0-nn>なら(L0-a)|ψ>=0 であって,|φ>が物理的状態なら,n>0 のときLn|φ>=0 ですから,<φ|L-nn>=<χn|Ln|φ>*=0 となります。

 

 そこで,|ψ>=Σn>0-nn>と表わせることは|ψ>が擬似状態であるための十分条件になっています。

 

 (訳注30終わり)※

|ψ>=Σn>0-nn>の右辺の無限級数は実際にはn≧3 に対する項:L-nn>のL-nをL-1とL-2の交換子の繰り返しによって表現することができることがわかります。

すなわち,例えばL-3~[L-1,L-2]なる同一視が可能であり,L-4はL-1,L-2,L-3で表現できるので,|ψ>=Σn>0-nn>は右辺を短縮して切り取った表現として|ψ>=L-11>+L-22>,(L0-a+1)|χ1>=0,(L0-a+2)|χ2>=0 と簡単に書くことができるわけです。

(訳注31):(L0-a+3)|χ3>=0 を満たす|χ3>に対して|χ1>≡L-23>,|χ2>≡-L-13>と置けば,(L0-a+1)|χ1>=0,(L0-a+2)|χ2>=0 が満たされ,L-11>+L-22>=[L-1,L-2]|χ3>=L-33>が成立します。

そこで,L-33>はL-33>=L-11>+L-22>なる形で表現されることがわかります。

 

そして,n≧4のL-nn>もこうした [L-1,L-2],[[L-1,L-2],L-1]etc.のような交換子の繰り返しの組み合わせによってL-nn>=L-11>+L-22>なる形に表現可能であると予想されます。

 

(訳注31終わり)※

|ψ>=Σn>0-nn>,あるいは|ψ>=L-11>+L-22>は確かに全ての物理的状態|φ>と直交します。なぜなら,<φ|ψ>=Σm=12<φ|L-mm>=Σm=12<χm|Lm|φ>*=0 となるからです。

任意の擬似状態|ψ>が(L0-a+n)|χn>=0 に従う状態|χn>を用いて|ψ>=Σn>0-nn>と表わすことができること,したがって(L0-a+1)|χ1>=0,(L0-a+2)|χ2>=0 に従う状態|χ1>,|χ2>を用いて|ψ>=L-11>+L-22>の形に表現できることを見るために,|ψ>が|ψ>=Σn>0-nn>の形なら演算子:O≡|ψ><ψ|があらゆる物理的状態を消滅させることに着目します。

(既に,|ψ>=Σn>0-nn>が擬似状態であるための十分条件であることは示しましたが必要条件であることを示します。)

(訳注32):(訳注30)で既に示したように,任意の物理的状態|φ>について<φ|L-nn>=<χn|Ln|φ>*=0 が成立しますから,O|φ>=Σm,n>0-mm><χn|Ln|φ>=0 です。

 

 つまり演算子O≡|ψ><ψ|は,全ての物理的状態を消滅させます。

 

 (訳注32終わり)※

一般的な物理的状態に対する唯一の制限はm>0 の任意のLmによって消滅させられることですから,Oが任意の物理的状態を消滅させるということは演算子群:X-nを係数としてO=Σn>0-nnと展開できることを意味します。

O=|ψ><ψ|なので,これは任意の擬似状態|ψ>が(L0-a+n)|χn>=0 に従う状態|χn>を用いて|ψ>=Σn>0-nn>と表わせることを示しています。

(訳注33):|ψ><ψ|=Σn>0-n-nより,<x|ψ>≠0 なる任意の状態|x>に対し<x|ψ><ψ|=Σn>0<x|X-nnです。これのエルミート共役を取ると,<ψ|x>|ψ>=Σn>0-n-n|x>です。故に|ψ>=Σn>0-n-n|x>/<ψ|x>です。

そこで,|χn>≡X-n|x>/<ψ|x>と定義すれば,|ψ>=Σn>0-nn>となります。さらに,(L0-a)|ψ>=0 なる仮定によって(L0-a+n)|χn>=0 が成立することもわかります。

 

(訳注33終わり)※

さて,擬似状態|ψ>が物理的状態でもあるときには,何か特別のことが生じます。|ψ>は擬似状態なので全ての物理的状態|φ>と直交しますから<φ|ψ>=0 ですが,物理的状態でもあるので,Lm|ψ>=0(m>0),(L0-a)|ψ>=0 を満たします。

それ故,特に自分自身とも直交しますから<ψ|ψ>=0 です。あるいは|ψ>=Σn>0-nn>と表わせば,<ψ|ψ>=Σm>0<χm|Lm|ψ>=0 です。

 

よって,こうした擬似状態かつ物理的状態である状態|ψ>はゼロノルムを持つことがわかります。これらをヌル物理的状態と呼びます。

特に,Lm|χ~>=0 (m>0),(L0-a+1)|χ~>=0 を満たす任意の状態|χ~>によって|ψ>≡L-1|χ~>なる形の擬似状態を作ると,これのノルムは<ψ|ψ>=<χ~|L-1|ψ>=0 となるので,これはゼロノルム状態となっています。

|χ~>は演算子α0μの固有状態としてはゼロ運動量状態:|0;0>であることも可能ですが,任意の状態はpμだけシフトできます。

|ψ>≡L-1|χ~>はさらに擬似状態であることに加えて,L1|ψ>=0なるL1補助条件を除いて物理的状態であるためのあらゆる条件を満足しています。

 

そして,アノマリーを含むヴィラソロ代数[Lm,Ln]=(m-n)Lm+n+(D/12)(m3-m)δm+nを用いると,L1|ψ>=L1-1|χ~>=2L0|χ~>=2(a―1)|χ~>となります。そこで,a=1ならL1|ψ>=0 も満足されます。

しかし,D=26次元ではゼロノルム状態の数はもっと劇的に増加します。これは,|ψ>≡(L-2+γL-12)|χ~>なる構造を持つ擬似状態を考えることで発見できます。ただし,a=1とし|χ~>は(L0-a+2)|χ~>=(L0+1)|χ~>=0 を満足するとします。

 

これから,擬似状態であるための条件であり物理的状態であるための条件の1つである(L0-a)|ψ>=(L0-1)|ψ>=0 が確かに満たされていることがわかります。

さらに,|ψ>は明らかにm≧3のLmによっては消滅されるので,アノマリーを含むヴィラソロ代数:[Lm,Ln]=(m-n)Lm+n+(D/12)(m3-m)δm+nを用いて,|ψ>が残りの条件L1|ψ>=0,L2|ψ>=0 をも満足することが可能かどうかを調べます。

簡単な計算によって,これら2つの条件は3-2γ=0 とD/2-(4+6γ)=0 を与えることがわかります。これから,γ=3/2,D=26が得られます。

(訳注34):L1|ψ>=(L1-2+γL1-12)|χ~>=(3L-1+2γL-10)|χ~>=(3-2γ)L-1|χ~>=0より3-2γ=0 です。また,L2|ψ>=(L2-2+γL2-12)|χ~>=(4L0+D/2+6γL0)|χ~>={D/2-(4+6γ)}|χ~>=0 よりD/2-(4+6γ)=0を得ます。

 

 (訳注34終わり)※

そこで,|ψ>={L-2+(3/2)L-12}|χ~>とすれば,これは擬似状態かつ物理的状態ということになります。もちろん,<ψ|ψ>=<χ~|L2+(3/2)L12|ψ>=0 となっています。

こうして,a=1,D=26の場合には|ψ>={L-2+(3/2)L-12}|χ~>の形のはるかに多くのゼロノルム物理的状態が存在することがわかりました。

 

前の|ψ>=L-1|χ~>のゼロノルム物理的状態とは異なり,この2番目のタイプの状態のノルムはD=26のときに限ってゼロになります。

|ψ>={L-2+(3/2)L-12}|χ~>の形の最初の例としては,{L-2+(3/2)L-12}|0;p>なる形が考えられます。

 

計算すると,これは|ψ>={L-2+(3/2)L-12}|0;p>={-(1/2)α-1α-1-(5/2)pα-2+(3/2)(pα-1)2}|0;p>と書けます。

 

ただし,a=1であり|χ~>=|0;p>は(L0+1)|0;p>=(-p2/2+1)|0;p>=0 を満たすのでp2=2です。この|ψ>のノルムは(D-26)/2となるので,予期したようにD=26で消えます。

(訳注36):L-2=(-1/2)Σn=-∞α-2-nαn,L-1=(-1/2)Σn=-∞α-1-nαnです。そこで,L-2の右辺の級数で状態L-2|0;p>にゼロでない寄与をする項はn=0,-1,-2の項だけです。

 

 それ故,L-2|0;p>=(-1/2)(α-2α0+α-1α-1+α0α-2)|0;p>={-(1/2)α-1α-1-α-2α0}|0;p>={-(1/2)α-1α-1-pα-2}|0;p>となります。

 一方,L-1の右辺の級数の項でL-12|0;p>にゼロでない寄与をするのはn=0,1,-1,-2の項だけです。

 

 L-12|0;p>=(1/4)(α-1α0+α-2α1+α0α-1+α1α-2)(α-1α0+α-2α1+α0α-1+α1α-2)|0;p>=(1/4)(α-1α0+α-2α1+α0α-1+α1α-2)(α-1α0+α0α-1)|0;p>=(α-1α0)2-α-2α0)|0;p>={(pα-1)2-pα-2}|0;p>となります。

 そして,|ψ>={-(1/2)α-1α-1-(5/2)pα-2+(3/2)(pα-1)2}|0;p>より,|ψ>のノルムは<ψ|ψ>=(1/4)<0;p|α1μαα-1να-1ν|0;p>+(25/4)p2<0;p|α2α-2|0;p>+(9/4)pμνρσ<0;p|α1μα1να-1ρα-1σ|0;p>-2(3/4)<0;p|α1μανα-1νρα-1ρ|0;p>となります。

 この式の右辺の第1項は,(1/4)<0;p|α1μαα-1να-1ν|0;p>=-(1/2)ημν<0;p|α1μα-1ν |0;p>=(1/2)ημνημν=(1/2)Dとなり,第2項は(25/4)p2<0;p|α2α-2|0;p>=-(25/2)p2=-25となります。

 

 また,第3項は(9/4)pμνρσ<0;p|α1μα1να-1ρα-1σ|0;p>=(9/2)(p2)2=18,第4項は-2(3/4)<0;p|α1μανα-1νρα-1ρ|0;p>=-3p2=-6 となりますから,結局<ψ|ψ>=(1/2)D-25+18-6=(1/2)D-13=(D-26)/2 です。

 

 (訳注36終わり)※

 時空次元が26より小さいとき,すなわちD<26のときには,|ψ>のノルム:<ψ|ψ>=(D-26)/2が負になるという事実は重要ではありません。というのは,D<26の場合には|ψ>={L-2+(3/2)L-12}|0;p>はL1|ψ>=0 を満足しないので物理的状態ではないからです。

 現実に負ノルムの物理的状態が出現するのはD>26の場合です。例として|φ>={c1α-1α-1+c2pα-2+c3(pα-1)2}|0;p>なる形の状態|φ>を考えます。ただし,(L0-a)|φ>=(L0-1)|φ>=0 が満たされるようにp2=2とします。

 簡単な計算から,この状況で状態|φ>がL1|φ>=L2|φ>=0 に従うのは,c2=c1(D-1)/5,c3=c1(D+4)/10 のときであることがわかります。

(訳注37):α02=p2=2 とすると,0α-1α-1|0;p>={(-1/2)α02-α1α-1-1α-1|0;p>=(-1+2)α-1α-1|0;p>=α-1α-1|0;p>です。

 

 それ故,L0(pα-1)2|0;p>=(pα-1)2|0;p>も成立します。また,L0α-2|0;p>={(-1/2)α02-α2α-2-2|0;p>=α-2|0;p>も成立します。

 

 以上から,p2=2 で|φ>={c1α-1α-1+c2pα-2+c3(pα-1)2}|0;p>なら,0|φ>=|φ>なる等式が成立し,確かに(L0-1)|φ>=0 なる条件が満たされることがわかります。

次に,L1=(-1/2)Σn=-∞α1-nαnなので,L1α-1α-1|0;p>=-α0α1α-1α-1|0;p>=2α0α-1|0;p>=2(pα-1)|0;p>です。

 

同様に,L1(pα-1)2|0;p>=-α0α1(pα-1)(pα-1)|0;p>=2p2(pα-1)|0;p>=4(pα-1)|0;p>,L1(pα-2)|0;p>=-α-1α2(pα-2)|0;p>=2(pα-1)|0;p>です。

そこで,L1|φ>=0 なる条件が満たされるためには2c1+2c2+4c3=0,すなわちc1+c2+2c3=0 が成立する必要があります。

一方,L2=(-1/2)Σn=-∞α2-nαnですから,L2α-1α-1|0;p>=(-1/2)α1α1α-1α-1|0;p>=-D|0;p>,L2(pα-1)2|0;p>=(-1/2)α1α1(pα-1)(pα-1)|0;p>=p2|0;p>=2|0;p>,L2(pα-2)|0;p>=-α0α2(pα-2)|0;p>=2p2|0;p>=4|0;p>ですから-c1D+4c2+2c3=0 を得ます。

そして,連立方程式:c1+c22c3=0,-c1D+4c2+2c3=0 を解けば,c2=c1(D-1)/5,c3=c1(D+4)/10 が得られます。

 

(訳注37終わり)※

この場合,|φ>={c1α-1α-1+c2pα-2+c3(pα-1)2}|0;p>のノルムを計算すると,<φ|φ>=2c12D-4c22+8c32-8c13=2c12(D-1)(26-D)となります。

 

それ故,D>26の場合には物理的スペクトルの中にゴーストが存在することになります。

後に証明される一般的規則では,a=1,かつD=26,またはa≦1,かつD≦25であれば物理的状態のスペクトルはゴーストを持たないということがわかります。

a=1,かつD=26の場合には多くの余分なゼロノルム状態が存在し,物理的状態のスペクトルはα振動子の"(D-2)個=24個"のセットによって生成されるものと同数の伝播モードを持ちます。

 

一方,後者のa≦1,かつD≦25の場合にはゼロノルム状態ははるかに少なく,物理的状態のスペクトルは"(D-1)個≦24個"のセットから生成されます。

また,a=1,かつD=26の場合には弦は横波励起のみを持ち,一方,a≦1,かつD≦25の場合には横波だけでなく縦波モードも有するともいえます。こうした事実はゴースト非存在の定理(no-ghost theorem)の証明に関連して出現してきます。

ここでの定式化での自由理論の研究だけからは時空次元が26に等しくなければならないと結論付けることはできません。

その理由は,理論がD=26に対してゴーストを持たないなら,そのαnμ振動子(μ=0,1,2,..,25)が例えばμ=25の基底状態,つまり成分αn25がゼロの状態から成るD=25の部分空間もまたゴーストを持たないからです。

この定式化においてツリーレベルで示すのが可能と思われる最大のことは,D=26の空間が最も自然であり,D<26の空間は全体の26次元空間に属しそれから任意に切り取った部分空間であろうということです。

D=26のみに存在する余分なゼロノルム状態の発見が,このことの第一のしるしです。というのは,このゼロノルム状態は非常に便利な意味を持つからです。

前に述べた質量がないベクトルメソンの縦波モード状態の解離のように,物理的に有意な理論においてはゼロノルム状態は場の理論のゲージ不変性に類似したある根底的な原理によってS行列から分離される必要があります。

そこで,D=26に対して余分なゼロノルム状態が発生することは,この理論が拡張されたゲージ不変性を持ち,最も興味深い可能性を含む理論であることを示唆していると思われます。

 

同様に,正確にa=1に対してゼロノルム状態の無限個の連鎖があることも,これが最も興味深いケースであることを暗示しています。

そこで,以下に続く節では,試しに開弦の基底状態をa=1に対応した平方質量が-2のタキオンと考え,第1励起レベルを質量がゼロのベクトルメソンと考えます。

 

こうした質量がゼロのゲージ粒子の存在は臨界次元における弦理論の非常に特別な性質の1つの側面を示していると言えます。

今日はここまでにします。

参考文献:M.B.Green,J.H.Schwarz,& E.Witten著「superstring theory」Cambridge University Press)

 

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2009年4月 9日 (木)

超弦理論(18)(2-7)

超弦理論(superstring theory)の続きです。

実はツナギとしてアップしようと軽く考えていたのですが,ノートにある約10年前にやった計算の間違いに気付いたので,やや手間取っていました。

 

種本の計量(metric)と私が常用しているBjorken-Drellのテキストの計量では符号が逆なので,ときどき混乱することがあるのでした。

 さて,既に説明したように,ボソン弦(Bosonic string)の振動するαmμ(とα~mμ)で作られるフォック空間は,時間成分の交換関係における負の計量のために正定値ではありません。

一方,物理的状態の空間は,m≧0 に対して(Lm-aδm0)|φ>=0 なるヴィラソロ条件(Virasoro condition)を満足する状態:|φ>で作られる上記フォック空間の部分空間に対応します。

 

(閉弦における演算子L~m,α~mについての話も,mmについてのそれとほぼ同じなので,ここでは余計な煩雑さを避けるために開弦のLmmだけについて話を進めます。)

 そして,ヴィラソロ条件は時間的(time-like)な負ノルムの振動子と1対1に対応するため,丁度正定値な部分フォック空間を残すのに十分な条件を与えます。

 これを理解するために,ヴィラソロ演算子が,Lm~ -pμαmμ+(振動子の2次の項)と表わせることに着目します。

(訳注27):記事「超弦理論(16)(2-4)」で示したように,開弦では,Lm=(-1/2)Σn=-∞αm-n,μαnμですが,α'=1/2ならα0μ=lpμ=pμより,Lm=(-1/2)Σn=-∞αm-n,μαnμ=(-1/2)(αm,μα0μ+α0,μαmμ)+(-1/2)Σn≠0,mαm-n,μαnμ=-pμαmμ+(-1/2)Σn≠0,mαm-n,μαnμとなります。

 

 (訳注27終わり)※

この近似式から,もしも振動子の2次の項がないなら,条件Lm|φ>=0 はpμαmμ|φ>=0 と同値になることがわかります。

そして,一般に粒子がタキオン(tachyon)でないなら,その運動量は時間的(p2=pμμ=M2>0),または光的(p2=M2=0)なので,pμ=(M,0)という静止系を取れば,pμαmμ|φ>=0 はαm0|φ>=0,あるいはam^0|φ>=0 を意味します。

静止系でなくとも高エネルギーなら,pμ=(p0,-)でE=p0>>||ですから,pμαmμ|φ>=0 は近似的にαm0|φ>=0,またはam^0|φ>=0 と同値です。

 

とにかく,ヴィラソロ条件は負ノルム振動子と1対1に対応します。

 そこで,静止系での物理的状態は,振動子ベクトルαm=(αm0,αm)=(αm0m1m2,..,αmD-1)のうち,(D-1)次元の空間成分ベクトルαm≡(αm1m2,..,αmD-1)だけで生成されます。

 

 これは,条件の個数をカウントすることからヴィラソロ条件(Lm-aδm0)|φ>=0 (m≧0)が,ゴーストを分離するのに十分であることを示しています。

しかし,振動子の2次の項も重要な役割を有していて,真理は,はるかに精緻で興味深いものです。

 以下では,ゴーストのないスペクトルは先に述べた定数aと時空の次元Dのある値においてのみ可能であることを示します。

 

 より綿密に調べるためには,ヴィラソロ演算子の代数を研究することが必要です。

 既に,記事「超弦理論(16)(2-5)」で,ヴィラソロ代数が古典形式ではポアソン括弧(Poisson括弧)[ , ]P.B.によって,[Lm,Ln]P.B.=-i(m-n)Lm+nなる形で与えられることを見ました。

 

 これは量子論ではポアソン括弧を交換子[ , ]に置き換えた[Lm,Ln]=(m-n)Lm+nなる表現に変わります。

 古典形式では,Lm(-1/2)Σn=-∞αm-nαn=0,[αmn]P.B.=imδm+nから,[Lm,Ln]P.B.=(1/4)Σk,lm-kαkn-lαl]P.B.=(i/2)[Σkkαm-kαk+n+Σk(m-k)αm-k+nαk]と変形しましたが,ポアソン括弧[ , ]P.B.を交換子[ , ]の(-i)倍で置き換えれば,ここまでの変形過程は量子論でもそのまま正しいと考えられます。

そして,右辺第1項をΣkkαm-kαk+n=Σk(k-n)αm-k+nαkと変数変換することも,m+n≠0 の場合なら,量子論でも全く問題ないので,m+n≠0 ならΣkkαm-kαk+n+Σk(m-k)αm-k+nαk=Σk(k-n)αm-k+nαk+Σk(m-k)αm-k+nαk=(m-n)Σkαm-k+nαk)としてもいいです。

しかし,m+n=0 に対しては右辺の2つの無限和の各々が量子レベルで正規順序による無限大の不明瞭さを伴なうことがわかります。

Σkkαm-kαk+n+Σk(m-k)αm-k+nαkの2つの無限和の項は,各々がill-defined(定義がまずい)ですから,古典論で[Lm,Ln]P.B.=-i(m-n)Lm+n,量子論で[Lm,Ln]=(m-n)Lm+nを得るために,2つの無限和のうちの1つの和において和を施す添字をシフトする操作はきわめて危険です。

しかし,こうして,m+n=0 に対して[Lm,Ln]=(m-n)Lm+nを示す過程で生じるかもしれない如何なる正規順序の曖昧さも,単にc-数を加減することに帰着するので,[Lm,Ln]=(m-n)Lm+nなる式はA(m)をmに依存するあるc-数として [Lm,Ln]=(m-n)Lm+n+A(m)δm+nなる形に修正さるべきであることが保証されます。

そこで,[Lm,Ln]=(m-n)Lm+n+A(m)δm+nを仮定します。

 

この式でm+n=0 なる関係を保存したまま,m→-mとすればA(-m)=-A(m)を得ます。また,A(0)=0であることもわかります。

 

それ故,正のmについてA(m)を決めれば,全てのmについてのA(m)が決まります。

しかしながらkkαm-kαk+n=Σk(k-n)αm-k+nαkとする仮定での右辺の2つの無限和の正規順序を直接調べることから,A(m)を求めるのは驚くほど扱いにくい作業です。

そこで,とりあえず別の簡単なアプローチでA(m)を求めます。

まず,ヤコービの恒等式:0=[Lk,[Ln,Lm]]+[Ln,[Lm,Lk]]+[Lm,[Lk,Ln]]において,k+m+n=0 とすると(n-m)A(k)+(m-k)A(n)+(k-n)A(m)=0 を得ます。

※なぜなら,0=-[Lk,(n-m)Ln+m]-[Ln,(m-k)Lm+k]-[Lm, (k-n)Lk+n]ですからk+m+n=0 とすると(n-m)A(k)+(m-k)A(n)+(k-n)A(m)=0 です。※

ここで,k=1,m=-n-1を代入すると(2n+1)A(1)-(n+2)A(n)+(n-1)A(n+1)ですからA(n+1)={(n+2)A(n)-(2n+1)A(1)}/(n-1)です。

 

この漸化式はA(1)とA(2)を決めれば,全てのA(n)が決まることを示しています。そこで,A(n)の一般形は2つの未知係数によって決まるはずです。

実際,上の漸化式の一般解はc1,c3を未知定数としてA(m)=c33+c1mで与えられることがわかります。

(訳注27):A(n)=anと書けば,漸化式は(n-1)an+1=(n+2)an-(2n+1)a1です。

 まず,A(0)=0よりa0=0です。そこでan≡nbnとして,これ代入すると,(n-1)(n+1)bn+1=n(n+2)bn-(2n+1)a1です。

 

 そこで,さらにun≡bn/{(n-1)(n+1)}とおくとun-un=-(2n+1)a1/{(n-1)n(n+1)(n+2)}=-a1[1/{(n-1)n(n+1)}+1/{n(n+1)(n+2)}]です。

 

 右辺はさらに(-a1/2)[1/{(n-1)n}-[1/{n(n+1)}]+(-a1/2)[1/{n(n+1)}-[1/{(n+1)(n+2)}]となります。

両辺の階差数列を加えるとun-u2=(-a1/2)[1/2-1/{(n-1)n}]+(-a1/2)[1/6-1/{n(n+1)}]を得ます。

n=bn/{(n-1)(n+1)}を代入すると,bn/{(n-1)(n+1)}-b2/3=-a1/3+(a1/2)[1/{(n-1)n}+1/{n(n+1)}],結局bn=(b2-a1)(n2-1)/3+a1です。

n=nbnを代入し返すと,an=(2a2-a1)(n3-n)/3+na1=c33+c1n,c3=(2a2-a1)/3,c1=(2a2-a1)/3+a1と書けることがわかりました。a1,a2が任意なのでc1,c3も任意です。

 さらに,このA(m)=c33+c1mを(n-m)A(k)+(m-k)A(n)+(k-n)A(m) に代入すれば,(n-m)A(k)+(m-k)A(n)+(k-n)A(m)=-c3(n-m)(m-k)(k-n)(n+m+k)を得るので,(n+m+k)=0 なら(n-m)A(k)+(m-k)A(n)+(k-n)A(m)=0 は確かに満足されています。

 (訳注27終わり)※

 A(m)=c33+c1mの定数c1はL0の定義を定数だけシフトさせることによって変化し得る定数です。これはその他にはヴィラソロ代数を乱さない操作です。

0を定数だけシフトさせることは,また(L0-a)|φ>=0 の定数aをもシフトさせます。それ故,それはaとc1の間の唯一の意味を持つ関係です。

さて,LmとL-mの交換子を非常に注意深く評価することで,正しくアノマリー(異常項)の寄与を得ることができます。特に,c1とc3を決める最も簡単で最も安全な方法は適切な状態での[Lm,L-m]の期待値を計算することです。

これに供する最も便利な状態の選択は,pμ=0 の振動子基底状態|0;0>です。運動量がゼロの状態|0;μ>=|0;0>の選択は,特にα0μ|0;pμ>=α0μ)|0;0>=0 を意味します。

特に,m=1に対しては,<0;0|[L1,L-1]|0;0>=0 を見出します。

 

なぜなら,L1やL-1の全ての項は0-運動量の基底状態を消滅させるからです。

(訳注28):何故なら,[Lm,Ln]=(1/4)Σk,lm-kαkn-lαl]から,<0;0|[L1,L-1]|0;0>=(1/4)Σk,l<0;0|[α1-kαk-1-lαl]|0;0>ですが,α-1-lαl=αlα-1-lです。

 

 l≧0 ならαl|0;0>=0 によってα-1-lαl|0;0>=0,l<0,すなわち-1-l≧0 なら,α-1-l|0;0>=0 によりαlα-1-l|0;0>=0 です。同様に,k≧0 ならαk|0;0>=0,k<0 なら1-k>1>0 より,α1-k|0;0>=0,ですから-1-l≧0 なら<0;0|[α1-kαk-1-lαl]|0;0>=0です。

 

 (訳注28終わり)※

m=2からは,<0;0|[L2,L-2]|0;0>=<0;0|L2-2|0;0>=1/4Σk,l<0;0|[α2-kαk-2-lαl]|0;0>=1/4<0;0|α1,μα-1μα1,να-1ν|0;0>=-(1/2)ημν<0;0|α1μα-1ν|0;0>=(1/2)ημνημν=(1/2)Dを見出します。

     (訳注29):[α2-kαk-2-lαl]=[α2-k,μαkμ-2-l,ναlν]に

恒等式:[AB,CD]=A[B,C]D+AC[B,D]+[A,C]

B+C[A,D]Bを適用します。

mμnν]=-mδm+nημνを用いると,第1,4項では交換子がゼロでないのは,k-l=2のときのみで[B,C]=[αkμ-2-l,ν]=-kδμν,[A,D]=[α2-k,μlν]=-(2-k)δμνです。

 

また,第2,3項ではk+l=0 のときのみで,[B,D]=[αkμlν]=-kημν,[A,C]=[α2-k,μ-2-lν]=-(2-k)ημνです。

第1項:A[B,C]Dでは,k-l=2の項を状態|0;0>で挟むと<0;0|A[B,C]D|0;0>=-k<0;0|α2-k,μαk-2μ|0;0>ですが,これはk≧2ではゼロ,k<2では積を交換してゼロにすると,交換子項だけ残って<0;0|A[B,C]D|0;0>=-k<0;0|αk-2μα2-k,μ+[α2-k,μαk-2μ]|0;0>=k(2-k)となります。

一方,第4項C[A,D]Bでは,k-l=2の項を状態|0;0>で挟むと<0;0|C[A,D]B|0;0>=-(2-k)<0;0|α-k,μαkμ|0;0>ですが,これはk≧0ではゼロ,k<0では-k(2-k)の寄与になります。

よって,k≧2に対しては第1,4項の寄与は共にゼロで,k<0では両項の寄与であるk(2-k)と-k(2-k)が相殺されてゼロとなりますから,結局これらからはk=1,l=-1の第1項-<0;0|α1μα-1,μ|0;0>だけがゼロでない寄与を与えます。

第2,3項は,k+l=0の項を状態|0;0>で挟むと<0;0|AC[B,D]|0;0>=-k<0;0|αkμαk-2,μ|0;0>,<0;0|[A,C]DB|0;0>=-(2-k)<0;0|αk-2,μαkμ|0;0>です。そこで,k-2+k=0のときのk=1,l=-1の第2項-<0;0|α1μα-1,μ|0;0>以外はゼロです。

結局k,l<0;0|[α2-kαk-2-lαl]|0;0>=-2<0;0|α1μα-1,μ|0;0>=2ημμ=2δμμ=2Dを得ます。(∵ <0|α1μα-1,μ|0>=<0|a1^μ1^μ|0>=-ημμ)

 

(訳注29終わり)※

得られた2つの値:A(1)=<0;0|[L1,L-1]|0;0>=0,A(2)=<0;0|[L2,L-2]|0;0>=D/2は一般項:A(m)=c33+c1mの係数c1,c3を決めるには十分です。

 

実際に計算することから,c3=-c1=D/12を得ます。つまり,A(m)=(D/12)(m3-m)です。

したがって,アノマリーを含むヴィラソロ演算子の代数は[Lm,Ln]=(m-n)Lm+n+(D/12)(m3-m)δm+nとなることがわかります。

特に,こうしたヴィラソロ代数とアノマリーの構造はL1,L0,L-1だけを生成子とする閉部分代数をリー代数とする線形リー群:SU(1,1)またはSL(2,R)と同型であることに注意しておきます。

途中ですが今日はここまでにします。 

参考文献:M.B.Green,J.H.Schwarz,& E.Witten著「superstring theory」(Cambridge University Press)

 

PS:畠山鈴香さんが「無期は絶対イヤ」と控訴するらしいのは「死刑の方がまだマシ」という意味も含まれていますよね?

 

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2009年3月 9日 (月)

束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(6)

 ベーテ・サルピーター方程式(B-S.eq.)の続きです。

前回は急用があったせいもあって,かなり中途半端なところで終わったので,もう1度ファインマン振幅(Feynman amplitude)を定義するところから再開します。

ファインマン振幅φ(x,P)≡<0|T[φabb(-ηa)]|P>と,その共役φ^(x,P)≡<0|T~[φabb(-ηa)]|P>*=<P|T[φabb(-ηa)]|0>を考えます。

 

ここで,|P>は任意の総4元運動量固有状態を記述します。また,T~は反時間順序積です。

これを,2009年1/29の記事「束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(3)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/3-b2b4.html において束縛状態|B,r>に対するB-S.振幅(B-S. amplitude)とその共役を定義したものと比較します。

そこでは,B-S.振幅とその共役をφBr(xa,xb;PB)≡<0|T[φa(xab(xb)]|B,r>とφBr^(xa,xb;PB)≡<B,r|T[φa(xab(xb)]|0>=<0|T~[φa(xab(xb)]|B,r>*によって定義しました。

 

その後,理論の平行移動不変性により,φBr(xa,xb;PB)≡(2π)-3/2exp(-iPBBr(x,PB),φBr^(xa,xb;PB)≡(2π)-3/2exp(iPBBr^(x,PB)(ただし,X≡ηaa+ηbb,x=xa-xb)と表現してφBr(x,PB),φBr^(x,PB)を与えました。

これを見ると,もしも上のファインマン振幅:φ(x,P),φ^(x,P)の定義で|P>を|B,r>で置き換えてP=PBとすれば,これらはそれぞれ定数因子を除いて束縛状態のB-S.振幅:φBr(x,PB),φBr^(x,PB)に一致することがわかります。

そして,f(x,P)≡<0|φabb(-ηa)|P>,g(x,P)≡<0|φb(-ηaab)|P>とおけば,ファインマン振幅はφ(x,P)=θ(x0)f(x,P)+θ(-x0)g(x,P),φ^(x,P) =θ(x0)g*(x,P)+θ(-x0)f*(x,P)と表現できます。

ここで,フーリエ変換による運動量表示でのファインマン振幅の定義:φ(x,P)≡(2π)-4∫d4exp(-ipx)φ(p,P),φ^(x,P)≡(2π)-4∫d4exp(ipx)φ^(p,P),および公式:θ(x0)=-(2πi)-1∫d4exp(-ikx)δ3()(k0iε)-1 etc.を用いて運動量空間における表式に変換します。

すると,φ(p,P)={-1/(2πi)}∫dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}+{1/(2πi)}∫dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)},φ^(p,P)={-1/(2πi)}∫dq0{*(q0,,P)/(p0-q0iε)}+{1/(2πi)}∫dq0{*(q0,,P)/(p0-q0iε)}となります。

これはφ(p,P)とφ^(p,P)が共役であるという意味の詳細を示しています。すなわち,これらのφφ^の表式においてdq0による被積分関数の分子は互いに複素共役の関係にありますが,特異性を与える分母は両者で一致しています。

したがって,φ^の吸収部分はφのそれの複素共役に等しいことがわかります。φ^の分散部分はφ^の吸収部分に関連付けられますが,正確に同じようにφの分散部分はφの吸収部分と関連付けられています。

次にやるべきことは,(p,P)と(p,P)の主要な性質を見出すことです。そのためにf(x,P)=<0|φabb(-ηa)|P>,g(x,P)=<0|φb(-ηaab)|P>の右辺に状態|N>の完全系を挿入します。

すなわち,f(x,P)についてはf(x,P)=ΣN0|φab)|N><N|φb(-ηa)|P>=∫d3N(2pN0)-1p=-ηaP+pN0|φa(0)|N><N|φb(0)|P>exp(-ipx)]となります。ここにpNは状態|N>の4元運動量を記述しています。

ところで,粒子aは,単独では如何なる状態へも自発的に崩壊することは不可能です。しかし,逆に状態Nの静止エネルギーが1粒子a,つまり状態φa(0)|0>のそれより小さくない場合には,その遷移振幅<0|φa(0)|N>は必ずしもゼロとは限りません。

それ故,pN2≧ma2,かつpN00 でないなら<0|φa(0)|N>=0,つまり,(ηaP+p)2≧ma2,かつηa0+p00 でないなら(p,P)=0 です。

 

同様に(p,P)についても,(ηbP-p)2≧mb2,かつηb0-p00 でないなら(p,P)=0 です。

つまりmin[ma2a)2]1/2-ηa0max≡ηb0[mb2b)2]1/2とおいたとき,0≧ωminでないなら(q0,,P)=0 ,q0≦ωmaxでないなら(q0,,P)=0 となります。

 

そこで,もしもωmin0 かωmax0 のどちらかが起きると,ウィック回転された後でも置き換えられた極が残ります。

この望ましくない状況を避けるためには,|P0|< min(ma/|ηa|,mb/|ηb|)であれば十分です。

(訳注):つまり,f(x,P)=(2π)-4∫d4exp(-ipx)(p,P)とθ(τ)={-1/(2πi)}∫-∞dkexp(-ikτ)(k+iε)-1から,(2π)-4∫d4[exp(ipx)θ(x0)f(x,P)]={-1/(2πi)}∫-∞dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}なる表式が得られます。

一方,f(x,P)=(2π)-4∫d4exp(-ipx)(p,P)=∫d3N(2pN0)-1p=-ηaP+pN0|φa(0)|N><N|φb(0)|P>exp(-ipx)]と書けます。

  

それ故,(2π)-4∫d4[exp(ipx)θ(x0)f(x,P)]={-1/(2πi)}∫dq0[∫d3N(2pN0)-1p=-ηaP+pN (<0|φa(0)|N><N|φb(0)|P>|p0=q0)}/(p0-q0iε)]が成立することがわかります。

そこで,結局(q0,,P)=∫d3N(2pN0)-1p=-ηaP+pN (<0|φa(0)|N><N|φb(0)|P>|p0=q0)},かつθ(x0)f(x,P)=(2π)-4∫d4exp(-ipx)[{-1/(2πi)}∫-∞dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}]が得られます。

そして,q0≧ωminでないなら(q0,,P)=0 ですから,∫-∞dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}の積分区間は(-∞,∞)から[ωmin,∞)に変更できます。つまり,この積分はωmindq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}と書けます。

 

したがって,f(x,P)=(2π)-4∫d4exp(-ipx)(p,P)の右辺の4p積分のうちdp0積分の極は複素平面上の実軸よりもわずかに下のp0=q0iεであることがわかります。

同様にして,(q0,,P)=∫d3N(2pN0)-1p=-ηaP+pN (<0|φb(0)|N><N|φa(0)|P>|p0=q0)},かつθ(-x0)g(x,P)=(2π)-4∫d4exp(ipx)[{-1/(2πi)}∫-∞dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}]です。

そしてq0≦ωmaxでないなら(q0,,P)=0 ですから∫-∞dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}の積分区間は(-∞,∞)から(-∞,ωmax]に変更できます。つまり,この積分は-∞ωmaxdq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}と書けます。

 

そこで,g(x,P)=(2π)-4∫d4exp(-ipx)(p,P)の4p積分のうちdp0積分の極は複素平面上の実軸よりもわずかに上のp0=q0iεであることがわかります。

さて,∫-∞dp0の積分路を次のような複素平面上の閉路Cに変更することを考えます。

 

まず,(-∞,∞)の実軸上を真っ直ぐ右に進み,右端の点∞から半径がR=∞ の原点が中心の円に連結して,反時計回りに虚軸上の上端点i∞まで四分円を作り,その上端点i∞から虚軸上の下端点-i∞まで虚軸に沿って真っ直ぐ下方に進みます。

 

最後に下端点-i∞から,やはり半径がR=∞ の円に連結させて,時計回りに四分円を描き,実軸の左端の点-∞に戻る閉路をCとします。

積分路を(-∞,∞)からCに変えてp0による積分-∞dp0を∫Cdp0変更したとき,Cで囲まれた領域内でp0=q0iεが極になるのはq0iεが(-∞,0)の側の四分円の内部にあるときです。

 

それ故,もしもωmin0なら,[ωmin,∞)∩(-∞,0)=(ωmin,0)となるので,左下四分円内に極p0=q0iε,q0min,0)が存在します。

一方,積分∫Cdp0の積分路Cで囲まれた領域内でp0=q0iεが極になるのはq0iεが(0,)の側の四分円内にあるときです。

 

そこで,もしもωmax0なら,(-∞,ωmax]∩(0,)=(0,ωmax)となるので,右上四分円内に極p0=q0iε,q0(0,ωmax)が存在します。

したがって,ωmin0 かωmax0 のどちらか一方でも成立するならウィック回転を意味する積分路のCへの変更後でも極が残るのです。

ところで,ヘヴィサイド関数のθ(τ)={-1/(2πi)}∫-∞dkexp(-ikτ)(k+iε)-1なる表現を考えてみます。

 

右辺のk積分は,τ>0 のときには積分路を実軸(-∞,∞)に複素k平面の下半平面を負の向きにまわる半径R=∞の半円を加えた閉路に取れば,その内部に極k=-iεがあるためその留数から右辺の値としてexp(-ετ)が得られます。

 

そして,これはε→+0 のとき1になります。

一方,τ<0 のときには,積分路を実軸(-∞,∞)に上半平面を正の向きにまわる半径R=∞ の半円を加えた閉路に取れば,内部にはkの極がないので右辺の値はゼロになります。

 そして,τ>0 の場合には複素k平面の下半平面の半円の上ではR=∞ によりk=-i∞になるので,exp(-ikτ)なる因子によって積分は指数的にゼロになります。

 

 一方,τ<0 の場合には複素k平面の上半平面でR=∞ によりk=+i∞となってexp(-ikτ)が指数的にゼロになるので,いずれの場合も実軸に付け加えた半径R=∞ の半円の積分への寄与はゼロです。

 これをもって,ヘヴィサイド関数をθ(τ)={-1/(2πi)}∫-∞dkexp(-ikτ)(k+iε)-1と表現することが正当化されるわけです。

φ(x,P)≡(2π)-4∫d4exp(-ipx)φ(p,P)の第1項θ(x0)f(x,P)=(2π)-4∫d4exp(-ipx)[{-1/(2πi)}∫-∞dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}]の右辺の∫d4exp(-ipx)/(p0-q0iε)のうちで,∫-∞dp0exp(-ip00)/(p0-q0iε)はヘヴィサイド因子θ(x0)exp(-iq00)を表わしています。

 

そして,ヘヴィサイド関数の積分表現では,∫-∞dp0の積分路(-∞,∞)に,半径R=∞ の下半円を加えても積分には寄与しないことがわかっているので,積分路(-∞,∞)を積分路Cに変えた積分∫Cdp0のCにおける左下の半径R=∞ の四分円の寄与もゼロです。(右上四分円の寄与はゼロではありません。)

また,φ(x,P)の第2項θ(-x0)g(x,P)=(2π)-4∫d4exp(-ipx)[{-1/(2πi)}∫-∞dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}]の右辺の∫d4exp(-ipx)のうち,∫-∞dp0exp(-ip00)/(p0-q0iε)の部分からは∫Cdp0において,積分路Cのうち右上の半径R=∞ の四分円の寄与がゼロであることがわかります。(左下四分円の寄与はゼロではありません。)

結局,φ(x,P)=θ(x0)f(x,P)+θ(-x0)g(x,P)における右辺のフーリエ表示での∫-∞dp0Wick回転を意味する積分∫Cdp0に変えた経路Cのうちでθ(x0)f(x,P)の左下の四分円路上の寄与とθ(-x0)g(x,P)の右四分円路上の寄与はゼロになります。(訳注終わり)※

さて,もしも束縛状態の問題を考える場合,つまりφ(p,P)をB-S.振幅φBr(p,P)と同一視する場合なら,束縛状態の安定条件s1/2<ma+mb (a+bの結合系の質量がa,bの質量の和より小さい)はωmin≧ωmaxを意味します。

そこで,この場合には"ファインマン振幅=B-S.振幅"の運動量空間における表式φ(p,P)={-1/(2πi)}∫ωmindq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}+{1/(2πi)}-∞ωmaxdq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)},およびφ^(p,P)={-1/(2πi)}∫ωmindq0{*(q0,,P)/(p0-q0iε)}+{1/(2πi)}-∞ωmaxdq0{*(q0,,P)/(p0-q0iε)}には2つの切断の間にギャップが存在します。

 

(訳注):つまり,束縛状態では必然的にωmin≧ωmaxとなるので複素p0平面内の実軸上の2つの切断(-∞,ωmax]と[ωmin,∞)の間には,ギャップ(ωmax,ωmin)が存在するわけです。※

束縛状態の安定条件s1/2<ma+mbを満たす任意のsに対しては,=0 の慣性中心系でパラメータをηa≡ma/(ma+mb),ηb≡mb/(ma+mb)に選べば,ωmin0,かつωmax0 となりますから,ファインマン振幅に極が残らないようにできます。

 

この場合は,条件s1/2<ma+mbと条件|P0|<min(ma/|ηa|,mb/|ηb|)が,同値な条件になっています。

しかし,散乱問題の場合には,s1/2>ma+mb,つまりωmax>ωminなので,切断の間のギャップはなく,それ故,既に考察したように必然的に1つ以上の特異点に遭遇します。

さて,以下,具体的にウイック回転を論じましょう。

まず,"はしご近似(ladder近似)"で束縛状態を考察します。

 

簡単のために,関係する全ての粒子はスカラーであり,Pμは時間的(time-like;P2=Pμμ0)であると仮定します。

 

このとき,静止系0 では{ma22-(ηa0+p0)2}{mb22-(ηb0-p0)2}φBr(p,P)={λB(s)/(iπ2)}∫d4'[φBr(p',P)/{μ2(p-p')2iε}]が成立します。

 

ここでμは交換する中間子の質量です。またηa≡ma/(ma+mb),ηb≡mb/(ma+mb)としています。

 

(訳注):これは前と同じく1/29の記事「束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(3)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/3-b2b4.html明示した,

 

束縛状態のB-S.eqである,φBrφBrの運動量表示,つまり[Fa'(ηaP+p)Fb'(ηbP-p)]-1φBr(p,P)=(2π)-4∫d4'(p,p';P)φBr(p',P)において,伝播関数Fa',Fb'を自由場の伝播関数Fa,Fbで置き換え積分核(p,p';P)に"はしご近似"を適用したものです。

 

すなわち,左辺のF'(k)を自由場のF(k,m)=-i(k2-m2+iε)-1にして,それぞれk=ηaP+p,m=ma,およびk=ηbP-p,m=mbを代入した後に静止系の条件として=0 とします。

 

一方,右辺の(2π)-4∫d4'(p,p';P)は,質量がμの中間子でa,bとの結合定数がga,g(そしてλB(s)≡ga/(4π)2)であるものを1個だけ交換するはしごグラフの寄与:B(s)/(iπ2)}∫d4'[(p-p')2-μ2iε]-1で近似します。こうすれば先に書いた式が得られるわけです。

φBr(p,P)の解析性は,φ(p,P)={-1/(2πi)}∫dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}+{1/(2πi)}∫dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}で,q0≧ωminでないなら(q0,,P)=0 ,q0≦ωmaxでないなら(q0,,P)=0 こと,および束縛状態ではωmin0,かつωmax0 であることによって与えられます。

そこで,束縛状態では先に訳注の中で与えた∫Cdp0の閉路Cの内部にp0の極を全く持たないので∫Cdp'0 [φBr(p'0,',P)/{μ2(')2(p0-p'0)2iε}]=0 が成立します。

,の漸近的挙動から右辺の∫Cdp'0積分への2つの四分円経路からの寄与はゼロとなるので,∫-∞dp'0[φBr(p'0,',P)/{μ2(')2(p0-p'0)2iε}]=∫-i∞i∞dp'0[φBr(p'0,',P)/{μ2(')2(p0-p'0)2iε}]+(極の寄与)となるはずですが,束縛状態ではCの内部にp0の極は全くないので,(極の寄与)はゼロです。

そこで,p'0ip'4,またはp'4≡-ip'0と置けば-i∞i∞dp'0i∫-∞dp'4であり,さらにp0ip4,またはp4≡-ip0と置けば-(p0-p'0)2(p4-p'4)2となります。

 

故に,∫-∞dp'0[φBr(p'0,',P)/{μ2(')2(p0-p'0)2iε}]=i∫-∞dp'4[φBr(ip'4,',P)/{μ2(')2(p4-p'4)2iε}]を得ます。

ミンコフスキー空間(Minkowski space)の4元ベクトルpμ(p0,)をユークリッド空間の4元ベクトルp~μ(,p4)で表現すれば,

 

"はしご近似":{ma22-(ηa0+p0)2}{mb22-(ηb0-p0)2}φBr(p,P)={λB(s)/(iπ2)}∫d4p'[φBr(p',P)/{μ2(p-p')2iε}]は,{ma22+(4a0)2}{mb22+(4b0)2}φ~Br(p~,P)={λB(s)/π2}∫d4~'[φ~Br(p~',P)/{μ2(p~-p~')2iε}]とユークリッド化されます。

途中ですが,今日はここで終わります。

参考文献:Noboru Nakanishi "A General survey of the Theory of the Bethe-Salpeter Equation" Progress of Theoretical Physics, supplement,No.43(1969)

 

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2009年3月 4日 (水)

束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(5)

前回から大分間が空きましたが,ベーテ・サルピーター方程式(B-S.eq.)の続きです。

ローレンツ群はWignerによって導入された小群(little group)と呼ばれるの部分群:()≡{Λ∈|ΛP=P}において,P=(Pμ)を設定することで4種類に分類されます。

 

ここで前のようにs≡P2=Pμμとします。

それら4種類の小群の族は,[1]s>0 の場合 ~ O(3):Pμ(√s,0) [2]s<0 の場合 ~ O(2,1):Pμ(0,0,0,√-s)[3]Pμ0 の場合 ~ O(3,1)[4]s=0 だがPμ≡0 ではない場合 ~ E(2):Pμ(P0,0,0,P0)(P00) です。

そして,B-S振幅(B.S amplitude):φBr(xa,xb;PB)=<0|T[φa(xab(xb)]|B,r>,(r=1,2,..,n)のフーリエ(Fourier)変換:{φBr(p,PB)}r=1nはローレンツ群の1つの有限次元表現となっている(PB)の表現空間の基底を形成します。

 

特に,それらは体調和関数で表現されます。

体調和関数は(∂/∂p)2l(p)=0,およびPμ(∂/∂pμ)Xl(p)=0 を同時に満足するp0,p1,p2,p3のl次の同次多項式l(p)で定義されます。

前記事では,小群の表現空間を構成する体調和関数が特殊座標系ではなく任意のローレンツ系ではどうなるかを調べる過程に入ったところで終わりました。

そこでは,まず,[1]P2=s>0 の場合:4元運動量がP(0)μ(√s,0)となる特殊座標系と同じsを持つ任意座標系を考えました。

 

このときには,あるローレンツ変換Λ∈が存在して,P=ΛP(0)と書けます。そして,このΛとpに対してq≡Λ-1pを定義します。

このとき,小群()≡{Λ∈|ΛP=P}の体調和関数は,lm(p,P)=lm()で与えられます。

 

lm(p,P)=lm()=lm(q,P(0))で,lm(q,P(0))は((0))の体調和関数ですから,q0,q1,q2,q3のl次の同次多項式です。

 

そして,qμ(Λ-1)μννなのでq0,q1,q2,q3のl次の同次多項式であることは,それがp0,p1,p2,p3のl次の同次多項式であることと同値です。

P=ΛP(0),p=Λqより(∂/∂p)2lm(p,P)=(∂/∂q)2lm(q,P(0))=0,P(∂/∂p)lm(p,P)=(0)(∂/∂q)lm(q,P(0))=0 が成立することも自明です。

 

故にlm(p,P)=lm()を()の体調和関数と同定できます。

次に,あるsの関数を掛けることで体調和関数lm(p,P)をs平面で解析接続します。これによって,[1],[2],[4]のケースを統一した方法で論じることができます。

例えば00=Λ33=α11=Λ221,Λ03=Λ30=βで,それ以外のΛμνは全てゼロ(ただし,α≡(a+a-1)/(2√s),β≡(a-a-1)/(2√s)(a≠0))なるΛを考えます。

 

すると,P(0)μ(√s,0),P=ΛP(0) μν(0)ν)より,Pμ=((a+a-1)/2,0,0,(a-a-1)/2)であり,q=Λ-1(μ(Λ-1)μνν)より,q1=p1,q2=p2,q3=αp3-βp0です。

lm(p,P)=lm()において,右辺のに上記の1=p1,q2=p2,q3=αp3-βp0を代入し,lm()=[(2l+1)(l-|m|)!/{(4π)(l+|m|)!}]1/2(2|m|-1)!!(q1±iq2)|m|||l-ml-|m||m|+1/2(q3/||) (m=-l,-l+1,..,l)なる陽な表現を用いるとim(p,P)の陽な形が得られます。

sがゼロの極限での発散を避けるため,lm(p,P)にs(l-|m|)/2を掛けてs→ 0 の極限を取ると,lims→0[s(l-|m|)/2lm(p,P)]=(定数)×(p1±ip2)|m|(p3-p0)l-|m|となり,確かに既に述べた,[4]s=0での標準の体調和関数χlm(p)=alm(p1±ip2)|m|(p3-p0)l-|m|に一致します。

 最後にB-Seq.への応用上で重要なlm(p,P)の自己再生性と直交性を証明します。

 まず,球関数Ylm(θ,φ)に対する等式:∫0πsinθ'dθ'∫0dφ'f(cosω)Ylm(θ',φ')=hYlm(θ,φ)に着目します。

 

 ここでf(z)は任意の連続関数,hはある定数です。また,cosωはcosω≡cosθcosθ'+sinθsinθ'cos(φ-φ')で与えられます。

式が成立することは,f(cosω)をルジャンドル多項式Pl(cosω)の級数に展開し,その加法定理:Pl(cosω)={4π/(2l+1)}Σm=-lllm(θ,φ)Ylm(θ',φ'),およびYlm(θ,φ)の積分の直交性を用いて証明することができます。

pp'=|||'|cosωですから,もしもf(,')が不変量:2,'2,pp'のみの任意の連続関数であり,これらスカラー量についての十分急減少な関数なら,上の球関数の等式∫0πsinθ'dθ'∫0dφ'f(cosω)Ylm(θ',φ')=hYlm(θ,φ)は,体調和関数に対する等式∫d3'f(,')lm(')=h()lm()になります。

(p,p',(0))を,p,p',(0)から形成される不変量を引数とする十分急減少な任意のファインマン分布関数とすれば,p(0)=√sp0,p'(0)=√sp'0なので,この式は∫d4'F(p,p',(0))lm(')=H(p,(0))lm()を意味します。

 

ここで,H(p,(0))はp2とp(0)とsだけに依存します。

∫d4'F(p,p',(0))lm(')=H(p,(0))lm()で,単に変数p,'をq,q'に変えると,∫d4'F(q,q',(0))lm(')=H(q,(0))lm()となります。

そして,q=Λ-1,およびlm()=lm(p,P)を代入すると,∫d4'F(Λ-1,Λ-1',(0))lm(p',)=H(Λ-1,(0))lm(p,P)となりますが,これはF,Hのローレンツ不変性によって∫d4p'F(p,p',)lm(p',)=H(p,)lm(p,P)に帰着します。

 

こうして,lm(p,P)の自己再生性が示されました。

 

これをs平面で解析接続すれば,これが[1],[2],[4]のケースのどのケースでも成立することがわかります。

同じテクニックを用いてim(p,P)の直交性も証明できます。

 

直交性は∫d4(p,)lm(p,)l'm'*(p,)=H(s)δll'δmm'です。ここでもF(p,)はpとPの十分に急減少する任意の不変分布関数です。

また,[3]Pμ0 の場合のローレンツの体調和関数Llm(p)の自己再生性と直交性も4次元球面調和関数の性質から従うとわかります。

ヘリシティ定式化でスピンを持つ粒子を扱うためには,lm(θ,φ)の代わりに,一般化された球面調和関数を考える必要があります。

 

対応するim(p,P)の一般化も重要ですが,それは現時点ではまだなされていません。

§5.ウィック回転(Wick rotation)

-S.eq.の核は,ファインマン伝播関数の特異点を含んでいるので,標準的な数学の定理,公式を直接的にB-S.eq.に適用することはほとんどできません。

1954にWickはこうした困難を克服する手法を発見しました。

 

彼は複合粒子や束縛状態の安定条件の下で,相対エネルギー変数の外周積分路を複素平面上の虚軸に持ってくることで,新しい核をユークリッド計量の核にすることができることを示しました。

この手続きはウィック回転(Wick rotation)と呼ばれていますが,あいにく回転という名称のためにしばしば誤解を受けています。

1955に,KemmerとSalamはウィック回転を弾性領域の散乱のB-S.eq.に拡張しました。またTickpoulos(1964)は,質量殻上の逐次近似解を考えることから,それがユークリッド的に変換されることを示しました。

 

ウィック回転は,最近になって散乱のB-S.eq.を数値的に解くための手法として再認識されています。

SchwartzとZemach(1966)は位置空間で論じました。PagnamentaとTaylor(1966),およびSaenger(1967)はウィック回転の後で,どのような特異性が残るかを調べました。

我々は,ファインマン振幅:φ(x,P)≡<0|T[φabb(-ηa)]|P>と,その共役φ^(x,P)≡<0|T~[φabb(-ηa)]|P>*=<P|T[φabb(-ηa)]|0>を考えます。

 

ここで,|P>は任意の総4元運動量固有状態を記述します。またT~は反時間順序積です。

これを,2009年1/29の記事「束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(3)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/3-b2b4.html において束縛状態|B,r>に対するB-S.振幅とその共役を定義したものと比較します。

 

そこでは,B-S.振幅と共役をφBr(xa,xb;PB)≡<0|T[φa(xab(xb)]|B,r>とφBr^(xa,xb;PB)≡<B,r|T[φa(xab(xb)]|0>=<0|T~[φa(xab(xb)]|B,r>*で定義しました。

 

そして,理論の平行移動不変性によってφBr(xa,xb;PB)≡(2π)-3/2exp(-iPBBr(x,PB),φBr^(xa,xb;PB)≡(2π)-3/2exp(iPBBr^(x,PB) (X≡ηaa+ηbb,x=xa-xb)と表現して,φBr(x,PB),φBr^(x,PB)を与えました

 

れを見ると,もしも上のファインマン振幅φ(x,P),φ^(x,P)の定義で|P>を|B,r>で置き換えてP=PBとすれば,これらはそれぞれ定数因子を除いて束縛状態のB-S.振幅φBr(x,PB),φBr^(x,PB)に一致することがわかります。

(訳注):このファインマン振幅については,2009年1/26の記事「束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(2)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/2-a6fd.html において,

 

"ファインマン(p,P)というのは一体,何を意味するのか不明ですが,グリーン関数(p,q,P)とは異なり,入射粒子の運動量遷移qを含まないので,位置表示でのF(xa,xb)がF(xa,xb)=∫dyadyb(xa,xb;ya,yb)のようなものではないかと推測されます。"

 

という趣旨のことを書きましたが,ここまできてやっと明確な定義がわかりました。※

さて,f(x,P)≡<0|φabb(-ηa)|P>,g(x,P)≡<0|φb(-ηaab)|P>とおけば,ファインマンはφ(x,P)=θ(x0)f(x,P)+θ(-x0)g(x,P),φ^(x,P)=θ(x0)g*(x,P)+θ(-x0)f*(x,P)と表現できます。

フーリエ変換による運動量表示でのファインマン振幅の定義φ(x,P)≡(2π)-4∫d4exp(-ipx)φ(p,P),φ^(x,P)≡(2π)-4∫d4exp(ipx)φ^(p,P),および公式θ(x0)=-(2πi)-1∫d4kexp(-ikx)δ3()(k0iε)-1 etc.を用いてファインマン振幅の表式を運動量空間における式に変換します。

 

すると,φ(p,P)={-1/(2πi)}∫dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)}+{1/(2πi)}∫dq0{(q0,,P)/(p0-q0iε)},φ^(p,P)={-1/(2πi)}∫dq0{*(q0,,P)/(p0-q0iε)}+{1/(2πi)}∫dq0{*(q0,,P)/(p0-q0iε)}となります。

これは,φ(p,P)とφ^(p,P)が共役であるという意味の詳細を示しています。

 

これらのφφ^の表式において,dq0による被積分関数の分子は互いに複素共役の関係にありますが,特異性を与える分母は両者で一致しています。

 

すなわち,φ^の吸収部分はφのそれの複素共役に等しいことがわかります。φ^の分散部分はφ^の吸収部分に関連付けられますが,正確に同じ道筋でφの分散部分はφの吸収部分と関連付けられます。

次にやるべきことは,(p,P)と(p,P)の主要な性質を見出すことです。そのためにf(x,P)=<0|φabb(-ηa)|P>,g(x,P)=<0|φb(-ηaab)|P>の右辺に状態|N>の完全系を挿入します。

f(x,P)についてはf(x,P)=ΣN0|φab)|N><N|φb(-ηa)|P>=∫d3N(2pN0)-1p=-ηaP+pN0|φa(0)|N><N|φb(0)|P>exp(-ipx)]となります。ここにpNは状態|N>の4元運動量を記述します。

 

ところで,1粒子aは,単独では如何なる状態へも自発的に崩壊することは不可能です。

 

※(訳注)例えば,n→p+e+νのようなβ-崩壊であっても,実際には自発的崩壊ではなく"弱い相互作用"という相互作用の摂動を受けた結果の誘導崩壊と考えられるわけです。厳密な意味では,自由粒子が自然に崩壊したのではありません。

 

たとえ,中性子nのように弱い相互作用の意味で安定な粒子でなく不安定な粒子でも,そうだと思います。

 

もっと言うなら,安定な粒子nであっても実はクォークやグルオンなどの構造を持つ複合粒子であって,1粒子ではないのでnよりも小さい質量のpに崩壊するのだともいえます。

 

かし,逆に状態|N>の静止エネルギーが1粒子a,つまり状態φa(0)|0>のそれよりも小さくない場合には,その遷移振幅<0|φa(0)|N>は一般にゼロとは限りません。※

 

それ故,pN2≧ma2,かつpN00 でないなら,<0|φa(0)|N>=0です。つまり,(ηaP+p)2≧ma2,かつηa0+p00 でないなら(p,P)=0 です。

 

同様に(p,P)について(ηbP-p)2≧mb2,かつηb0-p00 でないなら(p,P)=0 です。

つまり,q0≧ωminでないなら,(q0,,P)=0 であり,q0≦ωmaxでないなら(q0,,P)=0 です。

 

ただし,ωmin[ma2a)