111. 量子論

2016年9月 1日 (木)

クライン・ゴルドン方程式(8)

クライン・ゴルドン方程式(Klein-Gordon eq.)の続きです。
 

外電磁場Aμ()があるときの一般的ケースに移ります。


 このケースについて,中間子の波動関数φ()
の満たす

基本方程式を示すため,まず,自由粒子の方程式:

(□+μ2)φ=0 (μμ-μ2)φ=0と書き直し,,

さらに,運動量演算子の微分表示:μiμにより,

(2-μ2)φ=0 と書き直します。p2=pμμです。
 

この表現では,極小相互作用変換:μ → pμ-eAμ

を適用できて,(p2-μ2)φ=0 は電磁場:μ()がある

ときは,[(μ-eA)2-μ2]φ=0 と変形されます。
 

これは,pμiμに戻せば,

[(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)-μ2]φ=0 

とも表現できます。
 

これが,電磁場Aμがあるときのスピンゼロの中間子の波動関数

が満たす基本方程式です。

 (※↑
これは,既に2016年5/30の過去記事:

クライン・ゴルドン方程式(3)」において記述していた

ことです。

そして,先に示したように自由中間子が満たすKlein-Gordon

方程式:(□+μ2)φ=(μμ-μ2)φ=0 φ[θ,χ]T

と2成分縦ベクトル表示して,i(φ/∂t)Hφ,および,

(ηρ){2/(2μ)}+μη (η,ρは2×2行列)

の形表わしたときには,
,

p=(,),μ=(Φ,)として, 

極小相互作用変換: -e,H→H-eΦにより,

i(φ/∂t)Hφ,

(ηρ){(-e)2/(2μ)}+μη+eΦ 

を得ます。

 これは,
[(iμ-eAμ)(iμ-eAμ)-μ2]φ=0

同値なSchroedinger型の方程式です。
 

ここで,Π-eと置けば,

(ηρ){Π2/(2μ)}+μη+eΦ

と書けます。
 

そこで,基本方程式を,さらに具体的に書けば, 

i(φ/∂t)

[(ηρ){Π2/(2μ)}+μη+eΦ]φ

となります。
 

そして,特に,ΘρΠ2/(2μ),ε=eΦ+ηΠ2/(2μ)

と置き,をodd演算子とeven演算子に分離して,

Θεημと表現します。
 

(8-1):φ'exp(i)φ, 

∂φ'/∂t=[exp(i){(i/∂t))}exp(i)]φ'

'φ’です。
 

参考テキストの第4:本ブログでは最近の2016年8/10,

8/14の記事;「Dirac方程式の非相対論極限近似(1).(2)」

で述べたように,上記のH'は求めたいオ-ダー:O[1/μ4]

までで次のように展開されます。
 

'i[,](1/2)[,[,]]

(i/6)[,[,[,]]]

(1/24)[,[,[,[,ημ]]]] 

d(1/2)[,d](1/6)[,[,d]] です。
 

特に,1次近似まででは.

'(1i)(ημ+εΘ)(1i) 

ημ+εΘi[,η]μ+i[,Θ]i[,ε]

です。
 

ここで,ηΘ=-Θη,η21, ηεεηが成立する

ことに注意します。
 

このオーダーでρを含むodd:Θが消えることを要求

します。
 

ΘρΠ2/(2μ)(1/μ),ε=eΦ+ηΠ2/(2μ)=O(1) 

ですが,S=O(1/μ2)を仮定すると,[,Θ](1/μ3) 

[,ε] =O(1/μ2)であり,他方,[,η]μ=O(1/μ)

です。
 

よって,オーダーが(1/μ2)以下の項を無視すると,

'ημ+εΘi[,η]μ です。
 

ηΘ=-Θη,より,[η,Θ]2ηΘですから,

=-iηΘ/(2μ)と置けば,i[,η]μ=-Θ

なって,Θが相殺され,'ημ+εが得られます。
 

より高次の項にも,このSを用いると,

i[,]=-Θ+ηΘ2/μ2[Θ,η]/(2μ) 

(1/2)[,[,]]=-ηΘ2/(2μ)[Θ,[Θ.ε]]/(8μ2)

-Θ3/(2μ2),
 

(i/6)[,[,[,]]]

=Θ3/(6μ2)-ηΘ4/(6μ2) 

-η[Θ,[Θ,[Θ.ε]]]/(48μ2) 

(※ただし,この最終項はO(1/μ4)なので無視します。)
 

さらに,(1/24)[,[,[,[,ημ]]]]

=ηΘ4/(24μ3)+Θ5/(24μ4) → これは無視

 

diηΘd/(2μ),

(1/2)[,d]=-i[Θ,Θd]/(8μ2), 


 +(1/6)[,[,d]]

=-iη[Θ,[Θ,Θd]]/(48μ2)~O(1/μ6)→ これも無視

 

結局,H'=η{μ+Θ2/(2μ)-Θ4/(8μ2)}+ε

[Θ,[Θ.ε]]/(8μ2)i[Θ,Θd]/(8μ2)[Θ,η]/(2μ)

-Θ3/(3μ2)ημ+ε'Θ',


 ただし,ε'εη{Θ2/(2μ)Θ4/(8μ2)}
 

[Θ,[Θ.ε]]/(8μ2)i[Θ,Θd]/(8μ2), 

Θ'[Θ,η]/(2μ)Θ3/(3μ2)=O(1/μ2)

す。
 

そこで,=-iηΘ'/(2μ)として, 

"=[exp(iS'){'(i/∂t))}exp(i')

ημ+ε'+Θ" 

η{μ+Θ2/(2μ)Θ4/(8μ2)}+ε'+Θ",
 

Θ”=η[Θ',ε']/(2μ)iηΘ'd/(2μ)=O(1/μ3)
 

さらに."=-iηΘ"/(2μ)として,  

(3)[exp(i){"(i/∂t))}exp(i") 

ημ+ε(3)Θ(3)であって,Θ(3)=O(1/μ5)です。 


(
8-1終わり)

 

結局,特別な静的外電磁場:μ(Φ,)の存在下では, 

オーダー:1/μ4までで,φ'exp(i)φ,

i(∂φ'/∂t)=H'φ',
 

'η{μ+Π2/(2μ)Π4/(8μ2)Π8/(128μ7)..}+eΦ 

[Π2,[Π2.eΦ]]/(32μ4)ηΠ6/(16μ5)

i[Π2,(Π2)d]/(8μ2)+O(1/μ5) が得られます。

 ただし,Πです。

 

上記の'の右辺第1項:

η{μ+Π2/(2μ)-Π4/(8μ2)-Π8/(128μ7)..} 

,Dirac理論の場合と同じく,相対論的質量の増加,
 

つまり(μ2+Π2)1/2(Π2/μ)による二項展開です。
 

また,[Π2,[Π2.eΦ]]/(32μ4)は.Darwin項であり,

Dirac理論で.Zitterbewegung(ジグザグ運動)補正と

述べたもののアナロジーであり,古典点電荷の静電

相互作用:eφの補正です。
 

しかしながら,Dirac理論とは異なり,これは(1/μ4)

のオーダーで初めて出現する小さい項です。

※(注8-2):Dirac理論では,展開Hamiltonianの最終形は, 

(3)β{m+Θ2/(2)―Θ4/(83)}+ε

[Θ,[Θ,ε]]/(82) 

i[Θ.Θd]/(82) (Θ=α(-e)αΠ) 

または,(3)=β{m+(-e)2/(2)4/(82)}

+eΦ{eβ(2)}σB-{i/(82)}σ(∇×E) 

{/(42)}σ(×){/(82)}∇E 

でした。 (注8-2終わり)※
 

こうして,問題をFoldy-Woutheysen展開が収束するような

物理的状況:そして,これらHamiltonianの展開の最初の数項

で正しい記述となるケースに限定する限り,

中間子の相互作用も非相対論的量子力学の問題として論じる

ことができることが,わかりました。
 

この'のこの精度までの表現では,正振動数部分と

負振動数部分の混合は無く,HamiltonianHermite,

通常の非相対論的量子力学の確率解釈が可能です。
 

例として,この表示での正振動数解を,前記事の自由中間子

正振動数解:φ(+)()exp(iωp)(+)()[1,0]T

修正した形で,φn (+)()exp(in)ψn(+)()[1,0]T

と書くと,

{μ+Π2/(2μ)-Π4/(8μ2)-Π8/(128μ7)..}+eΦ 

[Π2,[Π2. eΦ]]/(32μ4)..]ψn(+)()

=Enψn(+)() です。
 

この正エネルギー中間子の存在確率密度は, 

(+)()|φn (+)()|2|ψn(+)()|2で与えられ

,

また,エネルギー固有値:nは,

n=∫ψn(+)()'(,)ψn(+)()3となって 

 H'の期待値に一致します。
 

 ただし,'(,)=η{μ+Π2/(2μ)-Π4/(8μ2)

 -Π8/(128μ7)..}+eΦ[Π2,[Π2. eΦ]]/(32μ4)..

 であって,これは単にHamiltonian:',eの関数の演算子

 であることを強調して明記しただけです。

 

 同様にこの表示での負振動数解を,前記事の自由中間子の 

 負振動数解:φ(-)()exp(iωp)(-)()[0,1]Tを修正

 した形,φn(-)()exp(in)ψn(-)()[0,1]Tと書くと,
 

 η[0,1]T=-[0,1]T であり,i∂φn(-)/∂t=-Enφn(-)

 ですから,'(,-e)ψn(-)()=Enψn(-)()

 です。

(※ 何故なら,'(,-e)=H'(,-e)です。)
 

故にH '(,-e)ψn(-)()=Enψn(-)() です。
 

こうして,電荷の符号が正反対の反粒子の正振動波動関数

,粒子の負振動数解の複素共役で表現できることが

わかります。
 

そして,この反粒子の存在確率密度は, 

(-)()|φn (-)()|2|ψn(-)()|2で与えられ, 

また,n=-∫ψn(-)()ψn(-)()3xです。
 

'(,)ψn(+)=EnΨn(+),および,

'(,-e)ψn(-)=EnΨn(-)より,正振動数解ψn(+)

負振動数解ψn(-),電荷の符号だけが異なるだけの 

Hamiltonianの同じエネルギー固有値Enに属するもの,

と見ることもできるわけです。
 

そこで,対角成分が1,-1の対角行列ηを挿入して 

Foldy-Woutheysen変換表示の確率密度とエネルギー

期待値を再定義してみたい。

という発想駆られます。
 

すなわち,確率密度を

n(±)()=φn(±)()ηφn (±)(), 

エネルギー期待値を

n(±)=∫φn(±)()η'φn(±)()3 

(複号同順)と定義してみます。
 

この再定義は,正振動数解については,何も変えませんが,

負振動数解については,確率密度もエネルギー期待値も

前の定義から,その符号を変えます。
 

エネルギー固有値については,正負両方の解で正となり

合理的ですが,n(±)(),負振動数解では負となるので,

これは確率密度ではなく(粒子の電荷eを掛けて)それぞれ,

粒子と反粒子電荷密度を与えるものと解釈されます。
 

'の展開での(1/μ)のベキ級数が収束する近似までで,

標準の非相対論的量子力学と同じ定式化ができる

Foldy-Woutheysen表示,さらに論議を進めることが

できます。
 

π中間子で構成される原子のエネルギー準位や遷移率は

例えばSchoroedinger理論への相対論的質量とDaewin項補正

のH'を用いた,i(∂φ'/∂t)'φ'から計算できるはず

です。
 

そしてまた,古典論対応が立証できてEhrenfestの関係が 

導出可能です。
 

すなわち,を任意の線型演算子(物理量)として, 

d</dt=i[',]>+<∂/∂t>

の成立を示すことができます。
 

1粒子の確率解釈は,,-振動数解を

Foldy-Woutheysen手法で分離できるようなケース

のみに限定されます。
 

それは,ππペアの存在を定義しなければならない

ような強く急激に変動する場に関する物理的問題など

ではふさわしくないと考えられます。
 

しかしながら,()=φ'()ηφ'(), 

E=∫φ'()η'φ'()3なる内積表現

,こうした一般のケースにも適用できるであろう

という目算で,
 

弱変動での近似のFoldy-Woutheysen変換の全てを

帳消しにして,元の

(ηρ){Π2/(2μ)}+μη+eΦと,

φ=exp(i)φ'に戻って,これら内積表現の構造

を探求します。
 

前述したように,exp(i),Hermite()

ではないので,一般にはユニタリ(unitary)ではなく

注意を要します。
 

自由粒子の0(ηρ){2/(2μ)}+μηに対する

exp(i)の最初の(iμ)の1次の近似では,

S=ηρθ(),

θ()=-(i/2)Tanh-1[{2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)}]

純虚数なので,=-でした。
 

 また,Sηρθ()より,ηS=-Sηなので,

 運動量が自由中間子のエネルギー固有値:ωp

 ついては,0'exp()0exp(i)に対して, 

 ωp∫φp(±)'()η0'φp(±)'()3 

 =∫φp(±)()η0φp(±)()3 

 なる式が成立することがわかります。
 

 電荷については,

 φ()[θ,χ]T,φ'()exp(i)φ()について,

 ()3=∫φ'()ηφ'()3 

 =∫φ()ηφ()3 

 =∫d3{θ()θ()-χ()χ()} 

 ={i/(2μ)}∫d3[φ()0φ()] 

 と書けます。
 

 同様な結果は,自由粒子でなく,電磁相互作用が存在する

 ときにも得られます。

 Foldy-Woutheysen変換から,'exp()exp(i) 

 H'=η{μ+Π2/(2μ)-Π4/(8μ2)-Π8/(128μ7)..}

 +eΦ[Π2,[Π2.eΦ]]/(32μ4)(Π-)ですが,

 やはりηS=-Sηなの,

  
電荷については,
 

 ∫()3=∫φ'()ηφ'()3 

 =∫φ()ηφ()3

 ={i/(2μ)}∫d3{(02eA0)φ} です。
 

 それ故,ηを挿入して再定義された電荷密度は,この近似

 が有効な物理的状況ではプライムのない元の表示でのそれ

 と一致し,しかも以前,Klein-Gordon粒子に対して与えた

 電荷の表式:Q=∫d3{φ(02eA0)φ}

 一致します。
 
 

 係数が違うと見えるのは,非相対論の波動関数φ(),

 相対論での同じ波動関数:φ()=fp()の規格化因子

 が異なるためです。
 

 同様に,静的外電磁場内の荷電π中間子のエネルギー固有値

 について=∫φ'()ηH'φ'()3

 =∫φ()ηHφ()3x です。
 

 こうしたプライム系と元の系の2つの表示の期待値の

 単純な対応は,一般的な物理量Oの期待値においても

 行列ηを挿入すべきことを示唆しています。
 
 

 すなわち,

 <O'>=∫φ'()ηO'φ'()3 

 =∫φ()ηOφ()3x=<O> です。
 

 ただし,'exp()exp(i)です。
 

 行列ηの存在無しには.こうした2つの表示の間の対応

 の単純性を得ることはできません。
 

 定義:<O>=∫φ()ηOφ()3へのηの導入

 の物理的効果,負振動数状態にある系に対して,

 物理的観測量の期待値に(-1)を掛けることです。
 

 これは負振動数解が過去に伝播し,それ故,放出と吸収

 の役割が逆になり.物理的観測量を負エネルギー解の

 パラメータと()で結び付けるという要請に連関して

 います。

  
陽電子の理論では,負エネルギーに対する過去への伝播

 の境界条件は空孔理論によって保証されていました。
 

 しかし,Bose粒子に対しては空孔理論のようなものは無く,

 これの根拠は伝播関数のFeynmanの解釈という論旨で満足

 するか,あるいは,場の量子論に頼らなければなりません。
 

 こうした結論で論題を終了するに当たって,

 Foldy-Woutheusen手法が収束するようなBose粒子の物理的

 問題に,結局,確率解釈を与えるという所期の目標を達成

 できた。ということを思い出します。
 

 特に,自由粒子に対しては正振動数解,負振動数解,または,

 粒子解,反粒子解を分離する正確な変換を作ることが

 できました。
 

 これは確率振幅としてのS行列の解釈である次の3種の

 S行列要素:π散乱:

 p’plimt→∞∫d3p()()i0φ()

 =δ3(')i∫d4yfp()()^()φ(),
 

 π-πの対消滅:

 p-p+=-limt→-∞∫d3p-()()i0φ() 

=-i∫d4yfp-(-)()^()φ()  

 および, π散乱: 

 Spp=δ3(')

 i∫d4yfp()()^()φ(),の式の関係

 を正当化します。


 

 

 Bose粒子をその反粒子と区別する電荷(Charge),実は

 通常の電気的なそれ,である)必要はありません。
 

 例えば,自然界にはK0中間子とK0~中間子という共に

 電気的には中性の.しかし,互いに粒子,反粒子の関係

 にあるとされる粒子対がありますが,これらを区別する

 のは,"奇妙さの量子数(Strangeness-Charge)"の符号の

 違いだけです。
 

 そしてまた,粒子がそれの反粒子と一致するケースもあり,

 その場合には,それは常に,電気的に中性で,またどんな

 他の量子数も持ちません。
 
 

 そして,例えばπ0中間子はそうした粒子の例です。この場合

 は中間子の波動関数は実関数で,電荷密度;()0です。
 

 さて.以上で波動関数がKlein-Gordon方程式に従うスピン

 がゼロBose粒子(中間子),電荷を持つ場合の電磁相互作用

 の量子力学について論じた参考テキストの第9章の記述は

 完了しました。
 

 テキストでは,次は最終10章の非電磁相互作用(強い相互作用

 弱い相互作用)の初期理論の紹介ですが,これの私的ノートの 

 ブログ記事化は,前後しましたが,既に終わっています。
 

今日はここで終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

”Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

PS:糖尿病が長いので.それが原因で体中にかゆみがあり,汗を

かくとかゆいということは真冬以外にはよくありますが,今年

は,特に今頃,夜にひどくかゆくて背中や腕にかきむしった跡

ができて,これはダニのせいじゃないか?と疑っています。
 

 何の役にも立たない,「社会のゴミ,ダニ」のようなジジイ

 に本物のダニがついて,共食い状態。。でしょうかね?
 

 しょうがないので.ダニ取りマットならベッドまわりに

 置いてありましたが,今度は金が入ったとき,UV付きの

 布団掃除機の安いものでも買いますかね。。
 

 取りあえず,かゆくてたまらないときは頻繁にシャワーを

 浴びて,これまで使っていた,かゆみ止めを塗っています。
 

 さて,一段落して続きの科学記事は,場理論など他のテーマ

 を書くのも時間残っていれればやる予定ですが。。。

  ここ数年,目が悪くなって本の
小さい字が読めなくなって

 きているため,病院入院中なども読書の楽しみが失せて,

 頭の中で考えたアイディアをノートに計算してきたもの

 などを「遺構」として書いてまとめた記事草稿: 

 =「ライフワークの最後の残り火」でもそろそろアップ

 しようかな。。とも考えています。。

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2016年8月23日 (火)

クライン・ゴルドン方程式(7)

クライン・ゴルドン方程式(Klein-Gordon eq.)の続きです。
 

今回は,Dirac方程式と同じく,lein-Gordon方程式に

ついても 非相対論的近似を与えて確率解釈できるという

ことについて記述します。
 

§9.7 クライン・ゴルドン方程式の非相対論極限変形と解釈 

(Nonrelativistic Reduction and Interpretation of  

Klein-Gordon Equation)
 

ここまで論じてきたKlein-Gordon方程式に従うπ中間子

について,1粒子の従来の確率解釈を持った(非相対論的)

量子力学による近似的な記述が求められるような物理的

状況が存在します。
 

例えば,π中間子で構成された原子とか,物質内の原子の

電磁場や外場と荷電π中間子の相互作用などが,こうした

観点から研究できます。
 

これらは1粒子のDiracの電子論が成功裡に適用され,解釈

されてきた際の物理的状況に類似しています。
 

こうしたケースについて,古典的対応の極限だけではなく

Schroedinger方程式への非相対論的な帰着と解釈を示したい

と考えます。
 

確率解釈を持つ正確な1粒子の(相対論的)量子力学を構成

することは不可能である。ということに直面して,最初の章

ではこの2次のKlein-Gordon方程式を捨てるという方向へ

と誘導されました。
 

そして,非相対論的Schrooedinger理論におけるように,時間

ついて1次の導関数のみを含む方程式の形の,Dirac方程式

基本方程式として採用する道を選択したのでした。
 

しかしながら,今までにDirac方程式の1粒子像では,

正エネルギーと負エネルギーのスペクトルの間には広い

ギャップ2mc2,なお.残っていて,弱く,ゆっくり

と変動する場のような限られた環境の中でのみ,

正エネルギー粒子状態で生き残れることを見てきました。
 

しかし,今や,代わって一旦は捨てたKlein-Gorson方程式

の適切な1粒子量子力学像を探索すべき状況に至っている

と思われます。
 

Klein-Gordon方程式を1次の時間微分のみを含む

Scheordinger方程式の形へと,近似的に変形すること

を試みます。
 

その最初のステップは,(□+μ2)φ=0 を1次の方程式

のペアに書き直すことです。
 

これは,ξ=φd≡∂φ/∂tと書き,(□+μ2)φ=0, 

ξd=∂ξ/∂t=(2-μ2)φと書き直すことでなすこと 

ができます。
 

これで目論見通り,時間微分についての2次方程式:

(□+μ2)φ=0 を,ξ=∂φ/∂t,∂ξ/∂t=(2-μ2)φ

という1次方程式のペア=連立1次方程式に書き直すことが

できたわけでず。
 

次に,θ=(φ+iφd/μ)/2,χ=(φ-iφd/μ)/2という 

2つのφとφd=∂φ/∂tの線形結合を導入します。
 

この,θとχは単純な非相対論的極限で解釈できる描像を持つ 

ことがわかります。
 

すなわち,質量μで静止した粒子では,∇φ=0 (0)なので, 

(□+μ2)φ=0 ,2φ/∂t2=-μ2φ と書けます。
 

これの正エネルギー粒子(正質量)の解は, 

φ ∝ exp(iμt)iφd/μとなるため, 

θ=φ ∝ exp(iμt),かつ,χ=0 です。
 

一方,負エネルギー粒子(負質量)の解は,

φ ∝ exp(iμt)=-iφd/μとなり,逆に,

θ=0,かつ,χ=φ ∝ exp(iμt) です。
 

したがって,Dirac方程式の4成分スピノルを2成分ごと

に分解した際の大成分,小成分た類似した役割を,ここでの

θ,χが果たしていると見えます。
 

(7-1):質量がμでスピンが1/2の粒子なら,それが

満たすDirac方程式は(iγμμ-μ)ψ=0です。
 

その際,非相対論的極限でのDirac粒子の近似的な1粒子描像

を見るため,正確な解である4成分スピノル:ψを,ψ=[θ,χ]T

なる形に分解,2成分スピノル;θ,χをψが正エネルギー解

の場合のそれぞれの大きさに基づいて,それぞれ,大成分,小成分

と呼んだのでした。  (7-1終わり)
 

さて,θ=(φ+iφd/μ)/2,χ=(φ-iφd/μ)/2によって 

Klein-Gordon方程式:∂φd/∂t=(2-μ2)φ は, 

i(∂θ/∂t)=-∇2(θ+χ)/(2μ)+μθ, 

i(∂χ/∂t)=+∇2(θ+χ)/(2μ)-μχ 

と分解されます。
 

(7-2):φ=θ+χ,φd=-iμ(θ-χ)より,  

φd=∂φ/∂tは,{(θ+χ)/∂t}=-iμ(θ-χ)
 

∂φd/∂t=(2-μ2)φ は, 

{(θ-χ)/∂t}iμ-1(2-μ2)(θ+χ) 

と書けます。
 

得られたものを,辺々加えて2で割ると 

i(∂θ/∂t)=-∇2(θ+χ)/(2μ)+μθ,
 

一方,前者から後者を引いて2で割ると

i(∂χ/∂t)=+∇2(θ+χ)/(2μ)-μχ 

が得られるわけです。  (7-2終わり)
 

ここで,よりcompactな形式を得るため,θ,χを2つの成分 

とする縦ベクトル表示を導入します。
 

すなわち,波動関数φの代わりに.φ[θ,χ]Tとして,

波動方程式を見掛け上,Schroedinger型の方程式:

i(φ/∂t)0φとするわけです。
 

このとき,Hamiltonian:0,,Bを2×2行列として 

0{-∇2/(2μ)}+μと定義されます。
 

ここでAは1行目が[1,1],2行目が[1,1]の行列,

Bは対角成分が1とー1の対角行列です。
 

i(φ/∂t)0φSchroedinger形ですが,

(□+μ2)φ=0 アナロジーとして得られたもので,

保存する正定置の確率という描像には至りません。
 

これは0Hermite演算子ではないからです。
 

(7-3):i(φ/∂t)0Φから,

-i(φ/∂t)=Φ0なので,

i∂(φφ)/∂t

{φ(φ/∂t)+i(φ/∂t)φ} 

φ(00)φ です。
 

それ故,0Hermite:00なら

∂∂(φφ)/∂t)/∂t=0 

が成立し,:(φφ)を保存される正定置な確率密度

と解釈することができるのですが0Hermite:でないなら,

(φφ)が時間的に保存される,という保証はありません。
 

行列演算子として0{-∇2/(2μ)}+μBについて

0(0)T0が成立しない理由は,対角行列でない

Aに原因があって,これはφ[θ,χ]Tの大成分θと小成分

χを混合させます。
 

ゆっくり運動している粒子(=-i∇ ~ 0)に対する最低次

の近似で∇2を無視すれば,0~μとなって,これはHermite行列

なのでi(φ/∂t)0φは確率解釈可能なSchroedinger方程式

となり,


   
先に与えたKlein-Gordon方程式の静止状態の解: 

θ=φ ∝ exp(iμt),χ=0,および,

θ=0,χ=φ ∝ exp(iμt)がそれぞれ,

i(φ/∂t)0φφ[θ,χ]Tの正エネルギー 

(正振動数)の解, 負エネルギー(負振動数)の確率解釈可能

な解となっています。
 

Dirac理論から,直接,Foldy-Wouthuysen変換のテクニック

を借用することによって,系統的に運動エネルギー項の存在

による補正を導入します。
 

4×4行列βのアナロジーとして対角成分が1,-1の2×2

対角行列:ηを導入します。また,反対角成分がσ,-σk

反対角行列:α(k=1,2,3)のアナロジーで,反対角成分が

,-1の2×2反対角行列:ρを導入します。
 

Dirac理論の非相対論極限近似を求める際に用いた大成分

と小成分を混合させるodd演算子を除去するユニタリ変換

の演算子:Fexp(i)のアナロジーで,π中間子の波動関数

2成分縦ベクトル表示:φφ'=exp(i)φなる変換を実行

します。
 

単刀直入に結論を述べると,S=ηρθ(),

θ()=-(i/2)Tanh-1[{2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)}] 

と置けば,Hamiltonian:0(ηρ){2/(2μ)}+μη

からodd演算子ρを除去できます。
 

(7-2):i(φ/∂t)0φ,φ'=exp(i)φより, 

Sがtに依存しないなら,i(φ'/∂t)exp(i)0φ

exp(i)0exp(i)φ'0'φ',

0'=exp(i)0exp(i)です。
 

0(ηρ){-∇2/(2μ)}+μη

(ηρ){2/(2μ)}+μη ですが,ηρθと

おくとき,θがの関数θ=Θ()なら, 

[θ(),2]0,[θ(),μ]0ですが, 可換ではない

行列の係数があるため,[,0]0 ではないです。
 

そして,S=ηρθなら(ηρ)21なので, 

exp(i)=Σn=0(1/!)(iηρθ)n 

=Σk=0[{1/(2)!(1)θ2k

(iηρ){1/(2k+1)!}(1)θ2k1} 

=cosθ+(iηρ)sinθです。
 

同様にexp(i)cosθ-(iηρ)sinθです。
 

0'exp(i)0exp(i) 

=[{2/(2μ)}{cosθ(iηρ)sinθ}(ηρ)

{cosθ-(iηρ)sinθ} 

+μ{cosθ+(iηρ)sinθ}η{ cosθ-(iηρ)sinθ}
 

具体的な計算から,exp(i)ηexp(i)

ηcos(2θ)(iρ)sin(2θ),

exp(i)ρexp(i)ρcos(2θ)(iη)sin(2θ) です。

したがって,H0'exp(i)0exp(i) 

η[{2/(2μ)+μ}cos(2θ)i{2/(2μ)}sin(2θ)] 

+ρ[({2/(2μ)}cos(2θ)i{2/(2μ)+μ}sin(2θ)]

です。
 

ρの係数がゼロ:つまり, 

({2/(2μ)}cos(2θ)i{2/(2μ)+μ}sin(2θ)0 

となるような, 

isin(2θ)/cos(2θ){2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)} 

を満たすθが存在すれば,そのθに対して行列ρは除去

できます。
 

しかし,そのような実数θは存在しません。

θが実数でなく純虚数:θ=-iω(ωは実数)であるとすれば

そうしたθが存在します。
 

ただし,そのときは,S=ηρθがHermiteではなく,

exp(i)はユニタリではありません。
 

すなわち,cos(2θ){exp(i2θ)exp(i2θ)}/2 

{exp(2ω)exp(2ω)}/2cosh(2ω), 

isin(2θ){exp(i2θ)exp(i2θ)}/2 

{exp(2ω)exp(2ω)}/2sinh(2ω)

です、
 

よって,isin(2θ)/cos(2θ){2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)} 

,sinh(2ω)/cosh(2ω){2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)} 


  つまり,tanh(2ω){2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)}
 

を意味します。
 

そのとき,0'exp(i)0exp(i) 

η[{2/(2μ)+μ}cosh(2ω){2/(2μ)}sinh(2ω)] 

ηcosh(2ω)[{2/(2μ)+μ}2{2/(2μ)} 2]

/{μ+2/(2μ)} です。
 

双曲線関数の公式:1/cosh2(2ω)1tanh2(2ω)より. 

1/cosh2(2ω)

[{2/(2μ)+μ}2{2/(2μ)}2]/{2/(2μ)+μ}2  

(2+μ2 )/{2/(2μ)+μ}2ですから,  

cosh(2ω){2/(2μ)+μ}/(2+μ2 )1/2

です。
 

ぃたがって, 

0' η[{2/(2μ)+μ}2{2/(2μ)} 2]/(2+μ2 )1/2 

η(2+μ2)/(2+μ2 )1/2η(2+μ2 )1/2 

を得ます。  (7-3終わり)
 

S=ηρθ(),

θ()=-(i/2)Tanh-1[{2/(2μ)}/{μ+2/(2μ)}] 

なら,≠SでありSはHermiteではないので,

U=exp(i)に対し,-1exp(i)≠Uexp(i)

であって.Uはユニタリでないため, 
 

0'= U0-1exp(i)0exp(i)η(2+μ2)1/2 

,φ'=Uφexp(i)φi(φ/∂t)0φのとき 

i(φ'/∂t)0'φ'は成立しますが,


  φ
'φ'=φφ
は成立せず,φφφ'φ'を確率密度

とする解釈は,非相対論での近似的な意味でしか成立しない

のでは?と思われます。
 

さて,0'η(2+μ2)1/2,i(φ'/∂t)0'φ'の形式

では.φ'の大成分=正エネルギー解と,小成分=負エネルギー

解は完全に分離され,エネルギー・運動量の関係は自由電子

に対するそれと同じです。
 

電子との唯一の違いはスピン自由度に対する解の二重化が

ないことです。
 

正エネルギー解をφ'()

φ(+)()exp(iωpt)(+)()[1,0]Tとします。

すると,

i(φ(+)/∂t)0'φ(+)η(2+μ2)1/2φ(+) 

,ωp(+)()(2+μ2)1/2(+)()

を意味します。
 

そして,このとき,(+)()=|(+)()|2が正エネルギー粒子

の存在確率密度を表わすと考えられ,

ωp=∫φ(+)()0'φ(+)()3が,粒子の正エネルギー 

の値を表わします。
 

同様に,負エネルギー解をφ'()

φ(-)()exp(iωpt)(-)()[0,1]Tとします。

すると,

i(φ(-)/∂t)0'φ(-)η(2+μ2)1/2φ(-) 

,-ωp(-)()=-(2+μ2)1/2(-)()

を意味します。
 

このとき,(-)()=|(-)()|2が負エネルギー粒子

の存在確率密度を表わすと考えられ,

-ωp=∫φ(-)()0'φ(-)()3がその粒子の

エネルギーを表わしていて,これは負になります。
 

ここで,φ(-)()exp(iωpt)(-)()[0,1]T,

正エネルギー固有値を持つ反粒子の波動関数と解釈

します。
 

i(φ(-)/∂t)0'φ(-)η(2+μ2)1/2φ(-)

複素共役をとってi(φ(-)/∂t)0'φ()

η(2+μ2 )1/2φ(-)であり,0'0'より

i(φ(-)/∂t)=-0'φ()=-η(2+μ2)1/2φ(-) 

です。

  これは,時間の過去に伝播する負エネルギー粒子の

複素共役が時間の未来に伝播する正エネルギー反粒子

という描像に合致します。
 

そして,自由粒子ではなくて外電磁場Aμ(x)がある

一般の場合には,もはやodd演算子を除去してHamiltonian

を対角化するSを求めることは不可能です。
 

しかし,この論議は次回にまわして今日はここで

終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell著 

 "Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

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2016年8月14日 (日)

Dirac方程式の非相対論極限近似(2)

Dirac方程式の非相対論極限近似の続きです。
 

前記事では,外電磁場,Φ,との相互作用がある場合の電荷eを

持つ電子の一般的Hamiltomian:

α(e)+βm+eΦ=Θ+βm+ε 

から,正負エネルギー成分を混合するoddなパラメ-タを

除いて非相対論極限で正エネルギーの2成分スピノルのみ

が満たす波動方程式を導くことを意図したユニタリ変換

の演算子:Fexp(i)を与えるHermite演算子を見出す

ことを試みました。
 

電磁場が時間tに依存し,それ故,系のHamiltonian:が時間

1/)<<1の非相対論的極限で(1/)の低次まででは,

=iβΘ/(2),Hから oddパラメ-タを除く(1/)オーダー

候補であるというところまで述べました。
 

すなわち,まず.=βm+Θ+εから,の1次近似として,

変換:exp(i)exp(i)exp(i)1i,

exp(i)1iを代入した

H'(1i)(βm+Θ+ε)(1i)において,

 

[1/]の項を無視して,H'=βm+Θ+ε+i[,β] 

とし,これの右辺でodd:Θ=α(p-)が消えることを

要求してi[,β] = -Θなるっ条件から,

=iβΘ/(2)を得たのでした。
 

そこで,この近似では,=iβΘ/(2), 

H'(1i)(βm+Θ+ε)(1i)=βm+ε 

です。
 

一方,=O(1/)と仮定して(1/)の3次の精度までの

近似は,'= exp(i){H-i(/∂t)}exp(i) 

i[,](i2/2)[,[,]](i3/6)[,[.[,]]] 

(i4/24)[,[,[.[,βm]]]]-Sd(i/2)[,d]

(1/6)[,[,d]] (ただし,Sd=∂/∂t)

と書けることを見ました。
 

この近似の項に,=iβΘ/(2)を代入すれば, 

=βm+Θ+εより 

i[,]=-Θ+β[Θ,ε]/(2)+βΘ2/, 

(i2/2)[,[,]]=-βΘ2/(2)[Θ,[Θ,ε]]/(82) 

-Θ3/(22), 

(i3/6)[,[,[,]]]=Θ3/(62)-βΘ4/(63) 

-β[Θ,[Θ,[Θ,ε]]/(483),
 

(1/24)[,[,[.[,βm]]]]=βΘ4/(243)+Θ5/(244)
 

また,diβΘd/(2),

(i/2)[,d]=-i[Θ.Θd]/(82)  

(1/6)[,[,d]]=-iβ[Θ,[Θ,Θd]]/(483)

です。
 

ユニタリ変換後のHamiltonianを非相対論的に展開して, 

(運動エネルギー/)3(運動エネルギー)×(場のエネルギー)/2 

のオーダーまででoddパラメータの除去が満足されるような 

を求めるというのが意図でしたから,
 

(i3/6)[,[,[,]]]=Θ3/(62)-βΘ4/(63) 

-β[Θ,[Θ,[Θ,ε]]/(483) 

~ Θ3/(62)-βΘ4/(63) として最後の項は無視し,

また,(1/24)[,[,[.[,βm]]]]

=βΘ4/(243)+Θ5/(244) ~ βΘ4/(243)

とします。
 

まさらに,(1/6)[,[,d]]=-iβ[Θ,[Θ,Θd]]/(483) 

も,(1/)のより高次の微小量なので無視します。
 

すると,'=β{m+Θ2/(2)―Θ4/(83)}+ε

[Θ,[Θ,ε]]/(82) 

i[Θ.Θd]/(82)+β[Θ,ε]/(2)-Θ3/(32)

iβΘd/(2) =βm+ε'+Θ'
 

ただし,ε'=ε+β{Θ2/(2)―Θ4/(83)}[Θ,[Θ,ε]]/(82) 

i[Θ.Θd]/(82)です。

これはΘについては偶数乗のみを含むためevenな寄与です。
 

一方,得られたHamiltonianにおいてodd項は,Θの奇数乗のみ

ですが,これは,変換の結果:(1/)のオーダーでしか存在しない

ようになりました。
 

これらを,さらに除去し減じるために, 

S'= -iβΘ'/(2) 

=-iβ{β[Θ,ε]/(2)-Θ3/(32)iβΘd/(2)}/(2) 

なる変換をさらに行います。
 

Θ'=β[Θ,ε]/(2)-Θ3/(32)iβΘd/(2)}

H'のΘ自身以外のΘの奇数乗の部分の総和です。
 

こうした変換をのFoldy-Wouthuysen変換と呼びますが,この変換 

の下で,H"exp(iS'){H(i(/∂t}}exp(iS') 

=βm+ε'+β[Θ,ε']/(2)iβΘ'd/(2) 

=βm+ε'+Θ" となります。
 

このH"の場合, Odd部分:Θ"=β[Θ,ε']/(2)iβΘ'd/(2) 

,(1/2)とさらに小さくなっています。
 

さらにS"=-iβΘ"による正準変換を行うことで, 

(3)exp(iS"){H”i(/∂t}}exp(iS") 

β{m+Θ2/(2)―Θ4/(83)}+ε-[Θ,[Θ,ε]]/(82) 

i[Θ.Θd]/(82) が得られました。
 

このとき,Θ2/(2){α(-e)}2/(2)

 

(-e)2/(2)-eσB/(2)となって,この項から 

Pauliのスピン磁気モ^-メント項:-eσB/(2)が出現

します。
 

非相対論極限で,こうそた項が得られることは,既に別の

過去記事で述べました。

(※ 10年前の2006年9/8の本ギログの過去記事:

パウリのスピンと相対性理論」を参照ください。)
 

(2-1):念のため,簡単に復習すると 

まず,Π-e=-i∇-e とおくとき,

(αΠ)2=Σi,jαiΠiαjΠj=Π2iσ(Π×Π)であり,

そして,Π×Π(i-e)×(i-e)ie∇×A

ieBによって,(αΠ)2=Π2-eσB

が得られるという話でした  。(2-1終わり)
 

一方, [Θ,[Θ,ε]]+Θd}/(82)

{/(82)}{iα∇Φ-iαAd} 

{i/(82)}αEです。
 

{i/(82)}[Θ, αE]{i/(82)}[αp,αE] 

{/(82)}{i/(82)}σ(∇×) 

{/(42)}σ(×)ですから,
 

結局,このオーダーまででの変換Hamiltonian, 

(3)=β{m+(-e)2/(2)4/(82)}

+eΦ{eβ(2)}σB-{i/(82)}σ(∇×) 

{/(42)}σ(×){/(82)}∇E 

となります。
 

これらは,{(-e)2+m2}1/2の非相対論極限での

,直接,物理的解釈が可能な,求めるオーダーまでの展開

を示しています。

つまり,補正は相対論的な質量(運動エネルギー)の増加

に相当する意味を持っているわけです。
 

このうち,{i/(82)}σ(∇×E){/(42)}σ(×) 

は静電エネルギー,と磁気双極子エネルギーです。

  
この項のペアは一緒にまとめて,スピン軌道エネルギーです。
 

つまり,iσ(∇×E)2σ(×)iσ(∇×E-E×∇) 

ですから,例えば,球対称静電ポテンシャル:();r=|| 

なら,E=-∇=-(/)(dV/dr)で∇×E=0

です。

 
このとき, iσ(∇×)2σ(×)2σ(×), 

σ(×)=-(1/)(dV/dr)σ(×) 

(1/)(dV/dr)σLと書けます。
 

×は,軌道角運動量です。
 

{i/(82)}σ(∇×E){/(42)}σ(×) 

{/(42)}(1/)(dV/dr)σL=Hspin-orbit 

(スピン軌道相互作用エネルギー)です。
 

これは特殊相対論により,運動する電子が感じる磁場:

=-×とスピン;σ/2の電子の磁気モーメント:

μ=ge/(2) (gは磁気回転比)による磁気エネルギー:

μB=-geσ/(42)(×) (g=2) を意味します。
 

しかし,{/(42)}σ(×)ではThpmas歳差運動の効果

で因子g=2が無くなっています。
 

このことは電子の軌道モーメントの方は標準的磁気回転比: 

g=g01を持つことを示唆しています。
 

最後の項:{/(82)}Darwin項として知られています。
 

これはZitterbewegung(ジグザグ運動)に寄与する項です。
 

電子の位置座標のゆらぎがδr~(1/m)(=Compton波長)

程度で,このためCoulombポテンシャル:V=V()=V()

いくらか不鮮明に見えます。
 

この補正は,<δV>=<V(+δ>-<V() 

=<δ∇V+(1/2)Σijδxiδxj(2/∂xi∂x)

ですが,<δ∇V> ~ 0 より,  静電ポテmシャルエネルギー

としての補正(ぼやけ)は,
 

<eδV> ~ (/6)(δr)2>∇2=-(/62)∇Eであり,

これは係数は少し違いますが,,この電子の雲によるCoulomb

エネルギーのゆらぎ<eδV>が,上記のDarwin::

{/(82)}の物理的意味をなす。わかります、
 

さて,次は,§4.4水素原子(Hydrgen Atom)であり,第4章

はこれで終わりとなっているのですが,
 

この最後の節の内容については,既に本ブログの2011 

/17,/26,/,/11の過去記事:

「水素様」原子の微細構造」(1),(2),(3)(4),および,

2011年8/22,/,10/,11/.11/11,11/23の「

水素様」原子の微細構造」(補遺1),(補遺2),(補遺3-1),

(補遺3-2),(補遺4),(補遺5-1),(補遺5-2)

に詳述しています。
 

そこで,Dirac方程式の非相対論極限=参考テキスト

第4章Foldy-Wouthuysen変換」のトピックについて

,これで終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill

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2016年8月10日 (水)

Dirac方程式の非相対論極限近似(1)

このところ,暑さもあって体調が悪く,右足薬指の骨髄炎も.歩くと

感染症にかかって深刻な事態なる危険性があり歩かない方がベター

なので,この年齢で人並みの欲を出さないなら,別に無理して外出

する必要もなく休日を決め込んでスポーツ観戦三昧の毎日です。
 

これが最後の五輪観戦になるかもしれないし。。入院するより

ましです。
 

というわけで,ゴロゴロしているうち,何故か右手腱鞘炎で箸

を持っても痛く,マウスも左手という状態に。。トホホ。。

で,ブログも短い訃報程度しか右手だけでは打てませんでした。

といって,左手は遅すぎるし。。。
 

丁度,ブログ記事も自分の覚え書きを兼ねた科学記事は

「弱い相互作用」シリーズも終わって一段落し

「クライン・ゴルドン方程式」を終われば参考テキスト 

1冊目については全て終了と思っていました。
 

ところが,Kleim –Gordon方程式の項目の続きでlこの方程式の

非相対論極限近似の項目で,参考テキスト第4章のDirac方程式

の非相対論的極限近似の項目を参照する必要に迫られました。
 

そこで,本ブログの過去記事を調べてみると,この項目を

スキップしていたことがわかりました。
 

この第4章の途中からは,相対論方程式の効果によって

非相対論的量子力学で計算された水素様原子のエネルギー

準位が,相対論的方程式の効果でより精密に修正される。

という超微細構造の話題に移行していて,


 その部分
については過去記事で言及していましたが,最初

非相対論的極限近似の導入部分は割愛していました。

 しかし,この部分をスキップした頃とは違って,今は私の

読書ノートの全てを遺漏なく回顧録としてブログ化する

という方針に心変わりしているので,この際,これも

Dirac方程式の非相対論極限近似」という題目で記事に

したいと思います。

丁度,右手もだましだなし使えるようになってきましたし。
 

第4章 フォールディ・ウウトホイゼン変換 

(Foldy-Wouthuysen Transformation)
 

§4.1 序論(Introduction) 

負エネルギーの問題はさておき,Dirac方程式は,電子について

適切な記述を与えると思われます。

すなわち,それは,微細な非相対論的極限を持ち,自動的に正確

な磁気モーメント項などを生み出します。
 

そこで,今から,Dirac方程式に従う電子の与えられた外場

ポテンシャルとの相互作用について論じます。
 

特に,本質的には,相対論的特徴である未解決の負エネルギー

解と関わる困難を避けて,まずは低エネルギーの性質に着目

します。
 

Compton波長:(1/ ),Bohr半径:{1/(αm)}の間の領域: 

(1/ )<<||{1/(αm)}の領域に局在化された電子

を見出す水素原子のような問題では,第3章「自由粒子の

Dirac方程式の解」で論じた,波束に負エネルギー解が混入

してくるというような問題については,とても微小な影響

しか無いであろう。と予想されます。
 

(1-1):ここではhc=c=1とする自然単位を用いています。 

ただし,c=h/(2π)であり,hはPlanck定数です。
 

αは微細構造定数で普通のSI単位では,

α=e2/(4πε0c)と定義されています。

α ~ 1/137(単位無し)です。
 

Compton波長の定義は正しくはλc=h/(mc)2πhc/(mc) 

であり,自然単位ではλc1/mではなくλc,2π/mです。 

しかし,オーダー的には1/mでも2π/mでもと大した違いは

ありません。
 

また,Bohr半径は,元々はmを水素原子内の電子の質量(または

換算質量)としてaB4πε0c2/(me2) で与えられました。
 

これはaB=hc/(αmc)であり,自然単位ではaB1/(αm)

です。 (1-1終わり)
 

実際には水素原子に対するDirac方程式から得られる

定常エネルギー準位のエネルギー固有値は,極端なほど

精密に観測値と一致します。
 

しかしながら,Coulombポテンシャルにおける固有値問題

の正確な解を示す前に, Dirac理論から,非相対論的で

容易に解釈可能な形の中で電子と場の間の異なる相互作用

項の存在を,引き出して示すことは教育的であろうと

思われます。
 

そこで,()-Foldy-Wouthuysenによって展開された

系統的手法:すなわち,Dirac方程式を2つの2成分方程式

に分割するような正準変換を考察する手法を以下で紹介

します。
 

分割された方程式の1つは,非相対論的極限でPauli

表示になり,もう1つは,負エネルギー状態を記述します。
 

§4.2 自由粒子の変換(Free- particle Transformation)
 

Foldy-Wouthuysen変換の最初の描写として,4つの互いに

反交換する4×4行列,β,α(α1,α2,α3)を与えられた

Hamilton形式で書かれた最も便利な形式の次の自由粒子

に対するDirac方程式を考察します。
 

すなわち,ic(∂Ψ/∂t)

{α(ic)+βmc}Ψ=Ψ です。 

c=hc1の自然単位系では,αp+βm,

=-i,であり, 

i(∂Ψ/∂t) (iα∇+βm)Ψ=Ψ 

なる方程式です。
 

ここでβ,α(α1,α2,α3),σ1,σ2,σ3を3つの

2×2 Pauli行列,2×2単位行列として.βは対角成分

,4×4対角行列,α(k=1,2,3)は対角成分

がゼロで反対角成分がσの3つの4×4行列とした陽な

表示の行列とします。


 

 Ψ=[θ,χ]Tと書くとき,大成分θを小成分χと混合させる

 上記表示のαのようなあらゆる演算子を方程式から除く

 ユニタリ変換:F探します。
 

そして,任意のαのような演算子を奇(odd),大成分と小成分

を混合させない演算子を偶(even)と呼ぶことにします。
 

例えば,α,γoddであり,1,β,

σ(i/2)Σi,jjεijkγiγj,evenです。
 

を時刻tに陽には依存しないHermite演算子

としてFexp(i)と書けば,Ψ'=FΨ=exp(i)Ψ

です。
 

そこで,i(∂Ψ/∂t) Ψ より,

i(∂Ψ'/∂t)iexp(i)(∂Ψ/∂t) 

 exp(i)Ψ=exp(i)exp(i)Ψ'が成立

します。
 

これを,i(∂Ψ'/∂t)'Ψ';

'exp(i)exp(i)と書きます。
 

:Fexp(i)によるユニタリ変換:FF-1

exp(i)exp(i)odd演算子を除去する変換

である。という前提が実際に成立するなら, 

H'exp(i)exp(i),odd演算子を含まない

はずです。
 

=α+βmであって{α,β}0 ですから, 

これは2成分スピン演算子から成るHamiltonian:

=σ11+σ33even演算子:とσ3だけの線形結合

に対角化する変換を見出す問題に似ています。
 

この変換は,1軸(x軸)と3軸(z軸)で作られる平面

(xz平面)2軸(y軸=原点)のまわりに回転する

演算であり,具体的には,exp(i2θ)exp(iσ2θ/2);

tanθ=B1/3で与えられます。
 

※何故なら,U=exp(iσ2θ/2)=Σn=0(1/!)(iθσ2/2)n 

cos(θ/2)iσ2sin(θ/2)より, 

-1 

{ cos(θ/2)iσ2sin(θ/2)}(σ11+σ33)

{cos(θ/2)iσ2sin(θ/2)} 

(12+B32)σ3cosθ/3=±(12+B32)1/2σ3  ※
 

これは,αp+βmに対する変換:

FHUF-1exp(i)exp(i)Fが次の形であろう

ことを示唆します。
 

すなわち,Fexp(i)exp(iβαpθ) 

cos(||θ)(βαp/||)sin(||θ) です。
 

最右辺の形は指数関数のべき展開から得られます。
 

H'FHUF-1exp(i)exp(i) 

=[cos(||θ)(βαp/||)sin(||θ)](α+βm) 

[cos(||θ)(βαp/||)sin(||θ)] 

(α+βm)[cos(||θ)(βαp/||)sin(||θ)]2 

(α[cos(2||θ)(/||)sin(2||θ)] 

+β[cos(2||θ)|| sin(2||θ)] 

と書けます。
 

ここで,θをtan(2||θ)||/mとなるように選択

します。
 

すると, H'= βmcos(2||θ)(1||2/2),

つまり,H'=β(22)1/2が得られます。
 

同じtan2||θ)でもcos(2||θ)が正となるようなθ

を採用しました。
 

得られたHamiltonian,最初の章では排斥されたもの

です。
 

しかし,今度は負エネルギーも許容されるという重要な

変化を伴なっています。負エネルギーと4成分波動関数は,

H'=β(22)1/2なる形のHamiltonianから,

線型なDirac方程式に因数分解するために支払われた代償

でした。
 

§4.3一般的変換(The General Transformation) 

自由粒子の方程式を想定する限り大した特徴は無いように

見えるので,与えられた電磁場の中にある1電子という,

より一般的なケースを想定して対応する変換を求めます。
 

まず,Dirac-Hamiltonianα(p-eA)+βm+eΦ

です。これはαp+βmに極小相互作用変換:

(p-),H → (H-eΦ)を施したものです。
 

ここで,Θ=α(p-),ε=eΦと置けば,

=βm+Θ+εであり,βΘ=-Θβ,βε=+εβ

です。
 

α(p-eA)+βm+eΦ=βm+Θ+ε

において,出現する場が時間tに依存し,それ故,

Hamiltonian自身は時間tに依存します。
 

この電磁場Aとの相互作用を含む一般的場合には,

Fexp(i)もまた,時間tに依存すると思われます。 

つまり[,]0 です。
 

そこで,自由電子で=α+βmに対して,

Fexp(i)exp(iβαpθ)として,

H'FHUF-1exp(i)exp(i) 

=β(22)1/2が得られたように,

あらゆる次数での'oddなパラメータが除去される

ようなSを作ることは不可能です。
 

したがって,変換されたHamiltonian(1/)のベキで

非相対論的に展開し,(運動エネルギー/)3と,

(運動エネルギー)×(場のエネルギー)/2のオーダー

まででoddパラメータの除去が満足されるような

求めます。
 

再び,Ψ'= exp(i)Ψと書けば,Ψ=exp(i)Ψ'であり, 

i(∂Ψ/∂t)i(/∂t){exp(i)Ψ'} 

exp(i)i(∂Ψ'/∂t){i(/∂t)exp(i)}Ψ'

です。
 

一方,i(∂Ψ/∂t)Ψ={exp(i)Ψ'}

ですから,

i(∂Ψ'/∂t)exp(i)[{exp(i)Ψ(

{i(/∂t)exp(i)}Ψ'} 

[exp(i){i(/∂t)}exp(i)]Ψ'

です。
 

以上から,HとSが時間tに依存する場合は,

 

'= exp(i){i(/∂t)}exp(i)とすれば, 

 i(∂Ψ'/∂t)'Ψ' となって,Schroedinger方程式

の形を保つことができます。
 

exp(i)11(i)2/2..であり,は非相対論的

極限では,exp(i)1となるような小さい値としています。
 

そこで,非相対論的極限では1/m=1/(mc2)<<1より,

微小な値(1/)でのベキ展開ではは1次以上のベキで

展開されるはずです。つまり,=O[1/]です。

ここで公式:exp(i)exp(i)

i[,](i2/2!)[,[,]] 

..(im/m!)[,[,..[,]]].. 

を用います。
 

(1-2):以下は上の公式の証明です。
 

(λ)exp(iλ)exp(-iλ)と置きます。

Fλ)のλによるMaclaulin展開は

F(λ)=F(0)+F'(0)λ+(1/2!)F"(0)λ2

=Σm=0(1/!)(m)(0)λm です。
 

ただし,(m)(λ)=dm/dλmでF=F'(λ)

=F(1)(λ),F"(λ)=F(2)(λ) です。
 

(λ)exp(iλ)exp(-iλ)より,

まず,F(0)です。
 

そして,F'(λ)=dF/dλ 

exp(iλ)iexp(-iλ)exp(iλ)iHSexp(-iλ) 

exp(iλ)i[,]exp(-iλ)より,F'(0)i[,] 

を得ます。
 

さらに,F"(λ)=dF'/dλ

exp(iλ)i2[,[,]]exp(-iλ)なので,

F"(0)i2[,[,]] です。
 

同様にして,(3)(0)i3[,[,[,]]]…

かくして,帰納的に,(m)(0)im[,..,[,[,]]] 

です。
 

これらを.(λ)exp(iλ)exp(-iλ) 

= F(0)+F'(0)λ+(1/2!)F"(0)λ2 

=Σm=0(1/!)(m)(0)λm に代入した後に

λ=1とすれば,

 
exp(i)exp(i)i[,](i2/2!)[,[,]] 

..(im/m!)[,[,..[,]]].. が得られます。 

(1-2終わり)
 

H=βm+Θ+εであり,=O[1/]であることから

,(1/)の3次までの精度での近似では, 

'= exp(i){i(/∂t)}exp(i) 

~ H+i[,](i2/2)[,[,]](i3/6)[,[.[,]]] 

(i4/24)[,[,[.[,βm]]]] 

d(i/2)[,d](1/6)[,[,d]]

 

ただし,d=∂S/∂tです。
 

※(1-3): 上の式を確かめます。 

公式:exp(i)exp(i)i[,]

(i2/2!)[,[,]] ..

(im/m!)[,[,..[,]]]..において,
 

i(/∂t)を代入すると,

exp(i)i(/∂t){exp(i)} 

i(/∂t)i2[,/∂t](i3/2)[,[,/∂t]] 

(i4/6)[,[.[,/∂t]]]..ですが.
 

[,/∂t]=-Sdですから, 

与式=i(/∂t)i2d(i3/2)[,d]]

(l4/6)[,[,d]].. です。
 

そして,=O[1/]より,d=∂/∂t=O[1/]

と考えられるので,[1/3]まででは,
 

exp(i)i(/∂t){exp(i)} 

i(/∂t)i2d(i3/2)[,d]](l4/6)[,[,d]]

 です。
 

i(∂Ψ'/∂t)'Ψ'の形でのΨ'はtに依存しないとすると 

実質的に,exp(i)i(/∂t){exp(i)}Ψ' 

{d(i/2)[,d]](1/6)[,[,d]]}Ψです。
 

(1-3終わり)
 

'~ i[,](1/2)[,[,]]

(i/6)[,[.[,]]] 

(1/24)[,[,[.[,βm]]]]d(i/2)[,d] 

(1/6)[,[,d]]  

が,このイーダーまででoddパラメータを持たない.

という条件から具体的にSを探します。
 

そのため,まず,H=βm+Θ+εについて,の1次近似で

,exp(i) 1i, exp(-i) 1iを用います。
 

exp(i)exp(i) (1i)(βm+Θ+ε)(1i) 

=βm+Θ+ε+i[,β]i[,Θ]i[,ε]

ですが,

Θ=α(p-)=O(1),ε=eΦ=O(1)とS=O[1/]

という仮定からm[,β]=O(1),[,Θ] =O[1/],

[,ε] =O[1/].ですから,


   
[1/]の項を無視すると,
 

exp(i)exp(i)~ βm+Θ+ε+i[,β]

です。
 

この右辺でodd:Θ=α(p-)が消えることを要求

すると,i[,β] ~ -Θであれば満たされることが

わかります。,


  これは
,=iβΘ/(2)と選べばよいのでは?

と思わせます。

  (※何故なら,βΘ=-Θβより[β,Θ]=2βΘです。)
 

途中ですが,今日はこの当たりで終わります。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell

"Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

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2016年7月27日 (水)

クライン・ゴルドン方程式(6)

前後しますが,「弱い相互作用の旧理論」については一応

終わったので,クライン・ゴルドン方程式(Klein-Gordon eq.)

の続きに移ります。
 

ただし, 「弱い相互作用の旧理論」の最後のCVC

の記事とPCACの記事では,自分の中でまだ納得してない

不完全燃焼の部分が残っているのでPending状態ですが。。。 

 それに,急いでもないのに後回しですが。。。

 以下,本題です。
 

§9.6 高次のプロセス(Higher-order Processes) 

ここまで,主として電子に対する伝播関数の理論を模倣して

きましたが,この理論展開を,さらに続けることができて,前の

例から高次の計算法則が推測できます。
 

すなわち,電子のケースのFeynmanルールから,荷電π中間子

に対するルールへの主要な変更は,次のように書けるとが

わかります。
 

.9.6に示すように,運動量pからp'へとπ中間子を散乱

する電磁頂点では,時間的に未来,過去の両方向に対して,電子

頂点からπ頂点への変更の結果は,次のような置き換えと

なります。


 

すなわち,eγμ → e(μ+p'μ) です。
 

(ただし,eは,eγμでは電子の電荷,(μ+p'μ)では,

荷電π中間子の電荷を意味します。)
 
. 2次の相互作用項:(-e2μμ)に対応する光子2個連結

のπ頂点,2i2μνなる因子として寄与します。


 

これは,先のπのCompton散乱のS行列要素: 

pfpi(i2ε0-2)(2π)-6(16ωiωf0k'0)-1/2 

(2π)4δ4(f+k'-pi-k) 

×[{ε(2i+k)}{(i+k)2―μ2}-1{ε'(2f+k')} 

{ε'(2i-k')}{(i-k')2―μ2}-1{ε(2f-k)} 

2εε']


 において,[ ]の中の最後の項に反映されています。
 

2i2μνの因子i,この項に対する摂動展開のパラメータです。
 

このS行列要素の式はe2のオーダーの計算ですが,(μ+p'μ) 

については摂動の2次なのに,この項は摂動の1次の計算なので

現われるため出現する因子です。
 

つまり,通常の積分方程式のn回の反復近似から得られるn次の

摂動項では,因子:(i)nが出現するため,(μ+p'μ)の寄与を

nのオーダーまで計算するとき,-e2μμ項が計算にm回

出現するなら,このiは因子:(i)n-2mim(i)n-m×(1)mとして

寄与するわけです。
 

(6-1);電子のFeynman規則では,実は1頂点には,単にeγμでは 

なく(i)という因子も伴なった(ieγμ)が対応します。
 

それ故,πの頂点でもe(μ+p'μ)だけでなく,正確には 

{i(μ+p'μ)}が対応するのですが,この余分の(i)

,摂動級数の4元座標変数積分の前に掛かる(i)因子に

起因します。
 

したがって,光子がn個連結した頂点には通常はenに因子:(i)n 

が付随します。
 

しかしながら,(-e2μμ)がm個挟まってトータルでenの寄与

頂点ならルールは修正されて,n-2mに寄与する(n-2)重の 

(μ+p'μ)からの摂動級数因子:(i)n-2,m重の

(-e2μμ)からの摂動因子(i),および,(-e2)から

2mを除いた(1) を掛け合わせたiの寄与があります。
 

結果的には,(i)n-2×(i)2×(i)(i)n-2×i

(i)n-なる係数がenのオーダーの項の係数として寄与する

はずです。
 

したがって,(-e2μμ)1個当たりの虚数係数の寄与

としてはiです。 (6-1終わり)
 

2i2μνの係数因子2は,この頂点での崩壊や散乱において

生成,または消滅される量子(光子)が常に2個であるために

出現します。 (9.7参照)
 

ちなみに,ゲージ不変性のテストは,与えられたeの任意

オーダーに寄与するあらゆるグラフの総和を示す相互作用

振幅に対して適用されます。
 

前の例でも見たように,摂動級数の各eのオーダーごとに

ゲージ不変性が成立するため,これはp^A+Ap^とAA

に由来する項の相対因子が正しいかどうか?の簡単で有用

なチェックを与えます。
 

.運動量がpの内線に対応する伝播関数については,次のように 

置換します。

 i/(-m+iε)i(+m)/(2-m2iε)
→ i/(2-μ2iε)

です。
 

.外線に付与する規格化因子は電子スピノルのそれに取って

代わって次のようにします。

 (/)1/2() {1/(2ω)}1/2 です。
 

他の全ての因子:特にiと(2π)のべき乗については厳密に電子に

対するものと同一です。
 

最後に.同種粒子線を交換しただけのグラフの振幅に相対的

マイナス符号を付与するかどうか?という問題が残っています。
 

電子については,2つの同種粒子の交換を反対称とする

というPauliの原理によって,電子が交換されたグラフに

相対的なマイナス符号が導入されました。
 

一方,実験的検証の示すとところによれば,π中間子は

Bose粒子です。すなわち,それはBose-Einsteinの対称

統計を満足する粒子です。
 

特に,反応:→ π+π+πでは,2つのπ

中間子は1つの相対的S状態に放出されます。
 

さらに,Pauliによって初めて与えられた強い理論的根拠が

あります。
 

つまり,スピンと統計の間には密接な関係があって,スピン

が半奇数の粒子達はFermi統計に従がって排他原理を満たし,

整数スピンの粒子達はBose統計に従う故に,対称化される,

ということです。
 

こうした論旨は後に述べる予定の場の量子論の枠組みの

中で最もうまく論じることができます。
 

しかし,ここでは単に今記述しようとしているスピンがゼロ

の粒子はBose-Einsteinの対称統計に従う粒子であることを

意味するBose粒子であると仮定します。
 

このことはBose粒子の交換だけが異なるグラフの振幅の間

の関係は,相対的()符号ではなく()符号でなければなら

ないことを意味します。
 

したがって,もはや閉じたループ上の積分や,散乱グラフと

消滅・生成グラフとの間に,電子のケースのような(1)

因子は出現しません。
 

これらの(1)の因子は,8.1()や図8.1()の電子の過程

に対応する振幅において空孔理論の状態へのPauliの排他原理

の適用によって導入された因子でした。


 

しかし,Bose粒子に対しては,状態が全て満たされている

負エネルギー粒子の海などは無く,空孔理論とは異なる道筋

,こうした相対的符号を論じる必要があります。
 

同種のBose粒子のCoulomb散乱においては,9.8の2つの

グラフの振幅間の相対的符号はプラスです。


 

これら,2つの線のエネルギーの符号を変えることで

Bose粒子の粒子-反粒子散乱に対する振幅を得ることが

できます。
 

例えば,入れ換え;q2 ⇔ -p2 によって,9.9に示された

グラフの振幅が得られます。


 

9.9のグラフに対応する2つの振幅間の相対符号は

入れ換え;2 ⇔ ―p2が単に,散乱グラフの図9.8から図9.9

に移行する変化なら,正のままです。
 

この入れ換え;q2 ⇔ ーp2,電子のプロセスにおいて, 

1⇔p1, 1⇔p1,2⇔-q1,2⇔-q1,なる

入れ換えで,既に遭遇した法則と同じ置換法則の一つの例であり

これによって,中間子(Bose粒子)の振幅に拡張されます。
 

こうした法則は図9.10の全ての3つのグラフの振幅に対して

相対的符号プラスへと誘導します。


 

9.10()と図9.10()は頂点yの下では同等であり,それ故,

それらの間では相対的符号は()です。
 

一方,9.10()に相対的に,9.10()uvの間に付加

した散乱相互作用の導入は,符号変化は伴わないため,先述

したように,9.10()の閉ループに伴なって(1)因子が生じる

ことはないと結論されます。
 

π中間子やK中間子のようなスピンゼロBose粒子の電磁

相互作用の高次の計算については,また,くり込みの効果を

示すという課題があります。
 

これは,テキストの第8:本ブログでは

「量子電磁力学の輻射補正」シリーズ記事において電子に

対して行なったものの完全なアナロジーとして追跡すること

ができます。
 

しかし,実際にこうしたアナロジー追跡の詳細に立ち入ることは

しません。
 

このことの主な理由は,電子とは異なり中間子π,Kにはそれら

自身や核子:,nとの,電磁相互作用よりはるかに強い相互作用

があるためです。
 

したがって,計算結果の物理的観測との比較が可能となる前に,

この強い相互作用の効果をも含まれなければならないからです。
 

そこで,高次の電磁相互作用の効果の詳細よりも,これら非電磁

相互作用の論議の方が重要です。

 そして実際,この章の続きとし
て強い相互作用,弱い相互作用

のトピックに移り,これも本ブログ記事で紹介しました。
 

今日はここで終わります。
 

次回は,lein-Gordon方程式の非相対論的近似について

述べる予定です。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

"Relativistic QantumMechanics"(McGrawHill)

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2016年7月20日 (水)

弱い相互作用の旧理論(17)(Fermi理論)

 「弱い相互作用の旧理論」の続きです。


  前回のCVC仮説(=ベクトルカレントの保存)について

 ブログ記事を書くついでに20年以上ぶりに考察して細かい

 計算などチェックしつつ,まだ納得できない部分もあり

 ますが,取りあえず次のPCACの項目に移ります。
 

§10.17 軸性ベクトル相互作用の部分的保存(PCAC) 

(Partialy Conserved Axial vector Coupling)
 

核子の周りの中間子の雲は,軸性ベクトル,またはβ崩壊相互

作用のGamow-Teller部分にもまた影響すると考えられます。
 

α~1.21という数は,中間子の雲の影響に由来して,ベクトルの

結合定数に軸性ベクトルの強さを関連付けるものであると解釈

します。
 

αは1に近い数で,仮想の中間子の雲による結合の強さの

くり込み計算は対数的に発散する値を与えます。
 

これは,軸性ベクトルのβ崩壊結合に対しても,恐らくは近似的

な保存則が成立しているだろうこと,を示唆しています。
 

現時点では,このおぼろげなアイデアも,他の如何なるアイデア

に基づいても,αの大きさを説明するための進歩は,なされて

いません。
 

そこで,αの値の説明そのものについては,ここでは,これ以上

考えないことにします。
 

しかし,弱い崩壊振幅における核子の部分的に保存する

軸性ベクトルカレントに結合するレプトンカレントという

アイデアは,以下に論じるように,荷電π中間子の観測寿命

に適合するよう予測計算を行なうことにおいて,幾らかの

成功を得ています。
 

軸性ベクトルカレントへの最も単純な輻射補正は,10.22

に示すように単一のπ中間子を含むグラフです。


 

ここまでのFeynmanルールによれば,これはβ崩壊の不変振幅

に次のような項として寄与します。
 

すなわち,

in(Ga/2)(ig√2)[p~(p)iγ5(n)](2-μ2)-1 

×(iμ)[e~(e)γμ(1-γ5)ν(ν~)] です。
 

ただし,(Ga/2),前に与えたπ中間子崩壊のS行列要素: 

fi(π)(-i)(2π)-9/2{/(4k~)}1/2(Ga/2)

πu~(pμ(1-γ5)v(k~)(2π)δ(π-pe-k~) 

における結合定数を示しています。
 

また,gはπ-Nの強い相互作用の結合定数であり.追加の因子 

2は荷電π放出のアイソスピン行列に由来する係数です。
 

弱い相互作用の1次のオーダーで,10.23に示すようなグラフ 

に由来する,多くの追加の寄与があります。

こうした全てのグラフの寄与は次のような形に書けます。 

すなわち,=Fμ(+)(Pp,Pn)u~(peμ(1-γ5)v(k~)

です。

  
ただし,Fμ(+)(Pp,Pn)=(Ga/2)u~(Pp) 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)+pμγ53(2)](n) 

q=Pn-Pp=pe+k~,p=Pp+Pn です。
 

この形式の特徴は,電磁カレントに対して作成したものに同様

です。唯一の違いは,軸性ベクトルカレントを作成するために

γ5が挿入されていることです。
 

もしもμ(+)(Pp,Pn)への寄与が図10.23のように,

アイソベクトルの(+)成分として変換すると仮定するならば,

このことを示すことによって,この形をさらに簡単にすること

ができます。

すなわち,3(2)0 です。
 

これは,強い相互作用の荷電共役(Charge cobhugatuon)不変性

アイソスピン不変性に基づくものです。
 

これを示すため,10.23()の頂点τをτ3にし,10.23()

でのレプトンに結合するπ中間子の放出頂点でも,τをτ3

に変えることによってμ(+)(P',P)をアイソ空間で回転

させます。

強い相互作用の荷電独立性のために,これはμ(+)(P',P)

をアイソベクトルの第3成分に変換させます。
 

特に,陽子pについては, 

μ3(P',P)=(Ga/2)u~(P') 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)+pμγ53(2)](P)

ただし,q=P'-P,p=P'+P
 

となります。
 

強い相互作用の荷電共役不変性によれば,10.23のグラフに 

由来するμ(+)(Pp,Pn)=(Ga/2)u~(Pp) 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)+pμγ53(2)](n) 

なる付加的寄与においては,
 

陽子が反陽子に置き換えられた場合でも,"裸の"陽子カレント

と同様,μ(+)(Pp,Pn)はμ3(Pp,Pn)に帰着させられる

必要があります。
 

つまり,運動量PμからP'μの状態へと散乱される反陽子

の荷電共役遷移については,

  
参考テキストでは.第6章伝播関数.
本ブログでは,

散乱の伝播関数の理論」で論じているように,

運動量(-P'μ)から(-Pμ)の状態へと散乱され,

時間的な前方,つまり過去へと伝播する負エネルギーの

陽子に対応する下図10.24グラフで記述されます。
 

これに対応する頂点がγμγ5の素朴な軸性カレント: 

μ(P',)=u~(P')γμγ5(),荷電共役変換

:Cで,~()γμγ5(P')

=-u()-1γμγ5Cu~(P')exp{iδ(P',)} 

=-u~(P')γμγ5()exp{iδ(P',)} なる等式

を満たします。
 

これは,つまり,

Aμ(-P,-P')=-JAμ(P',)exp{iδ(P',)} 

を意味しています。
 

200912/20の過去記事:Diracの空孔理論(2)」によれば、

Dirac方程式に従う陽子の荷電共役変換演算子:Cは行列表示で, 

C=iγ2γ0=-iγ2γ0と選択することができます。

  
このとき,-1=C=-Cであり,陽子の正エネルギー

Pのspinor:(,),と負エネルギー:(-P)spinor:

(,)のスピンSを省略した表現では

()=Cu~(),よって,

exp{-δ(P)}v(P)=γ0(P)C-1,

or exp{-δ(P)}v~(P)=γ0(P)C-1γ0

と書けます。

   
これから,~()γμγ5(P') 

=γ0()-1γ0γμγ5Cu~(P')

exp[i{δ()-δ(P')}]となりますが,

  
γ0()γ0=u(),(γ0)21,γ0-1γ0=-C-1

より,位相変化をδ(P',)=≡δ()-δ(P')

で定義すれば,
  
~()γμγ5(P') 

 =-u()-1γμγ5Cu~(P')exp{iδ(P',)}

 を得ます。
 

さらに,()-1γμγ5Cu~(P')

[()-1γμγ5Cu~(P')] 

=u~(P'){-1γμγ5}()ですが,

 
C=iγ2γ0より,
-1=C,(-1)=C なので,

{-1γμγ5}=C-1γ5γμ=γ5-1γμ

=-γ5γμ=γμγ5 より,

-u()-1γμγ5Cu~(P')=-u~(P')γμγ5() 

が得られるわけです。 (17-1終わり)
 

(17-2):より詳細にDirac粒子の荷電共役不変性

 (Charge Conjigation)の意味について振り返るため,

200912/20の過去記事:Diracの空孔論(2)から一部を抜粋

して再掲し,粒子と反粒子の対称性を意味する荷電共役不変性

の項目を復習しておきます。
 

(再掲開始:↓)
 

Diracの空孔理論は,取り得る全ての負エネルギー状態が完全に占有 

された負エネルギー電子の海(=真空)において,エネルギー:(-E) 

(E>0),および,電荷e(電子の場合はe=-||0)を持つ電子1 

の欠損を示す,負エネルギーの海における1個の空孔(hole),1個の 

正エネルギーの陽電子の存在に同等である,と解釈する理論です。
 

 そこで,この解釈では電磁場Aμがある場合の質量mの電子波動関数

 Ψが従うDirac方程式:(i-e-m)Ψ=0 の負エネルギー解

 と,正エネルギー陽電子の固有状態を示す波動関数が1対1に

  対応するはずです。
 

ただし,≡γμμ,iiγμμiγμ(/∂xμ),

≡γμμです。
 

μ^i(/∂xμ)ですから,^iであり, 

自由電子のDirac方程式に,極小相互作用変換:

μ^→ pμ^-eAμ施して得られるものが,μ

存在する場合の上記の電子波動関数に対する 

波動方程式です。
 

こうした解釈により,陽電子の波動関数Ψcは電子とは正の電荷

(-e)を持つだけ異なる,電子と同じ波動方程式を満たすはず

なので,それは,(i+e-m)Ψc0 の正エネルギー解である

と考えられます。
 

 このことから,2つの方程式を互いに変換させる演算子を作る

  という発想に導かれます。
 

これを遂行するためには,変換の結果として,2つの演算子;

^iの間の相対的符号が変換前と異なるようになる

ことが必要ですが,これは単に複素共役を取ることで可能です。
 

 すなわち,{i(/∂xμ)}=-(/∂xμ),μ=Aμ

 なので,(i-e-m)Ψ=0, or

{γμ(iμ-eAμ)ーm}Ψ=0,両辺の複素共役を取ることで

{(iμ+eAμ)γμ*+m}Ψ0 となります。
 

もしも,(Cγ0)γμ*(Cγ0)-1=-γμなる代数関係を満たす 

正則行列Cγ0を見出すことができれば, 

{(iμ+eAμ)(Cγ0)γμ*(Cγ0)-1+m}(Cγ0Ψ)0

より,{(iμ+eAμ)γμ-m}(Cγ0Ψ)0 となります。
 

 ところで,Ψ~=Ψγ0より,γ0Ψ=Ψ~ですから,

このCγ0用いてΨc≡Cγ0Ψ=CΨ~と定義すれば,上記

方程式は,{(iμ+eAμ)γμ-m}Ψc0となり,

陽電子の波動関数をΨcとしたときに,それが満たすベキ方程式

に一致します。
 

 今,用いているDiracガンマ行列の表示では,C=iγ2γ0と選択

すれば,C=-C-1=-C=-Cであり,(γμ)-1=-γμ,

または-1γμC=-(γμ)となり,それ故, 

(Cγ0)γμ*(Cγ0)-1=γ0γμ +γ0=-γμです。
 

したがって,C=iγ2γ0,上記の(Cγ0)γμ*(Cγ0)-1

=-γμなる条件を確かに満足します。
 

任意の表示はユニタリ同値なことから,これは任意の表示の

変換でも常に(Cγ0)γμ*(Cγ0)-1=-γμを満たすCを作る

ことが可能なことを示すに十分です。
 

しかし,(i+e-m)Ψc0を満たすような

Ψc≡Cγ0Ψ=CΨ~を与える荷電共役演算子:Cの定義に

おいては,位相の任意性があることに気付きます。
 

例えば,今の行列でのC=iγ2γ0なる陽な表現では,Ψciγ2Ψ

です。そこで,静止した負エネルギー電子:

Ψ=(2π)3/2[0,0,0,1]exp(imt)であれば,

Ψciγ2Ψ(2π)3/2[1.0,0,0,1]exp(imt)

となります。
 

これは,静止したspin-downの負エネルギー電子の欠損が.

静止したspin-upの正エネルギー電子の存在に等価という描像

に対応しています。
 

この場合には,荷電共役変換後に位相変化は無いように

見えますが,一般には,

exp{iδ(,)}(,)=Cu~(,), 

exp{iδ(,)}(,)=Cv~(,) となって 

(,)とu(,)が互いに位相因子:exp{iδ(,)}

を伴なう運動量表示の荷電共役spinorの対になると

考えられます。
 

波動関数の位相には何の物理的意味も無いように見えますが,

実はこれにも重要な意味が隠されている場合があります。
 
 

(再掲載終了)  (17-2終了)※ 
 

陽子pの素朴な軸性カレントにおける荷電共役不変性: 

~()γμγ5(P')

=-u~(P')γμγ5()exp{iδ(P',)},
 

または,Aμ(-P,-P')=-JAμ(P',)exp{iδ(P',)} 

での位相因子:exp{iδ(P',)},運動量とスピンから決まる

量です。
 

一方,β崩壊のハドロンカレント因子での強い相互作用のπの

雲など の高次補正を含む軸性カレントの第3成分: 

μ3(’,)(Ga/2)u~(P') 

[γμγ51(2)+qμγ52(2)+pμγ53(2)]()

, こうした補正前の素朴なカレント:Aμ(P',)

と同じ荷電共役変換性を持つと考えられます。
 

すなわち,

μ3C(-P',-)=-μ3(P',)exp{iδP',)}  

です

これから,容易に,3(2)0 となることが結論されます。
 

(17-3): μ3C(-P',-)={Ga/√2}v~(P)

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)-pμγ53(2)](P') 

ですが,


 
一方,μ3(P',)(Ga/2)~(P')
 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)+pμγ53(2)]()

です。ただし,q=P'-P,p=P'+Pです。
 

そして,荷電共役によって, 

~()γμγ5(P')

=-u~(P')γμγ5()exp{iδ(P',)}, 

かつ,

~()γ5(P')

=-u~(P')γ5()exp{iδ(’,)} 

が成立します。


    故に,μ3(P',)exp{iδ(P',)}(Ga/2)~()
 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)+pμγ53(2)](P') 

です。
 

これが,μ3C(-,-P')(Ga/2)~() 

×[γμγ51(2)+qμγ52(2)-pμγ53(2)](P') 

に恒等的に等しいことから,

  
3(2)0 が結論されます。(注17-2終わり)※

 

軸性ベクトル部分の図10.23()のようなグラフに由来する

β崩壊の振幅への寄与は,10.22のグラフの最低次の

不変振幅: 

 Min(Ga/2)(ig√2)[p~(p)iγ5(n)](2-μ2)-1 

 ×(iμ)[e~(e)γμ(1-γ5)(ν~)]

 に,あるq2のスカラー関数(2)を掛けたもので

 与えられる考えられます。

 ただし,ここではq=Pn-Ppです。
 

 よってβ崩壊でのπ-N頂点の寄与による摂動の全ての次数 

 の修正の総和は,上記振幅での[p~(p)iγ5(n)]の因子

 を,[p~(p)iγ5(2)(n)]なる形の相互作用因子に

 置き換えることで得られると考えられます。
 

  ここに,(2),不変運動量遷移q2の不変関数です。
 

 これは,奇数個のγ5頂点があるとき, pnDirac

 自由粒子外線の次に位置するところまで右から左に交換

 させ移動させて,核子の質量Mに置換できるという事実

 から従います。
 

  こうして,核子の雲の中に単一のπ中間子が,直接レプトン

 と結合する図10.23(b)のようなグラフの寄与は,μγ5

 比例するため,

 μ(+)(Pp,Pn)=(Ga/√2)u~(Pp) 

 ×[γμγ51(2)+qμγ52(2)](n)

 の右辺の2(2)にのみ寄与します。
 

 そこで,2(2)から図10.23()のようなグラフの寄与

 を分離して,

 F2(2)=2~(2)(-ag√2)(2)/(2-μ2) 

 と書きます。
 

定数aは,以前に荷電π中間子崩壊の論議で予測計算値が

πの観測寿命に合致するよう導入された,結合定数Gの

係数です。
 

形状因子:(2),2=μ2において,§10.8のπ-N散乱

で論じられた,π-N結合定数:gの観測される強さによって

より明確にされます。
 

gは,物理的に観測された結合定数の評価:

2/(4π)14一致するように取られる定数であり,

 

(2),2=μ21に規格化されます。

(μ2)1です。
 

2(2)については,何の情報もありません。しかし,これは, 

軸性カレントqμγ5の係数であって,反跳補正:/

に等しいのでβ崩壊では観測されません。
 

一方,これまでの論議から1(0)=-α~ -1.21であること

がわかっています。
 

こうした準備に基づいて,PCAC=軸性ベクトルカレント

の部分的保存という課題を考察します。
 

もしも軸性カレントも,(極性)ベクトルのカレントと同様に

正確に保存するなら,μμ(+)(Pp,Pn)=0 が成立します。
 

この式と,μ(+)(Pp,Pn)の形状因子構造; 

μ(+)(Pp,Pn)=(Ga/2)u~(Pp

μγ51(2)+qμγ52(2)](n)  

を組み合わせると,

21(2)+q22(2)0 が得られます。
 

(17-4):何故なら, 

μ~(p)[γμγ51(2)+qμγ52(2)](n) 

=u~(p)γ51(2)(n)+q2~(p)γ52(2)(n) 

ですが,

~(p)pγ51(2)(n)

=u~(p)(Pnp51(2)(n)

=-u~(p)pγ51(2)(n)-u~(p)γ51(2)n(n) 

=-2Mu~(p)γ51(2)(n) です。

  故に,
μμ(+)(Pp,Pn)=0 は,u~(Pp),u(Pn)

について恒等的に,~(p)γ5[21(2)

+q22(2)](n)0 が成立する,ことを意味するため,

 21(2)+q22(2)0 です。 (注17-4終わり)※
 

したがって,もしも正確に軸性カレントが保存うると仮定

すれば,2(2)=21(2)/2となるのですが,これは

1(0)≠0より,2(2)がq20に極を持つことを意味

します。

  
これはつまり,2(2)が関わる相互作用では,質量がゼロ

擬スカラー粒子の交換が寄与することを意味しています。
 

この2(2)のq20の極を,

2(2)=2~(2)(-ag√2)(2)/(2-μ2)

なる表現におけるπ中間子交換の極:2=μ2と関連

付けよう,という発想は魅力的です。
 

つまり,π中間子の質量がゼロなら,軸性カレントも正確に

保存されるはずでしたが,πのゼロでない質量μの存在で,

このカレントの保存が破られているのでは?という連想が

生じるわけです。
 

そこで,qμμ(+)(Pp,Pn)=0 の代わりに,

修正された仮説:

0=limμ→0[qμμ(+)(Pp,Pn)]limnμ→0[u~(Pp5

×{-2M1(2)+q22(2)-ag√2)(2)/(2-μ2)}

u(Pn)] を採用します。


  この構造が,現実のπ質量のμ≠0でも,q2=0においてほとんど

ずれがなく成立すると仮定すれば,


  
近似的に,
2Mα=ー21(0)~ag√2が成立すること

になります。(※(0)=μ2?。。)

  
数値的にはα~1.21,2/(4π)14より.

|a|~ 0.87μなる「予測を得ます。

(※(注17-5):私の計算では.g√2~(104π)1/2,M~940MeV.

μ~140MeVより,a=2Mα/g√21~26.137MeV=0.90μ

です。  (注17-5終わり)※

  これは,以前にπ±崩壊の論議で,π±の観測された平均寿命

から評価された|| 0.93μと10%以内の誤差で一致

します。

   
こうしたπ中間子の崩壊率,Fermi定数Gとπ-N結合定数

gの間の関係は,GoldbergerとTreimanによって初めて導出

されたものです。
 

次いでこれがPCACの帰結であると論じたのは,

南部(Nambu),Bernsteinによるものです。

 

以上,「)弱い相互作用の旧理論(Fermi理論)」については,

これで終わります。
 

実は参考テキスト(Mechanics;量子力学)もこれが最後

です。

   
私のノートではこれの読了期日は1994年4/27(44)

となっています。これは22年前バブルも終わりかけて,私は

定職を離れて本格的なプータロー生活となった頃です。

  金無し,ヒマありでしたから,過去の専門に戻るというこの

変態趣味にふける,くらいしか,自己実現の道がなかった

と当時は考えたようです。結局,今も続いてますが。。。
 

さて,同じ著者:B-Jのテキストの続きは,もう1巻,11

から始まるもの(=Field;場理論)がありますが,実は私は,

この順順序良く読んだのではなく,学生時代に両方とも

テキストして使用していた当時から,これらを同時に

並行して読んでいました。
 

弱い相互作用については,古典的なFermi理論はこれで終わり

ますが,新理論というのは,ニュートリノに質量があるという

最近の発見内容も含むのが条件でしょうが。。
 

その中間にある,Weinberg-Salam理論の紹介や,その予想通り

実際に発見された弱い相互作用のゲージ粒子(Weak-Boson),

の話題,そして,カラークォークを含む最近の旧理論なども,

できれば別記事としてアップしたいと思っています。
 

まだ,命があれば。。。。。
 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell 

”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)

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2016年7月 6日 (水)

中性子の平均寿命の計算(Fermi理論) Pending

                             

弱い相互作用の旧理論に基づいて,具体的に中性子nの 

β崩壊:n→p+e+ν~の崩壊率を求めてみようと

思います。

 まず.Fermi理論に基づく,nのβ崩壊S行列要素 

,fi(-i)(2π)-6-2{np/(2npeν~)}1/2 

×(2π)4δ4(-P-p-pν~)fi  

と書けます。
 

ただし,fi,この崩壊反応の不変振幅です。
 

元運動量:ν~で作用領域から出ていく反ニュートリノ: 

ν~,4元運動量:-pν~で入ってくる負エネルギーの 

ニュートリノ:νのスピノル:ν(ν~)で表現されます。
 

核子の散乱振幅が,核子:(,)のV-Aカレントと, 

レプトン:(,ν)のV-Aカレントの積で与えられる 

という.これまでの論議を適用すると,

 
不変振幅は,

fi(/2)[up~(pμ(1-αγ5)un(n)]

×[ue~(eμ(1-γ5)vν(ν~)] 

と書けます。
 

,Tをそれぞれ,β崩壊相互作用の体積,反応時間 

とすると,中性子nが単独で自由に存在するというi

(始状態)から,,,ν~が存在するf(終状態)への

上記S行列要素:fiの絶対値の平方に,

  
終状態の陽子
pの密度:(2π)-3Vd3p,電子eの密度:

(2π)-3Vd3e,反ニュートリノν~の密度: 

(2π)-3Vd3ν~を掛けると,

  
その微小領域への
遷移確率は,

|fi|2(2π)-933p33ν~で与えられる

と考えられます。
 

これを,体積Vと時間Tの積:VTで割った単位体積当りの 

遷移速度を,始状態の中性子nの密度:(1/)で割ったもの 

,中性子1個当たりの単位時間当たりの,

3p33ν~ への崩壊確率:dωを与えます。
 

ただし,崩壊現象では,VをV=∞の全空間として, 

V=(2π)3δ3(0),TをT=∞=(-∞,)の全時間 

として,T=(2π)δ(0)とし,VT=(2π)4δ4(0) 

同定します。
 

また,粒子がVの中に1個だけあるという波動関数の 

規格化でなく,全空間でのデルタ関数式規格化では, 

最後にV=(2π)3とします。
 

そこで, 

dω={|fi|2(2π)-933p33ν~}/(VT) 

(2π)-9(2π)4δ4(-Pp-pe-pν~)

3p33ν~ {np/(2npeν~)}|M |2 

です。
 

ここで,右辺を一般的方法では観測にかからない終状態の

反ニュートリノν~の状態について総和するため,3ν~

を実行します。
 

ところが,3ν~/(2ν~)=∫d4ν~θ(ν~0)δ(ν~2) 

なる公式があるので,3ν~を実行すると,

∫d4ν~ によりδ4(-P-p-pν~)因子が消えて, 

因子:θ(ν~0)δ(ν~2)が残ります。
 

さらに,eの状態の総和では, 

3||EdEdΩ=β2dEdΩです。
 

よって,dω=(2π)-5{np/(npe)}θ(ν~) 

×δ(ν~2)|fi|23p||dEdΩe  

 と書けます。
 

右辺の|fi|2については,特定偏極を仮定した場合 

|fi|2(2/2)|up~pμ(1-αγ5)un(n)|2 

 ×|e~(μ(1-γ5)vν(ν~)|2   

 の代わりに,
 

 核子:(.)のスピン,および,電子と反ニュートリノ:

 (.ν~)のスピンで総和を取って,中性子nのスピンで平均

したもの::

つまり.(1/2)SpSne,sν~|fi|2 

(2/2)(1/2)SpSn|u~(pμ(1-αγ5)u(n)| 2 

×SpSn|(ue~(eμ(1-γ5)vν(pν~)| 2 

   

(2/4){1/(8pn)} 

μνr[(+mp)γ μ(1-αγ5)(n+mn)γ ν(1-αγ5)] 

×Tr[νγ μ(1-γ5)(+m)γν(1-γ5)]] 

を不変振幅による確率密度の因子と考えて,この値を 

|fi|2に置き換えます。

 

核子部分のトレースは, 

r[(p+mp)γ μ(1-αγ5)(n+mn)γ ν(1-αγ5)] 

=Tr[(p+mp)γ μ(1+α22αγ5)nγ ν 

+mn(1-α2)r[(p+mp)γ μγν] 

(1+α2)r(pγ μnγ ν)2αTr(γ5pγ μnγ ν) 

+mpn(1-α2)r(γ μγν) 

4(1+α2)(pμnν+Ppνnμ-gμνpn) 

+4pn(1-α2)μν 

8iα∑αβγδεαβγδpαμβnγνδ)

と書けます。
 

一方,レプトン部分のトレースは, 

r[γ ν(1-γ5)(+m)γμ(1-γ5)ν~] 

2r[γν(1-γ5)(+m)γ μν~] 

2r(γνeγ μν~)2r(γ5γνeγ μν~) 

8(eνν~μ+peμν~ν-gνμeν~) 

8iρστηερστηeρνσν~τμη)  

です。
 

核子のトレースとレプトンのトレースの積を取り, 

総和∑μνを取ると,μ,νについて対称な項と反対称な 

項の積は,対称性の故にゼロとなって消え,反対称項同士, 

対称項同士の積だけがゼロでない寄与をします。
 

反対称項同士の積は, 

64α∑μναγρτ [εαμγνερντμpαnγeρν~τ] 

です。
 

μνεαμγδερντμ 2(δαρδγτ-δατδγρ)

なので,これは, 

128α∑αγρτ(δαρδγτ-δατδγρ)pαnγν~ρτ 

=-128α[(pν~)()(p)(nν~)] 

となります。
 

一方,対称項同士の積は, 

32(1+α)2(pν~)(n)(p)(nν~) 

-32mpn(1-α2)(eν~) です。
 

故に,(1/2)SpSne,sν~|fi|2{2/(pn)} 

[(1+α)2(pν~)(ne)(1-α)2()(ν~) 

pn(1-α2)(eν~)]  を得ます。
 

ここで,保存則:-Pp-pe-pν~0.より, 

ν~=P-Pp-peですから,これを代入してpν~を含む項 

を消去します。
 

(pν~)(pn)-mp2(pe), 

(ν~)=mn2(np)(ne), 

(eν~)(en)(ep)-me2  

です。
 

それ故,(1/2)SpSne,sν~|fi|2{2/(pn)} 

×[(1+α)2(pe){(pn)(pe)-mp2} 

 +(1+-α)2(){n2(pe)(ne)} 

 pn(1-α2)[(en)(ep)-me2}]  

です。
 

特に,崩壊する前の中性子の静止系:nμ(n,0)を想定 

すると,n=mnであり,+Ee+Eν~=mnです。 

また,ν~0  です。
 

また.反ニュートリノの質量がゼロという条件から, 

0ν~2(-Pp-pe)2 

=mn2+mp2+me22{(pn)+()-(ne)}なので, 

(pn)()-(ne)(n2+mp2+me2)/2, or, 

()(ne)(pn)(n2+mp2+me2)/2  

です。
 

よって,中性子の静止系:Pn=(mn,0)で, 

 ()(n)-(pn)(n2+mp2+me2)/2 

=mn(e-Ep)+(n2+mp2+me2)/2 です。


 したがって,(1+α)2
(pe){(pn)(pe)-mp2}

=(1+α)2{n(e-Ep)+(n2+mp2+me2)/2}

×{n(2pーEe)ー(n2+3mp2+me2)/2}  です。
 

また,(1ーα)2(){n2(pe)(ne)} 

=(1ーα)2()[(n2-mp2-me2)/2(pn)2(ne)] 

­=(1ーα)2{n(e-Ep)+(n2+mp2+me2)/2} 

{(n2-mp2-me2)/2+mn(p2e)}  です。
 

さらに,-mpn(1ーα2){(en)(ep)-me2} 

pn(1ーα2){(pn)-(n2+mp2+3me2)/2} 

pn(1ーα2){(n2+mp2-3me2)/2-mnp} です。
 

そして,δ(ν~2)=δ((-Pp-pe)2) 

=δ((-Pp-pe)2) 

=δ(n2+mp2+me22{(pn)()-(ne)}) 

=δ(n2+mp2+me22n(p-Ee)ー2()) 

=δ(n2+mp2+me22n(p-Ee)-2(1-βpβecosθ)) 

ですから,

 
このデルタ関数のEpの係数は,

2{n+E(1-βpβecosθ) です。
 

よって,3p|p|dEdΩpによる積分結果は, 

∫dΩp4πとして,∫d3pδ(ν~2) 

4πβp2/[2{n+E(1-βpβecosθ)}]

です。
 

また,θ(ν~)=θ(-Ep-Ee)因子より, 

0≦Ee≦m-Epである必要があります。
 

そこで. 

dω=(2π)-5δ4(-Pp-pe-pν~)

3p33ν~ {p/(pe)} 

×[(1/2)SpSne,sν~|fi|2] から積分を実施すると,
 

ω=(2π)-5{4πβp2/mn)}0n-EpdΩ 

[βee /{n+E(1-βpβecosθe)} 

×[(1+α)2{n(e-Ep)+(n2+mp2+me2)/2} 

×{n(2p-Ee)+(n2-mp2+me2)/2}

(1-α)2{n(e-Ep)(n2+mp2+me2)/2} 

×{(n2-mp2-me2)/2+mn(p2e)} 

pn(1-α2){(n2+mp2-3me2)/2-mnp}] 

が得られます。
 

α~1.21と評価されているので,取りあえず,α~1として, 

(1-α)2(1-α2)に比例する項,および,me2を無視し,

核子pの反跳も小さいとして,pをmpで近似します。

e2を無視するので,|e| ~ Ee より,βe ~ 1です。

 

α=1のとき,ゼロでない寄与をする項は, 

(1+α)2{{n(e-Ep)+(n2+mp2+me2)/2} 

×{n(2p-Ee)-(n2+3mp2+me2)/2} 

4{ne(n2+mp2-2mnp)/2}

×{-mne(n2+3mp2-4mnp)/2} 

=-4n2e2+mn(22+4mp2-6mnp)e 

(n4-mp4+2mn3p+6mnp3-8mn2p2)}

です。

  最後に得られたEeの2次式をF
(Ee )と置き,

さらに,M=mn, ΔM=mn-mp, E~m,

β~ΔM/M と近似します。

 すると,

ω=(2π)-4{22/mn}0n-Ep∫dΩ 

[βee F(Ee )/{mn+E(1-βpβecosθe)}

(2π)-3{βp2}0ΔMd(cosθe)

[e F(Ee )/{n+E(1-βpcosθe)}]

(2π)-320ΔM

[ F(Ee )×log{[1+E(1+βp)/mn}/{1+E(1-βp)/mn}]

を得ます。

ここで,log{[1+E(1+βp)/mn}/{1+E(1-βp)/mn}

~2E/M と近似します。 

そして,F(Ee ) ~ -4M2(Ee2 +ΔMEe /2)です。

故に,ω ~ (2π)-32}0ΔM(8MEe3+4MΔMEe 2)


  
最終的には,ω~ (G2/π3)}[(5/12)M(ΔM)4}

と近似評価されます。 

ここで,単位のみを問題とする次元解析の等式を 

書くと,-1=[G]25[cs]と掛けます。
 

c6.6×1016eVsec ,c3×1010cm/secであり, 

 [c]=ML2-1,[]=LT-1なので, 

-1[]2(ML2-2)5(ML21)r(LT-1)s.
 

すなわち,-1[]25+r102+s-10-r-s です。
 

また,以前の記事によると,G~8.88×1038eVcm3であり,

[]ML52でした。


  それ故,上記等式は,
-1=M7+r202rS14―r-s です。 

それ故, 7+r=0,  20+2r+s=0, -14-r-s=-1  から

結局,r=-7,s=-6 が得られます。
 

故に,通常の単位では, 

ω=1/τn=π-32/(6c7){(8/3)M(ΔM)4}です。
 

ただし,M=MN=mn ~ mp 940MeV, 

ΔM=(n-mp) 1.3 MeVですから, 

(5/12)(ΔM)4 ~ 1120 (MeV)5 です。
 

これと,

G=8.88×10-44(MeVcm3),c6.6×1022MeVsec ,

c3×1010cm/secを,

ω=1/τn=π-3(2/6c7){(1/3)(ΔM)4}

 に代入すると,3
 

 ω=1/τn

 ~ π-3×68.4×6.67×36×106×900/sec 

 ~ 6.25/sec を得ます。
 

これが正解とすると,自由中性子nの寿命の評価値は,  

τ~ 0.16 sec となります。

 
確か,昔読んだ文献に
よると,自由な 中性子nの平均寿命は,

15=900sec ~ 103 sec 程度ではなかったかと記憶して

いるので,ここでの評価計算は大雑把な近似であることを考慮

しても.やや不一致な値です。。。。
 

(1):過去記事;「弱い祖語作用の旧理論(11)」での  

μ粒子の崩壊:μ→e+ν+ν~についての計算を  

参照すると,ω=1/τμ=G2μ5/(192π3) でした。

μ崩壊では,ΔM=mμ-mμ~ mμですから計算式と 

しては,私が個人的に評価した上記の中性子の崩壊率と 

係数を除いて一致しています。
 

まあ,μ崩壊の計算を参照して,考察したので当然といえば

当然の結果ではありますが。。。
 

 そして,この自然単位でのμ崩壊率の式を通常の単位

に直すと, ω=G2(μ2)5c-7-6/(192π3)

が得られます。
 

 この際に行なった計算過程を,そのまま再掲すれば,

 
まず,G=(1.015±0.03)×10-5×(940MeV)-2c33
 
から,誤差:±0.03を省いて,
 
21.0152×10-10×(940MeV)-4c66 です。

 
μの質量:μ2 106MeVを代入すれば,
 
ω=1.0152×10-10×(940MeV)-4(106MeV)5c-1/(192π3)
 
2.97×10-16MeV/c となります。
 

 MeV単位では,hc6.6×10-22(MeVsec)なので, 

 結局,μ粒子のの崩壊率は,

 ω=1/τμ(2.97×106/6.6)sec-1 であり,

 平均寿命はτμ=1/ω~2.22×10-6sec であるという

 予測計算値が得られました。

 
他方,μの平均寿命の実験観測値は,
 
τμ(2.21±0.003)×10-6secですから,

これについては予測計算値が観測値とほぼ一致して

います。 (1終わり)
 

一方,中性子nでなくBose粒子の荷電π中間子の3体崩壊: 

π→π0+e+ν~ があります。

 

これにおいても,同様に評価できると仮定して, 

(ΔM)4,μ(Δμ)4と書き,μ~140MeV,  

Δμ~4.5 MeVを代入すると,

μ(Δμ)457400(MeV)5 です。
 

中性子の崩壊と同じ方針で,このプロセスでの崩壊率

の評価ができると仮定したときの評価値は, 

ω ~ 1.6×10-3/sec×a2×57400/2680 となるため

  
Fermi粒子のV-Aカレントの寄与: 

|up~pμ(1-αγ5)un(n)|2が,πについては, 

|pi+pf|2に変わるであろうという推測からは別の評価 

もできそうですが,まだ計算していません。
 

いずれにしろ,どこが間違いか?今のところよくわからない 

ですが,この方針での計算のどこがミスなのか?または方針

そのものが間違いなのかとか,検討中です。

Pending。。。。

 今日はここで終わります。

 

(参考文献):J.D.Bjorken & S.D.Drell  

”Relativistic QantumMechanics”(McGrawHill)

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2016年7月 4日 (月)

クライン・ゴルドン方程式(5)

クライン・ゴルドン方程式(Klein-Gordon eq.)の続きです。

 今回は,科学記事のアップが,ずいぶん,久しぶりとなりましたが,

実はこの間,別の計算に明け暮れていました。

 それは「弱い相互作用の旧理論」に基づいて,自由
中性子n

崩壊率,または平均寿命の予測値の精密な値を求めるという

課題です。
 

 思えば,「弱い相互作用の旧理論」は,ここまで記事を重ねて

いながら,μ粒子や荷電π中間子の崩壊率,寿命については実験

観測値とほぼ適合する予測計算値を得ていながら,肝心の中性子

nのβ崩壊による崩壊率や寿命については,具体的な計算を実行

していなかったことに気付きました。

 
しかし,前回の「弱い相互作用の旧理論(15)]」で,CVC

の仮説から,π→ π0+e+ν~ なるπの崩壊が存在し.その

崩壊率のオ-ダーが 10-8 程度である,という参考テキストに

あった値を天下り的に記述してアップした後,これは如何なる

計算で評価されたるのか?という根拠が気になりました。
 

 結局,Fermi粒子とBose粒子の違いはありますが,これは

中性子β崩壊:n→ p+e+ν~と同じ3体崩壊なので,

nとpの質量,質量差と,πnとπ0のそれらを比較すれば,

nのβ崩壊での評価値との比較で納得できる回答が得られる

のでは?と考えるに至りました。

  そこで,これまでの関連記事を全て
チェックしたところ,

ここまで肝心の中性子nのβ崩壊の具体的計算を怠っていたこと

に気付いたわけdす。

  既にμ崩壊の詳細計算などは実施ししているので,同様に

やれば簡単に計算評価できると思っていたのに,なかなか数値

として合理的と思われる評価が得られず,

  中途
挫折しているうちに.つなぎにでも,

「クラインゴルドン方程式」の続きの新記事をアップしよう

と思ったわけです。
 

さて,前回の記事「クラインゴルドン方程式(4)」の最後では, 

電荷が+ZeのCoulombポテンシャルによるπ中間子の 

ポテンシャル散乱の微分断面積(角分布) ,微細構造定数: 

α=e2/(4πε0) 1/137の最低次, 

dσ/dΩ=Z2α224//{4β22sin4(θ/2)}で与えられ,
 

 これは,2014年の過去記事:

 「散乱の伝播関数の理論(11)(応用1-1)で求めた,同じ

 Coulombポテンシャルによる電子の散乱微分断面積: 

 dσ/dΩ=Z2α2{1-β2sin2(θ/2)}/{4β22sin4(θ/2)}

 とは.電子スピンの1/2と関わる,スピノルについてのトレース

 に起因する因子:{1-β2sin2(θ/2)}のみが異なるという,

 合理的で当然な結果が得られた。

 というところで終わりました。
 

 さて,今日はその続きですが,これと似た結果はπ中間子の

 Coulomb散乱 に対しても得られます。


 上の図9.4のように,散乱前に運動量piμを持った
π中間子

表わすpi(-)()が,散乱後に,終状態で出現する

φ()=fpf(-)()運動量pfμを持つπ中間子へと遷移する

S行列要素は,この前に求めた下図9.3に対応する同じ運動量

遷移q=pf-piのπ中間子S行列要素:

 
pfpi(i)(2π)-3(4ωfωi)-1/2(f+pi)μμ()
 

から,

pfpi(i)(2π)-3(4ωfωi)-1/2(f+pi)μμ() 

に変わるだけです。
 

これらは,πとπの電荷の符号の変化に対応して符号だけ

が異なるため,πとπ,Coulomb散乱の最低次近似では,

同一の微分断面積を持つことがわかります。
 

 中心電荷Zeは,π中間子には斥力,π中間子には引力を

及ぼすという明確な違いがあるにも関わらす,散乱微分断面積

は同一という計算結果ですが,これは以前の電子散乱と陽電子

散乱のケースに述べたのと同じく最低次の計算で一致すると

いうだけで,高次の計算をまでを考慮すれば,その差異が現わ

れます。
 

そして,こうした計算から学び取れることは,荷電π中間子の

頂点には,電子の頂点に対するeγμの代わりに,因子:

(f+pi)μが結び付くということです。
 

波動関数の規格化因子は,1/(2ω)1/2.これは電子に対する

(/)1/2にとって代わるものであり,もちろんスピノル因子:

(),()などの因子も存在しません。
 

電磁場;μ()がある場合のπ中間子のスカラー波動関数

φに対する方程式:(□+μ2)φ()=-V^()φ(); 

^()i(μμ()+Aμ()μ)-e2μ()μ() 

から,

  
pfpi=δ3(fi)i∫d4yfpf()()^()φ() 

,φ()=fpi()()とおくことによりπ+中間子S行列

要素の座標表示の最低次近似の計算式得ました。
 

そして,これから行列要素の運動量表示最低次の

f≠pfにおける表式:

Spfpi(i)(2π)-3(4ωfωi)-1/2(f+pi)μμ() 

を得たのでした。
 

この際には,^()i(μμ()+Aμ()μ)

と見なし,eの2次の項である -e2μ()μ()

無視したため,^頂点に対する因子;(f+pi)μ

得られたわけです。
 

 したがって,最低次では不要な-e2μ()μ()

対するFeynmanのルールは不明でしたが,これを得るために

荷電中間子のCompton散乱を考察します。
 

Coulomb 散乱では,μ()は単に外場のポテンシャル:であり, 

特に静電Coulombポテンシャル: 

μ()=gμ0{Ze/(4πε0)}/|| 

=∫d4(2π)-4μ()exp(iqx); 

μ(){Ze/(ε0||2)}2πδ(ωf-ωi)μ0

でしたが,
 

Compton散乱では中間子と光子が衝突するため,