109. 物性物理

2019年8月 1日 (木)

再掲記事'5):ボーズ・アインシュタイン凝縮 関連

「電気伝導まとめ」では,本文内で出現した説明抜き

の専門用語で,後で詳述すると約束していたモノの

1つの「ボーズ・アインシュタイン凝縮」についても

本ブログの2006年の過去記事にあったので、それを

再掲載し,さらに追加の注釈を加えて説明とします。

 

残るは,「ボルツマンの(輸送)方程式」と緩和時間の

関係だけですね。

 

※以下は2006年10/11にアップした過去記事です。

表題 「ボーズ・アインシュタイン凝縮とゼータ関数」

 今日はボーズ・アインシュタイン凝縮

(Bose-Einstein condensation)

その評価式で現われるゼータ関数:ζとの少しの関係などに

ついて述べてみます。

非常に多数個=N個のスピンが整数のボーズ (Bose)粒子

(Boson)のみから成る系が絶対温度Tの状態rに存在する粒子

の個数:nは,量子統計力学によれば,ボーズ・アインシュタイン統計

にしたがって,=1/[exp(ε-μ)/(kT)-1] という分布式で

与えられます。

系の最低のエネルギー状態(基底状態)は,ε=0 準位ですから,

が負になるという有り得ない状況にならないためには,分母の

exp{-μ/(kT)}は.常に1より小さくはならない。という必要性

から,ボーズ粒子の場合には化学ポテンシャル:μは,正(非負)で

ある必要があります

※(追注1):ちなみにスピンが半奇数のフェルミ(Fermi)粒子

(Fermion),例えば,スピンが1/2の電子のようなDirac粒子

では,「同じ1つの状態には1個のFermi粒子だけしか入ることが

許されない。」という「パウリ(Pauli)の排他原理」(禁制原理)が

あり,状態:r にあるFermi粒子の個数は n=0,または,n=1の

いずれかです。

統計分布もスピンが整数:0,1,2..のボーズ・アインシュタイン統計

とは異なり,フェルミ・ディラック(Fermi-Dirac)統計:

=1/[exp(ε-μ)/(kT)+1] に従います。

 

ただし,実際にはスピン1/2の電子には,1つのエネルギー・運動量

固有状態には,スピン成分がアップ(+1/2)とダウン(1/2)の2つの

異なる状態(2自由度)があるため,電子2個まで入れます。

(注1終わり※)

 さて,多数のボーズ粒子の系に戻りますが,形の状態の

エネルギー準位密度をg(ε).つまり,εとε+dεの間の

エネルギー準位区間にある状態数がg(ε)dεであるとすれば,

これの化学ポテンシャルμは,総個数がNの条件:

0[{exp(ε-μ)/(kT)-1}-1g(ε)dε=Nから

決まることになります。

そして系の全体積をV,プランク(Planck定数) をhとすると,座標で

積分した後の半径がpの運動量空間のp~p+Δpの球殻の

位相体積要素は4πVp2dpです。

量子統計力学の意味では,位置座標qも含めた位相体積:

ΔqxΔqyΔqzΔpxΔpyΔpz=h3 当りに1つの割合で状態

が存在するため,状態密度は4π(V/h3)p2dpで

与えられますすが,自由粒子で考えるとき,

ε=p2/(2m),or p2=2mε なので.

2dp=(2mε)1/2mdε ですから,結局,

g(ε)=2πV(2m/h2)3/2ε1/2 を得ます。

それ故,(2πV/h3)(2mkT)3/2によって,定数:αが決定される

ことになります。

ただし,α=-μ/(kT)と置きました。

これは,μ≦0なのでα≧ 0 です。

ここで,1/{exp(x+α)-1}

=exp{-(x+α)}/[1-exp{-(x+α)}]

=∑n=1exp{-n(x+α)} なる展開公式

利用して積分を実行すると,

0dx[x1/2/{exp(x+α)-1}]=(π1/2/2)F[exp(-α)]

=(π1/2/2)∑(e-nα/n3/2)となります。

ただし,Fは,F(x)=∑(x-n/n3/2)で定義される関数です。

何故なら,∫x1/2exp(-nx)dx=-(d/dn)(π/n) 1/2

1/2/2)(1/n3/2) となるからです。

そして,F(e)が最大になるのは,明らかにα=0のときです。

すなわちF[1]=∑(1/n3/2)=∑(1/n3/2)です。

ここで,定義によって∑(1/n3/2)がゼータ関数のお値:ζ(3/2)

に一致することを用いました。 

そこで,先のαを決めるための条件式は

(2πmkT/h2)3/2F[exp(-α)]=(N/V) となります。

 そこで温度Tを下げていくとF[exp(-α)]が増加するしかない

ので,αは正の値からゼロに近づていくわけです。

しかし,これがゼロを超えて負になることはできないので,

その極限でのα=0のときの温度Tを臨界温度と呼んでT

書くと.(N/V)=(2πmk/h2)3/2ζ(3/2)

≒2.612(2πmkc/h2)3/2 なる関係式が得られます。

それ故,このTcよりも温度Tが低くなれば,もはや,

(2πmkT/h2)3/2F(e)=(N/V)からは物理的に意味の

ある化学ポテンシャルは見つからないことになりますね。

しかし,実は化学ポテンシャルμが負の値からゼロにをn0

すると,0=1/[exp{-μ/(kT)}-1]であり.これは無限大

になるといえます。

これは,実は粒子の総数がΣn=Nであるという式の総和∑を,

積分∫dεに置換したため,準位密度を与える

(ε)2πV(2/2)3/2ε1/2ε=0 ではゼロとなり,正味では

発散項であるはずの,ε~0の

(ε)[exp{ε/(kT)}-1] ~ (const)ε-1/2が,積分の結果

として消えてしまうので,現実には限りなく大きくなるゼロ状態の

粒子数の項が切り捨てられたためであろう,と考えられます。

そこで,ゼロ状態の項だけを∑nから抜き出し,残りを積分で

置き換えるという操作をやれば,結局,

n0+(2πmkT/h2)3/2F[exp(-α)]=(N/V)=Nとなり,

これが,αを決める真の式であると考えます。

ところで,n0 が大きくなって無祖できず,Nと比較できるオーダーに

なるのは,0=1/(expα-1) ~ Nのときですから,これは

α ~ |/Nのときです。

このときF[exp(-α)]~F[1]=ζ(3/2)≒2.612という

関係式から,n0 +V(2πmkT/h2)3/2F[exp(-α)] 

=Nは,0=N[1-(T/T)3/2] となります。

 

例えば「ボーズ気体」などでは,臨界温度Tc から

下では多くの粒子が,なだれ的にゼロ状態へと落ち込んで

ゆくことになりますが」、これを

「理想ボーズ・アインシュタイン凝縮」と呼びます。

例えば,液体ヘリウム4Heでは,この理論での計算値

のTcは2.13Kですが,これは実際の「超流動」や

「超伝導」が起きる転移温度:2.19Kと,とても近い値です。

実際,超流動や超伝導の主因は

ボーズ・アインシュタイン凝縮である,

とされています。

 

先にも追記したように電子のようなスピン半奇数の

フェルミ粒子では粒子数分布はフェルミ・ディラック分布

に従うため,こうした凝縮は起きないはずですが,実際の物質

中では,陽イオンの格子振動などによるフォノンの交換に

よって電子同士に引力が働くため,くーぱー対という電子の

対が構成され.これが対粒子としてボーズ粒子となるので

低温でボーズ・アインシュタイン凝縮を起こして,そのため

電気的には超伝導が起こる主因になるとされています。   

これは有名な「BCS理論」の核心ですね。

(参考文献):中村伝 著「統計力学」(岩波全書)

(以上,再掲記事終わり※)

※(追注2):極低温では液体ヘリウム4Heが,まるで生きて

てるかのように,容器の壁を上るなどの不思議な

超流動現象がありますが,ゼロ状態の凝縮による大量粒子

は巨視的には,粘性がゼロの流体となり,Landauにより提議

された2流体モデルでは十普通の粘性がある常流体部分と

粘性ゼロの超流体部分が独立に流体運動方程式に従って

運動する結果,そうした奇妙なことが起こることも

説明可能らしいです。

また,極低温でフォノン引力によって電子のクーパー

対が形勢され.この粒子対はボーズ粒子なので,結果,

低温凝縮を起こし巨視的には非回転的流体,つまり,粘性

ゼロの超流動状態の流体=超流体になって,電気的には

抵抗がゼロの超伝導体になるということが主のBCS理論

があると,先に述べましたが、南部陽一論先生はこの理論

だけでは満足せず,BCS理論はゲージ(位相)変換不変で

なくて変換で電流が生じることに着目しました。

元々はゲージ対称性の存在していた系が自発的に破れ、

その結果,出現するエネルギーゼロの

「南部-Goldstoneモード」が電子のクーパー対の状態

である,というような南部理論を提議されたということ

です。

 南部さんは最近,亡くなられましたが,この物性理論での

対称性の自発的破れの概念を,素粒子論にも適用して

大きな業績を挙げられ。後にノーベル賞を受けたこと

は記憶に新しいですね。

対称性の自発的破れ自体は.物性では,よくある現象で,

 例えば,低温では強い磁性を示す物体の,磁気モーメントの

主因となる電子のスピンが,常温では全く勝手な方向の

(無秩序な)状態=(エントロピー最大の平衡状態)にある

結果,空間的に等方的という対称性を持つ故に,磁性は

ゼロ(または反磁性)ですが,その系を次第に低温に冷やして

いくと,ある温度=臨界温度で急にスピンが,ある特殊な

方向に揃う(対称でなくなる),という「対称性の自発的破れ」

が生じて強い磁性を示すようになるという,相転移の

メカニズムとして物性理論では,比較的よく知られて 

いた性質らしいですね。

なお,これらの話の参考文献はネットも含めいろいろ,

寄せ集めです。(注2終わり※)

※PS2:2006年の昔,office2000かXPで作った

古いバージョンのワード文章を少し修正したモノを

上げたとはいえ,あまりにも改行化け,順序デタラメ

がひどく読めるようにするのに苦労しました。

イヤ,まだダメかな?

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2019年7月26日 (金)

電気伝導まとめ(2)

電気伝導関係の再掲載過去記事の続きです。

 

すぐ前の「電気伝導まとめ(1)」では,2006年6月

中旬の電気伝導の記事を再掲載すると書きました。

しかし.最初の2つの記事で長くなり,もう1つは

単独でもかなり長いので分割しました。

 

今回は第3弾で,衝突の正体という名目でバンド理論

とフォノンを紹介する記事です。

 

※以下,再掲記事本文です。

※(2006年6/19アップ,ただし後半少し修正)

「電気伝導(つづき2)(衝突の正体)」

@nify物理フォーラムで私と一緒にサブシスを

やっている高校の先生で友人と思っている,かんねん

さんから,次のような質問を受けました。

 

「電子が金属の原子から抵抗を受ける(=衝突する)

ことが抵抗の正体である。と本には書いてありますが

この陽イオンと電子の衝突って,どんな感じなので

しょうか?というのは,衝突による斥力的イメージ

ではなく,異符号ゆえの引力的な力を想像してしまい

ます。これをどう理解したらいいのでしょうか?」

という質問でしたが,

それに対する私の回答があまりにも不親切だったので

そのフォーラムでの回答の内容を大幅に修正したもの

を以下に記述します。

 

まず,量子論で電場などの外力がない場合に,固体の

中の電子は,自由電子近似をするとしても.実は弱い

イオンの引力によって,体積Vの中に閉じ込められて

おり,Vが有限であるために1つの電子の運動量

(速度)は,どんな値でも取れるわけではなく,ある

離散的な値しか取れません。

 

そして,これら1つ1つの準位に「パウリ(Pauli)

の(排他)原理」と,スピン自由度によって下から順に

2つずつ電子を詰めてゆき,丁度,その固体中の電子

が全て収まったときの,最大のエネルギーをフェルミ

(Ferm)エネルギーと呼び,この最高準位をFermi準位

と呼びます。

 

そうして,この電子準位の全体を運動量ベクトル,

または,それをPlank定数:hで割った波数ベクトル

の集まった3次元空間で考えると1つの球になります

が,これをFermi球と呼びます。

 

そして,球ですから球対称であるが故に電場のない

状態では平均の運動量はゼロです。

つまり,電場がなければ自由電子の平均速度もゼロ

なので電流もゼロである。ということができます。

 

しかしながら,固体の中の電子を自由電子で近似する

のには無理があり,格子構造を持った束縛電子で遮蔽

された周期的な陽イオンの引力ポテンシャルを受ける

電子波であることを考慮する必要があります。

 

周期的引力ポテンシャルの摂動を受けるため,電子

が取るエネルギー準位は,その値を取ることができる

「許容帯」と呼ばれるエネルギ-のバンド領域と,

その値を取ることは不可能な「禁止帯」と呼ばれる

小さなギャップ領域の繰り返し,という形態を取る

ことになります。

 

そうした自由電子に代わる固体の結晶格子中の電子

を,それを発見した人の名を取って「ブロッホ(Bloch)

電子」と呼び.その理論を「バンド理論」といいます

 

バンド理論では,固体中のBloch電子を下の準位から

順にFermi準位に達するまで,幾つかの許容帯の中に

詰めてゆきます。

 

そうすると1つのケースとしては,幾つかのエネルギー

バンドは完全に占有され,他の全ては空になるような形

になることがあります。

 

このとき,許容帯のうち全てが電子で占有されたバンド

を「充満帯」または「価電子帯」と呼びます。そして,

この全充満帯の頂点と,電子が全く空の非占有許容バンド

までの禁止帯領域の幅をエネルギーの「バンドギャップ」

と呼びます。

 

Fermi準位付近の電子のエネルギー値は絶対温度Tに

ボルツマン(Boltzmann)係数kBを掛けた値:(kT)程度

なので,このギャップが(kT)に比べて大きい場合には,

すぐ上の空の許容帯である,占有可能な空きのある許容帯

(=伝導帯)までジャンプすることはできませんから,この

固体は「絶縁体」となります。

 

一方,バンドギャップが小さい場合,ある温度では充満帯

から空の許容帯へとジャンプして,その電子は伝導可能と

なり,他方,充満帯の方ではジャンプして欠けた電子の穴が

「正孔」という正電荷のキャリアになる,などのために,

この固体は「(真性)半導体」となります。

 

もう1つのケースは,Fermi準位が許容帯の途中になる場合

で,このときは,その許容帯の中の全部の準位が占有されて

いるわけではなく,部分的に占有されていることになります。

そこで,その中では,その準位付近の電子は自由に動けるので

いわゆる「電気伝導」が可能になります。

 

このとき,部分的に占有されている許容帯を伝導体と呼びます。

そして,こうしたケースの固体を「導体」と呼びます。

金属はこれに属しています。

 

バンド理論によると,電子の占有を許された準位の数は,どの

許容帯でも同一で,(固体中の格子の総数)=(構成原子の全個数)

をNとすると,スピンの2つの自由度のため,結局,1許容帯当り

で占有可能な準位数は2Nという偶数になります。

 

一方,1個の原子当りの価電子の個数が偶数の元素では,それ

を2nとすると,価電子の数は全体で2nNとなり,この総電子数

を許容帯の占有可能な準位数2Nで割り算すると商がnとなって

余りがゼロですから,許容帯には電子が充満し充満帯となり,空き

準位がないため身動きできません。

 

しかも,その上には禁止帯というエネルギーギャップがあるので,

絶縁体になるか,半導体になるかのいずれかで,これらの固体は

非金属です。

 

しかし,奇数の価電子を持つ元素の場合,これは一般に金属です

が.この場合は総電子数を2Nで割ったとき余りがあり一番上

のエネルギーではバンドが充満しないで,ほぼ半数の空き準位

がある,という部分的占有状態の伝導帯となり,自由に動ける

Bloch伝導電子となって金属導体になるというわけです。

 

このとき,エネルギー領域のバンド化による自由電子

からBloch電子への変化は,一見したところ,電子の質量

がmから有効質量と呼ばれるmに変わる効果だけで表現

可能で,実は周期的クーロン(Coulomb)ポテンシャルが全く

規則的に並んでいて,しかも止まっているだけという状況

ですが,これでは散乱や衝突などは全く起きない。

と考えられます。

 

つまり,それだけでは依然として緩和時間が∞のまま

なので,素朴な古典論で考えたような電子がイオン芯と

衝突して散乱されるという描像は量子論的には誤り

ということです。

 

すなわち,あるエネルギーを持ったBloch電子というのは

自由電子とは異なり運動量固有状態ではありませんから

空間的には一定速度で運動しているわけではありません

が,とにかく定常状態であるということが重要です。

 

それ故,古典的に意味のある運動量や速度の「期待値」

は時間的に一定である,というわけです。つまり,自由電子

と同じように,古典的描像ではBloch電子も一定速度で運動

しているわけですから,古典的Drudeの理論のように,イオン

または,その引力ポテンシャルで散乱されるわけではない,

ということになるのです。

 

そして電子質量をmとするとき,自由電子ではエネルギー

がE=p2/(2m)なので,これを運動量pで2回偏微分すると

(1/m)になりますが,Bloch電子でも(本当は自由粒子では

ないですが),そのエネルギーを運動量pで2回偏微分した

ものを(1/m)として mを有効質量と定義します。

 

すると,電場Eがあるときの運動方程式は散乱がない

なら,d(m)/dt=eとなり,有効質量m

「電子の慣性質量」と同じ役割を果たすという意味が

あります。

 

したがって,例えば電気伝導度(抵抗率の逆数)が

自由電子近似の古典的理論値:σ=ne2τ/mから

σ=ne2τ/mに変更を受ける意味があります。

 

そして電場Eがかかると,Fermi球の原点がずれて

波数について球対称でなくなるので,電流がゼロで

なくなりますが,それは電子の電荷をeとするとΔt

の後に運動量としてeΔtだけずれる,ということ

です。

 

eは負ですからと反対向きにずれるのですが,それ

だけでは時間tと共に電子の速度は増加しますから

一様速度にはならず,次第に加速されてゆきます。

やはり,平衡に達して一様速度になるためには何らか

の衝突,散乱が必要です。

 

衝突が起こるというのは,量子論では電子は波であり

電子波束が一方向に進行している状態ではなくなって

その方向に影響をこうむることを意味します。

 

これは

「並んでいる陽イオンが熱などにより振動する。

つまり,格子振動する。(逆に振動こそが熱かも。。)」,

あるいは「格子欠陥がある=不純物効果がある。」

というような不規則な変化がある場合です。

これがないとBloch電子が散乱されて一様速度の

方向が変わるようなことはないはずです。

 

量子論的には,電子波が主に「陽イオンの

格子振動=フォノン(phonon;音子)と衝突する

のが散乱の原因でとされます。

結局,結晶格子にある陽イオンが単に並んで止まって

いるだけでなく時間的に変動することによりイオン

の位置が規則的配列からずれ,その振動により電子

がその進路を曲げられると見るわけです。

 

ただし,その効果が質問にあった,引力のためで

あるか?それとも斥力のためであるか?

については私にも確かなことは言えません。

 

ただ,電気的に中性のフォトン(光子;photon)

と電子が衝突するCompton効果のアナロジーで

 

電磁場を調和振動子の集まりとして量子化した

フォトン(光子)と同じように,固体内の格子振動

と呼ばれる陽イオンの振動(波動)を量子化した

フォノン(音子)が,電子と衝突する散乱という

くらいの参考書で見たか,誰かに教わったかの

漠然と認識があるだけです。

(※もっとも電子とフォノンの衝突はCompton

散乱のような弾性散乱ではなくエネルギー・

運動量が保存されない非弾性散乱のはずですが。。)

 

例えば極低温で電子と電子が引き付けあって

クーパー(Cooper)対という対を作り,結果,

電子対共鳴としてスピンが整数のBose粒子となり

「Bose-Einstein凝縮」を起こして超伝導体を構成

するという「BCS理論」という理論がありますが,

元々,電子間には本来,電気的なCoulomb斥力が働く

はずですから引力で対を作るというのは不思議です:

 

一方,現在では電気力:静電Coulomb相互作用は

量子論的には荷電粒子間で仮想フォトン(スカラー

光子)を交換する結果で生じる.というのが

量子電磁力学の理論からの帰結ですが,

これのアナロジーで固体の結晶格子内の電子間の

引力,斥力はフォノンの交換により生じるとされて

います。

 

特に,固体内で低温ではフォトン交換による電気的

なCoulomb斥力を,フォノン交換による引力が上回る

ようになる結果,Cooper対という電子対ができると

考えられています。

 

言いかえると,Coulombポテンシャルが格子の

フォノンによって遮蔽されて斥力から引力へと

変わったという描像です。

 

このようにフォノン(格子振動波)をフォトン(電磁波)

のように粒子性を持った量子として吸収,放出したり

散乱されたりするもとして扱うのです。

 

 こうして,とにかく電子の衝突,散乱があれば古典論

のDrude理論のイオン芯との衝突でなくても有限な

緩和時間τを定義することができますね。

 

実際には,この緩和時間は,運動量や温度の関数であり,

詳しくは「Boltzmannの輸送方程式」という偏微分

方程式の1つの項で,緩和時間という量を挿入,定義

することに従って決まります。

 

私も,まだアシュクロフト・マーミン著(吉岡書店)

「固体物理学の基礎」の全4巻のうちの2巻目の途中

まで読んだところで中断していて,把握できてない知見

が多々あり,今はこの程度の説明が限界です。

(※過去記事(3)再掲載終わり)

 

なお,本文に,出てきた「ボルツマン(輸送)方程式」

と緩和時間の関係や「ボーズ・アインシュタイン凝縮」

については,さらに過去記事のチェックも含め詳細説明

を追加する予定です。

 

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電気伝導まとめ(2)

電気伝導関係の再掲載過去記事の続きです。

 

すぐ前の「電気伝導まとめ(1)」では,2006年6月

中旬の電気伝導の記事を再掲載すると書きました。

しかし.最初の2つの記事で長くなり,もう1つは

単独でもかなり長いので分割しました。

 

今回は第3弾で,衝突の正体という名目でバンド理論

とフォノンを紹介する記事です。

 

※以下,再掲記事本文です。

※(2006年6/19アップ,ただし後半少し修正)

「電気伝導(つづき2)(衝突の正体)」

@nify物理フォーラムで私と一緒にサブシスを

やっている高校の先生で友人と思っている,かんねん

さんから,次のような質問を受けました。

 

「電子が金属の原子から抵抗を受ける(=衝突する)

ことが抵抗の正体である。と本には書いてありますが

この陽イオンと電子の衝突って,どんな感じなので

しょうか?というのは,衝突による斥力的イメージ

ではなく,異符号ゆえの引力的な力を想像してしまい

ます。これをどう理解したらいいのでしょうか?」

という質問でしたが,

それに対する私の回答があまりにも不親切だったので

そのフォーラムでの回答の内容を大幅に修正したもの

を以下に記述します。

 

まず,量子論で電場などの外力がない場合に,固体の

中の電子は,自由電子近似をするとしても.実は弱い

イオンの引力によって,体積Vの中に閉じ込められて

おり,Vが有限であるために1つの電子の運動量

(速度)は,どんな値でも取れるわけではなく,ある

離散的な値しか取れません。

 

そして,これら1つ1つの準位に「パウリ(Pauli)

の(排他)原理」と,スピン自由度によって下から順に

2つずつ電子を詰めてゆき,丁度,その固体中の電子

が全て収まったときの,最大のエネルギーをフェルミ

(Ferm)エネルギーと呼び,この最高準位をFermi準位

と呼びます。

 

そうして,この電子準位の全体を運動量ベクトル,

または,それをPlank定数:hで割った波数ベクトル

の集まった3次元空間で考えると1つの球になります

が,これをFermi球と呼びます。

 

そして,球ですから球対称であるが故に電場のない

状態では平均の運動量はゼロです。

つまり,電場がなければ自由電子の平均速度もゼロ

なので電流もゼロである。ということができます。

 

しかしながら,固体の中の電子を自由電子で近似する

のには無理があり,格子構造を持った束縛電子で遮蔽

された周期的な陽イオンの引力ポテンシャルを受ける

電子波であることを考慮する必要があります。

 

周期的引力ポテンシャルの摂動を受けるため,電子

が取るエネルギー準位は,その値を取ることができる

「許容帯」と呼ばれるエネルギ-のバンド領域と,

その値を取ることは不可能な「禁止帯」と呼ばれる

小さなギャップ領域の繰り返し,という形態を取る

ことになります。

 

そうした自由電子に代わる固体の結晶格子中の電子

を,それを発見した人の名を取って「ブロッホ(Bloch)

電子」と呼び.その理論を「バンド理論」といいます

 

バンド理論では,固体中のBloch電子を下の準位から

順にFermi準位に達するまで,幾つかの許容帯の中に

詰めてゆきます。

 

そうすると1つのケースとしては,幾つかのエネルギー

バンドは完全に占有され,他の全ては空になるような形

になることがあります。

 

このとき,許容帯のうち全てが電子で占有されたバンド

を「充満帯」または「価電子帯」と呼びます。そして,

この全充満帯の頂点と,電子が全く空の非占有許容バンド

までの禁止帯領域の幅をエネルギーの「バンドギャップ」

と呼びます。

 

Fermi準位付近の電子のエネルギー値は絶対温度Tに

ボルツマン(Boltzmann)係数kBを掛けた値:(kT)程度

なので,このギャップが(kT)に比べて大きい場合には,

すぐ上の空の許容帯である,占有可能な空きのある許容帯

(=伝導帯)までジャンプすることはできませんから,この

固体は「絶縁体」となります。

 

一方,バンドギャップが小さい場合,ある温度では充満帯

から空の許容帯へとジャンプして,その電子は伝導可能と

なり,他方,充満帯の方ではジャンプして欠けた電子の穴が

「正孔」という正電荷のキャリアになる,などのために,

この固体は「(真性)半導体」となります。

 

もう1つのケースは,Fermi準位が許容帯の途中になる場合

で,このときは,その許容帯の中の全部の準位が占有されて

いるわけではなく,部分的に占有されていることになります。

そこで,その中では,その準位付近の電子は自由に動けるので

いわゆる「電気伝導」が可能になります。

 

このとき,部分的に占有されている許容帯を伝導体と呼びます。

そして,こうしたケースの固体を「導体」と呼びます。

金属はこれに属しています。

 

バンド理論によると,電子の占有を許された準位の数は,どの

許容帯でも同一で,(固体中の格子の総数)=(構成原子の全個数)

をNとすると,スピンの2つの自由度のため,結局,1許容帯当り

で占有可能な準位数は2Nという偶数になります。

 

一方,1個の原子当りの価電子の個数が偶数の元素では,それ

を2nとすると,価電子の数は全体で2nNとなり,この総電子数

を許容帯の占有可能な準位数2Nで割り算すると商がnとなって

余りがゼロですから,許容帯には電子が充満し充満帯となり,空き

準位がないため身動きできません。

 

しかも,その上には禁止帯というエネルギーギャップがあるので,

絶縁体になるか,半導体になるかのいずれかで,これらの固体は

非金属です。

 

しかし,奇数の価電子を持つ元素の場合,これは一般に金属です

が.この場合は総電子数を2Nで割ったとき余りがあり一番上

のエネルギーではバンドが充満しないで,ほぼ半数の空き準位

がある,という部分的占有状態の伝導帯となり,自由に動ける

Bloch伝導電子となって金属導体になるというわけです。

 

このとき,エネルギー領域のバンド化による自由電子

からBloch電子への変化は,一見したところ,電子の質量

がmから有効質量と呼ばれるmに変わる効果だけで表現

可能で,実は周期的クーロン(Coulomb)ポテンシャルが全く

規則的に並んでいて,しかも止まっているだけという状況

ですが,これでは散乱や衝突などは全く起きない。

と考えられます。

 

つまり,それだけでは依然として緩和時間が∞のまま

なので,素朴な古典論で考えたような電子がイオン芯と

衝突して散乱されるという描像は量子論的には誤り

ということです。

 

すなわち,あるエネルギーを持ったBloch電子というのは

自由電子とは異なり運動量固有状態ではありませんから

空間的には一定速度で運動しているわけではありません

が,とにかく定常状態であるということが重要です。

 

それ故,古典的に意味のある運動量や速度の「期待値」

は時間的に一定である,というわけです。つまり,自由電子

と同じように,古典的描像ではBloch電子も一定速度で運動

しているわけですから,古典的Drudeの理論のように,イオン

または,その引力ポテンシャルで散乱されるわけではない,

ということになるのです。

 

そして電子質量をmとするとき,自由電子ではエネルギー

がE=p2/(2m)なので,これを運動量pで2回偏微分すると

(1/m)になりますが,Bloch電子でも(本当は自由粒子では

ないですが),そのエネルギーを運動量pで2回偏微分した

ものを(1/m)として mを有効質量と定義します。

 

すると,電場Eがあるときの運動方程式は散乱がない

なら,d(m)/dt=eとなり,有効質量m

「電子の慣性質量」と同じ役割を果たすという意味が

あります。

 

したがって,例えば電気伝導度(抵抗率の逆数)が

自由電子近似の古典的理論値:σ=ne2τ/mから

σ=ne2τ/mに変更を受ける意味があります。

 

そして電場Eがかかると,Fermi球の原点がずれて

波数について球対称でなくなるので,電流がゼロで

なくなりますが,それは電子の電荷をeとするとΔt

の後に運動量としてeΔtだけずれる,ということ

です。

 

eは負ですからと反対向きにずれるのですが,それ

だけでは時間tと共に電子の速度は増加しますから

一様速度にはならず,次第に加速されてゆきます。

やはり,平衡に達して一様速度になるためには何らか

の衝突,散乱が必要です。

 

衝突が起こるというのは,量子論では電子は波であり

電子波束が一方向に進行している状態ではなくなって

その方向に影響をこうむることを意味します。

 

これは

「並んでいる陽イオンが熱などにより振動する。

つまり,格子振動する。(逆に振動こそが熱かも。。)」,

あるいは「格子欠陥がある=不純物効果がある。」

というような不規則な変化がある場合です。

これがないとBloch電子が散乱されて一様速度の

方向が変わるようなことはないはずです。

 

量子論的には,電子波が主に「陽イオンの

格子振動=フォノン(phonon;音子)と衝突する

のが散乱の原因でとされます。

結局,結晶格子にある陽イオンが単に並んで止まって

いるだけでなく時間的に変動することによりイオン

の位置が規則的配列からずれ,その振動により電子

がその進路を曲げられると見るわけです。

 

ただし,その効果が質問にあった,引力のためで

あるか?それとも斥力のためであるか?

については私にも確かなことは言えません。

 

ただ,電気的に中性のフォトン(光子;photon)

と電子が衝突するCompton効果のアナロジーで

 

電磁場を調和振動子の集まりとして量子化した

フォトン(光子)と同じように,固体内の格子振動

と呼ばれる陽イオンの振動(波動)を量子化した

フォノン(音子)が,電子と衝突する散乱という

くらいの参考書で見たか,誰かに教わったかの

漠然と認識があるだけです。

(※もっとも電子とフォノンの衝突はCompton

散乱のような弾性散乱ではなくエネルギー・

運動量が保存されない非弾性散乱のはずですが。。)

 

例えば極低温で電子と電子が引き付けあって

クーパー(Cooper=対という対を作り,結果,

電子対共鳴としてスピンが整数のBose粒子となり

「Bose-Einstein凝縮」を起こして超伝導体を構成

するという「BCS理論」という理論がありますが,

元々,電子間にはdrん来て器なCoulomb斥力が働く

はずですから引力で対を作るというのは不思議です:

 

一方,現在では電気力:静電Coulomb相互作用は

量子論的には荷電粒子間で仮想フォトン(スカラー

光子)を交換する結果で生じる.というのが

量子電磁力学の理論からの帰結ですが,

これのアナロジーで固体の結晶格子内の電子間の

引力,斥力はフォノンの交換により生じるとされて

います。

 

特に,固体内で低温ではフォトン交換による電気的

なCoulomb斥力を,フォノン交換による引力が上回る

ようになる結果,Cooper対という電子対ができると

考えられています。

 

言いかえると,Coulombポテンシャルが格子の

フォノンによって遮蔽されて斥力から引力へと

変わったという描像です。

 

このようにフォノン(格子振動波)をフォトン(電磁波)

のように粒子性を持った量子として吸収,放出したり

散乱されたりするもとして扱うのです。

 

 こうして,とにかく電子の衝突,散乱があれば古典論

のDrude理論のイオン芯との衝突でなくても有限な

緩和時間τを定義することができますね。

 

実際には,この緩和時間は,運動量や温度の関数であり,

詳しくは「Boltzmannの輸送方程式」という偏微分

方程式の1つの項で,緩和時間という量を挿入,定義

することに従って決まります。

 

私も,まだアシュクロフト・マーミン著(吉岡書店)

「固体物理学の基礎」の全4巻のうちの2巻目の途中

まで読んだところで中断していて,把握できてない知見

が多々あり,今はこの程度の説明が限界です。

(※過去記事(3)再掲載終わり)

 

なお,本文に,出てきた「ボルツマン(輸送)方程式」

と緩和時間の関係や「ボーズ・アインシュタイン凝縮」

については,さらに過去記事のチェックも含め詳細説明

を追加する予定です。

 

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2019年7月25日 (木)

電気伝導まとめ(1)

前回記事では素朴な疑問としてエアコン,冷蔵庫など

の仕組みに関わる話をしました。

 

今回,最初は,世間ではエジソンが創ったと思われて

いるかもしれないが,実際には最初に発明したのはスワン

という人物でエジソンはフィラメントとして適切な物質

の竹などを用いて実用化しただけ,という電灯・白熱電球

から始めて蛍光管からLED(発光ダイオード)まで,電流

によって発生する光(可視周波数帯の電磁波)の原理など

を考察して記事にする予定でした。

(※上記文章は後の記事で再び前書きに使用する予定)

 

しかし,そのために引用できる本ブログの過去記事を

検索してチェックしているうち,電気伝導に関する記事だけ

でも,自分でも,読み返すに堪えるものがかなりあると感じ

たので,まず,2006年6月中旬に連続してアップした記事を

まとめて,ほぼ丸写し,少し修正で再掲載します。

,

まずは.2006年6/15の「電気伝導(オームの法則)」,

6/17の記事:「電気伝導(つづき1)(ジュール熱)」,

そして6/19の記事:「電気伝導(つづき2)衝突の正体)」

(内容はバンド理論とフォノン)を再掲載します。

 

※2006年6/15「電気伝導(オームの法則)」

@niftyの物理フォーラム,と化学の広場の専用会議室:

「中高生の理科質問箱」で電気伝導について泥試合的

な論争が続いているのを傍観していますが,そもそも

初学的知識の子供に解説するだけなら,以下の程度の

説明で十分かな。。と思います。

 

まず,電流の定義ですが,

「電流とは電荷を運ぶキャリア(Career)という実体

(電子とか正孔とかイオンとか)によらず,単位時間

に断面積を通過する電荷量のこと」です。,

そして,通常,その単位はA(アンペア)=C/sec

(クーロン/秒)で与えられます。

 

普通の家庭で流れている電流は数アンペア程度で,

このとき,電荷たちの平均の移動速さは数mm/s

程度に過ぎません。

 

それなのに,遠くでスイッチを入れても,すぐ近くで

電灯が点くのは要するにトコロテン式で,遠くの端で

電荷が押されると次から次へと”押しくらまんじゅう”

のように押されて,近くでもすぐに遠くの端と同じ速さ

で電荷が移動するようになるからですね。

 

電池などの起電力を持ったポンプを閉じた回路につなぐ

と,金属でできた導線の中にも電場が生じます。電場

があると,大きさeの電荷があると.力:=eを受ける

ことになります。

 

それ故,質量がmの電荷が速度vで運動するとき,その

運動はそれが電場Eの他に何の力も受けていなければ,

Newtonの運動方程式:d(m)/dt=eを満足する

ことになるはずです。

 

ところが,普通,金属の内部を移動する電荷というのは,

金属原子からの束縛をはずれたと見なしてよい自由電子

と想定されます。

 

電子の電荷eは負の数で,金属の中では自由電子と

いう名前は付いていますが,実はそれほど自由というわけ

ではなく.(後で詳述する予定ですが)金属原子の格子振動

(量子論的にはフォノンと呼ばれるもの)や,不純物により

散乱を受けます。

 

素朴な古典論のドゥルーデ(Drude)のモデルでは。この

散乱はイオン芯(原子から自由電子を差し引いた残り)との

衝突を意味します。もちろん,電子同士の衝突などは無視

できます。

,

これら散乱を受ける電子の平均の衝突までの時間

=(緩和時間)をτ(sec)と書くと,これは1個の電子が

単位時間(1秒間)に衝突する確率が1/τであることを

意味します。

 

 1個の電子が散乱を受けると,それはどの方向に散乱を

受ける確率もほぼ同じなので,ある向きに進んでいた1個

の電子に着目すると,その向きに走る電子に関しては急に

消えたのと同じになります。

 

故に,現在の時刻をtとして時刻(t+Δt)に消えずに

残っている確率は(1-Δt/τ)です。そこで電子の速度を

(t)とすると先のNewtonの運動法則は次のように変更

されなければなりません。

つまり, m(t+Δt)=(1-Δt/τ)×

{m(t)+eΔt+O(Δt2)} です。

 

そして,この両辺をΔtで割ってΔt→0の極限を取る

と.上式右辺のΔtの2次以上の項は消えるために.

d(m)/dt=e-m/τと書いてよい,ことに

なりますね。

 

そして,十分長い時間の後には(といってもすぐですが)

平衡に達すると,左辺の加速度項はゼロとなって,速度は

一定になる。としてよいはずです。

 

このときの多くの電子の平均の速度も,やはりと書く

ことにします。そうすると,0=e-m

⇒e=m/τより=eEτ/mです。

 

単位体積当りの自由電子の個数をnとすると,電流密度

(単位時間当りに単位面積を通過する電荷量):は,

=neですから,結局,=(ne2τ/m)となり,

電流密度は電場に比例し,その向きも電場と同じ,

ということになります。

 

この関係式:=σ;ただしσ=ne2τ/mは電気伝導度

という形でも既にオームの法則(Ohm‘s law)と呼びますが,

より身近な形に直しておきましょう。

 

電荷が流れている場所の金属線(抵抗)の断面積をS,長さを

Lとします。そして,正電荷qが一様電場Eに抵抗して距離L

だけ,反対向きに移動するのに要する仕事=位置エネルギー

はqELとなりますが,これをe=qLと書いて

のことは電圧,または電位差と呼びます、

※この電圧の単位は,V(ボルト)=J/C(ジュール/クーロン)

です。

 

電流は電流密度×断面積;Sですから,

先の=σという形の式は=σS=(σS/L),

あるいは逆に,{L/(σS)}という形になります。

 

そこで,抵抗RをR=L/(σS)で定義すればよく知られた

形のオームの法則:Rが得られます。

(※過去記事(1)終わり)

 

※再掲過去記事第2弾です。 

※2006年6/17「電気伝導(つづき1)(ジュール熱)」

「オーム@の法則」を述べたついでに,

「電気が熱に変わるのは何故か?」というジュール熱

の問題も微視的に考察してみましょう。

 

 1つの電荷eに対する運動方程式を与えるために,

位置xにおける電位をV()とすると,これは単位電荷

当りのポテンシャルです。一様電場の向きをx軸に

取って,問題を1次元化,つまり,x座標だけで考えると

E=-dV/dxと書けます。

 

したがって,電場Eがあって何の抵抗もないとき

運動方程式は,電荷の質量をmv速度をvとすると

d(mv)/dt=―e(dV/dx)となります。

つまり,抵抗がないと電流を与える電荷の速度は

一定ではなくて加速されるのですね。

 

そして,この運動方程式の両辺にv=dx/dtを

掛けて,v(dv/dt)=d(v2/2)/dt,および,

v(dV/dx)=(dx/dt)(dV/dx)=dV/dt

なる式を用いると,d(mv2/2)/dt=-edV/dt,

 

つまり,(d/dt){(mv2/2)+eV}=0となり,,

保存力場に対する通常の力学的エネルギー保存則が

得られます。

 

左辺の(d/dt){(mv2/2)+eV}は,もちろん,

力学的エネルギーの単位時間当りの増加分ですが,これ

がゼロということは,抵抗がないときには,熱などの形

でのエネルギーの散逸(ロス)がないことを意味している

と考えられます。

 

しかし,実際は前記事で書いたように金属線にはゼロで

ない抵抗があり,自由電子の衝突の緩和時間をτ(sec)と

して,運動方程式は,d(mv)/dt=eE-mv/τ,

つまり,d(mv)/dt=―e(dV/dx)-mv/τです。

 

受ける力を表わす右辺は,位置xで決まるだけでなく

速度vに比例するマイナスの項,いわゆる抵抗力の項

を含んでいます。

 

力学的エネルギーの変化率の方は,やはり両辺に

v=dx/dtを掛けて求めるわけですが,今度は

(d/dt){(mv2/2)+eV}=-mv2/τと

なりますから,平衡状態,つまり加速度がゼロで

dv/dt=0の電荷速度vが一定,または電流が

一定の状態になると,d(eV)/dt=-mv2

となります。,

 

すなわち,回路に電流スイッチが入ってから十分

な時間が経過した後にvが一定で,v{d(mv)/dt

=d(mv2/2)/dt=0 より,運動エネルギーが一定

に保たれる平衡状態になっても,位置エネルギーは,

右辺の(-mv2/τ)のような形で,いわゆる熱として

散逸して(逃げて)いくわけです。

 

つまり,緩和時間τで特徴付けられる材質の抵抗が

あれば,それを流れる電流を構成する電子が受ける外力

は保存力どころか位置だけの関数でさえなくて,何ら

かの原因で自由電子はデタラメな方向へ散乱され,散乱

された電子の運動エネルギーの総和という形で,力学的

エネルギーが損失をこうむることになります。

 

 このエネルギー損失は,速度に比例する抵抗という形

で表現され,これが巨視的には「ジュール熱」と呼ばれる

ものとして現われるというわけです。

 

そこで,力学的エネルギーの他に,「熱エネルギー」

という形のエネルギーの存在をも考慮するなら,先の

方程式:すなわち,抵抗がないときには,

(d/dt){(mv2/2)+eV}=0によって,

エネルギーの保存を示し,抵抗があるときには,

(d/dt){(mv2/2)+eV}=-mv2/τの

形となる発展方程式は,結局,

「単位時間当りの力学的エネルギーの減少分(増加分

が熱エネルギーの増加分(減少分)に等しい.]

という「全エネルギーの保存法則(熱力学第一法則)」

を表現しているといえます。

 

具体的には,Eが一定のときの電位は

V(x)=-Ex+(定数)と書くことができて

d(eV)/dt=-eEvと書けます。

 

したがって,大きさがeの1つの電荷の単位時間

のエネルギー損失の式:d(eV)/dt=-mv2

は-eEv=-mv2/τとなります。

一方,抵抗物体の単位体積当りの電荷eの個数を

nとすると,電流密度はJ=nevです。

 

それ故,単位時間,単位体積当りの損失は,nmv2

=neEv=JEとなり,断面積がS,長さがLの抵抗

なら,その体積SLを掛けてJSLE=nSLmv2

です。,

 

さらに,電流の定義:I=JSと電圧の定義:V=ELを

用いると,これは,IV=Nmv2/τという表式です。

ただし,NはN=nSLで抵抗中の電荷eの総数です。

 

そこで,抵抗内の全電荷:Q=Neを用いるなら,

「(全体積中のN個の電荷による単位時間当り全エネルギー

損失)=(ジュール熱)がIV=Nmv2/τとして与えられる。」

という表現は「(ジュール熱,または消費電力)が

IV=Qmv2/(eτ)で与えられる。」という形にも

表わされます。両辺の単位は,ワット(W)=J/secです。

(※過去記事829終了)

※なお,参考文献は,いずれもアシュクロフト・マーミン著

「固体物理学の基礎」(吉岡書店)です。

 

長くなったので一旦ここで終わります。

 

※PS:昨今というか,2012年以降は,超弦理論,ゲージ場.

量子アノマリ-,くりこみ理論とか科学記事は素粒子論

関係の記事ばかりに集中してましたが,それは,その頃

から自分で図を書いたり画像をコピーして貼り付けたり

するスキルを手に入れたからでした。

これらのトピックは,例えばFeynman図など描く必要が

あり,図抜きで済ますのは困難でしたからね。。

 

その点,ブログを開始した2006年ころはテキストベース,

,文字だけで表わせるようなものだけの記述に集中した

結果,素粒子理論関連は避けて,より広汎なトピックを

論じる傾向がありました。もちろん,それでも簡単な図

があった方が理解しやすいのは当然ですから,これら

にも後付けでは図を追加したりしてましたが大量に

あるので追いつかないうち,ネットの著作権意識向上

やリニューアルなどもあって,自分で撮影した写真や

自分で作成した図でさえ,挿入するのが昔より急に

むずかしくなってモチベーションも低下してます。

 

もっとも,当初から,数式の入った科学トピックを

書きたいならブログじゃ無理で,PDFなどにしたら。

などの多くの忠告を無視してたものでしたから,

今更文句を言っても仕方ないですが。

 

しかし,幸いここのココログだとかなり数式に融通

が効きました。しかも無料のココログフリーなので

急に認知症になったり,この世から消えて記事が途絶

えても当分は残っているでしょう。

 

それに科学記事は当初からオンライン直接書きでは

なく,ほとんどワードで原稿を作り保存してあるので

ホームぺージからコピーし直さなくても過去記事を

修正して再アップなどはできます。

 

 

 

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2009年2月 9日 (月)

水蒸気の比熱

 約1年前に2008年1/6の記事で「氷,水,水蒸気の比熱」という記事を書き,それを動機として化学結合関連のシリーズ記事に入り,結局,目的としていた水素結合に到達する前に興味がよそに移ってそのままになりました。

 

 しかし,最近私がサブマネージャーをしているfolomyの「物理フォーラム」で水分子の基準振動のモードについて質問があったのを機に,

 

「そうか。。重心運動と回転運動の自由度だけでなく振動の自由度に量子統計の効果を組み合わせれば,少なくとも水蒸気の比熱についてだけは,説明可能ではなかろうか。。」と思ったので,まずは過去記事の主要部分を再掲して,次にこれを説明したいと思います。

 

 以下,まず2008年1/6の記事「氷,水,水蒸気の比熱」の再掲です。 

※(再掲記事1)

  

 気体としてのH2,すなわち水蒸気なら理論的には常温での3原子分子の自由度は6です。

 

古典統計物理学におけるエネルギー等分配の法則,すなわち,"絶対温度Tにおいて1自由度当りの内部エネルギーはkBT/2 である。"という法則によれば,水蒸気の定積モル比熱はCv,mol(1/2)R×6=3Rとなるはずです。

 

B≡R/N0はボルツマン定数~ 1.38×10-23JK-1)で,Rは気体定数~ 8.31Jmol-1-1),N0はアボガドロ数r~ 6.022×1023mol-1)です。

そして,マイヤーの法則(Mayer's relation)によると,定圧モル比熱はCp,mol=Cv,mol+R=4Rと書けるので,比熱比はγ≡C/Cv=4R/(3R)~1.33となるはずです。

1モルのH2Oの質量は18gです。

 

そこで,質量1g当りの熱容量に換算するとCv8.31×3J/(molK)=1.385J/(gK)=0.33cal/(gK),C8.31×4J/(molK)=1.846J/(gK)=0.44cal/(gK)となるはずです。

 

しかし,理科年表によると,摂氏100度の水蒸気について,定圧比熱がC2.051J/(gK)=0.50cal/(gK)で,比熱比がγ≡C/Cv1.33となっていました。

これらの実測値は,比熱比γについては理論と一致していますが,定圧モル比熱については実測はCp,mol4.5R=(9/2)Rとなっています。

 

これは,今私が計算した理論値のCp,mol=4Rよりも大きく,実測のCp,molからマイヤーの規則で計算すると,定積モル比熱はCv,mol3.5R=(7/2)Rとなりますから,これからはγ≡C/Cv~1.28となって実測のγ1.33と矛盾します。

 

まあ,水蒸気は理想気体でないのは明らかですから,何らかの理由があるのでしょう。

一方,液体の水の比熱は定義によると1gの水を摂氏14.5度から15.5度まで1度上昇させるに要する熱量が1calです。

 

常温での水の比熱はC1cal/(gK)=4.19J/(gK)です。

 

また,氷の比熱は実験によると,C0.50cal/(gK)=2.085J/(gK)となっています。つまり,C,mol~9R,C,mol4.5R=(9/2)Rですね。

 

もしも氷が固体金属と同じような格子結晶であるなら,デュロン・プティの法則(Dulong-Petit's law)によってC,mol=3RなのでC0.33cal/(gK)になるはずですが,実際にはそうなっていません。

 

(固体金属の場合は電子の自由度は常温では無視できて,格子位置の陽イオンの格子振動,つまり自由度が2の調和振動子の3方向の自由度6の寄与のみにより,常温でのモル比熱がほぼC金属=3Rで与えられるということが理論的にも実験的にも認められています。(デュロン・プティの法則))

 

このことから,古典的には水の自由度は18,氷の自由度は9と考えられ,液体の水の場合はH2O分子を構成する3つの原子の個々がそれぞれ自由度6,固体の氷の場合はそれぞれ自由度3を担わなければならないという勘定になります。

一般に,1つの粒子が単なる質点なら自由度は高々3です。一方,質点ではなく大きさがあって重心運動の他に回転の自由度がある剛体とか,3次元の調和振動子のように内部振動をするような構造を持つなら丁度6の自由度を持ちます。

 

2Oを構成する3原子の各々が互いに全く束縛されることがない自由粒子であり,しかも構造を持たない質点である場合なら,個々の自由原子の持つ自由度が3なので合計で2O分子の自由度は9になります。

  

また,2Oを構成するそれぞれの原子が自由粒子でかつ内部構造(大きさ)を持ち,例えば回転自由度3を追加された剛体であれば,H2O分子の自由度は18になります。

 

さらに振動の自由度を加えれば独立な1方向当たり2ずつ自由度が増えます。つまり,原子をさらに核と電子に分けるなど内部の詳細構造を追及していけば,まだまだ比熱に寄与しそうな自由度を増やすことが可能であるという勘定にはなります。

 

そこで液体の水についても,これをH2Oを構成する3つの原子の各々がそれぞれ調和振動子であるとか,またはH2Oの重心運動と全体としての回転運動はあっても振動はできない剛体のようなものと見なせるような奇妙な構造の模型を仮定すれば説明できるかな?という程度の認識に到ります。

結局は,水素結合などの特別な化学結合が関係していると思われるので,こうした問題意識を動機として,次回からは化学結合関連についての知見について復習し,その内容の詳細については事実上初めての真面目な勉強をしてみます。

 

本日は単に化学結合についての記事を書く動機のみを書きました。

 

水分子の結合や,その相転移などの説明については,水素結合などを理解した後,できたらまたの機会に詳述したい,と考えています。

参考文献:「理科年表1997年版」(丸善出版) (※再掲記事終わり)

 

ところが,かつて2006年7/16の記事「二酸化炭素の比熱比(物性)」においてCO2分子というのは3原子が一直線に並んでいるため回転の自由度が3ではなく2であるという結論を得ています。

 

したがって,H2Oの場合も水素結合にしろ共有結合にしろ,気体の状態であっても分子として安定な平衡状態ではH-O-Hは一直線ではありませんがHとO,HとHのなす角度は決まっているので,上記記事で水蒸気の気体分子としての回転の自由度を3と考えたのは誤りで,CO2と同じくH2Oの場合も回転の自由度は2であろうと考えました。

 

以下,続きを論じるために,上記2006年7/16の記事「二酸化炭素の比熱比(物性)」を再掲します。

 

※(再掲記事2) 

  今日は,理想気体の断熱過程での気体法則であるポアソン(Poisson)の公式PVγ=一定,または TVγ-1=一定で使用される比熱比 γ= Cp/Cvの値について,考察します。

 統計力学によれば,比熱比は対象とする気体1分子を構成する原子の個数,つまり気体分子が単原子分子,2原子分子,3原子分子etcのいずれであるかによって決まります。

 ここで, Cv は定積比熱,Cpは定圧比熱です。

 (理想)気体に対する定積比熱,と定圧比熱の間にはマイヤー(Mayer)の法則というルールがあり,nモルの気体に対してはCp=Cv+nR (1モルなら Cp=Cv+R )が成り立ちます。

 ただし,Rは気体定数と呼ばれる定数で,R≒8.31J/(mol・K)です。

 そして,気体の定積比熱 Cvは絶対温度をT,内部エネルギーをUとすると Cv=dU/dTで与えられます。

 理想気体ではUは温度だけの関数なので,T=0 での零点エネルギーを無視すると,気体の内部エネルギーはU =CvT と書けます。

 古典統計力学によると,物体の常温での内部エネルギーUは,1粒子の運動する自由度1つごとに kBT/2 だけの値を割り当てられます。ここで kB はボルツマン定数と呼ばれる気体分子1個当たりの気体定数です。

 kBは気体1分子当たりの気体定数ですから,R=N0B,またはN0=R/kBとすると気体1モルというのはN0個の分子の集合体を意味することがわかります。N0はアボガドロ数と呼ばれる物理定数で6.02×1023 なる値です。

 nモルの気体を構成する分子数はnN0個ですから,それの1自由度あたりの内部エネルギーはnN0BT/2=nRT/2 です。

 以上の事実はエネルギー等分配の法則といわれますす。

 単原子分子気体では分子1個の自由度は並進運動の自由度3だけなのでnモルの気体の内部エネルギーはU=3nRT/2 です。そこでCv=3nR/2, Cp=Cv+nR =5nR/2です。

 また,2原子分子気体は回転の自由度2 が加わるので,分子1個の自由度は並進運動(重心運動)の自由度3と合わせて5となります。そこでnモルの気体の内部エネルギーはU=5nRT/2となります。Cv=5nR/2, Cp=7nR/2です。

 3原子分子以上では重心の周りの回転の自由度が最大の3になるため,これを並進運動(重心運動)の自由度3と合わせると分子1個の自由度は6となりますから,nモルの内部エネルギーはU=3nRT で,Cv=3nR, Cp=4nRとなります。

 そこで,比熱比γ=Cp/Cvは単原子分子気体なら1.67で2原子分子気体なら 1.4,そして3原子分子以上なら特別な対称性がない限り1.33になるはずです。

 そこで本当にそうなっているのかどうかを理科年表で確かめてみると,He  1.66, Ar  1.67, H2  1.40, N2 1.40, H2O 1.31, NH3 1.33 とありました。

 これを見ると,必ずしも近似的に理想気体と見なせる希薄気体ではないような実在気体でも,かなり良く適合値を示しているようです。

 ここで,ニフティ「物理フォーラム」でのある方からの質問を呈示してみます。

 "3原子分子であっても,二酸化炭素 CO2が典型例であるように,一直線に並ぶ3原子分子の場合にはどうなるのだろうか?もし厳密に一直線ならば回転の自由度は2なので2原子分子と同じγ,つまり 1.4になるはずですが,理科年表によると二酸化炭素 CO2のγは1.30でしたから,これは普通の3原子分子に近い値です。"

 上記が質問の内容です。

 そこで,これに対する答えを見出すために,これまで考えてきた並進や回転の自由度だけではなく,振動の自由度も考慮するとどうなるかを考えてみます。

 重心の並進運動や回転の運動とは異なり,振動の自由度なら1方向の調和振動に対しては,位置エネルギーと運動エネルギーの2つの自由度があるので,1方向についての平均エネルギーは 1分子当たりkBTになります。

 たとえば静止した固体は3方向に熱振動しているので,常温では1モルにつき,比熱は気体定数をRとして固体の種類によらず3Rとなります。(デュロン・プティ(Dulog-Petit)の法則)

 つまり,1次元調和振動子のエネルギーは E=p2/(2m)
+(1/2)kx2であり,"マクスウェル・ボルツマン分布=古典確率分布"によれば,振動子の座標が(x,p)である確率密度はギブス因子exp{-E/(kT)}に比例します。

 そこで,エネルギー Eを表わす式の中の1つの変数の2乗を与える変数自由度について,それぞれ平均をとると kBT/2 となりますが, E=p2/(2m)+(1/2)kx2の右辺にはp2と x2 の2つの2乗項があるので振動のエネルギーを考えた場合には,平均エネルギーへの寄与は 1分子当たり一つの方向(1次元)について kBTとなります。

 これに対して,重心の自由な並進運動とか,回転運動では位置エネルギーの項はなくて運動エネルギーの項しかない,つまり p2の項しかないので,平均エネルギーへの寄与は1分子当たり1次元について kBT/2 となるのですね。

 とにかく,古典統計力学ではax2 exp {- ax2/(kT)} なる式をx で積分したものを,exp{-ax2/(kT)}をx で積分したもので割ると,必ずkBT/2 になるということを直接計算で確かめることができます。

 これは自由度が1つでもあればそうで,係数aの大きさには無関係です。

 ところで常温での固体では,格子を構成する原子のイオンの熱振動がメインになる(電子振動は無視される)のに対して,気体では、原子の重心運動と回転運動のみがメインとなり,熱振動の自由度や電子の運動の自由度が何故無視されるのかという問題があります。

 これは量子論ではエネルギーが量子化され,統計分布がプランク(Planck)定数hに関係した量子確率分布で与えられるためです。

 こうしたことの理由を簡単に言うなら,物質内部のエネルギーを E としその構成粒子の主要な振動数をνとすると,Eは量子論では大体においてhνの倍数で与えられ,量子統計分布では,先のギブス因子exp{(-E/(kBT)}がexp{-nhν/(kBT)}という形で現われるからです。

 常温のTでは固体の電子の振動や気体での原子振動の振動数や電子の自由度に関わる周期運動の振動数νに対しては,一般にhν>>kBTが成立するので,exp{-nhν/(kBT)} ~ 0 となるためこれらは内部エネルギーにはほとんど寄与しないのです。

 ところが,問題の二酸化炭素:CO2について「甘泉法師さん」から得た情報によると,"二酸化炭素分子の振動データは,次の振動モードのそれぞれについて,全対称伸縮は実測=1333/cm,計算=1373/cm(12CO2),逆対称伸縮は実測=2349/cm,計算=2420/cm(12CO2),変角振動は 実測=667/cm,計算=669/cm(12CO2)となっているそうです。

 一番エネルギーの小さい変角振動について温度に換算すると赤外線温度 1.4387752・667 = 953Kで常温(300K)の約3倍"なので振動を無視できないそうです。

   実際,変角の振動モードに対して,例えば摂氏(Celsius)16度:T=289Kで x = E/(kBT)=3.32を用いて量子論でのモル比熱を求める式(固体のアインシュタインモデルと同じ式)であるCvib=R x2 exp ( x2 )/[exp ( x2 )-1]に代入すると,Cvib=0.43Rとなります。

 変角振動は横波なので縦振動を除いて自由度が2 であるため結局Cvib=0.43R ×2=0.86Rであり,比熱比はγ=1+ R/ (5/2R+Cvib)=1.30となって,めでたく理科年表の値と一致します。

 ただし,こうして正しい値が得られたのは,振動を除く自由度としては原子が1直線状であることを考慮して2原子分子と同様,定積モル比熱がCv=5/2Rの場合に対応する自由度を想定して計算した結果ですから,やはりCO2では回転の自由度は2である,と考えるのが正解のようです。(※再掲終わり)

 

私は,元々ニフテイ「物理フォーラム」でサブマネージャーをしていたのですが@niftyには,もはやこうしたフォーラム制度がなく過去ログも含めて今は「folomy」に移っています。

 

上記記事では,普通は常温の気体の場合には振動の自由度は無視されるのですが,二酸化炭素の変角振動のモードは比熱への有意な効果を与えるため気体のCO2定積モル比熱vの(重心+回転)による自由度5の寄与Cv0=5R/2に加えて,自由度が2の振動の寄与がvib=0.43R×2=0.86Rと算定されるという結論を得ています。

 

水蒸気2,の場合にも,自由度が2の振動の寄与がvib=0.25R×2=0.5R程度であるとすれば,v=3R, C=4Rとなって,比熱比γ≡C/Cv=4R/(3R)~ 1.33なる実験値に矛盾しません。

 

問題は摂氏100度の水蒸気についての実測の定圧比熱がC2.051J/(gK)=0.50cal/(gK)となっていることで水1モルの質量が18gであることを考慮するとp4.5R=(9/2)RでCp=4Rよりも大きく,これからマイヤーの規則で計算すると,定積モル比熱はCv3.5R=(7/2)Rとなってγ=C/Cv~ 1.28となり実測のγ1.33と合わないということでした。

 

しかし,確実に比熱にR/2の寄与をする回転の自由度ではなく,振動の自由度の寄与ということであれば振動数次第で寄与を微調整することが可能です。

 

上記では水蒸気については振動の1自由度当たり0.25Rであるとしましたが,例えばこれを0.35Rくらいであると同定すればp4.2R,v3.2R,γ=C/Cv4.2/3.2程度になるし,水1モルの質量も現実には確実に18gというわけではなく17.5g程度なら,実測値と考えている理科年表のC2.051J/(gK)=0.50cal/(gK)とさほど矛盾しないようです。 

 

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2009年1月31日 (土)

超伝導の理論(3)

超伝導の続きです。前記事と合わせた記事全体をうまくアップできず,何故かアップしてブログに反映させるたびに全部消えてしまうので仕方なく分割しました。

 

次は,Londonの電磁的なモデルについての話です。

 

     The London Theory

1934年にはGorterとCasimirのFとHに関する仕事に続いてLondonは超伝導体の電磁的挙動についての現象論を進めました。

 

Gorter-CasimirおよびLondonの理論は,超流体と常流体のそれぞれの電子の数密度nS,nN,および速度S,Nを持った2流体タイプの概念に基づいています。

局所電荷が中性であるせいで,電子数密度はnS+nN=nなる式で制限されます。ここでnは単位体積当たりの平均電子数です。

超流体と常流体の流束密度SNは次式を満たすと仮定します。

 

すなわち,dS/dt=nS2/m,およびN=σNです。ただし,S≡-enSS,N≡-enNNです。

 

第2の式は通常のオームの法則(Ohm's law)ですが,第1の式は1個の電荷が-e,数密度がnSの荷電粒子の集合に適用されたニュートンの運動方程式mそのものです。

 

超流体は,常流体の場合に有限な電気伝導度σNを生み出す通常の散乱構造とは無縁であると考えるのですね。

次に,超伝導電流SはLondon理論で最も有名な磁場に関する方程式∇×S=-nS2/(mc)を満たすと仮定します。

 

これとマクスウェルの方程式∇×=4πS/cの両辺の回転を取ったものとを比較することから,マイスナー効果(Meissner effect)が導かれます。ただし,この式の右辺では変位電流と常流体の電流Nを無視しました。

すなわち,マクスウェルの方程式から∇×∇×=∇(∇)-∇2B=-∇2によって,-∇2=(4π/c)(∇×S)を得ます。

 

この式の右辺に∇×S=-nS2/(mc)を代入すると,∇2=4πnS2/(mc2),つまり方程式∇2=λL-2が得られます。

 

ここで,λL≡{mc2/(4πnS2)}1/2としました。

さて,前記事の訳注では境界上の1点を座標原点として境界面の法線方向にx軸を取り,xの負の側を超伝導体の領域としましたが,今度は逆にxの正の側を超伝導体の領域とします。

 

そして,方程式∇2=λL-2を,x=0 のyz平面に境界を持ち,yz面に平行な平面上では一様でxのみに依存する1次元の微分方程式と捉えれば,xが大きいと磁束が消えるという境界条件での解は,(x)=(0)exp(-x/λL)と表現されます。

実際に,長さの単位を持つ定数λL{mc2/(4πnS2)}1/2を計算すると,これは非常に小さい値であることがわかります。

 

そして,x>λLの領域の大部分では(x)~ 0 となり,磁場は消えて求める完全反磁性を得ます。

 

それ故,定数λLをLondonの浸入深さと呼びます。

 

そして磁束が内部に浸入することが不可能で,結果として完全反磁性を示すという性質が超伝導体のマイスナー効果ですからLondon理論はこれをうまく説明しています。

London理論での超電流に対する式:dS/dt=nS2/mの両辺の回転を取って得られる式:∇×(dS/dt)=nS2(∇×)/mと,マクスウェルの電磁誘導の方程式c(∇×)=-∂/∂tを結びつけると,固定したxに対しては,(d/dt)[(∇×S)-{-nS2/(mc)}]=0 が得られ,これはLondon方程式:∇×S=-nS2/(mc)の時間微分です。

 

したがって,積分定数を除けば,マイスナー効果は超流体の完全伝導性を示す運動方程式dS/dt=nS2/m (電子の散乱に由来する電気抵抗が全く無い運動方程式)からの帰結であることがわかります。

 

こうして,∇×S=-nS2/(mc)を仮定することで,Londonは履歴とは無関係に超伝導体内では磁束密度がゼロになるという重要な制限を与えましたが,電気抵抗がゼロであるという完全伝導性がマイスナー効果の本質です。

浸入深さをλL(T)≡{mc2/(4πnS(T)e2)}1/2と書いて,これをGoter-Casimirモデルの結果である関係式nS(T)/n=1-x=1-(T/Tc)4と結びつけると,λL(T)=λL(0)/{1-(T/Tc)4}1/2なる形の浸入深さの温度依存性を見出します。

つまり,T=TcではλL=∞ですから,この温度では如何なる磁束も排除されませんが,TがTcよりも低くなって無限小まで下がるにつれて,λLは急速に減少するため,T<Tcではバルクな試料中でマイスナー効果の成立が裏付けられるわけです。

この温度依存性については,微視的理論の結果の方が幾分実験と良く一致しますが,今見たλL(T)=λL(0)/{1-(T/Tc)4}1/2なる式による評価値も実験的観測と驚くほど近い値を与えます。

マイスナー効果に従って"超伝導電流=超電流"が磁場の形態から一意的に決まるという事実は,超伝導体の準静的過程に可逆熱力学が適用できるという1つの重要な事実を保証します。

まず,磁場をベクトルポテンシャルによって=∇×と表現すれば,London方程式∇×S=-nS2/(mc)は∇×S=∇×{-nS2/(mc)}となります。

 

これは,S=-nS2/(mc)と置けばもちろん満たされます。

定常的な超電流が保存される,すなわち∇S=0となるようにゲージ条件として∇=0 を採用します。

 

これでもなお,Laplace方程式:∇2χ=0 を満たすχについてのゲージ変換:+∇χの自由度はまだ残ります。

孤立した単連結の物体に対して,その表面上では超電流の面に直角な成分S⊥は消える必要があります。そこで,もまた表面で消える必要があります。

 

この条件は物体の全表面での(∇χ)を決定し,結局付加定数を除いてχが決まります。そして質量を持つ物体に対しては,これらの条件は物質の大部分で=0 なることを意味します。

 もしも電流が境界に沿って流れるのであれば,超伝導体は1つの電流回路内の要素と見なせるので,境界上の電流はを一意的に決めます。

 

そこで,S=-nS2/(mc)なる等式はゲージ不変には見えませんが,上記のLondonゲージ条件を満たさないの部分を捨てることが要求されるため,実際には理論はゲージ不変です。というわけで理論はゲージ選択に独立です。

 一方,多重連結の物体でのゲージ関数χへの制限は∇2χ=0 ,かつ(∂χ/∂n)|表面=0 ですが,これは,もはや加えるべきゲージポテンシャルχの勾配∇χがゼロなることを要求しません。そこで,この場合には境界条件|表面=0 だけからは一意的に決まりません。

 重連結体中の空洞を周るループCに沿っての線積分を実行すると,Stokesの定理によって∫dl=∫=Φとなり,ループの内部を貫く磁束を得ます。

 

 そして積分経路Cを0 の超伝導体の内部に取れるなら,そこでは∇×=0 なので,ある関数χが存在して,=∇χと書けます。

 しかし,∇χが1価であっても,∫dl=∫∇χdl=Δχ=Φ (ただし,ΔχはCに沿って空洞を1回転して元に戻ったときのχの変化分)となるため,ループCの内部では=∇×0 であるにも関わらず,χが1価に決まるとは限りません。

 

 けれども,空洞の各々を貫く磁束Φiを全て定めることができればを一意に決めることができます。

 今日はここまでにします。 

参考文献:J.R.Schrieffer著「Theory of Superconductivity 」(Revised printing;Persues  Books) 

 

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超伝導の理論(2)

前回はちょっと前書きを述べただけで,結局,年を越してしまいましたが,超伝導の理論の続きの今年第1回目です。

 微視的理論(特にBCS理論)が現われる前の,初期の現象論を幾つか述べます。最初に Gorter-Casimir理論です。

 

    Gorter-Casimir Model

1934年,GorterとCasimirは先に論じた路線に沿って2流体モデルを進めました。まず,xが"正常"流体にある電子数の比率,(1-x)が超流体に凝縮された電子数の比率とするとき,2流体全体では次の形の自由エネルギーを有すると仮定しました。

金属中で正常状態にある電子数の比率がxのときの金属全体の電子による単位体積当たりのヘルムホルツの自由エネルギーF=U-TS)をF(x,T)と書くとき,これがF(x,T)=x1/2N(T)+(1-x)fS(T)で与えられるとします。

 

ただし,fN(T)=-γT2/2,fS(T)=-β=const.です。

正常金属では電子による自由エネルギーは丁度fN(T)=-γT2/2ですから,モデル式は(1-x)→ 0 のときの自由エネルギーF(1,T)が正常相の自由エネルギーfN(T)に一致するようになっています。

 

また,-βは超流体に関わる凝縮エネルギーです。

このモデルにおいて,固定温度Tの下でF(x,T)が最小となるxを求めます。

 

すなわち,F(x,T)=-γT21/2/2-β(1-x)をxで微分してゼロと置いて,そのときのxを求めます。dF/dx=-γT2-1/2/4+β=0 ですから,これを解けばx=γ24/(16β2)となります。

 

このxの値が絶対温度Tのときに電子の正常流体と超流体が互いに平衡を保っているときの全金属電子中の正常電子数の比率を与えるものと考えます。

そして,平衡状態:dF/dx=0 ときのxの値がx=1となる場合の温度が正常状態から超流体の状態に移る境目の温度,つまり臨界温度T=Tcを与えると考えられます。

 

それ故,1=γ2c4/(16β2)と置くとTc=(4β/γ)1/2を得ます。逆に,これを用いるとx=γ24/(16β2)=(T/Tc)4と表現できます。

一方,磁場がある場合の熱力学的関係から,温度Tでの正常状態と超伝導状態の自由エネルギー密度FN(T)とFS(T)の差と臨界磁場c(T)との間にHc2(T)/(8π)=FN(T)-FS(T)なる熱力学的等式が成立することがわかります。

 

ここで,当時の固体物性関係の慣例から電磁単位として,c.g.s.Gauss単位系を採用しています。

モデル式:F(x,T)=x1/2N(T)+(1-x)fS(T)において,FN(T)=F(1,T)=fN(T)=-γT2/2,FS(T)=F(0,T)=fS(T)=-βですから,FN(T)-FS(T)=β-γT2/2=Hc2(T)/(8π),FN(0)-FS(0)=β=H02/(8π)(H0≡Hc(0))と書けます。

結局,Hc2(T)/H02=1-γT2/(2β)=1-2(T/Tc)2 ~ {1-(T/Tc)2}2より,Hc(T) ~ H0{1-(T/Tc)2}なる臨界場c(T)の温度依存性の表現が得られます。

 

そこで,Hc(T)は(T/Tc)の放物線関数になると予測されます。この式は,粗いものではありますが実際の実験とのよい一致を見ています。

そして,ヘルムホルツの自由エネルギーFの定義:F=U-TSから,dF=dU―TdS-SdT=PdV-SdTが成立しますから,エントロピーSは体積Vが一定:dV=0 のときの,FのTによる微分係数S=-∂F/∂Tで与えられます。

 

それ故,FN(T)-FS(T)=c2(T)/(8π)なる関係式から,エントロピーについてもSS(T)-SN(T)=HcdHc/dT/(4π)なる跳びが存在することがわかります。

さらに,電子比熱Ce=TdS/dTを考えると,超伝導体と正常導体の比熱の差=電子比熱の差;ΔCe≡CeS-CeNは,ΔCe=TdSS/dT-TdSN/dT=T{(dHc/dT)2+Hc2c/dT2}/(4π)で与えられることがわかります。

このモデルでは,Hc(T)=H0{1-(T/Tc)2}(ただし,Tc=(4β/γ)1/2,H0=(8πβ)1/2)なので,dHc/dT=-2(H0/Tc)(T/Tc)=-2(2πγ)1/2(T/Tc)となります。

 

それ故,ΔCe=CeS-CeN=2γTc(T/Tc)3+(4βγ)1/20(T/Tc){1-(T/Tc)2}が得られます。そこで,温度Tを臨界温度Tcにすると,T=Tcにおける差はΔCe=CeS-CeN=2γTcとなります。

ところが,正常導体では電子比熱はTに比例することがわかっていてeN=γTです。そこで,特にT=TcではCeN=γTcですから,超伝導状態での電子比熱はCeS=CeN+2γTc=3γTcとなります。結局Tcの近傍の温度T<Tcなる超伝導相では電子比熱としてCeS ~ 3γTc(T/Tc)3なる形のT3に比例するという近似式を得ます。

特にT=Tcにおいて,電子比熱がCN=γTc → CS=3γTcとなって比熱に不連続な跳びΔCeが生じることになります。そして,この跳びの相対的因子ΔCe/CNは3です。これは,再び実験と一致します。

 

ただ,この一致はそれほど驚くべきことではありません。というのも,この理論は実験と一致するように幾分技巧的と見える方法に基づいて成立しているからです。

特に,このモデルの式:F(x,T)=x1/2N(T)+(1-x)fS(T)の最初の形は元々F(x,T)=xrN(T)+(1-x)fS(T)と仮定されていました。

 

そして,xが正常状態の値1に近いときには,右辺第1項の因子であるxrの指数rは,1/2よりも1のほうがふさわしいと予想されます。

 

さらに,より多くの粒子凝縮に対しては凝縮エネルギーβは定数ではなく,増加すると予期されます。

 

それにも関わらず,Gorter-Casimir理論は次に述べる予定のLondon理論と組み合わせたとき,かなり実験と良く一致する,自明とは思えないような予測を与えます。

しかし,後述するように,結局,このモデルの表現F(x,T)=x1/2N(T)+(1-x)fS(T)と微視的理論で与えられる表現の間には,ほとんど関係がないことがわかります。

(訳注):磁場の中に超伝導体があって,磁束が超伝導体外部に押し出されている状態は磁場の側から見ると無理を強いられている状態であり,温度Tを一定に保ったっまま外部磁場を増加させていくと,やがて磁束の浸入が始まります。

今,導体の一部が正常状態で,残りの部分が超伝導状態であるとして両者の境界面に着目します。この境界上の1点を座標原点として境界面の法線方向にx軸を取り,xの負の側が超伝導体の領域,正の側が正常導体の領域とします。

正常導体の領域には磁場があるとして,その磁束密度をとします。ベクトルの向きは,x軸に垂直なy軸の正の向きと同じとします。

 

y軸はx軸を法線とする境界面の上にあります。x軸,y軸に垂直なz軸も考えると境界面はx=0 のyz平面ですからの向きは境界面に平行な向きですね。

超伝導体の境界面に沿って磁束の浸入層がありますが,その微小な厚さをλとすると浸入層の存在域は-λ≦x≦0で表わされます。

 

そして導体内部におけるc.g.s.Gauss単位での磁束密度と電流密度に対するマクスウェル(Maxwell)方程式で磁場に対応するものは,rot=(4π/c),div=0 です。

 

はy成分のみを持つと仮定しているので,xy面に垂直な導体のyz境界面上にz成分jz=c(∂B/∂x)/(4π)のみを持つ電流密度の電流が流れています。

この電流に対して磁場は単位面積当たり×/cなるローレンツの力(Lorentz force),つまりzB/cというx方向の成分のみを持つ力を与えるので,これを-λ≦x≦0 にわたって積分すると,浸入層の境界面の単位面積当たりに働く力として,-∫0zBdx/c=-∫0dxB(∂B/∂x)/(4π)=-B2/(8π)が得られます。

 

ただし,-B2/(8π)におけるはx=0 の浸入層右端の境界yz面上での磁束密度を示しています。

なぜなら,yz境界面上でy方向,z方向にそれぞれ単位長さの辺を持つ1つの正方形を取ると,その正方形の浸入層内で厚さdxの部分の正四角柱のxy側面の面積はdxですが,電流密度はz成分jz=c(∂B/∂x)/(4π)のみを持つのでこの面積dxのxy側面を流れるz向きの総電流はjzdxです。

 

そこで,この部分に働くx向きのローレンツ力は-jzBdx/cとなりますから,厚さdxの部分の電流によってyz境界面上の単位面積に働く力はxの向きに-jzBdx/cとなることがわかります。

そこで,-λ≦x≦0 の浸入層全体に働く単位面積当たりの力の合力は-∫0zBdx/c=-2/(8π)で与えられるのですね。

 

右辺のマイナス符号は,この力が正常領域から超伝導領域に向かって働くことを意味します。つまり,磁場の"圧力=単位面積当たりの力"が存在して超伝導体を押しているわけです。

この磁場による圧力を支えるものは絶対零度では正常状態と超伝導状態のエネルギーUの差,有限温度なら自由エネルギーFの差です。

 

磁場が存在しないときの超伝導体の自由エネルギー密度を温度の関数と見て,FS(T)と表現し,同じ導体が正常状態にあるときのそれをFN(T)と表現します。

転移温度c以下では超伝導状態の方が安定なのでFS(T)≦FN(T)です。そこで,FN(T)-FS(T)=c2(T)/(8π)として,これにより定義される磁場の単位を持つ量c(T)を熱力学的臨界磁場と名付けます。

この名称は,次の理由に拠ります。

,超伝導領域と正常領域の境界面がその法線:xの方向にδxだけ変位したと仮定すると,これは導体の一部が正常状態から超伝導状態に転化したことを意味しますから,これに伴なう自由エネルギーの変化は境界面の単位面積当たり(FS-FN)δxです。

 

S≦FNですからこの変位で導体全体のエネルギーが下がるので,境界面のδxの変位では面にかかる圧力が負の仕事をします。

これは,もしも外圧がなければ,境界面には超伝導領域を広げようとする圧力が常に働いていることを意味します。

 

そして導体内に超伝導領域と正常領域が共存し得るためには,この圧力が先に求めた磁場の圧力B2/(8π)に丁度等しくて釣り合っていなければなりません。

つまり,FS(T)-FN(T)=-B2/(8π)ですから,これと先の定義式FN(T)-FS(T)=Hc2(T)/(8π)を比較することから境界面上でc(T)であると結論されます。

通常のGauss単位系での磁場と磁束密度の関係は,磁化(単位体積当たりの磁気モーメント)をとすると,-4π(MKSA単位では0),または+4πですから,境界面上では磁化はゼロです。

 

一方,超伝導体の内部では,仮に超伝導体を帯磁率が-(4π)-1の磁性体であると考えれば,内部の磁場に対して=-(4π)-1,つまり=-4πとなるので確かに0 となります。

実際,静磁気学では楕円体形の磁性体を主軸に平行で一様な外部磁場aの中に置くと磁性体は外場の方向に一様に磁化されて内部磁場がa-4πνとなることが知られています。

 

νは主軸方向の反磁化係数と呼ばれ,楕円体の幾何学的形状で決まります。=-4πa-4πνを連立させると=-a/{4π(1-ν)}を得ます。※

(つづく)

参考文献:J.R.Schrieffer著「Theory of Superconductivity 」(Revised printing;Persues  Books),中嶋貞雄 著「超伝導入門」(培風館)

 

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2008年12月30日 (火)

超伝導の理論(1)

超のつくものばかりが好きなようですが,今日から超伝導の理論のテキストとして読んでいたBCSの一人シュリファー=J.R.Schrieffer著の「Theory of Superconductivity 」(Revised printing;Persues  Books)の勉強ノートのレビューをシリーズ記事の1つとして書いてみようと思います。

(この当時の超伝導についての知識は (今も大して変わりませんが) 恐らく中嶋貞雄先生の「超伝導入門」(培風館)を読んだ程度でした。)

このノートの1ページ目には1999年3月12日(金)の日付けがありますから,それほど昔ではないようですが,これも未完で挫折しているようですね。

 

できれば挫折したところから続きにも進みたいと思います。

 

最近は科学関連のブログ記事を書くことが過去には気づいていなかった事実の発見や過去の再確認を含めて自分の勉強の中心になってきているようです。

さて,今日は第1章序(Introduction)です。

超伝導現象はマクロなスケールで作用する量子効果の典型例です。

超伝導物質内では電子群のある有限部分が実質的な"巨大分子(超流体)"に凝縮されています。

 

その巨大分子は系の全体積に拡がり,全体として運動することができます。絶対温度ゼロにおいては凝縮(Bose-Einstein)は完全であり,あらゆる電子は超流体の形成に関与しています。

 

もっとも本質的にはフェルミ面の近傍の電子のみが凝縮の影響を受けた運動をするだけですが。。

ゼロから温度が上がってゆくにつれて,電子群の一部は凝縮から放たれて微弱に相互作用する励起ガス,あるいは正常流体を形成します。これもまた全体積に拡がり,超流体と相互に侵透し合っています。

温度が上がって臨界値cに近づくと,超流体中に残っている電子の比率はゼロに近づき,系は超伝導状態から正常状態への第2種の相転移を受けます。

超伝導体のこうした2流体描像は,形式的に超流体He4を特徴付ける描像に似ています。これらの間には重要な差異もありますが。。

超伝導体の興味深い性質(完全反磁性,直流電気抵抗ゼロなど)は超流体の独特な励起に関連しています。

  

後述するように,超流体はその"内部エネルギー(超流体同士を結合する束縛力に関わるエネルギー)"ほとんど変えず,"ポテンシャル流=非回転的流れ"を引き起こすことができます。

 

他方,超流体は回転的流れを保持することができません。

超流体He4と同様,超流体に"渦度=ゼロでない運動量の回転"を持った運動を強いるなら超流体の一部は必然的に常流体に転換されます。

常流体というのは超流体同士を束縛するエネルギーを利用できないので,一般に渦度を生成することに関わる大きなエネルギーの増加が存在します。

 

そこで超流体は磁場のように系に渦度,あるいは角運動量を与える傾向がある摂動に対しては不動な,剛性のような性質を持っています。

この仮定された剛性に基づいて,ロンドン(London)は弱い磁場の中でのバルクな超伝導体の完全な反磁性(マイスナー効果)を理論的に説明することができました。

 

そして,カマリン・オネス(Kamerlingh Onnes)によって初めて観測された明白な直流電気抵抗の欠落も説明されました。

後述することですが,超伝導の微視的理論(BCS理論)はバーディーン(Bardeen),クーパー(Cooper)および著者(シュリーファー)によって提案されました。これは,この種の2流体描像で考えられます。

最低次の近似では,超流体は格子分極力によって互いに束縛されている電子対によって形成されています。

 

この"対=ペア"は空間において互いに大いに重なり合い,そこで究極的には前述の超流体波動関数の剛性の原因となるペアの相棒間の相関に加えて,強いペアとペアの相関があります。

さらに一般にこうした相関関係は電磁的挙動に加えて超伝導体の多くの特性が結果として従うべき素励起スペクトルのエネルギー・ギャップの原因となります。

 

そしてBCS理論においては常流体は系が素励起したガスによって構成されます。

オネスによる現象の輝かしい発見に続く約50年間の超伝導の微視的理論が,この問題について物理的,数学的複雑性を抱えることになったのは恐らく驚くべきことではないでしょう。

1950年までにはフレーリッヒ(Frörich)の洞察により基本的な凝縮の原動力が認識されるまでには至っていませんでした。

 

フレーリッヒは結晶格子振動(フォノン:phonon)との相互作用によって生じる電子間の有効相互作用が,この凝縮を引き起こすに当たって第一義的に重要であることを示唆しました。

 

この頃,レイノルズ(Reynolds)らとマクスウェル(Maxwell)によって実行された独立な超伝導体の同位体効果についての実験がフレーリッヒの見方への実験的根拠を与えました。

しかし,電子-フォノン相互作用の摂動論的扱いに基づくフレーリッヒとバーディーンの初期の理論は数学的困難に陥ってしまいました。

 

こうした困難の重要性は,"マイスナー効果は対でない系から始めた摂動の有限次では得られない"というシャフロース(Schafroth)の証明によって強調されました。

後に,ミグダル(Migdal)は摂動論の範囲内では,電子の励起スペクトルに全くエネルギーギャップは現われないことを示しました。

 

BCS理論では,電子-フォノン結合定数gはシャフロースとミグダルの結果とは一致しない非解析的な形式:exp(-1/g2)で入っています。

微視的理論は本質的に超伝導の全ての一般的特徴を説明します。

 

定性的説明に加えて,実際の金属中の電子-フォノン・バンド構造,電子-フォノン行列要素etc.に関する不確定性に必要とされる近似の粗さを考えると実験との著しい一致をみています。

以下では,理論を基礎付ける物理的考えに説明を与えることを試みます。幾つかの議論は多体問題の言葉で述べられますが,こうした手法の定式化のほとんどはこのテキストの中で紹介して展開します。

ただ,理論と実験の間の関係の詳細な議論はしないので,このエリアをカバーするには他の書物やレビュー論文を参照してください。

 

まず,最初の項では超伝導体についての最も重要で単純な実験事実を列挙します。その際,慣例として第1種(typeⅠ)の(柔らかい or ソフトな)超伝導体と第2種(typeⅡ)の(硬い or ハードな)超伝導体の挙動を区別しています。

1-1    Simple Experiment Facts(簡単な実験事実)

     電磁気的性質

 ソフトな超伝導状態での物質の直流電気抵抗はゼロです。この事実

対応する温度の通常状態の抵抗の1/1015の精度で確立されていま

 

 絶対温度T=0 では超伝導体の抵抗は(多分凝縮からの励起を生じる

値の臨界振動数hcωg ~ 3.5kBcに対応する温度T=Tcまで)完全

にゼロです。(ただし,hc≡h/(2π))

 

 実際にはギャップの端は不鮮明であり,ある場合にはギャップの端よ

下で前触れの電磁波の吸収が観測されます。

有限温度では(多分ω<ωgなら温度励起された常流体による吸収のため)あらゆるω>0 に対して有限な交流抵抗が有ります。

 

そしてω≧ωgに対しては正常状態と超伝導状態の抵抗は本質的に等しく温度には依りません。

1933年マイスナーとオッシェンフェルト(Oschenfeld)はバルクな超伝導体が完全に反磁性的であることを発見しました。

 

つまり磁場は深さλ~500Åまでしか侵入せず,物質本体からは排斥されます。

もしも,誤ってゼロ周波数の電気抵抗が消えるということが超伝導体内で任意周波数の電場が有り得ないことを意味すると主張するなら,マクスウェル方程式rot=∇×=-(1/c)(∂/∂t)は,正常金属内にあった磁場が金属が超伝導になったとたんに"凍りつく"ことを主張することになります。

これはマイスナー効果に反しています。

 

マイスナー効果によると磁場は超伝導相では強制的に物質本体から追い出されています。

 

ポイントは超伝導体は,唯ゼロ周波数のみで消える誘導インピーダンスを生起させるということです。そしての排除を許すのは,このゼロでないインピーダンスです。

バルクでのソフトな超伝導体中での磁束の完全排除はを外場とすると超伝導体の単位面積当たり2/(8π)だけヘルムホルツの自由エネルギーを増加させます。

 

凝縮から超伝導相への移行を区別させるものは唯一総エネルギーの変化があることですから,超伝導状態と正常状態の総自由エネルギーが等しい臨界の磁場Hc(T)が存在する必要があります。

 

臨界場はT=0 では最大のH0でT=Tcではゼロに落ちます。

 典型的なソフト超伝導体,例えばAl,Sn,In,Pb etc.ではH0は2300ガウス程度です。

ハ-ドな超伝導体,例えばNb3Snでは超伝導性は下の臨界場HC1より大きいHに対して物質の大部分に磁束が侵入することにより多分105ガウスのオーダーの上の臨界場HC2まで保持されます。

 

それ故,ソフト超伝導体に反し,ハード超伝導体ではHC1より上では完全なマイスナー効果は存在しません。

もし,多重連結超伝導体,例えば中空円筒などがあれば,穴を通過する磁束は任意の値を取ることができなくて,hc/(2e)~ 4×10-7(ガウス/㎝2)の倍数に量子化されます。

 

磁束の単位として,これの2倍の大きさの量子化がロンドンによって予測されていましたが,この効果の実験的観測と正しい磁束単位の確立はディーバー(Deaver)とフェアバンク(Fairbank),およびドル(Doll)とナバウアー(Nabauer)により独立になされました。

     熱力学的性質

 ゼロ磁場ではT=Tcにおいて第2種の相転移をします。

 

比熱の跳びは移の真上では一般に正常状態の電子比熱γTcの約3倍

です。

 

 上手に鍛えられた純粋な標本においは遷移の幅は10-4K程度に小さ

成り得ます。

 

 もっとも,これは遷移の内部幅であるとは信じられていません。

/Tc → 0 につれて電子比熱は一般にaexp(-b/T)のように下がります。これは多分励起を生成するためのエネルギー・ギャップによるものでしょう。

T=0 におけるエネルギー・ギャップ2Δ(0)のkBcに対する比は通常3.5のオーダーです。この比はPbやHbのように強く結合した超伝導体であるほど大きくなっています。

また,Snの比熱をプロットすると比熱-温度曲線はT≧Tc/2ではαT3に限りなく良く一致します。

 

磁場が存在するとき,バルクな標本のN-S相転移は第1種です。つまり潜熱が関係しています。

     同位体効果

 上で論じたように,同位体効果は超伝導性をもたらすのに,格子振動が

質的役割を果たすことを示しています。

 

 特にT=0 での臨界場H0遷移温度TcがTc ~ 1/Mα ~ H0(α~

1/2)のように物質の同位体質Mが変わるにつれて変動するのがわかり

ます。

そこでTc とH0は軽い同位体では大きいです。

 

もしも現象において格子振動が重要でなければ,なぜ中性子が核に加わるとTcが変わるのかの理由がわかりません。

 

それは,その主な効果がイオンの質量を変えることだからです。

αの値としては,多くの超伝導体に対してはα=0.45~0.50が近似的に正しいのですが,幾つかの注目すべき例外もあります。

 

例えばRu,Mo,Nb3Sn,Os23で,これらについては同位体効果が小さいか消えています。

 

ガーランド(Garland)が示したように,これはフォノンの遷移を生起させるということを排除するものではありません。

もっとも,こうした材料の実際のメカニズムが現時点で然りと解明され確立されているわけではありません。

 

電子-フォノン相互作用は,こうした例外ケースにおいてさえ適切なメカニズムでないということは有りそうにないからです。

     エネルギー・ギャップ

 超伝導体の素励起スペクトルにおいて,エネルギー・ギャップを観測

るにはいくつかの直接的方法があります。

 

 上で言及したように電磁輻射を吸収するための閾値がエネルギー・ギ

ャップの値を与えます。

 

 ギアエヴァー(Giaever)による1つのより簡単な方法は薄い(~ 20Å

の)酸素層で離された超伝導物質の2つのフィルムの電子トンネル流

測定することです。

T→ 0 につれて,適用電圧V×|e|(電子の電荷の絶対値)がエネルギー・ギャップの2Δを越えるまでは全く電流は流れません。

 

温度が増加するにつれV<2Δ(T)に対しても有限電流が流れるようになります。電流-V曲線のブレイクは|e|V=2Δで保持されます。

この方法で観測されるエネルギー・ギャップの温度依存性は,単に音波の減衰率,核磁気の崩壊率,不純物によって制限された電子の熱伝導率からも決まります。こうした方法の全ては同一の結果を与えます。

     コヒーレンス(可干渉)効果)

 単純な2流体エネルギー・ギャップ模型に基づいて超伝導体中の核ス

ピン緩和率と同じ様に,電磁波や音響の吸収率を説明しようとするなら

ちに矛を見出します。

すなわち,実験的には音の吸収はTcより下ではTが減少するにつれて単調に減少します。一方,核スピンの緩和率は最初上昇しピークを通過後,低温でゼロにまで下がります。

 

然るに,正常状態におけるようにフォノンに関しても核スピンに関しても励起の結合について同じ行列要素を持つなら2つのプロセスは全く同じ温度依存性を持つはずです。

そこで少なくとも,これらの行列要素の幾つかは正常金属のそれとは異なっています。後に見るように超伝導状態にふさわしい行列要素は正常状態のそれらの線形結合で与えられます。

そして線形結合の係数は結合がスカラー or ベクトル,スピンに依存しますから,超伝導状態の行列要素の平方は音,電磁波,核磁気変数への励起の結合に対しそれぞれ異なります。

今日のところはここで終わります。 

参考文献:J.R.Schrieffer著「Theory of Superconductivity 」(Revised printing;Persues  Books)

 

PS:超伝導,あるいはそれに関係したフォノン,または格子振動について参照できるブログの過去記事を探してみると結構ありました。

 

 まず2006年6/15の「電気伝導(オームの法則)」,

6/17の「電気伝導(つづき1) (ジュール熱),6/19「電気伝導(つづき2) (衝突の正体),10/11「ボーズ・アインシュタイン凝縮とゼータ関数」,

 

 2007年6/9の「フォノン(1)(静止格子模型の破綻)」,6/12の「フォノン(2)(調和結晶の古典理論)」,6/13の「フォノン(3)(調和結晶の量子論)」,

 

 そして,6/15の「ハートリー・フォック(Hartree-Fock)近似(1)」,6/17のハートリー・フォック(Hartree-Fock)近似(2)」,6/18の「ハートリー・フォック(Hartree-Fock)近似(3) 」6/19の「フォノンによる電子間引力(超伝導の基礎) 」があります。

 

 まだまだ,2007年6/26の「フォノンと多体問題(超伝導の基礎)(1)」から7/4の「フォノンと多体問題(超伝導の基礎)(4) 」までのシリーズやもっと前の原子の分極振動による分子間力について述べた2006年10/14の「零点エネルギーとファン・デル・ワールス力」も参考になると思います。

 

 これらは今日のこの記事以降のシリーズに対する予備知識として参考になる記事を書き連ねているとも言えます。まあ,実はバックナンバーの宣伝ですが。。。 

 

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2008年12月25日 (木)

運動物質内の相対論(10)(屈折性物体中の光波)

運動物質内の相対論の続きです。

 

透明な絶縁体中での"光波=電磁波"の屈折現象に関連して,ミンコフスキー理論(Minkowski theory)とアブラハム理論(Abraham theory)を比較してみます。

マクスウェル(Maxwell)の"電磁波=光波"の理論によれば,屈折率がnの屈折性物体中の光学現象は(εμ)1/2=n(ε0μ0)1/2=n/c,またはn=c(εμ)1/2なる関係式で結ばれる誘電率ε,および透磁率μを有する物質に関するマクスウェルの現象論的電磁力学の式で記述されます。

 

そして,少なくとも波長が十分長い場合には,あらゆる分散現象が無視できるので,これは十分な精度で正しいことです。

さらに光を全く吸収しない理想的な透明体は完全な絶縁体でなければなりません。すなわち,σ=0,ρ=0,=0です。ただしσは電気伝導度,ρは電荷密度,は電流密度です。

さて,光線速度は波のエネルギーの伝播速度に等しいはずです。例えば光行差の角度の存在は,望遠鏡で物を見る際に物からの"光線=エネルギー"が望遠鏡の筒の中を通るためには望遠鏡を傾ける必要があることを意味します。

ところが電磁場のエネルギー運動量テンソルが与えられている場合,これをTμνとしてエネルギー密度をh=T00,エネルギーの流れ密度をSk=cT0kとすればエネルギーの速度は*/hで与えられることがわかっています。

そして相対論では光は波であるにも関わらず,質点粒子と同一の挙動をすることが要求されます。

 

つまり光波の場合,*/hが質点粒子の速度と同じ変換性を持つことが要求されます。

 

このことは4つの値を持つ量UをU≡(c/(1-*2/c2)1/2,*/(1-*2/c2)1/2)で定義したとき,これが4元ベクトルになることを意味します。

ところが,以前の2008年10/31の記事「運動物質内の相対論(1)」によれば,Uが4元ベクトルになるためには,条件として式Rμν≡Tμν-Tμλ*λ/c2=0 が常に成立することが必要十分であることがわかっています。

これの根拠を見るため,この2008年10/31の記事「運動物質内の相対論(1)」を引用します。

(※引用):まず,(1-*2/c2)1/2={1-2/(h22)}1/2=(Sμμ)1/2/(hc)なのでU=c(Sλλ)-1/2μと表わすことができます。特にU*μ=c2は常に満たされています。

2つの慣性系SとS'が無限小ローレンツ変換x'μ=xμ+εμνν=(δμν+εμν)xνμν=ενμで結ばれているとします。

 

このとき,εμνの2次以上の微小量を無視すれば,テンソルの変換性によりT'=(δ0λ+ε0λ)(δμν+εμν)Tλν=T+ε0λλμ+εμνなのでS'μ=Sμ+εμνν+cε0λλμ,S'μS'μ=Sμμ+2cε0λλμμです。

 

そこで(S'μS'μ)-1/2=(Sμμ)-1/2[1-cε0λλρρ(Sττ)-1/2]と書けます。

したがって,U*'μ=c(S'λS'λ)-1/2S'μ=U+εμν+c2ε0λ(Sσσ)-1/2[Tλμ-Tλρ*ρ/c2]となります。

 

ここでRμν≡Tμν-Tμλ*λ/c2とおくとU*'μ=U+εμν+c2ε0λ(Sσσ)-1/2λμです。

 

そして,μ=0 なら恒等的にR=T-T*λ/c2=Sν/c-Sλ/c=0 が満たされています。

そこで,UがU*'μ=U+εμνとなって4元ベクトルのように変換されるためには,μ=1,2,3と全てのνについて恒等的にRμν=0 が満たされることが必要十分です。(引用終わり)

さて,以下ではUが4元ベクトルになるための条件:Rμν≡Tμν-Tμλ*λ/c2=0 が満たされているかどうか,をTμνがミンコフスキーのテンソルに等しい場合:Tμν=Sμνとアブラハムのテンソルに等しい場合:Tμν=SAbrμνのそれぞれについて調べてみることにします。

まず,基本的な前提事項です。

まず,前記事同様,Fμν,Hμνの存在を仮定し電場を,磁束密度を,電束密度を,磁場の強さをとして,これらがE=(E1,E2,E3)≡-c(F01,F02,F03),B=(B1,B2,B3)≡-(F23,F31,F12),D=(D1,D2,D3)≡-c-1(H01,H02,H03),H=(H1,H2,H3)≡-(H23,H31,H12)で与えられるとします。

 

ここにFμν=∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xνですが,Hμνの電磁ポテンシャルAμによる表現は特に指定しません。

 

このとき,電荷も電流密度もない:ρ=0,=0 の空間における電磁場の方程式の解の中で,静止系での波動法線がの平面波となるものを取れば,その最も一般的な形は電場と磁場について=ε-1/2{f(t-(xn)/w)1+g(t-(xn)/w)2},=μ-1/2{-g(t-(xn)/w)1+f(t-(xn)/w)2}となります。

ここで,12は互いに直交し共にに垂直な単位ベクトルです。つまり,(12)=(1)=(2)=0,1×2とします。f,gは任意関数でありwはw=||,≡(εμ)-1/2=(c/n)で定義されています。はこの平面波の位相速度です。

これらは,ほぼ自明なことですが一応証明しておきます。 

(証明)ρ=0,=0 の均質で等方的な物質の静止S0系では電磁場のマクスウェルの方程式はdiv00=ρ0,div00=0,およびrot0-∂0/∂t=0,rot00+∂0/∂t=0,0=ε0,0=μ0で与えられます。

 

これらの式で,上添字 0を省略した後,ρ=0,=0 とすれば,div=div=0,ε∂/∂t=rot,μ∂/∂t=-rotです。

 

そこで,Eはそれぞれ独立に∂2/∂t2=w22,∂2/∂t2=w22なる同じ形の波動方程式を満足することがわかります。

 

ただし,w2=1/(εμ)です。

一般性を失うことなく,=(x,y,z)の座標成分の系で波動法線を=(1,0,0)に取ると,はポインティングベクトル(Poynting vector)×に平行ですから(En)=0,(Hn)=0 で,はy,z成分のみを持ちx成分を持ちません。すなわち,x=Hx≡0です。

 

また,*μν≡(1/2)εμνλσλσでFμνに双対な擬テンソルF*μνを定義すると,対称性から明らかに,μν*μν=(1/2)εμνλσμνλσ=0 ですが,この変換Fμν→ F*μν→ -c,→-/cとする操作に対応しますから,E=-c(F01,F02,F03),B=-(F23,F31,F12),=μにより(EH)=0 と結論されます。

(1,0,0)より,任意の時刻tに=(x,y,z)のxが一定のyz平面上では,が一定というのが,が平面波であるという意味ですから,,は(x,t)だけの関数になります。

 

そこで,div=div=0 は∂Ex/∂x=∂Hx/∂x=0 を意味しますが,これは今の場合はEx=Hx≡0 なので自動的に満たされます。

 

結局,=(0,Ey(x,t),Ez(x,t)),=(0,Hy(x,t),Hz(x,t))と表わすことができることがわかります。 

一方,,が(x,t)だけの関数なので,波動方程式∂2/∂t2=w22,∂2/∂t2=w22は∂2/∂t2=w22/∂x2,∂2/∂t2=w22/∂x2となります。

 

つまりy,Ez,Hy,Hzの各々は全て同じ方程式2ψ/∂t2=w22ψ/∂x2の解ψ(x,t)の1つを表わします。

 

そして,(x,t)だけの波動方程式2ψ/∂t2=w22ψ/∂x2の一般解ψがf1,f2を任意の1変数関数としてψ(x,t)=f1(t-x/w)+f2(t+x/w)なる形に書けることは微分方程式解法の一般論から良く知られている事実です。

特に,電場y,Ezについてx軸の正方向にのみ伝播する波と考えてy=ε-1/2f(t-x/w),z=ε-1/2g(t-x/w)とします。

 

このとき,μ∂/∂t=-rotから,μ∂Hy/∂t=∂Ez/∂x,μ∂Hz/∂t=-∂Ey/∂xです。

 

これらを積分するとHy=-μ-1/2g(t-x/w),Hz=μ-1/2f(t-x/w)となります。

そこで,(1,0,0)に対して1=(0,1,0),2=(0,0,1)とおけば,=ε-1/2{f(t-(xn)/w)1+g(t-(xn)/w)2},=μ-1/2{-g(t-(xn)/w)1+f(t-(xn)/w)2}と書けます。(証明終わり)

そこで,この静止系での波動法線を改めてと書けば,電磁場のエネルギーの流れ密度,つまりポインテイングベクトル×(εμ)-1/2(f2+g2)(ただしe≡e1×2)となります。

 

また,エネルギー密度は,h=(1/2)(ε2+μ2)=f2+g2です。

そこで*/h=(εμ)-1/2=(c/n)となります。すなわち,この系ではエネルギーの速度は位相速度に一致します。特に*22(εμ)-1=c2/n2で1/(1-*2/c2)1/2=c(εμ)1/2/(c2εμ-1)1/2=c/(n2-1)です。

 

平面波の位相というのはf(t-(xn)/w)=f(t-x/w)の引数(t-x/w)のことですね。

 

実際には単位も符号も関係なく(x-wt)=-w(t-x/w)も位相と呼ぶようです。関数fの値を一意に決める引数のパラメータという意味では,(t-x/w)でも(x-wt)でもどちらでもいいからですね。

  

そしてf(t-x/w)という関数は,fがf(α)という一定値を取る平面波の波面,つまり時刻tにt-x/w=α,または平面の方程式x=w(t+α)で表わされるyz面に平行な面が時刻t+Δtには(t+Δt)-x/w=α,または方程式x=w(t+Δt+α)で表わされるyz面に平行な面に移動する描像と見えます。

 

それ故に,位相αが一定の波面のαの値に無関係な移動速さΔx/Δt=wを位相速度と呼ぶのです。

 

速さでなく速度というからには,向きがあるので,実際の位相速度はまたはという向きを持つベクトルです。

さて,ここで表記の煩わしさを避けるため,比誘電率εrと比透磁率μrなる無次元量を導入します。

 

すなわち,誘電率,透磁率の真空のそれらに対する比を示す量εr≡ε/ε0r≡μ/μ0を定義します。

 

別の単位系では,この無単位の比誘電率εr,比透磁率μrを誘電率,透磁率と定義してεrrを単にε,μと表記する場合もあります。

これらを用いると,ε=εrε0,μ=μrμ0となります。そしてc=(ε0μ0)-1/2ですから,屈折率nが(εμ)1/2=n(ε0μ0)1/2=n/cで与えられることは,n=(εrμr)1/2なることと同等です。

 

また,(εμ)1/2=(εrμr)1/2/cですから,c2εμ-1=εrμr-1とやや簡単になります。

このことから,≡(c/(1-*2/c2)1/2,*/(1-*2/c2)1/2)=(c(εrμr)1/2/(εrμr-1)1/2,c/(εrμr-1)1/2),μ=cT=(ch,)=(f2+g2)(c,(εμ)-1/2)=c(f2+g2)(1,(εrμr)-1/2)が得られます。

また,マクスウェルの応力テンソルはtij=Eij+Hij-(1/2)(EDHBij=εEij+μHij-hδij=(f2+g2)(1i1j2i2 j-δij)=-(f2+g2)ijと書けます。

 

ここでは3と置くと1i1j2i2 jij=Σkkij k=Σkδkiδkj=δijと書けることを用いました。

そこで,静止系ではミンコフスキーのテンソルの空間部分はSij=-tij=(f2+g2)ijです。また,空間時間成分はSk0=cgk×=εμ(×)=(εrμr)1/2-1(f2+g2)よりSk0=cgk=(εrμr)1/2(f2+g2)kとなります。

したがって,aμ≡(Sμλ*λ)/c2において,μ=kに対する式としてak=c-2(cgk*0+tkj*j)=c-2{(εrμr)1/2(f2+g2)k}{c(εrμr)1/2/(εrμr-1)1/2}-{(f2+g2)kj}{cj/(εrμr-1)1/2}]=c-1(f2+g2)(εrμr-1)1/2kを得ます。

 

つまり-1(f2+g2)(εrμr-1)1/2です。

μν≡Tμν-Tμλ*λ/c2でTμν=SμνとおけばRμν=Sμν-Sμλ*λ/c2=Sμν-aμですが,前にも述べたようにR=S-S*λ/c2については,U=c(Sρρ)-1/2μなので恒等的にR=Sν/c-Sν/c=0 です。

 

つまりTμνの選択に関係なく,常にR=T-T*λ/c2はゼロです。

一方,Rij=-tij-ai*j=(f2+g2)ij-(f2+g2)ij=0, Rk0≡cgk-ak*0=(εrμr)1/2(f2+g2)k-{-1(f2+g2)(εrμr-1)1/2k}{c(εrμr)1/2/(εrμr-1)1/2}=0 です。

 

結局,全てのμ,νについてRμν=0 ですね。

以上から,Tμνがミンコフスキーのテンソルの場合,つまりTμν=Sμνの場合にはUが4元ベクトルになるための条件:Rμν≡Tμν-Tμλ*λ/c2=0 が満足され,エネルギー伝播速度*/hが任意の座標系でホイヘンスの原理(Huygense principle)から決まる光線速度に一致することがわかりました。

ここで物体の静止系SがSと同じ空間軸の向きを持った座標系S'に対して微小速度を持った座標系に対し,先ほど引用した「運動物質内の相対論(1)」でのS→S'の無限小ローレンツ変換:x'μ=xμ+εμνν=(δμν+εμν)xνμν=ενμでεij=0, ε0k=εk0=v k/c,ε00=0 を考えてみます。

εμνの2次以上の微小量を無視すれば,テンソルの変換性からT'=(δ0λ+ε0λ)(δμν+εμν)Tλν=T+ε0λλμ+εμνなので,S'μ=Sμ+εμνν+cε0λλμ,S'μS'μ=Sμμ+2cε0λλμμです。

 

そこで(S'μS'μ)-1/2=(Sμμ)-1/2[1-cε0λλρρ(Sττ)-1/2]と書けます。

S'系でのエネルギー速度はu*'k=S'k/h'=cS'k/S'0=cU*'k/U*'0です。今のミンコフスキーの採択ではUが4元ベクトルとして変換するのでx'μ=xμ+εμννと同様,UはU*'μ=U+εμνと変換されます。

すなわち,U*'k=U*k+vk*0/c=[ck+vkrμr)1/2]/(εrμr-1)1/2,U*'0=U*0+vk*k/c=[c(εrμr)1/2ve]/(εrμr-1)1/2なので,エネルギー速度の定義式に代入するとcU*'k/U*'0=[ck+vkrμr)1/2]/[(εrμr)1/2+c-1ve] ~ c(εrμr)-1/2k+v k-(ve)k/(εrμr)となります。

結局,*'=c(εrμr)-1/2-(ve)/(εrμr),あるいは*=c(εrμr)-1/2e=(c/n)なので*'=*-(vu*)*/c2 ですね。

ところで,一般的なS'がSに対してで運動している場合の位置座標のローレンツ変換は'=[(vx){(1-2/c2)-1/2-1}/2-t(1-2/c2)-1/2],t'=(1-2/c2)-1/2{t-(vx)/c2}です。

 

今の場合は,SがS'に対してで運動しているので,まず→ -とすると,'=[(vx){(1-2/c2)-1/2-1}/2+t(1-2/c2)-1/2],t'=(1-2/c2)-1/2{t+(vx)/c2}に変わります。

これらの微分を取り,d'=d[(){(1-2/c2)-1/2-1}/2+dt(1-2/c2)-1/2],dt'=(1-2/c2)-1/2{dt+()/c2}=(1-2/c2)-1/2dt{1+(vu)/c2}とした後,d'をdt'で割って'=d'/dt',=d/dtとすれば,S系での速度のS'系での速度'への変換が得られるはずです。

まずd'の表式の両辺をdtで割ると,d'/dt=[(vu){(1-2/c2)-1/2-1}/2+(1-2/c2)-1/2]となります。そして'=d'/dt'=(1-2/c2)1/2(d'/dt)/{1+(vu)/c2}ですから,結局'=(1-2/c2)1/2/{1+(vu)/c2}+[(vu){1-(1-2/c2)1/2}/2]/{1+(vu)/c2}となります。

ここで,が微小であるとしての2次以上を無視すれば,変換式は'=-(vu)/c2となります。

 

この最後の表式'=-(vu)/c2を上で得られた光線についての**'の変換式*'=c(εrμr)-1/2-(ve)/(εrμr)=*-(vu*)*/c2と比較すると,エネルギー速度*が確かに質点粒子の速度と同じ変換性を持つことがわかります。

そして*'2=c2rμr)-12+(ev)2/(εrμr)2+2c(εrμr)-1/2(ev){1-(εrμr)-1}より,u*' ~ c(εrμr)-1/2[1+(εrμr)1/2(ev){1-(εrμr)-1}/c]です。

 

つまり,u*'=c/n+(ev)(1-1/n2)です。

 

これは,"フレネル(Fresnel)の公式"として知られている式です。

 

例えば,屈折率がnの水などが微小な速度で流れていて流れに平行に光が入射するとき,位相速度wもエネルギー速度u*=c/nもw'=u*'=c/n+v(1-1/n2)となって,近似的にフレネルの随伴係数α=(1-1/n2)だけ光波が水に引きずられるという描像に対応しています。

さて,これに対して,Tμνがアブラハムのテンソル,すなわちTμν=SAbrμνのの場合を考えます。

 

これの静止系での空間部分は,ミンコフスキーのテンソルの空間部分と同じくマクスウェルの応力テンソルに一致します。

 

すなわち,SAbrij=-tij=(f2+g2)ijですね。

しかし,空間時間成分はミンコフスキーのそれとは違います。

 

これはSk0=cgkで与えられますが,gkミンコフスキーの場合の×=εμ(×)=c-1(εrμr)1/2(f2+g2)ではなくアブラハムでは,Abr/c2=(×)/c2=ε0μ0(×)=c-1(εrμr)-1/2(f2+g2)となりSk0→SAbrk0=cgAbrkです。

 

そこでAbr≡(×)/c2/c2,×=εμ(×)=εμによりAbr-(εrμr-1)/c2ですからSAbrk0=cgk-(εrμr-1)Sk/cと表現できます。

それ故,ミンコフスキーのテンソルSμνに対してRμν≡Sμν-Sμλ*λ/c2=Sμν-aμによって係数aμ≡(Sμλ*λ)/c2を定義したのと同じく,アブラハムのテンソルSAbrμνに対してもRAbrμν≡SAbrμν-SAbrμλ*λ/c2=SAbrμν-aAbrμによって係数aAbrμ≡(SAbrμλ*λ)/c2を定義すれば,以上の結果から静止系でのこれを計算することができます。

すなわち,μ=kに対してミンコフスキーのaμがak=c-2(cgk*0+tkj*j)であったのに対し,アブラハムのそれはaAbrk=c-2(cgAbrk*0+tkj*j)=ak-c-2rμr-1)(Sk/c)U*0=ak-c-2rμr-1)(Sk/c){c(εrμr)1/2/(εrμr-1)1/2}=ak-(εrμr)1/2rμr-1)1/2k/c2となることがわかります。 

一方,ミンコフスキーのμνが全てゼロなので,RAbrkj=-tkj-aAbrk*j=Rkj+(εrμr)1/2rμr-1)1/2k*j/c2=(εrμr)1/2rμr-1)1/2k*j/c2,RAbrk0≡cgAbrk-aAbrk*0=Rk0-(εrμr-1)Sk/c+(εrμr)1/2rμr-1)1/2k*0/c2=-(εrμr-1)Sk/c+(εrμr)1/2rμr-1)1/2k*0/c2となります。

したがって,RAbrkj{(εrμr)1/2rμr-1)1/2k/c2}{cj/(εrμr-1)1/2}=c-1rμr)1/2kj,RAbrk0=-(εrμr-1)Sk/c+{(εrμr)1/2rμr-1)1/2k/c2}{c(εrμr)1/2/(εrμr-1)1/2}=-(εrμr-1)Sk/c+εrμrk/c=Sk/cとなります。

 

つまり,RAbrkj=c-1rμr)1/2kj≠0 ,RAbrk0=Sk/c≠0 となります。

いずれにしても,RAbrμν0 なので,Tμνがアブラハムのテンソルの場合:Tμν=SAbrμνの場合には,Uが4元ベクトルになるための条件Rμν≡Tμν-Tμλ*λ/c2=0 が満たされず,エネルギー伝播速度*/hがホイヘンスの原理から決まる光線速度と一致しない座標系が存在することになります。

既に無限小ローレンツ変換x'μ=xμ+εμνν=(δμν+εμν)xνμν=ενμに対して,U*'μ=U+εμν+c2εμλ(Sσσ)-1/2λνと変換されることを知っています。

 

ミンコフスキーの理論ではRλν≡0 であったのに対して,アブラハム理論ではRλν=RAbrλν≠0 となので,U*'μ=U+εμν+c2εμλ(Sσσ)-1/2Abrλνと変換されます。

すなわち,U*'0=U*0+ε0k*k+c2ε0k(Sσσ)-1/2Abrk0=U*0+ε0k*k+cε0k(Sσσ)-1/2k,かつU*'i=U*i+εiν+c2ε0k(Sσσ)-1/2Abrki=U*i+εiν+cε0k(Sσσ)-1/2rμr)1/2kiです。

そこで,先と同じく微小なについてεij=0,ε0k=εk0=v k/c,ε00=0 の場合はU*'0=U*0+vk*k/c+vk*k/c=U*0+2vk*k/c=[c(εrμr)1/2+2(ve)]/(εrμr-1)1/2です。また,U*'i=U*k+vi*0/c+vkrμr)1/2*ki=ci+virμr)1/2+(ve)irμr)1/2/(εrμr-1)1/2

*'i=cU*'i/U*'0=ci/(εrμr)1/2+vi+(ve)i-2(ve)i/(εrμr),つまり*'=c/(εrμr)1/2v-(ve)/(εrμr)+(ve){1-1/(εrμr)},または*=c(εrμr)-1/2e=(c/n)なので*'=*-(vu*)*/c2+(vu*)*(1-1/n2)/c2です。

 

そこで,u*'=(c/n)+2(ev)(1-1/n2)ですね。

 

これは,ミンコフスキーの理論で質点の変換公式であるフレネルの公式:u*'=c/n+(ev)(1-1/n2)と比較して,(ev)(1-1/n2)だけ異なっています。

 

アブラハムの理論では,に平行な場合でさえ,エネルギー速度が位相速度と異なることになります。

ミンコフスキーの4元力密度fμ=-∂Sμν/∂xν(cf0=-∂h/∂t-div,fk=-∂gk/∂t+∂tkj/∂xj)はρ=0 の場合にはゼロですが,アブラハムの理論ではAbr-(εrμr-1)/c2なので一様な絶縁体の中でも4元力密度はゼロにはなりません。

 

つまり,c(εrμr)-1/2(f2+g2)より,静止系ではAbr=c-2rμr-1)(∂/∂t)=c-1rμr)1/2rμr-1)(∂/∂t)[(f2+g2)],f0 Abr=f0 =0 ですが,S'系ではμAbr'=fμAbr+εμννAbrよりcf0Abr'=cε0kkAbr=c-2rμr-1)(/∂t)=c-1rμr)1/2rμr-1)(ve)(∂/∂t)(f2+g2)が得られます。

 

エネルギー保存の連続の方程式が∂h/∂t+div=-c0ですから,アブラハムの理論で0Abr0 とすると,電荷も電流もないとき物体静止のS系では-cAbr0がゼロですからエネルギーの湧き出し吸い込みがなく電磁場だけでエネルギーが保存しますが,上記の計算ではS'系では-cf0Abr'がゼロでないので電磁場だけではエネルギーが保存されないことを意味します。 

-cf0Abr'はS'系で単位時間に単位体積当たりに物質になされる力学的仕事です。これはS'系では電磁系と力学系の間に光の吸収,および再放出が生じることを意味しています。

 

慣性座標系というのは全て対等であるというのが特殊相対論ですが,S系では物体が静止していてもSに対して微小速度-で運動しているS'系では物体が静止せずで運動しているという当然の違いはありますね。

 

もしも物体が絶縁体でS系でρ=0でも≠0なら,S'系では電荷密度がρ'≠0 にもなり得るし,S系で=0 でもρ≠0 なら少なくともS'系で物体の運動に伴なうρという形の携帯電流が現われので'≠0となりますが,ρ=0,かつ=0なら如何なる座標系S'に移っても,ρ'=0,かつ'=0 のはずですね。

 

これに対してミンコフスキー理論ではSでもS'系でも湧き出し吸い込みはゼロなので電磁場だけでエネルギーが保存されます。

 

ミンコフスキー理論では,たとえ局所的)にでも透明体と電磁場の間にエネルギーのやり取りはありません。

 

しかし,閉じた系を仮定すれば,エネルギー運動量テンソルが対称テンソルであることを要求されますが,電磁エネルギー運動量テンソルはミンコフスキーの表現では対称でなくアブラハムの表現の方は対称です。

 

ミンコフスキーの正当性を求めるために電磁系だけでは閉じていないと仮定して,電磁エネルギー運動量テンソルだけでは非対称で電磁角運動量は保存しなくてもよいとしました。

 

さらにエネルギー速度を光線速度と考えることができるという意味でここでの話はミンコフスキーの正当性が強調される内容になっていますが,実は私には上記の話は逆にミンコフスキーの方が電磁系で閉じていると考えているという意味で,前の意図とは矛盾する話に帰結している,と感じました。とにかく,この程度の話で優越性の決着とするわけには行きません。

とりあえず,今日はここで終わります。

 

次回はちょっと話の本筋をブレイクして光の量子論での扱い,E=hν=hωなるエネルギーを持つ光子が屈折率がn=(εrμr)1/2の物体中を通過するときの話などをしてみたいと思います。(h≡h/(2π)でhはプランク定数です。)

 

(こちらはアブラハム理論の優位性につながるでしょうかね。)

 

参考文献:メラー 著(永田恒夫,伊藤大介訳)「相対性理論」(みすず書房)

 

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2008年4月17日 (木)

磁性の話(キュリーの法則)(補遺)

前記事で述べたように,Curie(キュリー)の法則は磁場H→ 0 の極限で磁化率(帯磁率)χが絶対温度Tに反比例するという法則:

 

χ=C/T (C≡NμB2μ0J2(J+1)/(3kB)) なる法則です。

 

これは,物質を構成する個々の原子のエネルギー的に安定な状態が"全角運動量がの状態=J多重項"で与えられ,Lande(ランデ)の因子:gJ≡3/2+{(S+1)(L+1)}/{2(J+1)}が一定,つまりJと共にL,Sの値も固定されている場合に成立します。

 

この原子から成る"バルクな物質=巨視的な原子数の系"が絶対温度Tの下で熱平衡状態にあって,の向きだけが統計的に乱雑になっている場合,

  

そして特にをゼロと見なしていいほど外部磁場が弱い場合に成立する法則です。

 

一般にが有限な量であっても,その物質の磁化ベクトル(H,T)の磁場方向の成分は,M(H,T)=N[ΣJ=-JJ(-μBJJ)exp{-(J,MJ)/(kB)}]/(ΣJ=-JJ[exp{-(J,MJ)/(kB)}])なる式で与えられると考えられます。

そして,上述の式は,M(H,T)={N/0)}(/∂β){log(ΣJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}と変形されます。

 

右辺の対数log(自然対数ln)の中の項は.実は双曲線関数を用いてΣJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}]=ΣJ=-JJ[exp(-αβJ)]=exp(αβJ)[1-exp{-αβ(2J+1)}]/[1-exp(-αβ)]=sinh{αβ(J+1/2)}/sinh(αβ/2)と簡明に表現できます。

 

したがって,この表式から,さらに(∂/∂β){log(ΣMJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}=α(J+1/2)cosh{αβ(J+1/2)}/sinh{αβ(J+1/2)}-(α/2)cosh(αβ/2)/sinh(αβ/2)=α(J+1/2)coth{αβ(J+1/2)}-(α/2)coth(αβ/2)と書けることもすぐにわかります。

そこで,既にBrillouin(ブリリュアン)関数という名称で知られている関数:BJ(x)≡{(2J+1)/(2J)}coth{(2J+1)x/(2J)}-1/(2J)coth{x/(2J)}を導入すれば,

 

(∂/∂β){logJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}=(αJ)J(αβJ)と,非常に簡単な表現になります。

 

そこで,α≡μBμ0JHが有限のとき,

(H,T)=N[ΣJ=-JJ(-μBJJ)exp{-(J,MJ)/(kB)}]/(ΣJ=-JJ[exp{-(J,MJ)/(kB)}])

{N/0)}(/∂β){log(ΣJ=-JJ[exp{-β(J,MJ)}])}

なる変形によって,

  

結局,磁化の大きさはM(H,T)=NμBJJ{JμBμ0J/(B)}となります。

 

こうして数学的に明確な形式で与えられることがわかりました。

双曲線余接関数は,y→ 0 でcoth(y)=cosh(y)/sinh(y)~(1+y2/2)/(y+y3/6)=(1/y)(1+y2/3)なる近似式で表現できることから,

 

x→ 0 でJ(x)~(J+1)x/(3J)と近似できることもわかります。

 

そこで,H 0 においてCurieの法則χ=C/T,C≡NμB2μ0J2(J+1)/(3kB)が確かに成り立つことも自然に得られます。

 

今思うと,前記事のように苦労して地道に計算する必要なかったですね。うーん,ある意味でくやしいですね。

 一方,y→ ∞ の極限では,coth(y) → 1ですから,x→ ∞ でJ(x)→ 1であり,それ故,このときはM(H,T) → NμBJJです。

 

 これは外部磁場Hが非常に強い場合とか,β=1/(B) → ∞,つまり温度Tが極低温のように低い場合には,磁化されて生じる単位体積当りN個の原子の磁気モーメントの全ての外部磁場方向成分がそろって,最大値μBJJを取るようになること,

 

 つまり全ての原子の磁気モーメントがそろって磁場の方向を向くようになることを意味しています。

 短いですが今日はこれまでとします。 

参考文献:金森 順次郎 著「磁性」(培風館)

  

PS:(2010年5/16追記):

  

Brillouin関数:BJ(x)≡{(2J+1)/(2J)}coth{(2J+1)x/(2J)}-1/(2J)coth{x/(2J)}においてJ→ ∞ の極限を取ってみます。

    

このとき,右辺第1項={(2J+1)/(2J)}coth{(2J+1)x/(2J)}→ coth(x)です。

  

一方,coth{x/(2J)}=cosh{x/(2J)}/sinh(x/(2J)}です。

  

そして,limJ→∞sinh(x/(2J)})}=0,limJ→∞cosh{x/(2J)}=1ですから,limJ→∞coth{x/(2J)}=∞です。

  

しかし,limy→0{sinh(y)/y}=1なのでlimJ→∞{1/(2J)}/sinh(x/(2J)}=(1/x)limJ→∞{x/(2J)})}/sinh(x/(2J)}=1/xです。

  

以上から,lim J→∞J(x)=coth(x)-1/xです。右辺はLangevin(ランジュバン)関数と呼ばれる関数に一致しています。

  

すなわち,L(x)≡coth(x)-1/xで定義されるxの関数L(x)をLangevin関数といいます。

  

J→ ∞ の極限の磁性はJが連続的で全ての値を取り得るという古典的極限に相当しています。

  

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 「TRS健康ランド」では2008年1月10日よりお徳用SCS500mlを新発売!!当店の専売です。

 そこのお酒のみの方,いろいろと飲食の機会の増えたあなた、体によいし特に肝臓によいウコンがいいですよ!! そして特に今回提供する沖縄原産の純粋な黒ウコンは当店が専売の新製品ですが古くから沖縄地方ではいわゆる男性機能に効果があると言われています。

 おやおや、そこの静電気バチバチの人、いいものありますよ。。。

 それから農薬を落とした後の皮がピカピカに光っているリンゴなど商品として販売する際の見栄えをよくするなどのために化学処理をした食品を安全に洗浄する新商品の洗浄液SCSはいかがですか。。。

 http://www.rakuten.co.jp/trs-kenko-land/「TRS健康ランド」-- 黒ウコン,SCS(洗浄剤)専売などの店:  私が店長 です。

http://www.mediator.co.jp/category/pages.php?id=115「中古パソコン!メディエーター巣鴨店」

http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。

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