114 . 場理論・QED

2020年11月11日 (水)

くりこみ理論第2部(1)

今日は11月11日です。

長い記事を一気にアップします。

「くりこみ理論(次元正則化)」シリーズは,2020年

8月に記事:(1)~(16)をアップして終了しました。

それらは,参考テキスト「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(九後汰一論著)の「第7章くりこみ」を.私が49歳

の1999年3/20から1999年5/7に,詳読したときの

行間埋め覚え書きの履歴のノートの内容でした。

20年以上前のノートの反芻は,老化した70歳の自分

の頭脳には,温故知新で新鮮な刺激となっています。

続いて「第8章くりこみ群と演算子積展開」から,

くりこみ理論の補遺として記事をアップします。

参照ノートの開始日は,前章の終了日と同じ1999年

の5/7でした。

(※余談):この1999年の頃は「1999-7の月に

ハルマゲドンで人類は滅びる。」という五島勉氏著の

ベストセラー「ノストラダムスの大予言」がはやって

いて,7月にはこの世の終わりがくるのか?とかを,半分

本気で心配していましたね。

幽霊やUFO,超能力など現時点では,まだ,ちゃんと

した存在証明も不存在証明もできていない,と思っている

超常現象など,自分では見たりしたとかの経験もない物事

については,頭から否定するわけでもなく.とにかく昔も

今も半信半疑状態です。

自分は現代の自然科学のレベルはまだ低いと思って

いて,これに全面的信頼を持つほど単純ではないですから,

何の文明的なモノも避難場所もない荒野のようなところ

に,一人で闇夜に放り出されたとしたら,文明世界しか

知らない自分は,魑魅魍魎が出てくるかも?と本能的な

恐怖におののくことでしょうね。

増え続ける人類は,「あらゆる生物種は自らの増加が

食料不足をもたらして減少する。」という食物連鎖

の輪廻の「神の摂理」から離れて,人類には共食い

という戦争もなくなり医学の進歩により疫病を予防

しても,結局,新しいウィルスという天敵が現われ自殺

やLGBTなどの少子化文化でも追い付かず,環境破壊

などによる災害,そして科学文明が反逆するという滅び

の道が現在のハルマゲドンとして避けられないのでは

ないか?と思います。(余談終わり※)

※以下は,本文です。

第8章の「繰り込み群と演算子積展開」という新しい

項目に入るに当たり,テーマの説明と機付けとして

この間「物理学の哲学」というシリーズ記事を

書きました。ここからは,新しく第2部とします。

  • 8-1:(複合演算子のくりこみと演算子積展開)

場の理論の種々の現象論的応用において,しばしば,

場の局所的演算子(一般には複合演算子)A(x),B(y)

の積:A(x)B(y)が2点xとyを同一点(x=y)

(または光円錐:(x-y)2=0)の近傍に近づけたとき,

どのように挙動するか?を知る必要が生じます。

Wilsonは,この問題に対して,直観的に,ある種の

局所演算子の完全系:{Oi(x)}が存在して;

一般に,A(x)B(x)

=limx→yii(x―y)Oi((x+y)/2)],(1)

(Ciはc-数関数)と展開できることを主張し,

その意味と応用について議論しました。

Wilson自身は上記の展開式(1)を,必ずしも摂動論

の枠内に限らず成立する,演算子間の等式として提唱

したもので,今日,(1)はWilsonの「演算子積展開」

(operator-product expansion),略してOPEと

呼ばれています。

演算子A,B,Oiの次元をd,d,diとすると

z=x-yの関数としての展開係数Ciは,Ci(z)

~(1/z)(dA+dB-di)のように挙動すると考えられる

ので,短距離のz=(x-y)~ 0の同一点の極限では

展開(1)の無限個の項のうち,次元diが低い初めの方

の数項だけを分析すれば十分なはずです。

そして,摂動論の枠内で初めて(1)の展開を厳密に

証明したのはZimmermannでした。

本節では,彼に従って,摂動論において(1)の展開式

を導きます。以下では,簡単のため,もっぱらλφ4

理論で話をしますが,他の場合でも本質的には同様

です。

まず,複合演算子の厳密な定義からです。

展開式(1)の右辺にある演算子Oiは,一般に

φ(x),φ(x)∂μφ(x)などのような場の

同一時空点の積であって,局所演算子積,

(lobal operation product),または,単に複合

演算子(composite operator)と呼ばれるものです。

しかし,こうした局所積は場の理論では特異性を

持っているので,そのままではWell-defimed(無矛盾)

ではなく,(1)の展開,つまりOPEを証明するには,

まず,そうした局所積を正確に定義するところから

始める必要があります。

複合演算子:Oを直接,演算子として定義する代わり

に,Zimmermannに従って,正規積(normal product)と

呼ばれる演算子:[O]d(またはN(O))を機能的に定義

します。

すなわち,[O]を含む全てのGreen関数を定義

することによって,逆に,演算子:[O]を定義します。

Oはφ,∂μφ∂μφ,φ(∂μφ∂νφ)などの

ように,一般の場φと,その微分から構成される

単項式であり,O=O(φ)を含むGreen関数は,

(n)(x1,x2..xn)

=<TO(φ)φ(x1)φ(x2)..φ(xn)>

=∫Dφ{O(φ)φ(x1)φ(x2)..φ(xn)

×expi{∫d4}.(2)で定義されます。

ただし,Lagrangian密度は相殺項なしの有限な

=(1/2)(∂μφ∂μφ-μ2φ2)-(λ/4)φ4 .(3)

であり,これはBPHZの枠内で有効Lagrangian

と呼ばれるものです。

このとき,先の乗法的くりこみの場合の相殺項に

相当するものはに陽に加えないで,BPHZの

Taylor演算:(-tγ)で機能的に行なうものです。

(※Tayllor演算:(-tγ)で自動的に満足される,

「p=0での(中間的)くりこみ条件」以外の

くりこみ条件を設定したいときには,(3)式のに,

さらに有限係数の(hcのベキ級数を係数とする)

相殺項を加えたものを,改めて有効lagrangian

とする,わけです。)

もう1つ,第4章「経路積分と摂動論」で述べた

ように,定義(2)で用いているT積(時間順序積)は

*積の意味です。本節で用いるT積は全てT*積

を意味することに注意しておきます。(※つまり,

T積への左からの演算は,Tを飛び越えて内部への

直接演算を意味するわけです。)。

以下,Green関数:G(n)を議論する代わりに,その

1粒子既約な(1PI)グラフのみの寄与で,かつ,n点

1..xの各脚から出る伝播関数iΔを取り去って

得られるn点頂点関数:Γ(n)を議論します。

すなわち,<TO(φ)φ(x1)..φ(xn)>1PI

=[Πi=1n{∫d4i(xi-yi)}]Γ(n)(y1..yn).(4)

と書けるとします。

Γ(n)を論じるには,まず,再び,第5章§5-6で

したように,φ,Oの外場J,Kを導入して,頂点関数

の生成汎関数をexpiW[J,K]

=∫Dφ[expi{∫d4+J・φ+K・O(φ)}] (5)

で定義し:W[J,K]を,外場Jについてのみ,Legendre

変換して,Γ[φ,K]=W[J,K]-J・φを,定義

します。するとn頂点関数は,ΓO(x)(n)(x1,.xn)

=δ(n+1)Γ[φ,K]

/{δK(x)δφ(x1)..δφ(x)}|φ=K=0.(6)

としても,得られる量です。

※(注1-1):つまり,生成汎関数の定義から,

expiW[J,K]­=Σ{(1/n!)Γ(n)(x1..xn)

φ(x1)..φ(xn)}です。

そして,δ(expiW[J,K])/δK

=(δW[J,K]/δK)expiW[J,K]ですから

δW/δK=NΣ{(1/n!)Γ(n)(x1..xn)

×φ(x1)..φ(xn)}(Nは規格化定数)と

なりますが,(δΓ[φ,K]/δK)φ

=(δW[J.K]/δK)φ,かつ,

(δΓ[φ,K]/δφ)=-Jですから,

δΓ[φ,K]/δK=NΣ{(1/n!)

Γ(n)(x1..xn)φ(x1)..φ(xn)}です。

それ故,N~1として(6)式の,

ΓO(x)(n)(x1,.xn)=δ(n+1)Γ[φ,K]

/{δK(x)δφ(x1)..δφ(x)}|φ=K=0.

と,(δΓ/δK)の展開係数:Γ(n)(x1.xn)

は同じものであるとわかります。

(注1-1終わり※)

Γ(n)を,Oが挿入された頂点関数

(O-inserted vertex function)と呼びます。

Oの正規積:[O]の頂点関数Γ[O]d(n)は,

Γ(n)に効くグラフGの各々に対して,その

Feynmanの被積分関数I(n))を,それに

R演算を施した,R[O]d(n))

=ΣU∈(G)γ∈U(-tγ)}I(n))(7)

で置き換えて得られる量として定義します。

ただし,このグラフGのくりこみ部分γとしては,

Oの頂点を囲むものも含みます。その場合,演算子

[O]dは,実際の次元(※例えば,O=(∂μφ∂μφ)

なら次元は4)には関係なく,次元dを持つ演算子

と見なします。すなわち,[O]d頂点には,指標:

(d-4)を付与するか,または,見かけの発散次数

の公式§7-3の(7)に従って,[O]d頂点を含む部分

グラフγは見かけの発散次数:ω(γ)

=4-nγ+(d-4)=d-nγ≧0.(8)(nγはγの

外線数)(8)のとき,くりこみ部分と見なし,tγ

ω(γ)のTaylor演算子とします。

このようにして得られるΓ[O]d(n)は,dがOの

本当の次元d以上であれば,有限な無矛盾なもの

となります。

何故なら,Gの生成汎関数を(5)のexpiW[J,K]

=∫Dφ[expi{∫d4+J・φ+K・O(φ)}]

のように書けば,{+KO(φ)}全体を系の有効

Lagranguanと見なすことができて,その場合,

O頂点を含むグラフも普通のグラフであって,普通

のBPHZくりこみで有限になるからです。

(※収束定理を参照)

もちろん,このときにはO頂点を囲む部分グラフ

の見かけの発散では,Oの本当の次元dを勘定し,

γもそれに見合ったものですから,上のように

して得られる量は,d=dとした正規積:[O]dO

の場合の頂点関数Γ[O]dO(n)です。

d>dの[O]dの場合は,必要以上の引き算を

しますが,ともかく有限ではあります。

そして,d>dの場合の[O]を引き過ぎ

演算子(oversubtracted operator)」と呼び,

d=dの正しい次元を付与した正規積を,

通常の正規積と呼びます。

引き過ぎ演算子:[O]d(d>d)は,実は次元

がd以下の.通常の正規積演算子:[O^]dの線形

和で表わすことができます。

これを.[φ2]dを例に取って説明します。

この場合,示すべきは,α,β,γを定数として,

2]4=[φ2]2+α[φ4]4+β[∂μφ∂μφ]4

+γ[φ□φ]4.(9)の式です。

一般に,[O]dと同じ形の[O]dOは,係数1で

現われ,それに混じる他の演算子は,全てOと

同じLorentz変換性.および,内部対称性を

持ちます。

頂点関数:Γ[O]d(n)は,Γ(n)に効くグラフ

のFeynman積分の被積分間数をR演算を

用いて,R[O]d(n))

=ΣU∈(G)γ∈U(-tγ)}I(n))(7)

に置き換えて得られる量であると,先に定義

しました。

そこで,Γ[φ2]4(n)については,φ2頂点を,

次元4と見なしたTaylor演算子をt(4)γ

記すと,その寄与はR[φ2]4(n))

=ΣU∈(G)γ∈U(-t(4)γ)}Iφ2(n))

(10)の積分で与えられます。

φ2頂点を含むγに対して,t(4)γはφ2

正しい次元2を付与する通常のtγ=t(2)γ

より,2次だけ余計に取り出すので,t(4)γ

=t(2)γ+t^γ.(11)と書けます。

ところで,一般に順序付けられた積:

Πi=1(xi+yi)=(xn+yn)(xn-1+yn-1)

..(x1+y1)に対して,その展開の各単項式

の中に含まれるylのうち,最小添字を持つ

ものに着目して,項をまとめると,

Πi=1(xi+yi)=Πi=1ni+yni=1n-1i)

+(xn+yn)yn-1i=1n-2i)

+(xn+yn)(xn-1+yn-1)yn-2i=1n-3)+..

+{Πi=2n(xi+yi)}y1.(12)の形の等式

を得ます。

それ故,(10)の表式:R[φ2]4(n))

=ΣU∈(G)γ∈U(-t(4)γ)}Iφ2(n)

の中のグラフGの森:Uのそれぞれの中で,

φ2を含むくりこみ部分γ1,..γは小さい

ものから.大きいものへと,右から順に並んで

いるとし,対応するΠi=1n(-t(4)γi)

=Πi=1n(-t(2))γi-t^γi)に,(12)の形の等式

を適用すれば(10)におけるTaylor演算子の積

のあらゆる可能な森Uにわたる和が次のように

書き直せます。

すなわち,ΣU∈(G)Πγ∈U(-t(4)γ)

=ΣU∈(G)Πγ∈U(-t(2)γ)

+Στ∈TU1∈(G/τ)Πγ∈U1(-t(4)γ)(-t^γ)

U2∈(τ)Πγ∈U2(-t(2)γ)}].(13)です。

ただし,Tは,フラフGのφ2頂点を含む,

くり込み部分:τの全ての集合,(G/τ)は

τを1点に縮約したグラフ:(G/τ)のあらゆる

森:U1の集合,(τ)は,あらゆるτ森:U2

集合です。

公式(12)から,元々,U2がτの正規な森(τ

自身を含まない森)に限られる式も得られるの

ですが,満杯の森の場合には,必ず含まれるt(2)τ

はτの外線運動量のω(τ)=(2-nτ)次元以下

の多項式を与えるため,(4-nτ)次項を取り出す

(-t^τ)演算子の後ろでは,効きません,

つまり,t^τ(2)τ=0なので,このゼロ寄与も

加えたあらゆるτ森にわたる和としてもいい

のです。

さて,再掲(13):ΣU∈(G)Πγ∈U(-t(4)γ)

=ΣU∈(G)Πγ∈U(-t(2)γ)

+Στ∈TU1∈(G/τ)Πγ∈U1(-t(4)γ)(-t^γ)

U2∈(τ)Πγ∈U2(-t(2)γ)}].の右辺の演算を

φ2を含むグラフGのFeynman被積分関数:

φ2(n))に,左から演算します。

このとき,(13)の右辺第2項を演算する場合

には,I=IG/τ・Iτの積の形に書けること

を用います。

さらに,[φ2]4頂点を含むくりこみ部分τは,

公式(8)より:ω(τ)=4-nτ≧0.

(nτはτの外線数)に従ってω(τ)で,4-nτ≧0

のときが,くりこみ部分ですが,これは,τの外線数:

τが2,または4の場合のみです。

その場合,t^τ=t(4)τ-t(2)τは,nτ=2のときは,

τの外線運動量に関してt(4)τは(4-nτ)=2次

まで,t(2)τは(2-nτ)=0次までのTaylor演算子

ですから2次の部分のみを,nτ­=4のときは,

(2)γ=0なので0次の部分のみを,それぞれ,引き算

する演算であること注意します。

(※ 何故なら,1次の部分はLorentz不変性ゆえ,

出てきません。つまり,外線nτ=2なら2つのφ

に対し1次で効くのは∂μφとφから成る運動量

表示でpμに比例する部分ですから,それにかかる,

Taylor演算のp2=0での定数係数Aμを考えると,

これは4元ベクトルで,かつ,定数ということなので

不可能です。※)

こうして(13)の両辺をIに演算して次の(14)

が得られます。

すなわち,(10)の表式:R[φ2]4(n))

=ΣU∈(G)γ∈U(-t(4)γ)}Iφ2(n))

において,(13)のΣU∈(G)Πγ∈U(-t(4)γ)

=ΣU∈(G)Πγ∈U(-t(2)γ)

+Στ∈TU1∈(G/τ)Πγ∈U1(-t(4)γ)(-t^γ)

U2∈(τ)Πγ∈U2(-t(2)γ)}].を代入すれば,:

[φ2]4(n))=R[φ2]2(n))

-Στ∈T4G/τ[φ4]4(n))Rτ[φ2]2(4))|p=0

-Στ∈T2[RG/τ[∂μφ∂νφ]4(n))

{(i2/2)(∂2/∂p1μ∂p2ν)Rτ[φ2]2(4))|p=0}

+RG/τ[∂μ∂νφ・Φ]4(n))

×{(i2/2)(∂2/∂p1μ∂p1ν)Rτ[φ2]2(4)))|p=0]

+RG/τ[φ(∂μ∂νφ)]4(n))

×{(i2/2)(∂2/∂p2μ∂p2ν)Rτ[φ2]2(4)))|p=0]]

(14)を得ます。

ただし,T2,T4は,それぞれ外線数nτが2,4の

φ2項を含むくりこみ部分でp1,p2はτ∈T2の2本

の外線運動量であり(..)|p­=0はτの外線運動量が

全てゼロであることを意味します。

(※∂μφ∂νφの相互作用頂点からは,(G/τ)の

グラフとして,(-ip1μ)(-ip2ν)の因子を含むと

考えられます。)

ここでRτ(..)|p=0etc.は,外線運動量pに依らない

定数係数です。それ故,(14)をloop積分し,あらゆる

G,および,τについて和を取れば,

Γ2]4(n)=Γ[φ2]2(n)+αΓ[φ4]4(n)

+βΓ[∂μφ∂μφ]4(n)+γΓ[φ□φ]4(n)。(15)

となります。

ただし,Lorentz不変性により

(∂2/∂p1μ∂p2ν)Rτ[φ2]2(4))|p=0}∝gμν

となること,および,[φ□φ]4=[(□φ)φ]4

であることを用いました。

そして,定係数α,β,γは

α=Σ∀Gτ[φ2]2(4))|p=0}.(6).,etc.

で与えられます。

こうして,(15)が任意のn点頂点関数について

成立するので,結局,求める,引き過ぎ演算子[φ2]4

が通常の正規積の線形和で書ける,という式(9):

2]4=[φ2]2+α[φ4]4+β[∂μφ∂μφ]4

+γ[φ□φ]4.(α,β,γは定数)が証明された

わけです。

※(注1-2):そもそも,局所演算子積や複合演算子

を考える必要が何故あるのか?の動機付けを述べて

おきます。

私が現役の院生の頃,素粒子論では,カレント代数

という分野がありました。いまもあるのかは

知りません。

Fermionカレントはスピノルの双1次形式,

つまりスピノル場の演算子の局所積で与えられ

ますが,これを一般の物理屋は同一点の積の

特異性を深く考えずに考察していました。

例えばカイラル軸性カレントは

(x)=ψ~(ⅹ)γ5γμψ(x)

であり複合演算子(局所演算[子積]です。

特異性を意識してεだけ離した

Bilocal currentでは,

(x,ε)

=ψ~(ⅹ-ε/2)γ5γμψ(x+ε/2)

×{∫x-ε/2x+ε/2μ(y)dyμ}です。

そこで,当時,私が専門に研究していた

のはQEDにおける三角アノマリー

(Adler-Jackew anomaly)というテーマ

でした,この不思議な現象を解析すれば,

紫外発散を除去するくりこみという操作

の理論的メカニズムが明快に理解できる

のでは?と期待したからです。

しかし,このテーマは当時,素粒子論の

端緒を齧った程度の身で,一人でやるには

壮大過ぎて,結局,卒業(終了)には間に合わず,

仕方なく1974年(24歳)のとき発見された

(J/ψ)新粒子(後にcharmクォークを含む

重中間子と同定)に関連してカラー一重項

の粒子-反粒子対(中間子)と3体クォーク

(重粒子)のみが観測されて,例えばカラー

多重項や4体以上のexotic 粒子が観測され

ない理由について考察した「三重三元

クォーク模型の束縛ポテンシャル」という

卒業論文しか書けませんでした。

一方,量子アノマリーは,私のその後の普通

の社会人に就職した後もアマチュアとして

細々と考察していたのを嘲笑うかのように

世界的には解明され,例えば、本参考書の

第9章「アノマリー」であるようにゲージ

不変な次元正則化を行なうときγ5を含む

軸性カレントの存在がネックとなって出現

する余分な項である,とか,経路積分で変数

置換する際,γ5の存在のためにヤコービ行列

に現われる異常項である,という意味で解決

されました。まあ,自分が解決できなくても

理解できればいいというスタンスですから

それで満足ですが,実験観測データを説明

できる偉大な対症療法である「くりこみ理論」

を原因両方に変えたい,という構想と

アノマリーに大した関係がないという意味

で,40第の頃,がっかりしたのでした。

VVA三角アノマーに興味持ったのは,電荷を

持たない中性中間子であるπ0の電磁崩壊

π0→γ+γの崩壊に興味を持ったからでした。

電荷を持たないので摂動の1次では光子

(電磁場)と相互作用はできないので

π0→e+e→2γのように弱い相互作用

のV-Aカレントを経る2次の過程のはずです。

電子eのようなレプトンカレントの必要はなく

p-p~(陽子反陽子対) π0→p+p~→2γ

でもいいのです。当時は自分にクォークを想定

する習慣ないので実荷電粒子の陽子を挟みました

がnクオークでも1/3の電荷があるので,可能です。

そして,e~(1-γ5μeのようなV-Aカレント

の頂点:(1-γ5μがeとeに分かれて

それから,それぞれγνσの電磁頂点

から光子が出ていくというfeynmanグラフ

の三角グラフを考えます。そもそも純粋は

QFDだけではこういうのはありません。

しかもFurryの定理によりVVVグラフの寄与

はゼロなのでVVAだけ残ります。

ここまで書きましたが,ここからの話は,結局,

途中で追加したシリーズ記事「物理学の哲学」

の重複になるもで割愛します。(注1-2終わり※)

※次に(複合演算子の乗法的くりこみ解釈)

という項に入ります。

演算子挿入がない通常の場合のBPHZくりこみ

が裸のLagrangianを組み変えて相殺項を用意する

乗法的くりこみと解釈できることは,既に記述した

通りですが,今の演算子挿入で定義される複合演算子

の場合も乗法的くりこみで理解できます。

BPHZ流にくり込こんだΓ[O]d(n)のFeynman積分の

被積分関数の定義式(7):R[O]d(n))

=ΣU∈(G)γ∈U(-tγ)}I(n))において,

Taylor演算子:(-tγ)は,γが[O]d頂点を囲まない

場合は,通常のLagrangianからの相殺項の寄与を引く

のと同等でしたが,γが[O]d頂点を囲む場合は,新しい

相殺項を引くことに相当します。

この相殺項の演算子O^はTaylor演算子tγの次数

がω(γ)=(d-nγ)ですから,高々ω(γ)階微分

を持った場:φについてnγ次の局所演算子:

O^=(∂)(φ(x))nγ (17)

,(k=0,1,2,..ω(γ)=(d-nγ)の形を持って

います。このO^は,次元がk+nγ≦dです。

特に正しい次元:d=dを付与された正規積:

[O]dOのみを考えることにして,それをくりこんだ

複合演算子:Orenと呼ぶことにします。

そうすれば,BPHZくりこみは,結局,ある次元;di

演算子Oirenを,その次元以下の裸の演算子の完全系:

{O0j}を用いて,次のように,Oiren=Σdj≦diij0j,

ij=δij+hcij(1)+hc2ij(2)+..(18)として,

乗法的くりこみを行なったのと等価であることが

わかります。

つまり,左辺の展開のhcij(n)0j(n≧1)の

寄与がBPJZのTaylor演算(-tγ)に,対応した乗法

くりこみの相殺項として働きます。

ただ,この場合,乗法的くりこみ因子:Zijは,単に

定数ではなく,行列(要素)となっていることが,従前の

乗法的くりこみと少し異なります。

BPJZ処方でくりこまれたOiren=[Oi]diの場合は,

外線運動量がゼロの点での「(中間的)くりこみ条件」

を満たしています。

例えば,O=φ4の場合,O点に入る運動量をqとして,

Γ[φ4]4(4)(=0,P=0)=4!,Γ[φ4]4(2)(=0,P=0)

=0.piμ∂Γ[φ4]4(2)(=0,P=0)=0.

pjμ∂pjνΓ[φ4]4(2)(=0,P=0)=0

(18)なる条件です。

ただし,P=(1,2,3,4)です。

もちろん,このタイプ以外のくりこみ条件で

くりこまれた複合演算子{O^jren}も定義できて

{Ojren}とは,(18)と同じ下三角行列による有限

くりこみの関係でつながります。

すなわち,O^iren=Σdj≦di ijjren.(20)です。

途中ですが,今日はこれで長い記事を終わります、

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

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2020年6月13日 (土)

くりこみ理論(次元正則化)16)

「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

§7-5:(質量に依らない対称なくりこみ)

の続きからです。以下,本論です。

※(有効作用のくりこみ)の項です。

前記事の「質量に依らないくりこみ」

により得られる有効作用Γ[φ~,m2,λ;μ2]

を考えます。(※φi~はスカラー場:φi

期待値を表わしています。)

今は,φの脚のない真空泡グラフは,考慮

していないので,Γ(0)については,省くと

,Γ[φ~,m2,λ;μ2]

=Σn=2(1/n!)∫(2π)-441.∫(2π)-44n

(n)i1i2..in(,m2,λ;μ2)(2π)4δ(Σj)

×φi1~(-p1i2~(-p2)..φin~(-pn)].(18)

と展開され,係数としてのn点頂点関数:Γ(n)

が,Pと2の有限な関数として計算されます。

展開:(18)は,φi~=0の対称な真空のまわり

の展開ですから,各頂点関数Γ(n)は,対称な

真空の上の頂点関数に対応しています。

しかしながら,上記くりこみ操作を各Γ(n)

個々の頂点関数のくりこみと,摂動論的に考える

ことなく,むしろ有効作用Γ[φ~,m2,λ;μ2]

という1つの量に対するくりこみと見なすこと

もできます。

この観点を取れば,Γ自体は,Γ(0)=Sがλφ4

の項を含むため,4次発散の量ですが,それを次元

1を持つ引数φi~(p)で展開すれば,発散が1次

ずつ下がるので,展開で考えるとΓ(0)(2)(4)

までが発散し,これらはそれぞれ,4次,2次,対数

の発散量となりますが,真空泡グラフの寄与Γ(0)

は考慮する必要がないので,無視します。

さらに,Γ(2)(4)を引数p2とm2で展開し,

その初めの展開でΓ(2)の定数項:Γ(2)|p2=m2=0,

2の係数:(∂Γ(2)/∂p2)|p2=0.2m2=μ2,

(m2-μ2)の係数:(∂Γ(2)/∂m2)|p2=0,m2=μ2.

Γ(4)の定数項Γ(4)|p2=0,m2=μ2.(19)の4つの

量だけが発散するので,これらに対して.先の

(2)~(5)のくりこみ条件下で指定される引き算

操作をしたものが,有効作用Γのくりこみ操作

であると,考えることができます。

こうした立場では,有効作用Γを,φi~の汎関数,

かつ,m2の関数として丸ごと有限化したのであり.

展開:(18)のように,対称な真空:φi~=0 の上の

n点頂点関数:Γ(n)のそれぞれを有限にしたもの

ではない,という点が重要です。

つまり,Γを有限にするのに,そのφi~による,

φi~=0のまわりのTaylor展開で,初めの発散する

係数を持つ4項だけを(19)の指定により,引き算操作

しただけであり,決して,それ以降の収束する項まで,

φi~=0のまわりのTaylor展開と見る必要はない,

ということです。

このことは,通常のBPHZくりこみにおいて

発散するFeynman積分の被積分関数に対して,その

外線運動量pに関してTaylor展開した初めの数項

を引き算した手続きと丁度,同じで,その場合も.

決して,被積分関数をp=0のまわりに無限次まで

展開したわけではなく,初めの数項を引き算した

残りの積分は,展開などせず,単に有限な関数である

としたのと同様な見方ができます。

それ故,(19)の4項を引き算することで,有効作用

Γは,φ~の有限な汎関数,かつm2の有限な関数と

なるわけです。

このような単に見かけの違いに過ぎないような

「有効作用のくりこみ]という立場を強調する

のは。次の理由からです。

実際のところ,対称性が自発的に破れる場合,

特に,質量パラメータm2がある負の値(-M2)を

取る場合に興味があります。

この場合にはφ~i=0の対称な真空は不安定で

あり,Feynman伝播関数にタキオン(tachyon)の極

(p2<0の領域の極)が出てくるので,φ~=0のまわり

の展開(18)の係数で与えられる真空上のn点頂点関数

Γ(n)は無矛盾(well-defined)な量でなくなります。

(※つまり,この不合理なタキオンの極をどのように

避けるのか?がまだ指定されていません。)

しかし,Γ[φ~,m2,λ;μ2]自体は,m2<0の

領域でも無矛盾です。

2=-M2<0の場合には,まず,有効作用Γの

引数:φi~(x)を定数φi~(※これは運動量表示の

φi~(p)では,φi~(p)=∫d4xexp(ipx)φi~(x)

なので,φi~の(2π)4δ4(p)倍に相当)に置いて

得た有効ポテンシャル:V[φi~,-M2,λ;μ2]

=Γ[φi~(x)=φi~,-M2,λ:μ2]/∫d4x.

(20)の停留条件:∂V/∂φi~=0を満たす安定な

真空解:Φi~=viを求めます。

次に,有効作用Γをφi~(p)=vi(2π)4δ4(p)

のまわりで,汎関数Taylor展開を実施すれば.

Γ[φi~,-M2,λ:μ2]

=Σ(1/n!)∫(2π)-441.∫(2π)-44n

v(n)i1i2..in(,m2,λ;μ2)(2π)4δ(Σj)

×φi1^(-p1i2^(-p2)..φin^(-pn)].

ただし,φi^(p)=φi~(p)-vi(2π)4δ4(p)

(21)と書けます。

このとき,係数Γv(n)が,その安定な真空上の

期待値:vi=<φi~(ⅹ)>上でのn点頂点関数

を与えます。この場合,もちろん,φi~=viには

タキオンはなくΓv(n)はWell-definedです。

この手続きでは,(20)の有効ポテンシャルVも

(21)の有効作用Γも同じく,既に有限になっている

量と見ることができて,m2を負の値に取ったから

といって,新たにくりこみをやり直す必要など

ないとわかります。

結局,m2=-M2<0の対称性の自発的破れのある

理論も「対称な理論の相殺項」でもって,くりこむ

ことができるわけです。

何故なら,ここで用いた有効作用に対する引き算

項は(19)に与えた4項で,それらは質量パラメータ

2がゼロ,または.μ2>0の対称な理論の相殺項

であったからです(※もう少し正確には対称な理論

のくりこみ因子Zと言うべきです。実際の相殺項は

m2φ2のようにm2に陽に依存しています。)

※(注16-1):私的解釈では,有効作用Γを複素数m2

の複素関数と見て,m2=0,m22の物理的領域から

2が負の領域まで特異点を避けて解析接続できる

とすれば,実際には発散する関数という解析関数

としては有り得ない量を考察しているという点で,

数学的には問題あり,ですが,これを除けば物理的

には理解できます。(Diracの超関数の例なと同様)

発散する裸の量でなく相殺項を引いて,くりこんだ

Γを質量m2について解析接続するなら数学的にも

題ないことに後で気づきました。 

(注16-1終わり※),

このような「有効作用のくりこみ」という観点

に立ち,質量に依らないくりこみ処法を用いて,対称性

が破れている理論,を対称な理論の相殺項でくりこむ

方法を「質量に依らない対称なくりこみ」

(Symmetric mass-independent renormalization)

略して,「SMIくりこみ」と呼びます。

以上のことから前節のゲージ理論のスカラー場の

部分に,このSMIくりこみを適用すれば,対称性が

自発的に破れてHiggs現象が起こっているような

場合でも,くりこみ可能であることが,対称な場合

のくりこみ可能性から従うことが理解されます。

さて,次は,※(ゲージ場の質量項による赤外正則化)

の項です。

ここで,少し話題が変わりますが,質量に依らない

くりこみの1つの応用として,ゲージ場の質量項

(1/2)m2Aμ2を付加することにより,対称性の自発的

破れのないゲージ理論における赤外発散を正則化する

方法について考察してみます。

赤外発散は,例えばQCD(quantum chrono-dynamics

量子色力学)において,零質量のグルオンというゲージ

粒子のみが回るloop積分:∫(2π)-44lで,被積分

関数が,運動量lに関して4次以下であれば外線運動量

を全てゼロにしたとき,l~0の赤外側で,積分が発散

するという問題のことです。

したがって,これは外線運動量:p=0のまわりでの

Taylor展開で紫外発散を引くという元々のBPHZ

くりこみをゲージ理論に適用しようとするときにも,

起こる問題であり,零質量粒子のみから成るloopの

グラフの対数発散項は赤外でも発散し元のBPHZ

の手続きが使えなくなります。

もちろん,外線運動量pをゼロ以外の点におけば

積分は問題ないのですが,pはLorentzスカラーでは

ないので,p=0以外の点を選ぶと,かなり面倒なこと

になります。

そこで,ゲージ場に.仮にゼロでないし質量mを与え,

p=0でも赤外発散が生じないようにするのが,この

赤外正則化の方法です。,

実際に求めたいものは,m=0の理論ですが,まず,

ゲージ場が一般の質量mを持つ場合に枠を広げた後

に「質量に依らないくりこみ法」を適用してm2

あるくりこみ点:μ2(>0)の(p=0でも赤外発散の

ない)ところでの相殺項によって任意のmを持つ理論

を全て有限にするわけです。

ゲージ理論のBRS不変なLagrangianにゲージ場

の質量項:(1/2)m2μ2を付け加えても(他の次元2

のスカラー場の質量項が少し変化を受ける点以外

には)そのまま,くりこみ可能であることは以前の

命題1とSymmanzikの定理から,ほぼ明らかです。

しかし,今の場合,線形でもなくBRS対称性を

破る項を付加する点や,対数発散の相殺項は全て

BRS不変でないm2=μ2の理論のものを用いる

点から,若干,不安をおぼえるかもしれないので,

念のため,以前のWT恒等式を用いた議論を質量項:

2μ2/2がある場合に拡張して,これらのこと

を,以下で直接証明することにします。

まず,ゲージ場の質量項:m2μ2/2がある場合の

WT恒等式を導きます。

前節で与えたBRS不変な作用積分Sに.この質量項

と,BRS変換の外場項を加えた作用積分をIとします。

すなわち,I=S+∫d4x{m2μ2/2+Mδ(Aμ2/2)}

(22)です。

(※S=∫d4x{L(ΦI)+KIΦI})

+K(δc)}です。)

ここで,δ(Aμ2/2)=Aμ(Dμ)

=Aμμa (23)です。

また,外場:Mは次元が1,FPゴースト数が

FP=-1の量です。

系の作用積分Iに対応する有効作用Γに

対するWT恒等式は,前の§5-6と同様にして,

(δΓ/δΦI)(δΓ/δKI)

+(δΓ/δc)(δΓ/δK)

+i(δΓ/δc~)B=m2(δΓ/δM).(24)

となります。

※(注16-2):上記(24)を第5章のBRS対称性

を持つ系のWT恒等式の基本に戻って証明します。

[証明]:作用積分を,引数を陽に書いてI[Φ,K,M]

とすれば,連結Green関数の生成汎関数:

W(J,K,M)=I(Φ,K,M)+J・Φは.

exp{iW(J,K,M)}

=∫DΦ[expi{I(Φ,K,M)+J・Φ},

なる等式を満たします。ただし,J・Φ

=∫d4x{JIΦI+J~c+Jc~+JB})

です。

この式で,汎関数積分(配位空間経路積分)

の内部にBRS変換を行なえば,BRS不変で

ないのはIの中の(m2μ2/2)項とJ・Φのみ

であり,一方,真空はBRS不変:Q|0>=0

なので,左辺=exp(iW)=exp{i(I+J・Φ)}

のBRS変換

=<0|[iQ,Texpi(I+J・Φ)}|0>=0

という恒等式が成立します。

そこで∫DΦ [m2{(δ(Aμ2/2)+JI(δΦI)

-J ~ c~(δ)-iJa}exp(iW(J,K,M)]

=0, つまり,[m2(δ/δM)+JI(δ/δKI)

-J~c~(δ/δKc)-iJ(δ/δJ)]

×W(J,K.M)=0 なる恒等式を得ます。

そこで,Legendre変換:Γ[Φ,K,M]

=W[J,K,M]-J・φによって,有効作用:Γ

を定義すれば,-(-)|I|I=(δΓ/δΦI),であり

,WのK,Mによる左微分は,Γのそれに等しいので.

左微分:(δ/δKI)W=(δ/δKI)Γ,および,

(δ/δM)W=(δ/δ)Γを,それぞれ,単に

δΓ/δKI,および,δΓ/δMと書けば,

WT恒等式として,

2(δΓ/δM)-((δΓ/δΦI))(δΓ/δKI)

-(δΓ/δc)(δΓ/δKc)

-i(δΓ/δc~)B=0(24)が得られます。

[証明終わり] (注16-2終わり※)

他のNL場,反ゴースト場の運動方程式

から従う§7-4で論じた後2つのWT恒等式:

δΓ/δB=fIΦI+w+αB.および,

I(δΓ/δKI)+i(δΓ/δc~)=0は,

ゲージ場の質量項の付加で変更を受けません。

そこで,以前の§7-4でやったように作用I

と有効作用ΓからB依存部分を除いた,I~,

Γ~を定義し,また,外場KIの代わりに,変数

K~=KI+ic~Iを用いれば,c~への

依存性も消えます。

こうすれば,後の2つのWT恒等式は不要

となり,残るWT恒等式:(24)は*演算を用いて

Γ~*Γ~=m2(δΓ~/δM).(25)と,書き直す

ことができます。

この恒等式(24),方程式(25)は,実は元々,

ΦI0,K~I0,M0等の裸の量を引数とする,裸の

有効作用Γ~0に対して成立している裸の式

ですが,これをくりこんでも同じ形になる

ように§7-4の(15):A0μ=Z31/2μ,

φ0i=Zi1/2i,+vi)=Zi1/2φ~i,

(c0,c0~)=Z~31/2(c,c~),(18):

0μ=Z3-1/2μ,および,

0i=(Z~31/231/2/Zi1/2)Ki,

さらに,(19):K0c=Z31/2,

そして,(20):g0=Zi3-3/2g.を

考慮します。

そして,ゲージ場Aμの2乗質量m02

外場:M0についても,m02=Z2,

0=Z31/2Z~31/2M.(26)として,

くりこみを行ないます。

すると,(24)は元々,Γ~0を含め全ての量

に添字0を付けた裸の量で成立する恒等式

ですが,これが,くりこんだ量:Γ~と,ΦI,K~I,

,K.m2,Mで書かれた恒等式となり,

共通因数の(Z31/2Z~31/2)をはずすと,裸の式と

同じ形になります。

ゲージ場の2乗質量m2に関しては,

「質量に依らないくりこみ」をしていますが,

(26)のm02=Z2で,ゲージ場の裸の質量

はm2に比例する部分しかない,と暗に述べて

います。これはゲージ対称性(BRS対称性)に

より,m2=0なら,裸の2乗質量は,(m02-δm02)

ではなくて,m02であり,これもゼロであることが

保証されているからです。

前と同様,数学的帰納法により,hcのオーダー

まで有限にくりこめた,と仮定すると,hc(n+1)の

オーダーで現われる発散Γdiv(n+1)は,WT恒等式

(24)を書き直した(25)Γ~*Γ~=m2(δΓ~/δM)

より,Γ~(0)=I~であり,

I~*Γdiv(n+1)=m2(δΓdiv(n+1)/δM)なる

方程式を満たすことが従います。

それ故,今度の場合は前のS~*X=0と

違って,I~*X=m2(δX/δM.(27)という

くりこみ方程式の解:Xの一般形を求めればよい,

ということになります。

まず,Xは次元が4以下であるとして,次元2

を担うm2の高々1次関数として,X=X0+m21

(28)(X0,X1はm2に独立な量)と書いてよい

ことになります。

(※次元4のm4の項は場によらないので,今の

真空泡グラフを考えない場合,落とします。)

また,作用積分:I~でも,m2部分を分離して

I~=I~0+m2I~1.(29)とします。

このとき,I~0=S~+∫d4x{M(Aμμ)},

1=∫d4x(m2Aμ2/2)+MAaμ (30)です。

すると,(27)のI~*X=m2(δX/δM)は,

(I~0+m2I~1)*(X0+m21)=m2(∂X0/δM)

+m4(δX1/δM)となり,これはm2の多項式と

して恒等式なので,両辺の同じm2べきの係数

を等置して,方程式:I~0*X0=0.(31),

I~1*X0-(δX0/δM)=-I~0*X1.(32)

I~1*X1-(δX1/δM)=0.(33)を得ます。

これを,(33),(32),(31)の順に解きます

そこで,まず,I~1-(δX1/δM)=0ですが,

X=X0+m21より,X1は次元2以下の量です。

これが,大局的ゲージ不変性とFPゴースト数

FP=0を満たす,という要求を考慮すると,

その一般形は次式で与えられることが

わかります。

すなわち,X1=∫d4x{aAaμ2/2+b|φi|2}

(34)(a,bは定数)です。

ゲージ群がU(1),またはU(1)因子群を含む

場合は,Mcの項も要求を満たすように見えます

が,c(―x)→ ―c(x),M(―x)→ M(x)

なので.CPT不変性からこの項は(34)から排除

されます。とにかく,cの奇数次の項などは存在

し得ません。

一方,I~1=∫d4x{Aμ2/2}(30)なる陽な

表式と.§7-4の演算*の定義から,任意のXに

対して.I~1*X=Aμ(δX/δK~μ).(35)

です。そこで,(34)のX1は,任意のa,bについて,

1*X1-(δX1/δM)=0.(33)の方程式を満たす

ことがわかります。

(※何故なら,δX1/δK~μ=0,かつ,δX1/δM=0

であるからです。)

この(33)の解である(34)のX1を,(32)の方程式

I~1*X0-(δX0/δM)=-I~0*X1の右辺に

代入すると.{Aμ(δ/δK~μ)-(δ/δM)}X0

=-aAμ(∂μ).(36) を得ます。

(※何故なら.I~0*X1においては,φiに関わる

項:(δI~0/δKi)(δX1/δφ)

と(δI~0/δKi)(δX1/δφ)が,相殺して

消えて,Aμに関する項だけが寄与するからです。)

ここで.X0=aMAaμ∂(∂μ)が(36)の特解

になるのは,明らかです。

斉次(同次)方程式:{Aμ(δ/δK~μ)

-(δ/δM)}X0=0の一般解を求めるため,

K^μ­=K~μ+MAμ.(37)と置けば,

δX0/δK~aμ=δX0/δK^μ,および,

δX0/δM=Aμ(δX0/δK^μ)

(※X0はK^aμを通してのみMに依存)

となります。

故に,同次方程式は左辺=δX0/δK^μ

=0,つまり,これの一般解はK^μに独立な

任意の汎関数です。

よって,このX0の同次解をX~0と書けば,

(36)の一般解は,X0=X~0

+∫d4x{aMAaμ(∂μ)}(38)と書けます。

以後,変数として,Φ,c,K~i,Kの他に

(37)のK^μを採ることにすれば,X~0はK^μ

独立なので,Mに依存しない汎関数です。

最後に,方程式:(31)I~0*X0=0に.

上の(38)のX0を代入します。

すると,I~0=S~+∫d4x{M(Aμμ)}

ですから,S~*X~0

+M∫d4x[∂μ(δ/δK^μ)

-Aμμ(δ/δK)]X~0=0.(39)

が得られます。

※(注16-3):何故なら,まず,S~*{MAμ(∂μ)}

=(δS~/δK^μ)(δ/δAμ){MAμ(∂μ)}

=(δμ)(δ/δAμ){(δ(-MAμ2/2)}

δ(-MAμ2/2)]=0を用いると,

S~*X0=S~*X~0が導かれます。

Mの項は,[∫d4x{M(Aμμ)}*X~0

=M∫d4x(∂μ)(δX~0/δK^μ),

-MAμμ(δX~0/δK)です。

そして,M2の項は同じものの*積なのでゼロ

です。つまり,[∫d4x{M(Aμμ)}*

[∫d4y{M(Aμμ)}]=0 です。 

(注16-3終わり※)

そして,(39)の第1項はMに依存しないので,

第1項と第2項は,それぞれ独立にゼロです。

すなわち,S~*X~0=0,かつ,

M∫d4x[∂μ(δ/δK^μ)

-Aμμ(δ/δK)]X~0=0. です。

ところが,S~*X~0=0の解は,前節で,

方程式:S~*X=0を解いた一般解Xと

同じ形で与えられます。

つまり,S~*X=0の一般解:Xは,

X=∫d4x[fゲージ不変I)

+β{K~I(δΦI)+K(δ)}

+(β-γ){Aμ(∂GI/∂Aμ)

-K~μ(∂μ)}

+γφ(d)ijj

{∂(GI+K~iδφi)/∂φj}].(63)

でしたが,この右辺の表式で,K~μを,

K^μ=K~μ+MAμに,置き換えたもの

が.今のS~*X~0=0の一般解:X~0

与えます。

特に,X~0の,K^μ,K依存部分を

X~0と書ヶば,X~0K=K^μ(∂μ)

-βg(μ×)}

+K(g/2)(×)}(40)である

ことがわかります。

ところが,このX~0Kは,(39)の第2項の

M∫d4x[(∂μ)(δ/δK^μ)

-Aμμ(δ/δK)]X~0=0を自動的

に満たします。(※証明は省略)

それ故,これ以外のK^μもKも含まない

部分を加えた全体のX~0をX0に置換しても,

これが満足され,結局,このX~0が(31):I~0*X~0=0

の一般解を与えることがわかります。

 以上から,解:X=X0+m21は(34),(38)により,

X={X~0-γMAaμ(∂μ)}

+∫d4x[(a0+γ)MAμ(∂μ)

+am2μ2/2+bm2|φi|2](41)

で与えられることになります。

このうち,|X~0-γMAaμ(∂μ)}は,

前節の(63)の一般式に一致し.既にBRS不変な

作用S~のZ因子やviをずらして得られる相殺項

で相殺できる,ことを示しました。

今度の作用積分Iで新たに加えられた部分:

(I~-S~)=∫d4x{m2μ2/2+M(Aμμ)}

において,くりこみ操作を実施すれば,

裸の,(I~-S~)0

=∫d4x{Z32μ2/2

+Z3mZ~3M(Aμμ)}(42)

となるため,Z因子をずらすと,Δ(I-S)

=∫d4x{(δZ+δZ3)m2μ2/2

+(δZ+δZ3m+δZ~3)M(Aμμ)}

(43)を得ます。

それ故,前節のδZ3=-(α+2β-2γ),

δZ~3=-γに加えて,a+δZ+δZ3=0,

(a0+γ)+δZ+δZ3+δZ~3=0δを

要請して.δZ=-a+(α+2β-2γ)(44)

とすると,(43)の2つの項が,丁度,(41)の第1項

と第2項を相殺します。

残る(41)の最後の項:(-bm2i|2)については,

(63)のμ2に比例する発散項(-αμ2i|2)と一緒

にして,スカラー場の裸の質量項を,

-(Zm1μ2+Zm2bm2)Zii|2.(45)と分離して

おけば,2つの相殺項を用意することができます。

以上で,ゲージ場の質量項を加えても,スカラー場

の質量項が少しの変更を受けるだけで,ゲージ理論は,

くりこみ可能に留まるという予想を証明すること

ができました。

しかし,これは,あくまで,赤外正則化の暫定的

方法であることに注意すべきです。

何故なら,そもそもゲージ場の質量がゼロでない

理論は,有限にはできても,BRS不変性を持たず,

故にBRS電荷:Qは保存されないし,ベキ零性

δ2=0も成立しないから,物理的解釈のできる

理論とはならないからです。

例えば,Paulli-Villers正則化では,ゲージ粒子

の作るloop積分の対数発散部分はln(Λ2/m2)の

形となり,Λ2→∞で紫外発散,m2→0で赤外発散

しますが,とりあえず両者とも相殺項で有限に

できることは示しました。

そこで赤外発散については正則化の後にm2→0

の極限を取ったとき,無矛盾に留まればいいです。

(※QEDでは、エネルギーがゼロの無数の実光子の

寄与が,無数の仮想光子の寄与で相殺される,という

方法で赤外破局(Infrared catastrophe)は解決され

ました。)

 これで,第7章が終わったので,ここで,この記事

シリーズを一旦,終わります。

(「くりこみ理論(第2部)」につづく)

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

 

 

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2020年6月 7日 (日)

くりこみ理論(次元正則化)(15)

くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

「くりこみ理論(次元正則化)(10)」の最後の方

から始まった,「ゲージ理論のくりこみ可能性」

を証明するという課題は,記事(11),(12),(13)を

経て前回の記事(14)でやっと完了しました。

6月に入りました。

今回は第7章の新しい節である:

§7-5:(質量に依らない対称なくりこみ)からです。

以下,本論です。

前節のゲージ理論のくりこみ可能性の議論

では,「対称性の自発的破れ」がないと仮定し,

大局的ゲージ不変性の要請を,多くのところで

用いました。しかしながら,対称性が自発的に

破れて,Higgs現象が起きているような場合でも

ゲージ理論は依然として,くりこみ可能である

ことを示すことができます。

実際,前節では,既に対称性が自発的に破れて

いる場合も含めて考えていました。

つまり,対称性を陽に破るパラメータ:fi

含む一般線形ゲージの場合を論じたのでスカラー

場:φiは真空期待値:viを持ち,自発的破れのある

場合と本質的に同値な状況を既に考えたことになる,

わけです。

すなわち,対称性の自発的破れがある場合には,

スカラー場:φiはtreeレベルでゼロでない真空

期待値:vi(0)を持つのですが,そのパラメータvi(0)

(≠0)をゲージ固定項のパラメータ:fiと同様,

大局的ゲージ変換の下で,その添字に応じて変換

する共変量と見なすことにすれば,依然として

大局的ゲージ不変性の要求を満たす理論に対する

場合と同じ議論が可能となります。

そうすれば,前節の議論で大局的ゲージ不変性を

用いたところで,新たにvi(0)がφiと同じ変換をする

次元1の量として加わるという点のみを考え直せば

結局,前と同じく,くりこみ因子Zや真空期待値vi

をシフトすることによって発散を全てくりこむこと

ができます。

本節では,これを陽に行なうことはせず,むしろ

対称性が自発的に破れた理論のくりこみを,自発的

破れを起こしていない対称な理論のくりこみに帰着

させる,という方法について述べます。

この方法の基本的考え方は次の通りです。

摂動論の範囲内では,対称性の自発的破れを

起こしている場合と破れを起こしていない場合

の違いは,単にスカラー場:φの質量項:-μ2|φ|2

のμ2の符号の違いだけです。

※(注15-1):質量項を-μ2|φ|2とすると,

有効ポテンシャルVは,

V[φ~]-(λ/2)|φ~|4-μ2|φ~|2

=-(λ/2)(|φ~|2+μ2/λ)2-μ4/(2λ)

であり,{φ~{2≧0なので,普通にμ2>0なら

Vの最小値を与えるφの期待値φ~は確かに

φ~=0であり,そのときVmin=0ですから,

この場合は対称性は破れていません。

しかし,もしも質量が,異常なμ2<0の

パラメータなら,V[φ~]=-(λ/2)|φ~|4

-|μ2||φ~|2=-(λ/2)(|φ~|2-|μ|2/λ)2

+μ4/(2λ)なので,Vが最小になるのは|φ~|2

=|μ|2/λ=-μ2/λ>0のときであり,この

とき,Vmin=μ4/(2λ)>0ですから,対称性が

破れています。

これは,第6章「対称性の自発的破れ」で紹介

した単純なGoldstone模型です。

(注15-1終わり※)

ところが,くりこみの一般論の第7章の命題

からもわかるように,このような次元2の質量項

の違いはゲージ理論のくりこみの本質的な部分

である次元が4,または3の演算子(発散部分)の

くりこみには影響しません。

このことを反映して,実際,任意の理論において

そこに現われる場の質量パラメータに依存しない

形で,くりこみができること,それ故,質量

パラメータを変数とする(連続無限個の)理論の組

が一度に有限となることを示すことができます。

このくりこみの方法を「質量に依らないくりこみ

(mass-independent renormalization)」と呼びます。

これを利用して,対称な理論で一たび,くりこみが

できる,ことがわかれば,(ゲージ理論であれ何であれ)

理論は質量パラメータμ2の値の如何に依らず一挙に

有限にできることになるので,このLagrangianでμ2<0

の対称性の自発的に破れた理論も有限であるといえます。

さて,※(質量に依らないくりこみ)の項の本論です。

このくりこみ法は,元々はt’HooftとWeinberg

によって提唱されたのですが,ここではCallanに従って

最も簡単なスカラー理論の場合で説明します。

例として,O(N)対称性を持つλφ4理論を採用すれば

その摂動の第0次のLagrangian密度は,スカラー場を

φ=φ12,..φ)として,=(∂μφ)2

-(m2/2)φ2-(λ/8)(φ2)2.(1)で与えられます。

ここで,φ2=Σj=1Nφj2であり,m2は質量の2乗

パラメータですが,これは非負とは限らないとします。

(※通常のスカラー粒子の2乗質量に用いるμ2は後

でくりこみ点に用いる予定なので,ここでは使わずに,

残しておきます。)

この(1)のLに対する有効作用:Γを有限にする

ためには,2次発散する2点頂点関数Γ(2)と対数

発散する4点頂点関数Γ(4)を考えれば十分です。

これらに対して,適切なくりこみ条件の本質的な

点は,n点頂点関数Γ(n)を質量をパラメータm2

関数と見て有限化することです。

それ故,m2をΓ(n)の運動量変数:の2乗:2など

と同等に扱います。

例えば,次のようなくりこみ条件を設定します。

すなわち,Γ(2)ij(P2=0,m2,λ;μ2)|m2==0=0.(2),

(∂/∂m2(2)ij(P2=0,m2,λ;μ2)|m2=μ2=-δij(3),

(∂/∂p2(2)ij(P2,m2,λ;μ2)|P2=0,m2=μ2=+δij.

(4)です。

そして,Γ(4)ijkl(P2=0,m2,λ;μ2)|m2=μ2

=-λδij.kl(5)です。

ただし,は,一般のn点関数のとき,

=(p1,p2。..pn-1)|pn=-(p1+p2+..pn-1)

表わし,また,δij,,kl=δijδkl+δikδjl+δilδjk

(6)です

2点関数ではΓ(2)は2次発散なので(次元2の)引数:

2,および,P2でTaylot展開すれば発散次元は2

ずつ下がり,初項が2次発散し.次の1階微分の2項

(∂Γ(2)/∂m2)と(∂Γ(2)/∂p2)が対数発散します。

そして,それ以降は収束ということになります。

上記の(2),(3),(4)のくりこみ条件は,この発散

する初めの3項に対する条件で,(2)は質量

パラメータm2がゼロのときは,粒子が本当に零質量

なるべし.(3).(4)は,m2があるべき項μ2(>0)のとき

2がゼロでのΓ(2)の(p2-m2)に関する数係数が,

treeレベルのΓ(2)=δij(p2-m2)の満たす値から

ずれてはならない。という要請です。

これに対して,4点関数:Γ(4)は対数発散なので.

(m2,p2)平面のどこか1点の値を指定すればいい

です。(5)の条件は,m22のとき,p=0のΓ(4)

がtreeレベルの-λδij.klから,ずれないという

条件です。

(2)の条件がm2=0で与えられているのに対し

(3)~,(5)の条件がm2=μ2>0で与えられている

のは,(3)~(5)の量は対数発散なので,mもpも皆,

ゼロにすると赤外発散の困難に遭うからです。

(※理解しやすいように,Paulli-Villersの正則化

で見ると,対数発散量は切断パラメータをΛ2として

lnΛ2に比例して発散することを意味しますが,Λ2

次元を持っており,これの対数関数というのは物理的

には有り得ず,必ず,無次元量として,ln{Λ2/(ap2+bm2)}

の形で現われるため,p2=0としたとき,m2=0とすると

赤外発散を生じるからです。)

くりこみ条件を与えたm2の値:μ2

「くりこみ点(renormalization point)」と呼びます。

このことから,くりこまれたΓ(n)

くりこみ点:μ2にも依存するようになるので,

(2)~(5)でΓ(2)(4)の引数としてμ2を陽に書いた

のでした。

こうした,くりこみ条件を実現するためには

次の相殺項が必要となります。

すなわち,count=(A/2)(∂μφ)2-(B/2)m2φ2

+(1/2)δm2φ2-(Cλ/8)(φ2)2.(7)です。

つまり,摂動論(例えばhc展開)の各オーダーごとに

相殺項の係数:A,B,δm2,Cを決めてゆきます。

くりこみ条件の(2)はδm2の,(3)はBの,(4)はAの,

(5)はCの,自由度を用いて,それぞれが満たされるように

できます。この相殺項を加えるということは,系の裸の

Lagrangian:00=(1/2)(∂μφ0)2

-(1/2)(m02-δm0202-(λ0/8)(φ02)2count(8)

と書けることを意味し,φ0=Zφ1/2φ,より,1+A=Zφ.(9),

02=Z2,δm02=Zφ-1δm2より,1+B=Zφ.(10),

λ0=Zλλより,1+C=Zλφ2.(11)を満たす係数A,B,

δm2,Cを持つ相殺項:countを採ればいいことを意味します。

与えられた1つの質量の理論をくりこむ通常の場合と少し

異なっているのは,裸の質量が,(m02-δm02)のように2つ

に分離しているところです。

今の場合,m2はp2と同様な変数であり,(10)を導いた式:

{(1+B)m2-δm22/2=(m02-δm0202/2

=(Zφ2-δm22/2から,わかるようにm02はm2

比例する線形項ですが,δm02はm2に依らない定数項に対応

しています。

(※なお,Dirac Fermionの場合は,同様にmに

比例する部分:m0=Zmと,定数部分δm0

分けると.実は,δm0は自動的にゼロになります。

これは,カイラル対称性のせいで,くりこまれた質量

(treeレベルの質量)がゼロであると裸の質量も

ゼロになるからです。(※※つまりカイラル対称性

を持つは質量項のないDirac粒子の場合です。

そこで,くりこんだ結果:δmψ~ψ=0なら

裸の質量:m0-δm0におけるδmに関わる

部分のδm0=0なのです。)

スカラー理論でも,次元正則化を用いるなら定数部分

δm02は自動的にゼロとなります。)

いずれにしろ,以上のくりこみ手続きでΓ(2)(4),それ故

Γ(n)が,摂動の各次数ごとに運動量pと質量パラメータm2

の関数として有限にできるということがわかりました。

このとき,対数発散項の相殺にあずかる因子:

φ,Z,Zλは,くりこみ条件(3)~(5)がm2=μ2

ところで与えられているので,切断パラメータをΛ

として,Zi=Zi0,Λ/μ) (i=φ,m,λ).(12)

の形で決まります。

こうしてZiは,変数としての質量パラメータm2

には依存していないということが重要な点で,

「質量に依らないくりこみ」という名称は,これ

に由来しています。

もう1つの重要な注目点は,裸のLagrangian

(故に裸の有効作用)に現われるδm02が,m2にも

δm2にも依存しないという事実です。

すなわち,δm02=Λ200)(13)と書けます。

このことは,過去記事;「くりこみ理論(6)」で

与えた関係式を,μ2をm2に置き換え,くりこみ

点を表示して書き直した,

Γ(n)(,m2,λ;μ2)

=Zφn/2Γ0(n)(,m0202),(14)

を思い出せば,裸の,Γ0(n)は,くりこまれた

それ:Γ(n)と比例関係にあることから,

Γ(2)に対するくりこみ条件(2)を裸の

Γ0(2)に対するように書き換えると,

Γ0(2)ij(p2=0,m02=0,δm020;Λ2)=0.

(15)となることがわかります。

これはδm02を決める関係式になっており,

ゼロでなくて次元を持つ量は,δm02の他には

Λ2のみを含んでいます。

そこで,次元解析を利用して(14)の解:δm02

が,δm02=Λ200)(13)の形に書けることが

わかります。この形式は,後に斉次くりこみ群

方程式を導くときに重要になります。

これを得るためには質量に依らないくりこみ

では,くりこみ条件(2)は必要不可欠です。

しかし,他の条件(3)~(5)は,いろいろとある

中の1つの選択肢で,他の条件も有り得ます。

例えば,(3),(5)を,それぞれ,

Γ(2)ij(p2=μ2,m2=μ2,λ:μ2)=0.(16-1),

Γ(4)ijkl(p,m2=μ2,λ:μ2)|pipj=(1-δij)/2

=-λδij,kl.(16-2)に置き換えてもいいです。

 

ここで,t’Hooftにより始められた,次元正則化

に基づく,質量に依らないくりこみ法について少し

コメントします。

この方法も本質的には上記のPaulli-Villers

正則化のそれと同じですが,ゲージ不変性を尊重

するという点で便利です。

まず,時空d次元では,dimφ=(d-2)/2,

dim()=dですから,裸の結合定数λ0が(4-d)

の次元を持ちます。しかし,くりこまれた結合定数

λ,および,くりこみ定数:Zλが常に無次元になる

ように.(11)のλ0=Zλλ,の代わりに,

λ0=Zλ(λμ(4--d))

=(1+hcλ(1)+hc2λ(2)+..)(λμ(4-d))(17)

の形でくりこみを行ないます。

ただし,μはくりこみ点に相当する次元1の

パラメータです。

こうすれば,次元正則化による摂動計算において,

結合定数は常に(λμ(4-d))の形で出てきます。

したがって,loop積分結果のd=4の極の近傍の

展開に現われる対数関数は,ln{(p2+m2)/μ2}の

ように,常に正しく引数が無次元の量となります。

次元正則化のこの方法では次元を持つ切断

パラメータΛは導入されないので.先の2次発散

のΓ(2)に対する,くりこみ条件(2):

Γ(2)ij(p2=0,m2,λ;μ2)|m2=0=0.は,自動的に

満たされます。(μ2はd→4では対数の引数には

出てきません。)

よって,条件(2)が陽に言及されることはないです。

 

他の対数発散部分に対してはは(17)の

λ0=Zλ(λμ(4--d))

=(1+hcλ(1)+hc2λ(2)+..)(λμ(4-d))

および,m02=Z20=Zφ1/2φとして,

例えば,先の条件(3),(4),(5)(ただし(5)では

右辺のλをλμ(4-d)に置換)のくりこみ条件:

つまり

(∂/∂m2(2)ij(p2=0,m2,λ;μ2)|m2=μ2

=-δij(3),

(∂/∂p2(2)ij(p2,m2,λ;μ2)|p2=0,m2=μ2

=δij.(4),Γ(4)ijkl(p2=0,m2,λ;μ2)|m2=μ2

=-λμ(4-d)δij.kl(.(5)’

を設定して,くりこみを実施します。

または,くりこみ条件に言及せず,

単に1/(d-4)の極の部分ε~-1だけを除きます。

そうすれば,次元をもたないZi(i=φ,m.λ)は,

(Λが存在しないので)μに陽には依存せず,

Zi(λ,d)=1+a1(λ)/(d-4)+a2(λ)/(d-4)2

+..の形になり,明白な質量に依らないくりこみと

なります。

このとき,Ziのくりこみ点:μへの依存性は

くりこまれた結合定数λを通してのみ依存します。

くりこまれたλは裸のλ0がμに独立なので,(17)から

μ依存性が決まります。

※(注15-2):「くりこみ理論(4)」,または,その

「要約(4)」の必要部分の再掲載を兼ねた,本論

の補足説明を注釈します。

まず,系の裸のLagrangianを0count

するとき,裸の質量がμ0のBosonの2点Green

関数(Feynman伝播関数)iΔF’(p2)への

1粒子既約な自己エネルギーグラフの寄与

が裸の量で-iΠ0(p2)であるとすると,

その2点Green関数は

Fij(p2)=iδij{p2-μ02-Π0(p2)}-1

=i[Γ0(2)(p2)]-1 で与えられます。

そして,iΔF’(p2)を,くり込んだものを

F~(p2)と書き,iΔF’(p2)

=i/{p2-μ02-Π0(p2)}=iZ3/(p-μ2)

=Z3iΔF~(p2)になると考えると,

Π0(p2)=(Z3-1)(p2-μ2)+δμ2を得ます。

ただし,δμ2=μ2-μ02としています。

系の裸のLagrangianが0cont

表わされるのに倣って,裸のΠ0もくりこまれた

Πと相殺項:Πcountの和として,

Π0(p2)=Π(p2)+Πcount(p2)と書くと

Π(p2)+Πcount(p2)=(Z3-1)(p2-μ2)

+δμ2です。

特に,最低次のオーダーでは,

Π(1-loop1)(p2)+Πcount(1)(p2)=Z3(1)(2-μ2)

+(δμ2)(1)となるべきことを意味します。

このくりこみの結果,μが実際に観測される

物理的質量という意味を持つための条件として

2=μ2の近傍では,Δ~F(p2)ij=δij/(p2-μ2),

または,Γ~(2)(p2)=p2-μ2となることが要求

されます。

くりこみ条件(2)はp=0,μ=0でΓ(2)=0

でした。

この条件はΠ(p2)+Πconht(p2)

=(Z3-1)(2-μ2)+δμ2の上では,p=0,

μ=0で,Π(0)+Πcount(1)(0)=(δμ2 なること

に相当しています。

これらは,質量をパラメータ:mとしてくりこみ

点を,m2=μ2とした頂点関数Γで考えるとp2=m2

=μ2の近傍では,Γ(2)(p2)=p2-m2となるべき

ことを意味します。

そして,これは,Γ(p2,m2)=Γ(0,0)+p2(∂Γ/∂p2)

+m2(∂Γ/∂m2)+..のベキ展開においては,

Γ(0,0)=0,(2) (∂Γ/∂p2)=1,(3),(∂Γ/∂m)=-1.

(4)の3条件です。

そして特に,最低次のオーダーでは,Π(1-loop1)(p2)

+Πcount(1)(p2)=Z3(1)(2-μ2)+(δμ2)(1)です。

そこで,Π(1-loop1)(p2,m2)+Πconht(1)(p2,m2)

=Z3(1)(2-m2)+(δm2)(1)であり,条件(2)は,

最低次ではΠ(1-loop1)(0,0)+Πcount(1)(p2)

=(δm2)(1)です。

さてBoson質量をμに戻して,くりこまれた量で

最低次の1粒子既約の自己エネルギーを計算すれば,

-iδijΠ(1-loop)(p2)

=∫ddk(2π)-4(-)Tr[(―igτi)i(-mF)-1

(-igτj)i{(k-)-mF}-1]+∫ddk(2π)-4

(-iλ/8)4×3+8)δiji/(k2-μ2)-iΠcount(1)(p2)

となります。ただし,mFはBosonが真空偏極する

グラフでloop積分すべき内線運動量を持った

仮想Fermionの質量です。

次元正則化で,最後にd→4の極限をとる前の

自己エネルギー部分の計算結果は,

-iΠ(1-loop)(p2)

={(-i)2・4g2/(16π2)}[(3ε~-1+1)

×(mF2-p2/6)-3∫01dx{mF2-x(1-x)p2

×ln{mF2-x(1-x)p2}]

+{-5λ/(32π2)}μ2{-ε~-1-1+ln(μ2)}

となります。

ただし,ε~-1は,d→4で発散する部分で,

ε-1=2/(4-d)および,ε~-1=ε-1-γ+ln(4π)

で定義されています。

それ故,-iΠ(1-loop)(p2)の発散部分は,

ε~-1を含む部分だけで,これを含む相殺項を.

-iΠcount(1)(p2)として,差し引くことで,有限

にする操作が,次元正則化のくりこみ手続きです。

したがって,1PIの自己エネルギーグラフの

最低次のくりこまれたネットの寄与は,

Π(1-loop)(p2)+Πcount(1)(p2)ですが,これが,

p=0,μ=0で(δμ2)(1)に一致するべし,と

いうのが,最低次でのくりこみ条件(2)の

意味するところです。

それ故,Π(1-loop)(0)|p2=0,μ2=0

={g2/(2π2)}{(3ε~-1+1)mF2-3mF2ln(mF2)}

を得ますが,相殺項:Πcount(1)(0)をε~-1を因子と

する発散部分:{3g2/(2π2)}ε~-1に有限限部分

の一部を加えて(-)符号を付けたものとして

これに加えると,(δμ2)(1)が(有限部分)

+Π(1-loop)(0)|p2=0.μ2=0で与えられることがくりこみ

条件(2)が満たされることに同値となります。

すなわち,Paulli-Villersの場合なら∫d

が∫d4kで,自己エネルギー部分の計算結果は,

-iδijΠ(1-loop)(p2)

=∫d4k(2π)-4(-)Tr[(―igτi)i(-mF)-1

(-igτj)i{(k-)-mF}-1]

+∫d4k(2π)-4(-iλ/8)4×3+8)δiji/(k2-μ2)

となり,被積分関数はkの(-2)次で,積分が∫d4

の4次であること,および,(mF22,2)の次元2を

持った量で展開すると,発散の次数が2ずつ下がること

から,これを理解できます。

いずれにしろ,Π(1-loop)(p2)は,外線運動量:p2の関数

として,p2の0次と1次の項しか含まず,それ故,丁度,

相殺項:-iΠcount(1)(p2)=i{Z3(1)(p2-μ2)+δμ2(1)}

で相殺できる形になります。

つまり,Paulli-Villers正則化では,δμ2(1)

=Π(1-loop)(p2=μ2)=(有限定数)

+{5λ/(16π2)-3g222ln2

+[{3g2/(2π2)}(mF2-μ2/6)-5λμ2/(32π2)]

×ln(Λ22)(発散量),

かつ,Z3(1)=[∂Π(-loop1)/∂p2]p2=μ2

=(有限定数)+{g2/(4π2)}ln(Λ22)(発散量)

と置き,一方,次元正則化では,

δμ2(1)=Π(1-loop)(p2=μ2)

=(有限定数)

+[{3g2/(2π2)(mF2-μ2/6)-5λμ2/(32π2)}ε~-1

(発散量),かつ,Z3(1)=[∂Π(-loop1)/∂p2]p2=μ2

=(有限定数)+{g2/(4π2)}ε~-1(発散量)と置くと

いずれの正則化でも,Π(1-loop1)+Πcount(1)は有限になり

(p2-μ2)の2次以上の項はなくなって,

伝播関数はp2=μ2の近傍では,iΔj(p2)ij

=iδij/(p2-μ2)の形になり,μがBosonの物理的

質量である,という要請が確かに満足されます。

(再掲部分関連終了※)

質量に依らないくりこみでは,裸の2乗質量

がμ02ではなくて,(m02-δm02),くりこまれた

質量がμ2でなくm2なので,上のδμ2=μ2-μ02

に相当するのは,m2-(m02-δm02)=δm2+δm02

です。先に述べたようにδm02はm2に依存しない

定数ですから,このパラメータはどう取ろうが自由

です。

自己エネルギーについては.

Π(p2)+Πcount(1)(p2)={Z3-1)(p2-m2)

+(δm2-+δm02)が満たされるべき条件です。

故に,くりこみ条件(2)はΠ(0)+Πcount(1)(2)

=δm2-+δm02ですが,δm02が何でもよい

なら;この条件は不要だと思うのですが。

(注15-2終わり※)

途中すが長くなったので今回はここで終わります。

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

 

 

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2020年5月31日 (日)

くりこみ理論(次元正則化)(14)

「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

前々回まででは,大局的ゲージ不変性と

いう対称性を持った系の有効作用Γを示す

Feynmanグラフがくりこみ可能であること

を証明するために,この有効作用Γ(orΓ~)

を,Γ=Γ(0)+hcΓ(1)+..+hΓ(n)

+hc(n+1)Γ(n+1)+,,と摂動展開し,初項

Γ(0)は作用S(orS~)に等しく有限なので

続くΓ(1)(2)(n)がくりこみで全て有限

にできたと仮定してΓ(n+1)も有限になると

いうことを示す,という帰納法に頼りました。

結局,この証明はΓ(n+1)の発散部分Γdiv(n+1)

を取り出すと,それが謂わゆるくりこみ方程式:

S~*Γdiv(n+1)=0を満たすことを示すことに

帰着することが導かれました。

そして,このくりこみ方程式に対しては,次の

命題が成立します。

これは,「大局が的ゲージ不変でFPゴースト

数ゼロ,次元が4以下の局所項から成る,ΦI,c,

K~I,Kの汎関数:Xがくりこみ方程式:

S~*­X=0を満たすとする。このとき解Xは

裸の作用積分:S0=S[Z31/2μ,.,Z~31/2μ

13-3/2,..]において,Zやviをずらせて

得られる変化分:ΔS

=δZ(ΔS)+δviviS)

=δZ[∂S~/∂Z] Z=1Vi=0+δvi[∂S/∂vi]Z=1Vi=0

(41)の形で与えられる。」 という命題です。

これが証明されればΓ(n+1)が有限になること

を示すことができて帰納法の証明が完結します。

そこで,この命題証明すればいいのですが,

これに関して.次の定理の成立が知られています。

[定理]:「ΦI,c,K~I,KのFPゴースト数

がゼロの局所多項式から成る汎関数Xでくりこみ

方程式S~*­X=0.を満たすものは,必ず,

X=Fゲージ不変[ΦI+S~*M[ΦI,c,K~I,K]

の形に書ける。

ここで.Fゲージ不変はΦI=(Aμi)のみで

書かれたゲージ不変な関数であり,一方,Mは

FPゴースト数が(-1)の任意の汎関数である。」

という定理です。

そして,この形で書かれる汎関数Xが.くりこみ

方程式:S~*X=0を満たすこと(解の十分性)の

成立はほぼ自明で,実際,容易に証明できました。 

しかし,証明が自明でないのは,逆の解となる

ための必要性の方でした。

このXがS~*X=0の解となるための必要性

  の一般的証明は,かなり面倒なので割愛する,と

述べました。ここまでが前々回の記事です。

前回は,当面必要なXが,次元4以下の局所項

から成る大局的ゲージ不変という特別な場合に

限れば必要性が証明できるというので,これを示す

途中での中断でした。結局,くりこみ方程式:

S~*X=0の解Xは­X=∫d4x[fゲージ不変I)

+β{K~I(δΦI)+Ka(δ)}

+(β-γ){Aμ(∂GI/∂Aμ)

-K~μ(∂μ)}

+γφ(d)ijj{∂(GI+K~iδφi)/∂φj}].

(63)と書けます。ただし,次元が4以下である

という条件からfゲージ不変I)の一般形は,

ゲージ不変I)

=α{(-1/4)Fμνaμν}

+αφ{(Dμφi)μφi}-α2φiφi)

-αλ{(λ/2)(φiφi)2}.(62)なる形で

与えられます。と書いたところで,前回記事

を終えました。

さて,今回はその続きです。

既述のように,作用S~は,(47)で与えた

S~=∫d4x[GII)+K~I(δΦI)

+K)].の形をしています。

ただし,δΦI=DIであり,

δ=(g/2)(×)です。

また,*演算は定義(31)によれば任意

  のΦI,c,K~I,Kの汎関数:F.Gに

対して,F*G=(δF/δΦI)(δG/δK~)

+(δF/δc)(δG/δK)

+(-)|F|{(δF/δK~I)(δG/δΦ)

+(δF/δK)(δG/δc)

ですから,S~*(K~μμ)

=(δS~/δAμ)Aμ+(δμ)K~μ

=(Aμ(∂GI/∂Aμ)

+K~μ{∂(Dμ)/∂Aμ}

+(Dμa)K~μです。

故に,証明に必要な第1式:

S~*(K~μμ)=Aμ(∂GI/∂Aμ)

-Kμ(∂μ).(64)を得ます。

次に,S~*(K)

=(δS~/δc)c+(δ)K

=-c(δS~/δc) +K(δS~/δK)

(65)です。

ところが,場(粒子)のFPゴースト数をNFP

  とすると,S~はNFP=0,cはNFP=1,K~I

FP=-1,KはNFP=-2のゴースト数を

持つため.{c(δ/δc)-K~I(δ/δK~I)

-2K(δ/δK)}S~=0(.66)

が成立します。

※(注14-1):何故なら,まず,S~をc,K~I

の関数と見て,ベキ級数展開したもの

を,S~=Σν1,v2,ν3{a(ν123)

×cν1(K~I)ν2×(K)ν3}と表わすと,

{c(δ/δc)-K~I(δ/δK~I)

-2K(δ/δK)}S~

=Σν1,v2,ν3{(ν1-ν2-2ν3)a(ν123)

×cν1(K~I)ν2(K)ν3} となります。

元のS~の展開の各項のベキ次数ν123

は,それぞれ,ゴースト場c;外場K~I,K

に対応する粒子の個数を示しています。

故に,(ν1-ν2-2ν3)は項のFPゴースト

  数を意味します。

一方,左辺のS~のゴースト数はNFP=0

ですが,これは右辺の展開の各項で満たされる

べきと考えられるので,全ての項において

ν1-ν2-2ν3=0が成立すべきで,その結果

としてl{c(δ/δc)-K~I(δ/δK~I)

-2K(δ/δK)}S~=0が得られます。

(注14-1終わり※)

したがって,(65)のS~*(K)

-c(δS~/δc) +K(δS~/δK)

は,S~*(K)=-K~I(δS~/δK~I)

-K(δS~/δK) と書き直せます。

故に,必要な第2式として,

S~*(K)

=-K~I(δΦI) -K(δ).(67)

を得ました。

最後に,S~*K~i=δS~/δφi

=δ{(GI+K~(δφj))/δφiです。

以上から,再掲(63)式:

X=∫d4x[fゲージ不変I)

+βA【K~I(δΦI)+Ka(δ)}

+(β-γ){Aμ(∂GI/∂Aμ)

-K~μ(∂μ)}+γφ(d)ijj

{δ(GI+K~jδφj)/δφj}](63)

の被積分関数は,fゲージ不変I)

-βS~*(K)+

-γ)S~*Kμaμ)

+γφ(d)ijjS~*K~j]と書けます。

すなわち,Xは,X=∫d1x[fゲージ不変I)

+S~*{(β-γ)Kμaμ -β

+γφ(d)ijjK~j}].(68)の形となり,

これは,定理が主張する(44)の形の解:

X=Fゲージ不変[ΦI+S~*M[ΦI,c,K~I,K]

に合致する,ことがわかり定理の必要性が証明

されました。つまり,これで.次元4以下で大局的

ゲージ不変な場合に,先の定理が証明されたわけ

です。(※大局的ゲージ不変性について,S~の

K~i(δφi),XのK~i~φi)の部分は疑問

ですが,これは議論の本質には無関係のようです。

要するに,追加の外場K~iの問題なので?※)

さて,まだ,直接,必要とされる先の命題の

結論となる形に書けること,つまり,解Xが作用

積分:S0=S[Z31/2μ,..Z~31/2μ

13-3/2,..]で,Zやviをずらせて得られる

変化分:δZ(ΔS)+δvi(ΔviS)(41)の形

で与えられる。ということを透明する仕事が

残っています。

これを証明するにはXの表式:(63)(再々掲)

X=∫d4x[fゲージ不変I)

+β{K~I(δΦI)+Ka(δ)}

+(β-γ){Aμ(∂GI/∂Aμ)

-K~μ(∂μ)}

+γφ(d)ijj{∂(GI+K~iδφi)/∂φj}].

を出発点とする方が早道です。

まず,唐突ですが,次式:

{Aμ(∂/∂Aμ)-g(∂/∂g)}GII)

=2{(-1/4)Fμν2}.(69)が成立することに

注意します。(※ただし,(-1/4)Fμνaμν

を,(-1/4)Fμν2と略記しました。※)

これは,)で(gAμ)をAμ

変数変換すれば,物質場:ΦIのLagrangianの部分

は,gに依らなくなる。ということから従います。

※(注14-2):実際,(gAμ)の1次の項は,

μ(∂/∂Aμ)の作用で(gAμ)となり,

g(∂/∂g)に対しても同じ(gAμ)になる

ため,これに比例した項は演算の結果として

消えます。すなわち,

{Aμ(∂/∂Aμ)-g(∂/∂g)}GII)

{(g,Aに独立な比例係数)(gAμ)}=0です

。残るのはFμν内の(gfabcμν)

のように,Aμの2次以上の項の場合で,

{Aμ(∂/∂Aμ)-g(∂/∂g)}

(gfabcμν)

=gfabcμν ですから.Fμν2

への演算の場合,この項から因子2が出ます。

gを含まないAのみの項ではAμ(∂/∂Aμ)

の作用は,各項で時空微分に関係なく元の項の

Aの次数倍を与えるので,(∂μν-∂νμ)2

に作用させると,2((∂μν-∂νμ)2です。

結局,{Aμ(∂/∂Aμ)-g(∂/∂g)}

(Fμν2)=2Fμν2)が得られます。

(注14-2終わり※)

次に,K~(δΦI)+K)では,

K~(δΦI)=(Dμ)の中の項:

K~μ(∂μ)が,gの0次項である以外,

全てgの1次の項ばかりなので,

{g(∂/∂g)-1}{K~(δΦI)+K)}

=-K~μ(∂μ).(70)となります。

これと先の(69)の

{Aμ(∂/∂Aμ)-g(∂/∂g)}GII)

=2{(-1/4)Fμν2}から

∫d4x{Aμ(∂GI/∂Aμ)-K~μ(∂μ)}

=gδS~/δg)+∫d4x[2{(-1/4)Fμν2}

-{K~(δΦI)+K)}].(71)です。

そこで,これらを(63)に代入します。fゲージ不変I)

については,(62)の具体的で陽な表式を代入すると,,

X=∫d4x[(α+2β-2γ){(-1/4)Fμν2}

+αφ|Dμφi|2-αμ2i|2-αλ{(λ/2)|φi|4}

+γ{K~(δΦI)+K)}]

+γφ(d)ijj(δS~/δφj)

+(β-γ)g(δS~/δg)].(72)という

解Xの表式を得ます。

一方,作用積分S~の引数の物質場,外場に,

0μ=Z31/2μ0i=Zi1/2i,+vi)

=Zi1/2φ~i,(c0,c0~)=Z~31/2(c,c~)

(15),K0μ=Z3-1/2μ,

0i=(Z~31/231/2/Zi1/2)Ki(18)

0c=Z31/2(19),g0=Zi3-3/2g.(20)

で指定されるZ,やviを含んだ裸の量:Φ0II,K0I,

0c,g0を入れたものを求めると,次のように

なります。

S~[Z31/2μ,..Z3-1/2μ,..Zi3-3/2g...]

=∫d4x[Z3(-1/4){∂μν-∂νμ

-Z13-1g(μ×ν)}2

+Zi|∂μφ~i+Z13-1g(T)ijμφ~j|2

-Ziμ2|φi|2-Zλi2(λ/2)|φ~i|4

+Z~3μ{∂μ-Z1-1g(μ×)}

-Z3K~iiZZ3-1g(T)ijφ~j

+Z~3(Zi3-1g/2)(×)].(73)

ただしZとZλは,今,陽に考えている物質場

の質量と,λφ4相互作用の結合定数λのくりこみ

因子として定義されています。

つまり,μ02=Zμ20=Zλλ.(74)です。

さて,Z因子やvをずらしたときのS~の

変化分は,(73)のS~の表式を微分して,

ΔS~=δZ(ΔS~)+δviS~)

=∫d4x[(-1/4){δZ3(F~μν(0))2

-Z3(0)(2δg~)(μ×ν)Fμν(0)

+δZi|D~μφ~i(0)|2

+Zi(0)(2iδg~)(T)ijμφ~jD~μφ~i(0)

+2(δvi)Zi(0)(ig(0))(T)ijaμD~μφ~i(0)

-{(δZ)Zi(0)+Z0)(δZi)}μ2|φ~i|2

-Z(0)i(0)(δvi)(∂/∂φ~i)(λμ2|φ~i|2)

-{(δZλ)Zi(0)2+Zλ0)(2δZi)}(λ/2)|φ~i|4

-Zλ(0)i(0)2(δvi)(∂/∂φ~i)(λ|φ~i|4/2)

+K~μ{(δZ~3)(Dμa(0))}

+Z~3(0)(δg~)(μ×)}

-{(δZ~3)g~(0)+Z~3(0)(δg~)}

×K~ii(T)ijφ~j(0)

-Z~3(0)K~iig~(0)(T)ij(δvl)

+(i/2){(δZ~3)g~(0)+Z~3(0)(δg~)}

(×)] と書けます。

ただし,0次近似では,Z(0)は全て1,vi(0),

j(0)は.全て0,g~(0)=gとします。

また,F~μμ=∂μν-∂νμ

-Z13-1(μ×ν),g~=Z13-1g,

D~μφ~i=∂μφ~i-ig~(T)ijμφ~j.

D~μc=∂μc-g~(μ×)としています。

そして,δZ,δvはZ(0)=1,v(0)=0から

  の変化分と考えます。

それ故,結局,δZ(ΔS~)+δviS~)

=∫d4x[δZ3{(-1.4)Fμν2}+δZi|Dμφi|2

-(δZ+δZi2i|2

-(δZ+δZλ)(λ/2)|φi|4

+δZ~3{K~I(δΦI)+K(δ)}]

+δvi(δS~/δφi)

+(δZ1-δZ3)g(δS~/δg)(75)

となります。

この形は,丁度,(72)で与えたくりこみ方程式

  の一般解:Xの表式にピッタリ一致します。

すなわち,くりこみ因子のずれ:δZ,δvは

(72)のパラメータ:α,β,γから次のように

決まります。

δZ3=-(α+2β-2γ),δZ~3=γ,

δZi=-αφ,δZ=-α+αφ,

δZλ=-αλ+2αφ,δvi=γφ(d)ijj,

δZ1=-(α+3β-3γ).(76)です。

(※符号が逆になっているのが多いのは,Xの

表式をΓの発散項としたとき,それがS~の

変化分で相殺されると考えるからです。※)

以上で,命題の証明,すなわち,ゲージ理論

のくりこみ可能性の証明が完了しました。

※(注14-3):ここまで,一貫して,大局的ゲージ

不変な理論がくりこみ可能であることを示して

きたわけですが,そもそも局所ゲージ不変理論

(第2種のゲージ変換)に対して不)な理論)なら,

時空点ごとに異なるゲージ変換のパラメータ

(位相)を,全ての時空点で同じ定数とした特別

な場合でも不変性は維持されるので,局所的

ゲージ不変なら,必ず,大局的ゲージ不変

(第1種ゲージ変換に対して不変)なので,

局所ゲージ不変な理論もくりこみ可能で

あることが示されたわけです。

逆の大局的ゲージ不変なら局所ゲージ不変

というのは必ずしも成り立ちませんがね。

(注14-3終わり※)

  • 7-4の目的であったゲージ理論のくりこみ

可能性の証明問題が完了して一段落です。

今日,これのアップは2020年5/31ですが,実際に

この原稿をつj作ったのは10日くらい前で,既に

新しい項の原稿(15)を書いている途中です。

米印参照ノートは「ゲージ場の量子論(5)」と題名

の付いたノートで,日付けがあるのは1ページ目の

(通算467ページ目)の1997年3/20(47歳)と最後

の通算573ページ目の1999年5/24(49歳)のみで

今日の原稿の内容を書いたのは,その間であろう

としか,わかりません。

そして,この題名のノートの全ては,今部屋の

どこにあるのかは真剣に探してみないと不明

ですが,確か,「ゲージ場の量子論(6)」が最後

で,2000年2/1(50歳)の前には読了して終了

したはずです。※

いずれにしろ,今回はここで終わります。

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

 

 

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くり込み理論(次元正則化)(13)

くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

前回は,大局的ゲージ不変という対称性を

持った系の作用積分Sと,その有効作用Γを

裸の場を変数として構成した裸のS0とΓ0

において変数の裸の場を,くりこんだ場と

くりこみ定数Z,viで表わしたものに置換

する,という操作によって,くりこんだ有効

作用Γが有限になる,という手法で理論が

ゲージ不変性を保持したままの正則化に

よって,くりこみ可能となることの証明を

志向しました。

以下,これまでの手順の要約を記述します。

まず,上記の証明ため,Γ0の変数の裸の量に,

くりこんだ量による表式を代入して,計算

すべきΓを,Γ=Γ(0)+hcΓ(1)+hc2Γ(2)

+...+hcΓ(n)+hc(n+1)Γ(n+1)+...と

摂動展開します。

初項のΓ(0)はΓ(0)=Sにより明らかに有限

なので,以下のΓ(1)(2),..,Γ(n)が全て有限

にできた,という仮定の下で次のΓ(n+1)も有限

になることを示す,という帰納法に頼って証明

する手法を取りました。 

S,Γには有限な寄与が自明なNL場:B

反ゴーストc~を含む項があり.これらを除き

S~.Γ~とすると,満たされるべき基本的なWT

恒等式はΓ~*Γ~=0という式で与えられる

ことがわかりました。

SとS~.ΓとΓ~は,今の証明では本質的に

同じなので同一視してもよく Γ~の代わりに

Γの展開式:Γ=Γ(0)+hcΓ(1)+hc2Γ(2)+..

+hcΓ(n)+hc(n+1)Γ(n+1)+..をΓ~*Γ~

=0に代入して,Γ(n+1)の発散部分:Γdiv(n+1)

を取り出すと,くりこみ方程式:S~*Γdiv(n+1)

=0に帰着することが導かれました。

そして,このくりこみ方程式に対しては,

次の命題が成立することが証明できます。

※[命題]:「大局が的ゲージ不変でFP

ゴースト数がゼロ,次元が4以下の局所項から

成る,ΦI,c,K~I,Kの汎関数:Xが

くりこみ方程式:S~*­X=0.を満たすとする。

このときXは,裸の作用積分:

0=S[Z31/2μ,..,Z~31/2μ

13-3/2,..]で,Zやviをずらせて得られる

変化分ΔS=δZ(ΔS)+δvi(ΔviS)

=δZ[∂S/∂Z] Z=1Vi=0+δvi[∂S/∂vi]Z=1Vi=0

の形で与えられる。」

仮に,この命題が証明されたとすると,Xが

S~*Γdiv(n+1)=0を満たすΓdiv(n+1)である場合,

この発散が適切な相殺項で吸収され,有効作用Γ

がhc(n+1)のオーダーのΓ(n+1)まで有限となり,

帰納法によるくりこみ可能性の証明が完結する

ことになります。

実際の[命題の証明]においては,結局,

くりこみ可能性の証明はS~*X=0の一般解

Xが,X=δZ(ΔS)+δvi(ΔviS)の形で

与えられる,という純粋に代数的な命題の証明

に帰着することがわかりました。

そうして,くりこみ方程式:S~*X=0の解

  Xに関して.次の定理が成立することが

知られています。

※[定理] 「ΦI,c,K~I,KのFPゴースト数

がゼロの局所多項式から成る汎関数Xで,くりこみ

方程式S~*­X=0.を満たすものは,必ず,

X=Fゲージ不変[ΦI+S~*M[ΦI,c,K~I,K]

の形に書ける。

ここで,Fゲージ不変はΦI=(Aμi)のみで

書かれたゲージ不変な関数で,MはFPゴースト

数が(-1)の任意の汎関数である。」

この形で書かれる汎関数Xがくりこみ方程式:

S~*X=0を満たすこと(解の十分条件)の証明

は,S~のBRS不変性,S~*S~=0,および,

Jacobi恒等式から従う,演算:(S~*)のベキ零性:

つまり,∀Xに対しS~*(S~*X)

=-((1/2)X*(S~*S^)=0.から,容易に

証明できました。 

しかし,証明が自明でない,のは,逆の解と

なるための必要性の方です。

この定理は大変有用なものですが,一般的証明

  は,かなり面倒なので,この必要性の詳細証明は,

既存の文献に譲って,ここでの記述は割愛します。

と書いて,前回までの記事は終わりました。

 

さて,ここからは,今回のその続きです。

XがS~*X=0の解となるための必要要性の

一般的証明は,かなり面倒なので割愛する,と述べ

ましたが,今,必要なのはXが,次元4以下の局所

項から成る大局的ゲージ不変な場合で,この場合

に限れば,次のようにして,解の必要性も容易に

証明できます。以下は,この証明手順です。

※[必要性の証明]:話を明確にするために物質場

φiとしては,ゲージ群:Gのある既約表現に属する

スカラー場のみが存在する系の場合を考えます。

(※もっとも,可約表現の場合や,スピノル場が存在

する場合でも本質的には同じように証明可能です。)

系のゲージ不変なLagrangian密度GIが,

GII)=-(1/4)Fμνaμν

+(Dμφi)μφi-μφiφi-(λ/2)(φiφi)2.

(46)で与えられる場合を考察します。

このとき,外場を付加した作用積分:S~は,S~

=∫d4x[GII)+K~I(δΦI)+K(δ)]

(47)という形に書くことができます。

,ただし,δΦI=DI,δ=(g/2)(×)

です。一方,問題のXは,次元が4以下の局所項から成る

FPゴースト数:NFPが0の大局的ゲージ不変な汎関数

である,と仮定されています。

ところで,外場K:~Iは,NFP=-1で次元は2,

外場:Kaは,NFP=-2で次元は2です。

(※何故なら,dim(L)=4ですが,dim­(c)=1,

dim(g)=0なので,dim(δΦI)=dim(DI)

=2であり,dim(δ)=dim{(g/2)(×)}

=2でぁるからです。

また,一般線形ゲージ中の係数fIはNFP=0

  で次元が1の量であることから,BRS変換:δ

に似たG群に属する変換の演算子δ~を導入して

S~と同様,Xが次のように書けるとします。

つまり,X=∫d4x[~(ΦI)+K~I(δ~ΦI)

+K(δ~)],(48)とします。

未知の演算子δ~は,δ~ΦIが,δ~μ

=∂μ-βabcμ

-γgdabcμ,(49-1),および,δ~φi

=-βφ(ig)c(T)ijφj

-γφ(ig)c(dab)ijj(49-2)

の組で与えられ,ゴースト項の変換がδ~

=β(g/2)(×)=β(g/2)fabcc.

(49-3)と書ける一般形で与えられる,とします。

一見,δ~φiには,δaiのような項が

あってもよいように見えますが,系がφi→ -φi,

ai→ -faiなる変換の下での不変性を持つので,

こうした項の存在は許されません。

(※つまりδ~(-φi)=-δiが成り立つ必要

があるので,δaiのような項は存在不可能です。)

ここで,~(ΦI)は,ΦI=(Aμ,φi)のみの次元

が4以下の関数,γdφφは任意の

係数,dabcはTr(T)に比例する対称不変

テンソル,(dab)ijは,φiの表現行列:(T)ij

abcなどのゲージ群Gの不変テンソルで構成

される(存在すれば)添字が(abij)の不変テンソル

です。

そしてXがくりこみ方程式:S~*X=0を

満たすべき,という要請は,先に(49)で場に対する

変換性を具体的に示したBRS変換に類似した

変換::δ~を,(δX/δK~I)(δ/δΦI)

+(δX/δK)(δ/δc)

=(δ~ΦI)(δ/δΦI)+(δ~)(δ/δc)

δ~B.(50)を満たす演算子と見れば,

XとS~がδX+δ~S~=0,なる式を

満たすべき,ことを意味するとわかります。

※(注13-1):何故なら「くりこみ理論11)」での

任意のF,Gに対するF*Gの定義:(31):

F*G=(δF/δΦI)(δG/δK~I)

+(δF/δc)(δG/δK)

+(-)|F|{(δF/δK~I)(δG/δΦI)

+(δF/δK)(δG/δc)}により,

S~*X=,(δS~/δΦI)(δX/δK~I)

+(δS~/δc)(δX/δKc)

+(-)|S~|{(δS~/δK~I)(δX/δΦI)

+(δS/δK)(δX/δc)}です。

ところが,Xはゴースト数:NFPがゼロ

なので,Grassman偶であり,S~もそうです。

さらに,ΦIもGrassmann偶です。

しかし,cはGrassman奇で外場K~I

FP=-1なのでGrassman奇です。

最後に外場Kは,NFP=-2で,Grassman

  偶です。そして,Grassman数の微分は,右微分

か左微分かの違いがあるため,どちらかに統一

する必要がありますが,偶を奇で微分したり,

奇を偶で微分すると奇で,それ以外の量間で

の微分は偶です。そして奇と奇が反可換で

ある以外は,全て可換です。

それ故,(δS~/δφI)(δX/δK~I)

+(δS~/δc)(δX/δK)

=(δX/K~I)(δS~/δK~I)

+(δX/δK)(δS~/δKca)

=(δ~ΦI)(δS~/δΦI)

+(δ~)(δS~/δc)=δ~S~

が,Grassman数に対する式として

成立します。

また,(-)|S~|{(δS~/δK~I)(δX/δΦI)

+(δS~/δK)(δX/δc)}

=(δΦI)(δX/δΦI)+(δ)(δX/δc)

=δX となりまず。

以上から,S*X=δ~S~+δXであり,

S*X=0は,δ~S~+δX=0と同値

であることがわかりました。

(注13-1終わり※)

このδX+δ~S~=0に,S~の表式:

S~=∫d4x[GII)+K~I(δΦI)

+K(δ)],(47),および,Xの表式:

X=∫d4x[~(ΦI)+K~I(δ~ΦI)

+K(δ~)],(48)を代入すれば,

次の方程式を得ます。

すなわち,δ~(ΦI)-K~Iδ(δ~ΦI)

+Kcaδ(δ~)+δ~GII)

-K~Iδ~(δΦI)+Kcaδ~(δ)

=0.(51)です。

この方程式は,任意のK~I,Kcaについて

成立しなければならない恒等式なので,

δ~(ΦI)+δ~GII)=0,(52)

δδ~δ~δ={δ,δ~}=0.(53)

なる2つの独立な等式が従います。

(53)は,BRS変換δと(47)で定義された

BRSの類似変換δ~が反可換であるという

要請ですが,これはcの上では(49-3)の

δ~=β(g/2)(×)と.δ

=(g/2)(×)から,δ~=βδとなり,

δδ~δ~δ=βcδ2=0となるため,

自動的に満足されます。

しかし,Aμの上では,δ~μ=∂μ

-βabcμ-γgdabcμ,

(49-1)であり,δμ=Dμ=∂μ

-fabcμなので,

δδ~μδ(∂μ-βabcμ

-γgdabcμ)

=(g/2)∂μ(c×c)-βabc{(Dμ)c

+(g/2)μ(c×c)}-γgdabc{Dμ}c

+(g/2)Aμ(×)}であり,

一方では,δ~δμ=δ~(Dμ)

=βc(g/2)Dμ(c×c)a ですから,反可換で

要求される,δδ~μδ~δμ=0.

を満たすには,β=βc,0,かつ,γ=0.(54)

が必要十分です。

さらに,スカラー場:φlの上で成立するため

には,βφ=β(55)の条件の他,不変テンソル:

(dab)ijが,(T)ij(dbd)jk=(T)ij(dad)jk

=fabc(dcd)jk.(56)を満たすことが必要

となります。

※(注13-2):何故なら,(49-2)から,

δ~φi=-βφ(ig)c(T)ijφj

-γφ(ig)c(dab)ijj であり,

一方,δφi=-(ig)c(T)ijφjです。

そして,δ,δ~は,ゴースト場:cとは

反可換である,と考えられるので,

δ(cφi)=(δ-cδφj,

δ~(cφi)=(δ~-cδ~φj

です。それ故,δδ~φl

=-βφ(ig)(δ)(T)ijφj

+βφ(ig)(T)ij(δφj)

-γφ(ig)(δ)(dab)ijj

=(-ig2/2)βφ(×c)(T)ijφj

-(ig)2βφ(T)ij(T)jkφk

-(ig2/2)γφ(c×c)(dab)ijj

他方,δ~δφi

δ~|(-ig)c(T)ijφj}

=-ig{(δ~)(T)ijφj-c(T)ij

×(δ~φj)

=-(ig2/2)βc(c×c)(T)ijφj

-(ig)2βφ(T)ij(T)jkφk

-γφ(ig)2(T)ij(dbd)jkk)

ですから,δ~δφiδδ~φi=0

となるには,cがFPゴーストで,スピンゼロ

なのにFermionという,奇妙な反交換する場

で,c=-cであることを考慮

すると,δ~δφiδδ~φi

=(-ig2/2)(βc+βφ)(×c)(T)ijφj

-βφ(ig)2[T.T]ijφj

-(ig2/2)γφ(c×c)(dab)ijj

-(ig)2γφ((T)ij(dbd)jkk

と書けます。

ところが.[T,T]=ifabccであり,

定義により,(×)=fabcなので,

[T,T]ijφj

=ifabc(T)ijφj

=i(×)(Ta)ijφjです。

故に,β=βφであれば,右辺の第1項と

第2項は相殺して消えます。

第3項については,

γφ(-ig2/2]fabc(dad)ikj

-γφ(ig)2(T)ij(dcd)jkk}

=-(γφ2)[(i/2)fabc(dcd)ik

-(T)ij(dbd)jk](ck)=0

であればいいのですが,(ck)

がfabcと同じくa,bの交換について

反対称なのでこれらは独立でなく恒等式

の未定係数法を使うため,1つの独立な組

(a,b)の係数を取ってゼロとして,

{(i/2)fabc(dcd)ik-(T)ij(dbd)jk]

-{(i/2)fbac(dcd)ik-(T)ij(dad)jk]

=0 が得られます。

結局,(T)ij(dbd)jk -(T)ij(dad)jk

=,ifabc(dcd)jk となるべきであること

がわかりました。

しかし,この結論は,

(T)ij(dbd)jk=(T)ij(dad)jk

=fabc(dcd)jk.(56)を,満たす必要がある,

とされていた,参考文献の内容と違います。(?)

(注13-2終わり※)

いずれにしろ,(dab)ijは,さらに分解されて

(dab)ik=(T)ij(d)jk.(57)のようにできる

ことが示唆されています。(※ここで,同じ記号

dを使いましたが(57)両辺のdは別定義です。)

こうして,得られた(56),(57)および,βφ=β

=β,かつγ=0が,δδ~が反可換で

あることから得られたδ~の表現係数に関する

全情報です。

次に,δ~(ΦI)+δ~GII)=0,(52)を

  解いて.~(ΦI)の形を決める必要があります。

まず,(49)で具体的に与えたδ~の変換は,元

のBRS変換:δに係数;β=β=βφで比例

する部分を抜き出して.その他との和に分割すると,

δ~=βδ+(γ-β)(∂μ)(δ/δAμ)

-γφ{igc(T)ij(d)jk}(δ/δφi)

(58)となります。

そして,これの右辺第2項,第3項の微分演算

  は(∂μ)(δ/δAμ)

=[(Dμ)(δ/δAμ),Aν(δ/δAν)]

=[δ,Aμ(δ/δAμ)].(59-1)

{igc(T)ij(d)jk}(δ/δφi)

=[igc(T)ijφj(δ/δφi).

(d)jkk(δ/δφi)]

=[δ,(d)ijj(δ/δφi)].(59-2)

のように,BRS変換:δと何らかの交換関係

の形に書けます。

それ故,δ~=βδ

  +[δ,(γ-β)Aμ(δ/δAμ)

-γφ(d)ijj(δ/δφi)] となります。

したがって,δ~(ΦI)+δ~GII)

=0は,δGII)=0なので,δ~(ΦI)

δ{(β-γ)Aμ(∂GI/∂Aμ)

+γφ(d)ijj}(∂GI/∂φi)}.(60)

を意味します。

それ故,明らかに。右辺の括弧:{ }の中は(52)

を満たす~(ΦI)を与える1つの特殊解です。

(52)に対する~(ΦI)の一般解を得るには,

斉次(同次)方程式δ~(ΦI)=0の一般解を得る

必要がありますが.δが,ΦI=(Aμ,φi)の上

ではゲージ変換に過ぎないので,同次方程式の

一般解はゲージ不変な一般関数です。

結局,δ~(ΦI)+δ~GII)=0(52)を

満たす~(ΦI)の一般解は,~(ΦI)

=fゲージ不変I)+β-γ)Aμ(∂GI/∂Aμ)

+γφ(d)jk}(∂GI/∂φi).(61)

で与えられる,ことがわかります。

ところで,~(ΦI)には次元が4以下である,

という条件があったのでfゲージ不変I)の一般形

は,fゲージ不変I)=α{(-1/4)Fμνaμν}

+αφ{(Dμφi)μφi}-α2φiφi)

-αλ{(λ/2)(φiφi)2}.(62)で与えられます。

結局,くりこみ方程式:S~*X=0の解Xは,

­X=∫d4x[~(ΦI)+K~I(δ~ΦI)

+K(δ~)](48)である,としていたので,

X=∫d4x[fゲージ不変I)

+β{K~I(δΦI)+Ka(δ)}

+(β-γ){Aμ(∂GI/∂Aμ)

-K~μ(∂μ)}

+γφ(d)ijj{∂(GI+K~iδφi)/∂φj}].

(63) と書けることがわかりました。

 

途中ですが長くなったので,今回はここで

終わります。

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

 

くりこみ理論(次元正則化)(13)

「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

前回は,大局的ゲージ不変という対称性を

持った系の作用積分Sと,その有効作用Γを

裸の場を変数として構成した裸のS0とΓ0

において変数の裸の場を,くりこんだ場と

くりこみ定数Z,viで表わしたものに置換

する,という操作によって,くりこんだ有効

作用Γが有限になる,という手法で理論が

ゲージ不変性を保持したままの正則化に

よって,くりこみ可能となることの証明を

志向しました。

以下,これまでの手順の要約を記述します。

まず,上記の証明ため,Γ0の変数の裸の量に,

くりこんだ量による表式を代入して,計算

すべきΓを,Γ=Γ(0)+hcΓ(1)+hc2Γ(2)

+...+hcΓ(n)+hc(n+1)Γ(n+1)+...と

摂動展開します。

初項のΓ(0)はΓ(0)=Sにより明らかに有限

なので,以下のΓ(1)(2),..,Γ(n)が全て有限

にできた,という仮定の下で次のΓ(n+1)も有限

になることを示す,という帰納法に頼って証明

する手法を取りました。 

S,Γには有限な寄与が自明なNL場:B

反ゴーストc~を含む項があり.これらを除き

S~.Γ~とすると,満たされるべき基本的なWT

恒等式はΓ~*Γ~=0という式で与えられる

ことがわかりました。

SとS~.ΓとΓ~は,今の証明では本質的に

同じなので同一視してもよく Γ~の代わりに

Γの展開式:Γ=Γ(0)+hcΓ(1)+hc2Γ(2)+..

+hcΓ(n)+hc(n+1)Γ(n+1)+..をΓ~*Γ~

=0に代入して,Γ(n+1)の発散部分:Γdiv(n*1)

を取り出すと,くりこみ方程式:S~*Γdiv(n*1)

=0に帰着することが導かれました。

そして,このくりこみ方程式に対しては,

次の命題が成立することが証明できます。

※[命題]:「大局が的ゲージ不変でFP

ゴースト数がゼロ,次元が4以下の局所項から

成る,ΦI,c,K~I,Kの汎関数:Xが

くりこみ方程式:S~*­X=0.を満たすとする。

このときXは,裸の作用積分:

0=S[Z31/2μ,..,Z~31/2μ

13-3/2,..]で,Zやviをずらせて得られる

変化分ΔS=δZ(ΔS)+δvi(ΔviS)

=δZ[∂S/∂Z] Z=1Vi=0+δvi[∂S/∂vi]Z=1Vi=0

の形で与えられる。」

仮に,この命題が証明されたとすると,Xが

S~*Γdiv(n+1)=0を満たすΓdiv(n+1)である場合,

この発散が適切な相殺項で吸収され,有効作用Γ

がhc(n+1)のオーダーのΓ(n+1)まで有限となり,

帰納法によるくりこみ可能性の証明が完結する

ことになります。

実際の[命題の証明]においては,結局,

くりこみ可能性の証明はS~*X=0の一般解

Xが,X=δZ(ΔS)+δvi(ΔviS)の形で

与えられる,という純粋に代数的な命題の証明

に帰着することがわかりました。

そうして,くりこみ方程式:S~*X=0の解

  Xに関して.次の定理が成立することが

知られています。

※[定理] 「ΦI,c,K~I,KのFPゴースト数

がゼロの局所多項式から成る汎関数Xで,くりこみ

方程式S~*­X=0.を満たすものは,必ず,

X=Fゲージ不変[ΦI+S~*M[ΦI,c,K~I,K]

の形に書ける。

ここで,Fゲージ不変はΦI=(Aμi)のみで

書かれたゲージ不変な関数で,MはFPゴースト

数が(-1)の任意の汎関数である。」

この形で書かれる汎関数Xがくりこみ方程式:

S~*X=0を満たすこと(解の十分条件)の証明

は,S~のBRS不変性,S~*S~=0,および,

Jacobi恒等式から従う,演算:(S~*)のベキ零性:

つまり,∀Xに対しS~*(S~*X)

=-((1/2)X*(S~*S^)=0.から,容易に

証明できました。 

しかし,証明が自明でない,のは,逆の解と

なるための必要性の方です。

この定理は大変有用なものですが,一般的証明

  は,かなり面倒なので,この必要性の詳細証明は,

既存の文献に譲って,ここでの記述は割愛します。

と書いて,前回までの記事は終わりました。

 

さて,ここからは,今回のその続きです。

XがS~*X=0の解となるための必要要性の

一般的証明は,かなり面倒なので割愛する,と述べ

ましたが,今,必要なのはXが,次元4以下の局所

項から成る大局的ゲージ不変な場合で,この場合

に限れば,次のようにして,解の必要性も容易に

証明できます。以下は,この証明手順です。

※[必要性の証明]:話を明確にするために物質場

φiとしては,ゲージ群:Gのある既約表現に属する

スカラー場のみが存在する系の場合を考えます。

(※もっとも,可約表現の場合や,スピノル場が存在

する場合でも本質的には同じように証明可能です。)

系のゲージ不変なLagrangian密度GIが,

GII)=-(1/4)Fμνaμν

+(Dμφi)μφi-μφiφi-(λ/2)(φiφi)2.

(46)で与えられる場合を考察します。

このとき,外場を付加した作用積分:S~は,S~

=∫d4x[GII)+K~I(δΦI)+K(δ)]

(47)という形に書くことができます。

,ただし,δΦI=DI,δ=(g/2)(×)

です。一方,問題のXは,次元が4以下の局所項から成る

FPゴースト数:NFPが0の大局的ゲージ不変な汎関数

である,と仮定されています。

ところで,外場K:~Iは,NFP=-1で次元は2,

外場:Kaは,NFP=-2で次元は2です。

(※何故なら,dim(L)=4ですが,dim­(c)=1,

dim(g)=0なので,dim(δΦI)=dim(DI)

=2であり,dim(δ)=dim{(g/2)(×)}

=2でぁるからです。

また,一般線形ゲージ中の係数fIはNFP=0

  で次元が1の量であることから,BRS変換:δ

に似たG群に属する変換の演算子δ~を導入して

S~と同様,Xが次のように書けるとします。

つまり,X=∫d4x[~(ΦI)+K~I(δ~ΦI)

+K(δ~)],(48)とします。

未知の演算子δ~は,δ~ΦIが,δ~μ

=∂μ-βabcμ

-γgdabcμ,(49-1),および,δ~φi

=-βφ(ig)c(T)ijφj

-γφ(ig)c(dab)ijj(49-2)

の組で与えられ,ゴースト項の変換がδ~

=β(g/2)(×)=β(g/2)fabcc.

(49-3)と書ける一般形で与えられる,とします。

一見,δ~φiには,δaiのような項が

あってもよいように見えますが,系がφi→ -φi,

ai→ -faiなる変換の下での不変性を持つので,

こうした項の存在は許されません。

(※つまりδ~(-φi)=-δiが成り立つ必要

があるので,δaiのような項は存在不可能です。)

ここで,~(ΦI)は,ΦI=(Aμ,φi)のみの次元

が4以下の関数,γdφφは任意の

係数,dabcはTr(T)に比例する対称不変

テンソル,(dab)ijは,φiの表現行列:(T)ij

abcなどのゲージ群Gの不変テンソルで構成

される(存在すれば)添字が(abij)の不変テンソル

です。

そしてXがくりこみ方程式:S~*X=0を

満たすべき,という要請は,先に(49)で場に対する

変換性を具体的に示したBRS変換に類似した

変換::δ~を,(δX/δK~I)(δ/δΦI)

+(δX/δK)(δ/δc)

=(δ~ΦI)(δ/δΦI)+(δ~)(δ/δc)

δ~B.(50)を満たす演算子と見れば,

XとS~がδX+δ~S~=0,なる式を

満たすべき,ことを意味するとわかります。

※(注13-1):何故なら「くりこみ理論11)」での

任意のF,Gに対するF*Gの定義:(31):

F*G=(δF/δΦI)(δG/δK~I)

+(δF/δc)(δG/δK)

+(-)|F|{(δF/δK~I)(δG/δΦI)

+(δF/δK)(δG/δc)}により,

S~*X=,(δS~/δΦI)(δX/δK~I)

+(δS~/δc)(δX/δKc)

+(-)|S~|{(δS~/δK~I)(δX/δΦI)

+(δS/δK)(δX/δc)}です。

ところが,Xはゴースト数:NFPがゼロ

なので,Grassman偶であり,S~もそうです。

さらに,ΦIもGrassmann偶です。

しかし,cはGrassman奇で外場K~I

FP=-1なのでGrassman奇です。

最後に外場Kは,NFP=-2で,Grassman

  偶です。そして,Grassman数の微分は,右微分

か左微分かの違いがあるため,どちらかに統一

する必要がありますが,偶を奇で微分したり,

奇を偶で微分すると奇で,それ以外の量間で

の微分は偶です。そして奇と奇が反可換で

ある以外は,全て可換です。

それ故,(δS~/δφI)(δX/δK~I)

+(δS~/δc)(δX/δK)

=(δX/K~I)(δS~/δK~I)

+(δX/δK)(δS~/δKca)

=(δ~ΦI)(δS~/δΦI)

+(δ~)(δS~/δc)=δ~S~

が,Grassman数に対する式として

成立します。

また,(-)|S~|{(δS~/δK~I)(δX/δΦI)

+(δS~/δK)(δX/δc)}

=(δΦI)(δX/δΦI)+(δ)(δX/δc)

=δX となりまず。

以上から,S*X=δ~S~+δXであり,

S*X=0は,δ~S~+δX=0と同値

であることがわかりました。

(注13-1終わり※)

このδX+δ~S~=0に,S~の表式:

S~=∫d4x[GII)+K~I(δΦI)

+K(δ)],(47),および,Xの表式:

X=∫d4x[~(ΦI)+K~I(δ~ΦI)

+K(δ~)],(48)を代入すれば,

次の方程式を得ます。

すなわち,δ~(ΦI)-K~Iδ(δ~ΦI)

+Kcaδ(δ~)+δ~GII)

-K~Iδ~(δΦI)+Kcaδ~(δ)

=0.(51)です。

この方程式は,任意のK~I,Kcaについて

成立しなければならない恒等式なので,

δ~(ΦI)+δ~GII)=0,(52)

δδ~δ~δ={δ,δ~}=0.(53)

なる2つの独立な等式が従います。

(53)は,BRS変換δと(47)で定義された

BRSの類似変換δ~が反可換であるという

要請ですが,これはcの上では(49-3)の

δ~=β(g/2)(×)と.δ

=(g/2)(×)から,δ~=βδとなり,

δδ~δ~δ=βcδ2=0となるため,

自動的に満足されます。

しかし,Aμの上では,δ~μ=∂μ

-βabcμ-γgdabcμ,

(49-1)であり,δμ=Dμ=∂μ

-fabcμなので,

δδ~μδ(∂μ-βabcμ

-γgdabcμ)

=(g/2)∂μ(c×c)-βabc{(Dμ)c

+(g/2)μ(c×c)}-γgdabc{Dμ}c

+(g/2)Aμ(×)}であり,

一方では,δ~δμ=δ~(Dμ)

=βc(g/2)Dμ(c×c)a ですから,反可換で

要求される,δδ~μδ~δμ=0.

を満たすには,β=βc,0,かつ,γ=0.(54)

が必要十分です。

さらに,スカラー場:φlの上で成立するため

には,βφ=β(55)の条件の他,不変テンソル:

(dab)ijが,(T)ij(dbd)jk=(T)ij(dad)jk

=fabc(dcd)jk.(56)を満たすことが必要

となります。

※(注13-2):何故なら,(49-2)から,

δ~φi=-βφ(ig)c(T)ijφj

-γφ(ig)c(dab)ijj であり,

一方,δφi=-(ig)c(T)ijφjです。

そして,δ,δ~は,ゴースト場:cとは

反可換である,と考えられるので,

δ(cφi)=(δ-cδφj,

δ~(cφi)=(δ~-cδ~φj

です。それ故,δδ~φl

=-βφ(ig)(δ)(T)ijφj

+βφ(ig)(T)ij(δφj)

-γφ(ig)(δ)(dab)ijj

=(-ig2/2)βφ(×c)(T)ijφj

-(ig)2βφ(T)ij(T)jkφk

-(ig2/2)γφ(c×c)(dab)ijj

他方,δ~δφi

δ~|(-ig)c(T)ijφj}

=-ig{(δ~)(T)ijφj-c(T)ij

×(δ~φj)

=-(ig2/2)βc(c×c)(T)ijφj

-(ig)2βφ(T)ij(T)jkφk

-γφ(ig)2(T)ij(dbd)jkk)

ですから,δ~δφiδδ~φi=0

となるには,cがFPゴーストで,スピンゼロ

なのにFermionという,奇妙な反交換する場

で,c=-cであることを考慮

すると,δ~δφiδδ~φi

=(-ig2/2)(βc+βφ)(×c)(T)ijφj

-βφ(ig)2[T.T]ijφj

-(ig2/2)γφ(c×c)(dab)ijj

-(ig)2γφ((T)ij(dbd)jkk

と書けます。

ところが.[T,T]=ifabccであり,

定義により,(×)=fabcなので,

[T,T]ijφj

=ifabc(T)ijφj

=i(×)(Ta)ijφjです。

故に,β=βφであれば,右辺の第1項と

第2項は相殺して消えます。

第3項については,

γφ(-ig2/2]fabc(dad)ikj

-γφ(ig)2(T)ij(dcd)jkk}

=-(γφ2)[(i/2)fabc(dcd)ik

-(T)ij(dbd)jk](ck)=0

であればいいのですが,(ck)

がfabcと同じくa,bの交換について

反対称なのでこれらは独立でなく恒等式

の未定係数法を使うため,1つの独立な組

(a,b)の係数を取ってゼロとして,

{(i/2)fabc(dcd)ik-(T)ij(dbd)jk]

-{(i/2)fbac(dcd)ik-(T)ij(dad)jk]

=0 が得られます。

結局,(T)ij(dbd)jk -(T)ij(dad)jk

=,ifabc(dcd)jk となるべきであること

がわかりました。

しかし,この結論は,

(T)ij(dbd)jk=(T)ij(dad)jk

=fabc(dcd)jk.(56)を,満たす必要がある,

とされていた,参考文献の内容と違います。(?)

(注13-2終わり※)

いずれにしろ,(dab)ijは,さらに分解されて

(dab)ik=(T)ij(d)jk.(57)のようにできる

ことが示唆されています。(※ここで,同じ記号

dを使いましたが(57)両辺のdは別定義です。)

こうして,得られた(56),(57)および,βφ=β

=β,かつγ=0が,δδ~が反可換で

あることから得られたδ~の表現係数に関する

全情報です。

次に,δ~(ΦI)+δ~GII)=0,(52)を

  解いて.~(ΦI)の形を決める必要があります。

まず,(49)で具体的に与えたδ~の変換は,元

のBRS変換:δに係数;β=β=βφで比例

する部分を抜き出して.その他との和に分割すると,

δ~=βδ+(γ-β)(∂μ)(δ/δAμ)

-γφ{igc(T)ij(d)jk}(δ/δφi)

(58)となります。

そして,これの右辺第2項,第3項の微分演算

  は(∂μ)(δ/δAμ)

=[(Dμ)(δ/δAμ),Aν(δ/δAν)]

=[δ,Aμ(δ/δAμ)].(59-1)

{igc(T)ij(d)jk}(δ/δφi)

=[igc(T)ijφj(δ/δφi).

(d)jkk(δ/δφi)]

=[δ,(d)ijj(δ/δφi)].(59-2)

のように,BRS変換:δと何らかの交換関係

の形に書けます。

それ故,δ~=βδ

  +[δ,(γ-β)Aμ(δ/δAμ)

-γφ(d)ijj(δ/δφi)] となります。

したがって,δ~(ΦI)+δ~GII)

=0は,δGII)=0なので,δ~(ΦI)

δ{(β-γ)Aμ(∂GI/∂Aμ)

+γφ(d)ijj}(∂GI/∂φi)}.(60)

を意味します。

それ故,明らかに。右辺の括弧:{ }の中は(52)

を満たす~(ΦI)を与える1つの特殊解です。

(52)に対する~(ΦI)の一般解を得るには,

斉次(同次)方程式δ~(ΦI)=0の一般解を得る

必要がありますが.δが,ΦI=(Aμ,φi)の上

ではゲージ変換に過ぎないので,同次方程式の

一般解はゲージ不変な一般関数です。

結局,δ~(ΦI)+δ~GII)=0(52)を

満たす~(ΦI)の一般解は,~(ΦI)

=fゲージ不変I)+β-γ)Aμ(∂GI/∂Aμ)

+γφ(d)jk}(∂GI/∂φi).(61)

で与えられる,ことがわかります。

ところで,~(ΦI)には次元が4以下である,

という条件があったのでfゲージ不変I)の一般形

は,fゲージ不変I)=α{(-1/4)Fμνaμν}

+αφ{(Dμφi)μφi}-α2φiφi)

-αλ{(λ/2)(φiφi)2}.(62)で与えられます。

結局,くりこみ方程式:S~*X=0の解Xは,

­X=∫d4x[~(ΦI)+K~I(δ~ΦI)

+K(δ~)](48)である,としていたので,

X=∫d4x[fゲージ不変I)

+β{K~I(δΦI)+Ka(δ)}

+(β-γ){Aμ(∂GI/∂Aμ)

-K~μ(∂μ)}

+γφ(d)ijj{∂(GI+K~iδφi)/∂φj}].

(63) と書けることがわかりました。

 

途中ですが長くなったので,今回はここで

終わります。

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

 

 

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2020年5月30日 (土)

くりこみ理論(次元正則化)(12)

「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

前回は,第7章BPHZくりこみで,

(対称性とくりこみ)の項において,大局的

ゲージ不変性を有する理論が,その対称性

を保持したまま,次元正則化で,くりこみ

可能であることを示すことを目的に考察

しました。

そのため,系のLagrangianに外場を付加

した作用積分Sとその有効作用Γを裸の場で

構成した裸の作用:S0と裸の有効作用Γ0

おける.裸の場をくりこんだ場とくりこみ定数

Zとviで表わしたものを代入して置き換える,

という操作で,これらが,くりこまれた有限なS

とΓに帰着する.ことを摂動論的に証明するため

に導入したPoisson括弧に類似した演算*を

用いて,有効作用ΓからBとc~への自明な

依存性を除いた部分:Γ~が満足すべき基本的

WT方程式が.Γ~*Γ~=0.(34)という式の形

で与えられることを見たところで,記事を

終えました。

今回は,その続きです。

前回で準備が整ったので,以下,本題の

有効作用Γ(実は,裸のΓ0 に同じ)のhcによる

摂動ベキ展開:Γ=Γ(0)+hcΓ(1)+hc2Γ(2)+.

(25)の各項:hcΓ(n)が有限になる,ということ

を,先のWT恒等式:Γ~*Γ~=0(34)に基づいて,

帰納法で証明します。

(ⅰ)まず,n=0のtreeレベルでの有効作用

Γ(0)ですが,これは,Planck定数hcを含む量子

効果が全くない古典的な作用積分の

(0)S[Φ~,K;g,,α]=S.(24)に等しく,

それ故,明らかに有限です。

しかも,ΓとΓ~の違いは,(27)のΓ=Γ~

+∫d4x[BΦ+(α/2)B]という

Γ~の定義式にあるように,treeレベルの寄与を

与える項のみですから,初項Γ(0)ではΓ~をΓ

の代わりに用いて論じてもよいということに

なります。さらに,Γ(0)=S(0)=S,Γ~(0)=S~

より,Γ-Γ~=Γ(0)-Γ~(0)=S-S~であり,

この差はtreeレベルと考えられるので.n≧1

のloop積分を含む項ではΓ~(n)=Γ(n)です。 

(ⅱ)次に,n≧1のhcのオーダーまで,

くりこみ定数Z,および,viを,それらをベキ

展開した.(Z)n=1+hc(1)+hc2(2) +..

+hc(n),および,(vi)=0+hci(1)

c2i(2) +..+hci(n).(35)に置き換えて

Γ(0)(1)(2),..Γ(n)が全て有限にできた,

と仮定します。そこで.Zやviに,上記の(35)

式,つまり,((n+1)次以降のZ(n+k),vi(n+k)

(k≧1)を全てゼロとしたもの.に置換して

(23)のS0S[Φ0~,K0;g0,0,α0]

=S[Z31/2μ,..,Z~31/2μ;Z13-3/2,..]

に,Zとして(Z)を.viとして(vi)を代入

した作用積分:(0)S[(Z3)1/μ,....,

(Z~3)1/2μ;(Z1)(Z3)-3/2,.]

=S(0)+hc(1)+..+hc(n)

+hc(n+1)(S(n+1))+hc(n+2)(S((n+2))

+… (36)に基づき,hc(n+1)のオーダーの

有効作用Γ(n+1)を計算します。

(※上記の(36)の展開において,hの(n次以下

のS(m)(m≦n)を.(S(m))としなかった理由

は,Zやviの(n+1)次以降の値:Z(n+k)

i(n+k)(k≧1)を,どう取っても,それらに影響

しないからです。※)

 一方,(n+1)次以降のS(n+k)(k≧1)は,

それらZ(n+k),vi(n+k)(k≧1)に依存します。

しかし,(S(n+k))(k≧1)の方は,Z(n+k)=0,

i(n+k)=0(k≧1)と取ったときの相殺項に相当

するものです。

特に,(S(n+1))はhcのn次以下のZ(m),vi(m)

(m≦n)の積で表わされる,hcの(n+1)次の相殺項

となるもの.を意味します。

(※例えば,Aμの4次項:-(1/4)g02(×)2

=-(1/4)Z123-12(μ×ν)2からは,

1(m)Zi(k)(Z3(l))(ただし,m+k+pl

=n+1,0≦m,k,l,p≦n)の係数を持つ,,,

(n+1)次の相殺項が現われます。

何故なら,例えばZ3-1=(1+hc3(1)+hc23(2)

+..)-1=1-hc3(1)+(hc2/2)Z3(2)-.etc.

です。※)

さて,Γ(n+1)の計算は,帰納法の仮定により,

Γ(m)(m≦n)が全て有限ですから,それらに効く

各々のFeynmanグラフにおいて全ての内部グラフ

は既に有限になっており,出現する可能な発散は,

最後の一番外側のloop積分を実行したとき初めて

現われるもの,つまり,「overallの発散」のみで

ある,と,考えられます。

そして,hc(n+1)のオーダーでoverallの発散

が現われるグラフは,もちろん,loop積分が1個

以上はあるので,その内部にはn次以下の相殺項

のS(m)(m≦n)しか,含むことはできず,そこで

Zやviの(n+1)次以上の項;Z(n+k)やvi(n+k)

(k≧1)の取り方には依存しません。

それ故,このoverallの寄与の総和を

Γoverall(n+1)m=0n(m)]と記すことにすれば,

n次の作用積分:(0)S[(Z3)1/μ,

....,(Z~3)1/2μ;(Z1)(Z3)-3/2,.]

に基づく(n+1)次のΓ(n+1)項の発散部分

は,Γdiv(n+1)= Γoverall(n+1)m=0n(m)]

+(S(n+1))(37)と表わせます。

ただし,右辺の(S(n+1))は,n次以下の,

(m),vi(m)(m≦n)の積のみで作られる

(n+1)次の相殺項です。

ここで,重要な点はoverallの発散:

Γdiv(n+1)は,以前「BPHZくりこみ」の

項で述べたように,外線運動量に関して有限次

までで,場の次元数を数えると,4次以下の局所

的項しか現われない。ということです。

※(注12-1):過去記事「くりこみ理論(7)では,

クラフ:Γの見掛けの発散次数ω(Γ)を与える

公式:ω(Γ)=4-E-(3/2)E+Σniδi(7)

により,ω(Γ)≧0となって発散するグラフΓ

は,E+(3/2)E(外線場の次元)≦4.(8)の

場合のみです。と記述しました。

それ故,今のdim(iint)≦4の場合にω(Γ)≧0

で発散する条件は,E+(3/2)E≦4です。

(注12-1終わり※)

さて,(37)の(S(n+1))も,もちろん相殺項で

発散項ですから,系の裸のLagrangianの作用積分:

0と同様,上記の性質を持つので,(37)のΓdiv(n+1)

も次元4以下の局所的項のみから成っています。

このような局所的項の積分形で与えられる

汎関数を一般に,局所的汎関数と呼びます。

一方,WT恒等式:Γ~*Γ~=0 (34)は,hcの値

に依らず(Zやviの値にも依らず)成立する式です。

つまり,これはhcについての恒等式ですから,Γ~を

cのベキで摂動展開して,左辺のΓ~*Γ~に代入し

c(n+1)の項を取り出すとき,その係数はゼロです。

つまり,Γ~(0)*Γ~(n+1)+Γ~(1)*Γ~(n)

+Γ~(2)*Γ~(n-1)+..=0.(38) が成立します。

先述のようにΓ~()=Γ(m)(m≧1)であり,

そして,左辺の第2項以下は,帰納法の仮定により

有限です。したがって,この式の発散部分のみを

取り出せば,それは左辺のΓ~(0)*Γdiv(n+1)であり

右辺の0の中には,もちろん発散部分はありません。

(※この発散部分は,今の次元正則化の場合,

時空の次元をdとすると,(d-4)-(k≧1)の形

の極の項であり,1つのloop積分で1/(d-4)の

特異性は1次ずつしか出ないのでΓ(n+1)の特異性

は1/(d-4),1/(d-4)2,..1/(d-4)(n+1)まで

です。※)

そして,Γ~(0)=S~(0)=S~ですから,結局,

S~*Γdiv(n+1)=0.(39)なる式を得ます。

この式は,Γ(n+1)にどのような発散が現われ

得るか?を規定する方程式であり,一般に,

「くりこみ方程式(renormalization equation)」

と呼ばれています。

このくりこみ方程式に対しては,次の命題が

成立することを証明できます。

※[命題]:「大局的ゲージ不変でFPゴースト数が

ゼロ,次元が4以下の局所項から成る,ΦI,c,K~I,

の汎関数:Xがくりこみ方程式:S~*­X=0.

(40)を満たすとする。このときXは,(23) の裸の

作用積分:S0=S[Z31/2μ,..,Z~31/2μ

13-3/2,..]で,Zやviをずらせて得られる

変化分;ΔS=δZ(ΔS)+δvi(ΔviS)

=δZ[∂S/∂Z] Z=1Vi=0+δvi[∂S/∂vi]Z=1Vi=0

(41)の形で与えられる。

ただし,SとS~の差はtreeレベルで,その

差は,Zやviには依らないので上記の(41)では

SをS~に置き換えて同一視してもよい。」

 

そして,仮に,この命題が証明されたとすると

今のXが,S~*Γdiv(n+1)=0を満たすΓdiv(n+1)

である場合,これがΓdiv(n+1)=α(n+1)(ΔS)

+βi(n+1)viS)の形に書けることを意味します。

ところが,この形の発散項は,Zやviを(35)

のn次までの(Z)や,(vi)から次に定義する値:

(Z)n+1=(Z)+hc(n+1)(n+1),および,(vi)n+1

=(vi),+hc(n+1)i(n+1).(42)へとずらした

ときに生じるhc(n+1)のオーダーの新たな相殺項:

(n+1)-(S(n+1))=Z(n+1)S)

+vi(n+1)viS)(43)により,Z(n+1)=-α(n+1),

かつ,vi(n+1)=-βi(n+1)と選べば,丁度. Γdiv(n+1)

が吸収されます。

それ故,(42)の(Z)n+1,および,(vi)n+1を(23)

の作用:S0に代入した作用:(S0)n+1に基づいた

有効作用Γは,hc(n+1)のオーダーのΓ(n+1)まで

有限となり,帰納法によるくりこみ可能性の証明

が完結したことになります。

では,以下,実際に[命題の証明]です。

[証明]:結局,くりこみ可能性の証明は

くりこみ方程式:S~*X=0(40)の一般解X

が,X=δZ(ΔS)+δvi(ΔviS)(41),

の形で与えられる,という純粋に代数的な命題

の証明に帰着することがわかりました。

くりこみ方程式:S~*X=0の解Xに関しては.

次元が4以下,大局的ゲージ不変という制限の

ない,次の定理が成立することが知られています。

[定理] 「ΦI,c,K~I,KのFPゴースト数

がゼロの局所多項式から成る汎関数Xで,くりこみ

方程式S~*­X=0.(40)を満たすものは,必ず,

X=Fゲージ不変[ΦI+S~*M[ΦI,c,K~I,K]

(44)の形に書ける。

ここで,Fゲージ不変はΦI=(Aμi)のみで書かれた

ゲージ不変な関数で,MはFPゴースト数が(-1)

の任意の汎関数である。

(44)の形で書かれる汎関数Xがくりこみ方程式:

S~*X=0を満たすこと(解の十分条件)は,S~の

BRS不変性,S~*S~=0,および,Jacobi恒等式

から従う,演算:(S~*)のベキ零性:つまり,

∀Xに対しS~*(S~*X)=-((1/2)X*(S~*S^)

=0.(45)から,自明です。

すなわち,∀F,GについてF*G~

=(-)(|F|+1)G*Fという*演算の対称性から,

GがFに等しいならF*F=-F*Fとなり,,

F*F=0が成立するので,S~*S~=0は自明

です。

一方,Jacobi恒等式から,S~*(S~*X)

+(-)|X|S~(X*S~)

+(-)2(|X|+1)X*(S~*S~)=0ですが,

S~はGrassmann偶なので,X*S~=-S~*Xであり,

XはFPゴースト数-1)でGrassman奇ですから,

2S~*(S~*X)=-X*(S~*S~)=0

が得られます。

それ故,特にS~*(S~*M)=0です。

また,FがΦIのみの関数であれば,

S~*F=(δS~/δK~I)(δF/δΦI)

+(δS~/δK)(δF/δc)

+(-)|S~|{(δF/δK~I)(δS~/δΦI)

+(δF/δK)(δS~/δc)}

=(δΦI)(δF/δΦI)=δFです。

そこで,Fがゲージ不変な関数:Fゲージ不変

なら,それは,BRS不変なので右辺はゼロです。

つまり,S~*Fゲージ不変=0です。

したがって,X=Fゲージ不変+S~*Mの形なら,

S~*X=S~*Fゲージ不変+S~*(S~*M)=0

となります。

以上から,(44)の形のXがくりこみ方程式

S~*X=0の解となるための十分条件を満たす

ことが証明されました。

しかし,証明が自明でない,のは逆の解となる

ための必要条件の方です。

この定理は過去記事「ゲージ場の理論(33)」

で記述した,第5章の§5-10で述べた観測可能量

の一般形に関する定理:§5-10(23)を,外場項:K~I,

を含む場合に拡張したものに相当し,大変有用

なものですが,一般的証明はかなり面倒なので,この

必要性の詳細証明は,観測可能量の定理の場合と同様,

既存の文献に譲って,ここでの記述は割愛します。

 

(※(注12-2):載)過去記事「ゲージ場の量子論(33)」

から,必要参照部分を抜粋して再掲します。

(※再掲開始)[定理]:「Heisenberg場の多項式で

与えられる局所的観測可能量=BRS不変な局所

演算子:Aは次の形を持つ。

(ⅰ)Aの持つFPゴースト数:NFPが負ならば,

Aは零演算子である。すなわち,このとき,ある

演算子Mにより.A=[Q,M]と書ける。

(ⅱ)Aの持つFPゴースト数がゼロならば,

A=Fゲージ不変(Aμ, φi)+[Q,M]と書ける。

ただし,Fゲージ不変は,ゲージ場;Aμと物質場:φi

のみから成る局所ゲージ不変な多項式である。

(ⅲ)Aの持つ.FPゴースト数が正ならば,

A=P[Ii(c);Fゲージ不変[Aμ, φi]+[Q,M]

と書ける。ただし,Pは.局所ゲージ不変関数:

ゲージ不変を係数とするIi(c)の多項式である。

そして,Ii(c)は同一時空点上のゴースト場:

のみの,微分を含まない,カラー1重項の多項式

であり,各時空点ごとに有限個しかない。」

という,今の有効作用:Γdiv(n++1)=Xの一般形に

関する定理に,類似した観測可能量:Aの一般形に

課する定理が.証明抜きで与えられています。

(再掲終了子※)(注12-2終わり※)

さて,途中ですが,長くなったので今回は,ここで

一旦終わります。

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

くりこみ理論(次元正則化)(12)

「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

前回は,第7章BPHZくりこみで,

(対称性とくりこみ)の項において,大局的

ゲージ不変性を有する理論が,その対称性

を保持したまま,次元正則化で,くりこみ

可能であることを示すことを目的に考察

しました。

そのため,系のLagrangianに外場を付加

した作用積分Sとその有効作用Γを裸の場で

構成した裸の作用:S0と裸の有効作用Γ0

おける.裸の場をくりこんだ場とくりこみ定数

Z,vで表わしたものを代入して置き換える,

という操作で,これらが,くりこまれた有限なS

とΓに帰着する.ことを摂動論的に証明するため

に導入したPoisson括弧に類似した演算*を

用いて,有効作用ΓからBとc~への自明な

依存性を除いた部分:Γ~が満足すべき基本的

WT方程式が.Γ~*Γ~=0.(34)という式の形

で与えられることを見たところで,記事を

終えました。

今回は,その続きです。

前回で準備が整ったので,以下,本題の

有効作用Γ(実は,裸のΓ0 に同じ)のhcによる

摂動ベキ展開:Γ=Γ(0)+hcΓ(1)+hc2Γ(2)+.

(25)の各項:hcΓ(n)が有限になる,ということ

を,先のWT恒等式:Γ~*Γ~=0(34)に基づいて,

帰納法で証明します。

(ⅰ)まず,n=0のtreeレベルでの有効作用

Γ(0)ですが,これは,Planck定数hcを含む量子

効果が全くない古典的な作用積分の

(0)S[Φ~,K;g,,α]=S.(24)に等しく,

それ故,明らかに有限です。

しかも,ΓとΓ~の違いは,(27)のΓ=Γ~

+∫d4x[BΦ+(α/2)B]という

Γ~の定義式にあるように,treeレベルの寄与を

与える項のみですから,初項Γ(0)ではΓ~をΓ

の代わりに用いて論じてもよいということに

なります。さらに,Γ(0)=S(0)=S,Γ~(0)=S~

より,Γ-Γ~=Γ(0)-Γ~(0)=S-S~であり,

この差はtreeレベルと考えられるので.n≧1

のloop積分を含む項ではΓ~(n)=Γ(n)です。 

(ⅱ)次に,n≧1のhcのオーダーまで,

くりこみ定数Z,および,viを,それらをベキ

展開した.(Z)n=1+hc(1)+hc2(2) +..

+hc(n),および,(vi)=0+hci(1)

c2i(2) +..+hci(n).(35)に置き換えて

Γ(0)(1)(2),..Γ(n)が全て有限にできた,

と仮定します。そこで.Zやviに,上記の(35)

式,つまり,((n+1)次以降のZ(n+k),vi(n+k)

(k≧1)を全てゼロとしたもの.に置換して

(23)のS0S[Φ0~,K0;g0,0,α0]

=S[Z31/2μ,..,Z~31/2μ;Z13-3/2,..]

に,Zとして(Z)を.viとして(vi)を代入

した作用積分:(0)S[(Z3)1/μ,....,

(Z~3)1/2μ;(Z1)(Z3)-3/2,.]

=S(0)+hc(1)+..+hc(n)

+hc(n+1)(S(n+1))+hc(n+2)(S((n+2))

+… (36)に基づき,hc(n+1)のオーダーの

有効作用Γ(n+1)を計算します。

(※上記の(36)の展開において,hの(n次以下

のS(m)(m≦n)を.(S(m))としなかった理由

は,Zやviの(n+1)次以降の値:Z(n+k)

i(n+k)(k≧1)を,どう取っても,それらに影響

しないからです。※)

 一方,(n+1)次以降のS(n+k)(k≧1)は,

それらZ(n+k),vi(n+k)(k≧1)に依存します。

しかし,(S(n+k))(k≧1)の方は,Z(n+k)=0,

i(n+k)=0(k≧1)と取ったときの相殺項に相当

するものです。

特に,(S(n+1))はhcのn次以下のZ(m),vi(m)

(m≦n)の積で表わされる,hcの(n+1)次の相殺項

となるもの.を意味します。

(※例えば,Aμの4次項:-(1/4)g02(×)2

=-(1/4)Z123-12(μ×ν)2からは,

1(m)Zi(k)(Z3(l))(ただし,m+k+pl

=n+1,0≦m,k,l,p≦n)の係数を持つ,,,

(n+1)次の相殺項が現われます。

何故なら,例えばZ3-1=(1+hc3(1)+hc23(2)

+..)-1=1-hc3(1)+(hc2/2)Z3(2)-.etc.

です。※)

さて,Γ(n+1)の計算は,帰納法の仮定により,

Γ(m)(m≦n)が全て有限ですから,それらに効く

各々のFeynmanグラフにおいて全ての内部グラフ

は既に有限になっており,出現する可能な発散は,

最後の一番外側のloop積分を実行したとき初めて

現われるもの,つまり,「overallの発散」のみで

ある,と,考えられます。

そして,hc(n+1)のオーダーでoverallの発散

が現われるグラフは,もちろん,loop積分が1個

以上はあるので,その内部にはn次以下の相殺項

のS(m)(m≦n)しか,含むことはできず,そこで

Zやviの(n+1)次以上の項;Z(n+k)やvi(n+k)

(k≧1)の取り方には依存しません。

それ故,このoverallの寄与の総和を

Γoverall(n+1)m=0n(m)]と記すことにすれば,

n次の作用積分:(0)S[(Z3)1/μ,

....,(Z~3)1/2μ;(Z1)(Z3)-3/2,.]

に基づく(n+1)次のΓ(n+1)項の発散部分

は,Γdiv(n+1)= Γoverall(n+1)m=0n(m)]

+(S(n+1))(37)と表わせます。

ただし,右辺の(S(n+1))は,n次以下の,

(m),vi(m)(m≦n)の積のみで作られる

(n+1)次の相殺項です。

ここで,重要な点はoverallの発散:

Γdiv(n+1)は,以前「BPHZくりこみ」の

項で述べたように,外線運動量に関して有限次

までで,場の次元数を数えると,4次以下の局所

的項しか現われない。ということです。

※(注12-1):過去記事「くりこみ理論(7)では,

クラフ:Γの見掛けの発散次数ω(Γ)を与える

公式:ω(Γ)=4-E-(3/2)E+Σniδi(7)

により,ω(Γ)≧0となって発散するグラフΓ

は,E+(3/2)E(外線場の次元)≦4.(8)の

場合のみです。と記述しました。

それ故,今のdim(iint)≦4の場合にω(Γ)≧0

で発散する条件は,E+(3/2)E≦4です。

(注12-1終わり※)

さて,(37)の(S(n+1))も,もちろん相殺項で

発散項ですから,系の裸のLagrangianの作用積分:

0と同様,上記の性質を持つので,(37)のΓdiv(n+1)

も次元4以下の局所的項のみから成っています。

このような局所的項の積分形で与えられる

汎関数を一般に,局所的汎関数と呼びます。

一方,WT恒等式:Γ~*Γ~=0 (34)は,hcの値

に依らず(Zやviの値にも依らず)成立する式です。

つまり,これはhcについての恒等式ですから,Γ~を

cのベキで摂動展開して,左辺のΓ~*Γ~に代入し

c(n+1)の項を取り出すとき,その係数はゼロです。

つまり,Γ~(0)*Γ~(n+1)+Γ~(1)*Γ~(n)

+Γ~(2)*Γ~(n-1)+..=0.(38) が成立します。

先述のようにΓ~()=Γ(m)(m≧1)であり,

そして,左辺の第2項以下は,帰納法の仮定により

有限です。したがって,この式の発散部分のみを

取り出せば,それは左辺のΓ~(0)*Γdiv(n+1)であり

右辺の0の中には,もちろん発散部分はありません。

(※この発散部分は,今の次元正則化の場合,

時空の次元をdとすると,(d-4)-(k≧1)の形

の極の項であり,1つのloop積分で1/(d-4)の

特異性は1次ずつしか出ないのでΓ(n+1)の特異性

は1/(d-4),1/(d-4)2,..1/(d-4)(n+1)まで

です。※)

そして,Γ~(0)=S~(0)=S~ですから,結局,

S~*Γdiv(n+1)=0.(39)なる式を得ます。

この式は,Γ(n+1)にどのような発散が現われ

得るか?を規定する方程式であり,一般に,

「くりこみ方程式(renormalization equation)」

と呼ばれています。

このくりこみ方程式に対しては,次の命題が

成立することを証明できます。

※[命題]:「大局的ゲージ不変でFPゴースト数が

ゼロ,次元が4以下の局所項から成る,ΦI,c,K~I,

の汎関数:Xがくりこみ方程式:S~*­X=0.

(40)を満たすとする。このときXは,(23) の裸の

作用積分:S0=S[Z31/2μ,..,Z~31/2μ

13-3/2,..]で,Zやviをずらせて得られる

変化分;ΔS=δZ(ΔS)+δvi(ΔviS)

=δZ[∂S/∂Z] Z=1Vi=0+δvi[∂S/∂vi]Z=1Vi=0

(41)の形で与えられる。

ただし,SとS~の差はtreeレベルで,その

差は,Zやviには依らないので上記の(41)では

SをS~に置き換えて同一視してもよい。」

 

そして,仮に,この命題が証明されたとすると

今のXが,S~*Γdiv(n+1)=0を満たすΓdiv(n+1)

である場合,これがΓdiv(n+1)=α(n+1)(ΔS)

+βi(n+1)viS)の形に書けることを意味します。

ところが,この形の発散項は,Zやviを(35)

のn次までの(Z)や,(vi)から次に定義する値:

(Z)n+1=(Z)+hc(n+1)(n+1),および,(vi)n+1

=(vi),+hc(n+1)i(n+1).(42)へとずらした

ときに生じるhc(n+1)のオーダーの新たな相殺項:

(n+1)-(S(n+1))=Z(n+1)S)

+vi(n+1)viS)(43)により,Z(n+1)=-α(n+1),

かつ,vi(n+1)=-βi(n+1)と選べば,丁度. Γdiv(n+1)

が吸収されます。

それ故,(42)の(Z)n+1,および,(vi)n+1を(23)

の作用:S0に代入した作用:(S0)n+1に基づいた

有効作用Γは,hc(n+1)のオーダーのΓ(n+1)まで

有限となり,帰納法によるくりこみ可能性の証明

が完結したことになります。

では,以下,実際に[命題の証明]です。

[証明]:結局,くりこみ可能性の証明は

くりこみ方程式:S~*X=0(40)の一般解X

が,X=δZ(ΔS)+δvi(ΔviS)(41),

の形で与えられる,という純粋に代数的な命題

の証明に帰着することがわかりました。

くりこみ方程式:S~*X=0の解Xに関しては.

次元が4以下,大局的ゲージ不変という制限の

ない,次の定理が成立することが知られています。

[定理] 「ΦI,c,K~I,KのFPゴースト数

がゼロの局所多項式から成る汎関数Xで,くりこみ

方程式S~*­X=0.(40)を満たすものは,必ず,

X=Fゲージ不変[ΦI+S~*M[ΦI,c,K~I,K]

(44)の形に書ける。

ここで,Fゲージ不変はΦI=(Aμi)のみで書かれた

ゲージ不変な関数で,MはFPゴースト数が(-1)

の任意の汎関数である。

(44)の形で書かれる汎関数Xがくりこみ方程式:

S~*X=0を満たすこと(解の十分条件)は,S~の

BRS不変性,S~*S~=0,および,Jacobi恒等式

から従う,演算:(S~*)のベキ零性:つまり,

∀Xに対しS~*(S~*X)=-((1/2)X*(S~*S^)

=0.(45)から,自明です。

すなわち,∀F,GについてF*G~

=(-)(|F|+1)G*Fという*演算の対称性から,

GがFに等しいならF*F=-F*Fとなり,,

F*F=0が成立するので,S~*S~=0は自明

です。

一方,Jacobi恒等式から,S~*(S~*X)

+(-)|X|S~(X*S~)

+(-)2(|X|+1)X*(S~*S~)=0ですが,

S~はGrassmann偶なので,X*S~=-S~*Xであり,

XはFPゴースト数-1)でGrassman奇ですから,

2S~*(S~*X)=-X*(S~*S~)=0

が得られます。

それ故,特にS~*(S~*M)=0です。

また,FがΦIのみの関数であれば,

S~*F=(δS~/δK~I)(δF/δΦI)

+(δS~/δK)(δF/δc)

+(-)|S~|{(δF/δK~I)(δS~/δΦI)

+(δF/δK)(δS~/δc)}

=(δΦI)(δF/δΦI)=δFです。

そこで,Fがゲージ不変な関数:Fゲージ不変

なら,それは,BRS不変なので右辺はゼロです。

つまり,S~*Fゲージ不変=0です。

したがって,X=Fゲージ不変+S~*Mの形なら,

S~*X=S~*Fゲージ不変+S~*(S~*M)=0

となります。

以上から,(44)の形のXがくりこみ方程式

S~*X=0の解となるための十分条件を満たす

ことが証明されました。

しかし,証明が自明でない,のは逆の解となる

ための必要条件の方です。

この定理は過去記事「ゲージ場の理論(33)」

で記述した,第5章の§5-10で述べた観測可能量

の一般形に関する定理:§5-10(23)を,外場項:K~I,

を含む場合に拡張したものに相当し,大変有用

なものですが,一般的証明はかなり面倒なので,この

必要性の詳細証明は,観測可能量の定理の場合と同様,

既存の文献に譲って,ここでの記述は割愛します。

 

(※(注12-2):載)過去記事「ゲージ場の量子論(33)」

から,必要参照部分を抜粋して再掲します。

(※再掲開始)[定理]:「Heisenberg場の多項式で

与えられる局所的観測可能量=BRS不変な局所

演算子:Aは次の形を持つ。

(ⅰ)Aの持つFPゴースト数:NFPが負ならば,

Aは零演算子である。すなわち,このとき,ある

演算子Mにより.A=[Q,M]と書ける。

(ⅱ)Aの持つFPゴースト数がゼロならば,

A=Fゲージ不変(Aμ, φi)+[Q,M]と書ける。

ただし,Fゲージ不変は,ゲージ場;Aμと物質場:φi

のみから成る局所ゲージ不変な多項式である。

(ⅲ)Aの持つ.FPゴースト数が正ならば,

A=P[Ii(c);Fゲージ不変[Aμ, φi]+[Q,M]

と書ける。ただし,Pは.局所ゲージ不変関数:

ゲージ不変を係数とするIi(c)の多項式である。

そして,Ii(c)は同一時空点上のゴースト場:

のみの,微分を含まない,カラー1重項の多項式

であり,各時空点ごとに有限個しかない。」

という,今の有効作用:Γdiv(n++1)=Xの一般形に

関する定理に,類似した観測可能量:Aの一般形に

課する定理が.証明抜きで与えられています。

(再掲終了子※)(注12-2終わり※)

さて,途中ですが,長くなったので今回は,ここで

一旦終わります。

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

 

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くりこみ理論(次元正則化)(11)

「くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

前回は,第7章の「BPHZくりこみ」

の(対称性とくりこみ)の項目に入り,まず,

BPHZくりこみと,その収束定理から

従ういくつかの重要な命題を与え説明しました。

 系のLagrangianは,種々の内部対称性を持って

いますが,通常の線形で「明白な」対称性は全て

BPHZ手続きの各段階で保持されます。

それらは対称性を満たす制限された相殺項を

追加することでくりこみ可能です。

対称性が自発的に破れた真空の上で摂動計算

を行なう場合は,場の変換が非線形になり

「明白な」対称性ではなくなりますが,非線形

の「明白でない」対称性であっても,多くの場合,

Lagrangianを対称性を満たすものに限っても,

くりこみ可能です。

ただし,それら非自明な個々の場合に,それぞれ

くりこみ可能なことを証明する必要があります。

ゲージ理論のくりこみの問題も,基本的なBRS

対称性が非線形であり,この範疇の問題の1つです。

一般的なゲージ理論の系で,ゲージ不変性を保持

したままでの,くりこみ可能性を示すことが当面の

目的です。

そのため,まず,ゲージ理論の系で,ゲージを固定

したLagrangianに外場Kを付加した作用Sと

有効作用Γについて,裸の場に対する議論を考察

しました。

裸の量は一般に発散量なので,これらが意味を

持つためには,何らかの正則化が必要です。

ゲージ不変な正則化が存在し,これが次元正則化

で満たされることを主張します。裸の量で書かれた

有効作用:Γ0を,くりこまれた量で書き直せば,有限

な汎関数:Γになる,という主張です。

裸の場や外場をくり込み因子=(Z1,Z3,Z~3,Zi),

および,場φのシフトvlを与えて,くりこまれた場に

より定義して,Zやviの値の選び方如何に依らず,

常に基本的なWard-高橋恒等式(WT恒等式)が,裸

の量だけでなく,くりこまれた量でも同じ形で成立

することを要求します。

結局,くりこみ可能性の主張である,

Γ0[Φ~0,K0;g0,00]=Γ[Φ~,K;g,f,α].

は,パラメータ:やviを「正しく選んだとき」,

くりこまれた有効作用:ΓがΦ~,K;g,f,αの

有限な汎関数になることを意味します。

それ故.これを示すのが目的です。などと書いた

ところて終わりました。

今回はその続きから始めます。

さて,実際に有効作用:Γを計算するには,loop

展開.つまり,自然単位なので1として意識して

いないですが,実はPlanck定数:hcのベキ展開に

よる摂動で行なうので,Zやviもh摂動でベキ

展開します。

すなわち,Z=1+hc(1)+hc2(2)+,,,(21),

および,vi=0+hci(1)+hc2i(2)+,,,.(22)

です。これらを,(9)の裸の作用積分:

0=S[Φ0~,K0]=∫d4

[0GI0(GF+FP)+KI0I0

+(g0/2)K0c(0×0)]に代入して,摂動ベキ

に展開します。

つまり,S0S[Φ0~,K0;g0,0,α0]

=S[Z31/2μ,..,Z~31/2aμ;Z13-3/2,..]

=S(0)+hcS(1)+hc2(2)+… (23)です。

ただし,初項のS(0)は.くりこまれた有限な作用

Sです。つまり,S(0)S[Φ~,K;g,,α]=S

(24)です。初項:S(0)Sを摂動の第0次の作用,

第2項以降のS(n)を(n≧1)相殺項として用いて

全ての1PIグラフを計算します。

そうすれば,有効作用Γも,hcの各次数で逐次

得られます。Γ=Γ(0)+hcΓ(1)+hc2Γ(2)+… 

(25)です。

本節では,大局的ゲージ対称性が自発的に破れない

場合を考察することにしているので,(22)のvi

展開では,初項vi(0)は0であるとして,おきました。

(4)の一般的線形ゲージの場合,fiφiの項の

存在が大局的ゲージ不変性を破ることは,既に

述べました。しかし,係数fiを添字に応じて共変的

に変換する量と見なせば形式的に,この不変性は保持

される,と考えることができます。

以下,大局的ゲージ不変量というときには上記の

ことを了解済みのことしておきます。

※「くりこみ可能性の証明」

以下では,Zやviを摂動のhcのベキの各次数で

次々に適切に選んでゆけば,くりこまれたΓも展開

の任意の次数まで有限にできることを示します。

 まず,NL場:Baへの依存性は自明であることに

注意します。

すなわち,恒等式(12)の裸の式である(16)式の

δΓ00=∂μ0μ0iφ0i+w+α00.

または,くりこんだ量での(12)の表式,そのものの

δΓ/δ,=fIΦI+w+αB)においてw

をゼロとしたものから,ΓのBへの依存性が陽に

決まります。すなわち,(16)から,Γ=Γ~

+∫d4x[B0(f0iφi0+w)+(α0/2)B00]

(26)(裸の式でΓ=Γ0としたもの),および

Γ=Γ~+∫d4x[BΦ+(α/2)B](27)

です。ここで,残りの項として定義したΓ~はBには

全く依存しない量です。しかも,上記のくりこみ方法

から,裸の(26)と,くりこまれた(27)は全く等しいので,

Zやviを,以下でどのように決めようと,B依存部分

は,くりこんだ量で書いて有限な式になっています。

 

※(注11-1):何故なら,前記事で書いた通り,,

ΦIはΦI=(Aμi)のセットを意味します。

そして,A0μ=Z31/2μ0i=Zi1/2i+vi),

かつ,B0=Z3-1/2,f0i=Z31/2i-1/2i

とし,さらにα0=Z3α,w=-Z31/2ii

として裸の量を全てくりこんだ量で表わして

代入するのが我々のくりこみ手法です。

そこで,(26)の裸の被積分関数に,これらの

関係式を代入すると,B0(f0iφi0+w)

+(α0/2)B00=Z3-1/2[(Z31/2i-1/2i)

×{Zi1/2i+vi)-Z31/2ii,}

+(Z3α/2)Z3-1

=BΦ+(α/2)B]となって,

これは,(27)のくりこまれた式の被積分関数

に一致します。

くりこまれた場は有限と,仮定されているため

(26)のB0依存部分も,(27)のB依存部分と一致

して有限である,と結論されます。(注10-1終わり※)

 

したがって,以下ではBを忘れて,Γ~部分のみ

を考えればよい,ということになります。

さらに,反ゴースト場c~への依存性も,同様に,

ほとんど自明です。

すなわち,くりこまれたΓは,WT恒等式(13)

I(δΓ/δKI)+i(δΓ/δc~)=0を

満たします。

故に,Γ,または,Γ~のc~への依存は,

K~I=K+ic~aI,つまり,K~μ=Kμ

+c~μ,および,K~i=Ki+c~i(28)

と置くと,この変数K~を通じてのみ現われる

ことがわかります。

それ故,汎関数:Γ~[ΦI,c,c~;K]に

おいて,引数をΓ~[ΦI,c,c~;K~]の

ように,取り直せば,(13)のfI(δΓ/δKI)

+i(δΓ/δc~)=0は,

I(∂K~J/∂KI)(δΓ~/δK~J)c~

+i(δK~J/δc~)δΓ~/δK~J)c~

i(∂Γ/∂c~)K~=fI(δΓ~/δK~I)c~

-fIδ(δΓ~/δK~I)c~i(∂Γ~/∂c~)K~

=i(∂Γ~/∂c~)K~=0 となります。

そこで.Γ~[ΦI,c,c~;K~]は,c~

には依存しない,ことがわかります。

この点も,Zやviの値の具体的選び方には

依らないので,以下,KIの代わりに変数:K~I

を常に採用すれば,c~もB同様,忘れてよい,

ことになります。

以上から,結局,Γの代わりにΦI,c,;K~,

c(および,g,α)のみの汎関数,Γ~を,考えれば

いいです。

そして,残るWT恒等式(11)は,ΓをΓ~に

置き換えると,(δΓ~/δΦI)(δΓ~/δKI)

+(δΓ~/δc)(δΓ~/δK)

+(δΓ~/δc~)B=0 ですが,これは.

(δΓ~/δΦI)(δΓ~/δK~I)c~

+(δΓ~/δc)(δΓ~/δKc)=0.(30)

という式になります。

さて,ここでPoisson括弧に似た.次の演算を

定義します。

すなわち,F,Gを,任意のΦI,c,;K~,Kc

の,Grassman偶,または,奇の汎関数とするとき,,

演算*を,F*G=(δF/δΦI)(δG/δK~I)

+(δF/δc)(δG/δKc)

+(-)|F|{(δF/δK~I)(δG/δΦI)

+(δF/δKc)(δG/δc)}

=(δF/δQA)(δG/δPA)

+(-)|F|(δF/δPA)(δG/δQA).(31)

で定義します。

ここで.Qは座標類似変数,PAは運動量

類似変数と呼ばれるものです。

ここでは,Q=(ΦI,Kac)(32-1)としました

が,これはGrassman偶変数,また,P=(K~I,c)

(32-2)とし,こちらはGrassman奇変数です。

実際,(31)のF*Gは,Poisson括弧に似た性質

を持っています。

例えば,次の対称性や,Jacobi恒等式などが,成立

します。

すなわち,まず,F*G=-(-)F1G1G*F.(33-1)

です。ただし,∀Fに対し,F1=|F|+1)です。

そして,F*(G*H)+(-)F1(G1+H1)G*(H*F)

+(-)H1(F1+G1)H*(F*H)=0.(33-2)です。

(※以下,参照中の私の読書覚書きノートでは,

これらの性質の地道な証明が,延々と書いて

ありましたが,これらの性質が成立するという

証明は間違いなく完了した,という報告のみで,

内容は煩雑なので省略します。※)

さて、このPoisson括弧に似た演算記号*を

用いると,(30)のWT恒等式:

(δΓ~/δΦI)(δΓ~/δK~I)c~+(δΓ~/δc)

(δΓ/δKc)=0.は,とても,簡明な表式になり,

Γ~*Γ~=0.(34)と書けます。

途中ですが長くなったので,今回はここで終わります。

(参考文献):九後汰一郎著「ゲージ場の量子論Ⅱ」

(培風館)

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くりこみ理論(次元正則化)(10の2)補遺

「くりこみ理論(次元正則化)(10)」で注釈

を,いくつか付加していたら,またもや長く

なり過ぎになったので3つ目の注釈40-3を

(10)の補遺として分けました。

以下本文です。

※(注10-3):記事を書いているうち,急に過去

の知見の記憶が気になり,自信がないままで

安易には先に進めない,と感じたので,ここで

有効作用の意味などについて,おさらいをする

ことします。

(※このブログ自体が自己満足のための思考体験

の私的回顧録のつもりですから,まあ,70歳で海馬

の衰えもあって,ときにはこういう脱線もします。)

 

そもそも,Γという記号は,作用ではなく頂点関数

に割り当てられるのが慣例なのに,何故,それを有効

作用という作用;Sに関連する記号として用いるのか?

などの疑問を,過去記事,特に最近も.これについて

書いたばかりという記憶はあるけれど,既に忘れて,

はっきりしなくなった「くりこみ理論要約(2)」から

抜粋して再掲載します。

(以下再掲載):「有効作用と有効ポテンシャル」

 簡単のため,スカラー場φのみの系で考えます。

 まず,Green関数の生成汎関数は,

Z[J]=<0|Texp(iJ・φ)]|0>

=<exp[i∫dx{int(φ)+J・φ}]>0

/<exp[i∫d4{int(φ)}>0

=N∫φexp[i{S[φ]+Jφ}]と表現される。

ということから出発します。

(※J(x)はφに対応する外場です。)

このとき,Z[J]=exp{iW[J]}によって別の

Jの汎関数:W[]を定義します。

ここで,を,properな連結グラフ(固有連結

グラフ:つまり,1本の内線や外線ではこれ以上

分離不可能な個々のFeynmanグラフ)の全体,

とすると,明らかに,Z[J]=expと表わせる

ので,iW[J]は連結固有Green関数の生成

汎関数ということになります。

 一方,W[]=S[φ]+J・φと表わされて

いますが.具体的には,J・φ

∫d4xΣiiφi(x)であり,S[φ]は,作用積分

の形になっています。

つまり,S[φ]=∫d4(φ(x),∂φ(x))です。

ここで,φの汎関数である有効作用;Γ[φ]という

量を,このW[J]から,汎関数のLegebdre

(ルジャンドル)変換:Γ[Φ]=W[J]-Jφに

よって定義します。。

ところで,δZ/δi=(iδW/δi)

=i<0|φi(x)Texp(iJ*φ)]|0> より,

φ~i(x)=(δW/δJi)

<0|φi(x)Texp(iJ・φ)]|0>/Zと

おくと,φ~i(x)=(δW/δi)なる量は,

(x)という外場が存在するときの,場

φi(x)の期待値を意味する,ことがわかります。

そこで,Γ[φ]をJi(x)を通じたφの関数でなく,

上記のφの期待値:φ~i(x)の関数,つまり,

Γ[φ~]の形であると考えると,

i(x)=δΓ[φ~]/δφ~i(x)です。

(※何故なら.WはJの関数と見ると,Wのφ~i

よる微分は,δW/δφ~i=Σk(δJk/δφ~i)

(δW/δJk)=Σk (δJ/δφ~i)φ~kで,一方,

δ(Jφ)/δφ~i=(δJk/δφ~i)φ~k+Jなので,

δΓ/δφiδW/δφ~i-δ(Jφ)/δφ~i=-Ji

となるからです。)

有効作用:Γ[φ~]が重要な理由の1つは,これ

が実は1PI(1粒子既約な)頂点関数:Γ(n)の生成

汎関数になっている点です。

つまり,Γ[φ~]=Σn=0(1/n!)∫d41..d4n

φ~i1(x1)..φ~in(xn(n)i1..in(x1,..xn)

となっている点です。

ここで,W[]に効くグラフで伝播関数の線

を1本切ってグラフが2つの部分に分離できる

とき,その線を関節線と呼びます。

伝播関数の線が外線のそれであれば,常に関節線

ですが,外線以外に関節線を持たないグラフを1PI

(1粒子既約な)グラフ,内線にも関節線があるそれ

を1粒子可約なグラフと呼んだのでした。

結局,Γ[φ~]は,量子効果であるloopグラフを除く

単純なTreeレベルでは,hcをPlanck定数としたとき

O(hc)を除く近似で,古典的作用積分:S[φ~]

=∫d4(φ~,∂φ~)に一致します。

この有効作用の物理歴意味をさらによく理解すべく

より特殊な場合を考えます。

外場Jと期待値φ~が共に時間x0=tに依存しない

場合を考えると,この場合時間並進不変性があるので

W[]やΓ[φ~]の∫d4xという表現から,無限大

の時間因子:T=∫dx0がをくくり出して除去

できます。すなわち,W[J(x)=J(x)]

=-w[J()]∫dx0Γ[φ~(x)=φ~(x)]

=-E[φ~()]∫dx0 です。 

さらに,Jとφ~が時空座標xに完全に依存しない

定数の場合.W[J(x)=J]=-w[J]∫d4x,

Γ[φ~(x)=φ~]=-V[φ~]∫d4x です。

最後の,V[φ~]は,φ~の関数であり,これを

「有効ポテンシャル」と呼びます。

また,3次元空間のの関数:φ~()の汎関数:

E[φ~()]には決まった呼称がなかったので,

V[φ~]にならって「有効エネルギー」と呼びます。

Jとφ~がt=x0に依存しないときを考えると,

このとき,Z[J]=exp{iW[J]}=exp{-iw[J]T}

=<0| exp{-i[J]T}|0> です。

ただし,H[J]=-∫d3J()φ~()で,

このHは,エネルギーを意味するHamiltonianです。

つまり,期待値φ~の関数としては,

=∫d3{π~φ~-(φ~,∂φ~)}

=-∫d3(φ~,∂φ~)=-Lです。

(※LはLagrangianで,はLagrangian密度)

何故なら,φ~がt=x0に依存しないため,共役:

π~=∂L/∂(∂0φ~)=∂0φ~がゼロだからです。

そして,真空:|0>はエネルギーHの最低固有値状態

(基底状態)でしたが,ここでも断熱処理:(-iε)処法

を採用しているとすれば,T=∫dx0=∞ の極限では,

事実上,[J]=-∫d3J()φ~()の

基底状態:|0>のみがexp{-iw[J]T}

=<0| exp{-i[J]T}0>の|0>に効きます。

それ故,T → ∞ではw[J]は[J]の基底状態

のエネルギー固有値です。

つまり,H[J] |0>=w[J] |0>です。

他方,この)固有値問題は,量子力学の変分原理

の問題と同じく,<Ψ|Ψ>=1,<Ψ|φ()|Ψ>

=φ~()の下で,<Ψ||Ψ>を停留値にする

停留解:|Ψ>を求める停留問題と見なすことが

できます。

すなわち,この,H|Ψ>=E|Ψ>の解

が,|Ψ>=|0>,E=w[J]を与えます。

したがって,場の理論で真空を探す問題では,

予め並進不変性を考慮して,E[φ()]の

依存しないφ~の関数である有効ポテンシャル

V[φi~]の停留点を,∂V[φ~]/∂φi~=0 から

求めればいいことになります。

結局,有効ポテンシャル:V[φ~]は,場φi(x)

の期待値がφi~(定数)である条件下での基底状態

のエネルギー密度と解釈され,その最低の固有値

に対応する状態が真空です。 

※※有効作用:Γ[φ~]が1粒子既約な頂点関数

Γ(n)の生成汎関数であったことから従う,有効

ポテンシャル:V[φ~]のもう1つの側面に注目

します。頂点関数:Γ(n)の運動量表示Γ~(n)

運動量保存のδ関数を外して定義します。

つまり,∫d41..d4n

exp{ip11..+ipnn(n)i1/..in(x1,...xn)

=Γ~(n) i1..in( (p1,..pn)(2π)4δ4(p1+..+pn)

と展開されるとします。

そして,Γ[φ]=Σn=0(1/n!)∫d41..d4n

φi1(x1)..φin(xn(n)i1..in(1,..xn)において

φi(x)=φ~i(定数)とし,V[Φ]の定義式,および,

(2π)4δ4(p=0)=∫d4x exp(ipx)|p=0を考慮

して,V[φ~]=-Σn=0(1/n!)φ~i1..φ~in

Γ~(n)i1..in(0...,0)を得ます。すなわち,

有効ポテンシャル:V[φ~]は運動量piが全て

ゼロのときのn点頂点関数の生成関数という意味

を持っています。

W[J]の経路積分表式:

Z[J]=exp(iW[])­­

=N∫φexp[i{S[φ]+Jφ}]を,

Γ[φ~]=W[])­­-Jφ=に代入して,

自然単位から,Planck定数hcを復活させると

Γ[φ~]=(-ihc)ln[∫φexp{(i/hc){S[φ]

(φφ~)}]ですが,

経路積分φの積分変数を,φからφ+φ~へと

変数置換して,-Ji(x)=δΓ/δφi

代入すれば,Γ[φ~]=(-ihc)ln[∫φexp{(i/hc)

{∫d4x([φφ~]-(δΓ/δφ)φ)}]となります。

ここで,[φφ~]をc-数:φ~のまわりで

量子場:φ(x)で展開すると,

[φφ~]=[φ~]+(∂/∂φii

+(1/2)φi|(iDF)-1φ~}ijφjint[φ;φ~]です。

ここに,|(iDF)-1φ~}ijは,|(iDF)-1φ~}ij

=(∂2[φφ~]/∂φi∂φj)|φ=0

=(∂2[φ~]/∂φ~i∂φ~j)で与えられます。

これは,場φの期待値がφ~であるような真空

の上でのFeynman伝播関数の逆数であり,

int[φ;φ~]はφについて3次以上のφ~における

相互作用項です

この[φφ~]の展開をΓ[φ~]の表式に代入

すると,Γ[φ~]=∫d4[φ~]+Γ~[φ~]で,:

Γ~[φ~]=(-ihc)ln∫φexp[(i/hc)

{∫d4x[(1/2)φi|(iDF)-1φ~}ijφjint[φ;φ~]

-(δΓ/δφ)φ}]です。 

これで,うまい具合に有効作用Γ[φ~]から,

古典的作用積分:S[φ~]=∫d4[φ~]が分離

されました。

(以上,有効作用,有効ポテンシャルの説明について

の再掲記事を終了します。)(注10-1終わり※)

 

※(注10-2):引き続き,以下,過去記事;

「ゲージ場の量子論(24)」の第5章§5-6の関連

する部分も再掲載します。

その前に,そもそも,元の素朴なWard-高橋恒等式

とは,2点Green関数と頂点関数の同等性を意味

する式と,理解しています。

単純な恒等式:S(p1)-1-S(p2)-1

=(1-m)-(2-m)=(12)

=-(p2-p1)μγμから,

自由伝播関数:Sと頂点γμに相互作用の着物

を着せて,輻射補正をすると,摂動論的には自己

エネルギーの発散がありますが,くりこんだ伝播

関数と頂点関数をそれぞれS~,Γ~μと書いて

拡張すると,S~(p1)-1-S~(p2)-

1=-(p2-p1)μΓ~μ(p2,p1)となります。

 または,Wardの恒等式:Γ~μ(p~,p)|p~=

=-(∂/∂pμ)S~(p)-1を得るわけです。

2点頂点関数は,伝播関数の逆数の差という意味

を持つことがわかります。

ここからは「ゲージ場の量子論(24)」の再掲載

です。

(再掲開始:※)Ward-高橋恒等式について,

一般にゲージ不変性に限らず,ある対称性が存在

すると,種々のGreen関数,頂点関数等の間に種々

の関係式が成立します。このような関係式を一般

にWard-高橋恒等式,略してWT恒等式と呼びます。

ゲージ不変性に関わるGreen関数についてのWT

恒等式は,全てBRS演算子:Qを用いて,次のように

簡単に与えることができます。

すなわち,Ok(x)を任意の場(または,その多項式)

の演算子として,真空のBRS不変性: Q{0>=0

を用いると,

0=<0|{Q,T(Ok(x1),Ok(x2),..,Om(x))}|0>

=Σk=1n(-)Sk<0|T(Ok(x1),Ok(x2)

,..δ(xk),..Om(x)|0> なる恒等式を得ます。

ただし,S=Σi=1k-1|i|,(|i|はOの統計指数)

1粒子既約な(1PI)頂点関数,または,その生成汎関数

に対するWT恒等式を得るには,次のようにします。

まず,全ての場:ΦIとそのBRS変換;δΦ

対して外場を導入します。すなわち,作用積分:

S[J,K]=∫d4x[Jaμμ+Jiφi+J~

+J~c~+J+Kaμμ

-iKig(T)ijφj+(1/2)Kg(×)]

を考えます。

ここで,場は全てHeisenberg場であり, J~,

c~,KaμはGrassmann奇数,Jaμ,Ji,K

は普通の数(Grassman偶数)です。

物質場については,φがBosonなら,Ki

Grassmann奇数,Jiは普通の数で,φiがFermion

なら,逆です。

BRS変換された量:δΦIは既にBRS不変

なので,{iQ,Dμ}={iQ,cg(T)ijφj}

={iQ,(×)}=0 です。

そこで,0=<0|{iQ, TexpiS[J,K]|0>

=i∫d4x<0|T[Jaμμ

-(-)|i|ig(T)ijφj-(1/2)J~(×)

-iJc~]TexpiS[J,K]|0> が成立します。

(※|i|は(Jiの統計指数)=(φiの統計指数)です。)

摂動論の項目では,外場:Jを与えてGteem関数の

生成汎関数をZ[J]とし,Z[J]=exp(iW[J])に

よって得られる,連結Green関数の生成汎関数:

W[J,K],および,頂点関数に対する生成汎関数:

Γ[Φ,K]を考察しましたが,同様に,

exp(iW[J,K]=<0|TexpiS[J,K]|0>,

Γ[Φ,K]=W[J,K]-JI・ΦI,

ΦI(x)=(δ/δJI(x))W[J,K]

=<0|T{ΦI(x)expiS[J,K]}|0>

/<0|TexpiS[J,K]|0>,によって.

これらを定義します。

ただし,ここではJIは,(Jaμ,Ji,J~,

c~,)の全てを意味します。

一般的記号として,ΦI(x)

=<0|T{ΦI(x)expiS[J,K]}|0>

/<0|TexpiS[J,K]|0>で定義されるΓの

引数のΦは,c-数(期待値)であり,対応する

Heusenberg場:Φ=Aμi:,c~,B

同じ記号で表わしますが.混同しないよう注意

を要します。

上のΓ[Φ,K]=W[J,K]-JI・ΦIの右辺,

および,,以下においてドット(dot)・は,積分記号

∫d4xの省略を意味します。

そうすれば,恒等式:

0=<0|{iQ,TexpiS[J,K]|0>

=i∫d4x<0|T[Jaμμ

-(-)|i|ig(T)ijφj

-(1/2)J~(×)

-iJ~]TexpiS[J,K]|0>は,

[Jaμ({δ/δKμ)+(-){i{l(δ/δKi)

-J~(δ/δK)-Jc~(δ/δJ)}W[J,K]

=0 と書き直せます。

Γ[Φ,K]=W[J,K]-JI・ΦI,のLegendre変換

から.従う,ΦI(x)=(δ/δJI(x))W[J,K]

=<0|T{ΦI(x)expiS[J,K]}|0>

/<0|TexpiS[J,K]|0>,に双対な関係式

(δ/δΦI(x))Γ[Φ,K]=-(-)|I|I(x),

および,(δ/δKI(x))ΓW[Φ,K]

=(δ/δKI(x))Γ[Φ,K]を用いると,先の

恒等式は次のように書き直されます。

すなわち,(δΓ/δAμ)(δΓ/δKμ)

+(δΓ/δφi)(δΓ/δKi)

-(δΓ/δc)(δΓ/δK)

+i(δΓ/δc~)B=0.(11)と書けます。

これが,(1PI)頂点関数の生成汎関数:Γに

対するWT恒等式です。ただし,Grassmann数

による微分は全て左微分です。

ΓのNL場:Bや反ゴースト場:c~への依存性

は特殊で運動方程式:∂μμ+αB=0,

μμ=Dμμc~=0より従う次の恒等式

を満たします。

 なわち.δΓ/δB=∂μμ+αB,(12)

および,/δKμ)+iδΓ/δc~=0.13) です。

(再掲載終了) (注10-3終了※)

 

これでやっと,うっかり消えたWord文書の

原稿の書き直しとアップが終わりホッとして

います。

(参考文献):九後汰一郎著「ゲ゙―ジ゙場の量子論Ⅱ」

(培風館)

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くりこみ理論(次元正則化)(10)

くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

このシリーズ記事で,うっかり紛失した

(9)を書き直したものが前より長くなり過ぎて

急遽,記事を分割し,改めて(9)をアップした後

の残りを,この(10)で記述します。

なので,余談抜きで本題の続きに入ります。

§7-4(ゲージ理論の乗法的くりこみ)において,,

ゲージ系の場合,BRS対称性が非線形であるため,

ゲージ対称性を保持したままの「くりこみ可能性」

は自明ではなく,これの肯定的回答(くりこみ可能

であることの証明)を与えるのが本節の目的です。

と書いたところで,前回記事は終わりました。

ここからは,今回のその続きです。

  • 7-4の中の(Ward-高橋恒等式)の項からです。

こでは,まず,第5章で論じた一般的なゲージ

理論の系を改めて考えること,から始めます。

系のLagrangean:は,GIGF+FP

与えられ,物質場をφiと記すと,ゲージに依らない

部分:GI=-(1/4)Fμνaμν

matter(φi,Dμφi).(2)で与えられる,とします。

ここで,Fμν=∂μν-∂νμ

-gfabcμν.(2)であり,Dμφi

=∂μφi+igAμ(T)ijφj.(3) です。

そして,ゲージ固定項(gauge fix)

+ファデエフ・ポポフ(Fadeev-Popov)項の部分

:GF+FPは,関数:F(A,φ,B)

=∂μμ+fiφi+(α/2)B

+w (fi,wは定数)(4)を一般的な線形

ゲージ固定関数として採用すれば,ゲージ固定

関数の定義からGF+FP=-iδ(c~)

なので,GF+FP=B(∂μμ+fiφi+w)

+(α/2)Ba

+ic~{∂μμ-igfi(T)ijφj}(5)

と書けます。

ここで,ゲージ場と物質場をまとめて記述した

方が便利な場合は,ΦI=(Aμl)という

記号を用いることにします。そして,このΦI

のBRS変換も,δμ=Dμと,

δφi=-igc(T)ijφjをまとめて,

δΦI=DI(6)と記すことにします。

さらに,∂μμ+fiφi=fIΦI.(7)

と略述する,つまり,ΦI(Aμl)(列ベクトル)

に対し,その係数をまとめて,fI=(∂μ,fi)

(行ベクトル)で表わします。

すると,(5)はGF+FP=B(fIΦI+w)

+(α/2)B+ic~II.(8)

と簡単になります。

ここで,第5章の§5-6(※本ブログでは過去記事

「ゲージ場の量子論(24)」)で記述したように,場

(Aμi,c)=(Φ,c)のBRS変換:

(DI,(g/2)(×))の外場:(K)項を加えた

作用積分S,つまり,

S[Φ~,K]=∫d4x[GIGF+FP

+KII+(g/2)K(×)](9)

ただし,Φ~=(Aμi,c,c~,B),

IIΦI=Kμμ

-Ki(ig)(T))ijφj.(10)を持つ系を

考え,その系の有効作用:Γ[Φ~,K]

=Γ[ΦI,c,c~,B,KI.K]

に対するWard-高橋恒等式(WT恒等式)

を導けば,汎関数微分を用いて,§5-6の(11)

と同じく.(δΓ/δΦI)(δΓ/δKI)

+(δΓ/δc)(δΓ/δK)

+i(δΓ/δc~)B=0.(11)を得ます。

ここでも,以下でも§5-6同様,式から∫d4

の積分記号を省略した記法を用いています。

さらに,NL場(中西-Lautrap)場:B

反ゴースト場:c~の運動方程式から従う,

  • 5-6の(12),(13)は.今の一般線形ゲージに

対するものとしてha,次の,

δΓ/δB=fIΦI+w+αB.(12),

および,fI(δΓ/δKI)+i(δΓ/δc~)

=0.(13)と読み変えた式になります。

次に(くりこみ可能性の主張)という項

に入ります。

作用:S[Φ~,K]=∫d4x[GI

GF+FP+KII

+(g/2)K(×)](9) や,(11)~(13)

における有効作用Γ[Φ~,K]の引数は,本当

は皆,裸の場:Φ~0=(Φ0I,c0,c~0,B0),

裸の外場:K0=(K0I.K0),裸の結合定数

(g0,f0I0)で元々,書かれている量であり,

故に(11)~(13)のWT恒等式に現われるΓ,Φ.

K,f,αは.本来は裸の量を示す添字0を付ける

べきものです。

ゲージ結合定数:g以外にも物質場間の湯川

結合定数や,λφ4の結合定数λ,それに物質場の

質量についても,もし存在すれば同様に裸の量と

して考慮します。

しかしながら,裸の量は,本来,発散量ですから,

裸の量を用いた議論が意味を持つためには,

何らかの正則化を実行しておく必要があり,しかも

裸の量に対し(11)のWT恒等式を導けるためには

この正則化は「ゲージ不変性を尊重するもの」で

ある必要があります、

ゲージ不変な正則化が存在するかどうか?は,

理論に依りますが,この節で考察する理論では

「ゲージ不変な正則化の方法が存在する。」

と仮定します。これは重要な仮定です。

話を明確にするため,ここでは次元正則化を

採用しておくことにします。

以前の節で述べたように.カイラルFermionの

ある場合,すなわち,γ5行列の現われる場合は,

次元正則化でもゲージ不変性を壊します。

しかし,そのような場合は,実際,他にもゲージ

不変な正則化は存在せず,後章で述べるように,

一般に,アノマリー(量子異常)が現われ.くりこみ

可能性が壊れることになります。

本節で証明したい最終的主張は裸の量で書いた

有効作用Γ0を次に定義するくりこまれた諸量で

書き直せば,有限な汎関数:Γ(くりこまれた有効

作用)になる。ということです。すなわち,

Γ[Φ~0,K0,g0,f00]=Γ[Φ~,K,g,f,α].

(14)が証明すべき式です。

くりこまれた場:Φ~=(Φ,c,c~,0)は,

裸の場:Φ~0=(Φ0I,c0,c~0,B0)とは,

それぞれ,A0μ=Z31/2μ.(15-1),

φ0i=Zi1/2i+vi.(15-2)

(c0,c~0)=Z~31/2(c,c~).(15-3)

の関係でつながっているとします。

物質場部分の定数viは,一般的線形ゲージ

GF+FP=-iδ(c~);F(A,φ,B)

=∂μμ+fiφi+(α/2)B+wで,

の右辺がfφi項を含むことに起因し

(対称性の自発的破れがない場合でも必要な)

場φiの定数シフトです。

NL場:Bや,外場:Kのくりこみは,

(11)~(13)の恒等式がくりこまれた量で

書いても同じ形になるように行ないます。

これは,まず,(12)の裸の式:

δΓ0/δB0=∂μ0μ+f0iφ0i+w

+α00.(16)に,Γ0=Γ,A0μ=Z31/2μ,

φ0i=Zi1/2i+vi)を代入し,くりこんだ量

で書いても同じ形になる(しかし,定数項:w

はゼロとなって消える)ように

0=Z3-1/2,f0i=Z31/2i-1/2i,

α0=Z3α,wa­=-Z31/2ii.(17)とします。

(※Bやゲージパラメータαの上記の関係式

は§5-6の議論で得た(63),(58)に一致して

います。

また,(4)のゲージ固定関数に定数項w

必要であった理由はφiの定数シフト:vi

(発散量)を相殺するためでした。

(※裸のLagrangianの場では大局的ゲージが

破れていて,くりこまれた場では破れていない

とすると,φ0i=Zi1/2i+vi)によって有効

作用では,0次で.Zi=1,場の真空期待値はφ~i

=0,で,くりこむ前は破れによるシフトvi

現われていると考えられます。

くりこまれた場ではfiが共変に変換する

量と見なせば大局的ゲージを破りません。)

次に,(13)の裸の式:

0I(δΓ0/δK0I)+i(δΓ0/δc~0)=0.

が,くりこまれた量で同じ形に留まるために,

0μ=Z~31/2μ,K0i=(Z~31/231/2/Zi1/2)Ki.

(18)とすべきこと,さらに,(11)の裸の式:

δΓ0/δΦ0I)(δΓ0/δK0I)

+(δΓ0/δc0)(δΓ0/δK0c)

+i(δΓ0/δc~0)B0=0.が同じ形

に留まるために,K0c=Z31/2c.(19)

とすべきことが従います。

最後に,結合定数:gは,g0=Z13-3/2g.

(20)でくりこむとします。

以上,(15),(17)~(20)の置き換えでくりこみ

を実施すれば,くりこみ因子:=(Z1,Z3,Z~3,Zi),

および,φi場のシフトviの値の選び方に依らず,

常に,裸の量と同じく(11)~(13)のWT恒等式

((12)ではw=0としたもの)がくりこまれた量

でも成立するという点に特に着目しておきます。

そして,くりこみ可能性の主張である(14)式:

Γ[Φ~0,K0,g0,f00]=Γ[Φ~,K,g,f,α].

は,やviを正しく選んだときに,くりこまれた

有効作用ΓがΦ~,K,g,f,αの有限な汎関数に

なる。ということです。

※上記記事の参考として注尺を列記します。

※(注10-1):一般線形ゲージの設定がfi

を含むので,totalのLagrabgian:が大局的

ゲージ不変性(global gauge symmetry)を

破っています。

つまり,裸のゲージ固定関数は,F0

=∂μ0μ+f0iφ0i+(α0/2)B0+w

=Z31/2{∂μμ+fii+vi)+αB

-fii}

=Z31/2{∂μμ+fiφi+αB}

と,くり込まれた量の定数培に書けます。

ゲージ固定の意味についてはGF+FP

分けて,GF=-i(δc~)=B

FP=ic~(δ)と書くとゲージ

条件は.Euler-Lagrabge方程式:∂/∂B

=∂GF/∂B=0 から,

+B(∂F/∂B)=0です。

今の線形固定関数(4)の場合は,裸では

μ0μ+αB0+f0iφ0i+w=0,

であり,くりこんだ量では,

μμ+αB+fiφi,=0です。

スカラー場:φiのゲージ変換(位相変換)

の無限小変換:φi → φi+θ(T)ijφj

で,微小パラメータ:θが時空座標xに依存

するなら局所ゲージ変換ですが,これがxに

無関係な定数なら,大局的ゲージ変換です。

そもそも,大局的変換は局所変換の特別な

場合ですからが(局所)ゲージ変換の下で

不変なら大局的ゲージ変換の下でも不変です。

大局的変換であれば,元々ゲージ場:Aμ

必要ないです。

実際,Aμのゲージ変換はBRS変換:δμ

=Dμのゴースト場:cが,ただのc-数の

パラメータ:θである場合ですから,だらに

大局的変換でθがGrassmann偶の普通の定数

なら,∂μθ=0より.Dμθ=(g/2)fabc

θθ=0で,やはりゲージ場:Aμは不変で

あっても無くてもいい存在です。

今.考察中の系ではLagrangian密度

GIGF+FP,で与えられ,

GI=-(1/4)Fμνaμν

matter(φi,Dμφi)および,.GF+FP

=B(∂μμ+fiφi+w)+(α/2)Ba

+ic~{∂μμ-igfi(T)ijφj

ですが.これはφiが,θが定数の次の位相変換

φi →φi+θ(T)ijφjを受けて,μが不変

の大局的ゲージ変換の下でも,不変であるはず

なのですが,実際には(fiφi+w)の項

が怪しいです。wは定数だから不変でいいとして

iφi項においては.fiが(φi)のようにφi

と逆位相に変換される量である,としないと,大局的

不変性が成立しません。fiが定数なら破れています。

よって,fiφiの項は余分で,これがあると既に

破れています。

この余分な項はくりこみのためにワザワザ付加した

もので,裸の0GF=B0(∂μ0μ+f0iφ0i+w)

+(α0/2)B0a0の段階では,眞空期待値がφ~0i≠0

であったのに,くりこむと,GF=B(∂μμ

iφi)+(α/2)Baとなって眞空期待値が

φ~i=0という合理的な値になるように付加した項

と考えられます。

この破れによって有効ポテンシャル:V[φ~i]

の最小値を与えていたφ~ii場の期待値)が

真空で,φ~0i=vi≠0から,φ~i=0へとシフト

を起こします。

より詳細には,裸のV0[φ~0i]は破れていた

のでV0の最小値を与える真空での場の期待値

はφ~0i=vi≠0であったのに,くりこんだ結果

のそれは,φ~i=0になったと解釈します。

つまり,V0 min=V0[φ~0i]=V0[Zi1/2(φ~i+vi)]

であり,最右辺をV[φ~i]と書けば,V0が最小値

をとる真空では,期待値がφ~i0=vi≠0であり,

くりこまれた量φ~では,場の真空期待値がゼロ

である,ということを示しています。

(注10-1終わり※)

※(注10-2):以下,過去記事;

「ゲージ場の量子論(24)」の第5章の§5-6

Ward-高橋恒等式の関連する部分を再掲載

しようと思います。

ただ,その前に,そもそも,元の素朴な

Ward-高橋恒等式とは,2点Green関数と

頂点関数の同等性を意味する式と,私が理解

している内容を述べておきます。すなわち,

単純な恒等式:S(p1)-1-S(p2)-1

=(1-m)-(2-m)

=(12)=-(p2-p1)μγμの成立は

自明ですが,この自由伝播関数:Sと自由頂点

γμに,相互作用の着物を着せて輻射補正をする

と,摂動論的には,自己エネルギーの発散があります

が,それをくりこんだ伝播関数と頂点関数を,それぞれ,

S~,Γ~μと書いて,先の単純な恒等式を拡張すると,

~(p1)-1-S~(p2)-

1=-(p2-p1)μΓ~μ(p2,p1) となります。

 または,Wardの恒等式:Γ~μ(p~,p)|p~=

=-(∂/∂pμ)S~(p)-1を得ます。

こうして,2点頂点関数は,伝播関数の逆数の差

という意味を持つことを示している,と考えています。

さて,ここからは「ゲージ場の量子論(24)」

の再掲載記事です。

(再掲開始:※)Ward-高橋恒等式について,

一般にゲージ不変性に限らず,ある対称性が存在

すると,種々のGreen関数,頂点関数等の間に種々

の関係式が成立します。このような関係式を一般

にWard-高橋恒等式,略してWT恒等式と呼びます。

ゲージ不変性に関わるGreen関数についてのWT

恒等式は,全てBRS演算子:Qを用いて,次のように

簡単に与えることができます。

すなわち,Ok(x)を任意の場(または,その多項式)

の演算子として,真空のBRS不変性: Q{0>=0

を用いると,

0=<0|{Q,T(Ok(x1),Ok(x2),..,Om(x))}|0>

=Σk=1n(-)Sk<0|T(Ok(x1),Ok(x2)

,..δ(xk),..Om(x)|0> なる恒等式を得ます。

ただし,S=Σi=1k-1|i|,(|i|はOの統計指数)

1粒子既約な(1PI)頂点関数,または,その生成汎関数

に対するWT恒等式を得るには,次のようにします。

まず,全ての場:ΦIとそのBRS変換;δΦ

対して外場を導入します。すなわち,作用積分:

S[J,K]=∫d4x[Jaμμ+Jiφi+J~

+J~c~+J+Kaμμ

-iKig(T)ijφj+(1/2)Kg(×)]

を考えます。

ここで,場は全てHeisenberg場であり,J~,

c~,KaμはGrassmann奇数,Jaμ,Ji,K

は普通の数(Grassman偶数)です。

物質場については,φがBosonなら,Ki

Grassmann奇数,Jiは普通の数で,φiがFermion

なら,逆です。

BRS変換された量:δΦIは既にBRS不変

なので,{iQ,Dμ}={iQ,cg(T)ijφj}

={iQ,(×)}=0 です。

そこで,0=<0|{iQ, TexpiS[J,K]|0>

=i∫d4x<0|T[Jaμμ

-(-)|i|ig(T)ijφj-(1/2)J~(×)

-iJc~]TexpiS[J,K]|0> が成立します。

(※|i|は(Jiの統計指数)=(φiの統計指数)です。)

摂動論の項目では,外場:Jを与えてGteem関数の

生成汎関数をZ[J]とし,Z[J]=exp(iW[J])に

よって得られる,連結Green関数の生成汎関数:

W[J,K],および,頂点関数に対する生成汎関数:

Γ[Φ,K]を考察しましたが,同様に,

exp(iW[J,K]=<0|TexpiS[J,K]|0>,

Γ[Φ,K]=W[J,K]-JI・ΦI,

ΦI(x)=(δ/δJI(x))W[J,K]

=<0|T{ΦI(x)expiS[J,K]}|0>

/<0|TexpiS[J,K]|0>,によって.

これらを定義します。

ただし,ここではJIは,(Jaμ,Ji,J~,

c~,)の全てを意味します。

一般的記号として,ΦI(x)

=<0|T{ΦI(x)expiS[J,K]}|0>

/<0|TexpiS[J,K]|0>で定義されるΓの

引数のΦは,c-数(期待値)であり,対応する

Heusenberg場:Φ=Aμi:,c~,B

同じ記号で表わしますが.混同しないよう注意

を要します。

上のΓ[Φ,K]=W[J,K]-JI・ΦIの右辺,

および,,以下においてドット(dot)・は,積分記号

∫d4xの省略とします。

そうすれば,恒等式:

0=<0|{iQ,TexpiS[J,K]|0>

=i∫d4x<0|T[Jaμμ

-(-)|i|ig(T)ijφj-(1/2)J~(×)

-iJ~]TexpiS[J,K]|0>は,

[Jaμ({δ/δKμ)+(-){i{l(δ/δKi)

-J~(δ/δK)-Jc~(δ/δJ)}W[J,K]

=0 と書き直せます。

Γ[Φ,K]=W[J,K]-JI・ΦI,のLegendre変換

から.従う,ΦI(x)=(δ/δJI(x))W[J,K]

=<0|T{ΦI(x)expiS[J,K]}|0>

/<0|TexpiS[J,K]|0>,に双対な関係式

(δ/δΦI(x))Γ[Φ,K]=-(-)|I|I(x),

および,(δ/δKI(x))ΓW[Φ,K]

=(δ/δKI(x))Γ[Φ,K]を用いると,先の

恒等式は次のように書き直されます。

すなわち,(δΓ/δAμ)(δΓ/δKμ)

+(δΓ/δφi)(δΓ/δKi)

-(δΓ/δc)(δΓ/δK)

+i(δΓ/δc~)B=0.(11)と書けます。

これが,(1PI)頂点関数の生成汎関数:Γに

対するWT恒等式です。ただし,Grassmann数に

よる微分は全て左微分です。

ΓのNL場:Bや反ゴースト場:c~への依存性

は特殊で運動方程式:∂μμ+αB=0,

μμ=Dμμc~=0より従う次の恒等式

を満たします。

 なわち.δΓ/δB=∂μμ+αB,(12)

および,/δKμ)+iδΓ/δc~=0.13)です。

(再掲載終了) (注10-2終了※)

 

今回はここで終わります。

(参考文献):九後汰一郎著「ゲ゙―ジ゙場の量子論Ⅱ」

(培風館)

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2020年5月26日 (火)

くりこみ理論(次元正則化)(9)

くりこみ理論(次元正則化)」の続きです。

(※これを書いている実際の日付は,4月に

入ったところです。):

(※余談)実は,2020年5/23に(8)までアップ

して,翌24日にこれをアップしようとして原稿

が消えてしまい,バックアッもプ取ってなかった

ので,A4で約10ページそっくり消えて,何日も

苦労したのに,と落胆しました。

思い直して,何とか最初から書き直して今まで

かかりました。

自分で書いた種ノートがあるとはいえ,今の視力

でギリギリ読める字の大きさで(参考書の方はもはや

ルーペでもないと無理ですが),しかも20年以上も

前に書いたものなので,判読できても意味不明なこと

も多々あり,その都度熟考して注釈など追加している

うち,前は10ぺージほどだった原稿が長くなり過ぎて

途中で分割して次にまわしました。

思えば,その昔,勤務していた会社に.30代後半の頃

「オアシス」と「文豪」というワープロが1台ずつ

入り,薄い5.25インチのフロッピーに保存しながら

文書を書いた,というのが,私のワープロ初体験でした。

それでも,2台しかないし,しばらくは前と同様,手書き

か,製本時に印刷屋に出すことが多かったのですが,それ

から,シャープの「書院」というのが複数台入った,40歳

のとき,その会社をやめて,初めて自宅でNECのPC98という

パソコンを購入した頃は,OSはMS-DOSでワープロ・ソフト

は「一太郎」を使っていました。

今のTB(テラバイト)仕様のものから見るとゴミのような

僅か80MB程度のハードでィスクもありましたが,まだ,3.5

インチのフロッピーが主流でした。

結局1995年(45歳)のころ.Windows95の時代になりPC98

の全盛時代も終わり,私も最初はCompaqのマシンを買い,世

に習ってMS-officeのWordを使うようになりました。

それから12年ぶり52歳で最初の会社にアルバイトで4

年間勤務した頃は,もう文書はWordで作るのが常識の時代

で,会社でも自宅でも長時間で作ったものを消して

悔しかった。という失敗は,山ほどありました。

まあ,機械相手に腹を立てても仕方ないです。

(余談終わり※)

以下,本題に入ります。

 

  • 7-3のBPHZくりこみの中で,

「対称性とくりこみ」の項目に入ります。

 

, BPHZくりこみとその「収束定理」から

直ちに従う,いくつかの重要な命題を与えます。

さて,今,考察中の問題では,Lagrangian が,

free+Σiiint.(1)の形を持つ,全く一般的

な,Boson:{φ}とFermion:{ψ}の系を考えている

ことを,思い出す必要があります。

そして,先の収束定理は,そうした系での紫外

発散が,任意のグラフΓにおいて,そのくりこみ

部分γの各々に対し,見かけの発散次数:ω(γ)

分だけのTayler項の引き算:(-tω(γ)γ)Rγ

行なえば除去される,ということを述べています。

γの見掛けの次数ω(γ)が,Γに対する公式:

ω(Γ)=Σni{(di+bi+(3/2)fi-4}

=4-E-(3/2)E+Σniδi.(7)によって,

内部グラフ:γのBoson,とFermionの外線数

を.それぞれ,Eγ,Eγとするとき,

ω(γ)=4-Eγ-(3/2)Eγ+Σniδi.(28)

(niはグラフγ中のi-頂点の数)と書けること

から,(271のTayler展開のpのω(γ)次まで

の各項の引き算は,次の形をした局所相殺項:

ountγ=(定数)×(∂)(φ)EBγ(ψ or ψ~)EFγ(29)

(d=0,1,..ω(γ))を挿入すること,に相当して

いることがわかります。

この相殺項:countγの次元,または(3)でi-頂点

に対して定義した指標:

δi=bi+(3/2)fi+di-4=dim(iint)-4

のグラフγの相殺項に対応する指標δは,

(28),(29)から,dim(countγ)

=d-Eγ-(3/2)Eγ

=4+Σniδi-{ω(γ)-d}(30),または.

δ(countγ)=4-dim(cohntγ)

=Σniδi-{ω(γ)-d}.(31)

で与えられます。

ところが,(29)により,ω(γ)-d≧0

ですから,(31)より,次の命題1を得ます。

※[命題1]「あるくりこみ部分のグラフ:γ

の発散から要求される相殺項:countγは,

その指標:δがγ内の相互作用頂点の指標

の総和以下のものに限られる。」

先に,指標がδi≦0である相互作用項:iのみ

から成る理論をくりこみ可能な理論と名付け

ましたが,くりこみが,前節の乗法的くりこみで

やったように,場の規格化や,質量,結合定数の

書き換えと解釈できるためには,もっと強い条件

が必要です。(※ 湯川相補作用系におけるλφ4項は

その例でした。)

この強い条件を満たす理論の方が通常,くりこみ可能

と言われるものなので,ここでもそれに従います。

そうすれば,命題1から,次の命題2を得ます。

※[命題2]「(1)で定義した意味のBosonとFermion

が与えられたとき,その全ての場とその微分から構成

される次元が1,2,3,4の(つまりδ=4-dim(cohntγ)

より,指標δがδ≦0を満たす)可能な単項式の全て

を含む(裸の)Lagrangianを持つ系は,くりこみ可能

である。」

実際の系では,Lorentz不変性を別にしても,種々

の内部対称性を持っています。例えば,最も単純な

λφ4理論でも,φ→(-φ)で不変という対称性が

あり,φの奇数次の頂点関数:Γ(2k+1)は摂動の任意

次数でゼロであり,したがって,裸のLagrangianも

φの偶数次の項だけを用意しておけば,くりこみ可能

ということになるはずです。

前節の湯川相互作用系は,さらにアイソスピンSU(2)

対称性を持ち,SU(2)不変な項のみから成るLagrangian

で,くりこみ可能です。

これらの内部対称性は,どれもBPHZ手続きの,

どの段階でも明白に保持されている対称性なので,

その対称性を破るTaylor引き算項は現われず,相殺項

は,対称性を持つもののみで十分です。

(※例えば,Tr(τiττ)=0によりφの奇数次項は

湯川相互作用では許されません。そこで,その相殺項

もφの偶数次の項のみがあれば十分です。)

そこで,次の命題3が従います。

※[命題3]「BPHZ手続きで明白に保たれる線形内部

対称性を持つ系の場合は,命題2のLagrangianを,その

対称性を満たす項のみに制限しても,くりこみ可能である。」

Lorentz不変性,SU(n),カイラル対称性,荷電共役

不変性,パリティ不変性等々は,皆,このような明白な対称性

の例です。しかし,対称性が場に関して非線形な変換の場合

は,もはや,ここでいう明白な対称性ではありません。

また,線形な対称性でも,自発的に破れた真空の上で,摂動

計算を行なう場合は,場の変換が非線形になり,「明白な」

対称性ではなくなります。

とはいえ,非線形な「明白でない」対称性でも,多くの

場合は,Lagrangianを,その対称性を満たすものに限っても,

くりこみ可能であることがわかります。

ただ,これら非自明な対称性の系の場合には,個々別々に

くりこみ可能性の証明が必要です。

この,すぐ後に議論する予定のゲージ理論のくりこみの

問題も基本的なBRS対称性が非線形であり,この範疇の

問題の1つです。

さて,ある対称性を破る項が次元3以下,(d次元時空なら

(d-1)以下)の場合,これをソフト(soft)な破れ項と呼びます。

次の定理は,対称性を破るソフトな項を系に付け加えた場合

への命題3の拡張として,Symanzikが初めて与えたものです。

※[定理]:「命題3の仮定を満たす系に,その対称性を破る次元

がd(≦3)のソフトな項を加えたとき,d以下の次元の対称性を

破る項の全てをLagrangianに加えれば,くりこみ可能である。」

[証明]:Lagrangianにおける対称な項は,皆,指標δ≦0を

持っているはずです。

一方,対称性を破る項は,仮定からd以下の次元ですから,

その指標δはδ=dim(γ)-4≦(d-4)を満たします。

対称性を破る相殺項は,対称性を破る項を少なくとも

1つの頂点に含むグラフ:γの発散から要求されます。

そのようなグラフγ内の相互作用頂点の指標の総和:

Σniδiは,(d-4)以下です:

それ故,命題1より要求される相殺項の指標は(d-4)

以下に限られます。故に,その次元は,dim(γ)=δ+4

なのでd以下のものに限られます。[証明終わり]

この定理は,例えば理論の赤外発散を正則化する技巧

としてBosonの質量項を手で付け加えるなどというとき,

たとえ,それが系の対称性を破る場合でも,次元3以上の

相互作用項は,対称なものから変更する必要がないこと

を保証しており,有用なものです。

もっとも,この定理で述べているのは無限大の相殺項に

関する話であって,有限部分に関していえば,もちろん,

次元がdを越える項にも対称性を破る効果が現われる

ことに注意あうる必要があります。

  • 7.4 ゲージ理論の乗法的くりこみ

前節の乗法的くりこみの一般論により,特に命題2

によって,Lagrangianとして次元が4以下のあらゆる

相互作用項を用意しておけば,系は一般にくりこみ

可能であることが,わかりました。

したがって,そのBoson場としてベクトル場が入って

きても,その伝播関数が運動量kの大きいとき,k-2

挙動するタイプのものであれば,くりこみ可能性に

関して特に問題があるわけではありません。

しかしながら,べクトル場を含む場合,そのような

一般的な系では,物理的な意味がないです。というのは

第5章で述べたように,ベクトル場は負計量のモードを

含んでいて,これが物理的な確率解釈を壊すからです。.

そのような負計量モードが,物理的空間には有限な

確率で出てこないように制御するためには,系はゲージ

不変性,または,量子系でより正確に言えばBRS不変性

を持たねばなりません。このゲージ不変性のために,系

のLagrangianは,次元が4以下の全ての勝手な項を持つ

ことはできません。

例えば,ゲージ場の質量項:(1/2)m2μaμは存在

しないし,(A)3項の係数g(結合定数)と,(A)4項の係数

2は独立ではありません。すなわち,相殺項として用意

できる項は,かなり制限されています。

このような制限された相殺項だけで,現われる発散の

全てを実際に除去できるのか?という問題がゲージ理論

における(乗法的)くりこみ可能性のっ問題なのです。

この点は対称性を持つ系では常に存在する問題ですが,

先の命題3のところで見たようにゲージ系の場合,BRS

対称性が非線形であるため,これは自明ではありません。

これに対する肯定的回答(くりこみ可能であること

の証明)を与えるのが本節(§7-4)の目的です。

 

途中で短かいですが,続き全部を書くと長くなり過ぎる

し,キリもいいので,今回はここで一旦終わります。

(参考文献):九後汰一郎著「ゲ゙―ジ゙場の量子論Ⅱ」

(培風館)

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