電磁気学

2009年11月 7日 (土)

光(電磁波)の散乱(4)

 さて,途中になっている電磁波の散乱振幅の計算の続きです。

前回はr=aで磁場の垂直成分Brがゼロであるという境界条件:k2ΠE(1/r){∂2(rΠE)/∂2r}=0 から磁気的波TE波の散乱波のポテンシャルΠscEが,入射平面波のそれ:ΠinEと同じPl1(cosθ)sinφの形の項しか持たないという結論を得ました。

今日は他のr=aでの境界条件(1/r){∂2(rΠM)/∂r∂θ}+(iω/sinθ)(∂ΠE/∂φ)=0,および{1/(rsinθ)}{∂2(rΠM)/∂r∂φ}(1/r)-iω∂ΠE/∂θ=0 に着目します。

これらの条件とΠEsinφに比例するということから,電気的波TM波の方のポテンシャルΠMはcosφに比例することがわかります。

 

そこで,ΠM=ΠinM+ΠscMなる分解をすれば,散乱TE波のΠscEがPl1(cosθ)sinφの項しか持たないのと同様に,散乱TM波のポテンシャルΠscMはPl1(cosθ)cosφの形の項しか持たないことがわかります。

そこでscM,およびΠscEの展開式はそれぞれΠscM(r,θ,φ)≡(1/k)Σl=1{AMljl(kr)+BMll(kr)}Pl1(cosθ)cosφ,およびΠscE(r,θ,φ)≡{1/(ck)}Σl=1{AEljl(kr)+BEll(kr)}Pl1(cosθ)sinφと書くことができます。

ここで,後の便宜上,ΠscMの展開係数AM,BMに対応するΠscEの展開係数はAE/c,BE/cであるとしています。

また,r→ ∞における散乱境界条件は,ΠM(r,θ,φ)→ΠinM(r,θ,φ)+f1(θ)exp(ikr)cosφ/r,およびΠE(r,θ,φ)→ ΠinE(r,θ,φ)+f2(θ)exp(ikr)sinφ/rと書けます。

ところで,球面ベッセル(Bessel)関数の漸近近似:jl(x)→ sin(x-lπ/2)/x(x→∞)です。

 

そこで,r→∞ではΠinM(r,θ,φ)=(1/k)Σl=1[il-1(2l+1)/{l(l+1)}jl(kr)Pl1(cosθ)cosφ]→ (1/k)Σl=1[il-1(2l+1)/{l(l+1)}{1/(kr)}sin(kr-lπ/2)Pl1(cosθ)cosφ]です。

つまりinM(r,θ,φ)→-{1/(2k2)}Σl=1[(2l+1)/{l(l+1)}{exp(ikr)-(-1)lexp(-ikr)}Pl1(cosθ)cosφ/r]です。

そこで,f1(θ)=-{1/(2k2)}Σl=1[(2l+1)/{l(l+1)}all1(cosθ)]と置けば,ΠM(r,θ,φ)→-{1/(2k2)}Σl=1[(2l+1)/{l(l+1)}{(1+al)exp(ikr)-(-1)lexp(-ikr)}Pl1(cosθ)cosφ/r]と書けます。

一方,x→∞での球面ノイマン(Neumann)関数の漸近近似はnl(x)→-cos(x-lπ/2)/xです。

そこでscM(r,θ,φ)=(1/k)Σl=1{AMljl(kr)+BMll(kr)}Pl1(cosθ)cosφ→f1(θ)exp(ikr)cosφ/rにおける因子:{AMljl(kr)+BMll(kr)}は,r→∞ではAMljl(kr)+BMll(kr)→{AMlsin(kr-lπ/2)-BMlcos(kr-lπ/2)}/(kr)={1/(2ikr)}(-i)l{(AMl-iBMl)exp(ikr)-(-1)l{(AMl+iBMl)exp(-ikr)}なる形で漸近的に挙動します。

しかし,r→ ∞では内向き球面波exp(-ikr)/rは存在せず,その係数はゼロであるはずですからAMl+iBMl=0,つまりBMl=iAMlです。

 

それ故,AMljl(kr)+BMll(kr)=AMl{ jl(kr)+inl(kr)}=AMll(1)(kr)と書けます。ただしhl(1)は球面ハンケル(Hankel)関数の1方です。

以上からscM(r,θ,φ)=(1/k)Σl=1{AMll(1)(kr)Pl1(cosθ)cosφ}と書くことができます。

同様にして,ΠscE(r,θ,φ)={1/(ck)Σl=1{AEll(1)(kr)Pl1(cosθ)sinφ}と書けることもわかります。

ところで,入射平面波については,既に見たように電場はErin=exp(ikrcosθ)sinθcosφ=k2ΠinM(1/r){∂2(rΠinM)/∂2r}={1/(kr)}Σl=1(2l+1)il-1jl(kr)Pl1(cosθ)cosφです。

そしてinM(r,θ,φ)=(1/k)Σl=1(2l+1)il-1/{l(l+1)}jl(kr)Pl1(cosθ)cosφ,ΠinE(r,θ,φ)={1/(ck)}Σl=1(2l+1)il-1/{l(l+1)}jl(kr)Pl1(cosθ)sinφです。

そこで,θin=(1/r)∂ΠinM/∂θ+∂2ΠinM/∂r∂θ+(iω/sinθ)(∂ΠinE/∂φ)=exp(ikrcosθ)sinθsinφ=(cosφ/k)Σl=1(2l+1)il-1/{l(l+1)}[{jl(kr)/r+kjl'(kr)}τl(cosθ)+ikjl(kr)πl(cosθ)]です。

ただしl(cosθ)≡dPl1(cosθ)/dθ=-sinθdPl1(cosθ)/d(cosθ),πl(cosθ)≡Pl1(cosθ)/sinθと置きました。

また,Eφin={1/(rsinθ)}(∂ΠinM/∂φ)+(1/sinθ)(∂2ΠinM/∂r∂φ)-iω∂ΠinE/∂θ=-1exp(ikrcosθ)sinφ=-(sinφ/k)Σl=1(2l+1)il-1/{l(l+1)}[{jl(kr)/r+kjl'(kr)}πl(cosθ)+ikjl(kr)τl(cosθ)]です。

さらに,磁場はrin=c-1exp(ikrcosθ)sinθsinφ=k2ΠinE(1/r){∂2(rΠinE)/∂2r}={1/(ckr)}Σl=1(2l+1)il-1jl(kr)Pl1(cosθ)sinφです。

また,Bθin={-iω/(c2sinθ)}(∂ΠinM/∂φ)+(1/r)(∂ΠinM/∂θ)+∂2ΠinM/∂r∂θ={sinφ/(ck)}Σl=1(2l+1)il-1/{l(l+1)}[ikjl(kr)πl(cosθ)]+{jl(kr)/r+kjl'(kr)}τl(cosθ)]です。

そして,Bφin=(iω/c2)(∂ΠinM/∂θ)+{1/(rsinθ)}(∂ΠinE/∂φ)+(1/sinθ)(∂2ΠinE/∂r∂φ)={cosφ/(ck)}Σl=1(2l+1)il-1/{l(l+1)}[ikjl(kr)τl(cosθ)+{jl(kr)/r+kjl'(kr)}πl(cosθ)]となります。

そして,散乱波も同じ方法で計算できてrsc=k2ΠscM(1/r){∂2(rΠscM)/∂2r}={1/(kr)}Σl=1[l(l+1)AMll(1)(kr)Pl1(cosθ)cosφ]です。

また,Eθsc(1/r)∂ΠscM/∂θ+∂2ΠscM/∂r∂θ+(iω/sinθ)(∂ΠicE/∂φ)=(cosφ/k)Σl=1[AMl{hl(1)(kr)/r+khl(1)'(kr)}τl(cosθ)+ikAEll(1)(kr)πl(cosθ)]です。

同じく,Eφsc{1/(rsinθ)}(∂ΠscM/∂φ)+(1/sinθ)(∂2ΠscM/∂r∂φ)-iω∂ΠscE/∂θ==-(sinφ/k)Σl=1[AMl{hl(1)(kr)/r+khl(1)'(kr)}πl(cosθ)+ikAEll(1)(kr)τl(cosθ)]です。

同様にして,Brsc{1/(ckr)}Σl=1[l(l+1)AEll(1)(kr)Pl1(cosθ)sinφ],Bθsc={sinφ/(ck)}Σl=1[ikAMll(1)(kr)πl(cosθ)+AEl{hl(1)(kr)/r+khl(1)'(kr)}τl(cosθ)+],Bφsc={cosφ/(ck)}Σl=1[ikAMll(1)(kr)τl(cosθ)+AEl{hl(1)(kr)/r+khl(1)'(kr)}πl(cosθ)]です。

ここで,ηl(kr)≡(kr)jl(kr),ξl(kr)≡(kr)hl(1)(kr)と置いて得られた全ての式を整理します。

まず,電場の動径成分については,Erin{1/(k22)}Σl=1(2l+1)il-1ηl(kr)Pl1(cosθ)cosφです。

また,Eθin{cosφ/(kr)}Σl=1(2l+1)il-1/{l(l+1)}[ηl'(kr)τl(cosθ)+iηl(kr)πl(cosθ)],Eφin=-{sinφ/(kr)}Σl=1(2l+1)il-1/{l(l+1)}[ηl'(kr)πl(cosθ)+iηl(kr)τl(cosθ)]とやや簡単な表現になります。

さらに磁場については,まずBrin={1/(ck22)}Σl=1(2l+1)il-1ηl(kr)Pl1(cosθ)sinφです。

次に,Bθin{sinφ/(ckr)}Σl=1(2l+1)il-1/{l(l+1)}[ iηl(kr)πl(cosθ)]+ηl'(kr)τl(cosθ)],およびBφin={cosφ/(ckr)}Σl=1(2l+1)il-1/{l(l+1)}[iηl(kr)τl(cosθ)+ηl'(kr)]πl(cosθ)]となります。

散乱波についても全く同様ですが煩雑なので結果だけ列挙します。

 

まず,電場はErsc{1/(k22)}Σl=1[l(l+1)AMlξl(kr)Pl1(cosθ)cosφ],Eθsc={cosφ/(kr)Σl=1[AMlξl'(kr)]τl(cosθ)+iAElξl(kr)πl(cosθ)},Eφsc=-{sinφ/(kr)}Σl=1[AMlξl'(kr)πl(cosθ)+iAElξl(kr)τl(cosθ)]です。

同様に,磁場はBrsc{1/(ck22)}Σl=1[l(l+1)AElξl(kr)Pl1(cosθ)cosφ],Bθsc={sinφ/(ckr)}Σl=1[iAMlξl(kr)πl(cosθ)+AElξl'(kr)τl(cosθ)],Bφsc={cosφ/(ckr)}Σl=1[iAMlξl(kr)τl(cosθ)+AElξl'(kr)]πl(cosθ)]と書けます。

これに,境界条件:[Eθin+Eθsc]r=a=0,[Eφin+Eφsc]r=a=0,[Brin+Brsc]r=a=0 を当てはめると,(2l+1)il-1ηl'(ka)+l(l+1)AMlξl'(ka)=0,(2l+1)il-1ηl(ka)+l(l+1)AElξl(ka)=0 を得ます。

故に,未知係数は全て陽に決まりAMl=il-1(2l+1)ηl'(ka)/{l(l+1)ξl'(ka)},AEl=il-1(2l+1)ηl(ka)/{l(l+1)ξl(ka)}となって解が完全に得られます。

ところで,r→ ∞ のときにはErsc,Brsc ∝ξl/r2 →O(1/r2),Eθsc,Eφsc,Bθsc,Bφsc ∝ξl/r →O(1/r)です。

 

それ故,r→ ∞では散乱波の散乱体球の動径成分(球面波の縦波成分)Ersc,Brscは,球の接線成分(球面波の横波成分)Eθsc,Eφsc,Bθsc,Bφscに比べて無視してよいと考えられます。

つまり,r→ ∞での散乱波も入射波と同じく,その球面波の進行方向に垂直な偏光成分だけを持つ横波となることがわかります。

また,r→∞ではξl(kr)=(kr)hl(1)(kr)→(-i)l+1exp(ikr),ξl'(kr)→ik(-i)l+1exp(ikr)です。

 

そこでξl(kr)ξm'(kr)=ξm'(kr)ξl(kr) →-ik(-i)l+mexp(2ikr)よりr→∞でEθscθsc+Eφscφsc=0 であり,scsc=0 です。

 

つまり散乱電磁波も電場と磁場が直交して進む横波です。

そして,散乱振幅とそれに基づいた散乱の断面積を計算するためにr→∞での平均エネルギー密度に関係する量を計算することを考えます。

 

まず,r→∞では|Eθsc|2+|Eφsc|2=c2(|Bθsc|2+|Bφsc|2)={1/(k22)}(cos2φ|Sθ|2+sin2φ|Sφ|2)と書けます。ただしSθとSφは次式で定義される量です。

 

すなわち,Sθ≡Σl=1(-i)l+1i[AMlτl+AElπl],Sφ≡Σl=1(-i)l+1i[AMlπl+AElτl]とします。

さて,既に以前計算しましたが入射電磁波の平均エネルギー密度は,複素電磁場の表現では真空中のポインテイングベクトルの時間平均値として<|in|>=|in×in*|/(2μ0)=1/(2cμ0)で与えられます。

一方,散乱波のそれは,<|sc|>2=|sc×sc*|2/(4μ02)=(εijkjk*εilml*m)/(4μ02)={|sc|2|sc|2-|(scsc)|2}/(4μ02)→(|sc|2|sc|2)/(4μ02)です。

 

それ故,r→ ∞では<|sc|>=|sc|2|sc|/(2μ0)=(|Eθsc|2+|Eφsc|2)/(2cμ0)={1/(2cμ022)}(cos2φ|Sθ|2+sin2φ|Sφ|2)と書けます。

したがって,微小立体角dΩ=d(cosθ)dφへの散乱の微分断面積dσは,dσ=(<|sc|>/<|in|>)r2dΩなる定義によってdσ/dΩ=(1/k2)(cos2φ|Sθ|2+sin2φ|Sφ|2)となります。

ここで,Sθ≡Σl=1(-i)l+1i[AMlτl+AElπl],Sφ≡Σl=1(-i)l+1i[AMlπl+AElτl]は,今の場合の係数Aの陽な表現では-iSθ=Σl=1=(2l+1)/{l(l+1)}[{ηl'(ka)/ξl'(ka)}τl(cosθ)+{ηl(ka)/ξl(ka)}πl(cosθ)],-iSφ=Σl=1=(2l+1)/{l(l+1)}[{ηl'(ka)/ξl'(ka)}πl(cosθ)+{ηl(ka)/ξl(ka)}τl(cosθ)]です。

そして,時間平均として,<cos2φ>=<sin2φ>=[∫0cos2φdφ]/(2π)=[∫0sin2φdφ]/(2π)=1/2であることを用いると,実際の観測にかかる微分断面積はdσ/dΩ={1/(2k2)}(|Sθ|2+|Sφ|2)で与えられると結論されます。

 

さて,x→0 ではηl(x)=xjl(x)~xl+1/(2l+1)!!,ηl'(x)~(l+1)xl/(2l+1)!!です。また,ξl(x)=xhl(1)(x)~-i(2l-1)!!/xll'(x)~il(2l-1)!!/xl+1です。

 

それ故,ηl'(ka)/ξl'(ka)~-i(l+1)(ka)2l+1/[l(2l+1){(2l-1)!!}2],ηl(ka)/ξl(ka)~-i(ka)2l+1/[(2l+1){(2l-1)!!}2]です。

 

そこで,以前にも概算したka→0,あるいはka<<1,つまりa<<λのレイリー(Raileigh)散乱では,上記-iSθと-iSφの右辺の展開においてl=1の項だけが効いてきます。

 

そしてl=1ではτl(cosθ)=dP11(cosθ)/dθ=cosθ,π1(cosθ)=P11(cosθ)=1でありη1'(ka)/ξ1'(ka)~-2i(ka)3/3,ηl(ka)/ξl(ka)~-i(ka)3/3です。

 

θ~(ka)3(2cosθ-1)/2,Sφ~(ka)3(2-cosθ)/2)より,|Sθ|2+|Sφ|2~(ka)6(5cos2θ-8cosθ+5)/4です。

 

そこで,dσ/dΩ={1/(2k2)}(|Sθ|2+|Sφ|2)~k46(5-8cosθ+5cos2θ)/8∝k46~a64,σ=2π∫(dσ/dΩ)d(cosθ)=10πk46/3=160π56/(3λ4)です。

 

したがって,ka<<1,つまりa<<λのレイリー散乱では微分断面積dσ/dΩ,全断面積σは共に4に比例しています。あるいは波長λの4乗に反比例しています。

 

一方,ka~1,つまりa~λでは,Sθ,Sφにおける各項のηl'(ka),ξl'(ka),ηl(ka),ξl(ka)等のl=1の先頭項だけではなく,全てのlの項が効いてきます。そして,a~λの太陽からの可視光線の空気中の水滴やエアロゾルなどによる散乱に相当していて,これをミイ(Mie)散乱と呼びます。

 

しかし,これまでの議論では散乱体は電気伝導率σ=∞の完全導体球であると仮定して球体の半径r=aの表面上でEθ=Eφ=0,Br=0 である,という境界条件を用いました。

 

ここで,より現実的に考えて,散乱体が球であるという仮定はそのままでもいいですが,散乱体は完全導体から成るのではなく,任意の有限な電気伝導率σから成る物体であるとします。

  

また,その散乱体球の内部の透磁率は真空と同じくほぼμ0ですが,誘電率の方は一般の値εであるとします。空気分子,水滴などによる光の散乱ではこちらの誘電体というモデルの方がふさわしいと思います。

 

すると,この誘電体球の内部での電磁場の運動方程式は,∇×=-∂/∂tは真空中と同じですが,∇×=∂/∂t(i.e.∇×=(1/c2)∂/∂t)の方は,∇×=∂/∂t+=∂/∂t+σ,すなわち∇×=μ0ε∂/∂t+μ0σとすべきです。

  

そこで,誘電体内部でも外部と同じく,がexp(-iωt)という定在波としての時間依存因子を持つ波とすれば,これは∇×=-iμ0(εω+iσ)となります。

 

前の,散乱体が完全導体のときには内部には如何なる電流も存在できず,元々電流のない球体外部と同様に内部でも∇×=(1/c2)∂/∂tで∇×=-i(ω/c2)でした。

 

そして,TM波,TE波に対するポテンシャルは散乱体の外部ではもちろん,ΠMEですが,内部ではχMEであるとします。

 

すると,誘電体外部ではEMφ={1/(rsinθ)}{∂2(rΠM)/∂r∂φ},EMθ=(1/r){∂2(rΠM)/∂r∂θ}でしたが,内部でも単にEMφ={1/(rsinθ)}{∂2(rχM)/∂r∂φ},EMθ=(1/r){∂2(rχM)/∂r∂θ}となります。

 

しかし,磁場の方は外部での表現:BMφ=(iω/c2)(∂ΠM/∂θ),BMθ=-{iω/(c2sinθ)}{∂(∂ΠM/∂φ)における係数ω/c2=μ0ε0ωがμ0(εω+iσ)=(εω/ε0+iσ/ε0)/c2に変わるので,誘電体内部ではBMφ=(iωa/c2)(∂χM/∂θ),BMθ=-{iωa/(c2sinθ)}{∂(∂χM/∂φ)と書けます。

 

ここで,広義の複素振動数ωaを導入してωa≡εω/ε0+iσ/ε0と定義しました。

 

さて,球体の外部の真空中ではポテンシャルΠが従う方程式は,波動方程式(△-c-22/∂t2M=[△-μ0ε02/∂t2M=0 において波数k=2π/λが2≡ω2/c2=μ0ε0ω2と表現されるヘルムホルツ方程式:(△+k2M=0 でした。

 

しかし,誘電体中では波動方程式は[△-μ0(ε+iσ/ω)∂2/∂t2M=0 となるので,これはa2≡μ0(ε+iσ/ω)ω2として(△+ka2M=0 となります。複素係数:ε+iσ/ω=(ωa/ω)ε0はωに依存する複素誘電率と解釈されます。

 

そこで,ka2=μ0(εω+iσ)ω=ωωa/c2であってEMr=ka2χM(1/r){∂2(rχM)/∂2r},BMr=0 です。ka=2π/λaです。

 

同様に,EEr=0,EEθ=(iωa/sinθ)(∂χE/∂φ),EEφ=-iωa∂χE/∂θ,BEr=ka2χE(1/r){∂2(rχE)/∂2r},BEθ=(1/r){∂2(rχE)/∂r∂θ},BEφ={1/(rsinθ)}{∂2(rχE)/∂r∂φ}です。そして,(△+ka2E=0 ですね。

 

これらヘルムホルツの方程式の解としての誘電体内部のTM波,TE波を与えるポテンシャルχMEは,r=0 の中心で有限であって,やはりs波(l=0 の波)はないと考えられます。

 

それ故,χM(r,θ,φ)≡(1/kal=1Mljl(kar)Pl1(cosθ)cosφ,χE(r,θ,φ)≡{1/(cka)}Σl=1Eljl(kar)Pl1(cosθ)sinφと表現することができます。

 

この場合の境界条件は,全く普通でr=aの球表面において接線成分Eθ,Eφ,Hθ,Hφが連続,そこでμ=μ0=(一定)よりBθ,Bφが連続であり,法線成分BrとDr=εEも連続という条件となります。

 

ただ,今のケースでは電束密度と電場の現象論的関係は単純な実定数誘電率による=εではなく,(ω)=(ε+iσ/ω)(ω)=(ωa/ω)ε0(ω)=(ka2/k20(ω)なる関係と考えられます。

 

そこで,Drの連続性については球の外部のと内部の(ka2/k2)の連続性を問題にする必要があります。

 

故に,この条件からは(1/k2)[(2l+1)il-1ηl(ka)+l(l+1)AMlξl(ka)]=(ka2/k2)(1/ka2)l(l+1)CMlηl(kaa)です。

 

同様にBrの連続性からは{1/(ck2)}[(2l+1)il-1ηl(ka)+l(l+1)AElξl(ka)]={1/(cka2)}l(l+1)CElηl(kaa)です。

 

また,Eθ,Eφ,Bθ,Bφの連続性からは(1/k)[(2l+1)/{l(l+1)}il-1ηl'(ka)+AMlξl'(ka)]=(1/ka)CMlηl'(kaa),および(1/k)[(2l+1)/{l(l+1)}il-1ηl'(ka)+AElξl'(ka)]=(1/ka)CElηl'(kaa)です。

 

これらの式からCMl,CElを消去すると,AMl=il+1(2l+1)/{l(l+1)}{kaηl'(ka)ηl(kaa)-kηl'(kaa)ηl(ka)}/{kaξl'(ka)ηl(kaa)-kηl'(kaa)ξl(ka)},

 

および,AEl=il+1(2l+1)/{l(l+1)}{kaηl(ka)ηl'(kaa)-kηl'(ka)ηl(kaa)}/{kaξl(ka)ηl'(kaa)-kξl'(ka)ηl(kaa)}が得られます。

 

ここで,後の便宜のために散乱体を構成する誘電体の複素屈折率をn^≡λ/λa=ka/k=(ε+iσ/ω)/ε0)1/2で定義しておきます。

  

例えば,ka<<1, or a<<λの場合なら,Ml~il+1(2l+1)/{l(l+1)}(l+1)kal+2l-kall+2)a2l+1/{(2l+1)!!}2,÷[i(lkal+2-(l+1)+(l+1)kal-(l-1))/(2l+1)]~[il/{l(2l+1)!!}2][(n^2-1)/{n^2+(l+1)/l}](ka)2l+1です。

 

同様に,AEl~[il/{l(l+1)(2l+1)(2l+3)]/{(2l+1)!!}2(n^2-1)(ka)2l+3です。

 

それ故,ka~ 0 での通常の弾性散乱では,TM波のl+1の項の寄与とTE波のl波の寄与が同じオーダーになります。

 

そこでka<<1のレイリー散乱の場合に実際に効くl=1の最初の項だけに着目すると,TM波では(ka)3,TE波ではka)5に比例するため,TM波のみが効くと見ていいでしょう。

 

そして,l=1では,AM1~i(ka)3(n^2-1)/(n^2+2)です。

 

これから,特に前のように完全導体の場合ならn^→ ∞のため,AM1~i(ka)3となることも確認されます。

 

τ1(cosθ)=cosθ,π1(cosθ)=1により,Sθ~(ka)3(n^2-1)/(n^2+2)cosθ,Sφ~(ka)3(n^2-1)/(n^2+2)です。

 

そこで,ka<<1のレーリー散乱の場合の微分断面積はdσ/dΩ={1/(2k2)}(|Sθ|2+|Sφ|2)~(k46/4)(1+cos2θ)(n^2-1)2/(n^2+2)2 ∝ k46 ~a64です。

  

そこで,全断面積はσ=2π∫(dσ/dΩ)d(cosθ)=(8π/3)k46(n^2-1)2/(n^2+2)2=(128π5/3)(a64)(n^2-1)2/(n^2+2)2となります。

  

これらは,完全導体n^→ ∞の極限ではdσ/dΩ=k46(1+cos2θ),σ=(8π/3)k46=(128π5/3)a64です。

 

これは,先に初めから完全導体球を仮定してその境界条件から計算したレーリー散乱の結果,dσ/dΩ={1/(2k2)}(|Sθ|2+|Sφ|2)~k46(5-8cosθ+5cos2θ)/8∝k46~a64,σ=2π∫(dσ/dΩ)d(cosθ)=(10π/3)k46=(160π5/3)a64と微妙に係数だけが違っています。

 

これは,Sθ≡Σl=1(-i)l+1i[AMlτl+AElπl],Sφ≡Σl=1(-i)l+1i[AMlπl+AElτl]のl=1の項で,τ1=cosθ,π1=1,Ml~i(ka)3は同じですが,完全導体境界条件ではAEl~(-i/2)(ka)3であるのに対して誘電体境界条件ではAEl~ 0 であるからです。

  

大気中の空気分子による散乱では,後者の誘電体境界条件を採用するべきと思われます。

  

とにかく,空気分子ではn^は有限ですからAM1~i(ka)3(n^2-1)/(n^2+2)において完全導体球を仮定して複素屈折率をn^=∞としたものでなく,係数(n^2-1)/(n^2+2)を含む方の式を用いるべきです。

 

今日はここまでにします。

 

参考文献:砂川重信著「理論電磁気学」第2版(紀伊国屋書店),M.Born,E.Wolf著(草川徹 訳)「光学の原理(3)」(東海大学出版会)

 

PS:ノリピーの裁判。。判決には依存ないけど。。。例によって不可解なことばかり。。

 

罪というのは薬物に関する法律の違反でしょう?誰と結婚しようが離婚しようが個人的な問題とは刑法は関係ないじゃん。。。

 

マスコミが騒いだせいで世間への影響が大きい割りに刑が軽い?。。

 

表向きは職業に貴賎なし。。全ての人間は性別,その生業に関わらず法の下には平等だろう。利権にからんだ周囲の大騒ぎ,ほとんどは本人の責任じゃない部分を責めてどうするんだ?。。

 

問題にすべきは,犯罪当時の被告の責任能力の有無(たとえば幼児であるとか認知症であるとかなら刑は軽くすべきとか。)のような問題だろうにね。。。。

 

まあ,普通の日本の刑事裁判(検事と弁護士の両方がいても公平であるべき判事が最初から検事9割,弁護士1割程度の予断と偏見を持っていて,本来5分5分の情況証拠なら"疑わしきは被告の利益に(=推定無罪)"の原則のはずなのに実際には真反対で,しかも世論になびく傾向大)だから,しょうがないか。。

 

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2009年11月 4日 (水)

光(電磁波)の散乱(3)

主としてミイ(Mie)散乱を対象と考えて計算した過去のノ-トを見つけたので,改めてその計算をチェックしながら一般的なレイリー(Rayleigh)散乱とミイ散乱の古典電磁波の散乱としての扱いを詳細に記述してみます。

散乱体を完全導体球としたときの正しい境界条件は入射平面波と散乱波を重ね合わせた全電磁波の電場,磁場が球の表面上r=aでnB=0,tE=0 を満たすことです。

これは極座標では,r=aでBr=Bxsinθcosφ+Bysinθ+Bzcosθ=0,かつEθ=Excosθcosφ+Eycosθsinφ+Ezsinθ=0,Eφ=-Exsinφ+Eycosφ=0 なることを意味します。

今のケースでは入射波はz方向に進む角振動数がωの単色平面波ではx方向,はy方向に線偏光していると仮定しています。

これまで説明してきたように,散乱を1枚の全体写真として記述するため,電磁場の1成分をΦ(,t)=exp(-iωt)ψ()として時間部分を分離した定在波表現を用います。

 

この表現では,入射波Φin(,t)=exp(-iωt)ψin()の空間成分はψin()=exp(ikz)=exp(ikrcosθ)ですが,これはin=(ψin,0,0),cin=(0,ψin,0,0),あるいはEinx=cBiny=exp(ikz),Einy=Einz=Binx=Binz=0 を意味します。

そして,真空中でのヘルムホルツ(Helmholtz)方程式よりも基本的なマクスウェル(Maxwell)の方程式:=ε0,=μ0,c2=ε0μ0∇,および∇×=-∂/∂t,∇×=∂/∂tから出発してを消去すると,∇×=iω,∇×=-(iω/c2)を得ます。

これを,極座標で書くと-(iω/c2)Er={1/(r2sinθ)}{∂(rsinθBφ)/∂θ-∂(rBθ)/∂φ},-(iω/c2)Eθ={1/(rsinθ)}{∂Br/∂φ-∂(rsinθBφ)/∂r},-(iω/c2)Eφ=(1/r){∂(rBθ)/∂r-∂Br/∂θ},

および,iωBr={1/(r2sinθ)}{∂(rsinθEφ)/∂θ-∂(rEθ)/∂φ},iωBθ={1/(rsinθ)}{∂Er/∂φ-∂(rsinθEφ)/∂r},iωBφ=(1/r){∂(rEθ)/∂r-∂Er/∂θ}です。

方程式は線型なので,任意の解,は電気的波(TM波;transverse magnetic wave)と磁気的波(TE波;transverse electric wave)に分解できます。

 

すなわち,ME,ME,(ⅰ)EMr=Er,BMr=0 (TM波),(ⅱ)EEr=0,BEr=Br (TE波)と分解されます。

これら電気的波:M,M,および磁気的波:E,Eは,それぞれ同じ波動方程式を満足するスカラーポテンシャルΠM,およびΠEから導出できることがわかります。以下,これを示します。

(ⅰ)EMr=Er,BMr=0 (TM波=電気的波)の場合:

 iωr2sinθBMr=∂(rsinθEMφ)/∂θ-∂(rEMθ)/∂φ=0ですから,rsinθEMφ≡∂U/∂φ,rEMθ≡∂U/∂θ,U≡∂(rΠM)/∂rと置くことができます。

すなわち,EMφ≡{1/(rsinθ)}{∂2(rΠM)/∂r∂φ},EMθ≡(1/r){∂2(rΠM)/∂r∂θ}と書けます。

そこで,-(iω/c2)Eθ={1/(rsinθ)}{∂Br/∂φ-∂(rsinθBφ)/∂r}で,M,Mに置き換えてBMr=0 とした式:-(iω/c2)EMθ={1/(rsinθ)}{-∂(rsinθBMφ)/∂r}は,(iω/c2)(1/r){∂2(rΠM)/∂r∂θ}=(1/r){∂(rBMφ)/∂r}を意味します。

また,-(iω/c2)EMφ=(1/r){∂(rBMθ)/∂r-∂BMr/∂θ}=(1/r){∂(rBMθ)/∂r}は-(iω/c2){1/(rsinθ)}{∂2(rΠM)/∂r∂φ}=(1/r){∂(rBMθ)/∂r}です。

よって,無関係の定数を除いて,BMφ={iω/(c2r)}{∂(rΠM)/∂θ}=(iω/c2)(∂ΠM/∂θ),BMθ=-{iω/(c2rsinθ)}{∂(rΠM)/∂φ}と書けます。

さらに,これらを-(iω/c2)EMr={1/(r2sinθ)}{∂(rsinθ∂BMφ)/∂θ-∂(rBMθ)/∂φ}に代入するとEMr=-{1/(rsinθ)}[∂{sinθ(∂ΠM/∂θ)/∂θ}+(1/sinθ)(∂2ΠM/∂φ2)]を得ます。

そして,得られた結果をiωBMθ={1/(rsinθ)}{∂EMr/∂φ-∂(rsinθEMφ)/∂r}に代入すると(ω2/c2sinθ)(∂ΠM/∂φ)={1/(rsinθ)}(∂/∂φ){-1/(rsinθ)}(∂/∂θ){sinθ(∂ΠM/∂θ)}+(1/sinθ)(∂2ΠM/∂φ2)}-{∂2(rΠM)/∂2r}]です。

k=ω/cより,これは(∂/∂φ)[k2ΠM+(1/r){∂2(rΠM)/∂2r}+{1/(r2sinθ)}(∂/∂θ){sinθ(∂ΠM/∂θ)}+(1/sinθ)(∂2ΠM/∂φ2)]=0です。

また,-iωBMφ=(1/r){∂(rEMθ)/∂r-∂EMr/∂θ}に代入すると-(ω2r/c2) (∂ΠM/∂θ)=∂3(rΠM)/∂r2∂θ}+(1/r2)(∂/∂θ)[(1/sinθ)(∂/∂θ){sinθ(∂ΠM/∂θ)/∂θ}+(1/sinθ)(∂2ΠM/∂φ2)]です。

これから(∂/∂θ)[k2ΠM+(1/r){∂2(rΠM)/∂2r}+{1/(r2sinθ)}(∂/∂θ){sinθ(∂ΠM/∂θ)}+(1/sinθ)(∂2ΠM/∂φ2)]=0を得ます。

以上のことからスカラーポテンシャルΠMをヘルムホルツ方程式:(△+k2M=0 を満たすように選んでよいことがわかります。

そこで,EMr=-{1/(rsinθ)}[∂{sinθ(∂ΠM/∂θ)/∂θ}+(1/sinθ)(∂2ΠM/∂φ2)]=-△ΠM+(1/r){∂2(rΠM)/∂2r}によってEMr=k2ΠM(1/r){∂2(rΠM)/∂2r}が得られます。

要約すると,EMr=k2ΠM(1/r){∂2(rΠM)/∂2r},EMθ=(1/r){∂2(rΠM)/∂r∂θ},EMφ={1/(rsinθ)}{∂2(rΠM)/∂r∂φ},BMr=0,BMθ=-{iω/(c2rsinθ)}{∂(rΠM)/∂φ},BMφ={iω/(c2r)}{∂(rΠM)/∂θ}=(iω/c2)(∂ΠM/∂θ)です。

そして,(△+k2M=0 です。

(ⅱ)EEr=0,BEr=Br(TE波=磁気的波)の場合:

 (iωr2sinθ/c2)EEr=∂(rsinθBEφ)/∂θ-∂(rBEθ)/∂φ=0ですから,rsinθBEφ≡∂V/∂φ,rBEθ≡∂V/∂θ,V≡∂(rΠE)/∂rと置きます。

すなわち,BEφ={1/(rsinθ)}{∂2(rΠE)/∂r∂φ},BEθ=(1/r){∂2(rΠE)/∂r∂θ}です。

Er0 よりiωBEφ=(1/r){∂(rEEθ)/∂r}ですから,∂(rEEθ)/∂r=(iω/sinθ){∂2(rΠE)/∂r∂φ}です。

 

そこで,定数項を無視してEEθ={iω/(rsinθ)}{∂(rΠE)/∂φ}=(iω/sinθ)(∂ΠE/∂φ)と置くことができます。

同様に,iωBEθ={-1/(rsinθ)}{∂(rsinθEEφ)/∂r}より{∂(rEEφ)/∂r}=-iω∂2(rΠE)/∂r∂θ}なので,EEφ=-iω∂ΠE/∂θと書けます。

これらのポテンシャルによる表現をiωBEr={1/(r2sinθ)}{∂(rsinθEEφ)/∂θ-∂(rEEθ)/∂φ}に代入すると,BEr={-1/(rsinθ)}{∂(sinθ∂ΠE/∂θ)/∂θ}を得ます。

得られた全てのポテンシャルによる表現を-(iω/c2)EEθ={1/(rsinθ)}{∂BEr/∂φ-∂(rsinθBEφ)/∂r},および-(iω/c2)EEφ=(1/r){∂(rBEθ)/∂r-∂BEr/∂θ}に代入すれば,(∂/∂φ){(△+k2E}=0,かつ(∂/∂θ){(△+k2E}=0 が得られます。

そこで,(△+k2E=0となるようにΠEを選びます。このときBEr=k2ΠE(1/r){∂2(rΠE)/∂2r}と表わせます。

以上を要約すると,EEr=0,EEθ=(iω/sinθ)(∂ΠE/∂φ),EEφ=-iω∂ΠE/∂θ,BEr=k2ΠE(1/r){∂2(rΠE)/∂2r},BEθ=(1/r){∂2(rΠE)/∂r∂θ},BEφ={1/(rsinθ)}{∂2(rΠE)/∂r∂φ}です。そして(△+k2E=0 です。

(ⅰ),(ⅱ)をまとめると,電場についてはEr=EMr+EEr=k2ΠM(1/r){∂2(rΠM)/∂2r},Eθ=EMθ+EEθ=(1/r){∂2(rΠM)/∂r∂θ}+(iω/sinθ)(∂ΠE/∂φ),Eφ=EMφ+EEφ={1/(rsinθ)}{∂2(rΠM)/∂r∂φ}(1/r)-iω∂ΠE/∂θとなり,

磁場についてはr=BMr+BEr=k2ΠE(1/r){∂2(rΠE)/∂2r},Bθ=BMθ+BEθ={-iω/(c2rsinθ)}{∂(rΠM)/∂φ}+(1/r){∂2(rΠM)/∂r∂θ},Bφ=BMφ+BEφ=(iω/c2)(∂ΠM/∂θ){1/(rsinθ)}+{1/(rsinθ)}{∂2(rΠE)/∂r∂φ}となります。

ここでΠMEは(△+k2)Π=0 の未知関数Πに対する解です。

解ΠをΠ(r,θ,φ)≡R(r)Θ(θ)Φ(φ)と変数分離形に書くと,R(r)に対する独立解の組は方程式{d2/dr2+(2/r)d/dr+k2-l(l+1)/r2}Rl(r)=0 を満たすRl(r)={π/(2kr)}1/2l+1/2(kr)=jl(kr),{π/(2kr)}1/2l+1/2(kr)=nl(kr)(l=0,1,2,..)で与えられます。(J,Nはベッセル(Bessel)関数)

このとき,同じlに対応するΘ(θ)Φ(φ)の独立解はPlm(cosθ){amcos(mφ)+bmsin(mφ)}(-l≦m≦l)です。(Plmはルジャンドル(Legendre)の陪多項式)

それ故,Πの一般解はΠ(r,θ,φ)=Σl=0Σm=-ll{cll(kr)+dll(kr)}Plm(cosθ){amcos(mφ)+bmsin(mφ)}です。

ところで,電場,磁場のデカルト座標の成分と極座標の成分の関係はEr=Exsinθcosφ+Eysinθ+Ezcosθ,Eθ=Excosθcosφ+Eycosθsinφ+Ezsinθ,Eφ=-Exsinφ+Eycosφ,およびBr=Bxsinθcosφ+Bysinθ+Bzcosθ,Bθ=Bxcosθcosφ+Bycosθsinφ+Bzsinθ,Bφ=-Bxsinφ+Bycosφで与えられます。

ここで,入射波の電場inと磁場inは,Einx=cBiny=exp(ikz),Einy=Einz=Binx=Binz=0 であると仮定されていたことを思い出します。

したがって,入射波の極座標成分はEinr=exp(ikrcosθ)sinθcosφ,Einθ=exp(ikrcosθ)cosθcosφ,Einφ=-exp(ikrcosθ)sinφ,Binr=c-1exp(ikrcosθ)sinθsinφ,Binθ=exp(ikrcosθ)cosθsinφ,Bφ=exp(ikrcosθ)cosφです。

これを用いて入射波に対するポテンシャルΠM=ΠinME=ΠinEを求めます。そのために先のEr,Eθ,Eφ,Br,Bθ,Bφに対するポテンシャルΠMEによる表現を利用します。

式はたくさんありますが,その中の1つの式:Er=EMr+EEr=k2ΠM(1/r){∂2(rΠM)/∂2r}だけを考えれば十分です。このポテンシャルは合理的に定められているため後の式は自然に満たされます。

採用した式は,exp(ikrcosθ)sinθcosφ=k2ΠinM(1/r){∂2(rΠinM)/∂2r}です。

一方,exp(ikrcosθ)の展開はレーリー(Rayleigh)の公式:exp(ikrcosθ)=Σl=0(2l+1)iljl(kr)Pl(cosθ)で与えられることを知っています。

この両辺をθで微分します。左辺では∂{exp(ikrcosθ)}/∂θ=-ikrexp(ikrcosθ)sinθです。右辺では∂Pl(cosθ)/∂θ=-Pl1(cosθ)(l=1),∂Pl(cosθ)/∂θ=0 (l≠1)です。

これから直ちに入射波にはl=0 のs波が無いことがわかります。これの理由は明らかに電磁波の表わす場がベクトルであってスカラーではないことです。

レーリーの公式の両辺のθ微分にcosφを掛けて-ikrで割るとexp(ikrcosθ)sinθcosφ=(1/kr)Σl=1(2l+1)il-1jl(kr)Pl1(cosθ)cosφ=k2ΠinM(1/r){∂2(rΠinM)/∂2r}を得ます。

ここでΠinMの展開式をΠinM(r,θ,φ)≡(1/k)Σl=1αljl(kr)Pl1(cosθ)cosφと定義すれば,∂2(rΠinM)/∂2r+k2rΠinM=r[∂2ΠinM/∂2r+(2/r)∂ΠinM/∂r+k2ΠinM]から,αl{d2jl(kr)/dr2+(2/r)d1jl(kr)/dr+k2jl(kr)}=il-1(2l+1)jl(kr)/r2なる等式を得ます。

そこでl=il-1(2l+1)/{l(l+1)}となることがわかります。

よって,陽な展開表現:ΠinM(r,θ,φ)=(1/k)Σl=1[il-1(2l+1)/{l(l+1)}jl(kr)Pl1(cosθ)cosφ]が得られました。

同様にしてinE(r,θ,φ)=(1/k)Σl=1[il-1(2l+1)/{l(l+1)}jl(kr)Pl1(cosθ)sinφ]も得られます。

ここでr=aにおける正しい境界条件:Br=0,かつEθ=Eφ=0 を考慮します。

これはr=aでk2ΠE(1/r){∂2(rΠE)/∂2r}=0,かつ(1/r){∂2(rΠM)/∂r∂θ}+(iω/sinθ)(∂ΠE/∂φ)={1/(rsinθ)}{∂2(rΠM)/∂r∂φ}(1/r)-iω∂ΠE/∂θ=0 を意味します。

1番目の条件:k2ΠE(1/r){∂2(rΠE)/∂2r}=0 (r=a)は,r=aで∂2(rΠE)/∂2r+k2rΠE=r[∂2ΠE/∂2r+(2/r)∂ΠE/∂r+k2ΠE]=0 です。

 

ΠEの展開式をΠE(r,θ,φ)≡Σl=0Σm=-ll{cll(kr)+dll(kr)}Plm(cosθ){amcos(mφ)+bmsin(mφ)}と定義すると,これはΣl=0Σm=-lll(l+1)a-2{cll(ka)+dll(ka)}Plm(cosθ){amcos(mφ)+bmsin(mφ)}=0 を意味します。

そこで,TE波のポテンシャルΠEは恒等的にゼロである,あるいは全ての展開係数はゼロであることがわかります。

 

ΠE=ΠinE+ΠscEと書けば,左辺の展開係数が全てゼロなので,ΠinEがm=1のPl1(cosθ)sinφの項しか持たないことから,ΠscEもm=1のPl1(cosθ)sinφの形の項しか持たないことがわかります。

途中ですが,計算に疲れたので今日はここまでにします。

参考文献:砂川重信 著「理論電磁気学(第2版)」(紀伊国屋書店),M.Born,E.Wolf 著(草川徹 翻訳)「光学の原理(3)」(東海大学出版会)

 

PS:先日,池袋に大きいヤマダ電機がオープンしたのでこれを見に行った機会に秋葉原まで足をのばして,中古専門のソフマップに行きPCを中心に色々と見てきました。

 

 そして有名メーカーではなく自作に近くて昔ツクモや石丸で安売りしていた中古のデスクトップマシン:2004年製のemachinesのJ4320(CPUがPentium4:3GHz,HDD:200GB,WindowsXP(Home)入り,ただしメモリーが512MBから1024MBに増設されているもの)が11300円と意外に安く売られていたのでつい衝動買いしてしまいました。

 

 ここ数日間は今まで使っていたデスクトップと入れ替えるためのセッティングに夢中になっていました。

 

 今年6月に2004年製のHPパソコンのマザーボードが壊れたため,これまでは所蔵休眠していた2002年製で富士通のときどき動かなくなる中古パソコンをだましだましして使っていました。http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/pc-179a.html

 

 新PCは,今のところ重いソフトを使用中に若干音がうるさいのが気になる程度で他に不満はなく,前の富士通の中古よりも快適,快調です。

 

 見かけはほぼ新品で(アウトレット?),モニター無し,マウス,キーボードが無く,付属ソフトもOS(Windows)とウィルスソフト以外には無かったのですが,DVD±R(さらにRAM?)ドライブと全カードリ-ダー付き(FDDは無し)で,HDDも200GB実装ですから,コアがDuoではないけれどスペックとしては十分です。

  

 付属品が何も付いてなくても,これらは全て前のマシンから引き継げたので私的には全く問題無しです。

 

 日本製の有名メーカー品とはいっても他のはるかにスペックが低く,どこかに「難あり品」なのにこの品よりもかなり高価な中古品に比べ私自身は今のところ掘り出し物だと思っています。

  

 結局,後で失敗だとわかったにしても11300円なら1~2回の飲み代程度ですから気になりませんね。(さらに送料も値切りました。)

 

 ところで今年は何故か将棋の谷川浩司九段(17世名人)の調子がいいみたいで嬉しいです。

  

 谷川さんには久しぶりにタイトルを取ってもらいたいですね。特に順位戦では今のところ全勝でトップです。名人復位を期待しています。

  

 北島忠雄六段(現在順位戦はC1で3勝2敗)もカゲながら応援しています。頑張ってください。下は7月の将棋オフ http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-29b5.html で私が取った写真です。(肖像権無視して載せていいのかな?クレイムあれば即削除します。)

 

  

  

 

 PS2:西田房生(フサフサ生える?)さん。。連絡を待つ。この記事にメアド入りでコメントを入れてください。すぐに返信後,コメントおよびこのPS2は削除します。

 

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2009年10月20日 (火)

光(電磁波)の散乱(2)

 最終的には温室効果の定量的評価を与えることを目的とした光(電磁波)の散乱の評価の続きです。

 前回,定義を与えた散乱断面積を散乱による波の位相のずれ(phase-shift)によって表現するため,波の r→ ∞ での境界条件を考えます。 

まず,平面波:ψin()=exp(ikz)=exp(ikrcosθ)のレーリー(Raileigh)の公式による表現を再掲します。exp(ikz)=Σl=0(2l+1)iljl(kr)Pl(cosθ)です。

r→ ∞の場合を考えてjl(kr)の漸近形:jl(kr)→sin(kr-lπ/2)/(kr)を代入すると,exp(ikrcosθ)→Σl=0{il(2l+1)/(kr)}sin(kr-lπ/2)Pl(cosθ)=Σl=0{(2l+1)/(2ikr)}{exp(kr)-(-1)lexp(-ikr)}Pl(cosθ)と書けます。

また,散乱振幅f(θ)をルジャンドル(Legendre)多項式の完全系{Pl(cosθ)}で展開したものを,f(θ)=Σl=0{(2l+1)al/(2ik)}Pl(cosθ)と書いておきます。ここで,f(θ)が未知量なので全ての係数alも未知量です。

これらをψ()→ψin()+ψsc()=exp(ikz)+f(θ)exp(ikr)/rに代入すると,ψ()→Σl=0{(2l+1)/(2ikr)}{(1+al)exp(ikr)-(-1)lexp(-ikr)}Pl(cosθ)となります。

一方,σ(θ)=|f(θ)|2=k-2l=0{(2l+1)al/2}Pl(cosθ)|2です。そこで,σ≡∫σ(θ)dΩ=2π∫-11σ(θ)d(cosθ)=(2π/k2)[Σl,l'=0{(2l+1)(2l'+1)all'*/4}∫-11l(cosθ)Pl'(cosθ)d(cosθ)]=(π/k2l=0(2l+1)|al|2となります。

ここで,積分公式:∫-11l(x)Pl'(x)dx={2/(2l+1)}δll'を用いました。

f(θ)=Σl=0{(2l+1)al/(2ik)}Pl(cosθ)なる表現式により,前方散乱(散乱角θ=0)の振幅f(0)はf(0)=Σl=0{(2l+1)al/(2ik)}と書けますから, 2iImf(0)=f(0)-f*(0)=Σl=0{(2l+1)(al+al*)/(2ik)}です。

一方,r→ ∞での漸近形:ψ()→Σl=0{(2l+1)/(2ikr)}{(1+al)exp(ikr)-(-1)lexp(-ikr)}Pl(cosθ)に戻ると,exp(ikr)/rの係数(1+al)は外向き球面波exp(-ikr)/rの振幅を(-1)l+1は内向き球面波の振幅を示していると見えます。

この定常状態の描像で,光=電磁波が散乱体に全く吸収されずに保存される弾性散乱(elastic scattering)なら,各lについて外向き波と内向き波の振幅の絶対値は等しくなければなりません。

 

すなわち,|1+al|=1なることが要求されますから,1+al+al*+all*=1,あるいはal+al*+|al|2=0 です。

そこで,これと表現:Imf(0)=-Σl=0{(2l+1)(al+al*)/(4k)},σ≡∫σ(θ)dΩ=(π/k2l=0(2l+1)|al|2より,σ≡∫σ(θ)dΩ=(4π/k)Imf(0)なる等式が得られます。

 

これを光学定理(optical theorem)といいます。

このように,弾性散乱では|1+al|=1なので,1+al≡exp(2iδl)としてlごとに実数δlを定義すれば,1+al*=exp(-2iδl),|al|2=all*=2{1-cos(2δl)}=4sin2δlです。

 

故に,全断面積σはσ=(4π/k2)Σ(2l+1)sin2δlと書けます。

δl0 ならal=0 の散乱されない平面波だけしか存在しないので,このδlを散乱による位相のずれと呼びます。

このように定式化すれば,散乱の問題は全ての部分波lに対して位相のずれδlを求める問題に帰着するわけです。

δlを位相のずれと呼ぶのには別の理由もあります。

 

すなわち,1+al=exp(2iδl),(-1)l=exp(ilπ)をψ()→Σl=0{(2l+1)/(2ikr)}{(1+al)exp(ikr)-(-1)lexp(-ikr)}Pl(cosθ)に代入したときには,ψ()→Σl=0{(2l+1)/(kr)}exp(iδl)exp(ilπ/2)sin(kr-lπ/2+δl)Pl(cosθ)となります。

 

これを,入射平面波のr→ ∞での漸近形の表式:exp(ikrcosθ)→Σl=0{il(2l+1)/(kr)}sin(kr-lπ/2)Pl(cosθ)と比較すると,散乱波ψ()=ψ(r,θ)の漸近形では正弦関数の位相がδlだけずれているからです。

では,位相のずれδlを個々の散乱に対して具体的に決めるにはどうすればいいのでしょうか?

まず,r→∞での漸近形:jl(kr)→sin(kr-lπ/2)/(kr),nl(x)→-cos(kr-lπ/2)/(kr)によって,正確な波ψ(r,θ)=Σl=0[Aljl(kr)+Bll(kr)]Pl(cosθ)の漸近形はΣl=0[Alsin(kr-lπ/2)-Blcos(kr-lπ/2)]Pl(cosθ)/(kr)と書けます。

これとψ(r,θ)→Σl=0{(2l+1)/(2ikr)}exp(iδl)sin(kr-lπ/2+δl)Pl(cosθ)=Σl=0{(2l+1)/(kr)}exp(iδl)il[cosδlsin(kr-lπ/2)+sinδlcos(kr-lπ/2)を比較すると,Al=(2l+1)ilexp(iδl)cosδl,Bl=-(2l+1)ilexp(iδl)sinδlなることがわかります。

そこで,一般解はψ(r,θ)=Σl=0[(2l+1)ilexp(iδl)cosδl{jl(kr)-tanδll(kr)}Pl(cosθ)]と書けることがわかりました。

δlは散乱体の表面で波動を示すψ(r,θ)が満たすべき境界条件によって決まるはずです。

具体的な例として,半径がaの完全導体(電気抵抗がゼロ)の球による電磁波の散乱問題を取り上げます。完全導体球の表面上で入射平面波と散乱波を重ね合わせた全電磁波はnB=0,tE=0なる条件を満たす必要があります。

ただしは表面の法線単位ベクトル,は接線単位ベクトルです。

これは,次のような理由から得られる条件です。

つまり,境界面の内側の導体部分を領域1,外側の真空中を領域2として,境界面を含む微小な薄い直方体の中で,方程式∇=0を体積分することから(21)=0 を得ます。

一方,方程式∇×=-∂/∂tを境界面上の長さΔrの辺から成る小平面ΔS=ΔrΔhにおいて表面積分して得られる(21)Δr=-(∂/∂t)ΔrΔhで,Δh→0の極限を取ることから(21)=0を得ます。

そして,導体内部の電場1はゼロですから(21)=0 によりtE2=0 を得ます。導体内部では電場1がゼロになるのとほぼ同じ理由で磁場の強さ1もゼロですから磁束密度1もゼロです。

 

これと(21)=0 によってnB2=0を得ます。そこで得られた2つの条件式nB2=0,tE2=0 から添字2を除くとnB=0,tE=0 になるわけです。

しかし,ここではこうした条件の変わりに単に球面境界r=aの上でψ(a,θ)=0 なる条件を採用することにします。これは電磁波の成分という意味では不正確ですが,位相のずれを説明するための例として代用します。

それ故,境界条件はψ(a,θ)=Σl=0[(2l+1)ilexp(iδl)cosδl{jl(ka)-tanδll(ka)}Pl(cosθ)]=0です。これからtanδl=jl(ka)/nl(ka)が要求されます。

これを代入し返して,全波動を示す関数としてψ(r,θ)=Σl=0[(2l+1)ilexp(iδl)cosδl{jl(kr)-jl(ka)/nl(kr)/nl(ka)}Pl(cosθ)]が決まりました。

そして,tanδl=jl(ka)/nl(ka)から決まるδlをσ=(4π/k2)Σ(2l+1)sin2δlに代入すれば散乱の全断面積σ≡∫σ(θ)dΩが得られるわけです。

電磁波の波長をλとするとk=2π/λなので,波長λが半径aよりも十分に大きいとき,すなわちλ>>aならka<<1です。

そこで,例えば10/11の記事「空気分子の大きさ」で書いた半径a=d/2が 0.2~0.4μm程度の空気分子によって散乱される波長がλ=100~1000μmの可視光を想定するなら,tanδl=jl(ka)/nl(ka)~-(ka)2l+1/[(2l+1){(2l-1)!!}2]です。

実際の正しい境界条件からは,l=0 のS波は完全に消えます。

  

そこで最も大きい寄与はl=1のP波の項からきます。したがって,こうした波ではδl∝(ka)3です。

 

(正しい境界条件はr=aでBr=Bxsinθcosφ+Bysinθsinφ+Bzcosθ=0,かつEθ=Excosθcosφ+Eycosθsinφ-Ezsinθ=0,Eφ=-Exsinφ+Eycosφ=0 です。

 

また,散乱体の球はもちろん軸対称ですが,正しい散乱波の関数形は必ずしもφに依存しないψ(r,θ)ではなく,より一般の形:ψ(r,θ,φ)になります。詳細については次の記事で書きます。)

 

そこで,σ=(4π/k2)Σ(2l+1)sin2δl∝k46∝a64と評価されます。このような散乱をレイリー散乱と呼びます。これは晴れた空が青く見える主要な理由を与えます。

また,ka~1,つまりλ~aのような散乱をミイ(Mie)散乱,またはエアロゾル散乱と呼びます。これは雲の水滴による光の散乱に対応しています。これは雲や曇りの空の色を説明します。

一方,ka>>1,つまりλ<<aのような散乱はaを原子半径とする結晶内の束縛電子によるX線散乱があります。これはトムソン(Thomson)散乱ですが正しい考察は古典論でなく量子論でなされるべきです。束縛電子でなく自由電子による散乱ならコンプトン(Compton)散乱ですね。

今日はここまでにします。 

参考文献:砂川重信著「理論電磁気学」第2版(紀伊国屋書店

 

PS:さて,通学中のヘルパースクールでは10/21の授業から実習に入ります。 

 

 私自身は高齢者の介護の経験はありません。私はずっと縁がなくて,おカマではないけど故郷を出てから40年余り一人暮らしです。私の母は故郷の岡山県倉敷市にいて11月には89歳になる予定ですが,介護の必要はないようです。

 

 しかし,"知り合い=将棋友達や飲み友達"には生来の小児麻痺などの障がい者も数人いて,中には下肢が不自由な人もいて車椅子からトイレへの移乗,そして用を足した後には逆の移乗に手を貸す程度なら私も既に数え切れないくらいやったことがあります。

 

 むしろ,旅行などでは彼らの足を使わない運転で移動したことも多々あります。

 

 2年前の心筋梗塞が2回あった頃の心臓手術前後のわずかな入院期間だけですが,私自身が車椅子で移動したり,上半身がままならなくて電動ベッドに頼って起きたり寝たりしたこともあって,立ち上がるだけとか,ほんの1mくらいの移動でさえ辛いということも少しは理解できるつもりです。

 

 しかし,無関係の他人の介護は初めてなので,虚心坦懐に実習を受けたいと思います。ある意味,座学の講義よりも実習を受けることが主目的ですから。。

 

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2009年10月16日 (金)

光(電磁波)の散乱(1)

 太陽から地球に降り注ぐ"光=電磁波"が大気中の空気分子や雲の水滴などによって散乱され,その光の一部が反射されて宇宙へ引き返す現象を評価することを目的として電磁波の散乱を古典的に解析してみます。

電磁波が平面波として進行しているとき,その進行方向に障害物を置いたとします。このとき,平面波はこの障害物によって散乱されるはずです。こうした散乱に定量的な評価を与えることを考えます。

この種の問題は,近代物理学において重要な意味を持っています。

まず,真空中の電磁波の示す電場ベクトルと磁場ベクトルの6つの成分のうちの1つを取って,それをΦ(,t)と書くことにします。

これは,"障害物=散乱体"の外部では"波動方程式=ダランベール(d'Alembert)方程式":(△-∂2/∂t2)Φ(,t)=0 を満たします。ただしcは真空中の光速を表わしています。

特に,Φ(,t)が定在波の場合,つまり時間変動部分が角振動数ωが一定の波に変数分離されるΦ(,t)=exp(-iωt)ψ()なる形の波の場合には,方程式(△-∂2/∂t2)Φ(,t)=0 は方程式(△+ω2/c2)ψ()=0 に帰着します。

 

これは,ヘルムホルツ(Helmholtz)の方程式と呼ばれるの未知関数ψ()に対する偏微分方程式です。

当面の課題は,結局のところはヘルムホルツの方程式を電磁波の散乱問題に適した境界条件の下で解くことに帰着するので,その準備として(△+ω2/c2)ψ()=0 の一般解を求めておきます。

そのため,ヘルムホルツ方程式(△+ω2/c2)ψ()=0 の解ψ()をψ(r,θ,φ)として方程式を極座標表示で書くと,[(1/r)(∂2/∂r2)r+{1/(r2sin2θ)}{∂/∂θ(sinθ∂/∂θ)}+{1/(r2sin2θ)}∂2/∂φ2+k2]ψ(r,θ,φ)=0 となります。ただしk≡ω/cとしました。

散乱体を原点(r=0)のまわりに置き,z軸方向を極軸としてその方向に平面波が入射する問題を考えます。

さらに散乱体はz軸のまわりに対称な形をしているとすれば,ψは角度φには依存しませんから,ψ(r,θ,φ)をψ(r,θ)と書くと,元のヘルムホルツ方程式は,[(1/r)(∂2/∂r2)r+{1/(r2sin2θ)}{∂/∂θ(sinθ∂/∂θ)}+k2]ψ(r,θ)=0 となります。

これの一般解はPl(x)をl次のルジャンドル(Legendre)多項式としてψ(r,θ)=Σl=0l(r)Pl(cosθ)と級数で表わされます。ただし,動径rの関数Rl(r)は常微分方程式{d2/dr2+(2/r)d/dr+k2-l(l+1)/r2}Rl(r)=0 の解です。

さらに,Rl(r)≡r-1/2l(r)と置いてこれを上式に代入すると,dRl/dr=r-1/2dul/dr-(1/2)r-3/2l,d2l/dr2=r-1/22l/dr2-r-3/2dul/dr+(3/4)r-5/2lです。

 

それ故,動径の表わす方程式は{d2/dr2+(1/r)d/dr+k2-(l+1/2)2/r2}ul(r)=0 となります。

得られた方程式は,(kr)を変数としパラメータνが(l+1/2)のベッセル(Bessel)の微分方程式です。そこで,その2つの独立な解の1組としてJl+1/2(kr)(ベッセル関数),およびNl+1/2(kr)(ノイマン関数(Neumann))を取ることができます。

ただし,ノイマン関数はベッセル関数を用いてNn(x)≡{Jn(x)cos(nπ)-J-n(x)}/sin(nπ)と表現される関数です。

さらにRl(r)≡r-1/2l(r)においてul(r)=Jl+1/2(kr),およびul(r)=Nl+1/2(kr)の場合を考え,改めて2種類の球面ベッセル関数:jl(x)≡{π/(2x)}1/2l+1/2(x),およびnl(x)≡{π/(2x)}1/2l+1/2(x)を定義します。

また,球面ハンケル(Hankel)関数は,hl(1)(x)≡{π/(2x)}1/2[Jl+1/2(x)+iNl+1/2(x)],hl(2)(x)≡{π/(2x)}1/2[Jl+1/2(x)-iNl+1/2(x)]で定義されます。

そして,これらはjl(x)=(-x)l{(1/x)d/dx}l(sinx/x),nl(x)=-(-x)l{(1/x)d/dx}l(cosx/x),hl(1)(x)=(-x)l{(1/x)d/dx}l{exp(ix)/x}と表わされることもわかります。

すなわち,j0(x)=sinx/x,j1(x)=sinx/x2-cosx/x,j2(x)=(3/x3-1/x)sinx/x2-3cosx/x2,..,n0(x)=-cosx/x,n1(x)=-cosx/x2-sinx/x,n2(x)=-(3/x3-1/x)cosx/x2-3sinx/x2,..です。

よってx→ 0 のときには,jl(x)→{xl/(2l+1)!!}[1-x2/{2(2l+1)}+..],nl(x)→(2l-1)!!/xl+1で,hl(1)(x)→-i(2l-1)!!/xl+1,hl(2)(x)=→i(2l-1)!!/xl+1となります。

 

ここに(2l+1)!!≡(2l+1)(2l-1)(2l-3)..5・3・1,(2l-1)!!≡(2l-1)(2l-31)(2l-5)..5・3・1です。

このことから,nl(x)はx→ 0 に対して発散する関数であることがわかります。

一方,xが大きいところ,つまりx→ ∞での漸近形は,jl(x)→sin(x-lπ/2)/x,nl(x)→-cos(x-lπ/2)/x,hl(1)(x)→(-i)l+1exp(ix)/x,hl(2)(x)→il+1exp(-ix)/xとなります。

そして,z軸のまわりで対称なヘルムホルツ方程式の一般解はψ(r,θ)=Σl=0[Aljl(kr)+Bll(kr)]Pl(cosθ)で与えられることがわかります。

ラプラスの方程式Δχ(r,θ)=0 はヘルムホルツ方程式(Δ+k2)ψ(r,θ)=0でk2をゼロとしたものですから,解はχ(r,θ)=Σl=0[All+Bl-(l+1)]Pl(cosθ)です。

逆に言えば,ラプラスの方程式の解χ(r,θ)でrlをjl(kr)に,r-(l+1)をnl(kr)に置き換えさえすればヘルムホルツ方程式の解ψ(r,θ)が得られます。

特に,z方向へ進む平面波exp(ikz)=exp(ikrcosθ)については,レーリー(Rayleigh)の公式と呼ばれる展開式:exp(ikrcosθ)=Σl=0(2l+1)iljl(kr)Pl(cosθ)が成立することが知られています。

念のため,これを証明しておきます。

(証明)平面波ψ(r,θ)=exp(ikz)=exp(ikrcosθ)は明らかにヘルムホルツ方程式(Δ+k2)ψ(r,θ)=0 の1つの解ですから,exp(ikrcosθ)=Σl=0[Aljl(kr)+Bll(kr)]Pl(cosθ)なる形に展開可能です。

 しかも,左辺は原点r=0でexp(ikrcosθ)=1(有限)ですから,r=0でl≧0でnl(kr)→(2l-1)!!/(kr)l+1=∞ より全てのBl(l=0,1,2,..)はゼロでなければなりません。よってexp(ikrcosθ)=Σl=0ljl(kr)Pl(cosθ)と書けます。

それ故l=0(ikrcosθ)l/l!=Σl=0ljl(kr)Pl(cosθ)ですからr→ 0ではΣl=0(ikrcosθ)l/l!→ Σl=0[Al{(kr)l/(2l+1)!!}Pl(cosθ)と挙動します。

また,Pl(x)={1/(2ll!)}(dl/dxl)(x2-1)lです。したがってPl(cosθ)における(cosθ)lの係数は(2l)!/{2l(l!)2}です。

よってl=0(ikrcosθ)l/l!~Σl=0[Al{(kr)l/(2l+1)!!}Pl(cosθ)において (cosθ)lの項を等置すると,(ikrcosθ)l/l!=(2l)!Al/{2l(l!)2(2l+1)!!}(krcosθ)lとなります。これから,il=Al/(2l+1),すなわちAl=il(2l+1)を得ます。(証明終わり)

さて,波動が散乱される現象を記述するには一般に2つの方法が考えられます。

その1つは散乱体に向かって入射する波動を平面波の重ね合わせの波束であるとして,その波束が散乱体に衝突して散乱していく様子を時間的に追跡していく方法です。

これに対して,もう1つの方法は,現象全体を見て,それを1枚の写真に取って全体の様子を調べる方法です。このとき波動の流れが定常的なら,全体の様子はいつ写真を取るかという時間に関係しません。このような方法を定常的方法といいます。

ここでは,後者の方法を用いて散乱問題を取り扱うことにします。

波が散乱されていく全体を示す定常波は散乱体がある原点(r=0)近傍を除けば,方程式(Δ+k2)ψ()=0を満たします。

 

そこで,軸対称な散乱体による散乱問題は,ヘルムホルツ方程式の一般解ψ()=Σl=0[Aljl(kr)+Bll(kr)]Pl(cosθ)でそれに適合した境界条件を満たす未定係数Al,Blを決める問題に帰着します。

"z軸=極軸"の方向に平面波が入射したとして,それがr=0 にある散乱体によって散乱される様子を1枚の写真に取ったとします。

 

このときに見られる波動の全体は,散乱体から十分遠方では入射平面波と外向き球面波の両方の重ね合わせから成っています。

すなわち,r→ ∞での波動はψ()→ exp(ikz)+f(θ)exp(ikr)/rと表わされるはずです。

 

ここでf(θ)は散乱振幅(scattering amplitude),θは散乱角(scattering angle)と呼ばれる量に相当します。

問題を解く前に,散乱を調べることによって知ることができる物理量について知る必要があります。

まず,電磁場のエネルギーの流れ密度を表わすポインティングベクトル(Poynting vector)×です。は磁場の強さ(磁界)であり真空中では0です。

φをスカラーポテンシャル,をベクトルポテンシャルとすれば,=-∇φ-∂/∂t,B=∇×と表現されますが,真空中の電磁波なら電荷も電流もなく,特に∇=-∇2φ-∂∇/∂t=0 なのでクーロンゲージ∇=0 を取れば,∇=-∇2φ=0 となります。

そこで,φ=定数であり特にφ=0 としてもかまいません。それ故,だけを用いて=-∂/∂t,=∇×と書けます。

 

今の場合,電磁波は角振動数ωが一定の定常波ですからベクトルポテンシャルは複素表示で(,t)i()exp(-iωt)と書けます。

 

ここでは,の空間部分が実数になるようにの振幅を純虚数i()に取っています。

 

(,t)=ω()exp(-iωt),(,t)=ω{∇×()}exp(-iωt)です。

実際の電場,磁場は実数であって,それぞれRe,Reですから,そのポインティングベクトルは=Re×ReH=Re×Re0=(ω20){×(∇×)}cos2(ωt)で与えられます。

そこで,エネルギー流の実効値として時間平均を取れば,周期をT=2π/ωとして<cos2(ωt)>=(1/T)∫0Tcos2(ωt)=1/2なので,<>={ω2/(2μ0)}{×(∇×)}=(×*)/(2μ0)です。ただし< >は時間平均を示す記号です。

そこで,一般に"エネルギー流束=単位時間に単位面積を通過する平均エネルギー"は<||>=<|×*|/(2μ0)>で与えられます。

,考えている入射平面波:ψin()≡exp(ikz)は電場(,t)=ω()exp(-iωt)の空間部分:ω()を表わすものと考えます。

 

つまり,電場(,t)がx成分のみを持つように偏光しているとしてEx(,t)=ψin()exp(-iωt)とし,()は()=(ψin()/ω,0,0)で与えられるとします。

 

このとき,()=(exp(ikz)/ω,0,0)で(,t)=ω{∇×()}exp(-iωt)によって,磁場(,t)はy成分のみを持ちcBy(,t)=ψin()exp(-iωt)となります。なぜなら,kω=cです。

そこで,散乱問題において単位時間に単位面積を通って入射する電磁波のエネルギー流を特にinと書けば,平均の単位面積を通る入射エネルギーの率は<|in|>=<|×*|/(2μ0)>={1/(2cμ0)}|ψin|2=1/(2cμ0)です。

これに対して散乱波をψsc()≡f(θ)exp(ikr)/rと書き,単位時間にθ方向の面積要素dSを通って散乱される電磁波のエネルギーをscdSと書けば,<|sc|>dS={1/(2cμ0)}|ψsc|2dS={1/(2cμ0)}|f(θ)12dS/r2={1/(2cμ0)}|f(θ)|2dΩです。

 

ただしdΩ=dθdφは散乱体の中心からdSを見た立体角です。

そこで,単位時間に単位面積を通って単位エネルギーの電磁波が入射したとき,立体角dΩに散乱されて出てくる電磁波の単位時間当たりの平均エネルギーは,σ(θ)dΩ≡<|sc|>/<|in|>dS=|f(θ)|2dΩで与えられます。

上の式の比例係数σ(θ)は面積の単位を持っているのでσ(θ)を散乱の微分断面積(differential cross-section)と呼びます。

そして,σ≡∫σ(θ)dΩを散乱の全断面積(total cross-section)といいます。これは単位時間に単位面積を通って単位平均エネルギーの電磁波が入射したときに,散乱されて出てくる単位時間当たりの全平均エネルギーです。

全断面積は,直感的には散乱体の幾何学的断面積に相当するものですが,入射波の波動性のためこれらは一般には一致しません。

今日はここまでにします。

参考文献:砂川重信著「理論電磁気学」第2版(紀伊国屋書店)

  

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2009年1月15日 (木)

運動物質内の相対論(15)(物質中の電磁エネルギー運動量;後編)

 続きです。このシリーズはとうとう今日で終わりです。

まず,あらゆる表現形式が同等(対等)であることの実際的証明が与えられるまでの歴史から紹介します。

1960年代の終わりまでに,テンソルの対称性,つまり運動量,角運動量の保存への物質場のテンソルの役割に大いに着目し,電磁場テンソルと物質場テンソルの新しい対を求めて発展させることを念頭においた研究が次々とありました。

やがて,PenfieldとHausは1967年に,幾つかの異なる電磁理論の定式化は等価であると考え,これをテストするための彼らのいわゆる"仮想的力の原理(Principles of Virtual Power)"なる定式化を道具として,この考えをさらに進めました。

さらに1972年のde GrootとSuttorpもまた,物質場のテンソルの重要な役割に着目し,エネルギー運動量の保存則は元々閉じた熱力学系でのみ適用可能な法則であることを認識したモデルを展開しました。

 

しかし,電磁場と物質場の和で与えられる総エネルギー運動量テンソルの正しい形についてはPenfieldとHausには賛同しませんでした。

しかし,この食い違いは直接的に,Abraham,Minkowski論争に対応するテンソルの差異によって生じたものではなく,電磁波が存在する際の物質の挙動に関して全体としてなされた仮定の違いによるものでした。

de GrootとSuttorpは彼らの表現式が媒質の微視的性質の考察から演繹されたものであるとして,自らの表現式の優位性を主張しました。

 

しかしながら,この2種の総エネルギー運動量テンソルの表現形式については,実験による比較検証はなされていません。

さて,少しの間,総エネルギー運動量テンソルの正しい形がどうなるかについては忘れて,これの具体的な形そのものとは無関係に,物質の挙動について我々の提案するモデル化が,これまで提案されてきた種々の異なる形式を識別するために役立つということを証明します。

まず,適当に採択された閉じた系の総エネルギー運動量テンソルをTμνと記すると,この系では線運動量も角運動量も保存するので,∂Tμν/∂xν=0,かつTμν=Tνμが成立します。

 

これらをより馴染み深い形式で書くなら,エネルギー保存の連続方程式∂g0/∂t+∂T0j/∂xj=0,および線運動量保存の連続方程式∂gi/∂t-∂tij/∂xj=0 の形になります。

ここに,gμは4元総運動量密度でgμ≡Tμ0/cで定義され,またtij≡-TijはMaxwellの応力テンソルです。特にh≡cg0=T00はエネルギー密度でSj≡cT0jはエネルギー流束です。

 

つまり,はポインティングベクトル(Poynting vector)×で,gμのうち成分がgi=Ti0/c(i=1,2,3)の3次元ベクトルは総運動量密度です。

 

(g0,)は4元ベクトルであろうことを意識しています。

総エネルギー運動量テンソルを表わす行列(Tμν)は,μ=0 に対応する1行目の成分が(g0,T0j)で,その下の2,3,4行目は(cgi,-tij)となります。

 

そこで,成分がg'j≡T0j/cの3次元ベクトル'を定義すると,行列(Tμν)の1行目成分は,(g0,cg'j)とも書けますが,閉じた系のエネルギー運動量テンソルは対称であるべき(角運動量保存)Tμν=Tνμという要求から'=となります。

 

結局,(Tμν)は,1行目が(g0,cgj),その下の行が(cgi,-tij)の行列となります。

そして,総テンソルTμνを電磁場テンソルと物質場テンソルの和としてTμν=TEMμν+Tmatμνと表わせば,∂Tμν/∂xν=0,かつTμν=Tνμは,∂(TEMμν+Tmatμν)/∂xν=0,かつTEMμν+Tmatμν=TEMνμ+Tmatνμと書けます。

これはg0=gEM0+gmat0,EMmat,EMmatと表記すると,エネルギー保存の連続方程式の分割∂(gEM0+gmat0)/∂t+∂(TEM0j+Tmat0j)/∂xj=0,と線運動量保存の連続方程式の分割∂(gEMi+gmati)/∂t-∂(tEMij+tmatij)/∂xj=0 になります。

再びg'j≡T0j/cとおけば,行列(Tμν)=(TEMμν+Tmatμν)なる分割は,(cg0,cg'j)=(gEM0+gmat0,cg'j),および(cgi,-tij)=(c(gEMi+gmati),-(tEMij+tmatij))を意味します。

 

しかし,EMmat同様,'=EM'+mat'なる分割も可能です。しかも'=なのでEM'+mat'と書くこともできます。

そして,Abrahamのテンソルのように電磁場テンソルTEMμνが対称テンソルなら,物質場テンソルTmatμνも対称なのでEM'=EM,かつmat'=matが従います。

 

しかし,Minkowskiテンソルの場合にはEM×で,一方EM'=c-2×ですから,真空中でない限りEM'≠EMとなります。

Minkowskiテンソルが用いられる際にはEMmat,EMmatの右辺のうちの物質場成分mat,matは安全に無視できるとして切り捨てられることが多いのですが, Minkowskiテンソルの下では一般にEM'≠EMなので,電磁場単独では角運動量は保存されません。

 

物質場の成分の存在を正しく認識しなかったことが,Minkowskiテンソルが,ときには批判的に受け取られた理由の1つでした。

歴史的にはMinkowskiのテンソルもAbrahamのテンソルも,電磁場テンソルと物質場テンソルのマッチした対という形で提案されたわけではありません。

 

Abrahamのテンソルへの対応する物質場の片割れは1954年に初めてJonesとRichardsによって提案されました。

一方,Minkowskiのテンソルは1968年のJamesと1975年のWalkerらの実験結果を説明するという目的で1970年代になされた理論的再評価(de Groot and Suttorp(1972):Israel(1977);Mikura(1976))を通して,対応する物質場の片割れを初めて獲得しました。

こうして,その後も時と共にMinkowskiとAbrahamのテンソルを区別するという主旨の実験が数多く行われ,その度に2,3年後には反証されるということが繰り返されてきたのですが,今やその理由を説明することができます。

簡単のため,総エネルギー運動量テンソルTμν=TEMμν+Tmatμνについての式∂Tμν/∂xν=0,かつTμν=Tνμを取り上げて考察してみます。どんな実験もエネルギー運動量テンソル全体については敏感ですが,角運動量や線運動量についてはあまり敏感ではありません。

そこで,任意に与えられた実験において,TXμνを実験結果には意味のある効果を与えないような物質場のエネルギー運動量テンソルの部分項として,Tmat'μν≡Tmatμν-TXμνとによって新しい物質場テンソルTmat'μνを定義します。

 

実験における挙動の予測において,このTmat'μνをTmatμνの代わりに使用するとき,ある実験では前のTmatμνを用いた場合と同じく,なお"正しい"結果が得られることもあり,また別の実験ではそうではないということが有り得ます。

これを描写するため,Minkowskiの電磁テンソルを考察してみます。

 

一般に,このテンソルは孤立して物質場は無いTmat'μν≡0 として,単独で用いられることが多いのですが,Minkowskiの電磁テンソルTEMμνは非対称なので,Tmat'μν≡Tmatμν-TXμν,およびTEMμν+Tmatμν=TEMνμ+TmatνμよりTXμνなる項もまた非対称であると結論されます。

そのため,Minkowskiの電磁エネルギー運動量テンソルは直線型の実験では大いにうまくいきましたが,単独では回転的実験を正しく説明できませんでした。これは対応する物質場テンソルを無視したためであろうと推測されます。

 

こうしてMinkowskiの電磁テンソルではTmat'μν≡ Tmatμν-TXμνなる変換が直線型の実験では前と同じ結果になり,回転的実験ではそうではないということで,ある実験では前のTmatμνを用いた場合と同じ結果が得られることもあり,また別の実験ではそうではないということが有り得るという事実の典型例になっています。

個々に与えられた電磁場と物質場のテンソルの対は何らかの失敗が生じるまでは広い範囲の実験にわたってうまくいきますが,そのうち生じる失敗はそれまでの実験では導入されていなかった新しい相互作用の結果として起こり得ることになります。

 

それ故,TXμνはこれまでの実験には影響しない新しい項として記述されるわけです。

多くの場合,実験は電磁エネルギー運動量テンソルの1つが非正当であるという言明を引き起こしますが,必ず適切な項が見つかってそれを対応する物質場のテンソルに加えると,新しく正しく修正された物質場のテンソルにより該当する電磁場テンソルの非正当性は覆されます。

 

その結果,物質場に必要な項を付加すれば正当でないとされたどんな電磁場テンソルも救済されます。

AbrahamのテンソルもMinkowskiのテンソルも一般に電磁圧の効果が組み込まれたケースでは用いることはできません。

結局,AbrahamとMinkowskiの電磁エネルギー運動量テンソルの等価性の実際的で明解な立証は1973年にGordonによって遂行されました。

 

彼の証明はAshkinとDziedzicの実験に反応してなされたものです。

彼は,電磁場テンソルに沿って進む物質場テンソルに関連した成分はその媒質の音速で伝播すること,そしてDziedzicの実験における光学的パルスは流体内の圧力が平衡値に達するのに充分なほど長く,それ故,圧力のような純粋に物質的な効果をも考慮に入れる必要があることを立証しました。

それから彼は任意の輻射パルスが空気と流体の境界を横切る際にAbrahamとMinkowskiの電磁エネルギー運動量テンソルの両方が同じ挙動を予測することを示しました。

全ての実在物体はある程度まで変形可能であり,Gordonの証明の中で考慮されている効果に類似した手順での張力や圧力の伝達を許します。

 

そこで,Gordonの証明は履歴現象のような散逸効果が無視できるほど十分変形が小さいような任意の等方的な誘電媒体に容易に一般化され,また,より大きい変形や非等方的なケースにも外挿できる可能性を有しています。

また,非一様な誘電物質についても,それらを無限小の一様な塊へと分解することによって,結局一様媒質と同様に扱うことができます。

 

Gordonの仕事は,やがてPeierls(1976,1977)によって弾性的な固体中の有限幅の光子ビームにも適用できるように拡張されて,いくつかの興味深い結果に結びつきました。

もっとも,後にRobinson(1975)は,Gordonの結果は比誘電率が1に近いような物質に対してのみ有効であるという限界性を指摘しました。

 

また,誘電媒質の変形可能性がGordonのアプローチにとって根本的なことですから剛体的な誘電体を扱う際には不適切になる障害もあるようです。

さて,1972年のde Groot and Suttorpの仕事は,その内部で電磁エネルギー運動量テンソルの異なる選択の等価性の証明となるべき理論的枠組みを与えました。

 

特に,AbrahamとMinkowskiのような特別な電磁エネルギー運動量テンソルを普通に用いるときについて,これを具体的に陽に示すという主旨の論題については少しの間,論争を滞らせました。

しかし,すぐにMikra(1976),Kranys~(1979,1982)がAbrahamのテンソルとMinkowskiのテンソルの等価性の短い証明を与えました。

 

彼らはPenfieldとHausの仕事もde Grootと Suttorpの仕事も知らないで独自に研究したようでした。そのうち,Mikra(1976)の論文は特に読みやすく数式的に詳しいものです。

それからも,色々あったようですが,結局,総エネルギー運動量とはそもそも何物か?という新しくてはっきりとした疑問も生まれました。あらゆる環境で我々の必要性に仕する総エネルギー運動量の単一の表現が存在して,それを書き下すことが可能だろうか?という疑問ですね。

 

しかし,生憎そうした万能の表現を見出すことに関する答はノーです。でも幸いなことに,多くの環境では媒質中の物性の完全なる理解が要求されるわけではありません。

 1976年にMikuraは非粘性,圧縮性,非分散性,分極性を持ち,磁化可能な等方性流体の総エネルギー運動量テンソルの1つの理想化された形式を導出しました。

 

 彼の論文には電磁圧も音波も含まれています。論文の後の方では,大抵の環境では簡単のためこれらの項は省略されていますが,全体の表現では全てが明記されています。

 

 以下,Mikraの導出したエネルギー運動量テンソルを,ここで用いている単位系に修正して紹介します。

 まず,総エネルギー運動量テンソルの成分Tμνを様々な部分系の成分の和としてTμν=T(m)μν+T(f)μν+T(P)μν+T(M)μν+T(d)μνと書きます。

 

 ここに,T(m)μν=(ρ02+ρ0εi)uμν+φ(uμν+δμν),T(f)μν=ε02{Fμλνλ-(1/4)F2λσδμν},T(P)μν=α-1{Pμλνλ-(1/4)P2λσδμν},T(M)μν=-Fμλλ-(1/4)β-12λσδμν,T(d)μν=β-1μλνλ+F*μλνλです。

  

 ただし,X2λσなる表現は実は添字λ,σには無関係なスカラーX2λσ≡Xλσλσを表わし,X*μνはX*μν≡(1/2)εμνλσλσで定義されるXμνに双対な,または対偶のテンソルです。

 

 なお,εμνλσは,Levi-Civitaの記号です。

 上記テンソルの内訳としては,T(m)μνが機械的な流体の流れ,電気圧,磁気圧による項から成るもの,T(f)μνが自由空間での電磁場と同等な項からなるもの,T(P)μνが媒体物質の分極に関連した項から成るもの,T(M)μνとT(d)μνが磁化に関連した項から成るものです。

 

 T(d)μνは,これに続いて行なうAbrahamとMinkowskiの電磁エネルギー運動量テンソルの導出を容易にするためにT(M)μνから分離させられた項です。

 ただし0は局所静止系での物質密度,uμは局所媒質要素の4元速度です。また,εiは非電磁的性質を持つ比内部エネルギーで,それはρ0と比弾性エントロピーsiの関数です。

  

 αとβはα≡ε-ε0,β≡μ0-1-μ-1によって電気定数ε,ε0,磁気定数μ,μ0に関係付けられる量です。

 

 δμνは,もちろんKroneckerのデルタ記号です。

 さらに,φ≡φh(1/4)Ka2λσ+(1/4)Kb2λσです。

  

 ただし,Ka≡ρ0{∂(1/α)/∂ρ0}|s,Kb≡ρ0{∂(1/β)/∂ρ0}|sです。そして,φhは流体の総静水圧を表わすもので,これはφh=ρ02(∂εi/∂ρ0)で与えられます。

電磁場関連の項について,Fμνは普通の電磁場のテンソルです。

 

そして,分極テンソルPμνと磁化テンソルMμνは,それぞれ与えられた座標系での3次元の分極ベクトル,および磁化ベクトルに次のように関連付けられたものです。

 

すなわち,Pμν≡(1/c)(vμν-vνμ),Mμν≡(1/c)(vμν-vνμ)です。ただしv0=c,P0=M0=0 としています。

分極ベクトルと磁化ベクトルは,電磁場の強さを示す,,,(=ε,=μ)と,相対論的関係式=ε0+(/c)×,0+(/c)×によって関係付けられる量です。

このテンソル表現によれば,総運動量と応力テンソルはgi≡Ti0/c,tij≡-Tijにより,={ρ0(c2+ρ0εi)+φ}γ2/c+ε0×+c-2α-1×(×)+c-2β-1×(×)-c-2×(×)+c-2×,

 

および=-ρ0(c2+εi)c-2γ2+φ(c-2γ2)+ε0+μ0-1-(1/2)(ε02+μ0-12)+α-1[+c-2(×)∧(×)-(1/2){c-2(×)22}]+β-1[+c-2(×)∧(×)-(1/2){c-2(×)22}]-+c-2∧(×)+c-2(×)∧+{c-2(×)-BM}となります。

ここで,なる記号は()ij=xijなるテンソル積を意味します。またij=δijです。

 

あらゆる場の成分にわたるトレース(対角和)はゼロなので,場は質量ゼロの光子の場と比較できる意味を持ちます。

Mikuraに従って上記の総エネルギー運動量テンソルTμνをAbrahamの表現とMinkowskiの表現のそれぞれについて,電磁場テンソルTEMμνと物質場テンソルTmatμνの対に分解します。分解というのはTμν=TEMμν+Tmatμνです。

 まず,Abrahamでは単にTmat,Abrμν=T(m)μν,TEM,Abrμν=T(f)μν+T(P)μν+T(M)μν+T(d)μνです。

 

 Minkowskiによる表現を求めるために,Cμν≡α-1μλνλ-Fμλνλなるテンソルを定義すると,Tmat,Minkμν=T(m)μν+T(d)μν+Cμν,TEM,Minkμν=T(f)μν+T(P)μν+T(M)μν-Cμνとなります。

これらは非相対論的極限では次のように書くことができて,電磁場のテンソルとして馴染み深い表現になります。

すなわち,Abraham電磁場テンソルの行列(TEM,Abrμν)は1行目が((1/2)(EDHB),c-1×),その下の2,3,4行目は(c-1×,-+(1/2)(EDHB))です。

 

Minkowski電磁場テンソルの行列(TEM,Abrμν)は,1行目はAbrahamと同じく((1/2)(EDHB),c-1×)ですが,その下の行は(c×,-+(1/2)(EDHB))となります。

ちなみに,物質場テンソルも同じように表現すると,Abrahamの表現での物質場テンソルの行列(Tmat,Abrμν)は,1行目が(ρ0(c2+εi),ρ0),その下の2,3,4行目は(ρ00+φ)です。

 

一方Minkowskiの表現では,行列(TEM,Abrμν)は1行目はAbrahamと同じく(ρ0(c2+εi),ρ0),その下の行は(ρ0-c×+c-1×0+φ)です。

このように陽な表現にすると,Minkowskiの物質場テンソルからAbrahamの力が生起するのは明らかです。

今や,群速度の変化に付随した屈折率ngの一様な誘電体物質の塊に総運動量と体積Vを持つ光の波束が入射する,という典型的な例について考察することが可能になりました。

 

これまで媒質を構成する物質を真空ではないことを総称する意味で常に誘電体と呼んできました。

 

しかし,ここでは構成物質は磁性体ですが誘電体ではない,εr≡ε/ε0=1,μr≡μ/μ0≠1であると仮定します。

 

こう仮定しても一般性が失われることはありません。

この物質中では光の波束の群速度はc/ngです。

 

一方,これに伴って波束の全体積もVからV/ngに減少し,総運動量はのまま保存されますから入射前の波束の自由空間での総運動量密度をfと書けば誘電体物質中での総運動量密度は=ngfとなります。

 

ところが,自由真空での電場を,磁束密度をB=μ0とすると,自由真空での運動量密度はf=c-2×=c-2μ0-1×です。

 

そして,今は媒体物質は磁性体ですが誘電体ではないと仮定しているので,電場はこの物質内でも自由真空内と同じであるはずです。

 

また,真空中であるか物質中であるかを問わず,常にdiv=0 が成立するので,は真空と物質の境界で連続ですから,磁束密度についても物質中のそれは自由真空と同じです。

 

ただ,磁束密度と磁場との関係が物質中の量による表現ではB=μ0から=μに変わるだけです。

 

つまり,電場,磁束密度は自由空間でも物質内でも同じなので,真空中の量であるか物質中の量であるかは関係ないのですが,磁場のみは改めて物質中の磁場であると考えると,自由真空での運動量密度がf=c-2μ0-1×=c-2(μ/μ0)×と書き直されます。

 

それ故,Abrahamの表現での物質中の電磁運動量密度はEM,Abr=c-2×fr=(μ0/μ)fと書けるわけです。

 

このことから,総運動量密度が=ngfであるためには電磁運動量密度EM,Abrに伴なう物質場の運動量密度がmat,Abr=(ng-μ0/μ)fとなることが必要です。

 

これを先のAbrahamの物質場テンソルを示す行列(Tmat,Abrμν)での2,3,4行目の表現(cmat,Abr,-mat,Abr)=(ρ00+φ)と比較すると,mat,Abr=ρ0=(ng-μ0/μ)fなる式が成立する必要があるとわかります。

 

以上から,結局,電磁流体媒質の速度mat,Abr=ρ0=c-2(μng0-1)(×)なる式を満たすべきであるという関係を得ることができました。

この表式によれば,物質が非分散性の場合,つまりこの磁性体媒質の透磁率μが光の色または光波の振動数には依らずng=n=(μ/μ0)1/2を満たす場合なら,上の等式から得られる物質速度がMinkowskiの表現でのテンソル対から得られるそれと一致することがわかります。

つまり,この磁性体媒質ではε=ε0よりc-1=(ε0μ0)1/2=(εμ0)1/2なので,Minkowskiの運動量密度の表現mat,MinkにAbrahamの表現から得られた上の等式ρ0=c-2(μng0-1)(×)を代入して非分散性ng=n=(μ/μ0)1/2を用いれば,mat,Mink=ρ0-c×+c-1×=c-1(μng0-1)(×)-c×+c-1×=0 となります。

 

すなわち,Minkowskiの表現では総運動量密度=ngf=nfの全てを電磁運動量密度が担い,物質場の密度mat,Minkはゼロであることに相当する結果です。

 

これはまた,総運動量密度EMmat=ρ0+c-1×H=×が,確かにngfに等しく矛盾が生じないことをも意味しています。

この結果は,JonesとRichards(1954),およびJones(1978)で得られた表現とは異なっているのですが,これは物質中での総運動量密度をngfではなく位相速度の変化に関わる屈折率をnφとしてnφgfになるとしているのが誤りであることがわかります。

 

ただし,彼らのように解釈すると,f,mat,ames=c-2(nφg-1)(×)となり,非分散性媒質を仮定すると,×-c-2×=c-2rμr-1),つまり,対応する力の密度としては丁度Abrahamの力になりますがこれは偶然でしょうか?

 

(※訳注:光の波束が自由真空から屈折率ngの媒質中に入ると,代表的な光波の位相速度は真空中のcからc/ngになりますが,それは,波としての1波長がλからλ/ngに減少するためと考えられます。

 

そのため波束の進行方向の特徴的な長さも真空中の(1/ng)倍となり波束の全体積は真空中のVからV/ngに減少すると思われます。

 

これは,総運動量密度だけではなく,総エネルギー密度hについても当てはまる話と思われます。

 

しかし,運動量の場合には光波が自由空間にあるときの静止物質の運動量をゼロと考えて総運動量は光波のみがになうと考えて良いのに対し,総エネルギー密度の場合は静止物質の質量や内部エネルギーはゼロではないため光波が自由空間にあるときの総エネルギーをhf=hf,EM+hf,matと書けば,誘電体物質中での総エネルギー密度の評価がh=ngfとなるとは考えられません。

 

前に述べたように,電磁波のエネルギー密度hEM=TEM00=(1/2)(EDHB)は真空中でも誘電体物質中でも同じで,Mikraの式でもそうなっています。

 

物質と合わせた総エネルギー密度h=T00=TEM00+Tmat00=(1/2)(EDHB)+ρ0(c2+εi)の変化が電磁波の波束の全体積が真空中のVからV/ngに変わることとどう関連しているのでしょうか?) ← Pending)

 

最後に,以上を補完する意味で実際に実験で観測される量である媒体物質における運動量の遷移,または力やトルクという量が,電磁場テンソルにとってはどうした意味を有するのか?という観点での一般論を記述して終わりにします。

  

 閉じた系を一般の2つの部分A,Bに分けることを考えます。

 

 ただし,A,Bは物理空間としては全く同一の領域を占めるけれども,定性的には異なる分割であるとします。

 

 つまり,Bを誘電体媒質のような物質成分,Aを電磁場成分とすれば,これまで述べてきた話と同じです。

これまでと同じように,Tμνを閉じた系全体の総エネルギー運動量テンソルであるとして,∂Tμν/∂xν=0,かつTμν=Tνμが満足されているとします。

 

そして,これをTμν=TAμν+TBμνによってA,B個々のエネルギー運動量テンソルTAμν,TBμνに分割します。

 

同様に,線運動量密度,角運動量密度,応力テンソルもA,Bの2つの部分に分けます。

このとき,Bにおける力の密度とトルクの密度はAの量を用いてfBi=∂gAi/∂t-∂tAij/∂xjBjk=-∂MA0jk/∂t+∂MAijk/∂xiと表わされます。

 

これらは運動量とトルクの系Bが得る遷移率を系Aの損失率に等置するという釣り合い方程式です。ただしMijkを角運動量密度テンソル,τjkをトルク密度テンソルの成分を示す記号としています。

部分系についての等式を領域の全体積わたって積分すると,2つの部分系の結合した結果,例えば電磁場からの運動量の吸収が得られます。

 

すなわち,,Τを体積V全体の力およびトルクとし,誘電体物質をBとすれば,B全体が受ける力はB=∫dVB,受けるトルクはΤBjk=∫dVτBjkとなります。

Bが受ける力については,fBi=∂gAi/∂t-∂tAij/∂xj,およびGaussの定理によって,FBi=∫dVfBi=dGAi/dt-∫dSjAijが得られます。

 

時間平均で考えることができる場合には,右辺第1項の寄与はゼロでFBi=-∫dSjAij,です。

 

すなわち,誘電体媒質Bが受ける力は電磁場のMaxwell応力によるものだけです。

  

同様に,誘電体媒質Bが受けるトルクは電磁場の角運動量によるものだけで,ΤBjk=-d[∫dVMA0jk]/dt+∫dSkAijkで時間平均で考えることができる場合にはΤBjk=∫dSkAijkとなります。

 

特に,力だけに着目すると一般には媒質Bが受ける力はB=∫dVB,fBi=-∂gBi/∂t+∂tBij/∂xj=∂gAi/∂t-∂tAij/∂xjで定義され,FBi=dGAi/dt-∫dSjAijと書けます。

 

今の問題であるA=EM(electromagnetic),B=mat(material)の場合,EMmat,EMmatなる分割の仕方は全く任意です。

 

AbrahamとMinkowskiの分割では,応力の分割EMmatの形は同じなので,FBi=dGAi/dt-∫dSjAijのうち-∫dSjAijはどちらの表現でも全く同じなのですが,実は左辺のFBiと右辺のdGAi/dtの双方がAbrahamとMinkowskiの分割では異なるのですね。

 

つまり,まず共通の総運動量についてAbrahamの分割EM,Abrmat,AbrとMinkowskiの分割EM,Minkmat,Minkで,右辺における(EM,mat)のペアの内容が異なります。

 

そのため,B=∫dVB,fBi=-∂gBi/∂t+∂tBij/∂xj=∂gAi/∂t-∂tAij/∂xjにおいて,応力テンソルの項∂tAij/∂xj=-∂tBij/∂xjは両者で同じなのですが,Abrahamの分割で観測される力がB,Abr=dGA,Abri/dt-∫dSjAijであるのに対して,Minkowskiの分割で観測される力はB, Mink=dGA,,Minki/dt-∫dSjAijとなります。

 

したがって,当然B,AbrB, Mink-d(GA,,Minki-GA,Abri)/dtですから,実験でBが受ける力として観測されるのは,双方で別の意味の力であるため,Abrahamの力だけの差異が観測されるのは明らかですね。

 

結局は,A=EM,B=matとしたAbrahamとMinkowskiの分割の仕方のいずれが正当であるかを主張してきたというのが論争の根源です。

 

そもそも双方が,微妙な実験観測において観測結果のどれが電磁場の効果であって物質場の効果ではないということを何を基準にして区別しているのかという,好みの問題に帰着するに過ぎず,双方とも間違っているわけではないというのが結論とされています。

 

論争するなら,各々が勝手に都合の良い定義で区別,分割して論じても不毛な水掛論争なので,予め論点が何なのかを明確に定義して共通の土俵でやれということでしょうかね。

 

実際にはこうしたレビューが出た前後でも,なお論争は続いているらしく,これに関する新しい論文もさらに出されているようです。

  

まあ,物理学の仮説の実験による検証,立証は数学の定理の証明ではないので,立証されたからといって,必ずしもその仮説が真であり誰にとっても完全に決着した,というわけにはいかず,どんなに素晴らしく見える物理理論で原理と呼ばれているようなものでも永久に仮説であり続けるわけです。

 

何か1つでも反証が見つかれば,その項に関しては間違いであるということになることが常に有り得ます。

 

そのため,通常の物理屋であれば,声高にこれが絶対に正しいなどと主張することはできませんが,世の中に99%以上は正しい理論はいっぱいありますね。

 

同じように,これが絶対に間違っているなどとも主張できませんが,せいぜい,99%以上は間違っているが正しい可能性もゼロではない云々と主張できる程度でしょうね。

 というわけで,私自身はこの論文にて,決着が付いたという方向で大体のことは納得しましたので,この項目に関する「運動物質内の相対論」シリーズの記事はこれにて終わりにします。

 

 論文にはまだ色々と書かれていますが,後は実際に当論文を入手してご自分で読まれて解釈されるなり,別文献を参照されるなり,あるいは自力で沈思黙考,計算をして頂くなりに任せます。

 

 私の記事ではこのくらいにしたいと思います。

参考文献: Robert N.C.Pfeifer,Timo A.Nieminen,Norman R.Heckerberg((The University of Queensland Brisbane Queensland 4072 Australia):"Momentum of an electromagnetic wave in dielectric media" Reviews of Modern Physics Vol.79(4),pp1197-1216(2007)

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2009年1月12日 (月)

運動物質内の相対論(14)(物質中の電磁エネルギー運動量;中篇)

 続きです。これでこのシリーズを終わりにするつもりでしたが,改めて論文を読み返しながら書いていると原稿的にも時間的にも長くなってしまったので,またまた後編から中篇に変更となってしまいました。

まず,前回未完になっていた原稿のどこで引っかかったか?というと,それは非常に基本的なことでした。

誘電率ε0,透磁率μ0の真空,またはそれと同等な空間の中で速度の大きさが光速c=(ε0μ0)-1/2に一致した状態で運動していた電磁波は,屈折率がnの誘電率ε,透磁率μの物質の媒質中に入ったとたんにc/n=(εμ)-1/2なる大きさの速度に変わります。

 

そうした誘電体物質の中に入るとエネルギーや運動量が真空中と比べてどう変わるか?ということについて,古典論や量子論に基づいた基本的な計算をチェックしている段階で,この論文の内容と合わず,こりゃ基本的なことも理解できてないな?ということで混乱したんですね。

結局は「運動物質内の相対論(10),(11)」まで進んで解決しました。

電場と磁場を持つ平面電磁波の進行方向の単位ベクトルをとすると,誘電率がεで透磁率がμの場合,これらは波動方程式の一般解として,=ε-1/2{f(t-(xn)/w)1+g(t-(xn)/w)2},=μ-1/2{-g(t-(xn)/w)1+f(t-(xn)/w)2}と表わされることがわかります。

これを用いて,エネルギーU≡∫hdV,またはエネルギー密度hを計算すると,これらは物質中でもεやμとは無関係で,エネルギー密度はh=(1/2)(ε2+μ2)=f2+g2で与えられることがわかります。

一方,"エネルギーの流れ密度=ポインティングベクトル(Poynting vector)"は,×=(εμ)-1/2(f2+g2)=(εμ)-1/2と計算されます。

 

そこで,真空中の流れ密度0=(ε0μ0)-1/2=chに対して物質中では,0/nとなることが明確に示されます。

物質中での電磁運動量密度についても,ミンコフスキー(Minkowski)の場合は,×=εμ(×)=c-1(εrμr)1/2(f2+g2)=c-1(εrμr)1/2=nh/cになること,

 

アブラハム(Abraham)の場合は,Abr/c2=(×)/c2=ε0μ0(×)=c-1(εrμr)-1/2(f2+g2)=h/(nc)となることが理解できます

したがって,屈折率がnの屈折性物体の中でのミンコフスキー,およびアブラハムの電磁運動量:≡∫dV,およびAbr≡∫AbrdVは,それぞれ,=(nU/c),およびAbr={U/(nc)}と書けることもわかります。

 

(真空中(n=1)ではAbr=(U/c)です。)

ここでr≡ε/ε0r≡μ/μ0で,これらはそれぞれ比誘電率,比透磁率と呼ばれる無次元の量です。

つまり,電磁エネルギー運動量テンソルをTEMμνと書くと電磁運動量密度はその空間時間成分によってcgk≡TEMk0で定義されますが,ミンコフスキーの定義では×=εμ(×)=c-1(εrμr)1/2(f2+g2)です。

 

一方,アブラハムの定義ではcgAbrk=TAbrEMk0Abr/c2=(×)/c2=ε0μ0(×)=c-1(εrμr)-1/2(f2+g2)です。

そこで,Abr(×)/c2/c2,×=εμ(×)=εμにより,Abr-(εrμr-1)/c2,またはSAbrk0=cgk-(εrμr-1)Sk/cと表現されます。

 

ミンコフスキーの理論での4元力密度fμ=-∂Sμν/∂xν,あるいはcf0=-∂h/∂t-div,fk=-∂gk/∂t+∂tkj/∂xjは,ρ==0 の場合,全てゼロです。

 

ところが,アブラハム理論ではAbr-(εrμr-1)/c2なので,Abrは一様な絶縁体の中でもゼロになりません。

 

つまり,=c(εrμr)-1/2(f2+g2)ですから,運動物体の静止系をSとすると,このS系では=0,Abr=c-2rμr-1)(∂/∂t)=c-1rμr)1/2rμr-1){∂(f2+g2)/∂t},かつf0 =f0 Abr=0 です。

 

S→S'の座標変換が無限小ローレンツ変換x'μ=xμ+εμνν=(δμν+εμν)xνμν=ενμで与えられるS'系では,fμAbr'= μAbr+εμννAbrによって,cf0Abr'=cε0kkAbr=c-2rμr-1)(/∂t)=c-1rμr)1/2rμr-1)(vn){∂(f2+g2)/∂t}が得られます。

エネルギー保存の連続の方程式は∂h/∂t+div=-cf0なる形ですから,物体が静止している系Sではf0 Abr=f0 =0 よりどちらの表現でもエネルギーが保存されます。

 

しかし,物体が運動していると見えるS'系ではcf0'=0,cf0Abr'≠0 となって,アブラハムの表現でのみ電磁場単独ではエネルギーが保存されません。

さらに量子論では光を1個,2個と数えることができて,真空中で振動数がνの,"光=電磁波"の持つエネルギーは,"数えられる光の量子=光子(photon)"のエネルギーという意味では,光子1個当たりhνで与えられます。

 

体積Vの中にνが一定(単色)の光子がN個あるなら,総エネルギーはU=Nhνで与えられます。

ここでは,hはプランク定数と呼ばれる定数を指しますが,すぐ前に与えたエネルギー密度に同じ記号hを用いているので,以下では混乱を避けるため,振動数νではなく角振動数ω=2πνとhc≡h/(2π)を用いて,エネルギーをU=Nhcωと表わすことにします。

 

そして,真空中では光子1個の運動量の大きさはp=hcω/cで与えられるため,古典論では≡∫dV=(U/c)で与えられる真空中の総運動量は,量子論でも=(Nhcω/c)=(U/c)です。

しかし,屈折率がnの物質中の総電磁運動量は,すぐ上で述べたように古典論ではミンコフスキーの理論では(nU/c),アブラハムの理論ではAbr={U/(nc)}で与えられるというように意見が分かれていました。

 

したがって,量子論でも物質中の総電磁運動量はいずれかの表現に一致すべきであると考えられます。

 

つまり,通常通り光子の運動量の大きさをpと書くと,真空中でpであったものが物質の内部に侵入すると,ミンコフスキーの理論ではnpに増加しアブラハムの理論ではp/nに減少するというわけですね。

ところがアインシュタインの箱として知られている思考実験を考えると,運動量がpからp/nに変化するアブラハムの理論の方が正当化されます。

摩擦が全くない床面に質量がMで屈折率がnの一様な透明物質で満たされた箱が置かれていて,その長さLの一辺がx軸に平行な向きにあるとき,箱の内部のx軸の負の側の境界面付近からエネルギーがUの"光=電磁波"が自発的に放出されてLを通過し,正の側の境界から真空中に出て行くという物理的な系を考えます。

そして,既に以前の記事では,閉じた系の一般論として任意の慣性系Sにおける系の質量中心(重心)の座標(S)はd(S)/dt=c2/Uを満たし,エネルギーも運動量も保存される場合,つまりUもも時間的に一定のときには,慣性中心(重心)の座標(S)は一定速度で運動すると書きました。

ただし,今の場合はUという記号は電磁場のみのエネルギーを指すので,d(S)/dt=c2/Uにおける右辺の系全体のエネルギーを表わす記号Uは,(U+Mc2)で置き換える必要があります。

 

(S)/dt=c2/(U+Mc2)ですね

しかも,S系で最初静止していた閉じた系の内部で外部からの誘導ではなく,自発的に光の放出が生じる現象では,d(S)/dt=c2/(U+Mc2)における右辺の系全体の運動量は,最初から最後までゼロですから,結局d(S)/dt=0 となります。

 

すなわち,この過程では質量中心の座標(S)は一定不変です。

さて,物体が持つ力学的運動量をmとすると,その物体の速度はm/Mで与えられます。

 

また,系の中で放出された光のエネルギーをUとしているので,その光の実質的な質量はm=U/c2です。

 

そこで,光のみの運動量をe,系全体の運動量をとすると,em=0 により,m=-eですから,床をすべって運動する箱の速度は=-m/Mと書けます。

透明で屈折率がnの物質中での光の速さはc/nなので,左側面付近で自発的に放出された光はc/nの速さで長さLの物体を通過してゆくため,Δt=nL/cの時間経過の後には右側の境界面から出て光速cに戻るはずです。

 

そして,光放出の反作用,または反動で箱は反跳を受けて距離s=vΔtだけ反対向きに運動するはずです。

したがって,このΔtの間に系の質量中心はΔX(S)=(mL-Ms)/(m+M)だけ移動するはずです。

 

これに,m=U/c2,L=cΔt/n,s=GmΔt/Mを代入すると,(mL-Ms)/(m+M)={U/(nc)-Ge}Δt/(m+M)を得ます。

 

ところが,上で論じたように,この過程ではdX(S)/dt=0 ですから,ΔX(S)={U/(nc)-Ge}Δt/(m+M)=0 です。

それ故,光の運動量の大きさとしてGe=U/(nc)を得ますが,この電磁運動量の表現eはアブラハムの運動量Abr={U/(nc)}に一致していてミンコフスキーのそれ=(nU/c)とは異なります。

しかし,そもそも屈折率n,またはこれをn=c/(εμ)1/2で特徴付ける誘電率ε,透磁率μなどは物質を連続体で近似したときの巨視的な量であり,光子という微視的な粒子の運動量p=gをそれらで規定しようとするのはかなり無理があるのではないか?という素朴な感想を持ちました。

さて,改めて対象としている文献: Robert N.C.Pfeifer,Timo A.Nieminen,Norman R.Heckerbergの論文:"Momentum of an electromagnetic wave in dielectric media",日本語に訳すと「誘電体媒質中の電磁波の運動量」の概要を紹介しましょう。

まずは,Abstractと題されているわけではありませんが,いわゆるAbstractの直訳です。

※ およそ100年前,誘電体中の電磁波の運動量テンソルとして2つの異なる表現が提案されました。

 

そのうち,Minkowskiのテンソルは電磁波が誘電体中に入るとその線運動量が増加すると予測し,一方Abrahamのテンソルは減少すると予測しました。

理論は両者にとって共に有利な論拠が現われながら進んでゆき,実験はそれら2つを区別することが不可能であることを証明しました。

 

さらに別の表現形式も提案されるようになり,その形を考案した各々は自己の形式こそ唯一の真のテンソルであると主張しました。

本論文はそれらのディベートと"如何なる電磁エネルギー運動量テンソルもそれだけでは完全ではない。"という最終的な結論のレビューを与えるものです。

 

電磁場に伴なう物質媒質の適切なエネルギー運動量テンソルを考慮すると,これら提案された種々の(電磁)テンソルの全ては基本的に常に対等(であり,そこでどの形式を選択するかは単なる個人の好みの問題ということになります。

次に,序文(Introducton)の要約です。

電磁波のエネルギー運動量テンソルの正しい形,特に誘電体中での電磁波のエネルギー運動量テンソルの正しい形については,ほぼ100年間も論争が続けられてきました。

 

まず,テンソルの2つの異なる形式が1908年,1910年にMinkowski,そして1909年,1910年にAbrahamによって提案されました。

また,順不同ですが,後年の1967,1968,1972年にde GrootとSuttorp,1966年にGrotと Eringen,1918年にLivens,1955年にMarksとGyorgyi,1976年にPeierls,そして1967年にPenfieldとHausによって別の形式が追加されました。

この問題は実験家の興味を引きました。

 

そして初期の認識では,こうしたテンソルのうち幾つかの異なる形式については,実験によって区別することができて有用な物理的帰結を生み出す可能性があるかに見えました。

 

しかし,初期の予想に反してなかなか決着が付きませんでした。

 

我々は数々の実験のレビューを通して,この問題が何故そうした実験によって区別できるケースではないのか?を明らかにします。

この論題についての最近の仕事は,3つのグループに分割できます。

 

第1には与えられた環境には基本的にどの表現が最も有用か?,適切か?という疑問に集中した実用的な応用と関わるものです。

 

第2には,こうした理論的な問題を新しい領域へと拡張しようとするものです。

しかし,そうした目的の論文はこの論題に関する既存の文献の断片的な性格によって様々な制約を受けるため,結果として結論とするものが弱められています。

 

第3には,恐らく意外なことではありませんが,あるキ-(key)となる論文が相対的に不明瞭なままで残っているために,論争が既に決着していることを未だに確信されてないものです。

この題目に関する広範な関心はいまだに存在し,第2および第3のカテゴリーに属する仕事の広きにわたる流行を見れば,筋の通ったわかりやすいレビューを与えることが大いなる利益になることは明らかです。

そこで我々の本論文では,問題の論争は既に決着していて電磁場に伴なう媒質の物質場のテンソルを考慮に入れれば,測定可能と予測されている挙動の全ては,電磁場のエネルギー運動量テンソルの形式の選択には全く無関係であることに注意を喚起することを目指しています。

特に,論争での新しい関心は光ピンセットや流体媒質中での微小粒子の操作手法の出現によって刺激を受けています。

 

(序文終わり)

さて,次に問題意識の出現過程などを含めた初期の歴史について述べます。

誘電体媒質中の電磁波のエネルギー運動量テンソルを提案した初めての人物は1908年のMinkowskiでした。

 

彼による表現は電磁波の運動量密度としては×に対応しています。は電束密度,は磁束密度です。

 

そこで,Minkowskiの表現によれば伝播する電磁波の総運動量は分散性を無視すると自由な真空から屈折率nの媒質中に入る際にpからnpに増加します。

Minkowskiのエネルギー運動量テンソルの受け入れ可能な導出は1972年Moeller(メラー)の「相対性理論第2版」に見出されます。

 

(※このメラーの「相対性理論第2版」が,正にこれまでのこのシリーズ記事で私が参考文献としてきた源です。)

Minkowskiの誘電体内での電磁エネルギー運動量テンソルは非対称であるが故に,角運動量が保存しないという批判があり,1909,1910年にAbrahamはそれに代わる対称な電磁エネルギー運動量テンソルの形式を発見しました。

 

彼のテンソルによる電磁波の運動量密度は,Minkowskiの×に代わってc-2(×)で与えられます。ここで,は電場,は磁場です。

そこでAbrahamの表現によれば,伝播する電磁波の総運動量は分散性を無視すると自由な真空から屈折率nの媒質中に入る際にpからp/nに減少します。

 

そこで,媒質中での光子はAbrahamのテンソルではMinkowskiのそれよりも小さい運動量を運ぶことになります。

しかしながら,1972年のde GrootとSuttorp,1967年のPenfieldとHausは,両者いずれの表現式でも,電磁エネルギー運動量テンソル単独では不完全であることを指摘しました。

 

彼らは媒質中では,いずれの表現式にも媒質の物質場自身,および物質場と電磁場の間の相互作用によって生じる運動量が加味さるべきである,と考えました。

熱物理学的に完全に閉じた系では,全体としてはエネルギーも運動量,角運動量も全て保存するはずです。

 

そこで,各々の電磁エネルギー運動量テンソルの表式に呼応して,補完する物質場のエネルギー運動量テンソルを考慮する必要があります。

 

特に,Minkowskiの電磁テンソルは全体としての角運動量が保存するように物質場のエネルギー運動量テンソルを調整する必要があります。

電磁場にさらされている間に,その源から離れたところで一定速度を獲得する物体を伴なう透明物体の挙動はそれほど直線的なものではありません。

 

既存の文献は,誘電体媒質中に全体的または部分的に沈められた反射,屈折物体を扱える矛盾のない数学的アプローチが欠けていると考えられます。

誘電体中で電磁波によって働く力は,Minkowskiのテンソルでは,その片割れの物質場のテンソルが無いなら評価不可能で,両者は異なる結果を予測します。

 

Abrahamの電磁テンソルと物質場テンソルのペアによって予測される力の密度は前述のように,Abr=c-2rμr-1)(∂/∂t)だけ小さいことがわかります。

 

この項は歴史的経緯でAbrahamの力と呼ばれます。

 

ここではポインテイングベクトル×であり,εrrはそれぞれ比誘電率,比透磁率です。

Minkowskiのテンソルの片割れである物質場テンソルを考慮するとMinkowskiのペアもより小さい値ではありますが,力の密度を生起させることがわかります。

20世紀の最初の頃は物質場テンソルの重要性が充分に認識されていなかったため,活発なディベートがあったにも関わらず,それらは2つの電磁エネルギー運動量テンソルの各々の表現が有利と見なされる点を確実に保証するという意味を持ちませんでした。

誘電体中の光子の運動量というのは,かなり抽象的な概念ですから,ある意味これに着目する意味すらないのではないか?とも思えます。

 

そもそも,そうした光子の運動量を実験的に直接測定することは不可能ですね。

 

つまり与えられた環境の中である種の検出装置によって測ることが可能なのは電磁場と物質場の双方を含んだ総運動量,または総運動量の遷移量であって,AbrahamとMinkowskiの電磁テンソルを区別する実験を編み出すことさえ不可能ではないか?と問う人々もかなりいました。

これまでなされた具体的な実験の主要なものを列挙してみます。

.Jones and Richards(1954)

 結局,MinkowskiとAbrahamの2つのテンソルを区別する実験をすることさえも不可能であると結論しました。

.Ashkin and Dziedzic(1973)

 レーザービームを屈折率が1に近い空気中から屈折率の大きい誘電体中に侵入させて,運動量が増加すればMinkowskiが正しく,減少すればAbrahamが正しいと結論する実験です。

 しかし,これで得られる結論は,電磁場の運動量の方が物質場のそれよりも急激に前方に運ばれるという誤った仮定に基づいていました。

 この仮定を認めるなら,Abrahamのケースは物質場の効果を無視していることになります。

.James;Walker,Lahoz and Walker(1968)

 直接Abr=c-2rμr-1)(∂/∂t)なるAbrahamの力を測定し,これが存在することを結論しました。それ故,Abrahamのテンソルの正当性を主張しています。

 しかし,後に電磁場と物質場を適切に分解すればMinkowskiのテンソルを採用したのと大差ない結果であることが判明し,これではいずれかの正当性を識別することは不可能であるということになりました。

.Jones and Leslie(1977)

 1954年のAの実験を新しい技術を利用して再試行しました。光源としてタングステンランプの代わりにレーザーを使用するetcです。様々な修正を通して偏差が0.05%の最終結果を得るに至りました。

結局,Jonesは,pを自由な真空中での光子の運動量としnφ,およびngを,それぞれ位相速度,および群速度の変化に付随する屈折率と定義するとき,媒質中での光子の運動量はMinkowskiテンソルに従えばnφpとなり,Abrahamテンソルに従えばp/ngとなるとしました。

 そして,前の実験のときと同じく両方のテンソルが共に受け入れ可能であると結論しました。

 

 すなわち,例えばAbrahamの場合にはMinkowskiの運動量nφpをnφp=p/ng+nφp{1-1/(nφg)}と分割して,第2項は物質場の力学的な成分に寄与すると考えるわけです。

 

 (実験例とその紹介の項終わり)

 次には種々の仮説から生み出された制約の紹介と,Abraham,Minkowskiとは別の理論の可能性について述べます。

今までの議論も含め,それによってAbrahamとMinkowskiの電磁エネルギー運動量テンソルの一方または他方が誤りであるとする制約を与える非常に多くの試みがなされました。

初期になされた示唆はMinkowskiの電磁テンソルでは角運動量が保存しないというものです。

 

これはEinsteinとLaub(1908,2005)によってなされた指摘ですが,その指摘は別に電磁エネルギー運動量テンソルを角運動量が保存する対称形式に発展させようとする試みを行ったAbraham(1909,1910)への動機付けとなりました。

EinsteinとLaub自身が提案したテンソルは,誘電体の静止系以外では正しくないというので限られた注意しか喚起しませんでした。

 

実際,それが正しいとすると,逆に当時既に大いに共感を得るに至っていた相対性原理が疑わしくなるというものでしたから,Abrahamの形式と比較してかなり小さい関心しか得られませんでした。

一方,Dallenbach(1919)は微視的考察からMinkowskiの電磁テンソルを導出できると主張しました。

 

しかしGrootとSuttorp(1972)は,その手順は静電系から動電系に一般化しようとすると正当化に失敗すると指摘しました。

 

Pauli(1958)の著書にも,そうした手続きを承服できないという論旨のことが書かれているらしいです。

既に述べたように,Minkowskiの電磁テンソルにおいて角運動量が保存しないのは,電磁場だけでは系は不完全で閉じた系とはならないからで,適切な物質場のテンソルを考慮してそれとの和を取れば閉じた系になるため,全体としては角運動量が保存するようにできます。

 

同様に,Einstein-Laubテンソルも,特殊な準拠系への依存を無視することで救済することが可能です。

その他,von Laue(1950)やMoeller(1952,1972)の著書などにおける指摘があります。

 

これは,"誘電体内でのcより遅いエネルギー伝播速度を持つ電磁波のエネルギー流束だけによる電磁運動量が,それ単独で4元ベクトルを形成するのはMinkowskiの形式だけであって,Abrahamの形式では4元ベクトルとしての変換性を持たない"というものです。

しかしMoellerの著書では,初版(1952)ではMinkowskiの形式に強い賛同を結論していたのに対し,2版(1972)ではMinkowskiの形式の方が現象の記述に最適なものであるというような柔軟な表現に転化しています。

 

こうした哲学の変貌は,恐らく一方が正しくて他方が誤りであることを証明しようという試みよりも,両方が共に電磁力学における実際的道具となり得る位置を有することを認識する方向に意識が変わっていることの反映でしょう。

その他,まだまだこの種の一方が有利とする制約の存在についての主張と,それに伴なう新しいテンソルの表現形式の提案などについて書かれているのですが,結局,全ては電磁場だけでは閉じた系でないこと,そして電磁場と物質場への分割が論理的に矛盾のない仕方でなされているかどうか?ということに帰着するので以下全て割愛します。

というわけで,またまた長すぎるので次回に引継ぎます。

参考文献: Robert N.C.Pfeifer,Timo A.Nieminen,Norman R.Heckerberg((The University of Queensland Brisbane Queensland 4072 Australia):"Momentum of an electromagnetic wave in dielectric media" Reviews of Modern Physics Vol.79(4),pp1197-1216(2007)

 

PS:いつも思うことですが,金が無くて暇だけある場合には,誘惑が無いので物理学などの勉強は進みますね。

 

「小人閑居して不善を為す。」というのもありますがね。

 

 私は40歳で最初の会社を辞めて,その後2年間は別会社の正社員でしたが,それから49歳から50歳になる直前まで,アルバイトの今で言うフリーターで暮らしていた10年足らずの間は,正に暇はあるが金が無いという状態でした。

 

 そのため,ギリギリの生活費はありましたが,お金を使って遊ぶという誘惑は無かったため,27歳までに学校で得た知識を全て取り戻し,さらに恐らくその数倍の知見を得ることに成功したと思います。

 

(私は金も無いのに借金してまで遊ぶという性格ではなくエンゲル係数の高い生活費で,衣食住の他にはせいぜい本代くらいです。

 

 私に借金があるのは,浪費のためというより,僅かな赤字の累積です。

 

 1年に10万か20万円(1ヶ月に1万円か2万円)の赤字でも,20年も返せないまま累積すれば,利子がゼロでも計算上は200万円から400万円の赤字になりますからね。)

 

 理論物理学というのは,実験装置とか機械とかの環境は全く不要なのでわざわざ大学の研究室とかに属さなくても,本とか論文とかがあれば勉強するだけなら一人でコツコツやれるし,それほどお金が無くても図書館や今はネットで論文取り寄せもできるので,あまり不自由ではない類の学問ですね。

 

 もっとも大学の研究室や研究施設に属していれば,わからないときの相談相手にも不自由しませんし,新しい知らない情報なども自然に入ってきます。

 

 また,専門の文献や専門書が豊富な図書室が付随していますし,実験物理や他の分野との交流も可能であるというメリットがあります。

 

 それに,既存の知見を勉強するだけでなく新しい研究をする場合にはもちろん自分一人でもそれなりの能力があればできないことはないけれど,細かい部分で,それぞれの専門家の意見を聞いて参考にするとか,共同研究をできるとかの機会もないし,それにそもそもそうした新しいことをしようとするための刺激が足りませんね。

 

 まあ,逆に小さなテーマでもいいから,偶には論文を出せよというようなプレッシャーを受けることはありませんがね。

 

 そもそも,私の場合はテーマとするところが大きすぎて,構想はあっても生きてるうちに是非とも具体化したいという気もありません。

 

 もちろん,それに付随する小さいテーマについてイチイチ小論として論文を出せるかもしれませんが,別にこのまま最期まで埋もれていていいので,そうした必要を感じませんね。

 

 確かに,近くに同レベルの相談相手がいればいいのにと時々思ったりはします。相談相手がいるといないのとでは理解の進行速度が全然違いますからね。

 

 また,既存の知見なら別の本なり文献なりをセカンド・オピニオンとすればいいので,独善に陥る危険性は少ないですが,新しいことを勉強,研究する場合は一人では独善に陥る危険性もありますね。

 

 まあ,道楽に過ぎませんけどね。。。。

 

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2009年1月 7日 (水)

運動物質内の相対論(13)(物質中の電磁エネルギー運動量:前編)

さて,いよいよアブラハム(Abraham)およびミンコフスキー(Minkowski)の表現に代表される"物質中の電磁エネルギー運動量テンソル"という本題について私なりの決着を付ける準備ができました。

実は,こうしたことのきっかけとなったのは,昨年2008年9月の2つの連休の谷間に,こうした問題に決着を付けられる可能性のある論文を読んだことでした。

 

そして,これを基に「物質中の電磁エネルギー運動量テンソル」という題名の記事を書きかけていました。

 

しかし,論文内のある式を説明しようとしたのに,自分自身が混乱してしまって矛盾を解消できず,仕方なくまた基礎からやり直そうと思ったのでした。結局3~4か月かかりました。

 

どうしても解決できず行き詰ったときには,原点回帰するのが一番ですね。時間的にも余裕があることが前提ですが。。。

そこで,まず9月下旬に書いた未完の記事「物質中の電磁エネルギー運動量テンソル」の原稿から掲載します。

2008年6/15の記事「電磁気学と相対論(8)(物質中の電磁気学2)」 http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/8_78a3.html においては,

 

物質中の電磁場の電磁エネルギー運動量テンソルにはミンコフスキーの表現式(1908年)とアブラハムの表現式(1909,1910年)があることを述べ,そこではミンコフスキーの表現式の方にやや利点があるというように書きました。

すなわち,運動する物質中の電磁場に対して2つの2階反対称反変テンソルFμν,Hμνを導入しました。

 

それによって,電場,磁束密度,電束密度,磁場の強さを,E=(E1,E2,E3)≡-c(F01,F02,F03),B=(B1,B2,B3)≡-(F23,F31,F12),D=(D1,D2,D3)≡-c-1(H01,H02,H03),H=(H1,H2,H3)≡-(H23,H31,H12)で定義しました。

そして,ρを物質の電荷密度,Uμを運動物質の4元速度Uμ≡(c/(1-2/c2)1/2,/(1-2/c2)1/2)として,4元電流密度をJμ≡(cρ,)=ρ0μ+sμ=(cρ,ρ),sμ=(s0,)=Jμ-(Jλλ)Uμ/c2=(0,-ρ)とします。

 

こうすれば,任意の座標系における電磁力学の基本方程式は,∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0 ,∂Hμν/∂xν=-Jμと表現されます。

さらに,Fμν,Hμνから4元ベクトルFμ≡Fμνν=((Eu)/{c(1-2/c2)1/2},(×)/(1-2/c2)1/2),およびKμ≡Hμνν/c2=((Du)/{c2 (1-2/c2)1/2},{+(×)/c2}/(1-2/c2)1/2)を作ります。

 

また,Fμν,Hμνに双対な擬テンソルF*μν≡(1/2)εμνλσλσ,H*μν≡(1/2)εμνλσλσ)を構成します。

 

そして,4元擬ベクトルF≡-F*μνν/c=((Bu)/{c(1-2/c2)1/2},{-(×)/c2}/(1-2/c2)1/2)=(()/{c(1-2/c2)1/2},/(1-2/c2)1/2),およびK≡-H*μνν/c=((Hu)/{c(1-2/c2)1/2},{-(×)/c2}/(1-2/c2)1/2)を作ります。

特に,0 の静止系S0ではF=(0,0),K=(0,0),F*0μ=(0,0),K*0μ=(0,0)です。

 

これら4元ベクトルFμ,Kμ,F,Kを,S系のミンコフスキーの4元力の表現FMμ≡((M)/c,M)=({(Fu)/c}/(1-2/c2)1/2,/(1-2/c2)1/2)と比較します。

 

すると,×,および+(×)/c2は,それぞれ単位量の試験電荷に作用する"canal field",および"gap field"の電気力,×,および-(×)/c2は,それぞれ単位磁極の試験磁荷に作用する"canals field",および"gap field"の磁気力であることがわかります。

そしてS系での量×,+(×)/c2,×,-(×)/c2のS0系(0)での表現:0,0,0,0に対しては,等方性媒質の場合,εを誘電率,μを透磁率と呼ばれる比例定数として0=ε0,0=μ0と書けます。

  

このことから,=ε,=μ,あるいはKμ=εFμ,F=μKが成立し試験体に作用する"canal field"の力と"gap field"の力が互いに比例するという表式が得られます。

これらの式はまた,Hμνν/c2=εFμνν,F*μνν/c=μH*μνν/cとも書けます。

 

そして後者:F*μνν/c=μH*μνν/cは,Fμνλ+Fνλμ+Fλμν=μ(Hμνλ+Hνλμ+Hλμν)なる等式と同等であることを示すこともできます。

さらに,σを電気伝導度とすると,S0系でのオームの法則は0=σ0で与えられます。そこで,sμ=(s0,)=Jμ-(Jλλ)Uμ/c2=(0,-ρ)のS0系での形は,s=(0,0)=(0,σ0)=σFと書けます。

 

それ故,S系ではsμ=σFμより,Jμ-(Jλλ)Uμ/c2=σFμなる形で,オームの法則のテンソル表現が得られます。

結局,電流密度Jμが与えられている場合の電磁力学の基本方程式の閉じた形式は,∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0 ,∂Hμν/∂xν=-Jμと,Hμνν/c2=εFμνν,Fμνλ+Fνλμ+Fλμν=μ(Hμνλ+Hνλμ+Hλμν),Jμ-(Jλλ)Uμ/c2=σFμの組で与えられます。

 

原理的には,これらから物質内の場を決定できるはずです。

ここで,物質と真空の境界で場の量が満足すべき境界条件は,については方程式 rot+d/dt=0,rot+d/dt=-ρu=sを物質の境界面のすぐ内側と外側に相対する2辺を持つ小さな長方形が囲む無限小面内で積分することから得られます。

 

これは,,あるいはの境界面に平行な成分が連続であるべきという条件になります。

一方,については,方程式 div=0,div=ρを積分することにより,の垂直成分:Bnは境界で連続であるべきで,の垂直成分:Dnは物質外部から内部に向かって境界表面の電荷密度分ΔDnだけ不連続に変化してDn+ΔDnなるべきという条件が得られます。

ただし,定義×,+(×)/c2,×,-(×)/c2におけるは"境界の外=真空領域"でも物質の速度に等しいとしています。

先に2008年5/30の記事「電磁気学と相対論(6)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/6_a8a2.html では,

 

μをローレンツの電子論における電流密度とするとき,真空中での電磁気力の4元力密度fμがfμ=ρ0μνν=Fμννなる表式で与えられることを見ました。

4元力がこの形に書けることは,静電荷(=0)に作用する力の密度がρ00であるという電場の定義から明らかです。

しかしε≠ε0,μ≠μ0の一般の物質内で作用する力の密度を一意的に表現するのは容易ではありません。このような力の定義の曖昧さは当然ながら,エネルギー運動量テンソルの曖昧さを呼び起こします。

ともあれ,ここではまず電子論での話にならって,fμ=Fμννにおいて携帯電流ρのみで書かれた4元電流密度sμを,ρに伝導電流(を加えた物質における全4元電流密度Jμで置き換えた4元ベクトル量Fμννを取り上げて考えてみます。

場の方程式:∂Fμν/∂xλ+∂Fνλ/∂xμ+∂Fλμ/∂xν=0 ,∂Hμν/∂xν=-Jμによって,Fμνν=-Fμν(∂Hνλ/∂xλ)=-∂(Fμννλ)/∂xλ+(∂Fμν/∂xλ)Hνλ

  

=∂(Fμνλν)/∂xλ+(1/2)(∂Fμν/∂xλ+∂Fλμ/∂xν)Hνλ=∂(Fμνλν)/∂xλ-(1/2)(∂Fνλ/∂xμ)Hνλ=∂(Fμνλν)/∂xλ-(1/4)∂(Fνλνλ)/∂xμ-(1/4){(∂Fνλ/∂xμ)Hνλ-Fνλ(∂Hνλ/∂xμ)}が得られます。

したがって,Fμνν(1/4){Fσλ(∂Hσλ/∂xμ)-(∂Fλσ/∂xμ)Hσλ}=-∂Sμν/∂xνが成立します。

 

μν≡-ηνσμλσλ+(1/4)Fλσλσημνです。

このテンソルSμνの空間成分;ij≡-tijを,E=(E1,E2,E3)-c(F01,F02,F03),B=(B1,B2,B3)-(F23,F31,F12),およびD=(D1,D2,D3)-c-1(H01,H02,H03),H=(H1,H2,H3)-(H23,H31,H12)を用いて表わすと,tij=Eij+Hij-(1/2)(EDHBijとになります。

それ故,Sμνの空間成分Sijにマイナス符号をつけたtijは静止系S0では物体におけるマクスウェルの応力テンソルに一致します。

さらに,/c≡(S01,S01,S03)と定義すれば,×はポインティングベクトルになっています。また,h≡S00とするとh=(1/2)(EDHB)となります。

 

すなわち,静止系S0ではおよびhはそれぞれ定常運動している物体の電磁エネルギー流,および電磁エネルギー密度に一致します。

また,c≡(S10,S20,S30)で与えられる3次元ベクトルをとすると×となり,真空中の理論からのアナロジーで,これは電磁運動量密度を示していると思われます。

これらのことから,Fμνν-(1/4){Fσλ(∂Hσλ/∂xμ)-(∂Fλσ/∂xμ)Hσλ}=-∂Sμν/∂xνの左辺がこの際の電磁的な4元力密度fμであって,Sμνが電磁エネルギー運動量テンソルを表わしていると暗示されます。

 

この結果,,h,は静止系S0だけでなく,任意の座標系Sにおいても電磁エネルギー流,電磁エネルギー密度,電磁運動量密度に相当するとして扱えると考えられます。

,h,を上述のように表現することは,ミンコフスキーに始まりますが,ε=ε0,μ=μ0のときには,いずれも電子論における表現形式に帰着します。

ところで,一般物質から成る対象帯電物体が均質かつ等方的であればFμνν-(1/4){Fσλ(∂Hσλ/∂xμ)-(∂Fλσ/∂xμ)Hσλ}=-∂Sμν/∂xνの左辺第2項はゼロになることを示せます。

すなわち,(1/4){F0σλ(∂H0σλ/∂x0μ)-(∂F0λσ/∂x0μ)H0σλ}=(1/2)[0(∂0/∂x0μ)-0(∂0/∂x0μ)-(∂0/∂x0μ)0+(∂0/∂x0μ)0]=-(1/2)[|0|2(∂μ/∂x0μ)+|0|2(∂ε/∂x0μ)]となりますが,S0系でεとμが定数ならば最右辺はゼロです。

 

この式は座標系によらない表現なので,任意の系Sでもゼロであるというわけです。

こうして,均質かつ等方的な物体内部ではfμ=Fμννとなりますが,Jμ=(cρ,)よりfμ=((EJ)/c,ρ+(×))を得ます。

 

つまり,=ρ+(×)=ρ[+(×)]+(×),f0=(EJ)/c={)}/c=(ρEC)/c=(fu)/cとなります。

すなわち,cf0fuですが,これは静止S0系(=0)では物体中の単位体積中で単位時間に発生する熱量=ジュール熱を表わしたもの0~00と一致しています。

 

一方,fuはどんな座標系でも力学的仕事を示すので,fμが相対論的力学において定式化された4元力密度の一般的な表現形式fμ=((fu+q)/c,)(qは単位時間当りに系が自身の運動で放出する非力学的エネルギー)と合致するためには,先の式の項がこのプロセスで発生する熱量率qを示している,と考える必要があります。

実際,系の力学的エネルギーをEmとするとcf0=dEm/dt=(エネルギーの増加率)ですから,これは力学系が受け取るエネルギー率そのものです。

そこで,独立な4個の方程式fμ=-∂Sμν/∂xνは通常のエネルギー運動量の保存法則を示しています。

 

そしてfμ=Fμνν=((EJ)/c,ρ+(×))からfμμ=Uμμνν=U0μ0μν0ν=(00)0=不変量が得られます。

0は静止系での力学的効果以外の効果を示しており,もちろんスカラーですがfμ=((fu+q)/c,),Uμ=(c/(1-2/c2)1/2,/(1-2/c2)1/2)から得られるfμμの表式において0 とおけばわかるように,q0=q/(1-2/c2)1/2,あるいはq=q0(1-2/c2)1/2が成立します。

一方,先に同じく2008年5/30の記事「電磁気学と相対論(6)(真空中の電磁気学5)」 http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/6_a8a2.html で述べたように,

  

μを対象とする帯電物体の"密度(静止質量密度)をμとし,μ0 を物質の不変質量密度(静止系での物質密度)とすれば,μ=μ0/(1-2/c2)1/2と書けるので,この物体の微小体積をΔVとしたとき,これが従うべき運動方程式はd(μ0ΔV0μ)/dτ=fμΔV0となります。

 

そして,この方程式が∂(μ0μν)/∂xν=fμなる式と等価であることも示しました。

そこで,この両辺にUμを掛けてμで縮約すると,Uμμ=c2,,かつUμ(dUμ/dτ)=0 であってfμμ=q0なので,∂(μ0ν)/∂xν=q0/c2,つまり∂μ/∂t+div(μ)=q0/c2なる質量保存の連続方程式が得られます。

連続方程式の右辺は質量の湧き出しですから,この式は正に非力学的エネルギーq0,今の場合は"q0=(00)(~0,C0)=(ジュール熱)"を受け取ることによって,物質の固有質量がq0/c2だけ増加することを意味しています。

 

つまり,電磁場の話は質量とエネルギーについてのアインシュタインの一般定理(E=mc2)の典型例の1つを示していると考えられます。

ミンコフスキーの電磁エネルギー運動量テンソル:Sμν=-ηνσμλσλ(1/4)Fλσλνημνは,電子論の場合のそれと同じくトレ-スレス(対角和がゼロ)という性質:Sμμ=-Fμλμλ+(1/4)4Fλσλσ=0 を確かに満たしています。

 

しかし,Fμλνλ≠FνλμλなのでSμν≠Sνμとなり,Sμνは対称テンソルではありません。

μνの空間部分Sij=-tij=-Eij-Hij(1/2)(EDHBijは,等方性物体なら静止系S0では0=ε0,0=μ0なので対称テンソルですが,時間と空間の混合成分は静止系でも,Si0-S0i=c(gi-Si/c2)=c(εμ-ε0μ0)(0×0)≠0 となって確かに対称ではありません。

 

したがって,一般に等方性物体でもS0系以外ではSij≠Sjiであって空間成分も非対称です。

こうしたミンコフスキーのエネルギー運動量テンソルの非対称性については長い間文献上で議論が続けられ,この非対称性の中にミンコフスキー理論の真の難点が現われているという感がありました。

そこで,アブラハムは対称性を持つ電磁エネルギー運動量テンソルの表現形式を作ってみました。

  

彼の電磁エネルギー運動量テンソルの表現:SAμνはとにかく静止系S0で等方性物体の場合には,SAij=-tAij=-Eij-Hij+(1/2)(EDHBij,×=c(SA01,SA01,SA03),h=(1/2)(EDHB)=SA00となるように作られています。

しかし,電磁運動量密度については,ミンコフスキーが自身のテンソルSμνから≡(S10,S20,S30)=×としてこれを与えたのに対し,アブラハムはあくまでもテンソルの対称性が保たれるように,静止系S0=(×)/c2/c2の形をとるものと仮定しました。

アブラハムのテンソルSAμν,静止系S0では対称ですから,任意の座標系Sでも対称です。

 

しかしS0系以外の任意系Sでの成分はS0系での表現SAij=-tAij=-Eij-Hij+(1/2)(EDHBij,×=c(SA01,SA01,SA03),h=(1/2)(EDHB)=SA00のような簡単な形にはならず,場を示す変数,,,でSAμνを表わそうとすると,物質速度を示すが非常に複雑な形で入ってきます。

そして,テンソルSAμνから方程式fAμ=-∂SAμν/∂xνを満たすものとして導かれるアブラハムの4元力密度fAμは,先の表現式fμ=Fμνν=((EJ)/c,ρ+(×))からのずれも,きわめて複雑な形になります。

ミンコフスキーの表現の場合,静止系でもFμννからのずれが,-(1/4){F0σλ(∂H0σλ/∂x0μ)-(∂F0λσ/∂x0μ)H0σλ}=(1/2)[|0|2(∂μ/∂x0μ)+|0|2(∂ε/∂x0μ)]であり,これは均質,かつ等方的な物質内ならゼロになります。

 

一方,アブラハムの表現の場合には,静止系では空間成分の力の密度Aが,A+{(εμ-ε0μ0)/c2}(∂/∂t)と表わせることがわかっています。

 

これによれば,アブラハムの力の密度Aはミンコフスキーのそれよりも{(εμ-ε0μ0)/c2}(∂/∂t)だけ異なります。しかし,この違いを実験的に検証するのは困難らしいです。

そして,ごく最近まで,ほとんどの物理学者はアブラハムの理論を採用する方向に向かっていましたが,これについてはまだ決着が付いていたわけではなく,最近タム(Tamm)はこの問題の論議を再開して,結局ミンコフスキーの表現形式の方が正しいという結論を得ています。

  

(最近というのは"参考文献=メラーの著書"が書かれた当時のことですが,現在については調べていません。)

すなわち,ある物体中の電磁場は本質的には閉じた系ではないため,電磁エネルギー運動量テンソルが対称であるべき,という先験的理由(a-prioriな理由)はありません。

 

アブラハムがテンソルが対称であるべきことを主張する主な論拠は,"巨視的理論に現われる諸量は,各々に対応する電子論の諸量を適当な大きさの時空領域で平均して得られるべきで,電子論での微視的なエネルギー運動量テンソルsμνは対称なので,その平均として得られるSμν=<sμν>も対称でなければならない。"というものでした。

しかし,タムが着目したのは,"巨視的テンソルSμνは,必ずしもsμνの平均<sμν>に一致する必要はなく,むしろSμνが力の密度,および力のモーメント(能率)を正しく与えるように定義すべきである"ということです。

 

つまり,彼は,"fμ=-∂Sμν/∂xν=-<∂sμν/∂xν>,およびαμν=xμν-xνμ+Sμν-Sνμ=-xμ(∂Sνλ/∂xλ)-xν(∂Sμλ/∂xλ)+Sμν-Sνμ=-<xμ(∂sνλ/∂xλ)>+<xν(∂sμλ/∂xλ)>の成立を条件とすべきである"と主張しました。

 

それ故,タムによれば,aμνを∂aμν/∂xν=0 を満たす適切な非対称テンソルとして,Sμν=<sμν>+aμνと書かれるべきことがいえるのみです。

そして,これを力のモーメントテンソルの等式αμν=-xμ(∂Sνλ/∂xλ)-xν(∂Sμλ/∂xλ)+Sμν-Sνμ=-<xμ(∂sνλ/∂xλ)>+<xν(∂sμλ/∂xλ)>に代入すると,-<xμ(∂sνλ/∂xλ)>+<xν(∂sμλ/∂xλ)>=-<xμ><∂sνλ/∂xλ>+<xν><∂sμλ/∂xλ>が成立するときに限って,Sμνが対称となることがわかります。

 

そして,今の電磁場のテンソルの場合に,こうなる必然性はないということです。

さらに加えて,タムはミンコフスキーのテンソル表現が電子論と一致するのに反し,アブラハムの表現はある特別な場合には誤った結果に導くことを示し得ました。

 

また,ダレンバッハ(Dallenbach)は電子論からミンコフスキーのテンソルを一般的に導く方法を与えました。

と書きました。

 

しかし,こうしたことの実験的検証は不可能で,1908年以来ほぼ100年間論争が続いていると聞いていました。

私は,極楽トンボなのであまり関係ないのですが,世間が連休というので,私も比較的心に余裕があったので,この連休に関連の論文を検索して,オーストラリアのクイーンズランド州ブリスベン(Brisbane Queensland 4072)にあるクイーンズランド大学の研究室の以下の総括的なレビュー論文を見つけて読んでみました。

  

'Robert N.C.Pfeifer,Timo A.Nieminen,Norman R.Heckerbergによる,"Momentum of an electromagnetic wave in dielectric media" Reviews of Modern Physics Vol.79(4),pp1197-1216(2007)' です。

 

このレポート論文によれば,こうした電磁場のエネルギー運動量テンソルの定義の問題については,既に解決済みで明確な結論が出ているということでした。

内容を概観してみると,要するに次のような話でした。

 

電束密度と磁束密度は真空中でも媒質中でも同一なのに対し,"canal-field"としての電場,磁場は真空中では,0=ε00,0=μ00を満たし,等方性媒質の静止系S0では,その中で0=ε0,0=μ0を満たします。

 

そこで,一般に真空中ではvac000,vac000,媒質中では00/ε,00/μですから,0=(ε0/ε)vac0,0=(μ0/μ)vac0となるはずです。

とはいっても,これらは所詮は現象論であって,非分散性の媒質中での分極,あるいは磁化の原因となる誘電体,あるいは磁性体を構成する分子の運動を平均化したものに過ぎません。

真空中では,0×0=ε0μ0(vac0×vac0)=(vac0×vac0)/c2vac0/c2なので,ミンコフスキーの定義でもアブラハムの定義でも運動量密度vac0は一致します。

 

しかし,物質中ではアブラハムの運動量が依然としてA0=(0×0)/c2=ε0μ0(0×0)であるのに対し,ミンコフスキーのそれは00×0=εμ(0×0)です。

結局,熱物理学的に閉じた系という意味では,運動媒質中の電磁波は電子論に由来した集団運動の平均値としての真空中の電磁場という意味に取れるアブラハムの電磁場単独では,そのエネルギー運動量テンソルが保存量となり得ません。

 

正しくは,分極や磁化などを巻き込んだ物質場,つまり媒質をなす物質自身の力学的運動に伴なうエネルギー運動量テンソルも加えて総和した総エネルギー運動量テンソルが保存するわけです。

結局,ミンコフスキーのテンソルもアブラハムのテンソルも,総エネルギー運動量テンソルを電磁場テンソルと物質場テンソルに分割する仕方が違うだけで,電磁場テンソルと見る場合には対等な資格を持つ,という内容であるようです。

ところで,この問題は,量子論での光子のエネルギーや運動量とも関係ありますね。

 

真空中での1光子の振動数をνとするとhをプランク定数として,その光子の持つエネルギーはU=hνです。

 

そして,光子の運動量をpとすると光の質量mはゼロなので相対論の公式U=c(p2+m22)1/2から,U=cp,あるいはp=U/cです。

 

そして,光子が屈折率がnの屈折性媒質に入ったとき,この光子のエネルギーや運動量はどうなるのかという話になります。

古典電磁光学でよく知られていることですが,屈折率がnの媒質中で光が屈折するのは,その媒質中では電磁波の位相速度としての光速が真空中の値cではなくc'=c/nになるからですね。

 

そして,媒質の性質は空間的なものであって,真空から媒質に入ったからといって時間に変化が起きるわけではないので,媒質中で振動数が変わるわけではなく位相速度の変化は波長の変化に起因するものです。

つまり,真空中での光子の振動数をν,波長をλとするとc=νλですが媒質中でc'=c/nになるのは,波長がλからλ'=λ/nに変わるだけで振動数νに変化があるわけではありませんね。

そして,運動量は,=hc,k=2π/λで与えられるので,λ→λ/nはp→npを意味し,媒質の中に入ったからといって光子の質量mが発生するわけではないので,U=cpなるエネルギーと運動量の比例関係は同じであるとすると,p→npにつれてU→nUとなるはずです。

しかし,一方光子が媒質中に入ったときにも振動数νは不変で光子のエネルギーはU=hνのまま変わらないのでしょうか?

 

いや,一般に現象論では,U=(1/2)∫(EDHB)dVですから,U→nUが満たされています。

一方,運動量は=∫dVですが=ε=ε0,=μ=μ0であり,ミンコフスキーでは×=εμ,アブラハムでは=(×)/c2=ε0μ0です。ただし,はポインティングベクトルで×ですね。

 

そして,特に電磁波における電場と磁場は直交していて,実場としてこれらを1周期当りの時間平均と見ると,=∫dV=..

 

(未完)

ということで,いろいろと頭が混乱してきたので,9月の連休後に書いた原稿は途中で終わっていました。

 

それから,しばらくして2008年10/31に始まる「連続物質内の相対論」というシリーズの記事の中で,地道に解決しようと考えたのでした。

あまりにも長くなったので続きは後編で。。。

 

参考文献:Robert N.C.Pfeifer,Timo A.Nieminen,Norman R.Heckerberg(The University of Queensland Brisbane Queensland 4072 in Australia):"Momentum of an electromagnetic wave in dielectric media" Reviews of Modern Physics Vol.79(4),pp1197-1216(2007)

 

PS:"はしのえみ" お前もかぁ。でも"あやや"はまだまだだろう。。

 

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2009年1月 3日 (土)

運動物質内の相対論(12)(熱力学の法則)

運動物質内の相対論の続きです。

 

今日は相対論における熱力学の記述を考察します。電磁気学ではないので本筋をはずれるようですが記事の最後で"電磁輻射=光子気体"との関連についても少し述べます。

熱力学の法則を特殊相対性理論に包含することは比較的容易です。

 

これについてはプランク(Planck)とアインシュタイン(Einstein)の仕事があります。

ここでは簡単のため,考察の対象として物体を構成する部分の如何なる面要素にも応力としては垂直な圧力のみが存在し得るような熱力学的流体のみから成る系に限定します。

まず,静止系では第一法則,第二法則など全ての通常の熱力学の形式が成立することを前提とします。

静止系では,熱力学第一法則によって状態変化を生起させる熱力学的過程での系のエネルギーE0の変化dE0はdE0=δQ0+δA0なる式で与えられます。

 

δQ0はこの過程で系に流入する熱量,δA0は系がその周囲になした仕事にマイナス符号を付けたもの,つまり外部環境から系が受ける仕事を示しています。

系の体積0の増加が無限小であるような過程は可逆過程ですが,この過程ではp0を圧力とし体積増加をdV0とすると系が受ける仕事δA0はδA0=-p0dV0で表わされます。

熱力学の第二法則によって静止系ではエントロピー0は状態量です。そして可逆変化によって定義されるエントロピー変化の定義はdS0≡(δQ0可逆)/T0=(dE0+p0dV0)/T0です。

 

(δQ0可逆)は今論じている状態変化をもたらす可逆過程で系に流入する熱量であり,T0は系の絶対温度です。

もしも状態変化が不可逆過程で生じたものなら,これに反して常にdS0>δQ0/T0が成立します。

1つの慣性系Sを考えます。その慣性系はその座標系に対して対象としている熱力学系が一定速度で走っているように見える系であるとします。

既に「運動物質内の相対論(4)(弾性連続体(2),完全流体)」で見たように,量μ0,p0,が完全流体のあらゆる位置で一定なら,系Sでの運動量密度とエネルギー密度を全体積V≡V0(1-2/c2)1/2にわたって積分することで,運動量VとエネルギーE=hVが次のように表わせることを知っています。

 

 すなわち,運動量はV={(h0+p0)V/c2}/(1-2/c2)={(h0+p0)V0/c2}/(1-2/c2)1/2={(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2で,エネルギーはE=hV=(E0+p002/c2)/(1-2/c2)1/2です。

これを見ると,(E/c,)=({E0+p002/c2)/c}/(1-2/c2)1/2,{(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2})はローレンツ共変な4元ベクトルにならないことがわかります。

 

しかし,=(E+pV)/c2,E+pV=(E0+p00)/(1-2/c2)1/2なので,Gμ≡(E/c,)ではなくGμ≡((E+pV)/c,)とおけば,これらは静止質量が(E0+p00)/c2の質点のエネルギー運動量ベクトルと同じですから4元ベクトルです。

今考えている流体は静止系で平衡状態にあるので,そのエネルギー,および運動量は,それぞれE=(E0+p002/c2)/(1-2/c2)1/2,および={(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2=(E+pV)/c2で与えられます。

 

また,特にE+pV=(E0+p00)/(1-2/c2)1/2です。ただしp=p0,V=V0(1-2/c2)ですね。

さて,再び任意の慣性系でこの熱力学系の状態を変える同じ可逆過程を考えます。熱力学の第一法則はエネルギーの保存法則ですから任意の座標系でdE=δQ+δAと書けるはずです。

しかし,仕事δAは静止系のときのように-pdVではありません。なぜなら運動系では速度に伴なう系全体の運動量や運動エネルギー等があるため過程においてそれらに生じる変化をも考慮する必要があるからです。

 

系の平衡を保つため,つまり速度が物体のいたるところで一定であるためには普通の圧力の他に外力の存在を仮定しなければなりません。

S系において物体中でを一定に保つに必要な力=d/dt={(/c2)/(1-2/c2)1/2}(d/dt)(E0+p00)です。

 

そして,右辺は今想定している熱力学過程の間でゼロではないので,物体系の速度が一定に見えるためには,S系では物体に作用する外力の存在が必要なのです。

 

このは時間dtに(Fu)dt=だけ仕事をします。したがって,この系が受ける仕事は全体でδA=-pdV+となります。

そこで,E=(E0+p002/c2)/(1-2/c2)1/2,={(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2によって熱力学の第一法則dE=δQ+δAはδQ=dE+pdV-となります。

 

したがって,δQ={dE0+(2/c2)d(p00)-(2/c2)d(E0+p00)}/(1-2/c2)1/2+p0dV0(1-2/c2)1/2=(dE0+p0dV0)(1-2/c2)1/2なる式を得ます。

 

静止系では,dE0=δQ0+δA0=δQ0-p0dV0よりδQ0=dE0+p0dV0ですから,これはδQ=δQ0(1-2/c2)1/2であること意味します。

さて,任意の座標系でもエントロピーSと絶対温度Tの関係をdS≡(δQ可逆)/Tで定義します。

 

ところで,ある特定の座標系に静止している熱力学系を,その内部状態を変えないように,系全体の速度がになるまで断熱可逆的に加速すろとき状態量の変化はdS≡(δQ可逆)/Tを満たします。

 

断熱ですからこの過程中にはδQ可逆=0 ⇔ dS=0 です。つまり,静止系からS系に慣性系を乗り換えても,エントロピーは一定のままである必要があります。

つまり,内部状態が一定のとき,この系のエントロピーはその全体としての速度に無関係です。エントロピーはS=S0でローレンツ不変量です。

 

まあ,早い話,純粋に力学的な回転やブ-ストは可逆過程で,かつ断熱過程なのでエントロピーは変化しないのですね。

というわけで,dS=dS0です。dS≡(δQ可逆)/T,dS0≡(δQ0可逆)/T0,δQ=δQ0(1-2/c2)1/2ですから,T=T0(1-2/c2)1/2なる絶対温度の変換式が得られます。

 

これは,状態の不可逆的変化が静止系と同じく,あらゆる座標系でdS>δQ/Tを満たすこととも矛盾しません。

一般的な系でエネルギーと運動量の保存則を微分形式で表現すると,既に閉じていな系の一般論で述べたように,これは∂Tμν/∂xν=fμで与えられることがわかっています。

 

ただし,Tμνは系のエネルギー運動量テンソルを表わし,fμは4元力密度を示しています。∂Tμν/∂xν=fμは,熱力学においては第一法則そのものを表わしています。

 

一方,第二法則を4次元形式で表現することも可能です。

エントロピーが加法性を持つことから,エントロピー密度sを定義することができます。

 

エントロピーの変換公式S=S0と体積のそれV=V0(1-2/c2)1/2から,sΔV=s0ΔV0により,容易に密度sの変換性を求めることができます。明らかにs=s0/(1-2/c2)1/2ですね。

さて,無限小時間dtを考えて,この間に微小体積ΔVに熱量δQが流入したとします。

 

このとき,体積ΔV内のエントロピー変化dS=d(sΔV)は,クラウジウスの不等式:{d(sΔV)/dt}dt≧δQ/Tを満たすはずです。

 

ところが,既にd(sΔV)/dt=(ds/dt)ΔV+s(dΔV/dt)=(∂s/∂t+grads)ΔV+sdivΔV={∂s/∂t+div(s)}ΔVと書けることを知っています。

そこで,電荷Qに対する4元電流密度Jμと同じように,エントロピーの4元流密度をSμ≡(s,s/c)で定義すると,上で得られたd(sΔV)/dt={∂s/∂t+div(s)}により,{d(sΔV)/dt}dt≧δQ/Tは,(∂Sμ/∂xμ)d∑≧δQ/Tと書けます。

 

ただし,d∑≡cΔVdtですが,これは4次元の不変体積要素を示しています。

δQ=δQ0(1-2/c2)1/2,およびT=T0(1-2/c2)1/2によってδQ/Tはスカラーですから,結局,第二法則のローレンツ共変な4元形式は(∂Sμ/∂xμ)d∑≧δQ0/T0となります。

さて,次にN個の単原子分子から成る理想気体を考えます。

 

これは静止質量がm0の分子の平均の運動エネルギーが静止エネルギーm02に比べて小さい場合には静止系でのエネルギーやエントロピー等に関し通例となっている状態方程式がわかっています。

 

すなわち,kB0/m02<<1のとき,理想気体の状態方程式はp00=NkB0です。kBはボルツマン定数(Boltzmann constant)です。

静止系での気体の総エネルギーはE0=Nm02+(3/2)NkB0です。E0はT0=0 のときにエネルギーE0が分子の静止エネルギーとなるように規格化されています。

 

これとp00=NkB0,およびdS0=(dE0+p0dV0)/T0からdS0=(3/2)NkBdT0/T0+NkBdV0/V0と書けます。

 

これを積分すると静止系でのエントロピーの表式は良く知られたS0=(3/2)NkBlnT0+NkBlnV0+Cという形になります。なお,右辺のCはT0,V0に依らない積分定数です。

この理想気体の系が一定の巨視的速度を持つように見える座標系においても,p=p0,V=V0(1-2/c2),T=T0(1-2/c2)ですからp00=NkB0はそのままpV=NkBTを意味します。

 

よって,気体の状態方程式の形は慣性座標系によらず不変であるとわかります。

一方,既に見たようにE=(E0+p002/c2)/(1-2/c2)1/2,={(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2=(E+pV)/cです。

 

それ故,E=Nm02/(1-2/c2)1/2+(3/2+2/c2)NkBT/(1-2/c2),=Nm0/(1-2/c2)1/2+(5/2)NkB/(c22),S=(3/2)NkBlnT+NkBlnV-(5/2)NkBln(1-2/c2)1/2+C,なる変換のセットを得ます。

既に過去記事で述べたように,完全流体のエネルギー運動量テンソルはTμν0+p0/c2)Uνν-p0ημνで与えられることがわかっています。

 

ただしμ0=E0/(c20)=n0{m0++(3/2)kB0/c2}は静止系での密度で圧力はp0=n0B0を満たします。n0≡N0/V0は静止系での分子数密度です。

したがって,静止系での圧力p0,密度μ0,温度T0の間にはp0=μ0B0/{m0++(3/2)kB0/c2}なる関係があることがわかります。

 最後に黒体輻射の話をします。

空洞内に閉じ込められて空洞の壁とある温度で平衡状態にある電磁輻射は完全流体として扱うことができます。

空洞の壁が静止している座標系では"電磁輻射=光子気体"の巨視的な流れはいたるところゼロです。つまり統計熱力学の対象としては輻射される電磁波の統計平均としての速度は静止系では方向性がないのでゼロなのですね。 

そして,輻射のエネルギー密度h0はステファン・ボルツマン(Stefan-Boltzmann)の法則によって,h0=a(T0)4で与えられます。

 

ただし,aはステファン・ボルツマン係数でa~7.6237×10-15 erg/(cm3.deg4)です。密度h0は空洞の体積によらない量です。

また,面に垂直に及ぼされる輻射圧は,p0=h0/3=a(T0)4/3=μ02/3で与えられます。

 

また,輻射の全エネルギーE0はE0=h00=aV0(T0)4と表わされるので,dS0=(dE0+p0dV0)/T0に代入すると,dS0=4aV0(T0)2dT0+(4a/3)(T0)3dV0=(4a/3)d{V0(T0)3}を得ます。

 

そこで,これを積分してV0=0,T0=0ではS0=0 となるように,積分定数を選べば,S0=(4/3)aV0(T0)3が得られます。

したがって,この空洞容器の固定された系が速度で運動しているように見える座標系では,E=(E0+p002/c2)/(1-2/c2)1/2=aV0(T0)4{1+(1/3)(2/c2)}/(1-2/c2)1/2=aVT4{1+(1/3)(2/c2)}/(1-2/c2)です。

 

また,={(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2={(4/3)aV0(T0)4/c2}/(1-2/c2)1/2となります。

 

エントロピーはスカラーなので,S=S0=(4/3)aV0(T0)3=(4/3)aVT3/(1-2/c2)3ですね。

そこで,この輻射のエネルギーEと運動量を,E0,の関係として表わせばE=E0{1+(1/3)(2/c2)}/(1-2/c2)1/2,={(4/3)E0/c2}/(1-2/c2)1/2となります。

 

これらは前に古典電子模型として論じた球対称な静電系の運動系での表式と完全に一致しています。これで,取り合えず,熱物理学の話と電磁気学の話が結びつきました。

今日はここで終わります。 

参考文献:メラー 著(永田恒夫,伊藤大介 訳)「相対性理論」(みすず書房)

 

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2008年12月27日 (土)

運動物質内の相対論(11)(電磁波と光子の屈折)

コーヒー・ブレイクとして,光が屈折性の透明体に入射して屈折するという現象を古典電磁光学における電磁波という光の描像と量子論における光子,または光量子という光の描像を対比させ,これらの両方が矛盾なく両立できるということについて考察してみたいと思います。

これは,私自身がそうだったのですが,量子論をある程度かじった時期よりも,それを用いて少しでも量子論の内容を評価できるほど古典電磁気学が理解できたと感じた時期の方がかなり後だったので,電磁気学を学んでいる際に,それと量子論との整合性について疑問に思ったことがあったという関連からの話題です。

量子論について最初に教えられた知見の1つは,恐らく高校で単なる知識として学んだ前期量子論で知ったものでしょうが,「量子論では光を1個,2個と数えることができて,真空中で振動数がνの"光=電磁波"の持つエネルギーは"数えられる光の量子=光子"のエネルギーという意味では光子1個当たりU=hνで与えられる。」ということです。

 

ここで,hはプランク定数と呼ばれるある定数です。

いわゆる光量子仮説ですね。振動数νではなく角振動数ω=2πν,およびhc≡h/(2π)を用いるなら,光子のエネルギーはU=hνの代わりにU=hcωと表わされます。

一方,古典波動光学では,光が相対的屈折率nの透明物体に入るとき,光線の入射角,つまり入射光線が物体表面の法線となす鋭角をθiとし,入射後に向きを変えて屈折したときの屈折角,つまり屈折光線が光が入射したのと同じ表面の法線となす鋭角をθrとすると,スネルの屈折法則(Snell's law)n=sinθi/sinθrが成立することが知られています。

実はこの法則は,屈折率nの定義にもなっています。

 

すなわち,スネルの法則の内容は,光が入射する物体が同じ物質でできているなら,その屈折角θrは,入射角θiの値に関わらず,ある一定の値nによってsinθr=sinθi/nなる法則で決まることを意味します。

  

そして,真空と物質ではなく,物質同士の境界面での光の屈折率nのことを普通相対屈折率と呼びます。

 

上記スネルの法則は,真空から物質A,物質Bに入る場合の光の屈折率(=絶対屈折率)をそれぞれnA,nBとすると,光が物質Aから物質Bに入るときの屈折率(=相対屈折率):nABがnAB≡nB/nAなる比で与えられることを意味します。

 

このため,真空から物質への屈折率を絶対屈折率と呼ぶことと区別して,一般の物質Aから物質Bに入るときの光の屈折率:n=nABを正しくは相対屈折率と呼ぶのですね。

 

なお,光が水中から空気中に出て行くケースのように,相対的屈折率n≡nABが1より小さい場合,すなわちnA>nBの場合に,入射角θiがあまり大きいと,sinθr=sinθi/nを満たすθrが存在しないため,このときには例えば水面に向かう光は反射を受けることのみが可能で,空気中に透過して屈折することはできません。

 

この現象を全反射と言います。

 

例えば人が釣りをしているような場合,魚の方からは常に釣り人が見えているのに,釣り人からは角度によっては魚が見えないことがあるという現象ですね。

要約すると,ある境界面を挟んで異種の物質からなる領域A,Bがあるとき,光などの波がA,Bの境界面で向きを変える屈折現象では,AからBに入るときの波の屈折率nABをスネルの法則に従ってnAB≡sinθA/sinθBで定義するわけです。

 

波動に対するホイヘンスの原理(Huygens' principle)に基づく解釈では,これはA,Bそれぞれの中での波の位相速度の大きさをvA,vBとするとき,nABがnAB=vA/vBで与えられることで説明されます。あるいは,これはvAsinθB=vB sinθAです。

そこで,真空中での光の位相速度の大きさ,つまり真空中での光速をcとすると,この光が真空からある物質からなる領域に入射後屈折して屈折率(絶対屈折率)がnであるというのは,この物質中での光速がc'=c/nであることを意味します。

一般に,物質中での光速c'=c/n,または屈折率nは真空中の光の振動数ごとに異なるので,ある一定の方向から同じ物体に向かって多くの異なる色(異なる振動数)の単色光が混合した束でできた白色光が入射しても,単色光ごとに別々の屈折角に分かれてしまいます。

 

これを分光といいます。

プリズムや虹というのは,こうした現象の例としてよく引き合いに出されますね。

 

分光学を英語ではspectoroscopyと言いますが,要するに光のスペクトルというと,光束(複合光)が真空中での振動数,または波長ごとの光の和に分解される際の個々の成分である単色光のことを意味します。

そして,光を波と考えるとき振動数が一定値νを取る単色光では,その波長も一定で,それをλとすると真空中の速度cではc=νλと書けますが,屈折性物質中でも光速c'=c/nに対して振動数をν',波長をλ'として,同様にc'=ν'λ'と表わせます。

 

真空では,速さがc=νλで表される単色光は,空間の不連続境界面を通過する際に速さがc'=ν'λ'に変わるのですが,境界面を通過しても時間の尺度が不連続的に変わるわけではないので,時間だけに関係する振動数νが変わるはずはなく,境界面で変わるのは空間尺度に関係する波長λだけなんですね。

つまり,速さの変化c→ c'=c/nは,振動数はν'=νのままで,波長の変化λ→λ'=λ/nによるものなんですね。

そして,色というのは古くはゲーテ(Goethe)も論じていて,振動数という物理的な色の概念は恐らくニュートン(Newton)に始まるものでしょうが,これと我々動物が知覚する色覚,物理的な色刺激に対する生理学的な視神経や桿細胞などの反応は,必ずしも精確に対応するわけではなく,微妙に異なるものですね。

  

元々物理学というのは,物象の中の"量的側面=数で表わすことが可能な性質"のみに着目して論じる学問であるわけです。

 

そういうわけで物理学は数学とお友達なのですね。

屈折性物質中では,単色でも物質によって波長が違うので,色覚的に物質中の色が真空中の色と同じに感じられるかどうかはわかりません。

 

つまり,例えば水の中での人間の脳の感覚や色覚が真空や空気中のそれと全く同じか,相似である(相対論では外部から見ると空間,時間が収縮しているいても自分自身も同じ比率で収縮した空間にいるときにはそれを知覚できないのと同じ性質等)かどうかはわかりません。

 

しかし,単色光の色を真空以外の物質中でも真空中と同じ振動数で分類するならともかく,色と波長を一対一に対応させて分類しようとするなら,同じ色と同定される単色光でも物質の種類ごとに波長が異なるということに注意することが必要ですね。

というわけで,振動数νは屈折性物質中でも真空と同じなので,量子論でU=hνと表わされる光子のエネルギーUの表式は,その光子が屈折率nの物体の内部に入っても物体と相互作用しない限りは,物体中であろうと同じエネルギーU=hνを持つと考えて矛盾はないはずです。

光子は素粒子としては電荷を持たない中性粒子ですが,電磁波としては交番的な電場と磁場を持ちますから,絶縁体でもそれを構成する電荷を持った電子などを揺さぶって原子を分極させ,それらをイオン化する可能牲もありますが,普通の泡箱や霧箱は光とは反応しないはずです。

また,電磁光学によると,物体の誘電率がε,透磁率がμ,あるいは比誘電率がεr≡ε/ε0で比透磁率がμr≡μ/μ0のとき,この誘電体,磁性体に真空から入射する際の電磁波(光波)の屈折率nは(εμ)1/2=n/c,またはn=(εrμr)1/2によって与えられることがわかっています。

前記事で述べたように電荷密度も電流密度も無い:ρ=0,=0 の空間における平面波で表わされる電磁場は電場と磁場に分けると,=ε-1/2{f(t-(xn)/w)1+g(t-(xn)/w)2},および=μ-1/2{-g(t-(xn)/w)1+f(t-(xn)/w)2}となります。

 

ただし,w=c/nです。

これらはマクスウェルの電磁場の方程式から導かれる,に対する波動方程式∂2/∂t2=w22,∂2/∂t2=w22の波動法線がの平面波解の最も一般的な形です。

 

そこで,エネルギー密度はh=(1/2)(ε2+μ2)=f2+g2ですからh=(1/2)(ε2+μ2)という見かけの表現とは異なり,エネルギー密度hは誘電率εや透磁率μ,つまり屈折率nにはよらず真空中と全く同じであることがわかります。

 

そりゃ,エネルギーをやり取りせずに素通りするだけですから,当然そうですよね。

 

というわけで,古典電磁光学でも量子論と同じく光の持つエネルギーはそれが存在している媒質の屈折率とは無関係という結論を得ます。

電場だけに着目すると,一般に誘電体中のクーロンの法則は||=Q/4πεr2ですから,電場の大きさはいつでも誘電率の逆数ε-1に比例するという先入観がありましたが,実は空間を伝播中の電磁波における電場は=ε-1/2{f(t-(xn)/w)1+g(t-(xn)/w)2}で与えられるため,その大きさはε-1/2に比例します。

 

そこで,"光=電磁波"がε=ε0の真空からε=εrε0>ε0の誘電体に入る場合,誘電体中での電場の大きさは真空中のεr-1/2倍に減じ,それゆえエネルギー密度ε2は不変のままなんですね。 

 

ところで,平面波の一般形の例えば正の向きに運動する波の項f(t-(xn)/w)はフーリエによってf(t-(xn)/w)=∫f^(k,ω)exp{i(kx-ωt)}dωと展開できることがわかります。

 

複素表示での単色平面波の一般形はCexp{i(kx-ωt)}です。

ω=2πν=2πw/λでk=ω/w,||2π/λですから,kx-ωt=-ω{t-(n)/w}となり,Cexp{i(kx-ωt)}は確かにt-(xn)/wの関数です。

 

それ故,∫f^(,ω)exp{i(kx-ωt)}dωなる形式は,t-(xn)/wの関数の最も一般的な展開形を表わしていると考えられます。

 

単色光でなく混合された白色光のような複合光でも,位相速度wがあらゆる単色波に共通な一定値を取るような物質中の話なら,フーリエ展開はf(t-(xn)/w)=∫f^(,ω)exp{i(kx-ωt)}dω,k=ω/wという形であるとして全く問題ないです。

 

しかし,現実の物質内では光速w=c/n,あるいは屈折率nは"色=角振動数:ω"ごとに僅かに異なります。

 

これを物質が分散性を持つといいます。全ての"色=角振動数:ω"で屈折率nが1の真空中なら,常に全ての色でw=cであって全く問題ないのですが。。。

 

そこで,そもそも分散性物質内では左辺の進行波を単純に1つのwで規定されるf(t-(xn)/w)なる形には表現できないので,単にf(t,)と書きます。

 

この物質内では平面波:Cexp{i(kx-ωt)},k=ω/wの位相速度w=c/nがωの関数w=w(ω)で与えられるため,k=ω/w(ω)としてこれをωについて解いた形をω=ω()と表わしたものを用いてCexp{i(kx-ω()t)}と書き,f(t,)のこの平面波による展開式をf(t,)=∫f^()exp{i(kx-ω()t)}d3と表わすのが現実的です。

 

こうした分散性の複合光では,位相速度という概念は,ほとんど意味を持たなくなるわけですね。

 

波が単色波に近くてf(t,)=∫f^()exp{i(kx-ω()t)}d3が,ある0を中心としてΔ程度のゆらぎを持つ波束である場合には,ω0≡ω(0)とすると0+Δに対してω()~ ω0+(dω/dと書けます

 

要素波:exp{i(kx-ω()t)}において位相をφ≡kx-ω()tで表わし,expiφ ~(expiφ0)expi{(∂φ/∂)Δ},φ00-ω0tと書いて,展開式f(t,)=∫(f^expiφ)3 ~ (expiφ0)∫[f^expi{(∂φ/∂)Δ}]d30近傍の波全ての重ね合わせと見たとき,各々の要素波が強め合う干渉をするのは明らかに位相が極値をとる場合,つまりφ/∂がゼロとなる場合です。

 

そこで,φ≡kx-ω()tをで偏微分して∂φ/∂-(dω/d)t=0 とすると,これは時刻tにおいて面=(dω/d)tを表わす方程式となっています。

 

一方,この式の右辺をtの1次式とみるならこれはその面が速度dω/d=∇kωで運動することを意味する式になります。つまり,全体としては波束の振幅が最大となる面が速度dω/dで移動するという描像が得られます。

  

こうして得られたdω/d=dν/d(/λ)なる表現の波束の速度を群速度と呼びます。そして,一般に歴史的に光速と同定される光線速度は光のエネルギーの伝播速度のことです。

 

全く分散のない真空中の光速であれば,全ての振動数の光で=ω/w=一定により,複合光の群速度もdω/d=w(一定),かつw=cですから,群速度(dω/d)は位相速度cに一致しさらに光線速度にも一致するため何も迷うことなく光速はcであると言明できます。

 

ところが,分散性物質中での複合光を対象とする場合だと位相速度よりもむしろ群速度の方が光線速度に近い意味を持ちます。

 

しかし,複合光ではなく完全な単色光の屈折率がnの一様物質内の光線速度を問題にするのであれば,分散を考慮する必要がないので光速は位相速度w=c/nであるとして問題ないでしょう。

 

以下では基本的に完全な単色光の一様物質内の進路のみを考察の対象とします。

 

さて,真空中にしろ物質中にしろ,空間全体で積分した総エネルギーはU=∫hdVです。以下では以前と同じくエネルギーをUではなくHで表記することにします。すなわち,H≡∫hdVとします。

 

一方,運動量密度も積分して総運動量という形にすると=∫dVです。そして運動量密度がアブラハム(Abraham)のそれの場合には特にAbr=∫AbrdVと書きます。

 

静止した屈折率がnの屈折性物体の中での電磁運動量密度はミンコフスキー(Minkowski)の場合は×=εμ(×)=c-1(εrμr)1/2(f2+g2)=c-1(εrμr)1/2=nh/c,アブラハムの場合はAbr/c2=(×)/c2=ε0μ0(×)=c-1(εrμr)-1/2(f2+g2)=h/(nc)です

 

したがって屈折率がnの屈折性物体の中での電磁運動量は,それぞれ=(nH/c),Abr={H/(nc)}と書けます。

いずれの表現も真空中,すなわち屈折率がn=1の領域の中では,Abr=(H/c)であり,古典論,量子論を問わず真空中で光のエネルギーEと運動量pがE=cpなる関係にあることと矛盾しません。

光の他には元々静止していた屈折性物体だけしかない系全体を考えると,これらは閉じた系を成していて,系全体ではエネルギーも運動量も保存するはずです。

 

そして,既に以前の記事で閉じた系の一般論から任意の慣性系Sにおけるこの系の質量中心の座標(S)はd(S)/dt=c2/Hを満たし,エネルギーも運動量も保存する,すなわちHもも時間的に一定のときには慣性中心の座標(S)は一定速度で運動すると書きました。

そこで次のような思考実験を考えてみます。

摩擦が全くない床面に質量がMで屈折率がnの一様な透明物質でできた直方体が置かれ,その長さLの一辺がx軸に平行な向きにあるとき,x軸の負の側からエネルギーがHの"光=電磁波"が入射して通過してゆく系を考えます。

この今のHの定義では,式d(S)/dt=c2/Hにおける右辺の系全体のエネルギーを表わす記号Hは(H+Mc2)に置き換える必要があります。すなわち,d(S)/dt=c2/(H+Mc2)=cH/(H+Mc2)です。

 

また今の場合はx軸の正の向きですから,これを省略してdX(S)/dt=cH/(H+Mc2)と書いておきます。

一方は入射前ではミンコフスキーもアブラハムも関係なくAbr=(H/c)です。

 

閉じた系では光の電磁運動量をe,屈折性物体の持つ力学的運動量をmとすると,em=(H/c)です。

 

そこで,ミンコフスキーではe=(nH/c)なのでm=(H/c)(1-n),アブラハムではe={H/(nc)},m=(H/c)(1-1/n)ですね。

そして,今のケースはエネルギーも運動量も保存される閉じた系を想定しているので,こうした関係は光が入射する前も後も未来永劫変わらないはずです。

さて,静止していた物体はエネルギーHと運動量を獲得するので実質的な光の質量をm=H/c2とすると系全体での質量は(m+M),運動量はですが,前のように光のみの運動量をe,物体のみが持つ力学的運動量をmとすると,物体は速度m/Mを得て床をすべってゆくと考えられます。

一方,透明な物体中での光の速さはc/nであり,光はこの速さで長さLの物体を通過してΔt=n(L+s)/cの後には右側から出てきて光速はcに戻るはずです。

 

sは右側から光が入ってから出てくるまでに物体自身が移動する距離でs=vΔtで与えられます。

したがって,このΔtの間に系の質量中心は{m(L+s)+Ms}/(m+M)だけ移動すると考えられます。

 

これにm=H/c2,L+s=cΔt/n,s=GmΔt/Mを代入すると,{m(L+s)+Ms}/(m+M)={H/(nc)+Gm}Δt/(m+M)です。

 

ところが,以前に得られたことからdX(S)/dt=cH/(H+Mc2)=(H/c)/(M+m)ですからΔX(S)=(H/c)Δt/(m+M)です。

これらを比較すると,ΔX(S)={m(L+s)+Ms}/(m+M)であるべきですから,H/(nc)+Gm=H/cを得ます。

 

しかしG=H/cなので,これはGe=G-Gm=H/(nc)を意味します。そこでこの考察からは電磁運動量eとしてアブラハムのそれAbr={H/(nc)}がふさわしいという結果が得られます。

通常のアインシュタインの箱(Einstein's Box)による説明の場合には,静止した屈折物体から光が放出される話で,この場合は元々全部静止していて最初から最後まで一定の総運動量はゼロのままですから質量中心の移動はΔX(S)=0 です。

最初左端から箱の中に放出されて右端から出る光の質量はm=H/c2で,この間の経過時間はΔt=Ln/cです。

 

そして光放出の反作用で物体は 0=ΔX(S)=mL+(M-m)sを満たす距離sだけ反跳を受けます。

明らかに,s=-(HL/c2)/(M-m)ですが,反跳運動の速度はv=-G/(M-m)であり,s=vΔt=-(GnL/c)/(M-m)でもありますから,結局G=H/(nc)です。

 

当然ながら同じような考察からは同じ結論を得ました。

まあ,アブラハムの電磁運動量は元々ローレンツの電子論のような個々の電子の真空中の量を平均化したものですから,この運動量の分割がアインシュタインの箱の考察と合致するのは極めて当然であるような気がします。

今日はここで終わります。

参考文献:太田浩一 著「マクスウェル理論の基礎」(東京大学出版会),中山正敏 著「物質の電磁気学」(岩波書店)

PS:余談ですが,高校でほぼ初めて物理を習った頃に,光が波か粒子かについては,その屈折の仕方でわかるという内容を先生の説明で聞いたのが頭に残ってます。

 

 つまり「もし光が波でなく粒子だったら,境界で速度の接線成分が変わらず法線成分だけが小さくなるんだから,実際の屈折とは反対の向きに曲がるだろう」という話ですが,これは未だに印象に残っています。

高校のときは,化学の点数は良かったのですが,理科の科目としては化学よりも好きだった物理の点数はさっぱりでした。

 

ただ,当時は計算は苦手だったけれど意味を考えるのは結構好きだったのです。今とはほぼ正反対ですね。

 

今なら,式や計算では理解できても物理的意味はわからないので,数式の助けで定式化から攻めて,次第に全貌が明らかになるというような感覚でしょうか。。

 

その時代に私が最も得意としていた科目は理科系科目ではなくて,唯一国語でした。国語だけは近郷の模試でも常に成績がトップクラスであったっと記憶しています。

   

でも,現役のときに第一志望の大学に落ちたのは国語の出来が悪かったのが主因というのは皮肉でした。

当時,その大学の入試は入試の答案や採点内容は非公開でも総点数とその科目別内訳だけは,合格,不合格関係なく自分の高校に帰ってきたので本人が希望すれば先生から教えてもらうことができたのです。

 

現役受験のときは,国語の点数が200点満点の4割強の85点ぐらいしかなかったのが大きかったですね。

 

確か900点満点で最低点に34点足りなくて,国語の点数が6割120点あれば丁度合格だったと記憶しています。

実は,今は入試に小論文などあるのは極く普通なのですが,当時は入試で作文を出すのは珍しく,国立では恐らくそこだけだったかも知れないのですが,今では考えられないことに当時は他人が書いたものを読解することは得意でも自分で文を作るのは大の苦手だったんですね。

 

今だったら,むしろ他人を無視しても自己主張するくらいの方が得意なのに,当時引込み思案のシャイで無口な平凡な保守的というよりも幼稚な子供でしたからね。

漢字の読み書きとか特に得意だった漢文などはスラスラと出来たはずですが,詩を作れという問題だったか何か忘れましたが,そういう大きい設問が2つくらいあって,試験中に固まってしまったのを覚えてます。

浪人のときは,安田講堂事件のため東大入試が中止となった影響で第一志望の大学入試は900点満点での最低点がどの学科でも例年より100点前後上がったのですね。

 

いや受験生のレベルも確かに上がったでしょうが,試験内容も例年と違って,ある大学の一次試験のような傾向になったのも含めて,かなりやさしい方に変わっていました。元々私は難問で勝負するタイプでしたからみんながわかりそうな問題では競争になりません。(← 負け惜しみ)

 

当日いくら待っても待ち合わせに来なかった同じ予備校の友人など意地を張らずに,第一志望のランクを少し下げた連中は,ほぼ全員合格したと後で聞きました。

 

当時,入学した第二志望の大学は数学科定員35名,物理学科定員45名で定員+αいました。1年生のころは,大体この2学科は同じようなカリキュラムで一緒に行動していました。

 

中には結構仲のいい友達にもなっていたのですが,翌年には突然20名以上が消えましたね。そう学生の身分でいながら,大学を受け直して合格した者達が去っていったのですね。

 

あ,別に非難する気などありません。

 

多くは,現役のときに不可抗力で第一志望を受けられなくて隠れ浪人とはいえ一浪したのと同じです。

 

もしも私がやると二浪ですから,貧乏なことも含めそこまではやりません。私自身,現役で第二志望合格したのにも関わらず一浪したわけですから他人の事は言えませんネ。。。

 

あ,ちょうど40年くらいも前のずいぶんな昔話になりましたね。。イヤ私もいつまでも執念深いな。。

 

※PS:スザンヌは顔だけだけど誰かに似ていると思ったら倍賞千恵子の若い頃の顔だな。。。(故)飯島愛の顔はデビューした頃の,コロコロ太ってたが顔は可愛かった頃の和田アキ子だな。。。

 

関根の娘ってマナ,カナによく似てるなあ。。

 

(TVで芸能人見ていても我流だけど毎日新たな発見がありますね。)

 

金もないし何も好き好んでみんなが大移動する正月に関西に帰省する必要もないので,急遽予定を変更し今年も東京の自宅で寝正月をすることにしました。

 

(免許取り立てのメイが運転する車に乗らないでいいから,若干寿命が延びたな。。。)

 

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2008年12月25日 (木)

運動物質内の相対論(10)(屈折性物体中の光波)

運動物質内の相対論の続きです。

 

透明な絶縁体中での"光波=電磁波"の屈折現象に関連して,ミンコフスキー理論(Minkowski theory)とアブラハム理論(Abraham theory)を比較してみます。

マクスウェル(Maxwell)の"電磁波=光波"の理論によれば,屈折率がnの屈折性物体中の光学現象は(εμ)1/2=n(ε0μ0)1/2=n/c,またはn=c(εμ)1/2なる関係式で結ばれる誘電率ε,および透磁率μを有する物質に関するマクスウェルの現象論的電磁力学の式で記述されます。

 

そして,少なくとも波長が十分長い場合には,あらゆる分散現象が無視できるので,これは十分な精度で正しいことです。

さらに光を全く吸収しない理想的な透明体は完全な絶縁体でなければなりません。すなわち,σ=0,ρ=0,=0です。ただしσは電気伝導度,ρは電荷密度,は電流密度です。

さて,光線速度は波のエネルギーの伝播速度に等しいはずです。例えば光行差の角度の存在は,望遠鏡で物を見る際に物からの"光線=エネルギー"が望遠鏡の筒の中を通るためには望遠鏡を傾ける必要があることを意味します。

ところが電磁場のエネルギー運動量テンソルが与えられている場合,これをTμνとしてエネルギー密度をh=T00,エネルギーの流れ密度をSk=cT0kとすればエネルギーの速度は*/hで与えられることがわかっています。

そして相対論では光は波であるにも関わらず,質点粒子と同一の挙動をすることが要求されます。

 

つまり光波の場合,*/hが質点粒子の速度と同じ変換性を持つことが要求されます。

 

このことは4つの値を持つ量UをU≡(c/(1-*2/c2)1/2,*/(1-*2/c2)1/2)で定義したとき,これが4元ベクトルになることを意味します。

ところが,以前の2008年10/31の記事「運動物質内の相対論(1)」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/1-5243.html によれば,Uが4元ベクトルになるためには,条件として式Rμν≡Tμν-Tμλ*λ/c2=0 が常に成立することが必要十分であることがわかっています。

これの根拠を見るため,この2008年10/31の記事「運動物質内の相対論(1)」を引用します。

(※引用):まず,(1-*2/c2)1/2={1-2/(h22)}1/2=(Sμμ)1/2/(hc)なのでU=c(Sλλ)-1/2μと表わすことができます。特にU*μ=c2は常に満たされています。

2つの慣性系SとS'が無限小ローレンツ変換x'μ=xμ+εμνν=(δμν+εμν)xνμν=ενμで結ばれているとします。

 

このとき,εμνの2次以上の微小量を無視すれば,テンソルの変換性によりT'=(δ0λ+ε0λ)(δμν+εμν)Tλν=T+ε0λλμ+εμνなのでS'μ=Sμ+εμνν+cε0λλμ,S'μS'μ=Sμμ+2cε0λλμμです。

 

そこで(S'μS'μ)-1/2=(Sμμ)-1/2[1-cε0λλρρ(Sττ)-1/2]と書けます。

したがって,U*'μ=c(S'λS'λ)-1/2S'μ=U+εμν+c2ε0λ(Sσσ)-1/2[Tλμ-Tλρ*ρ/c2]となります。

 

ここでRμν≡Tμν-Tμλ*λ/c2とおくとU*'μ=U+εμν+c2ε0λ(Sσσ)-1/2λμです。

 

そして,μ=0 なら恒等的にR=T-T*λ/c2=Sν/c-Sλ/c=0 が満たされています。

そこで,UがU*'μ=U+εμν