102. 力学・解析力学

2019年1月12日 (土)

記事リバイバル⑦(WKB近似・Hamilton-Jacobi・経路積分)

※このブログの過去記事の中から私自身がこれは興味深い 

思ったモノを再掲載しているシリーズの第7弾です。
 

今回は2006年10/8の記事: 

「WKB近似・ハミルトン-ヤコービ方程式・経路積分」 

から全文丸々コピーです。

10年以上も前の記事だからといっても,別にモウロクしたわけでもなく,

むしろ老人性のサバン症候群ではないか?と思うくらい頭だけは若い

ようです。ただし気持ちと裏腹に視力や体が思うように働いてくれない

のがナサケナイですね。調子イイ日と悪い日があります。

昨年5月から8月そして11月14日から1ヶ月の入院中は,思い付きで

アマゾンで購入したハーモニカを吹いてヒマツブシしてました。

幼稚園か小学校のころに吹いてたダケですが。。なぜかメロディー

を吹くのは音符など参照しなくても自由にできるようで童謡はモチロン

「涙そうそう」や「合衆国国歌」など。。私,音感あるのかな?

楽器演奏は認知症の予防にもイイらしいです。

 クラシックも「小夜曲」や「主よj人の望みの喜びよ」くらいは楽に吹け

ましたが,速い曲は練習しても少しムズカシイですね。


 昨日アップした過去記事を読みやすいように再編集しているうち

文字化けがひどくなったので削除して結局編集なしで丸写し。。

以下が過去記事再掲載です。

 
今日は量子論におけるWKB近似が,なぜ準古典近似と呼ばれるのか,を解析力学のハミルトン・ヤコービ(Hamilton-Jacobi)の方程式と関連付けて説明し,さらに経路積分との関連についても手短かに述べてみたいと思います。

 まず,古典力学の力学系での一般化座標をqr(r=1,2...n)とし,系を記述するLagrangian(ラグランジアン)をL(,d,t)とします。

 

 ここで,はqr全体を総称しddotの時間による微分:

rd≡(dqr/dt)の全体を意味します。

 さらに,pr≡(∂L/∂qrd)を一般化運動量と定義します。

 

 このr=(∂L/∂qrd)を解いてrdrとprの関数で表わしたものを,式:Hrrd-Lの右辺のqrd に代入したものを系のHamiltonian:H(,,t)と定義します。

 

 このとき,元々のNewtonの運動方程式は,これをD'Alembertの原理(D'Alembert)で加工して一般化し,一般化座標の方程式に変換したn個のEuler-Lasgrange方程式:[d(∂L/∂qrd)/dt]-∂L/∂qr0 に取って代わられます。

 

 さらに,rd≡(dqr/dt)=(∂H/∂pr),prd≡(dpr/dt)=-(∂H/∂qr)なる形の2n個の1階微分方程式=Hamiltonの正準方程式に変換されます。

 ほとんどのH(,,t)では,一般化座標の変数pr,qrを計算に都合がいいような新変数Pr,Qrに変換して,新しいハミルトニアンとしてK(,,t)を作り,Hamiltonの正準方程式が形としてそのまま保存されるようにできます。

 

 つまり,rd=(∂H/∂pr),prd-(∂H/∂qr)がrd≡(dQr/dt)=(∂K/∂Pr),Prd≡(dPr/dt)=-(∂K/∂Qr)と同値になるようにできます。こうした変換を正準変換と呼びます。

 このとき,新変数による新しいLagrangianをL'=∑Prrd-Kと書けば,元のLagrangian:L=rrd-Hとの間に,ある関数Wが存在して

L=L'+(dW/dt)なる等式が成り立つはずです。

 

 これは,変換の下で理論が不変に保たれるための必要十分条件です。

 

この結果,rrd-H=∑Prrd-K+(dW/dt)と書けます。

 

 関数W は,tの他には,,,の4n個の変数の関数ですが,このうちで独立な変数は2n個だけですから,例えばW=W(,,t)と独立変数を選んでみます。

 

 このときは,dW=∑prdqr∑QrdPr(K-H)dtなる式によってpr=∂W/∂qr,Qr=∂W/∂Pr,K=H+∂W/∂tとなります。

 次に,特に変換によって特異になる危険性を犠牲にしてもHamiltonian:Kが恒等的にゼロになる,つまりK≡0 となる特別な正準変換があったら,と想定してみます。

 

 このときには,Hamiltonの正準方程式は,Prd≡(dPr/dt)=0 ,rd≡(dQr/dt)=0 となり,座標点は全て時間的に静止していてPr=αr(定数),r=βr(定数)とすることができて最高に好都合です。

 

 そして,このとき元の正準変換に戻ってみると,

(,,t)=(β,α,t),(,,t)=(β,α,t)

となり,n個の積分定数または初期条件を含む解が求まるわけです。

 

 つまり"一般化座標の時間的変化=軌道"は全て決まる,あるいは問題は完全に解ける,ことになります。

 そして,W=W(,,t)=W(,α,t),pr=∂W/∂qrr=∂W/∂αrと書くこともできます。

 

 そこで,逆にこうした都合のいい関数Wを求めるための方程式は,

 H+∂W/∂t=K=0 ,つまり,H[,∂W(,t)/∂q,t]+∂W(,t)/∂t=0 で与えられると考えます。

 

 そして,微分方程式:H+∂W/∂t=0 を解くことによって,積分定数αを含むW(,α,t)が得られると考えることもできるわけです。

 

 この方程式:H+∂W/∂t=0 をHamilton-Jacobiの偏微分方程式と呼びます。

 特にHamiltonian:Hが時間tを陽には含まないときは,Hは固定した,に対しては時間的に一定となるので,H(,)=E (定数)と書くことができます。

 

 Hがtを陽に含まない場合には,Noether(ネーター)の定理により,右辺の定数Eがいわゆるエネルギーであり,時間的に変化しない保存量であることはよく知られた事実です。

 

 このとき,H(,)=Eにより,Hamilton-Jacobiの偏微分方程式:H+∂W/∂t= 0 はW(,α,t)/∂t=-E (一定)となりますから,

 W(,α,t)=S(,α)-Etと書いてよいことになります。

 

 pr=∂W/∂qr=∂S/∂qrなので,結局(,∂S/∂)=E (ただし=∂S/∂)と表現できて,方程式は少し簡単になります。 

こうしてHがtを陽に含まない場合,波動光学からのアナロジーでWが一定の面を,ある力学的波動の位相(phase)が一定の面を表わすものであると考えてみます。

 

W=(S-Et)という量から,"Sと同じ単位=(エネルギー×時間)"を持つある比例定数:hcを用いて,単位のない変数(W/hc)={(S/c)-(E/hc)}を作ります。

 

これを位相として,ω=E/hcを角振動数(ω=2πν)とするような波動を考えることにし,その波動を表わす量をψと定義します。

 

すなわち,ψ=Aexp(iW/c)=Aexp[i{(S/c)-ω}t]とします。

ただし,ω≡E/hcです。つまり,E=hcω=hνです。

 

特に1変数のみの系では,=∂S/∂=∇Sから,

ψ=(∇S)ψ=(-ic∇ψ)となるので,記号的には

~(-ic)と見なすことができます。 

cをPlanck定数=(h/2π)と同一視すれば,ψは量子力学の波動関数に対応し,Hamilton-Jacobiの偏微分方程式は正にSchödinger(シュレーディンガー)方程式になります。

 

古典力学と量子力学との間には大きな谷間(gap)があり,それぞれが独立な"法則=公理"を持つ独立な理論なので,古典力学から何の飛躍もなく量子力学を導くことは不可能です。

 

しかし,20世紀初頭の前期量子論の段階では上記のような推論がなされていたと思われます。 

WKB近似という量子力学の問題を解く1つの近似法:つまり,"時間を含まない定常波動関数u(x)をexp[iS(x)]なる形式で表現して近似するという方法"が準古典近似(semi-classicl approximation)という名称で呼ばれているのはこうした理由からでしょう。

ところで,上述のS(,α)をLagrangian:Lで表わすと,

S=∫L(,d,t)dtと書けます。

 

これは,謂ゆる作用(action:作用積分)と呼ばれる量です。

 

つまり,Sは"系の運動はの変分δに対する作用Sの変分がゼロ:

δS=0 となる,またはSが停留値を取る,という条件で与えられる"という1つの基本的な"変分原理=最小作用の原理"の源となる作用関数になっています。

そこで,量子力学でFeynmanの経路積分を用いた理論展開で,時間発展の確率振幅が作用:Sによって,<f|exp{-(i/c)H(tf-ti)}|i>=A∫exp[(i/c)S((t))]と表現されることが思い出されます。

 

私見では,これはがあらゆる分岐した経路にわたる積分であるという意味で,多世界解釈にもつながると考えているのですが,それはさておき,経路積分の意味を説明します。

 

 

この経路積分の公式は,作用SをS((t)) ~ Δt∑jNL[(tj),{(tj+1)-(tj)}/Δt]と分割し,中間状態の射影演算子|(tj)><(tj)|を考えたとき,中間状態の完全性を利用すれば得られます。

 

中間状態の完全性とは,あらゆる座標の全空間での"総和=積分"が1になること,∫d|><|=1であることです。

 

よって,遷移確率振幅<f|exp{-(i/c)H(tf-ti)}|iを時間分割してj+1|exp{-(i/c)HΔt}|j>と細分化した際,各細分時刻tjにおいて,∫d(tj)|(tj)><(tj)|(=1)を挿入しても結果は変わりません。

 

そして,各々の細分では<j+1|exp{-(i/c)HΔt}|j=<j+1|exp{-(i/c)(tj){(tj+1)-(tj)}+(i/c)ΔtL[(tj),{(tj+1)-(tj)}/Δt]|j>と表現できます。

 

ここで,j(tj),Δt≡(tf-ti)/Nであり,ti≡t0<t1<t2<...<j<tj+1<...<t≡tf です。

 

結局,遷移確率振幅は<f|exp{-(i/c)H(tf-ti)}|i>=ΠjNj+1|exp{(i/c)ΔtL[(tj),{(tj+1)-(tj)}/Δt]|j>となります。

 

この式の右辺でN → ∞とした極限が経路積分です。

そして,この経路積分の計算結果においては,被積分関数の指数関数の中で最小作用の原理を満たすδS=0 の部分の寄与が最大になります。

 

つまり,古典的な軌道に相当する経路が"遷移確率振幅=伝播関数(propagator)"に大部分の寄与をすることがわかっています。

 

これは,古典論と量子論の隙間(gap)を埋める話として一つの注目に値する論点であると考えられます。

 

参考文献:大貫義郎著「解析力学」(岩波書店) 並木美喜雄著「解析力学」(丸善) 深谷賢治著「解析力学と微分形式」(岩波書店)

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2017年10月 9日 (月)

力学覚え書き(その1)

ノーベル医学生理学賞が体内時計。。物理学賞が重力波 

ということで,思いついたことを少し。。
 

最初の思いつきは, 体内時計の時間が今の地球自転周期24時間と 

1時間のずれがあるらしい,という話と月や太陽の地球への重力 

による潮汐力の効果で地球の自転速度が年々僅かずつ遅くなって 

いるという話が結び付く?と浅薄な邪推をしたことでした。 

しかし,これらは向きが逆の話で勘違いでした。。
 

宇宙空間に月と地球だけがあるとして月を質量がmの質点で近似 

地球を質量がMで自転軸のまわりの慣性モーメントがIの剛体球で 

近似,地球自転の角速度をω1,月が地球の周りを回る軌道を円軌道 

近似して回転角速度をω2とします。
 

自転する地球の半径をa,月が公転する半径(月と地球の距離) 

Rとすると,月と地球は万有引力:F=-GMm/Rで互い 

引っ張り合っています。
 

このとき,地球のスピン角運動量は,S=Iω1,月の公転の軌道 

角運動量はL=mR2ω2で与えられます。
 

普通に運動方程式を立てると,/dt=,/dt=- 

です。は月が地球に及ぼすトルク(力のモーメント)です。
 

系の総角運動量:(),系には外からのトルクが無く閉じて 

いると仮定しているので保存されます。 

すなわち,()/dt=0です。
 

地球の自転軸と月の公転軸の角度(地球の赤道面が公転面と 

なす角度)をθとすると,N=FRsinθ 

(-GMm/2)sinθ  

=-(GMm/)sinθですから,地球の自転軸のまわりの 

慣性モーメントIと月の質量mは一定とすると

解くべき方程式系は,(dω1/dt)=-(GMm/)sinθ(1), 

および,{(2ω2/dt)(GMm/)sinθ(2),あるいは, 

ω2(dR/dt){GM/(22)} sinθ-R(dω2/dt)(2)’

です。
 

(2),公転角速度ω2の変化が小さいとして無視する近似では 

月と地球の距離Rが増加して離れていくことを意味する式

になります。
 

他方,剛体球近似では地球半径がaなら,I=(2/5)Ma2ですから 

dω1/dt=-{5Gm/(22)sinθの率で自転が遅くなります。
 

大体の見積りは,今の自転周期がT=24時間=24×3600秒で 

ω12π/,地球半径:a~ 6400km 6.4×106, 

万有引力定数が:G ~ 6.67 × 10-11 m2 kg-2 月の質量  

m~ 5.75×1022kg,月と地球の距離:R ~ 384km

3.84×108 

θ~23.5度=23.5π/180,sinθ~ 0.4 を代入して計算すると 

dω/dt=-Gm sinθ/(Ra2) ~ -10-11くらいです。
 

(※地軸の傾きは23.4度とか23.5度とか小学校で習ったけど月の 

公転面の傾きθとしてこれを採用してもいいのかな?)
 

今から1万年=3.15×1011秒後ではω1の減少はΔω1 -3, 

10万年~ 3.15×1012秒が経つと,Δω1 ~ -30です。
 

現在は,自転角速度はω124×3600/(2π)13758,ですが, 

今から10万年経つと,30/1375831/600の割合で角速度が小さく 

なります。自転周期=1日が24時間=86400秒ですから,その1/600 

は約150秒=230秒です。
 

大体の見積りでは10万年当たり.これだけ1日が延びる勘定です。 

単純計算では,哺乳類,人類誕生の200万年前の自転周期-1日は 

23時間くらいで,今よりも短いようです。。。
 

ありゃ昔の方が短かいのか??と,実際にはここで初めて勘違いに 

気付きました。
 

体内時計の1日は25時間に近いことが知られているので,最初. 

これは昔の方が1日が長くて,体内時計がこれに同期していた? 

と考えたのでしたが.実は昔は今より回転が速かったのなら1日が 

短いので反対でした。。相変わらず,オッチョコチョイです。
 

ところで,この計算自体合ってるのかな?自信はありません。

この頃は本当に字だけの本が読みたいけど,老眼鏡でも見えず, 

判読疲れで細かい本は読めません。理科年表でさえ読み辛く

この頃は記憶に頼るか,ネットで調べて拡大する方が早いです、

とても不便です。
 

まあ,そういう意味では,計算しなくてもネットで探せば何でも 

ある時代ですが,自分で確かめないとダメという性分なので。。
 

しかし,2億年続いた恐竜の滅亡は地磁気のNとSの逆転が原因? 

とか言われているらしいし,月以外に太陽の影響もあるし氷河期も 

あったし。。月が衛星になって何十億年も同ペースで,外から突然 

の衝撃なども受けず,静かに閉じた系として進展してきたのか?も 

疑問ですが。。
 

ところで,本ブログでは初等力学について.余りり論じてなかった 

ので,これを機に剛体や質点系力学についておさらいしてみます。
 

これも,眼が悪くて参考書をろくに読めないので,主として記憶に 

頼りますが。。
 

n個の質点から成る質点系があるとし,そのi番目の粒子質量を 

i,位置座標をiとして,その速度を,i=di/dtとします。
 

その運動量をi=miiで定義すると,各々の質点が従う古典論の 

Newtpnの運動方程式はdi /dt=iです。 

ここで,iは質点iに作用する力です。
 

質点iに作用する力:i,n個の系の外部から作用する外力exti 

と系の他の質点j(j≠i)がiに及ぼす内力:intjiの総和の和 

に分割されます。すなわち,iexti+∑j≠iintjiです。
 

系内の粒子同士で互いに及ぼす内力:intjiは電気力.重力のような 

もので.作用・反作用の法則から,intji=-intij、および, 

(i)×intij0 が満たされます。
 

ここで,双質量をM=Σmiとして,系の重心の位置ベクトルを 

=Σmii/Mで定義します。
 

重心速度は,=d/dt=Σmii/,重心運動量は=M 

=Σiで与えられます。
 

i /dt=exti+∑j≠iintjiを総和することで,重心運動 

の方程式:dP/dt=Σiextiが得られます。
 

他方,質点iの原点の回りの角運動量をii×iで定義すると, 

i/dt=(i×i)/ii×(i/dt) 

i×ii×exti+∑j≠i(i×intji) が成立します。
 

系の総角運度量を=Σii=Σi(i×i)とすると, 

/dt=Σi(i×exti)+Σij≠i(i×intji) 

=Σi(i×exti)=ΣiextiN と書けます。
 

ここで,位置にある質点に働く力がのとき,×をその 

質点にかかる原点:Oの回りのトルク(力のモ-メント)と呼ぶと, 

extiは質点iにかかる外力だけのトルクであり,はその総和 

を意味します。
 

最後の等式では,内力のトルクの総計がゼロを用いました。
 

何故なら,Σij≠i(i×intji)(1/2)[Σij≠i (i×intji) 

+Σjj≠i (j×intij)](1/2)Σi,j(ij)(ij)×Fintji0 

となるからです。
 

さて,今では通常の物質は全て微小な分子の集まりでできている 

ことを知っています。そして.その個数は我々の常温,常圧で1cm3 

の体積中に1022個も存在するオーダーなので,構成分子を質点と 

みなしても,物質の塊は莫大な個数の質点系です。
 

このとき,系の内力は基本的に電気力で,それは分子を束縛する 

分子間力と呼ばれています。
 

それ故,古典物理では物体を連続体近似することが多いようです。 

例えば,気体,液体,固体を弾性体,気体,液体をそれぞれ,圧縮性, 

非圧縮性の流体で近似したり,固体を剛体で近似します。
 

特に,剛体というのは弾性体的には応力が無限大で全く変形しない 

理想的な固体モデルです。したがって,その物体内での異なる2 

(原点Oともう1)の位置が指定できれば,その剛体の位置状態は 

完全に決まります。
 

そこで,この2点の6個の座標の軌道を求める独立な6個の方程式 

があり,これが解ければ 異なる2点の運動が定まります。 

それ故,剛体の運動を定めるには,6個の方程式が必要十分です、
 

ところで,ここまでの質点系の論議で,重心運動の方程式: 

dP/dt=Σiextiは独立成分が3個の方程式です。
 

また,方程式:/dt=Σi(i×exti)=Σiexti=N 

も独立成分は3個で.合わせて独立成分6個の方程式なので, 

これらを運動を決める必要十分な方程式と見ることができます。
 

1質点なら運動方程式は3個で十分だったのですが,大きさのある 

剛体モデルなら6個に増えます。
 

特に,原点Oを含む固定軸の回りを角速度ωで回転している剛体,

角運動量の総和:.回転軸をz軸にとる座標系で 

L=Σ(i×mii){Σmi(i2+yi2)}ω=Iω; 

I=Σmi(i2+yi2)と書けます。
 

このとき,Iを,このz軸のまわりの慣性モーメントと呼びます。
 

離散的なn個の質点でなく位置における密度がρ()の連続体 

ならI=∫3rρ()2sin2θ=2π∫d3rρ()4sin2θと 

書けます。
 

ただし,θは極座標表示:(,,) 

(sinθcosφ,sinθsinφ,cosθ) の極角です。
 

特に密度が一様:ρ()=ρで半径がaの球の自転軸のまわり 

の慣性モーメントなら,I=∫d3rρr2sin2θ 

2π∫0drρr4-11(cosθ)sin2θ=8πρa5/15です。 

そこで,質量がMならM=4πρa3/3よりρ=3/(4πa3)なので 

I(2/5)Ma2を得ます。


 

ここで特に,i=R+r~iと書いて,重心座標と相対座標 

を分離します。 

両辺をtで微分するとv=V+v~i です。すぐわかるように, 

Σii~i0 なる性質があります。
 

故に,総運動エネルギーTは,T=(1/2)Σmi,2 

(1/2)MV2(1/2)Σmi~i2+VΣmi~i 

(1/2)MV2(1/2)Σmi~i2となり,Tは重心運動エネルギー: 

(1/2)MV2と相対運動エネルギー:~(1/2)Σmi~i2 

に分離されます。
 

系全体が重心を含むある固定軸の回りを角速度ωで回転 

している剛体では, 固定軸をz軸に取ると,相対運動の速度 

がv~i(~i2+y~i2)1/2ω で与えられるので,
 

相対運動のエネルギー=回転エネルギーは, 

~(1/2)Σii~,2(1/2)Σmi~i2 

(1/2)Σ(~i2+y~i2)1/2ω2(1/2)~ω2 

で与えられます。
 

ここでは,~=Σ(~i×mi~i)=I~ω,;であり 

~=Σmi(~i2+y~i2)です。
 

例題として,高校物理で学んだような物体が自分の重みで斜面を 

下りてくる問題を考えます。
 

滑って下りてくるとき,物体を質量mの質点で近似して摩擦ゼロと 

すると.質点の速度vはニュートン力学の力学的エネルギーの 

保存則から斜面の最高点(出発点)からの降下高さhとすると, 

位置エネルギー減少分=mgh=(1/2)mv2=運動エネルギー 

の増加分ですから,その点での斜面上の速度の大きさは 

v=(2gh)1/2です。
 

しかし,一般には物体は質点じゃなくて,大きさがあります。 

斜面を下りてくるのがパチンコ玉のようなものとして半径が 

aの剛体球近似し,今度は滑りは全く無く完全に転がり下りる 

とし,蛇行せず直線的に転がるとして回転の角速度をωと 

してみます。
 

回転=aωで,慣性モーメントをIとすると回転エネルギ^ 

,(1/2)Iω2です。
 

球の中心=重心の速度の大きさも,v=aωですから重心運動の 

運動エネルギーは,(1/2)mv2(1/2)ma2ω2 です。 

故にエネルギー保存則は,mgh=(1/2) ma2ω2(1/2)Iω2 

あるいは,,mgh=(1/2) mv2(1/2)(/2)2 

(1/2){m+(/2)}2となり実質的に慣性モーメント分だけ 

降下速度が減少します。
 

球の公式:I=(2/5)ma2を代入すると(9/10)mv2=mgh=から 

v=(10gh/9)1/2です。
 

近似計算でしたが,半径が大きいほど,ゆっくり転がり下りてくる 

というっ常識に合っています。
 

ところで地球から月を見ると,常に一方の面しか見えず,これは 

自転周期と公転周期が全く一致しているためですが,地球への 

月の潮汐力の反作用の結果であるとされています。
 

実際の地球の海の潮汐は,月だけでなく太陽も影響して新月や満月 

では地球に対し両者がほぼ直線に並んで重力を及ぼすので気象に 

特有のタイムラグありますが,こうしたとき大潮になるようです。
 

一般に,月に限らず,どの衛星や惑星の自転-公転系でも長時間が 

経てば自転周期と公転周期が同期するところでバランスする 

という共鳴現象がある,ことを以前から聞いています。
 

量子論でのプランク定数による束縛電子の離散的軌道でもない 

だろうし古典軌道の固有周期運動が本当に整数比で安定になる 

のか?という疑問と.それが真ならその理由は何か?について 

興味津々ですが,生半可ではうまく計算できないので,そこらが 

詳しい天体力学の本が読めたら読むということでPendingにして 

終わります。

うらぶれ このみに ふくかぜかなし。。

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2016年1月17日 (日)

再掲載記事:解析力学の初歩

 今日は思うところあって2007年11/5の過去記事「解析力学の初歩」をそのまま再掲載します。

 このところ「Dirac方程式の導出(3)」の草稿を入院前,入院中もずっと書いていたのですが,。。。 

 この課題の最後の主題が電磁相互作用がある場合に,非相対論極限でDirac方程式から自動的に非相対論のPauliのスピン相互作用を含む方程式が再現されることの説明であり,それには電磁場がある場合の古典的な解析力学の定式化を復習する必要があったからです。

 まあ手抜きの一つではありますが。。^^;;

 ※以下,再掲載記事です。

今日は,最初はBerryの位相とAharanov-Bohm効果(AB効果)の関係などを論じることを計画していたのですが。。

 その前に,必要な「断熱定理」と関連してHamiltonianが時間tに陽に依存する場合の解析力学の定式化が私は気になりました。

 

 それを考えているうちに,我ながら解析力学の基本的なことの理解が完全ではないことに気付いて,復習してみようという気になったので記事=日記にします。

 

 イヤ,ここで記事に書いていることのほとんどは,私は既に何度も勉強したり考えたりしたことがあることばかりなんですよ。

 

 でも,そうした論題が出てくるたびに,もちろん,文章や数式の一言一句まで内容を全部記憶しているわけじゃないし,新たな疑問や過去にはヒョットして勘違いしていたのじゃないか?という疑いが出てきます。

 

 特に物理学や数学に限らず,モノを知るのには必要な知見を全部記憶する必要はなく(そもそもコンピュータでも不可能でしょう),

 

 どういうときに,どこのどういうモノを調べればいいか?ということがわかり,そういう参考文献を探して読んだときに,小時間のうちに疑問を解決できる能力を体得するのが,過去に学校で学んだ意味だと思っています。

 

 ですから,気になったらその都度調べたり考えたりするだけです。

 

 以下は,主として自分のためのおさらいなので,ここで論じている定式化の手順は,必ずしも標準的な教科書の順番ではなく私の思い付きの順になっています。

 通常のNoether(ネーター)の定理で時間の一様性によって,"エネルギー=Hamiltonian"Hが保存されるという描像は,r(r=1,2,...,N)を自由度がNの一般化座標,pr(r=1,2,...,N)を一般化運動量とするとき,

 

 系のHamiltonian:H(p,q,t)がtを陽に含まないこと:

 H(p,q,t)=H(p,q)と書けることと同定されます。

 しかし,一般的な力学系においては力学的エネルギーが保存しない場合が存在することも事実です。

 

 これは,純粋な力学的エネルギーをHとするとき,その他に熱エネルギーとか,電気的エネルギーなどが存在して摩擦などの散逸により力学的エネルギーの一部が熱に転化して消散していく場合などが,それに相当します。

 もっとも素粒子のレベルまでの微視的な見方では,もはやエネルギーを力学的云々とか,種類ごとに分類する必要もなく,時間の一様性は常に確実に成立していて,Hamiltonian:Hは確かに時間tを陽に含むこともないので,全体としても微視的過程でもエネルギーの保存は常に正確に成立します。

一般に保存力場の場合には,一般化速度をqdr≡dqr/dtで定義すると,系のLagrangianL(,d,t)はL=T-Uで与えられます。

 

Tは運動エネルギーでT=(1/2)Σr,s=1Nrs()qdrdsなる2次形式で与えられ,Uは保存力場のポテンシャルで位置座標=(q1,q2,...,qN)の関数U=U()です。

そして,pr≡∂L/∂qdrであり,Hamiltonianは,

H=Σr=1Nrdr-L=Σr,s=1Nrs(q) qdrds(T-U)

=2T-(T-U)=T+Uとなります。

 

この場合にはHは系全体のエネルギーと一致します。

そして,Hがtを陽に含まないなら,∂H/∂t=0 ですから,

dH/dt=Σr=1N(∂H/∂qr)qdr+Σr=1N(∂H/∂pr)pdr

です。

 

pとqの微小変分に対するHの変分δHは,

δH=δ(Σr=1Nrdr-L)

=Σr=1N{δprdr +prδqdr}-δL 

です。

 

Lの変分δLは,

δL=Σr=1N{(∂L/∂qr)pδqr(∂L/∂pr)qδpr}

=Σr=1N{(∂L/∂qr)δqr(∂L/∂qdr)}δqdr

=Σr=1N(pdrδqr+prδqdr)で与えられます。

ただし,この式の導出仮定で,Euler-Lagrange方程式:

(d/dt)(∂L/∂qdr)-∂L/∂qr0 ,つまり,

∂L/∂qr=dpr/dt=pdrを用いました。 

したがって,δH=

Σr=1N[{δprdr +prδqdr}-{(∂L/∂qr)pδqr

(∂L/∂pr)qδpr}=Σr=1N(qdr δpr-pdrδqr)

となります。

 

それ故,これから直ちに,∂H/∂pr=qdr,∂H/∂qr=-pdr

というHamiltonの正準方程式が得られます。

以上から,∂H/∂t=0 のときには,

dH/dt=Σr=1N(∂H/∂qr)qdr+Σr=1N(∂H/∂pr)pdr0 ,

つまり"エネルギー=Hamiltonian"Hが時間tに依らない保存量であるというよく知られた性質が導かれるわけです。

ところが,運動方程式がEuler-Lagrange方程式:

(d/dt){∂L/∂(dqr/dt)}-∂L/∂qr0 で与えられるのは,

必ずしもLがL=T-U,U=U()と書ける場合に限定する必要は

ありません。

 

LagrangianLを一般のtを陽に含むL=T-V,V=V(,d,t)

なる形であると考えてもよく,この場合,Hamiltonian:

H=Σr=1Nrdr-L,r≡∂L/∂qdrもtを陽に含みます。 

例えば,電荷がeの荷電粒子1個の自由運動のHamiltonianを

0(,)とすると,それが電磁場の中にあるときには,

極小相互作用変換により

 

HamiltonianはH(,,t)=H0(-e,)+eφとなること

が知られています。

 

一般に電磁場は静的な場ではないので,電磁場のスカラーポテンシャルをφ,ベクトルポテンシャルをとすると,これらφ,は時間tを陽に含んでいます。

 

L=(d/dt)-H=(d/dt)-(-e)2/(2m)-eφ

となります。

 

これと=∂L/∂(d/dt)を用いると,

=m+e,≡d/dt,かつ

L=m2/2-eφ+eAvとなるはずです。

 

ここに,(,t),φ=φ(,t)であり,どちらもtを陽に含んでいると想定します。

これから導かれる荷電粒子の運動方程式は,と書き直した

Euler-Lagrange方程式:(d/dt)(∂L/∂)-∂L/∂=0

です。

 

これは,

d(m)/dt+ed/dt+e∇φ-e∇()=0

いう形になります。

 

ここで,

/dt=(∂/∂t)+(∇),=-∇φ-∂/∂t,

=∇Xであり,

××(∇X)=∇()-(∇)ですから,

結局,これはd(m)/dt=e+e(×)

です。

 

したがって,確かに通常の1荷電粒子が従うべき非相対論的なNewtonの運動方程式が得られました。

しかし,HからLを逆算するのは本末転倒で,運動方程式からLagrangian:Lを求め,然る後にH=(d/dt)-LによってHamiltonian:Hを導くというのが当然の道筋ですね。

 

実は,単に私自身が電磁場の中での荷電粒子の運動に対する

LagrangianLの形を忘れていたので,上のプロセスは,これを安易

に求める道を取ったに過ぎません。

とにかく,古典的電磁場の中では,

L=m2/2-eφ+eAv=T-eφ(,t)+e(,t)

となり,L=T-V,V(r,v,t)=eφ(,t)-e(,t)

となることがわかります。

 

そして,Hamiltonian:Hがtに陽に依存するので,このHは保存量

ではないことがわかります。

 

これは,今考えているHamiltonian:Hでは,

"全体系=粒子+電磁場"の中で,単に荷電粒子のエネルギーだけに

着目して,相互作用部分を除いては電磁場のエネルギーを全く考慮

していないためです。

実際,Hを系全体のHamiltonianとするには,電磁場のエネルギー

を表わす(1/2)∫(ε2+μ-12)dという項も含む必要が

あります。

 

ただ,=m+e,≡d/dtなる表式には,既に系の

運動量が粒子の運動量mと電磁場の運動量eの代数和で

与えられることを示してはいます。

さて,より基本的な定式化を行なうために,改めて一般のn個

の質点系から成る物理系に対するNewtonの運動方程式から

始めます。

Newtonの運動方程式はi番目の粒子の質量をmi,位置ベクトル

i,その質点iに働く力=(外力+内力)をiとすると,

 

i(d2i /dt2)=i (i=1,2,...n)なる式系で表現

されます。

 

そして,一般的な状況を考え,これが

fj(1,2,...,n)=0 (j=1,2,...,m)なる形で与えられる

m個の拘束(束縛)条件を満たすべきケースを想定します。

静力学では各作用点での力の釣り合い:i0 に対しては

仮想仕事の原理が成立します。

 

これは,釣り合いを保つためには,Σi=1niδi0 を満たす変位

のみが許される,という原理です。

 

これを直接に動力学に拡張すると,いわゆるD'Alembertの

原理としてΣi=1n{i-mi(d2i /dt2)}δi=0 なる式

が得られます。

 

さらに,ある時刻tにおけるm個の拘束条件:

fj(1,2,...,n,t)=0 (j=1,2,...,m)を,微小変位δi

に対してΣi=1n(∂fj/∂ii=0 が成立するという式で置き

換えてよい場合,

 

Lagrangeの未定係数法を利用すると,未定係数をλjとして,

上記,D'Alembertの原理は,

Σi=1n{i-mi(d2i /dt2)+Σj=1miλj(∂fj/∂i)}δi=0

なる形に帰着します。

 

すなわち,

 

Σi=1n{iΣj=1mλj(∂fj/∂i)-(d/dt)(∂T/∂i)}δi=0

 

と書けるわけです。

 

そして,i(x3i-2,x3i-1,x3i)と成分表示すると,

上式はδi=(δx3i-2,δx3i-1,δx3i)なる変分:

δxk(k=1,2,...,3n),の各々に対して独立に成立します。

 

m個のパラメータλjは,最後のm個のkであるk=3n-m+1,

3n-m+2,..,3nに対するm個の連立方程式:

kΣj=1mλj(∂fj/∂xk)-(d/dt)(∂T/∂vk)=0

の解として得られるとします。

 

こうして,N=3n-mとして,Nを対象の力学系の"自由度"

と呼べば,自由度の数Nだけの個数の独立な方程式:

Σk=1N{FkΣj=1mλj(∂fj/∂xk)-(d/dt)(∂T/∂vk)}δxk=0

が得られます。

ここで,改めて独立なN個の座標:qr(r=1,2,...,N)を用いて,

δqrを各時刻tのqrの変分としたときの,時間tに陽には依存しない

iの変分をδiΣr=1N(∂i/∂qr)δqrと表現すれば,

 

上の変分方程式は,

Σr=1N(rΣj=1mλj(∂fj/∂qr)-(d/dt)(∂T/∂qdr)

+∂T/∂qr)δqr=0 と変形されます。

 

ここに,rΣi=1ni(∂i/∂qr)で定義されるN個の量:r

一般化力と呼びます。

そして先に決定されたパラメータλjに対して,

rΣj=1mλj(∂fj/∂qr)を拘束力と呼び,いわゆる滑らかな

拘束:Σr=1Nrδqr=0 つまり,拘束力は仕事をしないと

考えると,

Σr=1N(r(d/dt)(∂T/∂qdr)+∂T/∂qr)δqr=0

と書けます。

 

この等式では,N個のδqrは全て独立なので,

(d/dt)(∂T/∂qdr)-∂T/∂qrrなる

Lagrangeの方程式の系が得られます。 

ここで,特にrΣi=1ni(∂i/∂qr)=(d/dt)(∂V/∂qdr)

-∂V/∂qrとなるようなV=V(q,qd,t)が存在する場合なら,

 

L=T-Vとおけば,(d/dt)(∂T/∂qdr)-∂T/∂qrrは,

Euler-Lagrangeの方程式(d/dt)(∂L/∂qdr)-∂L/∂qr=0

に一致します。

 

先の,電磁場の中での荷電粒子の運動についての考察から得られた

L=T-V,V(r,v,t)=eφ(,t)-e(,t)では,

 

電磁力:=e+e(×)が,上述のVに対する条件式:

=(d/dt)(∂V/∂)-∂V/∂を確かに満足しています。

 

今日は,取り合えず,私的には納得できたのでこれで終わります。

※以上,再掲載終了です。


 

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2011年4月17日 (日)

WKB近似,ハミルトン・ヤコービ方程式,経路積分(再掲)

 今日は,まあ,手抜きなのですが,過去の科学記事(バックナンバー)の中から我ながら秀逸と思った記事をもう一度表舞台に出してお茶を濁します。

 余談ですが私の思いつきの今日の一言:"性悪説"の時代(戒律を課し罰を与える旧約の神) →"性善説"の時代 (すべて全てを恕(ゆる)す新約の神)→??

 「沈黙は金,雄弁は銀(トーマス・カーライル)」,。。この言葉ができた当時は銀の価値の方が金よりも上だったそうで言葉の価値,偉大さを述べたものらしく一般的な普通の解釈とは逆かも知れません。

 ただし雄弁とは単なるおシャベリを意味するものではなく,駄弁なら沈黙の方がましでしょう。

(以下,2006年10月8日に書いた記事の再掲です。

 今日は量子論におけるWKB近似が,なぜ半古典近似と呼ばれるのか,を解析力学のハミルトン・ヤコービの方程式と関連付けて説明し,さらに経路積分との関連についても手短かに述べてみたいと思います。

 まず,古典力学の力学系での一般化座標をqr(r=1,2...n)とし,系を記述するラグランジアン(Lagrangian)をL(,d,t)とします。

 

 ここで,はqr全体を総称しddotの時間による微分:qrd≡(dqr/dt)の全体を意味します。

 さらに,pr≡(∂L/∂qrd)を一般化運動量と定義します。

 

 このr=(∂L/∂qrd)を解いてrdrとprの関数で表わしたものを,式:Hrrd-Lの右辺のqrd に代入したものを系のハミルトニアン(Hamiltonian):H(,,t)と定義します。

 

 このとき,元々のニュートンの運動方程式は,これをダランベールの原理(D'Alembert)で加工して一般化し,一般化座標の方程式に変換したn個のオイラー・ラグランジュ方程式[d(∂L/∂qrd)/dt]-∂L/∂qr0 に取って代わられます。

 

 さらに,rd≡(dqr/dt)=(∂H/∂pr),prd≡(dpr/dt)=-(∂H/∂qr)なる形の2n個の1階微分方程式=ハミルトンの正準方程式に変換されます。

 ほとんどのH(,,t)では,一般化座標の変数pr,qrを計算に都合がいいような新変数Pr,Qrに変換して,新しいハミルトニアンとしてK(,,t)を作り,ハミルトンの正準方程式が形としてそのまま保存されるようにできます。

 

 つまり,rd=(∂H/∂pr),prd-(∂H/∂qr)がrd≡(dQr/dt)=(∂K/∂Pr),Prd≡(dPr/dt)=-(∂K/∂Qr)と同値になるようにできます。こうした変換を正準変換と呼びます。

 このとき,新変数による新しいラグランジアンをL'=∑Prrd-Kと書けば,元のラグランジアンL=rrd-Hとの間にある関数Wが存在して,L=L'+(dW/dt)なる等式が成り立つはずです。

 

 これは,変換の下で理論が不変に保たれるための必要十分条件です。この結果,rrd-H=∑Prrd-K+(dW/dt)と書けます。

 

 関数W はtのほかには,,,の4n個の変数の関数ですが,このうち独立な変数は2n個だけですから,例えばW=W(,,t)と独立変数を選んでみます。

 

 このときは,dW=∑prdqr∑QrdPr(K-H)dtなる式によってpr=∂W/∂qr,Qr=∂W/∂Pr,K=H+∂W/∂tとなります。

 次に,特に変換によって特異になる危険性を犠牲にしてもハミルトニアンKが恒等的にゼロになる:K≡0 となる特別な正準変換があったらと想定してみます。

 

 このときには,ハミルトンの正準方程式はPrd≡(dPr/dt)=0 ,rd≡(dQr/dt)=0 となり,座標点は全て時間的に静止していて,Pr=αr(定数),r=βr(定数)とすることができて最高に好都合です。

 

 そして,このとき元の正準変換に戻ってみると(,,t)=(β,α,t),(,,t)=(β,α,t)と,2n個の積分定数または初期条件を含む解が求まるわけです。

 

 つまり"一般化座標の時間的変化=軌道"は全て決まる,あるいは問題は完全に解けることになります。

 そして,W=W(,,t)=W(,α,t),pr=∂W/∂qrr=∂W/∂αrと書くこともできます。

 

 そこで,逆にこうした都合のいい関数Wを求めるための方程式H+∂W/∂t=K=0 ,つまり,H[,∂W(,t)/∂q,t]+∂W(,t)/∂t=0 で与えられると考えます。

 

 そして,微分方程式H+∂W/∂t=0 を解くことによって,積分定数αを含むW(,α,t)が得られると考えることもできるわけです。

 

 この方程式:H+∂W/∂t=0 をハミルトン・ヤコービ(Hamilton-Jacobi)の偏微分方程式と呼びます。

 特にハミルトニアンHが時間tを陽には含まないときには,Hは固定した,に対しては時間的に一定になるので,H(,)=E (定数)とかくことができます。

 

 Hがtを陽に含まない場合にはネーターの定理(Noether's theorem)によって,右辺の定数Eがいわゆるエネルギーであり,時間的に変化しない保存量であることはよく知られた事実です。

 

 このとき,H(,)=Eにより,ハミルトン・ヤコービの偏微分方程式:H+∂W/∂t= 0 はW(,α,t)/∂t=-E (一定)となりますからW(,α,t)=S(,α)-Etと書いてよいことになります。

 

 pr=∂W/∂qr=∂S/∂qrなので,結局(,∂S/∂)=E (ただし=∂S/∂)と表現できて,方程式は少し簡単になります。

Hがtを陽に含まない場合,Wが一定の面を波動光学からのアナロジーで,ある力学的波動の位相が一定の面を表わすものであると考えてみます。

 

W=(S-Et)という量から,"Sと同じ単位=(エネルギー×時間)"を持つある比例定数:hcを用いて,単位のない変数(W/hc)={(S/c)-(E/hc)}を作り,これを位相としてω=E/hcを角振動数2πνとするような波動を考えることにして,その波動を表わす量をψと定義します。

 

すなわち,ψ=Aexp(iW/c)=Aexp[i{(S/c)-ω}t] (ω≡E/hc)とします。

 

特に1変数のみの系では,=∂S/∂=∇Sから,ψ=(∇S)ψ=(-ic∇ψ)となるので,記号的には~ (-ic)と見なすことができます。

cをプランク(Planck)定数=(h/2π)と同一視すれば,ψは量子力学の波動関数に対応し,ハミルトン・ヤコービの偏微分方程式は正にシュレーディンガー(Schödinger)方程式になります。

 

古典力学と量子力学との間には大きな谷間(gap)があり,それぞれが独立な法則=公理を持つ独立な理論なので,古典力学から何の飛躍もなく量子力学を導くことは不可能ですが,前期量子論の段階では上記のような推論がなされていたと思われます。

こうしたことから,WKB近似という量子力学の問題を解く1つの近似法="時間を含まない定常波動関数u(x)をexp[iS(x)]なる形式で表現して近似するという方法"は半古典近似という名称で呼ばれているのでしょう。

ところで,上述のS(,α)はラグランジアンで表わすとS=∫L(,d,t)dtと書けます。これはいわゆる作用(作用積分)と呼ばれる量です。

 

つまり,Sは"系の運動はの変分δに対する作用Sの変分がゼロ:δS=0 となる=Sが停留値を取るという条件によって与えられる。"という1つの基本的な変分原理=最小作用の原理の元になる作用関数になっています。

そこで,量子力学でファインマンの経路積分(Feynman)を用いた理論展開で,時間発展の確率振幅が作用Sによって,<f|exp{-(i/c)H(tf-ti)}|i>=A∫exp[(i/c)S((t))]と表現されることが思い出されます。

 

私見では,これはがあらゆる分岐した経路にわたる積分であるという意味で,多世界解釈にもつながると考えているのですが,それはさておき,経路積分の意味を説明します。

 

 

この経路積分の公式は,作用SをS((t)) ~ Δt∑jNL[(tj),{(tj+1)-(tj)}/Δt]と分割し,中間状態の射影演算子|(tj)><(tj)|を考えたとき,中間状態の完全性を利用すれば得られます。

 

中間状態の完全性とは,あらゆる座標の全空間での総和=積分が1になること,∫d|><|=1であることです。

 

なわち,遷移確率振幅<f|exp{-(i/c)H(tf-ti)}|iを時間分割して,j+1|exp{-(i/c)HΔt}|j>と細分化したとき,各細分時刻tjにおいて,1=∫d(tj)|(tj)><(tj)|を挿入しても結果は変わりません。

 

そして,各々の細分では<j+1|exp{-(i/c)HΔt}|j=<j+1|exp{-(i/c)(tj){(tj+1)-(tj)}+(i/c)ΔtL[(tj),{(tj+1)-(tj)}/Δt]|j>と表現できます。

 

ここで,j(tj),Δt≡(tf-ti)/Nであり,ti≡t0<t1<t2<...<j<tj+1<...<t≡tfです。

 

結局,遷移確率振幅は<f|exp{-(i/c)H(tf-ti)}|i>=ΠjNj+1|exp{(i/c)ΔtL[(tj),{(tj+1)-(tj)}/Δt]|j>となり,これでN → ∞とした極限が経路積分です。

そして,この経路積分の計算結果においては被積分関数の指数関数の中で最小作用の原理を満たすδS=0 の部分の寄与が最大になり,遷移確率振幅=伝播関数に大部分の寄与をする,ことがわかっています。

  

これは古典論と量子論の隙間(gap)を埋める話として,一つの注目に値する論点であると考えられます。

    

参考文献:大貫義郎著「解析力学」(岩波書店) 並木美喜雄著「解析力学」(丸善) 深谷賢治著「解析力学と微分形式」(岩波書店)

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2010年2月 6日 (土)

電磁力学と解析力学

1月末にfolomy物理フォーラムでMössbauer(メスバウアー)効果と磁性のZeema効果などとの関連についての質問を受けたのですが,Mössbauer効果の方面については私自身ほとんど考えたり勉強したりしたことがなかったので2月初めにでも詳細にブログに書くと約束しました。

そこで,まずは「γ崩壊とメスバウアー効果」という題目で原稿を書き始め,γ崩壊の摂動Hamiltonianとして"γ線量子=光子"と原子核との電磁相互作用を考察することから始めました。

 

すなわち,

  

摂動HamiltonianH'を電磁場(γ線)と核の相互作用=電磁相互作用HamiltonianとしてH'=∫jμ(,t)Aμ(,t)d3=∫ρ(,t)φ(,t)d3-∫(,t)(,t)d3と表わすことから始めます。

 

ただし,jμ(cρ,),μ(φ/c,)でρ(,t)は電荷密度,

(,t)は電流密度です。

 

を時刻tに位置にある電荷の速度とすると,伝導電流が存在しないときは(,t)=ρ(,t)と書くことができます。

 

という文章から書き始めたのでした。

 

しかし,相互作用を電気双極子,磁気双極子,電気四重極子と多重極展開する際の細かい計算,特にベクトル解析での変換の計算などで2,3日つまづいたりしているうちに,

 

私の学生時代からの悪い癖ですが,忘れてしまったという意味も含めてはっきりとは理解していない項目があることに気付いて基礎の基礎まで降りて考察したくなってしまいました。

 

さて,2008年11/2の記事「解析力学の初歩」によれば,電場を=-∇φ-∂/∂t,磁場を=∇×とするとき,その中で電荷がqの荷電粒子が運動するときの粒子の運動エネルギーをTとすれば,

  

荷電粒子のLagrangianは,L=T-V,V=V(,,t)≡qφ(,t)-qvA(,t)で与えられることがわかります。

このとき,d/dt=∂/∂t+(∇),××(∇×)=∇(vA)-(∇)なので-∂V/∂r+(+d/dt)(∂V/∂)=q+q(v×)です。

 

そこで,Lagrangeの方程式:(d/dt)(∂L/∂)=∂L/∂,

または(d/dt)(∂T/∂)=-∂V/∂+(d/dt)(∂V/∂)は,

 

(d/dt)(∂T/∂)=+q(×) となります。

そして,≡∂L/∂と定義するとエネルギーを意味するHamiltonianはH=pv-L=(∂L/∂)-Lとなります。

 

今の場合,対象としているのは荷電粒子の運動を与える系ですが,実際にはこれだけでなく電磁場をも含む全体で閉じています。

 

全体の系は,(自由荷電粒子+相互作用)の他に,自由電磁場:

M≡∫(ε0220)d3(c2ε0/4)(μνμν)3

をも加えた総和になります。

 

ただしFμν≡∂μν-∂νμです。

さて,粒子だけの部分系での考察を続けます。

 

電磁場がない場合の全くの自由粒子なら正準運動量は≡∂L/∂=∂T/∂ですが,電磁場がある場合はL=T-V,V=(,,t)≡qφ(,t)-qvA(,t)です。

 

Vもに陽に依存して,∂V/∂=-qですから,

=∂T/∂-∂V/∂=∂T/∂+qとなります。

よって,運動量は自由粒子の運動量(∂T/∂)に電磁場の運動量qを加えたものとなります。

 

そこで,"エネルギー=Hamiltonian"はH=pv-L=(∂L/∂)-L=(∂T/∂+q)-T+V=(∂T/∂)-T+qφです。

一方,電磁場のない自由粒子のLagrangianをL0,HamiltonianをH0とし,運動量を0と書けばL0=Tであり,00-L0

(∂L0/∂)-L0(∂T/∂)-Tです。

 

これらを用いると電磁場のある場合の量は0+q,H=H0qφと書けます。そこで,0のみの関数という意味で,

 

自由粒子のHamiltonianをH0=H0(0)と表現すれば,

H=H0(0)+qφ=0(-q)+qφ となります。

 

あるいは,これは電磁ポテンシャルをμ(φ/c,)と4元ベクトル表現すれば,/c=H0(-q)/c+qA0となります。

さらに,エネルギーと運動量も4元ベクトル表現をすると,

μ(H/c,),0μ(H0/c,0)ですから,上式は,

0=p00(-q)+qA0,または,

0-qA0=p00(-q)と書き直されます。

つまり,電磁場のないときのHamiltonianがH=f(),または0=f()というの関数の形で与えられるとき,これを0-qA0=f(-q)と書き換えれば電磁相互作用を含む形式に変換されます。

 

このpμ → pμ-qAμなる置換が,いわゆる電磁場の極小相互作用変換(minimal-coupling transformation)と呼ばれるものです。

ところで,非相対論では速度がの自由粒子の運動エネルギーTはT=m2/2で与えられるので,運動量は0=∂T/∂=mです。

 

それ故,自由粒子HamiltonianはH=2/(2m)ですから,極小相互作用変換は,H-qφ=(-q)2/(2m),つまりH=(-q)2/(2m)+qφとなります。

このとき,(Euler-)Laglange方程式と等価なHamiltonの正準方程式は,

/dt=∂H/∂=(-q)/m=,および

/dt=-∂H/∂:d(m)/dt+q(×) です。

 

したがって,これまでの手続きに従えば荷電粒子に及ぼす電気力や磁場のLorentz力による荷電粒子の正しいNewton力学の運動方程式が得られることが再確認されます。

この定式化では,電磁場があるときのHamiltonianはH=(-q)2/(2m)+qφ=2/(2m)-qpA/m+q22/(2m)+qφです。

 

そこで自由粒子のHamiltonianH02/(2m)に対して相互作用がある場合のHamiltonianをH=H0+H'と書いて,H'=qφ-qpA/m+q22/(2m)なる摂動があると解釈します。

 

この摂動H'はまたH'=qφ-q(-q)/m-q22/(2m)=qφ-qvA-q22/(2m)とも表現できます。

この一体での定式化を質量がmi,電荷がqi(i=1,2,..,N)の粒子の多体系に拡張すると,HamiltonianはH=Σi=1N[{i-qi(i,t)}2/(2mi)+qiφ(i,t)]=Σi=1N{i2/(2mj)}-Σi=1N[qii(i,t)/mi+qi2(i,t)2/(2mi)+qiφ(i,t)]になります。

 

そして,H=H0+H'なる表現においてはH0=Σi=1N{i2/(2mj)},

かつH'=Σi=1N[qiφ(i,t)-qii(i,t)-qi2(i,t)2/(2mi)} です。

さらに,対象とする帯電体が総電荷がΣiq=∫ρd3,総電流がΣiii=∫3で与えられる連続体なら,上記摂動:H'は

H'=∫(ρφ-jA)d3-∫{ρ22/(2μ)}d3

=∫jμμ3-∫{ρ22/(2μ)}d3となるはずです。

ここで,μは帯電体の(質量)密度です。 

しかし,そもそも電磁場の真空中のMawell方程式系は相対論を考慮した場合のみが正しい扱いですから,変換の出発点となる自由粒子のLagrangianは相対論的力学でのそれであるL=-mc2(1-2/c2)1/2とすべきです。

これによれば,≡∂L/∂=m/(1-2/c2)1/2です。

 

これからH=-L=m2/(1-2/c2)1/2+mc2(1-2/c2)1/2

=mc2/(1-2/c2)1/2です。

 

これらは,確かに相対論的力学で与えられる式に一致しています。

 

これからまた,(H/c)22=m22,またはpμμ=p022=m22,あるいは,H=c(2+m22)1/2というよく知られたエネルギー・運動量の不変式の表現を得ます。

古典論の段階では正エネルギーのみで考察してよいので量子論で現われる負エネルギー,または反粒子などの問題は生じません。

 

そして,(H/c)22=m22極小相互作用変換を施せば,(H-qφ)2/c2-(-q)2=m22,あるいはH=c{(-q)2+m22}1/2+qφです。

 

しかし,実は=m/(1-2/c2)1/2+qより-q=m/(1-2/c2)1/2,c{(-q)2+m22}1/2=c{m22/(1-2/c2)+m22}1/2=mc2/(1-2/c2)1/2でH-qφは自由粒子のエネルギーH-qφ=mc2/(1-2/c2)1/2です。

 

そこで,この表式は自由粒子の質量がmであるという以上の情報を含んではいません。

しかし,このH=c{(-q)2+m22}1/2+qφなる表式から正準方程式:d/dt=∂H/∂,d/dt=-∂H/∂によって自動的に電磁場の中での荷電粒子の運動方程式が得られます。

 

方程式:d/dt=-∂H/∂の左辺は,d/dt

=(d/dt){m/(1-2/c2)1/2}+q(d/dt)

=(d/dt){m/(1-2/c2)1/2}+q(∂/∂t)+q(∇)

と変形されます。

 

一方,右辺は-∂H/∂=-q∇φ-c{{(-q)∂(-q)/∂}/{(-q)2+m22}1/2で,-q=m/(1-2/c2)1/2,c{(-q)2+m22}1/2=mc2/(1-2/c2)1/2により,

 

-∂H/∂=-q∇φ+q(/∂)と書けます。

 

故に××(∇×)=∇(vA)-(∇)を用いれば,(d/dt){m/(1-2/c2)1/2}=qE+(×)を得ます。

 

これは,確かに先に書いた電磁場の中の荷電粒子に対するNewtonの運動方程式:d(m)/dt+q(×)を相対論に拡張した運動方程式になっています。

 

ところで,自由粒子のエネルギー・運動量の不変式:(H/c)22=m22,またはpμμ=m22に,H=ihc(∂/∂t),=-ihc∇,またはpμ=ihc(∂/∂xμ)を代入して簡易的に量子化をすると,

 

波動方程式:{(1/c2)∂2/∂t2-∇2+(mc/hc)2}ψ(,t)

={□+(mc/hc)2}ψ(,t)=0 が得られます。

 

これは,自由粒子の従う相対論的波動方程式の1つであるKlein-Gordon方程式として知られているものです。

 

ここにψは波動関数または粒子場です。(ただし,c≡h/(2π)で,hはPlanck定数です。)

  

しかし,電子や原子核のようなFermi粒子(Fermion)の場合は粒子の波動関数または粒子場ψは古典論のエネルギー・運動量の不変式の平方根を取った等式:H/c-(2+m22)1/2=0 を量子化して得られる方程式:

 

ihc[(1/c)(∂/∂t)-{(-ihc∇)2+m22)}1/2]ψ(,t)=0

に従うことがわかっています。

 

すなわち,ψは左辺の平方根を行列展開して線形化たDirac方程式:

(ihcγμμ-mc)ψ(,t)=0,あるいは

μμ-mc)ψ(,t)=0 に従います。

 

(ψはスピノール(spinor)表現です。)

  

そして,γμμ-mcに極小相互作用変換を施せば,{γμ(pμ-qAμ)-mc}ψ(,t)=0 となります。

 

そこで,ψ~≡ψ+γ0として量子論で自由Fermi粒子のLagrangianLをL=∫3で与えるLagrangian密度を=ψ~(ihcγμμ-mc)ψ=Σαβ~α(ihcγμμ-mc)αβψβ}とすることができます。

 

すると正準運動量は,πα≡∂/∂(∂ψα/∂t)

=c-1/∂(∂0ψα)=ic-1cψ+αです。

 

それ故,HamiltonianをH=∫3で与えるHamiltonian密度;=Σαπα(∂ψα/∂t)-=ihcψ+0ψ-ψ~(ihcγμμ-mc)ψ=-ψ~(ihcγkk-mc)ψです。

 

運動方程式(ihcγμμ-mc)ψ=0 によって,-(ihcγkk-mc)ψ=ihcγ00ψですから=ihcψ+0ψとも表現されます。

 

極小相互作用変換を施したDirac方程式:{γμ(pμ-qAμ)-mc}ψ=(ihcγμμ-qγμμ-mc)ψ=0 に対応するLagrangian密度は,

=ψ~(ihcγμμ-qγμμ-mc)ψ=Σαβ~α(ihcγμμ-qγμμ-mc)αβψβ]です。

 

そして,正準運動量はπα≡∂/∂(∂ψα/∂t)

=c-1/∂(∂0ψα)=ic-1cψ+αです。

 

Hamiltonian密度=Σαπα(∂ψα/∂t)-

=ihcψ+0ψα-ψ~α(ihcγμμ-qγμμ-mc)ψ

=-ψ~α(ihcγkk-qγμμ-mc)ψ=-ψ~(ihcγkk-mc)ψ+qψμμです。

自由粒子のHamiltonianを,改めてH0=-∫{ψ~(ihcγkk-mc)ψ}3とおくと,電磁場がある場合には,

H=-∫{ψ~(ihcγkk-mc)ψ}3+q∫(ψμμψ)d3

=H0+q∫(ψμμψ)d3と書けます。

 

Fermi粒子の4元電流密度は,jμ=qψ~γμψで与えられることがわかっていますから,H=H0+H'と書いたときの"摂動=電磁相互作用"H'は,

正確にH'=q∫(ψμμψ)d3=∫jμμ3となります。

 

以上から,最初に述べたように,"電磁場(γ線)と核の相互作用=電磁相互作用Hamiltonian"H'が確かにH'=∫jμ(,t)μ(,t)3

=∫ρ(,t)φ(,t)3-∫(,t)(,t)3

と表現されることが明確に示されました。

 

これは今日の記事の1つの目的です。

 

しかし,最初の古典論での考察はむしろ自由粒子における運動量が=∂T/∂,で与えられHamiltonianが,H=(∂T/∂)-Tになるという式から出発しています。

  

ところが,相対論における運動エネルギーは,T=mc2(1-2/c2)-1/2-mc2となるはずで,運動量を=∂T/∂で表現すると,

=∂T/∂=m(1-2/c2)-3/2です。

 

しかし,これは相対論の自由粒子Lagrangian;L=-mc2(1-2/c2)1/2から求めた正しい運動量:≡∂L/∂=m/(1-2/c2)1/2とは一致しません。

 

逆に,L-Tを計算するとL-T=mc2-mc2(1-2/c2)-1/2+mc2(1-2/c2)1/2=mc2-m2(1-2/c2)-1/2ですから,

L=T-m2(1-2/c2)-1/2+mc2です。

 

つまり,相対論力学では本質的でない定数項:mc2を無視しても自由粒子のLagrangianが運動エネルギーTと一致しないと結論されます。(ただし,HamiltonianはTと一致します。)

 

これで本記事でもう一つの目的としていたことも達成されました。

   

もう30年以上も前の話ですが,当時の指導教官に「少しぐらいつまづいても細かい事に拘泥していたら学生の数年間では目標分野の最先端まで到達できないぞ。」とか言われても,読書は繰り返しではなく1回精読主義の自分には結局無理で,今もその性格は変わりませんね。

  

他人に説明しようとして考察しているうちに,自分自身がドツボにはまるようではまだまだですね。

 

参考文献:砂川重信 著「理論電磁気学(第2版)」(紀伊国屋書店)

 

PS:将棋順位戦:B級1組の渡辺明竜王のA級昇級が確定したようです。

 

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2008年6月27日 (金)

ネーターの定理と電磁エネルギー運動量テンソル(補遺)

前記事「ネーターの定理と電磁エネルギー運動量テンソル」で延期(Pending)にしておいた問題について気になっていたので,他の事をやっている合間にも細々と考えたり計算していたら何とか解決したので,補足記事にしておきます。

まずは,問題そのものがどうだったか?について思い出すために,前記事のその部分を再掲します。

(※再掲開始)

 

ここで,古典解析力学で多体系に対して定義されるPoisson括弧式:

 

[u,v]P.B.

≡Σs[(∂u/∂qs)(∂v/∂ps)-(∂u/∂ps)(∂v/∂qs)]

 

を連続体の場の理論に拡張します。

 

場φi(x)に正準共役な運動量πi(x)を,πi(x)≡/∂(∂0φi)

で定義して,Poissojn括弧式を,

 

[u,v]P.B.

≡Σi[(∂u/∂φi)(∂v/∂πi)-(∂u/∂πi)(∂v/∂φi)]

 

とします。

これを使用すると,場の量φ={φi(x)}とNoether保存量:Qについてはi(x),Q]P.B.Σk[(∂φi/∂φk)(∂Q/∂πk)-(∂φi/∂πk)(∂Q/∂φk)]∂Q/∂πiと書けます。

 

Q=∫j0(,t)d3,j0(,t)=j0(x)

=Σk{∂/∂(∂0φk)}Gkj,∂μφj)-η00j,∂νφi)

=Σkkj,∂μφj)πk(x)η00j,∂νφi) です。

 

ij,∂μφj),μj,∂νφi)が,∂0φj,またはπjと独立な場合,

∂Q/∂πiij,∂μφj)なので,

 

i(x),Q]P.B.=Gij,∂μφj) なる等式が得られます。 

すなわち,この無限小変換に際しては,δLφi=ε∂Q/∂πi

εi(x),Q]P.B. が成立します。

 

このような関係を満たす量Qを,この変換の生成子(generator)

と呼びます。

 

理論を不変(作用を不変)に保つ対称性変換に対しては,Noether保存量:Qは常にその変換の生成子になっていると考えられます。

一方LπiδL{/∂(∂0φi)}=∂(δL)/∂(∂0φi)

=ε{∂(∂μμ)/∂(∂0φi)}ですが,先にも述べたように,

μj,∂νφi)が,∂0φj,またはπjと独立な場合を想定するなら,

δLπi=0 です。

 

また,i(x),Q]P.B.Σk[(∂πi/∂φk)(∂Q/∂πk)-(∂πi/∂πk)(∂Q/∂φk)]=-∂Q/∂φiであることもわかります。

 

そこで,φi(x),πi(x)の汎関数で与えられる任意の物理量を,

A=A(φjj)とすると,この対称性変換によるAのLie変分は

δLA=Σk[(∂A/∂φk)δLφk(∂A/∂πk)δLπk(x)]で,

δLπk=0 ゆえ,δLA=εΣk(∂A/∂φk)δLφk となります。

 

一方,ε[,Q]P.B.=εΣk[(∂A/∂φk)(∂Q/∂πk)-(∂A/∂πk)

(∂Q/∂φk)]Σk[(∂A/∂φk)δLφkε(∂A/∂πk)(∂Q/∂φk)]

と書けます。

物理量Qが,δLφi()=ε∂Q/∂πiεi(x),Q]P.B.を満たし,

変換の生成子となっている場合,

 

一般に,δLε[,Q]P.B.となるであろうという予測に基づいて考察していたのですが,今のところは,どうもうまくいきません。

 

古典論でLie微分とPoisson括弧は,HamiltonianをHとして,

dA/dt=[A,H] P.B.なる関係があることから類推して,

 

Lie変分についてもPoisson括弧は同等な内容を与えると思ったのですが,

当面はこの項目の議論を延期します。(Pendingです。)

 

(再掲終わり※)

こういうのは解析力学の原点に帰って,1変数qのtを陽には含まないLagrangian;L=L(q,qd)で考えるのが一番です。

 

ここでは,簡単のためqd=qdot≡dq/dtとしました。

そして,δLq≡εGなる変換q→q+δLq=q+εGに対して,

δLL=εdX(q,qd,t)/dt=ε[∂X/∂t+(∂X/∂q)qd

+(∂X/∂qd)(dqd/dt)]と書ける場合を考察します。

δLL=(∂L/∂q)δLq+(∂L/∂qdLdですが,

δLd=δL(dq/dt)=d(δLq)/dtです。

 

運動方程式であるEuler-Lagrange方程式:

(∂L/∂q)-d(∂L/∂qd)/dt=0 から,

∂L/∂q=d(∂L/∂qd)/dtを代入すれば,

 

δLL={d(∂L/∂qd)/dt}δLq+d(δLq)/dt

=d{(∂L/∂qdLq}/dt=εd{(∂L/∂qd)G}/dt

が得られます。

一方,既に述べたようにδLL=εdX/dtと書けると仮定しているので,上のδLLの表式の最右辺と等置すれば,

εd{(∂L/∂qd)G}/dt=εdX/dt です。

 

そこで,Q≡(∂L/∂qd)G-Xとおけば,dQ/dt=0 となりますが,

このQが先の記事でも述べたような,この変換q→q+δLq=q+εG

に伴なうNoether保存量です。

 

そして,qに正準共役な運動量p≡(∂L/∂qd)を定義して,q,pによる

Poisson括弧で表現することを考えれば,Q=pG-Xなので,

[q,Q]P.B.∂Q/∂p=G+p(∂G/∂p)-(∂X/∂p)]

となります。

  

そして,関数:X=X(q,qd,t)が特にX=X(q,t)とq,tのみの関数の場合には,もちろん∂X/∂p=0 です。

また,p=(∂L/∂qd)を逆に解いたqd=qd(p,q)に対して,無限小変換q→q+δLq=q+εGにおける関数Gのpに対する依存性は.

G=G(q,qd)=G(q,qd(p,q))で与えられます。

  

この変換が座標qに依らない大域的変換であるとすれば,Gはqの時間微分qdにも依存せず,したがってpにも依存しないので∂G/∂p=0 となるはずですから,結局,[q,Q]P.B.∂Q/∂p=Gとなります。 

そこで,δLε[q,Q]P.B.ε∂Q/∂pが成立し,やはりNoether保存量Qがこの変換の生成子といえることがわかります。

 

一方,p=(∂L/∂qd)なので,δLδL(∂L/∂qd)

=∂(δL)/∂qdであり,仮定:δLL=εdX/dtによって

δLε∂(dX/dt)/∂qdと書けます。

 

そして,今はこのδLLを与える関数X=X(q,qd,t)が,X=X(q,t)のようにq,tのみの関数形に書ける場合を考えています。

 

先の記事では,dX/dtがqdに独立なためδL0 になると早合点しましたが,実はXがqdに独立でもdX/dtはdに独立ではなく,

dX(q,t)/dt=∂X/∂t+(∂X/∂q)qdとなります。

 

これは簡単なqdの1次式ですから,δLp=ε∂(dX/dt)/∂qd

=ε∂X/∂qとなってδLpはゼロではありません。

一方,Q=pG-Xより,[p,Q]P.B.=-∂Q/∂q

=-p(∂G/∂q)+(∂X/∂q)ですから,変換q→q+δL

=q+εGが,やはり座標qに依らない大域的変換であるとすれば,

 

∂G/∂q=0 なので,[p,Q]P.B.=∂X/∂q

となることがわかります。

 

これと,上のδL=ε∂X/∂qなる表式を比較すれば,

δLε[p,Q]P.B.=-ε∂Q/∂q が得られます。

以上からLε[q,Q]P.B.ε∂Q/∂p,δLε[p,Q]P.B.

=-ε∂Q/∂qであり,結局q,pの任意関数A=A(q,p)に対して,

 

δL(∂A/∂q)δL(∂A/∂p)δL

=ε[(∂A/∂q)(∂Q/∂p)-(∂A/∂p)(∂Q/∂q)],

つまり,δLε[A,Q]P.B.なる等式が得られることがわかりました。

結局,理論の対称性を示す無限小変換:q→q+δLq=q+εGに対し,

Noether保存量をQとすると,任意の物理量に対して常に,

δLε[A,Q]P.B.が成立する,という法則が得られました。

 

そこで,改めてQが変換の生成子(generator)であるとは,こういう意味だったのか,と再認識することができました。

 

また,古典論ではLie変分とPoisson括弧が同等な意味を持っていること,

もわかりました。

 

1変数の考察を多変数に拡張し,さらに連続的な場の量に対するものに拡張するのは直線的作業で平易なので,これを詳細に書くことはしませんが,

 

δLφiε[φi,Q]P.B.ε∂Q/∂πi,δLπiεi,Q]P.B.

=-ε∂Q/∂φiから,φiiの任意関数A=A(φ,π)に対して

δLε[A,Q]P.B.が得られる,という内容に変わりはありません。

 

 

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2008年6月22日 (日)

ネーターの定理と電磁エネルギー運動量テンソル

電磁場と相対論に関するシリーズ記事は一応終了しましたが,最後の物質中の電磁力学における電磁エネルギー運動量テンソルについてのMinkowskiの表現形式とAbrahamのそれについての論題が少し気になりました。

 

これは,解析力学における「Noether(ネーター)の定理」と関連づけて更に掘り下げた考察を行なうことが可能であると感じ,いささか個人的興味が湧いたので少し論じてみたいと思います。

電磁場に限らず,4次元Minkowski空間内の領域Σに例えば連続体の各点における変位などを表現した古典的な場φ(x)={φi(x)}があって系のLagrangian密度が場φi(x)とその1階微分∂μφi(x)の関数として

i(x),∂μφi (x))で表わされるとします。

このとき,作用積分は,S[φ]=∫Σ4i,∂μφi)

で与えられます。

 

そして場の従う基本的な運動方程式はφi(x)の変分に対する作用Sの

停留条件:δS=0 から決まります。

 

すなわち,系を支配する運動方程式は,δS/δφi

=∂/∂φi-∂μ{∂/{∂μφi }]=0 で与えられます。

 

これはよく知られた,Euler-Lagrange方程式です。

そして,「Noetherの定理」は"ある連続変換の下で作用Sが不変な場合には,その変換に対応した保存量が必ず存在する。"という定理です。

これの証明は,既に2008年2/29の記事「ネーターの定理と場理論」で行ないましたが,ここでは改めて概略的な証明を与えることにします。

 

以下,証明です。

ε>0 を無限小パラメータとし,時空座標の変換μ→xμ*=xμ+εημ,および,それとは独立な場の変換φi(x)→φ*i(x)=φi(x)+εgij,∂μφj)があるとします。

 

これは,座標の変分δμ=εημと共に場のLie(リー)変分:

δLφi()=εGij,∂μφj)=ε[ij,∂μφj)-ημμφi]

があるとして表現されます。

 

この変換の下で作用積分Sが不変である,すなわちS[φ]=S[φ*]が成立する,という対称性が存在するとします。

このことは,Lagrangian密度のLie変分が高々全微分であること,

つまり,恒等的に,δL

(x,φi*(x),∂μφi*(x))-(x,φi(x),∂μφi(x))

=ε∂μμj(x),∂νφi(x))と書けるある関数:

μj,∂νφi)が存在することを意味します。

 

この命題については,先述の記事,2008年2/29の「ネーターの定理と場理論」に詳しい証明を与えてありますから,ここでは改めて証明することはせず単に認めることにします。

他方,変換:x=xμ+εημi*(x)=φi(x)+εGij,∂μφj)の下でのLagrangianのLie変分δLを素朴なεの1次の変分項という意味で計算します。

 

δL(x,φi*(x),∂μφi*(x))-(x,φi(x),∂μφi(x))

=Σi[(∂/∂φi)εGij,∂μφj)+

{∂/∂(∂μφi)}ε∂μij,∂μφj)]-(∂μ)εημ

と書けます。 

さらに,先に述べたEuler-Lagrange方程式:

/∂φi-∂μ{∂/∂(∂μφi)}=0 によって,

上式の右辺の∂/∂φiμ{∂/∂(∂μφi)}

で置き換えます。

 

このとき,δL=εΣi[∂μ{∂/∂(∂μφi)}εGij,∂μφj)

+{∂/∂(∂μφi)}∂μij,∂μφj)]-ε(∂μμ

=ε∂μi{∂/∂(∂μφi)}Gij,∂μφj)-ημ]

となります。

 

ただし,ε>0,および時空座標の変換:x=xμ+εημにおけるパラメータημが点xに依らない定数の大域的変換を仮定しています。

そこで,2つの方法で得られたのリー変分δLを等置することから,

δL=ε∂μi{∂/∂(∂μφi)}Gij,∂μφj)-ημ]

=ε∂μμj,∂μφi)が得られます。

 

εは任意の定数パラメータなので,結局,

 

μi{∂/∂(∂μφi)}Gij,∂μφj)-ημμj,∂μφi)]

=0

 

が成立することがわかります。

これは,jμ(x)≡Σi{∂/∂(∂μφi)}Gij,∂μφj)-ημ

μj,∂νφi)とおけば,∂μμ0 ,

つまり,カレントjμ(x)の保存を意味します。

 

こう定義したカレントjμ(x)を"Noether-current"と呼びます。

つまり,上記カレントjμ(x)の第 0 成分を用いて,Q(t)≡∫j0(,t)d3なる量Q(t)を定義すると,∂μμ0 の結果から,

dQ/dt=0 となって,Q(t)はtに依らないことがわかります。

 

tに依らず一定なので,Q(t)は単にQと書いてもよく,このQがカレント密度(,t)に対応する1つの保存量になるというわけです。

 

Qは保存量ですから,ある1つの物理量と同定されます。

 

以上で「Noetherの定理」の証明は終わりました。

ここで,古典解析力学で多体系に対して定義されるPoisson括弧式:

 

[u,v]P.B.

≡Σs[(∂u/∂qs)(∂v/∂ps)-(∂u/∂ps)(∂v/∂qs)]

 

を連続体の場の理論に拡張します。

 

場φi(x)に正準共役な運動量πi(x)をπi(x)≡/∂(∂0φi)

で定義して,Poisson括弧式を,

  

[u,v]P.B.

Σi[(∂u/∂φi)(∂v/∂πi)-(∂u/∂πi)(∂v/∂φi)]

 

とします。

これを使用すると,場の量φ={φi(x)}とNoeter保存量:Qについては,

i(x),Q]P.B.Σk[(∂φi/∂φk)(∂Q/∂πk)-(∂φi/∂πk)

(∂Q/∂φk)]∂Q/∂πiと書けます。

 

Q=∫j0(,t)d3,j0(,t)=j0(x)

=Σk{∂/∂(∂0φk)}Gkj,∂μφj)-η00j,∂νφi)

=Σkkj,∂μφj)πk(x)η00j,∂νφi)

です。

 

ij,∂μφj),μj,∂νφi)が∂0φj,またはπjと独立な場合,

∂Q/∂πiij,∂μφj)なので,

i(x),Q]P.B.=Gij,∂μφj)なる等式が得られます。 

すなわち,この無限小変換に際しては,δLφi=ε∂Q/∂πi

εi(x),Q]P.B.が成立します。

 

このような関係を満たす量Qを,この変換の生成子(generator)

と呼びます。

 

理論を不変(作用を不変)に保つ対称性変換に対しては,Noether保存量Qが常にその変換の生成子になっていると考えられます。

一方LπiδL{/∂(∂0φi)}=∂(δL)/∂(∂0φi)

=ε{∂(∂μμ)/∂(∂0φi)}ですが,先にも述べたように,

μj,∂νφi)が,∂0φjまたはπjと独立な場合を想定するなら,

δLπi=0 です。

 

また,i(x),Q]P.B.Σk[(∂πi/∂φk)(∂Q/∂πk)-(∂πi/∂πk)(∂Q/∂φk)]=-∂Q/∂φiであることもわかります。

 

そこで,φi(x),πi(x)の汎関数で与えられる任意の物理量を,

A=A(φjj)とすると,この対称性変換によるAのLie変分は

 

δLA=Σk[(∂A/∂φk)δLφk(∂A/∂πk)δLπk(x)]で,

δLπk=0 ゆえ,δLA=εΣk(∂A/∂φk)δLφkとなります。

 

一方,ε[,Q]P.B.=εΣk[(∂A/∂φk)(∂Q/∂πk)-(∂A/∂πk)(∂Q/∂φk)]Σk[(∂A/∂φk)δLφkε(∂A/∂πk)(∂Q/∂φk)]と書けます。

 

物理量QがδLφi=ε∂Q/∂πiεi(x),Q]P.B.を満たし,変換の生成子となっている場合,

 

一般にδLA=ε[,Q]P.B.となるであろうという予測に基づいて考察していたのですが,今のところは,どうもうまくいきません。

 

古典論でLie微分とPoisson括弧は,HamiltonianをHとして,

A/dt=[,H]P.B.なる関係があることから類推して,

 

Lie変分についてもPoisson括弧は同等な内容を与えるであろうと思ったのですが,当面はこの項目の議論を延期します。(Pendingです。)

 

(Arnoldの「古典力学の数学的方法」やAi.George(ジョージ・アイ)の「物理学におけるリー代数」,あるいは微分幾何や力学系の本でも読めばいいのかしら。。)

今は古典場の話をしているのですが,u,vが量子論の演算子,または作用素である場合には[u,v]を交換子:[u,v]≡uv-vuと定義します。

 

古典論のPoisson括弧と量子論の交換子の間に[u,v]P.B.=[u,v]/(ihc)なる対応原理を与えれば,これは古典論を量子化して量子論にすることと同等であるという命題が,Diracらによって示された,という歴史的経緯もあります。

 

ただし,hc≡h/(2π)はPlanck定数です。

この対応原理を適用すれば,古典論の生成子Qに対する

i(x),Q]P.B.=Gij,∂μφj)なる基本式は,

 

Qが演算子であって,φi(x)が量子場を示す演算子である場合には,

(i/hc)[i(x)]=Gij,∂μφj)なる表式に変わります。

 

そこで,この対称性変換での量子場の無限小変換は,

φi(x)+δLφi()=φi(x)+εij,∂μφj)

φi(x)+(iε/hc)[i(x)] と書けます。

ここで,θをパラメータとする場φi(x)のユニタリ(unitary)変換:

exp(iθ/hc)φi(x)exp(-iθ/hc)を考えると,

 

この変換において,特にθが無限小:θ=εの場合,

 

これはexp(iε/hc)φi(x)exp(-iε/hc)

φi(x)+(iε/hc)[i(x)]と書けるので,

 

φi(x)+εij,∂μφj)

=exp(iε/hc)φi(x)exp(-iε/hc) となります。

 

したがって,この変換に伴なって場が受ける変換は,Noether保存量Qに相当する演算子を生成子(generator)としたユニタリ変換という形で表現されることがわかります。

そして,古典場の場合と同様,Aをφi(x),πi(x)の任意の汎関数とすると,δL(iε/hc)[,]ですから,

exp(iε/hc)Aexp(-iε/hc)=AδLAとなるはずです。 

これ以上の余談的な考察を続けるには,対称性変換が線型リー群と呼ばれる変換群を形成し,群全体の代数的性質を決定するには無限小(接触)変換を調べれば十分であること,

 

それ故,"群の生成子の線型結合やそのPoisson括弧,または交換子で構成される線形空間=リー環,あるいはリー代数"の構造を調べればよい,とかいった数学的議論になると思われるので,

 

何かその種の数学の本を参照しなければ無理ですが,この記事での本題ではないので,そうしたことは,またの機会に譲って次に移ります。

,必要なのは場のエネルギー運動量テンソルですが,これは並進,つまり,時空座標の平行移動変換:x=xμ+εημ=xμ-δμに対して作用が不変なこと,

 

すなわち,時空の一様性,言い換えると時空座標の原点をどこに取ろうと理論は同じであるという性質から得られるNoether保存量です。

 

この対称性を有するLagrangian密度は,これまで前提としてきた最も一般的な形の座標xを陽に含んだもの:(x,φi(x),∂μφi(x))ではなくて,xを陽には含まない(φi(x),∂μφi(x))なる形と考えます。

そして,この場合の変換ではgi0 なので,x=xμ+εημ=xμ-δμに伴なうφiのLie変分はδLφi(x)=εGij,∂μφi)=δρρφj(x)となります。

また,Sだけでなくもこの座標変換の不変量であると考えると,δL=ε∂μi{∂/∂(∂μφi)}Gij,∂μφj)]=ε∂μμj,∂μφi)=δρρ が成立します

そこで,関数が座標xに陽には依存しない場合のNoeter保存カレントの表式:jμ(x)=Σi{∂/∂(∂μφi)}Gij,∂μφj)μj,∂νφi)の両辺にεを掛けた等式で,εGij,∂μφi)=δρρφjμj,∂νφi)=δρρを代入します。

 

この時空座標の平行移動の対称変換については「Noetherお定理」の証明における最後の式ε∂μμ(x)=0 を意味するものとして,δρμi{∂/∂(∂μφi)}∂ρφi-δρμ]0 なる恒等式が得られます。

したがって,この場合は唯一の無限小パラメータεに関する恒等式:

ε∂μμ(x)=0 から,唯一のカレントjμ(x)の保存:

μμ(x)=0を導き出した前記の証明での手続きにおけるものとは違う形の恒等式が得られます。

 

すなわち,ρ=0,1,2,3の各々に対応した独立な4つの任意パラメータδρに関する恒等式:δρμi{∂/∂(∂μφi)}∂ρφi-δρμ]0

を得ます。

 

それぞれのρに対応して,∂μρμ(x)=0 を満たす4つのNoether保存カレントjρμ(x)が存在することがわかります。

 

それらは,jρμ(x)=Σi{∂/∂(∂μφi)}∂ρφi-δρμ

で表現されます。 

そして,これら時空座標の平行移動に対する理論の不変性に伴なうカレントjρμ(x)を特にTρμ(x)と書いて,これを(正準)エネルギー運動量テンソル(canonical energy-momentum tensor)と呼びます。

 

この場合,保存カレントjμ(x)の第ゼロ成分から構成され,変換の生成子を形成するNoether保存量:Q=∫j0(,t)d3も4つの保存カレントjρμ(x)=Tρμ(x)に対応して,ρ=0,1,2,3の各々の平行移動変換の生成子を形成します。

これら4つの"生成子=Noether保存量"をQρ≡∫Tρ0(,t)d3と表記することにします。

 

さらに,混合テンソル表現;Tμν=Σi{∂/∂(∂νφi)}∂μφi-δμνを反変テンソル表現に変えて,

 

μν=ημρρν=Σi {∂/∂(∂νφi)}∂μφi(x)-ημν

と表わせば,Qμ=∫Tμ0(,t)d3と書けます。 

ところが,元々Noether保存カレントやNoether保存量は,全体に共通の定数を乗じても保存方程式を満たす保存量としての意味は同じです。

 

これは,単位はどのように取ってもかまわない,という意味でもありますが,要するに,その定義には定数係数だけの任意性があり一般に一意には決まりません。

しかし,時間の一様性,つまり時間tについての無限小平行移動:t*=t-ηに対する不変性に伴なう"Noether保存量=生成子"は系のエネルギーEであり,空間についての無限小平行移動*δに対する不変性に伴なう"Noether保存量=生成子"は系の運動量である,とされています。 

また,0=∫T00(x)d3=∫i{∂/∂(∂0φi)}∂0φi]3の右辺は,系のLagrangianをL=∫3と書いたとき,

 

多粒子系のHamiltonian:H=Σi{∂L/∂(dqi/dt)}(dqi/dt)

-L=Σii(dqi/dt)-Lの連続体への拡張になっていることが

明らかです。

 

それ故,0系のエネルギーEを意味すると考えられるので,

0=E=∫T00(x)d3と書けます。 

ところが,時空座標の無限小の平行移動x=xμ-δμのうち,特に保存量:Q0の存在を保証する第ゼロ成分の座標x0=ctに関する平行移動:

*0=x0-δ0を,時間座標tに関するそれで表現すると,

ct*=ct-δ0,またはt*=t-δ0/cとなります。

そこで,恒等式δρμρμ(x)=δρμi{∂/∂(∂μφi)}∂ρφi(x)-δρμ]0 から決まるカレントρμ(x)によって,

0=E=∫T00(x)d3を与える恒等式のρ=0 の成分に対する係数パラメータはδ0ではなく,t*=t-δ0/cに対応してδ0/cです。

 

パラメータ係数δρの無限小変換から定まるカレントρμ(x),あるいは保存量Qρをρについて対等に扱うと,

 

ρ=0 のt*=t-δ0/cに対応するQ0=Eから,保存量の反変ベクトル

μ(Q0,)が,4元運動量PμによりQμ=Pμ/c=(E,/c)

と表現できることがわかります。

余談ですが,一般に時空の一様性は,対象領域が空間の一部に限定されたような場合には成立しません。

 

例えば熱統計力学を考察する際に通常設定される狭い箱の中に閉じ込められた多粒子系というモデルでは,空間の一様性に起因する運動量保存は成立せず,時間の一様性によるエネルギー保存のみが成立します。

さて,電磁場の場合,私がかつて学生時代の専門としていたQED(量子電磁力学)のように微視的個数の電子と光子の衝突散乱などを対象とする場合,

   

空気のような媒質中の現象を対象とする場合は,物質中の電場,磁場でも真空中の微視的効果の巨視的平均と考える「Lorentzの電子論」と同じく,基本的に光子を表わすものとして真空中の電磁場のみを考えます。

そして真空中の物理系であれば「電磁気学と相対論(6)(真空中の電磁気学5)」で書いたように,不変質量密度がμ0で携帯電流密度がsμの真空中にある連続物質の帯電体も含め,

 

系全体のLagrangian密度は=-(c2ε0/4)Fμνμν-Aμμ-μ02=(-c2ε0/4)(∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν)(∂Aν/∂xμ-∂Aμ/∂xν)-Aμμ-μc2(1-2/c2)1/2と書けます。

 

そして,自由物質場の項:-μ02や電磁場と物質電荷密度の相互作用項-Aμμを除いた自由電磁場のLagrangian密度項は,

E≡-(c2ε0/4)Fμνμνとなります。

この総Lagrangian密度に対して上述のEuler-Lagrangeの運動方程式:

{∂/∂φi}-∂μ{∂L/(∂μφi)}=0 における場φi(x)を,

電磁場Aν(x)に置き換えれば,確かに電磁場のMaxwell方程式:

∂Fμν/∂xν=-sμ/(c2ε0)が得られます。

そして,このLagrangian密度からNoether定理に基づく系の(正準)エネルギー運動量テンソルの反変テンソル表現Tμνを求めると,

μν=Σi{∂/∂(∂νφi)}∂μφi(x)-ημν

{∂/∂(∂νρ)}∂μρ-ημνL となります。

 

これが,先に別の考察から得られたエネルギー運動量テンソルの表現:

 

μνθμν+Sμνμν≡μ0μν,

μν≡-(c2ε0)[Fλμλν-(1/4)ημν(Fσρσρ)]

=-(c2ε0)[ημδλδλν-(1/4)ημν(Fσρσρ)]

 

と完全に一致すればよかったのですが,実は∂tμν/∂xν=0 を満たす

テンソルtμνだけ違っています。

すなわち,真空中で特に物質場を無視した電磁場単独のLagrangian密度:

E=-(c2ε0/4)Fμνμνに対し,Noether保存量として得られるエネルギー運動量テンソルの反変テンソル表現は,

 

Eμν{∂E/∂(∂νρ)}∂μρ-ημνE

=-(c2ε0)[-ημδδλλν-(1/4)ημν(Fσρσρ)]

 

となります。

 

上にも述べたように,この表現は真空中の電磁気学のこれまでの議論から得られた電磁エネルギー運動量テンソルの表現:

μν=-(c2ε0)[ημδλδλν-(1/4)ημν(Fσρσρ)]

とは微妙に異なっていて.

 

μν≡-(c2ε0μδλδλνとすれば

μν=TEμνμνとなります。

 

Noetherの定理によって,もちろん∂TEμν/∂xν=0 ですが,

運動方程式:∂Fμν/∂xν=0 より,明らかに

∂tμν/∂xν=-(c2ε0μδ(∂λνδ)Fλν=0 ですから

 

Eμν,Sμνのいずれを電磁エネルギー運動量テンソルとして採用しても問題はありません。

 

しかし,Sμνの方は対称テンソルでかつtraceless(対角和がゼロ)という閉じた系でのエネルギー運動量テンソルの条件を全て満足していますから,

 

通常は素朴なNoetherカレントTEμνではなく,これにtμνを加えたSμνを電磁エネルギー運動量テンソルとします。

 

物質中と異なり真空中の電磁場については,これで異論もなく全く問題はありません。

 

一方,物質中の電磁場に対するMinlowskiの電磁エネルギー運動量テンソルSμνもAbrahamのそれ:Aμν,元々物質が電磁気的に等方的な場合,

 

すなわち,εを誘電率,μを透磁率として,Hμνν/c2

=εFμνν,Fμνλ+Fνλμ+Fλμν

=μ(Hμνλ+Hνλμ+Hλμν)と書ける場合,

 

ε→ε0,μ→μ0としたとき真空のSμνに帰するよう作られています。

そして,Minkowskiの電磁エネルギー運動量テンソル:Sμν=-ηνσμλσλ+(1/4)Fλσλσημνが,(正準)エネルギー運動量テンソル:

Eμν=ημρEρν{∂E/∂(∂νρ)}∂μρ-ημνE に,

μνを除いて一致するような電磁場のLagrangian密度Eを考えて,

E=-(1/4)Fλσλσとします。

 

これは,ε→ε0,μ→μ0では確かに真空中のLagrangian密度:

E=-(c2ε0/4)Fμνμνに一致します。

 

このE=-(1/4)Fλσλσにおいて,λσ=∂λσ-∂σλであり,

0系ではE0=-(1/4)0λσ0λσ=-(2ε/4)F0λσ0λσです。

 

(正準)エネルギー運動量テンソル:TE0μνはTE0μν+t0μν

{∂E0/∂(∂0νρ)}∂0μ-ημνE0+t0μν

=-ηνσ0μλ0σλ+(1/4)F0λσ0λσημν=S0μν

となります。

 

すなわち,静止系S0ではTE0μν+t0μνはMinkowskiの電磁エネルギー運動量テンソルS0μνに一致します。

 

そこで,テンソルの性質から任意のS系においてもTEμν+tμν=ημρEρν{∂E/∂(∂νρ)}∂μρ-ημνE+tμν=Sμνです。

  

それ故,Noether理論による電磁エネルギー運動量テンソルTEμν+tμνが,Minkowskiの電磁エネルギー運動量テンソルSμνに一致することがわかります。

さらに,系全体のLagrangian密度は携帯電流密度sμを全電流密度Jμに変えた形のE-Aμμ-μ02

(1/4)Fλσλσ-Aμμ-μc2(1-u2/c2)1/2になります。

 

そこで,Aν(x)についてのEuler-Lagrangeの運動方程式

{∂/∂Aν}-∂μ{∂L/(∂μν)}=0 も拡張されたMaxwell方程式

である∂Hμν/∂xν=-Jμになります。

 

したがって,Noetherの定理の観点から電磁エネルギー運動量テンソルを見直すなら,Abrahamの表現と比較してMinkowskiの表現の優越性が示されるようです。

 

部分的な電磁場のみのテンソル:TEμν+tμν=Sμνが非対称でも,物質場を含めた全体のテンソルμν=θμν+Sμνは対称テンソルになることが可能なので,電磁エネルギー運動量テンソルについてはMinkowskiの非対称な表現でも問題ないと思います。

 

参考文献:九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論Ⅰ」(培風館),L.Fonda and G.C.Ghirardy 著「Symmetry Principles In Quantum Physics」(Marcel Dekker Inc. New.York(1970))

 

PS:「インターネット検索」から,Michael Forger and Hartmann Römerによる表題「Currents and the Energy-Momentum Tensor in Classical Field Theory」の2003年の論文:

(http://arxiv.org/abs/hep-th/0307199)を見つけて入手しましたが,

印刷すると91ページの大部で読むだけでも大変です。

そこで,取り合えずざっと眺めてみましたが,その限りでは上で論じたような計量が平坦なημνの時空上だけではなく,一般の曲がった計量gμνを持つ時空上の話を想定しているようです。

 

平坦な時空でNoether保存量としてエネルギー運動量テンソルを得る基になった時空の対称性,すなわち単純な"時空座標の平行移動に対する不変性=時空の大域的一様性"は曲がった時空においては局所的領域で考える必要があることなども述べられています。

そして,電磁場のようなゲージ(gauge)場と物質場との総和の総Lagrangian:L=Lg+Lmを考えているわけですが,

 

gを自由ゲージ場のLagrangianとして,物質場とゲージ場の相互作用項はLmの中に含めた表現を取るとき,gについては論じる必要がなく改善された正しい総エネルギー運動量テンソルは物質場のLagrangianLmのみから決まるということが述べられています。

次に,上のLmをさらに物質場と"時空自身の重力場=ゲージ場"とに分割して改めてLg+Lmと書けば,Noether保存量として得られる総エネルギー運動量テンソルTμνはTμν=-2δLm/δgμνなる式で与えられ,

これはgμνが対称なので必然的に対称テンソルであるという話を数学的に展開しているようです。

 

これは真空中の場であり,それゆえ上記ブログ記事での物質中の電磁場のMinkowskiやAbrahamの話とは関係がなさそうです。

 

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2008年2月29日 (金)

ネーターの定理と場理論

 さて,古典解析力学は,一般化座標を時間tの関数として

 (t)≡{qs(t)}と表わし,一般化速度を,

 d(t)≡{qsd(t)}≡{dqs(t)/dt}とするとき,

 それらの関数で表わされるLagrangian L=L(t,,d)

 によって記述されます。 

ここで,例えば流体や弾性体の"各位置における平衡位置

からのずれ=変位"のように,上述の多体系の一般化座標

(t)={qs(t)}の成分s(t)での離散的添字s(s=1,2,..,N)

が3次元空間の位置を示す連続的パラメータに置き換えられ

一般化座標が(t)={q(,t)}で表現される場合を

考えます。

このとき成分(,t)は時刻tでの空間位置における量,

つまり場であると考えられ,これは時間tや空間の関数で

ある,という意味で(t)={q(,t)}をφ(t)≡{φ(,t)}

と表記することにします。

 

 

そして,系全体のLagrangian L=L(t,φ,φd)は添字=位置

座標の近傍に(t,φ(,t),φd(,t))の密度で分布している

と見なします。

すなわち,L(t,φ,φd)≡∫(t,φ(,t),φd(,t))d

と表現されるとして,(t,φ(,t),φd(,t))をLagrangian

密度と呼ぶことにするわけです。

 

この場合,は時刻tの関数として変動する粒子の軌道を表わす

ではなく,単に空間の位置座標を示す添字パラメータに過ぎない

ので,φd(,t)は,sddqs(t)/dtと同じく,時間微分は

添字に無関係なのでφd(,t)≡∂φ(,t)/∂tであり偏微分

定義されます。

そして,こうした連続体の場合には多体系の作用積分

S[]≡∫L(t,,d)dtは,

S[φ]≡∫L(t,φ,φd)dt

=∫(t,φ(,t),φd(,t))ddt

と表現されます。

 

ここで,特に時空座標(,t)を相対論的なMinkowski空間

4次元座標としての相対論的に共変な表現 xμ(x0,)

≡(ct,) (cは光速)に変更すれば,場φ(,t)はφ(x)

と表記されます。

 

この表現では,tとはパラメータとして対等とされるので

L(t,φ,φd)=∫(x,φ(x),∂μφ(x))d,および

S[φ]=∫(x,φ(x),∂μφ(x))d4xなる表現に変わり

ます。 ただし∂μφ≡∂φ/∂xμです。 

さらに,一般に場φは,弾性体の変位や流体の歪み速度,あるいは

電磁場であれば,それらの場は3次元,あるいは4次元のベクトル

やテンソルの場であり,また量子論に移行すればスピノルである

場合もあります。

 

そこで,スカラー場である場合も含めて,φ(x)の代わりに

φi(x)(i=1,2,..,N)と書いて,

Lagrangian密度が(x,φi(x),∂μφi(x)),

作用積分がS[φ] =∫(x,φi(x),∂μφi(x))d4

となるように一般化しておきます。 

そして,多体系が,ある無限小変換

*=t+ετ,qs*=qs+εξs

(ただしε>0 は任意の無限小パラメータ)に対して

理論的に不変であるというようなネーター(Noether)の定理

の前提としての対称性変換の表現は,連続体の系での場の量

に対しては次のように拡張変更されます。

 

すなわち,時空座標の変換xμ*=xμ+εημ,および,それと

独立な場の変換φi*(x)=φi(x)+εgij(x),∂μφj(x))

があり,結果として,座標の変分δxμ=εημと共に

場のLie変分 δLφi(x)=εGij(x),∂μφj(x)))

=εgij(x),∂μφj(x))-ημμφi(x)がある

という条件下で,S[φ]=S[φ*]が成立する,という形

で与えられます。

このことはLie変分としてのLagrangian密度の変化分が

高々全微分であること,

つまり,恒等的に,δ

(x,φi*(x),∂μφi*(x))-(x,φi(x),∂μφi(x))

=ε∂μμj(x),∂νφi(x))なる形に書ける関数

μj,∂νφi)が存在することを意味します。

実際=ε∂μμj,∂νφi)なる形式であれば,

S[φ]=S[φ*]が成立し,特にε→ 0 ならδ→ 0 です。

そこで以下では逆に作用積分に対してS[φ]=S[φ*]が成立

するならδ=ε∂μμj,∂νφi)なる形式に書けること

を証明します。

[証明]作用積分の任意の積分領域においてS[φ]=S[φ*]が成立

するなら,φ,およびφ*の変分に対するSの停留性δS=0 から

得られる,両者のEuler-agrange方程式,

{∂/∂φi(x)}-∂μ[∂/∂{∂μφi(x)}]=0 ,および,

{∂/∂φi*(x)}-∂μ[∂/∂{∂μφi*(x)}]=0 は,

それぞれφi(x),およびφi*(x)に対して同一の方程式に

なります。

 

 それ故,Lagrangian密度(x,φi,∂μφi),および,

(x, φi*,∂μφi*)は,それぞれ,φ,およびφ*について同じ

関数形で与えられると思われます。

そこで同一の関数記号で表現していいわけです。

そして(x,φi*,∂μφi*)を,φi,∂μφiの関数と考えて,

これを*(x,φi,∂μφi)と書けば,S[φ]=S[φ*]ですから,

φの変分に対するSの停留性δS=0 から,

{∂*/∂φi(x)}-∂μ[∂*/∂{∂μφi(x)}]=0

も成立します。

 

これは当然,{∂/∂φi(x)}-∂μ[∂/∂{∂μφi(x)}]=0

なる方程式と関数形としても同一です。

 

したがって,c(ε)をεに依存する比例係数として,恒等的に

(∂*/∂φi)-∂μ{∂*/∂(∂μφi)}

=c(ε)[(∂/∂φi)-∂μ{∂/∂(∂μφi)}]

(ただし,c(0)=1)がφi,∂μφi,∂μνφiの恒等式として

成立するはずです。

 

δ*なので,これも同じEuler-Lagrange方程式を

満たしますから,f(φ,∂μφ)≡*-c(ε)

=δ{c(ε)-1}とおけば,

(∂f/∂φi)-∂μ{∂f/∂(∂μφi)}≡0 は

恒等式です。

 

これは,

(∂f/∂φi)-(∂/∂φj){∂f/∂(∂μφi)}(∂μφj)

-{∂/∂(∂νφj)}{∂f/∂(∂μφi)}(∂μνφi)≡0

と書けます。

左辺の(∂μνφi)の係数はゼロでなければならないから

{∂/∂(∂νφj)}{∂f/∂(∂μφi)}

+{∂/∂(∂μφj)}{∂f/∂(∂νφi)}≡0 です。

 

したがって一般に,

f(φ,∂μφ)=g(φk)+hμik)∂μφj(x)

+Σl=24j1j2..jl;μ1μ2..μlk)∂μ1φj1μ2φj2..∂μlφjl

と書けるはずです。

 

ここでhj1j2..jl;μ1μ2..μlk)は添字j1,j2,..,jl,

および,μ12,..,μlに関して,それぞれ別々に

反対称です。 

また,(∂μφi)の係数もゼロなので,∂gk)/∂φi0 ,

∂hμi/∂φj-∂hμj/∂φi0 です。

 

さらに(∂f/∂φi)-(∂/∂φj){∂f/∂(∂μφi)}(∂μφj)

≡0 で,

(∂f/∂φi)から項(∂hj1j2..jl;μ1μ2..μl/∂φj)∂μ1φj1μ2φj2..∂μlφjlが生じ,

-(∂/∂φj){∂f/∂(∂μφi)}(∂μφj)から

項-(∂hj1j2..jl;μ1μ2..μl/∂φj)∂μ1φj1μ2φj2..

μlφjl(∂μφi/∂μφj)がl個得られます。

 

後者はi=jの項が前者と相殺します。

後者の残りはどれかのjsがj,μsがμと一致して

μsφjsμφjに置き換わります。 

そして,これらの置換は添字μとjについて同時になされるため,

これら(l-1)個の項の符号は係数の添字の順序をそろえたとき

全て同じ符号を取るはずですから,係数がゼロである必要がある

ので,∂hj1j2..jl;μ1μ2..μlk)/∂φj0 (l≧2)です。

以上から,場φi,(∂μφi)の汎関数としてはg=定数,そして

全てのiについてhμik)=(∂wμk)/∂φj)なるφk

関数wμk)が存在します。

また,hj1j2..jl;μ1μ2..μlk)も,φkに依らない量,すなわち

定数です。

結局,f(φ,∂μφ)=g+∂μ[μk)

Σl=24j1j2..jl;μ1μ2..μlk) φjμ1φj1μ2φj2..∂μlφjl]

と書けることがわかりました。

 

以上から,あるxの関数Wが存在して

f(φ,∂μφ)=∂μW+g と書けます。

 

f(φ,∂μφ)*-c(ε)=δ{c(ε)-1};(0)

=1であってε→ 0 ならδ→ 0 により,ε→ 0 なら恒等的

にf→ 0 となるので,これを考慮するとεは無限小でその2次

以上は無視できるため,

f(φ,∂μφ)=ε[∂μ^+g^]と書いてよいと思われます。

すなわち,δ{c(ε)-1}=ε[∂μ^+g^]です。

g^はg^=∂μ(g^xμ/4)と書くこともできるので,

δ{c(ε)-1}=ε∂μ[W^+g^xμ/4]

とも書けます。

 

このとき,[φ*]-S[φ]=∫(δ)d4

{c(ε)-1}4x+ε∫g^d4ですから,これが常に

ゼロであるためには(ε)=1,かつg^≡0 が必要です。

 

これから,δ=ε∂μ^となりますから,W^を改めて

μj,∂νφi)と書けば,δ=ε∂μμj,∂νφi)と

書けることになります。 (証明終わり)

他方,単純に変換x=xμ+εημi*(x*)=φi(x)+ε

ij,∂μφi)の下でのLie変分としてのLagrangian密度

の変分は,

δ(x,φi*(x),∂μφi*(x))-(x,φi(x),∂μφi(x))

=(∂/∂φi)εGij,∂μφj)

+{∂/∂(∂μφi)}ε∂μij,∂μφj)-(∂μ)εημ

となります。 

ここでEuler-Lsgrange方程式

(∂/∂φi)-∂μ{∂/∂(∂μφi)}=0 によって

(∂/∂φi)をμ{∂/∂(∂μφi)}で置き換えると,

δ=∂μ{∂/∂(∂μφi)}εGij,∂μφj)

+{∂/∂(∂