118. 観測問題・量子もつれ

2018年10月29日 (月)

記事リバイバル⑤(量子通信(続::神はサイコロ遊びをなさる))

※ リバイバル記事第5弾!!同じ日にアップした前記事の続きです。

量子コンピュータの話をしたので,ついでに量子通信の可能性について述べておきましょう。

一般に情報の伝達速度は最高でも真空中での"電波=電磁波"の速さでしかない,つまり光速以上の速さでは意味のある物や事は伝わらないというのが現代の常識です。

光速を超える速さの粒子としては,かつてオーストラリアの学生だったか?が,後にタキオン(tachyon)と名付けられた超光速粒子を発見したというニュースがあったらしいです。

 

しかし,それを追検証しようと当時の人々が努力したにも関わらず,結局再び観測することはできず,結局,幻の粒子とされたという経緯があったと聞きます。

タキオンというのは,日本では競馬の馬の名前にもなりましたが,もしそうした粒子が存在すれば,それは虚数質量を持ち,決して止まることはできず必ず光速以上の速度を持っていて,加速しようとエネルギーを与えると逆に減速してしまうという奇妙な粒子(ロバ粒子?)です。

 

それに,虚数質量というのは物理的にはどういう意味なのかもわかっていません。

かつて,日本で唯一?のハードSFの作家であり遅筆で有名な堀晃(ほりあきら)氏の短編小説集で「太陽風交点」とか「恐怖省」とかというのを読みました。

 

その中ではよくタキオン通信というのが描かれていて,担当者はその通信をした代償として記憶喪失になる,というのがありました。

 

実際,タキオンがあると"巨視的因果律=結果は必ず原因よりも後に起こる。"という自然現象の基本原理が破れてしまうので記憶喪失というのはよくできた設定だと思います。

一方,量子通信というのは,別にタキオンを利用するわけではなく(そもそもそんなものは今のところ存在が確認されていません。),量子力学の非局所性(non-locality)を利用するものです。

つまり,量子テレポーテーションという言葉もあるように,量子力学では2つ以上の場所に同時に存在できるわけです。

 

しかし,これは相対論にも反することで先に述べた巨視的因果律にも違反します。

 

かつて,アインシュタイン(A.Einstein)らは「EPRのパラドックス(Einstein-Podolski-Rosen paradox)」という思考実験を提示し,量子論の一般的解釈は相対論(特に因果律)に矛盾するから間違っている,と主張しました。

これについては,記号論理学で成り立つベルの不等式(Bell's inequality)が,"量子論的なブール代数=量子論理"では破れるということがわかっていたのですが,そのことを実際に実験で確かめることで決着が付きました。

 

それは1980年代に実施されたアスペ(Aspect)の実験などの種々の実験の結果でした。この結果,アインシュタインらの主張が斥けられて彼らの敗北という結果になったわけです。

 

やはり,神はサイコロ遊びをなさる。(God does play dice.)というのが正しかったのですね。

量子論では2つの場所に同時に存在できるわけです。

 

粒子といえども完全に粒子ではなくて拡がりのある波(wave)でもあるわけですから,これは決して不思議ではなく,同じ1つの波の一部がそれぞれ確率的に東京と大阪に同時にあっても不思議ではないわけです。

 

極端にいえば,ハイゼンベルク(Heisenberg)の不確定性原理により,"速度の確定した1つの波=平面波"であれば同一の確率で全宇宙のあらゆるところに同時に行き渡っているということになります

量子論の方程式であるシュレーディンガー方程式(Schrödinger equation)は自由粒子の場合には,いわゆる古典的拡散方程式の時間という実数パラメータを純虚数時間に置き換えれば得られるものです。

 

そもそも拡散方程式は,放物型の偏微分方程式であるということもあって,解は波(波動)とはならず,拡散現象は相対論を破る非局所的な解をもたらす方程式です。

 

つまり,拡散は光速よりも速く影響が瞬時に伝わるという定式化になっています。(アメリカ大陸の西海岸で大地震が起きると,タイムラグもなく即座に日本の海岸で津波が起きるというような方程式です。)

この拡散方程式の時間を虚数にして得られるものがシュレーディンガー方程式ですから,その解が非局所的でテレポーテーションが可能なことを示し,巨視的因果律を破るものであるとしても不思議ではないわけです。

 

しかし,虚数を入れたため放物型方程式なのに解は波動になります。

 

シュレーディンガー方程式を特殊相対論と結合したディラック方程式(Dirac equation)においても状況は同じです。

 

ただ解である波動関数,あるいは確率波は直接観測にかかる量ではないので,その意味では因果律を破るとは言えないかもしれません。

相対論を含む現代の量子論では,巨視的因果律は破れても微視的因果律は破れてはいません。

 

後者は"空間的(space-like)に離れた2時空点における物理量の交換関係はゼロである,つまり物理的に無関係である。"というものです。

 

空間的に離れた2時空点というのは,光速信号でつなぐことが不可能な2つの事象(出来事)のことです。

だから,情報伝達が可能であるかどうか?という意味では量子論の非局所性は実用的ではないのではないか?

 

(つまり,たとえ東京と大阪のように離れていても相関(EPR相関)のある情報であっても,それとは別に東京で得た情報を即座に大阪に伝えられる実用的手段がないなら個々独立に情報を得るのと同じで,一方で得た情報を超光速で情報を知らない他方に伝えるという意味はない。)

 

と私は思っていたのですが,量子コンピュータと同じくそうした問題はクリアされる道があるらしいということです。

 

ただ,それについては,私はまだ上に述べてきた認識があるくらいで十分な知識を仕入れているわけではありません。

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記事リバイバル④(公開キー暗号(神はサイコロ遊びをなさる))

※ リバイバル記事第4弾!!2006年5/4の量子エンタングルメント関係の記事の再掲載です。

先ほど「パズル・パレス(迷宮)(The Puzzle Palace)」という暗号の解読に関わる小説を読み終えたところです。

 

 これは「ダヴィンチ・コード(The Da Vinci Code)」というベストセラー小説を書いたダン・ブラウン(Dan Brown)の処女作です

 

 確かに両方の著書はよく似ています。この著者は小説の中に自然科学とか数学とかを神秘的なテーマとして含ませるのが特徴のようです。

小説「パズル・パレス(迷宮)」の中では暗号特に公開鍵(キー)暗号の話がよく出てきます。

 

この暗号はアメリカの中央情報局(C.I.A)などが実際に使っているらしく,現状では事実上解読不可能なものですが,もしも後述するような量子コンピュータができたなら解読できるだろうと予測されるものです。

公開キー暗号,特にRSA式公開キー暗号について私が興味を持ったのは,シルヴァーマン(J.H.Silverman)著の「はじめての数論」という整数論の本を,一昨年だったか昨年だったかに読んで,その中に書かれていた内容からそれを知ったのがきっかけでした。

 

この本は,私がスタッフをやっている「ニフティ・物理フォーラム(@nifty Fphys)」の母胎の「ニフティ・サイエンスフォーラム(nifty-serve FSCI)」の数学会議室で長年の間,"議長=世話役"をやっておられ,ホームページに移った後もスタッフとして残っておられる「プークさん=鈴木治郎氏」が翻訳されたものです。

 

RSA式公開キー暗号は,いわゆる合同式に関する方程式を解くことで解読するものです。そこでまず,合同式というのはどういうものか?ということから説明しましょう。

 

a,bを整数の組として,a≡b(mod 7)のように書かれた式を合同式といいます。この記号は,"7を法(modulo)としてaはbと合同である。"と読みます。

 

そして,a≡b(mod 7)は,"aとbをそれぞれ7で割ったとき,それらの余りが全く同じである"ことを意味します。例えば,6≡20(mod 7),6≡-1(mod 7),103≡68(mod 7)...ということになります。

 

言い換えると,a≡b(mod 7)というのは,"aとbの差:(a-b)が7で割り切れるとき,そのときに限ってaとbは合同である。"という意味ですね。法(modulo)は7とは限らず,一般に,8≡41(mod 3),222≡57(mod 11)などと書けます。

RSA式暗号では,"複雑な合同式x131758(mod 1073)を満たす最小の自然数xを求めよ。"というような合同式の方程式を解くことが暗号解読につながります。

 

この合同式の方程式x131758(mod 1073)をどうやって解くのかについては,話が長くなるので省略しますが,要するに1073をすべて素数の積に素因数分解できればこれを解くことができます。

素因数分解というのは,例えば120=2×2×2×3×5というように,左辺の120を全てが素数の積に因数分解することを言います。もちろん,素数(prime number)とは1以外で自分自身と1以外に約数を持たない自然数のことです。

1073の場合は,素因数分解が1073=29×37だということは容易にわかるので,その結果としてx=905と計算できるわけです。つまり,905131 758(mod 1073)という式が成立します。

例えば,xk ≡y (mod m)という合同式において,予めk=79921,m=163276821という値を知っていて,右辺のyとして5つの数のリスト:(145387828,47164891,152020614,27279275,353564912)が暗号として送られてきたとします。

 

これらの最初の数:y=145387828についての方程式79921 ≡145387828 (mod 163276821)の解xを求めるには,mがm=163276821=12553×13007と素因数分解できることがわかる必要があります。

 これがわかっていれば,解読結果として,x=30182523が得られます。

 

 そして5つの暗号数yについて全て解いて,その結果のxの値を2桁毎に分けて順に並べます。x=30182523は,30 18 25 23と並べられます。

 

 5つの解xの全てについて並べたものは次のようになります。

 30 18 25 23 26 29 25 24 19 29 19 24 30 28 25 31 12 22 15

ですね。

 

 これらの数に,アルファベット(Alphabet)を対応させて当てはめれば,暗号は解読されます。

 一般に,11=A,12=B,13=C,....36=Zというように2桁の数にアルファベットを対応させるのが普通です。

 

 これを行うと,上記暗号は,

  T H O M P S O N I S I N T R O U B L E

つまり,"Thompson is in trouble."(トンプソンがトラブルにあっている)と解読されるわけです。

  しかし,暗号というのは他人に解かれては困りますが,本人には解けないと困ります。

 

 そこで,暗号を解いて欲しい人だけに,m=163276821については鍵(key:キー)として,"163276821が12553と13007の積に素因数分解できる。"ことを教えておくわけですね。

 

 具体的には,暗号は解くプロセスをコンピュータにプログラムしておき,キーとyのリストを入力すると直ちにxのリストが計算されて文章に変換された解読結果が得られるようにしておくわけです。

 m=163276821の素因数分解程度なら,大した労力もなくできるので,これは暗号としての意味を持ちません。

 

 しかし,mの桁を200桁とか400桁とかにしておくと,現在のコンピュータでは因数分解に何年か何十年かがかかるはずなので,それで解けたとしてももはや暗号としての価値はなくなっていることになります。

 

 そこでキーを持っている人だけに通じる秘密となります。これが公開(キー)暗号の一つRSA暗号の仕組みです。

 

 では,具体的にコンピュータでmの素因数を見つけるというのはどうすればいいのでしょうか? それは,もちろん単純には2から順にmを割っていって1つ1つ割り切れるかどうかを調べればいいのですが。。

 

 でも例えば 613という整数が何かの整数で割り切れるかどうか,を調べるのに2から 612まで600回程度も割り算をする必要はありません。

613は25×25=625よりも小さいので,仮に613が何かの整数で割り切れるとすると,それはまず2つの整数の積に表わせるはずですが,その2つの整数のうち,一方は必ず25以上で他方は25以下です。

 

そこで,2から25までの間の数で割り切れないなら,これの素因数はない,つまり613は素数であるということになります。

 

実際にはこれより効率のいい素因数探しのアルゴリズム(algorithm)もあるとは思いますが,基本的には8桁まで,つまり1億までの数が素数かどうかを調べるとか,その素因数を全て探すとかが目的なら,"せいぜい4桁の試行回数=1万回の割り算"をするだけでいいことになります。

しかし,もしmが200桁ならどうでしょうか。基本的には1から100桁までの全ての数で試行錯誤して割り算をやって余りがでるかどうかを検算する必要があります。

 

これは現在のコンピュータでも莫大な計算量なので,工夫しても何年かはかかるでしょう。というわけで,事実上解けない暗号ということになるわけです。

 

もっともパスワード(password)である"素因数=鍵(キー)そのもの"を盗まれたら意味はないわけですけどね。

ところが,いまの工学(technology)の世界では,現在のコンピュータの計算時間をはるかに縮めることができる"量子コンピュータ"という可能性があります。例の小説の中では既にこれが完成して実用化されていて世界中の暗号が無力化されたことになっています。

 

しかし,実際には,まだ量子コンピュータは,せいぜい数桁の因数分解に成功したというレベル(level)にしか到達してないらしいです。

 

しも,量子コンピュータが完成すれば,それは現在のコンピュータが何年,何十年とかかる計算を,因数分解などの計算の種類によっては数秒,数分で解いてしまうということになります。

 

今の暗号は役に立たないことになり,新しいものを考え出す必要にせまられるでしょう。

 

そもそも,コンピュータといのは,数でいえば全ての数を2進法で表わす,つまり1と 0 だけで表わすことが基本になっています。0 は 0 ,1は1,2は10,3は11,4は100,5は101,6は110,という感じです。

 

このときの1と 0 で表わされた各桁をビット(bit)といいます。また,面倒なので,ビットが8桁集まったものをまとめてバイト(Byte)と呼びます。

これを利用すると,片手の指だけで 0 から 31まで32個の数をカウントすることができます。手を開いた状態が 0 ,親指を折ると1,人差し指を折って親指を元に戻して立てると2,人差し指と親指を折ると3,中指まで使うと7まで数えられます。

 

指が1本増えるごとに折った状態と立てた状態の2通りがあるので数えられる数の個数は2倍に増える,というわけです。片手を握った状態は31ですね。

 

このことから,両手を使うと 0 から1023まで数えられる,ことになります。足の指を折るのは大変ですが,もしも可能なら手足の指は全部で20本あるので 0 から(1024×1024-1)まで,実に100万以上まで数えることができます。

手足の指:20ビットだけでもそこまで数えられるのですが,現在のパソコンの最先端には64ビットのマシンというのもあって,それだと整数だけでも莫大な数(264-1)まで数えられるということがわかります。

 

コンピュータの具体的な計算には,媒体(メディア)としてメモリーとか,時には大容量のディスクなども利用しますが,基本的に一度にバサッと足し算や掛け算などの演算をするものは,32ビットマシンなら2進法で32桁,64ビットマシンなら2進法で64桁くらいのレジスターと呼ばれるものです。

電気回路的には,"通電=(電流が流れている状態)がon=1"で,"(電流が流れていない状態)がoff=0 "であり,これによって電流で数:1,0 を表現することができます。

 

これをうまく組合わせれば,全ての数を表わすこともできるのです。

 

さらには論理回路といって,いわゆるブール代数の論理を表現する電気回路もコンピュータの中に構成されています。

 

だいたい,"NOT=(否定)"という回路があればほとんどの論理を表現できます。"NOT=(否定)"というのは1がくれば 0 を, 0 がくれば1を返す論理回路です。

 

例えば"YES=(肯定)"なら,"NOT=(否定)"を2つ直列に並べればいいわけです。逆に"YES=(肯定)"だけの回路からはどうしても"NOT=(否定)"をつくることはできません。

ですから,例えばコンピュータの内部で割り算の試行錯誤を行なう場合,1ビットなら 0 の場合と1の場合の2通りを行うのですから最低2回の計算をする必要があるわけです。

 

そして2ビットなら4回,3ビットなら8回というように計算回数はネズミ算的に増加していきます。

 

そこで,単純に考えても200桁の数 ~ 10200なら,10100回,つまり約3300ビット=23300回くらいの計算回数が必要ということになり,コンピュータの能力をもってしても莫大な計算回数となって事実上不可能になるわけです。

ところが,量子コンピュータのアイデアはブール代数の単純な論理では表現できない量子力学に従う論理回路を利用することで,計算のスピードが飛躍的に上昇して,こうした時間的限界を突破できるというものです。

 

かつて,アインシュタイン(A.Einstein)は,"神はサイコロ遊びをなさらない。"とか,"神はサイコロを振らない。"(英語では"God does not play dice.")とか述べたと言われています。

 

これこそは"アインシュタイン生涯最大のあやまち"です。実際は"神はサイコロ遊びをなさる。(God does play dice.)"というのが正しいのです。

 

これについては後で量子通信について述べるときに詳しく説明しますが,"神がサイコロ遊びをする。"というのは量子力学の1つの真髄を示す言葉です。

現在のコンピュータというのは 0 の場合と1の場合で"2通り=2回の計算"が必要なわけですが,これが1回で済めば結局,"何桁=何ビット"であろうと1回の計算で済むわけですから,計算時間は飛躍的に短くなることは自明です。

 

これを実現しようというのが量子コンピュータという概念ですね。

量子論というのは全ての事象(event)は確率的にしか存在できない,つまり"粒子といえども実は存在する確率というものの波=確率波 or 量子(quantum)"でしかない,というものです。

ですから,確実に 0 である,とか確実に1であるとかいう確率として100%の状態ももちろんあるのですが,0 と1が半分ずつの確率で存在しているような中途半端な重ね合わせ状態も存在可能なわけです。

 

したがって,最初から確実に 0 であるとか1であるとかではなく,0 と1の両方の可能性を持つ状態を入力信号として入力すれば,0 に対する結果と1に対する結果が重ね合わされたものとして出力されるはずというのが,量子コンピュータの基本的なアイデアです。

 

つまり,入力信号の 0 である状態と1である状態のそれぞれの確率を示す係数さえ知っていれば,結果もその割合の重ね合わせで出力されるので,その結果, 0 の場合と1の場合の計算結果を並列して同時に得ることが可能になるのです。

 

しかしながら,技術的には,まだ色々な問題点があるので実用化には到っていないらしい,という話です。

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2010年6月20日 (日)

量子哲学論争??(ネルソン,ボーム)

 さっき,私が「EMANの物理学」の談話室に投稿したものをここにダブルポストします。っていいの?今どきはいいんじゃないの。。つぶやきなんかは,そっち(マルチポスト)のほうが元から主流ですよ。

PS:白い画面がなぜか赤い。。:睡眠不足??糖尿性網膜症?? 

 なぜブラウン運動は超光速? 

 そりゃ軌道じゃないからさ。。。

 んじゃ軌道って何? 

 そりゃ位置と速度が同時に決まるもんだよ。

 ブラウン運動には速度がないだろ。。

 ウソー。。じゃ間が無くてトビトビの点にしか見えないんだ。。

 だから確率の過程なんだろう。。。

 じゃ,ブラウン粒子の運動ってなぜ軌道じゃないってわかるの?

 もしそうだったら光速は超えないだろ。。。

 ってこりゃトートロジーだね。。。

 逆に数学の確率過程を量子論の波動関数で定式化してみようってか?

 酔っ払いでした。。。 TOSHI    ZZZZZZ...

 ↑ここまでが投稿です。

  これ,実はかなり重要な話と思うんですけどね。量子論の解釈論争なんですが,ボームのパイロット・ウェーヴとかネルソンの確率過程(ブラウン運動)解釈とか色々と。。。

 私は,昔からといってもそんな昔じゃないかな。。。これらは解釈という名の哲学論争であって,結構不毛な不可知論か形而上学だと思ってるのです。

 ブラウン粒子の運動や分子拡散の分子が本当に拡散方程式に従うなら,それは既に相対論の因果律を破ります。それじゃ常識的に見てオカシイじゃん。てことになります。

 イヤ分子の拡散運動とか言ってるけど,,それは実は超光速なんで物理的には軌道運動なんかじゃないよ。。って話ですね。。。

 古典軌道というのは謂わゆる"エーレンフェストの定理,または対応原理"のようなもので量子論の期待値としての軌道をたどったものです。

 だから,その古典軌道で以って量子論の解釈をするってのは"ニワトリが先か卵が先か"の水掛け論でしょう?常識で解釈しようなんて無理です。

 というのが私の昔からの感想なんですね。ってイヤ今ここで初めて述べたのカモ。。まあ,誰でも考えそうな陳腐な感想かあるいは誤解でしょうが。

 パイロット波だのブラウン運動だので量子論を説明可能でしょうよ。そして量子論の言葉でパイロット波もブラウン運動も説明できるでしょうよ。。。

 でも,それはこういう働きをするモノだよって説明用の都合のいい新道具を次々に発明すれば何だって説明できるし解釈できます。

 イヤ私はこれ以上深入りしたくないです。。

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2010年2月27日 (土)

遅延選択実験(タイムマシン?)(5)

 γ-崩壊の理論について書くための準備として2月6日に「電磁力学と解析力学」という記事を書き,次いで本題の記事を書いている最中に,昔の会社の先輩から確率・統計と重回帰の関連の質問を受けたので2月12日から今まで「確率と分布関数」シリーズを書いていました。(まだ途中です。)

 しかし,途中で「遅延選択実験」の続きを早く書けという旨のリクエストがありましたので,取り合えず,前に書くと約束していたウォルボーン他による"量子消しゴム"の実験についての論文:

S.P.Walborn,M.O.Terra Cunba,S.Padua and C.H.Monken「Double-slit quantum eraser(二重スリット量子消しゴム)」Phys.Rev.A,Vol.65(3)(2002),pp033818-1-033818-6 の翻訳をします。 

記事のページ数の関係もあって,今日載せるのはほぼ直訳のただの機械的翻訳だけですが次回「遅延選択実験(6)」で内容の詳細な解釈等を述べる予定です。

 

以下翻訳文です

 

Abstract: 干渉を生み出すヤング(Young)の二重スリットを実際に用いた量子消しゴムの実験の報告です。

 

 この実験はScully,Englert,Waltherによって提案された実験[Nature(London)351,111(1991)]の光学的アナロジーとして考察されました。

エンタングルしたペア光子のうちの1つが離れた検知領域に干渉パターンを創り出すような適当な大きさのヤング(Young)の二重スリットに入射します。

 

子がどちらの経路を通ったかをチェックするマーカーとして作用するように軸が直交するような向きに取った1/4-波長板を各スリットの前に設置します。

 

1/4-波長板は干渉する光子の偏光をマークします。それ故,干渉パターンを破壊します。その後,干渉を回復するために他方のエンタングルした光子の偏光を測定します。

 

さらに"遅延消去"環境の下で実験を行ないます。(了) ※

.Introduction(序)

波動と粒子の二重性,相補性原理の発現は,干渉計中の粒子の挙動について多くの疑問をもたらしてきました。

 

長い間に,どちらの経路を通ったか?の情報を得ることと干渉縞が見えなくなることは相補的な事柄であることが知られてきています。

如何なる干渉計でも経路の区別を可能にすることは干渉性の破壊(干渉縞が見えなくなること)を引き起こします。

いずれの経路を通ったか?という情報を得ることと干渉効果の発現が両立できないという性質は,種々の著者により不等式を用いて量化されています。[文献1-6]。

 

不確定性原理は,元々こうした経路測定のために干渉縞が消失することに責任があるメカニズムであると考えられていました。

このアイデアの最初のそして恐らくは最も有名な例はブリュッセルでの第5回ソルヴェイ会議における"Einsteinの「反跳二重スリット思考実験」と関連したEinsteinとBohrの対話です。

 

この思考実験は,入射粒子から二重スリットへの運動量遷移の測定が粒子の"軌道"を決定するというものです。

 

しかし,Bohrは二重スリットの初期位置に関する知識の不確定さが干渉の最小と最大の間の距離の大きさと同じオーダーであることを示し否定しました。干渉縞は不確定性原理によって洗い消されるのです。[7]

より近年では,ScullyとDruhlはあるケースにはこうした干渉の損失の責任は不確定性原理ではなく粒子と測定装置間の量子エンタングルメント(量子もつれ)に帰することを示しました。

例えば,内部自由度を無視して干渉計を励起させる粒子状態を次のケットで代表させます。

  

すなわち,|Ψ>=(1/√2)[|ψ1()>+|ψ2()>] (1)です。

 

ここで,ケット:|ψ1()>,|ψ2()>は,それぞれ粒子が経路1,経路2を取る確率振幅を表現するものです。これから,1粒子が位置に検知される確率密度が|<|Ψ>|2で与えられます。

  

これのクロス項は,<ψ1()|><2()>と<ψ2()|><1()>です。これらの存在が干渉の原因です。

1()>,or|ψ2()>を乱すことなく粒子が取る経路をマークすることを可能にする測定措置:Mの導入は,次のように系のヒルベルト空間を拡張することで記述されます。

すなわち,|Ψ>=(1/√2)[|ψ1()>|M1>+|ψ2()>|M2>] (2)です。|Mj>は経路j(j=1,2)を通過する確率に対応する経路マーカーの状態です。

 

100%有効な経路マーカ-は,|M1>が|M2>と直交するようになっています。このケースでは測定Mは粒子の経路1,2の通過に対して|Ψ>を適切な状態へとreduce(収縮?)させます。しかし,干渉パターンの消失はそうした測定とは独立です。

 

それでも,経路マーカーの存在は,式(2)の右辺の2つの干渉項を直交させるのには十分です。

 

実際,直交性:<M1|M2>=<M2|M1>=0 故,|<|Ψ>|2にクロス項はありません。したがって,経路情報の獲得が干渉を破壊することを説明するにはこれで十分です。

しかし,もしも|ψ1()>と|ψ2()>が観測者によって有意に乱されることがないなら,経路マーカー上の経路情報を消して適切な測定と粒子の検知を相関させることにより干渉を回復することが可能です。

 

この測定は"量子消去(quantum erasus)"として知られています。

さらに,もし経路マーカーに情報をストアする能力があれば,消去は粒子検知の後でさえ遂行可能です。

 

遅延消去の可能性は,過去の[11,12]の後に,その"合理性=それが可能であるという論拠"に関して議論を引き起こしました。

 

この論拠は量子力学の定式化の誤った解釈の上で発見されました。[13,14] 

 

近年では,干渉する粒子への有意な摂動を起こすことなく経路情報を受容することが可能であるという実行された,あるいは提案されたいくつかのアイデアや実験があります。[10,9,15-30]

我々は,そのオリジナリティと教育的内容の故に,これらの提案の中で特にScully,Druhlによる[9]とScully,Englert,Waltherによる[10]を区別します。

自発的なパラメータ下方転移によって生成された光子対は,その運動量,時間,偏光の相関性の故に量子消去の実験的デモにおいて重要な役割を果たします。[17,18,20,21,28,29]。

 

量子消去の現象は全ての報告された実験の中に存在しますが,唯一[28]だけが元のScully,Druhl[9]のアナロジーです。

本論文では干渉を生ぜしめるヤングの二重スリットを実際に用いた量子消しゴムの実験をレポートします。

 

この実験はScully,Englert,Walther(SEW)[10,31]の提案と関連して解析されました。知るところでは,これが実際の二重スリットを通過した粒子から干渉が得られる量子消しゴムの最初のデモです。

Sec.ⅡではSEWの量子消しゴムの短かい要約を与えます。我々の量子消しゴムの背後にある理論はSec.Ⅲで,実験設定と結果はそれぞれSec.ⅣとⅤで与えます。

.Scully-Englert-Walther Quantum Eraser

 ここで報告する実験はScully,Englert,Walther[10]の提案によって鼓舞されたものです。この[10]は次のように要約されます。

 励起状態のRydberg原子のビームが離れたスクリーンにヤングの干渉パターンを形成するには十分に小さい二重スリットに入射します。

 

 各スリットの前には経路マーカーが置かれます。これは放出原子が空洞を走る確率が1であるような適切な長さのミクロメーザーの空洞から成り立っています。

どちらの空洞にあるか?ということで対応するスリットを通った原子の通過をマークします。それ故,干渉パターンを破壊します。

 

なぜなら,今の場合は経路情報の方がわかるからです。空洞による原子の波動関数の空間部分への摂動は無視できます。[10,13,31]

 

空洞の状態を|0>(光子ゼロ)と|1>(光子1個あり)の対称(反対称)の線形結合の上へ射影する測定が干渉の消去を実行し,相関した検出の中で干渉パターンが回復されます。

.An Optical Bell-State Quantum Eraser(光学的ベル状態量子消しゴム)

 次のような実験設定を考えます。

 

 光子の線形偏光ビームが二重スリットに入射します。もしも二重スリットが適切な広がりを持つなら離れたスクリーンでの1光子検出の確率分布はヤングの干渉パターンで与えられます。

 

 各スリットの前に光子の偏光方向と角度45度(または-45度)の1/4波長板(quarter-wave plate)を置きます。波長板のいずれかの1つを横切ると光子は円偏光になりwell-definedな角運動量を獲得します。[32]

 

 波動板(=1/4波長板)が回転自由とすると,それは光子のそれと正反対の角運動量を獲得するはずです。板は光子のカイラリティに応じて左右に回転します。光子の波動板を量子回転子として扱えば,光子がΔl=±1の遷移を誘導すると言えます。

 波動板はビ-ムの伝播を有意には変えないので,原理的に量子消しゴムとしての必要な特性を持つ経路マーカーを得ることになります。

 

 しかし,このスキームは実現には程遠いものです。回転自由な波動板の設置のむずかしさと同様,質量と大きさを持つ回転子のエネルギー準位間の隔たりは10-40eVのオーダーです。

 さらに,"デコヒーレンス効果"がマクロな量子回転子を光子経路のマークには使えないようにします。

   

※(訳注1):2006年10/23の記事「観測の問題(デコヒーレンス)」※

 

 このアイデアはGreenbergerとYasin[33]の"幽霊測定(haunted measurement)"のそれに似ています。

 しかし,系を大きくすることによって十分な経路検出装置を創ることができます。二重スリットに入射する光子たちのビームを他の検知装置を自由に伝播する第二のビームとエンタングルさせます。いわゆるベルの状態です。

|Ψ>=(1/√2)(|x>S|y>P+|y>S|x>P)(3)なる状態です。ここで添字sとpは2つのビームを表わし,xとyは直交する線形偏光を表わします。(sはslit,pはplateの頭文字です。)

もしビームsが(波動板でなく)二重スリットに入射するなら,(3)は次のように変換されます。

 すなわち,|Ψ>=(1/√2)(|ψ1>+|ψ2>) (4)です。ただし,|ψ1>=(1/√2)(|x>S1|y>P+|y>S1|x>P) (5),|ψ2>=(1/√2)(|x>S2|y>P+|y>S2|x>P) (6)です。

 添字s1,s2は,それぞれスりット1とスリット2で生成されるビームの意味です。ビームs1とs2が重なり合う遠方の領域のスクリーン上での1光子検出の確率分布は通常の干渉パターンであるS(δ)=1+cosδ(7)を示します。

 

 ただし,δは(slit:1)→(screen)と(slit:2)→(screen)の経路間の位相差です。

※(訳注2):2007年12/3の記事「ヤングの干渉実験(1)(古典論)」では,次のように述べています。

"観測スクリーンの位置における時刻tでの輻射の全電場の偏光成分をE(,t)とします。この電場は光速cによって定まるtより前の時刻t1,t2におけるスリット,またはピンホ-ル:1,2での電場の1次の重ね合わせです。

 

すなわち,形式的にはE(,t)=u1(1,t1)+u2(2,t2)と書けます。

ここにt1,t2は,それぞれ,1,s2を光が第1スクリーン上の1,2から第2スクリーンまで到達するまでの距離としてt1≡t-s1/c,t2≡t-s2/cで指定される時刻です。

 

そしてu1,u2は球面波に対応して1,s2に反比例する量です。

2006年10/3の「ホイヘンスの原理の正当性」では次のような内容の記事を書きました。

 

"ホイヘンス・フレネルの原理(Huygens-Fresnel)"によれば,1次球面波:ψ(,t)=(A/r)exp{-i(ωt-2πr/λ)}は,"キルヒホッフ(Kirchhoff)の積分表示"により,2次波の包絡面として,={iπA/(λr)}exp{-i(ωt-2πr'/λ)}r-r'r+r'dR(1+cosχ)exp{i(2πR/λ)}と表現できます。

そこで,"スリット=ピンホール"からの2次波は"1/4-波長=π/2"だけ位相がずれていてu1,u2は純虚数になります。

  

(,t)の右辺の係数の最初のiがi=exp(π/2)によって"1/4-波長=π/2"の位相変化を意味します。)

 

結局,光の強度Iは(,t)=(1/2)ε0c<|E(,t)|2c=(1/2)ε0c[|1|2<|E(1,t1)|2c+|2|2<|E(2,t2)|2c+21*2Re<E*(1,t1)(2,t2)>cとなります。

 

(< >cは電磁波の周期ごとのサイクル(cycle)平均です。)

ヤングの干渉実験での記録時間Tはコヒーレンス時間τcよりずっと長いので,"時間平均=統計平均:< >"をI()=<I(,t)で表わせば,I()=(1/2)ε0c[|1|2<|E(1,t1)|2>+|2|2<|E(2,t2)|2>+21*2Re<E*(1,t1)(2,t2)>となります。

この実験では,第1スクリーンにおける1次波の(1,t1)と(2,t2)はレンズによってスクリーンに向かってz方向に直進する平面波となるので,(,t)=E(z,t)=E(t-z/c)と表わされます。

 

そこで,<E*(1,t1)(2,t2)>は<E*(z1,t1)(z2,t2)>=<E*(t1-z1/c)(t2-z2/c)>となります。

通常の電場の自己相関関数:<E*(1,t1)(2,t2)>=<E*(1,t)(2,t+τ)>のτが単純な時間差τ=t2-t1ではなく,τ≡t2-z2/c-(t1-z1/c)に変わることを除けば,これまでの議論でのそれと本質的に違いはありません。

 

((注)"これまでの議論”というのは,事前にカオス光源からの光の減衰と自己相関関数の関係について論じている内容を指します。)

  

そこで,ν個の励起原子からの光なら,<E*(z1,t1)(z2,t2)>=νE02exp(-iω0|τ|-γ'|τ|)と書けます。

これを第2スクリーン上での光ビームの強さ()を表わす式に代入すると,I()=<I(,t)>=(1/2)ε0νE02[|1|2+|2|2+21*2 exp(γ'|τ|)cos(ω0τ)]となります。

光源のカオス性は指数因子exp(γ'|1-s2|/c)を通して干渉縞の鮮明度に影響します。そのためs1とs2が十分異なるときには原則的に縞は全く消えてしまいます。

しかし,ω0>>γ'のような幅の狭い発光源の場合には,τ=(s1-s2)/cが十分大きくて指数因子により縞がぼやける前に余弦の項cos(ω0τ)により非常に多くの縞が作り出されます。

ω0はビームの光の平均周波数です。δ≡ω0τと置くとこれは到達経路の位相差です。γ'は輻射本来が持つ"自発輻射=蛍光"による輻射広がりγにカオス光源の衝突広がりγcollの効果を加えたもので,強度の減衰因子:exp(-2γ't)を与えるパラメータ:γ'≡γ+γcollです。

減衰のない1光子(ν=1)で重ね合わせが完全に対等:u121/√2なら,スクリーン上での光強度は()=(1/2)ε002(1+cosδ)となります。 (訳注2終わり) ※

各スリットの前にx方向へと角度45度と-45度の速い軸を持つλ/4プレート(=1/4波長板)を導入すると,状態|ψ1>,|ψ2>は次のように変換されます。

すなわち,|ψ1>=(1/√2)(|L>S1|y>P+i|R>S1|x>P) (8),|ψ2>=(1/√2)(|R>S2|y>P-i|L>S2|x>P) (9)です。R,Lはそれぞれ右,左の円偏光を表わします。

1>と|ψ2>は直交する偏光なので,干渉の可能性はゼロです。

 

干渉を回復するためには系の状態を経路検知装置の対称状態と反対称状態に射影させます。これは,|ψ1>と|ψ2>をそれぞれ偏光の対称結合と反対称結合に変換させることと同等です。

例えば,|x>=(1/√2)(|+>+|->) (10),|y>=(1/√2)(|+>-|->) (11),および|R>={(1-i)/2}(|+>+i|->) (12),|L>={(1-i)/2}(i|+>+|->) (13)です。

 

+,-はそれぞれxに対して+45度,-45度の偏光を示す記号です。

完全な状態;|Ψ>を書き直すと,|Ψ>=(1/2)[(|+>S1-i|+>S2>)|+>P+i(|->S1+i|->S2>)|->P] (14)となります。

上の表現を見ると,光子p(=plate)の状態を|x>P,または|->Pに射影すれば干渉を回復できることがわかります。これは実験的にはビームpの経路と向きを+45度にして|+>Pを選択,向きを-45度にして|->Pを選択するように配置すればいいだけです。

干渉パターンはsとpの光子の一体検出で回復されます。2つのケースで得られる縞は逆位相であることに着目します。それらは共に縞(fringes)と逆縞(antifringes)と呼ばれます。

.Obtaining which-path information(経路情報の獲得)

 経路情報は光子sとpの両方の偏光を考慮すれば得られます。

 

 情報を得るプロセスはsの前にpを検知するか?pの前にsを検知するか?の2つのスキームに分割されます。これを遅延消去(delayed erasure)と呼びます。

 これはビームsとpの経路長さを変化させることでなされます。一方の光子が,他方の光子が測定装置に到着するよりはるかに早く検知されると仮定します。

まず,第一の可能性を考えます。光子pが,例えば偏光xで検知されれば,λ/4波長板と二重スリットをヒットする前には光子sの偏光はyであることが既知です。

 式(4)|Ψ>=(1/√2)(|ψ1>+|ψ2>)と,(8)|ψ1>=(1/√2)(|L>S1|y>P+i|R>S1|x>P),および(9)|ψ2>=(1/√2)(|R>S2|y>P-i|L>S2|x>P)を見ると,

 

 光子sは(二重スリットの後では)sがスリット1を通過したときにのみ偏光Rと,スリット2を通過したときにのみ偏光Lと両立できることは明らかです。

これは実験によって確かめることができます。

 

通常の量子力学の言葉では,光子sを検知するより前に光子pを検知することは光子sをある状態に準備するということです。

.Delayed erasure(遅延消去)

 光子sを検知するより前にその経路情報を得ることの可能性は遅延選択へと導かれます。[14]

 

 遅延選択は量子力学の物理的意味を明確に知るために重要な状況を生み出します。文献:[11-14]には良い論旨が見出されます。

 

 我々の量子消しゴムは,経路情報を観測するか?,または光子sの検知より後の干渉パターンを観測するか?を選択する実験が許されないのと同じ感覚で,光子pの検知より前での光子sの検知に対して"それ=(経路情報を観測するか,光子sの検知より後の干渉パターンを観測するか選択の実験)を許します。こうした状況を遅延消失と呼びます。

 ここで生じる疑問は,"2つの光子を検知する順序が実験結果に影響するか?"ということです。

.Experimental Setup and Procedure(実験の設定と手順)

 ある伝播方向に対して,非線形結晶中のタイプⅡの自発的パラメータ下方転移は次の状態を生成します。

すなわち,|ψ>=(1/√2)(|o>S|e>P+exp(iφ)|e>S|o>P) (15)です。

ここでo,sは,それぞれ通常偏極(ordinary polarization),異常偏極(extraordinary polarization)を意味します。φは結晶の複屈折による相対的な位相のずれです。φがゼロまたはπなら,これに応じてベル状態|Ψ+>,|Ψ->を得ます。

 前節で記述された干渉計内でのこの状態を用いると,一体化され光子を検知する確率は,1/2+[1/2-sin2(θ+α)cos2(φ/2)-2-sin2(θ-α)sin2(φ/2)]sinδ (16)です。

 

 δは表式(7)PS(δ)=1+cosδの右辺で定義されるものです。θは1/4波長板の速い(遅い)軸とo軸の間の最小角,αはo軸に関する経路pの偏光角です。

 実験設定は下図1に示します。 

      

               

 

 自発的パラメータ下方転移によって702.2nmのエンタングル光子を生成する1mmの長さのBBO(β-BaB2O4)結晶のポンプにアルゴン・レーザー(351.1nm at ~ 200mW)が用いられます。

このBBO結晶はタイプⅡの位相にマッチするようにカットされます。ポンプのビームは二重スリットでの横波コヒーレンス長さを増加させるため,焦点距離が1mのレンズを用いて結晶面の上に集光されます。

 

焦点におけるポンプのビームの幅は0.5mmです。[15]

 直交する偏光のエンタングル光子はBBO結晶の各々がポンプのビームと約3度の角度を持つようにさせておきます。光子pの経路には量子消去実行のために偏光体(POL1)が挿入できます。

 

 二重スリットと1/4波長板を経路s内のBBO結晶から42cmの位置に置きます。検知装置Dp,DsはそれぞれBBO結晶から125cm,98cmに位置するようにします。OWP1,OWP2は角度45度の速い軸を有する1/4波長板です。

 環状の1/4波長板は二重スリットの前でフィットするように(接線状に)sandされます。二重スリットの開口は幅が200μmであり,200μmの距離で離れています。

 

 検知装置はEG&G SPCM 200 光検知装置です。これは干渉フィルター(帯域幅1nm)と300μm×5mmの矩形集光スリットを携えています。検知装置Dsをスキャンするために段階回転式モーターが用いられます。

 

 遅延消去の設定も(ⅰ)検知装置DpとPOL1がBBO結晶から2mに位置する,(ⅱ)検知装置Dp上の集光絞りが600μm×5mmの大きさを持つ,という2つの変更の他は同じです。

.Experimental Results(実験結果)

 量子消しゴム実験の実行以前に,エンタングル状態が検知されることを証明するために"ベルの不等式テスト"が実行されました。

 

※(訳注3):2007年2/16の記事「ベルの不等式(量子論と実在)」参照※

 

 下図2は検知装置Dpに1/4波長板OWP1,OWP2や偏光体(POL1)が無いときに,光子sの経路内の二重スリットで標準的ヤングの干渉パタ-ンが得られることを示しています。

 

    

  

 次に,二重スリットの前に1/4波長板OWP1,OWP2を置くことにより光子sの経路をマークします。下図3は1/4波長板のせいで干渉がなくなることを示しています。

 

  

  

 この図3では図2のほとんど全ての干渉は破壊されています。残りの干渉は1/4波長板の僅かな調整誤差によるものです。

 

 検知装置Dpの前に線形偏光装置POL1を置くと経路選択情報が消されて干渉が回復されます。

 

 干渉を回復するにはPOL1の偏光角(α)は1/4波長板OWP1の速い軸の角θにセットします。下図4に示す干渉縞が得られました。

 

 POL1による一体化のカウントの減少の補償のため,検知時間を2倍の長さに取ります。

  

   

 

 下図5ではPOL1がOWP2の速い軸の角θ+π/2にセットされています。これは干渉-逆縞のパターンを生ぜしめます。これら2つの干渉パターンの平均和はラフには図3に等しいパターンを与えます。

   

   

 遅延消失状況に対して図6~図9を生成するため同じ手順が用いられました。実験結果は光子pが光子sの前に検知される場合と同じです。

 

   

 

   

 

   

 

   

 

 この実験では光子sの検知後と光子pの検知前の期間に観測者が"選択"できないという意味で"遅延選択"なる言葉をルーズに用いていますが,文献[13,14]と同じく単に検知の順序が重要ではないことを表現したいだけです。

.Conclusion(結論)

 我々は干渉を生成するためにヤングの二重スリットを用いた量子消しゴムを与えました。実験中の1/4波長板は干渉を破壊する経路マーカーとして働きました。

 

 そして光子sとpのエンタングルメントを用いて干渉を回復させました。我々の量子消しゴムはScully,Englert,Walther[10]の実験にとてもよく似ています。

 

 干渉は干渉する光子の経路をマークすることで破壊され,他方のエンタングル光子について適切な観測をすることで回復されました。

 

 また,光子pの検知前に干渉する光子sを検知する遅延消去の条件下でもこの実験を調べました。

これまでの多くと同様,我々の実験は光子sが検知された後と光子pの検知前に観測者が偏光角を選択することを許すものではありません。

 

結果は光子sの検知による波動関数の崩壊は予測結果の観測を妨げるものではないことを示しています。

 

我々の実験データはScully,Englert,Waltherの提案[10]に一致して,量子消しゴムは干渉粒子が検知された後に実行できます。

 Acknowledgement(謝辞):(略)

   

※(訳注4):この論文では,結果図を見ればわかるように干渉縞といってもオリジナルのヤングの実験のように,実際のスクリーン上の縞の映像や写真感光上に直接視覚化されたものがあるわけではありません。

 

 干渉図も偏光を利用して到達個数をカウントした観測結果やエンタングルによって片割れの個数から計算した結果をプロットしたものに過ぎないことに注意してください。

   

 もっとも,今どきであれば数データであっても容易にコンピュータでVirtualに画像として視覚化できますが。。

  

 本ブログでのその他の関連記事としては,2006年5/4「公開キー暗号(神はサイコロ遊びをなさる)」,および「量子通信(神はサイコロ遊びをなさる「つづき」))もあるのでよかったら参照してください。 ※

 

References(参考文献):

 

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翻訳対象の論文:

 

S.P.Walborn,M.O.Terra Cunba,S.Padua and C.H.Monken「Double-slit quantum eraser」Phys.Rev.A,Vol.65(3)(2002),pp033818-1-033818-6

    

 

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2010年1月26日 (火)

遅延選択実験(タイムマシン?)(4)

 少し間が空きましたが遅延選択実験の論文翻訳の続きです。一応翻訳作業は終わりました。

 

 むずかしいところもなく,ただサボっていただけです。

 

 結局,全体を読んで私が求めていた論文ではないとわかりました。これは従来の素朴な遅延選択実験の結果を再確認したに過ぎず,新しいものはほとんどないと感じました。

 

 ただ,私がこうした実験の詳細を考えたのは初めてで,私の新たな思考体験になったので無駄な作業ではなかったですが。。。

 

 というわけで量子テレポーテーションやEPR相関と関連したものとしてこれに続きウォルボーンらによる2002年の論文「二重スリット量子消しゴム」http://grad.physics.sunysb.edu/~amarch/Walborn.pdf を読むことにします。

 

 以下は翻訳内容です。

  

.Experiment Setup(実験の設定)

 本節では図3,図4に要約された遅延選択相互作用の実験設定と遅延選択量子ビート実験を論じます。

   

 .遅延選択干渉実験

反復率が81MHz(81×106回/秒)(波長:647nm(647×10-9m))のアクティブモードにロックされたクリプトンのイオンレーザーによって持続時間150ps(ピコ秒=10-12秒)のパルスが生成されます。

これの8000の音響-光学モードのうちから1つのパルスを選択します。このパルス反復率の縮小は必要な操作です。なぜなら,遅延選択のために干渉計の腕の一方を遮断するポケットセルのシャッターを頻繁にON-OFFをするのは不可能だからです。

さらに,このパルス周波数の縮小は2つのパルスの間の時間が光子が干渉計を通過する時間:約24ns(ナノ秒=10-9秒)よりも長いことを保証します。また,レーザー入射と上記の音響-光学変調計との間に光学減衰装置(T=10-9s)がレーザービームに挿入されます。これはパルス当たりの平均光子数を0.2以下にします。

入射光は最初のビーム・スプリッター(下図3)を通過します。

 

ここで分かれた2つのビームは道を変え互いに離れた単一モードの長さ5m(直径:5μm=5×10-6m)の2つの光ファイバー(ファイバ-路)に集光されます。 ファイバーの主軸はその中の偏光が線形になるように調整されています。

       

   

  

 そして,第二のビーム・スプリッターにより2つのビームが再び結合した後,暗部の計数の率が小さくなるよう冷却された光増倍管1,2(PM1,PM2)によって干渉が検知されます。

2つの光増倍管の各々で記録される光強度は,2つのビームの経路の差が光学距離λ/2のときに正反対のパターンになるような補足の関係で変わります。

この干渉計の2つの腕に沿った光路の経路差はフィルター中の温度誘導のファイバーの屈折率の変動に強く影響されます。空気中での干渉のパターンは時間的に安定しています。

実験に遅延選択モードを導入するために,光子が第一のビーム・スプリッターを通過するまで一方の腕の光路を遮断します。この目的のために干渉計の上の方の腕にポケットセル(PC)を導入します。

 

1つの腕の路を遮断するためポケットセルに電圧をかけます。その結果,入射光の直交する2つの偏光成分(90度回転した偏光)の間に1/2だけ位相のずれた波が導入されます。

ポケットセルの後に偏光方向が回転したとき光を検知するGian偏光プリズム(POL)が挿入されます。そしてポケッツセルのシャッターの上がる時間は4nsです。

実験では遅延選択モードの干渉パターンが"正常な"モードのそれと比較されます。正常な操作では光のパルスが第一のビーム・スプリッターに到達した際にポケットセルは開いていてそれは全体の装置を通る間キープされます。

しかし,遅延選択モードではポケットセルのシャッターは通常は閉じていてパルスが第一のビーム・スプリッターを通過した後に5nsだけ開けます。それ故,光パルスはポケットセルが開いているときうまく光ファイバー中を通過します。

光パルスが到着したときにポケットセルが全開であることを確実にするためにはファイバーの長さが十分である必要があります。シャッターの上がる時間が4nsなので長さは少なくとも1m必要です。

遅延選択実験のこのバージョンでの時間順序に関する興味深い点のいくつかは,Mittelstaedtによって挙げられ論じられています。彼は状態の収縮(ビーム・スプリッター2)と状態の準備(ビーム・スプリッター1)の位置が空間的に離れている事実を強調しました。

"光子が第一のビーム・スプリッターに到達する前か後にポケットセルのスイッチを入れる。"という表現はこうした位置に同期した時計を置くことに等価と解釈されます。

データを採取する間に継続する光パルスにおいて操作モードを正常モードや遅延選択モードにスイッチします。光増倍管でカウントされる光子は,それに応じて多重チャンネルの異なる分析装置に格納されます。

こうしたスイッチングはクリプトンのイオンレーザーのモード・ロッカーの40.5MHzのドライバーから導かれるパルスで制御されます。

.量子ビート実験

量子ビート実験はバリウム原子の原子ビームを用いて実行されます。2つのヘルムホルツコイルで生成される磁場はその向きを原子ビームの方向に垂直に取ります。(下図4参照)

  

 

  

同時的に励起した色素レーザーから1パルスの持続時間が1.5psで繰り返しの周波数が10kHzのパルスが出てx方向に伝播します。このレーザー光はy方向に偏極し周波数はバリウムの共鳴のライン10-11に合うように調整されています。

 

こうした条件の下でエネルギー差がΔE=2hcωLのm=+1とm=-1の2つのゼーマン(Zeeman)サブレベルのコヒーレントな重ね合わせの光パルスが用意されます。ここにωLはラーマー(Larmer)周波数です。(下図5参照) (※ただし,hc≡h/(2π);hはPlanck定数です。)

 

  

  

そして,レーザーパルスのフーリエ(Fourier)線幅より小さいゼーマン分裂に対応して用いる磁場の大きさは2.1G(Gauss)とします。そして蛍光はz方向のレーザーパルスの解像時間で観測します。集光器は,0.1arの立体角の内に光を集めます。

こうした光信号の時間依存性はパルスの高さ分析モードの多重分析装置を持つ時間-アンプ変換装置を用いて測定されます。この方法は検知システムに表示されるレーザーパルス当たりに常に1個以上の光子があるので可能なのです。

時間-アンプ変換装置はレーザーパルスを光セルでモニターする信号からスタートして最初の信号光子を得てストップします。

標準の量子干渉実験では検知器である光増倍管の前にy軸に平行な方向に偏光させる線形偏光装置が設置されます。これは2つの"経路":|0> →|+1> →|0>,および|0> →|-1> →|0>の干渉を検知することを許します。

遅延選択バージョンは放出光子が検知システムに到達するまでは1つの経路がブロックされたままであることを要求します。

 

この目的のため再び線形偏光装置の前にポケットセルを置きます。

ポケットセルに適切な電圧をかければ,経路:|0> →|+1> →|0>から帰結するσ光は偏光装置を透過する光を線形偏光の光に変わります。

 

σ光はフィルターの1つに垂直方向に線形偏光した光に変わり,それ故ブロックされます。

これには遅延選択操作ではポケットセルのシャッター時間と量子ビートの周期:τ=(2ωL)-1と比べ,原子ビームと検知システム間を光子が飛行する時間の方が長いことが必要です。そこで"飛行時間=26ns"に対応して原子ビームと検知システム間の光路を8mにします。

.Experimental result(実験結果)

 本節ではホイーラー(Wheeler)の遅延選択実験の2つのバージョンから得られた実験結果を与えます。

.干渉実験

下図6は正常モードか遅延選択モードのいずれかで走る光パルスの光増倍管1と2に30秒間に累積された光子数を示しています。カウントされた結果は多重スケールモードで動く機械的分析装置に格納されます。

 

  

 

6に示された結果は生データの4チャンネル平均です。時間軸は干渉計内のファイバーの温度で誘導される屈折率変動から決まります。この実験での干渉パターンの可視性は理想的な100%より小さいです。

 

この理由は,まずはビームスプリッターと干渉スキームの検知の不完全さのせいでしょう。

また,図3に示されているようにファイバー内の光は顕微鏡の対物レンズにより平行にされますが,残った発散光によって干渉計の出力ポートでの干渉パターンは環状になります。

 

ただしゼロ次の最大値のみが光増倍管で検知されます。光増倍管の有限な面積の開口部によっても可視性は小さくなります。

遅延モードと正常モードのデータ間のより定量的な比較は対応するチャンネルのカウントの比を取ることでなされます。これら光増倍管1,および2における比をそれぞれ下図7(a),および図7(b)に与えます。

  

  

 

これの平均値はN/N=1.00±0.02,とN/N=0.99±0.02です。この結果は量子力学のコペンハーゲン解釈によって予測されるN/N=1と非常によく一致しています。

.量子ビート実験

 まず,正常モードでの量子ビート実験の結果を示すことから始めます。下図8(a)では量子ビート信号はポケットセルに電圧をかけずに得られたものです。このケースでは蛍光のσ光とσ光の重ね合わせが観測され,指数的減衰は緩和されます。

ポケットセルに1/4波の電圧をかけた単偏光成分の検知結果,それ故信号の指数関数的時間依存性は下図8(b)に与えます。

 

  

  

8,9,10では,レーザーパルスより26ns後の検知装置での最初の蛍光光子の到着時間に対応する時刻に着目すべきです。また,光増倍管と時間-アンプ変換装置の時間解像度によれば光信号が最大で約2nsの時間で届くことにも着目すべきです。

実験の遅延選択バージョンを下図9に示します。矢印はポケットセルに電圧をかけた時刻です。

 

   

  

図の一番上のボックスに示された測定は検知器に光子が到着して2nsの後にポケットセルのスイッチが入れられたものです。

 

真ん中,および一番下のボックスのグラフはポケットセルにスイッチが入り指数減衰の変調が長時間観測された後,それぞれ17ns,および26nsまでの指数的減衰を示しています。

下図10では通常の量子ビート信号を遅延選択観測で得られるものと比較しています。ここでポケットセルに電圧がかかるスイッチが入る時刻は4nsです。評価には10nsと30nsの間にある信号のみ用いてます。

 

   

 

時間の下限はポケットセルの時間(4ns)と検知装置の時間定数(2ns)から決めています。上限の方は原子ビームと検知装置の間の飛行時間から決めます。

104個のレーザーパルスの後に正常観測と遅延観測の操作のモードをスイッチします。このようにして図10に示した2つの信号は同時に累積していきます。(正常モードと遅延モードは機械的分析装置のメモリーの異なる部分に格納します。)

10の2つの信号のうち斜線部を下図11に示します。この図では点(・)は遅延選択に,プラス(+)は正常バージョンに対応します。また,対応するチャンネルでの信号(時間差0.56ns)の比を与えています。 

   

  

 

この比は,N/N=1.03±0.02でした。これもコペンハーゲン解釈から予期されるものと一致します。僅かな偏差はポケットセルの光軸調整の誤差によるものと考えられます。

.conclusion(結論)

本論文で記述された空間領域と時間領域の干渉実験では正常モードと遅延選択モードの間に何の差異もありませんでした。そこで量子力学のコペンハーゲン解釈が実験と合致するのを再確認したに過ぎません。

これと関連しては,Allenと彼の共同研究者が本論文のⅣ.AとⅤ.Aで論じたものと同様な遅延選択実験を最近実行しましたが,彼らの結果もまた量子力学の標準的な解釈と一致しています。

「光子が"1つのルート"を通ったのか? それとも"両方のルート"を通ったのか? 」という言明に内在する論理矛盾にアプローチする道は,結局「古典論理」とは微妙に異なる「量子論理」に基づいて思考することであると結論します。

別の可能性はホイーラー(Wheeler)によって指摘されたのですが,

  

「既に運動した後に1つのルートでやってくるか,両方のルートでやってくるかを決めるというジレンマは言葉の誤用が原因である。」

  

というものです。

ボーア(Bohr)がアインシュタイン(Einstein)との論争において,現象(phenomenon)という言葉を導入したことを思い起こします。

 

ホイーラーは「どんな素現象も,記録される,すなわち1グレインの銀の印画紙が感光する,あるいは光検知装置の引き金が引かれるまでは現象ではない。」と強調しました。

それ故,我々も"干渉計の中の旅の間に光子がどうしていたか?"を述べる権利はないと考えます。

 

この旅の間には光子は"巨大な灰色ドラゴン"であり,単に"尻尾"(ビーム・スプリッター1の位置)と"検知器を叩く位置=口"でのみそれは細く鋭くなるわけです。

「遅延選択実験は過去の描像が遠回りして到達する結果である。」と結論します。

 

ホイーラーがしばしば指摘したように,遅延選択実験の奇妙さは「現在において記録されない限り過去は存在しない。」という以上のものではないということに留意すべきと考えます。  

Acknoledgement(謝辞):これは省略します。(以上終わり)

参考文献: T.Hellmuth,H.Walther,A.Zajonc and W.Schleich ”Delayed-choice experiments in quantum interference”Phys.Rev.A Vol.35,No.6,(1987),pp2532-2541

 

 ちょっと時間的余裕が無いので図も満足に入っていません。よってこの記事のメインはまだ未完成です。

 

 この論題については続きも含め少し余裕をいただきたいと思います。

 

PS:一応,誤解ないよう私なりの注釈を付けておきます。

  

 この論文において実験結果がコペンハーゲン解釈と合致するというのは,別にコペンハーゲン解釈以外の解釈は正しくないと主張するものではないです。

 

 単に,実験と合うという意味で正しいための十分条件を満たすというだけです。必要条件ではないはずなので他の多くの解釈も実験に合うならこれと同程度に妥当な候補です。

  

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2010年1月20日 (水)

遅延選択実験(タイムマシン?)(3)

 遅延選択実験の翻訳と解釈の作業の続きです。

 Ⅲ.The Delayed-Choice Version of a Quantum Beat Experiment(量子ビ-ト実験の遅延選択バージョン)

 時間領域での干渉の遅延選択の様相も空間の干渉と同様な方法で論じることができます。

 

 実験の観測としては量子ビートの方法が用いられます。

 最も簡単なケースは,周波数ω12に対してパルス緩和時間τが特性ビート周波数(ω2-ω1)の逆数よりも小さいレーザーパルスを持つ基底状態|c>から,2つの周波数ω12に対応する2つのエネルギー準位|a>,|b>がコヒーレントに励起されるケースです。

系の状態|ψ>は2つの励起状態|a>,|b>の重ね合わせで記述されます。

 

すなわち,|ψ>=(α|a>+β|b>)|O>(α,βは複素係数)です。初期には光子は全く存在しないので電場は"真空状態=|O>"です。

自発放出により2つの状態は基底状態|c>に落下して戻ります。すなわち,次の2つの経路を生じます。|c>→|a>→|c>,および|c>→|b>→|c>です。

これらの"ルート"の干渉は時間-解像蛍光強度Iの変調として現われます。より正確には強度はI=(1/r2)Θ(t-r/c)exp{-2γ(t-r/c)}[|αε1|2+|βε2|2+Sαβ*ε1ε2*exp{i(ω1-ω2)(t-r/c)}+c.c]で与えられます。

ただし,r=||でΘはHeaviside関数(階段関数)です。(※訳注:c.cは複素共役(complex conjugate)です。)

簡単のために,2つの状態の崩壊率が共通の1つの定数γで与えられるとしています。また,ε1,ε2は2つの遷移に関わる電場に対応する量でありS=1です。

第Ⅱ節で論じた空間的干渉現象との類似は明らかです。

 

さらに,単一光子の量子ビートの特性を強調しておきます。

 

多くの原子が相互作用ゾーンにあるときでさえ干渉は2つの区別できないチャンネル;|c>→|a>→|c>,|c>→|b>→|c>を通った単一光子によるものです。

 

両チャンネルが区別できないことを保証するには測定過程において注意が必要です。

実際にどのチャンネルに関係しているかの情報を得たいのなら,例えば遷移|c>→|b>→|c>の光子のみを透過させるフィルターを用いますが,そのときには変調(干渉)は消えて強度IにおいてS=0 です。

このケースでは,オブザーバブル:σ^=|+><+|=(1/2)(+σ^z)が測定されます。|+>は円偏光光子の固有状態を表わしています。そこでσ^は式(4)のI^xに対応していると考えられます。

一方,両経路の重ね合わせ(干渉)が観測されるケースではオブザーバブル:π^≡(1/2)(|+>+|->)(<+|+<-|)=(1/2)(+σ^x)が測定されます。これは式(11)のJ^xに対応していると考えられます。

遅延選択バージョンでは,各蛍光光子が放出された後ですがその光子がフィルター位置まで到達する前にフィルターを除去したりします。

 

(第Ⅳ節.実験の設定(Experiment Setup)につづく)

第Ⅲ節は簡単なレビューなので短いです。

たまにはこのブログの科学記事も短いものでお茶を濁すことにして今日はこれで終わります。

参考文献: T.Hellmuth,H.Walther,A.Zajonc and W.Schleich ”Delayed-choice experiments in quantum interference”Phys.Rev.A Vol.35,No.6,(1987),pp2532-2541

 

PS:何だか昨日の午後からこのブログ「TOSHIの宇宙」へのアクセスが多いなあ。。と思ったら,Geogleでの「浅川マキ」での検索のトップになってました。まあ,ときどきあるけど一過性でしょう。。。

 

 ここは過去最大でも延べで1日に七百アクセスくらいで,千アクセスに達したことはないですね。。

 

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2010年1月15日 (金)

遅延選択実験(タイムマシン?)(2)

このところ正月初めで色々とバタバタしており特に夜の時間は飲んだくれてたこともあって十分な時間が取れなかったので論文翻訳の続きが遅れてしまいました。続きですが第Ⅱ節だけです。

.The Delayed-Choice Experiment and the Quantum Mechanical Measuament(遅延選択実験と量子力学測定)

本節では図1に要約したWheelerの元の遅延選択実験をvon Neumannの意味での量子測定過程として解析します。

 

ここでは遅延選択実験の厳密な議論を未来の発表の主題となるべき量子光学の言葉に置き換えようとはせず,各々陽な演算子表現を導出する必要がある経路情報,または干渉現象に対応する2種の光子観測の相補性(complementality)を強調します。

まず,次の扱いでは光のパルスがx方向,およびy方向に伝播する状態ベクトルを,それぞれ|x>,および|y>で記述します。

 

|x>,または|y>の陽な形は,パルスを生み出すために用いられる実験テクニックに依存します。

本論文の後の方で論じるように,現行の実験はピコ秒のレーザーパルスを用いて実行されています。

 

そこで,x方向に伝播するレーザーパルス|x>はコヒーレント状態|αx(J)>の(2N+1)個のモードの重ね合わせから成り立っています。

 

(※訳注:コヒーレント状態については2007年12/15の記事「ヤングの干渉実験(4)(量子論)」を参照してください。)

すなわち,|x>=|αx(-N)x(-(N-1)),..,αx(0),..,αx(N)>|0y>(1)です。

 

ただしαx(J)はガウス振動数分布分布:αx(J) exp{-(1/2)τ2(J)-ν(0))2}(J=-N,..,+N)です。

ここでτはパルスの持続時間です。規格化定数{2π1/2n(l/L)}1/2です。nはパルス当たりの光子数,Lはレーザーの空洞の長さであり,l=cτ (cは光速)です。

単一の光子を生み出す別の実験テクニックは原子ビーム中の(2準位)原子,またはイオントラップ中のイオンからの共鳴蛍光を用います。

 

こうしたケースでは|x>は状態ベクトル|x>=Σkx[(gkx/hc){(ν-ω)+iγ}-1|Ikx>](2)で与えられます。

 

ただしγは原子の崩壊率,または2準位間の周波数の差で,gは電場への結合定数を記述しています。

 

それ故,状態|x>はローレンツ型の周波数分布を持つ異なる単一光子状態|Ikx>の重ね合わせです。

(※訳注:hc≡h/(2π)です。hはプランク(Planck)定数です。

 

ローレンツ型分布については2006年8/26の記事「ホワイトノイズ,1/f ゆらぎ」,および2007年12/3の記事「ヤングの干渉実験(1)(古典論)」を参照してください。)

簡単のため,以下の論議ではまず状態|x>と|y>は(2)式のような形とします。さらに(1)式のピコ秒パルスによって生じる干渉パターンを与えてこの節を締めくくります。

最初のビーム・スプリッターでは状態|x>に対応する波動の一部は透過し一部は反射します。透過部分についてはその位相がφだけシフトします。かくして干渉した単一光子状態は|ψ>=(1/2)1/2{|x>+exp(iφ)|y>}(3)です。

ここで,状態ベクトル|x>と|y>は直交し,規格化されていると仮定しています。

これまでの記述は準備段階のそれです。続く検知過程は対象のオブザーバブルの期待値で記述されます。

例えば,そうしたオブザーバブルの1つは第二のビーム・スプリッターを除去されたケースのx,またはyの光子増倍器によって測定される光子の強度です。

 

この場合,光の古典強度Ix(cl),Iy(cl)に対応する"量子演算子=オブザーバブル"の期待値はIx(cl)=Iy(cl)=1/2です。ここでは簡単のため,初期強度I0は1に等しいとしています。

(3)式を用いると,光の強度演算子:I^x≡|x><x|,I^y≡|y><y|の期待値として実際に上記の古典強度が生み出されることが容易に証明されます。

基底{|x>,|y>}に対するこの演算子:I^x,I^yの行列表現はI^x=(1/2)(+σ^x),I^y=(1/2)(-σ^x)(4)です。

 

ただし,は単位行列,σ^xはパウリ(Pauli)のスピン行列(spin-matrices)のx成分です。

第二のビーム・スプリッターが挿入されたケースの論議に移る前に,(1)式で記述されるピコ秒パルス(※訳注:コヒーレント状態)を用いて得られる経路情報を,(2)式で記述される単一光子状態(※訳注:個数状態)から得られる情報と比較対照します。

図11の配列では光子のルートは,経路xを通ってきた光子の検知器xか経路yを通ってきた光子の検知器yのいずれを光子がクリックするかで決まります。

 

干渉計の中には単一光子のみがあると仮定している場合なので2つの検知器については完全に逆相関です。

言いかえると,2次の相関関数g(2)(0)は消えます。

 

つまり序文(introduction)で論じたように光は反束光です。

 

一方,ピコ秒レーザーの光パルスは"コヒーレント状態にあるモード=ゼロでないg(2)(0)の状態"の重ね合わせから成るため,どちらの経路を通ったか?という完全な経路情報を得ることはできません。

反束光のみ,例えばトラップの中にstoreされた単一イオンからの蛍光のように共鳴の中で実験的に実現される式(2)の単一光子状態のみが,光子のルートを何の曖昧さも無く完全に決定する方法を与えるわけです。

 

(Ref.8も参照されたい。)

さて,今度は第二のビ-ム・スプリッター(BS2)が挿入されたケースの測定過程の議論に移ります。この場合には,検知器x,yで測定される古典強度Jx(cl),Jy(cl)x(cl)sin2(φ/2),Jy(cl)=cos2(φ/2) (5)で与えられます。

前のケースに反して対応する演算子J^x,J^y(を見出すのはそれほど直線的で簡単はありません。

 

これを見出すことが本節の残りの主題です。

まず,演算子J^x,J^y(を,それらの固有状態|s1>,|s2>で表現することから始めます。

  

J^x=αx|s1><s1|+βx|s2><s2|,J^y=αy|s1><s1|+βy|s2><s2|(6)ですね。

同時に,状態|ψ>は|ψ>=c1|s1>+c2|s2>(7)と展開されるとします。ただし,αxyxy,c1,c2は全て複素数の係数です。

系の状態|ψ>を|s1>と|s2>の1次結合で表現することは測定過程を量子力学的に記述するための第1ステップで分解(decomposition)と呼ばれます。

第2のステップは,考察対象の空間を物理系のヒルベルト空間:0 pointer基底|a1>,|a2>で張られるその測定装置のヒルベルト空間A の直積空間0Aに数学的に拡張することです。

 

(※2006年10/23の記事「観測の問題(デコヒーレンス)」を参照)

 

干渉現象を観測するケースには,測定装置は第二のビーム・スプリッター(BS2)と検知器x,yを含みます。

 

簡単のため,さらなる論議はオブザーバブルJ^x,すなわち検知器x上の信号のみに限定します。(J^yの扱いについては全く同様です。)

 

さて,検知器は2つのマクロな区別できる状態,いわゆるpointerの状態の基底状態(ground-state):|a1>=|g>と励起状態(exciting-state):|a2>=|e>で特徴づけられます。

系と測定装置が相互作用する前には,検知器は基底状態:|g>にあると仮定すれば,測定前には"系+測定装置"の拡張された状態のベクトルは|Ψ>={c1|s1>+c2|s2>}|g>で与えられるはずです。

しかし,測定装置と相互作用すると全系の状態は|Ψ>から|Ψ'>={c1|s1'>|a1>+c2|s2'>|a2>に変換されます。

Von Neumannによれば,測定器の本質的な特徴は測定器との相互作用によって系の状態の確率振幅c1,c2を不変に保つことです。

 

相互作用の効果は,単に|si'>|ai> (i=1,2)を生成するだけです。ここに|s1'>,|s2'>は系の直交状態ですが,これらは|s1>,|s2>と同じである必要はありません。

 

それ故,pointer基底|ai>(i=1,2)の各々は系の固有状態にユニークに関連しています。干渉計のケースには |Ψ'>={c1|s1'>|g>+c2|s2'>|e>(8)です。

他方,ビーム・スプリッター(下図2参照)の性質によれば,

 

(3)|ψ>=(1/2)1/2{|x>+exp(iφ)|y>} で与えられるような光子状態:|ψ>は状態 |ψ'>=(1/2){1+exp(iφ)}|y>+(1/2){1-exp(iφ)}|x>(9) に変換されます。

 

   

   

 検知器xと相互作用をした後での"系+装置=系全体"の状態は,

  

 |Ψ'>=(1/2){1+exp(iφ)}|y>|g>+(1/2){1-exp(iφ)}|O>|e>で与えられます。

これを(8)|Ψ'>={c1|s1'>|g>+c2|s2'>|e>と比較すると,c1=(1/2){1+exp(iφ)},c2=(1/2){1+exp(iφ)}(10)を得ます。

この(10)の係数値を,(7)|ψ>=c1|s1>+c2|s2>に代入すると,第二のビ-ム・スプリッターを通る前の光子状態|ψ>が決まります。

そして,この表現が,(3) |ψ>=(1/2)1/2{|x>+exp(iφ)|y>} と一致すべきですから,固有状態:|s1>,|s2>が状態 |x>,|y>によって,|s1>=(1/2)1/2{|x>+|y>},|s2>=(1/2)1/2{|x>-|y>}と表現されることがわかります。

さらに,これを(6)J^x=αx|s1><s1|+βx|s2><s2|,J^y=αy|s1><s1|+βy|s2><s2|に代入すると,J^x=(1/2)αx(1+|x><y|+|y><x|)+(1/2)βx(1-|x><y|-|y><x|),J^y=(1/2)αy(1+|x><y|+|y><x|)+(1/2)βy(1-|x><y|-|y><x|)に到達します。

最後に,αxxyyは,J^x,J^yの期待値を古典値の(5)Jx(cl)=sin2(φ/2),Jy(cl)=cos2(φ/2)と比較等置すれば決まります。

 

これは容易に実行されてJ^x=(1/2)(1-|x><y|-|y><x|),J^y=(1/2)(1+|x><y|+|y><x|)を得ます。これは確かに(5)式を生み出します。

行列表現ではJ^x=(1/2)(-σ^z),J^y=(1/2)(+σ^z)(11)となります。

 

(4)I^x=(1/2)(+σ^x),I^y=(1/2)(-σ^x)と(11)の表現は経路情報の演算子;I^x,I^yと干渉現象の演算子:J^x,J^yが交換しないことを示しています。

実際,[I^x,J^x]=-(1/2)σ^y,[I^y,J^y]=(1/2)σ^yです。

測定過程は,いわゆる抽象と読み取りに集約されます。

 

測定過程の目的は,(5)Jx(cl)=sin2(φ/2),Jy(cl)=cos2(φ/2)で与えられるようなJ^x,J^yの期待値を引き出すことです。

図1に要約されている干渉実験の標準バージョンでは,オブザーバブルとして{I^x,I^y}の組を選択するか,{J^x,J^y}の組を選択して測定するかは光子が干渉計に入る前,つまり(3)|ψ>=(1/2)1/2{|x>+exp(iφ)|y>}の|ψ>の状態が準備される前に決定されます。

しかし,遅延選択モードでは光子が干渉計を通過した後,つまり状態が準備された後に決定されます。

 

この意味で遅延選択実験は準備される状態と測定が"独立,または無関係"である度合いを厳密に調べるものです。

干渉現象の観測を量子光学の言葉で概観して本節を終わります。

 

第二のビ-ム・スプリッターの後での位置に局所化された検知器の上で測られる強度J(,t)は次の1次相関関数で決まります。すなわち,J(,t)=<ψ'|^(-)(,t)^(+)(,t)|ψ'>です。

 

(※ これは2008年1/2の「ヤングの干渉実験(8)(量子論)終わり」を参照してください。※)

 

ただし,状態ベクトル|ψ'>は,(9)|ψ'>=(1/2){1+exp(iφ)}|y>+(1/2){1-exp(iφ)}|x>で与えられます。

 

電場の正周波数部分は,^(+)(,t)=iΣkεkkexp{i(kr-kct)}です。ここでk≡||,εkは1光子当たりの電場の振幅,akは消滅演算子です。

今や,(1)|x>=|αx(-N)x(-(N-1)),..,αx(0),..,αx(N)>|0y>;αx(J) exp{-(1/2)τ2(J)-ν(0))2}(J=-N,..,+N)で定義されるピコ秒状態の|x>,|y>について2つの検知器における強度J^x,J^yを計算することができます。

xsin2(φ/2)nπ-1/2ε02exp{-(1/τ2)(x-ct)},Jy=cos2(φ/2)nπ-1/2ε02exp{-(1/τ2)(y-ct)}です。ただしε0は周波数がν(0)の光子1個当たりの電場です。

 

この結果は,上記の簡略的な扱いと一致していることに着目されたい。(第Ⅲ節:量子ビ-ト実験の遅延選択バージョンにつづく)

参考文献: T.Hellmuth,H.Walther,A.Zajonc and W.Schleich "Delayed-choice experiments in quantum interference" Phys.Rev.A Vol.35,No.6,(1987),pp2532-2541

  

PS:ネット検索でEPR相関の実験らしい「二重スリット量子消しゴム」というウォルボーンらの2002年の論文を見つけたので,今の1987年の論文の翻訳,解釈が終了したら,この続きとしてより核心に近いと思われるこれの記事を書こうと思います。

 

(S.P.Walborn,et.al."Double-slit quantum eraser"Phys.Rev.A.Vol.65(3),p033818-1~6(2002)ですね。)

 

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2010年1月 5日 (火)

遅延選択実験(タイムマシン?)(1)

 量子力学の非局所性と関連した「量子もつれ(エンタングルメント)」の関係の知見についてはずいぶん以前の2006年5月の記事「公開キー暗号(神はサイコロ遊びをなさる)(量子コンピュータ)」「量子通信(神はサイコロ遊びをなさる「つづき」) 」で少し触れました。

 今も,その程度の認識から余り進歩はないのですが,「量子通信」というのはいわゆる量子テレポーテーション(瞬間移動)を意味しますから見方によっては「タイムマシン」と同じ意です。

 「タイムマシン」というのはH.G.ウェルズ(H.G.Wells)のSFが起源でしょうが,キップ・ソーン(Kip.Thone)などによるその実現化に関する大ががかりなアイデアがあるようです。これは映画「バック・トゥ・ザ・ヒューチャー(Back to the future)」シリーズに利用されています。

 これはブラック・ホール(black hole)から入ってホワイト・ホール(white hole)から抜け出す,つまり,時空自身を曲げて時空の虫食い穴(ワーム・ホールworm hole)を作り,時間的な距離の2時空点(=光速よりも速くなければつながらない2事象:events)をショート・カット(short cut)する,あるいはワープ(warp)するという発想です。

 (ホワイト・ホールというのは重力場の方程式の解としては膨張する宇宙と同じですね。)

 例えて言えば,日本からその地球の真裏側のアルゼンチンやブラジルに行くには,現在の飛行機でもかなり時間がかかるのですが,もしも地球の中に真っ直ぐ裏側まで通じる穴を掘ってそれを通過することが可能なら動力無しで落下するだけでもはるかに速いショート・カットになるというような発想です。

 ホーキング(S.Hawking)やペンローズ(R.Penrose)などマッド・サイエンティストではないか?と感じられる余りにも哲学的な人の述べられることは,私には理解できないものが多いです。

 「タイムマシン」には「親殺しのパラドックス」に近いであろうホーキングの「時間順序保護仮説」などの背理的な仮説もあります。ホーキングは「タイムマシン」を創ることが可能な根拠も不可能な根拠も両方提出するような方ですから,その真意はわかりませんが。。。

 しかし,このような時空を曲げるような膨大なエネルギーが必要で,しかも現実にワームホール内の強大な潮汐力に耐えてその穴を通過するという難問をクリアする必要もあるという実現がかなり困難な構想よりも,量子力学の非局所性を用いるのが「タイムマシン」としてはより安易な方法でしょう。

 昔からあるホイーラー(J.Wheeler)などの「遅延選択実験」というのは,未来(=原点から光円錐の外の絶対的未来)において,如何なる選択をするかが現在の観測結果を左右するというものですね。

 実際に行われた実験結果においては,現在の観測と未来の選択の間に確実な因果関係ではなく統計的に有意な相関が見られるようです。

 (これは確か2008年6月頃「EMANさんのボード」でちょっと話題になった日経サイエンス掲載のウォルボーン(S.P.Walborn)らの「二重スリット量子消しゴムの実験のレポート」からの記憶だと思います。)

 この効果をより精密にするにはその中に光子1個だけがあるような理想的な希薄レーザービームが必要らしいのですが,既に技術的には日本の研究で開発されているらしいですね。

 まあ,ナノ秒程度の未来の情報信号が原理的に得られるとしても,その未来信号を実際に我々の五感に知らせるための装置の中にそれ以上のタイムロスがあれば「タイムマシン(量子通信)」としては無意味ですが。。

 というわけで,関連した論文を探しているうちに1987年のミュンヘン大での実験論文を見つけて正月に翻訳を試みたのでそれをそのまま掲載します。

表題:「Delayed choice experiments in quantum interference(量子干渉における遅延選択実験)」

 T.Hellmuth,H.Walther,A.Zajonc, and W.Schleich

Sektion Physik,Universitat Munchen,D-8046 Garching,Federal Republic of Germany and Max-Planck-Institut fur Quantenoptik,D-8046 Garching bei Munchen,

 

Federal Republic of Germany(Received October 1986)   Phys.Rev.A Vol.35,No.6 March,1987 ,pp2532-2541

  Abstract:

 

 Wheelerによる次の示唆に従って,我々は空間と時間の両方の領域での遅延選択実験を実行した。

 

 第一の実験には低強度のMach-Zehnder干渉計を用い,第二の実験には時間解像干渉計の量子beatテクニックを用いた。

 

 得られた結果は操作の正常モードと遅延選択モードの間に観測できる差異を顕わすことが無く量子論の予測と一致した。

Ⅰ.Introduction(序)

光子描像での「ヤング(Young)の干渉実験」の記述は過去に大きな議論を生じた課題でした。

 

重大な含みのある疑問の1つは装置の中に唯1つの光子しかない多数回の事象で形成される干渉パターンが強い光源で得られる干渉パターンと同一か否か?ということです。

この問題に答える実験は何人かの論文著者により種々の配列で実行されてきました。

 

そして,DentsovとBazの実験という例外を除く全ての実験では「強度が弱くなっても強度パターンに何らの変化も生じない。」という結果を示しました。

 

さらに,その後行われたDentsovとBazの任意の再実験では結局,他の実験結果と一致する結果を得ました。

 

そこで,光は一方では波動性を示し,他方では例えば「コンプトン(Compton)効果」のような例に見られるように「粒子に特有の局所性」を示すように見えるわけです。

しかし,我々はこれらの干渉実験が全て低圧の放電ランプを用いてなされたことに注目しました。

1つの光子の検知の直後にもう1つの光子が検知される確率は2次の相関関数:g(2)(0)で与えられますが,これは今の場合には2に等しくそれ故ゼロではありません。

それ故,Hanbury-BrownとTwissによる先駆的実験以来,光子たちは束になって到着する傾向を持つことが知られています。

放電ランプからの光による単一光子の干渉実験では最初の光子の直後に続く実験を乱す第二の光子がくる確率は,無作為な光子たちによるそれよりも大きいはずです。

この状況はレーザー光を用いれば改善されてg(2)(0)=1です。

したがって,単一光子の干渉実験に対する理想的な実験,例えば非常に希釈された原子ビーム,あるいはイオントラップにおける単一イオンからの蛍光ランプの解像度においてはその光はg(2)(0)=0を有する反束光と観測されます。

しかし,これまでは反束光を用いた単一光子干渉実験はなされたことがありません。ここでは,カスケード(連続)原子をMach-Zehnder干渉計の光源とします。

同じ意味では唯一のイオンだけがトラップされるほど小さいイオントラップの単一イオンによって供給された反束光を用いる方法下での実験がなされています。 

現状では1秒間に6万カウントの光子の計数率が達成されいます。

 

また,こうした実験はRef.8の実験では重要な励起されたレーザービームを有する相互作用領域での散乱の統計によって課せられる制限を持たないことが注目されます。

ボーア(Bohr)とアインシュタイン(Einstein)はごく初期のヤングの二重スリット実験における1光子の挙動を図的に表現しようと試みるときに生じる波動-粒子の二重性の出現の瞬間に興味をおぼえていました。

粒子性によれば1光子は常に2スリットの一方だけを選択します。

 

しかし,他方,干渉する性質を説明するためには光子が両方の経路を通ると仮定する必要があります。

さらに,アインシュタインは光子の経路を決めるために検知器上の光子の運動量を用いることができると提案しました。

しかし,後にボ-アは検知器上での運動量と位置の不確定性が「ハイゼンベルク(Heisenberg)の不確定性原理」を破ることを示しました。

 

それ故,光子の経路の観測か干渉の観測かのどちらか一方のみが可能であって,両方の同時観測は不可能です。

これに関連した興味深い疑問がホイーラー(Wheeler)とフォン・ワイゼッカー(Von・Weizsacker)によって提出されました。

 

彼らは光子の経路の観測と光子がスリットを通過した後の干渉の観測のどちらの観測を決定するかで実験結果は変わるかを問うたのです。

ホイーラーの遅延選択思考実験は図1(FIG.1)に要約されます。

 

      

パルス電磁波はビーム・スプリッター(BS1)により(経路xと経路yの)2つのビームに分かれます。2つの鏡(M)は右下方で両方のビームを交錯させます。

 

検知器は(経路xの検知器と経路yの別の検知器の)2つのビームの各々の場所にあります。

2つの実験の状況が想定されます。

 

1つは第二のビーム・スプリッター(BS2)が経路xと経路yの交点に導入される場合です。

 

この実験では干渉計の2つの腕における経路長さが厳密に調整されると,destractiveな干渉のせいで一方のカウンターには信号が検知されません。

 

しかるに他の検知器では,constructiveな干渉のため第一のビーム・スプリッター上のビームと同じ強度で検知器に信号が生成されます。

ホイーラーが指摘したように,この実験は,"到着光子が両方のルートからやってきた証拠"です。

もう1つ別の配列では,第二のスプリッター(BS2)は除去され,それ故検知器は光子がxとyのどちらの経路を通ってきたかを観測します。

 

2重スリットの実験において光子の経路の情報を獲得すること,干渉を観測することを同時に行なうことは不可能です。

新しい実験の遅延選択バージョンでは,ホイーラーに従って"ずっと後の時刻に第二のビーム・スプリッターを入れるかはずすかを選択して決めます。"

かくして,既に光子が到着する運動が終わって確定した後にこの光子が1つだけのルートを通ってくるのか,両方のルートを通ってくるのかを人為的に選択して決めるわけです。

干渉実験におけるこの遅延選択の解釈はかなりの注意を喚起し,実験に対して幾つかの提案がされました。

 

このarticleは空間的と時間的の両方の遅延干渉実験の実験的実現を記述します。これらの実験の予備的結果はRef.13に載せてあります。

本論文は次のように構成されています。

 

この序文(intro.)の次の第Ⅱ節では,遅延選択実験の測定過程を状態の異なる段階,分割,対象のヒルベルト空間の拡張へと分割します。

さらに経路情報,または干渉現象に応じて非交換演算子の陽な表現を与えます。

量子ビートに基づく時間領域での遅延選択実験は第Ⅲ節で導入されます。量子ビートと同じく遅延選択干渉の設定は第Ⅳ節で論じられます。

 

対応する実験結果は第Ⅴ節で見出されます。最後に第Ⅵ節にはまとめと結論があります。(第Ⅱ節へとつづく)

 

PS:寒いから毛布の1つでも買おうかな?と西友の2階売り場をうろついていたら,毛布よりもアッタカそうな女性がいっぱい歩いてましたね。。(← 不謹慎な。。)

 

チクショー,他人の子供だけど。。。何てカワイイんだ。。。

 

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2007年2月16日 (金)

ベルの不等式(量子論と実在)

今日は「量子論と実在」の問題と関連したEPRのパラドックス

(Einstein- Podolski-Rosen's Paradox)と関わる1つの不等式

の話をします。

 

量子論の確率解釈に対して,それに反対したEinstein(アインシュタイン)

の有名な「神はサイコロ遊びをなさらない。」というセリフにある

ような, 実在性の問題="隠れた変数"と関わる問題は,

  

謂わゆるEPRのパラドックスを検証する方法が見つかれば解決する,

 

とされてきました。

 

 そして,こうした問題は,"実在(隠れた変数が存在する)"であれば

成立するはずのベルの不等式」という,論理学での2値論理に

基づく1つの不等式が,量子論においては成立しない,ということ

 

アスペ(Aspect)らの実験などにより実証された,という形で,

1980年代には解決しました。

 

では,この「ベル(Belll)の不等式」とは,一体どういう内容の不等式

なのでしょうか?

 

今日はデスパ-ニ(B.D'espagnat)の「量子論と実在」というレポート

に基づいて,これを説明しようと思います。

 

 さて,EPR実験と同様ですが,元の実験よりはるかに考えやすい,

 と思われる1つの仮想的な思考実験を与えます。

 

 いくつかの陽子対について,それらのスピンを測定する装置がある

 とします。

 

 初めに,2つの陽子は,ごく接近した位置にあるとします。その後,

 2つの陽子が運動して互いにある巨視的な距離の程度に離れたとき,

 ある種のテストを行なうものとします。

 

量子力学によれば,陽子のようなスピンが1/2の1つの粒子の

ある任意の軸方向のスピン角運動量ベクトルの成分は,

 

アップ(上向き:+1/2)とダウン(下向き:-1/2)の2つの値

しか取らない.,ことがわかっています。

 

以下では,この2つの値をアップ,および,ダウンの代わりに,それぞれ,

+(プラス),および,-(マイナス)で表わすことにします。

 

そして,それぞれの対をなす2個の陽子は一緒になって,

シングレット(Siglet:一重項状態)と呼ばれる量子力学的配置

を取っているとします。

 

(※↑ 一重項状態とは,陽子対全体ではスピンがゼロという意味です。)

 

このとき,それらのスピン成分は確実に負の相関を持っており,

両方の粒子について同じスピン成分を同時に測定すると,

 

1方の陽子のスピン成分がプラスなら,必ず他方の陽子のそれは

マイナスであり,逆の場合はその逆として観測されます。

 

そして運動の初期状態,すなわち,陽子対に対応する陽子達が比較的

接近していたと思われる状態では,実験対象の多数の全ての陽子対に

ついてこの相関は十分に確立されていた,とします。

 

量子論によれば,たとえ,どんな装置があろうと,一度に2つ以上の方向

のスピン成分は測れませんが,1つの装置で任意に選ばれた3つの軸の

どの1つの向きのスピン成分でも測れるように,調節可能なものを作る

ことはできます。

 

以下では,これらの3つの軸をA,B,Cで表わし,実験結果を

次のように書くことにします。

 

A軸方向のスピン成分がプラスであればA+と表示し,B軸方向の

スピン成分がマイナスであれば結果はB-で与えられる,等々です。

 

そこで,多くのシングレット状態にある陽子対を用意して,

これらの対の両方の陽子について,それぞれのスピンのA成分

を測る場合を考えます。

 

ある対のうちの1つの陽子ではA+であり,他の対の1つはA-である

ということがあるのは当然ですが,ある1つの対の1つのメンバーが

A+であるときにはいつでも,そのもう一方のメンバーはA-である

ということになります。

 

もしも,それとは別にB方向のB成分を測れば,1つの陽子がB+なら

それとシングレットを組んでいる相手はB-であり,

 

同様に,1つのC+陽子は必ず1つのC-陽子を伴っています。

 

そして,以上の結果は軸A,B,Cの空間内での向きに無関係に

成立します。

 

局所的実在論的理論では,量子論では否定され,現実にはあり得ない,

とされてうますが,現在の実験では測定できなくても実は隠れてた性質として存在しているに違いない,として,

 

単一の粒子のスピンの2つの成分を同時に測定する手段が何か存在する

と仮定してよい。とされます。

 

そこで,仮にそうした装置が存在するとして,それで測定した結果,

 

2つのスピン成分としてA+とB-を同時に持つと認められた陽子

の個数を,N(A+B-)と表記することにします。

 

このとき,通常の論理に従えば,陽子達のスピンのA,B,C3つの成分

は測定するしないに関係なく,元々確定していたと考えることができて,

その個数をN(A-B+C-),N(A+B+C-),etc.と表記できます。

 

そして,それらは,当然,N(A+B-)=N(A+B-C+)+N(A+B-C-)

という式を満足するはずです。

 

同様に,N(A+C-)=N(A+B+C-)+N(A+B-C-),

N(B-C+)=N(A+B-C+)+N(A-B-C+)

も成立するはずです。

 

それ故,N(A+C-)≧N(A+B-C-),N(B-C+)≧N(A+B-C+),

かつ,等式:N(A+B-)=N(A+B-C+)+N(A+B-C-)が成立する

はずですから,

 

これから,N(A+B-)≦{N(A+C-)+N(B-C+)}

なる不等式が得られます。

 

この不等式は,以上のように全く形式的に導き出されてはいますが,

 

ある単独の陽子の2つの成分を独立に同時測定できる装置が存在

しない以上,このままでは,これを実験によってテストすることは

できません。

 

しかし,個々の陽子ではなく,相関を持つたくさんの陽子対に対して

測定を行なう実験では,上述の不等式の成否を確かめるのに,

そうした不可能な測定を行なう必要はありません。 

 

すなわち,AかBかCかのどれか1つのスピン成分について,

それぞれの陽子をテストする,という実験を行います。

  

偶然の一致で1つの対の中の両方の陽子に対して,実験で同一の成分

を測ることがときどき起こることになるだろうと考えられますが,

この種の結果は新しい知識を提供しないので無視すると,

 

残った対では,AB,AC,BCで表示される異なる軸のスピンを

測った陽子対になります。

  

そして,こうした陽子対の個数をそれぞれn(A+B+),n(A-B+),

...etc.と表わすことにします。

 

(A+B+)とn(A+B+)の違いは,N(A+B+)が単独の陽子の

2つのスピン成分を持つ陽子の個数を示すのに対して,

 

n(A+B+)は2つの陽子の一方がA+,他方がB+の陽子対の個数

を示していることです。

 

(A+B-)というのは,ある1つの陽子が確実にA+かつB-を持つ

とされる陽子の個数なので,それと対をなす相手のメンバーの陽子

は確実にA-かつB+を持つと考えられますから,

 

そうした個数は,N(A-B+)=N(A+B-)を満たします。

 

そこで,多くの陽子対の同一のサンプルに対し,独立にA,B2つの方向

について測定された2つの実験では,統計的相関から近似的に

n(A+B+)はN(A+B-),またはN(A-B+)に比例(すると

考えてよいことになります。

 

同様にして,n(A+C+)はN(A+C-)に,n(B+C+)はN(B-C+)に

比例すると考えられ,これらの比例係数は共通であると予想されます。

 

したがって,不等式N(A+B-)≦{N(A+C-)+N(B-C+)}は,

不等式n(A+B+)≦{n(A+C+)+n(B+C+)}と変換される

ことになります。

 

これがベルの不等式の1つの形式です。

  

(※別の形式の不等式もありますが意味は大同小異です。)

 

これなら,現実の実施可能な実験によってテストすることが

可能なわけです。

 

そうして,この不等式(または別の形のそれ)がアスペの実験を始め,

多くの実験により"否定的な結果,

 

つまりこうしたベルの不等式は成立しないという結果"を得たため,

Einsteinらの実在論者は敗北し,「量子論の非局所性」が

正当化されるきっかけとなったのでした。 

 

参考文献;B.デスパニャ(Bernard D'espagnat)「量子論と実在」(The Quantum Theory and Reality.) (日経サイエンス1980年1月号から)

 

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2006年10月23日 (月)

観測の問題(デコヒーレンス)

今日は観測に伴なって固有状態の干渉項が消滅すること

=デコヒーレンス (decoherence)の現象を最近の理論に基づいて

述べてみたいと思います。

 

ただし私自身は本質的には多世界解釈の方に傾いています。

まず,"観測可能量(observable)=物理量=線型演算子"O^とその

あらゆる固有値:oiに属する固有状態:|i>の集合,つまり,

O^|i>=i|i>を満たす|i>の集合があり,これら

完全系を形成している,すなわち,∑i|i><i|=1

が成立しているとします。

"任意の状態=純粋状態":|ψ>は|ψ>=∑ii|i>と展開可能

この同じ状態|ψ>において,物理量O^を状態を乱すことなく

独立に多数回観測したときにはO^の固有値以外が観測されること

はなく,観測値がoiである確率が|ci|2で与えられます。

そして∑i|ci|21が成立しているというのが量子力学

の観測に関する枠組みと考えられます。

 

しかも,通常は固有状態|i>は正規直交化されていて,

<i|j>=δijなのでci=<i|ψ>なる式が成立して

います。 

したがって,この純粋状態|ψ>における物理量O^の観測値

の"期待値=平均値"は,

<O>ψ=∑i|ci|2i=∑ii|ψ><ψ|i><i|O^|i>

=∑i<ψ|i><i|O^|i><i|ψ>=<ψ|O^|ψ>

で与えられます。

 

つまり,<O>ψ=<ψ|O^|ψ>であり.

<O>ψ=∑i<ψ|O^|i><i|ψ>=∑i<i|ψ><ψ|O^|i>

=Tr(PψO^)となります。

ここで射影演算子とよばれるPψはPψ|ψ><ψ|で定義され,

物理量X^の対角和(trace)は,Tr(X^)≡∑i<i|X^|i>で定義

されます。

 

そして対角和の値が,これを定義する完全系{|i>}の選択に依

ないことも簡単にわかります。

ところで,もしもこの体系が,状態間の干渉が存在するような状態

の重ね合わせのみで成り立つ純粋状態ではなく,

 

情報の欠如などによって統計的に純粋状態:ψ,φ,χ,...が

それぞれ確率:W(ψ),W(φ),W(χ),...で混合している混合

状態であるとすれば,

 

O^の期待値は<O>=∑ψ(ψ)<ψ|O^|ψ> 

で与えられます。

 

これも,<O>=∑ψ(ψ)<ψ|O^|ψ>

=∑ψiW(ψ)<ψ|O^|i><i|ψ>

=∑iψ(ψ)<i|ψ><ψ|O^|i>=Tr(ρ^O^)

となり,純粋状態の<O>ψ=Tr(Pψ)と同じ形に

書けます。

 

ここでρ^はρ^≡∑ψ(ψ)|ψ><ψ|=∑ψ(ψ)Pψと定義

されて統計作用素(密度演算子)と呼ばれます。

対象となる体系のHamiltonianをHとすると統計作用素ρ^

時間に依存する量子力学の線形演算子に相違ないので,

Heisenbergの運動方程式:ic(∂ρ^/∂t)=[H,ρ^]

を満足します。

 

ただし,hc≡h/(2π)でhはPlanck定数です。

 

実は状態|ψ>はSchroedinger表示の時間を含む状態ベクトル

|ψ(t)>で,これがSchroedingerの方程式:

ihc(∂/∂t)|ψ(t)>=H|ψ(t)> を満たします。

 

逆に統計作用素ρ^≡∑ψ(ψ)|ψ(t)><ψ(t)|が時間

を含むHeisenberg表示の作用素となるため,Heisenbergの

運動方程式:ihc(∂ρ/∂t)=[H,ρ^]を満たすと考えて

よいわけです。

時間発展の演算子をU(t',t)=e-iH(t'-t)とすると,

|ψ(t')>=U(t',t)|ψ(t)>ですから,

ρ^(t)≡∑ψ(ψ)|ψ(t)><ψ(t)|によって

ρ^(t')=U(t',t)ρ(t)U(t',t)-1となります。

 

統計作用素ρの時間発展はユニタリ変換によって行われる

のでρ^や,ρ^に関わる関係式は時間発展によって変化しません。

簡単のため,スピンが1/2の区別できる粒子が2個ある体系に

ついて考察します。

 

スピン1/2の1粒子のスピン角運動量の演算子をとすると,

それは2行2列の行列表示では,Pauliのスピン行列σを用いて,

=(c/2)σと表わされます。

 

σz の固有値+1,-1の固有状態を,それぞれ|α>,|β>とします。

 

2つの粒子それぞれのこうした状態を,それぞれ,(i)

と|β(i)>(i=1,2)で指定することにします。

このとき,全系の任意の状態ベクトルは(1)>|α(2)>,

(1)>|β(2)>,|β(1)>|α(2)>,|β(1)>|β(2)>の1次結合

で表わされます。

 

そして,例えばスピンがゼロの状態は,

|0>=(1/21/2)(|α(1)>|β(2)>-|β(1)>|α(2)>)

で与えられます。

 

この状態での統計作用素ρ^0は,

ρ^0 =(1/2)(|α(1)>|β(2)>-|β(1)>|α(2)>)

(<α(1)|<β(2)|-<β(1)|<α(2)|)

=(1/2)(|α(1)><α(1)|(2)><β(2)|

-|α(1)<β(1)|(2)><α(2)|

-|β(1)><α(1)|(2)><α(2)|

+|β(1)><β(1)|(2)><α(2)|)

となります。

 

ただし,記号は直積を表わしています。

 

このρ^0は確かに,純粋状態を示す"統計作用素=射影演算子"

です。

ここで,一般に粒子1のみに関する物理量S(1)を測定する場合

を想定すると,このときも対象としては全体系ですから,

物理量を表わす作用素はS(1)(2)です。

 

その期待値は,

<S(1)(2)>=Tr(ρ^(1)(2))

=∑ij<i(1)|<j(2)|ρ^(1)|j(2)>|i(1)

=Tr(ρ^(1)(1))  と書くことができます。

 

ここで,ρ^(1)<j(2)|ρ^|j(2)>=Tr,2(ρ^) です。

そして,部分系である粒子1の物理量S(1)の測定の期待値は全て

<S(1)(2)>=Tr(ρ^(1)(1))の形で表わせるので,

 

実質的には,ρ^(1)が部分系である粒子1の状態を示す統計作用素

であると見なすことができるでしょう。

ここで,ρ^=ρ^0 の場合には,

ρ^0(1)=<α(2)|ρ^0(2)>+<β(2)|ρ^0(2)

=(1/2)(|α(1)><α(1)|+|β(1)><β(1)|) です。

 

そこで,全系が純粋状態でも,部分系である粒子1の状態は

z成分のスピンが上向きと下向きが1対1に混合した混合状態

となることがわかります。

話を戻して,体系の状態が|ψ>で物理量O^の固有状態での

展開が,|ψ>=∑ii|i>(∑i|ci|21) で与えられると

します。

 

O^の測定装置はマクロな物体ですが,装置も状態ベクトル

表わすことができると仮想して,その初めの状態を|o>A

とします。

そして,対象が状態|i>にあるとき,それを測定したときの

"対象=体系と装置"の変化を|i>|o>A|i>|i>A

とします。

そこで,|ψ>を測定したときには,

|ψ>|o>A → ∑ii|i>|i>A となります。

 

この最後の状態はもちろん純粋状態であって,物理量O^の期待値

を取れば当然|,i>|i>A 間の干渉が現われるはずです。

 

最初の状態が純粋状態であって時間発展がユニタリですから当然

それは予想されたことです。

しかし,我々の観測の経験では,測定の最後の状態は

|i>|i>Aの状態がW(oi)=|ci|2の確率で混じり合って

いて,決して干渉作用など起きない混合状態です。

簡単のために,1電子のスピンのz成分を観測するStern-Gerlach

の実験のようなものを考察します。

 

これは,不均一な磁場の中にスピン磁気モーメントを持つ電子

が入射してスピンが上向きか下向きかが検出される実験です。

 

入射電子はある一定のスピン状態にあって,

|ψ>=(c1|α>+2|β>)|φ>,(|c1|2|c2|21)

であるとします。

 

ただし,|φ>は電子線の空間的運動を表わす状態ベクトルです。

 

入射電子が磁場の中を通るとスピンの向きによって空間的運動

は上下に分裂するので,

 

|ψ> → |γ>≡c1|α>|φ>+2|β>|φ

 

となります。

そして,上下にある検出装置の統計作用素=密度行列をそれぞれρAαAβ,対象と装置の全体系の"統計作用素=密度行列"をη0

すると,

 

η0=|γ><γ|ρAαρAβ

=(|c1|2ρ++|c2|2ρ--12*ρ+-21*ρ-+)ρAαρAβ

 

と書けます。

 

ここで,

 

 ρ++=|α><α|><φ|,

 ρ--=|β><β|><φ|,

 ρ+-=|α><β|><φ|,

 ρ-+=|β><α|><φ|

 

です。

測定装置が状態ベクトルで表わされている状況では,ユニタリ性の故,

測定の結果として,干渉項ρ+--+が消えることは決して有り得ないことです。

 

そこで装置は初めから混合状態にあると考えます。

 

すなわちマクロな装置はN個~ Avogadro数個程度の粒子の集合系

であり,このN粒子の系の多数の状態ベクトルの混合状態が装置を

表わしていると考えるわけです。

そして,測定にはある時間にわたって全体系の密度行列η0を調べる

必要があります。

 

それぞれ,N,N'粒子系から成る上下の検出装置に対して

η0(N,N')≡|γ><γ|ρAα(N)ρAβ(N') と定義

します。

 

相互作用が起こる直前の時刻をt0 として,時刻tでの全体系の

統計作用素をN,N'を省略してη(t)と書くと,η(t0)=η0

対し, 

η(t)=∑N,NW(N)W(N')(t,t0)η0(N,N')(t,t0)-1

(ただし∑(N)=1)

と書くことができます。

η0(N,N')=|γ><γ|ρAα(N)ρAβ(N')において,

例えばρ+-に関わる部分は,

|α><β|><φ|ρAα(N)ρAβ(N') です。

 

装置との相互作用部分がスピンに依らないとすれば,時間発展

は,(t,t0)>ρAα(N)<φAβ(N')(t,t0)-1

となります。

 

ここで,|φ>はρAα(N)のみ,<φ|はρAβ(N')のみと相互作用

するので左右に分けました。

 

tを相互作用が終わった時刻とし,N個の粒子の個数に比例する

運動長さの単位をL(N)とすると,そのオーダーはL(N)~N1/3

です。

 

そして,比例定数として波数因子kを掛けた位相の変化がある

と考えられるので,

左の(t,t0)>ρAα(N)は因子ikL(N) を,

右の<φAβ(N')(t,t0)-1は因子eikL(N')

を含むはずです。

ここで,η(t)=∑N,N’...を連続化して積分式にすると,

η(t)=∫dL∫dL'W(L-L0)W(L'-L0)(t,t0)

η0(L,L')(t,t0)-1(ただし∫dL(L-L0)=1)

となります。

 

位相部分だけに着目すると,L(N)~N1/3が大きい極限で

密度行列要素は,それぞれ,

 

ρ++→ 1,ρ--→ 1,ρ+-→eik(L-L')-+→e-ik(L-L')

 

となります。

 

ところで,Riemann^Lebesgueの定理によれば,L,L'が無限大の

極限では,

∫dL∫dL'W(L-L0)W(L'-L0)eik(L-L') → 0

となります。

 

このことから"統計作用素=密度行列"からρ+-とρ-+の干渉項

が消えてρ++とρ--の項のみがそのままの形で残ることになり,

事実上デコヒーレンスが実現されることになると考えられます。

ただし,清水明氏の量子測定の原理とその問題点」に書かれて

いますが,

"測定装置の他に環境も含めたとしても干渉項のオーダー

観測時間をT,光速をcとして,exp[-(正定数)×cT3]が限界

あり決して正確にゼロになって消えるわけではない。"

という問題は残っています。

一方,szの測定によって必ずしもσzの固有状態である

|α>,|β>が観測されると考える必要はないという本質的な

問題もあります。

 

例えば,|χ±>≡(1/21/2)(|α>±|β>)(複号同順)はσx

対してのスピンの+,-の固有状態です。

 

先の統計作用素において非干渉成分として,

ρ++=|α><α|><φ|,ρ--

=|β><β|><φ| の代わりに,

 

ρ'++=|χ><χ||φ'><φ'|,

ρ'--=|χ><χ||φ'><φ'|

 

が残ると考えても何の不都合もないからですね。

こちらの問題は(猫生)か(猫死)のどちらか一方のみの状態が観測

されるとして定式化しても,

 

それらの重ね合わせ状態が観測されるとして定式化しても,

"統計作用素=密度行列"のデコヒーレンスだけからは,

それらは全く同等である,ことから多世界解釈の問題でもあり

超選択則関わる問題ですね。

 

例えば変換群の異なる既約表現にまたがる重ね合わせ状態は

観測されない,とかの原理的問題であると思います。

 

具体的には既約表現の問題とは,ちょっと違うかもしれないです

が,アイソピン(荷電スピン)に関わる2次元特殊ユニタリ群

SU(2)において,

 

陽子と中性子の重ね合わせ状態は決して観測されない,という

のも超選択則の例です。

 

これに対して,φメソンやKメソンにはむしろ混合(mixing)が

ある状態で存在する方が普通なので,自然がどういうメカニズム

になっているのかは不思議なことです。

 

これに関しては,観測を行なう以前の物理系の状態を記述する

"波動関数や密度行列をも実在であると考えるかどうか?"

という哲学的な問題も関連あるかもしれません。

 

参考文献;町田茂 著「基礎量子力学」(丸善),

ボーム 著「量子論」(みすず書房)

http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー)                                       TOSHI 

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