104. 熱力学・統計力学

2014年12月12日 (金)

統計力学の基礎(6)(量子統計力学4)

 統計力学の基礎概念への脱線から離れて,再び,量子統計力学3の

続きです。

 

経路積分と摂動論に戻る最後の関門の第2量子化とGreen関数

について記述します。

 

今日は,まず,第2量子化について述べます。

そのため,最初はBose統計に従う粒子に着目します。

 

粒子数の演算子rを考えます。

添字rは具体的にはBoseスカラー粒子なら波数(運動量)だけ

ですが,Fermi粒子かスピンが1のBose粒子ならスピン変数をσ

としてr=(,σ)などを意味します。

 

便宜上,適宜この添字rを省略して個数演算子を,その固有値

nを持つ状態を,ケットベクトル |n>で記述します。

|n>=n|>です。

 

固有値nは整数値のみを取り,固有ベクトル|n>は

<m|n>=δmn直交規格化されているとします。

 

こうしたの固有状態に対して次のような作用を及ぼす演算子 

,を導入します。

 

すなわち, |n>=n1/2|n-1>,

|n>=(n+1)1/2|n+1> なる作用です。

 

つまり,は粒子数を1つ減らす演算子,は1つ増やす演算子

です。そこでを消滅演算子,を生成演算子と呼びます。

 

これらは状態のケットにのみに作用して,その係数には作用せず

素通りするとします。

 

すると|n>=n1/2|n-1>=n|n>, 

aa|n>=(n+1)1/2|n+1>=(n+1)|n>

が成立します。

 

それ故,が,個数演算子の役割をすることがわかります。

 

そじで添字rを復活させると,rrrです。

 

,の行列要素をつくると,任意のm,nに対して, 

<m||n>=n1/2<m|n-1>=n1/2δm,n-1であり, 

<n||m>=(m+1)1/2δm,n+1=n1/2δm,n-1ですから 

<n||m>=<m||n>* が成立します。

 

したがって,のHermite共役です。

よって,rrのHermite共役です。

 

そこで,上添字+(ダガー)を文字通り演算子のHermite共役を意味

する記号と考えれば,r=(rr)rrrとなるため

rは実数のみを固有値とするHermite演算子なので,この意味では

定義は無矛盾です。 

 

また,|n>=n|n>,aa|n>=(n+1)|n>より,

全ての|n>に対して,(aa|n>=|n>ですから,

aa=1 が成立します。

任意の演算子,に対して交換子[,]を

[,]≡ABBAで定義すれば, 

[,]=1と書けます。

一方,[,]=[,]=0 は自明です。

あるいは,これを一般化して[r,]=δrs,

[r,]=[,]=0 とします。

 

これは,異なる添字r≠sのr,の固有状態なら固有値が

同じnであっても直交し無関係であることを意味しますが,

これは例えば添字rが運動量意味するBose粒子では,異なる

での個数は無関係なので当然の規約です。

 

これらの交換関係は,改めて固有値と固有ベクトルの表現を添字

付きで,|n>=n|n>etc.とすれば,一般化された固有

ベクトルは,|..,n..,n..>=..|n>..|n>..の

ような直積表現と解釈され,

 

r≠sなら.|..,n..,n..>

=(n1/2(1/2|..,n-1 ..,n-1..> 

|..,n..,n..>,

 

|..,n..,n..>

=(n+1)1/2(n+1)1/2|..,n+1 ..,n+1..> 

=a|..,n..,n..>n..,n..>,

 

そして, 

|..,n..,n..>

=n1/2(n+1)1/2|..,n-1 ..,n+1..> 

=a|..,n..,n..>n..,n..>であり,

 

r=sなら,|..,n..,n..>

=(n+1)|..,n..,> 

(+1)|..,n..,n..>となりますから

明らかです。

 

Fermi統計に従うFermi粒子の場合,|n>=n|n

のnは0,1の2つの値しか取り得ないので,消滅,生成演算子

,|n>=n1/2|n-1>,

|n>=(n+1)1/2|n+1>で同じように定義しても,

 

固有状態 |n>としては,固有値nがn=0,1の状態

|0>,|1> の2つしか存在しないため,全ての作用を具体的に

書くことができて,|1>=|0>,|0>=|1>であり,

一方,|0>=|1>=0 でなければなりません。

 

それ故,|1>=0,|0>=0 です。 

また.|0>=0,|1>=0 も明らかですから

演算子として0です。

 

他方,|0>=|0>,|1>=|0>ですから, 

|1>=0, |0>=0の成立と合わせると, 

()|0>=|0>,

()|1>=|1> を得ます。

 

よって,Fermi粒子の場合は,任意の演算子,に対して

反交換子{,}{,}≡ABBAで定義して, 

{r,}=δrs,{r,}={,}=0  

と規約すれば,全ての辻褄があって無矛盾となります。

 

Fermi粒子でも個数演算子はであり,

|n>=n|nが成立します。

 

なお,粒子が存在しない状態 |0>に対しては,Fermi粒子だけ

でなくBose粒子でも|0>=0 が成立して,これ以上は粒子

を消滅させることができないとしています。

 

|0>に対してこのように規約すれば.Bose粒子の

|n>=n|nを満たす固有値nについても許される

のは非負の整数のみ:n=0,1,2..です。

 

そして,全てのrについての粒子がゼロの状態 |0>の直積で

与えられる全く粒子の存在しない状態 

|..,n..,n..>=|0,..,0...,0,..>を真空(vacuum)と

呼ぶことにします。

 

量子論では零点振動とか零点エネルギーと呼ばれる真空の

エネルギ-なるものの存在について論じられることもありますが

そうしたものは無視して,真空はHamiltomian の固有値がゼロ

の固有状態であるとします。

 

つまり,真空 |0,..,0...,0,..>はエネルギ^-がゼロの

基底状態(エネルギーの原点)であるとします。

 

すると,演算子は,εを添字rに対応する1粒子のエネルギー

として,=Σε=Σεと表現されます。

 

特に,粒子が自由粒子でr=(,σ)なら,ε=hc22/(2m)

です。

 

次に,とスピンsの関数としてこの粒子の場の演算子:

φσ(,s)を,φσ(,s)=V-1/2Σexp(ikx)δ(s,σ)

によって導入します。

 

ただし,δ(s,σ)はスピン部分の関数でδ(s,σ)はσ=s

のとき1でそれ以外はゼロの関数です。

 

スピンがゼロのBose粒子なら常にσ=s=0ですから,

δ(s,σ)=δ(s,0)≡1 であって,場はスカラー場

φ()≡φ0(,0)と表現されます。

 

一方,スピンが1/2のFermi粒子の場合,σ=±,で 

φ±(,s)=φ±()δ(±,s)と書くと,これは2成分が

φ±()のスピノール:(φ+(), φ())で表わされます。

 

さらに,スピンが1のBose粒子の場合,やはり,σ=1,-1,0の場

φσ(,s)φσ(,s)=φσ()δ(s,σ)と書いて,3成分

φ±(),φ0()の3行1列の列ベクトル

(φ+(),φ(),φ0())で表現されます。

 

そして,場φσ(,s)のHermite共役 φσ+(,s)を, 

φs+(,s)=V-1/2Σexp(-ikx)δ(s,σ)

とします。

 

改めて,交換子 [,]を[,],反交換子 {,}

を[,]と書くことにします。

つまり,[,]±AB-±BA(複号同順)です。

 

場の演算子に対しては,+の反交換子がFermi粒子,-の交換子

がBose粒子に対応して,交換関係,反交換関係: 

[φσ1(1) φσ2+(2)]±=δ3(12σ1,σ2, 

[φσ1(1) φσ12(2)]±=[φσ1+(1) ψσ2s2(2)]±=0  

が成立しています。

 

また,=Σεは,ポテンシャルUが存在する

場合,=∫d3xφσ+()[-hc22/(2m)+U()]φσ() 

と書けます。

 

何故なら,=Σε=Σεですが, 

簡単のためスピンがゼロのBose粒子を想定しrの添字rが運動量 

(波数)である場合を考えて,r()と書くことにすると, 

ε=ε()=2/(2m)+U() です。

 

ただし,U()はポテンシャルU()のfourier変換,または

位置共役な物理量である運動量表示のポテンシャル

です。

 

()=V-1∫d3U()exp(ikx)

⇔ U()=∫d3U()exp(-ikx) なる式で与えられます。

 

個数演算子もこの表示ではrrr()=()()

と書けます。

 

交換関係 [r,]=δrs,[r,]=[,]=0  

,r=1,s=2として,[(1)(2)]=δ3(12), 

[(1),(2)]=[(1),(2)]=0 となります。

 

故に,=Σε=∫d3ε()()() 

=∫d33ε()()(3 ()ですが, 

δ3 ()=V-1∫d3exp{-i()}なので, 

=V-1∫d3∫d3()exp(-ikx)

∫d3ε()()exp(ipx) 

=V-1/2∫d3xφ()∫d3[2/(2m)+]ε()

()exp(ipx) 

=∫d3xφ()[-hc22/(2m)+U()]φ()

となるからです。

 

(注釈):ここで第2量子化についての薀蓄を少し述べたく

なりました。

 

元々の通常の(第一量子化の)1粒子量子力学では

=-hc22/(2m)+U()であり,多粒子系では

=Σk{-hc22/(2mk)}+U(1,2..,)であった 

のに対して,

 第2量子化で全ての質量mkが同じmの同一粒子

ではH=∫d3φσ+()[-hc22/(2m)+U()]φσ()

と表現されるのには,どういう意味があるのでしょうか?

 

第2量子化(場の量子化)は波動関数を演算子と見なす操作で行う

ことが可能なため,量子論の基礎付けを根底から大転換する新理論

のように見えますが,実はそれほど重大な意味はなくて,単に表示

を位置座標表示表示から個数表示にユニタリ変換するだけの

表示の変換過ぎないと考えられます。

 

すなわち,抽象的なあるHilbert空間の状態ベクトルに作用

する線型作用素(演算子)としてHamiltonianを,運動量を

すると,2/(2m)+U です。

 

このとき,表示での演算子の行列要素は位置座標で対角化

されています。

 

つまり,表示では任意の演算子の行列要素<||>は

対角成分のみがゼロでない対角行列の形をしています。

 

 演算子が運動量なら,特にSchroedinger表現でのについて

表示では,<||>=-ihcδ3()であり,また,

ポテンシャル||>=U()]δ3()で与えられ

ます。

 

 Hについても,

||>=[-hc22/(2m)+U()]δ3() です。

 

多粒子系なら,位置座標が(1,2..,),および,

(1,2..,)の状態を挟むと,行列要素は,

1,2..,||1,2.., 

 =k|-hc2k2/(2mk)]+U(1,2..,)] 

 δ3(113(11)..δ3() です。

 

ただし,U(1,2..,)は,の行列要素が

1,2..,||1,2..,=U(1,2..,)

δ3(113(11)..δ3() なる対角成分

のみを持つとした多体系のポテンシャルを意味します。

 

状態 |Ψ>の波動関数,つまり位置表示での状態ベクトル

Ψ(1,2..,),|Ψ>に含まれる位置の固有状態

|1,2..,>の成分,

あるいは,その位置固有状態で展開した展開係数であって

粒子の存在確率の確率振幅を表わすものですから

Ψ(1,2..,)=<1,2..,|Ψ>なる式で与え

られます。

 

 ここで,便宜上,=(1,2..,)と略記すると,

 Ψ()=<|Ψ>です。

 

 そこで,

<Ψ||Ψ>=∫d<Ψ|><||><|Ψ> 

=∫d<Ψ()<||>Ψ() 

=∫d Ψ()()Ψ() となります。

 

ただし,ここでも<||=H()δ(),と書け

ますが,≡d3132..d3, 

δ()≡δ3(113(11)..δ3() 

と略記しました。

 

つまり,1粒子量子力学の波動関数ψ()で張られる2乗可積分

関数の状態空間に作用するHamiltonian演算子は

()=-hc22/(2m)+U()であり,多粒子系の波動関数

Ψ()で張られる2乗可積分関数の空間に作用するHamiltonian

演算子は()=Σk|-hc2k2/(2m)]+U()です。

 

一方,個数表示では,添字rを省略すると,

であり,|n>=(n!)-1/2()|0>です。

 

任意の演算子の個数表示による行列要素を表示での

完全系条件∫d><|=1を挿入して表示で展開

すると,

<m||n>=∫d<m|><||><|n>

であり,

一方,任意の状態におけるの期待値は

<Ψ||Ψ>=Σm,n<Ψ|m><m||n><n|Ψ> 

=Σn<Ψ|n>n<n|Ψ> と書けます。

 

ただし,<m||n>=Aδmn です。

 

特に,については,

<Ψ||Ψ>=Σm,n<Ψ|m><m||n><n|Ψ> 

=Σn<Ψ|n>n<n|Ψ>であり,

<m||n>=Hδmnです。

 

 この個数状態 |n>全体で張られる空間の状態に作用して

 <m||n>を与えるHamiltonian演算子については, 

 スカラー場のBose粒子の場合に,

 H=Σε

 =∫d3xφ()[-hc22/(2m)+U()]φ() 

 =∫d3xφ()()φ()で与えられることを既に

 見ました。

 

要するに,それぞれのが異なるのは,それが作用すべき状態

の作る状態空間が異なるためです。

第2量子化した場合も,単に状態空間が変わるだけで,本質的 

にそれらは,演算子の期待値,あるいは行列要素がどの空間でも

一致するようにユニタリ変換で結びついていて謂わゆる表示が

異なるだけで量子力学が新しくなったわけではありません。

(注釈終わり※)


 このところ,薀蓄=脱線注釈部分を書いていて参考書も

なく頭の中にある知見をヒケラかそうとする余り,文章の堂々巡りが多くて長時間を費やしてしまいいました。

※本ブログ2007年8/8の過去記事「量子力学の基礎(表示の話)(1)」, 

および,「量子力学の基礎(表示の話)(2)」も参照してください。

 

今日はここまでにします。


(参考文献):阿部龍蔵 著「統計力学(第2版)」(東京大学出版会)


 PS:これに関連して,26歳(1976年)の春4月に一人で電車を

乗り継ぎ,途中東京で東大の友人のところに一泊し翌日青函

連絡船乗って早朝に船酔いでゲロを吐きつつ初めての北海道

に渡り,旅館に一泊後,北大に遠路はるばる博士課程を受けに行

ったのを思い出しました。


(※今は博士課程(大学院後期過程)もあるようですが当時

は私の在籍大学には修士課程しかありませんでしたから。。)


 テストは当然,修士
論文説明であろうと予想していたの

に,思いもかけず,研究室個室朝から晩まで期限無しで参考

書を見たり外出するのも自由の4,5問程度のペーパーテスト

を出されました。

 
 その第1問目が,Diracのテキストにあるような量子論の定式化

の話で,上記と同じような話を如何にして明快な解答にするか?

に夢中になった余り,堂々巡りの悪戦苦闘で,もちろん,参考書

などは持参してないし,まさか無期限で外出自由でも慣れない

札幌の地で大学内や外の図書館や本屋まで行って調べようと

いう気にもなりません。

(※慣れない一人旅で,心身もかなり疲れていました。)


 結局,第1問を考えているだけで夜の8時になり,往復5千円

の切符しかもってなくて,旅館にもう一泊する余裕もなく,

あきらめて,もう帰宅してしまっている出題した教授の部屋

ドアのポストに答案用紙を入れて帰途についたのを昨日

ことのように思い出しました。


 未だに覚えているのは,よほど悔しかったからでしょう。。

これも人生を左右する1つの岐路でしたね。。

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2014年11月27日 (木)

統計力学の基礎(8)(統計力学の基礎付け2)

 統計力学の基礎付けの続きです。

 前回の終わりでは,

 もう1つ気になるのが,統計集団(アンサンブル)を考える際の純粋集団(純粋状態)と混合集団(混合状態)の話です。

と書きました。

その続きです。

 

前々回の記事の量子統計力学2では,分配関数ZはN粒子系の多体問題の純粋状態のトレースによりZ=Tr[exp(-β)]で与えられることを示しました。

 

まあ,小正準集団を想定するなら集団を構成する個々の微視状態を

普通の干渉も有り得る観測前のコヒーレントな量子状態(純粋状態)

と考えることも可能てす。

 

しかし,正準集団の考え方では,莫大な個数 M個の同じ系を集めて全体

として孤立系になるような集団とするわけですが,この集団の個々の系

は全て同じ構造を持つとはいっても,それらは既に純粋状態ではなく,

エネルギ「ーEを持つ系(=純粋状態)が率exp(-βE)/Zで混合された

デコヒ-レントな混合状態と考えられます。

 

 統計集団というのは,統計力学の理論を定式化するために便法

として想定されたものに過ぎないので,それが純粋集団か混合集団

か?のようなことについて思い煩う必要はないのですが。。。

私はやはり気になります。

 

これについては,2006年10/23の記事「観測の理論(デコヒーレンス)」

があります。

これもまず全文を再掲載します。

 

(※以下,過去記事の全文です。)

 

今日は,観測に伴なって固有状態の干渉項が消滅すること

=デコヒーレンス (decoherence)の現象を最近の理論に基づいて

述べてみたいと思います。

 

ただし私自身は本質的には多世界解釈の方に傾いています。

まず,"観測可能量(observable)=物理量=線型演算子"その

あらゆる固有値:oiに属する固有状態:|i>の集合,つまり,

|i>=i|i>を満たす|i>の集合があり,これら

完全系を形成している,すなわち,∑i|i><i|=1

が成立しているとします。

"任意の状態=純粋状態":|ψ>は|ψ>=∑ii|i>と展開可能

この同じ状態|ψ>において,物理量を状態を乱すことなく

独立に多数回観測したときにはの固有値以外が観測されること

はなく,観測値がoiである確率が|ci|2で与えられます。

そして∑i|ci|21が成立しているというのが量子力学

の観測に関する枠組みと考えられます。

 

しかも,通常は固有状態|i>は正規直交化されていて,

<i|j>=δijなのでci=<i|ψ>なる式が成立して

います。 

したがって,この純粋状態|ψ>における物理量O^の観測値

の"期待値=平均値"は,

ψ=∑i|ci|2i=∑ii|ψ><ψ|i><i||i>

=∑i<ψ|i><i||i><i|ψ>=<ψ||ψ>

で与えられます。

 

つまり,<ψ=<ψ||ψ>であり.

ψ=∑i<ψ||i><i|ψ>=∑i<i|ψ><ψ||i>

=Tr(ψ)となります。

ここで射影演算子とよばれるψψ|ψ><ψ|で定義され,

物理量の対角和(trace)が,Tr()≡∑i<i||i>と定義

されています。

 

そして対角和の値が,これを定義する完全系{|i>}の選択に依

ないことも簡単にわかります。

ところで,もしもこの体系が,状態間の干渉が存在するような状態

の重ね合わせのみで成り立つ純粋状態ではなく,

 

情報の欠如などによって統計的に純粋状態:ψ,φ,χ,...が

それぞれ確率:W(ψ),W(φ),W(χ),...で混合している混合

状態であるとすれば,

 

の期待値は<>=∑ψ(ψ)<ψ||ψ> 

で与えられます。

 

これも,<>=∑ψ(ψ)<ψ||ψ>

=∑ψiW(ψ)<ψ||i><i|ψ>

=∑iψ(ψ)<i|ψ><ψ||i>=Tr(ρ)

となり,純粋状態の<ψ=Tr(ψ)と同じ形に

書けます。

 

ここでρ^はρ≡∑ψ(ψ)|ψ><ψ|=∑ψ(ψ)ψと定義

されて統計作用素,または,密度演算子(密度行列)と呼ばれます。

対象となる体系のHamiltonianとすると統計作用素ρ

時間に依存する量子力学の線形演算子に相違ないので,

Heisenbergの運動方程式:ic(∂ρ/∂t)=[,ρ]

を満足します。

 

ただし,hc≡h/(2π)でhはPlanck定数です。

 

実は状態|ψ>はSchroedinger表示の時間を含む状態ベクトル

|ψ(t)>で,これがSchroedingerの方程式:

ihc(∂/∂t)|ψ(t)>=|ψ(t)> を満たします。

 

逆に統計作用素ρ≡∑ψ(ψ)|ψ(t)><ψ(t)|が時間

を含むHeisenberg表示の作用素となるため,Heisenbergの

運動方程式:ihc(∂ρ/∂t)=[,ρ]を満たすと考えて

よいわけです。

時間発展の演算子を(t',t)=exp{-i(t'-t)}と

すると,|ψ(t')>=(t',t)|ψ(t)>ですから,

ρ(t)≡∑ψ(ψ)|ψ(t)><ψ(t)|によって

ρ(t')=(t',t)ρ(t)(t',t)-1となります。

 

統計作用素ρの時間発展はユニタリ変換によって行われる

のでρ,ρに関わる関係式は時間発展によって変化しません。

簡単のため,スピンが1/2の区別できる粒子が2個ある体系に

ついて考察します。

 

スピン1/2の1粒子のスピン角運動量の演算子をとすると,

それは2行2列の行列表示では,Pauliのスピン行列σを用いて,

=(c/2)σと表わされます。

 

σz の固有値+1,-1の固有状態を,それぞれ|α>,|β>とします。

 

2つの粒子それぞれのこうした状態を,それぞれ,(i)

と|β(i)>(i=1,2)で指定することにします。

このとき,全系の任意の状態ベクトルは(1)>|α(2)>,

(1)>|β(2)>,|β(1)>|α(2)>,|β(1)>|β(2)>の1次結合

で表わされます。

 

そして,例えばスピンがゼロの状態は,

|0>=(1/21/2)(|α(1)>|β(2)>-|β(1)>|α(2)>)

で与えられます。

 

この状態での統計作用素ρ^0は,

ρ0 =(1/2)(|α(1)>|β(2)>-|β(1)>|α(2)>)

(<α(1)|<β(2)|-<β(1)|<α(2)|)

=(1/2)(|α(1)><α(1)|(2)><β(2)|

-|α(1)<β(1)|(2)><α(2)|

-|β(1)><α(1)|(2)><α(2)|

+|β(1)><β(1)|(2)><α(2)|)

となります。

 

ただし,記号は直積を表わしています。

 

このρ0は確かに,純粋状態を示す"統計作用素=射影演算子"

です。

ここで,一般に粒子1のみに関する物理量(1)を測定する場合

を想定すると,このときも対象としては全体系ですから,

物理量を表わす作用素(1)(2)です。

 

その期待値は,

(1)(2)>=Tr(ρ(1)(2))

=∑ij<i(1)|<j(2)|ρ(1)|j(2)>|i(1)

=Tr(ρ(1)(1))  と書くことができます。

 

ここで,ρ(1)<j(2)|ρ|j(2)>=Tr,2(ρ) です。

そして,部分系である粒子1の物理量(1)の測定の期待値は全て

(1)(2)>=Tr(ρ(1)(1))の形で表わせるので,

 

実質的には,ρ(1)が部分系である粒子1の状態を示す統計作用素

であると見なすことができるでしょう。

ここで,ρρ0 の場合には,

ρ0(1)=<α(2)|ρ0(2)>+<β(2)|ρ0(2)

=(1/2)(|α(1)><α(1)|+|β(1)><β(1)|) です。

 

そこで,全系が純粋状態でも,部分系である粒子1の状態は

z成分のスピンが上向きと下向きが1対1に混合した混合状態

となることがわかります。

話を戻して,体系の状態が|ψ>で物理量O^の固有状態での

展開が,|ψ>=∑ii|i>(∑i|ci|21) で与えられると

します。

 

O^の測定装置はマクロな物体ですが,装置も状態ベクトル

表わすことができると仮想して,その初めの状態を|o>A

とします。

そして,対象が状態|i>にあるとき,それを測定したときの

"対象=体系と装置"の変化を|i>|o>A|i>|i>A

とします。

そこで,|ψ>を測定したときには,

|ψ>|o>A → ∑ii|i>|i>A となります。

 

この最後の状態はもちろん純粋状態であって,物理量の期待値

を取れば当然|,i>|i>A 間の干渉が現われるはずです。

 

最初の状態が純粋状態であって時間発展がユニタリですから当然

それは予想されたことです。

しかし,我々の観測の経験では,測定の最後の状態は

|i>|i>Aの状態がW(oi)=|ci|2の確率で混じり合って

いて,決して干渉作用など起きない混合状態です。

簡単のために,1電子のスピンのz成分を観測するStern-Gerlach

の実験のようなものを考察します。

 

これは,不均一な磁場の中にスピン磁気モーメントを持つ電子

が入射してスピンが上向きか下向きかが検出される実験です。

 

入射電子はある一定のスピン状態にあって,

|ψ>=(c1|α>+2|β>)|φ>,(|c1|2|c2|21)

であるとします。

 

ただし,|φ>は電子線の空間的運動を表わす状態ベクトルです。

 

入射電子が磁場の中を通るとスピンの向きによって空間的運動

は上下に分裂するので,

 

|ψ> → |γ>≡c1|α>|φ>+2|β>|φ

 

となります。

そして,上下にある検出装置の統計作用素=密度行列をそれぞれρAα,ρAβ,対象と装置の全体系の"統計作用素=密度行列"をη0

すると,

 

η0=|γ><γ|ρAαρAβ

=(|c1|2ρ++|c2|2ρ--12*ρ+-21*ρ-+)ρAαρAβ

 

と書けます。

 

ここで,

 

 ρ++=|α><α|><φ|,

 ρ--=|β><β|><φ|,

 ρ+-=|α><β|><φ|,

 ρ-+=|β><α|><φ|

 

です。

測定装置が状態ベクトルで表わされている状況では,ユニタリ性の故,

測定の結果として,干渉項ρ+-,ρ-+が消えることは決して有り得ないことです。

 

そこで装置は初めから混合状態にあると考えます。

 

すなわちマクロな装置はN個~ Avogadro数個程度の粒子の集合系

であり,このN粒子の系の多数の状態ベクトルの混合状態が装置を

表わしていると考えるわけです。

そして,測定にはある時間にわたって全体系の密度行列η0を調べる

必要があります。

 

それぞれ,N,N'粒子系から成る上下の検出装置に対して

η0(N,N')≡|γ><γ|ρAα(N)ρAβ(N') と定義

します。

 

相互作用が起こる直前の時刻をt0 として,時刻tでの全体系の

統計作用素をN,N'を省略してη(t)と書くと,η(t0)=η0

対し, 

η(t)=∑N,NW(N)W(N')(t,t0)η0(N,N')(t,t0)-1

(ただし∑(N)=1)

と書くことができます。

η0(N,N')=|γ><γ|ρAα(N)ρAβ(N')において,

例えばρ+-に関わる部分は,

|α><β|><φ|ρAα(N)ρAβ(N') です。

 

装置との相互作用部分がスピンに依らないとすれば,時間発展

は,(t,t0)ρAα(N)<φ|ρAβ(N')(t,t0)-1

となります。

 

ここで,|φ>はρAα(N)のみ,<φ|はρAβ(N')のみと相互作用

するので左右に分けました。

 

tを相互作用が終わった時刻とし,N個の粒子の個数に比例する

運動長さの単位をL(N)とすると,そのオーダーはL(N)~N1/3

です。

 

そして,比例定数として波数因子kを掛けた位相の変化がある

と考えられるので,

左の(t,t0)>ρAα(N)は因子exp{ikL(N)}を,

右の<φAβ(N')(t,t0)-1は因子exp{-ikL(N')}

を含むはずです。

ここで,η(t)=∑N,N’...を連続化して積分式にすると,

η(t)=∫dL∫dL'W(L-L0)W(L'-L0)(t,t0)

η0(L,L')(t,t0)-1(ただし∫dL(L-L0)=1)

となります。

 

位相部分だけに着目すると,L(N)~N1/3が大きい極限で

密度行列要素は,それぞれ,

 

ρ++ → 1,ρ-- → 1,および, ρ+-→ exp{ik(L-L')},

ρ-+ → exp{-ik(L-L')}

 

となります。

 

ところで,Riemann^Lebesgueの定理によれば,L,L'が無限大の

極限では,

∫dL∫dL'W(L-L0)W(L'-L0)exp{ik(L-L')} → 0

となります。

 

このことから"統計作用素=密度行列"からρ+-ρ-+の干渉項

が消えてρ++ρ--の項のみがそのままの形で残ることになり,

事実上デコヒーレンスが実現されることになると考えられます。

ただし,清水明氏の量子測定の原理とその問題点」に書かれて

いますが,

"測定装置の他に環境も含めたとしても干渉項のオーダー

観測時間をT,光速をcとして,exp[-(正定数)×cT3]が限界

あり決して正確にゼロになって消えるわけではない。"

という問題は残っています。

一方,szの測定によって必ずしもσzの固有状態である

|α>,|β>が観測されると考える必要はないという本質的な

問題もあります。

 

例えば,|χ±>≡(1/21/2)(|α>±|β>)(複号同順)はσx

対してのスピンの+,-の固有状態です。

 

先の統計作用素において非干渉成分として,

ρ++=|α><α|><φ|,ρ--

=|β><β|><φ| の代わりに,

 

ρ'++=|χ><χ||φ'><φ'|,

ρ'--=|χ><χ||φ'><φ'|

 

が残ると考えても何の不都合もないからですね。

こちらの問題は(猫生)か(猫死)のどちらか一方のみの状態が観測

されるとして定式化しても,

 

それらの重ね合わせ状態が観測されるとして定式化しても,

"統計作用素=密度行列"のデコヒーレンスだけからは,

それらは全く同等である,ことから多世界解釈の問題でもあり

超選択則関わる問題ですね。

 

例えば変換群の異なる既約表現にまたがる重ね合わせ状態は

観測されない,とかの原理的問題であると思います。

 

具体的には既約表現の問題とは,ちょっと違うかもしれないです

が,アイソピン(荷電スピン)に関わる2次元特殊ユニタリ群

SU(2)において,

 

陽子と中性子の重ね合わせ状態は決して観測されない,という

のも超選択則の例です。

 

これに対して,φメソンやKメソンにはむしろ混合(mixing)が

ある状態で存在する方が普通なので,自然がどういうメカニズム

になっているのかは不思議なことです。

 

これに関しては,観測を行なう以前の物理系の状態を記述する

"波動関数や密度行列をも実在であると考えるかどうか?"

という哲学的な問題も関連あるかもしれません。

 

参考文献;町田茂 著「基礎量子力学」(丸善),

ボーム 著「量子論」(みすず書房)

(再掲載終了※) 

さて,再び,考察しますが,正準集団,大正準集団が混合集団であることは疑う余地がりません。

 

しかし,小正準集団についてははっきりしません。

 

古典統計力学では,小正準集団に属する微視的状態は相空間の

個々の軌道であり,それらの状態はもちろん干渉するわけではなく

運動方程式のN個の厳密な解の全ての情報から巨視的平均量確率

分布を求める代わりに,統計的原理を導入,それに基づいてそれら

の量を求めるのですから,集団には完全な情報が欠如しているのは

明らかです。

 

しかし,量子論では,古典論と対比すると,N粒子の系の完全な情報

が,そもそも確率波という確率的なものです。

 

そして,個々の微視状態を多体系の波動方程式の解の重ね合わせで

与えられる純粋状態と考えることもできそうです。

 

純粋状態だけで熱平衡状態を表現できれば情報の欠如なく定式化

できると思いますが,これはシミュレーション計算をする計算物理学

の分野でしょうか?。

 

統計力学の原理に基づいて最大確率を与える分布を求めるという

旧来からの統計力学の思想に合致する対象は,小正準集団でも,干渉

などしない混合状態の集団です。

 

実際,系の巨視的量の観測はマクロな測定装置を用いて行なうわけ

ですから,その時点で既にマクリな装置との干渉でデコヒーレント

な状態に移行した後の系を対象としていると考えるのが普通です。

 

ネットを検索してみると,私の種ひゅうの疑念と意図を共有する

 

ものとして,大阪市大,杉田歩氏のPDF

;量子統計力学の基礎付けについて;」, および,

すう理化学化学科学2013年6月号の特集記事として,

量子純粋状態による統計力学の定式化がありました。 

 

今日はこれで終ります。

 

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2014年11月24日 (月)

統計力学の基礎(6)(量子統計力学3)

  量子統計力学の続きです。

 

§3.状態和に対する表式 

莫大な数 N個の粒子から構成される系全体のHamiltonian

とし,そのk番目のエネルギー固有値をE,固有関数

Ψ(1,2,..,N)とします。

 

Ψ=EΨです。

 

ここでxの関数f(x)をf(x)=Σn0=で定義します。 

このとき,xをで置き換えたものとして演算子 f()を定義

できます。

 

が線型演算子なのでf()も線型演算子です。

 

Ψ=EΨより,2Ψ=E2Ψ,..,Ψ=EΨ

となるため,(=f(Eとなります。

 

したがって,exp(-β=exp(-βEです。

 

ここで,Diracのブラケット記法に移行します。 

>=E>,exp(-β)|Ψ>=exp(-βE

etc.です。

 

|Φ>=Φ(1,2,..,N),|Ψ>=Ψ(1,2,..,N)に対して,

スカラー積(ユニタリ内積)を,

<Φ|Ψ>=∫Φ(1,2,..,N)Ψ(1,2,..,N)dτ1τ2..dτ 

で定義します。

 

の固有関数>=Ψ(1,2,..,N) (k=1,2,..)は規格化

直交条件<Ψ>=δijを満たし,|Ψ>,|Ψ2>,.. は,

完全系を構成するとします。

 

つまり,任意の|Ψ>は,|Ψ>=Σ>;c=<Ψ|Ψ>

と展開されます。これは,|Ψ>=Σ><Ψ|Ψ>とも書ける

ので,完全系をなすことは><Ψ|=1と表現されます。

 

 一方,任意の演算子をとするとき,<Φ|Ψ>の<Φ|を<Ψ|

とし,|Ψ>を>とすると,<Ψ|>ですが,これを 

i行j列の行列要素とする行列を同じ記号で表わすこtとに

します。

すると,exp(-β)|Ψ>=exp(-βE)|Ψ>によって, 

正準分布の状態和=分配関数Zは,

Z=Σexp(-βE)=Σ<Ψ|exp(-β)|Ψ

と表わされます。

 

行列A=(Aij)のトレース(trace:対角和)を,TrA=Σkk

で定義すると,ij=<Ψ|>の場合は,

Tr=Σkk=Σ<Ψ|> です。

 

以上から,状態和(分配関数)は量子論的期待値の和として,

Z=Tr[exp(-β)と書けることがわかります。

 

これを大きな状態和=大分配関数に拡張するには少し注意を

要します。何故なら,それは粒子数の変動を伴うからです。

 

エネルギーだけなら量子論の物理量としてHamiltonian

いう対応する演算子がありました。

 

そこで,自由粒子の場合,以前Bose分布とFermi分布の導出の際

に与えた,エネルギー固有値がεの1粒子状態を占有する粒子

数n,個数演算子と見なしてと書き,

=Σε,=Σとすれば,大分配関数Zは上記の

分配関数Zのケースと同様にして,Z=Tr[exp{-β(-μ)}]

と書けます。

 

この個数nを演算子と見なする法を第2量子化といいます。 

謂わゆる場の量子化ですね。

 

§4.古典的極限(高温極限)

 

これまでと同じく,莫大な数 N個の粒子が体積Vの箱の中にある

として考察していますが,粒子間には相互作用が働くとします。

そのポテンシャルをUとし,これは粒子の空間座標1,2,..,

のみの関数と仮定します。

 

特に2体力のみならvijを粒子iと粒子jの間に働く力の

ポテンシャルとして,U=Σi<jijと書けます。

 

しかし,以下の論議はより一般的で,UをU=Σi<jijの形に

限定する必要はありません。

 

,対象としている体系の全Hamiltonianは,

0+U(1,2,..,)であり,

0={-hc2/(2m)}Σk=1であるとします。

 

 H0とUは一般には演算子として非可換ですが,古典的極限では

 交換するとしてよいので,

 exp(-β)=exp{-β(0+U)}~ exp(-βU)exp(-β0)

 です。

 

 そこで,状態和は,この古典極限では,

 Z=Trexp(-β)=Tr[exp(-βU)exp(-β0)]

 です。

 

 系がFermi統計に従うとし,上記の状態和のトレース表現

 Z=Trexp(-β)=Σ<Ψ|exp(-β)|Ψ>のトレース

 を取る状態>して,Slater行列式:

 Ψ(1,2,3,..N)=(N!)-1/2Σ(-1)δ(P)

 ψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N)を使います。

これは,前に粒子間に相互作用がある場合には自由粒子の集まり

とは異なって,全系の波動関数は1粒子のエネルギー固有関数の

の一次結合の形にはならない,と記述したことに矛盾するよう

ですが。。

2007年6/15の過去記事

ハートリー・フォック(Hartree-Fock)近似(1)」での電子の

集まりに対するHartree近似,すなわち,独立電子近似のような近似

を考えれば相互作用が弱い場合には矛盾ではないと考えられます。

 

したがって,(r1,r2,..,r)の組に対応する1つの,Slater行列式 

 Ψ(1,2,3,..N)=(N!)-1/2Σ(-1)δ(P)

 ψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N) r1,r2,..,rN(1,2,3,..N)と書けば,

 Z=Trexp(-β)=Σ<Ψ|exp(-β)|Ψ>のトレース

 を取るべき)|Ψ>の添字kは,今の場合,k=(r1,r2,..,r)

 で与えられます。

 

 ただし,各rj(j=12,..,N)は1粒子波動関数ψrj(j)の添字

 であり,このrjは1粒子エネルギー固有値εjに対応しています。

 

 それ故,トレースの総和Σはあらゆるエネルギー準位の組

 (r1,r2,..,r)Slator行列式 ψr1,r2,..,rN(1,2,3,..N)

 にわたって取られます。

 以上から,Z=Trexp(-β)=Σ<Ψ|exp(-β)|Ψ 

 =Σ(r1,r2,..,rN)exp(-βU)ψr1,r2,..,rN(1,2,3,..N)

 exp(-β0)ψ1,r2,..,rN(1,2,3,..N)dτ1τ2..dτなる

 表式を得ます。

 

この表式のΣ(r1,r2,..,rN)で総和される内容を,F(r1,r2,..,r)

と書いて,Z=Σ(r1,r2,..,rN)F(r1,r2,..,r)と表現すると,

F(r1,r2,..,r)は,次の性質を有します。

 

 (ⅰ)F(r1,r2,..,r)は(r1,r2,..,r)の個々の引数成分の交換

 に対して対称である。 

 (ⅱ)F(r1,r2,..,r)は(r1,r2,..,r)のうち2つ以上のrk

 一致するときにはゼロである。

 

 以上の2点からr1<r2..<r)の制限付きの1つの

(r1,r2,..,r)の組に対して(N!)個の同じF(r1,r2,..,r)

が対応するため,状態和は,Z=Σ(r1,r2,..,rN)F(r1,r2,..,r)

=,(1/N!)Σr1,r2,..,rNF(r1,r2,..,r)と表わされます。

 

ただし,左辺のΣ(r1,r2,..,rN)の添字の組(r1,r2,..,r)は, 

 r1<r2..<r)の制限付きで,右辺のΣ(r1,r2,..,rNの添字

 r1,r2,..,rには,そうした順序の制限は無しです。

 

 そこで,今の場合の,

 Z=Trexp(-β)=Σ<Ψ|exp(-β)|Ψ>を再び,

 陽に書くと,(r1,r2,..,r)をr1<r2<..<r)に制限して

 Z=Σ(r1,r2,..,rN)exp(-βU)ψr1,r2,..,rN(1,2,3,..N)

 exp(-β0)ψ1,r2,..,rN(1,2,3,..N)dτ1τ2..dτ

 ですから,

 

 Z=(1/N!)Σr1,r2,..,rN∫exp(-βU)(N!)-1Σ(-1)δ(P) 

 [ψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N)]exp(-β0)

 [ψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N)]τ1τ2..dτN です。

 

ここで,ρ(,)≡Σψ()exp{βhc2/(2m)}∇() 

 とおくと,固有関数の完全性 |r><r|=1

 or Σψ(()=δ3()

 =(2π)-3∫d3exp{ik()} が成立しますから 

ρ(,)=(2π)-3∫d3exp{i()-βhc2/(2m)}

ですが,

i()-βhc2/(2m)

=-{βhc2/(2m)}{-im/(βhc2)}2-m//(2βhc2)

なので,

ρ(,)=(2π)-3exp[{-m/(2βhc2)}()2] 

∫d3exp{{βhc2/(2m)}{-im/(βhc2)()}2

 

 結局,ρ(,)

 ={m/{2πβhc2}}3/2 exp{-m//(2βhc2)()2}

 を得ます。

 

 古典的極限, or 高温極限では,βhc2 ~ 0 ですから,上の最後

 に得たGauss誤差関数の表現によると,xのρ(,)の

 寄与は,x=yのρ(,)=ρ(,) の寄与に比してほぼ

 ゼロであり無視できます。

 

 そしてρ(,)

 ={m/{2πβhc2}}3/2 exp{-m//(2βhc2)()2} 

 でx=yとすると,ρ(,)={m/{2πβhc2}}3/2 を得ます。

 

 したがって,βhc2 ~ 0 の極限では, 

 Z=(1/N!)Σ(r1,r2,..,rN∫exp(-βU)(N!)-1

 Σ(-1)δ(P) [ψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N)]

  exp(-β0)[ψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N)]τ1τ2..dτにおいて,

 Σ(r1,r2,..,rNの各項で,1つの添字rに対するψrjとψrj

 の積因子による関数:ρ(,)

 ≡Σrjψrj()exp{βhc2/(2m)}∇r1()に寄与する

 のは,総和Σ(-1)δ(P)のうちで=1(恒等置換)に対応する

 x=yの寄与のみです。

 

 これは,{m/{2πβhc2}}3/2をj=1,2,..NのN個掛け合わせた

{m/{2πβhc2}}3N/2ですが,ZはこれのΣ(r1,r2,..,rNのあらゆる

順列の(N!)個の総和を2つの(N!)因子で割ったもので

与えられますが,それ故,1つの(N!)は相殺されます。

 

 よって, 

Z=(1/N!){m/{2πβhc2}}3N/2∫d3132..d3exp(-βU) 

が得られます。

 

ここで.Q≡∫d3132..d3exp(-βU)とおき,

β=1/(kT),c=h/(2πを考慮すると,

Z=(1/N!){(2πmkT)3N/2/h3N}Q と書けます。

 

特に,理想気体でU=0ならQ=Vなので,a=h3N

置けば,Z=(1/N!){ V(2πmkT)3N/2/a}となり,前に

古典統計に基づいて求めた理想気体の分配関数をN!で割った

ものに一致します。

 

まだまだ,この項の草稿は続いてるのですが,長いので分ける

ことにして一旦,終わります。

(参考文献):阿部龍蔵 著「統計力学(第2版)」(東京大学出版会)

PS;11/22の土曜日には1回目の忘年会?がありました。

 私は極度の金欠で38円しかなかったので19時池袋待ち合わせには

 障害者無料のフリーパスで巣鴨から都パスで出かけ,池袋,大山,巣鴨

 と3件はしごしてタクシー代も含め全ておごってもらいました。

 もう7年半も前に心臓病手術直後にクビになった会社の先輩1名

 と後輩3名です。

 当時,門前仲町で降りて永大橋のそばに2000年から7年間通って

 て20時から朝7時まで勤務していた職場は既に無く,今は八王子

 で同じ仕事をもっと少人数で引き継いでるらしいです。

 後輩のうち1名には今回はじめて会いました。

 私が辞めた直後くらいに入社したらしいですが,いかにも人が

 好さそうな顔をしていました。

 イヤ,7年も前に辞めたのに,いまだに1年に数回はタダ酒

 さそってくれるのも私の人徳?のセイかな。。

 アリガタイことです。。

 夜中3時に帰宅して翌朝9時まで爆睡して日曜日はサワヤカに

 めざめました。

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2014年11月19日 (水)

統計力学の基礎(4)(量子統計力学1)

 古典統計力学3の続きで量子統計力学に入ります。

 

§1.多粒子系の量子力学 

ここまでの古典統計力学における考察と同様,体積Vの容器の中

に莫大な数であるN個の自由粒子が閉じ込められているケースを

考えますが,統計力学を進める前にこうした多粒子系の量子力学

をレビューしておきます。

 

簡単のため,系全体のHamiltonianが系を構成する各粒子それの

単純和で与えられる場合を論じます。

 

N個のうち,k番目の粒子のHamiltonianを(k)とすると,

は,(1)(2)..+(N)と表わされます。

 

この場合,系を支配する定常状態のSchroedingerの波動方程式: 

Ψ=EΨの形式的な解 Ψは, 

Ψ(1,2…,N)=ψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N),および, 

固有値 E=ε1+eε2..+εrN の組で与えられます。

 

ただしrk,および,εrkは,それぞれ,1粒子のSchroedinger

波動方程式:(rk) ψrk=εrkψrkを満たす1粒子の波動関数

(固有関数),および,エネルギー固有値です。

 

全系の解:Ψ(1,2,..,N)=ψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N)は,

1番目の粒子がr,2番目の粒子がr..という状態,にある

ことを意味します。

 

しかしながら,量子力学の立場では,そのような粒子の個別性は

否定され,より制限された波動関数のみが許されます。

(粒子の分別不可能性)

 

一般に量子力学的粒子は位置座標の他にスピンと呼ばれる

内部自由度を持っており,その大きさは0.1/2,1,3/2,のような

値のみを取り得ます。

 

スピンが0.1.2,..の整数値をとるとき,その粒子はBose粒子

(Boson),1/2,3/2…のような半奇数値をとるときは,粒子は

Fermi粒子(Fermion)と呼ばれます。

 

自由粒子であれば一般にスピンがsの状態は(2s+1)重に縮退

しています。

 

そして,N粒子系が全てBose粒子の集まりであれば,それは

Bose統計(=粒子の交換に対して対称)に,一方,全てFermi

粒子の集まりならFermi統計(=粒子の交換に対して反対称)

に従うことがわかっています。

 

前に,N粒子の定常状態波動関数を

Ψ(1,2…,N)=ψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N)と書きました

.例えばψr1(1)は,粒子1の座標変数を1,スピンをs1

とした関数ψ1(1,s1)の引数 (1,s1)をまとめて数1

で代表させたものです。

 

Bose統計では,その波動関数が粒子の交換に対して対称 

すなわち,Ψ(2,1,3,..)=Ψ(1,2,3,..)であり,Fermi統計

では反対称:すなわち.Ψ(2,1,3,..)=-Ψ(1,2,3,..) 

です。

 

そこで,一般にを(1,2,3,..)を(r,r,..,r)に置き換える

置換演算子とすれば,

Bose統計の場合,

Ψ(1,2,3,..N)=Ψ(1,2,3,..N),

Fermi統計の場合,

Ψ(1,2,3,..N)=(-1)δ(P)Ψ(1,2,3,..N)

です。

 

ただし,はδ(P)は,が偶置換のときは偶数,奇遺憾のときは

奇数を表わします。そして,この対称性は自由粒子だけでなく

粒子間相互作用があるときも成立します。

 

しかし特に自由粒子なら,こうした対称性を満たす波動関数を,

1粒子固有関数のN個の積:ψ1(1)ψr2(2)..ψrN(N)の

一次結合として,

Bose粒子ならΨ(1,2,3,..N)

 =(N!)-1/2Σψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N),

Fermi粒子ならΨ(1,2,3,..N)

 =(N!)-1/2Σ(-1)δ(P)ψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N) 

 と表わすことができます。

 

後者はi行j列の成分がΨ(i)の行列をΨとすると行列式 detΨ

意味します。これは,Slater行列式として知られています。

 また,全体にかかる係数(N!)-1/2は全確率が1となる条件

規格化条件:

∫Ψ(1,2,3,..N)Ψ(1,2,3,..N)dτ1dτ2..dτ=1

を満足させるために必要な規格化定数です。

 

ただし,記号∫dτkはスピンによる総和と積分:Σsk∫d3k

総称しています。

 

そして,Fermi粒子の場合, k≠lなるk,lに対し,もしもr=rl

なら行列式の性質によってΨ=0 です。

 

つまり,Fermi粒子ではk≠lなる異なる粒子k,lが,因子

ψrk(k)ψrl(l)によってr=rlなる同じ1粒子状態を占める

確率はゼロです。

 

したがって,同じ1粒子状態状態に2つ以上のFermi粒子が入ること

はできないことがわかります。

これをPauliの排他律(exclusion principle)といいます。

 

一方,Bose粒子にはこのような制限はなく同じ1粒子状態に原理的

には無限個Bose粒子が入ることができます。

 

この性質を表わすには,1粒子の状態rを占める粒子数nを考察

するのが便利です。

 

そうした粒子数nを考えれば,Bose粒子の場合には,

=0,1,2,...が,Fermi粒子の場合にはn=0,1のみが

許されます。

 

系の粒子の総数がNの場合N=Σです。そして,いずれの場合

も系全体のエネルギーEは,E=Σεで与えられます。

 

特に自由粒子では,[/(2m)]ψ=εψです。Plank定数を陽にh

と書く単位では,=-ihc∇ですからε=hc/(2m)と

書けます。ただし,hc=h/(2π)です。

 

これらの固有関数はスピンには依らず,2重に縮退しています。

 

ところで,粒子間に相互作用が存在すると,系の波動関数

Ψ(1,2,3,..N)は,

Ψ(1,2,3,..N)

=(N!)-1/2Σψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N),または,

Ψ(1,2,3,..N)

=(N!)-1/2Σ(-1)δ(P)ψr1(1)ψr2(2)..ψrN(N)

ような形には書けません。

 

しかしながら,このような多粒子系AとBがあって,それぞれの系

内部では粒子が相互作用していても,AとBの間に相互作用がない

なら全体系のエネルギーEはA,BそれぞれのエネルギーE,E

の和としてE=E+Eをと表わすことができます。

 

.量子統計力学における正準集団,大正準集団 

,対象としている非常に多くの粒子から成る多粒子系と全く

同じ構造の体系がM個あるケ-スを想定してそれらを密着させて

並べます。

 

それらM個の系のそれぞれにはごく弱い相互作用がありエネルギー

を交換するものとします。

しかし,M個全体は孤立系で外部とは何の交渉もないとします。

 

古典論での出発点は.莫大な個数M個あると想定した同じ系の

うちでエネルギーがEにあるものの個数をMとするとき.

次の3つの点が成立するということでした。

 

 すなわち,(ⅰ)W=M!/{Π(M!)}, 

(ⅱ)(M1,M2,..)なる組で示されるMの配分が実現される確率は

Wに比例する。(ⅲ)平衡状態ではWが最大になっている。 

 の3つです。

 

 これらは「エルゴード仮設」,なたは「等重率の原理」に基づく

 ものです。

 

量子論でもこの状況は同じです。量子論の古典論との決定的な

違いは系を構成する微視的粒子の区別が不可能なこと:つまり,

1番目の粒子,2番目の粒子..というように粒子に順番を付ける

ことは量子論の世界では不可能であることです。

 

しかし,微視的粒子の集まりでなく巨視的な系のM個の集まりで

ある正準集団や大正準集団では,個々の系を区別して番号を付ける

ことが可能なので,これらの方法においては古典論との違いはない

と考えられます。

 

古典統計との違いが克明に現われるのは小正準集団の方法ですが

これについては別記事で後述する予定です。

 

さて,(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)の仮定が量子論でも正しいと認めて正準集団

の方法を進めると,古典論と同じく,

粒子数がN個と一定な系でエネルギーがEにある確率分布は,

exp(-βE)/Z;Z=Σexp(-βE)で与えられます。

 

さらに,粒子の交換も許す大正準集団では,粒子数Nの系で

エネルギーEk(N)の状態をN粒子の系が取る確率は,次式で

与えられます。

λexp{-βEk(N)}/Z=exp[-β{Ek(N)-μN}]/Z

です。

 

ただし,分母の大分配関数Zは,

=ΣN=0Σexp[-β{Ek(N)-μN}] 

です。

 

E=Σεを用いると,粒子個数がNでΣ=Nという制限

がある場合の自由粒子に対する状態和=分配関数:

Z=Σexp(-βE)は,Z=ΣΣnr=N exp{-β(Σε)}

と表わすことができます。

 

 しかし,大きな状態和=大分配関数では,Σ=Nという粒子数

 制限がないので,は各準位rについて独立に変わるとしてよい

 と考えられるため,

 

 =Σnr exp{-β(Σε-μΣ)}

 =Σnr exp[-β{Σ-μ) }]

 =ΠΣnr exp{-βn-μ)} となります。

 

 そして,粒子がBose粒子なら,n=0,1,2,..を取り獲るので

Σnr exp{-βn-μ)}=Σnr=0 exp{-βn-μ)}  

=1+exp{-β(ε-μ)}+exp{-2β(ε-μ)}+..(無限等比級数) 

[1- exp{-β(ε-μ)}]-1ですから,

=Π[1- exp{-β(ε-μ)}]-1 を得ます。

 

一方,粒子がFermi粒子なら,n=0,1のみなので 

Σnr exp{-βn-μ)}=Σnr=01 exp{-βn-μ)} 

=1+exp{-β(ε-μ)}ですから,

=Π[1+ exp{-β(ε-μ)}] です。

 

そこで,nの平均値をfと書けば, 

≡<n

=Σ,Nexp{-βE-μN}}/[ΣE,N exp{-βE-μN}] 

=Σnrexp{-βn-μ)}/Σnrexp{-βn-μ)} 

=-{∂Z/∂(βε)}/ Z=-∂{lnZ/∂(βε)} より,

 

Bose粒子,Fermi粒子のそれぞれについて, 

exp{-β(ε-μ)}/[1- exp{-β(ε-μ)}]

=1/[exp{β(ε-μ)}-1],

 

exp{-β(ε-μ)}/[1+ exp{-β(ε-μ)}]

=1/[exp{β(ε-μ)}+1] 

が得られます。

この分布則を,それぞれ,Bose分布,Fermi分布と呼びます。

これらは,β(ε-μ)=(ε-μ)/(kT)が大きいときには

=1/[exp{β(ε-μ)}±1]

~ exp{-β(ε-μ)}=exp{-(ε-μ))/(kT)}となって,

古典的なMaxwell-Boltzmann分布になります。

ところで,Z=exp(-βΩ) or Ω=-lnZ/βで熱力学ポテンシャル 

Ωを定義すれば,前と同じくΩ=-PVであり, 

dΩ=-SdT-pdV-<N>dμですから,エントロピー 

はS=-(∂Ω/∂T)V,μで与えられます。 

 

 Z=Π[1±exp{-β(ε-μ)}]±1 より  

Ω=-lnZ/β=-±Σ[ln[1±exp{-β(ε-μ)}]です。

 結局,種々の計算の末,(詳細は略。。)

S=kΣ[-flnf±(1±f)ln(1±f)]なるエントロピーの表現

を得ます。

 

短かいですが,本記事はここで終わります。 

 

すぐ後に小正準集団の方法を含む2007年の過去記事を再掲載する

予定です。

 

参考文献: 阿部流蔵 著「統計力学(第2版)」(東京大学出版会)

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2014年11月16日 (日)

統計力学の基礎(3)(古典統計力学3)

 古典統計力学の続きです。

 

エネルギーだけの交換を許し粒子は閉じ込められた系の集団で

あった正準集団よりも一般的で,エネルギーの交換だけでなく,

さらに粒子の交換も許す場合を考察します。

 

こうした系の集団を大正準集団(grand-canonical ensemble)

といいます。

 

簡単のため,対象とする系は1種類の粒子のみから成る体系

とします。正準集団と同じく莫大なM個の同じ構造を持つ

を並べたと想定します。

そのうちのいくつかの系はN個の粒子から成る系で,その

個(巨大な個数)の粒子から成る系全体つくる相空間の

うちエネルギーがEijであるようなj番目の細胞にあるもの

数をMijとします。

 

こうした個数配分の配置数Wは,W=M!/(Πi.jij!)で

与えられます。

 

ここで,M個全体の粒子数をN0,総エネルギーをE0

としてこれらは一定とします。つまり,M個全体では孤立系

とします。

 

前と同じように,熱平衡で実現されるのは,条件:Σi.jij=M

Σi.jijij=E0,Σi.jiij=N0の下で,Wが最大になる

ようなMのMijへの配分であるケースです。

 

そこで,変分δMijに対してΣi.jδMij=0,Σi.jijδMij=0,

Σi.jiδMij=0 の条件下で,

δlnW=Σi.j(lnMij+1)jδMij =0 が成立する条件を

求めます。

 

これは,Lagrangeの未定乗数をα,β,γとして,独立な任意

のδMijに対し,恒等的に

Σi.j(lnMij+α+βEij+γNi)δMij=0 が成立すること

を意味します。

 

よって, lnMij+α+βEij+γNi=0,すなわち, 

ijexp(-α-βEij-γNi)です。

 

それ故,λ≡exp(-γ),Z≡Mexp(α)と定義して 

ij(M/ZNiexp(-βEij)と書くことができます。

 

そしてi.jij=Mから,Z=Σi.jλNiexp(-βEij)

です。

 

 以上から,大正準集団のM個の系うち,1個だけを考察対象の系

とし,残り全部を熱浴,および,粒子の貯槽と考えて,

対象とする系がエネルギーE,粒子数Nの状態を占める確率は,

λexp(-βE)/[Σi.jλNiexp(-βEij)]なる分布で与えられる 

ことがわかりました。

 

ここで,βやλの意味を知るため,特別な場合として粒子の交換

が許されず,i=N=一定として,

λexp(-βE)/[Σi.jλNiexp(-βEij)]の分子,分母を 

共通な定数因子λで割って約分すると,

exp(-βE)/[Σi.jexp(-βEij)]となりますが,これは前回論じた

正準分布に一致するはずです。

 

したがって,今回の場合でもβ=1/(kT)を得ます。

 

 一方,λについて論じるため,粒子交換が許される場合の熱力学

での2相平衡を考察します。

 

すなわち,2つの相が平衡にある条件は化学ポテンシャルμ

(1分子当たりのGibbs自由エネルギー)が互いに等しいこと

ですが,考察しているM個の系の集団では全ての系でλが

共通なので,これが相平衡でのμと同じ役割を果たしていると

考えられます。

 

 まず,前回は,∂(lnZ)/∂β

 =-Σexp(-βε)/Z=-<E>,および

 (∂F/∂V)=-P,F=-kTlnZより,

 ∂(lnZ)/∂V=-βP が成立したので,

 この,粒子数Nが不変でZの係数にかかるべき,λ

 が定数場合に相当するケースでは,

 d(inZ)=-<E>dβ+βPdVという結果

 でした。

 

 今回のinZでは,Nも変わるので.

 d(inZ)=-<E>dβ+βPdV+<N>d(lnλ)

 です。

 ただし,<N>=Σi,jiλNiiexp(-βEij)/[Σi.jexp(-βEij)]

 です。

一方,Gibbs自由エネルギーG=Nμ=F+PV=E-TS+PV

の微分を取ると,dG=dE-TdS-SdT+PdV+VdP

=-SdT+VdP+μdN となります。

 

何故なら,粒子の流出入を許す今の場合,熱力学第一法則は

閉鎖系でのdE=TdS+PdVではなくて,

dE=TdS+PdV+(∂E/∂N)S,VdNとなり,

一方,G=Nμ=E-TS+PVから

E=Nμ+TS-PVなので(∂E/∂N)S,V=μ

ですからdE=TdS+PdV+μdNとかける

からです。

 

このdG=-SdT+VdP+μdNと,G=Nμからの

G=Ndμ+μdNの右辺同士を等置して,

Ndμ+SdT+VdP=0 を得ます

これはGibbs-Duhemの関係として知られています。

 

一方,G=E-TS+PV,Nμ/T=E/T-S+PV/T

から,Nd(μ/T)+μdN/T=-(E/T)dT-dE/T

-dS+d(PV/T)です。

 

dE/T=dS+PdV+μdN/T,より 

結局,d(PV/T)=(E/T)dT+(P/T)dV

+Nd(μ/T)が得られます。

 

ここで,β=1/(kT)より,1/T=kβ,

-dT/T=kdβを代入すると,

(1/k)d(PV/T)=-Edβ+βPdV

+Nd(βμ)ですが,

これを,先に求めた

(inZ)=-<E>dβ+βPdV

+<N>d(lnλ)と比較し,統計平均<E>,<N>

それぞれE,Nと同一視します。

 

 したがって,PV=kTinZ,かつ,

lnλ=βμ=μ/(kT),つまり,λ=exp{μ/(kT)}と置けば

いいことがわかります。

 

λはフガシティー(fugacity)と呼ばれ, Zは大分配関数,

または,大きな状態和と呼ばれています。

 

 先に得た系がエネルギーE,粒子数Nの状態を占める確率分布 

λexp(-βE)/[Σi.jλNiexp(-βEij)は,最終的に

exp{-(E-μN)/(kT)}/[ΣN,Eexp{-(E-μN)/(kT)}]

となることがわかりました。

 

再確認しますが,これは系が温度Tの熱浴に接していて,さらに

化学ポテンシャルμ の貯槽と粒子交換するときの確率分布です。

 

さて,粒子がNに固定されていて,エネルギーのみ交換可能な

正準集団での分配関数Z=Σexp{-E/(kT)}はΣの中に

粒子総数がNであるという情報が含まれているため,V,T,N

の関数ですから,Z=Z(V,T,N)と書くことにします。

 

一方,大分配関数は,Z=ΣΣλexp{-E/(kT)}

で与えられますから,=Σ=0λ(V,T,N)と書くこと

ができます。はV,T,N,λの関数です。

 

そこで,PV=kTinZによってPをV,T,Nの関数として

表現したいときには,λを消去する必要があります。

 

これは<N>=λ[∂(inZ)/∂λ]V.Tを用いて,<N>を

Nと同一視することで可能です。

 

例として,先に求めたN個の単原子分子からなる理想気体の系

を考察します。

 

前回,単原子分子N個の理想気体の分配関数Zが, 

Z=(1/a){∫d∫exp(-2/(2mkT))d}

=V(2πmkT)3N/2/a で与えられることを見ました。

 

ここで6N次元相空間の細胞の測度であるaは6次元空間

の測度bによってa=bで与えられること,そして矛盾の

ない示量関数であるためにはN!で割る必要があることを

考慮して,Z(V,T,N1={V(2πmkT)3/2}/(bN!) 

とすれば,この理想気体の大分配関数:

=Z(V,T,N,λ)は,

 =Σ=0λ(V,T,N)

=ΣN=0(λ/b){V(2πmkT)3/2}/(N!) 

exp{λV(2πmkT)3/2/b} で与えられることが

わかります。

 

そこで,lnZ=λV(2πmkT)3/2/bですから. 

<N>=λ[∂(inZ)/∂λ]V.T=lnZ=PV/(kT)

です。

 

これから,状態方程式:PV=<N>kTが得られます。 

ちなみに内部エネルギーの平均値は粒子数=N=一定の系で 

<E>=-[∂(inZ)/∂β].Vですから,

自由度が3の単原原子分子の理想気体では,

Z=Z(V,T,N1={V(2πm/β)3/2}/(bN!)より 

<E>=(3/2)NkT) です。

 

なお,後述するように,量子論ではZを用いるよりZを用いた

方が便利なことが多いようです。

 

λの代わりにμを用いたとして,Z=exp{―βΩ(V,T,μ)}

によって,熱力学ポテンシャルΩ=Ω(V,T,μ)を定義します。

 

Ω=-lnZ/β=-kTinZなので,Ω=-PVです

から,dΩ=-PdV-VdP,ですが,Gibbs-Duhemの関係:

Ndμ+SdT-VdP=0 を代入し,Nを粒子数平均値

<N>に置き換えると,dΩ==SdT-PdV-<N>dμ

を得ます。

 

一方,G=<N>μ=<E>-TS+PV=<E>-TS-Ω

と表現されるので粒子数Nの変動を許す一般の系での

内部エネルギーの平均値は,粒子数平均値<N>を用いて,

<E>=Ω+μ<N>+TS と表現されます。

 

そこで,T→ 0の極低温の極限では,<E>=Ω+μ<N>

となります。

 

(※閑話休題) 論議に必要な知見である熱力学変数の話をします。

 

1. 示強変数,示量変数,Legendre変換 

熱力学では,(熱平衡にある)現在の状態の巨視的量だけで定まる

物理量を状態量と呼び,これを他の状態量の関数と考えたものを

状態関数,または熱力学関数(熱力学ポテンシャル)といいます。

 

,関数Fを状態変数X,Y,Z,..を独立変数とする状態関数

とします。すなわち,F=F(X,Y,Z,..)とします。

 

すると,dF=xdX+ydY+zdZ+..と書けます。

このとき,x=(∂F/∂X)Y,Z,. etc.ですが,係数x,y,z..

をそれぞれ,X,Y,Z,..に共役な変数と呼びます。

 

新しい関数FをF=F-xXで定義すると,

dF=-XdX+ydY+zdZ+..となります。

こうした変換をLegendre変換と呼びます。

 

これは変換で得られる状態量Fでは, 独立変数が

Fのそれ:X,Y,Z,..から,Xだけがその共役xに代わり,

の独立変数はx,Y,Z,..になること:

=F(x,Y,Z,..)と書けることを意味します。

 

例えば,1種類の物質のみから成る構成分子数,またはモル数

が不変な閉鎖系の内部エネルギーを,慣例に従ってEではなくU

で定義すると,可逆過程(準静的過程)での熱力学第一法則は,

dU=TdS-PdVです。

 

これは,UがS,Vを独立変数とする2変数の関数U=U(S,V)

であることを意味しています。

 

そこで,エンタルピーという状態量 Hを,H=U+PVで定義

すると,dH=TdS+VdPとなり,Helmholtzの自由エネルギー

FをF=U-TSで定義すると.dF=-SdT-PdVです。

 

さらにGibbsの自由エネルギーGをG=F+PVとすると, 

dG=-SdT+VdP となります。

 

これから,H=H(S,P),F=F(T,V),G=G(T,P)と

書けて独立変数の数はどれも2で不変ですが,種々の変数の

関数に変換できることがわかります。

 

こうしたLegendre変換だけではなく,例えば

dU=TdS-PdVから,dS=(1/T)dU+(P/T)dV

により,S=S(U,V)とも書けます。

 

系がN個の分子,またはnモル(n=N/N0)から成る場合,

U,S,V etc.は物質量に比例する値をとる示漁変数ですから

U=nu,S=ns,V=nvで1モル当たりのU,S,Vである

u,s,vを定義すると,第一法則のdU=TdS-PdVは 

 ds=Tds-Pdv となります。

 

このケースでは,全微分式の係数である温度Tと圧力Pは物質量n

には無関係な変数ですから,これらを示強変数と呼びます。

 

一般のdF=xdX+ydY+zdZ+..の場合でも,両辺をnで

割ると(F/n)=xdX/n+ydY/n+zdZ、n+..となり,

Fが示量変数ならdF=xdX+ydY+zdZ+..の右辺各項

のxdX,ydY,zdZ..もdFと同様,それぞれがnに比例

するはずです。

 

それ故,例えば,互いに共役なxとXとは,一方が示量変数で

他方は示強変数です。つまり,示量変数と示強変数は1対1に

対応します。

 

したがって,任意の状態量はLegengre変換などにより,示強変数

のみを独立変数とする関数となるように変換可能であることが

わかります。

 

特に系の物質成分か1種類だけであって,かつ,気体か液体か固体

のどれか1つの相にあるケースであれば,その系での独立変数を

示強変数T.Pのみとして,他の量は全てこの2変数の関数で表

わされる従属変数と考えることができます。

 

2.Gibbsの相律 

対象とする系の温度がT,圧力がPであってc種の成分,

φ種の相から成り,相間の移動反応を除いてr個の区別

できる化学反応が起こっているとします。

 

この場合,系が平衡にあるときには,「幾つの示強状態変数を

任意に定めることができるのか?(独立な変数はいくつなのか?)」

という問題を考察します。

 

任意に定め得る示強変数の数を系の自由度,または可変度

(variance)といいますが,ここでは,系を構成する各物質成分

の量を含む示量変数は問題にせず.ただ.示強変数のみを問題

にします。

 

それらを書き上げると,温度,圧力,および,組成変数が全てです

が,それは,,P,x11,x21,..,x1,x12,x22,..,x2,..,x1φ,

2φ,..,xφと書けます。その数は,(2+cφ)個です。

 

ここで,xα(k=1,2,..,c;α=1,2,..,φ)は,物質成分kの相α

にある分率です。

 

それ故,これらの変数全てが独立というわけではなく,α=1,2,..,φ

の各相αにおいて,恒等的関係:Σk=1α=1があります。

 

 次に,相平衡にある条件として,各成分kの各相への分配を規定する

c個の条件μ1=μ2..=μφ,(k=1,2,..,c)があります。

 

これは,組成分率を=(x11,..,x1,..,x1φ,..,xφ)と略記

すると化学ポテンシャルのそれぞれがT,P,の関数であること

つまり,μα=μα(T,P,)なることが陰に含まれていて,

各成分kについて(φ-1)個の独立な条件式です。

 

 また,系内で生じるr個の化学反応が,ある相α1で生じる際の

 平衡条件として,j=-Σ=1jνijμα1 (j=1,2,..,r)なる

 r個の関係式があります。ただし,jは化学反応jの親和力,

 νjkはその反応jでの成分kに対する化学量論係数です。

 

以上,3種類の条件は,全部で{φ+c(φ-1)+r}個の独立な関係式

となっています。

 

 したがって,最初に挙げた(2+cφ)個の示強変数のうちで独立な

変数の数が任意に取りえる変数,つまり自由度であり,それをfと

すると,f=(2+cφ)-{φ+c(φ-1)+r},すなわち,自由度は

f=2+(c-r)-φで与えられることになります。

 

特に,化学反応が全く無いことが保証されている全く熱力学的な

系ならr=0 であって,この場合はf=2+c-φとなります。

こうした関係を「Gibbsの相律」と呼びます。

 

 この関係は,次のような方法で導くこともできます。

 

まず,Gibbs自由エネルギー G=F+PV=E-TS+PVの

微分を取ると,dG=dE-TdS-SdT+PdV+VdP

ですが,c成分がΦ相で混合している場合,各相αにおいて,

G=Gα=Σαμαであり,

dGα=dEα-TαdSα-SαdT+PαdV+VdPα,

かつ,dEα=TαdSα+PαdV(∂Eα/∂N)S,VdNα

なのでdGα=-SαdTα+VdPαμαdNα

となります。

 

一方, Gα=Σαμαなので,

dGα=Σαdμα+ΣμαdNα 

 多成分に一般化されたGibbs-Duhemの関係式として,

 SαdTα-VαdPα+Σαdμα0 が

 得られます。

 

これは,分率の定義:xα=Nα/Nα; Nα=Σα

により,両辺をNαで割ると示量変数の体積Vαやエントロピ-

αの1分子当たりの量をVα,Sαとして,

Σαdμα+SαdTα-VαdPα=0

と表現されます。

 

 平衡条件:Tα=T,Pα=P,μα=μを考慮すると,

示強変数としては,P,μ(k=1,2,..,c)の(2+c)個だ

けで十分です。

 

これとαdμα+SαdTα-VαdPα=0,または

これにα=T,Pα=P,μα=μを代入した式である 

Σαdμ+SαdT-VαdP=0 (α=1,2,..,Φ)の

Φ個の制約条件から,結局,独立変数の個数がf=2+c-Φである

という相律を再び得ます。

 

ところで,今の(T,P,)系では,組成以外の独立変数をT,P

の2つだけと仮定しましたが,例えば他の示強変数として表面張力

γや磁場(または)などを考慮する必要がある場合もあり,

f=2+c-φの右辺の2は3にも4にも変わることああると

考えられます。 (閑話終わり※)

 

 自分の過去ノートの日付によると,統計力学は1995年から1997年

(45歳から46歳),熱力学は遅れること1年の1997年(47歳)に集中して

やったようです。

 

もちろん私の場合,一応,1年浪人して19歳(1969年)で大学の理学部

物理学科に入学して,27歳(1977年)の4月に普通の会社に就職する

までは,曲りなりにも理科系の学生をやっていたので,

理の基礎分野では門前の小僧的知識があり,全く白紙状態から

独学スタートしたのではなく,そうした40歳代での専念行為は知見

を完全にしたいという趣味的欲求によるものです。

 

年を取ってからも,別に資格取得目的でも外国語会話習得でも

なく,何の現実的利益にもならないだろう趣味としての学問を

やるというのも,オタク的変態のようですが一応,人生最後の

ライフワークです。

 

仕事(Work)であって労働(Labor)じゃないので利益になりません。。

分をわきまえず,脳天気で苦労知らずのオボッチャマの趣味に

興じてるキリギリス,すぐにも7飢え死にするヨ。>自分

本文が短かいと思ったので熱力学や余談を書いたら,いつもより

長くなったので終わります。

 

 相変わらず,金欠病です。昔から,お金を使う趣味が全く不可能

 なときには幸か不幸か?仕方なく筆が進みますね。

 

参考文献:阿部流蔵 著「統計力学(第2版)」(東京大学出版会) 

妹尾学 著「熱力学」(サイエンス社)

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2014年11月11日 (火)

統計力学の基礎(2)(古典統計力学2)

古典統計力学の続きです。

前回,粒子数がNで自由度がfの多粒子系で,系のエネルギーが

の孤立系において,エネルギーがε,..,にある粒子数を

それぞれ,n,n,..,とすると,その熱平衡時の分布がM-B分布

つまり,n=fexp(-βε)/Z;ただし,Z=Σexp(-βε)

で与えられることを見ました。

 

しかし,まだ,パラメータβやZがどのような量であるか?が不明

です。

 

そこで,以下では,まず,それらの量を明確にしたいと思います。

 

,異なる種類の粒子からなる2つの系A,Bがあって,これらの系

はどこかの境界で接触していて,それ以外の境界からはエネルギー

の流出入がなく熱平衡にあるとします。

 

このとき,系A,Bそれぞれを構成する粒子数N,Nは,独立に

不変ですが,エネルギーは弱い接触相互作用ですがAとBの間

では自由に交換できます。

 

系AのN個の粒子のうちで,エネルギーがε,..,にある

ものの数が,n,.., で.系BのN個のうちエネルギーが

,e,..,にあるもの数がm,m,..,であるような粒子

微視状態の配分方法の総数をWとすると,

 

W={N!/(n!n!..), }×{N!/(m!m!..)}

と書けます。

 

そこで,Stirlingの公式によって, 

lnW ~ fln(f)-Σln(n)+fln(f)

-Σln(m )

と近似されます。

 

前の考察と同じように=N=N,かつ,

Σε+Σme=E の条件下で,lnWを最大にする

分布をLagrangeの未定係数法で[求めます。

 

すなわち,-δlnW+αΣδn+αΣδm

+β(Σεδn+Σδm=0 ,δn,δm

ついての恒等式になる条件を求めます。

 

そこで,δn,δmの全ての係数がゼロ,つまり, 

lnn+α+βε=0,かつ,lnm+α+βe=0 

です。

 結局,n=Nexp(-βε)/Z,かつ,

=Nexp(-βe)/Zなる表式を得ます

 ただし,Z=Σexp(-βε),Z=Σexp(-βe)です。

 

ここでβは系AとB共通の係数であることに注意します。

 

熱力学によれば,こうした接触した2つの系AとBが熱平衡状態

にある条件は,両者の絶対温度が等しいことです。

 

それ故,βは絶対温度Tのみの関数と考えられます。

 

N粒子から成る孤立系でのM-B分布:n=Nexp(-βε)/Z; 

Z=Σexp(-βε)に戻って,lnZのβによる偏微分を取ると, 

(lnZ)/∂β=∂Z/∂β/Z=Σεexp(-βε)/Z 

=-Σε/N:つまり,∂(lnZ)/∂β=-E/N です。

 ところで,系のHelmholtz自由エネルギーをFとすると,Fの定義

系の内部エネルギーをU,エントロピーをSとしてF=U-TS

ですが粒子の総ネルギーEが系の内部エネルギーUに相当するため,

F=E-TS,/T=E/T-S です。

 

そこで,{∂(F/T)/∂T}

=-E/T+(∂E/∂T)/T-(∂S/∂T) 

ですが,熱力学第一法則により,TdS=dE+PdV

なので,(∂S/∂T)=(∂E/∂T)です。

 

したがって,{∂(F/T)/∂T}=-E/Tを得ます。

 

一方,∂(lnZ)/∂β=-E/fから, 

(flnZ)/∂T={∂(flnZ)/∂β}(dβ/dT) 

=-E(dβ/dT) です。

 

それ故,{∂(F/T)/∂T}

={∂(flnZ)/∂T}{(dβ/dT)-1/T2 ですから,

ある定数をkとして,F/T=-fklnZ,(dβ/dT)T=-1/k 

と置けば,この関係式が成立します。

 

dβ/dT=-1/(kT)を積分すれば,β=1/(kT)+C

を得ますが,特に積分定数Cはゼロでβ=1/(kT)と考えられます。

 

何故なら,非常に高温(T → ∞)では分布は,エネルギーεの値に

関係なく一様になると思われるからです。

 

一方,lnW=flnf-Σlnnに,n=fexp(-βε)/Z,

および,lnn=lnf-βε-ln/Zを代入すると,

f=Σ,E=Σεによって,lnW=βE-flnZ

ですが,F=-fkTlnZより,flnz=-βFなので, 

lnW==βE-βF=βTS=S/kです。

故にS=klnWなる関係式が得られます。

 

ところで,理想気体の系でしかもそのN個の構成分子が構造を

持たない質量mの質点と見なせる場合(例えば単原子分子の場合),

個々の粒子のHamiltonianはH=/(2m)で与えられ,系の自由度

はf=3Nです。

 

このとき,運動量がの粒子数は,n()=Nexp{-/(2mkT)}

で与えられるはずでますが,このN粒子を閉じ込めている容器の体積

Vの増減と共に,取り得る状態の配分数WはVに比例して増減する

はずなので比例定数をAとしてlnW=ln(AV)=Nln(AV)と書け

ます。

 したがって,S=klnW=Nkln(AV)より,

T(∂S/∂V)=NkT/Vを得ます。

ところが,TdS=dE+PdVなので,

P=(∂S/∂V)です。

 

以上から,P=NkT/V,つまりPV=NkTなる関係式が

得られました。

 

理想気体の状態方程式は系の絶対温度をT,圧力をP,体積

をVとするとRを気体定数として,PV=nRT=Nk

で与えられます。

 

ただし,nはこの気体のモル数です。1モル当たりの気体分子

であるAvigadro数(~6.02×1023)をN0とすると,n=N/N0であり

はBoltzmann定数で,k=R/N0で定義されます。

 

この状態方程式PV=NkTを,すぐ前で求めた式:PV=NkT

比較等置して,未知定数 kはk=kB と結論されます。

 

こうして,結局,β=1/(kT)で,N個粒子の孤立系の粒子数分布は 

=Nexp{-ε/(kT)/ZでZ=Σexp{-ε/(kT)であり,

lnZはHelmholtzの自由エネルギーFとF=-NkTlnZなる関係

にあります。

 

そうして,エントロピーはS=klnWで与えられることが

わかります。 

この最後のエントロピーと状態配分の関係式はBoltzmanの原理

(Boltzmannの関係)と呼ばれています。

 

この関係から,熱力学での熱平衡でのエントロピー極大の条件

が正に最大確率の分布に対応していることがわかります。

 

 さて,次に,正準集団の方法を紹介します。

 

体系の全エネルギーが各粒子のエネルギーの総和となることは,

運動エネルギーにおいては常に成立しますが,位置エネルギーに

おいては一般には成立しません。

 

以下ではこれまでと異なって粒子間に微弱とはいえない相互作用

がある場合をも扱える一般的方法について述べます。

 

 前と同じく莫大な個数N個の粒子から成り立つ全粒子系の自由度

がfの体系を考え,その一般化座標を(q1,..,q),共役運動量

=(p1,..,p)とします。

 

この体系の状態を示す.座標が(,)の代表点の作るEuclid空間

は前にΓ空間と呼んだ2f次元の相空間ですが,

今回はH(,)=E(一定)という制約は設けません。

 この系と同じ構造を持つ体系を非常に多く用意できたと想定し

それらを並べるとします。

 そしてその同じ系の総数はM個とします。MもAvogadro数に

匹敵するような巨大な数です。

これらM個の体系はその間に微弱な相互作用があって,相互に

エネルギーを交換ができるとします。

 

しかし,M個全体では外界と何の交渉もない孤立系であるとします。

 

このように体系の集団(ensemble)を想像し,その統計的平均が実測

の物理量に一致すると考えます。

 

そしてM個の同じ体系の全体をM×(2f)次元の相空間として一般

化座標を((1,(1),21,(2),..,(M),(M))とする代表点

全体の空間をΓ0空間と呼ぶことにします。

 

ただし,(j)=(q(j)1,..,q(j)),(j)=(p(j)1,..,p(j)), 

(j=1,2,..,M) とします。

 

Γ空間と空間とΓ0空間の関係は,前回の孤立系でのμ空間とΓ空間

の関係と同じです。

 

そこで,以下,このM個の系全体の作る孤立英について前回と同じ 

小正準集団の方法を適用します。

 

すなわち,Γ空間を2f次元体積がaの高々可算個の細胞に分割

し,k番目の細胞のエネルギーをEとします。

M個の系の集合の要素のうち,このk番目の状態を取るものの個数

をMとします。

 

そして,M個の系全体の不変なエネルギーをE0=Σ

します。

 

 M個をM,M,..,M,..個に分割する配置の数Wは, 

 W=M!/( M!M!..,M!..)で与えられます。

 1つの分け方:(M,M,..,M,..)がΓ0空間のaの体積

の細胞に相当するので,あらゆる(M,M,..,M,..)の組を

与えるΓ0空間内の体積はWaとなります。

 

「エルゴード仮設」,または「等重率の原理」によってΓ0空間内

のある体積を占める確率はその体積に比例します。

 

それ故,今の場合Σk=1=M,および,E0=Σの条件下

でlnWを最大にする分布が最も実現確率が高く,熱平衡時にはそうした(M,M,..,M,..)が実現されているはずです。

 

このMを求めると前回と同じ手順でM=M exp(-βE)/Z

なる分布が得られます。

 

 これをM=Σに代入すると, 

 Z=Σexp(-βE)

 =(1/a)∫exp(-βE)dq..dqdp..dp 

が得られます。

 このZを分配関数(partition function),または,

状態和(sum over states)と呼びます。

 前と同じくLagrangeの未定係数法で仮に与えた係数パラメータ

βは,熱平衡にあるM個の体系に共通なので.絶対温度Tと同じく

熱平衡の尺度と予期されます。

 いいかえると,βはTのみの関数です。

 そして,今.この想定された莫大な個数M個の系のうちで唯一つ

の系だけに着目すると,それがエネルギーEの状態となる確率が

exp(-βE)に比例することがわかります。

 

 実際の正しい確率はexp(-βE)/{Σexp(-βE)z}で

与えられます。

 

着目した体系以外の,それに接触した残りの巨大な(M-1)個の

系全体を温度を一定に保つ熱浴と見なせば,これは熱浴に漬かって

いる,または,恒温槽に接触している体系の確率分布を記述するもの

と考えられます。

 

 このような[分布を正準分布(canonical distribution)と呼び,

この方法を正準集団の方法といいます。

 

 前と同様,∂(lnZ)/∂β=-Σexp(-βε)/Z

 =-E0/M=<E>です。

 

 一方,Helmholtzの自由エネルギーをF=U-TSとすると,

 [∂{(F/T)}/∂T]V=-U/Tなので,内部エネルギー

 Uが系のエネルギーの平均値 <E>に一致する,

 つまり,U=<E>として比較することから,kをある定数

としてF=-kTlnZ,β=1/(kT)が得られます。

 

 さて,N粒子の理想気体ではf=3Nで

 Z=(1/a)∫exp(-βE)dq..dqdp..dp 

 =(1/a){∫d∫exp(-2/(2mkT))d}

 =V(2πんkT)3N/2/aなので,

 

 F=-kTlnZ=kTln{V(2πmkT)3N/2/a}

となります。

 そこで,(∂F/∂V)=-NkT/Vですが,F=U-TS

なので(∂F/∂V)=-(∂S/∂V)=-Pです。

 

 すなわち,PV=NkTを得ますから,やはり,k=k

であり,結局,F=-kTlnZ,β=1/(kT) です。

 

 しかし,実は上記のFの表式:

F=-kTlnZ=kTln{V(2πんkT)3N/2/a}は体積V 

への依存性が正しくないです。

つまり,N/V一定でV→2VならF→2Fとなるべきなのにそう

なっていません。

 

 熱力学量には温度T,圧力Pのように物質量とは無関係な示強性

の量と,エネルギーやエントロピーのように物質量に比例して1モル

が2モルになればそれらも倍の値になる,という示量性の量があり

ますが自由エネルギーFは1つの示量性の量です。

 

 N/Vが一定でV→ 2VというのはN→ 2NでVV→ 2Vで

あり,単純に同じ系が2つあるのと同じ意味ですから,常識で

考えてもF→ 2Fとなるはずです。

 

 つまり,F=-kln{V(2πmkT)3N/2/a}

 =-NkTln{V(2πmkT)3/2/a/(1/N)} 

→ -kln{(2V)2N(2πmkT)3N/a}

=2NkTln{2V(2πmkT)3/2/a1{1/(2N)}} 

2F-2NkTln2-kTlnaとなって常識と相容れません。

 

 仮に,Z=(1/a){∫d∫exp(-2/(2mkT))d}

 =V(2πんkT)3N/2/aの右辺をN!で割れば,

 -ln(N)=-NlnN+Nであり,N→ 2Nに対して, 

-NlnN+N→ -2NlnN+2N=2(-NlnN+N)-Nln2な

ので,ほぼこの矛盾が解消されます。

 

 これは古典統計の1つの欠陥であり,N個の粒子に1番,2番

と順序を付けて区別することはできない,という量子統計で解決

されることは後述しますが,量子統計に移行しなければならない

理由の1つです。

 

 前回の孤立系では,N個の粒子の個々のエネルギーが

ε,..,εE=ε+ε..+εと書けるとき,

Eが一定不変という条件つきでk番目の粒子がエネルギーε

を取る確率がexp{-ε/(kT)}/[Σjexp{-ε/(kT)}]

で与えられることを見ました。

 

 ここではN個の粒子系のエネルギーがE=ε+ε..+ε

を満たすエネルギー値Eを取る確率が

exp{-E/(kT)}/[Σexp{-E/(kT)}]

exp{-(Eε+ε+..+ε)/(kT)}

/[Σexp{-(Σε)/(kT)}]で与えられ,

, その際,E=ε+ε+..+ε=(一定)という制約条件

なしで各々の粒子のエネルギ^-εが独立に変わり得ると

してよいので,

 結局,k番目の粒子がエネルギーεを取る確率が

 exp{-ε/(kT)}/[Σjexp{-ε/(kT)}]で与えられる

という同じ結論が,孤立系で外界とエネルギーのやりとりがない

という条件抜きでも成立することがわかります。

 

したがって,今回の正準集団の方法による結果は前回の小正準集団

の方法を包摂したより一般的なものであることがわかりました。

 

 今日も次の大正準集団の項に入る予定でしたが,長くなり過ぎた

のでここで終わります。

 

参考文献: 中村 伝 著「統計力学」(岩波全書) 

阿部流蔵 著「統計力学(第2版)」(東京大学出版会), 

久保亮五 著「大学演習 熱学・統計力学」(裳華房)

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2014年11月 5日 (水)

統計力学の基礎(1)(古典統計力学1)

 本ブログでは,統計力学についてこれまでは関連した断片的

トピックと,その応用例に言及する程度の記事しか書いてき

せんでした。


(↑※例えば,熱力学も含めると,一番最初のは2006年4/8の記事

基礎物理学講義①(温度と熱)」これ,昔池袋の専門学校での講義

用に作ったノートを書き写しただけです。

 次は2006年522の「エルゴード問題と次元」です。

また,2006年7/5の記事

可逆と不可逆のはざ間(エントロピー増大則)

や2006年8/6の「エントロピーの定義」など Pending)


 しかし,
今回,場理論による物性理論の扱いに関連した松原

温度Green関数についての記事を書くに当たって,急遽,統計力学

のエッセンスを紹介する気になりました。


 統計力学は,気体,液体,固体のように日常生活で我々が

いる物体を物理的対象と考え,そうした個々の物体を熱力学

的体系,または系と呼ぶとき,分子論に基づいて系を莫大な個数

の微視的粒子の集団と見るとき,それら粒子群の力学的運動の

総体から圧力や温度といった熱力学の巨視的状態量を説明する

ために生じた学問です。


 19世紀に分子論という思想が発生した当時,熱力学においては
,

熱とは何か?温度とは何か?などの根源的疑問がありました

,これらの解答が統計力学から得られることがと期待されて

いました。


当時,既に熱力学において熱はエネルギーの1形態であり温度

系の熱平衡を特徴付ける尺度であることなどは解明されて

いました。


普通に,大学で学ぶ統計力学というのは,熱平衡での系の温度

エネルギーがEのとき系の状態の出現確率はBoltzmann因子,

または,Gibbs因子と呼ばれるexp[-E/(kT)]なる量に比例

する,という法則を認めさえすれば,非常に便利な計算道具と

なります。

 
それ故,実験観測値を精密に計算で再現できる場の量子論で

くりこみ理論などと同じく.謂わゆる対症療法=有効理論

いう見地では,それほど難解であるという印象を受けないか

知れません。

 
しかし,私のように計算ができる云々より何故そうした方法

で計算可能なのか?という原理の方に興味を抱くような科学

的には変態?思想の持ち主にとっては,ずいぶん入り口の敷居

が高いものでした。

 
先達たちには,とりあえず,それを使って種々の必要な計算を

実施し年月と経験を経るうち自然に原理的なことも理解できる

ようになる,といった内容の忠告がしばしば成されましたが,

とにかく,理由がわからなければ一歩も先に進めないという,

厄介で意固地な性格でしたからね。。。

 
だからこそ,先端の研究課題までサクサクとは進めず,未だ

地べたを這いずりまわってるのでしょうネ。。>自分

 

というわけで,私のように大学生当時は学生運動に明け暮れたり,

むしろ数学の方に魅力を感じていて物理学では劣等生であり,

物理については,その頃講義で履修してもよく理解できず,後に

必要性を感じて独学で勉強を始めたものがほとんどなので,統計

力学はそうした頃から初学者であった私には理解に苦労しました。

 

どの本を読んでも常に,理論の導入部で躓いて迷路に入ること

の繰り返しで,10冊以上の専門書の精読と挫折の遍歴があり,

結局,中村伝著「統計力学」(岩波全書)に至って一応の納得を

得てゴールしたのはもう四十路半ばでした。。

 

熱力学については未だに遍歴中ですが。。

イヤ,馬鹿は死んでも。。かな?

 

専門書ではないですが,「磁力と重力の発見」(岩波書店)で最近

大仏次郎賞をとられたらしい山本義隆氏の恐らく最初の物理学史

のヒット著作である「熱学思想の史的展開」(現代思潮社)や

高林武彦氏の「熱学歴史」海鳴社)などは大いに理解の助けに

なりました。

 

また余談ですが,アチラは覚えてないでしょうが,山本義隆氏には

氏が東大全共闘議長だった頃,例えば1970年6月の安保粉砕闘争

のデモで当時封鎖占拠していた東大地震研の教室に,S大全共闘

一員としてゴロ寝一泊した際などにお会いしたこともありま

したネ。

 

さて,本文です。

系の熱平衡状態において観測される巨視的量の値が,微視的には

莫大な個数の運動する粒子から成る系の個々の粒子の物理量の

総和の長時間平均に一致するはずである,というのが統計力学の

概念であると考えられます。

 

そして,統計力学には「エルゴード仮設(仮説)」というものが

あります。

 

これは,古典的には粒子は非常に長時間には取り得る全ての軌道

を同じ回数だけ取るため,この全軌道平均(相空間平均)が長時間

平均に一致するだろう,というものです。

また,量子論においても

上記の軌道を量子状態に置き換えるとそのまま,同じことがいえ

るという仮説です。

 

これは,この多粒子系の一般座標と共役運動量の作る相空間の

領域に系を構成する粒子群が存在する確率が単純にその領域の

相空間の体積に比例するというような確率原理を仮定して相空間

平均を計算する方,長時間平均を計算するより,はるかに容易な

ため,長時間平均の代わりに便利な相空間平均を用いて計算して

よいことを保証するものです。

 

ここで上述の,「領域に存在する確率が,その領域の相空間の体積

に比例する。」という確率原理は,等確率の原理」あるいは

「等重率の原理と呼ばれています。

 

書物によっては相空間でなく位相空間という表現をとっている

ようですが,ここで相空間と呼んでいるのは,ここでの位相空間(phasespace)=相空間が,呼称は同じでも全く無関係な数学(幾何学)

での位相空間(topological space)と混同されるのを避ける

ためです。

 

系の粒子数NとエネルギーEが定まっていて外界と全くやりとり

のない孤立系では,系のエネルギーは全粒子のエネルギーの総和

で与えられます。


この全N-粒子系の自由度が
fの場合の一般化座標を

(q1,..,q),とし,その共役運動量=(p1,..,p)

します。

 

この多粒子系に対する系全体のHamiltonianをH(,)

とすると孤立系の条件はH(,)=E(一定)です。

 

そして,長時間では,あらゆる軌道を同じ回数だけ取ることから,

N粒子の自由度fの一般化座標,と共役運動量の組()

を2f次元Euclid空間の位置座標と見たときの空間を相空間,

特にΓ空間と呼び,()で表わされる状態をその代表点と

呼びます。

 

個々の粒子が構造を持たない質点と見なせるなら各々は3

つの空間座標という自由度しか持たないのでN個の粒子の

場合,f=3Nで,2f=6NなのでΓ空間6N次元空間です。

 

しかし,一般には個々の粒子(分子)は構造を持っているので,

必ずしも2f=6Nとは限りません。


いずれにしても,H(,)=Eは2f次元の空間における

等エネルギー面を示す曲面に過ぎないので,その次元は

(2f-1)であり,その上でのいかなる状態集合の領域も 

2f次元の体積という意味での測度はゼロです。

 

したがって,E≦H(,)≦E+ΔEなる微小な厚さが

ある領域を想定すれば,これは2f次元の体積を持つ領域です。

 

ところで,何故,粒子数の他の系に対する制約がエネルギーE

に対するものだけで運動量や角運動量などその他の力学変量

を問題にしないのか?というと,

 

統計力学で通常扱う系では系を構成する多粒子群は箱など

容器の有限の領域内にと閉じ込められているケースがほとんど

,もはや空間の一様性や等方性は失われ,それらに伴なう

運動量や角運動量は平衡状態では保存量でないからです。

残っている対称性はは時間の一様性だけで,これに基づく

エネルギーの保存があるだけです。

 

さて,代表点の位置ベクトルを=,()と置けば3次元

空間のベクトル解析における公式:ΔE=ΔH=∇H・Δ

が成立するはずです。

 

ただし,ここでの一般化された勾配 ∇H=gradHは, 

∇H

(∂H/∂q1,..∂H/∂q,∂H/∂p1,..∂H/∂p) 

で与えられます。

 

そして,ΔE=∇H・Δから,ΔE=|∇H||Δ|

より,|=ΔE/|ΔH|と書けます。

 

また,等エネルギー面H(,)=E上の代表点(,)に

おけるこの面の法線単位ベクトルは∇H/|∇H|であること

がわかります。

 

したがって,Γ空間の等エネルギー面H(,)=E上の面積

がSの領域を法線方向にΔだけ切り取った,

E≦H(,)≦E+ΔEの部分の体積は,

|SΔE/|ΔH|となります。

 

ここで,SもΔEも任意に取った量ですから,それらを共に単位量

1に取ることもできます。また,等重率の原理により代表点が

この領域に存在する重み確率は一様でSとΔEの双方に単純に

比例しますから,結局,存在確率は1/|ΔH|に比例することが

わかります。

 

また,=,()により,代表点の速度を

=d/dt=(,p)と定義すれば, 

(,p)

=(∂H/∂p1,..∂H/∂p,-∂H/∂q1,..-∂H/∂q) 

です。

 

故に,

=div

=Σj,kH/∂q∂p-∂H∂p∂pq=0

を得ます。つまり,代表点の集合を流体と見たときの流速

の発散がゼロです。

 

一方,この代表点から成る流体の運動においてどこにも

湧出し,吸込みがないとして連続の方程式:

∂ρ/∂t+∇(ρ)=0 が成立します。

 

よって代表点密度のLagrange微分(流体素片の運動に沿って

の微分)はDρ/Dt=∂ρ/∂t+∇ρ=∂ρ/∂t+∇(ρ)

=0 となります。

 

したがって,代表点の密度はその運動と共に時間tに

依らず不変であることが示されました。

これはリウヴィル(Liouville)の定理と呼ばれています。

この方向で話を進めていく方法もありますが,等重率の原理

を利用して別のカラメ手から熱平衡での粒子の状態分布を

求めてみます。

 

簡単に,自由粒子が体積Vの箱の中にN個閉じ込められている

ケースを考えます。(※実際には互いに衝突したり分子であれば

分子間力などの微弱であっても相互作用があるため,もはや本来

の自由粒子ではありませんが。)

 

また,簡単のため,系全体のHamiltonianが系を構成する各粒子

のそれの単純和であるとしてよい場合を論じます。

 

 すなわち,系全体のHamiltonianHは,H(,)

(k=12,..,N)を各粒子のそれとして,

(,)=Σ(,)で与えられ,H(,)=E

のときの全体のエネルギーEは,(,)=ε

満たすεによってE=Σε表わされるとします。

 

さらに,点(,)全体のつくる2f次元Γ空間の1粒子

(または1調和振動子)(kjkj)(k=1,.N)の各々が作る

Γ空間の部分相空間をμ空間と呼ぶことにします。

Γ空間はこれらN個のμ空間の直積です。

 

そして,例えばN個の1次元調和振動子の場合,μ空間は

2自由度(2次元)で(p,q)のHamiltoninは1次元調和振動子:

(p,q)=p/(2m)+mω/2で与えられるとします。

/(2m)+mω/2=εはμ空間の楕円です。

 

ここで,便宜上添字kを省略してμ空間の点の座標を

(q,p)で表わし等エネルギーの楕円を

/(2m)+mω/2=εと書きます。

 

楕円の長軸と短軸は(2mε)1/2,{2ε/(mω)}1/2です

から,この楕円の面積は2πε/ωです。

 

このμ空間の微小部分dqdpに代表点がn個あると

すると,n/Nが1個の振動子がこのdqdpに存在する

確率を表わします。

 

有限次元Euclid空間全体はパラ・コンパクト,または

第二可算的なので,2次元のμ空間を大きさaの細胞

に分けこの高々可算個の細胞群に番号を付けることが

できます。

各μ空間はほとんど独立でε,ほぼ一定ですが,μ空間

同士でほんの僅かなエネルギー交換があって軌道には,少し

のぼやけがありそれは楕円の面積程度ですから,それが細胞

の大きさaに相当します。

 

そこでaのオ-ダーは楕円の面積程度であり,a~ε

ですが,量子論ではこれは不確定性原理:ΔqΔp~hから,

aはPlanck定数h程度と古典論より明確に決まります。

逆に,aの値を固定すると,μ空間での2次元代表点の取る

エネルギーの拡がりはε~aωとkには依存せず共通に

なります。

 

さて,N個の振動子のうちk番目の細胞にn個の

代表点が存在するとします。

 

すると=Nですがこの(n,n,..)の分配の仕方

の総数Wは,W=N!/(n!n2!..)と書けます。

そしてこの分配のΓ空間における体積はWaです。

 

そこで,等重率の原理により,分配が(n,n,..)となる

確率はWに比例します。

 

それ故,平衡時の分布はWが最大になるような分布であると

考えられます。

 

Wが最大になることとlnWが最大になることは等価ですから

計算の簡単さの都合上lnWを最大にする分布:(n,n,..)

を求めることにします。

 

W=N!/(n!n2!..)の両辺の自然対数を取ると

lnW=ln(N!)-Σln(n!)ですが,N,および全ての

常温,常圧で1リットルの気体分子数のオーダー 

1022であるるように系の粒子数N,または自由度f

は莫大な数ですから,Mが大きいときのStirlingの公式:

ln(M!)~M(lnM-1)をln(N!),ln(n!)に適用します。

 

そうすると,近似式として, 

lnW=ln(N!)-Σln(n!)

~N(lnN-1))-Σ(lnn-1)

=N(lnN-Σlnnk を得ます。

 

この式を利用すると,N=Σ,および

E=Σεの制約条件付きlnWの最大値が

Lagrangeの未定係数法を用いて得られます。

 

すなわち,制約条件はδ(Σ)=Σδn=0, 

および,δ(Σε)=Σδnε=0 です。

 

一方,lnWが最大になるための必要条件は 

δlnW=-δ(Σlnn)

=-Σ(lnn+1)δn=0 です。

 

しかし,制約条件があるので,δnを全て任意の値と

することはできず,これらは独立ではありません。

 

したがって,全ての変分δnが独立になるように,

-δlnW+α(δ(Σ)+βδ(Σε)=0  

とします。


すると,
 

Σ(lnn+1)δn+αΣδn+βΣεδn=0

より,Σ(lnn+α+βε)δn=0 ですが,この式では

全ての変分δnは独立なので,係数をゼロとして

lnn+α+βε=0 を得ます。

つまり,n=exp(-α-βε)です。

 

N=Σexp(-α)Σexp(-βε)より,  

Z≡Σexp(-βε)と置けばexp(-α)=N/Z 

であり,=Nexp(-βε)/Z,あるいは,

/N=exp(-βε)/{Σexp(-βε)}

と書けます。


これはエネルギーεを取る粒子の確率が因子

exp(-βε)に比例することを意味します。

 

こうして,古典統計分布であるMaxwell-Boltzmann分布

(M-B分布)が得られました。

 

最初箱の中にN個の自由粒子があると仮定し,途中から

考察の都合上,自由粒子の変わりに1儀元調和振動子という

特殊例を用いたのですが,最終的な分布の導出方法には自由度

関係なくここで得た古典分布は一般的結論であり,自由粒子

しても同じです,上述の1次元調和振動子の場合,系の自由度

f=Nで2f=2Nです。

 

一方,最初に仮定した箱の中にN個の自由質点粒子がある

ケースならf=3Nで2f=6Nであることを断っておきます。

 

粒子数一定で系の外からエネルギーの流出入のない孤立系

においてΓ空間における代表点(微視状態)の集合を小正準

集合,または小正準集団(micro canonical ensemble)と呼び

上述の統計分布はミクロカノニカル分布とも呼びますが,

この方法を小正準集団(集合)の方法といいます。

 

後に紹介する正準集団,大正準集団の方法では,それぞれ,

孤立系ではなくエネルギーの流出入,粒子の流出入を許す

場合の,より一般的な系を想定した方法で同様な統計分布を

見出すことができます。

 

そして,孤立系はそれらの特別な場合に過ぎず,それらに

含まれています。

 

正準集団,大正準集団は,対象とする系と全く同じ条件の系が

大量に合計M個存在すると想定して,系が取る状態の確率は

その集団の中で同じ状態にある系の個数がnならn/Mで与え

られるというような統計集団であるのに対し,小正準集団は

統計集団というよりも状態の集合ですから意味はちょっと

違いますね。

 

今日はここで終ります。

 

悪いクセで脱線しだすと際限がないですが,昔と違って全て

通ってきた道で指針となる覚え書きノートも揃っているので,

すぐ収拾はつきます。

 


参考文献:中村伝 著「統計力学」(岩波全書),

阿部流蔵 著「統計力学(第2版)」(東京大学出版会), 

久保亮五 著「大学演習 熱学・統計力学」(裳華房)

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2009年10月11日 (日)

空気分子の大きさ(アインシュタインとブラウン運動)

 地球大気の温室効果について段階的に論じていこうと思います。

 

 まずは,私自身が"自己満足"して納得するため,2006年11/21の記事「地球の平均気温とステファン・ボルツマンの法則」において,温室効果を無視した地球平均気温(=約-18℃)という定量的評価のための材料とした「太陽からの輻射に対するアルベド(albedo:反射率)が30~31%であること」の理論的根拠などから論じてゆきます。

  

 今日は,まず太陽から地球に放射される光が地球表面で散乱され減衰することと関連して,大気圏での主要な散乱体である"主に窒素と酸素から構成された空気分子"の大きさを評価することから始めます。

 

 そのための方法として植物学者ブラウン(Brown)の「花粉の水中運動の永久性=ブラウン運動"の発見(1829)」に対する「アインシュタイン(Einstein)の解明(1905)」の話から始めようと思います。

 媒質中のブラウン粒子の運動を位置座標のx成分の軌道で代表させると,その運動方程式はu≡dx/dtとしてm(du/dt)=X(t)-u/μで与えられると考えられます。

ここにmは対象粒子の質量,X(t)は媒質からその粒子にかかる力のx成分,μは易動度と呼ばれる量で,u/μが媒質の速度に比例する摩擦力となるようなケースでの比例係数の逆数です。

 

m(du/dt)=X(t)-u/μの左辺がゼロの定常状態に達した場合ならu=μXですが,これが易動度という言葉の意味ですね。

流体力学のストークス(Stokes)の抵抗法則によれば,ブラウン粒子を半径aの球と仮定しηを媒質の粘性率とすると,この程度のレイノルズ数では 1/μ=6πηaと書けるはずです。

ストークスの法則の詳細は,2007年7/27の「遅い粘性流(1)(Stokes近似)」,および2007年7/28の記事「遅い粘性流(2)(Stokes近似)

そして,それに続く2007年7/31の記事「遅い粘性流(5)(Stokes近似)」を参照してください。

ブラウン運動の方程式:m(du/dt)=X(t)-u/μはランジュバン(Langevin)方程式:du/dt=-γu-R(t)/m (R(t)は"ゆらぎ=揺動",または雑音の影響を表わす量)と同じものです。

ランジュバン方程式については非平衡統計力学の線型応答理論に関連した2007年7/20の記事「揺動散逸定理 」を参照してください。

運動方程式:m(du/dt)=X(t)-u/μ (u=dx/dt)の両辺にx=x(t)を掛けてtについて0からtまで積分すると,左辺はm∫0t(xdu/dt)dt=m∫0t(xd2x/dt2)dt=[mxdx/dt]0t-m∫0t(dx/dt)2dtです。

 

一方,右辺は∫0tXxdt-(1/μ)∫0t(xdx/dt)dt=∫0tXxdt-(1/μ)∫0t[d/dt{x2/2}]dt=∫0tXxdt-(1/μ)[x2/2]0tとなります。

したがって,[mxu]0t-m∫0t2dt=∫0tXxdt-(1/μ)[x2/2]0tを得ます。

 

ところが,tが十分長ければ右辺第1項∫0tXxdtはX(t)が正負の全くランダムな値を取るために消えるはずです。

そして,統計力学のエネルギー等分配の法則により長時間平均の意味でm∫0t2dt=(t<mu2>)t→∞=kBTtとなります。ここにkBはボルツマン(Boltzmann)定数,Tは絶対温度です。

そこで,t→ ∞では[mxu]0t-kBTt=-(1/μ)[x2/2]0tです。それ故,大きいtで[mxu]0tが省略できる場合には<x2AV≡([x2]0t)t→∞=2μkBTtとなります。

 

こちらの<x2AVは,前の<mu2>のような長時間平均ではなく時刻tにおける相空間平均(確率平均)です。

実際,<u21/2~ (kBT/m)1/2ですがエルゴード性により時刻tにおける空間平均という意味でもu~ (kBT/m)1/2すから,x ~(2μkBTt)1/2であれば,<mxu>AV=[mxu]0t~kBT(2mμt)1/2となります。

  

そこで,[mxu]0tの値は大きいtに対してt1/2のオーダーですからtと比較して省略できることがわかります。

一方,ブラウン運動を時間τごとに微小長さを進む酔歩の問題と考えると次のように考察されます。

これは私のブログでは既にずいぶん前に考察済みです。

 

2006年9/14のブログ記事「酔歩(ランダム・ウォーク) 」から該当部分を多少修正して再掲します。

(再掲開始)

 

1次元ではx軸の上で左右どちらにも1歩ずつ動くことができて1歩の長さが一定値λであるとします。そして左右どちらかに進む確率は両側共に1/2であるとします。

x軸の原点から出発しててN歩の後にx=nλ(-N≦n≦N)の位置にいる確率をP(n,N)とすると,正の向きにN+,負の向きにN-歩いてxに到達するとした場合の数がN!/(N+!N-!)ですから,P(n,N)={N!/(N+!N-!)}(1/2)Nとなるはずです。

ただし,N++N-=N,+-N-=nなので単純に計算すると+(N+n)/2,-(N-n)/2ですが,N+nとN-nは一方が奇数なら他方も奇数,一方が偶数なら他方も偶数です。これらが偶数でなければ負でない整数なることが必要な+もN-も存在しません。 

したがって,N-nが偶数のときには(n,N)={N!/(N+!N-!)}(1/2)N(N+(N+n)/2,-(N-n)/2)ですが,N-nが奇数のときには(n,N)=0 です。

ここで,nが非常に大きいときのスタ-リングの公式:n!~(2π)1/2exp(-n)n(n+1/2),あるいはlog(n!)~(1/2)log(2π)+(n+1/2)log(n)-nを使用します。

N-nが偶数でNが非常に大きいとすれば,+(N+n)/2,-(N-n)/2も非常に大きいことになってlog{(n,N)}~ -Nlog2+NlogN-N+logN+-N-logN-(1/2)log(2π)+(1/2)(logN-logN+logN-)=(1/2)log{2/(πN)}-(N/2)[{1+(n+1)/N}log{1+(n/N)}+{1+(1-n)/N}log{1-(n/N)}]です。

ここで,n<<Nと考えて上のα=n/Nの対数関数において,αの2次までの近似展開:log(1-α)~ -α-α2/2,log(1+α)~ α-α2/2を利用します。

すると,log{(n,N)}~(1/2)log{2/πN)}-(N/2)(n/N)2より(n,N) ~{2/(πN)}1/2exp{-n2/(2N)}です。

ここで,x=nλ(-N≦n≦N)の酔歩の1歩の長さλは非常に小さいとしてN-nが偶数と奇数の両方の場合を考慮すれば,xがxとx+dxの間にある確率は(x,N)dx=(1/2){2/(πN)}1/2exp{-x2/(2Nλ2)}(dx/λ)(2πNλ2)-1/2exp{-x2/(2Nλ2)}dxです。

これは,Nλ→ ∞,λ→ 0,かつNλ2→σ2(有限)の条件で,xについて積分すると1になるので,確かに確率密度の条件を満たしています。

 一方,2次元での確率密度は,モデルが等方的なので単純に上の1次元の式で2をr2≡x2+y2で置き換えるだけでいいと考えられるところですが,実は1歩の各方向への成分Δx,ΔyがΔx2+Δy2=λ2を満たす必要があるので修正が必要です。

x方向とy方向を対等に扱うと,Δx2=Δy2=λ2/2なのでN歩で位置=(x,y)に到達する確率密度は,全平面で1になるように規格化してP(x,y,N)dxdy=(πNλ2)-1exp{-x2/(Nλ2)}exp{-y2/(Nλ2)}dxdy=(πNλ2)-1exp{-r2/(Nλ2)}2になります。 

同様に,3次元ではr2=x2+y2+z2としてΔx2=Δy2=Δz2=λ2/3により,位置=(x,y,z)に到達する確率は(x,y,z,N)dxdydz={(2/3)πNλ2}-3/2exp[-r2/{(2/3)Nλ2}]3になると考えられます。 

  特に,3次元の一般式でt=Nτ,D=λ2/(6τ)と置けば,4Dt=(2/3)Nλ2となるため,時刻tに位置に存在する確率はP(,t)=(x,y,z,N)=(4πDt)-3/2exp{-r2/(4Dt)}と書けます。

これは,丁度拡散係数がDの拡散方程式∂P/∂t=D∇2Pにおいて初期時刻t=0 に確率密度が原点に集中しているときの解,すなわち,初期値がP(,0)=δ3()のときのP(,t)の一意解に一致しています。(再掲終わり)※

そこで,この確率密度(,t)に基づいて計算すれば,x方向の"ゆらぎ=揺動",つまりt=0 に確率1で原点=0 にあった場合の時刻tでの平均位置(=0)からのずれxの2乗平均値は,<x2AV=∫-∞[x2(,t)]d3(4πDt)-1/2-∞[2exp{-x2/(4Dt)}dx=2Dtとなります。

これを,先にブラウン運動の1次元方程式から求めたxのゆらぎの表現:<x2AV([x2]0t)t→∞=2μkBTtと比較すれば,D=μBT(アインシュタインの関係式)が得られます。

,媒質の粘性率をηとし拡散粒子の半径をaとすれば,先に求めた易動度μに対するストークスの式:1/μ=6πηaから,D=kBT/(6πηa)なる等式が得られます。これをアインシュタイン・ストークスの関係式と呼びます。

ここで理科年表によると,空気の粘性率は温度が常温25℃=298Kでη=18.2×10-3Ns/m2,またkB=R/NA=1.38×10-23J/Kです。R~8.31J/(Kmol)は気体定数,NA~6.02×10-23/molはアヴォガドロ数(ロシュミット数)です。 

また,質量がmの気体分子の速度をとすると,統計力学によって平衡状態での2乗平均の速度は(<2AV)1/2=(3B/m)1/2です。一方,速度の絶対値||の平均は<||>AV={8B/(πm)}1/2です。

 

空気をO2とN2の1:4の混合気体とみると分子質量はm=28.8/NA(g)~ 4.78×10-26(kg)ですから,常温T=298Kでの2乗平均速度は21/2 ~ (3B/m)1/2~ 約508(m/s)です。

 

一方,絶対値平均速度で見ると,<||>AV={8B/(πm)}1/2~ 約468(m/s),ですです。

さて,気体分子を直径がdの剛体球とモデル化すると,2つの気体分子の中心間距離がdになるときにこれらは衝突します。

 

そして,1つの分子が衝突するまでに分子が移動する平均の距離を平均自由行程と呼びます。これは先に述べた酔歩の1歩に相当するので同じ記号λで表わすことにします。

 

1つの気体分子から見るとその中心を底面中心として体積がπd2λの円筒内に他の分子が1個入るという勘定になります。

 

したがって,気体分子数密度をnとするとπd2λn=1ですから平均自由行程はλ=1/(πd2n)と評価されます。

  

さて,速度=(u,v,w)=(vx,vy,vz)の各成分がvx~vx+dvx,vy~vy+dvy,vz~vz+dvzの間にある分子数をf(vx,vy,vz)dvxdvydvz=f()d3とします。

 

全分子数をNとするとf()は全速度空間で積分して∫f()d3=Nとなるように規格化されています。このように定義されるf()=f(vx,vy,vz)を速度の分布関数と呼びます。

 

そして,絶対温度がTの熱平衡状態では,f()がマクスウェル(Maxwell)分布:f()=N{m/(2πkBT)}3/2exp{-m2/(2kBT)}で与えられることがわかっています。

 

分子数密度がn=N/Vの熱平衡状態を仮定します。

 

通常のxyz空間のz=0 の面の単位面積を通って単位時間にz>0 の側からz<0 の側に移動する分子数をI+とすると,I+=n{m/(2πkBT)}3/2-∞dvx-∞dvy0dvzzexp{-m2/(2kBT)}=(n/4){8kBT/(πm)}1/2と計算されます。

 

ところが,先述したように<||>AV={8kBT/(πm)}1/2です。また,対称性からz=0 の単位面積を通ってz<0 の側からz>0 の側に移動する単位時間当たりの分子数をI-にとすると,これはI+は等しいのでI+=I-=(n/4)<||>AVと書けます。

 

そして,巨視的な粘性率を微視的な分子から統計的平均量として見積もるために,z=0 の面を通して下方から上方へと輸送されるx方向の運動量を評価してみます。

 

これは,z=0 の面から平均自由行程程度の下方の運動量が上方に運ばれ,これから下方に運ばれる平均自由行程程度の上方の運動量を引いた差で与えられると考えられます。

 

その平均自由行程程度のz座標を±αλ(0<α<1)とします。

 

まず,z=-αλから入ってくる運動量のx成分はx方向の速度成分をzだけの関数としてu(z)と表わせばI+mu(-αλ)=(mn/4)<||>AV{u(0)-αλ(∂u/∂z)}と見積もられます。

 

同様にz=0 の面を通って上方から下方へと輸送されるx方向の運動量はI-mu(αλ)=(mn/4)<||>AV{u(0)+αλ(∂u/∂z)}と見積もられます。

 

結局,z=0 の面を通って下方から上方へと輸送される正味の運動量のx成分は,I+mu(-αλ)-I-mu(αλ)=-(αλρ/2)<||>AV(∂u/∂z)となります。ただし,ρ≡mnは媒質の気体の密度です。

 

得られた単位時間当たりの輸送量-(αλρ/2)<||>AV(∂u/∂z)が,流体力学における現象論的粘性応力:-η(∂u/∂z)に一致すると考えられるので,粘性率ηに対してη=(αλmn/2){8kBT/(πm)}1/2なる評価式が得られました。

 

 これにλ=1/(πd2n)を代入するとη=(α/d2)(2πmkBT)1/2となります。それ故,D=kBT/(6πηa)={kBTd2/(6πaα)}(2πmkBT)-1/2=(2π)-3/2(kBTd4/m)1/2/(3aα)が得られます。

  

この式によれば,αがわかれば半径aが既知のブラウン粒子の空気中での分子拡散係数Dを測定すれば,空気分子の平均直径dを計算により評価できることがわかります。

 

実験等から得られる空気分子の径の評価値は0.4~0.8μmで可視光線の波長と同程度だそうです。

  

今日はここで終わります。

 

次回は電離層などプラズマの影響,大気層における空気分子や雲(水滴)によるレイリー散乱,ミイ散乱なども考慮して,地球面頂上でのフレネル反射や吸収の寄与による"太陽輻射(太陽定数)の減衰=アルベド(albed)"の定量的評価を論じることを予定しています。

 

参考文献:中村 伝 著「統計力学」(岩波書店),北原和夫 著「非平衡統計力学」(岩波書店),クドリャフツェフ 著(豊田博慈 訳)「熱と分子の物理学」(東京図書)

 

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2009年2月 9日 (月)

水蒸気の比熱

 約1年前に2008年1/6の記事で「氷,水,水蒸気の比熱」という記事を書き,それを動機として化学結合関連のシリーズ記事に入り,結局,目的としていた水素結合に到達する前に興味がよそに移ってそのままになりました。

 

 しかし,最近私がサブマネージャーをしているfolomyの「物理フォーラム」で水分子の基準振動のモードについて質問があったのを機に,

 

「そうか。。重心運動と回転運動の自由度だけでなく振動の自由度に量子統計の効果を組み合わせれば,少なくとも水蒸気の比熱についてだけは,説明可能ではなかろうか。。」と思ったので,まずは過去記事の主要部分を再掲して,次にこれを説明したいと思います。

 

 以下,まず2008年1/6の記事「氷,水,水蒸気の比熱」の再掲です。 

※(再掲記事1)

  

 気体としてのH2,すなわち水蒸気なら理論的には常温での3原子分子の自由度は6です。

 

古典統計物理学におけるエネルギー等分配の法則,すなわち,"絶対温度Tにおいて1自由度当りの内部エネルギーはkBT/2 である。"という法則によれば,水蒸気の定積モル比熱はCv,mol(1/2)R×6=3Rとなるはずです。

 

B≡R/N0はボルツマン定数~ 1.38×10-23JK-1)で,Rは気体定数~ 8.31Jmol-1-1),N0はアボガドロ数r~ 6.022×1023mol-1)です。

そして,マイヤーの法則(Mayer's relation)によると,定圧モル比熱はCp,mol=Cv,mol+R=4Rと書けるので,比熱比はγ≡C/Cv=4R/(3R)~1.33となるはずです。

1モルのH2Oの質量は18gです。

 

そこで,質量1g当りの熱容量に換算するとCv8.31×3J/(molK)=1.385J/(gK)=0.33cal/(gK),C8.31×4J/(molK)=1.846J/(gK)=0.44cal/(gK)となるはずです。

 

しかし,理科年表によると,摂氏100度の水蒸気について,定圧比熱がC2.051J/(gK)=0.50cal/(gK)で,比熱比がγ≡C/Cv1.33となっていました。

これらの実測値は,比熱比γについては理論と一致していますが,定圧モル比熱については実測はCp,mol4.5R=(9/2)Rとなっています。

 

これは,今私が計算した理論値のCp,mol=4Rよりも大きく,実測のCp,molからマイヤーの規則で計算すると,定積モル比熱はCv,mol3.5R=(7/2)Rとなりますから,これからはγ≡C/Cv~1.28となって実測のγ1.33と矛盾します。

 

まあ,水蒸気は理想気体でないのは明らかですから,何らかの理由があるのでしょう。

一方,液体の水の比熱は定義によると1gの水を摂氏14.5度から15.5度まで1度上昇させるに要する熱量が1calです。

 

常温での水の比熱はC1cal/(gK)=4.19J/(gK)です。

 

また,氷の比熱は実験によると,C0.50cal/(gK)=2.085J/(gK)となっています。つまり,C,mol~9R,C,mol4.5R=(9/2)Rですね。

 

もしも氷が固体金属と同じような格子結晶であるなら,デュロン・プティの法則(Dulong-Petit's law)によってC,mol=3RなのでC0.33cal/(gK)になるはずですが,実際にはそうなっていません。

 

(固体金属の場合は電子の自由度は常温では無視できて,格子位置の陽イオンの格子振動,つまり自由度が2の調和振動子の3方向の自由度6の寄与のみにより,常温でのモル比熱がほぼC金属=3Rで与えられるということが理論的にも実験的にも認められています。(デュロン・プティの法則))

 

このことから,古典的には水の自由度は18,氷の自由度は9と考えられ,液体の水の場合はH2O分子を構成する3つの原子の個々がそれぞれ自由度6,固体の氷の場合はそれぞれ自由度3を担わなければならないという勘定になります。

一般に,1つの粒子が単なる質点なら自由度は高々3です。一方,質点ではなく大きさがあって重心運動の他に回転の自由度がある剛体とか,3次元の調和振動子のように内部振動をするような構造を持つなら丁度6の自由度を持ちます。

 

2Oを構成する3原子の各々が互いに全く束縛されることがない自由粒子であり,しかも構造を持たない質点である場合なら,個々の自由原子の持つ自由度が3なので合計で2O分子の自由度は9になります。

  

また,2Oを構成するそれぞれの原子が自由粒子でかつ内部構造(大きさ)を持ち,例えば回転自由度3を追加された剛体であれば,H2O分子の自由度は18になります。

 

さらに振動の自由度を加えれば独立な1方向当たり2ずつ自由度が増えます。つまり,原子をさらに核と電子に分けるなど内部の詳細構造を追及していけば,まだまだ比熱に寄与しそうな自由度を増やすことが可能であるという勘定にはなります。

 

そこで液体の水についても,これをH2Oを構成する3つの原子の各々がそれぞれ調和振動子であるとか,またはH2Oの重心運動と全体としての回転運動はあっても振動はできない剛体のようなものと見なせるような奇妙な構造の模型を仮定すれば説明できるかな?という程度の認識に到ります。

結局は,水素結合などの特別な化学結合が関係していると思われるので,こうした問題意識を動機として,次回からは化学結合関連についての知見について復習し,その内容の詳細については事実上初めての真面目な勉強をしてみます。

 

本日は単に化学結合についての記事を書く動機のみを書きました。

 

水分子の結合や,その相転移などの説明については,水素結合などを理解した後,できたらまたの機会に詳述したい,と考えています。

参考文献:「理科年表1997年版」(丸善出版) (※再掲記事終わり)

 

ところが,かつて2006年7/16の記事「二酸化炭素の比熱比(物性)」においてCO2分子というのは3原子が一直線に並んでいるため回転の自由度が3ではなく2であるという結論を得ています。

 

したがって,H2Oの場合も水素結合にしろ共有結合にしろ,気体の状態であっても分子として安定な平衡状態ではH-O-Hは一直線ではありませんがHとO,HとHのなす角度は決まっているので,上記記事で水蒸気の気体分子としての回転の自由度を3と考えたのは誤りで,CO2と同じくH2Oの場合も回転の自由度は2であろうと考えました。

 

以下,続きを論じるために,上記2006年7/16の記事「二酸化炭素の比熱比(物性)」を再掲します。

 

※(再掲記事2) 

  今日は,理想気体の断熱過程での気体法則であるポアソン(Poisson)の公式PVγ=一定,または TVγ-1=一定で使用される比熱比 γ= Cp/Cvの値について,考察します。

 統計力学によれば,比熱比は対象とする気体1分子を構成する原子の個数,つまり気体分子が単原子分子,2原子分子,3原子分子etcのいずれであるかによって決まります。

 ここで, Cv は定積比熱,Cpは定圧比熱です。

 (理想)気体に対する定積比熱,と定圧比熱の間にはマイヤー(Mayer)の法則というルールがあり,nモルの気体に対してはCp=Cv+nR (1モルなら Cp=Cv+R )が成り立ちます。

 ただし,Rは気体定数と呼ばれる定数で,R≒8.31J/(mol・K)です。

 そして,気体の定積比熱 Cvは絶対温度をT,内部エネルギーをUとすると Cv=dU/dTで与えられます。

 理想気体ではUは温度だけの関数なので,T=0 での零点エネルギーを無視すると,気体の内部エネルギーはU =CvT と書けます。

 古典統計力学によると,物体の常温での内部エネルギーUは,1粒子の運動する自由度1つごとに kBT/2 だけの値を割り当てられます。ここで kB はボルツマン定数と呼ばれる気体分子1個当たりの気体定数です。

 kBは気体1分子当たりの気体定数ですから,R=N0B,またはN0=R/kBとすると気体1モルというのはN0個の分子の集合体を意味することがわかります。N0はアボガドロ数と呼ばれる物理定数で6.02×1023 なる値です。

 nモルの気体を構成する分子数はnN0個ですから,それの1自由度あたりの内部エネルギーはnN0BT/2=nRT/2 です。

 以上の事実はエネルギー等分配の法則といわれますす。

 単原子分子気体では分子1個の自由度は並進運動の自由度3だけなのでnモルの気体の内部エネルギーはU=3nRT/2 です。そこでCv=3nR/2, Cp=Cv+nR =5nR/2です。

 また,2原子分子気体は回転の自由度2 が加わるので,分子1個の自由度は並進運動(重心運動)の自由度3と合わせて5となります。そこでnモルの気体の内部エネルギーはU=5nRT/2となります。Cv=5nR/2, Cp=7nR/2です。

 3原子分子以上では重心の周りの回転の自由度が最大の3になるため,これを並進運動(重心運動)の自由度3と合わせると分子1個の自由度は6となりますから,nモルの内部エネルギーはU=3nRT で,Cv=3nR, Cp=4nRとなります。

 そこで,比熱比γ=Cp/Cvは単原子分子気体なら1.67で2原子分子気体なら 1.4,そして3原子分子以上なら特別な対称性がない限り1.33になるはずです。

 そこで本当にそうなっているのかどうかを理科年表で確かめてみると,He  1.66, Ar  1.67, H2  1.40, N2 1.40, H2O 1.31, NH3 1.33 とありました。

 これを見ると,必ずしも近似的に理想気体と見なせる希薄気体ではないような実在気体でも,かなり良く適合値を示しているようです。

 ここで,ニフティ「物理フォーラム」でのある方からの質問を呈示してみます。

 "3原子分子であっても,二酸化炭素 CO2が典型例であるように,一直線に並ぶ3原子分子の場合にはどうなるのだろうか?もし厳密に一直線ならば回転の自由度は2なので2原子分子と同じγ,つまり 1.4になるはずですが,理科年表によると二酸化炭素 CO2のγは1.30でしたから,これは普通の3原子分子に近い値です。"

 上記が質問の内容です。

 そこで,これに対する答えを見出すために,これまで考えてきた並進や回転の自由度だけではなく,振動の自由度も考慮するとどうなるかを考えてみます。

 重心の並進運動や回転の運動とは異なり,振動の自由度なら1方向の調和振動に対しては,位置エネルギーと運動エネルギーの2つの自由度があるので,1方向についての平均エネルギーは 1分子当たりkBTになります。

 たとえば静止した固体は3方向に熱振動しているので,常温では1モルにつき,比熱は気体定数をRとして固体の種類によらず3Rとなります。(デュロン・プティ(Dulog-Petit)の法則)

 つまり,1次元調和振動子のエネルギーは E=p2/(2m)
+(1/2)kx2であり,"マクスウェル・ボルツマン分布=古典確率分布"によれば,振動子の座標が(x,p)である確率密度はギブス因子exp{-E/(kT)}に比例します。

 そこで,エネルギー Eを表わす式の中の1つの変数の2乗を与える変数自由度について,それぞれ平均をとると kBT/2 となりますが, E=p2/(2m)+(1/2)kx2の右辺にはp2と x2 の2つの2乗項があるので振動のエネルギーを考えた場合には,平均エネルギーへの寄与は 1分子当たり一つの方向(1次元)について kBTとなります。

 これに対して,重心の自由な並進運動とか,回転運動では位置エネルギーの項はなくて運動エネルギーの項しかない,つまり p2の項しかないので,平均エネルギーへの寄与は1分子当たり1次元について kBT/2 となるのですね。

 とにかく,古典統計力学ではax2 exp {- ax2/(kT)} なる式をx で積分したものを,exp{-ax2/(kT)}をx で積分したもので割ると,必ずkBT/2 になるということを直接計算で確かめることができます。

 これは自由度が1つでもあればそうで,係数aの大きさには無関係です。

 ところで常温での固体では,格子を構成する原子のイオンの熱振動がメインになる(電子振動は無視される)のに対して,気体では、原子の重心運動と回転運動のみがメインとなり,熱振動の自由度や電子の運動の自由度が何故無視されるのかという問題があります。

 これは量子論ではエネルギーが量子化され,統計分布がプランク(Planck)定数hに関係した量子確率分布で与えられるためです。

 こうしたことの理由を簡単に言うなら,物質内部のエネルギーを E としその構成粒子の主要な振動数をνとすると,Eは量子論では大体においてhνの倍数で与えられ,量子統計分布では,先のギブス因子exp{(-E/(kBT)}がexp{-nhν/(kBT)}という形で現われるからです。

 常温のTでは固体の電子の振動や気体での原子振動の振動数や電子の自由度に関わる周期運動の振動数νに対しては,一般にhν>>kBTが成立するので,exp{-nhν/(kBT)} ~ 0 となるためこれらは内部エネルギーにはほとんど寄与しないのです。

 ところが,問題の二酸化炭素:CO2について「甘泉法師さん」から得た情報によると,"二酸化炭素分子の振動データは,次の振動モードのそれぞれについて,全対称伸縮は実測=1333/cm,計算=1373/cm(12CO2),逆対称伸縮は実測=2349/cm,計算=2420/cm(12CO2),変角振動は 実測=667/cm,計算=669/cm(12CO2)となっているそうです。

 一番エネルギーの小さい変角振動について温度に換算すると赤外線温度 1.4387752・667 = 953Kで常温(300K)の約3倍"なので振動を無視できないそうです。

   実際,変角の振動モードに対して,例えば摂氏(Celsius)16度:T=289Kで x = E/(kBT)=3.32を用いて量子論でのモル比熱を求める式(固体のアインシュタインモデルと同じ式)であるCvib=R x2 exp ( x2 )/[exp ( x2 )-1]に代入すると,Cvib=0.43Rとなります。

 変角振動は横波なので縦振動を除いて自由度が2 であるため結局Cvib=0.43R ×2=0.86Rであり,比熱比はγ=1+ R/ (5/2R+Cvib)=1.30となって,めでたく理科年表の値と一致します。

 ただし,こうして正しい値が得られたのは,振動を除く自由度としては原子が1直線状であることを考慮して2原子分子と同様,定積モル比熱がCv=5/2Rの場合に対応する自由度を想定して計算した結果ですから,やはりCO2では回転の自由度は2である,と考えるのが正解のようです。(※再掲終わり)

 

私は,元々ニフテイ「物理フォーラム」でサブマネージャーをしていたのですが@niftyには,もはやこうしたフォーラム制度がなく過去ログも含めて今は「folomy」に移っています。

 

上記記事では,普通は常温の気体の場合には振動の自由度は無視されるのですが,二酸化炭素の変角振動のモードは比熱への有意な効果を与えるため気体のCO2定積モル比熱vの(重心+回転)による自由度5の寄与Cv0=5R/2に加えて,自由度が2の振動の寄与がvib=0.43R×2=0.86Rと算定されるという結論を得ています。

 

水蒸気2,の場合にも,自由度が2の振動の寄与がvib=0.25R×2=0.5R程度であるとすれば,v=3R, C=4Rとなって,比熱比γ≡C/Cv=4R/(3R)~ 1.33なる実験値に矛盾しません。

 

問題は摂氏100度の水蒸気についての実測の定圧比熱がC2.051J/(gK)=0.50cal/(gK)となっていることで水1モルの質量が18gであることを考慮するとp4.5R=(9/2)RでCp=4Rよりも大きく,これからマイヤーの規則で計算すると,定積モル比熱はCv3.5R=(7/2)Rとなってγ=C/Cv~ 1.28となり実測のγ1.33と合わないということでした。

 

しかし,確実に比熱にR/2の寄与をする回転の自由度ではなく,振動の自由度の寄与ということであれば振動数次第で寄与を微調整することが可能です。

 

上記では水蒸気については振動の1自由度当たり0.25Rであるとしましたが,例えばこれを0.35Rくらいであると同定すればp4.2R,v3.2R,γ=C/Cv4.2/3.2程度になるし,水1モルの質量も現実には確実に18gというわけではなく17.5g程度なら,実測値と考えている理科年表のC2.051J/(gK)=0.50cal/(gK)とさほど矛盾しないようです。 

 

http://folomy.jp/heart/「folomy 物理フォーラム」サブマネージャーです。

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2009年1月 3日 (土)

運動物質内の相対論(12)(熱力学の法則)

運動物質内の相対論の続きです。

 

今日は相対論における熱力学の記述を考察します。電磁気学ではないので本筋をはずれるようですが記事の最後で"電磁輻射=光子気体"との関連についても少し述べます。

熱力学の法則を特殊相対性理論に包含することは比較的容易です。

 

これについてはプランク(Planck)とアインシュタイン(Einstein)の仕事があります。

ここでは簡単のため,考察の対象として物体を構成する部分の如何なる面要素にも応力としては垂直な圧力のみが存在し得るような熱力学的流体のみから成る系に限定します。

まず,静止系では第一法則,第二法則など全ての通常の熱力学の形式が成立することを前提とします。

静止系では,熱力学第一法則によって状態変化を生起させる熱力学的過程での系のエネルギーE0の変化dE0はdE0=δQ0+δA0なる式で与えられます。

 

δQ0はこの過程で系に流入する熱量,δA0は系がその周囲になした仕事にマイナス符号を付けたもの,つまり外部環境から系が受ける仕事を示しています。

系の体積0の増加が無限小であるような過程は可逆過程ですが,この過程ではp0を圧力とし体積増加をdV0とすると系が受ける仕事δA0はδA0=-p0dV0で表わされます。

熱力学の第二法則によって静止系ではエントロピー0は状態量です。そして可逆変化によって定義されるエントロピー変化の定義はdS0≡(δQ0可逆)/T0=(dE0+p0dV0)/T0です。

 

(δQ0可逆)は今論じている状態変化をもたらす可逆過程で系に流入する熱量であり,T0は系の絶対温度です。

もしも状態変化が不可逆過程で生じたものなら,これに反して常にdS0>δQ0/T0が成立します。

1つの慣性系Sを考えます。その慣性系はその座標系に対して対象としている熱力学系が一定速度で走っているように見える系であるとします。

既に「運動物質内の相対論(4)(弾性連続体(2),完全流体)」で見たように,量μ0,p0,が完全流体のあらゆる位置で一定なら,系Sでの運動量密度とエネルギー密度を全体積V≡V0(1-2/c2)1/2にわたって積分することで,運動量VとエネルギーE=hVが次のように表わせることを知っています。

 

 すなわち,運動量はV={(h0+p0)V/c2}/(1-2/c2)={(h0+p0)V0/c2}/(1-2/c2)1/2={(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2で,エネルギーはE=hV=(E0+p002/c2)/(1-2/c2)1/2です。

これを見ると,(E/c,)=({E0+p002/c2)/c}/(1-2/c2)1/2,{(E0+p00)/c2}/(1-2/c2)1/2})はローレンツ共変な4元ベクトルにならないことがわかります。

 

しかし,=(E+pV)/c2,E+pV=(E0+p00)/(1-2/c2)1/2なので,Gμ≡(E/c,)ではなくGμ≡((E+pV)/c,)とおけば,これらは静止質量が(E0+p00)/c2の質点のエネルギー運動量ベクトルと同じですから4元ベクトルです。

今考えている流体は静止系で平衡状態にあるの