場の理論

2008年2月29日 (金)

ネーターの定理と場理論

 古典力学は,一般に一般化座標を時間tの関数として(t)≡{qs(t)}と表わし,一般化速度d(t)≡{qsd(t)}≡{dqs(t)/dt}とするとき,それらの関数で表わされるラグランジアンL=L(t,,d)によって記述されます。

ここで,例えば流体や弾性体の"各位置における平衡位置からのずれ=変位"のように,上述の多体系の一般化座標(t)={qs(t)}の成分s(t)での離散的添字s(s=1,2,..,N)が3次元空間の位置を示す連続的パラメータに置き換えられ,一般化座標が(t)={q(,t)}で表現される場合を考えます。

このとき成分(,t)は時刻tでの空間位置における量,つまり場であると考えられ,これは時間tや空間の関数である,という意味で(t)={q(,t)}をφ(t)≡{φ(,t)}と表記することにします。 

 

そして,系全体のラグランジアンL=L(t,φ,φd)は添字=位置座標の近傍に(t,φ(,t),φd(,t))の密度で分布しているとみなします。

すなわち,L(t,φ,φd)≡∫(t,φ(,t),φd(,t))dと表現されるとして,(t,φ(,t),φd(,t))をラグランジアン密度と呼ぶことにするわけです。

 

この場合,は時刻tの関数として変動する粒子の軌道を表わす量ではなく,単に空間の位置座標を示す添字パラメータに過ぎないので,φd(,t)は,sddqs(t)/dtと同じく時間微分は添字に無関係なのでφd(,t)≡∂φd(,t)/∂tであり偏微分で定義されます。

そして,こうした連続体の場合には多体系の作用積分S[]≡∫L(t,,d)dtは,S[φ]≡∫L(t,φ,φd)dt=∫(t,φ(,t),φd(,t))ddtと表現されます。

 

ここで,特に時空座標(,t)を相対論的なミンコフスキー空間の4次元座標としての相対論的に共変な表現xμ(x0,)≡(ct,) (cは光速)に変更すれば,場φ(,t)はφ(x)と表記されます。

 

この表現では,tとはパラメータとして対等とされるのでL(t,φ,φd)=∫(x,φ(x),∂μφ(x))d,およびS[φ]=∫(x,φ(x),∂μφ(x))d4xなる表現に変わります。ただし∂μφ≡∂φ/∂xμです。

さらに,一般に場φは,弾性体の変位や流体の歪み速度,あるいは電磁場であれば,それらの場は3次元,あるいは4次元のベクトルやテンソルの場であり,また量子論に移行すればスピノルである場合もあります。

 

そこで,スカラー場である場合も含めて,φ(x)の代わりにφi(x)(i=1,2,..,N)と書いて,ラグランジアン密度が(x,φi(x),∂μφi(x)),作用積分がS[φ] =∫(x,φi(x),∂μφi(x))d4xとなるように一般化しておきます。

そして,多体系が,ある無限小変換t*=t+ετ,qs*=qs+εξs(ただしε>0 は任意の無限小パラメータ)に対して理論的に不変であるというようなネーターの定理の前提としての対称性変換の表現は,連続体の系での場の量に対しては次のように拡張変更されます。

 

すなわち,時空座標の変換xμ*=xμ+εημ,およびそれと独立な場の変換φi*(x)=φi(x)+εgij(x),∂μφj(x))があり,結果として,座標の変分δxμ=εημと共に場のリー変分δLφi(x)=εGij(x),∂μφj(x)))=εgij(x),∂μφj(x))-ημμφi(x)があるという条件下で,S[φ]=S[φ*]が成立する,という形で与えられます。

このことはリー変分としてのラグランジアン密度の変化分が高々全微分であること,つまり,恒等的にδ(x,φi*(x),∂μφi*(x))-(x,φi(x),∂μφi(x))=ε∂μμj(x),∂νφi(x))なる形に書ける関数μj,∂νφi)が存在することを意味します。

実際=ε∂μμj,∂νφi)なる形式であれば,S[φ]=S[φ*]が成立し,特にε→ 0 ならδ→ 0 です。そこで以下では逆に作用積分に対してS[φ]=S[φ*]が成立するならδ=ε∂μμj,∂νφi)なる形式に書けることを証明します。

[証明]作用積分の任意の積分領域においてS[φ]=S[φ*]が成立するなら,φ,およびφ*の変分に対するSの停留性δS=0 から得られる,両者のオイラー・ラグランジュ方程式,{∂/∂φi(x)}-∂μ[∂/∂{∂μφi(x)}]=0 ,および{∂/∂φi*(x)}-∂μ[∂/∂{∂μφi*(x)}]=0 は,それぞれφi(x),およびφi*(x)に対して同一の方程式になります。

 

 それ故,ラグランジアン密度(x,φi,∂μφi),および(x, φi*,∂μφi*)は,それぞれφ,およびφ*について同じ関数形で与えられると思われます。そこで同一の関数記号で表現していいわけです。

そして(x,φi*,∂μφi*)を,φi,∂μφiの関数と考えて,これを*(x,φi,∂μφi)と書けば,S[φ]=S[φ*]ですから,φの変分に対するSの停留性δS=0 から,{∂*/∂φi(x)}-∂μ[∂*/∂{∂μφi(x)}]=0 も成立します。

 

これは当然,{∂/∂φi(x)}-∂μ[∂/∂{∂μφi(x)}]=0 なる方程式と関数形としても同一です。

 

したがって,c(ε)をεに依存する比例係数として,恒等的に(∂*/∂φi)-∂μ{∂*/∂(∂μφi)}=c(ε)[(∂/∂φi)-∂μ{∂/∂(∂μφi)}] (ただし,c(0)=1)がφi,∂μφi,∂μνφiの恒等式として成立するはずです。

 

δ*なので,これも同じオイラー・ラグランジュ方程式を満たしますから,f(φ,∂μφ)≡*-c(ε)=δ{c(ε)-1}とおけば,(∂f/∂φi)-∂μ{∂f/∂(∂μφi)}≡0 は恒等式です。

 

これは,(∂f/∂φi)-(∂/∂φj){∂f/∂(∂μφi)}(∂μφj)-{∂/∂(∂νφj)}{∂f/∂(∂μφi)}(∂μνφi)≡0 と書けます。

左辺の(∂μνφi)の係数はゼロでなければならないから,{∂/∂(∂νφj)}{∂f/∂(∂μφi)}+{∂/∂(∂μφj)}{∂f/∂(∂νφi)}≡0 です。

 

したがって一般にf(φ,∂μφ)=g(φk)+hμik)∂μφj(x)+Σl=24j1j2..jl;μ1μ2..μlk)∂μ1φj1μ2φj2..∂μlφjlと書けるはずです。

 

ここでhj1j2..jl;μ1μ2..μlk)は添字j1,j2,..,jlおよびμ12,..,μlに関して,それぞれ別々に反対称です。

また,(∂μφi)の係数もゼロなので,∂gk)/∂φi0 ,∂hμi/∂φj-∂hμj/∂φi0 です。

 

さらに(∂f/∂φi)-(∂/∂φj){∂f/∂(∂μφi)}(∂μφj)≡0 で(∂f/∂φi)から項(∂hj1j2..jl;μ1μ2..μl/∂φj)∂μ1φj1μ2φj2..∂μlφjlが生じ,-(∂/∂φj){∂f/∂(∂μφi)}(∂μφj)から項-(∂hj1j2..jl;μ1μ2..μl/∂φj)∂μ1φj1μ2φj2..∂μlφjl(∂μφi/∂μφj)がl個得られます。

 

後者はi=jの項が前者と相殺します。後者の残りはどれかのjsがj,μsがμと一致してμsφjsμφjに置き換わります。

そして,これらの置換は添字μとjについて同時になされるため,これら(l-1)個の項の符号は係数の添字の順序をそろえたとき全て同じ符号を取るはずですから,係数がゼロである必要があるので,∂hj1j2..jl;μ1μ2..μlk)/∂φj0 (l≧2)です。

以上から,場φi,(∂μφi)の汎関数としてはg=定数,そして全てのiについてhμik)=(∂wμk)/∂φj)なるφkの関数wμk)が存在します。また,hj1j2..jl;μ1μ2..μlk)もφkに依らない量,すなわち定数です。

結局,f(φ,∂μφ)=g+∂μ[μk)+Σl=24j1j2..jl;μ1μ2..μlk)φjμ1φj1μ2φj2..∂μlφjl]と書けることがわかりました。

 

以上から,あるxの関数Wが存在してf(φ,∂μφ)=∂μW+gと書けます。

 

f(φ,∂μφ)*-c(ε)=δ{c(ε)-1};(0)=1であってε→ 0 ならδ→ 0 により,ε→ 0 なら恒等的にf→ 0 となるので,これを考慮するとεは無限小でその2次以上は無視できるため,f(φ,∂μφ)=ε[∂μ^+g^]と書いてよいと思われます。

すなわち,δ{c(ε)-1}=ε[∂μ^+g^]です。g^はg^=∂μ(g^xμ/4)と書くこともできるので,δ{c(ε)-1}=ε∂μ[W^+g^xμ/4]とも書けます。

 

このとき,[φ*]-S[φ]=∫(δ)d4x={c(ε)-1}4x+ε∫g^d4ですから,これが常にゼロであるためには(ε)=1,かつg^≡0 が必要です。

 

これから,δ=ε∂μ^となりますから,W^を改めてμj,∂νφi)と書けば,δ=ε∂μμj,∂νφi)と書けることになります。

 

(証明終わり)

他方,単純に変換x=xμ+εημi*(x*)=φi(x)+εGij,∂μφi)の下でのリー(Lie)変分としてのラグランジアン密度の変分はδ(x,φi*(x),∂μφi*(x))-(x,φi(x),∂μφi(x))=(∂/∂φi)εGij,∂μφj)+{∂/∂(∂μφi)}ε∂μij,∂μφj)-(∂μ)εημとなります。

ここでオイラー・ラグランジュ方程式(∂/∂φi)-∂μ{∂/∂(∂μφi)}=0 によって(∂/∂φi)をμ{∂/∂(∂μφi)}で置き換えるとδ=∂μ{∂/∂(∂μφi)}εGij,∂μφj)+{∂/∂(∂μφi)}ε∂μij,∂μφj)-(∂μ)εημ=ε∂μ[{∂/∂(∂μφi)}Gij,∂μφj)-ημ]となります。

 

ただし,時空座標の変換x=xμ+εημにおけるパラメータημは点xに依らない定数であるとしています。

そこで,δ=ε∂μ[{∂/∂(∂μφi)}Gij,∂μφj)-ημ]=ε∂μμj,∂μφi)となります。

 

εは任意の正の数なので,∂μ[{∂/∂(∂μφi)}Gij,∂μφj)-ημμj,∂μφi)]=0 が成立します。そこでjμ(x)≡{∂/∂(∂μφi)}Gij,∂μφj)-ημμj,∂νφi)と置けばこれはカレントjμ(x)の保存∂μμ0 を意味します。

 

こう定義されたカレントjμ(x)をネーター・カレント(Noether current)と呼びます。

この保存カレントから,Q≡∫j0(,t)dなる量Q=Q(t)を定義するとdQ/dt=0 となります。Qはカレント密度(,t)に対応する保存チャージです。

 

そして,この保存量Qは古典論の物理量としても量子論の演算子としても,この対称性の無限小変換の生成子(generator)になっています。

 

すなわち,古典論ではi(x),Q]P.B.=Gij(x),∂μφj(x)),量子論では[u,v]P.B.=[u,v]/(ihc)なる対応原理で,(i/hc)[i(x)]=Gij(x),∂μφj(x))を満たします。

ここに,[u,v]P.B.ポアソンの括弧式です。これは多体系では,[u,v]P.B.≡Σs[(∂u/∂qs)(∂v/∂ps)-(∂u/∂ps)(∂v/∂qs)]と定義されますが,連続体の場の理論では場φi(x)の共役運動量をπi(x)=πi(φ,φd)≡/∂(∂0φi)として,[u,v]P.B.≡Σi[(∂u/∂φi)(∂v/∂πi)-(∂u/∂πi)(∂v/∂φi)]と定義されます。

 

また,[u,v]P.B.=[u,v]/(ihc)なる量子論の演算子としての対応を示す記号[u,v]は,交換子を示します。つまり,[u,v]≡uv-vuです。

保存チャージQ=∫j0(,t)dが対称性の無限小変換の生成子になること,すなわち,i(x),Q]P.B.=Gij(x),∂μφj(x)),あるいは[Q,φi(x)]P.B.=-Gij(x),∂μφj(x))なる関係式を満たすことも以下で証明してみます。

[証明]ラグランジアン密度は時空の一様性に対応して位置座標xに陽には依存しないとしてi(x),∂μφi(x))と書きます。

 

 これの一般的形はを運動エネルギー密度,を位置エネルギー(ポテンシャル)密度としてのように表現されるとすれば,一般に=(1/2)Aijμν(φ)∂μφiνφj+B(φ)∂μφi+c(φ)なる形で表現できます。

 

 そして,φi*(x)=φi(x)+δφiなる無限小変換をδφi=εGj(x),∂μφi(x))≡ε{Di(φ)+Ei(φ)∂μφj}とします。

 このとき=(∂/∂φiφj{∂/∂(∂μφi)}δ(∂μφj)です。また,δ(∂μφj)=∂μ(δφj)=ε{(∂Di/∂φk)μφk(∂Ei/∂φk)νφjμφk+Eiμνφl}です。

 

δ=ε{(1/2)(∂Aijμν/∂φk)μφiνφj(∂B/∂φk)μφi(∂c/∂φk)}{Dk(φ)+Ekjμlλ(φ)∂λφl}+ε(Aijμννφj+B){(∂Di/∂φk)μφk(∂Ei/∂φk)μφkλφl+Eiμλφl}です。

一方=ε∂μμj,∂νφi)=ε[(∂μ/∂φk)∂μφk{∂μ/∂(∂νφk)}∂μνφk]とも書けます。これらのδの表式では両辺は恒等的に等しく,(∂μ/∂φk)は∂νφkの2次式,{∂μ/∂(∂νφk)}は∂λφlの1次式です。

 

したがって,μj,∂νφi)は高々∂νφkの2次式です。

 

そこで,μμj,∂νφi)≡(1/2)αijμνλ(φ)∂νφiλφj+βiμν(φ)∂νφi+γμ(φ)なる形に書けます。

 

それ故,δ=ε∂μμj,∂νφi)=ε[(1/2)(∂αijμνλ/∂φk)νφiλφj(∂βiμν/∂φk)νφi(∂γμ/∂φk)]∂μφk+εijμνλλφj+βiμν)∂μνφiが得られます。

δの2種類の表式が恒等的に等しいことから,Aijμνiνφjμλφl=αijμνλλφjμνφi,かつiμλφl=βiμνμνφiです。

 

それ故,αijμνλ=Aljμλlが成立します。この式の左辺はμ,νについて反対称なので右辺もそうです。そしてまた,βiμν=Blも成立します。

一方,(1/2)Aijμν(φ)∂μφiνφj+B(φ)∂μφi+c(φ)より,πi(x)≡πi(φ,φd)=/∂φidij0ν(φ)∂νφj+Bi0(φ)=Aij00(φjd+Aij0k(φ)∂kφj+Bi0(φ)です。

 

それ故,x0=y0の同時刻ではi(x),φj(y)]P.B.=Σk[(∂πi/∂φk)(∂φj/∂πk)-(∂φj/∂φk)(∂πi/∂πk)]=-δijδ(),同様に[πi(x),πj(y)]P.B.=[φi(x),φj(y)]P.B.=0 です。

 

i(x),φj(y)]P.B.=-δijδ()のように右辺にディラック(Dirac)のデルタ関数が現われるのはポアソン括弧式の定義における微分:(∂πi/∂φk),(∂φj/∂πk),(∂φj/∂φk),(∂πi/∂πk)etc.が,いわゆる汎関数微分であるからです。

したがって,-δijδ()=[πi(x),φj(y)]P.B.=[ik00φkd(x),φj(y)]P.B.ik00[φkd(x),φj(y)]P.Bですから,係数の行列A≡{ik00}を考えると,一般にはこれの逆行列A-1が存在するため[φid(x),φj(y)]P.B=-(A-1)ijδ()が得られます。

一方,ネーター・カレントはμ(x)≡{∂/∂(∂μφi)}Gij,∂μφj)-μj,∂νφi)なので,j0(x)=πi(x){Di(φ)+Eiμφj}-0となります。ここに0(1/2)αij0νλ(φ)∂νφiλφj+βi0ν(φ)∂νφi+γ0(φ)です。

 そして,これから具体的に保存量Q=Q(t)≡∫j0(x)dを構成してポアソン括弧を作ると,[,φi(x)]P.B.∫d[0(y),φi(x)]P.B=-{Di(φ)+Eiμφj}-πllj0(A-1)ji(1/2)αkj00λλφj(A-1)ki(1/2)αkj0ν0νφk(A-1)jiβk00(A-1)kiとなります。

 

 ところが,πllj0(A-1)ji=Alk0νlj0νφk(A-1)ji+Bl0lj0(A-1)jiであり,(1/2)αkj00λλφj(A-1)ki(1/2)αkj0ν0νφk(A-1)jiβk00(A-1)kilk0νlj0νφk(A-1)ji+Bl0lj0(A-1)jiなので,これらの項は相殺して消えます。

以上から,[,φi(x)]P.B.=-{Di(φ)+Eiμφj}=-Gij,∂μφj) が成立することが示されました。

 

(証明終わり)

ちょっとだけ,量子論に言及すると,(i/hc)[,φi(x)]=ij,∂μφj)ですからU(ε)≡exp(iεQ/hc)なる演算子によるユニタリ変換でU(ε)φi(x)U(ε)-1φi(x)+ε(i/hc)[,φi(x)]=φi(x)+εGij,∂μφj)と変換されるいう意味で,量子論でもQはこのリー群の生成子になるというわけです。

 

量子論でのより詳細な扱いについては,2007年8/7の記事「場の演算子とLie(リー)群の生成子」 http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_01e7.html を参照してください。

 

なお,本記事は自身が1995年4月に作成したノートを参考にして書きました。

  

参考文献:九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館)

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