ベクトルと同値類
今から40年くらい前になりますが,高校の数学や物理ではじめてベクトルというものを習った際に,2つのベクトルが等しいというのは,その大きさ(長さ)と向きが等しい(平行である)ということと同じである,と教えられ,空間的には離れている2つのものが等しいという概念に違和感をおぼえたものでした。
しかし,大学の初年級の専門数学での集合論で同値関係,同値類という概念を学んだとき,"これだ!!"という風にビビッと来ました。
すなわち,大きさと向きが等しいという関係を同値関係としてその1つ1つの同値類をベクトルと呼べばよいのであると考えたのです。
(もちろん,私の発想がオリジナルだなどと主張するものではなく,誰か他人の示唆によるものだったかも知れないし,今となっては記憶も定かではありません。)
そして通常,明示される有向線分という形の表式の個々のベクトルは,その同値類の代表元の1つを示しているに過ぎないということです。
では同値関係,同値類とはどういうものでしょうか?
まず,集合Aがあって,その任意の2つの元a,b∈Aの間にある関係:~があるとき,a~bと書くことにします。このとき関係:~が次の3つの基準を満たすとき,この関係を同値関係と呼び,a~bならaとbは同値であるといいます。
3つの基準は,a,b,c∈Aのとき,"1.反射律:a~a,2.対称律:a~bならばb~a,3.推移律:a~b,かつb~cならばa~c"です。
そして,集合C(a)をC(a)≡{x∈A|x~a}と定義し,これをaを代表元とする同値類と呼びます。
そして,a~bなることと,集合としてC(a)=C(b)であるということは全く同一の意味になります。
同じことですが,a~bでないなら,C(a)∩C(b)=φ(空集合)(つまりC(a)とC(b)は互いに素)となります。
もちろん,A=∪a∈AC(a)ですから,AはA=Σa∈AC(a)とC(a)の直和で書けることになります。
このようにAをC(a)の和に分解することを同値類別と呼びます。
こうした定義等については今は参考書探すのが面倒なので記憶に頼って書いているのですが,何分40年近くも昔に習ったことであり,さすがに記憶が曖昧なので誤認識があるやもしれませんが。。。。
そして物理や数学で普通に学ぶ空間のベクトルについて大きさと向きが等しいという関係:~は明らかに同値関係です。
それ故,"2つのベクトルが等しい"というのは,実は同値類という集合として等しいという意味に解釈できる,ということで,私は昔,すっきりとした感覚を持ったことを最近,あるきっかけで思い出しました。
実は量子論でも状態ベクトルというのは係数やその位相が違うものも同じ状態ベクトルであるとみなすという意味で,ある代表元を持った射線(ray)と呼ばれる同値類であることがわかっています。
ベクトル演算の線形性,重ね合わせの原理など,すなわちベクトルは線形空間の元であるとか,線形写像による種々の変換性を持つとかいう代数的性格を無視して,ベクトルが等しいという概念だけに着目すれば自然に同値類,同値関係という感覚に到達するはずです。
当時は,それから,物理学,特に力学の幾何学化,すなわち幾何学の1つとしての定式化を目指し,まずは運動学から着手して1つの空間の位置とベクトルの1対1対応:ユークリッド空間の座標と位置ベクトルの対応から始めたものでした。
ところが,いつのまにやら興味は数学的定式化からより物理的なものへと移行してゆき,結局は中途挫折してしまいました。
アーノルド(V.I.Arnold)の「古典力学の数学的方法」(岩波書店)とか,数学の1分野である"力学系"の存在を知ること等により当時の記憶がよみがえったのはそれからずっと後のことです。
http://fphys.nifty.com/(ニフティ「物理フォーラム」サブマネージャー) TOSHI
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(アレフ)という記号はヘブライ語の文字であり,ギリシャ語のα(アルファ=最初という意味)と同じ意味です。
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