103. 電磁気学・光学

2019年11月21日 (木)

光の量子論12

※「光の量子論11」からの続きです。

(※余談):いとしのエリカ様,薬物疑惑で逮捕ですか?

真実だとしても誰かを傷つけたワケじゃなくカワイイもんです。

またも,政権スキャンダルと偶然?一致のタイミングですか。

(※ 氾文雀以来のカワイサ,。。草冠のハンが出てこない。)

まあ,昔,タオルで顔隠してヘルメットにゲバ棒でパクられて

ウソの情報聞かされながら聴取されたりした身には,マスコミと

いう名で無節操に垂れ流す,大方の世論に迎合しないとモノが

売れないスポンサー様イノチの「大本営発表」,逆らえば仕事

も干される方々のフェイクか否かも判断せず,本音に歯にキヌ

着せたコメントなどは,鵜呑みにできないタチのヘソマガリて,

命は残り少ないが,映画同様,最後は抹殺される運命の

アウトサイダーを気取っても,何の力もないクソジジイ

の無駄な抵抗故,ハナも引っかけられない遠吠えですが。

(余談終わり※)

さて本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.10

(放射減衰を伴なうRabi振動)の項で,自発放出の減衰項を

加えた光学Bloch方程式から,まず,ビーム照射の長時間

極限の定常状態について考察し論じました。

その後,逆にビーム照射時間が短かい場合,一般解が

複雑なので.解の特徴を見るため,特殊な2つの例のみ扱い,

まず,(ⅰ)ω=ω0で初期条件がρ22=ρ12=0 で,|Ω|>γ

の場合のρ22(t)=|C2(t)|2の解として,(2.126)の

ρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

(ただし,λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2.(2.127))を導出したところ

で終わりました。

 

今回はその続きです。

放射減衰がない(γ=0)のときには,上記の式(2.126)は,

ρ22(t)=(1/2)[1-cos(|Ω|2t)}=sin2(|Ω|t)となり,

これば,純粋な原子の2準位間の振動=Rabi振動の表式

ρ22(t)=(|Ω|212)sin2(|Ω|t)(2.87);ただし,Ω1

={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2の,離調{ω0-ω)がゼロの場合

に一致します。

他方,γ≠0の場合は,(2.126)はtが大きくなると

(2.119)のρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}の

離調がゼロの定常極限値:ρ22=(|Ω|2/4)/(γ2+|Ω|2/2)

に近づきます。

この場合,因子:exp(-3γt/2)があるので,γの増加と

共に振動の減衰が急速になり,γ=|Ω|/3では極大が1つ

しか残りません。

※(注12-1):(2.126)式を,.

ρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

-{(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}exp(-3γt/2)

×{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}

(λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2)と書いて,tで微分すると,

dρ22/dt={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}exp(-3γt/2)

×[(3γ/2){cos(λt)+(3γ/2)(1/λ)sin(λt)}

+λsin(λt)-(3γ/2)cos(λt)}

={|Ω|2/(2λ)}{(λ2+9γ2/4)/(2γ2+|Ω|2)}sin(λt)

×exp(-3γt/2)={|Ω|2/(2λ)}sin(λt)exp(-3γt/2)

です。

それ故,dρ22/dt=0となるのはsin(λt)=0の

とき,つまり,t=nπ/λ(n=0,1,2,..),のときです。

このとき,対応して,cos(λt)=cos(nπ)=(-1)

なります。

したがって,t=0では確かにρ22(t)=0ですが,

t=nπ/λ(n=1.2…)では,nが奇数なら,

ρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}[1+exp{-3nπ/(2λ)}]

で,これらは極大値となり,他方,nが偶数なら,

ρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}[1-exp{-3nπ/(2λ)}]

で,「これらは極小値です。

そもそもγ>2|Ω{(|Ω|<γ/2)ならλ<0なのでλは虚数

になるので三角関数で表わされる振動解ではないです。

γ<2|Ω|で特にγ=|Ω|/3,ではλ=(11/12)1/2|Ω|,

(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}=9/22, exp{-3γt/2)=exp(-|Ω|t/2)

となり,t=π/λで最大で,それ以後減少しますが,極大値が1つだけ

残るという意味は不明です。??? 

nが奇数の極大値:ρ22={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1+exp{-3nπ/(2λ)}]が,n>1では,飽和値の1/2を

越えてしまうのかな? (注12-1終わり※)

 

さて,こういうわけで,占位数に顕著な振動が現われるため

には,|Ω|が3γより,ずっと大きくなければなりません。

こうした原子の振動的挙動は「光章動」と呼ばれています。

章動周波数は,一般に,Rabi周波数:|Ω|,離調:ω0-ω,

および,放射減衰;γに依存します。

(2.84)のΩ1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2と,(2.127)の

λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2は,それぞれ,γ=0とω0-ω=0の場合の

章動周波数に相当しますが,一般の場合のそれに対する簡単な

解析的表式はありません。

※(注12.2):つまり,γ=0の放射減衰が考慮されないときは,

「光の量子論9」の§2.7(Rabi振動)の項でha,初期条件

が,ρ22=ρ12=0の場合の光学Bloch方程式のρ22の解が,

次の(2.87);ρ22(t)=(|Ω|212)sin21t/2)

1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2)で与えられ,続く「光の量子論10」

では特に,離調;ω0-ωがゼロ,つまり,ω=ω0の特別な場合

には,Ω12=|Ω|2となるため,解はρ22=sin2(|Ω|t/2)(2.89),

と簡単になり,この場合,原子は基底状態1と励起状態2

との間を対称的に振動しますが,これをRabi振動と呼び,,|Ω|

をRabi周波数と呼ぶ,と書きました。(※ 離調;ω0-ωがゼロで

ないならΩ1がRabi周波数ですね。)

そして,本記事ではγ≠0で放射減衰があるとき,離調;ω0-ωが

ゼロなら,初期条件がρ22=ρ12=0 で,|Ω|>γの場合のρ22の解

は(2.126)のρ22(t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

(λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2))で与えられる:Rabi周波数はλになる,

ことを述べましたが離調がゼロでない一般の場合の解は,未だ不明

です。(注12-2終わり※)

しかし,実情としては|Ω|がγより,ずっと大きくないなら目立った

振動は見られません。それ故,光章動を観測するためには,レーザー

光源が用いられています。

そこで,次に,ビームが強い場合,原子励起度が光の励起ビームに

及ぼす効果を考えます。

原子が初め基底状態にある場合は,初めのうちはエネルギーが

原子に移るにつれてビームは減衰してゆきます。

 しかし,ビームが十分強いため,|Ω|が離調ω0-ωより大きく,

減衰γよりずっと大きい場合は,原子波動関数の励起状態の成分が

いつかは基底状態の成分を上回るので,原子のエネルギーの一部

は放射によって光ビームに戻り,ビーム強度が最初の値より大きく

なります。

したがって,原子の光章動に伴なって,それに対応した透過強度の

振動が現われます。実際の実験での透過光の時間依存性の詳しい理論

では,光学的振幅への他の寄与も考慮すべきですが,基本的には,この

現象は原子励起の示す振動的挙動の1つの結果と考えられます。

 

さて,Bloch方程式が容易に解ける第2の特別な場合は,(ⅱ)|Ω|が放射

減衰のγより,ずっと小さい場合,つまり,入射ビームが弱い場合です。

結論から言うと,C1については修正せず,C2については自然放出

の項を付加して修正した方程式:Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2

=i(dC2/dt)を,密度行列の式:dρij/dt=Ci(dCj/dt)

+Cj(dCi/dt)に代入した後,cos(ωt)を指数関数表示して,

ω0~ωの回転波近似を施した方程式:(2.114),(2.115)

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22.

dρ12/dt=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12(

の,|Ω|<<γの極限での|Ω|について最低次のρ22の解は,

前の例(ⅰ)と同じ初期条件のρ22=ρ12=0の下で,

に対して,ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)](2.128)

となります。

※(注12-2);上記を証明します。

[証明]:ρ~12=exp{i(ω0-ω)t}ρ12,

ρ~21=exp{-i(ω0-ω)t}ρ21,とおくと,

dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ~12+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22.,

dρ~12/dt=(iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ~12-i(ω0-ω)ρ~12,

となります。

dρ~21/dtは,これの複素共役で与えられ,dρ~21/dt

=(-iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ~21+i(ω0-ω)ρ~21.と

なります。

そこで,x=ρ22,y=(-iΩ/2)iΩ*ρ~12,y=(iΩ/2)ρ~21,

と置くと,これらは,dx/dt=y+y-2γx,

dy/dt=(|Ω|2/4)(1-2x)+{-γ-i(ω0-ω)}y

dy/dt=(|Ω|2/4)(1-2x)+{-γ+i(ω0-ω)}y

と書けます。

整理すると,dx/dt=-2γx+y+y,

dy/dt=-(|Ω|2/2)x+{-γ-i(ω0-ω)}y+|Ω|2/4,

dy/dt=-(|Ω|2/2)x+{-γ+i(ω0-ω)}y+|Ω|2/4

です。そこで,これを3次元の列ベクトル:=[x,y,y]

に対する線形非同次の行列方程式の形で3×3係数行列を^

として,d/dt=^,と書きます。

ただし,定数項=[0,|Ω|2/4.|Ω|2/4]です。

これの初期条件がt=0で0の解は,既に何度か示した

ように,(t)={exp(^t)-1}^-1で与えられます。

逆行列:A^-1は,その要素が,

(det^)(^-1)11=γ2+i(ω0-ω)2

(det^)(^-1)12=-γ-i(ω0-ω),

(det^)(^-1)13=-γ+i(ω0-ω)

(det^)(^-1)21=-(|Ω|2/2),

(det^)(^-1)22=-2γ{-γ+i(ω0-ω)}+|Ω|2/2,

(det^)(^-1)23=-(|Ω|2/2),

(det^)(^-1)31=(|Ω|2/2){-γ+i(ω0-ω)},

(det^)(^-1)32=-|Ω|2/2,

(det^)(^-1)33=―2γ{-γ-i(ω0-ω)}+|Ω|2/2,

で与えられます。

ただし,det^=-2γ{γ2+i(ω0-ω)2}

-(|Ω|2/2){γ-i(ω0-ω)}-(|Ω|2/2){γ+i(ω0-ω)}

=-2γ{γ2+i(ω0-ω)2+|Ω|2/2}です。

また,^=α(0)を満たす固有値αを求める

方程式は,det(^-α^)=0ですが,これは,

(-2γ-α){(-γ-α)2+(ω0-ω)2}

-(|Ω|2/2){(-γ-α)-i(ω0-ω)}

-(|Ω|2/2){(-γ-α)+i(ω0-ω)}=0となります。

つまり,(-2γ-α){(-γ-α)2+(ω0-ω)2}

-|Ω|2{(-γ-α)=0です。

さらに,書き下すと,α3+{γ2+(ω0-ω)2-|Ω|2

+2γ{γ2+(ω0-ω)2+(|Ω|2/2)}=0 です。

しかし,今は|Ω|の最低次近似を求めればいいので,

因子:|Ω|2を含む講を無視する近似では,

固有値方程式は(α+2γ){(α+γ)2+(ω0-ω)2}=0

となり,異なる3つの固有値として,α0=-2γ,

α±=-γ±i((ω0-ω)(複号同順)を得ます。

それ故,特に,α+α=-2γ=α0,および,

αα=γ2+(ω0-ω)2なる関係が成立します。

そして,この近似で,α0に属する固有ベクトル

を,それぞれ,Y0,Yと書けば,定数倍の任意性を除き,

0=[1,0,0],Y=[-α-1,1,0],=[-α-1,0,1]

と書けることがわかります。

これらを3列に並べた行列を^=(0,,)と書いて

定義し,その逆行列^-1^-1=(0,,)と表わすと,

det(^)=1なので,Z0=[1,0,0],Z=[α-1,1,0],

=[α-10,1]となります。

こうすると,対角要素が固有値:α0の対角行列

Λ^は,Λ^=P^-1^^で与えられます。

そこで,exp(Λ^t)=P^-1exp(A^t)^が成立します。

それ故,前に与えた初期値が0のd/dt=A^X

の解:(t)={exp(^t)-1}^-1において,|Ω|の最低

次近似の解としての(t)は,左からP^-1を掛けて,

P^-1(t)={exp(Λ^t)-1}P^-1^-1bを満たします。

これから,結局.X(t)=P^{exp(Λ^t)-1}P^-1^-1

が得られます。

ところで,A^の逆行列^-1の要素の近似を書き下すと,

1行目は変更無しで,(det^)(^-1)11=αα,

(det^)(^-1)12=α,(det^)(^-1)13=αです。

また,2行目の近似は,(^-1)21=(^-1)23=0,および,

(det^)(^-1)22=-2γ{-γ-i(ω0-ω)}=α0αです。

3行目は,(^-1)31=(^-1)32=0,(det^)(^-1)33

=-2γ{-γ+i(ω0-ω)} =α0αとなります。

さらに,det^=-2γ{γ2+i(ω0-ω)2}=α0αα

と書けます。

それ故,=[0,|Ω|2/4.|Ω|2/4]=(|Ω|2/4)[0,1,1]

に対して^-1={|Ω|2/(4αα)}[(α+α)/α0]

={|Ω|2/(4αα)}[1,-α]です。

( ※については,|Ω|2を無視するとゼロとなって無意味なので,

|Ω|2を因子として残します。)

さらに,左から^-1=(0,,),Z0=[1,0,0],

=[α-1,1,0],=[α-1,0,1]を掛けると.

P^-1^-1={|Ω|2/(4αα)}=[1,α]

ですから,P^-1(t)={exp(Λ^t)-1}^-1^-1

{|Ω|2/(4αα)}

[exp(α0t)-1,α{exp(αt)―1},α{exp(αt)-1}]T 

を得ます。

最後に,両辺の左からP^=(Y0,Y,),

0=[1,0,0],Y=[-α-1,1,0],Y[-α-11,0]

を掛けて,近似解:X(t)=[(t),y(t),y(t)]の成分

x(t)を求めます。

第1成分は,x(t)={|Ω|2/(4αα)}

×[exp(α0t)-1-exp(αt)+1-exp(αt)+1}

={|Ω|2/(4αα)}

[1+exp(α0t)-exp(αt)-exp(αt)}]

={(|Ω|2/(4αα)}

×[1+exp(-2γt)-exp{i(ω0-ω)t}exp(-γt)

-exp{-i(ω0-ω)t}exp(-γt)}]となりますから,

結局,ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]

が得られます。[証明終わり] (注12-2終わり※)

(※ うーん。1つの証明が長過ぎるね。こりゃ疲れるわ。)

 

この(2.128)の,ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]の結果

は,放射減衰:γがゼロの極限で,ω~ω0の場合,ω0t>>1の

遷移時間tに対する「光の量子論7」のρ22(t)=|C2(t)|2

=|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2.(2.42)に一致します。

|Ω|t<<1におけるρ22のtに対する曲線は,いずれも

時間tの2次の時間依存性を示します。この性質は,光学Bloch

方程式の解を時間について展開すれば証明できます。

すなわち,(2.114),(2.115)の解の|Ω|の最低次の項は,

|Ω|t<<1,および,t=0での初期条件:ρ22=ρ12=0に対し,

離調:ω0-ω,や減衰γに無関係に,ρ22=(1/4)|Ω|22(2.129)

となります。

※(注12-3):上記を証明します。

[証明];t<<1,|Ω|<<1.γt<<1で,(2.128)は,

ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]

~[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+(1-2γt+2γ22)

-2(1-(ω0-ω)22/2)(1-γt+γ22/2)

=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]{(ω0-ω)22+γ22}

=(1/4)|Ω|22を得ます。[証明終わり] (注12-3終わり※)

この,初めのうちは,励起度が時間tの2乗に比例して増加

するという挙動は,「光の量子論7」で述べたような,

tΔω>>1を満たす広帯域の入射光に対し,(2.49)で

与えたρ22(t)=|C2(t)|2=πe2|X12|2W(ω)t/(ε0.c2)

の,励起度が時間tに比例する,という挙動とは対照的です。

しかし,放射広がりがある場合は,単色の式(2.128)を吸収線

のωの広がりにわたって積分することで,広帯域の場合の結果を

復元することができます。つまり,簡単な複素平面上の外周積分

により,∫ρ22dω={π|Ω|2/(4γ)}{1-exp(-2γt)}(2.130)

が得られ,γt<<1では,{1-exp(-2γt)} ~2γtより左辺

はtに比例します。

※(注12-4):上記(2.130)を証明します。

[証明] ρ22(t)=[(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2}]

×[1+exp(-2γt)-2cos{(ω0-ω)t}exp(-γt)]

∫ρ22(t)dω=(|Ω|2/4)[∫dω/{(ω0-ω)2+γ2}]

{1+exp(-2γt)}-(|Ω|2/4)[∫dω[2cos{(ω0-ω)t}

/{(ω0-ω)2+γ2)}]×exp(-γt) です。

ところが,まず,∫-∞dω/{(ω0-ω)2+γ2}

=(1/γ)[Tan-1{(ω0-ω)/γ]] -∞=π/γです。

一方,∫dω[2cos{(ω0-ω)t}/{(ω0-ω)2+γ2)}

=∫-∞dω([exp{i(ω0-ω)t}+exp{-i(ω0-ω)t}]

/[{(ω0-ω)-iγ}{(ω0-ω)+iγ}])です。

ここで,次の公式が成立することを利用します。すなわち,

-∞dω[exp(±iωt)/{(ω-iγ)(ω+iγ)}]

=(π/γ)exp(-γt)です。

何故なら,複素ω平面でωを半径がRの大円:

つまり,ω=Rexp(iθ)=R(dosθ+isinθ)とすると,

dω=iRexp(iθ)dθでありR~∞では,

exp(±iωt) /{(ω-iγ)(ω+iγ)}

=exp(±itcosθ)exp{±(-tRsinθ)

/[{Rexp(iθ)-iγ}{Rexp(iθ)-iγ]

~exp{±(-Rsinθ)/R2ですから,分子がexp(iωt)

なら,θが0→πの反時計回りの上半円周,分子がexp(-iωt)

なら,θが0→(-π)の時計回りの下半円周を取れば,tが正

では,共に,半円周上の寄与はゼロとなり,積分の極は上半円周

ではω=iγ,下半円周ではω=-iγ,なので留数は,

±2πi/(±2iγ)exp(-γt)ですから,

-∞dω[exp(±iωt) /{(ω-iγ)(ω+iγ)}]

=(π/γ)exp(-γt)を得ます。

以上から,∫dω[2cos{(ω0-ω)t}/{(ω0-ω)2+γ2)}

=∫-∞dω([exp{i(ω0-ω)t}+exp{-i(ω0-ω)t}]

/[{(ω0-ω)-iγ}{(ω0-ω)+iγ}])

=(2π/γ)exp(-γt)です。

したがって,∫ρ22(t)dω=(|Ω|2/4)

[(π/γ){1+exp(-2γt)}

-(2π/γ)exp(-γt)exp(-γt)]

={π|Ω|2/(4γ)}{1-exp(-2γt)}が得られました。

[証明終わり] (注12-4終わり※)

この(2.130)の表式:

∫ρ22dω={π|Ω|2/(4γ)}{1-exp(-2γt)}には,

t→∞の極限の定常状態で∫ρ22dω={π|Ω|2/(4γ)}

になるという(2.124)の結果が,既に含まれています。

他方,(2.130)は,(2.125)の,∫BWdω=|Ω|2/2,

および,A=2γをも援用すると,π∫(BW/A)dω

=∫ρ22dω={π(∫BWdω)/A}{1-exp(-At)}

となり,第1章で,吸収と放出のアインシュタインの理論

で導かれ広帯域の結果(1.70):N2={NBW/(A+2BW)}

[1-exp{-(A+2BW)t}]の弱ビーム:BW<<Aの極限

のケースの表式と正確に一致することがわかります。

ただし,本節で導いた明快な結果はゼロ離調と弱ビームの

極限における励起度:ρ22=N2/Nの時間依存性を表わしている

に過ぎません。

より一般的ケースの解を求めるには光学Bloch方程式を数値

積分するのが,最も便利で有効な道です。

 

今回は,本節がここで終わるので,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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2019年11月13日 (水)

光の量子論11

※「光の量子論10」からの続きです。

(※ 余談):最近IEでは,コピペが,うまくできなく

なったので,Firefoxで開いて試してみると,できた

ので,以後,また,図なども挿入できそうです。

しかし,Win7のサポートが来年早々終わるそうです。

昔,Win10に無料のときにノートをバージョンアップ?した

けど,嫌いになってWin7に戻したのにね。

そのうち新しいソフトなどに対応できなくなったりして

くるのも困るので,イヤイヤ,安価のWin10をバンドルした

NECか富士通当たりの中古デスクトップを購入予定。。

OSやソフトのバージョンアップで利益を得ようとする

MSと縁切りたいけど,無理です。まあ,棺桶両足も近いし。

デスクトップは,確か,2016年だったか?に同じ理由で,

まだ使えるXPマシンから中古のWin7マシンに変えたけど,

3年持ったから,ま,いっか?今の時代,PCを持ち運ばずとも

サーバーを使えばいいし,私ほぼ寝たきりなのでので,画質

が悪く古い液晶ノートも持ってはいるけど.入院用です。

(余談終わり※)

さて本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.8

の周波数ωの自発放出に伴なう不可避の放射広がりの項

の説明で終わりました。

 

今回は,それ以外の周波数の広がりからです。

 

  • 2.9飽和広がり

前項で得た感受率の表式:

χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}.(2.108)は,

入射光ビームの電場に線形応答する原子気体に対して,

双極子モーメント:X12,または,D12について2次まで

正しい結果です。

より高次の項を含む結果については,光学Bloch方程式

を解けば得られます。この高次解を得るためには,最初

から,密度行列に対して,ω~ω0と考えて,

exp{±i(ω0-ω)t}の項だけを残してexp{±i(ω0+ω)t}

の項を無視する回転波近似の方程式,つまり「光の量子論9」

で論じた,dρ22/dt=-dρ11/dt

=(-i/2)Ωexp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}ρ21.(2.78)

および,dρ12/dt=dρ21/dt

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)(2.79)

についての解を求めればいい,ことになります。

しかし,この段階では自発放出の効果が入ってないので,

これを考慮に入れて,この方程式を修正・一般化する必要が

あります。

前に戻り,密度行列の定義:ρij=Cij;i,j=1,2)から,

dρij/dt=Ci(dCj/dt)+Cj(dCi/dt)ですが,

これに,C1については(2.31)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)を採用し,

2については前回,(2.32)に自然放出の項を付加

して修正した(2.99)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)

を代入して,近似抜きの方程式系を得た後に,

cos(ωt)=(1/2){exp(-iωt)+exp(iωt)}として,

ω~ω0と仮定し,exp{±i(ω0-ω)t}の項だけ残し,

exp{±i(ω0+ω)t}の項を無視する近似を適用すれば,

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22.(2.114),

および,dρ12/dt

=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12(2.115)

を得ます。

本当は(2.31)のC1の時間発展方程式の方にも,自然放出

による修正を加えるべきですから,単にγを導入したこれら

の手法が完全に厳密でないのは明らかです。

しかし,修正光学Bloch方程式:(2.114),(2.115)は,実は,

より厳密な計算から得られるものと同一です。

 

 さて,減衰項が存在するので解は完全な振動型ではなく,

十分長い時間が経過すれば定常状態になります。

定常状態の解を求めるには,まず,ρ1221

ρ~12=exp{i(ω0-ω)t}ρ12.(2.116a),

ρ~21=exp{-i(ω0-ω)t}ρ21(2.116b)

と置き換えて,(2.114),(2.115)から振動型因子を消去

します。すると,dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ~12

+(iΩ/2)ρ~21-2γρ22.(2.117),および,dρ~12/dt

=(iΩ/2)(ρ11-ρ22)-γρ~12-i(ω0-ω)ρ~12.(2.118),

となります。

dρ~21/dtは(2.118)の複素共役で与えられて,

dρ~21/dt=(-iΩ/2)(ρ11-ρ22)-γρ~21

+i(ω0-ω)ρ~21.となります。

これら.3つの方程式の左辺の変化速度を全てゼロと置き,

ρ11+ρ22=1を用いると,定常状態の解が求まります。

ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}(2.119)

ρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

(2.120)となります、

※(注11-1):上式を証明します。

[証明](2.117)でdρ22/dt=0より,

ρ22={-i/(4γ)}{Ωρ~12-Ωρ~21}(実数)を得ます。

一方,(2.118)でdρ12/dt=0,ρ11=1-ρ22より,

(-Ω/2)(11-2ρ22)=(ω0-ω-iγ)ρ~21なので

(Ω/2)(1-2ρ22)=-(ω0-ω+iγ)ρ~12,または,

(|Ω|2/2)(11-2ρ22)=-(ω0-ω+iγ)Ωρ~12

を得ます。ここで,Ωρ~12=a+ib(a,bは実数)

と置くと,(|Ω|2/2)(11-2ρ22)=-a(ω0-ω)+bγ,

かつ,0=-b(ω0-ω)―aγです。

b­=-aγ/(ω0-ω)でbを消去して

(|Ω|2/2)(11-2ρ22)=-a(ω0-ω)-aγ2/(ω0-ω)

=-a{(ω0-ω)2+γ2}/(ω0-ω)より,

a=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)[(ω0-ω)/{(ω0-ω)2+γ2}],

b=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)[-γ/{(ω0-ω)2+γ2}],

それ故,Ωρ~12=(-|Ω|2/2)(11-2ρ22)

[(ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2}]となります。

故に, Ωρ~12-Ωρ~12=2ib

=i|Ω|2(1-2ρ22)[γ/{(ω0-ω)2+γ2}],

ですが,これを先のρ22={-i/(4γ)}{Ωρ~12-Ωρ~12}

に代入すれば,4iγρ22=iγ|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ2}

-2iγρ22|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ2},なので,

4iγρ22{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}/{(ω0-ω)2+γ2}

=iγ|Ω|2/{(ω0-ω)2+γ2}となります。

したがって,ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

が得られました。

これから,1-2ρ22

={(ω0-ω)2+γ2}/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

ですから,Ωρ~12=(-|Ω|2/2)(1-2ρ22)

×[(ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2}]

=(-|Ω|2/2)(ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

です。

故に,ρ~12=(-Ω/2)(ω0-ω-iγ)

/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}です。それ故.

ρ12=-exp{-i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω-iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

も得られました。[証明終わり](注11-1終わり※)

 

次に,これら定常状態のときの式が感受率に及ぼす

効果を考えます。

前記事の放射広がりの項で与えた,1原子の双極子

モーメントdの表式(2.96)

d(t)=-e{C1212exp(-iω0t)+C2121exp(iω0t)}

より,d(t)=-e{ρ1212exp(-iω0t)+ρ1221exp(iω0t)}

で,X12=∫ψiXψ2dV,eo(2.121)と書けます。

これに対し,気体の分極は(t)=N(t)/V

=(1/2)ε00{χ(ω)exp(-iωt)+χ(ω)exp(iωt)}ですから,

(1/2)ε00χ(ω)=-eρ1212exp{-i(ω0-ω)t}(N/V)です。

 

故に,χ(ω)={-2eρ12NX12/(ε00V)}exp{-i(ω0-ω)t}

を得ます。ただし,Ω=eE012/hcであり,|X12{2を配向角平均の

<|X12{2>=(1/3) |D12{2で置き換えます。

すると,Ω=eE012/hcより,Ω*12=eE0|X12|2/hc

~eE0|D12|2/(3hc)となります。

そして,ρ12=-exp{i(ω0-ω)t}

×[(Ω/2)ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}より,

χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×[(ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}](2.122)

を得ます。

|Ω|2=e202|X12|2で,これが分母に含まれていますから

この表式は,もはや電場の1次の感受率ではありません。

そして,この(2.122)の感受率χ(ω)は,先に放射広がの項

で得た(2.108)の感受率;χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}の回転波近似:

χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×[(ω0-ω+iγ)/{(ω0-ω)2+γ2}と,分母の/|Ω|22

を除けば同じです。したがって,その虚部もχ”(ω)

={Ne2|D12|2γ/(ε0cV)}/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

であり,先のχ”(ω)={Ne2|D12|2γ/(ε0cV)}

/{(ω0-ω)2+γ2}と分母の/|Ω|22を除いて同じです。

(2.122)の中には|Ω|22の項が入っており|D12|2∝|Ω|

なので,第1章で考察したのと同様,飽和効果が生じます。

(※入射光ビームが大きくなると,|Ω|2→大ですが,励起原子

の数はN2→(N/2)と,飽和状態に近づき,遷移が減衰します。)

これが入射光の吸収速度,つまり減衰速度を減少させる

のは明らかです。

吸収係数はK(ω)={ω/(cη)}χ” (ω)です。

これは電場の1次の感受率では,ω~ω0,η~1で

K(ω)~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}

×[(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}](2.111)で与えられましたが,

これも,K(ω)~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}

×[(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ+|Ω|2/2}]になります。

そこでK(ω)が最大のω=ω0のときの半分の値:

K(ω0)/2をとるωは,前はω=ω0±γでしたが,これも,,

ω=ω0±(γ2++|Ω|2/2)1/2に変わります。

すなわち,線幅は,2γから2(γ2++|Ω|2/2)1/2.(2.123)に

増加します。この付加的寄与は「飽和による広がり」と

呼ばれます。

 

  • 2.10 放射減衰を伴なうRabi振動

前節で導いた感受率は定常状態の非対角密度行列要素に

支配されることがわかりました。他方,対角密度行列要素は

2つのエネルギー準位の原子占有数を与えます。

単色光の照射によって生じた定常状態の励起状態占有数

に対する減衰を伴なう光学Bloch方程式(2.119)の解:

|C2|2=ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}の結果

は,前の記事「光の量子論3」で,広帯域の光を照射したとき

の,(A+2BW)t>>1の長時間が過ぎると励起状態占有数

が定常状態の値:N2=NBW/(A+2BW)=|C2|2Nに近づく,

という(1.74)の結果と比較することができます。

(※ただし,A=A21,B=B21=B12です。)

これら,2つの表式(2.119),(1.74)は細かい点では違いが

ありますが,共通のより重要な特徴を備えています。

(2.119)は,|Ω|が,自発減衰γ,or離調:ω0-ωより,ずっと

大きくなると,|C2|2=ρ22=(|Ω|2/4)/{(ω0-ω)2+γ2+|Ω|2/2}

が極限値:1/2に近づくことを示していますが,これは,BW<<1

なら,(1.74)の|C2|2=BW/(A+2BW)が極限値:1/2に飽和して

ゆく様子と,一致しています。

そして,(2.119)をωで積分すると,|Ω|<<γのときには,

∫ρ22dω=π|Ω|2/(4γ).(2.124)を得ます。

※(注11-2):何故なら,∫-∞(x2+a2)-1dx

=[aTan-1(x/a)] -∞=πa/2-(-πa/2)=πaですから

|Ω|<<γなら,∫-∞({(ω0-ω)2++γ2+|Ω|2/2}-1dω

=π(γ2+|Ω|2/2)1/2~πγ です。(注11-2終わり※)

これは,つまり,入射光ビームが弱い極限では,広帯域の励起

原子の数は,光のエネルギー密度に比例することを意味します。

Ωの定義は,Ω=eE012/hcであり,原子内の電子の配向平均

では,<|X12|2>=(1/3)|D12|2です。

また,ビームの平均エネルギー密度は,サイクル平均で,

(1/2)ε02=∫W(ω)dωです。そこで,2.55)の,B12

=πe2|D12|2/(3ε0c2)=π|Ω|2/(ε002)の表式からわかる

ように,∫BWdω=π|Ω|2/2.(2.125)が成立します。

したがって,2γ=A21=1/τ(2.102)を援用すれば,

BW<<Aの弱ビーム極限で∫(BW/A+2BW)dω

~π|Ω|2/(4γ)であり,(1.74)の(A+2BW)=|C2|2の積分

結果が,広帯域の(2.119)の吸収線のωにわたる積分で得る

(2.124)の∫ρ22dω=π|Ω|2/(4γ)のの結果と,正確に一致

します。

定常状態における(2.119)の原子の励起状態占有数は,その

初期値に依存しません。

 

しかし,長時間極限の定常状態ではなく,照射時間が短かいとき

の原子占位数は,本記事最初の光学Bloch方程式(2.114),(2.115)

dρ22/dt=(-iΩ/2)exp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}ρ21-2γρ22,および,

dρ12/dt

=(iΩ/2)exp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)-γρ12

を初期条件を入れて,もっと一般的に解く必要があります。

ですが,残念なことに,この一般解はあまり明快な形に書けない

ことがわかっています。

そこで解の例として2つの特別な場合を考えます。

まず,(ⅰ)離調:(ω0-ω)がゼロ.を仮定した場合,

次に,(ⅱ)光ビームが弱く,|Ω|<<γの場合の2つ

を考察します。

(ⅰ)光学Bloch方程式(2.114),(2.115)の解はω=ω0でt=0

の初期条件がρ22=0,ρ12=0のときには,ρ22について,

ρ22 (t)={(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)}

×[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

(2.126)となります。

ただし,λ=(|Ω|2-γ2/4)1/2.(2.127)です。

※(注11-3):上記を証明します。

[証明] ω=ω0では,(2.114)は,

dρ22/dt=(-iΩ/2)ρ12+(iΩ/2)ρ21-2γρ22,

(2.115)は,dρ12/dt=(iΩ/2)(1-2ρ22)-γρ12となり,

書けます。そして,ρ21=ρ1222=ρ22です。

この方程式系は,線形変換で,

dρ22/dt=(-i/2)(Ωρ12-Ωρ21*)-2γρ22,

および,Ω(dρ12/dt)-Ω(dρ12/dt)

=(i|Ω|2)(1-2ρ22)-γ(Ωρ12-Ωρ12*)に変換されます。

そこで,f­=ρ22,g=(-i/2)(Ωρ12-Ωρ21*)と置くと,

f,gは共に実数値関数で,df/dt=-2γf+g,かつ,

dg/dt=-|Ω|2f-γg+|Ω|2/2となります。

これは,=[f,g],=[0,|Ω|2/2]なる縦ベクトルに

対して2×2係数行列を^としてd/dt=^です。

ところが,前回の(注10-1)では,線形非同次方程式:

df/dt=af+g(t)の解は,

f(t)=exp(at)[∫0{exp(-at)g(t)}dt]

+f(0)で与えられる,ことを示しました。

そこで,同様に,d/dt=^の解も,記号的に,

(t)=exp(^t)[∫0{exp(-^t)}dt]+(0)

=exp(^t)[-exp(-^t)^-1]0(0)

で与えられるはずです。

ただし,初期条件がρ22(0)=ρ12(0)=0の場合は,(0)=0

です。exp(^t),exp(-^t)は,それぞれ次式で定義されます。

すなわち,exp(^t)=Σn=0{(^t)/n!}であり,かつ,

exp(-^t)=Σn=0{(-^t)/n!} です。

故に,(t)=exp(^t){^-1-exp(-^t)^-1}

が,初期条件を満たす解です。

必要かどうか?は不明ですが,P^の逆行列:^-1の要素

も求めておきます。det(^)=|Ω|2+2γ2であって,

det(^)(^-1)11^22=-γ,det(^)(^-1)12=-^12

=-1,det(^)(^-1)21=-^21=|Ω|2, det(^)(^-1)22

^11=-2γです。

 さて,唐突ですが,=α(≠0)という,行列P^

の固有値αと,その固有ベクトルを求める固有値問題

を考えます。

線形代数学から固有値αは^を単位行列として,

det(^-α^)=0という方程式の解で得られます。

この方程式は,(-2γ-α)(-γ-α)+|Ω|2=0,

つまり,αの2次代数方程式:α2+3γα+2γ2+|Ω|2

=0 を意味します。そこで,解の公式から,解αは

α=-3γ/2±i(|Ω|2-γ2/4)1/2です。ここで,

ビームの電場0が十分大きくて,|Ω|2≧(γ2/4)であると

仮定しました。それ故,実数λをλ=(|Ω|2-γ2/4)1/2

置くと,2つの固有値は,α=α±=-3γ/2±iλ(複号同順)

と書けます。故に.γ+α±=-γ/2±iλです。

そして,α±に属する固有ベクトルを,±(複号同順)とします。

つまり,^x=α,^x=α (x±≠0)です。

これら固有ベクトルの成分:x1,x2は,係数が逆行列を持たぬ

連立方程式:-2γx1+x2=α±1,-|Ω|21-γx2=α±2

から,(γ/2±iλ)x1=x2, or (-γ/2±iλ)x2=-|Ω|21

となるので,例えば.x2=1と置くと,x1=-(-γ/2±iλ)/|Ω|2

を得ます。したがって,定数倍の不定性を除いて,

=[(γ/2-iλ)/|Ω|2,1],==[(γ/2+iλ)/|Ω|2,1]

書けます。

ここで,行列:^を^=(+,)と,定義すると,

^^=^()=(α)が成立します,

右辺は,^=(+,)に,対角要素がαで非対角要素

がゼロの対角行列を掛けたものに等しいです。

そこで,この対角行列を,Λ^とすれば,これて^^=^Λ^

を意味します。そして.^=(+,)には逆行列:^-1が存在

するため, ^^=^Λ^から,Λ^=^-1^^を得ます。

これから,Λ^^-1^^となりますから,結局,

exp(Λ^t)=^-1exp(^t)^を得ます。

逆に,exp(^t)=^exp(Λ^t)^-1です。

同様に,exp(-Λ^t)=^-1exp(-^t)^,かつ,

exp(-P^t) =Q^exp(-Λ^t)Q^-1です。

先に,=[f,g],=[0,|Ω|2/2]に対する

/dt=^の,記号的なものとして得た解:

(t)=exp(^t){^-1-exp(-^t)^-1}は,

^-1(t)=exp(Λ^t)

×{Λ^-1Q^-1-exp(-Λ^t)Λ^-1Q^-1}となります。

exp(±Λ^t)は対角成分が,exp(±αt),exp(±αt)

の対角行列となりますから,具体的解を得るには,後は^-1

求めればいい,だけです。

Q^=(+,)の行列要素は列ベクトルの成分で,

=[(γ/2-iλ)/|Ω|2,1][-(γ+α)/|Ω|2,1],

=[(γ/2+iλ)/|Ω|2,1]=[-(γ+α)/|Ω|2,1]

と表わされます。

^の逆行列^-1の行列要素は,det^(^-1)11^22=1,

det^(^-1)12=-^12=-(γ/2+iλ)/|Ω|2

=(γ+α)/|Ω|2,det^(^-1)21=-^21=-1,

det^(^-1)22^11=(γ/2-iλ)/|Ω|2=-(γ+α)/|Ω|2,

および,det(^)=-2iλ/|Ω|2,or{det(^)}-1=i|Ω|2/(2λ)

で表現されます。

すなわち,逆行列^-1も列ベクトル1,2によって,

^-1=(1.2),ただし,1={i|Ω|2/(2λ)}[1,-1],

2={i/(2λ)}[-(γ/2+iλ),(γ/2-iλ)] 

{i/(2λ)}[(γ+α),-(γ+α)] と表わせます

よって,=[0,|Ω|2/2]に対して,^-1

=[(-i(γ/2+iλ)|Ω|2/(4λ),i(γ/2-iλ)|Ω|2/(4λ)] 

={i|Ω|2/(4λ)}[(γ+α),-(γ+α)]

それ故,Λ^-1Q^-1

{i|Ω|2/(4λ)}[(γ+α)/α.-(γ+α)/α]です。

そこで,先に書いた対角化された方程式の解::

^-1(t)=exp(Λ^t)

×{Λ^-1-1-exp(-Λ^t)Λ^-1-1}の左辺の

列ベクトルを,^-1(t)=[f~,g~]と成分表示すれば,,

f~={i|Ω|2/(4λ)}{(γ+α)/α}{exp(αt)―1}

および,

g~=-{i|Ω|2/(4λ )}{(γ+α)/α}{exp(αt)-1}

となります。

それ故,-(γ+α)f~/|Ω|2-(γ+α)g~/|Ω|2

=-i|Ω|2/(4λα)}{exp(αt)―1},

+i|Ω|2/(4λα)}{exp(αt)-1},

=|Ω|2/|2(2γ2+|Ω|2)}-{i|Ω|2/(4λαα)}

×{αexp(αt)-αexp(αt)}

を得ます。

(※ (γ+α)(γ+α)=γ2/4+λ2=|Ω|2, αα

=(9/4)γ2+λ2=2γ2+|Ω|2です。)

  ところが,y(t)=[f,g]Q^[f~,g~]

ですが,^=(+,)で,

=[-(γ+α)/|Ω|2,1],

=[-(γ+α)/|Ω|2,1]T ですから,

f=―(γ+α)f~/|Ω|2-(γ+α)g~/|Ω|2

=(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)-i{|Ω|2/(4λ)}/(2γ2+|Ω|2)}

×{αexp(αt)-αexp(αt)}をえます。

α±=-3γ/2±iλより,

exp(αt)=exp(-3γt/2)exp(iλt)

exp(αt)=exp(-3γt/2)exp(-iλt)なので

(-i){αexp(αt)-αexp(αt)}

=[(3iγ/2){exp(iλt)-exp(-iλt)}

-λ{exp(iλt)+exp(-iλt)}]

×exp(-3γt/2)

={-2λcos(λt)-3γsin(λt)}exp(-3γt/2)

したがって,f=ρ22=(|Ω|2/2)/(2γ2+|Ω|2)

[1-{cos(λt)+(3/2)(γ/λ)sin(λt)}exp(-3γt/2)]

が証明されました。[証明終わり] (注11-3終わり※)

 

今回は,最後で過去ノートの13年前の計算にケアレスミス

があるのを発見しました。証明なので,何とか結論までたどり

ついてはいましたが,チェックの再計算に老齢のせいか3昼夜

もかかりました。例によって夢中になると寝食を忘れる偏執質

なので何度か低血糖でフラフラになりました。

インスリンを打たなくても長い考え事で,よく低血糖になり,糖分

ある場所まで這っていくほど動けなくなります。眠くなるけど

寝てしまうとアウトですね。 高血糖は長期的,慢性型なので

急性で脳死植物状態になる危険性はないのですがね。

でも,結局,正解を得たので,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

 

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2019年11月 6日 (水)

光の量子論10

※「光の量子論9」からの続きです。

※(余談):今回,この草稿は11/5(火)の早朝にはアップ

できるところまで完成したのですが,直後に月1回の大学病院

での循環器内科と形成外科の外来診察に出かけるためPending

にしました。

最近は食欲がなく,病院では毎度のように待ってるうち低血糖

や貧血などを起こして苦しんだりしてますが,幸い病院なので

誰かが助けてくれます。一応16時前には帰宅し一休みしている

うちに眠ってしまい,起きてTVを見るとプレミア12という野球

放送があり,それを見終えてからアップしました。

今だに,夜零時を過ぎると,なぜか元気になり行動のモチベーション

が上がって,眠くなくなるという不健康な性分は変わりません。

関係ないけど,絶世の美女だったらしい白拍子の静御前の歌

「しづや,しづ,しづのおだまき,繰り返し昔を今になすよしもがな

(成吉思汗?)」(高木彬光 著「ジンギスカンの秘密」から)

など昔の女子の歌が最近また気になってます。

額田王(ぬかだのおおきみ)の,「あかねさす紫のゆき,しめのゆき

野守りは見ずや,君が袖振る」とか小野小町の「花の色は移りに

けりな,いたづらに.わが身世に経る詠め(降る長雨)せし間に」とか

も気になります。

 誰とも縁がなくとも生来の女好き,スケベは,死ぬまで不治の病

です。

与謝野晶子の「柔肌の熱き血潮に触れ揉も見で寂しからずや

道を説く君」などは,まだまだ新しい方ですね。

高校生時代は,なぜか国語だけが田舎の成績でトップクラス

だったので,万葉集から新古今和歌集など和歌は,いろいろ

記憶してます。(余談終わり※)

さて本題です。

前回は第2章 原子・放射相互作用の量子力学の§2.7

のRabi振動の項で,最後に(注9.4)で密度行列ρ^に

対する光学Bloch方程式の特殊な初期条件の解を求めた

ところで中断でした。

今回は,まず,これまでの道筋を少し要約します。

 

原子密度行列:ρ^=(ρij)の4つの行列要素

ρijは,ρ11=|C1|2=N1/N,ρ22=|C2|2=N2/N,

ρ12=C1221=C21で定義されます。

ここで,C1,C2は,時間に依存する波動関数を2準位原子

の状態:1,2の固有波動関数の重ね合わせとして,次のように

表わしたときの係数です。すなわち,

Ψ(,t)=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)です。

密度行列が従う方程式は,Ci(t)が従う方程式から,

dρij/dt=Ci(dCj/dt)+Cj(dCi/dt)

によって導かれます。

故に,dρ22/dt=-dρ11/dt

=-icos(ωt){Ωexp(iω0t)ρ12

+iΩexp(-iω0t)ρ21},および.

dρ12/dt=-dρ21/dt

=iΩcos(ωt)exp(-iω0t)(ρ11-ρ22)です。

 

これに,cos(ωt)=(1/2){exp(iωt)+exp(-iωt)}

を代入し,ω~ω0において,exp{±i(ω0-ω)t}の項だけ

残し,exp{±i(ω0+ω)t}の項を無視する回転波近似を

すると,dρ22/dt=-dρ11/dt

=(-i/2)Ωexp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}ρ21,および,

dρ12/dt=dρ21/dt

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)を得ます。

これを「光学Bloch方程式」と呼びます。

それは振動磁場内のスピンの運動を記述するために

Blochが導出したものと同類のものであるからです。

ここで考察中の2準位原子の量子力学は,形の上では

同じ自由度が2のスピン:1/2の系のそれに全く等しい,

からです。

そして,前記事では(注9-4)で回転波近似をした密度行列

に対する光学Bloch方程式の解が.初期条件がρ22=0,ρ12=0

(C2=0)の場合に,ρ22=(|Ω|212)sin21t/2).(2.87),

および,ρ12=exp{-i(ω0-ω)t}

×{-(ω0-ω)sin(Ω1t/2)+iΩ1cos(Ω1t/2)}.(2.88)

(ただし,Ω1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2で,Ωは複素数ですが

Ω1は実数)で与えられることを示したところで終わりました。

 さて,この解で入射光の周波数ωと原子遷移の周波数ω0

の離調;ω0-ωがゼロ,つまり,ω=ω0の特別な場合には,,

Ω12=|Ω|2となるため,解はρ22=sin2(|Ω|t/2).(2.89),

および,ρ12=(iΩ/|Ω{2)sin(|Ω|t/2)cos(|Ω|t/2)}

(2.90)と簡単になります。

そこで,この場合,原子は基底状態1と励起状態2との間を

対称的に振動します。これはRabi振動として知られ,|Ω|

はRabi周波数と呼ばれます。

これは,Bloch方程式の場合と同じく振動磁場内のスピン

という類似の問題に対して,Rabiにより初めて得られたもの

です。

さて,光学Bloch方程式は回転波近似が施されている近似

方程式であるため,その解である(2.87),(2.88)は(ω0-ω)

が(ω0+ω)に比べて,はるかに小さいときしか,密度行列の

解の正しい近似とはならず,適切な解として成立しないこと

を強調すべきです。

それ故,(2.87)のρ22=(|Ω|212)sin21t/2)でω=0

12=ω02+|Ω|2と置いても,前々回の記事「光の量子論7」

の(注7.2)でのゼロ周波数静電場ω=0の厳密解|C2|2

={4|Ω|2/(ω02+4|Ω|2)}sin2{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t}(2.34)

は得られません。

(2.87),(2.88)は,単一の周波数ωを持つ厳密に単色の入射光

ビームに対する解ですが,実際にはρ22とρ12の正弦関数的挙動

が経験的に観測されるのは,周波数ωが遷移周波数ω0の周りに

あって,その遷移周波数の分布の幅に比べ,周波数ωの広がりが

小さい入射光を用いた場合だけです。

しかし,原子放射過程に広がりを与える過程はまた,光学

Bloch方程式に修正をもたらし,その結果,ρ時間依存性が

変わります。こうした問題については,この第2章の後の方で

論じる予定で,Rabi振動の発生に関する立ち入った考察も,

  • 2.10までPendingです。

 

一方,広帯域の入射ビームという逆の極端な場合は,本章の

初めと第1章で扱ったアインシュタイン理論の領域です。

アインシュタインのB係数の導出に用いた(2.42)の表式:

|C(t)|2­=|Ω|2sin2{(/2ω0-ω)t/2}/(ω0-ω)2は,(2.87)

のρ22(t)=(|Ω|212)sin21t/2)で,(2.84)で定義した

Ω1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2から|Ω|2を省き,Ω12=(ω0-ω)2

とすれば得られる,解(2.87)の特別な場合に相当しています。

|Ω|2が十分小さければ,

|C(t)|2­=|Ω|2sin2{(/2ω0-ω)t/2}/(ω0-ω)2から

(2.55)のB12=πe2|D12|2/(3ε0c2)なる結果を導出するに

至った以前の手順が,そのまま,成立します。

つまり,原子の核を原点とする束縛電子jの位置ベクトル

jとすると,=Σjjによる全電気双極子モーメントが

=-e(e>0)で与えられるため,振動電場E=0cos(ωt)

存在する場合の摂動の双極子近似の相互作用Hamiltonianは,

=-PE=eDE=eDE0cos(ωt)で与えられます。

定義によって,D12=∫ψ1ψ2dVですが,ベクトルDをD

=(X,Y,Z)と成分表示して,そのx成分X=Dcosθについても,

12=∫ψ1Xψ2dVとすれば,X12=D12cosθであって角度平均

では,<|X12|2>=(1/3)D122となります。

そして,一般には複素数のΩは,(2.23)でΩ=eE012/hにより

定義され,単色光の場合の遷移確率:N2/N=|C2(t)|2を示す(2.42)

の|C2(t)|2=(1/2)|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2は,振動

電場E=0cos(ωt)のビーム周波数ωがω0の周りに平均の

エネルギー密度W(ω)の分布を持って幅Δωで広がっているときは,

これは(1/2)|Ω|2に,(1/2)e2|E|02|X12|2/h2を代入し,電磁場

平均エネルギーの,∫W(ω)dω=|1/(2V)∫(ε0|E0|2)dV

=<(1/2)ε0|E0|2>なる対応から.(1/2)|Ω|2

=(1/2)e2|E0|2|X12|2/h2の因子(1/2)|E0|2を,時間平均:

<(1/2)|E0|2>=∫(W(ω)/ε0)dωに置換することで,

準位1→2の広帯域の遷移確率は,

|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)} W(ω)(Int)

で与えられる,とします。

ただし,積分因子(Int)は:Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω

×[sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2]で定義される量です。

このIntが(tΔω)→∞の極限で,Int=(1/2)πtとなる

ことから,<W(ω)>=∫W(ω)dωについてのB係数を,

12<W(ω)>=<|C(t)|2>={2e2<|X12|2>/(ε0c2)}

×W(ω)(Int)で与え,<W(ω)>=W(ω)(Int)であると

考えると,<|X12|2>=(1/3)D12を代入することで,

12=πe2|D12|2/(3ε0c2)なる計算結果を導いたのでした。

ここで用いた長時間極限:Int=(1/2)πtは,tΔω>>1の

条件下で得たのですが,これは,|Ω|が小さくて,その付帯条件:

|Ω|t<<1(2.91)が満たされていれば,やはり良い近似として

成立します。

この付帯条件は,要するに,入射光が原子遷移を飽和させる

ほどには強くないこと:つまり,アインシュタイン理論で仮定

した「原子遷移と入射エネルギー密度の比例性」を壊すほど

には強くないこと,を保証しています。

なお,光学Bloch方程式の解に含まれている飽和効果に

ついては,§2.9で論じる予定です。

 

  • 2.8 放射広がり

吸収と放出の基礎理論には線幅を広げる1つの機構が既

に含まれています。その広がりは,自発放出のプロセスから

生じるので,「放射による広がり」と呼ばれています。

自発放出の効果を2準位原子気体の感受率の量子力学的

導出の中に取り入れます。このとき,感受率と吸収係数の

関係から,放射によって広がった吸収線の形状に対する表式

が得られます。

 

さて,Z個の電子を持つ原子の気体が,原子の遷移周波数

ω0に近い周波数ωの電磁波から振動効果を受けている場合

を考えます。

前と同様,単一原子が電磁波とH=eDE0cos(ωt)で

記述される相互作用HamiltonianHが作用している場合を

扱います。この単一原子の結果を適当に平均して,乱雑な配向

をした原子(分子)の気体に対する類似の結果を求めます。

まず,印加電場:0cos(ωt)を,

(t)=(1/2)0{exp(-iωt)+exp(iωt)}(2.92)

と書きます。これが,気体に作用すると,(1.79)の=ε0χ

のような分極を生じます。

このχが1次の感受率と呼ばれる量です。

しかし,(2.92)の(t)のような電場では,感受率が周波数

ωに依存するとして,χ(ω)とする必要があり,(1.79)の静場

対する分極の式:=ε0χの代わりに,

(t)=(1/2)ε00{χ(ω)exp(-iωt)+χ(-ω)exp(iωt)}

(2.93)と一般化されます。

この時間に依存する分極:(t)を量子力学的に計算し,それで

得た表式を,上の(2.93)の表式と比較することから感受率χ(ω)を

決めることにします。

 そのため,まず,代表的な1個の原子の分極が気体の分極に

与える寄与を調べます。前と同じく原子の核を原点とするZ個の

電子の位置ベクトルの総和:=Σj=1jを考え,そのx成分をXと

します。電気双極子モーメントのxに平行な成分は,-eX

=-eΣj=1jの期待値で与えられます。

よって,原子波動関数をΨ~(t)と書けば,電気双極子モーメントの

x成分dは,d(t)=∫Ψ~*(t)XΨ~(t)dV(2.94)で与えられます。

ただし,dV積分はZ個の電子全ての座標について取ります。

(※ つまり,(2.94)のd(t)=∫Ψ~*(t)XΨ~(t)dVは.電子:j

の波動関数をΨj(,t)(j=12,。。,Z)とするとき,

d(t)=Σj=1∫Ψj*(j,t)xjΨj(l,t)d3jと表わす表式

の記号的表現とかんがえられます。)

cω0=E2-E1を満たす遷移周波数をω0とすると,原子波動関数

Ψ^は,Ψ^(t)=C1(t)ψ1exp(-iE1t)+C2(t)ψ2exp(-iE2t)

(2.95)となりますから,これを(2.94)に代入すると,

d(t)=-e{C1212exp(-iω0t)+C2121exp(iω0t)}

(2.96)が得られます。ただしXij=∫ψiXψjdV(i,j=1,2)

です。被積分関数:ψi()Xψj()は空間座標軸を反転すると,

ψi(-r)(-X)ψj(-r)となるので,空間波動関数のパリティに

依らず,i=jjなら,ψi()Xψj()はの奇関数になるため,

11=X22=0(2.97)となる,という性質を用いました。

また,定義からX21=X12(2.98)ですから,電気双極子

モーメントd(t)は,予期される通り実数量という表式になって

います。

必要な係数:C1(t),C2(t)は「光の量子論7」の

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)(2.31),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)(2.32)

を解けば得られます。

しかし,前述したように,これらの運動方程式から解が導ける

のは,電磁場の印加が無いΩ=0のときの定常状態の

波動関数だけであり,その解はC1,C2の初期値のままの定数

に過ぎません。

 

これは印加電磁場が無くても,励起原子は自発放出によって,

究極的には基底状態にへと減衰するはずである,という(1.77)

2=N20exp(-A21t)という挙動に相反します。

しかし,こうした事情は上記の(2.32)に自発放出を表わす項

付け加えることで,修正されます。

すなわち,Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)

(2.99)なる修正方程式を採用します。これから,もしも,Ω=0

ならdC2/dt)=-γC2により,C2(t)=C2(0)exp(-γt).(2.100)

が得られます。

N個の同じ原子から成る気体では,t=0ではN20個が励起

されているとき,時刻tで励起されている原子の数は,

2(t)=N|C2(t)|2より,N2(t)=N20exp(-2γt).(2.101)である

と評価されます。

これを,(1.77)のN2(t)=N20exp(-A21t)と比較すれば,

2γ=A21=1/τ.(2.102)(※τは蛍光寿命)と書けます。

そして,こうであるなら(2.99)のように,(2.32)に項:

-iγC2=-iA212/2を追加して,

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)とすること

で,蛍光の減衰が正しく与えられます。

他方,(2.31)のC1の発展方程式の方は,以下では使用しない

ので,ここで修正することはしません。

 

さて,アインシュタインのB係数の導出のときと同様,C1,C2

をΩ(Ω*)の1次まで計算します

Ω,or 電場E0は弱い,としているので,方程式(2.99)の

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1-iγC2=i(dC2/dt)の左辺で,

1=1と近似し,また,Ω≠0とします。

そうして,C1=1とした(2.99)の近似をdC2/dt=-γC2

+(-iΩ/2)[exp{i(ω0+ω)t}+exp{i(ω0-ω)t}]

と書き,これを積分すると.

2(t)=(-Ω/2)[exp{i(ω0+ω)t}/(ω0+ω-iγ)

+exp{i(ω0-ω)t}/(ω0-ω-iγ)].(2.103)を得ます。

 

※[注10-1]:線形非同次方程式:df/dt=-af+g(t)

の解を求めるには,定係数線形同次方程式:

df/dt=-afの解:f=bexp(-at)から,定係数bをtの関数

b(t)にする定数変化法を用いれば可能です。

そこで,df/dt=-af+(db/dt)exp(-at)

=-af+g(t)から,db/dt=exp(at)g(t)なので,

b(t)=∫{exp(at)g(t)}より,

f(t)=[∫{exp(at)g(t)}dt]exp(-at)が得られる,という

話を,今から50年くらい前の大学1年のときに習った?こと

思い出しました。(注10-1終わり※)

 

(2.103)のC2(t)の解から,|C2(t)}2は|Ω|2のオーダーの

大きさであるとわかり,規格化条件:|C1(t)}2+|C2(t)}2=1

(2.104)により,|C1(t)}2=1-|C2(t)}2=1+O(|Ω|2)です

から,C1(t)は,1と|Ω|2のオーダーだけ異なるとわかります。

それ故,Ωの1次までの近似では,C1(t)=1(2.105)と置く

ことが正当化されます。

よって,単一原子の電気双極子モーメント:d(t)は(2.96)の

d(t)=-e{C1212exp(-iω0t)+C2121exp(iω0t)}

に,上記のC2=(-Ω/2)[exp{i(ω0+ω)t}/(ω0+ω-iγ)

+exp{i(ω0-ω)t}/(ω0-ω-iγ)].とC1=1を代入すれば

Ωの1次近似までの式として得られます。

ただし,X12=∫ψ1Xψ2dVで.X21=X12.Ω=eE012/hc

ですから,これらも代入すると,d(t)={e2|X12|20/(2hc)}

×[{exp(iωt)/(ω0+ω-iγ)+exp(-iωt)/(ω0-ω-iγ)}

+exp(-iωt)/(ω0+ω-iγ)+exp(iωt)/(ω0-ω-iγ)}]

(2.106)を得ます。

この単一原子の双極子モーメントを,N根の同種原子の

気体分極:Pに結び付ける必要があります。

このとき,乱雑な配向の電子を持つ原子の平均として,|X12|2

に|X12|2=|D12|2/3を代入します。こうすれば,d(t)はtに

おける気体の1原子あたりの平均双極子モ^メントとなり,

気体分極:P(t)は,P(t)=Nd(t)/V.(2.107)で与えられる

ため,これに(2.106)のd(t)={e2|X12|20/(2hc)}

×[{exp(iωt)/(ω0+ω-iγ)+exp(-iωt)/(ω0-ω-iγ)}

+exp(-iωt)/(ω0+ω+iγ)+exp(iωt)/(ω0-ω+iγ)}]

と,|X12|2=|D12|2/3を代入したものを作り,(2.93)の,

(t)=(1/2)ε00{χ(ω)exp(-iωt)+χ(-ω)exp(iωt)}

と比較することで,χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}.(2.108),

かつ,χ(-ω)=χ(ω)(2.109)を得ます。

ここで,第1章で求めた2ηκ=χ“(1.84)とK=2ωκ/c

(1.91)によれば,ωに依存した原子の吸収係数K(ω)は,

感受率をχ(ω)=χ’(ω) +iχ”(ω)と書いたときの虚部

χ”(ω)と,K(ω)={ω/(ηc)}χ”(ω)(2.110)によって

関係付けられます。

※(注10-2):以前の記事「光の量子論3」では.感受率

χを複素数に拡張して,χ=χ’+iχ”(χ’,χ”は実数)と

表わしました。

ところで,原子気体に分極がある場合,これを誘電体

と見なして,その誘電率をεとすると,感受率χは=χε0

定義され,D=ε0なので,ε=(1+χ)ε0です。

周波数ω,波数kで時間的,空間的に変動するz軸の正の

向きに進行する平面波:exp{-i(ωt-kx)}を仮想すると,

誘電体内の位相速度:ω/k=(εμ0)-1/2は,自由空間(真空)

中の光速:c=(ε0μ0)-1/2の(1+χ)-1/2倍に相当するので,

(ck/ω)2=1+χと書けますが,これの平方根も複素数です

から,ck/ω=η+iκ(η,κは実数)と書きます。

(※こう定義すると,光学においては,ηが屈折率,κが吸収係数

に相当する,ことがわかります。)

これを,(ck/ω)2=(1+χ’)+iχ”に代入すれば,

η2-κ2=1+χ’.および,2ηκ=χ“.を得ます。

ここで,単位時間に単位面積を通過する場のエネルギー

として定義される,電場,磁場の電磁波の強度:

そのPoyntingベクトルで,××0と定義

して,ベクトルIの大きさのサイクル平均を取り,<I>

書けば,<I>=(1/2)ε0cη|(r,t)|2なる式を得ます。

ただし,E(r,t)は,空間的,時間的に変動する電磁波の

電場であり,これはz軸向きの進行波の形の(r,t)

0exp{i(kz-ωt)}

0exp{iω(ηz/c-t)-ωκz/c}

を想定しています。

サイクル平均強度:<I>はzの関数となるので,改めて

<I>をI=I(z)と書き.I0をz=0におけるサイクル平均強度

すれば,I(z)=I0exp(-Kz)と書けます。

ただし,K=2ωκ/cです。

と書きました。

そこで,2ηκ=χ“を用いると,K={ω/(ηc)}χ”

が得られます。(注10-2終わり※)

さて,ck/ω=(1+χ)1/2=η+iκであって,2ηκ=χ“

を与える実数ηは,光学では屈折率を示しますが,これも

χ“=χ“(ω)と表わしたときはωの関数で,η=η(ω)と

書けます。しかし,この屈折れは,あらゆる周波数ωで1に

近い値であることが知られています。

そして,十分希薄な気体を考えると,ω~ω0で,γ<<ω0

とき,には,χ(ω)={Ne2|D12|2/(3ε0cV)}

×{1/(ω0-ω-iγ)+1/(ω0+ω+iγ)}.(2.108)の

{ }内では,明らかに,(第1項)>>(第2項です。

そこで,回転波近似を適用して第2項を無視します。

すると,(2.110)の,K(ω)={ω/(ηc)}χ”(ω)は,

η~1として,K(ω)~{πNe2|D12|2ω0/(3ε0ccV)}

×[(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}].(2.111)となります。

この吸収係数Kの周波数依存性:F1(ω)

=(γ/π)/{(ω0-ω)2+γ2}(2.112)は,Lorentz型曲線

(Lorentz関数曲線)として知られています。

「ローレンツ型分布」の画像検索結果

これは∫F1(ω)dω=1.(2.113)と規格化されるように

係数因子(1/π)を付けています。

そして,F1(ω)の曲線はω=ω0で最大値;1/(πγ)を

取りますが,この1/2の高さ1/(2πγ)に相当するωは,

ω=ω0±γであり,その間のωの全幅は丁度2γです。

こうして,(2.102)の2γ=A21=1/τ(※τは蛍光寿命)

より,このωのω0の周りの放射広がり=2γが,その遷移に

関する自発放出のA係数に等しい幅を生じる.と述べる

ことができます。

 水素の2p状態が自発放出によって1s状態に減衰する

場合は,前々回の記事「光の量子論8」で詳細に計算し,

21~ 6.7×108-1(2.57)なる評価式を得ました。

そこで,この場合,放射広がりは,2γ~ 6.7×10 8-1

大きさです。よって,この遷移に対応する吸収線は,自発放出

のため,角周波数Δωでなく,周波数Δν=Δω/(2π)の意味で,

約10 8Hzの幅を持つことになります。

しかし,これは極端に狭い値であり,大抵の実験で観測される

原子吸収線の幅は,他の機構:例えば後述する予定のドプラー

(Doppler)効果か,または,原子の衝突が原因と考えられます。

ところが.これら別の付加的広がりについては,原理的には,

何らかの方法,例えば気体の冷却とか,気圧を下げるとか,

で減少させることができます。

一方,放射広がりの方は自発放出が原因なので,これを減少

させることは不可能であり,A21はΔωとして到達可能な最小

幅です。

この意味で,この自発放出による線幅を「スペクトル線の固有値」

と呼ばれます。

この放射による線幅は,アインシュタインのB係数の量子論的

表式を導くために「光の量子論7」で決めた|C2(t)|2の(2.44)

の表式|C2(t)|2={2e2{X12|2/(ε0c2)}

ω0-Δω/2ω0+Δω/2[W(ω)sin2{(ω-ω0)t/2}

/(ω-ω0)2]dω.で用いた入射光の周波数幅:Δωに,その最小値

として2γ=A21=1/τを提供します。

この(2.44)は,|C2(t)|2

={2e2|X12|2/(ε0c2)}W(ω)(Int)(2.45),

Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω[sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2]

(2.46)と表わされ,tΔω>>1なら,Int=πt/2((2.48)を

得ます。と書きましたが,この誘導放出のB係数を与える

遷移確率の因子Int=πt/2によるtへの直線的依存性は,結局,

自発放出の蛍光寿命よりはるかに大きい長時間,t>>τ

対してしか成立しない,と言えます。

 

今回は,ここまでにします。(つづく)

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

 

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2019年10月28日 (月)

光の量子論9

※[光の量子論8」の第2章 原子・放射相互作用の量子力学

の続きです。

※(余談)今回の記事では,最後に(注)として長い計算

をしました。

私は上京してきた1977年以来,コンピュータ歴ウン

十年といっても,数式などは紙に書かないと,ちゃんと

は計算できない,という性分でしたが,近年,いつの頃

からか?ワードの上でタイプして計算し,紙(ノート)

やペンが無くても長い計算が可能な頭になりました。

これだと,紙は節約になるし,眼が悪くても字が拡大

できるのは,いいのですが,やはり紙とペンでやるより.

間違う件数が多くなったかもしれません。

さて,日本代表のラグビーは終わりました。

去年夏サッカーのW杯のときも思いましたが,次頑張る

とかいわれても,私には4年後の次なんかは無いのでね。

(余談終わり※)

さて,本題です。

まず,§2.5のDiracのデルタ関数の項の続きです。

δ関数は次の基本的性質を持っています。

(ⅰ)δ(ω-ω0)=δ(ω0-ω).(2.67)(δは偶関数)

(ⅱ)δ(ω0-bω)=(1/|b|)δ(ω0/b-ω)(2.68)

(ⅲ)δ[(ω1-ω)(ω2-ω)]

={δ(ω1-ω)+δ(ω2-ω)}/|ω1-ω2|.(2.69)

の3つです。

※(注9-1):上記のδ関数の性質を証明します。

[証明]:(ⅰ)∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω)dω=f(ω0)

ですが,ω’=-ωと置けばf(ω)=f(-ω’),

dω’=-dωで.ωのω1→ω2の移動に対して.

ω’は(-ω1)→(-ω2)と移動します。

故に,∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω)dω

=∫-ω2-ω1f(-ω’)δ(ω0+ω’)dω’

f(ω0)=f(-(-ω0))=[f(-ω’)]ω’=-ω0

です。そこで,δ(ω0+ω’)=δ(-ω0―ω’)

よって,ω’=-ωに戻すと,δ(ω0-ω0)

=δ(-ω0+ω)=δ(ω-ω0)を得ます。

(ⅱ) ∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-bω)dωを考えます。

これにおいて,x=bωと置くと,dω=dx/bであり,

ωのω1→ω2の移動に対してxの移動は,bω1→bω2

です。

故に,与式=(1/b)∫bω1bω2f(x/b)δ(ω0-x)dx

ω2>ω1ですからb>0ならbω2>bω1より,右辺

=(1/b)f(ω0/b)ですが,b<0ならbω2<bω1

なので,与式=-(1/b)∫bω2bω1f(x/b)δ(ω0-x)dx

=-(1/b)f(ω0/b)です。

したがって,δ(ω0-bω)=(1/|b|)δ(ω0/b-ω)

を得ました。

(ⅲ)∫ω1ω2f(ω)δ[(ω1-ω)(ω2-ω)]d ω

=∫ω1ω2f(ω)δ[ω2-(ω1+ω2)ω+ω1ω2]d ω

=∫ω1ω2f(ω)δ[{ω-(ω1+ω2)/2}2-{(ω1-ω2)/2}2]

d ωですが,ここでx={ω-(ω1+ω2)/2}2と置きます。

dx=2{ω-(ω1+ω2)/2}dω=±2x1/2dωであり,

ω<(ω1+ω2)/2なら,x1/2=-ω+(ω1+ω2)/2

(x1/2:(ω2-ω1)/2→0)で,ω=-x1/2+(ω1+ω2)/2,

dω=-(1/2)x-1/2dxです。

一方,ω>(ω1+ω2)/2なら,x1/2=ω-(ω1+ω2)/2

で(x1/2:0 →(ω2-ω1)/2),ω=x1/2+(ω1+ω2)/2,

dω=(1/2)x-1/2dxです。

そうして,ωのω1→(ω1+ω2)/2 →ω2の移動に対し,

xは,{(ω1-ω2)/2}2 → 0 → {(ω1-ω2)/2}2tと,ωの

2次曲線上を最小値0を通って往復します。

ω1ω2dω=∫ω1(ω1+ω2)/2dω+∫ω1(ω1+ω2)/2dω

=-(1/2)∫{(ω1-ω2)/2}2 0-1/2dx+(1/2)∫0 {(ω1-ω2)/2}

-1/2dx となります。

それ故,∫ω1ω2f(ω)δ[(ω1-ω)(ω2-ω)]d ω

=∫ω1ω2f(ω)δ[{ω-(ω1+ω2)/2}2-{(ω1-ω2)/2}2]

dω=(1/2)∫0 {(ω1-ω2)/2}[δ[x-{(ω1-ω2)/2}2]x-1/2

×{f(-x1/2+(ω1+ω2)/2)+f(x1/2+(ω1+ω2)/2)}]

dx なる等式を得ます。

 

ω2>ω1で,x={(ω1-ω2)/2}2のときは,常に

1/2=≧0より,x1/2=(ω2-ω1)/2 なので.上式

の右辺={f(ω1)+f(ω2)}/(ω2-ω1)が得られます。

したがって,ω2>ω1または,ω1>ω1の一般の場合,

δ[(ω1-ω)(ω2-ω)]

={δ(ω1-ω)+δ(ω2-ω)}/|ω1-ω2|を得ます。

(証明終わり)   (注9-1終わり※)

 

さて,B係数を導く際に,遷移の時間tが(1/ω0)や

(1/Δω)に比べて長い場合に成立する式:(2.48)から

得られる解を採用しました。

すなわち,前々回の記事「光の量子論7」では,光の

ビーム:W(ω)の存在下で時間tの間の1→2の遷移確率

が.|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)}W(ω)(Int)(2.45)

で与えられるという一般解を得ました。ただし,(Int)は

積分因子で,Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2[sin2{(ω-ω0)t/2}

/(ω-ω0)2]dω(2.46)で与えられます。

この式で,tΔω>>1(t>>1/Δω)の場合には,

Int~∫-∞dω1[sin21t/2)/ω12]=πt/2.(2.48)

なる近似が成立する,と書きましたが,その際,

この解をB係数の評価式として採用しました。

ところで,|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)}W(ω)

×(Int)(2.45)なる表式は,元々確定値ω0における表式

(2.42)|C2(t)|2~|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2

に,原子は広帯域照射を受けているというアインシュタイン

理論の基礎仮定を採用しω0の不確定さΔωを考慮して,

この表式をω0を遷移周波数の中心とするωのある範囲

にわたって積分したものです。

つまり,|C2(t)|2=|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2

において,Ω­=eE012/hcと,(1/2)ε002=∫W(ω)dω

を利用して,|C2(t)|2={2e2{X12|2/(ε0c2)}

×∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2[W(ω)sin2{(ω-ω0)t/2}

/(ω-ω0)2]dω としたものです。

 

 

(1/ω0),(1/Δω)は,光の吸収を実験的に観測するとき,

それを制御する特有の時間です。

これがゼロに近づくtの長時間極限では,(2.59)のδ関数

という記号:δ(ω0-ω)

=(2/π)limt→∞sin2{(ω0-ω)t/2}/{(ω0-ω)2t}

を用いると,t→∞の長時間極限で.元の(2.42)式の

|C2(t)|2=|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2

を,|C2(t)|2=(π/2)|Ω|2tδ(ω0-ω)

(2.70)という形に書くのが適切ということになります。

 

※(注9-2);上でDiracのδ関数を記号と呼んだのは,

その性質の証明などでは,これを普通の積分可能な関数の

ように,置換積分法などが適用可能として扱いましたが,,

これは,数学的には関数の範疇には入らず,積分記号無し

では意味のない記号のようなものという意味です。

現代的には,Schwartzのdistributionと呼ばれるもの,

または,佐藤の超関数(hyperfunction)と呼ばれるものに

代表される汎関数として定義される超関数の一種です。

(注9-2終わり※)

 

さて,(2.70):|C2(t)|2=(π/2)|Ω|2tδ(ω0-ω)の

結果は,Hamiltonianの時間に依存する部分がcos(ωt)

に比例し,周波数ωがω0のまわりに連続的分布する如何

なる遷移過程にも適用できて,行列要素Ωだけが過程に

よって異なります。そして,δ関数は積分の中にある

ときに限って意味を持ちます。

 

  • 2.6 光学Bloch方程式

(2.31),(2.32)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)

は,(2.8)の波動関数の表現:Ψ(,t)

=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)における

両係数C1,C2の定義と合わせて,振動電場と相互

作用する2準位原子の状態の厳密な記述を与えます。

しかし,すぐ前の§2.3では周波数ωの分布がω0

の付近で滑らかな解を場合の(2.31),(2.32)の解を

問題としていました。

そして,解はΩ or E0についての低次項だけを

拾ったという意味で近似解であり,(2.42)の表式:

|C2(t)|2=|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2は,

回転近似と呼ばれる近似式です。

 

そこで,以下では(2.31),(2.32)のより一般的な解

を探すことにします。

しかし,やはり回転波近似を行ないますが.Ω or E0

の全ての次数の項を拾います。さらに,入射光は,単一

周波数ωの振動電場を持った単色光であると仮定します。

ビーム周波数ωに分布があれば,その効果は,単色光

に対する結果を平均すれば得られます。

ここで,原子密度行列:(ρij)の4つの要素を,

ρ11=|C1|2=N1/N,ρ22=|C2|2=N2/N.(2.71)

ρ12=C1221=C21.(2.72)で定義します。

対角要素:ρ1122は明らかに実数であり,規格化

の条件:|C1|2+|C2|2=1の要求は,ρ11+ρ22=1

(2.73)となります。(※ ρij=Cij;i,j=1,2)

原子集団ではN1=N|C1|2,N2=N|C2|2によって,

これらは,2準位内の平均数と結び付いています。

 非対角要素は複素数であり,ρ21=ρ12(2.74)

を満たします。

そして,密度行列が従う方程式は,

dρij/dt=Ci(dCj/dt)+Cj(dCi/dt)

(2.75)です。

故に,dρ22/dt=-dρ11/dt

=-C1(dC1/dt)-C1(dC1/dt)

=-iΩcos(ωt)exp(iω0t)ρ12

+iΩcos(ωt)exp(-iω0t)ρ21

=-icos(ωt){Ωexp(iω0t)ρ12

+iΩexp(-iω0t)ρ21}.(2.76) と書けます。

同様にして,dρ12/dt=-dρ21/dt

=iΩcos(ωt)exp(-iω0t)(ρ11-ρ22).(2.77)

を得ます。

これらは,密度行列に対する厳密な方程式ですが,

ここで回転波近似を施します。すなわち,cos(ωt)

=(1/2){exp(iωt)+exp(-iωt)}を代入し,

結果.ω~ω0より,exp{±i(ω0-ω)t}の項だけを

残しexp{±i(ω0+ω)t}の項を無視する近似をして,

dρ22/dt=-dρ11/dt

=(-i/2)Ωexp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}ρ21.(2.78)

dρ12/dt=dρ21/dt

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)(2.79)

が得られるわけです。

これは,「光学Bloch方程式」と呼ばれるもの

として知られており,振動磁場内のスピンの運動を

記述するためにBlochが導出したものと同類のもの

です。それは,ここで考察した2準位原子の量子力学

が,形式の上では同じ2自由度のスピン:1/2の系の

ものに全く等しい,からです。

 

  • 2.7 Rabi振動

上記最後の方程式(2.78),(2.79)は,これ以上の近似

無しで解くことができます。これらは,原子密度行列の

4つの要素に対する4つの連立方程式系を成しています。

試行解として,ρ11(t)=ρ11(0)exp(λt)(2.80a),

ρ22(t)=ρ22(0)exp(λt)(2.80b),

ρ12(t)=ρ12(0)exp{-i(ω0-ω)t}exp(λt)(2.80c),

ρ21(t)=ρ21(0)exp{i(ω0-ω)t}exp(λt)(2.80d)

を代入すると,4成分の縦ベクトル:

ρ^(0)=[ρ11(0)22(0)12(0), ρ21(0)]に対し,

[-λ,0,(i/2)Ω,(-i/2)Ω]ρ^(0)=0.(2.81a),

[0,-λ,(-i/2)Ω,(i/2)Ω]ρ^(0)=0.(2.81b),

[(i/2)Ω,(-i/2)Ω,i(ω0-ω)-λ,0]ρ^(0)

=0 .(2.81c),

[(-i/2)Ω,(i/2)Ω,0,-i(ω0-ω)-λ]ρ^(0)

=0 .(2.81d)

なる(4×4行列)×ρ^(00の方程式を得ます。

このとき,λの取り得る値は,これがρ^(00という

自明な解以外の解を持つという条件から決まります。

そこで,方程式の係数行列の行列式=0から,

λ22+(ω0-ω)2+|Ω|2}=0.(2.82)なる

特性方程式を得ます。(※ 上式の導出=行列式の計算

の過程は省略そます。)

 この方程式の相異なる3根は,

λ1=0,λ2=iΩ13=-iΩ1.(2.83)で与えられます。

ただし,Ω1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2.(2.84)です。

(※Ωは複素数ですがΩ1は実数であることに注意)

したがって,密度行列要素に対する最も一般的な解は,

ρij(t)=ρij(1)+ρij(2)exp(iΩ1t)+ρij(3)exp(-iΩ1t)

(2.85)で与えられるはずです。

ところが,この一般形は(2.80)で仮定した形の

ρ11(t)=ρ11(0)exp(λt),ρ22(t)=ρ22(0)exp(λt),

ρ12(t)=ρ12(0)exp{-i(ω0-ω)t}exp(λt),

ρ21(t)=ρ21(0)exp{i(ω0-ω)t}exp(λt)

についてのλが満たすべき方程式が上記特性方程式

なので,実は非対角要素には,さらに振動的な指数関数

因子が加わります。

つまり,対角要素は,(2.85)そのままの形で,

ρ11(t)=ρ11(1)+ρ11(2)exp(iΩ1t)+ρ11(3)exp(-iΩ1t),

ρ22(t)=ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)

ですが,非対角要素は,上記の仮定:(2.80)により

ρ12(t)=exp{-i(ω0-ω)t}

×[ρ12(1)+ρ12(2)exp(iΩ1t)+ρ12(3)exp(-iΩ1t)]

ρ21(t)=exp{i(ω0-ω)t}

×[ρ21(1)+ρ21(2)exp(iΩ1t)+ρ21(3)exp(-iΩ1t)]

となります。

 

※(注9-3):特性方程式の解が重根の場合,

それがλ=α≠0なら,それに属する独立な2つの解

としては,exp(αt)の他に,texp(αt)をとることが

できます。この重根がα=0なら,独立解は1とtです。

しかし,今の場合,ρ21(t)=ρ12(t)を考慮すると,

4つの成分のうち独立なのは,ρ11(t),ρ22(t),ρ12(t)

の3つだけと考えられますから,係数行列は3×3で十分

と考えて,λ=λ1=0は真の重根ではなく単根であり1

(定数)のみが,それに属する独立解です。

さらにρ11(t)+ρ22(t),=1の条件をも考慮すれば,

実は独立成分は2つだけです。

しかし,取り合えず,4つの成分全てについて対角要素は

ρ11(t)=ρ11(1)+ρ11(2)exp(iΩ1t)+ρ11(3)exp(-iΩ1t),

ρ22(t)=ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)

となり,非対角要素は,

ρ12(t)=exp{-i(ω0-ω)t}

×[ρ12(1)+ρ12(2)exp(iΩ1t)+ρ12(3)exp(-iΩ1t)]

ρ21(t)=exp{i(ω0-ω)t}

×[ρ21(1)+ρ21(2)exp(iΩ1t)+ρ21(3)exp(-iΩ1t)]

となるとしておきます。(注9-3終わり※)

 

さて,λ=λ1=0に対応する定数項は解を光学Bloch

方程式に代入し返せば決まるはずです。

また,λ2=iΩ13=-iΩ1で,Ω1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2.

ですから,|Ω|2の存在のため原子と光ビーム結合系での

周波数Ω1は,結合がないときの,それぞれの値:ω0やωとは

異なります。

そして,|Ω|2はビームの振動電場の振幅:|E0|の2乗に

比例するので,この結合系の周波数のシフトと分裂は,静電場

を印加したときの原子のエネルギー準位のシフトと分裂から

の類推により,動的シュタルク(Stark)効果と呼ばれています。

これは後の第8章で述べる予定の「共鳴蛍光スペクトル」

の観測にかかる重要な効果をもたらすものです。

 

光学Bloch方程式の解は,任意の初期条件の場合は,

甚だしく長くなるので,以下の議論は特別な場合に限る

ことにします。

※(注9-4);密度行列に対する厳密な方程式:(2.78),(2.79)

の解は.初期条件がρ22=0,ρ12=0(※C2=0)(2.86)の場合,

ρ22=(|Ω|212)sin21t/2).(2.87)

ρ12=exp{-i(ω0-ω)t}(Ω/Ω12)sin(Ω1t/2)

×{-(ω0-ω)sin(Ω1t/2)+iΩ1cos(Ω1t/2)}.(2.88)

となることを証明します。

[証明]:まず,ρ22の一般解:

ρ22(t)=ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)

+ρ22(3)exp(-iΩ1t)において,初期条件;

ρ22(0)=0より,ρ22(1)+ρ22(2)+ρ22(3)=0です。

また,ρ12の一般解:ρ12(t)=exp{-i(ω0-ω)t}

×[ρ12(1)+ρ12(2)exp(iΩ1t)+ρ12(3)exp(-iΩ1t)]

において,初期条件;ρ12(0)=0より

ρ12(1)+ρ12(2)+ρ12(3)=0です。

ここで,Bloch方程式に,これらの一般解を代入して,

それに,条件:ρ11=1-ρ22より,ρ11-ρ22=1-2ρ22,

および,ρ21=ρ12を適用します。

 

まず,(2.78)のdρ22/dt=-dρ11/dt

=(-i/2)Ωexp{i(ω0-ω)t}ρ12

+(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}ρ21は.

1ρ22(2)exp(iΩ1t)-iΩ1ρ22(3)exp(-iΩ1t)

=(-i/2)Ω

×{ρ12(1)+ρ12(2)exp(iΩ1t)+ρ12(3)exp(-iΩ1t)]

+(i/2)Ω

×{ρ12(1)*+ρ12(2)*exp(-iΩ1t)+ρ12(3)*exp(iΩ1t)]

(A1)と書けます。

次に,(2.79)の,dρ12/dt=dρ21/dt

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}(ρ11-ρ22)は.

-i(ω0-ω)exp{-i(ω0-ω)t}ρ12(1)

+i{Ω1-(ω0-ω)}exp[i{Ω1-(ω0-ω)}t].

-i{Ω1+(ω0-ω)}exp[-i{Ω1+(ω0-ω)}t]ρ12(3)

=(i/2)Ωexp{-i(ω0-ω)t}

×[1-2{ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)}],

すなわち,-i(ω0-ω)ρ12(1)

+i{Ω1-(ω0-ω)}exp(iΩ1t)ρ12(2)

-i{Ω1+(ω0-ω)}exp(-iΩ1t)ρ12(3)

=(i/2)Ω

[1-2{ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)}]

(A2)と書けます。

そして,(A1)からは,まず,Ωρ12(1)-Ωρ12(1)*=0.(A3),

つまり,Ωρ12(1)は実数である,という結果を得ます。

また,Ω1ρ22(2)=-(1/2)(Ωρ12(2)-Ωρ12(3)*)(A4),

かつ,Ω1ρ22(3)=(1/2)(Ωρ12(3)-Ωρ12(2)*).(A5)を

得ます。

一方,(A2)からは,まず,

-(ω0-ω)ρ12(1)=(1/2)Ω(1-2ρ22(1))より,

ρ22(1)=1/2+{(ω0-ω)/Ω}ρ12(1)(A6)を得ます。

次に,{Ω1-(ω0-ω)}ρ12(2)=-Ωρ22(2)(A7),

かつ,{Ω1+(ω0-ω)}ρ12(3)=Ωρ22(3)(A8)

も得られます。

さて,Ωρ22(2)=-{Ω1-(ω0-ω)}ρ12(2)(A5),

および.Ωρ22(3)={Ω1+(ω0-ω)}ρ12(3)(A6)

を得ます。と書きました。

ところが,ρ22(2)+ρ22(3)=-ρ22(1)

かつ,ρ12(2)+ρ12(3)=-ρ12(1)なので,これは,

Ωρ22(1)=(ω0-ω)ρ12(1)+Ω112(2)-ρ12(3))

を意味します。

一方,Ωρ22(1)=Ω/2+(ω0-ω)ρ12(1)

ですから,(ω0-ω)ρ12(1)+Ω112(2)-ρ12(3))

=Ω/2+(ω0-ω)ρ12(1),つまり,ρ12(2)-ρ12(3)

=(1/2)(Ω/Ω1)が得られます。

以上から,Ωρ22(1)=(ω0-ω)ρ12(1)

+Ω112(2)-ρ12(3))=(ω0-ω)ρ12(1)+Ω/2です。

これと,ρ12(2)+ρ12(3)=-ρ12(1)から,辺々加えて

12(2)=(1/2)(Ω/Ω1)-ρ12(1)(A7),また後の式から

前の式を引いて,2ρ12(3)=-(1/2)(Ω/Ω1)-ρ12(1)(A8)

です。しかし,これらは,これ以上,何も新しい式を生まない

ことがわかりました。これ以上の変形をしてもトートロジー

なので,この手順は,ここで停止です。

そこで,次策として,取り合えず,

ρ22=ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)

に戻って,このρ22=|C2|2が実数であることに着目します。

つまり,ρ22=ρ22なので,

ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)

=ρ22(1)*+ρ22(2)*exp(-iΩ1t)+ρ22(3)*exp(iΩ1t)

です。

それ故,ρ22(1) =ρ22(1) *は実数であること,および,,

ρ22(2)=ρ22(3),かつ,ρ22(3)=ρ22(2)*であることが

わかります。故に,ρ22(2)=a+ib(a,bは実数)と置けば,

ρ22(3)=a-ibです。そして,さらに.Ωρ12(1)=c(実数)

と置きます。

すると,まず, ρ22(1)=-(ρ22(2)+ρ22(3))=-2a

(実数)と書けます。

また,前に得た式:Ωρ22(1)=(ω0-ω)ρ12(1)+Ω/2

により,|Ω|2ρ22(1)=c(ω0-ω)+|Ω|2/2なので,

-2a=c(ω0-ω)/|Ω|2+1/2,

あるいは,a=-1/4-(c/2)(ω0-ω)/|Ω|2という

aとcの関係式が得られます。

他方.Ω12(2)+ρ12(3))=-Ωρ12(1)=-c

Ω12(2)-ρ12(3))=(1/2)(|Ω|21)ですから,

Ωρ122) =(1/4)(|Ω|21)-c/2(実数)(A7)

Ωρ12(3) =-{(1/4)(|Ω|21)+c/2}(実数)

(A8)です。

また,先の(A5),(A6)は,,

|Ω|2ρ22(2)=-{Ω1-(ω0-ω)}Ωρ12(2).

|Ω|2ρ22(3)={Ω1+(ω0-ω)}Ωρ12(3)です。

 

そこで,結局,cかaの一方の具体的な値がわかれば,

ρ12(1)=c/Ωとρ22(1)=-2aだけでなく,(A7)(A8)

から,Ωρ122)ρ122)がわかり,それから芋づる式に,

(A5),(A6)から|Ω|2ρ22(2),|Ω|2ρ22(3)もわかるので,

ρ12とρ22の全ての定係数が決まるので,解が定まって

問題は完全に解決します。

 

それ故,以下,これら以外の式からaまたはcを導出

することを試みます。

まず,2ib=ρ22(2)-ρ22(3)ですから,

2ib|Ω|2=|Ω|222(2)-ρ22(3))

=-{Ω1-(ω0-ω)}Ωρ12(2)-{Ω1+(ω0-ω)}Ωρ12(3)

=-Ω1Ω12(2)+ρ12(3))+(ω0-ω)Ω12(2)-ρ12(3))

です。つまり,cΩ1+(ω0-ω)Ω12(2)-ρ12(3))

=2ib|Ω|2ですが,Ω12(2)-ρ12(3))=(1/2)(|Ω|21)

であり,これは実数なのでcΩ1+(1/2)(ω0-ω)(|Ω|21)

=2ib|Ω|2(となり(実数)=(純虚数)と書けることになります。

これが成立するには両辺ともゼロであることが必要十分であり,

特にb=0です。

左辺=0からは,c=-(1/2)(ω0-ω)(|Ω|212)を得ます。

かくして,cの値が決定されました。

 

したがって,まず,aをcで表わす関係式;

a=-1/4-(c/2)(ω0-ω)/|Ω|2により,

a=-1/4+(1/4)(ω0-ω)212

={1/(4Ω12)}{(ω0-ω)2-Ω12}を得ます。

ところが,(2.84)のΩ1の定義:Ω1={(ω0-ω)2+|Ω|2}1/2

によれば.(ω0-ω)2-Ω12=-|Ω|2です。

そこで,結局,b=0より,ρ22(2)=ρ22(3)=a=-|Ω|2/(4Ω12)

を得ます。さらに,ρ22(1)=-2a=|Ω|2/(2Ω12)も得られます。

 

一方,Ωρ12(2)=(1/4)(|Ω|21)-c/2

=(1/4)(|Ω|212){(ω0-ω)+Ω1}によって,

ρ12(2)=(1/4)(Ω/Ω12){(ω0-ω)+Ω1}であり,,

Ωρ12(3)=-{(1/4)(|Ω|21)+c/2}

=(1/4)(|Ω|212){(ω0-ω)-Ω1}によって,

ρ12(3)=(1/4)(Ω/Ω12){(ω0-ω)-Ω1}を得ます。

最後に,ρ12(1)=c/Ω=-(1/2)(Ω/Ω12)(ω0-ω)

です。

以上から,

ρ22=ρ22(1)+ρ22(2)exp(iΩ1t)+ρ22(3)exp(-iΩ1t)

=|Ω|2/(2Ω12)[1-(1/2)|exp(iΩ1t)+exp(-iΩ1t){}

=||Ω|2/(2Ω12)}{1-cos(Ω1t)}です。

すなわち,ρ22(t)=(|Ω|212)sin21t/2)

を得ました。

また, ρ12exp{i(ω0-ω)t}

=ρ12(1)+ρ12(2)exp(iΩ1t)+ρ12(3)exp(-iΩ1t)

=-(1/2)(Ω/Ω12)(ω0-ω)

+(1/4)(Ω/Ω12){(ω0-ω)+Ω1}exp(iΩ1t)

+(1/4)(Ω/Ω12){(ω0-ω)-Ω1}exp(-iΩ1t)

=-{Ω/(2Ω12)}(ω0-ω){1-cos(Ω1t)}

+{Ω/(4Ω1)}{2isin(Ω1t)}

=-(Ω/Ω12)}(ω0-ω)sin21t/2)

+{Ω/Ω1)isin(Ω1t)cos(Ω1t/2)

故に,ρ12(t)=(Ω/Ω12)exp{-i(ω0-ω)t}

sin(Ω1t/2)[-(ω0-ω)sin(Ω1t/2)+iΩ1cos(Ω1t/2)]

が得られます。(証明終わり)  (注9-4終わり※)

 今回は計算が長くなったので,ここまでにします。(つづく)

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

 

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2019年10月12日 (土)

光の量子論8

※第2章 原子・放射相互作用の量子力学

の続きです。

※(余談)このブログをアップする時点で10/12に入った

真夜中です。まもなく,関東に大きい台風が来るらしい

ですが,ほぼ寝たきり生活の死に損ないジジイなので,

自分のことダケであれば,あまり気にしません。

15日に2ヶ月分の年金が入る予定で.まだ今月の家賃

も払っていません。ここ西巣鴨に引っ越してきたのは,

6年間住んでいた,巣鴨駅から健康な足で徒歩10分の

アパートの建てかえ,立ちのきのせいで,やむなく

2016年の10月に移ってきたので,ほぼ3年経ちました

が.以来,偶数月の家賃は僅かながら年金が入るまで常に

未払いですが,家主も管理会社も優しいのか,前に住んで

いたときの管理のエイブルと違って,義務的であろう家賃

の催促のクレームもないので助かっています。まあ,催促

されてもギリギリで暮らしていて,無いソデは振れません

が。。その代わり,次の奇数月は前月の残りの金で期限通り

に払っています。ときどき入院していても,支払いはネット

バンクからしているので,幸い半月以上の滞納はゼロです。

というわけで,年金前の今頃が最も金欠で食べ物も食事用

のモノくらいしかなく,好きな間食もできず,仕方なくブログ

書きなどに集中するしか,他に能動的なことはできないため,

入院中を除いて,大体2ヶ月ごとの金欠時期にブログ記事アップ

が増えるわけです。

村上春樹さん,また,ノーベル賞ダメでしたね。

まあ,アインシュタインもノーベル賞をもらったけど,

「相対性理論」にじゃなく,光量子論でしたかね。

大体,賞を選ぶ側が選ばれる側を正しく評価できるほど

優秀とは限らないので,お金が欲しいなら別ですが,ガッカリ

することもないような。ノーベル賞より上だから選ばれない

とかね。。(余談終わり※)

さて,本論に入ります。

  • 2.4 B係数の表式

多数存在する同種の原子数をNとし,それらに

同時に相互作用H1が加わったとします。

これらの原子は,時刻tで,ψ1に見出される確率

|C1|2と,ψ2に見出される確率:|C2|2を持ちます。

それ故,2つの状態にある平均粒子数は,それぞれ,

1=N|C1|2N,N2=N|C2|2.(2.50)となります。

同種の原子,または分子から成る気体であっても,

対応する電子状態の空間的配向は,原子(分子)から,

次の原子(分子)へと不規則に変化します。

前にx軸の正の向きにとった電磁波の電場の向き

の単位ベクトルをεとします。

すると,行列要素X12はX12εD12.(2.51)と,

書けます。ただし,12=∫ψ1ψ2dV(2.52)です。

与えられた1対の状態ψ1とψ2に対して,D12は,

空間的に,ある方向を向きますが,原子(分子)の配向が

乱雑なため,それは気体中では不規則な運動をします。

12と電場の単位ベクトルεのなす角をθとすると,

|X12|2を求めるための配向による平均は,<cos2θ>

=1/3.(2.53)で与えられる,cos2θの平均値を含んで

います。

※(注8-1):実際,具体的に計算すると,<cos2θ>

=∫-11d(cosθ)cos2θ/∫-11d(cosθ)=(2/3)/2

=1/3 です。(注8-1終わり※)

こうして,前記事の,|C2(t)|2=πe2{X12|2

×W(ω)t/(ε0c2)(2.49)の因子:|X12|2を,

<|X12|2>=(1/3)|12|2.(2.54)に置換する必要

があることがわかります。

そこで,前記事で得たB係数の評価式:(2.49)

のB12=πe2{X12|2/(ε0c2)と上の(2.54)から,

12=πe2{12|2/(3ε0c2).(2.55)という,

アインシュタイン係数に対する量子力学による

結果が得られます。

 

入射電磁波を遮断すると,H1は無くなるので,

ψ12はHだけから成る全Hamiltonianの定常

状態に戻ります。

(※H=T+V:原子のHamiltonianです。)

仮に,状態2が状態1よりエネルギーが低くても,

本章の議論では,入射ビ-ム照射が無いと1から2

への遷移は起こることが無いと結論されます。

何故なら,本章の「半古典的方法」では自発放出の

過程を含まないからです。

その過程を含む満足な扱いをするには,量子力学に

よる「放射場(量子化された輻射場)」を用いる必要

があります。ですが,そうした扱いは第5章までは

Pendingとします。

 

しかしながら,自発放出のA係数の正しい表式は,

既に,第1章の§1.6 (本ブログでは光の量子論2)

で,熱平衡の場合のアインシュタインの現象論を空洞

放射のPlanckの法則と比較することから,

21={hcω3/(π23)}B21(1.51),および,

(g1/g2)B12=B21.(1.50)なる式として得ています。

 

これに,上の(2.55)のB12=πe2|12|2/(3ε0c2)

とω~ω0を代入すれば,A21={hcω03/(π23)}

×(g1/g2){πe2|12|2/(3ε0c2)},すなわち,

21={g12ω03|12|2|/(3πε02c3)}.(2.56)

 

これからA係数の値は水素原子の場合には容易に

計算できます。

状態1を1s,状態2を2p状態として1と2の間

の遷移を考えます。1s状態と遷移速度が等しい3つ

の2p状態があり,それらを合成したB12係数は(2.55)

で与えられた,B12=πe2{12|2/(3ε0c2)の3倍の値

を有し,その場合のD12は1s状態と2p状態のどれか

1つの間の行列要素を意味します。

1=1,g2=3とし,前々記事で求めたボーア半径

の値:a0=4πε0c2/(me2)~ 5×10-11m(2.16)

や,Ω=215/2eE00/(35c)(2.27)の表式,そして,

ω0=(3/4)ω(2.28),hcω=me4/(32π2ε02c2)

(2.29).および,Ω­=eE012/hc(2.23)を用いて,

(2.56)の3倍のA21=e2ω03|12|2/(3πε0c3)

を計算します。|12|2=3|X12|2ですから,まず,

12を計算します。

定義によって,X12=∫ψ1()xψ2()d3

です。ただし,r|r|とおけばxrcosθです。

 

量子力学の初等的教科書によれば,

水素原子の1s(n=1,l=0)の状態の波動関数は

ψ1()=π-1/20-3/2exp(-r/a0)です。

また,2p(n=2,l=1)の状態でm=0の状態の

波動関数は,ψ2()=(2a0)-3/2(2-r/a0)

exp{-r/(2a0)}{3/(8π)}1/2cosθ です。

それ故,X12=π-1/20-3/2{3/(8π)}1/2(2a0)-3/2

×(2π)∫-11d(cosθ)cos2θ

×∫0[r3(2-r/a0)exp{-3r/(2a0)}dr

=(2-3/2/31/2)a0-3

×∫0[r3(2-r/a0)exp{-3r/(2a0)}dr

と書けます。

ここで,u=3r/(2a0)⇔r=(2a0/3)uと,

動径部分の積分変数をrからuに置換すると,

0[r3(2-r/a0)exp{-3r/(2a0)}dr

=(25/34)a040[(u3-u4/3)exp(-u)du

=(25/34)a04{Γ(4)-Γ(5)/3}=-(29/34)a04

です。

故に,X12=-(2-3/2/31/2)a0-3×(29/34)a04

=-(215/2/39/2)a0を得ます。そこで,|X12|2

=21502/39です。

したがって,|12|2=3|X12|2より.

21=e2ω03|12|2/(3πε0c3)

=e2ω03|X12|2/(πε0c3)}

=e2ω0321502/(39πε0c3)

となりますが.この右辺に,

ω0=(3/4)me4/(32π2ε02c3)

=3me4/(27π2ε02c3),および,

0=4πε0c2/(me2)を代入します。

ω03=33312/(221π6ε06c9),および,

02=24π2ε02c4/(m24) なので,

21=e2ω0321502/(39πε0c3)

=me10/(2236π5ε05c63)を得ます。

最後に,具体的な現在の観測値:

m~ 3.1×10-31kg,e~ 1.6×10-19C,

ε0~ 8.85×10-12F/m,c~ 3×108m/s.

c ~ 1.254×10-34Js,π=3.1415..

を代入して長い計算をすると,A21の分子

=me10~3.4×1021910kgであり,分母

=2236π5ε05c63~ 5.07×10-2285-263

ですから,結局,A21~ 6.7×108-1.(2.57)

を得ました。(※ 参考の教科書の(2.57)と

僅かに違うので,計算違いがあるかも

知れません。しかし,オーダー的には両者は

一致しました。)

 

※(注8-2):単位のチェックをします。

SI単位系での静電気力のCoulombの法則:

F=(4πε0)-12/r2から,誘電率の単位は,

0]=[e2/r2]/[F]を満たすはずです。

つまり,F/m=C2-2-1ですから,

F=C2-1-1です。ただし,誘電率の単位:

F/mのFはファラッド(Farad)です。また,

Nは力の単位:Newtonで,N=kgms-2でも

あります。

21の表式の分子の単位は,[me10]=C10kg

でしたが,分母の単位は,[2236π5ε05c63]

=F5―263=(C2-1-1)5-2(Nm)63

=C10-1Ns3=C10-1(kgms-2)s3

=C10 kgsです。

したがって,[A21]=[me10/2236π5ε05c63]

=s-1を得ました。(注8-2終わり※)

さて,前に,「光の量子論3」では,Aの逆数:I,

つまり,A=1/I(1.78)で与えられるIは,対象と

する遷移の「蛍光寿命」,または「放射寿命」として

知られています。 と書きました。

そこで,(2.57)のA21~ 6.7×108-1から,水素原子の

2p状態の放射寿命は,およそ,1.5×10-9sであることが

わかります。

このA21~ 6.7×108-1で示される自然放出の速さ

と比較して,これと同じ遷移の誘導放出の速さは,W(ω)

~ 108(W/m2)の強度と,dω~ 2π×1010-1程度の幅

を持ったビームの場合:B21W(ω)dω~3×107-1(2.59)

くらいで,自然放出の速さの100分の1以下です。

 

  • 2.5 Diracのデルタ関数

アインシュタインの係数を計算する上述の方法は広い

使い道があるので.この結果を他の問題にも適用しやすい

形に直しておきます。

まず,Diracのデルタ関数:δを次式で定義します。

すなわち,δ(ω0-ω)

=(2/π)limt→∞sin2{(ω0-ω)t/2}/{(ω0-ω)2t}

(2.59)です。

前記事では,積分因子:IntをInt

=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω[sin2{(ω-ω0)t/2}/{(ω-ω0)2]

(2.46)と定義し,これについて,Δω>>1なら,ω1=ω-ω0

として.Int~∫dω1[sin21t/2)/ω12]=πt/2.(2.48)

となることを,記述しました。

 それ故,∫δ(ω0-ω)dω=1.(2.60)です。

デルタ関数δ(ω0-ω)は,ω=ω0では無限大であり,

ω≠ω0では至るところゼロです。

したがって,もっと一般的に.ω1<ω0<ω2の場合

は,∫ω1ω2δ(ω0-ω)dω=1,その他の場合(ω0<ω1

またはω0>ω2)には.∫ω1ω2δ(ω0-ω)dω=0.(2.61)

と書けます。

そして(2.59)のデルタ関数δの定義:δ(ω0-ω)

=(2/π)limt→∞sin2{(ω0-ω)t/2}/{(ω0-ω)2t}

を利用すると,δ-関数の性質を証明することができます。

まず,ω=ω0を特異点としないωの任意関数をf(ω)

として,∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω)dω

=(2/π)limt→∞ω1ω2dωf(ω)sin2{(ω0-ω)t/2}

/{(ω0-ω)2t}(2.62)を考えます。

(※左辺の積分が,右辺の積分の極限値によって定義

される,と解釈します。)

右辺の積分変数をx=(ω-ω0)tに置換すると

ω1<ω0<ω2の場合は,∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω0)dω

=(2/π)limt→∞(ω1-ω0)t(ω2-ω0)tf(x/t+ω0)

|sin2(x/2)/x2}dx=(2/π)f(ω0)

-∞|sin2(x/2)/x2}dx=f(ω0)(2.63)であり,

その他の場合は,∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω)dω=0 

という妹性質が得られます。

※(注8.3):(2.63)を証明します。

ω=ω0を特異点としない関数fでは,たとえ

ω=ω0で連続な関数でなくても被積分関数因子と

しては,limt→∞f(x/t+ω0)=f(ω0)と挙動し,

ω1<ω0<ω2の場合は,limt→∞(ω1-ω0)t(ω2-ω0)t

=∫-∞です。そして,∫-∞|sin2(x/2)/x2}dx

=π/2なる公式を用いると,右辺=f(ω0)です。

 その他のω0の場合には,limt→∞(ω1-ω0)t(ω2-ω0)t

=∫ or ∫-∞-∞=0ですから,(2.63)とその後の

言明の成立は明らかです。(注8.3終わり※)

 

さて,δ(ω0-ω)

=(2/π)limt→∞sin2{(ω0-ω)t/2}/{(ω0-ω)2t}

(2.59)で与えた特殊な極限,以外にも,これと等価な

δ関数の別の表わし方が多々あります。

それがδ関数である,という基準は,

ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω)dω=f(ω0)(ω1<ω0<ω2)

(2.63),および,∫ω1ω2f(ω)δ(ω0-ω)dω

(それ以外)を満たすことです。

※(注8.4):次の式がDiracのδ関数を表わすこと。

つまり,δ(ω0-ω)

={1/(2π)}limT1,T2→∞-T1T2exp{i(ω0-ω)t}dt

=limT1,T2→∞[exp{i(ω0-ω)T2}-exp{-i(ω0-ω)T1}

/|2πi(ω0-ω)].(2.64)であること,を証明します。

これの特別な場合:T=T1=T2である場合には,,

δ(ω0-ω)=limT→∞[sin{(ω0-ω)T}/{π(ω0-ω)}]

=(2/π)limT→∞[sin{(ω0-ω)T/2}/(ω0-ω)}](2.65)

です。

また,別の表式;δ(ω0-ω)

=(1/π)limε→0[ε/{(ω0-ω)2+ε2}](2.66)

をも証明します。

[証明]:まず,{1/(2π)}limT1,T2→∞ω1ω2dω

-T1T2exp{i(ω0-ω)t}dtを計算します。

与式=(1/π)[∫-∞dt[exp{i(ω0-ω2)t}/(-2it)

-∫-∞dtexp{i(ω0-ω1)t}/(-2it)]です。

ところが,数学公式:

a>0なら∫-∞{sin(ax)/x}dx=πより,

-∞[{exp(iax)-exp(-iax)}/(2ix)]dx=π

です。そしてy=-xと置けば,

-∞{exp(iax)/x}dx=-∫-∞{exp(-iay)/(-y}dy

=-∫-∞{exp(-iay)/y}dy

故に,∫-∞exp(iax)/x)}dx

=-∫-∞{exp(-iax)/x}dxです。

それ故,a>0なら,

-∞[{exp(-iax)}/(-ix)]dx=πであり,

他方a<0なら,

-∞[{exp(-iax)}/(-ix)]dx=-πです。,

故に,ω1<ω0<ω2の場合,

-∞dtexp{i(ω0-ω1)t}/(-2it)]=π/2,。

-∞dtexp{i(ω0-ω2)t}/(-2it)]=-π/2,

したがって,(1/π)[∫-∞dt[exp{i(ω0-ω2)t}/(-2it)

-∫-∞dtexp{i(ω0-ω1)t}/(-2it)]=1を得ます。

一方,ω01,またはω0>ω2の場合は

-∞dtexp{i(ω0-ω1)t}/(-2it)]

=∫-∞dtexp{i(ω0-ω2)t}/(-2it)]となるため,

(1/π)[∫-∞dt[exp{i(ω0-ω2)t}/(-2it)

-∫-∞dtexp{i(ω0-ω1)t}/(-2it)]=0です。

以上から,δ(ω0-ω)

={1/(2π)}limT1,T2→∞-T1T2exp{i(ω0-ω)t}dt

が証明されました。

 

次に,(1/π)limε→0ω1ω22/{(ω0-ω)2+ε2}]dω

を計算します。

ε/(x2+ε2)={1/(2i)}{1/(x-iε)-1/(x+iε)}

と書けることを利用します。

複素z平面上での閉路:C1を(実軸)+(右回り下半円周)

にとれば.原点Oを通る虚数上の点z=-iεは,C1

囲まれた領域内の極であり,z=iεは極ではないので,

Cauchyの留数定理から.∫C1{1/(z-iε)}dz=0,

C1{1/(z+iε)}dz=-2πiです。

故に,∫C1[ε/(z2+ε2)]dz=πとなります。

他方,閉路:C2を(実軸)+(左回り上半円周)にとれば

z=iεの方がC2内の極ですから,

C2{1/(z-iε)}dz=2πi,∫C2{1/(z+iε)}dz=0

です。故に,やはり,∫C2[ε/(z2+ε2)]dz=πという

結果を得ます。

しかし,いずれの閉路でも,半円周の半径Rを∞の極限に

とると,ε→+0のとき,[ε/(z2+ε2)]dzは(1/R)の

オーダーで減衰するため,半円周上の積分の寄与はゼロです。

そこで,∫(実軸)dz[ε/(z2+ε2)]dz

=∫x1x2[ε/(x2+ε2)]dxは,実軸上の区間:[x1,x2]

が区間内に原点Oを含めばπに等しく,さもないとゼロです。

あるいは,関数論に頼らず,x=εtanθ,

dx=εsec2θdθと変数置換すれば,

x1x2[ε/(x2+ε2)]dx=∫θ1θ2dθ=θ2-θ1

=Tan-1(x2/ε)-Tan-1(x1/ε)を得ますから,x2>0 ,x1<0

の場合は,ε→+0の極限で右辺=π/2-(-π/2)=πであり,

1とx2が同符号の場合なら右辺=0 です。

以上から,(1/π)limε→0ω1ω22/{(ω0-ω)2+ε2}]dω

は.ω1<ω0<ω2なら1の等しく,さもないときはゼロです。

したがって,δ(ω0-ω)

=(1/π)limε→0[ε/{(ω0-ω)2+ε2}]が示されました。

(証明終わり)  (注8-4終わり※)

 

 途中ですが今回はここまでです。(つづく)

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

 

PS:最近は韓国のKPOPアイドルの方に魅かれます。

女子ゴルファーも美しいのは,私にはどちらかというと韓国人。

昔も女子フィギュアは,浅田真央の時代も非国民といわれながらも

キム:ヨナが好きで応援してた。好き嫌いは理屈じゃない。。

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2019年10月 4日 (金)

光の量子論7

※第2章 原子・放射相互作用の量子力学

の続きです。

余談抜きで本論に入ります。

  • 2.3 遷移速度

前の記事で,(2.13),(2.14)の方程式が,

2 exp(-iω0t)I12=i(dC1/dt),

1 exp(iω0t)I12=i(dC2/dt)

と簡単になる,と書きましたが,

これに,さらに,I12=Ωcos(ωt)を代入

すれば,それぞれの式から,

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)(2.31),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)(2.32)

を得ます。

※(注7-1):|C1|2+|C2{2が時間的に一定不変であり,

(2.31),(2.32)が規格化条件と矛盾しない,ことを証明

します。

(証明):(d/dt){|C1|2+|C2{2}

=C1(dC1*/dt)+(dC1/dt)C1

+C2(dC2*/dt)+(dC2/dt)C2

です。

これに,上記の(2.31),(2.32)を代入すると,

(d/dt){|C1|2+|C2{2}

=iC1*cos(ωt)exp(iω0t)C2}

+(-i){Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2}C1

+iC2{Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C1}

+(-i){Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1}C2

=0 が得られました。(証明終わり)

(注7-1終わり※)

 

※(注7-2):原子に作用する電場が時間的に一定

である特別な場合,つまりω=0の場合,について

(2.31).(2.32)を解き,まず,解のC2が,

22/dt2-iω0(dC2/dt)+|Ω|22=0

(2.33)を満たすことを示します。

そして,これから,ω=0では,

|C2|2={4|Ω|2/(ω02+4|Ω|2)}

×sin2{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t}(2.34)

となることを証明します。

そして,|C1|2は,規格化条件|C1|2+|C2|2=1

から決まります。

(証明);ω=0では,(2.31),()2.32)の

Ωcosωtexp(-iω0t)C2=i(dC1/dt)と

Ωcosωtexp(iω0t)C1=i(dC2/dt)は,

dC1/dt=(-i)Ωexp(-iω0t)C2,および,

dC2/dt=(-i)Ωexp(iω0t)C1です。

2番目の式をtで微分すれば,

22/dt2=(-i)Ωexp(iω0t)(dC1/dt)

+ω0Ωexp(iω0t)C1となります。

右辺の(dC1/dt)に(-i)Ωexp(-iω0t)C2

を,Ωexp(iω0t)C1に{i(dC2/dt)}を代入

すると,d22/dt2=-ΩΩC2+iω0dC2/dt

となります。よって,

22/dt2-iω0dC2/dt+|Ω|22=0

が得られました。

これは定数係数の2階線形常微分方程式です。

特性方程式は,λ2-iω0λ+|Ω|2λ=0で

解として,λ={iω0±(-ω02-4|Ω|2)1/2}/2

=(i/2){ω0±(ω02+4|Ω|2)1/}を得ます。

λ±=(1/2){ω0±(ω02+4|Ω|2)1/}(複号同順)

と置けば,C2=Aexp(iλt)+Bexp(iλt)}

ですが,t=0でC2=0ですからB=-Aです。

故に,C2=2Aexp(iω0t/2)

×sin{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t},となります。

これを,dC2/dt=(-i)Ωexp(iω0t)C1

に代入します。

(-i)Ωexp(iω0t)C1=2Aexp(iω0t/2)

×[(iω0/2)sin{(ω02+4|Ω|2)1/t/2}

+(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/

2cos{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t}]より,

1=iA(Ω)-1exp(-iω0t/2)

×[iω0sin{(ω02+4|Ω|2)1/2t/2}

+(ω02+4|Ω|2)1/2cos{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/2t}]

ですが,t=0でC1=1なので,

iA(Ω)-102+4|Ω|2)1/2=1より.

Ω=iA(ω02+4|Ω|2)1/2 を得ます。

故に,A=(-i)Ω/(ω02+4|Ω|2)1/2

です。

結局,C2=(-i){2Ω/(ω02+4|Ω|2)1/2}

exp(iω0t/2)×sin{(ω02+4|Ω|2)1/t/2},

となります。

したがって,|C2|2=4|Ω|2/(ω02+4|Ω|2)

×sin2{(1/2)(ω02+4|Ω|2)1/t}が得られました。

(証明終わり)  (注7-2終わり※)

 

アインシュタインB係数の計算は,原理的に上

の(注)のω=0の例題に似ていますが,この場合は

ω0に近いωに対する(2.31),(2.32)の解を求める

必要があります。

解の満たすべき初期条件は,やはりC1(0)=1,

2(0)=0.(2.35)です。

この場合も,|C2(t)|2が,時刻tにψ2に原子

を見出す確率であり,|C2(t)|2/tが量子力学的

遷移速度と定義されるものを与えます。

これをアインシュタイン理論のB12の定義と比較

すると,B12W(ω)={C2(t){2/t(2.36)が成立

すべきである,ことがわかります。

しかし,(2.31),(2.32)の方程式:

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)

は,形は簡単ですが,これを一般のωに対して解く

のは,かなり困難なので.とりあえず,近似解を探す

必要があります。

ところで,前記事の最後では,「大抵の光ビーム

では,Ω<<<ω0.(2.30)が成立しています。」

と書きました。そこで,Ω<<<ω0を想定すると,

これはC1,C2をΩのベキ級数として求めるのが

有効ではないか?ということを示唆しています。

そこで,このベキ展開を次のように,逐次近似の

反復法で試行してみます。すまわち,まず,

初期値:C1=1,C2=0を,(2.31),(2.32)の.

Ωcos(ωt)exp(-iω0t)C2=i(dC1/dt),

Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1=i(dC2/dt)

の左辺に代入すると,dC1/dt=0.,および,

dC2/dt=(-i)Ωcos(ωt)exp(iω0t)

=(-i/2)Ω

×[exp{i(ω+ω0)t}+exp{i(ω-ω0)t}]

を得ます。そこで第1近似値として.

1(t)=1,および,C2(t)

=(-Ω/2)[1-exp{i(ω+ω0)t}]/(ω+ω0)

+(-Ω/2)[1-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0)

(2.37)が得られました。

次に.これを,さらに,(2.31)の左辺に代入します。

すると,dC1/dt

=(i|Ω|2/2)cos(ωt)exp(-iω0t)

×[1-exp{i(ω+ω0)t}]/(ω+ω0)

+(i|Ω|2/2)cos(ωt)exp(-iω0t)

×[1-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0) です。

ここで,cos(ωt)exp(-iω0t)

=(1/2)[exp{i(ω-ω0)t}+exp{-i(ω+ω0)t}]

を代入すれば,

右辺=(i|Ω|2/4)[exp{i(ω-ω0)t}-exp(2iωt)

+exp{-i(ω+ω0)t}+1]/(ω+ω0)

+(i|Ω|2/4)[exp{i(ω-ω0)t}+exp{-2i(ω-ω0)t}]

+exp{-i(ω+ω0)t}-exp(-2iω0t}]/(ω-ω0)

となります。

したがって,長い式ですが,C1の第2近似値

として,C1(t)=∫01(dC1/dt)+C1(0)

=1+(|Ω|2/4)

×[-exp{i(ω-ω0)t}/(ω2-ω02)

+exp(2iωt)/{2ω(ω+ω0)}

+exp{-i(ω+ω0)t}/(ω+ω0)2+1/(ω+ω0)

-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0)2

+exp{-2i(ω-ω0)t}/{2(ω-ω0)2}

+exp{-i(ω+ω0)t}/(ω2-ω02)

-exp(-2iω0t}{2ω0(ω-ω0)}が得られます。

つまり,C1(t)=+(|Ω|2/4)×(tの関数)

(2.38)の形の第2近似値を得ます。

第3近似値も同様に求めることができて,

以下,同様に反復するわけです。

そして,

dC2/dt=(―i)Ωcos(ωt)exp(iω0t)C1

であり,C2(t)=∫01(dC2/dt)ですから,C1

|Ω|の偶数ベキ,C2はΩ,またはΩの奇数ベキに

展開されることはわかります。

Ωは,Ω=eE012/hc.(2.23)と定義されていた

ことを思い出すと,これら2つの級数は電場の強さ:

0のベキに展開したものと見なすこともできます。

 

 さて,前章で既に論じたことですが,電磁波の電場

が.E(,t)0cos(kr-ωt),磁場がB(,t)

0cos(kr-ωt)と表わされる場合,1サイクル

の周期はT=2π/ωですから,cos2(kr-ωt)の

サイクル平均は,<cos2(kr-ωt)>

=(1/T)∫0cos2(kr-ωt)=1/2です。

それ故,電磁場のエネルギー:

(1/2)∫(ε02+μ0-12)dVのサイクル平均が,

<(1/2)∫(ε02+μ0-12)dV>

=(1/4)∫(ε002+μ0-102)dVで与えられます。

 

ところが,Maxwellの方程式:∇×E=-∂B/∂t

より,k×E0=ωB0であり,kの向きをz軸正の向き

に取り,E0がxの正の向き,B0がyの正の向きに偏光

しているとして,kE0=ωB0を得ます。

そして,真空(自由空間)中では(k/ω)=c-1

=(ε0μ0)1/2ですから,結局,μ0-102=ε002が成立

します。したがって,この電磁波の総エネルギーの

サイクル平均は,(1/2)∫(ε02+μ0-12)dV>

=(1/2)∫ε002dVとなり,サイクル平均のエネルギー

密度は,(1/2)ε002で与えられることがわかります。

すなわち.周波数ωの光のサイクル平均の

エネルギー密度がW(ω)の定義ですから,

結局,W(ω)=(1/2)ε002です。

これは,第1章の(1.34)で与えた∫0W(ω)dω

={1/(2V)}∫ε0|(,t)|2dVに似ていますが.

今のW(ω)=(1/2)ε002の式では,既に,体積積分

が実行済みです。

Ωが小さいのでC2(t)の表式を,E0,または,Ω

or Ωの1次までのオーダーまで取り,(2.36)の等式

12W(ω)={C2(t){2/tの両辺のE0のベキを比較

すればBが求められるはずです。

アインシュタインB係数を計算すべき周波数

ω~ω0においては,(2.37)の第1近似解:C2(t)

=(-Ω/2)[1-exp{i(ω+ω0)t}]/(ω+ω0)

+(-Ω/2)[1-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0)は,

既に,この比較の目的にかなっています。

元々,アインシュタイン理論では,E0の高次

の項が重要という状況には対応していません。

ω~ω0の光を考えると,Ω<<<ω0より,

ω>>Ωであり,Ωの1次までとるのが良い近似です。

そして,(2.37)のC2(t)の第2項は第1項より

はるかに大きいことがわかります。

ω → ω0の極限では,C2(t)の第1項は,

(-Ω/2)[1-exp{i(ω+ω0)t}]/(ω+ω0)

→ {-Ω/(4ω0)}{1-exp(2iω0t)}

={iΩ/(2ω0)}exp{(iω0t)sin(ω0t)

となり,他方,第2項は,

(-Ω/2)[1-exp{i(ω-ω0)t}/(ω-ω0)

→ (iΩ/2)(ω-ω0)t/(ω-ω0)

=(iΩ/2)t となります。

したがって,ω~ω0では,C2(t)

~ (iΩ/2ω0)[exp{(iω0t)sin(ω0t)+ω0t}

を得ます。

後述するように,原子遷移が起こる特有の時間

間隔tは10-7sec程度か,それよりやや長いくらい

ですが,(2.65)より.ω0は1015Hz程度なので,

こうした対象では,ω0t>>1.(2.41)が極めて良く

成立しています。

それ故,(2.37)の第1項を無視するのが良い近似

になると考えられます。

そこで,ω→ω0とする前の元の式で第1項を無視

すれば,C2(t)~(-Ω/2)[1-exp{i(ω-ω0)t}

/(ω-ω0)=(iΩ)exp{i(ω-ω0)t/2}

×sin{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0) であり,

|C2(t)|2~|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2

(2.42)なる近似を得ます。

そこで,ω~ω0のときは,

|C2(t)|2~(1/4)|Ω|22(2.43)が得られます。

これは,時間tの2乗に比例して増加しますが,(2.42)

からわかるようにωがω0と少しでも異なるなら時間的

に振動します。

このように,(2.37)の第1項を無視する近似は,

回転波近似と呼ばれています。

 

さて,これまでは遷移周波数ω0を厳密な数値を持った

確定値と見なしてきました。これは,ω0の数値には常に

若干の不安定さが伴なう,という実際の実験の際の事情

には合致しません。

如何なる分光器でも測定スペクトル線が,あるΔωと

いう量だけ,ぼやけているような有限の分解能を持ちます。

もしも,完全な周波数分解能を備えた理想的な実験装置

を目論んだとしても,スペクトル線の本来の幅には,より

根本的な限界が存在します。(※ ちまり,量子力学の基礎

を成す,Heisenbergの不確定性原理に根ざす限界です。)

ω0の不確定さを考慮に入れるには,|C2(t)|2の表式

をωのある範囲にわたって積分すればいいだけです。

そこで,ω0を遷移周波数の中心とすると,

|C2(t)|2=|Ω|2sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2は.

Ω­=eE012/hcと,(1/2)ε002=∫W(ω)dωを

利用して,|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)}

ω0-Δω/2ω0+Δω/2[W(ω)sin2{(ω-ω0)t/2}

/(ω-ω0)2]dω.(2.44)とすれば得られます。

ここで,原子は広帯域の照射を受けているという

アインシュタイ理論の基礎となる仮定を採用し,Δω

の範囲にわたって放射エネルギー密度が一定値:W(ω0)

であるとします。

このとき,(2.44)は,|C2(t)|2

={2e2|X12|2/(ε0c2)} W(ω)(Int)(2.45)

と書けます。

ただし,Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω

[sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2].(2.46)です。

 

この積分:Intは2つの極限で解析的に表わすこと

ができます。まず,tΔω<<1のときは,

Int=∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω

[sin2{(ω-ω0)t/2}/(ω-ω0)2].

~[sin2{(Δωt/4}/(Δω/2)2]Δω,

つまり,Int~(1/4)t2Δω.(2.47)となります。

一方,tΔω>>」1なら,∫ω0-Δω/2ω0+Δω/2dω

~∫-∞dω11=ω-ω0) ですから,

公式:∫0[sin2(ax)/x2dx=πa/2より,

-∞[sin2(ax)/x2dx=πa なので,

Int~∫-∞dω1[sin21t/2)/ω12]=πt/2

(2.48)を得ます。

アインシュタインB係数は(2.36)のB12W(ω)

=|C2(t)|2/tにより,原子遷移確率が経過時間t

に比例する理論と結びついています。

そこで,|C2(t)|2={2e2|X12|2/(ε0c2)}

×W(ω)(Int)(2.45)なる式にtΔω>>1のとき

の近似値Int=πt/2(2.48)を代入した式:

|C2(t)|2=πe2|X12|2W(ω)t/(ε0c2)(2.49)

から,B12=|C2(t)|2/{W(ω)t}(2.36)によって,

12=πe2|X12|2/(ε0c2)が得られます。

 

(2.49)の近似は規格化条件:|C1|2+|C2|2=1に

反するような|C2(t)|2が1を超える大きいtに

対しては破綻します。しかし,一旦,Bの大きさが計算

されると,原子の励起度の長時間挙動は,先の記事:

「光の量子論3」の第1章(§1.9原子励起)の

項で与えた,(1.70)のN2の評価式:

2={NBW/(A+2BW)}

×[1-exp{-(A+2BW)t}]において,

(A+2BW)t>>1.(1.73)

の長時間が過ぎると,定常状態の値:

2=NBW/(A+2BW)(1.74)に近づく,

と述べた方法で,決定することはできます。

今回はここまでにします。(つづく)

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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2019年9月27日 (金)

光の量子論6

※(余談):眼が良くて本が読めていた頃は,これは,

と思った専門書をノートに写経しながら読むとき

は1冊入魂で,日本語なら,大体300ページくらい

の本を3ヶ月くらいで読了するというペースでした。

大体3~4ページ/日ですね。文庫本の小説程度

ならせいぜい2~3日で読了ですがね。

 

 まあ,研究者じゃないし,普通は日々の生活の

糧を得るための無関係な労働があるので,

入魂とはいっても,それだけに時間を集中する

ことはできませんでしたが。入院中は1ヶ月以上

もヒマなので,読書三昧,昔購入していていつかは

読もうろおもいながら積ん読状態の本を持ち込んで

読みました。

ちなみに2007年3/24に帝京病院循環内科に

入院時は「常微分方程式論」でフロベニウスの方法

確定・不確定特異点などの勉強を10日程度で読了,

4/3に心臓手術のため順天堂心臓血管外科のCCU

に転院後は詠む本がないので見舞いの友人に自宅

のカギを貸して「ポアンカレを読む」という副題のフックス

型微分方程式論の第1巻をもってきてもらい,4/10の10

時間程度の手術当日と次の日は休みましたが,ICUから

戻って4/22の退院の前日まで読書にふけりました。教授

回診の主治医天野先生私の枕元の専門書をひっくり返

して首をかしげていたような記憶が。。。

 ときどき,お金にもならないのに,40~50面下げて,

いつまでも何やってんだろう?と思うことも多々あり,

生きてた頃のオフクロにも,帰省して夜コツコツ

やってると,「まだやってんの?」と言われました

しかし,受験勉強でもなく,それだけに完全に没頭する

わけでもなく,適当に飲み屋でダベったりウタったり,

PCでネットの買い物やゲーム,そして,AV

(オーディオ・ヴィジュアルだよ,アレもあるけど),将棋

を指したりで,インドアな受け身の趣味ばかりですが,

それほど金かからない遊びも適当にやっていました。

それでメシを食おうと思わなければ, 理論物理では

文献や書物さえ読めばいいし,それが好きなら野球ならプロ

になれなきゃ草野球でもいい,という感じで,細々とでも

やり続ける。やめるという選択肢は元々頭になく,

しつこい(偏執狂の)性格ですからね。

発明,発見をしなくても,誰かが見つけてくれて,それ

を納得できれば十分,あるのは毒にも薬にもならない好奇心

だけです。なので,元々研究者向きではない。もちろん,誰も

見つけてないモノゴトにも好奇心があるので,万が一という

ことも有り得るけど,宝くじ1等当選なみですから無理

でしょう。

何せ,この世界,頭がいいのに実験物理で折角.大学の助手

になっても,教授に院生時代から実験でこき使われ疲れて

ウツ病になったり,あるいは挫折してユメ半ばで事故か自殺

かわからないような死に方をした奴も知っているし,

博士を取ったけど,ずっと希望のポストにありつけず,

貧乏なフリーター続けて優秀でも普通の人間の生活

もできない奴もいるし,逆に完全に興味が移って,別の

ことで金銭的に大成功した人たちもいるらしいです。

 

私は来年70歳の未だにブログ原稿で過去の読書を

反芻してるけど.これも入魂状態で,寝食を忘れて何時間

もやってると,よく低血糖でフラフラになります。

糖尿病だけど主食のチョコなどを食べないとね。

 

もっとも,昔の3ヶ月で読了というのは,途中で

わからない箇所に遭遇してつまづくことがなければ,

の話です。ほとんどの場合は,ただ1行の式がどうしても

わからず,本屋や図書館めぐりで10冊以上も参照した挙句

1年,2年も経つうちにその読書を止めてしまう。半永久的

Pendingというのも多々ありました。

大学や研究所勤めでもなく,近くに気軽に相談できる相手

はいないし,そもそもこの分野,相談しても自分が理解でき

なきゃ無意味ですしね。

昔の人がちゃんと証明したことだから,その式を認めて.

とりあえず先に進むという器用なことができないんですね。

それができていたらヒョットして別の道に進めたかも。。

所詮,専門を学ぶ学生時代は大学と大学院を足しても10年

も無いですから。今も原稿を書いてて,自分が理解できない

なら書くの中止です。先はもう無い。棺おけ片足半なのに

(余談おわり※)

 

第2章 原子・放射相互作用の量子力学

前章の,Planckの放射法則とEinstein係数

では,現象論的なアインシュタイン理論の不備

な点を幾つか露呈しています。

 

まず,この理論からは,A,B係数の値を計算

する処方箋が得られません。

そこで,これは遷移確率の量子力学的理論

に期待する他ないです。

 

より深刻なことはアインシュタイン理論

は入射光の周波数分布が,原子遷移の線幅に

わたって滑らかな,広帯域照射の場合にしか

当てはまらない,という点です。

しかし,レーザー光源による実験などでは,

周波数分布が原子遷移の線幅より狭いビーム

を使用することが珍しくないです。

 

そこで,本章は,B係数の量子力学的計算から

始めます。

原子状態は量子論で,電磁場は古典論で,と

いう半古典論を用いる,(光+量子論)としても,

得られる結果は全く同一ですが,原子・放射

相互作用の効果に関する,より一般的な理論と

して,本章の後部では「光学Bloch方程式」を

与えます。

 

  • 2.1 時間に依存する量子力学

※アインシュタインのB係数の計算

(誘導放出プロセスの時間的速さ)

出発点として,時間に依存する波動方程式

Ψ=ihc(∂Ψ/∂t)(2.1)を用います。

 まず,放射がない場合の孤立した原子の問題

を考えます。

 原子のHamiltonian:HはT+Vという形で

あり,時間tを陽に含まないものです。

このとき,H=Hとした波動方程式

Ψ=ihc(∂Ψ/∂t)は,

Ψ(,t)=exp(-iEt/hc()(2.2)

という,時間に依存する位相因子と,

時間に依らない,ψ()=Enψ()(2.3)

なる,エネルギー固有値方程式を満たす波動関数

ψ(r)との積に分離できる解を持ちます。

(2.2),(2.3)を満たす,こうした形の解で

表わされる原子状態は,定常状態として知られて

います。

B係数の計算では,エネルギー固有値がE1とE2

(E2>E1)である,という,次の2つの固有値方程式

を満たす,2つのエネルギー固有状態:

ψ1()とψ2()のみを考えます。

ψ1()=E1ψ1().(2.4a)

ψ2()=E2ψ2().(2.4b)

だけを問題とするわけです。

対応する時間に依存する波動関数は.

Ψ1(,t)=exp(-iE1t)ψ1()(2.5a)

Ψ2(,t)=exp(-iE2t)ψ2()(2.5b)

です。

そして,hcω0=E2-E1(2.6)を満たす角周波数

ω0を「遷移周波数」と呼びます。

 

nは原子のみのエネルギーですが,原子と放射

電磁波の系については,Hamiltonian:Hに電磁波

のエネルギー:Hを付け加えることで記述できます。

ただし,Hは位置だけでなく時間tにも依存

する量(演算子)です。

それ故,系のトータルのHamiltonianは,

H=H+H.(2.7)で与えられます。

 

さて,ある瞬間tに,原子は状態ψ1にあるとします。

しかし,Hがあるため,ψ1は定常状態ではなくなり

その後のある時刻にψ2に見出される確率が,ゼロでは

なく有限になります。

この確率を1から2への遷移速度として表わす

ことができます。

光の周波数がω0に近いときは,放射過程に関与

するのは,この選ばれた2つの原子状態だけです。

したがって,如何なる時刻tでも,原子波動関数Ψ

は,Ψ(,t)

=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)(2.8)と

表わすことができます。

そして,ψ12が,

∫ψ(()dV=δmn(m,n=1.2)と直交

規格化されているとすれば,Ψが確率振幅という意味

を持つための条件は,

∫|Ψ(,t)|2dV=|C1(t)|2+|C2(t)|2=1(2.9)

で与えられます。

 

こうした条件下で,(2.8)のΨ(,t)

=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)を,

Ψ=ihc(∂Ψ/∂t)(H=H+H)に代入すると,

(C11Ψ1+C22Ψ2)+H(C1Ψ1+C2Ψ2)

=(C11Ψ1+C22Ψ2)

+ihc1(∂C1/∂t)+Ψ2(dC2/dt)},

すなわち,H(C1Ψ1+C2Ψ2)

=ihc1(∂C1/∂t)+Ψ2(dC2/dt)}(2.10)

を得ます。

これに,左からΨ1を掛けて全空間で積分

すれば,C1∫ψ1ψ1dV+C2exp(-iω0t)

×∫ψ1ψ2dV=ihc(dC1/dt)(2.11)

となります。

ここで,Hのψ()による行列要素;Iij

をhcij=∫ψiψdV(i,j=1,2)(2.12)

なる記号で定義すれば,(2.11)は.

111+C2 exp(-iω0t)I12=i(dC1/dt)

(2.13)と簡単になります。

一方,同じ(2.10)に,左からΨ2を掛けて

全空間で積分すれば,

1 exp(iω0t)I21+C222=i(dC2/dt)(2.14)

が得られます。

そこで,原理的に(2.13)と(2.14)の連立方程式を

解けば,C1(t),C2(t)を陽に得ることができる

ため,(2.8)式のΨ(,t)

=C1(t)Ψ1(,t)+C2(t)Ψ2(,t)

によって.Ψ(,t)が決定されること

になります。

 

  • 2.2 相互作用Hamiltonianの形

電磁場と原子の相互作用hamiltonianの完全な形

はやや複雑で,詳しい議論は第5章まで保留します。

しかし,Bを計算するには,相互作用の完全な形で

はなく,主な特徴を知るだけで十分です。

 

さて,電荷が(-e)(e>0)のZ個の電子で囲まれた

電荷Zeの原子核から成る原子を考えます。

この系の原点Oは,この核の位置とします。

そして,これが直線偏光の電磁波と相互作用

するとします。

 

本章では,電磁波の場の形として時間に依存

する部分が実数のものを用います。すなわち,

電場は,0cos(kz-ωt)であり,磁場

0cos(kz-ωt)であって,

0はx方向に,0はy方向に偏光していると

します。

 

原子内電子の典型的軌道半径は,mを電子質量

として,a0=4πε0c2/(me2)~ 5×10-11

(2.16)というBohr(ボーア)半径で与えられます。

周波数が約1018Hzより小さいとすると,この半径

は電磁波の波長:λよりも,ずっと小さいです。

k=2π/λですから,こうした周波数では

ka0<<1であり,原子内部での電磁場の空間的

変化は非常に小さいと考えられます。

したがって,0cos(kz-ωt)の中のkz

を無視するのが良い近似となります。

そうして,原子の全双極子モーメントは=Σjj

(2.17)と置けば,=-eで与えられます。

ただし,jは核を原点Oとした各電子:jの位置

ベクトルです。

このとき,相互作用Hamiltonian:Hは.

=-PE=eDE0cosωt(2.18)と書けます。

(※Hへの他の寄与は,第5章の§5.3で詳述する

予定ですが,それらは上記の(2.18)よりはるかに

小さいものです。上記は,Hの主要項だけを

取った,いわゆる「双極子近似」です。)

 

(2.18)は実数で,奇のパリティを持っています。

つまり,j→ --jの置換でHは符号を変えます。

そこで,(2.12)で定義した行列要素Iijのうち,

体積積分の被積分関数が奇関数となるものは,消えて

ゼロになるため,I11=I22=0.(2.19)です。

 

一方,2つの原子状態;ψ1とψ2が逆のパリティを

持つときには,I12とI21はゼロになるとは限らず,

これらはI21=I12(2.20)の関係があります。

 

以上を考慮すると,(2.13),(2.14)の方程式;

111+C2 exp(-iω0t)I12=i(dC1/dt)

1 exp(iω0t)I21+C222=i(dC2/dt)は,

2 exp(-iω0t)I12=i(dC1/dt),

1 exp(iω0t)I12=i(dC2/dt)

と簡単になります。

 

ところで,0はx方向を向いている,としている

ので,I12の陽な形はI12=(eE012/hc)cosωt

(2.21)と書けます。

ただし,X12=∫ψ1Xψ2dV.(2.22)です。

ここで,Xはのx成分です。

つまり,=(X,Y,Z)であり,電子の位置を

j=(xj,yj,zj)とすれば,X=Σjjです。

さらに,Ω=eE012/hc.(2.23)と置けば,

12=Ωcosωt(2.24)と,より簡単になります。

 

1例として水素原子の1sから2pへの遷移を

考えてみます。

電子のスピン自由度を考慮すると,1s状態は2重に

,2p状態は6重に縮退しています。しかし,相互作用

Hamiltonianは,電子のスピンには無関係なので,遷移

でスピン量子数に変化はありません。

それ故,与えられたスピン量子数を持つ1s基底状態

の電子に対して遷移が許される2p状態は3つです。

その上,x方向に偏った電磁波のΩの中の積分X12は,

2p状態への遷移に対するもの除いてゼロになります。

 

※(注6-1):上述の水素原子の2つの状態:

ψ1()=π-1/20-3/2exp(-r/a0) (2.25)

ψ12()=π-1/2(2a0)-5/2xexp{-r/(2a0)}

(2.26)に対して,Ω=215/2eE00/(35c)(2.27)

であることを証明します。

そして,hcω0=E2-E1を満たす遷移周波数:

ω0は,ω0=(3/4)ω,(2.28),

ただし,hcω=me4/(32π2ε02c2)(2.29)

で与えられることを,以下に示します。

さらに,Ω=eE012/hc ~ ω0,

つまり,hω0~eE012であるためには,

3×1011(V/m)程度の強さの電場E0が必要である

ことを示します。(V=ボルト;volt)

(証明):まず,X12=∫ψ1xψ2dV

=2-5/2π-10-4(2π)∫-11d(cosθ)cos2θ

×∫0drr4exp{-3r/(2a0)}

=(4/3)2-5/20-4(2a0/3)5

0duu4exp(-u)=215/20/35です。

何故なら,∫0duu4exp(-u)

=4!∫0duexp(-u)=24

=3×23 であるからです。

それ故,Ω=eE012/hc=215/2eE00/(35c) 

が得られます。

また,量子力学参考書によれば,水素様原子の

束縛状態の電子のエネルギー固有値は,主量子数:n

(n=1,2..)に対して,E=-{hc2/(2m)}(Z/a0)2

×(1/n2)で与えられます。

故に,Z=1の水素原子で,2pと1sの間の遷移

周波数:ω0は,hcω0=E2-E1=(3/4){hc2/(2ma02)}

を満たします。

これに,a0=4πε0c2/(me2)を代入すると,

結局,hω0=(3/4){me4/(32π2ε02c2)}となります。

そして,hcV=eE012=215/2eE00/35,かつ,

cω0=(3/4){hc2/(2ma02)}より,hcV~hcω0

すれば,E0~ |36/(210√2)}{hc2/(me)}(1/a03)

が必要です。

この右辺に具体的数値を代入します。

すなわち,a0=4πε0c2/(me2)~ 5×10-11m,

e~1.6×10-19C,hc ~ 1.054×10-34Js,また,

mc2~ 0.51 MeV=5.1×106eVより,

m ~ 0.51×106(eV/c2)です。

そして,c2~9×10162/s2です。

したがって,E0~ |36/(210√2)}{hc2/(me)}

×(1/a03)={(729/1024√2)×1.0542×10-68(J22)

×(1/125)×1033-3)}

/{0.51×106(eV/c2)(1.6×10-19C)}です。

ここで,V=J/Cを用いると,

eV~1.6×10-19((CV)=1.6×10-19

なので,左辺 ~ 3.1×1011

(J22-3-12-2-1)となります。

結局,E0~3.1×1011V/m を得ました。

(証明終わり)  (注6-1終わり※)

 

大抵の光ビームでは,それに対してΩ<<<ω0

(2.30)が成立しています。

光ビームが強い場合は第9章で記述する予定です。

 

 今回はここまでです。

 

(参考文献):Rodney Loudon 著

(小島忠宣・小島和子 共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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2019年9月22日 (日)

光の量子論5

※光の量子論の第1章の続きの第4弾,

最後です。次からは第2章もアップする

予定ですが。。イツになるか?

 

  • 1.12反転分布,レーザー(Lasar)

方程式(1.98):∂I/∂z

=-(N1-N2)F(ω)BI(hcω)/(Vcη)

から,励起原子の数N2が,基底状態の原子の数

1より大きくなることができれば,ビーム強度

は原子気体を通過する距離と共に増大すること

になります。

その依存性は吸収係数Kが負(K<0)である

ことを別にすれば,巨視的理論の(1.101)の

I(z)=I0exp(-Kz)と同じです。

 

2>N1という条件の式は,「反転分布」

として知られ,Boltzmannの法則:

1/N2=(g1/g2)exp{hcω/(kT)},

1/g2=1を.そのまま適用すれば,T<0

となるので,負の温度条件として

知られています。

さらに,一般的にエネルギー準位が縮退

している場合は,ビーム強度が増大する条件

はN2>(g2/g1)N1です。

 

もちろん,熱平衡では反転分布(T<0)は

決して起こり得ず,先に示した通り2状態間

の遷移周波数で光の共鳴吸収を起こさせても,

それを実現させることはできません。

 

しかし,準位1と準位2についての反転分布

は,その原子の他のエネルギー準位を利用する

実験で実現させることができます。

 

最も簡単な過程は3つの準位を使うものです。

ここでは原子の基底状態を準位3と名付け,

準位1と準位2は,それぞれ,第1と第2励起

状態とします。

 

エネルギー密度:Wのビームを使って遷移

3→2を起こさせ,N2個の原子を状態2に励起

させます。こうした使い方をする光ビームを

ポンプと呼びます。

こうした方法で汲み上げられた励起原子の

総数の比率:N2/Nは通常はかなり小さくて,

100万分の1程度というのが.その代表的数字

なので,遷移:3→2は飽和条件から遠く

離れています。

 

準位2の原子は下向きの遷移:2→1,or

2→3により光を放出し,また,準位1の原子

も光エネルギーを失なって,基底状態3に戻る

ことができます。

 

次に,アインシュタイン係数がある適当な値

を持つ場合には,N2>N1の条件を満たすことが

有り得ること,したがって周波数;

ω=(E2-E1)/hcの光の増幅が可能であること

を示します。

 

3準位系の遷移速度を求める方程式は,

2準位系のレート方程式を単に一般化した式です。

ポンプビーム:Wの他に.周波数ωの

エネルギー密度Wのビームがあるとします。

各原子は今考えている3つの準位だけを

占めているとすると,N1+N2+N3=N.(1.106)

です。

 

レート方程式は,dN2/dt=-N221-N223

+W23(N3-N2)+WB21(N1-N2)/(1.107),

dN1/dt=N221-N113-WB21(N1-N2)

(1.108),および.

dN3/dt=N223+N113

-W23(N3-N2).(1.109)と書けます。

この3つの速度の和はゼロであり,これは

(1.106)に合致しています。

 

定常状態は,これらの左辺の時間微分を

全てゼロとした状態であると考えられます。

その結果として,N1,N2,N3に対する解を

N,W.Wで表わすことができます。

 ここでポンプ速度:rを

r=W23(N3―N2)/N.(1.110)で定義して

おきます。

 

すると,定常状態では,(1.108)より,

2(A21+B21W)

=N1(A13+B21W).(1.111)となります。

また,(1.109)より,

223+N113=rN.(1.112)となります。

(1.107)は不要で,N3は,

3=N-(N1+N2)から決まります。

 

(1.111)より,N2/N1

=(A13+B21W)/(A21+B21W)

ですから,N2>N1となるためには,

13>A21(1.113)が必要です。

一応,連立方程式:(1.111),(1.112)

を解くと.N1=rN(A21+B21W)

/[A13(A23+A21)+B21W(A13+A23)]

(1.114),および,N2=rN(A13+B21W)

/[A13(A23+A21)+B21W(A13+A23)]

(1.115)を得ます。

それ故,N2-N1=rN(A13-A21)

/[A13(A23+A21)+B21W(A13+A23)]

です。

13>A21.を満たす原子気体は粒子密度

Wの放射の通過距離zによる増幅が可能です。

その理論は光の吸収に対して,前述した理論

と同様であり符号を適当に変えるだけの違い

です。

(ⅰ)Wが弱い場合,

2-N1=rN(A13-A21)

/[A13(A23+A21)+B21W(A13+A23)]

~r(A13-A21)/[A13(A23+A21)]となり,

(N2-N1)が事実上,Wに無関係になること

がわかります。

(ⅱ)一方,Wが強い場合

2-N1~rN(A13-A21)/[B21W(A13+A23)]

となり,(N2-N1)はビームの強度Wに反比例

して準位1と2の間の遷移は飽和に近づきます。

 

この場合.増幅は減少しますが,ビーム強度は

距離zに比例して増大します。

(以下の注を参照)

 

※(注5-1):増幅の場合;前の減衰の(1.100)

(1/I){1+2BI/(Acη)}(∂I/∂z)

=-NBhcωF(ω)/(Vcη)

の類似の式: (1/I)(1+I/I0)(∂I/∂z)

=G.(1.116)が成立することが示せます。

ただし,I=|A13(A23+A21)

/(A13+A23)}×(c/B21).(1.117),であり,

G=r(A13-A21)/|A13(A23+A21)}

×{NB21cωF(ω)/V}.(1.118)です。

 

(1.116)の一般解は,

ln(I/I0)+(I-I0)/Ic=Gz(1.119)で

あり,ビーム強度は弱い場合と強い場合

で,それぞれ,I(z)=I0exp(Gz)(I<<Ic)

(1.120).および,I(z)=I0+IcGz(I>>Ic).

(1.121)となります。

(証明):エネルギー保存の(1.93)式でη=1と

すると,(∂/∂t)(Wdωadz)

=(N2-N1)F(ω)B21W(hcω)dω(adz/V),

つまり,

∂W/∂t=(N2-N1)F(ω)B21W(hcω)/V

であり,∂W/∂t=∂I/∂z,および,cW=I

から,∂I/∂z

=(N2-N1)F(ω)B21I(hcω)/(cV)です。

そして,N2-N1=rN(A13-A21)

/[A13(A23+A21)+B21W(A13+A23)]でしたから,

[A13(A23+A21)+B21I(A13+A23)/c]

×(∂I/∂z)

=rN(A13-A21)F(ω)B21I(hcω)/(cV)

or [1+I{(B21/c)(A13+A23)/{A13(A23+A21)}]

×(∂I/∂z)=[r(A13-A21)/{A13(A23+A21)}]

×NB21I(hcω)F(ω)/(cV)と書き直せます。

 

ここで,Ic=|A13(A23+A21)/(A13+A23)}

×(c/B21),および,

G=r(A13-A21)/|A13(A23+A21)}

×{NB21cωF(ω)/V}を用いると簡単化され,

(1/I)(1+I/I)(∂I/∂z)=Gとなります。

 

この両辺を,積分してz=0でI=I0とすると,

確かに一般解:ln(I/I0)+(I-I0)/I=Gz

を得ます。

そこでI<<Iなら,ln(I/I)=Gz

より,I(z)=I0exp(Gz)と近似されます。

一方,I>>IcならI(z)=I0+IcGz 

と近似されます。(証明終わり)

(注5-1終わり※)

 

以上のような光増幅器を「3準位レーザー」

と呼びます。

元々のWが存在せず,W=0であったときで

さえ,A21のために,周波数ωの放射が発生する

ため,謂わゆる「自励振動子」の役目を果たす,

ということもできます。

 

  • 1.13 放射圧

波数の進行電磁波を構成する光子は,

いずれも運動量hcを持っています。この運動量

が光子に実在することは.1922年にンプトン

(Compton)による散乱の実験によって,

立証されました。

合わせて,運動量は真空中ではhcであり,

屈折率ηの物質中では(ηhc)であること

も立証されました。

以下,光ビームと原子気体との3種類の基本

相互作用に及ぼす光子運動量の効果を考察

します。

 

吸収過程では運動量hcが光のビームを吸収

する原子に移り,原子質量をMとすると,その原子

はビームに平行に(hc/M)という速度を得ます。

そして,もし,その励起原子がその後,誘導放出

で減衰するなら,放出された光子は,入射ビームに

平行な運動量hcを受け取り,原子は直前に得た

速度を失ないます。

(光子ビーム速度は元に戻ります。)

しかし,もしも励起原子が自然放出で減衰する

なら,放出された光子は立体角4πの任意の向き,

つまり,勝手な方向に反跳を受けることになり,

平均すると寄与はゼロとなるため,原子が直前に

出していた速度は打ち消されない,ということに

なります。

 

それ故,各原子が光子を吸収した後,自然放出が

起こるときに限って.光子から原子に平均してhc

の運動量が移ります。これは,原子と放射の系が

定常状態に達しているか否かを問わず正しいこと

です。このことは,定常状態に達すると原子への

励起エネルギーhcωの移動が起こらなくなる。

という以前,(1.75)に関連して強調したこととは

対照的です。

 

故に,原子への運動量の移動は放射が気体に

及ぼす圧力と等価である,と考えられます。

(※ 多くの原子が,空洞内に閉じ込められている

系が対象なので,個々の原子速度の増加は壁で

反射される,という意味で,内力=応力の増加に

寄与するのみです。)

 

空洞内の総原子数Nは,通常,莫大なので,

原子占位数の時間依存性は滑らかである,と仮定

します。ある周波数ωにおけるエネルギー密度が

Wであるような放射があって,そのωが,原子の

基底状態と,ある単一の励起状態との間の遷移に

共鳴しているとき,全原子の総運動量Πの変化速度

は,吸収の速度と誘導放出の速度の差に比例します。

 

すなわち,dΠ/dt=(N1-N2)hcBW.

(1.122)です。何故なら,各原子が光子を吸収後,

自然放出が起こるときに限り,光子から原子に

cの運動量が移りますが,定常状態

(滑らかな状態)では,原子からの自然放出の総運動量

は,原子気体の吸収運動量から誘導放出運動量を

差し引いたものに等しく,そこで,それは,N2Ahc

=(N1-N2)BWhckで与えられるからです。

Π/dt=(N1-N2)hcB.W

の右辺は,1>N2を満たす2準位の実験では常に

正ですが,3準位以上の場合は,1<N2のときも

あるので負になることもあります。ただし,ここ

では2準位の場合のみを取り上げます。

 

※[(注5-2):§1.9原子の光励起の項目で考察した

実験で実験開始の瞬間に,光ビームを基底状態に

ある原子気体に照射するものとして,運動量移動の

速さを計算します。

原子の運動量が時刻tで,

Π(t)={NBWhc/(A+2BW)}At

-{NBWhc/(A+2BW)}{2BW/(A+2BW)}

[exp{-(A+2BW)t}-1])(1.123)である

ことを示し,短時間後と長時間後の両極端での,

その形について議論します。

(解):今想定しているのと同じ実験のN2

対する解(1.70):N2={NBW/(A+2BW)}

×[1-exp{-(A+2BW)t}]と,N1=N-N2

より,N1-N2=N-2N2

=N(A+2BW)/(A+2BW)

-{2NBW/(A+2BW)}

×[1-exp{-(A+2BW)t}]

=NA/(A+2BW)

+{2NBW/(A+2BW)}

×exp{-(A+2BW)t} を得ます。

故に.dΠ/dt=(N1-N2)hcBW

=NABWhc/(A+2BW)

+{2N(BW)2c/(A+2BW)}

×exp{-(A+2BW)t} です。

t=0でΠ=0として,tで積分すると,,

Π(t)={NBWhc/(A+2BW)}At

-{NBWhc/(A+2BW)}

×{2BW/(A+2BW)}

×[exp{-(A+2BW)t}-1]

が得られます。

 

t~0のときは,At~0であり,

[exp{-(A+2BW)t}-1]

~ -(A+2BW)tなので,

tが小さいときは,

Π(t)~{2N(BW)2c/(A+2BW)}t

となって,Πはtと共に直線的に増加します。

一方,t~∞の極限では,

[exp{-(A+2BW)t}-1]~ -1なので,

tが大きいときには

Π(t)~{NBWhc/(A+2BW)}At

+{2N(BW)2c/(A+2BW)2}

={NBWhc/(A+2BW)}

×[At+BW/(A+2BW)]となります。

そこで,平衡状態でもAtは常に存在します。

(解答終わり)(注5-2終わり※)

 

励起原子の数N2が,

2=NBW/(A+2BW)(1.74)

で与えられる定常状態では運動量移動の

速さは,dΠ/dt=hc2

=hckNBWA/(A+2BW).(1.124)

となります。

光ビームを非常に強くすると移動

の速さは飽和値:

Π/dr=-hc(N/2)A(BW>>A)

(1.125)に近づきます。

一旦,飽和領域に達すると.それ以上,

ビーム強度を大きくしても運動量移動の速さ

には,ほとんど変化がありません。

定常状態での運動量の速度:dΠ/dt

=hckNBWA/(A+2BW)は,原子ごと

に平均して,=hckBWA/(A+2BW)

(1.126)の力が加わっているのと,等価です。

 

ビームの方向をz方向に取り,座標zでの

原子密度をN(z)とすれば温度Tでの原子分布

はN(z)=N(0)exp{Fz/(kT)}.(1.127)

の形を取ります。

(何故なら,Uを構成原子の位置エネルギー

とすればBoltzmann因子により,平衡分布は,

N(z)∝exp{-U/(kT)}で与えられます

が,F=-∂U/∂zで,U=-Fzです。)

 

この空間依存性はナトリウム原子のガスを

管に封入して,その管の長さ方向にレーザー

ビームを当てることにより,

実験検証されました。

 

光子と原子との間の運動量移動は,原子

をビームの形にして強い光ビームと直交して

走らせることによって,実用的な応用を生み

出します。原子は光子を吸収すると元の径路

から偏向します。さらに,誘導放出が起きると

原子の軌跡は横方向に僅かにずれるだけで

方向は変わりません。主要な偏向は吸収+

自然放出のために生じるのです。

(2006年6/5(月) 第1章終了※)

 

(参考文献):Rodney.Loudon著

(小島忠宣・小島和子共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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光の量子論4

※光の量子論の第1章の続きの

第3弾です。

 

  • 1.11 吸収の微視的理論

※厚い空洞に詰まった原子気体を光ビーム

が通過する際の前記の減衰過程を微視的観点

から考察します。

その目的は減衰速度,したがって,吸収係数

を,以前のアインシュタイン理論の2つの係数

A,Bに結びつけることです。

 

空洞内が定常状態に達していれば,

レート方程式:dN1/dt=-dN2/dt

=N2A+(N2-N1)BWの両辺はゼロに

等しいです。しかし.このレート方程式は,

誘電体が存在する場合には,どうしても

避けられない小さな変化が生じます。

 

アインシュタイン係数は自由空間(真空)

内の単一原子に入射する電磁波について

定義されており,その場合には,場の

エネルギー密度は全エネルギーがサイクル

平均で,(1/2)∫(空洞)ε0|(,t)|2dVで

与えられる.または,単位体積当りでは,

0W(ω)dω

={1/(2V)}∫(空洞)ε0|(,t)|2dV

で与えられる,という式を満たすW(ω)

のことでした。

 

この(1/2)∫(空洞)ε0|(,t)|2dV

を,(1.87)の(1/2)∫(空洞)ε0η2|(r,t)|2

のように,η2因子を付けて,

誘電体内のエネルギー密度にとった

ときには,アインシュタインの自由空間の

理論における吸収と誘導放出の速さでは,

この因子を除いておく必要があります。

 

そこで,定常状態となる条件

は,誘電体内では,

0=dN1/dt=-dN2/dt

=N2A+(N2-N1)BW/η2

となるべきです。

故に,

2A=(N1-N2)BW/η2.(1.92)

が成立する必要があります。

 

自発放出により放射されるエネルギー

の放出速度はN2A(hcω)で,これは

エネルギー減衰速度であり,自由空間では,

吸収によるN1BW(hcω)から誘導放出に

よるN2BW(hcω)を引いたものに等しい,

という式の構造でしたが,

誘電体が存在すれば,Wの代わりに,これ

を(W/η2)で置き換える必要があるため,

(1.92)を得るわけです。

 

次に,N2A=(N1-N2)BW/η2の右辺

によってビーム減衰速度を計算します。

 

その前に原子遷移速度について,さらに

詳述する必要があります。

これまでは,どの原子も確定した1つの

遷移周波数ωを持つと見なしてきました。

しかし,次の第2章で述べることですが,

各原子に対して同じ1対の状態を考える

ときでさえ,原子が吸収or放出できる光子

の周波数ωには,ある統計的広がり

があります。

 

そこで,ωの付近のdω中に光子の周波数

が入っている遷移比率をF(ω)dωとします。

(∫F(ω)dω=1と規格化しておきます。)

差し当たり,ωが特定範囲にある遷移だけ

を考えます。

 

1個の原子が下の準位にありN2個の原子

が上の準位にあるような定常状態では,dω

に含まれるビームのエネルギーの変化速度は,

-(N1-N2)F(ω)dωBW(hcω)/η2

に等しくなります。

光のビームの進行方向はz軸に平行とします。

すると,Wはその向きに減衰するため,zの関数

です。

 

ここで,厚みdzと断面積aのzに垂直な

薄い空洞の切片を考えます。

Wはこの微小厚さの切片内では位置座標:

には無関係とすると.切片内のビームの

エネルギーでdωに含まれるものは.

Wdωadzです。

そして,空洞の全体積はVですから,

(adz/V)は,切片内にある原子数の比率

を示しています。

 

故に,エネルギー保存条件は,

(∂/∂t)(Wdωadz)

=-(N1-N2)F(ω)dωBW(hcω)/η2

×(adz/V).(1.93)

で与えられることになりますが,

これはつまり,∂W/∂t

=-(N1-N2)F(ω)BW(hcω)/(Vη2)

(1.94) を意味します。

 

かくして,アインシュタインの理論が,

ビ-ムのエネルギー密度Wの時間依存性

を表わす方程式を導く,ことが

わかりました。

これに対して,先の巨視的理論で得られた,

(1.90)のI(z)=I0exp(-Kz)で導入された

吸収係数Kを含む議論は,ビーム強度の空間的

変化を与えます。

 

ところで,∂W/∂tに対する式(1.94)は

(1.93)の左辺の-(∂/∂t)(Wdωadz)

が体積(adz)の切片でビームエネルギー

が失われる速さ­=空洞切片が同じエネルギー

を受け取る速さ,を示しており,これが断面積

aの切片境界を横切って流入するエネルギー

に等しい,という形に表わすことができます。

 

すなわち,Idωをωとω+dωの間に存在

する電磁エネルギーの強度とすると,

-(∂/∂t)(Wdωadz)

=-a(∂I/∂z)dzdω.(1.95)によって,,

∂W/∂t=(∂I/∂z).(1.96)なる関係式

を得たわけです。

 

※(注4-1):上の(1.96)式は,

Δtの間のビームのエネルギー密度Wの増分:

ΔW={W(t+Δt)-W(t)}に逆符号を

付けたものが

断面積を横切って通過する,厚さΔzの間の

エネルギー強度の増分:ΔIに逆符号を

付けたもの=流入速度:-ΔI

=-{I(z+Δz)-I(z)}で表わせる,

という形のエネルギー保存則の形式です。

 

つまり,空洞切片において,

「Δtの間の空洞エネルギーの増分:

-ΔWdω(aΔz)

=-{W(t+Δt)-W(t)}dω(aΔz)

=-(∂W/∂t)Δtdω(aΔz)

が空洞切片へのΔtの間のエネルギー流入量:

-aΔIdω(Δt)

=-a{I(z+Δz)-I(z)}dωΔt

=-a(∂I/∂z)ΔzdωΔtに等しい。」

という形のエネルギー保存則の表現です。

 

故に,確かに∂W/∂t=∂I/∂z

を得ますが,これは流体の質量や電荷の保存

を示す連続の方程式∂ρ/∂t+∇=0

(j=ρ)のアナロジーである.

と考えられます。(注4-1終わり※)

 

さて,(1.87)から,∫0W(ω)dω

={1/(2V)}∫(空洞)ε0η2|(r,t)|2dV

であり,他方,(1.89)から∫0I(ω)dω

={1/(2V)}∫(空洞)ε0cη|(r,t)|2dV

となるはずです。これらを比較すれば,

cW=ηI(1.97)なる関係があることが

わかります。

 

∂W/∂t=∂I/∂zを,(1.93)の∂W/∂t

=-(N1-N2)F(ω)BW(hcω)/(Vη2)と

組み合わせた式において,右辺にW=ηI/c

を代入すると,∂I/∂z

=-(N1-N2)F(ω)BI(hcω)/(Vcη)

(1.98)を得ます。

これは,エネルギー準位が縮退している場合

この式の右辺ののN1に(g2/g1)という因子を

掛けることで一般化されます。

しかし,以下ではg1=g2,つまり,g2/g1=1

の場合だけを扱うことにします。

 

右辺のN1,N2そのものがWに,それ故Iに

依存するため,方程式(1.98):∂I/∂z

=-(N1-N2)F(ω)BI(hcω)/(Vcη)

は思ったよりも複雑です。

 

しかし,定常状態では.

2A=(N1-N2)BW/η2(1.92)が成立する

ので,N1+N2=Nにより,N1を消去して,

2=(NBW/η2)/(A+2BW/η2)を得ます

から,さらにW=ηI/cを用いて,(N1-N2)

は,N1-N2=N-2N2=NA/(A+2BW/η2)

=NA/{A+2BI/(cη)}(1.99)と表わせる

ことがわかります。

 

これを,(1.98)の∂I/∂z

=-(N1-N2)F(ω)BI(hcω)/(Vcη)

に代入し,分母を払えば,

{A+2BI/(cη)}(∂I/∂z)

=-NABF(ω)(hcω)I/(Vcη)

となります。

そこで,最終的に,(1.98)は

(1/I){1+2BI/(Acη)}(∂I/∂z)

=-NBhcωF(ω)/(Vcη).(1.100)

と書き直せます。

 

さて,2つの極端な場合を考えます。

(ケースⅠ):普通のビームでは,(1.100)の

左辺の括弧の中の第2項:2BI/(Acη)

=2BW/(Aη2)は常に第1項の1より

ずっと小さいです。

そこで,これを無視しますが,この項を

無視するのは.全体の原子数Nに比して

励起原子の数:

2=N(BW/η2)/{1+2BW/(Aη2)}

を無視することに相当します。

このケースでは,(1.100)は,

(1/I)(∂I/∂z)

=-NBhcωF(ω)/(Vcη)となるため,

間単に積分できて,

I(z)=I0exp(-Kz)(1.101)を得ます。

ただし,K=NBhcωF(ω)/(Vcη)

(1.102)です。

 

この式は巨視的理論の(1.90)と全く同じ

ですから,このKは(1.91)の吸収係数:

K=2ωκ/cと全く同じものです。

Kが周波数と共に変わる様子は原子遷移

周波数の分布F(ω)に似ていますが,さらに

周波数に依存する因子が掛かっています。

ここで,(1.92)の,

K=NBhcωF(ω)/(Vcη)の右辺の因子

cω/(cη)を左辺に移して,両辺をωで

積分すると,∫F(ω)dω=1より,

∫[Kcη/(hcω)]dω=NB/V.(1.103)

を得ます。それ故,Kとηが測定できれば,

実験からBの値を決定できます。

 

希薄な原子気体ではηは自由空間の値1

に近いです。そして,大抵の吸収線はKが

著しく大きくなる場所の周波数に比べて,

小さい幅を持っているため,ωは吸収線全域

で近似的に一定です。

(1.103)より,BはK-ωグラフのKの

描く曲線の下の面積に比例しますが,

このケースには面積はKωで近似されます。

(※Kの具体的関数形は第2章で論じます。)

 

∫[Kcη/(hcω)]dω=NB/Vは,

(1.91)のK=2ωκ/cと(1.94)2ηκ=χ”

により,Kcη/(hcω)=χ”/hcとなる

ため,∫χ”dω=hcNB/V.(1.104)

と書き直せます。

 

(ケースⅡ):光ビームが非常に強い,

というのが,もう1つの極端な場合です。

これは,2BI/(Acη)

=2BW/(Aη2)>>1の場合で,

このときは,(1.100)の方程式:

(1/I){1+2BI/(Acη)}(∂I/∂z)

=-NBhcωF(ω)/(Vcη).の左辺の

括弧の中の1の方が無視できて,方程式は,

2B/(Acη)}(∂I/∂z)

~ -NBhcωF(ω)/(Vcη),つまり,

(∂I/∂z) ~ -NAhcωF(ω)/(2V)

となり,これを積分することで.

I-I0=-NAhcωF(ω)z/(2V)

(1.105)を得ます。

 

したがって,この場合,ビーム強度は,

(ケースⅠ)の(1.90)や(1.101)のような指数関数

的減衰ではなく,自発放出の係数:Aから決まる

速さで,空洞を通過する距離zに比例して

減衰します。

 

(1.98)のIの減衰方程式:∂I/∂z

=-(N1-N2)F(ω)BI(hcω)/(Vcη)

の右辺は,N1-N2=N-2N2が正,つまり,

2>(N/2)になれば,Iは減少から増加に

転じます。

それ故,∂I/∂z=0はIの極大値を

与えます。

ビームの光子が散乱されてビ-ムから出て

いくエネルギーの速さは,(1.94)の空洞内原子

気体への流入率の式:∂W/∂t

=-(N1-N2)F(ω)BW(hcω)/(Vη2)の

右辺に逆符号を付けたもの:

(N1-N2)F(ω)BI(hcω)/(Vcη)

ですが(1.92)より,N2A=(N1-N2)BW/η2

ですから,これはN2Ahcωに比例します。

 

そこで,N2Ahcωがその極大値:

(NAhcω/2)に近づくと,強度Iの減衰が鈍化

して,飽和していくことになります。

すなわち,原子遷移は飽和に近づき,吸収が

減少していくわけですが,これは,ビームの

エネルギーが散乱されて出て行く速さ:N2Ahcω

が,その極大値:(NAhcω/2)に近づくからです。

ビーム強度Iが,これ以上増加しても散乱の

起こる速さには,それに見合った増加が有り得ない

のでIが増加すると,気体を通過するときのIの

変化率は減少するわけです。

そこで,Maxwell方程式を基にした巨視的な

吸収理論は飽和の状況では適切でないです。

故に,極端な(ケースⅠ)の(1.103)で実験結果

を説明するには,その実験ではKを測る際には,

当然,飽和が起こらないようにする必要が

あります。

今回はここまでです。

次が第1章最後です。(つづく)

(参考文献):Rodney.Loudon著

(小島忠宣・小島和子共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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2019年9月21日 (土)

光の量子論3

※光の量子論の第1章の続きの第2弾

です。

 

  • 1.8 微視的過程の性質

本章の残りでは,光ビームが原子(分子)気体

を詰めた空洞内を通過する際に起こり得る光学

過程を取り上げます。アインシュタイン理論に

現われる3つの基本過程の性質と,特に2種類の

放出過程の間の差異について,より詳しい議論が

必要です。

 

輪郭の明確な単一の空洞モードに励起された

光の入射ビームを考えます。

光の周波数は,アインシュタイン係数A,Bで

表わされる原子遷移と共鳴している,とします。

 

起こるべき3種類の励起の最も重要な特徴

は,励起原子から誘導放射で発生する光は,それ

を引き起こした入射光と同一の空洞モードで

現われる,という事実です。

また,放出光は入射ビームと位相も同じです。

そこで,誘導放出は入射ビーム強度を増幅

する傾向があります。

一方,自然放出によって生じた光は,入射

ビームとは完全に独立で,この光はエネルギー

保存則を満たしさえすれば,どのような空洞

モードでもいいです。

よって,自然放出光の伝播方向は入射光の

ビームに対して勝手な向きを持ち,位相も

決まりません。

 

さて,光と原子が安定な平衡状態に落ち着く

と,下の状態も上の状態も,その原子数N1,N2

は一定になります。

 

光ビ-ムが気体中を通過するとき,吸収過程

により,hcωが次から次へと消えてゆきます。

こうして励起された原子は,結局は基底状態

に戻り,誘導放出によって光子hcωを再生します。

もしも,この過程が1種類の誘導放出のみで,

2種類目がないなら定常状態の後,ビームは強度

を変えずに,ただ通過するだけと考えられます。

 

しかし,かなりの原子は自発放出によって,

基底状態に戻るため,吸収されたエネリギーの

うちで,次の割合:A/(A+BW)

=1/{1+π23W/(hcω3)}.(1.64)で,勝手な

向きに再放出され,残りの僅かな部分だけが,

偶々,入射ビームと同じ方向に自然放出されます。

こうして,自然放出は,光の散乱と,これに伴なう

入射光の減衰をもたらします。

 

こうした散乱が外部ビ-ムの気体通過の際に

生じる「見掛け上の」吸収の微視的原因です。

吸収という言葉を使ってはいますが,入射ビーム

が減光されるのは,原子による吸収ではなく散乱

のためです。

 

上記の基礎的現象は,吸収係数の測定,または

散乱光の強度の観測のいずれか,によって,実験

的に検証ができます。

 

誘導放出と自然放出の相対的重要度は(BW/A)

という比の大きさに左右されます。BW/A=1の

ときは,2種類の放出速度は等しい,ということに

なります。

 

例えば,5×1014Hzの領域の周波数を持つ可視光

では,ω~3×1015Hz.(1.65)なので,1つの光子は,

cω~3×10-19J.(1.66)程度のエネルギーを

持ちます。

一方,先に与えたモード密度は,この周波数の

領域で,(1.10)によればρωdω=ω2dω/(π23)

~ 3.4×10-dω/m3.(1.67)となります。

そこで,(1.66)×(1.67)を実行すると,

(hcω)ρωdω=hcω3dω/(π23)

~ 10 -14dωJ/m3 となりますが,

(1.51)のA21={hcω3/(π23)}B21より

A/B={hcω3/(π23)} です。

故に,BW/A=1のときには,Wdω

=(A/B)dω={hcω3/(π23)}dω

=(hcω)ρωdω~ 10–-14dωJ/m3.(1.68)

を得ます。

(※ W=W(ω)は元々,光のエネルギー密度

と定義されていたのですから当然です。)

 

後述の,誘電率がε=(1+χ)ε0の誘電体中の

光のビーム強度(Poyntingベクトル)×

×0の大きさとエネルぎー密度Wの

関係:cW=ηI(1.97)(※(η+iκ)2=1+χ)

によって密度Wから強度Iが決まります。

(※誘電体のない自由空間ではκ=0,η=1)

 

そこで,(1.68)のWdωに,c~3×108m/s

を掛けて,Idω~3×10–-6dωW/m2.(1.69)

です。

 

普通のスペクトル光源の狭い発光源が持つ

周波数のひろがりの標準的な値は1010Hzで,

これは(2π)×1010Hzのdωに相当します。

この幅のdωを使って,BW=Aを達成する

ために必要なIdωは,上記(1.69)の

Idω~3×10–-6dωW/m2より,

Idω ~ 2×10 5 W/m2程度であること

がわかります。

 

ところが,通常の光源のうち,最も強いもの,

例えば水銀灯でさえ,Idω~10 4W/m2程度

なので,誘導放出を自発放出に等しくするには

不充分です。これらの場合,自発放出により,

原子吸収分のほとんどが散乱され入射ビーム

から消えて無くなります。

 

しかし,レーザー光線,特にパルスレーザー

ではIdω~1013W/m2より,Aかそれ以上の

BWが得られます。この場合は誘導放出が重要

になり,後述するBW<<Aの条件と,

BW>>Aの条件では,ビームの吸収や増幅の型

は異なったものとなります。

 

  • 1.9 原子の光励起

※吸収係数に対する微視的表式を導き出すため

の準備として,光ビームの照射によって原子の

占位数がどのようになるか,について考えます。

 

N個の原子を含む空洞は,原子を通過するとき

のビーム強度の変化が無視できる程度に十分薄い

と仮定します。そして,全ての原子が基底状態に

ある時刻:t=0で,一定のエネルギー密度Wの

ビームが流れ始めたとします。

このとき,時刻tに励起状態にある原子の数

2はN2=N-N1と(1.63)のN1の解:

1={N10-N(A+BW)/(A+2BW)}

×exp{-(A+2BW)t}+N(A+BW)

/(A+2BW)でN10=Nとしたものから,

2={NBW/(A+2BW)}

×[1-exp{-(A+2BW)t}].(1.70)になります。

よって,短かい時間:(A+2BW)t<<1(1.71)

では,N2=NBWt.(1.72)となり,励起はtと

共に直線的に増加します。

一方,(A+2BW)t>>1.(1.73)の長時間が

過ぎると,定常状態の値:N2=NBW/(A+2BW)

(1.74)に近づきます。

 

光ビームを照射し始めると,原子は励起状態

に上がり,エネルギーが光から原子に移ります。

定常状態に達すると原子は,エネルギー;

2cω=NBWhcω/(A+2BW)

=NWhcω/[hcω2/(πc3)+2W] (1.75)

を蓄えることになり,その後は放射から原子に

エネルギーが移されることは無くなります。

 

そして,光と原子の相互作用は,光子の空間的

方向の分布を変える効果を与えます。

定常状態におけるN2の値は普通の光源,つまり,

BW<<Aの場合,N2はNよりずっと小さいので,

大部分の原子は基底状態に留まっています。

このときには,N2は入射ビームのエネルギー

密度:W=Wに比例します。

一方.レーザー光源が強力でBW≧Aのとき,

2のビーム強度への依存は非線形になり,

BW>>1の場合には,N2/Nは1/2に近づく

ような曲がり方をします。

この線形でない挙動を「原子遷移の飽和」と

いいます。しかし,上に述べた型のような実験では,

2>N1,つまり,(N2/N>1/2,という条件を達成

することは不可能です。

 

ここで,再び,入射ビームが切られたとすると

励起原子は基底状態に戻り,先に,

NWhcω/[hcω2/(πc3)+2W]で表わされた

蓄積エネルギーは,光子として再放出されます。

 

20を(1.74)で得た定常状態の励起原子数の

値:N2=NBW/(A+2BW)とし,t=0を定常

状態から入射ビームが打ち切られた瞬間と定義

し直します。そして,レート方程式:dN1/dt

=-dN2/dt=N2A+(N2-N1)BW.(1.62)

はビーム打ち切りで,W~W=0となるため,

dN2/dt=-N2A.(1.76)となり,その解は,

2=N20exp(-At).(1.77)で与えられます。

 

エネルギーを失なう原子は,いずれも光量子

cωを放出するので,放出光の強度も,

exp(-At)に比例して減衰します。

 

この謂わゆる「蛍光放出」の時刻変化を観測

するのがアインシュタインのA係数を測る1つ

の実験となります。(※ 蛍光とは,自発放出光の

一種であって,誘導放出光ではありません。)

Aの逆数:I,つまり,A=1/I(1.78)で

与えられるIは,対象とする遷移の「蛍光寿命」

または,「放射寿命」として知られています。

 

本節の結論としてN2={NBW/(A+2BW)}

×[1-exp{-(A+2BW)t}],

2=NBWt ((A+2BW)t<<1),および,

2=NBW/(A+2BW)((A+2BW)t>>1),

で表わされるN2は,エネルギー密度Wのビーム

照射の下で,励起状態にある平均原子数を示して

いる,あるいは,選択した原子が励起状態にある

確率がN2/Nである,といえます。

 

  • 1.10 吸収の巨視的理論

※まず,誘電体に関連した古典的電磁理論を

復習,要約します。

 

空洞中に誘電体が存在すれば,印加電場

より,それには分極が生じます。

印加電場があまり強くない場合,に比例

し,χを電気感受率とすると,=ε0χ(1.79)

と書けます。

そして,このχは一般に周波数ωの関数であり,

その関数形は誘電体を構成する原子のエネルギー

準位と波動関数に依存します。

この場合もMaxwell方程式は波動型の解を

持ちますが,周波数ωと波動ベクトル:との

関係は,真空中のω=ck(1.9)を一般化した

もの:(ck/ω)2=1+χ.(1.80)となります。

自由空間(真空)ではχ=0であり,ω=ck

に一致します。

 

※(注3-1):分極は電場より,工学で使用

されることが多い電束密度に関連する量と

して定義されます。

誘電率をε=(1+χ)ε0とすると,D=ε

=ε0=(1+χ)ε0Eなる関係があります。

こうして,誘電体や磁性体の中でも,便宜的に

誘電率ε,透磁率μなるパラメータを導入すれば

一応,真空中と同じ形のMaxwell方程式が成立

する,という形式にできるため,こういう形式の

理論を「Maxwellの」現象論と呼びますが,以下,

これを想定します。

 

そこで,電場(電界),磁束密度(磁場)の他

に電束密度:D=ε,および,磁場の強さ(磁界);

/μという,Bに比例する,非独立な量:

,を追加して,Maxwellの方程式を,

∇×H=∂D/∂t,∇×E=-∂B/∂t

を満たす形に書き変えます。

そして,εやμは座標や時間tには独立で

あると仮定すると,

∂(∇×H)=∂2D/∂t2,および,∇E=0から

(1/μ)∇×(∂B/∂t)=ε(∂2E/∂t2)

∇×(∇×E)=-(με)(∂2E/∂t2)となり,

2E=(με)(∂2E/∂t2),

つまり,{(με)∂2/∂t2-∇2}E=0なる

波動方程式を得ます。

 

誘電体では,誘電率はε=(1+χ)ε0≠ε0

ですが,透磁率の方は真空と同じμ=μ0

あるとすれば,波動方程式型の方程式:

{(μ0ε)∂2/∂t2-∇2}E=0が得られ,

結局,{(1+χ)/c2)∂2E/∂t2=∇2

に帰着します。

 

これは,exp{i(kx-ωt)}という形の

平面波の解を持ち,これから位相速度をv

とすると.これは明らかに,

v=fλ=(ω/k)(ω=2πf,k=2π/λ)

ですが,これは,

1/v2=(1+χ)/c2=(ε/ε0)/c2 or

2=c2/(1+χ)=(ε0/ε)c2を満たすため.

(ck/ω)2=1+χ=ε/ε0 を得るわけです。

(注3-1終わり※)

 

ここで,感受率χを,複素数に拡張して,これ

を,χ=χ’+iχ”(1.81)(χ’,χ”は実数)

と表わすことにします。

このとき,(ck/ω)2=1+χの平方根も

複素数ですから,これを,ck/ω=η+iκ

(η,κは実数)(1.82)と書くことにします。

(※こう定義すると,光学においては,ηが

屈折率,κが吸収係数に相当することが

わかります。)

 

この(1.82)を(ck/ω)2=(1+χ’)+iχ”

に代入すれば,η2-κ2=1+χ’.(1.83),

および,2ηκ=χ“.(1.84)を得ます。

 

そこで,感受率χの周波数ωへの依存性が

わかれば,ηやκの周波数依存性もわかります。

 

ここでは,Maxwellの波動方程式の進行波解を

考えた方が真空の方程式の解(1.3)のような境界

条件を満たす定常波を考えるより都合がいいです。

z方向に伝播する波を考えると,これに対する

の空間,時間依存性は,

exp{i(kz-ωt)}

=exp{iω(ηz/c-t)-ωκz/c}.(1.85)

で与えられます。

 

ところで,E,B場と,その振幅E0,B0

間の関係は,∇×E=-∂B/∂tより,

kE0=ωB0です。

故に,(ck/ω)E0=(μ0ε0)-1/20,

つまり.(η+iκ)E0=(μ0ε0)-1/20です。

 

したがって,B0=(μ0ε0)1/2(η+iκ)E0.

(1.86)となります。

 

自由空間では, 空洞内の全エネルギーを,

(1/2)∫(空洞)ε0|(r,t)|2dV(1.19)という

式で積分を実行して,サイクル平均という形で

求めたのでしたが,その際の被積分関数の複素

エネルギー密度は,(1/2)ε0|(r,t)|2でした。

 

しかし,誘電率がεの誘電体が存在するときには.

電場のエネルギー密度(1/2)ε0||2を(1/2)ε||2

に変えるべきとであろう,と考えられます。

しかし,実際の,場のエネルギーのサイクル平均

をとる前の電場の部分は,(1/2)ε||2のうちの

実部:(1/2)Re{ε||2}ですから,ε=ε0(1+χ)

の実部であるε0(1+χ’)によって,

(1/2)ε0(1+χ’)Re||2に変わるであろう,

と予想されます。それ故,(1.83)で(η+iκ)2

=1+χから,(1.84)の1+χ’=η2-κ2

得ていましたから,この議論からは,実電場の

寄与は,(1/2)ε02-κ2)Re||2となる

はずです。

 

しかしながら,磁場部分の寄与を考えると,

振幅が(1.86)のB0=(μ0ε0)1/2(η+iκ)E0

を満たすため.それは(1/2)Re||20

=(1/2)ε0η2Re||2となります。

 

ところで,実電磁場のみのMaxwellの現象論

の考察では誘電体の中の場のエネルギーにも,

自由空間と同様,電場の寄与と磁場の寄与は

同じになるため,実は,電場の寄与も

(1/2)ε02-κ2)Re||2ではなく,

(1/2)ε0η2Re||2となり,場の全エネルギー

も自由空間の(1.19)式から,

(1/2)∫(空洞)ε0η2|(r,t)|2dV

(1.87)へと一般化される,と考えるのが

妥当と思われます。

 

また,単位時間に単位面積を通過する場の

エネルギーとして定義される電磁波の強度I

は,通常の電磁場のPoyntingベクトル:

××0.(1.88)で与えられる

と考えられます。

 

上記と同様.E,の振幅については,

0=(μ0ε0)1/2(η+iκ)E0ですから,

自由空間であれば,B=(μ0ε0)1/2Eより

0=ε0cEであり,EとBは直交する

という事実から,Iの大きさは,

I=ε0cRe|(r,t)|2となります。

 

そこで,誘電体があれば,その中では,

Re0=ε0cηReEとなるため,

I=ε0cηRe|(r,t)|2と書けます。

 

よって,Wと同じく,Iのサイクル平均を

取れば,<I>=(1/2)ε0cη|(r,t)|2

(1.89)を得ます。

 

ただし,E(r,t)は空間的,時間的に

変動しますが,先に与えたz軸向きの進行

の形の(r,t)=0exp{i(kz-ωt)}

0exp{iω(ηz/c-t)-ωκz/c}を

想定すれば,サイクル平均として,|(r,t)|2

はzだけに依存すると考えられます。

 

それ故,サイクル平均強度:<I>を,改めて単に

I=I(z)と書き,I0をz=0におけるサイクル

平均強度とすれば,I(z)=I0exp(-Kz)(1.90)

と書けます。

ただし,K=2ωκ/c.(1.91)です。

 

このように定義されたKという量を吸収係数

と呼び,これは電磁波の強度が(1/K)の距離で

z=0の値の1/eに減少することを意味します。

今回はここまでです。(つづく)

 

(参考文献):Rodney.Loudon著(小島忠宣・小島和子共訳)

「光の量子論第2版」(内田老鶴舗)

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