環境・汚染

2006年11月 6日 (月)

移流拡散方程式を解く

 特殊な条件の下で移流拡散方程式を解いてみたいと思います。これは30年ほど前に就職した会社で配属後に計算したものです。 

 点源から不断にQ(m3/s)の気体物質が排出され,風速が一様で=(u,0,0),拡散係数:x,Ky,Kzが定数である場合の濃度計算を考えます。まずは,点源が原点にあるとします。 

 このとき,濃度Cに対する拡散方程式は∂C/∂t+u(∂C/∂x)=x(∂2/∂x2)+y(∂2/∂y2)+z(∂2/∂z2)+Qδ3()と書けます。

 これを解くため,Cをフーリエ(Fourier)変換して,C(,t)≡{1/(2π)3}∫d3C^(,t)exp(ikr)とします。

 

 r≠0 ではC^=C^(,t)について∂C^/∂t+(xx2yy2zz2+ikx)C^=0 となります。

 故に,C^(,t)=C^(,t0)exp[-(xx2yy2zz2+ikx)(t-t0)]と書くことができます。

 そして,C^(,t0)=∫d3'C(',t0)exp[-i(')]ですから(,t)={1/(2π)3}∫d3C^(,t0)exp[-(xx2yy2zz2+ikx)(t-t0)+ikr]={1/(2π)3}∫d3'C(',t0)∫d3exp[-(xx2yy2zz2)(t-t0)-i{kr'-kx(t-t0)}]となります。 

 ところが,∫d3exp[-(xx2yy2zz2)(t-t0)-i{kr'-kx(t-t0)}]=∫exp[-x(t-t0){x+i[x'-u(t-t0)]/[2x(t-t0)]}2]dkxexp[-y(t-t0){y+iy'/[2y(t-t0)]}2]dkyexp[-z(t-t0){z+iz'/[2z(t-t0)]}2]dkzexp[-{'-u(t-t0)}2/{4x(t-t0)}-y'2/{4y(t-t0)}-z'2/{4z(t-t0)}]です。

  

 ガウス積分を実行することにより,右辺=[π3/{xyz(t-t0)3}]1/2exp[-{'-u(t-t0)}2/{4x(t-t0)}-y'2/{4y(t-t0)}-z'2/{4z(t-t0)}]となります。

 したがって,C(,t)=(1/8)[1/{π3xyz(t-t0)3}]1/2∫d3'C(',t0)exp[-{'-u(t-t0)}2/{4x(t-t0)}-y'2/{4y(t-t0)}-z'2/{4z(t-t0)}]です。

 

 特に初期瞬時濃度が排出強度Q'そのもの,つまりC(,t0)=Q'δ3()なら,C(,t)=(Q'/8)[1/{π3xyz(t-t0)3}]1/2exp[-{x-u(t-t0)}2/{4x(t-t0)}-y2/{4y(t-t0)}-z2/{4z(t-t0)}]となりますね。

 そこで,排出量が単位時間当たりQ,つまり,微小時間dt0ではQ'=Qdt0である場合,これを代入してt0で積分します。

 定常状態の濃度C()はこれで得られるはずです。

 

 C()=∫0dt0(Q/8)[1/{π3xyz(t-t0)3}]1/2exp[-{x-u(t-t0)}2/{4x(t-t0)}-y2/{4y(t-t0)}-z2/{4z(t-t0)}]と書けます。

 

 この時間積分を実行すると,結局C()=(Q/4)[1/{π2xyz}]1/2(x2/2/y+z2/z)-1/2 exp{ux/(2K)}exp(-u(x2/2/y+z2/z)1/2/(2K1/2))となります。

 特にx,yを水平方向,zを鉛直上向き方向としたとき,一般に地上付近を考えるならばx,y>>zであり,水平方向の対称性から,K=Ky=KH とすると,(x2/2/y+z2/z)1/2~ R/KHと考えることができます。

 

 ただし,R≡(x22)1/2は点源からの水平距離です。 

 そこで,() ~ [Q/(4π)][1/(RHz1/2)]exp {ux/(2KH)-u{R2/(2KH)2+z2/(4zH)1/2}]です。

 

 さらに風下方向xがyよりも風に流される影響が優勢であると考えてx>>yとすると,ux/(2KH)-u{R2/(2KH)2+z2/(4zH)1/2} ~ ux/(2KH)-ux/(2KH)[1+y2/(2x2)+KH2/(2Kz2)]と近似すれば,() ~ [Q/(4π)][1/(xHz1/2)]exp[-uy2/(4KHx)-uz2/(4Kzx)]となります。

ここで,σx2=σy22KHx/u,σz2=2Kzx/uと書けば,()~[Q/(2πσxσz)]exp[-y2/(2σy2)-z2/(2σz2)]となります。

しかし,一般には地上z=0 より下のz<0 には拡散しないのでz=0 では境界条件として∂C/∂z=0 なる反射条件が成立します。

 

規格化定数は上半面z>0 のみを考えるので,先の値の2倍となります。また,拡散式は発生点源より風上のx≦0 では()=0 であるという境界条件も満足する必要があります。

 

もし,点源が高さz=He=(有効高さ)を持つなら,地下z=-Heに仮想の鏡像点源があると考えればよく,濃度はC() ~ [Q/(2πσxσz)]exp{-y2/(2σy2)}[exp|-(z-e)2/(2σz2)+exp|-(z+e)2/(2σz2)]]と変更されます。

行政では,簡易式として,y方向について-∞ から+∞ まで積分し,その濃度が円周2πRではなく16等分した風向の風下扇形(π/8)R部分に全て分配されると仮定して近似した式が採用されているようです。

 

すなわち,濃度は風向をx軸として()~C(R,z)~ [Q/{(2π)1/2(π/8)Rσz}][exp|-(z-e)2/(2σz2)+exp|-(z+e)2/(2σz2)]]で与えられるという簡易式です。

 

これらの式は有風時のプルーム式と呼ばれています。

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2006年11月 4日 (土)

大気中の移流拡散方程式

 大気中の気体物質の拡散方程式について若干の考察をしてみたいと思います。 

 ある温度で大気の単位体積中に存在する同じ温度の気体物質の体積の値をその濃度と呼びCで表わすことにします。

 "(大気+物質)の密度=大気全体の密度"をρ,濃度対象としている気体物質のみの密度をρ1とし,質量濃度をcとします。ρ1=ρcです。

 

 そして,大気全体には"主流=平均流"として風速があるとし,大気全体は非圧縮,かつ空間的にもρは一定と仮定すると,その全体としての連続の方程式はdiv=∇=0 となります。

 

 一方,混合された気体物質に着目した連続の方程式には湧き出しがあるとして,∂ρ1/∂t+∇(ρ11)=q1と書くことができます。湧き出しq1は物質の排出強度と呼ばれます。 

 連続の方程式∂ρ1/∂t+∇(ρ11)=q1にρ1=ρcを代入すると,(ρc)/∂t+∇(ρc)=-∇[ρc(1)]となります。

 

 結局,Dc/Dt=∂c/∂t+∇c=-∇+q1 /ρと書けます。ただし,D/Dt=∂c/∂t+∇はラグランジュ微分で,≡c(1)は拡散流束密度と呼ばれる量です。

 ここで,N0アボガドロ数,Mを大気全体の分子量,M1を濃度対象の気体物質の分子量とすると,大気全体と対象物質の単位体積当たりの分子数は,それぞれ,N0ρ/M,N0ρ1/M1です。

 

 同一温度での気体の体積は分子の数に比例するので,C=ρ1/(ρM1)=(M/M1)cとなります。よって,質量濃度cと(体積)濃度Cは単に定数係数の違いしかありません。

 

 したがって,質量濃度cの方程式Dc/Dt=-∇+q1 /ρは体積濃度Cで表わすと,DC/Dt=-∇+Qとなります。

 

 ≡(M/M1)i=C(1)は(体積濃度の)拡散流束密度,Q≡q1/(ρ/M1)は物質の(体積)排出強度と解釈することができます。

 ここで,フィック型の拡散を想定し拡散流束密度が濃度の高い方から低い方へその勾配に比例して流れるとします。

 

 その拡散流束密度は拡散係数Kをテンソル{Kij}としてji=-Kij(∂C/∂xj)となります。Kは拡散係数ですから正値です。

  

 ただし,同じ添字が2度出現するときは1から3まで加える,というアインシュタインの規約を用います。

 

 拡散係数テンソルKを主軸変換して対角化し,ij=Kiδijの主軸をx,y,z方向に取れば,その主軸成分はKx,Ky,Kz とすることができます。

 

 このときには,拡散流束密度は={x(∂C/∂x)}x+{y(∂C/∂y)}y{Kz(∂C/∂z)}zです。

 

 そこで,拡散方程式:∂C/∂t+∇C=(∂/∂x){x(∂C/∂x)}+(∂/∂y){y(∂C/∂y)}+(∂/∂z){Kz(∂C/∂z)}+Qが得られます。

 特に拡散係数Kがスカラーで近似的に定数と見なせるときは,ij=Kδijであり,通常の移流拡散方程式である∂C/∂t+∇C=K∇2C+Qに帰着します。 

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2006年9月30日 (土)

線形微分方程式系の直接解法(ボックスモデル)

 今日は屋内での汚染物質濃度を求めることを仮定した簡易ボックスモデルを例にとって定数係数の連立線形常微分方程式の数値解を求めるための1つの手法を紹介します。

 室内の濃度分布を計算するには簡易モデルではなくて熱対流などの気流を計算する2方程式モデルなどに移流拡散方程式を付加した非定常な数値流体方程式を解くという大げさな方法もあります。

 

 しかし,ここでは部屋の平均濃度だけを計算する,という簡易ボックスモデルを考察します。

 例えば容積がV(m3)の部屋の中央に石油ストーブなどがあって,それからの一酸化炭素COの排出強度がQ(m3/s)であるとします。もし部屋が密閉されていれば時間tが経った後にそのCOの平均濃度をCとするとC=(Q/V)tとなると考えていいでしょう。

 しかし一般に部屋には隙間があって換気されるわけで,通常1時間に部屋全体の空気が入れ替わる回数を換気率という量で表わします。

 

 例えば容積Vの部屋の換気率がnならば,1時間の後には総量nVの空気が排出され物質量の保存則によって同時にnVの空気が外部から入ってくるわけですから,1秒当たりの空気の流出入量をk(3/s)とするとk=nV/3600ですね。

そこで,各時刻の部屋の中のCOの平均濃度をC(t)で表わすとこの部屋の中の単位体積当たりのCOの量は各時刻にC(t)(3/m3)なので時刻Δtの間に外気に流出するCOの量はkC(t)Δtです。

 

一方外気の一酸化炭素濃度(一定:constant)をC0とすると,流入量はkC0Δtですから,部屋内のCO量の時刻変化はV(C(t+Δt)-C(t))=k[C0-C(t)]Δtという式で与えられます。

 さらに排出強度をQとすると,右辺には発生量QΔtが加わりますから,結局CO濃度に対する微分方程式はdC/dt=a(C0-C)+Q/Vと表わすことができます。ここでa≡k/Vです。

 

 B=aC0+Q/VとおけばdC/dt=-aC+Bとなりますが,この微分方程式は簡単に解けてC(t)=(C( 0 )-a-1B)exp(-at)+a-1Bという解が得られます。

こうしたモデルを室内物質濃度の簡易ボックスモデルと言います。

 これを一般化して各部屋の容積がVi(i=1,2,...m)のm個の部屋を有する住宅があって,これらの部屋の平均濃度が(m+1)次元の列ベクトルで(t)=t(C0,C1,C2,...,Cm)で表わされるとします。

 

 ここでCkはk番目の部屋における物質濃度です。ただしC0は屋外の平均濃度値を示しています。

そして各部屋には排出強度Qiの排出源があり"部屋iと部屋jの間の換気量=先の方程式のkに相当する値"をkij=kji(i≠j;i,j=0,1,2,..m)とすれば,このボックスモデルの微分方程式はdCi/dt=∑j=0mij(Cj-Ci)+Qi/Vi(i=0,1,2,..m)となります。ただしaij≡(kij/Vi)です。

 (排出強度/容積)の列ベクトルを,t(Q0/V0,Q1/V12/V2,..,Qm/Vm)で定義します。ただしQ0/V0=0 としておきます。

 

 また,λi≡∑j=0mijと定義し行列Aを成分(aij-λiδij)によって定義すれば,濃度を求めるボックスモデルの微分方程式,すなわち(m+1)変数の定数係数連立線形非同次微分方程式は(m+1)次元ベクトル空間での線形非同次微分方程式としてd/dt=-Aと表わされます。  

 この方程式の形式的な解は簡単に求めることができて初期値を(0)とすると,(t)={(0)-A-1}exp(-At)+A-1と書くことができます。

 さらに濃度を形式解ではなくて実際に具体的に求めるには従来の慣用的な方法であればAの最大(m+1)個の固有値:λi(i=0,1,2,..m)を全て求めて,(t)の各成分を具体的にexp(-λit)の1次結合で表わすのです。

 

 しかし,たかだか10部屋程度の住宅で行列Aが具体的にわかっているときには,固有値を求めるなどという面倒な手続きを省略してコンピュータで無理矢理,力技で行列の指数関数を計算してしまう,という方法があります。

 すなわち,形式解(t)={(0)-A-1}exp(-At)+A-1において逆行列:A-1はAからコンピュータで掃き出し法などで計算可能ですし,exp(-At)=∑ν=0(-At)ν/ν!であって,コンピュータで行列のベキ乗(power):(-At)νを具体的に計算することも可能です。

 

 そこで,左辺のexp(-At)を右辺の∑ν=0のν=0,1,2,...の最初の数項で近似評価することによって力技で数値的に(t)の近似解を求めることができるわけです

 

 逆にこの近似解と物質濃度の直接測定実験の結果から非線形最小二乗法などによって換気率パラメータ:kijを推定することもできます

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2006年9月22日 (金)

非線形最小二乗法(JEA式の作成過程)

 今日は窒素酸化物濃度などを計算する解析的な低煙源拡散式のパラメータの推定のために用いたことがある非線形最小二乗法について解説してみたいと思います。(直角風のJEA式)

 地上の道路上を走行する自動車からの窒素酸化物(NOx)などの汚染物質排出を,有効煙源高さhe=0(m)のy軸上で単位長さ当たりの定常的な排出強度がQ(Nm3/(ms)の無限線煙源としてモデル化します。

 

 そして,道路に直角のx方向に風が吹いている設定で,風速も拡散係数も高さz(m)のベキ乗則に従って鉛直上方に向かって増加するというモデルを想定します。

 

 このときの拡散方程式の解である汚染物質濃度を,垂直距離x(m)と高さz(m)の関数と考えてC(x,z)で表わすと,これはAをQに比例するあるパラメータとして,C(x,z)=Ax-sexp(-Bzp/x)なる形の式(Robertsの式)で表わされる,ことがわかります。

 様々な環境の下で数回に渡って行なわれた実際の実験時の煙源長さはもちろん有限なのですが,とりあえず,これを無限大長さで近似します。

 

 実はガウスの誤差関数でもって有限長さの効果を取り入れることもできるのですが,今日の話題では割愛します。

 

 実験はトレーサーガスを地上にある有限長さの直線状のパイプに均等間隔で開けた穴から拡散させるというものです。

そのパイプ状の発生源をy軸としたとき,n個の観測点座標:(xi,zi)(i=1,2,...n)において,風向が直角に近い環境のときの実測濃度:ciと先に設定した低煙源拡散式による計算値:Ci=C(xi,zi)とを比較することによって,逆にその式のパラメータA,s,B,pを推定します。

 具体的には,C(x,z)=Ax-sexp(-Bzp/x)の右辺をf(A,s,B,p;x,z)と書いて,i=f(A,s,B,p;xi,zi)とし,計算値と実測値の誤差の二乗和:S(A,s,B,p)≡∑(Ci-ci)2を最小にするパラメータA,s,B,pを求めるわけです。

 

 これは次に述べる非線形最小二乗法のパラメータ数が4個のときの例になっています。

 ここでは,より一般的に未知パラメータがr個あるとし,それらを順にA1, A2,..Arとします。

 

 上のケースではr=4で,A1=A,A2=s,A3=B,A4=pです。

 

 そして,Ci=C(xi,zi)=f(A1,A2,..Ar;xi,zi)とし,S(A1,A2,..Ar)≡∑(Ci-ci)2と定義するわけです。

 誤差の二乗和Sが最小となる条件は通常の線形回帰の計算の場合と同様,i(A1,A2,..Ar)≡∂S/∂Ai=2∑(Ck-ck)∂Ck/∂Ai=0 (i=1,2,..r)で与えられますから,この r 個の連立方程式を解くことにより,未知数A1,A2,..Arを求めることが主目的となります。

 

 これらの方程式は一般に非線形ですから,こうした非線形回帰によるパラメータ推定の方法を非線形最小二乗法と呼ぶことにします。

 具体的には,i(A1,A2,..Ar)=0 (i=1,2,..r)を線形近似することにより多変数ニュートン法(Newtonian method)を実行します。

 

 そこで,まず連立方程式を線形近似します。

 

 すなわち,初期値としてAj=Aj0 適当に与えた後に, 0 = i(A1,A2,..Ar)=i(A10,A20,..Ar0)+∑(∂Fi/∂Aj)|A=A0(j-Aj0)と近似します。

これを行列形式で書くため,Dという行列をD=(dij)≡(∂Fi/∂Aj)で定義し,特にD0(dij0)≡(∂Fi/∂Aj)|A=A0とします。

 

一方,列ベクトルA≡t(A1,A2,..Ar)で定義し,特に0t(A10,A20,..Ar0)とします。さらにi(A10,A20,..Ar0)を成分とする同様な列ベクトルを0と定義します。

 

こうすれば,先の線形近似は 00+D0(0)と表わされます。

 

これを単純に解くと,00-10と近似されることになります。ここで,0-10の逆行列です。

得られた00-10を,改めて0として代入してD0-10を計算し,00-10収束するまで繰り返します。

 

すなわち,m+1mm-1mの漸化式において誤差|m+1m|の相対値が十分小さくなるまで繰り返し計算します。

 

こうすれば,m→ ∞ でのmt(A1m,A2m,..Arm)の極限値としてi(A1,A2,..Ar)=0 (i=1,2,...r)を満たすt(A1,A2,..Ar)が得られるはずです。

さらに,実際には収束を速くするために加速係数wを与えてm+1m-wm-1mとする方法を用いたほうがいいと思います。

実際のr=4 の計算では,かつてFortranを使ってプログラミングしましたが,初期値を適切に取ると各環境のケースについて大体十数回の繰り返し計算でパラメータの推定値が得られました。

 

そして濃度の実測値とその推定パラメータによる計算値との相関係数としては,0.9前後の値が得られ,回帰係数の値も0.8 から 1.2程度となって,仮定した計算式が良い近似になることがわかりました。

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2006年5月17日 (水)

低煙源拡散モデル(JEA式)

 与太話が続いているので,ここらで少しアカデミック(Academic)な話をします。

 アカデミックといえば以前,会社でNHC(練馬変態クラブ)を創設した私より年齢が1つ上のフィクサーのような人がいまして,私のことを「チミはアカデミックというよりは垢デミック(垢だらけ)だね」と評されました。

 確かに当時は学生時代の延長で,私は会社で2番目に不潔だと言われていましたから身に覚えがあることです。

 彼と私は共にシュールレアリストを標榜していまして,彼は「シュールレアリストは結婚しない。」というのが口癖でした。私が40歳で退職した翌年に高血圧なのに毎日,飲酒し,しかも過労であったということが原因か,北区のアパートで亡くなっているのが尋ねた人によって発見されました。

 彼(シイタケマン)こそ本当の破滅型人間でしたね。

   本題に入ります。

 以前,4月中旬にS社での「会社員新人時代の思い出」という内容で記事を書きましたが,当時,配属されてすぐの仕事はコンピュータを使うことではなくて,後に環境庁(現在は環境省)の窒素酸化物総量規制マニュアルでJEA式(日本環境庁式)という名称で掲載されることになった自動車からのNOxの解析的拡散式を開発することでした。

 この拡散式は,通常のガウス型拡散式にパスキル・ギフォード(Pasquill-Gifford)流のシアーを持たせたものとは異なり,水平風速と拡散係数が地面からの鉛直高さzのベキ乗に比例すると仮定した,より現実に近いパラメータに従う移流拡散方程式の定常解を基準にした模型(モデル)です。

 まず,こうした定常解をコンピュータの数値計算に依るのではなく,頭でつまり紙とペンで解析的に解くというのが配属されて最初の仕事内容でした。

 自動車という線煙源が高架ではなく,高さゼロの道路上にあってy軸に沿って無限大の長さを持っており,それに直角に風が吹く場合については,線煙源からの距離xと高さ:zの関数としてロバーツ(Roberts)の式という解があることは既にわかっていました。

 そして,私の使命は,まずは直角風ではなく無風(calm)のときと無限線煙源に平行な風(平行風)が吹く場合の解を求めることでした。

 特に高架道路のように,必ずしも線煙源の高さがゼロでなくて,有効高さHeをを持つとして,一般化して解きました。結果的に,直角風の場合のロバーツの式も有効高さHeがゼロでない場合に拡張することに成功しました。

 まずは,境界条件に合う無風時の解を求めることに挑戦しました。

 原理的には点煙源に対する3次元の解がわかれば,それを線煙源のあるy軸に沿って積分することで線煙源に対する2次元の解が得られます。

 そこで,まず3次元の無風の場合の偏微分方程式を解くことから始めました。そのため,解を点煙源からの距離 r と高さ z について変数分離しました。

 結局,変数分離で得られるそれぞれの常微分方程式の解は r については 0 次の第2種変形ベッセル関数(modified Bessel's functio)になり,z についても第1種変形ベッセル関数になることがわかりました。

 そこで,後は発生源条件に合うようにベッセル展開をする,つまり展開係数を求めれば解は得られるわけです。

 実を言うと,ここから最終解に到達するのに,岩波の「数学公式集」と2ヶ月以上にらめっこして,やっと運良く境界条件,発生源条件に合致する解を発見することができました。

 ここからは,点煙源の位置;yで-∞から+∞まで積分すればいいわけですが結果は超幾何関数になります。しかし,特に有効高さHeがゼロのときには初等関数に帰着することがわかりました。

 そして,2次元無限線煙源の場合には平行風に対する方程式も無風時のときの方程式と同一なので,平行風の解は無風時と同じということで,これは即座に解決しました。

 しかし,風がゼロではなく有風時には,実はzのベキ乗に特殊な条件がある場合について,既に3次元の解(Yeh-Huangの解)が存在している,ことが後にわかり,直角風も平行風も共に単にこの既存の解を煙源に沿って積分することで2次元の解が求まることがわかりました。

 これの積分結果から,直角風の場合の解はHeがゼロのときはロバーツの式に一致し,Heがゼロでないときには第1種変形ベッセル関数となることもわかりました。

  こうして無限線源の解は全て求まりましたが,現実の道路は曲がりくねっており,ある軸に沿って無限の長さで一直線に伸びているわけではありません。

 しかし,これら2次元の解を求める過程において3次元解が既知となったので,有限長さの場合の解は,yについて-∞から+∞でなく有限区間で積分すれば得られるはずです。

 幸いにして,直角風のときはyの有限区間で積分しても単に無限線煙源の解にガウスの誤差関数がかかるだけという結果となり,平行風の場合も不完全γ関数,無風の場合も逆正接関数がかかるだけという式で近似できることがわかりました。

 平行風の場合の不完全γ関数をガウス誤差関数で近似することにし,これで所期の定常拡散方程式の解,または近似解の形は全て初等関数やそれに順ずる解析的関数という形で得られました。

 実際には風が線煙源に直角や平行でなく一般の風向であっても,3次元の点煙源解がわかっているので,積分により解を求めることは可能で,計算してみると風向角θを含む第2種変形ベッセル関数となって解は求まります。

 しかし,実際に法律として運用するモデルとしては煩雑なので,有風時(風速1m/s以上)については直角風解と平行風解のみで対応することにしました。

 また,3次元の定常拡散方程式はx,y,zのうちを yによる微分項を時間 t によるそれに置き換え,その拡散係数であったzのベキ乗を z のゼロ乗,つまり定数に取ることで,x.,zの2次元の非定常方程式になるので,元の3次元定常解が2次元の非定常解として得られるわけです。

 これらは任意風向の場合の解と同じく,敢えて発表しませんでした。

 そして風向と線煙源との鋭角θが40度を境として直角風であるか,平行風であるかを判定することにして,両者の式のどちらかを適用することにしました。また,ベッセル関数の計算の煩雑さを避けて高さHeがゼロのときの適用に限ることにして,このモデル式を以ってJEA式 としました。

 実際のパラメータ類を決める作業は,大阪府が府内の地形環境が異なる各地で各種の気象条件下において,約200mのパイプの多くの排出口からトレーサーガス(SF6:6フッ化イオウ)を撒いて,それを採取する実験で得た種々の濃度データを利用しました。

 当時の大型コンピュータによって,地形環境,および気象条件ごとにトレーサーガス濃度観測の実測値と先のJEA式による計算値との差の二乗和が最小となるように,多次元ニュートン法による非線形最小二乗法でJEA式の幾つかの未知パラメータの最適値を計算で決めました。

 そして,各地形環境ごとに,得られた式パラメータと気象条件をグラフにプロットし比較して,地形ごとに気象とパラメータの関係を求めることで最終的なモデルが完成したわけです。

  なお,後に六本木や西新宿での高架道路のデータをもとにHeがゼロでない場合の変形ベッセル関数を含むJEA式を修正して「東京都修正モデル」を作ったという記憶もあります。

 実は,当時の資料は今はどこにあるか見つけられなかったのですが,中国から日本の環境アセスメントを知るための研修にきた中国人の役人と大学(専門学校?)の先生の2人に会社の会議室で説明したときに作った英文の資料が見つかったので当時の記憶がかなり鮮明によみがえったわけです。

  うーん,でもこれは企業秘密の部類の一部で一種の自慢話になるかなあ,まあ,もう時効だろうし,ブログだから備忘録として残すのもいいかな。。。

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