306. 線型代数学

2011年3月 6日 (日)

線型代数のエッセンス(13)(ユニタリ空間-4)

線型代数のエッセンスの§4.ユニタリ空間の続きです。

[定義4-46](ユニタリ変換):ユニタリ空間のそれ自身の上への同型写像をこの空間のユニタリ変換(unitary transformation)という。

 すなわち,ユニタリ空間の正則な1次変換U^がのユニタリ内積を保存するとき:つまり∀,に対して(U^,U^)=(,)を満足するとき,U^をのユニタリ変換という。

[定理4-47](ユニタリ変換):U^がユニタリ変換ならU^+=U^-1である。逆も成立する。

(証明) U^がユニタリ変換なら∀,に対して(,)=(U^,U^)=(,U^+U^)ですから,U^+U^=E^を得ます。

そこでU^+=U^-1でありU^U^+=E^も成立するのでU^は正規変換でもあります。

逆に,U^+=U^-1ならU^+U^=E^より,∀,に対して(U^,U^)=(,U^+U^)=(,)なのではユニタリ変換です。

 

(証明終わり)

[定理4-48]:ユニタリ空間において正規直交座標系を任意に選ぶとき,これに対するユニタリ変換U^の行列をUとすればU+U=UU+=E,つまりU+=U-1である。

 

 逆に,U+=U-1ならU^=U^-1である。

(↑同型対応によって自明なので証明略)

[定理4-49]:ユニタリ空間の1次変換U^がベクトルの長さ(ノルム)を変えないならU^はユニタリである。

(証明)U^がベクトルの長さを変えないなら∀,,∀λ∈に対して(+λ,+λ)=(U^(+λ),U^(+λ)),かつ(,)=(U^,U^),(,)=(U^,U^)です。

(+λ,+λ)=(U^(+λ),U^(+λ))は(,)+λ(,)+λ*(,)+λλ*(,)=(U^,U^)+λ(U^,U^)+λ*(U^,U^)+λλ*(U^,U^)と変形されます。

 

これはλ(,)+λ*(,)=λ(U^,U^)+λ*(U^,U^)を意味します。

 λ=1とおけば(,)+(,)=(U^,U^)+(U^,U^),λ=iとおけば(,)-(,)=(U^,U^)-(U^,U^)が得られます。

したがって,(,)=(U^,U^)を得ますから[定義4-46]によってU^がユニタリ変換であることがわかります。(証明終わり)

[定理4-50]:ユニタリ空間の1次変換U^がユニタリである⇔ U^は正規直交基を正規直交基にうつす。

(証明)ベクトル系:1,2,..,nをユニタリ空間の正規直交基とすると,U^がユニタリなら(U^i,U^j)=(i,j)=δij(i,j=1,2,..,n)より系:U^1,U^2,..,U^nの正規直交基です。

逆に(U^i,U^j)=δij(i,j=1,2,..,n)なら,の任意の2元:=α11+α22+..+αnn=Σj=1nαjj,=β11+β22+..+βnn=Σj=1nβjjについて(U^,U^)=Σj=1nαjβj*=(,)が成立するため,U^はユニタリです。(証明終わり)

[定理4-51]:(ⅰ)恒等変換はユニタリである。(ⅱ)ユニタリ変換の積はユニタリである。(ⅲ)ユニタリ変換の逆変換はユニタリである。

(証明)(ⅰ),(ⅲ)は自明です。(ⅱ)U^,V^をユニタリ変換とするとU^+=U^-1,V^+=V^-1ですから,(U^V^)+=V^+U^+=V^-1U^-1=(U^V^)-1よりU^V^もユニタリです。

(証明終わり)

[定義4-52](ユニタリ同値):,1を2つのユニタリ空間としA^,およびA^1をそれぞれ,および1の上の1次変換とする。

 

 A^をA^1にうつすから1への同型写像が存在するとき,A^とA^1とは同型または相似,あるいはユニタリ同値(unitary-equivalent)であるという。

 特に,1のとき,同型写像はユニタリ変換:U^でA^1=U^A^U^-1である。

 

 これは正規直交基に対する行列の形ではUがユニタリ行列でA=UAU-1と表現される。

この場合,行列AとA1は相似,またはユニタリ同値であるという。

(注):すなわち,∀に対しy=A^のとき1=f(),y1=f()なるから1への同型写像f:1があって,1A^11が満たされるならA^とA^1は相似,または同型であるというわけです。

,1はユニタリ空間なのでfが同型写像という意味は線型写像であるだけでなく,ユニタリ内積を保存することを意味します。

  

つまり,(,)=(f(),f())1です。ただし1におけるユニタリ内積をにおけるそれと区別するために( , )1と表現しました。

 1のとき,1=f(),y1=f()なる同型写像fは"内積を保存する同型写像=ユニタリ変換":U^に置き換えられ1=U^,1=U^です。

に対しy=^でかつ1=U^,1=U^であり,1A^11が満たされるなら,y=A^U^y=A^1U^,かつU^y=U^A^なので,A^1U^x=U^A^ or A^1U^U^A^,つまりA^1U^A^U^-1です。(注終わり)※

[定理4-53]:ユニタリ空間の1次変換A^,B^が同型である。⇔ に適当な2つの正規直交基が存在してその一方によるA^の行列が他方によるB^の行列に一致する。

(証明)(→)A^,B^が同型:ユニタリ変換U^が存在してB^U^A^U^-1と書けるとします。このときA^U^-1B^U^です。

そこで,正規直交基1,2,..,nによる行列Aは(A^1,A^2,..,A^n)=(1,2,..,n)Aで与えられます。

  

これは(U^-1B^U^1,U^-1B^U^2,..,U^-1B^U^n)=(1,2,..,n)A,つまり,(B^U^1,B^U^2,..,B^U^n)=(U^1,U^2,..,U^n)Aを意味します。

最後の等式は,正規直交基(U^1,U^2,..,U^n)=(1,2,..,n)Uに対する変換B^の行列が(1,2,..,n)によるA^の行列Aに一致することを示しています。

(←)2つの正規直交基1,2,..,n,および1',2',..,n'に対して(A^1,A^2,..,A^n)=(1,2,..,n)A,および(B^1',B^2',..,B^n')=(1',2',..,n')Aが成立するとします。

そこで(1',2',..,n')=(1,2,..,n)U=(U^1,U^2,..,U^n)とおけば,U^-1B^U^=A^が成立しますが,(1,2,..,n),および(1',2',..,n')が共に正規直交基なのでU^はユニタリです。(証明終わり)

[定理4-54]:ユニタリ空間の2つの正規な1次変換A^,B^が同型(ユニタリ同値)であるためには,それらの固有多項式が一致することが必要かつ十分である。

(証明)(必要性):ユニタリ変換U^が存在してB^U^A^U^-1と書けるため固有多項式は|λE-B|=|λE-UAU-1|=|λE-A|です。

(十分性):A^とB^の固有多項式が同じなら両者の固有値は全て一致します。さらに共に正規変換ならの適当な2つの正規直交基によって,A^B^には同一の対角線型行列が対応します。

したがって,上記の[定理4-53]により正規変換A^とB^は同型(ユニタリ同値)であることがわかります。(証明終わり)

[定理4-54の系]:A,Bがそれらの共役A+,B+とそれぞれ可換な行列(正規行列)であってAとBがユニタリ同値である。⇔A,Bの固有多項式(全ての固有値)が一致する。(← 自明)

[定理4-55]:ユニタリ空間の正規変換A^(A^A^+=A^+A^)に対しては,ユニタリ行列Uが存在してUAU-1=UAU+を対角線型にすることができる。

(証明)前記事最後に記した [定理4-44]:"ユニタリ空間においては正規変換A^の各々に対し,A^の固有ベクトルからつくられる正規直交基が存在し,この基底においてA^の行列Aは対角線型となる。"

 によって正規変換A^に対しては固有ベクトルからつくられる正規直交基:1',2',..,n'による行列表現:(A^1',A^2',..,A^n')=(ρ11',ρ22',..,ρnn')=(1',2',..,n')BではBは対角成分がA^の固有値(ρ12,..,ρn)で与えられる対角行列です。

他方,別のある正規直交基:1,2,..,nに対しては行列Aにより((A^1,A^2,..,A^n)=(1,2,..,n)Aと書けます。

このとき,A^が正規変換:A^A^+=A^+A^なので,それに同型対応するA,Bも行列としてそれらの共役A+,B+とそれぞれ可換,つまりA,Bは共に正規行列です。

 

しかもA,Bの固有多項式は一致します。

そこで,上記の[定理4-54の系]:"A,Bがそれらの共役A+,B+とそれぞれ可換な行列(正規行列)であってAとBがユニタリ同値である。⇔ A,Bの固有多項式(全ての固有値)が一致する。"

 によってAとBはユニタリ同値ですから,あるユニタリ行列UによってBUA^U-1と書けます。(証明終わり)

[定理4-55の系]:ユニタリ行列A(AA+=A+A=E)に対してはユニタリ行列Uが存在してUAU-1=UAU+を対角線型にすることができる。

 

(↑ユニタリ行列Aは正規行列なので[定理4-55]から明らかです。)

[定理4-56]:ユニタリ変換の固有多項式の根の絶対値は1である。

(証明)をユニタリ空間,U^をユニタリ変換とします。が固有値αに属するU^の固有ベクトルならU^=αですから,(,)=(U^,U^)=αα*(,)です。

 

 したがってαα*=1ですが,これは|α|2=1,つまり|α|=1なることを意味します。(証明終わり)

※ユニタリ変換の固有値αは全てα=exp(iθ)(θは実数)の形です。

[定義4-57](対称変換):ユニタリ空間の1次変換をA^とする。

 

 A^+=A^のとき,この変換A^を対称(symmetric),またはHermite(エルミート)であるという。

すなわち,"(A,)=(,A) for ∀,"⇔ A^が対称である。

※対称変換は明らかに正規変換です。 

[定理4-58](対称変換の性質):A^,B^はユニタリ空間Lの対称変換:A^+=A^,B^+=B^とする。

このとき,(ⅰ)(A^+B^)+=A^++B^+=A^+B^ (ⅱ)α∈(実数)に対して(αA^)+=α*A^+=αA^ (ⅲ)(A^B^)+=A^B^⇔ A^B^=B^A が成立する。

(証明)(ⅰ),(ⅱ)は自明,(ⅲ)も(A^B^)+=B^+A^+ですから明らかです。(証明終わり)

[定理4-59](対称変換の性質):A^がユニタリ空間の対称変換:A^+=A^ならA^の固有値は実数である。

(証明)が固有値αに属するA^の固有ベクトルならA^=αですから,(,)=(,A^)=α*(,)=(A^,)=α(,)が成立します。

 

 よってα*=αですが,これはαが実数なることを意味します。

 

(証明終わり)

[定理4-59の系]:Hermite行列の固有多項式の根は全て実数である。(正規直交基に対しては対称変換はHermite行列に同型対応するので自明)

[定理4-60]:ユニタリ空間の対称変換は適当な正規直交基に対して実対角行列をもつ。

 

 すなわち,任意のHermite行列A(A+=A)は適当なユニタリ行列UによってUAU-1が対角行列になるようにできる。(←自明)

[定義4-61](反対称変換):ユニタリ空間の1次変換をA^とする。

 A^+=-A^のとき,変換A^を反対称(anti-symmetric),または交代(alternative)という。

 

 すなわち,"(,A)=-(A,)=for ∀,"⇔ A^が反対称である。

※反対称変換は明らかに正規変換です。 

[定理4-62](反対称変換の性質):A^がユニタリ空間Lの反対称変換:A^+=-A^⇔A^=iB^なる対称変換B^(B^+=B^)が存在する

(証明)(←)A^+=(iB^)=-iB^=-A^です。(→)B^≡-iA^とおくとB^+=iA^+=-iA^=B^です。(証明終わり)

[定義4-63](反Hermite):A+=-Aを満たす行列を反Hermite行列,あるいはHermite反対称行列という。

[定理4-64](反対称変換の性質):A^がユニタリ空間の反対称変換:A^+=-A^ならA^の固有値はゼロまたは純虚数である。

(証明)が固有値αに属するA^の固有ベクトルならA^=αですから(,)=(,A^)=α*(,)=-(A^,)=-α(,)です。

 

 したがってα*=-αですが,これはαがゼロまたは純虚数なることを意味します。(証明終わり)

 途中ですが長くなったので,ここでまた一休みです。

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

 

PS:たまの「寝てようび」なのに貧乏症が出ていますが,そろそろ毎週日曜だけ飲める飲み屋で骨休めしようと思います。

 

 ところで,前にどこかで聞いたことがありますが,日本の庶民の食文化が一汁一菜の質素なものであり,欧米のようなものでないのは,パン等に比べ主食の"米=銀シャリ"があまりにウマ過ぎるためだそうです。

 

 おかずが塩だけのおにぎりでもウマいためであるということですが,これはよく実感しています。

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2011年3月 3日 (木)

線型代数のエッセンス(12)(ユニタリ空間-3)

線型代数のエッセンスの§4.ユニタリ空間の続きです。

[定義4-32](汎関数):を複素数体の上の任意の有限次元線型空間とする。の各々にf()∈を対応させる写像f:があるとき,この→f()の対応fをの上で定義された汎関数(functional)という。

[定義4-33](線型汎関数):を複素数体の上の任意の有限次元線型空間とする。の上の汎関数fが∀,,∀α,β∈に対しf(α+β)=αf()+βf()を満たすとき,汎関数fは線型汎関数であるという。

[定義4-34](共役空間):を複素数体の上の任意の有限次元線型空間とするとき,の上の線型汎関数全体の集合*:すなわち*≡{f|fはの上の線型汎関数}をの共役空間(conjugate space),または双対空間(dual space)という。

[定理4-35]:を複素数体の上の任意の有限次元線型空間とするとき,その共役空間*はf∈*の複素数値f()の和と積で定義される演算について線型空間をなす。

(証明) *の元の和とその複素数倍の積演算について以下の線形空間の公理が満たされるのは明らかです。

(ⅰ)f+g=g+f (f,g∈*),(ⅱ)(f+g)+h=f+(g+h) (f,g,h∈*),(ⅲ)∀f,g∈に対してf+φ=gを満たすφ∈*が存在する。このφをg-fと書く。(ⅳ)α(βf)=(αβ)f (α,β∈,f∈*),

(ⅴ)α(f+g)=αf+αg (α∈,f,g∈*),(ⅵ) (α+β)f=αf+βf (α,β∈,f∈*),(ⅶ)∀f∈*に対し1・f=f

(証明終わり)

[定理4-35]:を任意の有限次元線型空間とし(1,2,..,n)をにおけるある座標系とする。の数の列α12,..,αnを全く任意に与えたとき,の上で定義された線型汎関数f∈*でf(j)=αj(j=1,2,..,n)を満足するものが1つ,しかも唯1つに限って存在する。

(証明)=ξ11+ξ22+..+ξnn=Σj=1nξjjに対してf()≡α1ξ1+α2ξ2+..+αnξn=Σj=1nαjξjと定義すればf(j)=αj(j=1,2,..,n)です。

 さらに=η11+η22+..+ηnn=Σj=1nηjjとすれば,α,β∈に対してα+β=(αξ1+βη1)1+(αξ2+βη2)2+..+(αξn+βηn)n=Σj=1n(αξj+βηj)jです。

それ故,f(α+β)=Σj=1nαj(αξj+βηj)=α(Σj=1nαjξj)+β(Σk=1nαkηk)=αf()+βf()が成立します。

 

したがってfはの線型汎関数です。

 次にgをg(j)=αj(j=1,2,..,n)を満たすの上の線型汎関数とすると,=ξ11+ξ22+..+ξnn=Σj=1nξjjに対して常にg()=α1ξ1+α2ξ2+..+αnξn=Σj=1nαjξj=f()となるのでg=fです。(証明終わり)

[定理4-36]:を有限次元ユニタリ空間とする。このとき以下の命題が成立する。

(ⅰ)に対してfa()≡(,)とするとfaの上の線型汎関数である。

(ⅱ)異なるには異なるfaが対応する。つまり,,ならfa≠fbである。

(ⅲ)の上の任意の線型汎関数f∈*に対してf=fa,つまり"f()=(,) for ∀"を満たすが唯一つ存在する。

(証明)(ⅰ)自明

 

(ⅱ)fa=fb:つまり"(,)=(,) for ∀"なら,(,)=0 より,(,)=0 なのでを得ます。

 

 よって,ならfa≠fbです。

  

(ⅲ)の正規直交基底を1,2,..,nとします。

f∈*が任意に与えられたときj≡f(j)*(j=1,2,..,n)によって≡γ11+γ22+..+γnn=Σj=1nγjjとおけば,=ξ11+ξ22+..+ξnn=Σj=1nξjjに対して,(,)=γ1*ξ1+γ2*ξ2+..+γn*ξn=Σj=1nγj*ξjです。

一方,f(j)=γj*(j=1,2,..,n)ですから=ξ11+ξ22+..+ξnn=Σj=1nξjjに対してf()=γ1*ξ1+γ2*ξ2+..+γn*ξn=Σj=1nγj*ξjです。

  

以上からf()=(,)が成立します。

 

これを満たすが唯一(unique)であることは,(ⅱ)によって明らかです。(証明終わり)

[定義4-37](共役変換):A^をユニタリ空間の上の1次変換とする。

に対してfy()=(A^,)はについての線型汎関数なので,に対応してyが一意的に存在しfy()=(A^,)=(,y)が成立する。

yだけでなくA^に対して一意的なので,yを対応させる変換をA^の共役変換(conjugate transformation)といいA^+で表わす。

つまり,y=A^+であり(A^,)=(,A^+)である。

[定理4-38]:A^をユニタリ空間の上の1次変換とするとき,その共役A^+も空間の上の1次変換である。

さらに,A^,B^をユニタリ空間の上の1次変換,αを任意の複素数とすると以下の性質が成り立つ。

(ⅰ)(A^+)+=A^ (ⅱ)(αA^)+=α*A^+

(ⅲ)(A^+B^)+=A^++B^+ (ⅳ)(A^B^)+=B^+A^+

(ⅴ)E^+=E^,O^+=O^

(証明)まず,,として,A^+の定義式を(,A^+)=(A^,)と書きます。

これに,,α,β∈として=α+βを代入すると,(,A^++β))=(A^+β)=α*(A^,)+β*(A^,)=α*(,A^+)+β*(,A^+)=(,αA^++βA^+)となります。

 つまり(,A^++β))=(,αA^++βA^+)ですから,(A^,)=(,y)を満たすy=A^+の一意性によりA^++β)=αA^++βA^+を得ます。

 

 よってA^+は空間の上の1次変換です。

(ⅰ)(,(A^+)+)=(A^+,)=(,A^+)*=(A^,)*=(,A^+)です。故に(A^+)+=A^を得ます。

 

(ⅱ)(,(αA^)+)=(αA^,)=α(A^,)=α(,A^+)=(*A^+)です。故に(αA^)+=α*A^+を得ます。

(ⅲ)(,(A^+B^)+)=((A^+B^),)=(A^,)+(B^,)=(,A^+)+(,B^+)=(,(A^++B^+))です。故に(A^+B^)+=A^++B^+です。

(ⅳ)(,(A^B^)+)=(A^B^,)=(A^(B^),)=(B^,A^+)=(,B^+A^+)です。故に(A^B^)+=B^+A^+を得ます。

(ⅴ)(,E^+)=(E^,)=(,)=(,E^),および,(,O^+)=(O^,)=0=(,O^)です。故にE^+=E^,および,O^+=O^です。(証明終わり)

[定理4-39]:ユニタリ空間の正規直交基に対する1次変換A^の行列をAとすると,共役変換A^+の行列はエルミート共役行列(Hermitian conjugate matrix):A+である。

(証明)の正規直交基を1,2,..,nとしA=(αij)とすると,変換の行列の定義によって(A^1,A^2,..,A^n)=(1,2,..,nと)A,またはA^j=Σi=1nαijiです。

 そして,正規直交性:(i,j)=δijから(A^j,k)=αkj=(j,A^+k)=(A^+k,j)*です。よって(A^+k,j)=αkj*,あるいは(A^+j,k)=αjk*です。

 したがって,A^+j=Σi=1nαji*iなのでA^+の行列は(A^+)ij=(αji*),つまりt*=A+で与えられることがわかります。

(証明終わり)

[定義4-40](正規変換):ユニタリ空間の1次変換A^でその共役A^+と可換なもの:つまりA^A^+=A^+A^を満たすA^を正規変換(normal transformation)という。

[定理4-41]:ユニタリ空間の正規変換A^の正規直交座標系における行列をAとするとAA+=A+Aが成立する。

(↑A^,A^+ ⇔A,A+は同型対応なので自明です。)

[定理4-42]:A^をユニタリ空間の正規変換とする。ρがA^の固有値であるときρ*はA^+の固有値になり,A^の固有値ρに属する固有ベクトルはA^+の固有ベクトルであって固有値ρ*に属する。 

(証明)A^A^+=A^+A^,かつA^=ρ()とします。

 A^=ρは,(A^-ρE^)0 とも書けます。

 また,A^A^+=A^+A^から(A^-ρE^)(A^-ρE^)+=(A^-ρE^)+(A^-ρE^)です。

 よって,0=((A^-ρE^),(A^-ρE^))=(,(A^-ρE^)+(A^-ρE^))=(,(A^-ρE^)(A^-ρE^)+)=((A^-ρE^)+,(A^-ρE^)+)です。

 

 したがって,(A^-ρE^)+0 ,すなわちA^+=ρ*を得ます。

 

(証明終わり)

[定理4-43]:ユニタリ空間の正規変換A^の異なる固有値に属する固有ベクトルは互いに直交する。

(証明) A^A^+=A^+A^,かつA^=ρ,A^=σ (,;ρ,σ∈)でρ≠σとします。

このとき,ρ(,)=(A^,)=(a,A^)=σ(,),すなわち,(ρ-σ)(,)=0 ですが,仮定からρ≠σなので(,)=0 です。

 

(証明終わり)

[定理4-44]:ユニタリ空間においては正規変換A^の各々に対し,A^の固有ベクトルからつくられる正規直交基が存在し,この基底におけるA^の行列Aは対角線型(diagonal-linear)となる。

(証明)ユニタリ空間において,まず正規変換A^の1つの固有ベクトル1を任意に取り,1に直交するの部分空間を1とします。

すなわち,A^A^+=A^+A^,A^1=ρ11(10),1≡{|(1,)=0}です。

 すると,∀1に対して,(1,A^)=(A^+1,)=ρ1*(1,)=0 ですからA^1となり1はA^に関して不変な部分空間(A^11)であることがわかります。

 そこで,A^11により1の中にまたA^の固有ベクトル2が存在します。A^2=ρ22(20)です。

 

 それ故,2≡{|(2,)=0}とすると,これもA^に関しての不変部分空間(A^22)を構成します。

さらに,部分空間2'を2'≡12で定義すれば,A^11,かつA^22によってA^2'⊂2'です。つまり2'は1の不変部分空間となります。

 したがってまた,2'の中にA^3=ρ23(30)なるA^の固有ベクトル3を見出すことができますから,さらに3と直交する2'の不変部分空間3'=123をつくることができます。

 こうしてA^の固有ベクトル1,2,3と,これのそれぞれに直交する不変部分空間の列12'⊃3'をつくることができました。

 

 この手続きを繰り返せば,結局,の直交基底:1,2,..,nが得られ,さらにjj/|aj|(j=1,2,..,n)と正規化(normalize)すれば,これらをの正規直交基1,2,..,nとすることができます。

 すなわち,A^j=ρjj,(i,j)=δij(j=1,2,..,n)満たすA^の全ての固有ベクトルの系:1,2,..,nが得られます。

 

 したがって,(A^1,A^2,..,A^n)=(ρ1122,..,ρnn)=(1,2,..,n)Aと表現されるのでA^の行列Aは,

 なる形の対角行列 or 対角線型の行列で与えられます。

正規直交基1,2,..,nに対する正規変換A^の行列Aは,互いに異なるとは限らないn個の固有値:ρ12,..,ρnを対角成分とする対角線型の行列になります。(証明終わり)

(注1):[定理4-44]は正規行列は常に複素数を対角成分とする対角行列に相似変換可能なことを述べています。(注1終わり)※

[定理4-45]:零空間でない実線型空間の1次変換A^はいずれも次元が1か2のA^に関する不変部分空間を少なくとも1つは持っている。

(証明)n次元実線型空間の1次変換A^の固有多項式φ(λ)は係数が全て実数のn次多項式です。

それ故,代数方程式φ(λ)=0のn個の解は全て実根と互いに共役な虚根のペアで与えられます。

 n次方程式φ(λ)=0が実根λ=r∈を持てば,A^の行列Aに対してA[1]=r[1]を満たし,一般に成分が複素数のn次元列ベクトルのAの固有ベクトル[1]を見出すことができます。

Aは実行列なので,A[1]=r[1]からA[1*]=A*[1*]=r[1*]が成立することがわかります。

よって[]≡([1]+[1*])/2と定義すれば,[]はA[]=r[],[*]=[]を満たす実成分のn次元列ベクトルです。

 

故に,これに同型対応するn次元実線型空間のベクトルが存在します。

そこでの部分空間11≡{|=pa(p∈)}で定義すれば,これは0 のみで張られる実線型空間のA^に関する1次元不変部分空間となります。

一方,n次方程式φ(λ)=0 が実根を持たないとき互いに共役な虚根のペアをλ=α,α*とすればn次元列ベクトル[1]が存在してA[1]=α[1],かつA*[1*]=A[1*]=α*[1*]です。

[]≡([1]+[1*])/2,[]≡([1]-[1*])/(2i),とすると[],[]は共に実成分のn次元列ベクトルで,[1]=[]+i[],[1*]=[]-i[]です。

故に,A[]=(α[1]+α*[1*])/2={(α+α*)/2}[]-{(α-α*)/(2i)}[],A[]={(α+α*)/2}[]+{(α-α*)/(2i)}[]を満たしますが係数{(α+α*)/2},{(α-α*)/(2i)}は実数です。

そこで,[],[]にそれぞれ同型対応するn次元実線型空間のベクトル,が存在します。

したがって,この場合はの部分空間11≡{|=p+q(p,q∈)}で定義すれば,これはa,bのみで張られる実線型空間のA^に関する2次元不変部分空間となります。(証明終わり)

(注2):[定理4-45]は,実行列なら常に1次か2次のブロック対角行列に相似変換できることを述べています。(注2終わり)※

今日はここまでにします。 

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

 

PS:比較的遠くまで出かける必要がある日には,夏は猛暑,冬は最近の東京じゃめったには降らない雪とか,さんざん天候に災いされて自分,ずい分運が悪いようですが,

 

 偶々,昨日朝に命綱のお米が切れて千円さえ借りる相手もなく米を2kgも買う金もなくて,本日3日の15時頃帰宅中の巣鴨駅でどうしたものか?と案じてるところに,天の助け,毎週日曜日に通っている飲み屋のりくちゃん(現在の保護者?)にバッタリ出くわしました。

 

(↑2009年1/10の過去記事「私の保護者」を参照)

 

 彼女に千円貸してもらって当面の虎口を脱することができそうです。私に千円以上与えてもスグにムダに使ってしまうことなど彼女は熟知しています。

 

 「捨てる神あれば拾う神あり。」イヤ,パスモに280円は残ってますが。。

 

 どうしようもないときには必ずといっていいほど助けが現われる。。やはり私は運がいいのでしょうか?

 

 都バスは障害者割引でゼロ円,出勤日にはお昼は食堂で食べて給料から引かれますが,その他お米さえあれば家賃,光熱費後払いで,ほぼゼロ円でずっと暮らせることは暮らせます。

 

 お米が2kgで12合くらい,1日2合を食べるかどうかなので何もなければ1週間以上は大丈夫ですってナサケナイ暮らししてるなあ。>自分

 

 西友で最安値の2kg,699円のお米は嬉しかったのですが,個人的貧乏人の消費者としてはTPPでも実行されるともっと有難いです。

 

 現在,米国内では米5kgが300円くらいなのに日本に輸入されると関税が約800%近くもかけられ約9倍の5kgが2500円前後の売価になるというカリフォルニア米(米国産のコシヒカリ,あきたこまちなど)が,米国内と同じように5kg300円で売られるなら全く違います。

 

 ただし,関税が撤廃されても需要の少ない米国の安い価格が日本でそのままの米価ではないでしょうが,恐らく安い米なら10kgでせいぜい1000円くらいと考えられるので計算上は1年間ト-タルでも主食のお米が1万円くらいで賄えることになります。

 

 これだと,私のようにエンゲル係数がほぼ100%の最低生活では,家賃,光熱費以外は年間数万円の出費で済む勘定になります。

  

 TPPは私のような単純な消費者という立場でなく,日本の生産者:特に農業で米を作っている農家などには大打撃となります。

 

 米作りが主体では食べていけず関税の高い米作等に従事する意欲が極度に失せて,食糧の国内自給率がほとんどゼロにもなりかねません。

 

 農業に限らず,生産者が打撃を受けると経済的には国の税収なども影響を受けて国民というか消費者の経済にも響くので複雑?みたいですね。

  

PS2:さて,昨日(2日)もつい気紛れで小石川植物園前の教会のところから自宅まで真っ直ぐ帰れる住宅街の静かな道をプラプラと歩いていると前からパトカーが来て何とはなくすれ違った後,しばらくして

 

 そのパトカーが何故か引き返してきて久しぶりに警官に職質されました。

 

 職質の種類が,何となく真昼間に寒空の中をよろよろと歩くジジイへの配慮,心配系,おまわり的親切系に見えたので,本来警官は全然スキくないけど珍しく素直に答えてあげましたネ。

 

 昨日の雨上がりの帰り道の軒先で見かけた,スミレの鉢植えについ立ち止まってシャッターを押しました。↓ 

 

      

      

      

   

      

 

      

      

 

        

 

      

 

      

 

 まだ,花を愛でる程度の余裕があるというか?イヤ,その程度の心の癒ししか求め得ないというか。。ですね

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2011年2月28日 (月)

線型代数のエッセンス(11)(ユニタリ空間-2)

 線型代数のエッセンスの§4.ユニタリ空間の続きです。

[定義4-21](同型写像):2つのユニタリ空間1が線型空間として同型であり,その同型写像において,"スカラー積=ユニタリ内積"が保存されるとき,ユニタリ空間1は同型であるという。

[定理4-22]:2つのユニタリ空間1が同型 ⇔ dim=dim1

(証明)十分性(1が同型ならdim=dim1)は明らかです。.

必要性を示すため,dim=dim1=nと仮定します。

そして,および1の正規直交座標系をそれぞれ(1,2,..,n),および('1,'2,..,'n)と選びます。

'∈1は,ここで選んだ座標系に対して座標が同一であるとき,'が対応するということにします。

 

このとき,この対応は1対1であって,加法と乗法(スカラー倍)が保存されることは既に示しました。

また,の任意の2つのベクトルを=α11+α22+..+αnn,=β11+β22+..+βnnとすると,これらに対応する1のベクトルは'=α1'1+α2'2+..+αn'n,'=β1'1+β2'2+..+βn'nです。

このとき,明らかに(,)=Σj=1nαjβj*=(',')が成立しますから,ユニタリ内積も保存されることがわかります。(証明終わり)

[定義4-23](集合の直交性):ユニタリ空間の集合において,∀と∀が直交する:(,)=0 のとき,は直交するといいと書く。

 また,あるが∀と直交する:"(,)=0 for ∀"のとき,は直交するといいと書く

[定理4-24]:なら={0}である。

(証明)なら(,)=0 なので0 です。(証明終わり)

[定義4-25]:ユニタリ空間の線型部分空間の和:12+..+s={12+..+s|11,22,..,ss}において,jk(j≠k)なら,この和を直交和(orthogonal sum)という。

[定理4-26]:ユニタリ空間の部分空間の直交和は常に直和である。

(証明)12+..+sとし直交和であるとします。

 

 そして,12+..+s0;11,22,..,ssとします。

 両辺にjを掛けてユニタリ内積をとると,(j,j)=0 となるためj0 (j=1,2,..,s)です。

  

 したがって,jk={0}(j≠k)ですから12+..+sが直和(direct sum)であることがわかります。(証明終わり)

[定理4-26]:ユニタリ空間の部分空間12+..+sが直交和で12+..+s;11,22,..,ss,かつ12+..+s0;11,22,..,ssなら,(,)=(1,1)+(2,2)+..+(s,s)である。

(↑自明なので証明略)

[定義4-27]:ユニタリ空間の空でない部分集合と直交するベクトルの全体をの直交補空間(orthogonal complement)といいで表わす。≡{|}である。

[定理4-28]:ユニタリ空間の任意の空でない線型部分空間の直交補空間の線型部分空間である。

(証明),,α,β∈に対し(α+β,)=α(,)+β(,)=0 よりα+βですから,の線型部分空間です。(証明終わり)

[定理4-29]:ユニタリ空間はその任意の部分空間とその直交補空間の直和としてと表わせる。

(証明)n=dim,m=dim,s=dim(としての正規直交基を1,2,..,m,の正規直交基をm+1,m+2,..,sとします。

1,2,..,m,m+1,m+2,..,sの基底ではないと仮定すると,(,)=1,(,j)=0 (j=1,2,..,s)を満たすが存在します。

このは明らかにに直交しますから,であり,しかもゼロではないのでm+1,m+2,..,の全てと直交することは不可能ですから,矛盾を生じます。

よって,系1,2,..,m,m+1,m+2,..,sの基底であり,s=nでです。(証明終わり)

(別証明)の正規直交基を1,2,..,mとするとき,任意のに対して’≡-{(,1)1+(,2)2+..+(,m)m}と置けば,任意のについて(',)=(,)-{(,1)(,1)+(,2)(,2)+..+(,m)(,m)}=0 です。

 何故なら,=(,1)1+(,2)2+..+(,m)mなので(,)=(,1)(,1)+(,2)(,2)+..+(,m)(,m)であるからです。

故に,'∈であり∀が常に=(a-a')+';a-a'∈,'∈の形に書けるのでです。(証明終わり)

[定理4-29の系]:()である。(←自明)

[定義4-30]:ユニタリ空間がその部分空間と直交補空間の直和としてと表わされるとする。

;,と一意的に分解されるが,このへの射影(projection),への射影という。

;,のとき=Pr^,=Pr^と表わす。Pr^(またはPr^)を射影変換,または作用素として射影演算子(projection operator)という。

[定理4-31]:Pr^はにおける1次変換であり,Pr^である。特にPrL^=E^(恒等変換)である。 (←自明)

[定理4-31の系]:ユニタリ空間の2つのベクトルの和の部分空間への射影はそれぞれの射影の和に等しく,ベクトルと数の積の射影はベクトルの射影と数の積に等しい。

すなわち,のとき,∀,,∀α∈に対してPr^()=Pr^+Pr^,Pr^(α)=αPr^である。

(↑自明)

短かいですが今日はここまでにします。 

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

 

PS:エリカ様,ちょっとイメージ変わったかな?変わらなくていいのに,様がとれたらツマンナイ。。。

 

 京大の入試,私も現役,浪人と理学部を2回受けて2回とも落ちたのでちょっと懐かしいですネ。

 

 安田講堂事件で東大入試中止の年の2回目(1969年3月)は,京大も封鎖中だったので受験会場は京都工繊大でしたが,現役(1968年3月)のときは学部は覚えてないけど確か京大構内で試験を受けました。

 

 私も数学の試験でカンニング,といっても机の右端に座っててそれとなく右隣の離れた席の解答が見えたので1問だけ答合わせをして,ほぼ同じだったので安心した,という記憶があります。

 

 当時は,今と違ってまだ両目とも視力が2.0でしたからね。(母子家庭で貧乏だったので私立は受けてません。。)

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2011年2月23日 (水)

線型代数のエッセンス(10)(ユニタリ空間-1)

 線型代数のエッセンスの続きです。§4.ユニタリ空間に入ります。

そろそろ別テーマの科学記事も書きたいと思っていますが,これまでの経験から途中で複数のシリ-ズなどを同時進行すると一方に興味が移って半永久的に中断する可能性があるので,もう少しこのテーマだけを続けようと思います。

 

今日は,午後に事務的というかボランティア的用事をするためにお休みを取っています。

 

今,通っているところは無償のボランティアの種がいっぱいある宝の山なので,もしも私が最後の死に場所を探すならもってこいですね。

 

(イヤ,積極的にやるなら例えば今ならニュージーランドまで行って活動するとかもあるけれど,恐らく今の私ではお荷物になるだけです。

 

消極的ですが現在可能なことを精一杯やるだけです。

 

とはいっても,張り切ってヤルぞーとひとりよがりにテンパッテるツモリはありませんが。。何なんだ??

 

なさけは他人のためでなく自分のためなんです。。。)

§4.ユニタリ空間

[定義4-1](ユニタリ内積,ユニタリ空間):線型空間の2つの元,に対して以下の性質を持つ演算(combination)(,)を定義する。

 

 (,)は,(×) → の写像で(,)∈ある。

(ⅰ)(,)=(,)*,(ⅱ)(α,)=α(,),(ⅲ)(,)=(,)+(,),(ⅳ)(,)は非負の実数,

 

(ⅴ)(,)=0 ⇔ =0

 

 ただし,α∈,,,である。

  

 複素数λ∈に対して,λ*はλの複素共役(complex conjugate)を意味する。

 この演算(,)をのスカラー積,またはユニタリ内積(unitary inner-product)といい,ユニタリ内積が定義された線型空間を(複素)ユニタリ空間(unitary space)と呼ぶ。

特に,(,)が常に実数(real)でαも実数の場合には,を実ユニタリ空間と呼ぶ。

[定理4-2](ユニタリ内積の性質Ⅰ):ユニタリ空間の元,,とα,β∈に対して次の性質が成り立つ。

1.(α)=αβ*(,),2.(,)=(,)+(,),

3.(,0)=(0,)=0

(↑自明なので証明略)

[定義4-3]:をユニタリ空間とするとき,∀に対し(,)1/2をベクトルの長さ(length),またはノルム(norm)と呼び,記号|a|で表わす。

[定理4-4](ユニタリ内積の性質Ⅱ):ユニタリ空間の元,,とα,β∈に対して次の性質が成り立つ。

1. |0|=0  2.αa|=|α||a|:|α|はαの絶対値:(αα*)1/2

(↑自明)

[定理4-5](Schwartzの不等式):ユニタリ空間の任意の2つのベクトル,に対して|(,)|≦|a||b|が成立する。この不等式をSchwartzの不等式という。

(証明) ユニタリ内積の定義から∀λ∈に対して(-λ,-λ)≧0 です。それ故,(,)-λ*(,)-λ(,)*+λλ*(,)≧0 です。

 0 の場合,特にλ≡(,)*/(,)とおけばλ*≡(,)/(,)です。

  

 これを上式に代入すると|a|2-|(,)|2/|b|2≧0,すなわち,|(,)|2|a|2|b|2,つまり|(,)|≦|a||b|を得ます。

 また,0 の場合には明らかに|(a,)|=|a||b|=0 です。

 そして,もしもが1次独立なら,∀λ∈に対して-λ0 より(-λ,a-λ)>0 ですから不等号が成立して|(,)|<|a||b|となります。

一方,が1次従属で,ある複素数αに対して=αと書けるなら,|(,)|=|α||(,)|=|a||b|となって等号が成立します。(証明終わり)

[定理4-5の系]:ユニタリ空間の任意の2つのベクトル,に対して不等式:|ab||a||b|が成立する。

(証明)|ab|2=(,)=(,)+(,)+(,)*+(,)=|a|2+2Re(,)+|b|2ですが,Schwartzの不等式よりRe(,)≦|(,)|≦|a||b|なので|b|2|a|2+2|a||b||b|2=(|a||b|)2が成立します。

 

(証明終わり)

[定義4-6]:ユニタリ空間の任意の2つのベクトル,に対して|ab|の間の距離(distance or metric)といい記号ρ(,)で表わす。ρ(,)≡|ab|である

[定理4-7](距離の性質):ユニタリ空間の任意のベクトル,,に対して次の性質が成り立つ。

1.ρ(,)=ρ(,),および,2.ρ(,)+(,)≧ρ(,)(三角不等式)

↑この定理はユニタリ内積,ノルムの性質を距離によって置き換えたに過ぎないので証明は省略します。

[定義4-8]:ユニタリ空間のベクトル,に対して(,)=0 が成立するとき,は直交する(orthogonal)という。

[定理4-9]:ベクトル 0 は∀と直交する。また,逆に∀と直交するのベクトルは 0 のみである。

(証明)定理の前半は明らかです。そして後半もほぼ自明です。

つまり,"∃:(,)=0 for ∀"と仮定すれば,(,)=0 にを代入すると(,)=0 となるため,ユニタリ内積の定義:[定義4-1]の(ⅴ)により0 を得ます。(証明終わり)

[定義4-10](直交系):ユニタリ空間のベクトルの集合:{1,2,..,m}において,異なる全てのj,k(j,k=1,2,..,m)に対し(j,k)=0 が成立するとき,このベクトル系:1,2,..,mをユニタリ空間の直交系という。

[定理4-11]:ユニタリ空間のゼロ(零:0)でないベクトルが作る任意の直交系の元は全て1次独立である。

(証明)1,2,..,mをユニタリ空間のゼロでないベクトルが作る直交系とし,1次関係式:α11+α22+..+αmm=0 (α12,..,αm)を仮定します。

j=1,2,..,mの各々のjについて,jと上式の両辺との内積を取れば,(j11+α22+..+αmm=0 (j=1,2,..,m)です。

そして,k≠jのkとの直交性:(j,k)=0を用いると,結局αj(j,j)=0 (j=1,2,..,m)となりますが,jがゼロでないという仮定から(j,j)≠0 です。

したがってj=0 (j=1,2,..,m)を得ます。(証明終わり)

[定義4-12](直交基):ユニタリ空間の次元がnのとき,n個のゼロでないベクトルのつくる直交系が存在すれば,これはの基底となる。この直交系をの直交基(orthogonal basis)と呼ぶ。

[定理4-13]:任意のユニタリ空間においてゼロでないベクトルのつくる任意の直交系は,これに適当なベクトルを補足して空間における直交基となるようにできる。

 この定理の証明のため,次の補題(Schmidtの直交化法)を示します。

[補題]:(Schmidtの直交化法)

 まず,10 なるベクトル1を適当に選びます。

このとき,(,1)≠0 を満たすが存在すればを用いてベクトル22-{(,1)/(1,1)}1で定義します。

すると,明らかに(2,1)=0 です。

しかし,もしも1に従属,つまり適当な複素数αに対して=α1と書けるなら2=α1-{(α1,1)/(1,1)}10となって2が零ベクトルになってしまいます。

 

そこで,としては1に独立:1に平行でないものを選びます。

こうすると,20 であり,かつ(2,1)=0 ですから,[定理4-11]によって12は1次独立です。

 次に,1,2に独立で(,1)≠0,(,2)≠0 を満たすが存在すれば,を用いてベクトル3を,3-{(,1)/(1,1)}1-{(,2)/(2,2)}2によって定義します。

 こう定義すると(3,1)=0,(3,2)=0 です。こうして3個のベクトルから成る直交系:1,2,3が得られました。

この方法(Schmidtの直交化法)を繰り返して,さらに4,5,..,mと定義してゆき,これ以上は1,2,..,mに独立でどれとも直交しないゼロでないのベクトルが存在し得ないなら,系:1,2,..,mの極大直交系と呼びます。

が有限次元ならこの方法による1次独立なベクトルの創生には限りがありますから,極大直交系が存在することは明らかです。

(定理4-13の証明)n次元ユニタリ空間において直交系1,2,..,mが与えられているとします。

 

 これにのゼロでないベクトルm+1,..,sを適当に補足して1,2,..,sの極大直交系となるようにします。

そして,∀に対してξk≡(,k)/(k,k)(k=1,2,..,s)とおいてベクトル≡ξ11+ξ22+..+ξssをつくります。

このとき,(,k)=ξk(k,k)=(,k),つまり(,k)=0 (k=1,2,..,s)が得られます。

 

故に,1,2,..,sが極大直交系であるという仮定により,0,すなわちです。

 したがって,∀=ξ11+ξ22+..+ξssk≡(,k)/(k,k)(k=1,2,..,s)と常に1,2,..,sの1次結合で表わされるので,1,2,..,sの基底であり,それ故s=nであっての直交基をなします。(証明終わり)

[定義4-14](正規直交系):ユニタリ空間の単位長さ(ノルムが1)のベクトルのみからなる直交系を正規直交系(orthonormal system)という。

 

 特にの基底(base)をなす正規直交系を正規直交基(orthonormal basis)と呼ぶ。

[定理4-15]:ユニタリ空間の任意の正規直交系は,これに適当なベクトルを補足して空間における正規直交基となるようにできる。

 これの証明は[定理4-13]で用いたSchmidtの直交化法:2-{(,1)/(1,1)}1,3-{(,1)/(1,1)}1-{(,2)/(2,2)}2..で,途中にノルムを1に正規化する手続きを挿入して変更するだけでいいので割愛します。

 

 すなわち,2'≡-{(,1)/(1,1)}1,22'/|a2'|,3'≡-{(,1)/(1,1)}1-{(,2)/(2,2)}2,33'/|a3'|,..とすれば証明できます。

 

[定理4-15の系]:有限次元ユニタリ空間には必ず正規直交基が存在する。(証明略)

[定義4-16](座標系):ユニタリ空間のベクトル系1,2,..,nの基底をなすとき,一定の順序を着けた系:(1,2,..,n)をの座標系(coordinate system)という。

に対して=α11+α22..+αnnを与える数の組(α12,..,αn)をの座標(coordinate)といい,αjの座標成分(component)という。

特に,1,2,..,nの正規直交基であるとき,座標系(1,2,..,n)をの正規直交座標系(orthonormal coordinetes)という。この場合,(i,j)=δijである。

[定理4-17]:(1,2,..,n)をユニタリ空間の正規直交座標系とするとの座標は(,1),(,2),..,(,n)に等しい。

(証明)=α11+α22+..+αnnとすると(i,j)=δijより(,j)=αj,(j=1,2,..,n)です。(証明終わり)

[定理4-18]:(1,2,..,n)をユニタリ空間の正規直交座標系とし,=Σj=1nαjj,=Σj=1nβjjと表わされるとき(,)=Σj=1nαjβj*である。

(↑自明)

[定理4-19](Besselの不等式):1,2,..,m(m≦n)をn次元ユニタリ空間の任意の正規直交系としに対してαk=(,k)(k=1,2,..,m)とおけば,Besselの不等式:|a|2=(,)≧Σj=1mαjαj*=|α1|2+|α2|2+..|αm|2が成立する。

(証明)≡α11+α22+..+αmmと置けば,0≦(,)=(,)-(,)-(,)+(,)です。

そして,(,)=(Σj=1mαjjk=1mαkk)=Σj=1mαjαj*,(,)=(j=1mαjj)=Σj=1mαj*(,j)=Σj=1mαjαj*,(,)=(Σj=1mαjj,)=Σj=1mαj(j,)=Σj=1mαjαj*です。

 

故に,0≦(,)=(,)-Σj=1mαjαj*を得ます。

したがって,|a|2=(,)≧Σj=1mαjαj*=|α1|2+|α2|2+..|αm|2です。(証明終わり)

[定理4-19の系](Parsevalの等式):1,2,..,nがユニタリ空間の正規直交基ならに対してαk=(,k)(k=1,2,..,n)とおけば, Parsevalの等式:|a|2=(,)=Σj=1nαjαj*=|α1|2+|α2|2+..|αn|2が成立する。(自明)

[定理4-20]:1,2,..,nをユニタリ空間の正規直交系とする。

任意のに対しαk(,k)(k=1,2,..,n)とするとき,|a|2=(,)=Σj=1nαjαj*=|α1|2+|α2|2+..|αn|2が成立するなら1,2,..,nの基底をなす。

(証明)≡α11+α22+..+αnnと置けば(,)=(,)-Σj=1nαjαj* ですから(,)=Σj=1nαjαj*なら(,)=0 です。

したがって,=0,つまり=α11+α22+..+αnnとが成立しますが,は任意なので1,2,..,nは空間の基底をなすことがわかります。(証明終わり)

今日はここまでにします。

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

 

PS:無償のボランテイアなどといいながら,昨日は3/8の修了式を含めあと3回(3週)の手話講習会が終わって椎名町から池袋まで4人の女性と5人で帰り,最後に池袋駅で若い看護士さんとツーショットになったので飲みに誘いました。

 

 OKだったのですが,つい自分好みの飲み屋と嗜好が違ったのでまた次の機会と述べて別れてしまいました。次があるかどうかもわからないのにどこでも良かったですね。

  

 たまたま,女性に1軒おごるくらいの金はあったのですが,やはりフーテンの寅さんモドキですかね。。

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2011年2月19日 (土)

線型代数のエッセンス(9)(1次変換(補遺))

 線型代数のエッセンスの§3.1次変換の残りです。

[定義3-47](固有多項式):線型空間のある1次変換A^について適当な座標系を取ればA^の行列Aが作られる。この行列Aの固有多項式:φ(λ)=|λE-A|を変換A^の固有多項式(characteristic polynomial)という。

※座標系を変えてもAは変換行列Tにより相似な行列A1=TAT-1に変わるだけなのでφ(λ)は座標系の選び方には依りません。すなわち,|λE-A1|=|λE-TAT-1|=|T(λE-A)T-1|=|λE-A|=φ(λ)です。※

[定理3-48]:線型空間の1次変換A^の固有多項式の次数はA^の作用する空間の次元に等しい。

(証明)固有多項式φ(λ)=|λE-A|の次数は正方行列(λE-A)の次数,すなわち正方行列Aの次数に等しくこれは空間の次元に等しいのは明らかです。(証明終わり)

[定理3-49]:線型空間がその上の1次変換A^に関して不変な部分空間の直和に分解されるならば,A^の固有多項式は誘導される変換A1^,A2^の固有多項式の積に等しい。

(証明)A=A12によりλE-A=(λE1-A1)(λE2-A2)ですから|λE-A|=|λE1-A1||λE2-A2|です。(証明終わり)

[定理3-50]:線型空間の各1次変換A^はその固有多項式の根である。すなわち,λの多項式:φ(λ)=|λE-A|に形式的にλ=A^を代入すると,作用素の恒等式としてφ(A^)=O^が成立する。

(証明)φ(λ)=|λE-A|=α0+α1λ+..+αnλnと多項式を陽に表わすと「線型代数のエッセンス(1)(行列)で証明した「Hamilton-Cayleyの定理」より,行列の恒等式としてφ(A)=α0+α1A+..+αnn=Oが成立することがわかっています。

 したがって,A→A^の同型対応によりφ(A^)=α0+α1A^+..+αnA^n=O^が得られます。(証明終わり)

(注):φ(A^)=α0+α1A^+..+αnA^n=O^というのは∀x∈に対してφ(A^)0が成立することを意味します。(注終わり)※

[定義3-51](最小多項式):線型空間の1次変換A^を根とする最高次係数が1の多項式で次数が最小のものをA^の最小多項式(minimal polynomial)という。

[定理3-52]:線型空間の1次変換A^の最小多項式はA^の行列Aの最小多項式に等しい。

(↑自明)

[定義3-53](固有値,固有ベクトル):線型空間の1次変換A^に対して数ζ∈と零でないベクトルが存在してA^=ζが成立するときζをA^の固有値(eigenvalue),をA^のζに属する固有ベクトル(eigenvector)という。

[定理3-54]:線型空間の1次変換A^の1つの固有ベクトルだけによって張られるの1次元部分空間はの1つの不変部分空間である。(←自明)

[定理3-55]:線型空間の1次変換A^の固有値ζは全てその固有多項式φ(λ)=|λE-A|の根である。逆にζがA^の固有多項式の根ならζはA^の固有値である。

つまり,ζが1次変換A^の固有値 ⇔ φ(ζ)=|ζE-A|=0である

(証明)「線型代数のエッセンス(1)(行列)」の内容の一部を再掲して証明とします。

(再掲記事): [定義1-20](固有多項式):Aをn次の正方行列とするとき,n次多項式;φ(λ)≡|λE-A| or φ(λ)≡det(λE-A)をAの固有多項式という。そしてφ(λ)の零点,or 方程式φ(λ)=0 の根λ12,..,λnを行列Aの固有値という。

(注):列ベクトルがAの固有値λに属する固有ベクトルであるとは,0であってA=λなる関係式が成立することです。そして,A=λは行列形式では(λE-A)0と表現できます。

このn元連立1次方程式:(λE-A)0 が自明な解(0)以外の解(0)を持つための必要十分条件がφ(λ)=|λE-A|=0です。(注終わり※)(再掲終わり)

そしての適当な座標系におけるA^⇔A,および⇔[]の同型対応によりA^=ζはA=ζ[a]に同型対応しますから定理が成立します。(証明終わり)

[定義3-56]:線型空間の1次変換A^の固有値ζの固有多項式の根としての重複度を固有値ζの重複度という。

[定理3-57]:n次元線型空間の1次変換A^がn個の1次独立な固有ベクトルを持つならば,これらのベクトルを座標系に取ることによって変換A^の行列Aを対角行列形にすることができる。

逆に行列Aがある座標系において対角行列形を取るならその基底ベクトルはのA~の固有ベクトルである。

(証明)A^j=λjj(j=1,2,..,n)が成立して1,2,..,nが1次独立で座標系にとることができるなら,(A^1,A^2,..,A^n)=(1,2,..,n)A, 

  

と書くことができます。逆の成立も自明です。(証明終わり)

[定理3-58]:線型空間の1次変換A^の異なる固有値に属する固有ベクトルは1次独立である。

(証明) A^1=λ11,A^2=λ22,10,20で,かつλ1≠λ2とします。このとき,1,2についての1次関係式をα11+α220 と書けばA^(α11+α22)=λ1α11+λ2α220が成立します。

λ1α11+λ2α220にα22=-α11を代入するとα11-λ2)10ですが10,かつλ1≠λ2よりα1=0を得ます。それ故,α220,かつ20よりα2=0も得られますから12は1次独立です。(証明終わり)

[定理3-58の系]:線型空間の1次変換A^の固有多項式がn個の相異なる根を持てばその変換の行列Aは適当な座標系において対角行列の形である。(←自明)

短いですが,これで§3は終わりなので今日はここまでにします。

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

 

PS:一般に人は,環境との関わり,特に同じ"人間=他人"とのコミュニケーション自体にストレスを感じます。

 

 これは,まだ物心もつかない乳幼児でも人見知りをすることにも見られるように人に限らず犬や猫なども持つ性質であろうと思われます。

 

 動物,いや生き物の防衛本能に帰属するものかも知れません。

 

 特に,日本では私よりも老人の方によく見られる現象ですが,英語圏で"Excuse me"に相当するであろう"失礼"とか,"失礼します","すみません"etc.とかの断りも云わず(云えず),人にぶつかったりして,さらに何も云わずにサッと過ぎて行く方がおられ,時には私でさえ少しムカつくことがあります。

 

 私は,これを社会性がない人と呼んでいます。

  

 社会性がない人の典型は,女性であれば,駅で切符を買う際に混雑して行列ができているときでも自分の番が来てからゆっくりと運賃表を探しておもむろにバッグから財布を取り出しコインを探して,さらに切符を購入後もその場をドかずに財布とバッグを直すなど,後に続く他人など全く気にしないような,かつては"オバタリアン"と称された人のことです。

 

 まあ,昔の女性は家庭に押し込められていて社会に出て働く人は希少であったという理由で,他人を配慮することも含めた社会性が身についていないことはある程度理解できます。

  

 また,かつての典型的な田舎の朴訥な人柄で「モノ言えば本当に唇が寒い」という人々や,戦後の自分が生きていくのがやっとの焼け跡・闇市の時代に育って他人とのコミュニケーションではイヤなこと,イヤな人ばかりに遭遇して人間不信になったという"トラウマ"がある人たちもいるでしょう。

 

 でも,老人とは限らず,他人と関わりを持つ,会話をすることのフラストレーションやストレスと,他方,他人とは関係せず孤独であることの寂しさ,ストレスを比較して,後者の方が大きくい,あるいは少しのストレスやリスクはあっても他人の温もり,癒し,人肌の方がより恋しいこともありますね。

 

 私の場合は,ときに孤独であることも嫌いではないですが今は若い頃ほど他人とのコミュニケーションが苦にならない,というより関係を持つことにより喜びを感じるようになりました。

 

 当たり前のことなんですが,他人を含む環境との関わりは生老病死のストレスをもたらすだけではなくて,歓びをも与えてくれます。

 

 そのことを今さらながら,実感しているんですね。生きていることは悪いことばかりではないですよ。

 

 土曜ですがこれから出勤します。。

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2011年2月14日 (月)

線型代数のエッセンス(8)(1次変換-2)」

 線型代数のエッセンスの§3.1次変換の続きです。

 今日は線型空間を1次変換の不変部分空間の和に分解して,後にこうした変換の集合が群をなす場合に変換の既約表現の直和分解となるような可約表現ヘの準備段階の話が中心です。

[定義3-26]:線型空間の部分集合の上の1次変換A^による像(image)の全体をA^に関するの像といいA^と書く。また,{|A^}をの原像(inverse image)といいA^-1と書く。

[定理3-27]:線型空間の線型部分空間の1次変換A^に関する像,および原像は共に線型部分空間となる。

(証明)を線型空間の線型部分空間とします。A^はA^に関するの像です。

,∈A^とすると,=A^,=A^を満たす,が存在します。よって,の線型部分空間なので∀α,β∈に対してαです。

それ故,A^(α)=αA^+βA^=α+β∈A^です。したがって,,∈A^,α,β∈ならα+β∈A^なのでA^の線型部分空間です。

他方,A^に関するの像原像をA^-1と書けば,∈A^-1ならA^,A^です。

よって,の線型部分空間なので∀α,β∈に対し,αA^+βA^=A^(α)∈です。したがって,α∈A^-1なのでA^-1の線型部分空間です。(証明終わり)

[定義3-28]:A^を線型空間における1つの1次変換とする。このとき,KerA^≡{|A^0}をA^の核(kernel)という。また,A^をA^の値域(range)という。

値域A^の次元:dim(A^)を変換A^の階数といい,rankA^と書く。また,KerA^の次元:dim(KerA^)をA^の退化次数(degenerate dimension:縮退次数)という。

[定理3-29]:線型空間の1次変換A^の階数と退化次数の和はの次元dimに等しい。

(証明)r≡rankA^=dim(A^),d≡dim(KerA^)とします。また,A^の基底を1,2,..,rとします。

 

 1,2,..,r∈A^ですから,A^ii(i=1,2,..,r)となる1組の系:1,2,..,rを選択すると,これらの{i}i=1,2,..,rは1次独立です。

 何故なら,1次関係式α11+α22+..+αrr0 の左からA^を掛けるとα11+α22+..+αrr0 となり,α1=α2=..=αr=0 が従うからです。

 そこで,1,2,..,rによって張られるのr次元部分空間をとします。

このとき,∀=α11+α22..+αrrと書けます。これの両辺に左からA^を掛けると,A^=α11+α22+..+αrrとなります。

 

故に,もしもA^0 ならα11+α22+..+αrr0 より,α1=α2=..=αr=0 を得ますから0 です。

したがって,KerA^∩={0}ということになります。

 一方,とすると,A^∈A^ですから,A^=β11+β22+..+βrrと書けます。

 

 A^ii(i=1,2,..,r)より,≡β11+β22+..+βrrとおけばであり,A^=β11+β22+..+βrr=A^となります。

よって,A^()=0 なので,()∈kerA^です。

 

そこで,=()+とkerA^の元との元の和に分解されますが,は任意の元であってKerA^∩={0}なのではKerA^との直和:=KerA^です

したがって,"[定理2-51]:線型空間の2つの線型部分空間の直和の次元は部分空間の次元の和に等しい。"により,dim=d+rが得られました。(証明終わり)

[定義3-30]:線型空間における可逆な1次変換を正則(regular)な変換,非可逆な1次変換を非正則(irregular),または特異(singular)な1次変換という。

[定理3-31]:線型空間における1次変換A^が正則 ⇔ KerA^={0}

(証明)まず,変換A^が正則なら可逆なのでA^-1が存在します。そしてA^-1 00 なのでA^-1 {0}={0},つまりKerA^={0}です。

 逆にKerA^={0}なら,dim(KerA^)=0 ,および[定理3-29]のdim= dim(KerA^)+dim(A^)から,dim=dim(A^)です。それ故A^です。

また,,でA^=A^ならA^()=0でKerA^={0}より0 orです。つまり,ならA^≠A^です。

 したがって,A^は全単射(bijection)ですから可逆,つまり正則です。(証明終わり)

[定理3-31の系]:線型空間における1次変換A^が正則 ⇔ A^(↑自明)

[定義3-32]:線型空間から自身への同型写像を自己同型写像(automorphism)という。

[定理3-33]:A^が正則な1次変換であることと自己同型写像であることは同値である。(←(↑自明)

[定義3-34](相似変換):線型空間における2つの1次変換A^,B^があるとする。

 

 Lのある自己同型写像C^が存在してA^による変換がB^による変換にうつされるとき,つまり=A^のときに=C^,=C^とすれば=B^となるとき,変換A^とB^は相似(similar),または同型であるという。

[定理3-35]:変換A^とB^は相似である。⇔ 正則な変換C^が存在してA^=C^-1B^C^, or B^=C^A^C^-1と書ける。

(証明)=B^=C^,=C^を代入すると,C^=B^C^,故に=C^-1B^C^です。

 

 ところが,=A^なのでA^=C^-1B^C^x,すなわち,A^=C^-1B^C^を得ます。(証明終わり)

[定理3-35の系]:変換A^とB^は相似 ⇔ 行列AとBは相似

ただし,A,Bはそれぞれ変換A^,B^の行列である。(←自明)

(注):記事「線型代数のエッセンス(1)(行列)」における"[定義1-19](行列の相似性):行列AとBに対してある正則行列Xが存在してA=X-1BX,あるいはXA=BXが成立するとき,AはBに相似であるという。"を参照されたい。(注終わり)※

[定理3-36](変換の行列の階数):線型空間の任意の1次変換A^の階数は,この変換の行列Aの階数に等しい。

(証明)1,2,..,nの座標系とします。変換の行列の定義から(A^1,A^2,.., A^n)=(1,2,..,n)Aです。

 変換A^の階数の定義:"値域A^の次元:dim(A^)を変換A^の階数といいrankA^と書く。"からA^の階数はA^1,A^2,.., A^nのn個のベクトルのうち1次独立なベクトルの最大個数に等しいです。

 これは,(1,2,..,n)がn個の1次独立な基底なので行列A=([1],[2],..,[n])のn個の列ベクトル[j]≡t1j2j,.., αnj)(j=1,2)のうち1次独立なベクトルの個数の最大値,つまり行列Aの階数に等しいことがわかります。

 

(証明終わり)

(注):まず,座標行列とその階数の定義を再掲します。

[定義2-29]:1,,..,mが座標:[1]=t1121,..,αn1),[2]=t1222,..,αn2),..,[m]=t1m2m,..,αnm)を持つとき,これらの列ベクトルを並べて得られる行列をA≡[[1][2]..[m]]=[t1121,..,αn1) t1222,..,αn2)..t1m2m,..,αnm)]とする。

 このAを構成する数空間の列ベクトル:[1],[2],..,[m]のうち1次独立なベクトルの個数の最大値を行列Aの階数という。

 次に,関連する定理の再掲です。

[定理2-31]:[定義2-29]と同じ前提で1,2,..,mの1次独立なベクトルの個数の最大値は行列Aの階数に等しい。(再掲終了)

これらから,(A^1,A^2,.., A^n)=(1,2,..,n)Aのうち1次独立なベクトルの個数の最大値,つまりdim(A^)が行列AL≡([A^1],[A^2],..,[A^n])の階数に等しいことがわかります。

しかし,(1,2,..,n)を基底とするなら(A^1,A^2,.., A^n)=(1,2,..,n)([A^1],[A^2],..,[A^n])=(1,2,..,n)Aなので,行列ALと行列Aは同じものです。(注終わり)※

[定義3-37](行列の退化次数):正方行列Aの次数と階数の差:(n-rankA)を行列Aの退化次数(縮退次数)という。

[定理3-38]:1次変換A^の退化次数とその行列Aの退化次数は等しい。

 

(1次変換A^の退化次数)=dim(KerA^)=n-dim(A^)=n-rankA=(行列Aの退化次数)は自明です。)

[定理3-39]:n元同次(斉次)連立1次方程式A[]=0 の1次独立な解の最大個数はこの方程式の行列Aの退化次数に等しい。

 

(※1次独立な解とは自明解:[0]とは異なる非自明解のことです。)

(証明)方程式A[]=0 をAと同型な線型空間の1次変換A^によってA^0 と表わせば,1次独立な解の最大個数はdim(KerA^)ですが,これは(行列Aの退化次数)=(n-rankA)と同じです。

(証明終わり)

[定義3-40](不変部分空間):線型空間の線型部分空間に属する任意のベクトルが変換A^によって再びに属するベクトルにうつされるとき,つまりA^のとき,は変換A^に関して不変である,またはのA^に関する不変部分空間(invariant subspace)であるという。

[定理3-40]:線型空間の線型部分空間のうち零空間{0}と全空間は任意の1次変換に関して不変である。また,2つ以上の不変部分空間の和,および共通部分はまた不変である。(←自明)

[定理3-41]:線型空間の線型部分空間が1次変換A^に関して不変ならはA^の関数f(A^)で与えられる変換に関してもまた不変である。

(↑自明)

[定理3-42]:線型空間における1次変換A^が不変な線型部分空間を持てば,A^の行列Aは4つの細胞に分割され,そのうち主対角線上の細胞は正方行列で左下の矩形細胞はO(ゼロ)である。

(証明)不変部分空間の基底を1,2,..,mとし,これと1次独立なM+1,..,nを補っての基底,つまり座標系とします。

 このとき,1≦j≦mならA^j=α1j1+α2j2+..+αmjm,m+1≦j≦nならA^j=α1j1+α2j2+..+αmjm+αm+1j1+..+αnjnです。

 A^j=(1,2,..,m,M+1,..,m)t1j2j,..,αmj,0,..,0)(1≦j≦m),^j=(1,2,..,n)t1j2j,..,αnj) (m+1≦j≦n)です。

 故に,(A^1,A^2,.., A^n)=(1,2,..,n)Aで定さられる行列Aは次のようになります。

 ただし,A1はm次正方行列,A2は(n-m)次正方行列,Bはm×(n-m)矩形行列,Oは(n-m)×mの矩形零]行列です。 (証明終わり)

[定理3-42の系]:線型空間における1次変換A^の行列Aがm次正方行列A1,(n-m)次正方行列A2,m×(n-m)矩形行列B,(n-m)×mの矩形零行列Oによって,

のように書けるとき,の座標系1,2,..,nのうち,はじめのm個の基底ベクトル1,2,..,mので張られる空間は変換A^に関しての不変部分空間である。(←自明なので証明は略)

[定義3-43]:線型空間における1次変換A^がm次の不変部分空間を有するとき,A^をにおける変換A1^がと見なしA1^をA^によって誘導される変換(induced transformation by A^)という。

[定理3-44]:線型空間における1次変換A^の行列Aが

と表わせるとき,A^によって誘導される変換A1^の行列はA1である。

(↑ (A^1,A^2,.., A^m)=(1,2,..,m)A1より自明) 

[定理3-45]:線型空間が1次変換A^によって2つの不変部分空間12の直和に分解されるならば,適当な座標系においてA^の行列Aは細胞対角行列になり,その主対角線上の細胞はA^のによって誘導された変換A1^,A2^の行列A1,A2となる。

 すなわち,12ならA=A12となる。

(証明)不変部分空間1の基底を1,2,..,mとし,これと1次独立なM+1,..,nを補っての座標系とします。

ただし,今は12なので,m+1,..,n2の基底です。

 A^j=(1,2,..,m,m+1,..,n)t1j2j,..,αmj,0,..,0)(1≦j≦m),^j=(1,..,m,m+1,m+2,..,n)t(0,..,0,αm+1jm+2j,..,αnj)(m+1≦j≦n)です。

 故に,(A^1,A^2,.., A^n)=(1,2,..,n)Aで定義される行列Aは,次のように書けます。

(証明終わり)

  

[定理3-46]:線型空間の1次変換A^の行列Aが直和:A=A12

分割されるなら,A^によって不変なの部分空間:1,2が存在して12となるようにできる。(← 自明)

 

 途中ですが今日はここまでにします。

 

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書) 

  

PS:あまりに寒くて昨日の日曜日午後にとうとう今冬はじめての頭痛込みの風邪を引いたようです。

  

 咳や鼻水はなく喉が痛くて頭がくらくらするだけです。熱を計っていませんが少しはあるのでしょうね。

 

 そこで毎日耀夜の飲み屋出勤?は休みました。外出すると悪化しそうでしたので。。

 

 しかし今日の出勤は大丈夫そうです。厚めのセーター着ていきます。

 

 バレンタインデ-?聖バーソロミューの虐殺の祈念日だっけ。。

 天使の手づくりチョコのおすそ分けをもらって幸せ。。

 

PS2:エジプト(および,チュニジア)はフランスのパリ・コミューン以来のアナキズム革命なのか?

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2011年2月10日 (木)

線型代数のエッセンス(7)(1次変換-1)

 線型代数のエッセンスの続きです。

※(余談:"ソリトンやインスタントン,非線形戸田格子etc.の可能性")

 私的には,21世紀に入った頃から非線形現象に着目していました。

 摂動のない多重周期の基準モードの線型運動のようなものだけを考慮するなら,粒子間にエネルギー交換があるという統計力学の根本的仮定が満足されません。

 また,1次元の非線型バネのコンピュータ解析でのFermi-Pasta-Ulamの再帰現象(和達三樹著「非線型波動」参照)のように,非線型振動では不安定な分散が生じるのとは逆に時間的に安定な振動が見られます。

 直感的に考えても,理想気体を構成する各気体分子が完全弾性衝突するだけでは,ビリアードでの玉のように衝突で軌道は折れ曲がっても究極的には永久に同じモードで周期運動するだけです。

 玉の数が増えれば基準振動モードの軌道形は複雑になっても,軌道間のモードの乗換えによるエネルギー交換は不可能です。

 話は変わりますが,物理現象を規定する微分方程式を数値計算可能にするために差分化すると,元が線型微分方程式の場合には差分方程式は連立1次方程式になります。

 そして,こうした線型な連立方程式でさえ,ガウス-ザイデル法のような緩和法の反復法を用いると比較的安定な陰解法でもコンピュータがデジタルであるための可算演算の限界故,差分スキームの選択次第では丸め誤差の累積により解が不安定になって発散する現象が起こります。

 理想的な無限ビットのアナログコンピュータを仮定してそれで計算するなら線型方程式の有限であるべき解が計算されて発散することはないのですが。。。

(↑全ての無限小数をデジタルで表現できるのですから)

 一方,たとえアナログコンピュータでも線型でなくわずかな非線型項があれば同等な累積現象による発散が期待できます。

 くりこみにおけるλφ4理論のように,実は自由場が線型ではなくプランクオーダーの係数λを持つ非線形項があって,その累積がマイナスの引き算項として紫外発散と相殺するなら,などと自分で勝手気儘なことを考えていたのですが。。。

 Higgs粒子についても同様な非線型項を夢見ていました。

 私がこれらの具体化を考える前に,そうしたものに似た既存理論があるみたいですね。

 私が思い付きで考えることぐらいは既にあるみたいで去年還暦を機会にやろうかと思って調べていてやや挫折感がありました。(終わり)

 さて,本題の§3に入ります。

§3.1次変換

[定義3-1]:集合があるとする。∀m∈の各々に1つのの元を対応させる写像(mapping)を集合の上の変換(transformation)という。

ここでは変換をの元に左からA^,B^,..の作用素(operator:演算子)を施すことで表現する。

すなわち,m∈に変換A^を行なった結果として得られる元をA^mと表わしA^mを変換A^による像(image)という。逆にmをの元A^mの原像(inverse image)という。

 

※(注):が量子力学の状態を表わすケット(ket)の状態空間で|ψ>∈,A^が量子演算子なら像はA^|ψ>ですね。(注終わり)※ 

[定義3-2]:にの2つの変換:A^,B^があるとする。mをB^(A^m)∈にうつす変換をA^とB^の積と名付け,これをB^A^と表わす。

すなわちB^(A^m)=(B^A^)mと書く。

[定理3-3](積の結合則):A^,B^,C^をの任意の変換とすると(A^B^)C^=A^(B^C^)である。

 

 特に,A^A^をA^2,A^2A^をA^3,...etc.と指数で表現すれば,A^mA^n=A^ m+n,(A^m)n=A^ mnが成立する。(←自明なので証明は略)

[定義3-4]:∀m∈の各々にm自身を対応させる変換を恒等変換(identity)と呼び,この変換をE^で表わす。E^m=mである。

[定理3-5]:A^をの任意の変換とするとE^A^=A^E^=A^である。(↑自明)

[定義3-6]:の変換A^に対してA^B^=B^A^=E^を満たす変換B^を見出し得るとき,B^をA^の逆変換(inverse)といいA^-1で表わす。

 

 また,A^に関する逆変換A^-1があるとき,変換A^は可逆(invertible)であるという。

[定理3-7]:可逆な変換に対しその逆変換は常に唯一(unique)である。

(証明)変換A^は可逆であってA^B^=B^A^=E^,かつA^C^=C^A^=E^が成立するとする。

 

 このとき,C^=E^C^=(B^A^)C^=B^(A^C^)=B^E^=B^となりC^とB^は全く同じものです。(証明終わり)

[定理3-8]:可逆な変換A^に対し逆変換A^-1もまた可逆であり(A^-1)-1=A^である。

 

 また,A^-n≡(A^-1)n=と定義し,A^0=Eと規約すると(A^n)-1=A^-n,(A^B^)-1=B^-1A^-1が成立する。

(証明)まず,(A^-1)-1=(A^-1)-1E^=(A^-1)-1(A^-1A^)={(A^-1)-1A^-1}A^=E^A^ n=Aです。

次に,明らかにE^ n=E^なので,(A^n)-1=(A^n)-1E^=(A^n)-1E^n=(A^n)-1(A^A^-1)n=(A^A^..A^)-1{(A^A^-1)(A^A^-1)...(A^A^-1)}=(A^A^..A^)-1(A^A^...A^)(A^-1)n=E^(A^-1)n=^(A^-1)n が得られます。

 最後に,(A^B^)-1=E^(A^B^)-1=(B^-1E^B^)(A^B^)-1={B^-1(A^-1A^)B^}(A^B^)-1=(B^-1A^-1)(A^B^)(A^B^)-1=(B^-1A^-1)E^=B^-1A^-1です。(証明終わり)

[定理3-9]:集合の上の変換A^が可逆である。⇔A^はからそれ自身への双一意写像である。(⇔ は同値(必要十分)を表わす記号)

(注):双一意写像とは,先に述べた1対1上への写像=全単射(bijection)のことです。

 

 すなわちA^がからそれ自身への双一意写像であるとは,各々のm∈がそのA^による原像をの中に有し,さらにm1,m2,m1≠m2なら常にA^m1≠A^m2となることです。(注終わり)※

(証明)まず,A^が可逆であってA^-1が存在するとします。このとき,∀m∈に対してn=A^-1mとおけば,n∈でありA^n=A^A^-1m=mです。

次に,m1,m2についてA^m1=A^m2ならA^-1A^m1=A^-1A^m2よりm1=m2です。故に,m1≠m2ならA^m1≠A^m2が従います。

逆にA^がからそれ自身への双一意写像(全単射)であるとすると,∀m∈に対してあるn∈が存在してA^n=mであって,この対応:m→nは一意的(unique)です。

そこで,このm→nの変換をB^で表わすと,B^m=nですからB^A^n=B^m=n,A^B^m=A^n=mなので,これはB^A^=A^B^=E^を意味しますからB^=A^-1と書けます。(証明終わり)

[定義3-10]:線型空間の上の変換A^が1次変換(線型変換:linear transformation)であるとは,∀,,∀α,β∈に対してA^(α+β)=αA^+βA^が成立することをいう。

[定理3-11]:A^を線型空間の上の1次変換とするとA^00 である。

(証明)A^(α)=αA^においてα=0とするとA^00 を得ます。

(証明終わり)

[定理3-12]:恒等変換E^は1次変換である。(←自明)

[定義3-13]:∀を全て零元:0にうつす変換を零変換と呼びO^で表わす。

[定理3-14]:零変換O^は1次変換である。(←自明)

[定理3-15]:1,2,..,nをn次元線型空間の任意の基底とする。そしての任意に選んだn個の元を1,2,..,nをとする。

 

 このとき,1,2,..,nを,それぞれ1,2,..,nにうつす1次変換が一つ,しかも唯一つに限って存在する。

(証明)∀は基底1,2,..,nによって=ξ11+ξ22+..+ξnnと一意的に表わされます。

 

 このとき,のA^による像:'=A^を同じ座標成分:ξ12,..,ξnを用いて'≡ξ11+ξ22+..+ξnnにより定義します。

 

 この定義において,特にξi=1,j≠iならξi=0 おくことにより,i=A^i(i=12,..,n)を得ます。

 また,,,α,β∈に対してA^(α+β)=αA^+βA^が成立することも明らかですから,変換A^は1次変換です。

 次に,変換B^がB^(α+β)=αB^+βB^がB^ii (i=1,2,..,n)を満たすとすれば,=ξ11+ξ22+..+ξnnのとき,B^=ξ11+ξ22+..+ξnn=A^です。

つまり,∀に対してB^=A^ですから,B^=A^です。

(証明終わり)

[定義3-16](1次変換の行列):線型空間の座標系を1,2,..,n,1次変換をA^とし,A^1≡α111+α212+..+αn1n=(1,2,..,n)[1]=(1,2,..,n)t1121,..+αn1),A^2≡α121+α222+..+αn2n=(1,2,..,n)[2]=(1,2,..,n)t1222,..+αn2),

  

...,A^n≡α1n1+α2n2+..+αnnn=(1,2,..,n)[n]=(1,2,..,n)t1n2n,..+αnn),つまり(i=1,2,..,n)

とする。

 このとき,A≡([1],[2],,..,[n]),すなわち

 を座標系:1,2,..,nにおける変換A^の行列と名付ける。

 

 (※(A^1,A^2,..,,A^n)=(1,2,..,n)Aです。)

[定理3-17]:行列Aによって,ベクトルA^1,A^2,..,,A^nが定まるため,AとA^は1対1対応である。(※ここでの1対1対応は同型対応(全単射)の意味です。)

(証明)[定理3-15],およびその証明から変換A^が定まることは,基底(1,2,..,n)に対して(1,2,..,n)≡(A^1,A^2,..,,A^n)が全て定まることに同値であることがわかります。

 

 そして,(A^1,A^2,..,,A^n)=(1,2,..,n)Aにより行列Aが一意に定まることも明らかです。(証明終わり)

[定理3-18]:[定義3-16]で定義される変換の行列の同型対応において,零変換O^には成分が全てゼロの零行列Oが,恒等変換E^には単位行列Eが対応する。(← 自明なので証明略)

[定理3-19]:線型空間の座標系を1,2,..,n,1次変換をA^とし,その行列をAとする。

の任意の元=ξ11+ξ22..+ξnn=(1,2,..,n)[]=(1,2,..,n)t12,..,ξn)と表わされるとすれば,A^=(A^1,A^2,..,,A^n)t12,..,ξn)=(1,2,..,n)At12,..,ξn)である。

 

つまり,

である。

 

すなわち,座標ベクトル:[]=t12,..,ξn)に対してA^の座標ベクトルは行列Aにより[A^]=At12,..,ξn)=A[]と表現される。

(証明)A^=A^{(1,2,..,n)[]}={(1,2,..,n)A}[]=(1,2,..,n)A[]により,[A^]=A[]です。

(証明終わり)

[定理3-20]:(1,2,..,n),および(',',..,')を線型空間の2つの座標系とし,Tをその変換行列とする。(※すなわち,(1,2,..,n)=('1,'2,..,'n)Tです。)

の上の1次変換^の(1,2,..,n)に対する行列をAとすると,A^の('1,'2,..,'n)に対する行列は(TAT-1)である。

(証明)=ξ11+ξ22+..+ξnn=(1,2,..,n)t12,..,ξn)に,(1,2,..,n)=('1,'2,..,'n)Tを代入すると,=('1,'2,..,'n)Tt12,..,ξn)です。

 

 それ故,同じの別基底による表現:=ξ'1'1+ξ'2'2+..+ξ'n'n=('1,'2,..,'n) t(ξ'1,ξ'2,..,ξ'n)での座標は変換行列Tによって t(ξ'1,ξ'2,..,ξ'n)=Tt12,..,ξn)と表わされます。

 

 これは,実は既に[定理2-34]で既に示されています。

 

 そして,これの逆表現は(ξ12,..,ξn)=(T-1)t(ξ'1,ξ'2,..,ξ'n)ですね。

 他方,[定理3-19]よりA^=(A^1,A^2,..,,A^n)t12,..,ξn)=(1,2,..,n)At12,..,ξn)です。

 

 これに,(1,2,..,n)=('1,'2,..,'n)Tを代入すると,A^=('1,'2,..,'n)TAt12,..,ξn)を得ます。

上式の最右辺にさらに,t12,..,ξn)=(T-1)t(ξ'1,ξ'2,..,ξ'n)を代入すると,A^=('1,'2,..,'n)(TAT-1)t(ξ'1,ξ'2,..,ξ'n)が得られます。

これは,座標系:('1,'2,..,'n)に対する変換A^の行列が(TAT-1)であることを意味します。(証明終わり)

[定理3-21]:1次変換の積は1次変換である。

(証明)A^,B^を線型空間の上の1次変換とし,,,α,β∈とします。

 すると,(B^A^)(α+β)=B^{A^(α+β)}=B^(αA^+βA^)=α(B^A^)+β(B^A^)ですから,B^A^も線型空間の上の1次変換です。(証明終わり)

[定理3-22]:線型空間の上の1次変換A^,B^の行列をA,Bとすると,積変換B^A^,およびA^B^の行列はそれぞれBA,およびABである。

 

 特に,A^自身のm個の積:A^m=A^A^...A^の行列はAのm個の積:Am=AA..Aである。

(証明)の座標を[]とすると,定義により[A^]=A[]です。したがって,[(B^A^)]=[B^(A^)]=B[A^]=BA[]となります。(証明終わり)

[定理3-23]:A^が線型空間の上の可逆な1次変換ならA^-1も1次変換である。A^の行列がAならA^-1の行列はA-1である。

(証明)XをA^-1に対応する行列とすれば,A^A^-1=A^-1A^=E^ですから,たった今証明した[定理3-22]の積の同型対応によりAX=XA=Eが成立します。故に,X=A-1です。(証明終わり)

[定理3-24]:1次変換の和,およびスカラー倍も1次変換であり,それらの行列は,それぞれ各変換の行列の和,およびスカラー倍である。

(↑自明)

[定理3-25]:1次変換の多項式は1次変換であり,その行列は行列の多項式に等しい。(←自明)

 

 今日はここまでにします。

 

※(余談2):Schroedingerの波動力学では状態空間を部分空間とする線型空間は粒子の位置座標の関数ψ()全体から成る関数空間で1次変換の演算子A^は(∂/∂x),∇のスカラー倍のような微分演算子,単なるの関数f()を掛ける演算,∫dxのような積分演算子でした。

 

 一方,を関数空間に特定せず,その概念も包摂した抽象的ベクトルを元とする抽象線型空間として定式化してみます。

 

 もしも空間が有限次元であるなら,上述のようには数を成分とする列ベクトルを元とする数ベクトル空間[]に同型対応し,の1次変換の演算子A^は数ベクトル空間[]の行列Aに同型対応します。

 

 したがって,状態の空間が有限次元ではなく無限次元を取る可能性を除けば,Schroedingerの波動力学がHeisenbergの行列力学と同値であるということは線型代数学から自然に演繹されます。

 

 1粒子の通常の素朴な量子力学では,DiracやVon.Neumannを待つまでもなく.この程度の認識でいいでしょう。

 

 しかし,量子電磁力学以後の定式化で生じている主要な問題は,正に有限次元と無限次元の違い,多粒子系の状態ベクトルを元とする空間の可分性(可算基底と非可算基底の問題)等に起因していると考えられます。

 

 有限次元と無限次元の違いを認識するためにも,こうした私的に線型代数のエッセンスを確認する作業は無駄ではないと思います。※  

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

 

PS:一昨日夜は手話講習,昨日は早朝から春日部(武里)での定期診断でしたが異常に寒くて疲れました。

 

 前からの予定ですから,こういうのは天候くらいでめったに予定変更しませんが,何故か私は雨男,雪男で,これまでも普段と違う行動の日には決まって地震,台風を含む天変地異がよく起こると感じています。

 

 でも,こういうことは困ったもんです。昔とは違って今は私は病人で心臓は寒さ暑さには滅法弱いですから。。。

 

 前に,私の認識の閾値がオカシイと書いたのはシャレではなく,実際,手話講習会での手話認識では年齢とか不真面目のせいではなく,真剣に授業受けても思い込みでなく人一倍劣等生であることを自認しています。

 

 生まれてこの方パターン認識,特に空間認識は苦手なようです。

 

 自慢ですが,岡山の田舎の2クラス100人程度の小学校ではほとんど常にペーパーテストでは学年トップの成績でした。

 

 ところが,当時のアチーブメントテスト,つまりIQテストでは手を抜いたわけではなく平均点よりかなり低いことがよくあり先生に心配されました。

 単に図形とかの認識の問題ができなかったのですね。

 そこで,当時少しはやった将棋なども最弱の方でした。

 しかし,将棋,卓球など持って生まれた才能はダメでも訓練して集中力が続けば人並みになりました。勉強もそうだったのかな?

 右脳の劣等性を左脳でカバーした,というわけですかね。イヤ逆かな?

 中学に入って,幾何の平面図形は普通にできましたが,空間図形には少し苦労しました。高校でデカルト座標で解析幾何学やベクトルの成分表示など数式に変換されるとこれも問題なくなりましたが。。。

 というようにパターン認識等の自然現象の常識認識には生来の欠陥があるかもしれません。

 まあ,大げさに考えなくても生活に支障なかったし,サバン症候群ほどではないけれど何かのプラスに作用してるかも知れませんネ。

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2011年2月 5日 (土)

線型代数のエッセンス(6)(線型部分空間)

 線型代数のエッセンスの続きです。

[定義2-35]:線型空間の空でない部分集合が次の2つの条件(ⅰ),(ⅱ)を満たすときの線型部分空間(linear subspace)という。

(ⅰ)なら∀α∈に対してα

(ⅱ),なら

[定理2-36]:線型空間(ベクトル空間)の線型部分空間はそれ自身1つの線型空間(ベクトル空間)である。

(証明)線型空間(ベクトル空間)の定義:[定義2-1]における和とスカラー積の演算をの部分空間においてそのまま保持すれば,これらの演算はでも"次の性質=線型空間の公理"を満たすのは明らかです。

(ⅰ)(,),(ⅱ)()++()(,,),(ⅲ) ∀,に対してを満たすが存在する。このと書く。

(ⅳ)α(β)=(αβ) (α,β∈,),

(ⅴ)α()=α+α (α∈,,),(ⅵ) (α+β)=α+β (α,β∈,),(ⅶ)∀に対し1・

(証明終わり)

[定理2-37]:線型空間の線型部分空間をとすると0である。また,,,α,β∈ならα+βである。

(証明)ほぼ自明ですが,なら,0=0・より 0,,,α,β∈なら,α,かつβよりα+β

(証明終わり)

[定義2-38]:線型空間の零元:0のみから成る集合:{0}は明らかにの線型部分空間であるが,この{0}を零空間(zero-subspace)という。

そして,{0},およびの自明な(trivial)(線型)部分空間),これ以外の部分空間をの自明でない(non-trivial)部分空間,または真の部分空間(true subspace)という。

[定理2-39]:線型空間をとし1,2,..,mとする。このとき,集合≡{|=α11+α22+..+αmm}はの線型部分空間である。(←自明)

[定義2-39]:上記の線型空間の部分空間≡{|=α11+α22+..+αmm}を1,2,..,mによって張られるの部分空間,または1,2,..,mの上に張られるの部分空間(linear-subspace spanned on 1,2,..,m)という。

(※(注):1,2,..,mは部分空間の生成系=生成元(generator)の系です。※)

[定理2-40]:線型空間をとする。1,2,..,mによって張られるの部分空間の次元は,系1,2,..,mに含まれる1次独立なベクトルの個数の最大値である。(←自明)

[定義2-41]:,を線型空間の(線型)部分空間とするとき,集合としてのの共通部分(intersection):≡{|,かつ}にの線型演算を含めたものを部分空間の共通部分と呼び,記号で表わす。

[定理2-42]:,が線型空間の線型部分空間ならもまたの線型部分空間である。

(証明)[定理2-37]より,が線型空間の線型部分空間なら,0ですから,≠φです。

そして,明らかに,(ⅰ)なら∀α∈に対してα (ⅱ),ならを満たすので線型部分空間の定義によって,もまたの線型部分空間です。(証明終わり)

[定義2-43]:線型空間の有限個の線型部分空間1,2,..,sの和(sum):12+..+s12+..+s≡{|12+..+s;ii(i=1,2..,s)}によって定義する。

[定理2-44]:線型空間の有限個の線型部分空間sの和は,またの線型部分空間である。

(↑自明なので証明は略)

[定理2-45]:,,が線型空間の線型部分空間とする。このとき,(ⅰ), (ⅱ)+()=()+C,(ⅲ),なら,が成立する。(←自明)

[定理2-46]:線型空間の2つの線型部分空間,の和:の次元は,それぞれの次元の和からの次元を引いたものに等しい。すなわち,dim()=dim+dim-dim()である。

(証明)r=dim,s=dim,m=dim()とし,の任意の基底を1,2,..,mとします。

 この1,2,..,mに,1次独立なベクトル系1,2,..,kを補って1,2,..,m,1,2,..,kの基底になるようにすることができます。r=m+kです。

 同様に,1,2,..,mに1次独立なベクトル系1,2,..,pを補って1,2,..,m,1,2,..,pの基底になるようにすることができます。s=m+pです。

 これによって,∀,∀に対する任意のの元1,2,..,m,1,2,..,k,1,2,..,pの1次結合で表わせることは明らかです。

 ところで,これらの1次関係式をα11+α22+..+αkk+β11+β22+..+βpp+γ11+γ22+..+γmm0 と書けば,β11+β22+..+βpp=-α11-α22-..-αkk-γ11-γ22-..-γmmですが,左辺はに属し右辺はに属します。

 それ故11+β22+..+βppです。

 

 そこで,右辺からα11+α22+..+αkk+γ11+γ22+..+γmmですが,1,2,..,mだけがの基底をなすのでα1=α2=..=αk=0 です。

 そこで元の1次関係式はβ11+β22+..+βpp+γ11+γ22+..+γmm0 と書けますが,1,2,..,m,1,2,..,pの基底なのでβ1=β2=..=βk=γ1=γ2=..=γk=0を得ます。

以上から,1,2,..,m,1,2,..,k,1,2,..,pは全て1次独立での基底をなすことがわかりました。

よって,dim()=m+k+p=r+s-m=dim+dim-dim()が示されました。(証明終わり)

[定理2-46の系]:線型空間の2つの線型部分空間を,とする。このとき,共通部分の次元は,それぞれの次元の和からの次元を引いたものより小さくは成り得ない。つまりdim()≧dim+dim-dimである。

(証明)n=dim,m=dim(),r=dim,s=dimとすると[定理2-46]よりdim()=r+s-mでこれがn以下ですから,r+s-m≦nよりm≧r+s-n,つまりdim()≧dim+dim-dimです。(証明終わり)

[定義2-47]:線型空間の有限個の線型部分空間1,2,..,sの和:12+..+sにおいて任意の12+..+s;ii(i=1,2..,s)と表わされるが,この分解表現が一意的(unique)であるとき1,2,..,sの直和(direct sum)という。

ここでは,直和12..sと書くことにする。

[定理2-48]:線型空間の有限個の線型部分空間1,2,..,sの和:12+..+sにおいて,零元 0の部分空間への分解:012+..+s(ii;i=1,2..,s)が常に12=..=s0 を意味するとき,和12+..+sは直和である。

(証明)12+..+s;ii(i=1,2..,s),かつ'1'2+..+'s;'ii(i=1,2..,s)と分解されたとすると,(1'1)+(2'2)+..+(s's)=0 i'ii(i=1,2..,s)が成立します。

 すると,定理の仮定によりi'i0,すなわちi'i(i=1,2..,s)ですから,∀の分解表現は一意的です。したがって和12+..+sは直和です。

 

(証明終わり)

(注):上記の定理は"12+..+s0 (ii;i=1,2..,s)なら12=..=s0 なること"が,和:12+..+sが直和にであるための十分条件であると述べるものですが,この条件が必要条件でもあることは明らかです。(注終わり)※

[定理2-49]:線型空間の分解:12+..+s;11112+..+1,m1,22122+..+2,m2,..,ss1s2+..+s,msが全て直和であるなら,分解:1112+..+1,m1+..+s1s2+..+s,msも直和である。

(証明)1112+..+1,m1+..+s1s2+..+s,ms0 (ijij)とする。

 

 このとき12+..+s0 ;11112+..+1,m11,22122+..+2,m2,..,ss1s2+..+s,mssと書けます。

 

 A12+..+sが直和なので,12=..=s0です。

 そこでii1i2..+i,mi0,ii1i2..i,mi (i=1,2..,s)(直和)により1112=..=s,ms0 です。

(証明終わり)

[定理2-50]:線型空間の2つの線型部分空間の和が直和であるための必要十分条件は={0}なることである。

(証明)≠{0}とし,0,とすると,(-)∈で,0+(-)∈;,(-)∈,かつ0,(-)≠0 となるためは直和ではありません。

逆にが直和ではないなら,0の分解も一意的ではないので,ある0,とある0,が存在して 0と書けます。すると,=-0,ですから≠{0}です。

 

(証明終わり)

[定理2-51]:線型空間の2つの線型部分空間の直和の次元は部分空間の次元の和に等しい。つまり,dim()=dim+dim

(証明) [定理2-46]よりdim()=dim+dim-dim()ですが和が直和の場合は≠{0}よりdim()=0ですからdim()=dim+dimです。(証明終わり)

[定理2-51の系]:線型空間の2つの線型部分空間の和の次元がの次元の和に等しいなら和は直和である。(←自明)

短いですが今日はここまでにします。

次回からは,1次変換(線型変換)と行列の関係などの話に移行する予定です。

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

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2011年2月 2日 (水)

線型代数のエッセンス(5)(線型空間2の補遺)

 たまには科学記事も書かないと,本ブログのこの分野を忘れられそうなので,つなぎとしての「線型代数のエッセンス(4)」の書き残し部分を書きます。

余談ですが,ここでの記述のように数学の定義,定理,証明という手続きの連続はある意味で退屈な作業です。

しかし,私は科学事象を規定する用語や概念について人一倍認識能力のない人間(なかなか,なるほどと納得できない認識の閾値(threshold)が低いタイプの人間)です。

 

(↑たとえで言えば,かつては幼児レベルまで下がった説明でないと容易に納得できたと言わない頑固者でした。

 

ある時期からは,物質の運動状態とか色などの物理的性質ならその量的側面を定量化して数式にまで昇華した形で理解できたら,取り合えず納得した気になるようになりました。)

 

そこで,用語や概念,命題を一旦"論理的アルゴリズム?(algorithm)=トートロジー(tautology)の連続"によって認識しやすいアセンブラ(低級言語)にコンパイル(翻訳:compile)するという数学的作業なしには,

  

こうした概念や理論について未知の外国語を聞いているようにチンプンカンプンなのです。

 

さて,本題に入ります。

[定義2-25](座標系):線型空間における基底ベクトルをある一定の順序に配列したものをにおける座標系(coordinate system)という。

[定義2-26](座標):における座標系を1,2,..,nとするとき,∀=α11+α22+..+αnn12,..,αnと一意的に表わされるが,係数:α12,..,αnの各々をの座標成分(component)と呼ぶ。

 

 座標成分の列表示:t12,..,αn)をの座標ベクトル,または座標(coordinate)と呼び,ここではこれを記号[]で表わす。

 

 こうすれば=α11+α22+..+αnn=(1,2,..,n)t12,..,αn)=(1,2,..,n)[]と行列積表現される。

 

※(注):t12,..,αn)は行(α12,..,αn)の転置(transpot)を意味します。(注終わり)

[定理2-27](座標の性質):任意の,,α∈に対し,[α]=α[],[]=[]+[]である。(←自明なので証明は略)

[定理2-27の系]:∀に対して列ベクトル[]=t12,..,αn)全体が作る集合は1つの線型空間(ベクトル空間)を構成する。(←自明)

(注):列ベクトル[]=t12,..,αn)全体が作るベクトル空間を特に数ベクトル空間(number-space)と呼ぶ。※

[定理2-28]:→[]の対応は同型対応である。そこで線型空間の次元がn(dim=n)のときはその座標のn次元数ベクトル空間に同型(isomorphic)であり,1次独立なのべクトルの系は座標の作る数ベクトル空間の1次独立な系に対応する。(←自明)

[定義2-29](行列の階数):1,,..,mが座標:[1]=t1121,..,αn1),[2]=t1222,..,αn2),..,[m]=t1m2m,..,αnm)を有するとき,これらの列ベクトルから作られる行列をA≡[[1][2]..[m]]=[t1121,..,αn1)t1222,..,αn2)..t1m2m,..,αnm)],つまり

     

  とする。

 このとき,行列Aを構成するm個の数空間の列ベクトル:[1],[2],..,[m]のうちで1次独立なベクトルの個数の最大値を行列Aの階数(rank)という。

[定理2-31]:[定義2-29]と同じように構成された行列A≡[[1][2]..[m]]に対し,線型空間のm個のベクトル1,2,..,mのうちで1次独立なベクトルの個数の最大値は行列Aの階数に等しい。

(証明)[定理2-28]よりi→[i]の対応は同型対応ですから,[定義2-29]によりこれは明らかです。(証明終わり)

[定理2-32]:行列Aの階数はAのうちのゼロでない小行列式(minor determinant)の次数の最大値に等しい。

(証明) これは次の(注)[補助定理]から従います。(終わり)

(注):[補助定理]:m個のn次元列ベクトル[j]≡t1j2j,..,αnj)(j=1,2,..,m)が一次独立であるための必要十分条件は,m≦nでn×m行列:A≡[[1][2]..[m]]=(αij)のn個の行からm個の行を取出して作ったm次小行列式の中にゼロでないものが存在することである。

(証明)[j]≡t1j2j,..,αnj)(j=1,2,..,m)が一次独立であるときにはm≦nであるべきことは,n次元次元列ベクトル[]全体から成る数ベクトル空間の次元がnであるということ,および先の"[定理2-18]:n次元線型空間の(n+1)個のベクトルからなる系は全て1次従属である。"という命題からわかります。

 そして,[j]≡t1j2j,..,αnj)(j=1,2,..,m)が一次独立でm≦nであるとすると,

"[定理2-17]:n次元線型空間における任意の1次独立な系1,2,..,m(m<n)に対し適当なのベクトルの系m+1,..,nを加えて系1,2,..,m,m+1,..,nの基底となるようにできる。"

 

という命題から,

[j](j=1,2,..,m)に適当なn次元列ベクトルの系[m+1],..,[n]を加えて系:[1],[2],..,[m],[m+1],..,[n]がn次元数ベクトル空間の1次独立な基底となるようにできることがわかります。

 そこで,j=1,2,..,mだけでなくj=m+1,m+2,..,nについても[j]≡t1j2j,..,αnj)と定義し,n×n行列BをB≡[[1][2]..[n]]=(αij)i,j=1,2,..,nと定義します。

 

 こうすれば,自明な関係式β1[1]+β2[2]+..+βn[n]=[0]は,[β]を未知数とするB[β]=[0]なる行列表現を持つn次連立1次方程式になります。ただし,[β]≡t12,..,βn)です。

 

クラーメル(Cramer)によれば,[β]に対するこの方程式が自明な解:[β]=[0]=t(0,0,..,0)のみを持つための必要十分条件はBが正則なこと:Bの行列式:|B|=detBがゼロでないことです。

 特に,追加した1次独立な数ベクトルを[m+1],..,[n]を[j]≡t1j2j,..,αnj)=t1j2j,..,δnj)(j=m+1,..,n)と選ぶことが可能です。

 

 このときには,|B|=|αij|=det(αij)(i,j=1,2,..,m)です。

より一般には,上記のm個の添字j=1,2,..,mを任意に置換してkj(j=1,2,..,m)とした配列の[kj](j=1,2,..,m)に,n次元列ベクトル[m+1],..,[n]を加えてn次元数ベクトル空間の座標基底とすることもできます。

 

故に|B|=|αi,kj|=det(αi,kj)(i,j=1,2,..,m)と書けます。

よって,Bが正則なこと:つまりBの行列式:|B|=detBがゼロでないこととn個の行からm個の行を選び出して作ったm次の行列式の中にゼロでないものが存在することは同値であることが示されました。

以上から,"m個のn次元列ベクトル:[j]≡t1j2j,..,αnj)(j=1,2,..,m)が一次独立であるための必要十分条件は,m≦nでn×m行列:A≡[[1][2]..[m]]=(αij)のn個の行からm個の行を選び出して作ったm次小行列式の中にゼロでないものが存在することである。"という命題が証明されました。(証明終わり)

 

↑証明には佐武一郎著「線型代数学」(裳華房)を参照しました。

(注終わり)※

[定義2-33]:の2つの座標系1,2,..,n'1,'2,..,'nを取ると1=τ11'1+τ21'2+..+τn1'n,2=τ12'1+τ22'2+..+τn2'n,..,n=τ1n'1+τ2na'2+..+τnna'nと書ける。

 

 このとき,n×n行列:T≡(τij),

 

 つまり,

1,2,..,nから'1,'2,..,'nへの変換行列(transormation matrix)という。

(注):行列表現で(1,2,..,n)=('1,'2,..,'n)Tです。

 

 Tはもちろん正則:|T|≠0ですから,逆行列T-1が存在して(1,2,..,n)T-1=('1,'2,..,'n)と書けます。※

[定理2-34]:の座標系:1,2,..,nに対する座標をt12,..,αn),座標系:'1,'2,..,'nに対する座標をt(α'1,α'2,..,α'n)とし1,2,..,nから'1,'2,..,'nへの変換行列をTとすると,t(α'1,α'2,..,α'n)=Tt12,..,αn),

 

つまり

  

 が成立する。

(証明)=α11+α22+..+αnn=(1,2,..,n)t12,..,αn),かつ=α'1'1+α'2'2+..+α'n'n=('1,'2,..,'n)t(α'1,α'2,..,α'n)ですから(1,2,..,n)t12,..,αn)=('1,'2,..,'n)t(α'1,α'2,..,α'n)です。

 ところが,定義によって(1,2,..,n)=('1,'2,..,'n)Tですから('1,'2,..,'n)Tt12,..,αn)=('1,'2,..,'n)t(α'1,α'2,..,α'n)と書けます。

'1,'2,..,'nは座標系(基底)であり,座標表現:=α'1'1+α'2'2+..+α'n'n=('1,'2,..,'n)t(α'1,α'2,..,α'n)は一意的ですから,t(α'1,α'2,..,α'n)=Tt12,..,αn),あるいは,t12,..,αn)=T-1 t(α'1,α'2,..,α'n)が結論されます。

 

(証明終わり)

短いですが今日はここまでにします。 

ここで述べたかったことのエッセンスは,有限次元線型空間の本質はその次元がn(dim=n)であるということです。 

つまり,次元が同じnであれば抽象的な線型空間(ベクトル空間)であろうと全てn次元数ベクトル空間に同型であり,抽象線型空間の元であるベクトルについても数空間の列ベクトルに同型という意味です。

 

例えば,量子論の状態を示すブラ・ケットのような抽象的状態ベクトルであろうと,こうした粒子のスピンやクォークのカラー,フレイバーに代表される有限で離散量子数のみで指定されるような有限次元の線型部分空間の代数的性質の話を考えるのであれば,

 

これら全ては普通の数ベクトル空間,およびその列ベクトルの性質,特に行列や行列式を観察すれば十分であるということを論理的に表現したかったのです。

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

 

PS:整いました。今日の駄じゃれ。。。

 

 「壁に耳あり,障子にメアリー(まり)」

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2011年1月22日 (土)

線型代数のエッセンス(4)(線型空間2)

 線型代数の§2.線型空間の続きです。

 

 まず,線型空間の定義を再掲します。

 

[定義2-1]:空でない集合について以下の諸条件が満たされるとき,を複素数体の上の線型空間(linear space)またはベクトル空間(vector space)という。またの任意の元(要素;element)aをベクトル(vector)と呼ぶ。

 これが既に与えた線型空間の定義ですが,実は空間のスカラー積の係数を与える数体としては,ここで特定した複素数体に限る必要はなく一般の数体として構いません。

そして,上の定義のように係数を与える数体を複素数体に選んだ線型空間なら,これを複素数体の上の線型空間といいます。

[定義2-19](同型):同一の数体の上の2つの線型空間が同型(isomorphic)であるとは2つの空間の元(要素)間に1対1の対応が存在して,第1の空間のベクトルの和には第2の空間の対応するベクトルの和が対応し,第1の空間のベクトルと数αの積には第2の空間の対応するベクトルの積が対応するようにできることをいう。

 上述の1対1対応(one to one correspondence)を同型対応または同型写像(isomorphism)という。

※(注):紛らわしいのですが,ここでいう1対1対応とは単に写像(mapping)として"1対1(one to one)=単射(injection)"であるという意味ではなく,"1対1上への写像(one to one onto-mappimg)=全単射(bijection)"であることを意味します。

線型空間として同型であるためには,少なくとも集合(set)として同型である必要があります。

 

そして,AとBが集合として同型であるとはAからBへの"全単射=1対1写像(単射:injection)かつ全射(surjection)"が少なくとも1つは存在することです。

 

もしも,A,Bが有限集合の場合ならAとBが集合として同型であることは両者の元(要素)の個数が同じであることを意味します。この場合には単射と全射は同義です。

 

,Bを集合(set)とするとき,ある規則に基づいてAの各々の元に対してBの元を1つずつ対応させる操作をAからBへの写像という。

 

fが集合AからBへの写像であることをf:A→Bと表わす。

写像fによって∈Aが∈Bに写されることを記号的に=f()と表わす。

 

このとき,Aをfの定義域(domain),Bを値域(range)という。

また,Bの部分集合:f(A)≡{f()∈B|∈A}をfによるAの像(image)という。

 

Bの部分集合Cに対して,f-1(C)≡{∈A|f()∈C}をCのfによる原像または逆像(inverse image)という。

 

1,2∈Aに対して1=f(1),2=f(2),1,2∈Bと書くと,12なら常に12となるとき,この写像fはAからBへの単射であるという。

 また,∀∈Bに対し=f()を満たす∈Aが必ず存在する:つまりB=f(A)のとき,写像fはAからBへの全射であるという。また,AからBへの全射をAからBの上への写像(onto mapping)という。

 fが単射かつ全射のとき,これを全単射という。

さて,fが集合の同型写像(全単射)なら,Bの原像はA=f-1(B)≡{∈A|f()∈B}ですが,単一の∈Bに対する原像をf-1()≡{∈A|f()=}と定義すれば,fの単射性からこれは単一の元から成るAの部分集合です。

 

すなわち,=f()ならf-1()={}です。

 このときは∈Bに∈Aを対応させる写像をgと表わすとgも全単射です。この写像g:B→Aを記号的にf-1:B→Aと書き,fの逆写像といいます。=g()=f-1()です。

ただし,[定義2-19]での線型空間における同型,あるいは同型写像の定義は,集合としての同型写像(全単射)の上,さらに線型空間における和,積の演算の準同型(homomorphic)の意味を持っています。(注終わり)※

[定義2-20]:2つの線型空間を,1としから1へのある写像をfとするとき,∀,,∀α∈に対しf()=f()+f(),f(α)=αf()が成立するなら,この写像fを準同型写像(homomorphism)という。

 

 準同型写像fが上への写像(全射)ならfを同型写像という。

このようなから1へのある同型写像fが存在するなら1は同型である。

[定理2-21]:線型空間における同型写像において,00 に対応する。

(証明)線型空間1が同型でfをから1への任意の同型写像とすると,f(0)=f(+(-))=f()+f(-)=f()+f((-1))=f()+(-1)f()=f()+(-f())=0 です。

 

(証明終わり)

[定理2-22]:同型な線型空間から1への同型写像においてはの生成元の系は1の生成元の系に写像される。

(証明)fをから1への同型写像とし,{1,2,..,s}をの生成元の系とします。

 

 そして,1≡f(1),2≡f(2),..,s≡f(s)とおきます。

 

 任意の1に対して≡f-1()とおきます。

 

 このとき{1,2,..,s}がの生成元の系であるという仮定より,=α11+α22+..+αss12,..,αsと書けます。

故に,=f()=f(α11+α22+..+αss)=α1f(1)+α2f(2)+..+αsf(s)=α11+α22+..+αssです。

 よって,{1,2,..,s}は1の生成元の系です。

 (証明終わり)

[定理2-23]:同型な線型空間から1への同型写像においてはの1次独立なベクトルは1の1次独立なベクトルに写像される。

(証明)fをから1への同型写像とし,1,2,..,mの1次独立なベクトルとします。さらに,j≡f(j)(j=1,2,..,m)とします。

j(j=1,2,..,m)に対する1次関係式をβ11+β22+..+βmm012,..,βmと書けば,これはβ1f(1)+β2f(2)+..+βmf(m)=f(β11+β22+..+βmm)=0 を意味します。

故にβ11+β22..+βmm=f-1(0)ですが,fがから1への同型写像ならf-11からへの同型写像なので,[定理2-21]によりβ11+β22+..+βmm0 です。

ところが,仮定から1,2,..,mの1次独立なベクトルなのでβ1=β2=..=βm=0 でなければなりません。

 

よって,1,2,..,m1の1次独立なベクトルです。(証明終わり)

[定理2-24]:同型な線型空間から1への同型写像によっての基底が1の基底に写像され,それ故同型な線型空間は同一の次元を持つ。すなわち,1が同型 ⇔ dim=dim1である。

 また,2つの線型空間が同一の次元を持てばそれらは同型である。

(証明)定理の前半は[定理2-22],[定理2-23]より明らかです。

また,前半の逆命題である後半の証明は以下の通りです。

 

1が共通の次元nを持つとし,および1のそれぞれの基底を{1,2,..,n},および{1,2,..,n}とするとき,各々のjjを対応させる写像をfとします。すなわち,j≡f(j)です。

さらに,任意の=α11+α22+..+αnn12,..,αn=α1f(1)+α2f(2)+..+αnf(n)=α11+α22+..+αnn1を対応させることでから1への写像としてfを定義できます。

 

この写像fが線型空間から1への1つの同型写像であることは明らかです。

したがって,1は同型であることがわかります。(証明終わり)

このところ科学記事の間が開きすぎている感があるので,中途半端で短かいですが続きは後回しにして今日はここまでにします。

参考文献:ア・イ・マリツェフ(柴岡康光訳)「線型代数学」(東京図書)

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