積分方程式(2)
積分方程式の続きです。
前記事のアーベル(Abel)φの積分方程式に続く話題として,リーマン・リウヴィル(Riemann-Liouville)作用素の話をします。
先に与えたアーベルの積分方程式∫axdy{u(y)/(x-y)1-α}=f(x)(a<x<b)の左辺のuに対する積分を定数Γ(α)で除したものを,(a,b)の上の関数に作用する作用素(operator)と考えこれをIaαなる記号で表わすことにします。
つまりIaαu(x)≡{1/Γ(α)}∫axdy{u(y)/(x-y)1-α}(a<x<b)とします。そして作用素:Iaαをリーマン・リウヴィルの積分作用素と呼びます。
これが作用する関数空間としては,取り合えず,区間Iの上で可測でIにおける任意の有界閉部分集合の上で可積分な関数全体であるL1loc(I)を採用することにします。
L1loc[a,b)は任意のc∈[a,b)に対して∫ac|u(x)|dx<∞なる関数u(x)全体のことです。
例えば,u(x)≡(x-a)λ-1(λ>0) とするとu(x)∈L1loc[a,b)であってΓ(α)Iaαu(x)=∫axdy/{(x-y)1-α(y-a)1-λ}=Β(α,λ)(x-a)λ+α-1となります。
Β(x,y)はΒ(x,y)≡∫01{tx-1(1-t)y-1}=Β(y,x)=Γ(x)Γ(y)/Γ(x+y)で定義されるオイラー(Euler)のベータ関数です。
なぜなら,積分変数をyからζ=(y-a)/(x-a)に置換すると,dζ=dy/(x-a)でありyがa→xと動くときζは0→1と動くので,∫zxdy/{(x-y)α(y-z)1-α}=(x-a)λ+α-1∫01dζ/{(1-ζ)αζ1-α}となるからです。
そして,再びΓ(α)Iaαu(x)=Β(α,λ)(x-a)λ+α-1∈L1loc[a,b)です。
一般に,リーマン・リウヴィル積分作用素Iaαは次の命題で与えられる基本性質を持つことがわかります。
[命題1]:α>0のとき,u∈L1loc[a,b]ならIaαu∈L1loc[a,b)であり,∀α,β>0に対して,Iaα(Iaβu)=Iaα+βuが成立する。
以下,これの証明です。
(証明) まず,u∈L1loc[a,b)なら∀c∈[a,b)について∫ac|Iaαu(x)|dx≦Γ(α)-1∫acdx∫axdy{|u(y)|/(x-y)1-α}=Γ(α)-1{∫axdy|u(y)|dy}{∫ac(x-y)α-1dx≦{αΓ(α)}-1(c-a)α∫axdy|u(y)|dy<∞より,確かにIaα^u∈L1loc[a,b)です。
そして,Iaα(Iaβu)=Γ(α)-1Γ(β)-1[∫axdy(x-y)α-1∫axdz{u(z)/(y-z)1-β}]=Γ(α)-1Γ(β)-1[{∫axu(z)dz}{∫axdy(x-y)α-1(y-z)β-1}]です。
ところが,前にも見たように積分変数をyからζ=(y-z)/(x-z)に置換すれば,∫zxdy(x-y)α-1(y-z)β-1}=(x-z)(α+β)-1∫01dζ(1-ζ)α-1ζβ-1=Β(α,β)(x-z)(α+β)-1となることがわかります。
ただし,Β(α,β)=∫01{tα-1(1-t)β-1}=Β(β,α)=Γ(α)Γ(β)/Γ(α+β)です。
故にΓ(α)-1Γ(β)-1[{∫axdzu(z)∫axdy(x-y)α-1(y-z)β-1}]=Γ(α)-1Γ(β)-1Β(α,β)∫axdz{u(z)(x-z)(α+β)-1}=Γ(α+β)-1∫axdz{u(z)/(x-z)1-(α+β)}=Iaα+βuとなることがわかります。
以上でIaα(Iaβu)=Iaα+βuなる等式の成立が証明されました。(証明終わり)
上記の[命題1]の結論であるIaα(Iaβu)=Iaα+βuなる性質によって,以下Iaα(Iaβu)を(IaαIaβ)uと書き,これを記号的に作用素の積としてIaαIaβ=Iaα+βと表現することにします。
α=1のときのリーマン・リウヴィル作用素Iaα=Ia1は,Ia1u=∫axu(y)dyとなります。右辺は単にaを基点とする関数uの1回の積分を意味します。
それ故,上の[命題1]の結論IaαIaβ=Iaα+βから,任意の自然数nに対して,(Ia1)n =Ianなる式が成立することがわかります。
Γ(n)=(n-1)!ですから,これはuのn回積分:(Ia1)nuについて,(Ia1)nu(x)={1/(n-1)!}∫axdy{(x-y)n-1u(y)}の成立を意味します。
しかし,実はuのn回積分が{1/(n-1)!}∫axdy{(x-y)n-1u(y)}と書けることは,∫ax{Ia1u(y)}dy=∫axdy∫ayu(z)dz=∫axdzu(z)∫zxdy=∫axdz{u(z)(x-z)}etc.など具体的計算から明らかです。
したがって,リーマン・リウヴィル積分作用素Iaαは,αが自然数nのときにはn回積分を示していることがわかります。
そこで,逆に定義Iaαu(x)≡{1/Γ(α)}∫axdy{u(y)/(x-y)1-α}は,αが自然数nではなく一般の正の数のときのα回の積分への拡張になっていて,積分Iaαu(x)はαが一般の正の数である場合のα回積分と呼ぶにふさわしいものであると考えられます。
そして,もちろん(Ia1/n)n=Ia1なる等式も成立しますから,リーマン・リウヴィル積分作用素Iaαは分数回積分を表現すると言われることもあるようです。
先のアーベルの積分方程式∫axdy{φ(y)/(x-y)1-α}=f(x)(a<x<b)はf(x)/Γ(α)を改めてf(x)と書けば{1/Γ(α)}∫axdy{φ(y)/(x-y)1-α}=f(x) (a<x<b)ですが,これをリーマン・リウヴィル積分作用素Iaαを用いて表わせばIaαφ=f(a<x<b)と書けます。
そして,前述したアーベルの積分方程式解法は,この方程式:Iaαφ=fの両辺にIa1-αを作用させた後に,それの両辺を微分する方法と解釈されます。
実際,作用素の積の性質からIa1-αIaα=Ia1(1回の不定積分)が成立します。
一方,微分するという演算を微分作用素D≡d/dxで表現すると,"微分と積分は互いに逆演算である=関数の不定積分の微分は元の関数になる。"という微積分学の基本法則から記号的にDIa1=1 です。
それ故,形式的にIaαφ=f⇒Ia1φ=Ia1-αf⇒ φ=DIa1-α で表わされるアーベルの積分方程式の解法手順が可能になるわけです。
そこで,リーマン・リウヴィル微分作用素DaαというものをDaαu≡DIa1-αu={1/Γ(1-α)}∫axdy{u(y)/(x-y)α}によって定義すれば,アーベルの積分方程式Iaαφ=fの解がφ=Daαfになるという意味で,DaαはIaαの逆作用素(Iaα)-1を与えると解釈されます。
しかし,上記のアーベルの積分方程式を解く手続き,あるいは作用素Daαを作用させるという操作Daαuが正当化されるためには,Daαが如何なる関数u(x)に対して意味を持つかが問題になります。
そのため,まず∀c∈[a,b)に対し[a,c)で絶対連続な関数全体から成る関数空間をACloc[a,b)と書くことにします。
このときラドン・ニコディム(Radon-Nycodim)の定理からu∈ACloc[a,b)なることは,"v∈L1loc[a,b)が存在してu(x)=u(a)+∫axv(y)dy(a≦x<b)と書けること"に同値です。
※(註):本ブログ「TOSHIの宇宙」の2007年7/7の過去記事「条件付確率と条件付期待値」を参照します。
「ラドン・ニコディムの定理」というのは「もしも,Φ(A)が"絶対連続:μ(E)=0 E∈M ⇒Φ(A)=0 "なら,適当な密度関数f(x)が存在してΦ(A)=∫Af(x)μ(dx)と表現できる。」というものです。(参照終わり)
ただし,σ-有限な測度空間(X,M,μ)でMはXの部分集合から成る可測集合族であり,μはその上の測度を意味しています。(註終わり)※
さらに,部分集合ACloc[a,b)*をACloc[a,b)*≡{u∈ACloc[a,b)|u(a)=0}で定義します
このとき,次の定理が成立します。
[定理2]:0<α<1のとき,アーベル積分方程式Iaαφ=fがL1loc[a,b)で可解であるためには,Ia1-αf∈ACloc[a,b)*なることが必要十分である。
そして,条件Ia1-αf∈ACloc[a,b)*の下でアーベル方程式Iaαφ=fの解は一意的にφ=DIa1-αfと解かれる。
以下,これの証明です。
(証明)Iaαφ=fが解φ∈L1loc[a,b)を持てば∫axφ(y)dy=Ia1-αf(x)となり,左辺はx∈[a,b)で絶対連続でIa1-αf(a)=0です。それ故,Ia1-αf∈ACloc[a,b)*です。
逆にIa1-αf∈ACloc[a,b)*を仮定すると,φ≡DIa1-αfが存在してIa1-αf(x)=∫axφ(y)dyとなります。
ここで,g≡Iaαφと置けば[命題1]によってg∈L1loc[a,b)でありIa1-αg=Ia1φ(x)=∫axφ(y)dyです。
そこで,Ia1-αg=Ia1-αfが得られました。
これの両辺にIaαを作用させると,∫axg(y)dy=∫axf(y)dyですから,両辺を微分してL1loc[a,b)においてg≡fを得ます。(証明終わり)
途中ですが急用を思い出したので今日はここまでにします。
参考文献:上村豊著「積分方程式(逆問題の視点から)」(共立出版)
PS:脳血管の「もやもや病」というのはアーティストの「徳永英明」さんが罹ったことで有名になったみたいですね。
そういえば,かなり昔に確か高島兄弟の1人が主演?の弁護士もののドラマのテーマ曲として聴いていたと記憶している「壊れかけのradio」という唄が彼の持ち唄でしたね。
それをカラオケでよく唄っていた頃は,高音部を唄うと首から上の血管が切れそうにな程に辛いことがよくあったのですが,「もやもや病」と何か関係あるのでしょうか?
私の方は歌手ではなくカス?ですが。。。
(今なら昔ほど目一杯大声を張り上げずに唄うので,もっとおだやかな喉への力で唄うことができるかもしれませんね。。)
PS2:今日は9月11日ですが「記念日(2006年) 」( 今日は記念日 (2008年)) も風化しつつあるようです。。。
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