303. 代数学・数論

2022年2月 1日 (火)

ガロア理論補遺(今日は誕生日)

※2022年1月21日(金)開始→2022年2月1日(火)

※(余談):投稿を迷ってるうちに,2月に入ってしまいました

今日:2/1は私の72回目の誕生日です。1950年生まれの年男

なのですが,古希も超えた死に損ないジジイには「めでたくもアリ,

めでたくもナシ,誕生日も冥途の旅の一里塚。」です。

昔は,行きつけの飲み屋のカラオケ伴奏で,毎年恒例のように,

「Happy  Birthdaty to Me」を唄ってアピールしたものでした。

常連だったんだから,誰か覚えていろよな。ホントに。。。

(※今朝はネットバンクをチェックしたら,何か10万円が一括入金

されてました。住民税非課税家庭への給付金でしょうね?

意外と早いね。ラッキー。誕生日プレゼントかな???)

さて,大抵の病気はグッスリと良い睡眠を散れば治るという

のが昔からの持論で,風邪でもひくと最安のユンケルと睡眠薬

2日以内には回復してました。その他には度な「百薬の長」

でもあればなおイイいかも?と思っています。

私,30歳代の終わり頃からの慢性糖尿病が原因で,心不全であり

腎臓も透析はしてないが悪化中なので,不眠は体に負担が大きく

逆に睡眠はとてもいい薬です。なぜか?年末くらいから食欲も

なく,不眠続きで体力が低下して寝たキリに近くなっています。

かろうじて首から上だけ元気です。入院が多くてもう足の筋肉が

立ってるだじぇで辛いのでね。23歳から57歳まで長年のウツ病

で向精神薬には慣れているせいか,少々の精神安定剤は単なる睡眠

剤よりの不眠にもこよく効くので,訪問医に処方してもらって昼も

夜も飲んでいると,少しは楽になってきました。ただ,相変わらず1

分間に4リットルの酸素優吸入をしいます。食が細いのに体重が

減らないのは,きっと心臓が弱って肺に水が溜まっているようです。

利尿剤も飲んでますが,糖尿病なのに糞尿じゃなく出が悪いです。

イヤ,先は長くないですね。コロナには無関係ですが。

(余談終わり※)

※以下,本題です。ガロア理論の復習のシリーズの補足として,

記事:(1)~(9)の意味などを代数方程式解法の歴史とも関連

づけて,自己確認も兼ねて考察し要約してみました。

※古代ギリシャのユークリッド以来,,幾何学全盛の時代にも

,ディオファントスや,アルキメデス,ピタゴラスなど,必ずしも

図形とは関わらない,数字の数学を研究する学者もいました。

しかし,近代西洋代数学が発展したのは,xやyという文字を

変数として,例えばx-6x2+3x+5のように.数式を表現する

方法を発明したフランスの有名な哲学者デカルト(Descartes)の

功績が非常に大きかったのでは?と思います。和算など漢数字に

よる難解と見える東洋数学の表現に比べ,数式を記号表現に簡素化

したのは,非常に明快であり,大きな意味があったと思います。

さて,まず,2次代数方程式,いわゅる2次方程式の根を求める公式

については,昔,高校で習いました。

すなわち,基本式はf(x)=ax2+nx+c=0(a≠0)ですが,

これをa{x+b/(2a)}2-b2/(4a)+c=0と変形すると,

{x+b/(2a)}2=(b2-4ac)/(4a2)となりますから,

ルートの中が正か負か?を判別する判別式をD=b2―4acと

おけば,この方程式の2根はx=(―b±√D)/(2a) です。

次に,3次方程式frすが.これは16世紀にイタリアの学者

Tatyagliai(タルタリア)が発見したモノを,Cardano(カルダノ)

が無断で盗んだとか?金を払って買ったとか?で,今日では

「Cardano(カルダノ)の公式」と呼ばれています。

まず,基本式はf(x)=ax3+bx2+cx+d=0(a≠0)です。

これは,a{x+b/(3a)}3-{b2/(3a)}x+cx-b3/(27a2)

+d=0。と変形できます。

それ故,y=x+b/(3a)とおき,x=y-b/(3a)を代入すれば,

ay3+{c-b2/(3a)}y+{d+2b3/(27a2)}=0∔となります。

これを,y3+Ay+B=0と書けば,2次項が消え簡単になります。

ただし,A=-(b2-3ac)/(3a2),B=(27a2d+2b3)/(27a3)

です。さらに,y=u+vとおくと,(u+v)3+A(u+v)+B=0.

,つまり,u3+v3+(3uv+A)(u+v)+B=0 となります。

そこで,uv=-A/3とおけば,u3+v3=-B, かつ,

33=-A3/27となりますから,u3,v3は,tの2次方程式

2+Bt-A3//27=0 の未知変数tの2根になります。

そこで,D=B2+4A3/27とおけば,u3=(-B+√D)/2,

かつ,v3=(-B-√D)/2と書くことができます。

u={(-B+√D)/2}1/3,v={(-B-√D)/2}1/3とおき,

1の3乗根を1,ω,ω2と書けば,0 ω2+ω+1が成立して,

yの3次方程式の3根は,y=u+v.u+ωv,u+ω2v です。

(※y=u+v.ωu+ω2v,ω2u+ωvという等価な表現も

ありますがね。)

4次方程式の解法は,18世紀にイタリアのFerrari(フェラーリ)

により,発見されました。(彼はカルダノの弟子?らしい。)

基本式はf(x)=ax4+bx3+cx2+dx+e=0(a≠0)

です。これもy=x++b/(4a)として,x=y-b/(4a)を代入

すれば,3次項が消え,y4+Ay2+By+C=0と少し簡単に

なります。この両辺に,(2λy2+λ2)を加えると,(y2+λ)2

=(2λ-A)y2-By+(λ2-C)=0となることを利用します。

もしも,この右辺も(Ey+F)2のような完全平方式なら,

(y2+λ)2=(Ey+F)2となるので,y2+λ=±Ey±Fと

なって+,-の2つのyの2次方程式を解けばyが得られます。

そして,x=y-b/(4a)から,xの根を得ることができます。

とことが,(2λ-A)y2-By+(λ2-C)=(Ey+F)2

なるためには,(2λ-A)=E2,かつ,左辺の判別式:Dがゼロに

なることが必要十分です。

すなわち,D=B2-4(2λ-A)(λ2-C)=0であるべきですが

これは.λ3-4Aλ2-(B2-4AC)=0なる3次方程式です。

これを解いて,λの根が得られれば,それを先の2次方程式の係数

に代入して,その方程式を解くことにより,元の4次方程式の解が

得られます。

この解を元の基本方程式の係数:a,b,c,d,eの式に書き下す

のは,とても煩雑で面倒な作業ですから.ここではワザワザやり

ませんが,時間さえかければ可能です。

一方,方程式の係数の具体的数値が既知である場合なら.

上記の解を求める手順を追うアルゴリズムを,その通りに

プログラム化すれば,容易に解の数値を得ることができます。

とにかく,4次方程式を解く問題は3次方程式,2次方程式

を解く問題に帰着されました。数値計算の実用などには問題

なしです。

しかし,5次以上の代数方程式については,結局,根を求める

一般的解法,公式は見出せないことが,わかってぃます。

ここでは,試みは失敗に終わったけれど,魅力的なフランスの

Lagrange(ラグランジュ)の方法を見てみます。

この項は,私,眼が悪くなって手持ちの本も読めない状況ので,

主に画面を拡大して,ホームページの「ラグランジュの試み」

参照させて頂きました。

さて,解くべきn次代数方程式f(x)=0については,それを

解くための方法の存在はともかく「複素数体Cの中に必ず根を

持つ。」というGaussの「代数学の基本定理」があります。

その1根をαとすれば,f(x)=(x-α)f1(x)と因数分解され,

さらに(n-1)次方程式f1(x)=0も根を持つため,n次方程式

f(x)=0は,Cの中にn個の根:α12,..,αnを持つことになり,

結局,多項式f(x)は,f(x)=a(x-α1)(x-α2)・・・(x-αn)

(a≠0)と表わすことができます。

方程式に,解,または根があること=解が存在するということと,

それを求める解法が存在するということは,全くの別問題です。

さて,以下,Lagrange(ラグランジュ)の手法を解説します。

まず1のn乗根を,ζ12,..ζnとします。

そして,順列(1,2,.n)の置換を,σとすると,これは1対1,かつ,

上への写像であり,σ:(1,2,..n)→(σ(1),σ(2),..σ(n))と

表現されます。σ全体の集合は,対称群(置換群)と呼ばれる有限群

をなし,これをSnと表記すれるのが慣例です。

∀σ∈Snに対し,Πσという(α12,.,αn)を置換する写像:

Πσ:(α12,..,αn)→(ασ(1)σ(2),.ασ(n))を定義して,σに

Πσを対応させる写像を考えると,これも全単射であり,この写像

Πσの集合:G={Πσ:σ∈Sも,合成写像を群の積演算として群を

なします。このGは,前述のように,対称群Snと全く同型です。

ここで,uσ=ασ(1)ζ1+ασ(2)ζ2+..+ασ(n)ζnとおきます。

Gの元:Πσの個数は,Snの位数,つまり順列の総数:n!に等しい

ので,Πσの個数,従ってuσの個数もn!個です。

そこで,Snの元σに番号をつけて,σ12,..σk...σn!とし,

先のuσkをukと定義し直すことにします。ただし,σ1は恒等置換

e.または1であるとします。

ところが,uσのn乗:uσnを取るとuσ=ασ(1)ζ1+..+ασ(n)ζn

に,1のn乗根ζk(k=1,2,..,n)を掛けた(ζkσ)も(ζkσ)n

=uσnを満たすので,あるτ∈Snに対して(ζjσ)=nτであり

σn=uτnとなる,σとn個のτの対対応があります。

よって,これらの相異なるnσnの個数は,(n-1)個の順列

の個数と同じ(n-1)!です。

したがって,n次方程式の根を求める方法が。(n-1)次方程式

の根を求める方法に帰着することが,期待されます。

実際,2次方程式f(x)=ax2+bx+c=0(a≠0)では2根

をα,βとすると,1の平方根はζ1=1,ζ2=-1ですから,

1=α+(-1)β,u2=(-1)α+βとして,u12=(α-β)2=u22

です。対称式には.根と係数の関係があってα+β=-b/a,αβ

=c/aですから(α-β)2=(α+β)2-4αβ=(b/a)2-4c/a

=(b2-4ac)/a2なので,D=b2-4acとおけば,α-β=±√D/a

です。これとα+β=-b/aから,α=(-b*√D)/(2a),かつ,

β=(-s-√D)/(2a)が得られました。

3次方程式:f(x)=ax3+bx2+cx+d=0(a≠0)では,

3根をα,β,γ,1の2乗根をζ1=1,ζ2=ω,ζ3=ω2とします。

このとき,ω2+ω+1=0です。

そして,(α,β,γ)の偶置換からu1=α+βω+γω2,

2=γ+αω+βω2=ωu1,u3=β+γω+αω2=ωu2,

奇置換からv1=β+αω+γω2,v2=γ+βω+αω2

=ωv1,v3=α+γω+βω2=ωv2の6=3!個が得られます

しかし,u13=u23=u33,v13=v23=v33=なので3!=6個

のうち,相異なるのは,2!=2個だけになります。

ただしu13=v13の場合もあるようです。

便宜上,u=u1,=α+βω+γω2,v=v1=β+αω+γω2

とおきます。u3+v3=(u+v)3-3uv(u+v)ですが,

まず,u+v=(α+β)(ω+1)+2γω2です。

さらに,方程式が,yを変数とする簡易型のy3+Ay+B=0

であるとします。すると,α+β+γ=0ですからα+β=-γ

より,u+v=3γω2を得ます。

また,uv=(α+βω+γω2)(β+αω+γω2)

=(α2+β2)ω+αβ(ω2+1)+(α+β)γω2+(α+β)γω3

+γ2ω4=(α2+β2+γ2)ω+(αβ+αγ+βγ)(ω2+1)

=(αβ+αγ+βγ)(ω2-2ω+1)=-3Aωを得ます。

結局,u+v=3γω2,かつ,uv=-3Aωです。また,

γは,y3+Ay+B=0の1根ですからγ3+Aγ+B=0

より,γ3=-Aγ-Bです。

それ故,(u+v)3=27γ3=-27(Aγ+B)であり,

3+v3==-27(Aγ+B)+27Aγ=-27Bを得ました。

他方,u33=-27A3です。

故に,u3,v3は,tの2次方程式:t2+27Bt-27A3=0

の2根t=(-27B±√D)/2,ただし,D=272(B2+4A3/27)

です。こうして,u3,v3=(27/2){―B±(B2+4A3/27u)1/2

が得られました。後はCardanoの公式での導出と同じです。

4次方程式:f(x)=ax4+bx3+cx2+dx+e=0

(a≠0),あるいは,簡略化したy4+Ay2+By+C=0でも

4根をα,β,γ,δとし,1の4乗根:1,-1,i,-iを

用いた積和でuk(k=1,2,..24)をつくり,uk4が3!=6個に

なって,3次方程式と2次方程式に帰着するというFerrariに

類似した方法で根の公式が得られるのですが,この面倒な作業

は省略します。昔の学者は根気よくやって成功したらしいです。

ところが,これを5次方程式で実行すると失敗します。

これらの方法では,係数が根の対称式であり,これが対称群Sn

の元に対しては不変という変換性に着目したのが重要です。

結局,S2,S3,S4と,S5の違いが決定的なことでした。

5だけは,他のS2,S3,S4と異なり,正規部分群(交換子群)

を取っていっても,可換群(アーベリ群に帰着せず,途中でこれ

以上小さくできない。という困難に遭遇します。

Qの元:有理数を係数とするn次多項式は分母の公倍数を

掛ければ整数係数になります。(※有理係数の方程式と整数

係数の方程式とは同値です。)

有理係数のモニック多項式をf(x)=xn+a1n-1+..+an,

と書き,f(x)=0のn根をα12,..αnであるとします。

とりあえず,f(x)は,既約多項式とすれば重根は存在せず,

f(x)は,Qでは因数分解できず,既約であるのにも関わらず,,

f(x)=(x-α1)(x-α2)・・・(x-αn)と完全な因数分解

が可能な,Qの拡大体E=Q(α12,..,αn)が存在します。

この体Eをf(x)の分解体といいます。

方程式f(x)=0が「ベキ根で解けるとは.全てのn根の

α12,..,αnが,1の幾つかのベキ乗根ζと,幾つかの有理

係数:a1,a2,..,anのベキ乗根の四則演算式,つまり,有理式

で表わされることを意味すると考えられます。

ところで,f(x)の有理係数:a1,a2,..,anは,それぞれ,

1=-(α1+α2,+..,+αn),a2=α1α2,+..,+αn-1αn,・

・・・・・・,an=(-1)n1α2・・αn-1αn)と,全て根の

対称式で与えられるので.α12,..αnの,群Gの任意の元

の置換写像:Πσに対して常に不変のままです。

このn次対称群Snに同型な群Gは,E=Q(α12,..,αn)

内の自己同型写像の群で,QはGの不変体と見なせます。

(※GはQからEへのガロア拡大に対応するガロア群です。)

有理G数体Qに,まず,ζを,そして係数aj(j=1,2,..n)の

ベキ根:√aj=(aj)1/を1つずつ添加して単純拡大をつくる

のを繰り返して,F1⊂F2⊂F3…と拡大体をつくっていくとき,

これをベキ根による拡大といいます。

これが,有限回の拡大で分解体E=Q(α12,..,αn))を

含んでしまえば,n根:α12,..,αnは,ζたちや(aj)1/たち

の幾つかの四則演算式=有理式(根の公式)で表わされるので

,これを「f(x)=0がベキ根で解ける」と解釈したのがアーベル

やガロアの代数方程式についての着想であったろうと想像します。

そして,QからEへの拡大の.いわゆるガロア群は対称群Sn

同型な自己同型群Gですが,E/Qの各中間体Bのそれぞれに,

Gの正規部分群が1対1に対応するという基本定理があります。

Q=F0⊂F1⊂F2⊂..⊂Frで,最後にF⊃Eなら,ベキ根で

解けるというわけですが.これに群の縮小正規列G=G0⊃G1

⊃G2⊃..⊃Grが対応して,最後にGr={e}となる場合,これ

が,拡大体ではFr=Eに対応するので,群Gを「可解群」と呼ぶ

のでした。

k+1=G~k(=D(Gk):Gkの交換子群)という選択が常に可能

ですから,この縮小正規列は必ず存在しますが,このとき剰余群

(Gk/Gk+1)が体Fkを不変体とするFk+1への拡大のガロア群

であり,これらは全て可換群(アーベル群)なる必要があります。

群の縮小正規列が有限のr個でGr={e}まで収縮して終わる

なら,対応する拡大体がFr=Eとなり,ベキ根による解が可能

なので,Gを可解群と呼ぶわけです。

ところで可換群の交換子群は,{e}ですから,途中Gr-1が可換群

となるなら,元のGは可解群です。

ここらあたりの詳細はシリーズ記事(6)にあります。証明抜き

で定理を羅列しておきます。

※(再掲載);まず,[定理6-4]から,(基本定理)です。

EをFのガロア拡大体とし,その自己同型群をG,つまり,

自己同型写像全体のつくる群をGとする。

E/Fの中間体:Bに対してBを不変にするGの元の全体

のつくる部分群をUとすると,Uの不変体はBである。

そして,BにUを対応させる対応は,E/Fの中間体と,Gの

部分群との間の1対1対応である。

[基本定理の系]::中間体BからEへのF上の同型写像は,

群Gの部分群Uによる剰余類から誘導されるものだけである。

また,BはFのガロア拡大体である。

(※[基本定理]における対応は,Gの部分群に,その不変体を

対応させるものです。Gには,体F,Uには,体B,単位群{e}

には,体Eが対応します。)

※EはBのガロア拡大体ですが,BはFのガロア拡大体とは

限りません。以下では,UがGの正規部分群で(σUσ-1)=U

であることが,UがFを不変体とするBのガロア群であるため

の必要十分条件であることがわかります。

[定理6-5]:体Eは体Fのガロア拡大体あり,Gはガロア群

であるとする。そして,中間体Bに対応するGの部分群を

Uとする。∀σ∈Gに対して(σB)もE/Fの中間体であり,

対応するGの分群は(σUσ-1)である。

さらに,体Bが体Fのガロア拡大体であるための必要十分

条件は,UがGの正規部分群となることである。

このとき,そのガロア群は.(G/U)に同型である。

(再掲載終了※)

※さて,対称群S2,S3,S4は可解群でありn≧5の対称群Sn

は可解群ではないことを示します。

(証明)まず,S2は恒等置換eと互換:(1,2)のみが元で,

元の積は常に可換なので可換群ですから,その交換子群

は,S~2={e}でこれは正規部分群なのでS2⊃{e}が

正規列となり.明らかにS2は可解群です。

次に,交代群Anは,Snの指数2の正規部分群であり,

交換子群S~nに等しいのですが,n=3の交代群A3は,

それ自身可換群です。何故なら,S3の位数は6,A3

位数は3ですじから,その元は恒等置換:e={1,2,3}と

σ={2,3,1},および,σ-1=={3,1,2}だけですから明らかに

可換群で,これも正規列:S3⊃A3⊃{e}を得るので可解群

です。また,n=4のS4についての置換:σ={i,j,kl}

∈S4は,物理学で用いるLevi-Civita(レヴィーチヴィタ)

のテンソル:εijklの非ゼロ成分が,+1のときは偶置換で,

σ∈A4です。他方,εijklが(-1)のとき.σは奇置換です。

しかも,σ∈A4のとき.(1,2)σは奇置換であり,

σ,τ∈A4でσ≠τなら,(1,2)σ≠(1,2)τとなりA4

元の偶置換と1対1に対応します。

それ故,S4/A4={A4,(1,2)A4}です。この商群は.

単位元A4の他には,元が1個なので可換群です。

そもそも,指数が2なら.商群の位数は2で,常に可換群

です。そして,部分群VをV={e,(i,j)(k,l)}(ただし,

i,j,k,lは1~4の異なる数)とおくと,|V|=1+42/2=4

です。Vの元である互換の積の積は,異なる4つの互換の積:

(i1.j1)(k1,l1)×(i2,j2)(k2,l2)ですが,これは互換の

順序に依存しないので可換です。

そして,|A4|=12より,|A4/V|=3で(A4/V)

={V,(1,2,3)V.(2,3,4)V}と書けますが,そもそも位数が

3の部分群は,既述したように単位元と,それ以外の1元と

その逆元だけが全ての元なので,明らかに可換群です。

以上から,対称群S2,S3,S4は可解群でありn≧5

の対称群Snは可解群ではありません。

((↑※これらはガロア理論の復習(2)から抜粋しました。)

以上でn≦4のn次代数方程式はベキ根で解けて,n≧5

のn次代数方程式はベキ根では解けないことが証明された

ことになります。  要するにある正規部分群から先は,

どうあがいても堂々巡りで,対応する体に係数のベキ根を

添加しても.こ,れ以上は拡大できない壁があって分解体E

まで到達できない。というのが,5次以上の代数方程式

を低次の方程式に帰着できない限界なのでした。(終わり)

※※ガロア理論は,代数方程式の可解性がきっかけで展開された

理論ですが,それ以外にも,大きな応用や体系的理論があるようです。

 例えば,1969年,一浪して私が19歳で大学に入った頃久賀道郎著

(日本評論社)「ガロアの夢」という本を興味本位で購入しました。

しかし高校の受験数学しか知らなかった自分には「猫に小判」で

長い間眺めているだけでした。

随分後の2007年心臓手術を受けた頃,斎藤利弥 著

「線形微分方程式とフックス関数I(ポアンカレを読む)」

(河合文化教育研究所)という書物に遭遇し,フックス(Fuchs)関数

フックス群,確定特異点を持つフックス型線型乗微分方程式など

についても本ブログで書きました。

※最後に付録で作図不能問題に言及して終わります。

[定義1]:作図が定規とコンパスによって得られるとは,

次のような処置の有限回の繰り返しによって得られることを

いう。(1)それまでに得られた点の中から2点を取り,それら

を結ぶ直線をつくる。(2)それまでに得られた点の中から2点

を取り,その1点を中心とし,他の1点を通る円をつくる。

(3)それまでに得られた2直線,直線と円,2円の交点をつくる。

※平面上に,直交座標軸とx軸上の単位点Eを定めておき,次に

与えられた幾何図形を表わす線分が,1端を原点Oとして正の

x軸上に取られているとする。それらの線分の端点の座標を,

1,a2,..anとする。その上で,F=Q(a1,a2,..an)とする。

座標が体Fの元であるような点は,全て作図可能です。

[定理1]:座標が体Fの元であるような点から(1)~(3)の

ような作図を進めて到達できる点の座標は,Fの2p次拡大体

の元である。(※2ρとは,単に2のベキ乗を意味します。)

(証明)座標がFの元である2点P1,P2を通る直線の方程式を

つくる。また,そのような点C,Pを取り,Cを中心とするPを

通る円の方程式をつくる。それを,それぞれax+by+c=0,

2+y2+dx+ey+f=0とすると,これらの方程式の係数

は体Fの元です。そして,これらの図形の交点は次の性質を

持ちます。ア)2直線の交点の座標は,やはり,体Fの元です。

(※2直線の方程式の係数(Fの元)の四則演算(有利式)で

表わされるので体Fの元です。)

イ)直線と円の交点の座標は.体Fの元か,または,F上2次の

拡大体の元です。(※高々2次方程式の根です。)

円と円の交点ぼ座標は円と直線の交点に帰着できます。

(※円と円の2交点を結ぶ直線,あるいは2円から(x2+y2)

の項を消去した直線と1円の交点に帰着)

すなわち,(1)~(3)のような作図を有限回行なって到達

できる点の座標は体Fの高々2次拡大体の有限回連続なので

2のベキ乗,つまり,2p次拡大体の元です。(証明終わり)

[例題1]:(角の3等;分の不可能性)

任意の角:αが与えられた場合,a=cosαが与えられたのと

同値です。α=3βならβを作図でつくるのはb­=cosβを作図

するのと同値です。三角関数の3倍角の公式によれば,cosα

=cos(3β)=4cos3β-3cosβです。

つまり,b=cosβは3次方程式4x3-3x-a=0の根です。

例えば,α=π/3ならb=cosβ=cos(π/9)ですが,このとき,

a=cos(π/3)=1/2より,bは,4x3-3x-1/2=0 または,

8x3-6x+1=0の根です。これはF上,つまりQ上では因数分解

不可能な既約多項式ですから,bを根とする上記多項式の分解体

がF(b)=Q(b)を含む場合,これは,F=Qの3次の拡大体です。

そこで,bはQの,2のベキ乗の拡大体に含まれないので作図は

不可能です。(終わり)

[例題2]:(立体倍積問題)

 長さ1の線分から体積が2の立方体の1辺を作図することは

できない。(証明)この立方体の1辺の長さはx3―2=0の根

3√2でありこれをQに添加した体Q(√2)は.Q上3次拡大体

です。よって作図不可能です。(終わり),

[例題3]:(正p多角形の作図)

(解)pを素数とします。長さ1の線分から正p角形の1辺の長さ

を作図することが必要です。複素z平面の適当な原点Oを中心

とする,中心Oからの長さ1の正p角形のp個の頂点は,角度2π

をp等分する点,すなわち,z=exp(2kπi/p)(k=0、1,2,..

(p^1)で与えられ,その実部がx座標で虚部がy座標です。

これらの頂点z=x+yiは,xのp次方程;xp-1=0の根

x=zです。つまり,ζを1のp乗根とするとz=ζです。

特に,z=ζが1の原始p乗根であるとします。

頂点の座標は,Qの拡大体;Q(ζ,i)の元です。

この体はQ(cos(2π/p),sin(2π/p),i)とも書けます。

cos(2π/p),sin(2π/p)が作図できるためにはQ(ζ,i),

従って,作図できるには,Q(ζ)がQ上2のベキ乗次の

拡大体に含まれる必要があります。

ところが.ζの既約多項式は.xp-1+xp-2+..+x+1の

(p-1)次の円周等分多項式ですから,Q(ζ)はQ上(p-1)次

拡大体です。したがって,p-1=2ρ or p==2ρ+1となる場合,

つまり,Mersene(メルセンヌ)数:(2ρ-1)に2を加えた数に

等しい場合のみです。

結局,p==2ρ+1であることが,正p角形を定規とコンパス

で作図可能なための条件です。それ以外のpでは正p角形の

作図は不可能です。p=3,5,17,47,6537,..のときのみに

作図可能です。(終わり) 

ではまたいずれ。。。生きていれば。

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2022年1月20日 (木)

ガロア理論の復習(9)終わり)

※2022年1月16日(日)開始→2022年1月20日(木)

※(余談) 東京大学付近で刺傷事件があったそうです。

不幸な事件ですね。本当のことは本人しか,わからない

ことでしょうから憶測,邪推ですが,人生は受験勉強だけ

じゃない。とよく言われます。

かく云う私も,第2志望とスベリ止めばかりの人生です。

医者になりたい?東大に入りたい?親がすすめる?本当に

自分の意志,希望ですか? 人に限らず生き物は,それぞれ

からの遺伝子のせいで,能力に個体差があるのは仕方ない

ことです。さらに育った環境にも左右されます

大抵は努力すれば,時間かかってもよいなら集中すれば,

ある程度希望はかなうかもしれません。でも若いときは2度

と戻りませんから,今しかないと悲観するのもアリでしょう。

でも健康に生きてれば,捨てたもんじゃないです。寝たきり

の71歳で,酸素吸入中のいつお迎えが来てもオカしくない

老齢の私には,健康で若いだけでもうやましい。

人生をアキラめずに,,ゆっくりと落ち着いて考えて,もう少し

ガンバってみよう。どこかのにいちゃん。

 

さて,,もはや弱毒だが感染力だけは強いオミクロン株.必要以上

に怖がって鼻水くらいでも隔離や入院で,施設も人員もパンク

しそうです。そもそも重い病気で苦しみ死ぬのはまずいと誰しも

思うだろうけど.とにかく感染が増えるのはマズイから阻止しよう

という前提を疑えば,今が大変かどうか?は押してしるべしです。

何をやっても,結局,ウイルスの方が人知より上手だから,感染を

阻止しる努力は,無理,で無駄.だろうが,政治的にアリバイ工作だけ

は必要だというわけせすね。感染すると自分だけじゃなく家族を

含む他人に病気を移すからダメなんだと常識的なふとが述べて

います。1億人以上の日本人全員,イヤ75億の地球人全員が2~3

日ずつ風邪になったとしたら,そんなに人類の危機なんですか?

私のように風邪でも死亡率3割といわれていう病人には。どんな

病気でも,ワクチンの副作用でも命が危険ですがネ。

外国を見れば,もうスグ,ピークから集団免疫で自然に終息しそう

です。ずっと,飲酒を悪物扱いして,また飲食店イジメの連続です。

,流行が下火になってから,テキトーな対策をする。そして,選挙,。

うまくできてるもんだネ。

評論家の三浦瑠璃氏,私嫌いな人なんですが、smanewsの

コロナの券件だけは賛同しています。(余談終わり※)

 

※さて,ガロア理論本題の続きです。

第9章 不可能の証明(代数方程式の根の公式)

[定義9-1]:(アーベル拡大体の定義)

ガロア群が可換群であるようなガロア拡大体を

「アーベル拡大体」という。

[定理9-1];Fを体(複素数体Cの部分体)とする。

ζを1の原始n乗根とし,K=F(ζ)とすると,Kは

Fのアーベル拡大体である。

(証明)Kは原始n乗根ζを含むので,xn-1の根を全て

含みます。何故なら,ζの位数はnでζn­=1であり,定義

により,K=F(ζ)は1,ζ,ζ2..ζn-1が張るF上のn次元

ベクトル空間です。ζn=1より,ζを根とする,KのF上の

既約多項式:p(x)は,p(x)=xn-1+xn-2+..+1です。

故に,xn-1=(x-1)p(x)の根は.全てKに含まれます。

(xn-1)のn個の根は全て相異なりKは(xn-1)の分解体

であるため,KはF上のガロア拡大体です。

σを,KのF上のガロア群:Gの元の自己同型写像とすると,

(σζ)n=σ(ζn)=σ(1)=1ですから(σζ)もまた1の

n乗根です。ζは原始n乗根なのでσζ=ζk(σ)となるk(σ)

が存在します。ここで,τをσとは別のGの自己同型とすると.

τζ=ζk(τ)であり,(στ)(ζ)=σ(ζk(τ))=(σζ)k(τ)

=ζk(σ)k(τ)=ζk(τ)k(σ)=(τσ)(ζ)です。(στ).(τσ)は,

共にGの自己同型写像であり.K=F(ζ)なので,∀α∈Kに

対して,(στ)(α)=(τσ)(α)が成立します。

つまり,Kの上で,恒等的にστ=τσ(可換)です。

したがって,KのF上のガロア群Gが可換群となるため,

Kはアーベル拡大体です。(証明終わり)

[注意1]:特に,素数pについては,1の原始p乗根をζと

すると,1≦k≦(o-1)のときに.kはpと互いに素なので

ζkは全て1の原始p乗根です。

p-1=(x-1)(xp-1+xp-2+..+1)であり.この第2の

因数のxp-1+xp-2+..+1は体Q上の既約多項式です。

これがζの既約多項式なので,Q(ζ)は,Qの(p-1)次

拡大体です。素数pでなく,一般の自然数nでは,1の原始

n乗根ζの既約多項式は,Euler関数をΦ(n)として,φ(n)

次多項式であり,{Q(ζ)/Q}=φ(n)です。

この一般の既約多項式:xn-1+xn-2+..+1を,

「円周等分多項式」といい,Q(ζ)を「円分体」といいます。

[注意2]:円分体の部分体を「円体」といいます。

円体は有理数体:Qのアーベル拡大体です。

(クロネッカー・フェーバーの定理)

[定理9-2]:nを自然数とする。体Fは1のn乗根を全て含む

とする。a∈Fとし,xn=aの1根αをFに添加した体をK

とする。α=n√aと表わすと,K=F(α)=F(n√a)である。

このとき,KはFのアーベル拡大体である。

(証明)(xn-a)の分解体をEとします。(xn-a)は明らかに

分離的です。すなわち,(xn-a)の2根をα,α~とすると

α≠α~です。このとき,αn=a,かつα~n=aより,(α~/α)n

=1であり,ω=(α^/α)は1のn乗根の1つです。

仮定により,ω∈Fで,α~=ωαよりα~∈F(α)です。

よって.K=F(α)が(xn-a)の分解体Eであり,KはF

のガロア拡大体です。

KのF上のガロア群をGとするとき.σ∈Gなら(xn-a)

の根αに対して,(σα)n=σ(αn)=σa=aですから,

(σα)も,αと同様(xn-a)の根です。。

そこで,ζを1の原始n乗根とすると,ζ∈Fであり,

(σα)=ζm(σ)α(0≦m(σ)≦(n-1))と書けます。

τ∈Gについては(τα)=ζm(τ)αです。

これから,前定理の証明と同様に,στ=τσ(可換)を

得ます。故にGは可換群で,K=F(α)はアーベル拡大体

です。(証明終わり)

[系]:ζ∈F,a∈Fのとき,F(n√a)/Fのガロア群は

巡回群である。

証明)α=n√aとおくとαn=aです。

Fのガロア群をGとし,σ∈Gとすると(σα)n=aなので,

σα=ζm(σ)αなる整数でm(α)はnを法として一意的に

定まるので,σ→m(σ)という写像を考えると,これはG

から,{Z/(n)}の上への1対1写像で,Gは{Z/(n)}に

同型です。したがって,Gは位数がnの巡回群です。

(証明終わり)

[定義9-1](巡回拡大体)

ガロア群が巡回群であるガロア拡大体を「巡回拡大体」

という。

※ベキ根による可解性について

[定義9-2]:(ベキ根による拡大体)

体Fの拡大体:KがFのガロア拡大体であり.体の列:

F=F0⊂F1⊂F2⊂..⊂Fr=Kが存在して次の条件が

成立するとき,Kを「ベキ根による拡大体」という。

  • 1=F0(ζ)である。ただし,ζは1の原始n乗根で

ある。(2)∀i(1≦i≦(r-1))に対して,Fi+1=Fii)

と書ける。ただし,αiはxni-ai=0のような方程式の根

である。ここで,ai∈F,ni|nである。

そして上の体の列を,「ベキ根による拡大列」という。

※Fには,1の原始n乗根が含まれているので,Fiには1

の原始ni乗根が含まれています。よって,Fi+1はFi

アーベル拡大体です。

そこで,K/Fのガロア群をGとし,Fiに対応する部分群

をGiとすると,G=G0⊃G1⊃G2⊃..⊃Gr=1のような

部分群の列が得られます。

i+1がFiのガロア拡大体であるための条件は,Gi+1

iの正規部分群であって(Gi/Gi+1)はFi+1/Fiのガロア群

に同型です。Fi+1はFiのアーベル拡大体ですからガロア群

(Gi/Gi+1)は)可換群です。よってGは可解群です。

[定義9-3]:f(x)をFの1次以上の多項式とする。

f(x)が「ベキ根で解ける」とは,f(x)の分解体EがFの

ベキ根による拡大体に含まれることをいう。

[定理9-2]:F上の1次以上の多項式f(x)がベキ根で解ける

ならば,f(x)の分解体:EのF上のガロア群は可解群である。

(証明)EがF上の多項式:f(x)の分解体であるとします。

f(x)=(x-α1)・・・x-αn)(分離的);αi∈Eであって,

E=F(α1,..,αn)であるとします。

[定義9-3]から 体Fの拡大体:EがFのガロア拡大体であり,

体の列:F=F0⊂F1⊂F2⊂..⊂Fr=Kが存在して,次の条件

が成立するとき,Eを「ベキ根による拡大体」といいます。

そして,[定義8-7]から,f(x)をFの1次以上の多項式とする

とき,f(x)が「ベキ根で解ける」とは,f(x)の分解体EがF

のベキ根による拡大体に含まれること,をいいます。

そして,E/Fのガロア群をGとして,GG=G0とおき,体Fの

E=Frまでの拡大中間体体列の,Fiに対応する部分群をGi

すると,G=G0⊃G1⊃G2⊃..⊃Gr=1のような部分群の縮小

する列が得られますが,Fi+1がFiのガロア拡大体であるための

条件は,Gi+1がGiの正規部分群であって,(Gi/Gi+1)がFi+1/Fi

のガロア群に同型である可換群であるときで,このGを「可解群」

と呼ぶことは既に定義として述べました。

したがって,f(x)がべき根で解けるなら分解体Eに対する

ガロア群Gは可解群です。(証明終わり)

[定理9-3]:Fの多項式f(x)の分解体Eは,Fのガロア拡大体

であり,Gをそのガロア群とするとき,E/Fの中間体Kに対応

するGの部分群をNとすると,KはFのガロア拡大体なので,

NはGの正規部分群であり,K/Fのガロア群は.(G/N)に同型

です。そうして,(G/N)も,可解群です。

(証明)このシリーズ「ガロア理論の復習(6)」の[定理6-5]に,

よれば,「体Eが体Fのガロア拡大体でGはガロア群であると

し,E/Fの中間体Bに対応するGの部分群をUとするとき.

∀σ∈Gに対して(σB)もE/Fの中間体であり,対応するG

の部分群は(σUσ-1)である。さらに,体Bが体Fのガロア

拡大体であるための必要十分条件はUがGの正規部分となる

ことである。このとき,B/Fのガロア群は(G/U)に同型で

ある。」とあります。このことは,既に証明済みです。

G→(G/N)の自然な準同型:g→gNを考えると,

(G/N)も可解群です。つまり,Fの拡大列に対応するGの

縮小列:G=G0⊃G1⊃G2⊃..⊃Gr=1に対応して,(G/N)

=(G0/N)⊃(G1/N)⊃(G2/N)⊃..⊃(G//N)=Nが

対応します。,これをG~i=(Gi/N),(G/N)

=G~0⊃G~1⊃G~2⊃..⊃G~r=Nと書くと,G~i+1はG~

iの正規部分群で(G~i/G~i+1)は可換群です。

何故ならgi∈Gi,gi+1∈Giとするとgi-1i+1i∈Gi+1

なので,(giN)-1(gi+1N)(giN)={(gi-1i+1i)N}

∈Gi+1Nであり,(Gi+1/N)は(Gi/N)の正規部分群です。

そして,Gi,G~i=(Gi/N)は可換群ですから,

∀σ,τ∈Giに対して,(σN)(τN)=(στ)N=(τσ)N

=(τN)(σN)です。故に,(σN)G~i+1=(σN){(Gi+1/N)}

ですが,結局,στ=τσであって可換なら,それらの同値類も

全て可換です。それ故,(G~i/G~l+1)も可換群です。

以上から,G~=(G/N)も可解群です。(証明終わり)

[注意3]:n個の変数x1,x2,..,xnの,有理数体Q上

の有理関数体:Q(x1,x2..,xn)をKとする。

Kにおいて,x1,x2..,xnの基本対称式は,次のように

書けます。(※対称式とは変数の如何なる置換によって

も不変な整式であり,それらは基本的な基本対称式と

いう対称式の関数で表わすことができます。)

1=x1+x2.+..+xn,

2=x12+x13+..+xn-1n,

・・・・・・・・・・・・・,

n=x12・・・xn-1nです。

F=Q(s1,s2..,sn)とすると.F内の多項式

f(x)=(x-x1)(x-x2)・・・・(x―xn)

=xn-s1n-1+s2n-2+..+(-1)nnの分解体

が,K=Q(x1,x2..,xn)です。

(※(x1,x2..,xnは全て相異なりf(x)は分離的

であるとしています。)

このとき,K/Fは,明らかにガロア拡大体です。

[定理9-4]:x1,x2..,xnを相異なる根とするQ上

の多項式:f(x)の分解体K=Q(x1,x2..,xn)の,

体:F=Q(s1,sx2..,sn)上のガロア群は,n次の

対称群Snに同型である。

(証明)順列:{1,2,..,n}の任意の置換をσとします。

これは{1,2,.,n}→{σ(i),σ()..σ(n)}なる写像

であり,i≠jなら,σ(i)≠σ(j)の全単射です。

K=Q(x1,x2,..,xn)の元はx1,x2,..xnの有理関数

ですが,これに対して写像Πσを次のように定義します。

すなわち,α∈Kがx1,x2,..xnの有理関数であって,

α(x1,x2,..,xn)なる関数で与えられるとき,これに

対して,Πσ(α)=α(xσ(1),xσ(2),..xσ(n))と定義します。

明らかに,Πσ(α)=α(xσ(1),xσ(2),..xσ(n))も,

(x1,x2,..xn)のQの元を係数とする有理関数であり,

Πσ(α)∈K=F(x1,x2,..xn)です。

次に,ΠσがKの自己同型写像であることを示します。

まず,∀α,β∈Kひ対して,(α±β)(x1,x2,..xn)

=α(x1,x2,..,xn)±β(x1,x2,..,xn)ですから,

Πσ(α±β)=(α±β)(xσ(1),xσ(2),..xσ(n))

=α(xσ(1),xσ(2),..xσ(n))±β(xσ(1),xσ(2),.,xσ(n))

=Πσ(α)±Πσ(β)です。

また,(αβ)(x1,x2,..xn)=α(x1,x2,..xn)

β(x1,x2,..,xn)より,Πσ(αβ)=Πσ(α)Πσ(β)の成立

も自明です。故に,Πσは,環準同型(加法,乗法で準同型)です。

しかも,σ,τ∈Snに対して,σ≠τならΠσ≠Πτ,であり

G={Πσ:σ∈Sn}では,∀Πσ∈Gに対して必ず,対応する

σ∈Snが存在するのでSnからGへの写像:σ→Πσは全単射

ですから,GとSnは同型:G~Snです。そして,このときKの

自己同型群Gの不変体は,F=Q(s1,s2,..,sn)であることが

わかります。

何故なら,まず対称式s1,s2,..,snは明らかに任意のGの元

Πσで不変です。そこで.体FはGで不変ですから,Gの不変体

をF~とすると,F~⊃Fです。

それ故,(K/F)≧(K/F~)=|G|=|Sn|=n!です。

ところが,KはFのn次多項式の分解体ですから,

(K/F)=n!です。

何故なら,x1,x2..,xnがf(x)のn個の根であるとき

n=F,Fi=F(xi+1,xi+2..,xn)=Fi+1(xi+1)とおけば,

F=Fn⊂Fn-1⊂...⊂F1⊂F0=Kです。

そこで,(Fi-1/Fi)≦iならば,(K/F)=(F0/F1)(F1/F2)

・・・(Fn-1/Fn)≦n!です。

そのためには,Fi-1はFiにxiを添加して得られる拡大体

なので,体Fiに係数を持ち.次数が高々iのxiを根とする

(既約)多項式を見出せばよいことになります。

そこで,fi(x)=(x-x1)(x-x2)..(x-xi),..,

n(x)=f(x)とおけば,fi(x)はxのi次の多項式で最高次

の係数は1であり,他の係数は,F=Q(s1,s2..,sn )の元である

:1,s2..,snと,Fi=F(i+1,xi+2..,xn)の元:i+1,xi+2..,xn

のみの関数で与えられます。例えば,fi(x)のxの係数は,

-(x1+x2+..+xi)=-s1+(xi+1+xi+2+..+xn)です。

2の係数は,(x12+..xi-1i)ですが,これもFの元s2

i=F(i+1,xi+2..,xn)の元:i+1,xi+2..,xnで表わされる

はずです。しかも,明らかにfi(xi)=0です。

故に,確かに(Fi-1/Fi)≦iが成立します。

したがって,(K/F)=(K/F~)=n!となるため,F~=F

です。つまり,FがGの不変体で,K/Fのガロア群は対称群

nに同型です。(証明終わり)

 

[基本定理]:n≧5のn次多項式は,べき根で解けない。

(証明)F=Q(s1,s2..,sn)上の多項式f(x)がベキ根で解ける

ならf(x)の分解体E=F(x1,x2..,xn)のガロア群Gに同型な

対称群Snが可解群であることが必要です。

ところがSnはn≧5のときは可解群でないので5次以上の

代数方程式はベキ根では解けません。

※これの詳細証明については「ガロア理論の復習(2)」で群論

のトピックとして,特に代数方程式の可解性を意識することなく,

既に,可解群や対称群について詳細に論じることでて証明されて

います。そこで必要部分を再掲載して以下の証明に代えます。

(※再掲記事:抜粋開始):第2章 可解群

体の拡大列に自己同型群の縮小する正規列が対応し,それが

代数方程式の係数を置換する対称群に関わるというのは,,随分

と先のトピックであり,環や体の説明の後に記述するのが理論

構成の本来の順序であると思いますが,,一応,群についての全て

の話だけを,予めまとめて書いたらしい私の過去ノートに従う

ことにします。

[定義2-1]:(可解群の定義):群Gが与えられたとき,まずG0

0=Gとおいて,k=0,1,2,,に対し,Gk+1をGkの正規部分群

とする縮小する列として,G=G0⊃G1⊃..⊃G⊃Gk+1⊃...

をつくるとき,商群(Gk/Gk+1)が全て可換群(アーベル群)となる

正規列が,有限のm個でGm={e}となって終わるなら,自己同型群

Gを「可解群」という。

※交換子群を用いてGk+1=G~とすることもできます。

(ただし,交換子群:G~はD(G)とも書かれ,∀x,y∈Gに対し.

その交換子:(xyx-1-1)を含む最小の正規部分群のことです。)

それ故,どんな群Gでも正規列を作ることは可能ですが,それ

が有限個で{e},または{1}に収束するかどうか?は定かでは

ないです。{e}に収束しない群Gを「非可解群」という。

(※縮小正規列の途中でGが可換群(アーベル群)となるなら,

G~k={e}なので,Gk+1={e}と置けば,その時点で可解群

であることが判明します。)

[定義2-2]:(部分群の指数の定義)

群Gの部分群Hの指数とは,Hによる(左右)剰余類の個数の

ことです。これを|G:H|と表記します。

[定理2-1](ラグランジュ(Lagrange)の定理):

Gが有限群で,Hがその部分群であれば,指数:|G:H|

=|G|/|H|である。

(証明)前に記述したように,Hによる左剰余類の場合

なら,G=ΣaHのように,Gは互いに素な剰余類の

直和で表わせます。

そして,剰余類(aH)の元の個数は全てHの位数

|H|に等しいため,|G|=|G:H|・|H|です。

故に|G:H|=|G|/|H|を得ます。(証明終わり)

[定義2-3]:(対称群(置換群)の定義):

n個の整数の列{1,2..n}の順序を交換する写像,

σ:{1,2,..n}→{p1,p2,..pn}(順列)を,n次の置換

と呼び,Snを全てのn次の置換を元とする集合とすれば

これは置換の積について群をなし,これを対称群(置換群)

という。※ただし,置換の積とは,合成写像を意味します。

つまり,σ:{1,2..n}→{p1,p2,..pn}と,τ:{1,,2,.n}

→{q1,q2,..qn}なる元(写像):σ,τ∈Snの積は,写像

σ:i→pi=σ(i)と,写像τ:i→qi­=τ(i)を,この順に

適用して合成すると,合成写像:(τσ)(i)=τ(σ(i))

=τ(pi)となりますが,線形代数学では,これを

置換σと置換τの積:(στ)と定義するのが慣例です。

置換操作は可換ではないので,定義での操作順序

の規約は,参考書によっては演算の順序が逆のモノ

もあり,誤解すると混乱の種になるので注意が必要

です。

そして,実際,この積演算はSnの中で閉じており

整数列の順序を全く変化させない写像:e(i)=i,

つまり,e:{1,2..n}→{1,2,n}を恒等置換と呼べば

これが積演算の単位元となります。

そして,σの逆元σ-1は,これを逆写像:σ-1:p→i,

つまり,σ-1:{p1,p2,..pn}→{1,2..n}で与えれば,

(σσ-1)=(σ-1σ)=eとなるので,その存在は明らかです。

また,群であるために必要な積演算の結合則は,積演算

が合成写像ですから,結合則の成立も自明でSnは確かに

有限群をなすことがわかります。

[定義2-4]:(互換の定義):特にn個の列{1,2..n}のうち.

成分iだけを,j≠iなるjと交換して,それ以外の成分

は不変のままの置換を,(i,j)と書いて「互換」と呼び

ます。このとき,互換も1つの置換ですから,もちろん

∀(i,j)∈Snです。

※線形代数学によれば,任意の置換σ∈Snは有限個の

互換の積で表わすことができます。

そうして,その因子分解は,個々のσに対し一意には

決まらないのですが.1つの置換の因子分解の因子の総数

が奇数であるか,偶数であるか?は,一意的に決まります。

そこで,奇数個の互換の積で表わせる置換を奇置換と

いい,偶数個の互換の積で表わせる置換を偶置換といいます。

nの置換の総数,つまり,位数|Sn|は,順列の総数に

等しいので|Sn|=nn=n!ですが,奇置換に左からでも

右からでも互換を1つ掛けると偶置換になり,逆に,

偶置換に互換を1つ掛けると奇置換になるので1対1

の対応があり,結局,奇置換と偶置換の個数は同じです。

故に,それぞれ,(n!/2)個ずつ,あるはずです。

しかし,積演算の単位元である恒等置換eは,偶置換

ですから,それを含む偶置換の集合だけがSnの部分群

をなし,ます。これをn次の交代群と呼び,Anと表記

します。

[定理2-2]:交代群AnはSnの交換子群:S~nであり,

それ故,Snの正規部分群である。

(証明)σ,τ⊂∈Sのとき.交換子:στσ-1τ-1

つくると,σが奇置換ならσ-1も奇置換,σが偶置換

ならσ-1も偶置換で,τとτ-1についても同様です。

それ故,交換子:στσ-1τ-1は常に偶置換です。

故に交換子で生成される交換子群:S~nは交代群

nに一致しており,既述の定理によって正規部分群

です。(証明終わり)

[定理2-3]:対称群S2,S3,S4は可解群でありn≧5

の対称群Snは可解群ではない。(非可解群である。)

(証明)S2は恒等置換:eと互換:(1,2)のみが元で,

積は常に可換なので可換群ですから,その交換子群

は,S~2={e}でこれは正規部分群なのでS2⊃{e}

が正規列となり.明らかに可解群です。

次に,交代群Anは,Snの指数が2の正規部分群

ですが,n=3のA3は,それ自身可換群です。

何故なら,S3の位数は6,A3の位数は3で,その

元は恒等置換:e={1,2,3}とσ={2,3,1},および,

σ-1=={3,1,2}だけですから明らかに可換群であり,

正規列:S3⊃A3⊃{e}を得るので可解です。

n=4のS4についてはσ={i,j,kl}∈S4

は,物理で用いるLevi-Civitaテンソルの非ゼロ

成分のεijklが+1のとき偶置換で,σ∈A4です、,

他方,εijklが(-1)のとき.σは奇置換です。

しかも,σ∈A4のとき.(1,2)σは奇置換であり

σ,τ∈A4でσ≠τなら,(1,2)σ≠(1,2)τとなり

1対1に対応します。

それ故,S4/A4={A4,(1,2)A4}です。この商群

は単位元A4の他には元が1個なので可換群です。

そもそも指数が2なら.商群の位数は2で,常に可換群

です。そしてVをV={e,(i,j)(k,l)}(ただし,

i,j,k,lは1~4の異なる数)とおくと,|V|

=1+42/2=4です。Vの元である互換の積の積

は,異なる4つの互換の積:(i1.j1)(k1,l1)

×(i2,j2)(k2,l2)ですが,これは互換の順序に

依らないので可換です。

そして,|A4|=12より,|A4/V|=3で(A4/V)

={V,(1,2,3)V.(2,3,4)V}と書けますが,そもそも

位数が3の部分群は,単位元と,それ以外の1つの元

とその逆元だけが全ての元なので,明らかに可換群です。

以上から,S4⊃A4⊃V⊃{e}という正規列が得られ,,

4が可解群であることが示されました。

次に,n≧5のSnを考えます。Snの部分群で長さ

が3の巡回置換を全て含むものをGとします。

このときNがGの正規部分群ならNもまた,

長さ3の巡回置換を全て含むことを示します。

n≧5なので,i,j,k,r,sを1からnまでの

うちの相異なる5文字とします。

そして,σ=(i,j,s),τ=(k,r,s)とすると

仮定により,σ,τ∈Gです。このとき,その交換子

は,στσ-1τ-1=(i,j,s)(k,r,s)(s,j,i)

×(s,r,k)=(r,j,s)となります。

何故なら,(i,j,s)(s,k,r)=(i,j,k,r,s)

で,(j.i,s)(r,k,s)=(j,i,r,k.s)です

から,積はi→i,j→s,k→k,r→j,s→r

となるため,(r,j,s)と書けて,これは長さ3の

巡回置換です。交換子群は.最小の正規部分群です

から,NがGの正規部分群なら(r,j,s)∈Nですが

r,i,sは任意なのでNも全ての長さ3の巡回置換

を含むことがわかりました。

それ故.もしもSnが可解群であるなら,

n⊃S(1)⊃..⊃S(r)={e}となる正規列がある

はずですが,そうすると最後の正規部分群:|e}も

長さ3の巡回置換を全て含むべきなので,これは矛盾

です。したがって,n≧5のSnは非可解群です。

(証明終わり)(※再掲載記事終了)

以上でn≦4のn次代数方程式はベキ根で解けて,

n≧5のn次代数方程式はベキ根では解けないことが

証明されました。

※一応,1994年の私のノートから初期の目的は終わりました。

このシリーズは終わりです。しかし,書き残したことで続く

かもしれません。

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2022年1月17日 (月)

ガロア理論の復習(8)

※2021年12月13日(月)開始→2022年1月16日(日)

遅ればせながら,明けおめ,ことよろ。。

来月の2月1日には,生きていれば72歳になる予定です・

※(余談) 12月13日月曜夕方から,何故か血中酸素濃度

が90以下まで下がり,酸素吸入のお世話になっています。

飲食物,薬はお金さえあれば何とかなるけれど酸素不足

は自分の力じゃどうしようもないです。酸素業者のお世話

になっています。4.0リットル/分の吸入で何とかなってます。

最近.流行のオミクロンでは酸素吸入(中等症)も肺炎も少ない

なので,私のはコロナじゃないだろうし.弱毒化した

ウィルス感染に,政府,自治体,マスコミ,御用学者は過剰

防衛と思えるピントハズレな対策が続いていると見えます

ね。有害でない大腸菌のようなもものの感染ならいくら

体内に増加しても大丈夫ですね

さて酸素吸入器が取れないまま,年が明けてしまいました。

新年の挨拶も余裕なく,よく呼吸困難になりますが発熱も

肺炎もなくブログもたまに書くと疲れます。少しずつ

起きて書いても,すぐ疲れてキリがなく,この話題は何とか

終わりそうなのですが長いので分割します。(余談終わり※)

※ガロア理論の本題の続きです。

第8章 有限体について

※1のn乗根について

[補助定理1]:可換群Gにおいて,a,b∈Gの位数がm,n

のとき,m,nの最小公倍数をkとすると,Gの中には位数

がkの元:c∈Gが存在する。

(証明)(m,n)=1なら,k=mnであり,c=abと

すれば,このcが求める位数がkのGの元です。

何故なら,ck=ak=1は明らかでありlがcの位数

であるとすると,lはcl=1となる最小の正整数です。

もしも,l<kならk=lq+r(0≦r<l)で,c=1.

lq=1ですから,cr=1によりr=0が必要です。よって

k=lqであり,lはk=mnの約数です。

ll=1よりal=b-lですが,(b-l)n­=(1/bn)l=1

なので,aln=1です。mがa=1となる最小の正整数

であったので,m/(ln)であり.m/l,またはm/nです

が,これらは(m,n)=1に矛盾します。故に,c=abの

位数は,l=k=mnです。

一般の場合,m,nを素因数分解してm=p1e12e2・・・

ses,かつ,n=p1f12ef2・・・psfsとします。

このとき,位数が,piei,pifi(i=1,2,..s)の元が存在します。

何故なら,m=pqと因数分解できるとき,a=1ですから

(a)p=1となり,(a)は位数がpの元となるからです。

a=pqと同様,b=pqの場合も同様です。

そこで,gi=(ei,fi)としてdi=pigi(i=1,2,..s)と

おけば,k=d12..dsは,m,nの最小公倍数です。

そして,位数がdi=pigi(i=1,2,..s)の元が存在します。

iを位数がdiの元として,c=a12・・asとすれば,

cがkを位数とするGの元です。(証明終わり)

[補助定理2]:有限可換群Gにおいて,元の位数の最大値を

kとすると,任意の元の位数はkの約数である。

(証明)群Gの元の位数の最大値をkとします。

a∈Gの位数mがkの約数でないなら,kとmの最小公倍数は

kより大きく,[補助定理1]より,これを位数とする元が存在

しますが,これはkがGの元の位数の最大値であるという仮定

に反します。故にmはkの約数です。(証明終わり)

[定理8-1](可換)体Fの乗法群F×の有限部分群Sは巡回群

である。

(証明)|S|=nとし,Sの任意元の位数の最大値をrとすると,

∀x∈Sは,xr-1=0を満たします。

しかし,この方程式はFの中でr個より多くの解を持つこと

ができないので,n≦rです。

一方,rはnの約数なのでr≦nですから,結局r=nです。

つまり,Sは位数がnの巡回群です。(証明終わり)

[定義8-1]:(1のn乗根)

nを正の整数とする。体Fの元αがαn=1を満たすとき,

αを「1のn乗根」という。

体Fの有限乗法部分群Sの位数がnのとき,Sの元は全て1

のn乗根である。巡回群Sの生成要素の数は,Eulerの関数

Φ(n)で与えられるが,これら生成元を「1の原始n乗根」

という。

※位数が,丁度nである,S=<ε>={1,ε,ε2,..,εn-1}の元

が存在して,εkが1の原始n乗根であるためには,(k,n)=1

なることが必要十分です。

何故なら,εn=1より,(εk)n=1ですが,もしも(εk)q=1なら,

n|(kq)であり,(k,n)=1の場合,n|qより,q≧nです。

そこで,nがqの最小正整数なので,これがεkの位数です。

逆に,(k,n)=d>1なら,k=k1d,n=n1dと書けて,

εk=(εk1)d=1より,(εk)n1=1でn1<nですから,位数は

nより,小さいことになるから矛盾です。

nが素数pのとき,φ(p)=p-1です。

何故なら,n=p(素数)なら,「Fermatの小定理」によって,

εp-1=1であり,kが(p-1)と互いに素であるSの元εkは,

k=0,1,2,p-2に対応する(p-1)個であるからです。

[定義8-2]:(有限体の定義)

体Fの元が有限個数のとき,Fを有限体という。

[定理8-2]:Fの乗法群としての単位元を1とする。このとき

Fを加法群として見たときの1の位数をpとするとpは素数

である。

(証明)p=qrと因数分解できてq>1,r>1とすると,q<p,

r<pです。ところが,p・1=(qr)・1=(q・1)(r・1)=0

なので(q・1)=0,または,(r・1)=0です。

これは,1の位数がpであるという仮定に矛盾します。

故にpは素数です。(証明終わり)

[定義8-3]:(標数の定義)

有限体Fの乗法の単位元1の位数である素数pを「体Fの標数」

という。

[定理8-4]n∈Zに,(n・1)∈Fを対応させるとZからFの中

への環準同型写像が得られ,標数がpなので,核はイデアル(p)

である。よって準同型定理から,Fは体Z/(p)に同型な部分体Fp

を持つ。このFpをFの「素体」という。

Fの元1+1を2,1+1+..+1(n個)をnと表わすことに

すると,p=0であり.Fp={0,1,2,..p-1}である。(証明略)

[系1]:標数がpの有限体Fでは∀a∈Fに対してpa=0である。

(証明)pa=a+a+..+a=1・a+1・a+..+1・a

=(1+1+..+1)・a=(p1)・a=0 (終わり)

[系2];Fを標数がpの有限体とする。∀a,b∈Fに対して

(1)(a+b)p=ap+bp.(2)ap=bp⇔a=b(証明略)

[定理8-5]有限体Fの標数をp,Fp上の次数をfとすると,

Fの大きさはq=pfである。さらに,Fの乗法群F×は,

位数:(q-1)=(pf-1)の巡回群である。

(証明)FはFp上f次元なので,Fの元ω12...ωf

存在して,∀α∈Fは,α=x1ω1+x2ω2+..+xfωf

(xi∈Fp)と一意的に表わされます。

そしてxiの取り方はp通りあるので,αの取り方,つまり,

Fの大きさはq=pfです。

×はFの中で有限可換群ですから[補助定理1]により巡回群

であり,位数は(q-1)=(pf-1)です。(証明終わり)

※有限体Fの元は0,1,ζ,ζ2,..ζq-2です。(ζq-1=1)

[例8-1]p=2のときFはF2の2次拡大体で,F×は位数が3

の巡回群です。F×=の元はx=ζ,ζ2,1であって,x3=1を

満足します。x3-1=(x-1)(x2+x+1)より,ζ,ζ2は,

2+x+1=0の根で,F={0,1,ζ,ζ2}です。(終わり)

※有限体の拡大体

[定理8-6]:有限体Eが部分体Fのn次の拡大のとき,Fの

大きさをqとすると,Eの大きさはqnである。Eの乗法群

×は位数が(qn-1)の巡回群である。

(証明)EのF上の基底をω12,..ωnとします。

すると,∀α∈Eは,α=x1ω1+x2ω2+..+xnωn

(xi∈F)と表わされます。|F|=qよりxiの取り方

はq通りあるため,Eの大きさ|E|はqnです。

×は体Eの中の有限群なので,巡回群であり,位数は

(qn―1)です。()証明終わり)

[系]:有限体Eは,その部分体F上,E=F(ζ)のように,

Fにただ1つの元ζを添加して得られる。よって有限体の

場合も,有限次拡大体は単純拡大体である。

(証明)巡回群E×の生成元をζとすれば,q=|E|のとき

r=0,1,2,..q-2に対して,ζr∈F(ζ)なのでE×⊂F(ζ)

であり,0∈F(ζ)よりE⊂F(ζ)です。

一方,0.1.ζ,ζ2,..,ζq-1のつくる体はF(ζ)を含むので

E=F(ζ)です。(証明終わり)

[定理8-7]:有限体EがFのn次の拡大のとき,EはFの

ガロア拡大体(正規拡大体)である。

Fの大きさをqとするとき,σ:α→αq(α∈E)は,Eの

F上の自己同型写像であり,EのF上のガロア群Gは,

G={ε,σ,σ2,..,σn-1}(εは恒等写像)であり,σを生成元

とする巡回群である。

(証明)E(したがってF)の標数をpとすると,q=pnです

から,∀α,β∈Eに対して,(α±β)=αq±βqです。

何故なら,(α±β)p2={(α±β)p}p etc.です。

同様に,(αβ)q=αqβqです。

したがって,σ(α±β)=σα±σβ,σ(αβ)

=(σα)(σβ)であり,σは自己同型写像です。

また,a∈Eに対して.σa=a,つまり.aq=aとなる

のは,aがxq=x,つまりx(xq-1-1)=0を満たすことを

意味します。こうしたEの元:x=aの個数は高々q個です。

ところが,Fの元はq個あって,F×は位数(q-1)の巡回群

ですから,∀x∈F×はxq-1=1を満たし,x=0もxq=xを

満たすため,aq=aを満たす元a∈Eは.Fのq個の元に一致

します。したがって,巡回群:<σ>の不変体がFです。

さらに,σの位数をmとするとき,σm=εですから.E×

生成元をζとすると,σmζ=εζ=ζ,つまり,ζqm=ζ,or

ζqm-1=1ですが,EはFのn次拡大体なので,Eの大きさは

nでE×は位数が(qn-1)の巡回群ですから,ζの位数は

(qn-1)です。よって(qn-1)≦(qm-1)より,n≦mです。

一方,<σ>={ε,σ,σ2,..σm-1}の不変体がFなので,

m=|<σ>|=(E/F)ですから,結局,m=nです。

以上から,Eは位数がnの巡回群G=<σ>を,F上の

ガロア群とする,Fのガロア拡大体となります。(証明終わり)

[定理8-8]:与有限体Fと,与自然数nに対して,F上n次の

拡大体が存在する。

(証明)Fの大きさをqとするとき,F上の多項式(xqn―x)の

分解体をEとして(E/F)=nを示します。(E/F)≠nならE

の大きさがqnではないので,Eの大きさがqnなら(E/F)=n

です。ところが,αがxqn―x=0の根ならαqn=αなので,

qn―x=(xqn-αqn)―(x-α)

=(x-α)|(xqn-1+xqn-2α+..+xαqn-2+αqn-1)-1}ですが

x=αを最右辺の第2因数に代入,すると,qnαqn-1-1となり

qは標数pのベキですから,これは(-1)となりゼロでないです。

よって,(xqn-x)は重根を持たず,根の数はqnです。この根

の全体集合をE~とします。

α,β∈E~とするとαqn=α,βqn=βより(α±β)qn

=αqn±βqn=α±β,かつ,(αβ)qn=αβなので(α±β)⊂E~,

つ,αβ∈E~であり,さらに,α≠0のとき,(α-1)qn=(αqn)-1=α-1

より,α-1∈E~です。したがって,E~は体(Eの部分体)をなします。

ところで.Fの元aはaq=aを満たすので,(aq)q=aを満たし,

qn=aです。故に,F⊂E~⊂Eです。すなわち,E~はE/Fの

中間体です。一方,Eは,E~とFを含む最小の体ですから

E⊂E~です。以上からE~=EでEの大きさはqnです。

故に,(E/F)=nです。(証明終わり)

[系]:pを素数とする。任意の自然数fに対して大きさが

fの有限体が存在する。

(証明)体:Z/(p)のf次の拡大体をつくればいいです。

(※Z/(p)は標数pの有限体です・)(証明終わり)

途中ですが,長いのでもう少しですが,ここで中断して

残念ながら先送りします。(つづく)

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2021年12月13日 (月)

ガロア理論の復習(7)

2021年12月3日(金)開始→12月13日(月)

※(余談)1941年(昭和16年)12脱8日は,日本軍

のハワイ真珠湾の奇襲攻撃で,アメリカとの戦争

が始まった日でした。もう80年も前ですか?風化

はしないんだろうなぁ。昔,DVDで「トラトラトラ」

という日米合作映画を見たら,アメリカの情報部は

全て知っていて放置したらしいです。

2001年9月11日のニューヨーク貿易センター

ビルへのテロ事件も「華氏911」という映画では,

政府上層部は,事前にわかっていて防ぐことを

しなかったたらしいし,戦争したい米上層部とか

死の商人たちは,その正当防衛とか報復とかの

口実ためには,多数の国民の命の犠牲など,何

とも思ってないらしい。と感じました。

映画はフォクションかもしれないですけどね。

まあ,火のないところに煙は立たず,とも言います。

さて,9月末頃には日本での「コロナ自然消滅仮設」

の記事をブログに書きました。ネットにはフ,ェイク

やデマが氾濫していて,取捨選択せずに鵜呑みにする

と危険なことは承知なのですが,楽観的見方として,

「オミクロン=Xマスプレゼント説」というものが

ありました。コロナ変種のオミクロン株は,あまり

にも大きい突然変異,言い換えると,大きなコピー

ミスの結果であり,不安定で感染力はデルタより

はるかに強いけれど,今のところデータでは症状

は無症状か軽症で,高々風邪の発熱やセキと同じ

程度で酸素吸入も不要で重症化率もごく低いと

いうので,この「善玉ウイルス」が「悪玉デルタ株」

を駆逐し去って,コロナも終焉を迎えるのでは?

と,無責任なアウトアサイダーの私は,淡い期待を

抱いています。(※オミクロン無害説)

何でもかんでも感染したら入院だと,ただの風邪

でも医療はパンクするのでしょうがね。

さて,命の残り時間が少ない私は,何事にもアセリを

感じています。所詮,無駄な抵抗ですが。。。

今日(12/12)は,何故か頭痛,と消化不良か?嘔吐,下痢

の連続で本稿アップも日を超えてしまいました。もう

長くはないなぁ。。(余談終わり※)

※さて,ガロア理論の本題の続きです。

第7章 複素数体Cの部分体

※本章ではすべての体は,複素数体Cの部分体と

します。何故,複素数体の部分体に限定するか?

というと,今の古典的なガロアの代数方程式の

可解性の理論では重要とは思われない?体の

「標数」という概念があるからです。標数は後述

の有限体に対して定義される素数であり,複素数体

のような無限体では,標数はゼロと規定されています

が,標数がゼロでない場合,以下の,体に対する定理が

成立しないこともあります。

※既約多項式の分離性

[定義7-1](導関数の定義)

体F上のn次多項式:

f(x)=ann+an-1n-1...+a0

(0≦j≦nのjについてaj∈F,かつ,an≠0)

の導関数:f’(x)を次のように定義する。

f’(x)=nann-1+(n-1)an-1n-2..+a1

[定理7-1]:f(x),g(x)をF上の多項式とすると,

その和:(fLg)(x),積:(fg)(x)=f(x)g(x)

の導関数は次の性質を有する。

すなわち,

(1){f(x)+g(x)}’=f’(x)+g’(x),

(2){f(x)g(x)}’=f’(x)g(x)+f(x)g’(x)

である。

(証明)この命題の成立は,明らかで証明は簡単なので,

省略します。(終わり)

[定理7-2]:f(x)が体F上の1次以上の多項式である

場合,代数数方程式:f(x)=0が重根を持つための必要

十分条件はf(x)とf’(x)の最大公約数(最大公約式)

が1次以上の多項式になることである。

(証明)体Fに対して,f(x)∈F[x]とする。

f(x)=0が根(解)を持つとき,体K=F(α)の上では,

f(x)=(x-α)kg(x)(k≧1,g(α)≠0)と書けます。

これを,K[x]の多項式(係数にαを含む多項式)と

して,その導関数をとると,

f’(x)=k(x-α)k-1g(x)+(x-α)kg’(x)

となります。

故に,αがf(x)=0の重根で,k≧2であるためには,

f’(x)が(x-α)の1次以上の因数を持つことが必要

十分条件です。つまり,f(x)とf’(x)がK=F(α)

において.1次以上の公約数として(x-α)を持つこと

が,f(x)=0が重根αを持つために必要,かつ,十分な

条件です。(証明終わり)

[系]:f(x)∈F(x)がFで既約な多項式であるときは,

f(x)=0は重根を持たない。

(証明)f(x)が体Fの上で既約多項式であるのに重根:

αを持つと仮定します。[定理7-1]によれば,f(x)=0

が重根αを持てばf(x)とf’(x)がある共通根αを持ち,

f(x)は既約なので,体Fでは因数を持やないが,体F(α)

では1次因子(x-α)を持ち,これは.f’(x)と共通の

因子となります。

ここでdegf(x)=nとするとdegf’(x)=(n-1)<n

ですから,F内でf(x)をf‘(x)で割って商をq(x),余り

をr(x)とすると,f(x)=f’(x)q(x)+r(x);

ただし,degr(x)≦(n-2),と表わすことができます。

このとき,もしもr(x)≡0ならf(x)=f’(x)q(x)

となって,「(x)はF上で可約となり,Fで既約という仮定

に反します。故に,剰余;r(x)は(n-2)次以下の恒等的には

ゼロでない多項式ですがf(α)=f’(α)=0なのでr(α)=0

であり,r(x)も,F(α)において1次因子(x-α)を持ちます。

さらに,f’(x)をr(x)で除してf’(x)=r(x)q1(x)

+r1(x)(degr1(x)≦(n-3))と,剰余:r1(x)を求め,次に,

r(x)=r1(x)q2(x)+r2(x)..と除法の操作を繰り返す

「ユークリッドの互除法」でr(x),r1(x),r2(x)…と剰余

の次数を1ずつ下げていく列をつくると,結局最後はに剰余が

がゼロとなる場合もありこのときはf(x)のFでの既約性に

反します。一方,もしも剰余がゼロにならない場合,最後には

剰余はxの1次式となり,それがf(x),f’(x)の最大公約数

であり,(x-α)の定数倍に一致するはずですが,剰余の列:

r(x),r1(x),r2(x),..は,全てF[x]の元なので,最後

の(x-α)の定数倍もFの多項式となり,やはり,f(x)が

F上で既約多項式であるという仮定に矛盾します。

したがって,f(x)がF上で既約多項式ならf(x)=0

は重根を持たない,ことが示されました。(証明終わり)

※ガロア拡大体の条件

[定理7-2]:体Eを体Fのガロア拡大体とする。α∈E

のF上の既約多項式は,Eにおいて1次因数の積に分解

される。

(証明)αにガロア群Gの元(自己同型)を施して得られる

像のうち,異なるものの全体を,α12,..,αr,(α1=α)

とし,p(x)=(x-α1)(x-α2)・・(x-αr)とします。

このとき,∀σ∈Gに対し,σ(α1),σ(α2),//σ(αr)は

全て相異なります。r=|G|です。

何故なら,σ(αi)=σ(αj)であれば,両辺にσ-1を施すと,

αi=αjを得るからです。

しかも,これらはGの元によるαの像ですから,最大r個

から成るα1,…αrの1つの順列(置換)を与えます。

一方,p(x)はp(α)=0を満たすFの多項式なので,その

係数は,Gの不変体Fの元であり,σを施しても不変です。

そして,p(α)=0ですからp(x)=0はαを根に持ちます。

ここで,f(x)をf(α)=0を満たす任意のF内の多項式と

すると,∀σ∈Gに対し,σ{f(α)}=f{σ(α)}=0です。

つまり。σ(α)もf(x)=0の根となります。

各々のσ∈Gに対してσ(α)は,相異なるp(x)=0のr個

の根:α12,..,αr,のどれかに一致するため,f(x)はp(x)

の根を全て含むことになります。

それ故,f(x)はp(x)を因数として持ち,f(x)∈(p(x))

です。つまり,J={f(x)∈F[x];f(α)=0}}とするとき,

Jは,p(x)を最大公約数とするイデアルで,J=(@(x))です。

何故ならf(x)が可約でf(z)=p1(x)p2(x)とFの多項式

の積に因数分解できるとき,αがf,(x)=0のの根でf(α)=0

となるのは,p1(α)=0でp1(x)∈(p(x))であるか,p2(α)=0

でp2(x)∈(p(x))のいずれか,または両方であることを

意味し,p(x)は既約なので最大公約因子です。

つまり,f(x)∈(p(x))です。

p(x)はF上既約多項式なので重根を持たず,単根として

α12,..αrを持ち,しかも,これら以外には根を持ちません。

したがって,p(x)=an(x-α1)(x-α2)・・(x-αr),

(an∈F,an≠0)と書けます。(証明終わり)

[定義7-2](分解体):体F上の多項式f(x)が,拡大体K上

の1次因子の積に分解されるとする。

すなわち,f(x)=an(x-α1)(x-α2)・・(x-αN)

とする。このとき,Fの拡大体:F(α12,..,αn)をf(x)

の「分解体」という。,

[定理7-3];EがFのガロア拡大体ならば,EはF内のある

多項式の分解体となる。逆に,体F上の多項式のF上の

分解体はFのガロア拡大体である。

(証明)EをFのガロア拡大体とし,Gをガロア群とします。

,そして,(E/F)=|G|=nとし,Fのベクトル空間として

のEの生成元(基底)をω12,..,ωnとします。

前定理により,ωのF上の既約多項式をそれぞれ,pj(x)

とすると,pj(x)はEにおいて1次因子の積に分解されます。

それ故,任意の多項式f(x)∈F[x]の因数分解を

f(x)=ap1(x)p2(x)・・pn(x)(a≠0,pj(x)は

規約モニック)とおくと,f(x)はE上で1次因子の積に

分解されます。

(※このとき,f(x)は「分離的」である,といいます。),

※ここで,少しくどいとも思える説明を加えます。

例えば,σi1)=σj2)なら,ω2=σj-1σi1);

ij∈G)ですから,σ=σj-1σi∈Gのような,

あるGの元σが存在してω2=σk1)となります。

1(x)=0の根ω1と,p2(x)=0の根ω2がGの自己同型

写像:σkで互いに写像される関係なので,既約多項式モニック

として,p1(x)とp2(x)は同じものです。

そこで,こうしたダブルカウントのp2(x)を因数から除く

必要があります。

実際には,集合S={σij):i,j=1,2,..,n},;

ただし,σi∈G(1≦i≦n)の元のうち,相異なるもの

の全体を{α12,..,αn}とすると,∀σ∈Gに対して,

σk1),σk2),..σkn)もまた,Sの元であり,

しかも,全て相異なるので,Eの元の集合として

12,..,αn}={σk1),σ2),..,σkn)}です;

任意のf(x)でf(x)=a(x-α1)(x-α2)・(x-αn)

=a{x-σl1)}{x-σk2)}・・{x-σkn)}なる

等式が∀σk∈Gに対して成立することになります。

そして,αi∈S(1≦i≦n)はある(k,j)で,αi=σj)

であることを意味しますから,ω12,..,ωnは全てf(x)=0

の根に含まれます。つまり,{ω12,..,ωn}⊂{α12,.,αn}

となります。(蛇足的な説明終わり)※

f(x)の(最小)分解体はF(α12,..,αn)ですが,結局,

E=F(ω12,..,ωn)⊂F(α12,..,αn)⊂Eです。

したがって,Fのガロア拡大体Eは,あるf(x)の分解体

つまり,Fにf(x)=0の根を全て添加した体となります。

逆に,Eがf(x)∈F[x]の分解体であるとします。

そして,Fの元を不変にするEの自己同型写像のつくる群

をGとします。

ここで,Fから分解体E=F(α12,..αn)までの間の

中間体の列を想定します。F=E0⊂E1⊂..⊂En=E,

i=F(α12,..αi)=Ei-1i)(1≦i≦n)でます。

ところが,f(αi)=0でありf(x)は,体Ei-1の多項式

ですから,αiはEi-1で代数的です。故に,(Ei/Ei-1)は有限

です。そこで,|G|=(E/F)=Πi=1n(Ei/Ei-1)より,群Gは

有限群です。

次に,Gの不変体がFであることを示します

多項式f(x)∈F[x]のf(x)=0の根が全てFに属する

なら,E=Fであり,Gの任意の元はFの任意の元を不変に

します。そのようなαの全体はFから出ることはないので

E=Fが,Gの不変体であることは明らかです。

このときは,(E/F)=1であり,Gの元は単位元(恒等写像)

のみです。次に,f(x)=0の根のうち,n個(n≧1)が,体F

に含まれていないとします。,

さらに帰納法の仮定としてFに含まれない根の個数がnより

小さいときには,定理が成立する,つまり,FがGの不変体である

とします。

ここで,αをFに含まれないf(x)=0の根としtてf(x)

を体F(α)の多項式と見たときも,Eはf(x)の分解体です。

このとき,f(x)=0のの根のうち,F(α)に含まれないもの

の個数はnより小さいので,帰納法の仮定により,Eの自己同型群

はF(α)を不変にします。このF(α)を不変にするEの自己同型

写像の群をUとすると,UはF(α)を不変体とし,それ故,もちろん

Fを不変にしますから,U⊂Gです。

θを群Gの不変体の元とします。

θは,Uの全ての元で不変ですから,θ∈F(α)です。

αのF上の既約多項式p(x)の次数をsとすると,θ

は.θ=c0+c1α+c2α2+..+ca-1αs-1,(ただし,

j∈F,0≦j≦(s-1))と表わされます。

p(x)=0は重根を持たないのでp(x)の根をα1,.αs

とすると,αをαjに写すF(α)からF(α)への同型写像:

σが存在します。同型写像の延長を繰り返して,σをEから

Eの上への同型写像,つまりGの元:τへと延長できます。

このτ∈Gをθに作用させると,τ(θ)=c0+c1αi

+c2αi2+..+cs-1αis-1.(i=1,2,.s)となります。

故に方程式cs-1s-1+cs-2s-2+..+c1x+(c0-θ)

=0は,s個の相異なる根:α12,..,αを持ちますが,

これは,根の個数sが方程式の次数(s-1)より多いので

方程式ではなく恒等式であることを意味するため,全て

の係数はゼロです。

特に,c0=θですから,τ(θ)=θ∈Fです。θはG

の不変体の任意の元でしたから,FがGの不変体です。

以上から,GはFを不変体とするガロア群で,Eは

ガロア拡大体,であることが示されました。(証明終わり)

[定理7-4]:体Fの2次の拡大体Eはガロア拡大体

である。

(証明)(E/F)=2とすると,Fに含まれないω∈Eが存在

します。このとき,1,ω,ω2は1次従属です。

故にa0+a1ω+a2ω2=0という自明でない関係式

が成立し,ωはf(x)=a22+a1x+a0∈F[x]の根

です。もしも,a2=0ならa0+a1ω=0となり

0=a1=0で自明な式となるため,a2≠0です。

f(x)=0の他の根は,{-(a1/a2-)-ω}∈Eですから

Eはf(x)の分解体です。そしておmrががFの元

でないので,{-(a1/a2-)-ω}もFの元ではないため

f(x)はF上既約な多項式ですからEは分離的

分解体です。よってE/Fはガロア拡大です。。

(証明終わり)

[定義7-3](単純(単)拡大の定義)

体Fの拡大体KがFにαを添加した体で,K=F(α)

と表わされるようなαが存在するとき,この拡大を単純

(単)拡大といい,体Kを単純(単)拡大体という。

※複素数体C内では「ガウスによる代数学の基本定理」

を仮定すると,体F上の∀f(x)∈F[x]は複素数体C

の中で1次因数の積に分解します。その根を全てFに

添加した体Eをつくると,Eはf(x)の分解体です。

つまり,複素数体の部分体F上の多項式は複素数体の

中に必ず,分解体を持ちます。

[定理7-5](原始元定理)

体Fの有限次拡大体Kには,K=F(γ)のようなγが

存在する。つまり有限次拡大体KはFの単純拡大体である。)

(証明)KがF上有限次なら,KのF上の基底をα12,.,.αn

とすると,K=F(α12,.,.αn)です。

帰納法を用いて証明できますが,結局,n=2も場合

に定理の成立を示せば十分であるとわかります。

何故なら,F=E0⊂E1⊂E2⊂...⊂En=Kなる拡大

する体の列を.Ei=Ei-1i),,.,En=F(α12,.,.αn-1)(αn)

によって,つくると.もしもE2=F(α12)=F(γ)とできる

ことが示せたなら,E3=F(α123)=F(γ,α3)=F(γ2)

も成立することがわかる,からです。

そこで,n=2の場合として,K=F(α,β)とします。

α,βを根とするF上の既約多項式をそれぞれ,g(x),

h(x)とします。g(x)≠h(x)の場合,f(x)=g(x)h(x)

の分解体をEとするとg(x),h(x)がFで既約なのでf(x)

は分離的です。(※f(x)はE上単根の1次因子の積に分解

されます。)

ところで,前の[定理7-2]により,分解体EはFのガロア拡大体

です。そしてKはE/Fの中間体です。ガロア拡大体の中間体

はEのガロア群Gの部分群と1対1に対応るので中間体の個数

は有限です。つまり,(E/F)=|G|が有限なので,中間体の個数も

有限です。

そこで,∀c∈Fに対してγ=α+cβとおいて,体K

=F(γc)で定義すると.これらはE/Fの中間体ですが,C

の部分体であるFは無限体なので,c∈Fの取り方は無数に

あります。しかし,中間体Kcの個数は有限ですからKd=K

を満たすFの元dで,d≠cであるものが存在します。

するとK=F(γ)=K=F(γc)でγ=α+dβです

から,γcd∈Kcであり,故に(c-d)β=(γc-γ)∈K

(g-d)≠0ですから,β∈Kcです。

そこで,α=(γc―cβ)∈Kcも成立します。

それ故,K=F(α,β)⊂Kcですが,γ=(α+cβ)がF(α,β)

=Kの元であることは,明らですからKc=F(γc)⊂Kであり

結局,Kc=Kです。

したがって,γ=γとおけばK=F(γ)と表わせることになり

,KがFのの単純拡大体であることが示されました。

(証明終わり)

[系]:複素数体の中ではFの有限次拡大体は単純拡大体

である。(これは自明です。)

[定理7-5]:EがFのガロアア拡大体であることは,Fの複素数体

内へのF上の同型写像が,全てEの自己同型写像であることに

同値である。

(証明まず,F上の同型写像とは,Fの元を不変に保つ同型写像

のことです。そして,EにおけるF上の同型写像の数をmと

すると,,m≦(E/F)=n=|G|です。(※EはFの有限次(n次)

拡大体とします。)

故に,全ての同型写像はEの自己同型写像でGに含まれます

何故なら,GはFを不変体とするEの自己同型写像の全体

であり,そのn個の元はm個の中に含まれているので,,自己同型

写像でないF上の同型写像があるとm>nとなって矛盾する

からです。

逆に,F上の同型写像が全てEの自己同型写像とします。

EはFの有限次拡大体ですからE=F(γ)と書けます。

γのF上の既約多項式をp(x)とします。このとき.pは2次

以上でp(x)=0の2根をγ,δとすると,γをδに対応させる

F(γ)からF(δ)への同型写像が存在します。

これが,Eの自己同型写像ですから,δ∈E=F(γ)です。

つまり,F上の既約多項式p(x)の根が全てEに含まれる

のでEはp(x)の分解体であり,よってE/Fはガロア拡大

です。(証明終わり

[例7-1]:次のα,βに対してQ(α,β)=Q(γ)となるγを

求めます。Qは有理数体で,α=√5i,β=√2,です。

(解)γ=√5i-√2とすると,(γ-√2)2=―5,

γ2-2√2γ+7=0,故に,β=√2={(γ2+7)/(2γ)}∈Q(γ)

よって,α=√5i=(γ-β)∈Q(γ),です。()終わり

[例7-2]:(x4-2)は,有理数体Q上の既約多項式です。

その分躯体は,E=Q(21/4,2,-21/4,21/4i,-21/4i)

ですが,これは明らかにQ(21/4,i)に等しいです。

そして{Q(21/4)/Q}=4,{Q(21/4,i)/Q(21/4)}=2

より,(EQ)={Q(21/4,i)/Q}=8です。

EはQ上8次のガロア拡大体です。

E内のQを不変体とする自己同型写像は

21/4を±21/4,±21/4iに,写す4通り,,iを

±iに写す2通りの,σ:σ(21/4)=i21/4,σ(i)=i

と,τ:τ(21/4)=-21/4,τ(i)=-iの2種から

G={1,σ,σ23,τ,στ,σ2τ,σ3τ}です。

※途中ですが,今回はここで終わります。(つづく)

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2021年12月 2日 (木)

ガロア理論の復習(6) )

※2021年11月23日(火)開始→12月2日(木)

※(余談)11月29日は,1869年だったかな?

シャイアン族大虐殺の悲劇があった日です。1970年

当時20歳の学生だった私,ベ平連など戦争反対のデモ

に参加していた頃,に,珍しく封切りで「ソルジャー・

ブルー」という米映画を見ました。

酋長が白旗を掲げていたのにも関わらず,ネイティブ

が女子供を中心に数百人も青い服の騎兵隊に蹂躙され,

惨殺されるのを見て,実話に基づいた映画とはいえ義憤

を感じ,若い心が慄えた記憶があります。

キャンディス・バーゲンが出てlましたね。野性的な

女優でした。当時,可愛さだけなら,D・ホフマン主演の

「卒業」に出ていたキャサリン・ロスの方が私的には好み

でしたが,まあそんなこと考える映画じゃなかったですね。

私は最近,よくセキや低血糖の発作が起きて,転倒など

がキッカケで容態急変,ということも有り得る事態です。

全くの無神論者なので,あと何日で石に還らずにこの世に

いられるるんだろうか?私の残り時間は?と自問する毎日

です。今朝(12/2)も,急に気分が悪くなり朝飯は全部嘔吐

してしまいました。今は小康です。(余談終わり※)

※さて,本題の続きです。

※「第5章 体の拡大」の続きからです。

[定理5-9](基本定理)

体Fの体F~の上への写像σが環準同型である

とき,すなわち,x,y∈Fに対して,σ(x+y)

=σ(x)+σ(y),,かつ,σ(xy)=σ(x)σ(y)

のとき,σはFからF~の上への同型写像である。

,この同型写像を,σ:F→F~と表わす。

このとき,σは,(1)σ(0)=0.,σ(1)=1,および,

(2)σ(-x)=-σ(x),かつ,σ(x-1)={σ(x)}-1 

という性質を持つ。

(証明)まず,kerσ={x∈F,σ(x)=0}={0}なので,

F,F~を環と見たとき,[環の準同型定理]によって,

{F~/kerσ)}~F(同型)であり,しかも(F~/{0})=F~

ですから,F~~F(同型)です。。つまり,σは,Fから

F~の上への同型写像となっています。

(※何故なら,和(加法)も積(乗法)も保存され,後述

するように,σ(1)=1なので,もしもx=n∈Zなら

σ(x)=σ(n)=nσ(1)=n=xです。また,xが

有理数で.x=(p/q)∈Q(q≠0)の場合なら,1=σ(1)

=q{σ(1/q)},かつ,σ(x)=p{σ(1/q)}ですから,

σ(x)=(p/q)=xです。

xを有理数体Qから,実数体Rの元へと拡張しても同じ

で.σ(x)=xと考えられます。

よって,σ(x)=0なら,x=0が成立するはずです。

(※↑性質(1)の逆命題)

そして,このことは,kerσ=|0}を意味し,写像σが1対1

の写像(単射)であることを意味します。※)

次に,σの性質(1),(2)を証明します。

まず,(1)は,σ(x)=σ(x+0)=σ(x)+σ(0)

⇒σ(0)=0,,および,σ(x)=σ(x)σ(1)(x≠0)より

σ(1)=1,です。次に,(2)は,0=σ(0)=σ{x+(-x)}

=σ(x)+σ(-x) ⇒σ(-x)=-σ(x)であり,

また,1=σ(1)=σ(x-1x)=σ(x-1)σ(x)

⇒σ(x-1)={σ(x)}-1 です。(証明終わり)

[定義5-9]F上の整式(多項式):f(x)∈F[x]が,

f(x)=a0n+a1n-1..+an  ;ただし,0≦j≦n

のjについてaj∈F,かつ,a0≠0なる形で与えられる

とき,これの係数に左からσを施し,F~上の整式として,:

σ(a0)xn+σ(a1)xn-1..+σ(an)をつくる。

この整式を(σf)(x),または,単に(σf)と表わす。

[定理5-10]:∀f(x),g(x)∈F[x]に対して,

次の性質:(1) σ(f+g)=σf+σg,および,

(2) σ(fg)=(σf)(σg) が成立する。

(証明)これは,σが体Fの上で同型写像なので明らかです。

すなわち,f(x)=Σj=0njn-j,g(x)=Σk=0mkm-k

なる具体的形であれば,和の写像の場合,{σ(f+g)}(x)

=Σk{σ(a+b)xn-k}=(σf+σg)(x) です。

積の場合も,詳細は略しますが,2重有限数列の積の

公式から,σ(fg)=ΣjΣk{σ(aj)}xn+m-j-k 

なって,右辺={σf(x){σg(x)}です。

(証明終わり)

[定理5-11]:p(x)がF上で既約のとき(σp)(x)も,

F~上で既約である。

(証明)もしも(σp)がF~上可約なら,σp=(σq)(σr)

の因数分解が可能です。σは全単射なので,対応するF[x]

の元q,rが存在するため,右辺=σ(qr)であり,これは

p=qrと書けることを意味しpも可約になって,pが既約

という仮定に反します。(証明終わり)

[定義5-10](同型写像の延長)

σ:F→F~とし,体Eを体Fの拡大体とする。

τがEからF~の拡大体E~の上への同型写像であり,

Eの部分体Fの上では,τ=σであるとき,τはσのE

への「延長」である,という。

[定理5-12](同型写像の延長定理1)

σ:F→F~とし,体Eを体Fの拡大体とする。

τ:E→E~が,σのEへの延長であるとき,(E~/F~)

=(E/F)である

(証明)ω1,..,ωnFが,F上独立なEの基底をなすとき,

(τω1),,.,(τωn)は,F~上独立なE~の基底をなします。

何故なら,τがEからE~への同型写像なので,E~の元:

β=a1(τω1)+..+an(τωn)には,β=ταとなるE

の元αが,α=τ-1β=a1ω1+..+anωn で与えられる

ことに同値であるからです。(※β=0ならα=0で,

1次独立性の条件を与える自明な関係式も同値です。)

故に,n=(E/F)=(E~/F~)です。(証明終わり)

[定理5-13](同型写像の延長定理2)

同型:σをσ:F→F~とし,p(x)をFの既約多項式

とする。αはp(x)=0の根であり,βは(σp)(x)=0

の根である,とする。そして,E=F(α),E~=F~(β)

とすると,写像τ: Σi(aiαi)→Σi{σ(aii}は,Eから

E~への同型写像であり,τはσのEへの延長である。

逆に,σのEへの延長は,上記のτのようなものに限る。

(証明)degp(x)=nとする。

Fの拡大体E=F(α)は,1,α,..αn-1で張られる線型

空間であるため,その元は次数(n-1)のF[x]の多項式

f(x)によって,f(α)という形に表わされます。

そして,τの定義によれば,τ{f(α)}=(σf)(β)で

あり,σはF~の上への写像なので,∀γ∈F~(β)対して,

γ=Σi(a~iβi)=τ[Σi(aiαi)]=τ{f(α)};ただし,

i=σ-1(a~1) or a~i=σ(ai)と書けます。

よって,τはE~=F~(β)の上への写像です。

τがE=F(α)からE~=F~(β)への環準同型写像

であることも,容易に示せます。

結局,τはEからE~の上への同型写像です。

 しかも,γ=Σi=0n-1(aiβi)のa~1=..=a~n-1=0

で,γ=a0(定数)であり,γ∈F~の場合は.γ=τ(a0)

=σ(a0) (a0∈F)であり,F上では,τ=σとなって

いるので.τはσのEへの延長です。

この 逆が成立するというτの一意性も,Eの基底

の写像がE~の基底に,一意に写されるので自明です。

(証明終わり)

[系]:p(x)がFの既約多項式で,α,βがp(x)=0

の根のとき,αをβに写像し,Fの元は不変に保つ写像,:

つまり,∀a∈Fに対してはτ(a)=aであるような

F(α)から,F(β)への同型写像:τが存在する。

(証明)σとして恒等写像を選べば.a∈Fに対して,

σ(a)=aであり,τとして,[Σiiαi]を[Σiiβi]

に写す延長を選べば.これが求める同型写像です。

(証明終わり)

[定義5-12](不変体,or固定体)

体EからEのある拡大体Ωの中への相異なるn個

の同型写像:σ12..,σnが与えられたとき,

F={a∈E:σ1(a)=σ2(a)=...=σn(a)}は,

Eの1つの部分体である。

これを,σσ12..,σnの「不変体(固定体)」という。

(※このとき, 0∈F,1∈F,および,a∈Fなら,

(-a)∈F,a-1∈Fが成立することは自明です。※)

[補助定理]:不変体Fの元:a1,a2..,anがあり,∀x∈E

に対して,a1σ1(x)+a2σ2(x)+..+anσn(x)=0..(1)

が成立するのは,a1,=a2.=.,=an=0のときである

。つまり,n個のσ12..,σnは,F上1次独立である。

(証明)(ⅰ)n=1のとき(1)は,a1σ1(x)=0ですが,

x≠0のとき,σ(x)≠0なのでa1=0を得ます。

(ⅱ)n>1のときk≦(n-1)に対しては

1σ1(x)+a2σ2(x)+..+aσ(x)=0.なら,

1=a2=..=ak=0と,補助定理が成立すると仮定

します。 そして,k=nに対して;

1σ1(x)+a2σ2(x)+..+anσn(x)=0と,

  • 式が成立するとします。

仮定から,0≦i≦(n-1)の全てのiについてσi≠σn

であり,σi(α)≠σn(α)となるα∈Eが存在します、

このαについて(1)式のxに(αx)を代入すれば.

(1)は,次のようになります。すなわち,

1σ1(α)σ1(x)+...+anσn(x)σn(x)=0.(2)

です。他方,(1)の両辺に左からσn(α)を掛けると,

1σn(α)σ1(x)+..+anσn(α)σn(x)=0..(3)

です。(2)式から(3)式を辺々引き算すれば,

1σ{σ1(α)-σn(α)}σ1(x)+..

+an-1n-1(α)-σn(α)}σn-1(x)=0.を得ます。

これは,k=(n-1)<nの自明な1次関係式なので,

帰納法の仮定から,ai{σi(α)-σn(α)}=0ですが

σi(α)≠σn(α)なので.i=1,...(n-1)について.

i=0です。それ故,anσn(x)=0となるので,a=0

も得られます。

したがって,帰納法により[補助定理]の成立が証明

されました。(証明終わり)

[定理5-14]:(E/F)≧nである。

(証明)(E/F)=mで,m<nと仮定します。

体F上のベクトル空間としてのEのF上の生成系

を,ω12,..,ωmとします。次の,連立方程式

 σ11)x1+σ21)x2+..+σn1)xn=0,

・・・・・・・・・

 σ11m)x1+σ2m)x2+..+σnm)xn=0,

を考えると,これは,n個の未知数xjをnよりも少ない

m個の方程式系で求める連立1次方程式なので,自明で

ない解(少なくとも1つはゼロでない解)として,n個

の解の組:(x1,x2,..,xn)を持ちます。

一方,∀α∈Eは,α=a1ω1+a2ω2+..+anωn,

(a1,a2,..an∈F)で表わされます。

上の連立方程式の第1式に.σ1(a1)を掛け,第2式に

σ2(a2)を掛け,以下,第m式まで同様な操作を続けると,

Fは不変体ですから,σ1(aj)=…=σn(aj)なので,

σ1(a1ω1)x1+σ2(a1ω1)x2+..+σn(a1ω1)xn=0

・・・・・・・・,・・・

σ1(amωm)x1+σ2(amωm)x2+..+σn(amω)xn=0

を得ます:これら全ての式を加えれば,∀α∈Eに対し,

非自明な組:(x1,x2,::xn)に対する等式として,

σ1(α)x1+σ2(α)x2+..+σn(α)xn=0を得ます。

一方,[補助定理]によれば,これは全てがゼロの自明な

n個の組:x1=x2=..=xn=0でのみ成立する等式です。

したがって,矛盾が生じます。よって,m≧nです。

(証明終わり)

 

第6章ガロア拡大体,ガロア群

[定義6-1](自己同型写像)

体EからE自身への同型写像を自己同型写像

という。Eの自己同型写像全体は明らかに群を

つくる。Eの自己同型(写像)の集合Gが有限群

をつくるとき,当然,Gは恒等写像を含む。

そして,F={a∈E;σ(a)=a for∀σ∈G}

を.群Gの不変体(固定体)という。

また,Eの元αに対して,G=[σ12,..σn}なら,

S(α)=ΣGσ(a)(ΣGはG全体をわたる総和)

=σ1(α)+σ2(α)+..+σn(α)で与えられる

Eの元を,αのスプ-ル(spur;対角和)という。

[定理6-1]:S(α)は不変体Fの元である。

そして,EにはS(α)≠0であるような元αが存在

する。

(証明)β=S(α)とし,τをGの任意の元とすると

τ(β)=τ{Σσ(α)}=Σσ(α)=βより,β∈Fです。

何故なら,∀τ∈Gに対し,σj≠σならτσ≠τσk

より,G={σ12,..σn}={τσ1,τσ2,..τσn}

であることが明らかだからです。

そして,∀α∈Eに対して,S(α)=0なら,αの恒等式

として,1次関係式σ1(α)+σ2(α)+..+σn(α)=0を

得ますが,これはαをxに代えると,先の[補助定理]に

矛盾します。故に,S(α)≠0なるα∈Eが存在します。

(証明終わり)

[定義6-2](ガロア(Galois)拡大体とガロア群)

 体Eの自己同型写像のつくる群をGとし,Gの不変体

をFとするとき,EはFの「ガロア拡大体」であるという。

ぞして,GをEのF上の「ガロア群」という。

[定理6-2];体EがFのガロア拡大体のとき,その拡大次数

はガロア群Gの位数に等しい。

つまり,(E/F)=|G|=(G:1)である。

(証明)(E/F)=m,|G|=nとすれば.[定理5-14]

により,m≧nですから,m≦nを示せば十分です。

それにはEの(n+1)個の元α1,α2,..αnn+1

1次従属であることを示せばいいです。

そこで.次の連立方程式を考えます。

1σ1-11)+x2σ1-12)+..+xn+1σ1-1n+1)=0

1σ2-11)+x2σ2-12)+..+xn+1σ121n+1)=0

・・・・・・・・・・

1σn-11)+x2σn-12)+..+xn+1σ1n-1n+1)=0

簡略式では,Σk=0n+1kσj-1)=0(1≦j≦n)で

表わされます。そして,これらは,(n+1)個の未知数が,

それより少ないn個の方程式で与えられる系なのでEの

中に,非自明な解:(x1,x2,..xn+1)を持ちます。

jの少なくとも1つは非ゼロなので,一般性を失うこ

となくx1≠0と仮定しいぇおきます。

このとき,∀α∈Eに対して(αx1,αx2,..αxn+1)

もまた,この同次連立方程式の解です。

そこで,αx1がS(αx1)≠0を満たすように,αを選び

その後に,(αx1αx2,..αxn+1)を,改めて(x1,x2,..xn+1)

と定義し直します。するとまず,(x1)0です。

そして,方程式系:Σk=0n+1[xkσj-1k:)]=0(1≦j≦n)

に,左からそれぞれσjを施せば,Σk=0n+1j(xk]=0

(1≦j≦n)を得ます。さらに,これらn個を全て加えると,

Σk=0n+[S(xk]=0となります。

ところが,S(xk)∈Fであり,S(x1)≠0なので,結局,

これは,α1,α2,..αnn+1が1次従属であることを意味

します。それ故,m≦nであるべきすから(E/F)=n

=|G|です。(証明終わり)

[定義6-3]:σが体Fを元ごとに不変にするとき,σはFを

不変にする,とか,σはE/Fの同型写像である,という。

[定理6-2の系]:EがFのガロア拡大体で.GがFを不変体

とするガロア群のとき,Gは体Fを不変にするEの同型写像

の全体集合である。

(証明)Fを不変にするEの自己同型写像σがGに属さない

ならば,Fは,(n+1)個の自己同型写像の不変体となって,

[定理6-2]に矛盾します。故に,このσも.Gに属します。

(証明終わり)

[定理6-3]:G1,G2が体Eの自己同型写像の群で G1≠G2

のとき,これらの不変体は異なる。

(証明) G1,G2が同じ不変体Fを持つと仮定すると.

n=(E/F)=|G1|=|G2|ですから,G1≠G2の場合は,

(G1∪G2)がnよりも多い元を持つことになります。

しかし,(G1∪G2)の不変体も明らかにFですから,

(E/F)=|G1∪G2|>nとなって,矛盾します。(終わり)

[定理6-4](基本定理)

 EをFのガロア拡大体とし,その自己同型群をG,

つまり,自己同型写像全体のつくる群をGとする。

E/Fの中間体:Bに対してBを不変にするGの元

の全体のつくる部分群をUとすると,Uの不変体は

Bである。そしてBにUを対応させる対応は,E/F

の中間体と,Gの部分群との間の1対1対応である。

(証明)中間体Bを不変にするGの部分群をUとし、

その位数を,|U|=rとします。

そして,Uの不変体をB~とします。

するとBはUで不変なので,B⊂B~であり(E/B~)=r

ですから.(E/B)≧rです。

それ故.B=B~を示すには,(E/B)=rを示せば

よいことがわかります。

,さて,σ∈GをBに施すと,BはEの中に同型に写像

されます。すなわち,B~σ(B)(同型)です。

さて,σ12∈G,,σ1≠σ2なら,∀β∈Bに対して

σ1(β)=σ2(β)であるための条件は,σ1-1σ2(β)=β,

つまり,(σ1-1σ2)∈U,あるいは,σ2∈(σ1U)です。

同一の剰余類(σU)に属する自己同型写像が,体Bに

同じ同型写像を誘導するわけです。

つまり,σ2∈(σ1U)が,∀β∈Bでσ1(β)=σ2(β)

すなわち,B上で同じ同型写像である,ための条件です。

{G{=nのとき,n=rsなら,異なる剰余類(σU)

の個数はsです。つまりs=(G;U)=||G|/|U|です。

異なるs個の剰余類(σU)の代表元をτ12..τs

すると,これらは,体Bの上の自己同型写像と見なすこと

ができて,その不変体はFです。

何故なら,(τj)j=1sの不変体をF~とすると,τj∈G

より.∀a∈Fに対しτj(a)=aなので,まず.F⊂F~

です。他方.a∈F~で,τj(a)=aならτjは,aを

不変に保つGの元でもあるので,aはGの不変体に属し

a∈Fです。それ故,F~⊂F~も成立するため,F~=F

です。したがって,(B/F)≧sです。

この不等式を先に得た(E/B)≧rと合わせると

(E/F)=(E/B)(B/F)≧(rs)を得ます。

しかし,実際には(E/F)=n=(rs)なので,結局.

(E/B)=r,かつ,(B/F)=sであると結論されます。

以上から,E/Fの中間体Bに対して.Bを不変にする

Gの元全体のつくる部分群Uが一意に対応します。

また,Gの部分群Uに対して,Bを不変体とする中間体

Bが存在して対応する,という逆命題も成立します・

UはBを不変にするGの元の全体であり,Uに対して

Bは一意的に定まります。 (証明終わり)

[基本定理の系]::中間体BからEへのF上の同型写像

は,群Gの部分群Uによる剰余類から誘導されるものだけ

である。また,BはFのガロア拡大体である。

(証明)Gの元から誘導される(B/F)個以外に,BからE

への同型写像が1つでもあれば{(B/F)+1}個の同型写像

の不変体がBであることになるため.BのF上の次元と同型

写像の総数が一致するという定理に矛盾します。故に,

そうした同型写像は存在しません。そして,BはUの不変体

ですから,EはBのガロア拡大体です。(証明終わり)

(※[基本定理]における対応は,Gの部分群に,その不変体

を対応させるものです。Gには,体F,Uには,体B,単位群

{e}には,体Eが対応します。)

※EはBのガロア拡大体ですが,BはFのガロア拡大体とは

限りません。以下では,UがGの正規部分群で(σUσ-1)=U

であることが,UがFを不変体とするBのガロア群であるため

の必要十分条件であることを示します。

[定理6-5]:体Eは体Fのガロア拡大体あり,Gはガロア群

であるとする。そして,中間体Bに対応するGの部分群を

Uとする。∀σ∈Gに対して(σB)もE/Fの中間体であり,

対応するGの分群は(σUσ-1)である。

さらに,体Bが体Fのガロア拡大体であるための必要十分

条件は,UがGの正規部分となることである。

このとき,そのガロア群は.(G/U)に同型である。

(証明)σ∈GならσはEの自己同型写像ですから,(σB)

もBと同じく,E/Fの中間体です。

何故なら,BはEの部分体なので(σB)⊂Eであり,

(σB)も体であることは明らかです。一方,FはGの

不変体なので,(σF)=FであるからσBが中間体の

場合も同じ不変体です。

そして,(σB)の元はσ(β)((β∈B)と表わされます。

故に,τ∈Gが,全てのσ(β)を不変にするのは,∀β∈B

に対して,τ{σ(β)}=σ(β),つまり(σ-1τσ)(β)=β

となることが必要十分です。これは.(σ-1τσ)がBを不変

にすることを意味します。

それ故,τが(σB)を不変にする条件は,(σ-1τσ)∈U

が成立することであり,これはτ∈(σUσ-1)と値です。

したがって,(σUσ-1)が中間体(σB)に対応するGの

部分群です。

ところが,UがGの正規部分群なら,∀σ∈Gに対して,,

(σUσ-1)=Uです。中間体と部分群は1対1に対応する

ので,∀σ∈Gに対して,対応するGの部分群が同じなら.

中間体も一致するため,(σB)=Bとなり,σはEの上の

自己同型写像であると同時に,Bの上の自己同型写像でも

あることになります。ただし,(σB)の元を不変にする

自己同型写像:τは,(σU)の元ですが,Uが正規部分群

なら,τ∈Uでもあります。UがGの正規部分群である

ときは,UがB内でFを不変体とするガロアa群となり

Bがガロア拡大体となるための必要十分条件です。

そして,Bを不変にするガロア群の元:τは(G/U)

の剰余類(σU)の代表元として,1対1に対応する

ため,ガロア群と商群(G/U)は同型です。

逆に,BがFのガロア拡大体であるとき,UがGの

正規部分群でないなら,(σUσ-1)≠Uであるような

σ∈Gが存在し,σB≠Bです。よって(B/F)個の

ガロア群Uの元以外に(σF)=Fを満たす写像が

存在するわけです。このσはEの自己同型写像です

が,Bの自己同型写像ではありません。

これはガロア拡大体の条件に矛盾します。

したがって,UがGの正規部分群であることがBが

Fのガロア拡大体であるための必要十分条件です。

(証明終わり)

[定理6-6]:E/Fの中間体:B1,B2,にそれぞれ

自己同型部分群U1,U2が対応するとき,B1⊃B2

とU1⊂U2が同値である。

(証明) B1⊃B2のとき,σ∈U1なら,∀β∈B2

対して,β∈B1より,σ(β)=βですからσ∈U2

です。それ故,U1⊂U2です。逆に,B2⊃B1なら

1⊃U2が成立します。

[定理6-7]:体Fのガロア拡大体Eのガロア群を

Gとする。2つの中間体:B1,B2に対し,B1,B2

含む最小の体を(B12)とし,共通部分を(B1∩B2)

とする。B1,B2,にれ対応するガロア群をU1,U2

するとき,(1)(B12)には,(U1∩U2)が対応する。

(2)(B1∩B2)には,U1,U2を含む最小の部分群:W

が対応する。

(証明)(1)σ∈Gとします。

σが(B1B2)を不変にすることは,B1とB2を

共に不変にすることを意味し.これは,σ∈U1,かつ,

σ∈U2,つまり,σ∈(U1∩U2)に対応します。

  • 次に,中間体:(B1∩B2)に対応するGの部分群

をVとします。

すると,(B1∩B2)⊂B1,かつ,(B1∩B2)⊂B2です。

故に,[定理6-2]から,V⊃U1,かつ,V⊃U2です。

ところが,仮定により,WはU1,U2を含む最小の

Gの部分群ですからW⊂Vです。

そこで,Wに対応する中間体をBとすると,W⊂⊃U1,

かつ,W⊃U2より,B⊂B1,かつ,B⊂B2ですから.

B⊂(B1∩B2)です。故にW⊃Vであり,結局,

W=Vです。(証明終わり)

※途中ですが,今回はここで終わります。(つづく)

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2021年11月22日 (月)

ガロア理論の復習(5)

※2021年11月14日(日)開始→11月22日(月)

※(余談) やっと代数方程式の本題に入れる段階に

なりました。

19世紀のアーベリやガロアによる「5次以上の

代数方程式のベキ根による一般解法の不可能性」

については.物理学のアインシュタインらによる

「相対性理論」同様,高校時代に,そうしたトピック

があるのを知ってから,淡い興味を抱いてました。

40歳くらいまでの真面目な?サラリーマンの頃は

生活に追われ,毎日アルコール依存症のように飲酒を

続け,将棋や,少し余分な収入があるとオーディオや

PCなど受動的な趣味で,ストレス解消してました。

酒のセイか?39歳で糖尿病になり,42歳後半に厄年

でバブルが終わる頃,フリーター?(プータロー)となり

金無しヒマ有り,の状況になった機会に,お金が不要な

趣味の1つとして,学生時代研究者になる道もめざして

いた理論物理学や数学の専門書,啓蒙書の読書三昧を

再開したのでした。そうして,約25年以上前の昔その

課題を思い出して独学し,そのエッセンスを15年前

に本ヌログ開始の2006年に「ガロア理論」のシリ-ズ

記事として書きました。

老化もあり,どの記憶も時と共に薄れていくものです

が,他のトピックと異なり理解したツモリになってても

本当には体得してはいない曖昧な理解だったセイか?

2006年から15年の今,記憶をたどっても,結局,最初の

用語の定義からコツコツとたどるしか理解の道はない

ようです。幸い,何とか判読可能な大きさの文字の自作

ノートがあったのでね。(※ルーペでやっとわかる程度)

まあ,余談以外の内容は,死ぬ前の独居老人の自己満足

の勉強履歴.自己確認に過ぎませんが,食う寝る以外の

生きろモチベーションの1つにはなります。(余談終わり)

※さて,本題の続きです。

※第5章 体の拡大

[定義5-1](部分体,拡大体,中間体)

体Eが体Fを含むとき,つまり,集合としてF⊂E

であり,FがEで定義された2項演算(加法,乗法)で

体をなすとき,Fは「Eの部分体」であるといい,

逆に,Eは「Fの拡大体」であるという。

このとき,F⊂B⊂Eの関係にある体Bがあれば.

Bを「E/Fの中間体」という。

 F⊂Eのとき,E,および,E/Fの中間体は全てF上

のベクトル空間となる。Eがn次元空間のとき,Eは

F上有限次拡大,特にn次拡大という。

このnをEのF上の次数といい,これを記号(E/F)

で表記する。つまり,(E/F)=nと書く。

[例5-1]:mが,1より大きい整数で平方数の倍数

ではないとする。Qを有理数体(有理数集合の体)

とし,E={a+b√m:a,b∈Q}とすると,E

はQ上2次の拡大体である。

(証明)√m∈Qと仮定すると,√m=p/q(既約分数)

と書けるので.q2=mp2です。

そこで,mが,m=p1j12j2・・prjr;ただし,1≦j≦r

のjについてpは素数,と素因数分解できたとすると

2=mp2により,q2もpjを素因数に含みますが,これは

q自身がpjを素因数とすることを意味するので,結果,p2

もpj2を因数に含むため,あるpj≧2はp,qの公約数となり

p/qが既約分数であるという仮定に矛盾します。

故に,√mはQの元(有理数)では有り得ないです。

それ故,1と√mはQ上で1次独立です。つまり,

a+b√m=0ならa=b=0です。

ただし,b=0なら(a+b√m)∈Qですから,

Q⊂Eですが,a+b√mは.1と√mを基底として

Qの上で2次元のベクトル空間をなすため,EはQ

の2次の拡大体です。Eは,1と√mで生成される体

である,といわれ,(E/Q)=2です。(終わり)

[定義5-2](整域)

零因子0を持ち,自明なもの:{0}以外の可換環を

整域という。これは,整数環Zの拡張である。

[定義5-3](単項式,多項式と整式,多項式環)

不定元(文字):x,y,.のべき乗の積と係数の積で

得られる単一の文字式を「単項式」といい,単項式の

2つ以上の代数和で与えられる式を「多項式」という。

そして,単項式と多項式を総称して「整式」という。

不定元がxのみの多項式f(x)は,その有限個の係数:

0,a1,..anが,全て体Kの元である場合,具体的には,

f(x)=a0n+a1n-1..+an,という形になる。

f(x)が恒等的にはゼロではなく,最高次xnの係数が

0≠0なら,f(x)はn次多項式であるといい,f(x)の

次元はnである,あるいは,degf=nであるという。

これらf(x)全体の集合は通常の加法,乗法で可換環

をなす。これを体K上の1変数の「多項式環」と呼び,

K[x]と表記する。f(x)∈K[x]である。

特に,最高次の係数が1の1変数の多項式,つまり,

f(x)=x n+c1n-1..+cn,をモニック(monic),

または,モニック多項式という。

多項式f(x)=a0n+a1n-1..+anは,a0≠0

なら,cj=aj/a0(1≦j≦n)としてf(x)=a00(x)

0(x)=xn+c1n-1..+cnのように,モニックf0(x)

のa0倍で表わすことができる。

[定義5-5](単項イデアル整域)

Rを環,AをRの部分集合とするとき,Aを含む最小の

イデアルIを,Aで生成されるイデアルという。

生成元の集合Aの位数が有限で,A={a1,..am}と書ける

とき,Iは有限生成のイデアルであるという。

そこで,IがAによる有限生成の左イデアルなら,

I={x11+..+xmm:xj∈R}と表わすことができる。

特にイデアルIの生成元が単一のa∈Rの場合,Iが

左イデアルなら,I={xa:x∈R},Iが右イデアルなら.

I={ax:x∈R}である。

生成元がaのみのイデアルIが両側イデアルの場合には.

これを単項イデアル(主イデアル)といい,I=(a)と表わす。

Rが可換環なら,Rのイデルは,常に両側イデアルである。

可換環:Rが零因子を持ちR≠{0}のとき,Rは整域と

いわれるが,Rのイデアルが全て単項イデアルなら,Rは,

「単項イデアル整域」である,という。あるいは,

Principal Ideal Domain,である。略してPIDである,

という。

[例5-2]:Zを整数環とするとき,a,b∈Zに対して

I={ax+by:x,y∈Z}は.a,bで生成される

Zのイデアルですが,以前の章で示したようにa,b

の最大公約数をd∈Z,つまり,d=(a,b)とすると

Iの元は全てdの倍数ですから,Iは単項イデアルで

あり,I=(d)です。特にa,bが互いに素でd=1

ならば,I=Zです。

これを拡張して,I={x11+..+xmm:xj∈Z}を

考えると,これはd=(a1,..am)(最大公約数)とすると,

単項イデアルであり,I=(d)です。(終わり)

[定理5-2]:体K上の多項式環K[x]はPIDである。

(証明)IをK[x]の{0}でない任意のイデアルとする。

すると恒等的にはゼロでないIの元f(x)が存在します。

このうち,degfが最小のf(x)∈Iをp(x)とします。

このとき,∀f(x)∈Iは多項式式の除法の公式により,

f(x)=p(x)q(x)+r(x)(degr<degr)と表わす

ことができます。

以下,簡単のため,変数xを省略します。

するとf=pq+rとなりますが,f,p∈Iでq∈K

であり,IはKのイデアルなのでr=(f-pq)∈Iです。

故に,r≠0ならr∈Iがdegr<degpのゼロでない

Iの多項式となり矛盾を生じるため,r≡0です。

それ故,f=pqです。

したがって,IはI=(p)の単項イデアルです。

変数xを復活させると,I=(p(x))であり,Iは単項

イデアルですが,IはK[x]の{0}でない任意のイデアル

であったので,xの多項式環:K[x]はPIDです。

つまり,単項イデア整域です。(証明終わり)

[定義5-6](体の代数的拡大)

体Fのゼロでない1変数xの多項式f(x)を

f(x)=a0n+a1n-1..+an,とする。

これは,係数:a0,a1,..anが全て体Fの元の恒等的

にはゼロでない多項式である。

このf(x)に対して,Fの拡大体E⊃Fの1つの元α

が,f(α)=0を満たすとき, すなわち,α∈Eが,

f(α)=a0αn+a1αn-1..+an=0を満たすとき,

αはf(x)=0の根(root)であるという。

そして,こもときαは「F上代数的」である。という。

Eの全ての元がF上代数的であるとき;EはF上,

「代数的(拡大体)」であるという。

[定理5-3];EがF上,有限次なら.EはF上代数的である。

(証明)(E/F)=nとすると,EはF上n次のベクトル

空間なので,∀α∈Eのベキで構成される.Eの(n+1)

個の元:αnn-1,..,α,1は1次従属です。

故に,少なくとも1つはゼロでないFの(n+1)個の

元:a0.a1,..anを用いて,a0αn+a1αn-1..+an=0

なる自明でない1次関係式が成立します。

それ故,f(x)=a0n+a1n-1+..+an,とおけば,

f(x)は恒等的にゼロではないFの整式で,f(α)=0

なので,αは(x)=0の根となるため,αはF上代数的です。

0≠0の場合はf(x)はn次の多項式です。(証明終わり)

[定理5-4]:BがE/Fの中間体でF上有限次,EはB上

有限次のとき,EはF上有限次である。

特(に(E/F)=(B/F)(E/B)である。

(証明)(B/F)=m,(E/B)=nとします。

BはF上でm個の基底:α1,.,αmを持ち,EはB上で

n個の基底:β1,.,βnを持ちます。

このとき,i=1,m,および,j=1,.nに対する

異なる(mn)個の元;αiβjについて考察します。

ij∈F(i=1,,m,j=1,.,n)とし,関係式

Σi,j(cijαiβj)=0を考えます。

これは変形すると,Σj=1n{(Σi=1mijαij}=0

となりますが,(Σi=1mijαi)∈Bであり,β1,.,βn

はB上1次独立ですからΣi=1mijαi=0(j=1,.n)

です。すると,cij∈Fでα1,.αmはF上1次独立

なので,全てのi,jについてcij=0を得ます。

それ故,αiβj(i=1,..m,j=1,..n)はF上で,

1次独立です。

そして∀ω∈Eについて,ω=Σj=1njβj(x∈B),

,と表わすことができて,xj=Σi=1mijαi(cij∈F)

と表わせるので,結局,ω=Σi,j(cijαiβj)と書けます。

よって,mn個の独立な(αiβj)がEのF上の基底

となるため,(E/F)=mn=(E/B)(B/F)です。

(証明終わり)

[定理5-5]:EがFの有限次拡大体で,Bが中間体の

とき,EはB上,BはF上,有限次である。

(証明)EのF上の基底をγ1,..γnとすると,γ1,.,γ

はBの生成元です。何故なら,∀ω∈Eをω=Σjjγj

と展開したとき,係数cj∈F,および,基底γj∈Fは,

B⊃Fより,全てBの元でもありますから,{γj}j=1n

中で,Bにおいて1次独立な最大の部分集合は,Eの

Bにおける有限個の基底をなすからです。

それ以外のFの基底によるcijγjの各項はBに

おいては,1次従属ですから,今採用したB上の基底

の1次結合で表わせます。・

それ故,EはB上でも有限次ベクトル空間です。

また,B上の基底は,F上の基底の部分集合ですから,

ベクトル空間として,BはEの部分空間です。

(証明終わり)

[定義5-4](既約多項式,モニック)

体Kの上の多項式f(x1,.xm)が;定数ではない変数

の1次以上のKの多項式g(x1,.xm)とh(x1,.xm)の

積でf=ghと因数分解できるときfは可約であると

いい,そうでないうきは既約であるという。

そして,fが既約なら.これを「既約多項式」という。

[定理5-6]:体Fの拡大体Eの元αが,F上代数的で

あるとき,J={f(x)∈F[x];f(α)=0}は可換環

(多項式環):F[x]の{0}でないイデアルである。

J=(p(x))とすると,多項式p(x)はF上既約である。

(証明)まず,f(x)∈J,g(x)∈F[x]とすると,

g(α)f(α)=0より,g(x)f(x)∈Jですから,Jは

F[x]のイデアルです。そして,αはF上代数的なので,

恒等的には0でないf(x)∈Jが存在するためJ≠{0}

です。

次に,p(x)=p1(x)p2(x),p1(x),p2(x)∈F[x],

と因数分解できるなら,degp=degp1+degp2ですから,

1,p2が共に定数でないとき,0<degp1<degpであり,

かつ,0<degp2<degpです。

ところが,p(α)=p1(α)p2α)=0よりp1(α)=0

または,p2(α)=0です。そこでp1(x)∈J,または,

2(x)∈Jです。しかし,J=(p(x))ですから,

これはdegp1≧degp,または,degp2≧degpを意味し,

矛盾です。したがって,このような因数分解は不可能

でaありp(x)は既約です。

かくして,E⊃Fの元αが,体F上の多項式環F[x]

の根となるイデアル:J={f(x)∈F[x]:f(α)=0}

は,F上で既約な多項式p(x)で生成され,J=(p(x))

と書けるとわかりましたが,p(x)の最高次の係数がa

でa≠0なら,(p(x))=(a-1p(x))であり,a-1p(x)

は既約なモニックです。そこで,このモニックを改めて

p(x)と定義すれば,Jはモニックで生成されるイデアル

ということになります。。

以下,一般性を失うことなくJはに常にモニックで生成

されるイデアルであると見なせます。(証明終わり)

[系]:[定理5-5]のαに対するJ=(p(x))の生成モニック

p(x)は,αに対して一意的に定まる。

(証明)f(x)∈J=(p(x))ならf(x)=p(x)q(x)と

なるので,degp≦degfでありp(x)∈F[x]は,p(α)=0

を満たす既約な最低次数のモニックでですから,これが一意的

であるのは自明です。これを最小多項式ともいいます。

(証明終わり)

[定義5-7]; E⊃Fの元αが,体F上の多項式環F[x]

の根となるイデアル:J={f(x)∈F[x]:f(α)=0}

は,αに対し一意に定まるF上で既約なモニックp(x)

で生成され,J=(p(x))となるが,このp(x)の次数

がnなら,αはF上n次である,または,nはαのF上の

次数である,という。

[定理5-6]:体Fの拡大体Eの元αがF上n次のとき,

n個の元;1,α,..αn-1がF上で張る,ベクトル空間:

F(α)={c0+c1α+..+cn-1αn-1:cj∈F}は,Fの

n次の代数的拡大体である。

(証明)まず,c0+c1α+..+cn-1αn-1=0でF上の係数:

0,c1..cn-1の少なくとも1つがゼロでない場合には,,

f(x)=c0+c1x+..+cn-1n-1:とおけば.これは次数

が(n-1)以下のゼロでない多項式でf(α)=0となり,

p(α)=0を満たす最低次の多項式がp(x)でdegp=n

であることに矛盾します。

それ故,1,α,..αn-1は,F上で1次独立です。

次に,∀f(x)∈F[x]はf(x)=p(x)q(x)+r(x),

ただし,degr(x)<degp(x)=n.と表わせます。

すると,p(α)=0なのでf(α)=r(α)となります。

ところがdegr(x)≦(n-1)なので,r(x)∈F[x]は,

r(x)=c0+c1x+..+cn-1n-1,のように(n-1)次以下

の多項式で表わされます。ただし,j=1,.,(n-1)について

係数;c∈Fの少なくとも1つはゼロでないです。

それ故,結局,f(α)=r(α)=c0+c1α+..+cn-1αn-1

と書けるため,任意のf(x)に対して,f(α)∈F(α)が

成立します。そこで,F[x]からF(α)への写像Φを,

Φ{f(x)}=f(α)で定義すると,これはF[x]からF(α)

の上への準同型写像です。

そして,f(α)=0ならr(α)=0 ⇒c0=c1=..=cn-1=0

なので,多項式としてr(x)≡0より,これはf(x)がp(x)

で割り切れて,f(x)=p(x)q(x)(q(x)∈F[x])となる

ことを意味します。

そこでΦ{f(x)}=f(α)=0は,f(x)∈(p(x))と同値

です。故に,Φの核:kerΦ={f()∈F[x]:φ{f(x)}=0}

が,イデアルI=(p(x))に等しくなります。

したがって,準同型定理により,Φから誘導される

{F[x]/(p(x))}からF(α)の上への同型写像;Φ~が存在

します。つまり,Φ~{C(f)}=Φ{f(x)}=f(α)∈F(α)

で定義されるΦ~はF(α)の上への同型です。

多項式環F[x]のイデアルI=(p(x))による剰余類を

C(f)と書けば,C(0)=C(p)=(p()x))が剰余類零元で

あり,C(f)≠C(0)なら,p(x)が既約故,f(x)とp(x)は

互いに素です。

よって,f(x)q(x)+p(x)r(x)=1を満たす

q(x),r(x)∈F[x]が存在してC(fq)=1であり

C(f)C(q)=1より,C(q)が,C(f)の乗法の逆元

{C(f)}-1です。F[x]/(p(x))-{C(0)}が単位元と

逆元を持ち,乗法群をなすため,F[x]/(p(x))は,

体をなすとわかります。

よって,これに同型なF(α)も体をなし.これはn個の

独立な元で張られるベクトル空間ですから,結局,F(α)

はFのn次の代数的拡大体です。(証明終わり)

[定理5-7]:F上のn次の多項式はFの拡大体Eにおいて,

高々n個の根を持つ。

(証明)f(x)∈F[x]が(n+1)個の根α12,..αnn+1

を持つとすると,f(x)は,(x-αj)(1≦j≦(n+1))

なる因数を持つxのn次式なので.1≦j≦nの因数を

採用してf(x)=a(x-α1)(x-α2)・・(x-αn)

とすると,これは,さらにf(αn1)=0を満足します。

すなわち,a(αn+1-α1)(αn+1-α2)・・(αn+1-αn)=0

です。そこで.もしもαn+1≠αj(1≦j≦n)ならa=0

が必要条件で,f()≡0となりf(x)がn次でsるという

仮定に矛盾します。

それ故,(n+1)個のα12,.αnn+1の全てが異なる

わけではないので,異なる根の数はn以下です。

(※体Fが複素数体Cなら代数学の基本定理から少なくとも

1つの根α∈Cが存在して(x-α)という因数を持つこと

から,帰納的に,n次多項式がCにn個以下の根を持つのは

自明なのですが,抽象的な体Fの上では.事情が違います。)

(証明終わり)

[例5-3]:Qを有理数体とするとき,(Q(3√2)/Q)=3である、

(証明)(3√2)はQ上で既約な3次多項式(x6-2)の根です

から,(Q(3√2))/Q)=3であり,Q(3√2)の,Q上の基底は,

1,3√2,,3√22の3つです。(終わり)

[定義5-7](添加された拡大体)

F(α)を体Fにαを添加した体という。

F上代数的な有限個の元:α12,..αmがあるとき.

Fに.順に,これらの元を添加した体の拡大列として,

F(α1)⊂F(α12)⊂…⊂F(α12,..αm)を

得ることができる。

[定理5-8]:F(α12,..αm)は,F上代数的拡大体

である。すなわち,この体の元はF上のある代数方程式

の根である。

(証明)まず,F(α)はn個の基底:1,α,α2,.,αn-1

張られるn次元ベクトル空間で,しかもFの拡大体です。

そこで,[定理5-3]でEが(E/F)=nのFの拡大体

なら,α∈Eのとき(n+1)個の元:1,α,α2,.,αn-1n

は1次従属なので,f(x)=c0+c1x+..+cnnは,

f(α)=c0+c1α+..+cnαn=0という自明でない

関係式を満たすため,αは恒等的にはゼロでないn次

以下の多項式f(x)の根となるという証明をしたもと

同様に,F(α)はF上のn次元ベクトル空間であり,

γ∈⊂F(α)なら,F(α)も体なので,1,γ,..γn-1n

も全てF(α)の元であり.1次従属なのでg(γ)=0を

満たすn次以下のg(x)∈F[x]が存在してγはF上

代数的であり,故に,F(α)はFの代数的拡大体です。

そこでまず,F(α1)はF上有限次で代数的です。

同様にF(α12)はF(α1)上有限次代数拡大です。

{F(α12)/F}={F(α12)/F(α1)}{F(α1)/F}

より,結局,F(α12)はF上でも有限次拡大です。

後は,これを繰り返せば,帰納的にF(α1α,α2,..α)

はF上の有限次代数的拡大体であることがわかります。

(証明終わり)

[例5-4]:ωを1の立方根とすれば,Q(3√2,ω)を考える。

[例5-3]で見たように{Q(3√2)/Q}=3です。

また,ωはQ上x2+x+1=0も根ですからQ上2次で

Q(3√2)上でも高々2次です。

実際にはx2-x+1は,Q(3√2)上でも2次ですから

{Q(3√2,ω)/Q(3√2)}=2なので,{Q(3√2,ω)/Q}=6

と結論されます。(終わり)

[定理5-8]:体Fの多項式;f(x)∈F[x]に対して,

f(x)=a(x-α1)(x-α2)・・(x-αn)(αj∈E)

のように,f(x)のxの1次式の積への分解が可能になる

Fの拡大体Eが存在する。

(証明)f(x)の既約因子p(x)をとる。

変数tの多項式環F[t]のp(tによる剰余体Kを

K=F[t]/(p(t))で定義しgます。

Kにおいて,F[t]の元g(t)の剰余類を{g(t) mod p(t)}

と表わすことにします。

a∈Fのとき,aに{a mod p(t)}∈Kを対応させると

体Fから体Kの中への写像で同型対応が得られます。

a∈Fを{a mod p(t)}∈Kと同一視するとF⊂Kです。

そして,F上の多項式はKの部分体と考えたFの多項式と

考えられます。特に,Kの元{t mod p(t)}をα1と表記

すればKの元としてp(α1)=0となります。

つまり,p(α1)={p(t) mod p(t)}=0です。

それ故,K内の既約多項式として,p(x)=(x-α1)

×p1(x)と書けます。

p(x)はf(x)の既約因子であったので,f(x)は,

f(x)=(x-α1)f1(x)(f1(x)∈K[x])となり

1(x)の既約因子は,また,Kの適当な拡大体をとると

1(x)=(x-α2)f2(x)となり.帰納的に,Fの拡大体

Eが存在して,f(x)=a(x-α1)(x-α2)..(x-αn),

a∈Fa≠0;αj∈E(1≦j≦n)とできます。(証明終わり)

[定義5-8](分解体)

上記[定理5-8]の,f(x)の全ての根を含む拡大体:

E=F(α12,..,αn)をf(x)の分解体」という。

※途中ですがキリもいいし今回は,ここで終わります。

(つづく)

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2021年11月13日 (土)

ガロア理論の復習(4)

※2021年11月4日(木)開始→11月13日(土)

※(余談)最近,日コロナ感染者数が日本だけ,急減

しました。何ら,行政の特別な施策もなく自然消滅

も疑問ですが,専門家の一部たるマスコミ医者,御用

医者も,明確な原因解明ができず,またもや日本人

特有のファクターXとか,危機は最悪を想定して

煽る方が安全とはいえ.根拠不明なのにインフル

が大流行するとか,飲み屋の議論や井戸端会議の

レベルの話を,占い師,予言者のように,偉そうに

TVなどでコメントしてると感じてます。

選挙も終わり,札束で頬をたたくとか.動物

の調教のように,エサで釣ってマイナンバー

カード申請を促すというような人をバカにした

政策も進んでいるようです。どうせ財源は国債

か税金ですから,ツケはどこに行くのかな?

そもそも,カードなどなくてもマイナンバー

という国民背番号は,既に全員に賦与されてます

から,重要な個人情報をデータベースでホスト

のコンピュータ(+バックアップ)にでも蓄積して

おき,それが必要な時と場所で,顔や指紋などで

認証すれば,間違うことなく彼,彼女の番号と

データをオンラインで自動照合できるはずです。

人口14億の中国のように,上海.北京のような

大都市を中心にキャッシュレスで企業の購買情報

も本人認証データも国家政府に把握され.監視カメラ

も4億以上設置されて屋外の個人行動は丸裸にされ,

危険人物,団体と見られると口座をロックされたり

投獄されたりする監視社会がすでに実現している

らしいです。

情報を握っている権力が独裁的強権的なら警察

監視社会の危険性が常にあります。

DNAを登録して認証できれば本人認証の誤認は

ないでしょうが.顔.指紋,DNを全員把握されれば

例えば犯罪を捜査する警察が自由に無断で活用

できるなら.大喜びでしょう。

というわけで,セキュリティ意識が甘くデータ

漏洩が頻繁で,平気で汚職したり証拠隠蔽する

「白アリ」とも称される日本の公務員にどこまで

の個人情報を委ねられるか?使用も監査できるか

疑問です。

問題がクリアされず,信用を得られてないの

に一時のエサにかかる人どれだけいるのかな?

エサでももらえれば,それなりですが。。

(余談終わり)

※本題の続きです。

※第3章 環とイデアル

[加群の定義]:体Kの上での(左)加群Gとは,Gが加法

と見なせる演算で可換群をなし,さらに∀g∈Gに対し

Kの元:cによる(左)スカラー倍:(cg)が定義されて

(cg)∈Gを満たす(右加群なら(gc)∈Gを満たす)

場合に,Gを「(左)加群」という。また,Gの部分群で,

スカラー倍でも閉じているものを部分加群という。

(↑※K上の加群とはK上のベクトル空間(線形空間)

のようなものである。)

[イデアルの定義]:環Rの部分環I⊂Rで.その元の

加法については,IはRの部分加群をなし,∀x∈Iに

対して∀a∈Rの左からの積がIに属する:ax∈I

を満たすものをRの「左イデアル(left ideal)」他方,

右からの積がIに属する:xa∈Iを満たすものをR

の「右イデアル(right ideal)」という。

Rが可換環であれば.Rの左右の両イデアルは一致

するので,単に「イデアル」という。

このとき,a,b∈Rがa~bなる関係にあること,この

関係:~を(a-b)∈Iとなることと定義すると,これは

1つ同値関係です。この関係による同値類の集合は.

剰余環(商環)と呼ばれる環を形成し,これを(R/I)と

表記する。

[定理3-1]:L(n.F)={n次行列:A=(aij)|aij∈F}

(Fはある体)は,環をなすが,これには真の両側イデアル

は存在しない。(※Rの真のイデアルとはI=RとI={0}

という自明なイデアル以外のイデアルIを指す。)

(証明)L(n,F)が数体Fの上で環であることは行列の

和と積(加法と乗法)の定義から自明です。

L(n,F)の両側イデアルが存在するとして.その任意

のイデアルをIとし,I≠{0}であると仮定します、

このとき,Iのゼロでない元をA=(aij)とします。

ただし,このAでは,特定の行iと列jの要素;(i,j)

=(l,m)成分の要素については,aij=alm=0である,

と仮定します。

次に,行列Elmを,(l,m)要素成分だけが1で残りの

全ての要素がゼロのn次行列とします。

つまり,(Elm)ij=δilδjm(i,j=1,..n)とします。

このとき,(EllAEmm)ij=Σλσδilδλlλσδσmδjm

=almδilδjmです。

故に,alm≠0とすると,alm-1(EllAEmm)=Elmです。

ところが,仮定により,Iは両側イデアルなのでAの

左右からのn次行列の積のスカラー(alm^-1)倍もIの元

です。したがって,alm≠0なる∀l,mに対してElm∈I

となります。すなわち,∀i,jについてEij∈Iです。

∀A∈L(n,F)に対してA=Σijijijと書ける

のでA∈Iです。

何故ならイデアルIは,F上の加群でもあるため,

右辺のEij∈IのFの元による線形和もまたIの元

です。

結局,A∈IよりL(n,F)⊂IですからI=L(nF)

であり,Iは環全体に一致し,また,I≠{0}なのでIは

真イデアルではないことがわかります。(証明終わり)

※[定理3-2]:φが環Rから環R~の中への準同型写像

であるとき,Rの部分環Sの像:φ(S)={φ(x):x∈S}

はR~の部分環である。

また,φがR~の上への準同型写像のとき,Rのイデアル

Iの像:φ(I)={φ(x):x∈I}は.R~のイデアルである。

(証明)φは加群としても準同型ですから.φ(S)も加群

としてR~の部分群であるのは自明です。

そして.∀x,y∈Sに対してφ(x)φ(y)=φ(xy)

∈φ(S)(準同型)なので,φ(S)は乗法についても閉じて

います。

次に,IがRの(左)イデアルで,s∈Iでφ(s)∈φ(I)

とします。このとき.φがR~の上への写像なら,∀r~∈R~

に対してr∈Rが存在してr^=φ(r)となるため,写像φ

の準同型性から,r~φ(s)=φ(r)φ(s)=φ(rs)です

が.Iは(左)イデアルなので,(rs)∈Iにより,

φ(rs)∈φ(I)です。それ故.∀s∈Iに対し,∀r~∈R~

でr~φ(s)∈φ(I)が成立するため,φ(I)はR~の

(左)イデアルです。(証明終わり)

[定理3-3](環の準同型定理)

 φが環Rから環R^の上への準同型写像のとき,

I={z∈R:φ(z)=0~}(~0はR~の単位元)はR

の両側イデアルである。そして.剰余環(商環)(R/I)

の元C(x)に対して,φ~(C(x))=φ(x)とする写像

をφ~とすると,φ~は(R/I)からR~の上への同型写像

である。ただし,Iはφの核と呼ばれるイデアルであり,.

I=kerφと表わされる。

(証明)まず,I=kerφは,Rの部分加群です。

何故なら,∀x,y∈Iに対して,φ(x-y)

=φ(x)-φ(y)=0~により,(x-y)∈Iであり,

また,x∈I,r∈Rに対し,φ(rx)=rφ(x)=0~

より,(rx)∈Iであるからです。

さらに,x,y∈Iに対してφ(xy)=φ(x)φ(v)

=0~なので,(xy)∈Iですから,Iは乗法についても

閉じています。それ故,IはRの部分環でもあります。

そしてz∈I,x∈Rならφ(xz)=φ(x)φ(z)=0~

により,(xz)∈Iであり,同様に(zx)∈Iなので.I

はRの両側イデアルです。

IはRの部分加群ですから,群の準同型定理によれば,

φ~は商群(R/I)によって,φから誘導される写像です。

故に,これは(R/I)から加群R~の上への同型写像です。

何故なら,Rを加法群とみたとき,群は可換群なので

部分群は常に.その正規部分群であるからです。

乗法では.φ~{C(x)C(y)}=φ~{C(xy)}=φ(xv)

=φ(x)φ(v)=φ~{C(x)}φ~{C(y)}で,積の準同型性

が保持されます。さらにRが乗法の単位元1を持つ場合は,

φ~{C(1)}=φ(1)=1~(R~の乗法の単位元)です。

以上から,φ~は加法,乗法で共に(R/I)からR~の上

への同型写像です。(R/I)~R~(同型)と表わされます。

(証明終わり)

[R加群の定義]:Rを乗法に関する単位元:1を持つ可換環

とする。このとき,加群MがR上の加群であることを,Mは

R加群である。という。

いい換えると,MがR加群であるとは∀x∈Rと

∀a∈Mに対し,xa∈Mであり,次の3条件を満たす

ことである。すなわち,∀x,y∈R,∀a,b∈Mに対し,

(1)x(ya)=(xy)a(結合則)

(2)(x+v)a=xa+va(分配則1)

(3)x(a+b)=xa+xb(分配則2)の3条件です。

[定理3-4]:加群Mに対して,MからMの中への準同型写像

の全体をEnd(M)とするとき,f,g∈End(M)に対して

(f+g),fgを,次のように定義する。

すなわち,∀a∈Mに対し(f+g)(a)=f(a)+g(a),

(fg)(a)=f[g(a)](合成写像)と定める。

このとき,R=End(M)は,単位元を持つ可換環であり,

Mは,R加群である。

(証明)f,g∈R,a,b∈Mに対して,(f+g)(a+b)

=f(a+b)+g(a+b)={f(a)+g(a)}

+{f(b)+g(b)}=(f+g)(a)+(f+g)(b)で,,

(fg)(a+b)=f[g(a+b)}=f[g(a)+g(b)]

=f[g(a)]+f[g(b)]=(fg)(a)+(fg)(b)

ですから(f+g),fgも準同型であり(f+g)∈R,

かつ,fg∈Rです。また,(f-g)∈Rも同様です。

eを恒等写像:e(a)=aとすれば,eがRの乗法の

単位元となることは自明です。

さらに加法,乗法の結合則,分配則も成立し,加群と

しての単位元である零元:0∈R.および,fの逆元:

(-f)∈Rも存在するため,R=EndM)は乗法の単位元

を持つ環です。そこで∀a∈Mに対してf∈Rとの積

をaf=f(a)∈Mと定義すれば,MはR加群の条件を

満たしています。(証明終わり)

[定理3-5]:MをR加群とするとき,x∈Rに対してMの元

(xa)を対応させると,MからMの中への準同型写像として

xを得る。これは,a∈Mに対しf(a)=xa∈Mとする

写像である。そこで,Φをx∈Rをfxに対応させる写像と

すると,これはRからEnd(M)の中への準同型写像である。

このとき.Φの核をI=kerΦ={Φ(x)=0 }とする。

ただし,φ(x)=0の0は,xa=0 (for ∀a∈M)なる写像

であり,End(M)の元fx=xa=0なる零写像を意味する。

すると(R/I)は,End(M)の部分環:Φ(M)に同型である

ことがわかる。すなわち,Φから誘導される(R/I)からΦ(M)

への写像Φ~は,Φ~(xI)=Φ(x)=fで与えられ,これは

(R/I)からEnd(M)の部分環;Φ(M)の上への同型である。

そこで,これをΦ(M)~(R/I)(同型)と書く。

a∈Mなら,x∈Rに対し(xI)を同値類記号C(x)で

表わせば,写像としてΦ~{C(x)a}=f(a)である。

つまり,C(x)a=xaと定めることにより.R加群M

が,(R/I)加群であるとも考えられる。

(証明)これは群Gと部分群Nによる商群,環RとイデアルI

による商環についての準同型定理と同様な命題であり,証明

はそれらと同じなので.ここでは割愛します。(終わり)

※R加群;Mは実質的には上記定理のような加群です。

[R部分加群の定義]:R加群Mの部分群Sが,またR加群

であるとき,SをR加群の「R部分加群」である,という。

1,a2,..an∈Mのとき,係数x1,x2,.xn∈Rを持つ

線型関係:(x11+x22+..+xnn)の元の全体集合は

R部分加群である。

※これをa1,a2,..anの生成するR部分加群という。

[定理3-6];MをR加群,SをそのR部分加群とする。

このとき,剰余加群(M/S)もR加群と見なせる。

(証明)r∈Rであり,m∈MでC(m)∈(M/S)のとき,

rC(m)=C(rm)と定義すると,Sは加群なので

C(m~)=C(m)は(m~-m)∈Sを意味するため

r(m~-m)=(rm~-rm)∈Sです。

つまり,C(rm~)=C(rm)となり,C(m)∈(M/S)

なら,rC(m)∈(M/S)なので,(M/S)もR加群です。

(証明終わり)

[定理3-7](R加群の準同型定理)

φをR加群MからR加群M~の上へのR準同型写像φと

する。つまり,通常の準同型@φ(x+y)=φ(x)+φ(y),

および,φ(xy)=φ(x)φ(y)(x,y∈M)なるち性質に

加えて,r∈Rに対してφ(rx)=rφ(x)を満たす写像

とする。φをMからM~への加群としての準同型と見たとき

の核を,I=kerφ={z∈M:φ(z)=0~}とすると,核Iは.

R部分加群であり,φはR加群(M/I)からR加群M~の

上へのR準同型写像;φ~を誘導する。

(証明)∀z1,z2∈I,に対して,φの準同型性によって,.

φ(z1―z2)=φ(z1)-φ(z2)=0~より(z1-z2)∈I

なので,IはMの部分加群です。

次に,z∈I,a∈Rとするとφ(az)=aφ(z)=0~

より,(az)∈Iなので,IはMのR部分加群です。

剰余群(M/I)の元C(a)=aI(a∈M)に対して

φ~{C(a)}=φ(a)とすると.φ~は加群(M/I)から

加群M~の上への同型写像です。(群の準同型定理)

さらにx∈Rとするとφ~{xC(a)}=φ~{C(xa)}

=φ(xa)=xφ(a)=xφ{C(a)}­が成立するので,

φ~はR同型写像です。(証明終わり)

[Hom(MM)の定義]:Hom(M,M~)をR加群MからR加群M~

へのR準同型写像の全体集合とする。

φ12∈Hom(M,M~)に対してa∈Mのとき,加法と乗法

を(φ1+φ2)(a)=φ1(a)+φ2(a),および,(φ1φ2)(a)

=φ1(a)φ2(a)で.それぞれ,(φ1+φ2),および,(φ1φ2)を

定義する。

※Hom(M,M~)がR加群となることは,証明するまでもなく

明らかなことです。

[G加群の定義]:Mが群G上の加群であるとき,MをG加群

という。すなわち,∀g∈G,∀a∈Mに対して(ga)∈M

であり,a∈M,g,h∈Gに対しg(ha)=(gh)aが成立,

し,eをGの単位元とするとea=aとなるとき,MはG加群

である。

 

第4章 体とベクトル空間(線形空間)

[体の定義]:これについては,本シリーズ記事(1)の第0章で

記述したものを再掲します。

集合Kの上で乗法(・)と加法(+)という2種の2項演算

が定義されており,加法では(K,+)が可換群をなし,その

単位元を0(ゼロ)と書き零元と呼ぶ。また,この0を除く集合

×=K-{0}は,乗法について群をなし,この乗法群の単位元

eは1と書くこともある。このとき,任意のKの元:a,b,c

について,分配則:a・(b+c)=a・b+a・cが成立する

なら,(K,・,+)の組を「体(field)」という。特に乗法

についても可換なら,Kを「可換体」という。

[K加群の定義]:Mが体K上の加群なら,MをK加群という。

Mが加法について可換群をなし,Kの元によるスカラー倍

が定義されて閉じたK上の線形空間となるものをK(左)加群

というのである。K加群はK上のベクトル空間と同義です。

[ベクトル空間の定義]:これは省略して既知とします

(↑※詳細は線型代数学のテキストを参照されたい。)。

[定理4-1]:体K上のm個(m≦n)の同次連立方程式:

i=Σj=1nij)=0(i=1,..m)(1)の解;(xj)

の全体は,K加群:Knの中で,部分空間Sをつくる。

※Knは,体K上のn次元ベクトル空間全体を意味し,

Sは.そのm次元の線形部分空間であるという意味

です。さらに,非同次方程式Li=Σj=1nij=bi.(2)

(i=4,..,m)が解を持てば,解(yj)の全体はKのSに

よる1つの剰余類をつくる。

(証明)Sは(1)の解集合ですからx,x~∈Sとすると,

Σj=1nij(x-x~j)=0 (i=1,..m)が成立するので,

(xj-x~j)∈Sです。さらにλ∈KならΣj=1nij(λx)

=0(i=1,..m)により,(λxj)∈Sです。SはLK群:

nの部分集合ですから,これらにより,SはKnの線形

部分空間です。

次に,(2)の解全体の集合をMとして,y,y~∈M

とすれば,Σj=1nij(y-y~j)=0(i=1,..m)が

成立します。そこで(yj-y~j)が(1)の解となるため,

(yj-y~j)∈Sです。

これは,Mが(M/S)の剰余加群の1つの同値類である

ことを意味します。(証明終わり)

[定理4-2]:体F上のベクトル空間:Vの部分空間をWと

する。剰余加群(V/W)の元C(v)とx∈Fに対して,

C(xv)=xC(v)と定めると,(V/W)は,体F上の

ベクトル空間となり,dim(V/W)=dimV-dimWを

満たす。※このとき,(V/W)をVの剰余空間という。

(証明)C(v~)=C(v)のとき.(v~-v∈Wですから,

x∈Fなら{x(v~-v)}∈Wです。

故にC{x(v~-v)}=0なのでC(xv~)=C(xv)

です。

それ故,C(xv)=xC(v)という定義は一意的です。

ここで,dimW=m,dim(V/W)=rとして,Wのm個,

および,(V/W)のr個の基底をそれぞれ,w1,..,wm,

および,C(v1),..C(vr)とします。

Vの元がv=x11+..+xmm+y11+..+yrr

と表わせるとすると,w∈Wを含む加群(V/W)の元,,

つまり,同値類はC(0)=0+Wで,加群(VW)の零元です。

つまり:C(w)=C(0)=0ですから,j=1,..mの全て

において,C(wj)=0です。よって,上記のvの同値類は

C(v)=y1C(v1)+..+yrC(vr)と,r個の(V/W)の

基底の線型結合で表わされます。

それ故,v=0なら.C(v)=0なのでy1=..=yr=0であり

,故にx1=..=xm=0が従います;

以上から,w1,..wm,v1,..vrは全て独立であり,Vの

基底となり得ます。何故なら,∀v∈Vについて同値類は,

C(v)=y11+..+yrC(vr)と書けるので,wを

w=v-(y1(v1+..+yrr)と定義すれば,C(w)=0

により,w∈Wです。

w=x11+..+xmmと表わせるため,∀v∀Vが,

常に,v=(x11+..+xmm)+(y11+..+yrr)の形

に表わせるからです:

したがって,dimV=(m+r),つまり,r=dim(V/W)

=dimV-dimWを得ます。(証明終わり)

[定理4-3]:V,Wを体F上のベクトル空間とする。

そしてφをVからWへの準同型写像する。

このとき,V0={v∈V:φ(v)=0}とすると,(V/V0)

はVの部分空間であり,V0による剰余空間(V/V0)からW

の上への同型写像φ~が誘導される。

そして,dimV=dimW+dim(V/V0)である。

(証明)v1,v2∈V0のとき,φ(v1+v2)=φ(v1)+φ(v2)

=0より,(v1+v2)∈V0,また,v∈V0,x∈Fなら,φ(xv)

=xφ(v)=0なので,(xv)∈V0,よってV0はVの部分空間

です。V0はφの核kerφですから,すぐ前に示したF加群の

準同型定理により,(V/V0)からWの上への同型写像φ~を,

φ~{C(v)}=φ(v)で,φから誘導される写像として与える

ことができます。そして,,dimV=dimW+dim(V/V0)です。

(証明終わり)

[定理4-4]:Lを非可換環Rの左イデアルとする。

このときI={x∈R:xL=0}はRの両側イデアルである。

(証明)z∈L,a,b∈Iなら(a±b)z=az±bz=0

,それ故,(a±b)∈Iです。また,(ab)z=0から

(ab)∈,Iです。,故にIは環Rの部分環です。

次に,∀z∈Lに対してLはRの左イデアルですから

x∈Rに対して(xz)∈Lです。

一方,a∈Iなら.任意のLの元zについて(az)=0

です。故にa(xz)=0です。

以上から(xa)z=0,かつ.(ax)z=0なので

(xa)∈I,かつ.(ax)∈Iとなり,Iは両側イデアル

です。(証明終わり)

[定理4-5]:体Kから環Rへの準同型写像は零写像か,

または,同型写像でぁる。

(証明)φを,体Kから環Rへの(環)準同型写像とします。

φの核:I=kerφ={a∈K:φ(a)=0}はKのイデアル

です。何故なら,a∈I,x∈Kなら(φ(xa)=xφ(a)

=0により(xa)∈Iであるからです。

ところが,体Kのイデアルは,K自身か,{0}です。

何故なら,a∈Iならaa≠0の場合は逆元.a-1

が存在して 1=(a-1a)∈Iですから.∀x∈K

に対して,x=(x・1)∈Iですが,0∈Iですから

K⊂Iです。他方,a≠0のa∈Iが存在しない

ならI={0}です。

そこで,K⊂Iの場合は.I=kerφ=Kで,φ(K)

={0}なので,φは零写像であり.他方,I=kerφ={0}

の場合は.K=(K/I)~Rで,φは,Rの上への同型写像

です。(証明終わり)

[定理4-6]:非可換環Rの有限個の両側イデアを.

1,I2,..Imとする。R=I1+I2+..+Im

のとき.i≠jなら(Iij)=0である。

(証明)あるi,j(i≠j)についてα≠0,かつ,

α∈(Ii∩Ij)とすると,0∈Rは,0=0+0+.+0,

または,0=0+..+α+0+..+(-α)+.++0と

なり,,直和分割が一意的でないという矛盾です。

それ故,i≠jなら(Ii∩Ij)={0}です。

そして,Ii,Ijは両側イデアルなので(IiIi)⊂Ij,

かつ,(Iij)⊂Iiですから,(Iil)=0です。

(証明終わり)

[定理4-7];φを環Rから環R~の中への準同型写像

とする。I~をR~の両側側イデアルとするとφ-1(I~)

はRの両側イデアルである。

(証明)まず,I=φ-1(I~)とおきます。.

そこで,a∈I,x∈Rなら,φ(a)∈I~であり,,

φ(xa)=φ(x)φ(a)ですが.φ(x)∈R~であり

I~はR~の両側イデアルですからφ(xa)∈I~と

なるため.(xa)∈Iです。

同様に,φ(ax)=φ(x)φ(a)∈I~より,

(ax)∈Iです。したがって,IもRの両側イデアル

です。(証明終わり),(

※途中ですが,今日はここで終わります。(つづく)

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2021年11月 3日 (水)

ガロア理論の復習(3)

※2021年10月25日(月)開始→11月3日(水)

※(余談):何かコロナウイルス自滅仮設が現実に

なったかのようです。私は数万人に1人くらいの

特異体質を自認していて医師の余命宣告も不発です

から.如何なるワクチンも拒否していますがそれでも

何とか生きています。

今は大谷翔平君,大坂なおみちゃん,渋野日向子

ちゃんのニュースのみ期待してます。選挙結果

もほぼ予想通りでした。投票に行く人が保守的な

日本人的な人達です。アウトサイダーには競馬

予想のような興味だけです。(余談終わり※)

※さて本論の続きです。

※Gが可換群なら乗法でなく加法で置き換えても

議論は「同じです。その場合,単位元は0で巡回群

は,<a>={0,a,2a,.}であり,位数がqの有限

巡回群ではa≠0なら,qをqa=0を満たす最小

の自然数として<a>={0,a,..(q-1)a}です。

(※例えばmod qの整数,つまりqで割った剰余の集合

をGとすると,G={0,1,.,(q-1)}であり,これは

加法群としては,巡回群<1>であり,q・1=q=0です。)

また,Gが部分群:H1,..,Hmの直積で表わせる場合も

Gが可換群なら乗法の積を加法の和に置き換えが可能で

直積;G=H1×H2×,,×Hmは,直和G=H1+..+Hm

=Σi=1miと,解釈できます。

[定理2-5];(基本定理):任意の有限生成の可換群Gは

巡回部分群:H1,..Hmの直積で書ける。ただし,mは

ある極小な生成系の元の個数である。

(証明)まず,1個の生成元のm=1ならG=H1=<h1

であり,定理の成立は自明です。

そこで,(m-1)個の生成系では定理が成立すると

仮定します。

極小な生成系の全ての自明でない1次関係で

係数に最小の正数が現われるものを,

11+..+xmm=0..I1)とします。

ただし,hi∈G.xi∈Z(i=1,2,..m)です。

一般性を失うことなく,xj(1≦j≦m)のうちで,

1が最小の正の数であるとすることができます。

他方,任意の関係式y11+..+ymm=0,(2)

i∈Z(1≦i≦m)をとると,x1/y1,つまり,x1

1の約数です。

何故なら,y1=qx1+r(0≦r<x1)なら,(2)から

(1)×qを,辺々引くと,rh1+..+(ym-qxm)hm=0

となり,もしもr>0ならrが最小の正整数x1よりも

も小さい正整数となり矛盾が生じるので,r=0でしか

あり得ないからです。

また,(1)において,x1/xj(2≦j≦m)でもあります

何故なら,例えばx2=qx1+r(0≦r<x1)ならm個

の生成系を(h1+qh2),h2,..hに変えれば,(1)式は,

1(h1+qh2)+rh2+..+xmm=0と書き直せます。

それ故,左辺のh2の係数rが正ならx1の最小性に矛盾

するため,やはり.r=0です。

したがって,x2=q21,..xm=qm1と書けるので

(1)はx1(h1+q22+...+qmm)=0を意味します。

 そこで,h~1=h1+q22+..+qmmとおけば,h~1

も極小生成系の1つであり,x1h~1=0なのでx1が最小

の正整数であることから,これは位数がx1の巡回部分群

<h~1>を構成することに同義です。

ここで,z1h~1+z22+..+zmm=0(z∈Z)

(j=2,..m)を.生成系:h~1,h2,..hmの間の任意の関係

とすると,前のx1/y1を導いたのと同様にして,x1/z1

得ます。それ故,x1h~1=0からz1h~1=0となります

から,先の任意の関係式がz22+..+zmm=0に帰着

します。

そこで,(m-1)個のh2.,..hmによって生成される

Gの部分群をG2とし,一方.巡回部分群<h~1>をG1

と書けば,群Gは,G=G1+G2(G1∩G2={0})と直和

で表わせます。

ところが,帰納法の仮定によりG2は(m-1)個の

巡回部分群の直積(直和)ですから,これとG1

合わせたG=G1+G2は.m個の巡回部分群の直積

(直和)です。(証明終わり)

[定理2-6]:単位元以外の元の位数が2の群は可換群

である。

(証明)定理に仮定された群をGとします。

∀σ,τ∈G(σ≠e,τ≠e)に対して.σ2=τ2=e,

かつ,(στ)2=στστ=eです。

最後の式στστ=eの両辺に左からσ,右からτ

を掛けると,τσ=στを得るのでGは可換群です。

(証明終わり)

[定理2-7]:巡回群Gでは,部分群H,および,商群

(G/H)も巡回群である。

.(証明)H={e}=<e>ならHは位数1の巡回群で,

G/H=G/{e}={a{e}:a∈G}={a∈G}=G

なので,商群(G/H)にも定理の成立は明らかです。

また,H=GならH=Gは巡回群であり,商群は

G/H=G/G={aG:a∈G}={G}で,これは単位元

G=Hのみが元の,位数1の巡回群です。

次にHがG=<a>(a≠e)の自明でない部分群

なら,Hの元は全てam(m∈Z)の形です.a≠eより,

d∈Hとなる最小の正整数dをとりm=qd+r

(0≦r<d)とすると,ar=a(m-qd)=(am)(ad)-1∈H

となるため,r>0であるとdの最小性に反するので

r=0です。それ故,m=qdですから,常にam=(ad)

となり,Hは巡回群<ad>であることがわかります。

そして,(G/H)の元はanH(n∈Z)で,これは(aH)n

に等しいので,(商ふんもG/H)=<aH>の巡回群です。

(証明終わり)

[定理2-8]:p.qを相異なる素数とする。

G={pmn;m,n∈Z}なる可換群は巡回群ではない。

(証明)p=p10,q=p01よりp.q∈Gです。

[定理2-7]より可換群Gは巡回部分群の直積で

書けますが,Gの生成元はp,qであり明らかに

G=<p><q>です。

<p>も<q>もGの部分群ですが,前定理

から,Gが巡回群<a>なら部分群はH=<ad

となりますが,a=pnに対し,ad=(pmn)d

=p(d>0)となるのはmd=1,n=0のみであり,

d=(pmn)d=qとなるのはnd=1,m=0のみ

です。これは,素数p,qでは不可能ですからGは

巡回群ではあり得ません。(証明終わり)

(系)有理数体Qの乗法群:Q×=Q-{0}は巡回群

ではない。

(証明)有理数体の集合Qは,整数Zとの直和

で,Q=Z+{pq1:p,qは素数}と表わせて.

×=Q-{0}は,乗法について可換群をなします。

そこで,G={pmn;m,n∈Z}は,Q×の1つの

部分群です。もしもQ×が巡回群ならその部分群

Gも巡回群ですが.定理によってGは巡回群では

ないのでQ×も巡回群ではないです。(証明終わり)

[定理2-9]:Hを群Gの部分群とし,x∈Gとする

とき,(x-1Hx)もGの部分群である。

※(x-1Hx)をHに供役な部分群といいます。

(証明)∀x-11x,x-12x∈(x-1Hx)に対して

(x-11x)(x-12x)-1=x-1(h12-1)xですが

1,h2∈HでHがGの部分群なのでh12-1∈∈H

ですから,(x-11x)(x-12x)-1∈(x-1Hx)です。

したがって.x-1HxもGの部分群です。

(証明終わり)

[定理2-10]:可換群Gにおいて,有限位数の元全体は

Gの部分群をつくる。

(証明)Gの有限位数の元全体の集合Hは,.

H={a∈G|ad=e.for some d∈(N+{0})}と

表わされます。(Nは自然数の集合です。)

そして,a1,a2∈Hなら,a1d1=e,a2d2=eを満たす

非負の整数d1,d2が存在します。

このとき,(a12-1)d1d2=eを得るので(a12-1)∈H

です。それ故,HはGの部分群です。(証明終わり)

[例2-1];位数が12の巡回群<a>の生成元とは?

(解)G=<a>(a12=e)の元bがGを生成するため

の必要十分条件は|G|=12と互いに素なkが存在して

=b,となることです。

 何故なら,kが12の1でない約数なら,kd=12と

なる正整数:d<12が存在してbd=(ak)d=a12=eと

なるため,G=<a>=<b>で,|G|=d<12という

矛盾が生じるからです。故に,k=1,5,7,11であり生成元

はa,a5,a7,a11のいずれかです。(q.e.d).

[例2-2]:無限巡回群<a>の生成元とは?

)解)G=<a>=<b>すると,b=a,かつ,

a=blを満たす正整数k.lが存在するはずです。

するとa=aklなので.a(kl-1)=eです。

しかし,G=<a>の位数は∞なので(kl-1)

がゼロでない場合は有り得ません。

故にkl=1ですから,k=l=±1(複号同順)でa

とa-1のみがGの生成元となり得ます。(q.e.d)

[定理2-11]:位数が素数:pである群は巡回群である。

(証明){G{=p(素数)とします。a∈Gでa≠e

とすると,<a>はGの巡回部分群で,位数はpの約数

ですが,<a>≠<e>により,これは1ではないので,

,|<a>|=p=|G|です。

それ故,G=<a>となるので,Gは巡回群です。

(証明終わり)

[定理2-12]:Nが群Gの部分群で指数が|G:N|=2

なら,NはGの正規部分群である。

(証明)仮定から,a,b∈(G-N)について

G=N+aNであり,また,G=N+Nbです。

それ故,Na=bNです。

しかし,指数が2なので,右剰余類で考えると,

aN=bNです。

故にaN=Na=(G-N)となりますから,

N=aNa-1です。これはNがGの正規部分群で

あることを意味します。(証明終わり)

[定理2-13]:g∈Gに対して,φa(g)=a-1ga∈G

を対応させる写像φa:G→Gは自己同型写像である。

つまり,GからG自身への準同型全単射(bijebtion)

である。

そしてAut(G)={σ:G→G:σは自己同型}とすると,

これは群で,Inn(G)={φa:G→G}は,その正規部分群

である。
(証明)∀g1,g2∈Gについて,φa(g12)=a-1(g12)a

=(a-11a)(a-12a)=φa(g1a(g2)が成立するので,

∀a∈Gに対してφaは準同型写像です。

そしてg∈Gならg~=aga-1とおくと,φa(g~)=g

となるので,φaは全射(Gの上への写像;surjection)であり,

φa(g1)=φa(g2)ならa-11a=a-12aより,g1=g2,

(言い換えるとg1≠g2ならφa(g1)≠φa(g2))ですから,

φaは単射(1対1写像;injection)でもあります。

以上から,φaは群Gの自己準同型写像です。

次に,Aut(G)が閉じていて群をなすのは自明です。

そして,Φab∈Inn(G)なら,φaφb-1(g)

=φab-1(g))=a-1(bgb-1)a=(b-1a)-1g(b-1a)

=φb-1a(g)なので,φaφb-1=φb-1a∈Inn(G)より,

Inn(G)はAut(G)の部分群です。

さらに,∀Φa∈Inn(G)は,∀σ∈Aut(G)に対して,

(σφσ-1)(g)=σ[a-1-1(g)}a]

=a-1[σ{σ-1(g)}]a=a-1ga=φa(g)を満たす。

つまり,σφσ-1=φ∈Inn(G)ですからInn(G)は

Aut(G)の正規部分群です。(証明終わり)

[例2-3]:位数が6の群Gの構造

σ∈Gならσの位数は6の約数です。

σ≠eなら位数は2,3,6です。

(1)σの位数が6ならGは巡回群でG=<σ>

(2)e以外の元の位数が全て2なら,Gは可換群です。

そこでσ≠eとすると,σ2=eで<σ>は巡回部分群

であり,(G/<σ>)の位数は3の素数ですから巡回群

です。しかし,τ∈<σ>とすると,τ2=eで{τ<σ>}2

=<σ>,つまり,τ<σ>の位数は2で3ではないので

矛盾です。ですから,この場合は有り得ません。

(3)位数が3の元σが存在する。このとき,σ≠e,σ3=e

で,(G/<σ>)の位数は2,指数|G:<σ>|=2を意味

するので<σ>はGの正規部分群です。

それ故,τ∈<σ>とすると,τ-1στ∈<σ>ですが,

τ-1στ=σなら,στ=τσ,σ3=e,で{τ<σ>}2=<σ>,

τ2=eで,τ-1στ­=σ2なら,στ=σ2τ,τ2=eです。

[定理2-14]:Gを群,Aを加法群とする。

Hom(G,A)={f:G→A:準同型写像}とすると,x∈G,

f,g∈Hom(G,A)に対し,(f+g)(x)=f(x)+g(x)

なる演算(加法)で群をなす。

特に,G,Aが共にn次の巡回群ならHom(G,A)もn次の

巡回群である。

(証明)f,g∈Hom(G,A)とすると,f,gはGの上で準同型

なので,∀x1,x2∈Gに対して,加法の定義により,

(f+g)(x12)=f(x12)+g(x12)={f(x1)+f(x2)}

+{g(x1)+g(x2)}=(f+g)(x1)+(f+g)(x2)ですから,

和:(f+g)もGの上で準同型,(f+g)∈Hom(G,A)です。

そして,加法は可換演算なのでf+g=g+fです。

次に,f,g,h∈Hom(G,A)ならf+(g+h)

=(f+g)+hの結合則の成立は,自明です。

∀x∈Gに対して0(x)=0なる写像:0は明らかに

Hom(G,A)の単位元となります。

そこで,f∈Hom(G,A)に対して(-f)(x)=-f(x)

で定義される写像(-f):G→Aは,写像fの逆元となって,

f+(-f)=0,(-f)+f=0を満たします。

以上から,Hom(G,A)は1つの可換群です。

特に,G,Aが共に巡回群でG=<x0>,A=<a>の場合

f∈Hom(G,A)でf(x0)=aとなるfとx0∈Gが存在します。

fは準同型ですからf(x0k)=ka(k∈Z)となります。

この写像f;G→Aについてx=x0k,y=x0l∈G(k,l∈Z)

なら,f(xy)=f(x0k0l)=ka+la=f(x)+f(y)であり,

確かにfは準同型です。

そこで,aの位数がn,つまり,n=|<a>|のn次巡回群の

場合:na=0なので,Gの任意の元:x=x0(k∈Z)に対し,

nf(x)=f(x0k)=nka=0 です。

xはGの任意の元なので準同型写像として恒等的にnf≡0

であることを意味すます。

nはna=0となる最小の正整数で,ma=0ならn/m

です。故に,mf≡0ならmf(x0)=ma=0より,n/mです。

つまり,n≦mですからfの位数もnです。

他方,g∈Hom(G,A)ならg(x0)=ra∈Aとなるr∈Z

が存在しますから,g(x0)=rf(x0)です。

そこで,∀x=x0k;∈Gについてもg(x)=rf(x)となり

写像としてg≡rf,つまりg∈<f>(加法巡回群)です。

以上から,Hom(G,A)=<f>で,Hom(G,A)も位数がn

のn次巡回群です。(証明終わり)

[定理2-15];Gを可換群とし,Nをその部分群とする。

Gが無限巡回群ならG~N×(G/N)(両辺は同型)である。

(証明)Gは可換群でNをその部分群とします。

まず,無限巡回群は加群Z(整数)と同型です。

何故なら,<a>が無限巡回群ならan~nは明らかに同型対応

ですから<a>~Z(同型)と書けます。

さて,[定理2-7]からGが巡回群なら,Nも商群(G/N)も巡回群

です。Gが無限巡回群ならNも(G/N)もそうです。

商群は(G/N)={C(a):a∈G}です。ただし,C(a)

=aN=Naです。

商群も無限巡回群なので(G/N)=<C(a)>と書けます。

一方,K=<a>とし,a≠eならa∈GよりKも無限巡回群

です。ar∈K(r∈Z)でC(ar)=arNなのでC(ar)∈KN

ですが,C(ar)=srN=(aN)r=C(a)∈(G/N)でも

あります。それ故,KN=(G/N)でG=N×KNでます。

無限巡回群は全て加群Zと同型ですから,結局のところ,

G~N×(G/N)~N×(KN)~Zです。(証明終わり)

※<a>が無限巡回群であるとは,ar=eがr=0を意味する

巡回群のことです。

[定理2-16]:位数が素数pの2乗;p2である群は可換群である。

(↑※後記:この定理は間違いで成立しない。?)

証明)まず,Gを位数がp2の群とすると,|G|=p2なので,

その任意の元の位数はp2の約数であり1,p,p2のいずれか

です。しかし,Gの位数は1より大なのでa≠eのa∈Gが

必ず存在して,その位数は,pまたは,p2です。

そこで.a≠eでa∈Gならap=eまたは(ap)p=e

です。|<a>|=|<ap>|=pで<a>も<ap>もG

の巡回部分群です。

それ故,もしもap=eなら巡回部分群<a>をKとおけば.

|K|=pで.商群(G/K)の位数はpです

(G/K)={eK,x1K,..xp-1K}と書けば,j=,1..,p-1

についてxj∈(G-K)ですが.この商群も位数が素数pです

から.巡回群です。したがって,(G:/K)=<bK>,

b∈(G-K)と書けます。その元は(bK)r=br­K(r∈Z)

です。巡回群なので元は可換ですから,∀x,y∈Gに対して

(xK)(yK)=(yK)(xK)です。

よってxy=yx(可換)です、

(↑※後記:ここは疑問です?mod Kでxy~yxに過ぎない

と思います。そこで,位数がpの巡回群(可換群)の直積で。

G=<b>×<a>と書けても,一般に直和てはないので.

<a>×<b>に一致するとは限りません。)

故に,Gは可換群です。(??)

他方(ap)p=eで,|<a>|=p2なら|G|=|<a>|

なので,G=<a>でGは巡回群なので可換群です。

(証明終わり)(つぐく)

※PS:今年も2006年1月に知り合った巣鴨一番街の

3年くらい前に立ち退きでなくなった小さなスナック

バーの,長崎出身のマスターで15年来の親友が10/28

に亡くなったという訃報が10/31に他の知り合いから

の連絡でわかりました。

コウちゃん,トシちゃんと呼ぶ間柄でした。彼は

1953年7月生まれのはずですから,まだ68歳です。

半年くらい前にガンが転移して再発したかもという

連絡がありましたが,私も介護,看護を受けてる身で何も

できません。最近は,ガンでもいずれは良くなるだろう

と放置していましたから,寝耳に水です。、

毎年のように71歳の私と同年代の長い付き合いの友達

が亡くなったという連絡がありますが.ほぼ全員死因はガン

のようです。

私のような慢性の糖尿病から心臓病,腎臓病の方長生きして

います。もはや,ほぼ動けない身体の私はどうしようもなく

自宅で勝手に焼酎でも飲んで一人通夜をするだけです。

慢性病持ちの私の方が先に逝くはずでしたがシブトイ

憎まれっ子のようです。夜にハバカリかい!!

  合掌!

 

 

 

 

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2021年10月24日 (日)

ガロア理論の復習(;2)

※2021年10月8日(金)開始→10月24日(日)

※(余談):私は,1浪して19歳で大学の理学部の

物理学科に入学しました。15歳(中3)のとき父

が病死,兄2人,姉1人の末っ子で,急に母子家庭

の貧乏になり中高一貫の私立校だったので,高校

は父の退職金や特別奨学金で普通に卒業したの

ですが,遠くの国立大学に入ったので下宿して,

ほぼ,奨学金とアルバイトで生計を賄ってました。

それでも3年生で,必須の「統計力学Ⅰ」と

「物理実験学」の2科目合計4単位?を落とし

留年して「.その1年は奨学金もストップで,もう

1年3年生をやりました。

蛇足ですが3年になる前の2年生の春にも教養

の「憲法」を落とし再試験のときは成田(三里塚

芝山町)で空港建設反対で1カ月程常駐して援農

やすわり込み,デモなどをしていたので落第の

ままで大学では教員免許取れませんでした。

しかし,私,昔から転んでもタダでは起きない

性格で,2度目の3年生では物理講義は,たった

2科目で暇だったので,1年後輩の数学科の3年

の教室にもぐりこみ数学の講義を受けました。

大学での物理学の講義は,高校物理とはあまり

にも違う内容で,未知の事柄の話をいきなりされ

ノートを取るのがやっとでチンプンカンプンで,

理解するには自分で本で独習するしかなかったの

に比べ,数学科の数学の講義は定義,定理,証明と,

何も知らない状態から丁寧で,高校時代と同じく

出席して講義を聞いてるだけで独習しなくても

自然に頭に入ってきて,ある意味で「これが大学

の講義なんだ。」と衝撃を受けました。

翌5年目は,奨学金復活し普通に物理学科4年

の講義を受けたため,数学科の4年の講義は受ける

暇はなかったのですが,集合・位相や群・環・体の

代数学,数論,解析学,関数論などの必要で基礎的な

知見は3年生の専門科目で十分で,主にこの頃に

入手したモノが.現在の頭に残っています。

さて,最近,Amazonで「博士ルーペ」という商品

らしいがTVショップより安いモノがあったので

注文して届き,掛けてみました。

あくまで1個人の感想ですが,昔,まだ,初期の有名

でなかった頃にハズキルーペを買って,すぐフレーム

が壊れ,結局,使えなかったのと比べて,私のような

弱視でも書に近づくと見えます。

まあ,ルーペですからね。(余談終わり※)

 

※さて本論の続きです。

[定理8](準同型定理):群GとG~があってφ:G→G~

がG~の上への準同型写像であるとき,集合N=kerφ

={x∈G}φ(x)=e~}(ただしe~はG~の単位元)

をφの核(kernel)と定義すると)(G/N)からG~への

写像:φ~:gN→φ(g)は商群(剰余群):(G/N)から

ら群G~の上への同型写像である。

このφ~を「φから誘導される写像」という。

(証明)(φ~の一意性):φ~(g1N)=φ~(g2N),

つまり,φ(g1)=φ(g2)なら,φの準同型性から

φ(g1)・[φ(g2)]-1=e~であって同じく準同型

なのでφ(g12-1)=e~です。

これは,12-1∈kerφ=Nを意味します。

故に,g1∈g2Nですからg1N=g2Nと結論されます。

(φ~の準同型性):次に,φ~(g12N)=φ(g12)

=φ(g1)φ(g2)=φ~(g1N)φ~(g2N)より,

φ~が準同型であることは自明です。

(φ~の全射性):最後に,φはG~の上への写像です

から,∀g~∈G~に対しφ(g)=g~となるg∈G

が存在します。

それ故,gN∈(G/N)でありφ~(gN)=g~となる

ため,φ~もG~の上への写像であることになります。

(証明終わり)

[定義]:NをGの正規部分群とするとき.∀g∈Gに

対し,κ(g)=gNとする写像:κ:g→gNをGから

(G/N)への「自然な準同型写像」という。

これが上への写像であることは明らかです。

[定理9]:φをGからG~の上への準同型写像,N~

をG~の正規部分群とする。

Nをφの原像:N=φ-1(N~)={g∈G:φ(g)∈N~}

とすると,φ~(gN)=φ(g)N~によって商群(G/N)

から商群(G~/N~)の上への同型写像が得られる。

(証明)写像:ψ:G~→(G~/N~)を∀g~∈G~に対し

ψ(g~)=g~N~なる写像として与えます。

すると,合成写像:(ψ・φ)(g)=ψ{φ(g)}

=φ(g)N~は,Gから(G~/N~)の上への準同型

写像です。何故なら,φがGからG~の上への準同型

であり,ψもG~から(G~/N~)の上への準同型である

からです。

さて,N=φ-1(N~)なので∀g1,g2∈Nに対して,

φ(g1)∈N~,かつ,φ(g2)∈N~です。故に,φの

準同型性から,φ(g12-1)=φ(g1){φ(g2)}-1∈N~

であり,それ故,g12-1∈N=φ-1(N~)となります。

そこで,まずNはGの部分群であることがわかります。

次に,φが準同型なので,∀h∈Nと∀g∈G

に対して,φ(g-1hg)={φ(g)}-1φ(h)φ(g)

ですが,φ(g)∈G~,φ(h)∈N~で,N~がG^の

正規部分群なので,結局,φ(g-1hg)∈N~です。

よって,g-1hg∈Nであり,故にNはGの

正規部分群であることが示されました。

そして,κ=(ψ・φ)とおくとき,κ(g)

=ψ{φ(g)}=φ(g)N~=N~=e~N~は,

φ(g)∈N~と同値であり,これは,g∈N

=φ-1(N~)と同値です。

それ故,N=ker(κ)が成立するので[定理8]

により.κから誘導される写像:κ~は(G/N)から

(G~/N~)の上への同型写像です。(証明終わり)

[定理10]:群GにおいてH⊂GをGの部分群とし,

N⊂GをGの正規部分群とするとき,

  • HN={hn:h∈H,n∈N}はGの部分群

であり,NはHNの正規部分群である、

  • (H∩N)はHの正規部分群である。
  • 商群:H/(H∩N)の元:h(H∩N)を商群:

(H/N)の元hNに対応させる写像:

φ~:H/(H∩N)→H/Nは上への同型写像である。

(証明)(1)∀h11,h22∈HNに対して

11(h22)-1=h112-12-1

=h12-1(h212-12-1)ですが,HはGの部分群

なのでh12-1∈Hであり,NはGの正規部分群

ですから.h2(n12-1)h2-1∈Nです。

それ故,h11(h22)-1∈HNとなるため.

HN⊂GはGの部分群です。

次に,∀h11∈HNと∀n∈Nに対して,

NがGの正規部分群なのでn1nn1-1∈Nです。

故に,(h11)n(h11)-1

=h1(n1nn1-1)h1-1∈Nですから.NはHN

の正規部分群です。

(2)∀a,b∈H∩Nについてab-1∈H,

かつ,ab-1∈Nです。

よって,ab-1∈H∩NよりH∩NはGの部分群

です。さらに∀h∈H,∀a∈H∩Nに対して,

hah-1∈H,かつ,hah-1∈Nです。

故に,hah-1∈H∩NですからH∩NはH

の正規部分群です。

  • H⊂HNよりh∈Hならh∈HNですから写像

φ:H→(HN/N)を∀h∈Hに対しφ(h)=hN

によって,定義すると,これは明らかに準同型です。

しかも,g∈HNなら,h∈H,n∈Nが存在して

g=hnを満たしますが,g∈hNですからgN

=hN=φ(h)なのでφは(HN/N)の上への写像

です。そしてkerφ={h∈H:φ(h)=N}ですが,

φ(h)=hN=Nは,h∈Nを意味するので,

h∈kerφは,h∈H∩Nと同値ですから,結局,

kerφ=H∩Nが成立します。 

故に[定理8](群の準同型定理)によって,φから

誘導される写像:φ~[h(H∩N)]=φ(h)Nは,

[H/(H∩N)]から[HN/N]の上への同型写像です。

(証明終わり)

[定義];群Gの元:x,yによるxyx-1-1∈G

を交換子と呼ぶ。C(G)={xyx-1-1:x,y∈G}

で定義されるGの部分集合(交換子全体)は,一般に

Gの積演算で閉じていないので,Gの部分群ではない。

しかし,交換子によって生成される部分群,

つまり,交換子とその積から得られる元を含む最小

の群をG~と書いて,これを交換子群と呼ぶ。

(※例えば2つの交換子:c,d∈G~による交換子

cdc-1-1∈Gも群G~の元です。)

[定理11]:(1)Gの交換子群:G~はGの正規部分群

である。(2)Gの正規部分群Nに対し商群G/Nは

可換群であるなら,N⊃G^である。

(証明)(1)∀c=xyx-1-1∈G~,(x,y∈G)

をとると,Gは群ですからc∈Gであり,G~⊂Gです。

そこで∀g∈Gに対してgxg-1,gyg-1∈Gで,

gx-1-1=(gxg)-1,gy-1-1=(gyg-1)-1であり,

これらは全てGの元です。それ故,gcg-1

=(gxg-1)(gyg-1)(gx-1-1)(gy-1-1)ですが,

これはGの1つの交換子なのでG~の元です。

したがってG~はGの正規部分群です。

(2)∀a,b∈Gに対して,aNbN=abN

bNaN=baNです。これが可換ならabN

=baNですが,これはab∈baN,つまり,

aba-1-1∈Nなることを意味します。

よってG~∈Nです。(証明終わり)

※N=G~⊂Gは,Gの商群:(G/N)が可換群となる

最小の正規部分群です。

[系]:Gが可換群である。⇔ G~={e}である。

(証明)∀x,y∈Gについて,xy=yxであるのは,

xy(yx)-1=xyx-1-1=eと同値です。

故にGが可換群であるのは,G~={e}と同値です。

(証明終わり)

(※これ,別に[定理11]の系ではないような?)

第2章 可解群

※可解群というのは代数方程式がベキ根で可解と

なる条件と関連して,名称がつけられました。

体の拡大列に自己同型群の縮小する正規列が

対応し,それが方程式の係数を置換する対称群に

関わるという,随分と先のトピックであり,環や体

の説明の後に記述するのが理論構成の本来の順序

であると今では思いますが,,一応,群についての全て

の話だけを,予めまとめて書いたらしい私の過去ノート

に従うことにします。

※[可解群の定義]:群Gが与えられたとき,まずG0

をG0=Gとおいて,k=0,1,2,,に対し,Gk+1をGk

の正規部分群とする縮小する列として

G=G0⊃G1⊃..⊃G⊃Gk+1⊃...をつくるとき,

商群:(Gk/Gk+1)が全て可換群(アーベル群)となる

正規列が,有限のm個でGm={e}となって終わるなら,

群Gを「可解群」という。

※交換子群を用いてGk+1=G~と選択することも

できますから,どんな群Gでも,正規列を作ることは

可能ですが,それが有限個で{e},または{1}に収束

するかどうか?はわかりません。{e}に収束しない

群Gは「非可解群」と呼ばれます。

※縮小正規列の途中でGが可換群(アーベル群)と

なるなら,G~k={e}なので,Gk+1={e}と置けば

その時点で可解群であることが判明します。

※[部分群の指数]:群Gの部分群Hの指数とは,H

による(左右)剰余類の個数のことです。

これを|G:H|と表記します。

※[定理2-1](ラグランジュの定理):

Gが有限群で,Hがその部分群であれば,指数:|G:H|

=|G|/|H|である。

(証明)前に記述したように,Hによる左剰余類の場合

なら,G=ΣaHのように,Gは互いに素な剰余類の

直和で表わせます。

そして,剰余類(aH)の元の個数は全てHの位数

|H|に等しいため,|G|=|G:H|・|H|です。

故に|G:H|=|G|/|H|を得ます。(証明終わり)

※[対称群(置換群)の定義]:

n個の整数の列{1,2..n}の順序を交換する写像,

σ:{1,2,..n}→{p1,p2,..pn}(順列)を,n次の置換

と呼び,Snを全てのn次の置換を元とする集合とすれば

置換の積について群をなし,これを対称群(置換群)という。

※ただし,置換の積とは,合成写像を意味します。

つまり,σ:{1,2..n}→{p1,p2,..pn}と,τ:{1,2,..n}

→{q1,q2,..qn}なる元(写像):σ,τ∈Snの積は,写像

σ:i→pi=σ(i)と,写像τ:i→qi­=τ(i)を,この順に

適用して合成すると,合成写像:(τσ)(i)=τ(σ(i))

=τ(pi)となりますが,線形代数学では,これを

置換σと置換τの積:στと定義するのが慣例です。

置換操作は可換ではないので,定義での操作順序

の規約は,参考書によっては演算の順序が逆のモノ

もあり,誤解すると混乱の種になるので注意が必要

です。

そして,実際,この積演算はSnの中で閉じており

整数列の順序を全く変化させない写像:e(i)=i,

つまり,e:{1,2..n}→{1,2,..n}を恒等置換と呼べば

これが積演算の単位元となります。

そして,σの逆元σ-1は,これを逆写像:σ-1:p→i,

つまり,σ-1:{p1,p2,..pn}→{12..n}で与えれば,

σσ-1=σ-1σ=eとなるので,その存在は明らかです。

また,群であるために必要な積演算の結合則は,積演算

が合成写像ですから,結合則の成立も自明で,Snは確かに

有限群をなすことがわかります。

※[互換の定義]:特にn個の列{1,2..n}のうち.成分

iだけを,j≠iなるjと交換して,それ以外の成分

は不変のままの置換を,(i,j)と書いて互換と呼び

ます。このとき互換も1つの置換ですから,もちろん

∀(i,j)∈Snです。

※線形代数学によれば,任意の置換σ∈Snは有限個

の互換の積で表わすことができます。

そうして,その因子分解は,個々のσに対し一意には

決まらないのですが.1つの置換の因子分解の因子の

総数が奇数であるか,偶数であるか?は一意的です。

そこで,奇数個の互換の積で表わせる置換を奇置換と呼び

偶数個の互換の積で表わせる置換を偶置換と呼びます。

nの置換の総数,つまり,位数|Sn|は,順列の総数に

等しいので|Sn|=nn=n!ですが,奇置換に左からでも

右からでも,互換を1つ掛けると偶置換になり,逆に,

偶置換に互換を1つ掛けると奇置換になるので1対1

の対応があり,結局,奇置換と偶置換の個数は同じです。

故に,それぞれ(n!/2)個ずつ,あるはずです。

しかし,積演算の単位元である恒等置換eは,偶置換

ですから,それを含む偶置換の集合だけがSnの部分群

をなし,ます。これをn次の交代群と呼び,Anと表記

します。

[定理]2-2]:交代群AnはSnの交換子群:S~nであり,

それ故,Snの正規部分群である。

(証明)σ,τ⊂∈Sのとき.交換子:στσ-1τ-1

つくると,σが奇置換ならσ-1も奇置換,σが偶置換

ならσ-1も偶置換で,τとτ-1についても同様です。

それ故,交換子:στσ-1τ-1は常に偶置換です。

故に交換子で生成される交換子群:S~nは交代群

nに一致しており,既述の定理によって正規部分群

です。(証明終わり)

[定理2-3]:対称群S2,S3,S4は可解群でありn≧5

の対称群Snは可解群ではない。(非可解である。)

(証明)S2は恒等置換:eと互換:(1,2)のみが元で,

積は常に可換なので可換群ですから,その交換子群

は,S~2={e}でこれは正規部分群なのでS2⊃{e}

が正規列となり.明らかに可解群です。

次に,交代群Anは,Snの指数が2の正規部分群

ですが,n=3のA3は,それ自身可換群です。

何故なら,S3の位数は6,A3の位数は3で,その

元は恒等置換:e={1,2,3}とσ={2,3,1},および,

σ-1=={3,1,2}だけですから明らかに可換群であり,

正規列:S3⊃A3⊃{e}を得るので可解です。

n=4のS4についてはσ={i,j,kl}∈S4

は,物理で用いるLevi-Civitaテンソルの非ゼロ

成分のεijklが+1のとき偶置換で,σ∈A4です、,

他方,εijklが(-1)のとき.σは奇置換です。

しかも,σ∈A4のとき.(1,2)σは奇置換であり

σ,τ∈A4でσ≠τなら,(1,2)σ≠(1,2)τとなり

1対1に対応します。

それ故,S4/A4={A4,(1,2)A4}です。この商群

は単位元A4の他には元が1個なので可換群です。

そもそも指数が2なら.商群の位数は2で,常に可換群

です。そしてVをV={e,(i,j)(k,l)}(ただし,

i,j,k,lは1~4の異なる数)とおくと,|V|

=1+42/2=4です。Vの元である互換の積の積

は,異なる4つの互換の積:(i1.j1)(k1,l1)

×(i2,j2)(k2,l2)ですが,これは互換の順序に

依らないので可換です。

そして,|A4|=12より,|A4/V|=3で(A4/V)

={V,(1,2,3)V.(2,3,4)V}と書けますが,そもそも

位数が3の部分群は,単位元と,それ以外の1つの元

とその逆元だけが全ての元なので,明らかに可換群です。

以上から,S4⊃A4⊃V⊃{e}という正規列が得られ,,

4が可解群であることが示されました。

次に,n≧5のSnを考えます。Snの部分群で長さ

が3の巡回置換を全て含むものをGとします。

このときNがGの正規部分群ならNもまた,

長さ3の巡回置換を全て含むことを示します。

n≧5なので,i,j,k,r,sを1からnまでの

うちの相異なる5文字とします。

そして,σ=(i,j,s),τ=(k,r,s)とすると

仮定により,σ,τ∈Gです。このとき,その交換子

は,στσ-1τ-1=(i,j,s)(k,r,s)(s,j,i)

×(s,r,k)=(r,j,s)となります。

何故なら,(i,j,s)(s,k,r)=(i,j,k,r,s)

で,(j.i,s)(r,k,s)=(j,i,r,k.s)です

から,積はi→i,j→s,k→k,r→j,s→r

となるため,(r,j,s)と書けて,これは長さ3の

巡回置換です。交換子群は.最小の正規部分群です

から,NがGの正規部分群なら(r,j,s)∈Nですが

r,i,sは任意なのでNも全ての長さ3の巡回置換

を含むことがわかりました。

それ故.もしもSnが可解群であるなら,

n⊃S(1)⊃..⊃S(r)={e}となる正規列がある

はずですが,そうすると最後の正規部分群:|e}も

長さ3の巡回置換を全て含むべきなので,これは

矛盾です。したがって,n≧5のSnは非可解群です。

(証明終わり)

※関係g1~g2を,g2=x-11xとなるx∈Gが存在

することで定義すると,これは同値関係で,これに

よる同値類をM(a)={x-1ax|x∈G}と書けば,

Gの同値類別はG=M(a)∪M(b)∪..となります。

また,H(a)={x∈G|ax=xa}とおくと,

これはGの部分群です。何故ならx,y∈H(a)なら

ay=yaより,ay-1=y-1aですから.a(xy-1)

=xay-1=(xy-1)aとなるのでxy-1∈H(a)が

成立するからです。

,このとき,m=x-1ax,n=y-1ayなら,

m.n∈M(a)ですが,=nは,(yx-1)=a(yx-1)

を意味るため,(yx-1)∈H(a),つまり,y∈H(a)x

と同値です。よって,H(a)による右剰余類とM(a)の

元は1対1に対応するので{M(a)=|G:H(a)|です。

そこで特に|M(a)|=1はG=H(a)と同値です。

※[群Gの中心]:C={a∈G|ax=xa for ∀x∈G}

をGの中心という。

この中心CはGの正規部分群です。何故なら,a,b∈C

のとき,∀x∈Gに対し(ab-1)x=axb-1=x(ab-1)

よりab-1∈Cであり,x-1ax=aなので正規部分群です。

また,a∈Cなら|M(a)|=1でG=H(a)です。

何故なら,b∈M(a)ならb=x-1axですが,a∈Cなら

-1ax=aより,b=a,故に|M(a)|=1です。;

※[巡回群の定義]:群Gがあるとする。∀g∈Gに対して

g=aとなるa∈Gとn∈Zが存在するとき,Gをaで,

生成される巡回群といい,G=<a>と書く。a0=eで

<a>={e,a,a2.,,}です。

※Gが有限群で,|G|=nのとき,∀a∈Gに対してa=e

となるk∈Zが存在します。さもないと<a>が無限巡回群

となり有限群に矛盾します。このとき.aq=eとなる最小

の非負整数:qを元aの位数(order)と呼びます。

<a>={e,a,::aq-1}で.これは明らかにGの部分群

であり巡回部分群といわれます。

|<a>|=qで,この群の位数はaの位数に一致します。

しかもGの部分群ですからq=|<a>|は.n=|G|の

約数です。故にq≦nですが,もしもq=nならG=<a>

です。特にn=|G|が素数pであるなら.Gの部分群は.

e以外の元a∈GについてG=<a>={e,a,..aq-1}

と{e}の自明な部分群のみです。何故なら,Gの任意の元

は,n­=pの約数1かpを位数qとする巡回部分群を生成

するかしかないからです。そして|<a>|=p=|G|なら

<a>=Gであるからです。

※[p群の定義].群Gの任意の元の位数が素数pのベキ乗

であるとき,Gをp群という。

Gが有限p群ならGの位数もpのベキ乗です。

※[定理2-4]:p群は可解群である。

(証明)まず,|G|=p0=1ならGは単位群{e}なので

可解群です。

数学的帰納法を用います。|G|=p(m<n)の群G

は可解群である.と仮定します。

そして,次に|G|=pnとします。Gの中心Cの位数は

CがGの部分群なのでpnの約数ですからpのベキ乗

です。ただし,Gが可換群なら,C=GなのでG=C⊃{e}

が正規列であり,明らかに」可解ですから,CはGの真部分群

であるとすると,|C|=pr<pと書けます。,

中心Cはそれ自身可換群ですが,それによる商群の

(G/C)={gC:g∈G}も明らかに可換群です。

そして|G/C|=pn-r(r≧1)で,これもp群です。

そこで帰納法の仮定により,

(G/C)=G^00⊃G^1⊃…⊃G^m={e}となる正規列

存在します。

ここでGから(G/C)の上への自然な準同型;κ(g)

=gCの,G^kの原像κ-1(G^)をGkと定義すれば

k+1はGの正規部分群で(Gk/Gk+1)が可換群

正規列:G=G0⊃G1⊃…⊃Gm={e}を得るので,

Gも可解群であることがわかります。

(※細かい証明説明は略) (証明終わり)

長くなったので,途中ですが終わります。(つづく)

 

 

 

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2021年10月 7日 (木)

ガロア理論の復習(1)

※2021年9月23日(木)開始→10月7日(木)

※久しぶりです。TOSHIです。

未だ終活などトンデモナイと,この世に未練タップリ

という感がありますが,何か難しい考え事でもしてないと

生きてくハリというか?モチベーションがなくなり無為

に時が過ぎるばかりで,むなしいです。

食って出して寝る,日々生きていく糧があり暑さ寒さ雨露

をしのぐ衣服と部屋があるのはとてもシアワセなことです

が「家畜と同じ生なら別に生きていてもしょうがない。」

と思うゼイタクでエゴイストのバチアタリジジイですから。。

今年の7月ころには「遺構」と称して2018年にブログ

にアップした2つの科学記事「素粒子ソリトン説(1),(2)」

という,主要項に比べて10-40のオーダー程度の極く小さい

非線型付加項があって特殊相対論をも破る自由粒子という

仮説モデルについて論じたものを書きましが,これは遅々と

して進まず,そこで最近は素粒子理論ばかりではなく気分

転換に自分の残っている蔵書の中から19世紀の数学の

ルフィニとアーベルによる「5次以上の代数方程式の

ベキ根による解法の不可能の証明」の歴史についての本

を読んだりしていましたが,目が悪くてなかなか進みません。

老眼鏡でも文字が薄くて判読ができず,紙面を懐中電灯で

照らすと少し読めるようなので老眼というより弱視かも

しれず,眼科では2011,2012年に手術した両眼の硝子体

が濁っているらしいのですが,糖尿病だと硝子体交換手術

は難しいそうです。でも本当は手術を受けたいです。

今は読書も困難なので,かつてバブルも終わり求職活動

をしながらもフリーターで暮らすしかなくなり,暇な時間

に物理や数学の勉強を再開いていた40歳代前半の頃に

勉強した.アーベルよりも先に進んだガロアによる

「代数方程式のベキ根による解が存在するための必要

十分条件」(これは過去のブログ記事でも紹介済み)に

ついての覚え書きノートをもう1度復習し要約する

ところからやってみたいと思います。(自分の書いた

ノートなら,かろうじて読めますから。。)

※さて,以下は本題です

第0章:準備(必要な予備知識)

§1.群,環,体

(Ⅰ)[群の定義]:集合Gの上にある2項演算(・)が定義

され,,任意のa,b,c∈Gに対して次の3つの条件を

満たすとき,(G.・)の組を群(group)という。

この3条件は,

(1)∀a,b∈Gに対しte,結合則:a・(b・c)

=(a・b)・cが成立する。

(2)∀a∈Gに対してe・a=a・e=aを満たす

単位元eが存在する。

(3)∀a∈Gについてa-1a=aa-1=eを満たす逆元

-1が存在する。 の3つです。

 さらに∀a,b∈Gが交換則:a・b=b・aを満たす

場合は.(G,・)は可換群(アーベル群)であるといいます。

そして,特にGが可換群の場合,可換演算・を+と書いて

+を加法,(G,+)を加法群と呼ぶことがあり加法群の場合,

単位元を0(ゼロ)と書いて零元と呼びます:

※[半群の定義]:集合Sの上に,ある2項演算・が定義され,

結合則を満たすとき,(S,・)の組を「半群」という。

群とは異なり,単位元の存在,逆元の存在は必ずしも

仮定されない集合です。

(Ⅱ)[環の定義] 集合Rの上で乗法(・)と加法(+)という

2種の2項演算が定義されており,以下の条件を満たすとき

(R,・,+)の組を「環(ring)」という。

(1)加法について,(R,+)は可換群をなす。このとき,

その単位元を0(ゼロ)と書き零元と呼ぶ。

(2)(R,・)の乗法については結合則が成立する。

すなわちa・(b・c)=(a・b)・cである。

(3)乗法の単位元eが存在する。すなわち,e・a

=a・e=aが成立する。ただしeはゼロとは異なる

元である

(4)加法と乗法について分配則が成り立つ。すなわち.

a・(b+c)=a・b+a・cである。

特に,Rが乗法についても交換則を満たすときは,これ

を「可換環」という。

(Ⅲ)[体の定義]:集合Kの上で乗法(・)と加法(+)という

2種の2項演算が定義されており,加法では(K,+)が

可換群をなし,その単位元を0(ゼロ)と書き,零元と呼ぶ。

また,この0を除く集合:K-{0}は乗法について群を

なし,この乗法群の単位元eは1と書くことがある。

このとき,任意のKの元:a,b,c∈Kについて分配則

a・(b+c)=a・b+a・cが成立するなら,(K,・,+)

の組を「体(field)」という。特に乗法についても可換なら

Kを「可換体」という。

※以下,乗法については演算記号・を省略します。

※群Gの部分集合Hが同じ演算で群をなすなら,これを

Gの「部分群」という。H⊂GがGの部分群となるため

の必要十分条件は,∀a,b∈Hがa-1b∈G,あるいは

ab-1∈Gを満たすことです。

環Rの「部分環」,体Kの「部分体」についての定義も

部分群と同様です。

※(例):有理数集合Q,実数集合や複素数集合Cは通常

の演算で体をなします。整数集合Zや多項式の集合は

環をなします。

※[体Kの性質1]任意のa∈Kについて0=0a=0

が成り立つ

(証明)aの他にb∈Kを任意に取ると,ab=a(0+b)

=a0+abです。abはKの任意の元なので,これは

a0=0であることを意味します。他方,0a=0も同様

に示すことができます。(証明終わり)。

※[有限体の定義]:

群,環,体の元の個数を「位数」という。体の場合.位数が

有限の体を「有限体」と呼ぶ。また,位数が有限ではない体

を「無限体」という。有限群,有限環についても同様です。

※[有限体の性質]:有限体Kがあって,その位数がqである

とき,xがKの任意の元ならx=xが成立する。

(証明)x=0なら自明なのでx≠0とします。

K-{0}は,位数が(q-1)の乗法群をなします。

その任意の元xによる巡回集合:<x>={1,x,x2,…}

は有限群の部分集合なのでx=1となる最小の自然数k

が存在するはずです。これを元xの位数と呼べば,<x>

はkを位数とする巡回群をなします。これは特に乗法群:

K-{0}の部分群となるのは明らかです。,それ故,部分群:

<x>の位数kは.元の乗法群の位数(qー1)の約数と

なります。なぜなら,部分群の元の個数はkですが,それ

と同じ個数kの元を持つ剰余類の総和が乗法群:K-{0}

に一致するため,(剰余類の個数)とkの積か(q-1)に

等しいことになるからです。したがってx(q-1)=1であり

=xが成立します。(証明終わり)

※[代数系のその他の必要知識]

群Gの部分群をHとするとき,任意のa∈Gに対して

集合:aH={ah∈G:h∈H}をHによる左剰余類.

と呼び,集合:Ha={ha∈G:h∈H}を右剰余類

と呼ぶ。H=eHを含む全ての剰余類の集合系の総和

は集合Gに一致します。左剰余類aHとbHの積演算

を,(aH)(bH)={xy∈G:x∈aH,y∈bH}で定義

すると,明らかに(aH)(bH)=abHであり,故に,

これもHについての左剰余類に属します。

そこで,a∈GをaHに対応させる自然な写像:

a→aHは1つの「準同型写像」です、

そして剰余類の系:{aH⊂G:a∈G}は,この元の

積演算で単位元をH=eHとする群をなすことに

なります。この群を「剰余類群」とも呼びます。

右剰余類:Haについても全く同様な議論ができます。

特にaH=HaなるときHを「正規部分群」と呼び,

記号Nで表わすことが多いです。Nが正規部分群なら

N=a-1Naなので「∀h∈Nが∀a∊Gに対して

-1ha∈Nを満たすことと,Nが正規部分群なること

は同値」です。

 そして,部分群Hによる左剰余類群,右剰余類群を

総称して単に「剰余類群」または「商群」,「因子群」

とも呼び,これらの集合系の群ををG/Hで記述します

※[同値関係と同値類]:

集合Aの2つの元に,関係:~が定義され,Aの任意

a,b,c∈Aに対して次の3つ条件(同値律)を

満たすとき,関係:~を同値関係という。すなわち,

1.反射律:a~a

2.対称律:a~bならb~a

3.推移律:a~b,かつ.b~cならa~c

の3条件が同値律です。

さらに.任意のa∈Aについて,集合C(a)を

C(a)={x∈A:x~a}によって定義し,これ同値

関係:~に基づいてaを代表元とする「同値類」という。

すると,Aはその同値類の総和に一致します。すなわち

A=∪a∈AC(a)です。

 そして,a~bなることと,集合としてC(a)=C(b)

なることは同値であることがわかります。

よってa~bでないなら,C(a)∩C(b)=φ(空集合)

であり,A=∪a∈AC(a)の右辺は直和となります。

つまり,A=Σa∈AC(a)と書くことができます。

このように,集合Aを同値類の総和に分解することを

「同値類別」といいます。

※[剰余類としての同値類]:整数a.b∈Zの整数mを法

とする合同関係a≡b(mod m)は,1つの同値関係a~b

です。これによる同値類(合同類)は,mで割ったときの

剰余:0,1,2...(m-1)が,それぞれ同一であることを

意味するので,これも「剰余類」と呼びます。mを法と

する場合.異なるものはm個あります。特にaがmと

互いに素:(a,m)=1の剰余類:C(a)を「既約剰余類」と

いいます。

この剰余類:C(a)は先に群Gの部分群Hによる剰余類

をaHやHaと記して説明したものと同様,C(a)と

C(b)の積を定義すると(aH)(bH)=abHと同じく,

C(a)C(b)=C(ab)であり,その全体集合は剰余類群

をなします。

※さて,私の1993年9月に始まる参照ノートは,いきなり

この次に書く項目から始まっていたのでて,それ以前の

記述のあるノートがあるかも,と思って探してみました

ありませんでした。

そのころの40歳代頃の私の頭では.今,準備で書いた

ようなことは常識で説明不要の用語だったので,中途

半端なところから開始したのかもしれませんが,

読み返すと老化や却のせいか,1つ1つ意味不明の事柄

が多く,そこで定義を中心に整理したのが以上です。

※というわけで改めて本論開始です。

第1章:導入(introduction)

※[定理1]:Zを整数の集合とする。∀a,m∈Zに

ついてaとmが互いに素,つまり.a,bの最大公約数

がd=(a,m)­=1であるとき,x∈Zについて

ax≡0(mod m)ならx≡0(mod m)である。

(証明)(a,m)=1により,あるp,q∈Zが存在して.

ap+mq=1とできます。そこで∀x∈Zに対し,

axp+mxq=xが成立します。

それ故,ax≡0(mod m),つまり,m/(ax)なら,

m/x.つまり,x≡0(mod m)です。(証明終わり)

※[系]C(a)がmを法とする既約剰余類:のとき,

C(a)C(x)=C(1),となるC(x)は,C(a)に対して

一意的(unique)である。

(証明)C(a)C(x)=C(1),かつ,C(a)C(y)=C(1)

とすると.ax≡1(mod m),かつay≡1 (mod m)です。

故に,a(x-y)≡0,です。したがって定理1によって

(x-y)≡0,つまり,x≡y(mod m)ですが,これは

C(x)=C(y)を意味します。(証明終わり)

※[定理2]:可換環Rの部分環Sは可換環である。

(証明)a,b,c∊Sとする。部分環であるための

条件はa-b∈Sです。a,b.cが加法,乗法に

ついて結合則,分配則を満たすのは定義から自明。

そして,a+(-a)=0∈Sより0∈Sであり,それ故,

(-a)=0-aから,(-a)∈Sです。

Rと同じ乗法で交換則も成立しその単位元eも

RとSで共通です。(証明終わり)

※[定理3]:0でない整数a,b∈Zの最大公約数を

d=(a,b)とすると,ax+by=dなるx,y∈Z

が存在する。

(証明)整数Zの部分集合:I={ax+by:x,y∈Z}

は上下に有界なので最小の正の数が存在します。

それをc∈Zとしax1+by1=cであるとします。

ところが仮定によりdはa,bの最大公約数ですから,

d/(ax1+by1)です。つまり,d/cです。

故に,dはcの約数なのでd≦cです。

他方ax=by=pc+q;ただし0≦q≦(c-1)

と書けば.a(x-px1)+b(y-py1)=qですが

cが集合Iの最小の正整数でしたから,上式右辺では

qはq=0でしかあり得ません。

よって任意のax+byがcで割り切れるので.c/a.

かつ,c/bであり,cはa,bの1つの公約数です。

故にc≦dもいえます。以上からc=dと結論

されます。(証明終わり)

※[系]a,bが互いに素:(a,b)=1ならax+by=1

となるx,y∈Zが存在する。

これの証明は1が最大条約数dなので自明です。

前後しますが,これは既に[定理1]の証明に用いました。

※[定理4]:半群Sにおいて,∀a∊Sに対してae=a

を満たす右単位元e∈Sが存在し,ax=eを満たす

右逆元x=a-1∈Sが存在するとき,eはea=aを

満たす左単位元で,a-1はa-1a=eを満たす左逆元

でもある。

(証明)まず,a-1a=(a-1a)e=a-1a{(a-1)(a-1)-1}

=a-1(aa-1)(a-1)-1=a-1e(a-1)-1

=a-1(a-1)-1=eよりa-1a=eが得られます。

故に,ea=((aa-1)a=a(aa-1)=ae=a

も成立します。(証明終わり)

※[定理5]:半群Gにおいて∀a,b∈Gに対して

常に,x,y∈Gが存在して,ax=bかつ,yb=a

なるとき,Gは群である。

(証明)bx=bを満たすx∈Gをとります。また

yb=aとなるy∈Gをとります。このときax

=(yb)x=yb=aです。したがって,このxは

∀a∈Gに対してax=aを満たします。

同様にby1=a,x1b=bなら.x1a=x1(by1)

=by1=aです。よって,∀a∈Gに対しx1a=a

が成立します。

それ故,x1x=x1=xとなり,これはGの単位元

とみなせるのでeと表わすことにします。

次に,∀a∈Gに対しax=e,ya=eとなるx,y∈G

が存在します。すると,yax­=ex=x,yax=ye

=yです。故にx=yですから,これはaの逆元a-1

他なりません。(証明終わり)

※[定理6]:有限半群Gが,

(簡約律):ax=ay⇒x=y:xa=ya⇒x=y

Gを満たすならGは群である。

(証明)G={g1,g2,..gn}とします。∀g∈Gに

対し,簡約律からggi=ggjならgi=gjです。

それ故,gi≠gjならggi≠ggjですからG

はG={gg1,gg2,..ggn}とも書けます。

したがって,∀b∈Gに対してb=ggとなる

が存在します。

以上から結局,∀g,h∈Gについてgx­=h

となるx∈Gが存在します。同様にして,yg=hを

満たすy∈Gの存在もいえます。よって[定理4]から

Gは群(有限群)です。(証明終わり)

※[定理7]:群Gと,その部分群Hがある。g1,g2∈G

について左剰余類:g1H,g2Hをつくると,

1H∩g2H=φ,またはg1H=g2Hのいずれか

である。

(証明)これについては既に準備で説明済みです。

※(左)剰余類は同値律をみたすので同値類の1種です。

※目が見えぬのも含め,ブログを書く情熱も15年前に

56歳で始めたころより明らかに鈍化して惰性に近く

わずかの草稿書きも2週間もかかりました。

 認知症にもならず記憶は鮮明故,50年くらい前の

無用なトラウマ(PTSD?)だけが,過呼吸に似た原因

不明の発作で,ときどき自分んにワルサをするの

煩わしい限りです。

 本論の種本は1つじゃなく既に古書店から食料

消えたらしく見つかりません。主な参考文献は

おそらく,「代数系入門か代数系の基礎」という

題名の薄い本でしたね。(つづく)

 

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