119. 電気回路

2006年12月29日 (金)

鳳・テブナンの定理(電気回路)

 今日は電気回路において有名な「鳳・テブナンの定理(Ho-Thevenin's theorem)」について述べてみます。

 

 そのために,まず「重ね合わせの理(重ねの理)」を証明します。

 

 「重ね合わせ(superposition)の理」というのは,

 

 "線形素子のみから成る電気回路に幾つかの電圧源と電流源がある場合,

 

 この回路の任意の枝の電流,および任意の節点間の電圧は, 

 個々の電圧源や電流源が各々単独で働き,他の電源が全て殺されている

 場合の回路の電流や電圧の代数和(重ね合わせ)に等しい。"

 

 という定理です。

 

 ここで,"電源を殺す"とは,起電力や電流源電流をゼロにすることです。

 

 つまり,"電圧源を殺す"というのは端子間のその電圧源を取り除き,そこに代わりに電気抵抗ゼロの導線をつなぐことに等価であり,

 

 "電流源を殺す"というのは端子間の電流源を取り除き,その端子間を引き離して開放することに等価です。

 

 この定理を証明するために,まず電圧源のみがある回路を考えて,線形素子に対するKirchhoffの法則に基づき,回路系における連立1次方程式である回路方程式系を書き表わします。

 

 すなわち,を電圧源列ベクトル,を電流列ベクトルとし,をインピーダンス(impedance)行列とすれば,

 

 この回路方程式系はZiと書けます。

   

 

このとき,電気回路の特性からは必ず,逆行列であるアドミッタンス(admittance)行列:-1を持つことがわかります。

 

したがって,を単独源の和として=Σkと書くなら,

-1=Σ-1kとなるので,k-1kとおけば

=Σkと書けます。

 行列の図で表現すると,

 

  

  

 

   

     

です。

  

同様に,を電流源列ベクトル,を電圧列ベクトルとすると,YVなので,k-1kとおけば=Σkとなります。

 

ところで,起電力がE,内部抵抗がrの電圧源と内部コンダクタンス(conductance)がgの電流源Jの両方を考えると,

 

電圧源の端子間電圧はV=E-riであり,電流源の端子間電流は

i=J-gVです。

 

これらの電源が等価であるとすると,

開放端子での端子間電圧はi=0 でV=Eより,

0=J-gEとなり ,

 

短絡端子での端子間電流はV=0 でi=Jより,

0=E-rJとなります。

 

これらが同時に成立するためには,r=1/gが必要十分条件です。

 

というわけで,電流源は等価な電圧源で,電圧源は等価な電流源で互いに置き換えることが可能です。

 

それ故,上で既に示された電流や電圧の重ね合わせの原理は,電流源と電圧源が混在している場合にも成立することがわかります。

 

これで,「重ね合わせの理(重ねの理)」は証明されました。

 

次に「鳳・テブナンの定理」ですが,これは,

 

"内部に電源を持つ電気回路の任意の2点間に"インピーダンスZL(=電源のない回路)"をつないだとき,

 

Lに流れる電流ILは,ZLをつなぐ前の2点間の開放電圧をE0,

内部の電源を全部殺して測った端子間のインピーダンスをZ0とすると,

 

L=E0/(Z0+ZL)で与えられる。"

 

という定理です。

 

これを証明するために,まず起電力が2点間の開放電圧と同じE0の2つの電圧源をZL直列に互いに逆向きに挿入した回路を想定します。

 

これは,挿入した2つの電圧源の起電力の総和がゼロなので,実質的には何も挿入しないのと同じですから,元の回路と変わりないので普通に同じ電流ILが流れるはずです。

  

 

そして,この2個の追加電圧源挿入回路は,結局,

 

"1個の追加逆起電力-E0から結果的に回路の端子間電圧がゼロで電流がゼロの回路"と,

 

"1個の追加起電力E0以外の電源を全て殺した同じ回路"との「重ね合わせ」に分解できます。

 

したがって,「重ね合わせの理」によって合計電流Lは,後者の回路の電流0/(Z0+ZL)に一致することがわかります。

 

この「鳳・テブナンの定理」は「等価電圧源の定理」とも呼ばれます。

 

電圧源を電流源に置き換え,直列インピーダンスを並列アドミッタンスに置き換えたものについての同様な定理も同様に証明できますが,これは「ノートンの定理(Norton)」=「等価電流源の定理」といわれます。

      (ノートンの定理↓)

 

 

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2006年7月 3日 (月)

電気の伝わる速さ(分布定数回路)

  以前,電流というのは電子などが流れる速さを意味しており,通常の家庭電器の中を流れる電流は数アンペア程度で,これは電子の速さにして秒速何ミリとか何センチ程度の遅いものですと書きました。

 そして,それでも電荷のキャリアがトコロテン式に押し出される結果として,遠いところに電源やスイッチがある場合でも,電灯などはほぼ即座に点くというような内容のことを述べました。

 それでは,ほぼ即座といっても,直流回路でスイッチを入れてから,電流がほぼ一定になって安定するまでに,実際どのくらいの時間がかかるのでしょうか?

 回路全体の抵抗をRオーム(Ω),電池など電圧源の直流起電力をEボルト(V)とします。

 導線には必ず変動電流によって誘導される起電力,つまり,自己インダクタンス(自己誘導係数)= L ヘンリー(H)があると考えられますが,電流 i アンペアが一定な安定状態では,それによる逆起電力は起きません。

 しかし,電流 i がゼロから定常値のE/Rに達するまでは電流は一定ではなく,次第に大きくなるように変化するため,その際僅かな間でも"逆起電力=自己誘導起電力"が働くはずです。

        

 そこで,回路方程式はL (d i /dt )+R i=E という形に書けます。

 t=0 には i=0 であったという初期条件で,この方程式を解くと, i =(E/R ){1-exp(-t /τ)} となります。ただしτ=L/Rです。

 この式によれば電流が定常電流の i =E/R になるには,時間 t が ∞ になる必要がありますが,実際にはt=τで既に i =(E/R )(1-1/e),つまり定常電流の約 2/3 にまで達し, t=3τで は定常電流の95 % 以上にもなります。

 そして円形断面の均質な導線の場合,透磁率をμ,長さをℓとして自己インダクタンスLを計算すると,L=μℓ/(4π)であることがわかります。

 真空では透磁率はμ=4π× 10-7Hです。そして抵抗はR=ρℓ/Sですが通常の半径が0.1mm程度の断面の銅製の導線ではρ=13.6ΩmでS=π× 10-8m2ですから,τ=L/RはμS/(4πρ)~  10-15秒程度になります。

 それ故,導線の材料が銅より抵抗の大きい金属だとしても,ほんの一瞬で電流はほぼ100%までの定常に達するはずです。

 こうした非定常電流の現象を過渡現象といいます。

 例えば2本の平行導線回路が無限に延びていて左端に電圧源Eボルトがあるだけの閉回路を想定します。

 これは,単位長さ当たり,抵抗R,インダクタンスLと2本の導線間のキャパシタ(コンデンサ容量):C,と内部コンダクタンス(アドミッタンス=インピーダンスの逆数の実部)Gがあるような等価回路としてよいと考えられます。

 ( Z=R+jX , 1/Z=Y=G+jB です。R=0 ならG=0 )

         

 こうした回路を分布定数回路といいます。

 分布定数回路において,R=0 かつG=0 の極限の理想状態の回路,つまり,無損失回路を考えます。

 x から x+Δx までの間の電圧変化をΔe とすると ,e+Δe =e-(LΔx) (∂i/∂t) であり,また電流上昇をΔi とすると i+Δi= i-(CΔx) (∂e/∂t) と書くことができます。

 これら2つの式は,∂e/∂x=-L(∂i/∂t),および∂i/∂x=-C(∂e/∂t)となります。これらの式をまとめると,∂2i/∂t2={1/(LC)} (∂2i/∂x2)となりますが,これは位相速度がv=1/(LC)1/2の波動方程式です。

 したがって,電流は波動として,この速度 v で伝送されます。

 電圧も全く同様な方程式に従う波として伝送されますから,この v が「電気の伝わる速さ」と同定されます。

 特に2本の平行導線の断面が同じ半径 r (m),の円で,それら導線間の中心間の距離が d (m)なら,導線の表面だけを電荷が流れるとして計算すると,

 L=(μ/π)log(d/r) (H/m), C=πε/log(d/r) (F/m) なので, v=1/(LC)1/2=1/(με)1/2となることがわかります。

 ここにεは誘電率です。

 特にμとεが真空中と同じ値(μ=μ0,ε=ε0)なら ,v は光速 cに一致します。

 つまり,電流は実質的には蟻の歩く速さのように遅いにも関わらず,回路に何のエネルギー損失も無い理想的な場合なら,「電気の伝わる速さ」は真空中の光速cに等しいことになります

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