310. 関数解析・超関数

2009年9月11日 (金)

積分方程式(2)

 積分方程式の続きです。 

前記事のアーベル(Abel)φの積分方程式に続く話題として,リーマン・リウヴィル(Riemann-Liouville)作用素の話をします。

先に与えたアーベルの積分方程式∫axdy{u(y)/(x-y)1-α}=f(x)(a<x<b)の左辺のuに対する積分を定数Γ(α)で除したものを,(a,b)の上の関数に作用する作用素(operator)と考えこれをaαなる記号で表わすことにします。

つまりaα(x)≡{1/Γ(α)}∫axdy{u(y)/(x-y)1-α}(a<x<b)とします。そして作用素:aαをリーマン・リウヴィルの積分作用素と呼びます。

これが作用する関数空間としては,取り合えず,区間Iの上で可測でIにおける任意の有界閉部分集合の上で可積分な関数全体である1loc(I)を採用することにします。

1loc[a,b)は任意のc∈[a,b)に対して∫ac|u(x)|dx<∞なる関数u(x)全体のことです。

例えば,u(x)≡(x-a)λ-1(λ>0) とするとu(x)∈1loc[a,b)であってΓ(α)aαu(x)=∫axdy/{(x-y)1-α(y-a)1-λ}=Β(α,λ)(x-a)λ+α-1となります。

Β(x,y)はΒ(x,y)≡∫01{tx-1(1-t)y-1}=Β(y,x)=Γ(x)Γ(y)/Γ(x+y)で定義されるオイラー(Euler)のベータ関数です。

なぜなら,積分変数をyからζ=(y-a)/(x-a)に置換すると,dζ=dy/(x-a)でありyがa→xと動くときζは0→1と動くので,∫zxdy/{(x-y)α(y-z)1-α}=(x-a)λ+α-101dζ/{(1-ζ)αζ1-α}となるからです。

そして,再びΓ(α)aαu(x)=Β(α,λ)(x-a)λ+α-11loc[a,b)です。

一般に,リーマン・リウヴィル積分作用素aαは次の命題で与えられる基本性質を持つことがわかります。

[命題1]:α>0のとき,u∈1loc[a,b]ならaαu∈1loc[a,b)であり,∀α,β>0に対して,aα(aβu)=aα+βuが成立する。

 以下,これの証明です。

(証明) まず,u∈1loc[a,b)なら∀c∈[a,b)について∫ac|aαu(x)|dx≦Γ(α)-1acdx∫axdy{|u(y)|/(x-y)1-α}=Γ(α)-1{∫axdy|u(y)|dy}{∫ac(x-y)α-1dx≦{αΓ(α)}-1(c-a)αaxdy|u(y)|dy<∞より,確かにaα^u∈1loc[a,b)です。

 そして,aα(aβu)=Γ(α)-1Γ(β)-1[∫axdy(x-y)α-1axdz{u(z)/(y-z)1-β}]=Γ(α)-1Γ(β)-1[{∫axu(z)dz}{∫axdy(x-y)α-1(y-z)β-1}]です。

ところが,前にも見たように積分変数をyからζ=(y-z)/(x-z)に置換すれば,∫zxdy(x-y)α-1(y-z)β-1}=(x-z)(α+β)-101dζ(1-ζ)α-1ζβ-1=Β(α,β)(x-z)(α+β)-1となることがわかります。

ただし,Β(α,β)=∫01{tα-1(1-t)β-1}=Β(β,α)=Γ(α)Γ(β)/Γ(α+β)です。

故にΓ(α)-1Γ(β)-1[{∫axdzu(z)∫axdy(x-y)α-1(y-z)β-1}]=Γ(α)-1Γ(β)-1Β(α,β)∫axdz{u(z)(x-z)(α+β)-1}=Γ(α+β)-1axdz{u(z)/(x-z)1-(α+β)}=aα+βuとなることがわかります。

以上でaα(aβu)=aα+βuなる等式の成立が証明されました。(証明終わり)

 上記の[命題1]の結論であるaα(aβu)=aα+βuなる性質によって,以下aα(aβu)を(aαaβ)uと書き,これを記号的に作用素の積としてaαaβaα+βと表現することにします。  

 α=1のときのリーマン・リウヴィル作用素αa1は,a1u=∫axu(y)dyとなります。右辺は単にaを基点とする関数uの1回の積分を意味します。

それ故,上の[命題1]の結論aαaβaα+βから,任意の自然数nに対して,(a1)nanなる式が成立することがわかります。

Γ(n)=(n-1)!ですから,これはuのn回積分:(a1)nuについて,(a1)nu(x)={1/(n-1)!}∫axdy{(x-y)n-1u(y)}の成立を意味します。

しかし,実はuのn回積分が{1/(n-1)!}∫axdy{(x-y)n-1u(y)}と書けることは,∫ax{a1u(y)}dy=∫axdy∫ayu(z)dz=∫axdzu(z)∫zxdy=∫axdz{u(z)(x-z)}etc.など具体的計算から明らかです。

したがって,リーマン・リウヴィル積分作用素aαは,αが自然数nのときにはn回積分を示していることがわかります。

 

そこで,逆に定義aαu(x)≡{1/Γ(α)}∫axdy{u(y)/(x-y)1-α}は,αが自然数nではなく一般の正の数のときのα回の積分への拡張になっていて,積分aα(x)はαが一般の正の数である場合のα回積分と呼ぶにふさわしいものであると考えられます。

そして,もちろん(a1/n)na1なる等式も成立しますから,リーマン・リウヴィル積分作用素aαは分数回積分を表現すると言われることもあるようです。

先のアーベルの積分方程式∫axdy{φ(y)/(x-y)1-α}=f(x)(a<x<b)はf(x)/Γ(α)を改めてf(x)と書けば{1/Γ(α)}∫axdy{φ(y)/(x-y)1-α}=f(x) (a<x<b)ですが,これをリーマン・リウヴィル積分作用素aαを用いて表わせばaαφ=f(a<x<b)と書けます。

そして,前述したアーベルの積分方程式解法は,この方程式:aαφ=fの両辺にa1-αを作用させた後に,それの両辺を微分する方法と解釈されます。  

実際,作用素の積の性質からa1-αaαa1(1回の不定積分)が成立します。

一方,微分するという演算を微分作用素≡d/dxで表現すると,"微分と積分は互いに逆演算である=関数の不定積分の微分は元の関数になる。"という微積分学の基本法則から記号的にDIa1=1 です。

それ故,形式的にaαφ=f⇒a1φ=a1-αf⇒ φ=DIa1-α で表わされるアーベルの積分方程式の解法手順が可能になるわけです。

そこで,リーマン・リウヴィル微分作用素aαというものをaαu≡DIa1-αu={1/Γ(1-α)}∫axdy{u(y)/(x-y)α}によって定義すれば,アーベルの積分方程式aαφ=fの解がφ=aαfになるという意味で,aαaαの逆作用素(aα)-1を与えると解釈されます。

しかし,上記のアーベルの積分方程式を解く手続き,あるいは作用素aαを作用させるという操作aαuが正当化されるためには,aαが如何なる関数u(x)に対して意味を持つかが問題になります。

そのため,まず∀c∈[a,b)に対し[a,c)で絶対連続な関数全体から成る関数空間をAloc[a,b)と書くことにします。

このときラドン・ニコディム(Radon-Nycodim)の定理からu∈Aloc[a,b)なることは,"v∈1loc[a,b)が存在してu(x)=u(a)+∫axv(y)dy(a≦x<b)と書けること"に同値です。

 

(註):本ブログ「TOSHIの宇宙」の2007年7/7の過去記事「条件付確率と条件付期待値」を参照します。

「ラドン・ニコディムの定理」というのはもしも,Φ(A)が"絶対連続:μ(E)=0 E∈⇒Φ(A)=0 "なら,適当な密度関数f(x)が存在してΦ(A)=∫(x)μ(dx)と表現できる。」というものです。(参照終わり)

ただし,σ-有限な測度空間(X,,μ)ではXの部分集合から成る可測集合族であり,μはその上の測度を意味しています。(註終わり)※

 

さらに,部分集合Aloc[a,b)*をAloc[a,b)*≡{u∈Aloc[a,b)|u(a)=0}で定義します

このとき,次の定理が成立します。

[定理2]:0<α<1のとき,アーベル積分方程式aαφ=fが1loc[a,b)で可解であるためには,a1-αf∈Aloc[a,b)*なることが必要十分である。

そして,条件a1-αf∈Aloc[a,b)*の下でアーベル方程式aαφ=fの解は一意的にφ=DIa1-αfと解かれる。

 以下,これの証明です。

(証明)aαφ=fが解φ∈1loc[a,b)を持てば∫axφ(y)dy=a1-αf(x)となり,左辺はx∈[a,b)で絶対連続でa1-αf(a)=0です。それ故,a1-αf∈Aloc[a,b)*です。

 逆にa1-αf∈Aloc[a,b)*を仮定すると,φ≡Da1-αfが存在してa1-αf(x)=∫axφ(y)dyとなります。

 ここで,g≡aαφと置けば[命題1]によってg∈1loc[a,b)でありa1-αg=a1φ(x)=∫axφ(y)dyです。

 そこで,a1-αg=a1-αfが得られました。

 

 これの両辺にaαを作用させると,∫axg(y)dy=∫axf(y)dyですから,両辺を微分して1loc[a,b)においてg≡fを得ます。(証明終わり)

 途中ですが急用を思い出したので今日はここまでにします。

参考文献:上村豊著「積分方程式(逆問題の視点から)」(共立出版)

 

PS:脳血管の「もやもや病」というのはアーティストの「徳永英明」さんが罹ったことで有名になったみたいですね。

 

 そういえば,かなり昔に確か高島兄弟の1人が主演?の弁護士もののドラマのテーマ曲として聴いていたと記憶している「壊れかけのradio」という唄が彼の持ち唄でしたね。

 

 それをカラオケでよく唄っていた頃は,高音部を唄うと首から上の血管が切れそうにな程に辛いことがよくあったのですが,「もやもや病」と何か関係あるのでしょうか?

 

 私の方は歌手ではなくカス?ですが。。。

(今なら昔ほど目一杯大声を張り上げずに唄うので,もっとおだやかな喉への力で唄うことができるかもしれませんね。。)

 

PS2:今日は9月11日ですが「記念日(2006年) 」( 今日は記念日 (2008年)) も風化しつつあるようです。。。

 

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2009年8月30日 (日)

積分方程式(1)(導入)

 まず,本記事を書くに至った動機として,これまで書いてきた「束縛状態とベーテ・サルピーター方程式」(1)~(9)のシリーズ記事の中で,特に「束縛状態とベーテ・サルピーター方程式(1)」の内容を抜粋して要約します。

 ※(要約):

 ベーテ・サルピーター方程式(Bethe-Salpeter equation),略してB-S.eq.はa,b2粒子の散乱の4点グリーン関数G(xa,xb;ya,yb)=<0|T(φa(xab(xba(yab(yb))|0>に対し,G(xa,xb;ya,yb)=⊿Fa'(xa-ya)⊿Fb'(xb-yb)+∫d4a∫d4b∫d4a'∫d4b'Fa'(xa-za)⊿Fb'(xb-zb)I(za,zb;za',zb')G(za',zb';ya,yb)で与えられる積分方程式です。

 ただし,⊿F'(x-y)は修正された(真の)伝播関数(2点グリーン関数)で,一般にスカラー場φ(x)に対しては⊿F'(x-y)≡<0|T(φ(x)φ(y))|0>で定義されます。TはT積(時間順序積)です。

また,I(xa,xb;ya,yb)は,4点グリーン関数Gから4つの"粒子外線=外部伝播関数"を切り離した"相互作用のblob=(a+b)中間状態"の中から2つの"内線=伝播関数"を除くだけでは互いに素な2つの部分に分割不可能な固有グラフ,つまり"2粒子既約部分=(a+b)-既約な積分核"の部分です。

理論は平行移動不変なので,"平行移動の生成子(generators)=2粒子a,bの総4元運動量P^μ"が存在してα(x)=exp(iP^x)φα(0)exp(-iP^x),φα(x)=exp(iP^x)φα(0)exp(-iP^x)(α=a,b),P^μ|0>=0です。

T積の性質から,G(xa,xb;ya,yb)はxa-xb,-ya+yb,xa-ya,xb-yb,xa-yb,xb-yaなる全ての座標の差の関数であることがわかります。これらのうち,独立なものを1次結合で作ります。 

結局,xa-xb,-ya+yba(xa-ya)+ηb(xb-yb)(ηabはηa+ηb1の任意に固定した実定数)で与えられる3つの変数が独立であることがわかります。

そして,I(xa,xb;ya,yb)もGと同様xa-xb,-ya+yba(xa-ya)+ηb(xb-yb)の関数です。

結局,B-S.eq.は運動量表示では(p,q,P)=δ4(p-q)Fa'(ηaP+p)Fb'(ηbP-p)+Fa'(ηaP+p)Fb'(ηbP-p)(2π)-4∫d4'(p,p';P)(p',q;P),または[Fa'(ηaP+p)Fb'(ηbP-p)]-1(p,q,P)=δ4(p-q)+(2π)-4∫d4'(p,p';P)(p',q;P)となります。

これは,記号的にはKG1IGと書けます。

 

しかし,この簡単な等式が実は"時空座標表示=x-表示"での積分方程式G(xa,xb;ya,yb)=⊿Fa'(xa-ya)⊿Fb'(xb-yb)+∫d4a∫d4b∫d4a'∫d4b'⊿Fa'(xa-za)⊿Fb'(xb-zb)I(za,zb;za',zb')G(za',zb';ya,yb)を意味しています。(要約終わり)※

量子論の基本方程式は,定常状態ならハミルトニアンをとしてエネルギーの固有値方程式:|ψ>=E|ψ>で与えられますが,これはx表示ではは線形微分作用素(演算子),ψはxの関数(波動関数)ψ(x)となり,ψ=Eψなる形の微分方程式となります。

つまり,x表示の量子論の方程式は,一般にを線形微分作用素,λを固有値とするxの関数φ=φ(x)に対する線形微分方程式φ=λφの形をしています。

そして,通常のの逆作用素-1が存在する場合には,微分方程式:φ=λφは形式的に解くことができて,φ=f+λ-1φなる形の解を得ることができます。 

が微分作用素なので-1は微分の逆演算である積分作用素です。したがって,φ=f+λ-1φは積分方程式(integral equation)です。 

結局,線形微分方程式:φ=λφの初期値-境界値問題を解くと,常に積分方程式φ=f+λ-1φが得られます。逆に,これを微分すると元の微分方程式を得ます。

すなわち,元々は抽象ヒルベルト空間のべクトルに作用する作用素としての形で表現された|φ>=λ|φ>なる固有値方程式を,位置座標表示や運動量表示など種々の表示で表現したとき,これは微分方程式にも積分方程式にも表現できて,両者は等価です。

 

(微分方程式と積分方程式の表現は互いに逆問題ともいわれます。)

は系のある対称性変換に対する不変性に関わるネーター(Noether)保存量であって,この変換の生成子に相当します。

 

これらは一般に現実の時空の対称性である時間,空間の一様性に関わる平行移動変換群の生成子としてのハミルトニアン(エネルギー)と運動量,また,空間の等方性(回転群)に関わる生成子としての角運動量,

 

そして,内部空間である荷電空間(アイソスピン空間)の回転群の生成子である電荷(アイソスピン)などのように常に観測可能な物理量(obserbavle)に対応しています。

数学という側面で見ると,結局,"量子論というのは表示と表示の間の変換性がその本質であって表示と変換の理論である。"というように結論して,大風呂敷を広げることもできます。

実際,量子論の基礎を学んでいくと,我々は知らず知らずのうちにヒルベルト空間やバナッハ空間など状態空間を与える線形空間のベクトルとそれに作用する線形作用素に関し,固有ベクトルによるスペクトル展開などの拡張されたフーリエ理論や超関数と関わる関数解析という数学の1分野に慣れ親しむようになっています。

そして,状態空間のベクトルのx表示では固有値方程式はシュレーディンガー,ディラック,クライン・ゴルドンなどを含む線形偏微分方程式になり,それらの境界値問題を解くのが量子論の主要問題になります。

 

そして,線形微分方程式を定める線形微分作用素(線形演算子)の超関数的な逆作用素(逆演算子:inverse)をグリーン関数を積分核(kernel)として積分表現をする手法などに慣らされているので,偏微分方程式と等価に見える積分方程式についても,その基礎理論や解法についてわかっているつもりになっていました。

しかし,最近,B-S.eq.やその関連の論文を読む中で,単なる計算式のチェックに何日もかかり遅々として進まないのは,実はVorterra型やFredholm型など積分方程式関連の基本的事項について,私自身が本格的に勉強したことがなく理解できてないことがその原因ではないか?と思い当たる節があったので,少しの間,数学に寄り道をして積分方程式を真剣に学ぼうと思ったわけです。

そこで,積ん読で読んだことがないと記憶していますが比較的物理数学に近くて古い記述の,吉田耕作著の岩波全書「積分方程式の解法」を所持していたことを思い出して自分の本棚を探して見ました。

 

しかし,どうもこれも古本屋に売ってしまったらしく,取り合えず手元にあった上村豊著「積分方程式(逆問題の視点から)」(共立出版)というやや現代数学的色彩の本を参照することにしました。

まず,積分方程式の起源としてアーベル(Abel)が1823~1826年頃に扱ったという積分方程式から見てみます。

これは,∫axdy{φ(y)/(x-y)1-α}=f(x) (a<x<b)という方程式です。これをアーベルの積分方程式,またはアーベル型の積分方程式といいます。

 

ただし,方程式の対象である未知関数はφ(x)であり,f(x)は予め与えられた既知の関数です。

また,パラメータαは 0<α<1を満たすある定数で,一方a,bは-∞<a<b≦∞を満たします。

これは,アーベルに従えば次のようにして解けることがわかります。

まず,∫axdy/(x-y)αaydz{φ(z)/(y-z)1-α}=∫axdy{f(y)/(x-y)α}と変形します。

 

左辺でyとzの積分順序を交換すれば,∫axdzφ(z)∫zxdy/{(x-y)α(y-z)1-α}=∫axdy{f(y)/(x-y)α}となります。

さらに,∫zxdy/{(x-y)α(y-z)1-α}において積分変数をyからζ=(y-z)/(x-z)に置換すると,dζ=dy/(x-z)であり,yのz→xの変動に対してζは0→1と変動します。

 

結局,具体的計算結果として∫zxdy/{(x-y)α(y-z)1-α}=∫01dζ/{(1-ζ)αζ1-α}=Β(α,1-α)を得ます。

ここで,Β(x,y)はオイラー(Euler)のベータ関数でΒ(x,y)≡∫01{tx-1(1-t)y-1}=Β(y,x)=Γ(x)Γ(y)/Γ(x+y)で定義されます。Γ(x)はオイラーのガンマ関数です。

したがって,元の積分方程式はΒ(α,1-α)∫axdzφ(z)=∫axdy{f(y)/(x-y)α}となります。

 

すなわち,φ(x)={Β(α,1-α)}-1(d/dx)[∫axdy{f(y)/(x-y)α}]となって,解φの表式を得ることができます。

ただし,右辺の積分式とその微分が有限に確定するためにはf(x)に何らかの条件が必要です。

fが十分滑らかな関数なら,部分積分により(d/dx)[∫axdy{f(y)/(x-y)α}]=f(a)/(x-a)α+∫axdy{f'(y)/(x-y)α}となることが期待されます。f'はfの導関数(微分係数)です。

以上がアーベルの積分方程式の解法です。 

アーベルにとって,これは次の問題が動機であったらしいです。

 

すなわち,"ある質点が曲線Cに沿って,そのC上のある点Aから定点Oまで初速ゼロで重力のみの作用を受けて摩擦なしで滑り降りるときの所要時間Tが与えられたとき,この曲線Cを決定するにはどうしたらよいか?"という物理学の問題です。

  

(例えば,曲線Cがある角度で傾いた斜面を表わす直線なら,Tは高校物理でも習うような斜面を滑り降りる物体が頂上から下に到達する時間だし,また錘を糸の先につけた振り子ならCは糸の長さLを半径とする円であって,Tは振り子の周期に関係する時間ですね。)

 

yz平面(zが水平方向,yが鉛直高さ方向)の上の曲線Cがz=ψ(y)で表わされるとし,点Aの高さをxとします。時刻tにおいて質量がmの質点(y(t),z(t))の速度は(t)=(dy/dt,dz/dt)なので速さはv(t)={(dy/dt)2+(dz/dt)2}1/2です。

重力加速度をgとすると,最初の時刻t=0 ではy(t)=xで初速がv(t)=0 なので,この重力による運動でのエネルギーの保存則は(1/2)mv(t)2=mg{x-y(t)}となります。

 

一方,速度ベクトルは曲線C:z=ψ(y)の上では(t)=(dy/dt,dz/dt)=(dy/dt,ψ'(y)(dy/dt))です。

 

そこで,v(t)2=(dy/dt)2+(dz/dt)2={1+ψ'(y)2}(dy/dt)2によって{1+ψ'(y)2}(dy/dt)2=2g(x-y)です。

それ故,dy/dt=-{2g(x-y)}1/2/{1+ψ'(y)2}1/2,またはdt=-[{1+ψ'(y)2}1/2/{2g(x-y)}]1/2dyです。

 

そこで,到達すべき終点Oの高さをaとすると,T=∫axdy[{1+ψ'(y)2}1/2/{2g(x-y)}]1/2と書けます。

この式は,始点Aを曲線C上の任意の点と考えて所要時間TをAの高さxの関数f(x)に書き直し,関数φをφ(y)≡{1+ψ'(y)2}1/2/(2g)1/2と定義すれば∫axdy{φ(y)/(x-y)1/2=f(x)になります。

 

こうして結局,アーベルの積分方程式∫axdy{φ(y)/(x-y)1-α}=f(x)のα=1/2とした特別な場合に当たることがわかります。

故に,これの解はφ(x)={Β(1/2,1/2)}-1(d/dx)[∫axdy{f(y)/(x-y)1/2}=π(d/dx)[∫axdy{f(y)/(x-y)1/2}]=πf(a)/(x-a)1/2+π∫axdy{f'(y)/(x-y)1/2}ですね。

ただし,yz平面上の曲線z=ψ(y)の表現という形式にこだわるなら,z=φ(y)={Β(1/2,1/2)}-1(d/dy)[∫aydw{f(w)/(y-w)1/2}=π(d/dy)[∫aydw{f(w)/(y-w)1/2}=πf(a)/(y-a)1/2+π∫aydw{f'(w)/(y-w)1/2}と書くべきかも知れません。

物理学では,"時間T=f(x)が最小になる曲線Cを決定する。"という有名な"最速降下線の問題"があって,設定はアーベルのそれとよく似ていますが,こちらの方は"最小作用の定理"などと同じく変分の問題でラグランジュ方程式を作って解くのと同じような方法で解くことができて,解はサイクロイド(cycloid)曲線になることがわかっています。

ちなみに,極座標での角度がθ=0 のときの初期高さがAのサイクロイド曲線はyz平面ではz=A(θ-sinθ),y=A(1-cosθ)です。

 

サイクロイド曲線Cは,z=ψ(y)なる表現ではC上の各点における勾配がψ'(y)=dz/dy=(1-cosθ)/sinθを満たしています。

積分方程式の導入(introduction),または考察の動機を述べることが中心の記事ということで今日はここまでにします。

 

現在Pendingになっているベーテ・サルピーターの方程式(B-S.eq.)関連の話題の続きは積分方程式の話が終わってからにします。

参考文献:上村豊著「積分方程式(逆問題の視点から)」(共立出版),Noboru Nakanishi "A General survey of the Theory of the Bethe-Salpeter Equation",Progress of Theoretical Physics, supplement,No.43(1969)

 

PS:選挙が終わって民主党大勝の8/31(月)朝の感想です。

 

 今の,衆議院選挙でのある意味で政権交代が起こりやすく大政党候補者のみに有利な小選挙区に,真逆の,ある意味で投票者の死に票がほとんど生じなくて票が公平に反映されますが小党が乱立当選して議事表決がままならず法案が決まりにくい"大選挙区=比例代表区"を少し加えたような選挙制で勝ち負けがはっきり決まって,一方的になるというケースを2度続けて見ました。

 

 しかし,過ぎたるは及ばざるがごとし,いっそのこと元の両方折衷のなつかしい中選挙区だけに戻した方がベターなのじゃないでしょうか?

 

 もっとも,私の本音は選挙制度を知ったばかりの昔から,その欠点を承知の上で選挙するなら完全な意味での"大選挙区=比例代表区"だけでいいという思想ですが。。。

 

 いずれにしろ,水を差すようですが"権力を握ればそれは必ず腐敗する。"(←トロツキーの永久革命論?)ので,長期にならないように交代する,あるいは有権者が交代させることが必要でしょう。

 

 自民党だって,これほど長期でなければ腐敗とか癒着とかはなかっただろうと思います。

 

 知事など自治体首長には多選を避けて2期も勤めれば自ら勇退して,次は後進に道を譲るという思想もあるようですが。。。。

  

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2008年2月17日 (日)

連続(非可算)固有値と可分性

 今日は全く違う論題の記事を書こうと思って準備していたのですが,量子論の状態空間としての無限次元ヒルベルト空間の"可分性=可算稠密な基底を持つこと"について,どうにも納得できなくて説明を求めておられる方がいるらしいと思われるので何かせかされていると感じて,急遽予定を変更しました。

 どうも「EMANの物理学」談話室の昨年の過去ログ「ヒルベルト空間の次元」で2007年9/7にこうしたことについて証明したという内容のNo.2376のhirotaさんの投稿「非可算和=可算和」の説明文だけでは納得されず,どうしても具体的な構成による説明を求められておられるような気がしたので,実際に可算個の基底が存在して状態のヒルベルト空間の任意のベクトルがその可算個の基底で展開されるモデル例を作ってみます。

 まず,Hを状態ベクトルの空間とします。

 

 簡単のためにHは位置座標の関数空間である,つまりHの任意の"元=状態ベクトル"はψ()なる波動関数(=<|ψ>)であって,そのノルム|ψ|は|ψ|≡|<ψ|ψ>|1/2[∫-∞ψ*()ψ()d]1/2で定義されるとします。

 

 そして,このノルムが有限,つまり|ψ|<∞であることが,状態であるため:ψ()∈Hであるための条件であるとします。

 

(この条件は波動関数の絶対値の2乗が確率密度に比例し,それゆえノルムの2乗|ψ|2がその状態の総存在確率に比例する量を表わすので当然です。)

この空間では,状態に作用する運動量演算子は通常の位置表示の微分演算子≡-ihcで与えられます。

(hc≡h/(2π);hはプランク定数です。)

 

この表示で固有値方程式φpφpを満たす関数である平面波φp()≡(2πhc)-3/2exp(ipx/hc)は,実はノルム|φp|=[∫-∞φp*(p()d]1/2が有限ではないので,φp()∈Hではなく運動量の連続固有値に対応するφp()は状態ベクトルではないことになるので,もちろん固有ベクトルではありません。

 

それ故,この表現に固執すると,この空間では運動量の固有状態は存在不可能であって,そこで"運動量の固有値は存在しない。"とさえ言えることになります。

そこで,こうしたことを解消する手立てとして,今仮に運動量空間の分割の最小単位Δpが存在すると想定して,運動量=(px,py,pz)のpx,py,pzのそれぞれの軸上(-∞,∞)の上に,..,-(3/2)Δp,-(1/2)Δp,(1/2)Δp,(3/2)Δp,..,(k+1/2)Δp,]..,なる分割点列を取りこれらの分割による空間格子点を作ります。

 

このとき,空間の格子点全体の濃度は可算個ですから,これらを順に並べて1,2,3,..と番号の添え字を付けることが可能です。

そして,運動量=(px,py,pz)について各成分がx[pix-Δp/2,pix+Δp/2],py[piy-Δp/2,piy+Δp/2],かつpz=∈[piz-Δp/2,piz+Δp/2]を満たすことを,i-Δ/2≦i+Δ/2と書きます。

 

そして,φi()≡(Δp)-3/2pi-Δp/2pi+Δp/2exp(i/hc)d(i=1,2,3,..)なる関数を考えます。

 

これは,"存在確率=波動関数の絶対値の2乗"という意味で,i中心とする1辺がΔpの微小立方体の形でiの周りに集中した平面波φp()≡(2πhc)-3/2exp(ipx/hc)の重ね合わせで構成され,規格化されてノルムが1のベクトルばかりから成る可算濃度の集合{φi()}を用意します。

そして,このときφi()=-ihc∇φi()(Δp)-3/2pi-Δp/2pi+Δp/2exp(ipx/hc)dよりi-Δ/2≦<φi|ii+Δ/2ですから,期待値の意味で近似的にφi() ~ iφi()であり,かつφi()∈Hです。

 

したがって,連続的でそれ故非可算個の任意の運動量値に対し,それがi-Δ/2≦i+Δ/2を満足するような唯一のiを採れば,iが運動量演算子=-ihc∇の近似的な固有値となるような近似的固有ベクトルφi()が存在します。

 

そして,全ての近似的固有ベクトルの集合{φi()}の濃度は,可算個になります。

 

さらに,この可算ベクトル系は規格化直交性<φij>=∫-∞φi*(j()d=δij (i,j=1,2,3,..)を満足します。

Hの任意の規格化された状態ベクトルをψ()とします。

これは,一般にψ()=(2πhc)-3/2-∞()exp(ipx/hc)dで与えられ,|ψ|=[∫-∞ψ*()ψ()d]1/2[∫-∞|()|2]1/21を満たす波束です。

 

ψ()がφi()によって,ψ()=Σi=1iφi()と級数展開可能であると仮定すると,<φk|ψ>=∫-∞φk*()ψ()dx=Σj=1i<φki>=ckによって係数はck=<φk|ψ>となることが必要です。

そこで,逆に係数をi≡<φi|ψ>で定義した級数Σi=1iφi()を作り,これとψ()との差のノルムの平方を計算すると,|ψ()-Σi=1iφi()|2|ψ(x)-Σi=1<φi|ψ>φi()|2=<ψ-Σi=1<φi|ψ>φi|ψ-Σi=1<φi|ψ>φi>=<ψ|ψ>-Σi=1|<φi|ψ>|2となります。

ところで,<φi|ψ>=(2πhc)-3/2(Δp)-3/2-∞f()∫pi-Δp/2pi+Δp/2-∞exp{i()/hc}=(2πhc/Δp)3/2pi-Δp/2pi+Δp/2()dです。

 

の分割区間には重なりが全くないので,Σi=1|<φi|ψ>|2(2πhc/Δp)3Σi=1pi-Δp/2pi+Δp/2|()|2と書けます。

 

したがって|ψ()-Σi=1iφi()|2=<ψ|ψ>-Σi=1|<φi|ψ>|2-∞|()|2p-(2πhc/Δp)3Σi=1pi-Δp/2pi+Δp/2|()|2です。

それ故,運動量刻みΔpをΔp=2πhc=hに等しく取れば,|ψ()-Σi=1iφi()|2=∫-∞|()|2p-Σi=1pi-Δp/2pi+Δp/2|()|2p=0 となります。

 

かくして,"ノルム収束=強収束"の意味でψ()=Σi=1iφi()と書くことができて,級数展開可能になります。

 

ψ()はヒルベルト空間Hの任意のベクトルでしたから,結局{φi()}はHの可算基底となり,これは完全系を張ります。

この記事を書いている最中にも関連したコメントが投稿されました。

 

それは"清水明氏の量子力学の著書に,今書いたこの記事内容と同様な示唆がある"との内容でしたが,別に上記の話は私というか,私を含む少数のオリジナルというわけではなく,量子論の識者であれば共通の認識ですからその通りでしょう。

 

ただ,わざわざここまで具体的にモデル化して説明することは,結構珍しいのではないかと思います。

 

一応,前から書こうと思っていたけれど,面倒臭いと思ってペンディングにしておいた記事が終わり,ちょっとは肩の荷が降りました。

 

今回は短い計算だし,珍しく参考にした文献は全くナシです。

 

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2007年9月 9日 (日)

無限次元ヒルベルト空間

 ちょっと前にEMANさんのボードで話題になっていて,私のブログ

 でも数人がコメントを寄せて論じ合っている量子論の状態空間

 に関する話題では,私自身に説明が求められているようです。

 

 しかし私自身がそうした話について.完全にスッキリしていると

 いうわけではないし,かなり本質的な話題なので現時点での認識

 を覚書き程度に書いておきます。 

 

 量子論では,物理系の状態は,Hilbert(ヒルベルト)空間:の,

 ある規格化可能なベクトルとして記述されます。

  

 そして一般に量子力学では,は可分(separable)な空間である

 とされています。

 

 可分とは,一般に位相空間が与えられているとき,それが可算で稠密

 な部分空間を含むことをいいます。

  

 例えば,実数集合:Rは,可算稠密な部分集合として有理数集合:Qを

 含むので距離空間として可分です。

 

 状態ベクトルの空間が,可分ということは,その空間には高々可算個

 の基底ベクトルが存在して,任意の状態は,必ずそれらの高々可算個

 の重ね合わせ(1次結合)で,いくらでも精密に近似できることを意味

 します。

 

 これは,事実上,任意のベクトルが可算基底で展開できるという意味

 に取れます。

 

 一方,2006年8/19の記事;スペクトル展開と超関数(量子力学)

 や,2006年12/14の過去記事:

 「演算子のスペククトル展開の例(空洞光子の量子場)」,

 

 そして,最近の2007年8/8の「量子力学の基礎(表示の話)(1)

 で書いたように,

 

 関数解析の,"Riesz(リース)の表現定理"や,演算子(作用素)の

 "スペクトル展開定理"というものがあります。

 

 それらは,物理量を表わす演算子の固有ベクトル全体が完全系を

 作っていて,その固有ベクトル全体を直交基底として任意の状態

 ベクトルを展開できるという定理です。

 

 しかし位置座標や運動量・エネルギーを表示対象の物理量とした

 場合,それらの固有値は一般に連続的な値を取り,基底をなすと見

 える固有ベクトルの個数は一般に可算個ではなく非可算個である

 ということになります。

 

 しかし,こうした連続固有値に属する"ベクトル"は,固有ベクトル

 とは呼んでいるものの,これらの"線スペクトル"は,

 

 先に,"物理系の状態はヒルベルト空間のある規格化可能な

 ベクトルとして記述されます。"と書いた条件,

 を満足していません。

 

 これらは,規格化可能ではなく,ノルムとして無限大の大きさを

 持ちますから,に属するべクトルでさえないので,物理的状態

 とは云えない,ということになります。 

 

 そして,2007年5/24の記事:
 「有限な1次元空間に限定された運動量演算子」では,私自身が
 "物理的状態としての境界条件を満たさないような固有ベクトル
 で展開できたとしても,それに何の意味があるのか?"と書いて
 言及しています。
 
 要するに,
 連続スペクトルによる積分展開形式というのは,必ずしも物理
 的状態よる展開ではなく,状態空間が可分なヒルベルト空間
 であるなら,もしも本質的な意味で物理的状態のみで展開しよ
 うとするなら,基底は可算個で十分である,ということになる
 はずです。
 
 つまり,台のLebesgue測度がゼロの超関数のような存在を認めない
 なら,そもそも位置座標や運動量・エネルギーというような
 "連続固有値を持つ"と見える物理量は,実は,
 "Hilbert空間:においては全く固有値を持たない。"
 とさえ云えるわけです。
 
 EMANさんのボードで,hirotaさんもその証明を書かれておられる
 ように,
  
 "連続(非可算)固有ベクトルによる積分スペクトル展開が存在する
 ことは,可分であるということと矛盾するものではない。"
 ということがわかっています。
 
 つまり,任意の状態を示す波は,形式上は"ある点で大きさ無限大
 の確率密度を持つ波,あるいはノルムが無限大の波の積分として
 連続個,非可算個のスペクトルに展開されているように見えます。
 
 しかし,これらのスペクトルを有限な大きさの波束とし,正しい
 Hilbert空間:の物理的ベクトルの集まりとして構成すれば,
 状態は高々可算個の基底ベクトルの和の形で,正しく展開され,
 表現される,と考えられます。
 

2007年8/12の記事:「真空のゆらぎ,エネルギーや,

2007年8/14の記事:「プランクの法則と零点エネルギー

でも書きましたが,

 

物理的に許されない無限大のノルムの固有基底のようなものが

出現するのは,

無限大の零点エネルギーや,"紫外発散部分=くりこみ部分"が

存在するのと同じく,そもそも量子論自体の確率波という性格,

あるいは不確定性原理に根本の原因があると考えられます。

 

そこで,量子論では,それらを注意深く考察することは避けて通

れない問題だと思われます。

 

場の理論では時空点における物理量の密度演算子は局所的場の

1次形式で与えられ,それらが局所的な1点での場の積で与え

られる限り超関数としてしか定義できません。

 

ゆらぎの期待値が無限大になるということは,連続固有値の

1点での固有ベクトルのノルムが無限大になることと無縁

ではありません。

 

ただ,デルタ関数のように,空間の点の関数として見たとき

1点では無限大ですが,総和すると有限というような性格

を持っています。

 

(ただし,2乗して積分すると無限大になるので,

2-空間のベクトルのノルムというような意味では,

有限ではありませんが。。。)

 

もっとも,通常の量子力学の状態空間は可分とされていますが,

 

場の量子論での状態空間(フォック空間)は,そうした連続

スペクトルの物理的状態としての存在をも許していると

いう面もあるように見えるので,その空間は可分でさえない

と思っています。

 

 まあ,ここらへんの量子論の本質的問題を考えることで,ときどき

 夢の中でもうなされることがあります。

 

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2006年12月14日 (木)

演算子のスペクトル展開の例(空洞光子の量子場)

 2006年8/19 に「スペクトル展開と超関数(量子力学)」という量子力学の演算子のスペクトル展開に関する記事を書きました。

 これを再掲し,その応用として空洞輻射の光子(photon)を量子化した調和振動子の場としたときの密度演算子ρのスペクトル展開の例をあげてみます。

(※再掲記事開始)

 まず,ある自己共役な線形演算子Aの固有値は離散的として,それをλn(n=1,2,..)とし,その固有状態のケットベクトルを|λn>とします。

 

 簡単のため,縮退がないとすると,m≠nのとき<λm|A|λn>=λm<λmn>=λn<λmn>でλm≠λnより,|λm>と|λn>は直交していて<λmn>= 0 です。

 

 一般に離散的固有値のみのときは<λmn>=δmnとHilbert空間のベクトルとして直交規格化することができます。

 そして固有状態のベクトル系が完全系であれば,任意の状態のベクトル|ψ>は|ψ>=∑nn><λn|ψ>と展開できます。

 

 特にA|ψ>=∑nn><λn|ψ>=∑nn>λn<λn|ψ>と書くこともできるので,Pn≡|λn><λn|により射影演算子を定義すれば,形式的にA=∑nλnnと表すことができます。

 

 これを演算子のスペクトル展開と言います。

 一方,Aが位置Xや運動量Pのような連続固有値を持つ場合はどうでしょうか?

 

 運動量Pは閉じ込められたり束縛状態の場合には離散固有値も取りますが,自由粒子では連続固有値しか取りませんね。

 このときのAの連続固有値をλ,固有ベクトルを|λ>とするとλ≠λ'なら,やはり<λ|λ'>=0 ですが,この場合は一般に固有ベクトルはノルムが有限でないため,Hilbert空間のベクトルではないので直交規格化することはできません。

 

 例えば,X表示では<X|X'>=δ(X-X')というDiracのデルタ関数という,"関数とはいえないもの=超関数"という形でしか,直交規格化をうまく表現できません。

 展開の方も,形式的には,|ψ>=∫|λ><λ|ψ>dλ,また,A|ψ>=∫|λ>λ<λ|ψ>dλと書き,

 

 P(λ)≡|λ><λ|と定義して,A=∫λP(λ)dλと書いて,これを演算子のスペクトル展開である,としてもいいように思えます。

 

 しかし,P(λ)=|λ><λ|なるものを記号的に射影演算子と定義してもこれ自身が"長さ=ノルム"が有限ではない超関数的な実体でHilbert空間の上の有限な演算子,または物理量という資格がありません。

 

 A=∫λP(λ)dλという形式的展開を表わす右辺の積分もLebesgueやRiemannの意味での積分という通常の定義からはみだしています。

 そこで,Aの固有値がλとλ+dλの間のP(λ)dλ=|λ>dλ<λ|に相当するものとして,dE(λ)なるものをスペクトル射影演算子として定義します。

 

 そして,Stieltjes積分を使って|ψ>=∫|ψ>dE(λ)と展開し,またA=∫λdE(λ)と書けば,やっと演算子のスペクトル展開になるわけです。

 超関数を気持ち悪いと考えないなら,DiracのオリジナルのA=∫λP(λ)dλ=∫|λ>λ<λ|dλを演算子のスペクトル展開としても別にかまわないと思います。

 

 いずれの扱いでも積分の定義を拡大解釈することにより,離散的な場合をも含めて機能的に扱うことができます。

 

(再掲記事終了※)

 さて,ここで量子論の演算子のスペクトル展開の例として単一モード(単一運動量)の空洞輻射の光子の熱励起を個数状態で展開した密度演算子(密度行列)ρ≡Σnn|n><n|を考えてみます。

 統計力学によれば,光子がn個励起される確率は,

 Pnexp{-En/(kBT)}/[Σn=0exp{-En/(kBT)}]

 で与えられます。

 

 そして,量子化された場の調和振動子としての単一モードの光子のエネルギーは,Planck定数をh,hc≡h/(2π)とすれば,

  

 n=(n+1/2)hcω (n=0,1,2..)で与えられます。

  

 そこで,U≡exp{-hcω/(kBT)}とおけば,

 n個の光子が励起される確率は,Pn=Un0n=(1-U)Un

 =[1-exp{-hcω/(kBT)}]exp{-nhcω/(kBT)} です。

 したがって,密度演算子は,ρ≡ΣPn|n><n|

=[1-exp{-hcω/(kBT)}]exp{-nhcω/(kBT)}|n><n|

と書けます。

 

 これが量子論の密度演算子ρのスペクトル展開ですが,完全系をなす"エネルギー固有状態=個数状態"によって,ρのあらゆる行列要素を求めると,

<m|ρ|n>=Pnδmnとなり,行列ρは対角要素しか持ち得ません。

<m|ρ|n>は演算子ρのあらゆる情報を網羅しているので,実は密度演算子ρはPnのnを演算子のn^=a^+a^に変えた式で,

 

ρ=Pa^+a^=[1-exp{-hcω/(kBT)}]exp{-hcω(a^+a^)/(kBT)}

と書くことができます。

 

これは,個数演算子:n^=a^+a^(=Σn=0n|n><n|)の固有状態によるスペクトル展開の形で表現された演算子としての,

 

密度演算子:ρ≡Σnn|n><n|が,

  

スペクトル展開の逆演算としてn^=a^+a^の関数として直接,陽に書けるようにできる例になっています。

  

参考文献;Loudon 著(小島忠宣・小島和子 共訳)「光の量子論」(内田老鶴圃)

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2006年12月 5日 (火)

バナッハ空間における陰関数定理

前記事の逆写像定理(逆関数の存在定理)の系として,陰関数定理(Implicit-function Theorem)も証明しておきましょう。

 

これは次のような内容です。

 

"X,YをBanach空間とし,E⊂(X×Y)(=X,Yの直積空間)を,(X×Y)の開集合とする。

 

ただし,(,)∈⊂(X×Y)のノルム|(,)|は,

|(,)||x||y| で定義する。

 

をE→XのC1級の写像とする。

 

(,)=0 を満たすある(,)∈(X×Y)において,

の線形かつ連続な微分係数をA≡'(,)∈L(X×Y,X)

とおく。

 

そして,JxをJx()≡(,0)なるX→(X×Y)の線形写像

と定義するとき,合成線形写像:AJxが可逆なら

 

∈WなるあるYの開集合W⊂Yが存在して,()=,

かつ∀∈Wに対して((),)=0 が成立するような写像

:W→Xが存在して,1級であり一意的である。"

 

というものです。

 

(これをなぜ陰関数定理と呼ぶのかというと,これは(,)=0 なる式から,それと同等な意味を持つ,

 

()が存在して((),)=0 が成立する,という

"陰関数の存在と一意性"を保証するものだからです。) 

 

まず,準備として次の補題が必要なので証明しておきます。

 

"A∈L(X×Y,X)でAJx:X→Xが可逆なら,

(,)≡(A(,),)で定義されるB:(X×Y)→(X×Y)

は線形連続写像,

 

つまりB∈L(X×Y)であって,これも可逆である。"

 

というものです。

 

これの証明をやってみます。

 

Bの線形性はAの線形性から直線的に得られるので,

これの証明は省略します。

 

Bの"連続性=有界性"の方の証明ですが,

 

これは,|(,)||(A(,),)||||(,)||y|

||(|x||y|)+|y|≦(||+1)|(,)|より,

確かに成立することがわかります。

 

よって,B∈L(X×Y)です。

 

次に,B(,)(0,0)ならば,(,)=0 かつ0 です。

 

よって,Ax0 かつ0 ですが,仮定によりAJx:X→Xは可逆なので,これから(,)=(0,0)が得られます。

 

故に,Bは1対1(単射)です。

  

有限次元なら線形写像では1対1写像(単射)と上への写像(全射)は同義なのですが,無限次元空間なのでそうはいきません。

  

そこで,Bが上への写像であることも証明する必要があります。

 

(,)∈(X×Y)が任意に与えられたとします。

 

≡(x)-1(-A(0,)),かつとすると,

B(,)≡(A(,),y)=(A(,0)+A(0,),)

=(Ax+A(0,),)=(,)が確かに成立します。

 

かくして,Bは全単射であることがわかりましたから,

逆写像B-1が存在します。

 

次に,B-1(,)=((x)-1(-A(0,)),)ですから,

|-1(,)||(x)-1|(|z||||w|)+|w|

≦{|(x)-1|(||+1)+1}|(,)|により,

 

-1も"有界=連続"です。

 

以上で,B∈L(X×Y)で,Bは可逆であることが証明されました。

 

では,本題の陰関数定理の証明に取り掛かります。

 

まず,写像:E→(X×Y)を(,)≡((,),)

で定義します。

 

このとき,(,)∈(X×Y)におけるの微分係数を求めます。

 

(,)-(,)=((,)-(,),)

=('(,)(,)+(,),)=(A(,),)+(,),

 

ただし,|s(,)|/|(,)| 0 as (,)→ (0,0) です。

 

それ故,B:(X×Y)→(X×Y)をB(,)≡(A(,),)であるように定めると,B='(,)で上の補題によりBは可逆です。

 

結局,:E→(X×Y)でB='(,)は可逆であり,

(,)=((,),)=(0,)です。

 

そこで,逆写像(逆関数)定理により,開集合U,V⊂(X×Y)が存在して

(,)∈U⊂E,(0,)∈Vで,:U→Vが全単射となります。

  

それ故,逆写像Φ-1:V→Uが存在してVの上でC1級です。

 

Φ(,)=(,)なら(,)≡((,),)=(,)より,

です。

 

そこでΦ(,)≡(φ(,),)でφ:V→Xを定義すれば,

φVの上でC1級です。

 

そして,(,)=(0,)により,Φ(0,)=(,b),

すなわちφ(0,)=です。

 

また,(φ(,),)=(,) for ∀(,)∈V ⇒ (f(φ(,),),)=(,) for ∀(,)∈Vです。

 

Vは開集合で,(0,)∈Vですから,ヨε>0:{(,)||z|||<ε}⊂Vが成立します。

 

このとき,W≡|∈Y|||<ε}と定義すると,WはYの開集合で

∈Wに対して(0,)∈Vです。

 

そして(f(φ(0,),),)=(0,) for ∀∈W,

すなわちf(φ(0,),)=0 for ∀∈W ,

 

つまり()≡φ(0,)とおけば((),)=0 for ∀∈W

です。

 

はWの上でC1級であることが示されました。

 

次に,の他にf(*(),)=0 for ∀∈Wなる*が存在すれば,

 

((),)=(((),),)=(0,)=((*(),),)

(*(),)であり:U→Vは全単射ですから,

Wの上で()=*()となります。

 

以上で証明終わりです。

 

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バナッハ空間における逆写像定理

 今日は解析学の課題として完備なノルム空間であるバナッハ空間(Banach)における"逆写像定理(=逆関数定理:Inverse-function Theorem)"を証明してみたいと思います。

 まず,逆写像定理という定理の意味ですが,これは次の命題のことです。

 

"XをBanach空間としE⊂XをXにおける開集合とする。そして,をE→XのC1級写像とし,∈E,()とする。

 

 さらに,線形写像:A≡'()は可逆(invertible),つまり,点におけるの微分係数A='()は全単射で逆写像;A-1を持つ,とする。"

(定理の仮定)

  

(※もしも,Banach空間XがRnであれば,可逆とは'()のJacobi行列式(Jacobian)がゼロでないことを意味します。※)

  

 このとき,"∈U⊂E,∈Vを満たすXの開集合:U,Vが存在して,

(1):U→Vは全単射 (2)-11級写像となる。"(定理の結論)

 

 というものです。

  

 これを証明するためには2つの補題:「縮小写像定理(contraction lemma)or 不動点定理」と「平均値の定理」が必要です。

 

 縮小写像定理(不動点定理)とは,

 

 "(E,d)を完備な距離空間(complete metric space)とする。

 

 がE→Eの縮小写像である(0<K<1:d((),())≦Kd(,) for ∀,∈E)なら,()=を満たす∈Eが存在して一意的である。"

 

 という定理です。

 

 この定理の結論での一意的(unique)なのことを不動点と言います。

 

 これの証明は簡単です。

 

 任意の0∈Eを取り,これを基に,1(0),2(1),..,n(n-1),..と点列{n}を逐次的に定義すると,

 

 d(2,1)=d((1),(0))≦Kd(1,0)...より,

 帰納的にd(n+1,n)≦Kn(1,0)が成り立うことがわかります。

 

 そこで,m>nのときにはd(m,n)≦{Kn/(1-K)}d(1,0)→ 0 as m,n→ ∞ です。

 

 つまり{n}はCauchy列になります。

 

したがって,(E,d)の完備性から,∃∈E:d(,n)→ 0 です。

 

ところで,0<K<1:d((),())≦Kd(,) for ∀,∈E であり,はEの上で一様連続なので,

 

n→ ∞に対して(n)→ ()となります。

 

他方,d((n),n)≦Kn(1,0)が成立しますから,

n→ ∞の極限では,d((),)=0,つまり()=です。

 

もしも,これ以外に不動点'があれば,d(,')=d((),('))≦Kd(,')<d(,'),つまりd(,')<d(,')となって明らかに矛盾です。

 

よって不動点は一意的です。(証明終わり)

 

次に平均値の定理ですが,これは,

 

"XをBanach空間,U⊂XをXにおける開集合,さらに凸集合とする。

そして,をUにおいてC1級の写像とする。 

 

(※Banach空間というのは完備な線形ノルム空間です。

ノルム空間の距離空間としての距離dは,ノルム(norm)で与えられ,ノルムを||で表わすと,の距離はd(,)=|xy|です。※)

  

このとき,,∈Uに対し+t()(0<t<1)が存在して,

|f()-()||yx|sup|f'()|が成立する。"

 

というのが平均値の定理です。

 

これの証明は,(t)≡(+t())とおけば,'(t)=()'(+t())ですが,単純な実数関数の平均値の定理により

 

|F(1)-F(0)||F'(c)|なる 0<c<1 が存在するので完了です。

 

(つまり実数値関数h(t)≡|F(t)-F(0)|に平均値の定理を適用すればいいのですね。)

 

さて,いよいよ,逆写像定理の証明をします。

 

(証明) A≡'()が可逆なのでA-1が存在しますから,1/λ≡|-1|とおきます。

 

'はEの上で連続でEは開集合なので,r>0 が存在して,

|xa|≦rなら,∈E,かつ|A-'()|≦λ/2,

つまり|I-A-1'()|≦1/2を満たすようにできます。

 

(ここで線形写像のノルムも同じノルム記号を使っています。)

 

次に,|yb|≦λr/2なる∈Xを取り固定します。

 

y()≡+A-1(()とおけば,y'()=I-A-1'(),

よって|gy'()|≦1/2 for ∀:|xa|≦rです。

 

平均値の定理により,∀1,2:|xia|≦r(i=1,2)に対して,

|gy(1)-gy(2)|≦(1/2)|x12|が成立します。

 

特に,|xa|≦rなら,|gy()-y()|≦r/2,

また|gy()-a||-1()|≦r/2,

つまり|gy()-a|≦rです。

 

しかも |y(1)-y(2)|≦(1/2)|x12|より,y()はUr()の閉包の上では縮小写像ですから,

 

縮小写像定理によって,Ur()の閉包の中に*y(*), or

(*)を満たす*が一意的に存在します。

 

上のは固定していましたが,これは任意なので,

 

λr()の閉包における任意のに対して,Ur()の閉包の中に一意的なが存在して()が成立することが示されました。

 

そして,+A-1(()-A-1(())より,

|xa||gy()-y()||-1(()-)|

|-1||()-b|+(1/2)|xa|です。

 

よって,|f()-b|≧(λ/2)|xa|であり,|xa|≧rなら

|f()-b|≧λr/2です。

 

そこで,()で∈Uλr()なら∈Ur()ですから,

"∈Uλr()⇒∈Ur()"の関係は,の一意性により1対1対応であることがわかります。

 

ここで,U≡{∈Ur()|f()∈Uλr()}とおけば,

の連続性からUは開集合であり,V≡(U)とおくと,

明らかにはU→Vの上への写像になります。

 

結局,φ:V→Uなるの逆写像φ-1が存在することがわかります。

 

そこで,Vも開集合であることを証明するために,0∈Vを取ります。

 

既に示したことから,0(0)を満たす0∈Uが存在しますが,

Uは開集合なので|x0|<η⇒∈Uなるη>0 が存在します。

 

ところが,先に導いた|f()-b|≧(λ/2)|xa|と同じく,

|x0|(2/λ)|f()-0|=(2/λ)|y0|ですから,

 

|y0|<λη/2なら|x0|<ηより,

∈U,すなわちf()∈V,つまり∈Vが成立します。

 

よってVも開集合です。

 

最後に,φ-1がVの上で1級写像であることを示しましょう。

 

∈Ur()⇒|A-'()|≦λ/2<λ=1/|-1|から

'()も可逆であることがわかります。

 

実際,微分係数'()というのは線形写像を意味するのですが,

 

Tを,XからXへの|A-T|<λ=1/|-1|を満たす任意の線形写像とすると,|(A-T)A-1||A-T||-1|1なので,

 

δ≡|A-T||-1|とおけば 0<δ<1であり,

|Σk=nm{(A-T)A-1}k|≦δn/(1-δ)→ 0 となります。

 

そして,Xの完備性により,Xの上の線形写像全体から成る線形空間:L(X)も完備ですから,極限:W≡Σn=0{(A-T)A-1}nが存在してW(X)となります。

 

それ故,∀∈Xに対し≡A-1とすると,

 

{A-(A-T)}={I-(A-T)A-1}W

Σn=0{(A-T)A-1}nΣn=1{(A-T)A-1}n

となることがわかります。

 

さらに,Tは1対1であることも示せるので,結局Aが可逆で,かつ

|A-T|<λ=1/|-1|なら,Tも可逆ということになるからです。 

 

そこで,B≡'()-1とするとBは有界です。

 

y,∈V,φ(),φ()-φ()とおけば,

()-()='()()です。

 

ただし,|r()|/|h|→ 0 as |h|→ 0です。

 

それ故,B+B():φ()-φ()=B-B()

ですが,λ|h|/2≦|k|なので ,||0 なら|h|→ 0 です

 

したがって,φ'(y)が存在してφ'(y)=B='(φ())-1です。

 

そして,'()が"連続=有界"でありφも連続故,合成写像φ'も"連続=有界"ですから,結局φ-1はVの上で1級写像です。(証明終わり)

 

※これは大学の物理学科3年のときに数学科の2年の解析学の講義にもぐりこんで取ったノ-トに基づいているので特に種本はありません。

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2006年8月19日 (土)

スペクトル展開と超関数(量子力学)

 自分の復習の意味で"量子力学の線形演算子=物理量"をその固有状態の状態ベクトルで作った射影演算子で展開する方法を考察してみます。

 まず,ある自己共役な線形演算子Aの固有値が離散的であるとして,それをλn (n=1,2,3,...) とし,その固有状態のケットベクトルを|λn >とします。

 簡単のため縮退がないとすると m≠nのときは<λm| A |λn>=λm<λmn >=λn <λmn >で,λm≠λn ですから ,<λmn>=0 であり, |λm>と |λn>は直交します。

 一般に離散的固有値のみのときは,<λmn >=δmnとヒルベルト空間のベクトルとして直交規格化することができます。

 そして固有状態のベクトル系が完全系:∑nn><λn | =1であれば任意の状態のベクトル |ψ>は |ψ>=∑nn><λn |ψ> と展開できます。

 特に, A |ψ>=∑nn>λn<λn |ψ> と書くこともできるので,Pn≡|λn><λn | で射影演算子を定義すれば, A=∑nλn Pn と表わすことができます。

 これを演算子のスペクトル展開といいます。

 一方,Aが位置や運動量Pのような連続)固有値の場合はどうでしょうか?

  運動量Pは閉じ込められたり,束縛状態(の場合には離散固有値も取りますが,自由粒子では連続固有値しか取りませんね。

 このときの Aの連続固有値をλ,固有ベクトルを|λ>とするとλ≠λ' ならやはり <λ |λ' >=0 です。

 しかし,この場合は一般に固有ベクトルはノルムが有限でなく,ヒルベルト空間のベクトルでさえないので,"直交規格化"することはできません。

 例えばX表示で は,<X | X'>=δ(X-X' ) という,ディラック(Dirac)のデルタ関数という"関数とはいえないもの=超関数"でしか"直交規格化"をうまく表現できません。

 展開の方も,形式的には |ψ>=∫|λ><λ |ψ>dλ,また A |ψ>=∫|λ>λ<λ |ψ>dλと書いて,P (λ)≡|λ><λ| と定義し, A=∫λP(λ) dλ と表現して,これを演算子の"スペクトル展開"である。としてもいいように思えます。

 しかし,P (λ)≡|λ><λ|なるものを記号的,形式的に射影演算子と定義しても,これ自身が"長さ=ノルム"が有限でなくて超関数的な実体です。

 ヒルベルト空間の上の有限な演算子,または物理量という資格がありません。

 A=∫λP(λ) dλという形式的な展開を表わす右辺の積分も,ルベーグやリーマンの意味での積分という通常の定義からはみ出してしまいます。

 そこでAの固有値がλとλ+dλの間のP(λ)dλ=|λ>dλ<λ| に相当するものdE(λ)をスペクトル射影演算子と定義します。

 そして,スティルチェス積分を使って,|ψ>=∫|ψ>dE(λ)と展開します。

 また,A=∫λdE(λ)と書けば,やっと意味のある演算子のスペクトル展開になるわけです。

 超関数を気持ち悪いと考えないなら,ディラックのオリジナルのA=∫λP(λ) dλ=∫|λ>λ<λ |dλを演算子のスペクトル展開としても,私は別にかまわないと思います。

 いずれの扱いでも,積分の定義を拡大解釈することにより,離散的な場合をも含めて機能的に扱うことが可能となります。

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