203. 生物学・生理学・生化学

2006年9月29日 (金)

物理的仕事と生理的仕事

 歳のせいなのか?最近左の肩が凝り左腕が痛いという症状に悩まされています。

 

 50肩再発の予兆かもしれません。左手に物をぶら下げて持つだけで痛みが走ります。

  

 人間の身体というのは神が機能的に創られたのでしょうが,こうした物理的仕事をしなくても生理的仕事をすることにより身体のエネルギーを消費して疲れや空腹を感じるようにできているのは困ったものです。

 

 物理学,特に力学においては仕事というのは,"力×移動距離"で定義され,この移動距離というのは力の働く向きの成分だけを指します。

 

 そしてこの力学的仕事をする能力のことが,いわゆる"エネルギー"として定義されるわけです。

 

 したがって物を手にぶら下げているだけで全く動かないなら,腕は"重力に抗する力=重さを支える力を働かせていても移動距離がゼロですから,腕が行なう"力学的仕事=物理的仕事"というのはゼロです。

 

 したがって,力学的にはエネルギーを全く必要としないのですから,物理学,特に力学だけを考えるなら身体が疲れたり痛みを感じたりすることもないはずなのです。

 

 では,何故我々は重い物を持って立ち止まっているだけで身体はエネルギーを消費し疲れたり汗をかいたりするのでしょうか?

 金属なら,金属疲労などという言葉はありますが,それは例えば機械の接合部などで繰り返し運動などによる物理的仕事を何回も受ける結果で,そのためにわずかでも振動などをするので移動距離があるからです。

  

 例えば,金属で出来ているとは限りませんが机の上に重い物を置いても机はもちろん剛体ではありませんから,その物体の重力を受けて最初はわずかに凹んだ後,弾性力によって反動を受けます。

  

 このために振動しても,その振動はすぐに減衰して静止した後には全く動かず,結局エネルギーを消費することはありません。

   

 こうした机や椅子とか建物の柱などの非生物が物を支えているだけで地震もないのに,ちょくちょく疲労を感じて倒れたり壊れたりしたらたまったものではありません。 

 それに対して,人間は鉄棒にぶら下がっただけでもやがて落ちてしまうというふうに,弾性体の一つであるとも言えない弱いものです。

  

 腕などの外部筋が内臓の腸などのように平滑筋でできていれば,その刺激に対する反応は比較的遅いので張力などに対して,まだしも長持ちするはずなのですが,

  

 如何せん,腕などというのは単に物を持つためだけにあるわけではないので,それは刺激に対して比較的反応が速い横紋筋でできています。

  

 それゆえ,引っ張られたりする刺激に対して急速に収縮と弛緩を繰り返すようにできているわけです。 

 物を下げていても外部的には動かないわけですから,何も物理的仕事をしていないように見えますが,実は"腕の筋肉=横紋筋"の組織は収縮と弛緩という振動運動のようなものを継続的に行なっているわけです。

  

 したがって,それは体の内部の筋肉自身にとっては,物理的仕事をしていることに他なりません。

  

 そこで,身体から発生する熱エネルギー(heat)などを用いてその物理的仕事をこなす必要があり,結果として疲れるわけですね。 

 これに対し,上にも述べたように鉄骨などで支えられている建物などが疲労を感じてバタバタ倒れたりしたのではたまったものではありませんが,

  

 それらが疲労したり倒れたりするのは現実に風や波や地震などの物理的作用によって,わずかでも運動をするからです。

  

 つまり,鉄骨などなら"力×動き"の物理的仕事を受けたときだけ"疲労する"のであり,静止しているだけでは人間のように疲労はしません。 

 まあ,人間も死体になってしまえば何か物をひもでぶら下げられたりしても疲労することはありませんがね。。。。

  

 張力でも圧力でも受けた刺激に対し化学反応などが起こって筋肉の収縮や弛緩の反応が起こるのも実は生きている証拠なのかもしれません。 

 参考文献:ファインマン物理学Ⅰ(坪井忠二訳)「力学」(岩波書店)

 

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2006年8月22日 (火)

近視と老眼

 物理屋なので,人体の生理学の一分野であろう眼の構造には全然詳しくないのですが。。。

 確か近視のときは眼の水晶体レンズが厚過ぎるため遠方の物体からの光が網膜上よりも前に結像するので,ぼやけてしまう。

 一方,遠視のときは水晶体レンズが薄過ぎるために近くの物体からの光が網膜上よりも後ろに結像してぼやけて見にくいのである。

 という認識をしています。

 まあ,老眼は厳密には遠視とは異なるのでしょうが,遠近両用メガネがあるように近視で,かつ遠視である,という人が世の中には大勢います。

 これはある種の矛盾ではないかと,長年疑問に思っていました。近視の人は老眼になりにくいのではないか,とも思っていましたが,現実はそうではないので不思議でした。

 しかし,そもそも健康な眼では,遠方,近傍の両方が見えるように眼の毛様筋が水晶体レンズの厚さを調節するという働きをしている,ということです。

 ですから,結局は近視でかつ老眼というのは,毛様筋が焦点を機敏に調節できなくなった状態であり,うまく水晶体レンズを厚くも薄くも調節できないという病気であるのだと理解しました。

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