114 . 場理論・QED

2017年11月20日 (月)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(9)

「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
 

さて,我々は一般相対性理論によって, 

我々の宇宙の4次元時空は擬Riemann多様体であり,その 

計量テンソル成分を(μν)とすると時空点の世界間隔:ds 

はds2=gμνdxμdxνで与えられること,
 

そして,時空を運動する粒子のLagrangian密度:, 

()=-ds=(μνdxμdxν)1/2として,作用:  

S=∫dxL()=-∫dsに対する作用原理: 

停留条件(最大固有時間)δS=0を満たすEuler-Lagrange  

方程式が時空内の粒子(質点)の運動を支配する測地線 

の方程式(自由落下)を与えることを知っています。

そこで,以下の論議の最終目的は次のとおりです。
 

例えば,カイラル群:G=U()×U()がH=U() 

へと自発的に破れた場合,商空間:/HをNGボソンの場: 

πa()を座標とする多様体と見なすことができます。
 

そして,多様体G/Hの座標は,πa()に限らず, 

φα=fα(π)(α=1,2,dim(/))のように, 

一般的ニ選ぶことができて,そのときの計量テンソル: 

αβ(φ) により,カイラルLagrangianの自然な形式 

として時空多様体標準のカイラル=gαβ(φ)μφαμφβ 

とできることを見るのが最終目的です。
 

そのため,NGボソンの場:πaによるG/Hの代表元: 

ξ(π),ξ(π)exp{i(Σaπaa)}, 

π()=Σaπa()a() で与えられ, 

さらに,πを崩壊定数としてスケール変換:  

π() → π()/π,を実行して, 

U=ξ2(π)exp{2iπ()/π}(から 

NGボソン場のカイラルLagrangian密度:カイラル 

カイラル=-(π2/)r(U∂μ)で与えられる 

ことがわかり,これが結局:=gαβ(φ)μφαμφβ 

となることを導くわけです。
 

以下はその手順の手さぐり作業と見なせます。
 

§6.4 非線形表現 

一般的に対称性がGからHへと破れた場合にNGボソンが自分 

自身,または他の物質場と,どういう相互作用をし得るのか?を 

対称性の要求から決める1方法として,非線形表現Lagrangian 

を構成する方法を述べます。
 

このLagrangianにおいて,NGボソン場の微分の次数が最も低い 

項は,任意パラメータなしで一意的に決まる,という事情があり, 

§6.3の「低エネルギー定理」に対応します。
 

さて,NGボソン非線形Lagrangianを求めます。
 

対称性が群Gから部分群Hへ破れた場合,既述したように 

Gの生成子:の全体,破れていない生成子:α 

と破れた生成子:aに分離します。
 

{の全体∈}{α,a}です。
 

ここで,r(αa)0 for ∀Sα,∀Xa, 

,α,aは最も簡単な基本表現の表現行列(Hermite行列) 

と理解しておきます。
 

基本表現以外の表現:ρの場合の表現行列は,これらと区別して 

ρ(),ρ(α),ρ(a)などと表わすことにします。
 

さらに規格化を,r(αβ)(1/2)δαβ, 

r(ab)(1/2)δab となるように取っておきます。
 

(9-1):N次のHermite行列:,Yの内積:(,) 

(,)=Tr(XY)で定義します。この定義は,実数上 

の線形空間での実数値内積であるための必要十分条件を 

全て満たす無矛盾な定義であることがわかります。
 

すなわち,XのN個の固有値をλ1,λ2,..λとすると, 

XがHermite行列なら,これらの固有値は全て実数であり 

Xは適切な正則行列Pによる相似変換:PXP-1により 

対角要素がλ1,λ2,..λのN次対角行列に相似変換可能です。

このとき,r(PXP-1)=Tr()=Σ=1Nλjです。
 

同様に,Yの固有値をσ1,σ2,..σとすると,これらも全て 

実数で.r(XY)=Σ=1Nλjσj です。 

したがって,(,)=Tr(XY)は常に実数です。
 

そこで,この定義は,実数上の線形空間での実数値内積 

であるための必要十分条件とされる次の条件を全て満足 

します。
 

,,Zを任意のHermite行列とすると, 

1.(,)=(,) (交換則) 

2. (X+Y,)=(,)(,) (分配則), 

3. ∀k∈Rに対して,(kX,)=k(,) 

4.(,)0, .(,)0 ⇒X=0  

が成立します。
 

ちょっと成立が怪しいのは,条件4だけですが,(,) 

=Tr(2)=Σ=1Nλj2 ですから,これも明らかにクリア 

されています。
 

そして,特に∀X,∀Yに対して常にTr[,]0です。
 

ここで,(,)=Tr(XY)0のとき,XとYは直交する 

といいます。
 

ユニタリ群:Gの生成子:{}の作る線形空間:, 

g∈Gに対して,g=exp(i)となるHermite演算子: 

X全体の集合で,GのLie(またはLie代数) 

と呼ばれます。これがM次元の線形空間を作るとき, 

その基底がM個の生成子の集合:{}A=1Mです。
 

N次元の表現空間では,gの表現,およおび,Xの表現は, 

それぞれ,N次のUnitary行列,および,Hermite行列  

となります。
 

ところで,Schmidtの直交化法により,任意の有限次元 

の内積が定義された線形空間の基底は,正規直交化する 

ことが可能です。そこで,例えば(,)=Tr() 

=δAB(,B=1,2..,)と規格化できます。
 

HがGの部分群であるとき,HのLie代数:はGの 

Lie代数:の直交空間,()の直交穂空間と 

なるようにとることができます。 (9-1終わり※)
 

さて,r(αβ)(1/2)δαβ,r(ab)(1/2)δab, 

なる規格化とTr(αa)0  によって, 

まず,r(α[β,a])=Tr ([α,β]a)0  

です。したがって,常に[α,a]() です。
 

つまり,[,]()ということになります。
 

(9-2):何故なら,[,]=ABC-ACB 

[,]C-[,AC],r([,AC])0 より, 

r([,])=Tr ([,])です。
 

そして,部分環(部分代数):は交換子[ , ]に対して 

閉じていて,[α,β]ですから, 

[α,β]=Σγγγと書けて,r (γa)0  

なので,r ([α,β]a)0 を得ます。  

(9-2終わり※)
 

一方,[a,b]()に属するとは限らず,一般には 

αとXaの線形結合で与えられますが,特にSαのみの 

線形結合で書ける場合,つまり,[,] 

の場合,商空間(oset space)(or 等質空間:homogeneous space) 

/(を法とする同値類の集合),対称空間(symmetry space) 

と呼ばれます。
 

商空間:/が対称空間であるとは要するに, 

の元Xに対する"パリティ変換"τ:G → G を, 

Y∈なら,τ()=Y, Y∈()なら,τ()=-Y 

で定義するとき,このτを実行しても代数()が不変である 

ことを意味します。(※数学では,この"パリティ変換":τ 

のことを対合的自己同型写像(involutive homomorphism) 

いうようです。)
 

(9-3):一般に,[a,b]=Σααα+Σaaa 

と書けます。故に,両辺に線形写像:τを実行すると, 

τ[a,b]=Σαατ(α)+Σaaτ(a)ですから, 

[a,b]=Σααα-Σaaa と書けます。
 

そこで,[a,b]=Σααα+Σaaa ,τで不変 

なら,それはΣααα-Σaaa=Σααα+Σaaa 

を意味します。
 

したがって,∀aについてda0 ですが,これは商空間: 

/が対称空間:[,]であること, 

同値です。つまり,[a,b]の作る空間:[,]  

が”パリティ変換”:τで不変なことと,/が対称空間で 

あること:[,]H は同値である, 

ということです。 (9-3終わり※)
 

環の商空間:/が対称空間である場合は,破れていない 

生成子=の元:αには偶(),破れた生成子=() 

の元:aには奇()のパリティを付与できる場合です。
 

((9-4);カイラル群:G=U()×U() 

H=U()へと破れた場合,H=U()のパリティは 

()(G-H)=U()のパリティは奇()であり, 

群としての商空間:/Hは群としての対称空間の例です。

(94終わり※)
 

ここまで見てきたように,NGボソンの個数は商空間:/ 

の次元;dim(/)dimdimに等しく,NGボソン場: 

πaは破れていない部分群Hの下で線形に変換します。
 

この事実は,NGボソン場:πa,商空間G/Hまたは/ 

座標に取るべきことを示唆しています。
 

そこで,ξ(π)を群Gの()商空間:/Hの代表元 

(representative)とし,次のように,NGボソン場:πa 

パラメータ化します。すなわち,ξ(π)exp{iπ()} 

π()=Σaπaaとします。
 

この時点で,NG場:πa()は質量次元がゼロの場です。?
 

(9-5):()剰余類(coset): 

gH={∈G|=gh:h∈H}をHを)法として 

同値類別した同値類と考え,これを元とする商集合が 

商群:/H={gH|g∈G}です。
 

そして,これの元:ξHを構成する全ての同値な元のうちの 

1つのξ∈Gを,ξHの代表元と呼びます。
 

ξ(π)exp{i(Σaπaa)}と書いて場:πaLie代数の元: 

π()=Σaπa()a()を構成するパラメータ 

と考えます。
 

ξ(π)(G-H)であり,これは破れた方の群:(G-H)の元 

に対応しています。Σaで線形和を取るXa()のaの 

個数は;dim(/)dimdimです。  

(9-5終わり※)
 

ξ(π)exp{i(Σaπaa)}に左から群Gの元gを掛けた 

gξ(π)もGの元ですから,/Hのある代表元ξ(π') 

Hのある元;hの積に一意的に分解できます。
 

すなわち,gξ(π)=ξ(π’)(π,)です。
 

(9-6):何故なら,G=∪g∈G(gH)よりgξ(π)∈G 

なら,あるξ'∈Gが存在してgξ(π)∈ξ'Hとなり, 

ξ'Hの代表元を,ξ(π')とすると,Hのある元;hに 

対して,gξ(π)=ξ(π')hと書けます。
 

そして,gξ(π)=ξ11=ξ22なら,ξ1~ξ2,つまり, 

ξ2∈ξ1 or ξ1H=ξ2Hです。
 

この意味で,gξ(π)=ξ(π')hという分解は一意的 

というのは,ξ1Hとξ2HがG/Hの同じ元で,gを掛けると 

分解がξ(π)Hからξ(π')Hに変わるという意味では, 

gξの分解は一意的という意味です。
 

(9-6終わり※)
 

そこで,NG場:π()のg∈Gによる変換(大局的変換) 

π()→π'(),ξ(π')=gξ(π)-1(π,)  

で与えられます。

ただし,ξ(π)exp{iπ()},ξ(π')exp{iπ'()} 

です。
 

写像Fを,()( ξ(π))=gξ(π)-1(π,)と定義 

すると,(21)(ξ(π))=g21ξ(π)-1(π,21) 

=g21ξ(π)-1(π,1)(π,1)-1(π,21) 

=g2(1)(π,1)-1(π,21)です。
 

故に,-1(π,21)=h(π,1)-1(π,21) 

=h-1(π1,2)∈Hとすれば,(21)=F(2)(1) 

が成立する,という意味でFは準同型写像です。
 

そこでFはGの1つの表現ですが,  

()(ξ(απ1+βπ2))=αF()( ξ(π1)) 

+βF()( ξ(π2))が成立しないので 

線形ではないです。
 

そこで,こうしたπによるGの表現を,非線型表現 

(non-linear representation)と呼びます。
 

しかし,g=h∈Hのときには予期されるように,これは 

線形な表現となります。
 

実際,まず,[,]()より, 

[α,a]()なので,hXa-1()です。
 

よって,h∈Hに対してhXa-1()なる変換は, 

{a} ()の準同型写像です。 

つまり,表現空間:()の上の部分群:Hの1つの表現 

であり,しかも,(αXa+βX)-1=αhXa-1+βhXb-1 

ですから,線形表現です。
 

そこで,表現:ξ(π')=gξ(π)-1(π,)でg=hと 

したξ(π')=hξ(π)-1(π,)の場合, 

特に h-1(π,)=hとする選択が可能で,このとき, 

ξ(π')=hξ(π)-1,再び,/Hの代表元となり, 

これは線形表現です。
 

そして,ξ(π')=hξ(π)-1,π'= hπh-1に同値 

でありπに関しても線形です。
 

この表現を,ρ()(π)=hπh-1 (π=Σaπaa  or  

ρ()(a)=hXa-1のように表わせば,この表現:ρは, 

一般には可約な,群Hの表現空間:()の上での線形表現 

,()の基底:{a}を表現ρの表現空間の基底とも 

呼びます。
 

特に,基底:{a}によって表現変換を展開し, 

ρ()(a)=hXa-1=Σbρab()と書けば,ρab() 

はρの表現行列の行列要素を示しています。
 

{a}{a1}|a2}..|an}と直和分割できて 

各々の{ak}の春空間が任意のh∈Hについての変換:ρ() 

の下で不変部分空間になるなら,表現:ρは既約表現の直和 

=完全可約表現となります。
 

π()=Σaπa()aを与えるNGボソン場の座標: 

{πa()},{a}の既約分解:{a1},|a2},..,|an} 

に対応して{πa1()},{πa2()},.. πan()}と分解され, 

各H-既約なセクター:{πaj()}に属する成分:πaj(), 

そのセクターの中で表現:ρにより,πaj=Σbiρjajbi()πbi 

なる線形変換を受けます。
 

()の全ての生成子系:{a}がH-既約なとき,すなわち, 

{a}{a1}|a2}..|an}でn=1の場合,商空間: 

/Hは既約である,といわれます。
 

まず,簡単のため,Gが単純群であるとき,つまり,Gと{1} 

以外には正規部分群を持たない場合,を考えます。
 

非線型表現のLagrangianにおいて基本的役割を果たす量 

,ξ(π)∈G/Hから作られる次の1形式(1次微分形式) 

です。
 

すなわち,α(π)(i)ξ(π)-1dξ(π),または,もっと 

陽に成分で,α=αμdxμ,dξ=∂μξdxμ と書けば, 

αμ(π)(i)ξ(π)-1μξ(π)です。 

(※これは,数学ではマウレ-・カルタン形式 

(Maurer-Cartan form)と呼ばれます。)
 

途中ですが,今日はここまでにします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)

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2017年11月13日 (月)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(8)

「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
 

前回は,1つの核子:Nが1つの軟NGボソン:πを放出する 

過程に対応して,軸性カレントAμ()を運動量がpiとpf 

の核子状態で挟んだ行列要素: 

<N(f)|μ()|(i)>=Mμ()exp(iqx) 

(q=pi-pf)を考察し, 

Goldbwrger-Treimanの関係式」と呼ばれる最も簡単な, 

「低エネルギ^定理」を見出しました。,
 

今回は軟NGボソンの2体過程を考察します。
 

任意個数の軟NGボゾン(soft NG-Boson)の関与する 

過程に対しても「低エネルギー定理」を導くことができ 

ますが,その最も簡単な例として,2つの軟NGボソン 

の弾性衝突過程:πi(i)+πa() → πf(f)+πb() 

の散乱振幅を考察します。
 

ただし,軟らかい(oft)ボソンとは,低エネルギー,つまり, 

振動数が小さくてゼロに近い,または,波長が無限大に近い 

Bose粒子を意味します。
 

予め,目的を明示しない論議では,何の計算をしているのか? 

が不明で,モチベーションの持ち方に影響すると思われるので 

まず,結論から述べることにします。
 

2つのNGボソンの2体弾性衝突の過程: 

πi(i)+πa() → πf(f)+πb()では,全てのπは 

質量がゼロの質量殻上:i2=pf2=q2=k20 にあるため, 

4元運動量保存則から散乱のs,,u チャンネルの 

値は,s=(i+q)22iq=2kpf, 

t=(i-pf)2 =-2if=-2kq, 

u=(i-q)2=-2iq=-2kpf  

で定義されます。
 

この散乱での不変散乱振幅:, 

[πi(i)+πa() → πf(f)+πb()] 

=-(1/π2)(1/2)[(iabc)(ibci)(k+q)(i+pf) 

(2π2)-1(u-s)ibcabc となることがわかり, 

Bose対称性から,これは 

[πi(i)+πa() → πf(f)+πb()] 

 (3π2)-1{(u-s)ifccab (s-t)ibccfa  

(t-u)iaccbf } と書けます。
 

これが求める軟NGボソンの2体衝突の振幅に対する 

「低エネルギー定理」を与えるというのが結論です。
 

これを示すため,まず,核子:Nと軟NGボソン:πの弾性 

散乱:(i)+πa() → N(f)+πb()のS波部分 

の振幅を考えます。
 

関係する行列要素は,(外線付き2点Green関数) 

<N(f)|[aμ()bν()]|(i)>です。
 

これに∂μνを作用させ,軸性カレントの保存則: 

xμμ0,yνbν0 を用いると,次式を得ます。
 

μν<N(f)|{aμ()bν()}|(i) 

(1/2){μδ(0-y0)

<N(f)|[bν(),aμ()]|(i) 

+∂yνδ(0-y0)<N(f)|[aμ(),bν()]|(i)} 

です。
 

(8-1):何故なら,Bose粒子に対するT積の定義から, 

[aμ()bν()]=θ(0-y0)aμ()bν() 

+θ(0-x0)bν()aμ() です。
 

そこで,μ[aμ()bν()] 

=δ(0-y0)aμ()bν()

-δ(0-x0)bν()aμ() 

=δ(0-y0) [aμ(),bν()] です。
 

同様に,ν[aμ()bν()] 

=-δ(0-y0)aμ()bν()

+δ(0-x0)bν()aμ() 

=-δ(0-y0) [aμ(),bν()] 

=δ(0-y0)[bν(),aμ()] です。
 

それ故,μν[aμ()bν()] 

(1/2){μδ(0-y0)[bν(),aμ()] 

+∂νδ(0-y0)[aμ(),bν()]} 

を得ます。   (8-1終わり※)
 

再掲: 

μν<N(f)|{aμ()bν()}|(i) 

(1/2){μδ(0-y0)

<N(f)|[bν(),aμ()]|(i) 

+∂yνδ(0-y0)<N(f)|[aμ(),bν()]|(i)} 

の両辺に,∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky)を施し, 

,kを相対的に同じオーダーに保ちつつ,ゼロに近づけます。
 

すると,lim q,k0∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky)

 

μν<N(f)|{aμ()bν()}|(i) 

(1/2)limq,k0∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky) 

{iμ<N(f)|∫d4[5b(0),aμ()]|(i) 

iν<N(f)|∫d4[5a(0),ν()]|(i)} 

 を得ます。
 

ただし,(qk),qk ~ q2~k2程度のq、kについて 

無視すべき,2次以上の無限小項を意味します。
 

そして,[5,μ()]iabcμ()から,  

<N(f)|∫d4[5b(0),aμ()]|(i) 

ia∫d4x<N(f)|μ()|(i) 

ですが,

ベクトルカレント:μ()の核子による行列要素: 

<N(f)| μ()|(i)>は,  

そのLorentz不変性,()対称性,および保存則の要請 

μμ0 から,一般に次の形に書けるとわかります。

すなわち,<N(f)| μ()|(i) 

=u~()c{γμ1(2)iσμνν2(2)/(2)} 

(i)exp(ipx);p=pf-pi,かつ,1(20)1 

です。
 

(8-2): μHermite,不変性,から 

,Lorentz変換でベクトル変換性を持つ量としての 

行列要素:<N(f)| μ()|(i)>は, 

γμ,( f+pi)μ,iσμν ,および,(f-pi)ν 

の実数のスカラー係数倍の線形結合形で与えられる 

と考えられます。
 

しかも,(f+pi)μ, iσμν(f-pi)νで表わす 

ことができます。
 

それ故,<N(f)|μ()|(i) 

=u~()c{γμ1(2)iσμνν2(2)/(2)} 

(i)exp(ipx) なる形に書けます。
 

この右辺にpμを掛けると, 

~()c{1(2)iσμνμν2(2)/(2)} 

(i)exp(ipx)

=u~()c(i)1(2)exp(ipx) 

0 となり,この形なら無条件でベクトルカレント保存: 

μμ0 が反映されます。
 

さらに,<N(f)|μ()|(i) 

=u~()c{γμ1(2)iσμνν2(2)/(2)} 

(i)exp(ipx) において, 

μ=0 として両辺に∫d3xを施すと, 

<N(f)|(0)|(i) 

=u~()c{γ01(2)iσμνν2(2)/(2)} 

(i)exp(i00)(2π)3δ3() となります。
 

この等式は,p=pi-pf0でも成立するので, 

f=piを代入すると, 

<N(i)||(i) 

=u(i)c (i)δ3(0)1(0) です。
 

c,()変換群の生成子としてのチャージQ 

核子状態:|(i)>による行列表現に他ならないので, 

状態のスピノル部分の規格化:(i)(i)1 

考慮するとF1(0)1 を得ます。 (8-2終わり※)
 

したがって, 

limq,k0∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky) 

μν<N(f)|{aμ()bν()}|(i) 

(1/2)limq,k0∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky) 

({iμ<N(f)|∫d4[5b(0),aμ()]|(i) 

iν<N(f)|∫d4[5a(0),ν()]|(i)} 

+O(qk))
 
 

の右辺に,<N(f)|∫d4[5b(0),aμ()]|(i) 

ibac∫d4exp(ipx)~()c{γμ1(2) 

iσμνν2(2)/(2)}(i),および, 

<N(f)|∫d4[5a(0),ν()]|(i) 

iabc∫d4exp(ipy)~()c{γμ1(2) 

iσμνμ2(2)/(2)}(i)を代入すると.
 

式の右辺 

limq,k0 (iabc)(1/2)(2π)4δ4(f+k-pi-q) 

(i)(μ+kμ)[~()c{γμ1(2) 

iσμνν2(2)/(2)}(i)+O(qk)] 

(abc/2)(2π)4δ4(f+k-pi-q) 

[~()c()1(2)(i)+O(qk)] 

を得ます。
 

一方,左辺の行列要素: 

<N(f)|{aμ()bν()}|(i)>に寄与する 

Feynmanグラフは,軟NGボソンの極限:,k→0 で 

特異性(Singularity)を持つ最も効くグラフは, 

先のNGボソン1体過程のときの図6.6と同じ書き方で, 

6.7(),(),()のタイプに分類できます。


()のグラフは,NGボソンの極:1/2,1/2の特異性 

が明らかですが, 

(),()のタイプのグラフの核子1粒子の 

中間状態の伝播関数も,i,fが質量殻:i2=pf2=m2 

の上の運動量なので,例えば,{(i+q)2-m2}-1 

{2iq+O(2)}-1の特異性を持つことに注意して 

おきます。
 

先には,(6.6()の寄与), 

0|μ()|πb()(i/2)abfi() 

ただし,abfi()=gπNN~(f)γ5(i) 

0|μ()|πb() 

=<0|πμπas,a()|πb() 

iπδabμexp(iqx) で与えられ,
 

結局,(6.6()の寄与) 

~fππNN~(f)aγ5(i)(μ/2)exp(iqx) 

となり,()のグラフはh(2)=fππNN/2の寄与に 

相当します。 

そして軸性カレント:μ()の保存の要請:μμ0 

,核子状態で挟んだ行列要素: 

<N(f)|μ()|(i)>=Mμ()exp(iqx) 

に適用すれば,0=qμμ() 

=u~(){γ5(2)+q2γ5(2)}(i)  

となります。 と書きました。

これと同様に,π-N散乱での図6.7()のグラフの寄与は, 

( -fπ2)[(i)+πa() → N(f)+πb()] 

×(2π)4δ4(f+k-pi-q) 

となります。
 

(8-3):6.7()の斜線部は2点Green関数を核子状態 

で挟んだ行列要素に2つのNGボソンの足が付いたものです。
 

NGボソンの足の寄与は

|(i/2)(iπμ)}{(i/2)(iπν)} 

ですが,これに∂μν=qμνを掛けると,Green関数から 

S行列要素を導くLSZのNGボソン外線除去の因子: 

(i/2)(1/2)の他の部分は散乱のS行列要素×(-fπ2)の寄与 

となるのは明らかです。 (8-3終わり※)
 

6.7(),()のグラフは,S波のπ-N散乱振幅にはO(qk) 

の寄与しかせず,今考えているオーダーでは,これらは無視して 

落とすことができます。
 

何故なら,(),()のグラフの寄与をそれぞれ,,Cと 

記せばBの上グラフは図6.6()を2個,Cの上グラフ 

は図6.6()1個含みます。
 

先に,6.6()と図6.6()の和にqμを掛けて縮約して 

q→0とするとゼロ,つまりO(2)でしたから,B+2 

=O(qk)と考えられます。
 

そこで(B+C)の代わりに-Cを考察しC=O(qk) 

示せば十分です。
 

6.7()の上ラフと下グラフの和を具体的に書けば, 

C={~(f)γ5(i+m)γ5(i)}/(2i) 

{~(f)γ5(i+m)γ5(i)}/(2i) 

[~(f){2(i)-2mkq}/(2i) 

{2(i)-2mkq}/(2i)](i) 

なる形です。
 

そこで,k~qなら,相殺して確かにC=O()=Q(qk) 

です。;(qq=q20,kk=k20,i(i) 

=m(i) などを用いました。)
 

したがってS波のπ-N散乱振幅においては, 

(iabc/2)(2π)4δ4(f+k-pi-q)(i) 

[~()(c) fi()1(2)(i)+O(qk)]20 

=-fπ2[(i)+πa() → N(f)+πa()] 

×(2π)4δ4(f+k-pi-q)  

のように式の左辺と右辺が等置できます。
 

ここで,1(20)1であり,この等式を散乱の重心系 

(CM系):q=-pi,k=-pfで考察すると, 

i,k→0では,i~pfであり, 

~()()(i)=-2N となるため,
 

結局,[(i)+πa() → N(f)+πb()]. 

(abc /π2)(c)fiq+O(2)が得られます。
 

これが,S波のπ-N散乱振幅に対する「低エネルギー定理」 

ですが,これが最終目的ではなく軟NGボソン;πの 

π-π弾性散乱の「低エネルギー定理」に向かいます。
 

さて,標的粒子を核子:Nの代わりにNGボソン:πとして, 

軟NGボソン同士の弾性散乱: 

πi(i)+πa() → πf(f)+πb()を考えます。
 

この場合,行列要素: 

<N(f)|{aμ()bν()}|(i)>は, 

<πf(f)|{aμ()bν()}|πi(i)>に変わります 

,6.7().()に相当するものは相変わらず効きません。
 

その理由は,核子が標的の場合よりも簡単で,NGボソン:π 

は擬スカラー粒子なので,パリティの保存の要請から図6.7 

()の核子線をπに変えた3π頂点は禁止され,また,() 

の<π|aμ|π>の寄与も禁止となって消えるからです。
 

一方,π-N過程でのGreen関数の発散微分: 

limq,k0∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky) 

μν<N(f)|{aμ()bν()}|(i) 

(1/2) limq,k0∫d4exp(iqx)∫d4exp(iky) 

({iμ<N(f)|∫d4[5b(0),aμ()]|(i) 

iν<N(f)|∫d4[5a(0),ν()]|(i)} 

+O(qk)) は,[5a(0),μ()]iabccμ() 

であり,<N(f)|cμ()|(i) 

=u~()c{γμ1(2)

iσμνν2(2)/(2)}(i); 

1(2)0)1,p=pi-pfと表わせるので,
 

(iabc/2)(2π)4δ4(f+k-pi-q)(i) 

[~()c()1(2)(i)+O(qk)] 

でしたが,
 

Nをπに変えると,ベクトルカレントの行列要素は 

<πf(f)|cμ()]|πi(i) 

ifci(i)(i+pf)(2)exp(ipx), 

(0)1,p=pf-piなる形になります。
 

何故なら,πを表現空間とする変換群の随伴表現 

では,(c) fiifci であるからです。
 

π-N散乱での, 

(iabc/2)(2π)4δ4(f+k-pi-q)(i) 

[~()(c) fi()1(2)(i)+O(qk)]20 

=-fπ2[(i)+πa() → N(f)+πa()] 

×(2π)4δ4(f+k-pi-q) であった等置式は.
 

π-π散乱では, 

(iabc/2)(2π)4δ4(f+k-pi-q)(i) 

fci(q+k)(i+pf){(2) +O(qk)}20 

=-fπ2[πi(i)+πa() →πf(f)+πb()] 

×(2π)4δ4(f+k-pi-q) となり,
 

[πi(i)+πa() →πf(f)+πb()] 

=-(2π2)-1[abcbci(k+q)(i+pf) 

(2π2)-1(u-s)ibcabc  

となることがわかります。
 

何故なら,最初に示したように, 

s=(i+q)22iq=2kpf, 

t=(i-pf)2 =-2if=-2kq, 

u=(i-q)2=-2iq=-2kpf であり,
 

さらに;i+q=pf+kにより, 

u-s=-2(i+pf)=-2(i+pf) 

=-(k+q)(i+pf) であるからです。
 

Bose対称性より,これから, 

[πi(i)+πa() → πf(f)+πa()] 

 (3π2)-1{(u-s)ifccab (s-t)ibccfa  

(t-u)iaccbf}+O(s、st,..) を得ます。
 

これで,求める軟NGボソン;πのπ-π弾性散乱の 

「低エネルギー定理」を証明できたので,ここまで 

にします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

(培風館)

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2017年11月12日 (日)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(7)

「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
 

前回は「§6.3 NG粒子の低エネルギー定理.」において, 

1つの核子:Nが1つの軟NGボソン:πを放出する過程 

に対応して軸性カレントAμ()を運動量がpiμとpfμ 

核子状態で挟んだ行列要素:<N(f)|μ()|(i) 

=Mμ()exp(iqx)(q=pi-pf)を考察し,
 

Lorentz不変性,()対称性,(パリティ),または,CP 

( or)の不変性の仮定によって, 

μ(),μ() 

=u~(){γμγ5(2)+qμγ5(2)}(i) 

という一般形を取ることがわかります。
 

と書き,このことを(※注)で証明したところで終わりました。
 

さて,μ()に効くFeynmanグラフは,6.6(),()に示す 

ように,概念的に2つのカテゴリーに分けることができます。


 

()は軸性カレント:μ(図では黒ドットで表示)が放出された 

NGボゾンの端点に付くもので,()はAμが核子線に付くもの 

です。
 

この両者の分離はNGボソンの質量殻:20を離れたところでは 

NGボソンに対応する"複合"Heisenberg場をどう取るか?に依存 

するので明確ではないですが概ね,()には形状因子:(2)が 

()にはh(2)が対応すると考えれば十分です。
 

実際,6.6()のグラフの寄与は,NGボソンのq20 の近傍 

では.0|μ()|πb()(i/2)abfi() 

と書けます。ただし,abfi(),6.6()の斜線部に対応する 

因子です。
 

ところで,前々回記事の最後で,:πは系のLagrangian密度に, 

-Ψ~iγ5Ψπの相互作用項を持つので.くりこまれたNGボソン 

の場:πr=Zπ-1/2πのFermion:Ψへの結合は, 

intπΨΨ=gπΨΨΨ~iγ5Ψπr ,(πΨΨ=Zπ-1/2)なる形で 

与えられます。
 

と書きましたが,今の,Ψが核子:NのときはgπΨΨをgπNN 

と書けば,この結合定数:πNNを用いて, 

abfi()はNGボソン:πの核子Nとのi∫d4xのiを頂点 

(iγ5)に掛けた結果,x空間では因子:γ5∫d4xの寄与と 

なり,結局, 

abfi()=gπNN~(f)γ5(i) と書けます。
 

一方,NGボソンの崩壊定数:π, 

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(2)」 

において,対称性カレントjμ()が破れた後,出現する 

NGボソンの漸近場:Φas()により, 

0|μ()|NG>=fπ0{μΦas()|NG> 

=fπ∫d3(2π)3/2(20)-1/2 (iμ) 

()evp(ikx)となる係数として定義されました。
 

これから,今の場合は,0|μ()|πb() 

=<0|πμπas,a()|πb()>=iπδabμexp(iqx) 

と書けることがわかります。
 

それ故,結局,6.6()の寄与として, 

ππNN~(f)γ5(i)(μ/2)exp(iqx) 

が得られます。
 

そこで,確かに,6.6()のNGボソンのq20 の極部分 

のグラフの寄与は,(2)=fππNN/2の寄与に相当 

します。
 

ところで,カイラル対称性が存在して,そのチャージが自発的 

に破れた結果でNGボソンが出現するためには,軸性カレント 

μ()が保存する必要がありますが,この要請:μμ0 

を<N(f)|μ()|(i)>=Mμ()exp(iqx 

に適用すれば,0=qμμ() 

=u~(){γ5(2)+q2γ5(2)}(i) 

となります。
 

ところが,(),を核子:Nの質量とするDirac 

方程式:(-m)()0 の解ですから, 

~()γ5(i)=-u~()γ5(i) 

=u~()γ5 (fi)(i) 

=-u~()fγ5(i)-u~()γ5i(i) 

=-2~()γ5(i) です。
 

そこで, 

~()γ5{2(2)+q2(2)}(i)0 

が成立する必要があります。
 

したがって,2(2)=q2(2)です。
 

特に,20では,グラフ()のNGボソンの極部分; 

(2)=fππNN/2の項のみが効いてくるため, 

πNN2(20) /π と結論されます。
 

NGボソン:πと核子:Nの結合定数:πNN,核子質量: 

,軸性カレントのチャージ:=g(20), 

および,πの崩壊定数:πに関係付ける,この等式は 

Goldberger-Treimanの関係式」と呼ばれ 

「低エネルギー定理」の最も簡単な例を与えます。
 

かなり短いですが,この続きが長くなるので,今回は 

ここまでにします。
 

(参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論() 

 (培風館)

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2017年11月 6日 (月)

対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(6)

「ゲージ場の量子論」(対称性の自発的破れ)の続きです。
 

2017813日に 

「対称性の自発的破れと南部-Goldostone粒子(5)」 

をアップしてから,2か月半あまりも経りました。
 

この前回記事の最後では「対称性の自発的破れ」の項目は 

テキストの第6章には,まだ続きがあるのですが,これもアップ 

するかどうか?はPedingにします。・・ 

と書きましたが,続きを読み返すと結構重要な内容と思ったので, 

まだ,続けることにしました。
 

実は,途中で不連続対称性の復習に脱線したのは,この記事を 

書き上げる最後の部分での論議で,自分の時間反転への理解が 

あやふやなことに気付き,改めてテォストを読み直そうとした 

からでした。
 

今や,自力でできないことはできないのは仕方ないと諦める 

境地に達していますが,年齢に関係なく,まだやればできる 

と思えることなら,初歩からでもコツコツとやり直すに吝か 

ではありません。今さら急ぐ旅ではないし,追われる仕事も 

ないので,本題記事が数か月遅れようが気にしません。
 

§6.3 NG粒子の低エネルギー定理.
 

先に触れたように,NG粒子の低エネルギー極限での散乱振幅 

は対称性の要求から力学系の詳細には全く依存せずに決定され, 

これを「NG粒子に対する低エネルギー定理」と呼びます。
 

(6-1):「先に触れたように」とは,前回記事の最後で, 

:πは系のLagrangian密度に,-Ψ~iγ5Ψπの相互作用項 

を持つので.くりこまれたNGボソン場:πr=Zπ-1/2πの 

Fermion:Ψへの結合は,intπΨΨ=gπΨΨΨ~iγ5Ψπr , 

(πΨΨ=Zπ-1/2)なる形で与えられます。
 

この結合定数:πΨΨ=Zπ-1/2,元の基本結合定数:λ=2 

には直接,依存せず,0|σ()|0>=σ0 だけから決まるのは 

興味深いことです。 と書いたことです。(6-1終わり※)
 

ここでは簡単な例に話を留めますが,代わりに,低エネルギー 

定理の結果をてっとり早く見出す非線型表現Lagrangian 

構成法について次節で記述します。
 

,まず,()×U()カイラル対称性の話から始めます。
 

前節の「南部-Jonalashino模型」でFermion:Ψが(1/) 

展開のSU()の添字i=1,2,..,Nの他に,もう1つ別の 

添字:f=1,2,..,nを持って,Ψ={ψif}となっていた, 

とします。
 

このとき,iをカラー添字,fをフレイバー添字と呼べば, 

これはQCDLagrangian密度:=-(1/4)μνaμν 

+Σf=1Fψif~[iγμ{μigAμλa/2}ij-mfδij]ψif 

において,クォーク質量:fを全てゼロとした零質量 

QCDのクオーク場:ψif()との類似が明らかです。
 

このフレイバーがn種類ある「南部-Jonalashino模型」 

でも,零質量QCDでも,カイラルU()×U()対称性 

を持っています。
 

(※実は量子論的にはアノマリー(量子異常)と呼ばれる現象 

があり,(1)対称性が破れ,SU()×SU()×U(1) 

の対称性のみが残りますが本節では,これを無視します。)
 

ここでは,以下の近似の意味を明確にするため,Fermion: 

ΨはN個のDirac:ψのSU()変換群の基本表現を示す 

列ベクトルであるとします。
 

すなわち,カラー添字i=1,2,..,Nの方は省略してΨ={ψf} 

とします。,その左手型成分: ψf(1/2)(1-γ5)ψf, 

右手型成分: ψf(1/2)(1+γ5)ψf,それぞれ, 

別々のU()変換: 

ψf'()exp(iθ)ff’ψf'() 

exp(iθ)∈U() 

ψf'()exp(iθ)ff’ψf'() 

exp(iθ)∈U()R  

を実行してもは不変です。
 

変換対称性と関わる位相変換の 

Noetherカレントは, 

μ=-i{∂L/(μψf)}()ff’ψf’ 

与えられますが,(1+γ5)γμ(1-γ5)2γμ(1-γ5), 

および,(1-γ5)γμ(1+γ5)2γμ(1+γ5) より.  

これらの,それぞれのU()変換に対応するカレントは, 

Lμ(1/2)ψf~γμ(1-γ5)()ff’ψf’ 

Rμ(1/2)ψf~γμ(1+γ5)()ff’ψf’ 

です。
 

それらのチャージを.,(0)=∫d3,0() 

とします。
 

それらのψfとの交換関係を調べると,[,]=fabcc 

より,明らかに[(0),Lμ()]iabcLμ(); 

[(0),Rμ()]0, および, 

[(0),Rμ()]iabcRμ(); 

[(0),Lμ()]0  

の同時刻交換関係が成立します。
 

重要な点は,チャ-ジ-カレントの交換関係は.単に,カレント: 

(Lμ(),LRμ())のカイラルU()×U()変換 

の下では,その随伴表現に属する:()bc=fbacという性質 

を述べているだけで,()×U()のカイラル対称性を 

持つ系では,これらの交換関係は常に成立する, 

ということです。
 

以下で必要なのは,チャージ:,とカレント:Lμ, 

LRμとの交換関係のみであり,「南部-Jonalashino模型」 

,零質量QCDである必要も,カレントの具体的形が上述の式 

である必要もありません。
 

(6-2):予備知識:「連続群の随伴表現」とは, 

連続群Gの表現とは,ある線型空間:Sがあって,GからS 

への準同型写像fのことです。
 

準同型写像とは,1,2∈Gに対して, 

(12)=f(1)(2が成立することを意味します。 

このとき,Sをこの表現の表現空間といいます。
 

Lie群GのLie代数(Lie;Gの生成子の空間)の上で 

の表現:つまり,表現空間がの表現を随伴表現といいます。
 

Gの生成子{i}i,表現と無関係に, 

[i,j]iΣkijkkなる性質を持ち,係数fijk 

Gの構造定数と呼びます。
 

随伴表現のの上の準同型写像をAdで表わし,X∈ 

対して,d()()=gXg-1G で定義します。
 

X=Σiii ならAd()X=Σii{d()(i)} 

=Σkk です。
 

 [1,2,...], [1,2,...],の上の 

列ベクトルとすると,行列としてc=[d()(i)]aの成立 

,=Σi{d()(i)}kli,です。
 

無限小変換では,g ~ 1iΣiεjj,X=Σiiiのとき 

d()(i)=gTj-1(1iΣjεjj)i ( 1iΣkεkk) 

1iΣjεj[j,i]1+Σjkεjjikk です。
 

d()()=gXg-1~ X-iεlΣiji[j,i] 

=X+εjΣjikijikkΣij(δik+εjjik)ik 

より,{d()}j=Σi(δik+εjjik)k
 

(1iεjj)を示す行列:jとしては, 

(j)kiijikikij です。 

or 添字を変えると,()cbibacです。
 

(6-2終わり※)
 

カレントを組み替えて,ベクトルカレント:Vと軸性ベクトル 

カレント:Aを定義します。
 

すなわち, 

μ()=jRμ()+jLμ(), 

μ()=jRμ()-jLμ() です。
 

これらに対応するチャージは, 

(0)=Q(0)+Q(0),および, 

5(0)=Q(0)-Q(0)です。
 

容易にわかるように,チャージーカレント交換関係は, 

[,μ()]iabcμ(), 

[,μ()]iabcμ(),  

[5,μ()]iabcμ(), 

[5,μ()]iabcμ()  

となります。
 

以下で考察するのは,軸性チャージ:5が全て,自発的に破れ, 

(()群をなす)ベクトルチャージ:の対称性のみが残る 

場合,つまり,G=U()×U()が自発的に,H=U() 

まで破れる場合です。
 

この場合,5の破れに対応して現われるn2個のNGボソン:π 

が出現して全て擬スカラー粒子です。これらが残っているU() 

群の随伴表現(=U()Lie代数の空間での表現基底)に属し,  

しばしばπ粒子(pion)と呼ばれます。
 

(※現実のπ中間子:π±,π0は近似的なカイラル 

SU(2)×SU(2)対称性のQが破れて残ったSU(2)

に対応する3重項のNGボソン(=アイソ空間のベクトル)

とみなされています。※)
 

※注(6-3):(),()はそれぞれ,22個の独立な実数 

決まる行列要素という行列自由度から,ユニタリ性の条件式:  

2個の自由度を引いた残りのn2自由度を持ち,それぞれ  

の群の生成子をなすチャージのn2個のQ,2個のQ5 

対応しています。  (6-3終わり※)
 

()のn次元基本表現をなす,n個のスピン1/2Fermi粒子  

が結合状態か何かで,系のLagrangianに存在しているとしそれら  

を核子(nucleon)と呼んで.Nで表わします。
 

1つの核子が1つの軟NGボソン:πを放出する過程に対応して 

軸性カレントAμ()を運動量piμとpfμの核子状態で挟んだ 

行列要素:

<N(f)|μ()|(i)>=Mμ()exp(iqx) 

を考察します。ただし,q=pi-pfです。
 

(6-4):|()>は, i番目のNの運動量表示の場の演算子 

=消滅・生成演算子:i(,),および,i(,) 

i(,){(2π)3(0/)}1/2i(,),および, 

i(,){(2π)3(0/)}1/2i(,)と規格化した 

1粒子状態:|,,s>=Bi(,)|0>のスピンsを省略した 

表式:|i,2>を意味します。i番目の添字i省略した表現が 

|()>です。
 

そこで,運動量がp1i番目のNと,運動量がp2のj番目のNの 

内積は,i,1|,2>=(2π)3(0/)δ3(12)δij 

なっています。
 

ここで,質量がm,スピンが1/2Dirac粒子の場理論定式化を 

復習すると,エネルギーはE=p0(2+m2)1/であり, 

場の演算子は,ψ()=Σ±s∫d3(2π)-3/2(/)1/2 

{(,)(,)exp(ipx) 

+d(,)(,)exp(ipx)},および, 

ψ()=Σ±s∫d3(2π) -3/2(/)1/2 

{(,)~(,)γ0exp(ipx) 

+d(,)~(,)γ0exp(ipx)} 

なる展開で表現されます。
 

このDirac場の同時刻の正準反交換関係は, 

{ψα(,),ψβ(,)}=δαβδ3(x-), 

それ以外はゼロですから, 

{(1,1),(2,2)}=δs1s2δ3(12) , 

{(1,1),(2,2)}=δs1s2δ3(12) 

それ以外はゼロです。
 

場理論の座標表示では,時空座標の演算子:μ^, 

μ^=∫d3ψ()μψ() で与えられます。
 

粒子の座標の固有値:yに属する固有ベクトルは, 

|y>=cψ()|0>とすると,μ^|y>=yμ|i 

を満たすので,0=y0の同時刻で,<x|y>=δ3() 

の規格化条件を課すなら,c=1であって,|x>=ψ()|0 

です。
 

核子の1粒子状態を,|()>=|,s>=b(,)|0 

と定義するなら,|x>=ψ()|0>より, 

座標表示=波動関数は, 

<x|()>=<0|ψ()(,)|0 

(2π)-3/2(/)1/2(,)exp(ipx) 

です。
 

しかし,1粒子状態を,(ps)の代わりに, 

i(,){(2π)3(0/i)}1/2i(,) によって, 

|()>=|,s>=B(,)|0>と定義する 

なら,波動関数は,<x||() 

=<0|ψ()(,)|0>=u(,)exp(ipx) 

です。
 

粒子でなく,反粒子なら,|()>=d(,)|0>または 

|()>=D(,)|0>ですが,
 

後者の定義を採用すれば,波動関数は, 

<x||()>=<0|ψ()(,)|0 

=v(,)exp(ipx) です。
 

(6-4終わり※)
 

このとき,Lorentz不変性,()対称性,(パリティ), 

あるいは,CP(または,)の不変性の仮定から,μ(), 

μ()=u~(){γμγ5(2) 

+qμγ5(2)}(i)の一般形を取ることがわかります。
 

(6-5):上記式の証明です。 

<N(f)|μ()|(i)>=Mμ()exp(iqx) 

においては,始状態bra:|(i),終状態ket:<N(f)| 

に対応するDiracスピノルを,それぞれ, 

(i,i)=u(i),~(,)=u()~と書き, 

()のスピノルをχ(i),χ()とします。
 

さらに,運動量変数;q=pf-pi,p=pi+pfが使用可能な 

Lorentz共変量ですから,これらからLorentz擬ベクトル 

(軸性ベクトル),かつ,()随伴表現となるMμ 

作らなければなりません。
 

()に関する因子は,明らかに,{χ()χ(i)} です。
 

一方, Lorentz共変部分は,Diracスピノル u(i), ()~ 

から作ることができる独立な共変量が, 

()~{1,γ5,γμ,γμγ5,σμν}(i) 

1144616個です。
 

これらによってつくることが可能で独立と思われる擬ベクトル 

の全ては,Γ(1)μ=qμ()~γ5(i), Γ(2)μ=pμ()~γ5(i), 

Γ(3)μ=u()~γμγ5(i), 

Γ(4)μ(1/2)εμνρσν()~σρσ(i) 

=qν()~γ5σμν(i),Γ(5)μ=pν()~γ5σμν(i), 

Γ(6)μ(μ,または,μ)()~γ5(i), 

Γ(7)μ(μ,または,μ)()~ γ5(i)   

で与えられます。
 

ここで,自由Dirac方程式;i(i)=mu(i),および, 

()=mu() or ()~=mu() ~などを用いると, 

Γ(4) ~ Γ(7),Γ(1) ~ Γ(7)の線形和で表わすことができる 

ため, 結局, 

(i)χ(i)を u(i),()χ()をu(f)と表記して 

<N(f)|μ()|(i)>=exp(iqx) 

[~(f){1(2)μγ5+g2(2)μγ5 

+g3(2)γμγ5}(i)] を得ます。
 

ここで,i2=p2=m2ですから,定数でない独立なLorentz 

不変変数(スカラー量)で可能な引数はq2のみなのでg1,2,3 

はq2の関数であるとしました。
 

そして,μHermite性から<N(i)|μ()|(f) 

=<N()|μ()|(i) 

=<N()|μ()|(i)> です。
 

故に,~()(){1(―qμ)γ5~+g2μγ5~ 

+g3(γμγ5)~}(i)=u~(f){1(2)μγ5 

+g2(2)μγ5+g3(2)γμγ5}(i) です。 

ただし,Γ~=γ0Γγ0です。
 

γ5~=-γ5,(γμγ5)~=γμγ5,()=Tですから, 

1=g1,2=-g2, 3=g3 を得ます。
 

つまり,1,3は実数で,2は純虚数です。
 

次に(時間反転)不変性の要求は, 

行列要素:<N()|μ(0)|(i)> が, 

<N()|-1μ(0)-1|(i) 

=<()|μT(0)|(i)に等しいこと 

を意味します。
 

ただし,μ(0)­=Σμ(0)­時間反転による変換後 

の演算子が,μT(0)=Σaμ(0)()となることを 

用いました。
 

電磁場:μのt'=-tの時間反転の変換性のアナロジーで 

各aについて,μ(,)-1=Aaμ(,-t), 

または,-1μ(,-t)=Aaμ(,)になると 

考えられます。
 

時間反転:t →t'=-tに伴って,演算子でなく状態が, 

|α> → |α7>=|α>,|β> → |β'>=|β> 

と変換されると考えますが, 

は「複素共役を取れ」という指令:とユニタリ変換: 

の積でT=KUと表わされる反ユニタリ演算子です。
 

そこで,-1μ(,-t)=Aaμ(,)という式の 

意味は,状態による行列要素において, 

<α|-1μ(,-t)|β>=<α|aμ(,)|β> 

=<β|aμ+(,)|α>が成立する,という意味です。
 

つまり,t'=-tなる変換で,<α'|μ(,-t)|β'> 

=<α|μ(,-t)|β> 

=<β|μ(,-t)|α> 

=<β|aμ+(,)|α> です。
 

したがって,μ(,-t)U=Aμ+(,)より, 

 UAμ(,)-1=Aμ+(,-t) です。
 

対称性群の一般変換としてのゲージ場は,線形和で, 

μ(,)1=Σaμ+(,)ですが,個々の 

aμHermite演算子なので, 

μ(,)1=Σaμ+(,-t)()と書けます。
 

μ(,-t)U=Aμ+(,)から, 

UAμ(,)-1=Aμ+(,-t) 

=Σaμ+(,-t)()であり,結局, 

TAμ(,)-1­=Σaμ(,-t)() 

=AμT(,-t) を得ます。 
 

一方,|()>の波動関数は,0|ψ(0) |() 

=<0|1-1ψ(0) |()>=<0|-1ψ(0) |() 

=<0|iγ1γ3ψ(0)|()iγ1γ3()です。
 

(何故なら,(γ1)=γ1,(γ3)=γ3です。)
 

そこで,<N()|μ(0)|(i) 

=u~(f){1(2)μγ5+g2(2)μγ5 

+g3(2)γμγ5}(i) 

ですが,
 

時間反転不変性から, 

<N()|μ(0)|(i) 

=<()|aμT(0)|(i) 

=u~(f)()(iγ1γ3)~ 

×(1^μγ5+g2^μγ5+g3γ^μγ5)(iγ1γ3)(i) 

が要求されます。
 

ただし,^μ,^μ,γ^μ,μ,μ,γμの時間反転後の値 

を意味します。
 

まず,Γ~=γ0Γγ0より, 

(iγ1γ3)~=-iγ0γ3γ1γ0=-iγ3γ1 です。 

故に,(lγ1γ3)~γ5(iγ1γ3)=γ3γ1γ5γ1γ3=γ5, 

また,(lγ1γ3)~γ^μγ5(iγ1γ3)=γ3γ1γ^μ(γ1γ3)γ5  

です。ここで先読みしてγ^μT=-γμ*, 

つまり,γ^μ=-γμと仮定すると, 

μ=0ならγ^0=γ0=-γ0ですから. 

(lγ1γ3)~γ^0γ5(iγ1γ3)=-γ3γ1γ0(γ1γ3)γ5 

=-γ0γ5 

μ=2ならγ^2=-γ2=-γ2ですから 

(lγ1γ3)~γ^2γ5(iγ1γ3)=-γ3γ1γ2(γ1γ3)γ5 

=-γ2γ5=-γ2γ5 

μ=1,3ならγ^1=γ1=γ1です。
 

以上から,(lγ1γ3)~γ^μγ5(iγ1γ3) 

=-γμγ5(γμγ5),または. 

lγ1γ3)~(γ^μγ5)(iγ1γ3)(γμγ5)です。
 

そこで,~(f)() {1(2)μγ5+g2(2)μγ5 

+g3(2)γμγ5}(i) 

=u~(f)(){1(2)^μγ5+g2(2)^μγ5 

+g3(2)γ^μγ5}(i) を得ます。
 

これは,1,2,3が実数で,^μ=qμ,^μ=pμ, 

γ^μ=-γμであれば成立します。
 

そこで,2は実数で.かつ純虚数ですからg20です。
 

以上から,<N(f)|μ()|(i) 

=Mμ()exp(iqx) 

そして,μ() 

=u~(){γμγ5(2)+qμγ5(2)}(i) 

と書けることが証明されました。(証明終わり)
 

(6-5終わり※)
 

長くなったし,切りがいいので,今日はここまでにします。 

  (参考文献):九後汰一郎 著「ゲージ場の量子論()


  PS:関係ないけど,中学生のころ故郷の大原美術館 

 観て感動したエル。グレコの受胎告知,また故郷に

 帰れたら 見てみたいですね。
 

 マリアのスカートの赤色などすばらしいと思いました。

ついでに 山下清 画伯 作品

    「山下清 作品」の画像検索結果

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2017年11月 4日 (土)

場の量子論第Ⅱ部(18)(TCP定理)

  場の量子論第Ⅱ部の続きです。 

TCP定理に入り,これで一応,終わる予定です。
 

§15-14 The TCP Theorem(TCP定理)
 

既に,電磁相互作用と,次に与えるようなagrangean密度のπ- 

相互作用が,陽に作った別々の対称性操作:,.の下で不変 

であることを証明しました。
 

上述のπ-N相互作用のLagrangean密度は, 

=Ψ~(iγμμ-M0)Ψ+(1/2){μφμφ-μ02φφ} 

i0Ψ~γ5τΨφ です。
 

項に2~3のiやγ因子を思慮深く挿入することにより,Proper 

Lorentz 変換や平行移動の下での不変性に影響を与えることなく, 

そして対称性操作としての,.を壊すことなく相互作用項 

を修正することも可能です。
 

しかし,もしも次のことを仮定するなら,それだけで積TCP 

対称性として維持される,ということは注目に値します。
 

1. 現状では,我々の場理論は局所的理論を意味する。それは 

正規順序を取られたHermiteLagrangian密度が存在する理論 

であり,proper Lorentz 変換の下では共変である。
 

2. 理論は,スピンと統計間の通常の関係で量子化されている。 

例えば,Klein-Gordon場とMaxwell場はBose-Einstein統計に到る 

交換関係で量子化され,Dirac場は排他原理に導くFermi統計に到る 

反交換関係に従う。
 

この簡単な仮定でTCPが対称性が常に成立する.というのが, 

LudasZumino,および,PauliSchwingerのTCP定理と呼ばれる 

ものです。
 

以下では,共通の時刻tで評価される(),().()の連続的 

適用に対してHaniltonian:Hが,PCT-1-1-1=Hを満足する 

という命題によって,相互作用するKlin-Gordon,Maxwell,Dirac場に 

対してのTCP定理について1つの証明を与えます。
 

上述の仮定1,2,Laglangian密度:の性質に基づくものなので, 

を考察することから始めて,PCT-1-1-1=Hの証明に 

戻ることにします。
 

まず,1PCTL(,)-1-1-1(,-t)が時刻t 

,.に対して成立する,ことを示します。
 

,Lorentz不変性の仮定により,φr()とAμ(),および, 

それらのxμによる微分係数,さらにテンソルとして変換する, 

スピノル場とその座標による導関数の双1次形式:Ψ~ΓΨ 

の積から成る,スカラーでできたHermite演算子であることが 

わかります。
 

ここで,添字A,Bは内部自由度(,,νや.クォ-クの 

flavor,colorなど)のラベルであり,Γはガンマ行列の集合: 

{,iγ5,γμ,γ5γμ,σμν}の元の1つを意味します。
 

まず,スカラー・Hermite:φr()へのPCTの作用は 

PCTφr(,)-1-1-1=±φr(,-t) です。
 

ここで符号:±は任意であり,π中間子:φ=[φ1,φ2,φ3]では, 

φ1(,)-1=±φ1(,-t),φ2(,)-1 

=-(±)φ2(,-t).φ3(,)-1=±φ3(,-t) 

のような時間反転:の符号選択に依存しています。
 

電荷固有状態を生成する複素スカラー場の演算子:φ,φでは, 

PCTφ(,)-1-1-1=±φ(,-t), 

PCTφ(,)-1-1-1=±φ(,-t) です。
 

Diracスピノル場:ΨへのPCTの作用は, 

PCTΨα(,)-1-1-1 

=-i(γ0γ5)αβΨ~β(,-t) 

iγ5αβΨ+Aβ(,-t) です。
 

そして,PCTΨ~α(,)-1-1-1 

=-iΨβ(,-t)(γ0γ5)βα  です。
 

(18-1): ψα(,)-1i(γ1γ3)αβψβ(,-t) 

であり,ψ(,)-1=Cγ0ψ(,),C=iγ2γ0 

なので, Cγ0iγ2, 

CTψα(,)-1-1{iγ2(iγ1γ3)}αβψβ(,-t) 

(-γ2γ3γ1)αβψβ(,-t) です。
 

それ故,ψ(,)-1=γ0ψ(,)から, 

PCTψα(,)-1-1-1 

(-γ0γ2γ3γ1)αβψβ(,-t) 

=-i(γ0γ5)αβψ~β(,-t) を得ます。
 

何故なら,γ5=γ5iγ0γ1γ2γ3 

ψ=ψ~γ0=γ0ψ~,または,(γ0)=γ0 です。
 

一方, -ψα(,-t)-1=Tαβψβ(,)ですから 

, <Φ|-ψα(,-t)-1|Ψ>=Tαβ<Φ|ψβ(,)|Ψ> 

ですが,KUなので 

<Φ|ψα(,-t)-1|Ψ>=Tαβ<Φ|ψβ(,)|Ψ> 

or <Φ|ψα(,-t)-1|Ψ>=Tαβ<Φ|ψβ(,)|Ψ>
 

ところが,左辺=<Ψ|ψα(,-t)-1|φ> 

=<Ψ|ψα(,-t)-1|φ>* です。
 

また,右辺=Tαβ<Φ|ψβ(,)|Ψ> 

=Tαβ<Ψ|ψβ(,)|Ψ>です。
 

以上から,左辺=右辺により,まず, 

ψα(,)-1(i)(γ1γ3)αβψβ(,-t)です。
 

そして,{(i)(γ1γ3)αβψβ(,-t)} 

iψβ(,-t)(γ1γ3)βαiψβ(,-t)(γ1γ3)βα
 

故に, 

CTψα(,)-1-1 

(iγ2)αβψλ(,-t)i(γ1γ3)λβ 

=-ψβ(,-t)(γ1γ3γ2)βα
 

(※何故なら(γ2)=-γ2,or (iγ2)αβ=-(iγ2)βα
 

それ故,PCTψα(,)-1-1-1 

=-ψβ(,-t)(γ1γ3γ2γ0)βα 

=-iψβ(,-t)γ5βα
 

したがって,PCTψ~α(,)-1-1-1 

=-iψβ(,-t)(γ5γ0)βα 

を得ます。   (18-1終わり※)
 

そこで.Diracスピノル場の双1次形式:Ψ~ΓΨ 

=Ψ~αΓαβΨβへのPCTの作用は次のようになります。
 

PCTΨ~α(,)ΓαβΨβ(,)-1-1-1  

=-Ψλ(,-t)(γ5γ0Γγ5γ0)λτΨτ(,-t)  

=-Ψλ(,-t)Γ'τλΨτ(,-t)
 

ただし,Γ=1,iγ5,σμνのとき, Γ'=Γ,  

Γ=γμ,γ5γμのとき, Γ'=-Γ です。
 

(18-2):Γ'= (γ5γ0Γγ5γ0)ですから

Γ'=γ0γ5Γ*Tγ0γ5=γ0γ5Γγ0γ5Γです。
 

以下,具体的に右辺にΓ=1,iγ5,σμνを代入してΓ'=Γ, 

Γ=γμ,γ5γμを代入して,Γ'=-Γ を得ます。 

(18-2終わり※)
 

,Bが無関係で独立なFermi:Ψ,Ψは反交換しの中 

には,これらの場の積は正規順序で出現するというこれまで 

の規約を維持するとします
 

PCT:Ψ~α(,)ΓαβΨβ(,):T-1-1-1 

=:Ψ~τ(,-t)ΓτλΨλ(,-t):です。
 

実際,ベクトルカレントのケース:Γ=γμで同種Fermi:: 

A=Bのときにのみ,正規順序が必要です。
 

何故なら.-Ψλ(,-t)ΓτλΨτ(,-t) 

=Ψ~τ(,-t)ΓτλΨλ(,-t)

-δABδ4(0)r(γ0Γ') 

(※Tr(γ01)=Tr(γ0γ5)0,r(γ0σμν)=Tr(γ0γ5γμ)0, 

r(γ0γμ)40μ です。)
 

しかし,,,を定める条件として論議したのは正にこのΓ=γμ 

のベクトルカレントによるものでした。
 

すなわち,時間反転: jμ(,)-1=jμ(,-t), 

プラス荷電共役:CT jμ(,-t)-1-1=-jμ(,-t) 

に空間反転の結果:

PCT jμ(,)-1-1-1=-jμ(,-t) 

=-:ψ~(,-t)γμψ(,-t) となるべきです。
 

電磁場ベクトル:に対して,同様にこれまで求めたことから, 

PCT (,)-1-1-1=-(,-t)です。
 

電荷密度:ρ(,)=e00(,)がゼロでないとき, 

スカラーポテンシャル:0=Φは, 

0(,)=Φ(,)

=-{0/(4π)}∫d30(,)/|| 

で与えられることを見ました。
 

これにPCTを作用させると, 

PCT 0(,)-1-1-1=-j0(,-t)から 

PCT 0 (,)-1-1-1=-0(,-t)を得ます。
 

結局,PCT μ(,)-1-1-1=-μ(,-t)です。
 

最後に∂/∂xμが現われる項ですが,

/∂xμ=-∂/(-xμ) 

なることに着目し,
 

PCT(,)-1-1-1=±f(,-t)なら, 

PCT{∂f(,)/∂xμ}-1-1-1 

=-{±∂f(,-t)/(-xμ)}です。
 

さて,これで準備が終わったので,PCTが起こす変換規則 

を要約して列挙します。
 

1,あらゆる座標xμはx'μ=-xμに変わる。 

そこで./∂xμ -∂/∂x'μ = -∂/∂xμ となる。
 

2.Hermiteスカラー場:φr()はz+φr(x')に変換する。 

ただし,ここでは共通の位相因子は+1に固定した。
 

3. あらゆるFermi場とその導関数から成る双1次形式の偶階数 

テンソルは,それらのHermite共役に変換され,奇階数テンソル 

はそれらのHermite共役×(1),変換される。
 

4. あらゆるc-数はその複素共役に変わる。
 

系を支配するLagrangian密度,スカラーなのでの任意に 

与えられた各項に現われる,あらゆるテンソル添字は縮約される 

ため,項の添字の個数は偶数であり,そこで.3のマイナス符号は 

相殺されて消えます。
 

結局,こうした指令のトータルな効果は「Hermite共役を取れ, 

という集約された指令に等価です。
 

そして,変換で因子の順序が変わるという問題は,の全ての項 

が正規順序で与えられるべきという制限によって除去されます。
 

これは,実はスピンと統計の関係の仮定から得られるものです。
 

何故なら,正規順序はスピンが1/2の反交換する場について 

マイナス符号を,スピンが0,または1Bose場に対しては 

プラス符号を導入するからです。
 

以上の結果,Hermiteなスカラー:に対して,. 

PCTL(,)-1-1-1(x')(,-t) 

が得られます。
 

さらに,からHamiltonian密度;への移行は, 

()=:-+Σπr()φrd():で定義されます。 

ただし,ここでのφr()Bose場だけでなくFernmi場を 

含む全ての場を総称しています。
 

Bose場に対しては[πr(,),φ(,)]=-iδ3()δrs, 

Fermi場に対しては{πr(,),φ(,)}iδ3()δrs 

が成立しますが,これらはPCT変換で維持されます。
 

何故なら,PCTφr(,)-1-1-1=ηrφr(,-t) 

なら,PCTπr(,)-1-1-1=-ηrπr(,-t) 

であり,PCT{iδ3()}-1-1-1=-iδ3() 

であるからです。
 

また,PCTφrd(,)-1-1-1=-ηrφrd(,-t) 

より,PCTH(,)-1-1-1(,-t) です。
 

それ故,H=∫d3(,)によって, 

PCTHT-1-1-1=H が導かれます。
 

こうしてTCP定理が証明されました。
 

これで,テキスト第15章の不連続変換の項目の紹介,および, 

詳解が全て完了しました。今日は,ここで終わります。
 

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell 

“Relativistic Quantum Fields” (McGrawHill)

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2017年10月31日 (火)

場の量子論第Ⅱ部(17)(時間反転3)

   Happy ハロウィン!!

 場の量子論第Ⅱ部,時間反転の続きです。

1粒子量子力学理論に脱線しましたが,改めて場の理論における 

Dirac粒子の時間反転の論議に戻ります。.
 

Dirac場については,時間反転の演算子:として次のような形 

のものを求めます。 

すなわち,ある正則行列:T=(αβ)について, 

ψα(,)-1=Tαβψβ(,-t),or  

ψ(,)-1=Tψ(,-t) と書けるとします。
 

この変換:.時間反転不変性を満たすためには, 

条件:TL(,)-1(,-t). 

および.μ(,)-1=jμ(,-t)が満足され, 

反交換関係:{ψα(,),ψ~β(,)}=δ3()δαβ, 

および,{ψα(,),ψβ(,)}0, 

{ψ~α(,),ψ~β(,)}0 を不変に保つ 

必要があります。
 

ここで,前記事の1粒子量子力学(空孔理論)の時間反転変換として, 

見出された行列:Tが,上記のψ(,)-1=Tψ(,-t) 

を与えるTと同じであれば.上の時間反転不変の条件が全て満足 

されることが,容易に証明できます。
 

すなわち,1粒子と同じく,T=iγ1γ3とします。 

このとき,Tγμ-1(γμ)(γμ)であり, 

T=T=T-1=-T* です。
 

そして,ψα(,)-1=Tαβψβ(,-t)より. 

T=KUとして,から複素共役(Hermite共役): 

を分離すれば,ψα(,)-1=Tαβψβ(,-t) 

です。
 

故に,ψα(,)-1=Tαβψβ(,-t) 

ψα(,)-1=Tαβψβ(,-t) 

ψα(,)γ0αλ-1=Tαβψβ(,-t)γ0αλ 

ψ~λ(,)-1=ψβ(,-t)αβγ0αλ 

=ψσ(,-t)γ0σβαβγ0αλ です。
 

T=iγ1γ3 とすれば, 

=-iγ1γ3(T‘)=Tなので,αβ=Tβα 

そこでγ0σβαβγ0αλ=γ0σββαγ0αλ=Tσλ 

γ0(iγ1γ3)γ0iγ1γ3より,結局, 

γ0σβαβγ0αλ=Tσλ です。
 

したがって,ψ~λ(,)-1=ψσ(,-t)σλ 

ψ~λ(,)-1=ψ(,-t)T=ψ(,-t)-1 

を得ます。
 

そこで,自由Dirac場のLagrangian: 

(,t=ψ~(,)(iγμμ-m)ψ(,) 

=ψ~(,)(iγ00iγ-m)ψ(,)に対して, 

TL(,)-1 

=ψ~(,-t)-1(iγ00iγ-m)Tψ(,-t) 

=ψ~(,-t)(iγ00iγ-m)ψ(,-t) 

=ψ~(,t')(iγμ∂'μ-m)ψ(,t') 

(,t’)(,-t) が成立します。
 

また,電磁カレントは正規順序で, 

μ(.)=:ψ~(.)γμψ(.):で定義されます。 

これは,詳しくは, 

μ(.)=ψ~(.)γμψ(.)-<0|ψ~γμψ|0>: 

=ψ(.)γ0γμψ(.)-<0|ψ~γμψ|0> です。
 

そこで,μ(,)-1 

{Tψ(,-t)}Tγ0γμ-1Tψ(.-t) 

-<0|ψ~γμψ|0t=-t 

=ψ(,-t)-1(γ0γμ)* Tψ(.-t) 

-<0|ψ~γμψ|0t=-t 

=ψ~(.-t)γμψ(.-t)-<0|ψ~γμψ|0t=-t 

=jμ(.-t) です。
 

よって,μ(,)-1=jμ(,-t)の成立 

も示されました。
 

同時刻の正準反交換関係の保存も示せますが,

簡単なので証明は省略します。
 

しかし,この変換の性質は1粒子理論と同じではありません。
 

1粒子理論では,スピノル波動関数の複素共役を取れ,という 

指令の下で,ψ(,) → Tψ(,-t) としたのでした。
 

しかし,場理論では,場の演算子に対する類似の変換: 

ψ(,) → Tψ(,-t)は受け容れることができません。 

何故なら,これは例えば静止した1電子状態を1陽電子状態に 

変換してしまうからです。 

(※例えばb^(,)|0> → d^(,)|0)
 

の陽な形を得るために,運動量空間に移ります。

Dirac電子場のFourier展開は, 

ψ(,)=∫d3(/p)1/2 

Σ±s{^(,)(,)exp(ipt+ipx) 

+d^(,)(,)exp(ipt-ipx)}です。
 

これに時間反転;KUの変換を適用するとき, 

ψ(,)-1=Tψ(,-t)という式は,
 

ψ(,)-1=∫d3(/p)1/2 

Σ±s{^(,)-1(,)exp(ipt-ipx) 

^(,)-1(,)exp(ipt+ipx)}
 

=∫d3(/p)1/2 

Σ±s{^(,)Tu(,)exp(ipt-ipx) 

+d^(,)Tv(,)exp(ipt+ipx)} 

なることを意味します。
 

ところが1粒子理論での時間反転の議論から 

次式が導かれます。 

Tu(,)=u(,-s)exp{iα(,)}, 

Tv(,)=v(,-s)exp{iα(,)}, です。 

ただし,α(,),α(,)はスピン状態に依存する 

位相因子です。
 

(17-1):前記事からの引用:します。 

1粒子波動関数ψ(,t)に操作:を適用するとき 

=-tでψ(,)= ψ'(,t')=Tψ(,t'), 

となり,T=iγ1γ3ですから,
 

{(+m)/(2)}{(1+γ5)/2}ψ(,t) 

=T{(+m)/(2)}-1{(1+γ5)/2}-1ψ'(,t') 

{('+m)/(2)}{(1+γ5')/2}ψ'(,t') です。 

ただし,p'=(0,),s'=(0,)です。
 

それ故,(,){(+m)/(2)}{(1+γ5)/2}(,) 

を満たすu(,)に対して, 

(,)=Tu(,) 

=T{(+m)/(2)}-1{(1+γ5)/2}-1(,) 

{('+m)/(2)}{(1+γ5')/2}(,) です。
 

そこでTu(,)=cu(―p,-)  

(,)=c(-p,)  

=-iγ1γ3 =-Tより, 

Tu(,)=-c(,),
 

同様に,Tv(,)=-d(,) 

||||1です。 (17-1終わり※)
 

これらに再びTを適用しT21を用いると, 

α±(,)=π+α±(,―s)(mod(2π)) 

であることがわかります。
 

(17-2):何故なら, 

(,)=Tu(,-s)exp{iα(,)} 

=-T(,-s)exp{iα(,)} 

=-u(,) exp{iα(,-s)+α(,)}  

(,)=Tv(,-s)exp{iα(,)} 

=-T(,-s)exp{iα(,)} 

=-v(,) exp{iα(,-s)+α(,)} 

です。 (注17-2終わり※)
 

したがって, 

^(,)-1=-b^(,-s)exp{iα(,)}, 

^(,)-1=-d^(,-s)exp{iα(,)} 

なら,ψ(,)-1=Tψ(,-t) が満足されます。
 

,これを2つのユニタリ変換の積に分割する方法で最も 

容易に見出されます。すなわち,21とします。
 

1は位相因子を除去するための変換です。 

1^(,)11exp{iα(,)}^(,), 

1^(,)11exp{iα(,)}^(,)
 

これは,明らかに, 

1exp[i∫d3Σ±s{α(,)^(,)^(,) 

-α(,)^(,)^(,)}] 

とすれば満たされます。
 

一方,2,2^(,)21= -b^(,―s), 

2^(,)21= -d^(,―s)  

を満たすユニタリ変換です。
 

これは,前にパリティ演算子:をつくったのと同じ方法で, 

2exp[i(π/2)∫d3Σ±s 

{^(,)^(,)+b^(,)^(,) 

-d^(,)^(,)-d^(,)^(,)}]  

と書けることがわかります。
 

さて,こうして作った21, 

^(,)-1=-b^(,-s)exp{iα(,)}, 

^(,)-1=-d^(,-s)exp{iα(,)} 

を満たしますが,そこでエネルギーEp(2+m2)1/2.運動量, 

スピンを持つ1自由電子の時間反転状態は,同じ正エネルギーを 

持つことを除けば,運動量もスピンも逆向きのEp.,, 

1自由電子状態になります。
 

これは,波動関数による表現では, 

ψp..(,)=<0|ψ(,)|1電子状態;, 

=<0|ψ(,)|1電子状態;, 

=<0|UKψ(,)|1電子状態;, 

=<0|ψ(,)-1|( 1電子状態;,) 

=-exp{iα(.)} 

0|ψ(.-t)| 1電子状態;-, 

exp{iα(.)}Tψp.-.-(,-t)  です。
 

これは,1粒子理論におけるように,時間反転の波動関数 

が互いに複素共役の関係になることを示しています。
 

自由場でなく,相互作用する場のケースでは,既に作った演算子 

を借りてきます。もっとも,t=0における場の演算子は展開 

のみを得るわけですが,交換関係は自由場と変わりませんから, 

その形の自由場で見出せるあらゆる形式を保持して0を作る 

ことができます。
 

0ψα(,0)0-1=Tαβψβ(,0) 

 0φ(,0)0-1=±φ(,0) 

 0φd(,0)0-1=-{±φd(,0)} 

0(,0)0-1=-(,0) 

0d(,0)0-1d (,0)} 

 (※ただし,φd=∂0φ=∂φ/∂t,d=∂0=∂/∂t 

です。)
 

0はa^,,^.^.をt=0で評価される以下に列挙した 

展開式の展開係数で置き換えて作られたのと同じ形とします。
 

ψ(,0)=∫d3(/p)1/2Σ±s 

{^(,)~(,) exp(ipx) 

+d^(,)(,)exp(ipx)}
 

ψ(,0)=∫d3(/p)1/2Σ±s 

{^(,)~(,)γ0 exp(ipx) 

+d^(,)~(,)γ0 exp(ipx)}.
 

(,0)=∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2Σλ=12ε(,λ) 

{^(,λ) exp(ikx)+a^(,λ)exp(ikx)}
 

d(,0)(i)∫d3(2π)-3/2(2ω)-1/2ωΣλ=12ε(,λ) 

{^(,λ) exp(ikx)-a^(,λ)exp(ikx)}
 

(※Ep(2+m2)1/2,ω||) です。
 

また,φ(,0)

=∫d3{^()(,0)+a^()k(,0)} 

φd(,0)

(i)∫d3ω{^()(,0)

-a^()k(,0)} 

k(,0)(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(i), 

k(,0)(2π)-3/2(2ω)-1/2exp(i),

ω(2+μ2)1/2 
 

そして,任意の時刻tにおけるを形成するため,  

exp(iHt)0 exp(iHt)と書けば,  

例えばψα(,0)-1  

exp(iHt)0ψα(,0)0-1 exp(iHt)  

=Tαβexp(iHt)ψβ(,0)exp(iHt)  

=Tαβψβ(,-t)であり,これは求めるスピノルの  

時間反転変換を意味します。
 

このように作られた, 

条件:TL(,)-1(,-t).  

および.μ(,)-1=jμ(,-t)を満たし, 

[,]0 のケースには理論の対象操作であり0 

に単純化されます。
 

これで時間反転の項目は終わりなので今日はここまでです。
 

次回は次節の「TCP定理」を論じる予定です。 

β崩壊のような弱い相互作用ではやCの破れが見られます 

,TCPという対称性は,相互作用形のより弱い仮定の下 

で成立するということが,定理として存在しています。
 

(参考文献:J.D.Bjorken S.D.Drell 

“Relativistic Quantum Fields” (McGrawHill)

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2017年10月28日 (土)

場の量子論第Ⅱ部(16)(時間反転2)

 まずはハロウィンも近いし 元気だしていこう。。。

オギノメチャンもアラキ師匠もビックリ!!

 

 

 さて,場の量子論第Ⅱ部,時間反転の続きです。
 

自由なHermiteスカラー場(実スカラー場):φに対しては, 

TL(,)-1(,-t). 

および.μ(,)-1=jμ(,-t)を満足するという 

時間反転:Tの規準は次のようなの選択で満たされます。 

すなわち.φ(,)-1=±φ(,-t) です。
 

(16-1):(,)(1/2)(μφ∂μφ-m2φ2)より, 

φ(,)-1=±φ(,-t)なら, 

TL(,)-1 

(1/2)[{-∂0φ(,-t)}{0φ(,-t)} 

{∇φ(,-t)}2-m2φφ(,-t)2](,-t)
 

また,電磁カレントはjμ0 なので  

μ(,)-1=jμ(,-t)の成立は自明です。
 

φが実スカラー場でなく,荷電スカラー場(複素場)なら, 

(,)=:∂μφμφ-m2φφ:であり, 

μ(,)i{φμφ-(μφ)φ} です。
 

そこで,φ(,)-1=±φ(,-t)なら, 

複号同順でφ(,)-1=±φ(,-t)でもあり, 

確かに,TL(,)-1(,-t)が満足されます。
 

また,が反ユニタリで複素共役操作を含むため,. 

0(,)-1=j0(,-t),および, 

k(,)-1=-jk(,-t)が成立し 

μ(,)-1=jμ(,-t)も満たされます。 

(16-1終わり※)
 

π中間子場を3つの実成分から成る φ[φ1,φ2,φ3]で表わす 

,π中間子場は, 

φ(,)(1/2){φ1(,)iφ2(,)}, 

π中間子場は, 

φ*(,)(1/2){φ1(,)iφ2(,)} 

ですから,π0中間子:φ3について 

φ3(,)-1=±φ3(,-t)のとき,荷電πについても 

複号同順で,φ(,)-1=±φ(,-t),かつ, 

φ(,)-1=±φ(,-t)となるためには, 

φ1(,)-1=±φ(,-t),および, 

φ2(,)-1=-{±φ2(,-t)}となる必要が 

あります。
 

そこで,電磁場の時間反転:KUについて, 

^(,1)-1=a^(,1),^(,2)-1=-a^(,2) 

から,exp[(iπ/2)∫d3 

{^(,1)^(,1)-a^(,1)^(,1) 

+a^(,2)^(,2)+a^(,2)^(,2)}] 

を得たのと同様にして,
 

π中間子場でも,KUとして, 

exp[(±iπ/2)∫d3 

{1^()1^()-a1^()1^() 

+a2^()2^()+a2^()2^() 

+a3^()3^()+a3^()3^()}] 

を得ることがわかります。
 

次に,Dirac粒子場の論議に入ろうと思います。
 

しかし,ここでまず,以前の1粒子量子力学(Mechanics)の第5 

の空孔理論における時間反転の話を参照しようとしましたが,
 

本ブログでは, 

5章の§5.2荷電共役変換(Charge conjugation)について, 

201112/20の過去記事:Diracの空孔理論(2)(荷電共役) 

で紹介したのを最後に空孔理論の記事は中途半端に終わって 

いて,時間反転の項目については言及せずじまいでした。
 

そこで,取りあえず続きの§5.3真空偏極(Vacuum Polalization) 

から.一旦,1粒子空孔理論のおさらいに脱線しようと思います。
 

Diracの空孔理論(3
 

§5.3真空偏極(Vacuum Polalization) 

空孔理論は,負エネルギーの困難を除いた一方で,克服さるべき, 

新しい障害と,実験によって証明さるべき,新しい物理学の予言 

に至る道へと導きました。
 

例えば,電子の電荷の定義や,2つの電荷間の相互作用による真空の 

影響を考えます。正エネルギー電子は「負エネルギーの海」 

の電子たちから,静電的反発を受けます。
 

このため正エネルギー電子は近傍の真空を偏極させ,電子の実質的 

電荷密度は,素朴なそれ:ρ0()に偏極による分極電荷密度ρp() 

(真空に相対的に観測される量)をプラスしたものになります。
 

これらは次の図5.3に示すような空間分布をしています。
 

マクロな場,または遠方のテスト電荷が検知する電子の電荷は, 

∫d3{ρ0()+ρp()}=e です。 

このeが電子の謂わゆる"物理的電荷(physical charge)"です。
 

しかし,距離:r<Rでのテスト電荷に対しては,見かけ電荷は, 

r<R3{ρ0()+ρp()}であり,これはeより負となり, 

R → 0の極限では∫d3ρ0()=e0 

つまり,電子の"裸の電荷(bare charge)"に等しいです。 

間違いやすいですが,0,<eであり,|0|>||です。
 

この事実は,実際に水素原子のスペクトルでも観測されます。
 

この効果で電子の軌道角運動量l=0 のs準位はl≠0 の準位 

に比べて多く引き下げられます。 

何故なら,l=0 の波動関数は,マイナス電荷の値が大きくなる 

ため,相対的に陽子(水素原子核)に引き寄せられるからです。
 

この真空偏極の効果の具体的な評価計算は,テキストの第8章, 

(ブログ記事では「量子電磁力学の輻射補正」)でなされますが, 

Lamb-shift,わずかに減じる効果になることがわかります。
 

そこでは,また,孤立電子の"裸の電荷"の値と遠方での観測値 

がどのように結び付くのか?という問題を取り上げています。
 

もう1つの疑問は空孔理論そのものから生じるものです。 

空孔理論は,DiracによるDirac-seaの仮説によるものですが 

「真空の海の無限大の負電荷とは,一体何を意味するのか?」 

という疑問があります。
 

今のところは,この疑問の解釈は回避して,その仮説に基づく 

分布から,電子場が示す特別な方向は存在しないことに着目 

します。この分布には真空偏極による不均等性のみが観測 

されます。
 

§5.4時間反転とその他の対称性 

(TimeRiversal and Other Symmetrries)
 

さて,パリティ(空間反転)と時間反転に移ります。 

これは理論の連続Lorentz変換(proper transformation) 

論議に含まれない対称性操作)(Improper symmetry)です。
 

相互作用のゲージ不変性という追加対称性の存在は電磁場 

との極小相互作用変換の形:μ-eAμから明らかです。
 

パリティ変換については,既に,Pψ(,)=ψ’(,) 

exp(iφ)γ0ψ(,)としたとき,ψ’(,)が容易に 

空間反転された波動関数と解釈されることを見ました。
 

平面波解のパリティ変換は運動量を逆向きに変えます。 

しかし,古典的に期待されるように,スピンは変えません。
 

鏡映は単に鏡面に垂直な座標のみ逆にしますが,これは空間 

反転の後に垂直軸のまわりに180度回転すると得られ,回転 

は連続Lorentz変換にふくまれますから不連続変換としては 

パリテイと同じ対称性と見なされます。
 

次に時間反転に移ります。
 

粒子運動の物理的内容は,その波動関数ψ()で記述される 

状態の上での観測結果の集合の記録に用いられる運動像の 

フィルムによって描写されると考えられます。
 

このフィルムを逆向きに走らせる動画が物理的に実現可能な 

観測現象を記述しているなら,時間反転の下で不変といえます。
 

この時間反転対称性の解釈は,時刻tをt'=-tに変えたとき, 

同一の法則を持ったDirac方程式の形を再生できる変換が実行 

可能なら,理論の不変性が保証されると考えられます。
 

この望ましい時間反転変換を作るため,電磁場;μ() 

存在する場合,電荷がe0で質量がmの電子のDirac方程式  

(i-e-m)ψ()0,Hamiltonianを含む形の 

Schroedinger型方程式で表現します。
 

これは,i∂ψ(,)/∂t=Hψ 

{α(i∇-e)+βm+eΦ}ψ(,) 

と書けます。
't'=-tとする時間反転で状態を変換する演算子 

と書き,引数を省略して,スピノル波動関数が. 

ψ() → ψ'(t')ψ()と変換されるとすれば,
 

これを i∂ψ/∂t=Hψに,ψ=-1ψ'(t=-t') 

代入して, 

(i-1)∂ψ'(t')/∂t'=--1ψ'(t') 

が得られます。
 

そこで,時間反転で方程式の形が不変であるためには 

()-1=-H(t'),i-1=-i,どちらか1 

が成立する必要があります。
 

t'=-tの下でのHの挙動を調べるため,スピノル:ψと相互 

作用する電磁場Aμの時間反転:t'=-tに対する挙動を見る必要 

があります。一般に時間の向きが逆転すると,電磁カレントが符号 

を変えるため,電磁ベクトルポテンシャルの変換は, 

(,) '(,t')=-A(,t') となることが 

要求されます。
 

一方,スカラーポテンシャルは,電荷によって生成されるので, 

Φ(,) → Φ'(,t')=Φ(,) です。
 

以上から,t'=-tの下での電磁場の変換は, 

μ(,) → A'μ(,t')=Aμ(,t')です。
 

これらは引数を省略すると,() → A'(t')=-()  

Φ() → Φ'(t')=Φ() と書けます。
 

ψ() →ψ'(t')ψ()なる変換は,正則行列:Tに 

よる,ψ'(t')=Tψ(),or ψ'α(t')=Tαβψβ()  

なる変換に同値であるとします。
 

そうして,まず,基本方程式: 

i∂ψ/∂t=Hψ={α(i∇-e)+βm+eΦ}ψ 

の複素共役を取ると, 

i∂ψ/∂t=Hψ{α(i∇-e)+βm+eΦ}ψ 

です。
 

これに,左からTを掛けてt'=-t,ψ'(t')=Tψ() 

を用いれば,i∂ψ'(t')/∂t'=(THT-1)ψ'(t') 

{(-Tα-1)(i∇-e)+Tβ-1m+eΦ}ψ'(t') 

を得ます。
 

それ故,方程式の形が不変なら.TH()-1­=H(t'),および, 

-Tα-1α, Tβ-1=β となることが必要です。
 

まず,テキストの表示では,β=γ0でβ=βですから,Tが 

どんな正則行列でもTβ-1=βは自動的に成立します。
 

そして.T=-iα1α3iγ1γ3なら,-Tα-1α,も成立 

します。
 

そういう意味で,この複素共役を取って正則行列:Tを掛ける 

という操作:()-1=H(t'),かつ,i-1=-i 

満たす演算子に対応しています。
 

変換:が古典的な時間反転を意味するものに対応することを 

見るために,t'=-t,ψ'(t')=Tψ().および, 

T=-iα1α3iγ1γ3を正エネルギー粒子の平面波解に適用 

してみます。
 

運動量が,スピンがの平面波成分は.一般解:ψ(,) 

射影演算子:(+m)/(2),(1+γ5)/2を掛けると 

得られます。
 

そして,実際に,T=iγ1γ3として操作:を適用すると, 

{(+m)/(2)}{(1+γ5)/2}ψ(,) 

=T{(+m)/(2)}-1{(1+γ5)/2}-1ψ'(,t') 

{('+m)/(2)}{(1+γ5s')/2} を得ます。
 

ただし,p'=(0,),s'=(0,)です。
 

このことから,運動量が,スピンがの自由粒子解は時間反転 

では,空間成分ベクトル,が逆向きに移されることになります。
 

この操作はWignerの時間反転として知られ,1932年に初めて 

導入されました。
 

空間座標,および,時間座標の逆転:および,は理論を不変 

にする操作なので,望むなら陽電子の波動関数を作るのにも, 

それらの操作を含めた方がいい,と考えられます。
 

,,をまとめると, 

ψ(,t)=ψ'(,)exp(iφP)γ0ψ(,) 

ψ(,t)=ψ'(,)=Cγ0ψ(,t)=Cψ~(,t) 

C=iγ2γ0,および, 

ψ(,t)=ψ'(,-t)=Tψ(,) 

T=iγ1γ3 です。
 

これらの性質から, 

ψPCT(,-t)PCTψ(,) 

Cγ0(Tψ(,))exp(iφ0)γ0Cγ0*ψ(,), 

ですが,C=iγ2γ0,=-T=-iγ1γ3より, 

結局,ψPCT(,-t)iexp(iφ0)γ5ψ(,)
 

こうして,PCT変換された波動関数は,因子:iexp(iφ0)γ5 

掛けられ,空間,時間の両方での後方(=空間逆向き,かつ,過去) 

に向かって動く電子波動関数に対応するという簡単な関係が 

見出されました。(PCT定理)
 

そこで,(-pμ,μ)で特徴付けられる負エメルギー自由電子 

の運動量・スピンの固有状態に対しては, 

ψPCT(-x) 

iexp(iφ0)γ5(+m)/(2)}{(1+γ5)/2}ψ() 

­(+m)/(2)}{(1-γ5)/2}ψPCT(-x)
 

これは単に,スピンsの向きが異なるのみで,陽電子波動関数 

,iexp(iφ0)γ5を掛けて時空の逆向きに動く電子の波動関数 

と見なすことができることを示しています。
 

電磁力が存在する場合の任意の電子に対しては,下のような 

負エネルギー固有値方程式にこのPCT変換を行うことで, 

陽にこの解釈を証明できます。
 

すなわち,負エネルギー電子の固有値方程式は: 

α(i∇-e)+βm+eΦ}ψ=-Eψ です。
 

空間反転,かつ,時間反転:x'μ=―xμの下では, 

A'μ(x')=Aμ()であり ∇'=-∇なので, 

α(i∇'-e')+βm+eΦ'}ψ=-Eψ です。
 

ψにPCT変換を行うとiexp(iφ0)γ5を掛ける操作だけ 

なので,α(i∇'+e')+βm-eΦ'}ψPCT(x') 

=+EψPCT(x') を得ます。
 

正エネルギー陽電子が負エネルギー電子が時空で逆向き 

に走るものとの解釈は,陽電子理論のStickekberg-Fenman 

描像の基礎です。
 

これは,次章の伝播関数の理論(Propagator Theory)で散乱理論 

を展開する際に,しばしば用いられる解釈です。 

そこでは,この考えが大きな利点をもたらすことがわかります。
 

結論として,電子の電磁場との相互作用の構造は,電子の 

量子電磁力学の古典的,非相対論的極限としての経験で示唆 

されていたことに注意する必要があります。ここで論じてきた 

対称性の存在は相互作用の形に依存しています。
 

例えば,陽子と中性子に対して論じられる第4章の非相対論近似 

で例示した型の相互作用は,Dirac方程式にσμνμνψの形の 

項を付け加えますが,この項が存在することは本章の対称性には 

何の影響も及ぼしません。
 

他のμ粒子,ニュートリノのようなスピンが1/2の粒子を他の 

よく知られた相互作用に拡張する際にも,こうしたTCP 

対称性が依然として存在すると仮定するのが,至極当然です。
 

しかし,こうした対称性が,現実に実験によって証明さるべき 

仮定であることを認識し,β崩壊のような相互作用が 

対称性を破ることを指摘した,LeeYangの偉大な貢献 

がありました。
 

しかし,操作:TCPの下での対称性は,連続Lorentz不変性 

および,通常のスピンと統計の関係という,はるかに弱い仮定 

によって保証されています。(Diracの空孔理論(3終わり※)
 

これでMechanicsの第5章は終わりなので, 

今日はここまでにします。
 

(参考文献): 

1.J.D.Bjorken S.D.Drell 

“Relativistic Quabtun Mechanics” (McGrawHill) 

2..J.D.Bjorken S.D.Drell 

“Relativistic Quantum Fields” (McGrawHill)

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2017年10月19日 (木)

場の量子論第Ⅱ部(15)(時間反転1)

 場の量子論第Ⅱ部の続きです。時間反転に入ります。
 

§15.13 Time Reversal(時間反転)
 

時間反転変換は時間の向きをtからt'=-tに変化させます。
 

1粒子のDirac理論において,この変換をつくったときには,それは 

tをt'=-tに変化させるだけでなく,波動関数の複素共役をとり 

γ2だけが純虚数行列であるような表示でT=iγ1γ3を掛けると, 

対称性変換になることを見出しました。
 

場の理論では物理状態を,時刻:t'=-tで逆向きに進んでいる 

動画フィルムを見るような状態に変換する1つの演算子: 

求めます。
 

密度に測定装置の系(外電磁場)との相互作用項を加えます。 

すなわち,-jμextμ() です。
 

量子条件:i[μ,φr()]=∂μφr()を見るとは1粒子の理論 

同様,線型演算子ではないことが明らかです。
 

何故なら,例えば,[,φr(,)]=-i∂φr(,)/∂tを考える 

とき,仮に作用を不変に保ちφr(,), 

rsφs(,)φr(,)-1に変換するユニタリ演算子: 

求められれば,[,φr(,)]=-i∂φr(,)/∂tの両辺に 

左から,右から-1を掛けることにより,  

[-1,φrs(,)]=-i∂φs(,)/∂tを得ます。
 

これから, 

[,φr(,)]=-i∂φr(,)/∂tを得るには-1, 

が-Hに変換される必要があります。
 

(15-1):時間反転変換に対し,任意の状態:{α>がユニタリ変換 

されて,{α>→|α> になると考えると, 

<α|φr(,)|β>=W-1rs<α|φ(,)|β>が 

古典論でのφ'r(,)=W-1rsφ(,)なる変換への 

対応原理を示していますが,これは, 

φr(,)-1=Wrsφ(,)と読めます。
 

そして,φr(,)=W-1rsφ(,)と同値です。
 

はユニタリ演算子としているので線型変換ですから, 

rsがtの関数でないなら,時間反転に対して, 

(i){∂φr(,)/∂t}-1(i)rs{∂φ(,)/∂t} 

irs{∂φ(,)/∂t'} です。(t'=-t’) 

これは,直接.対応原理から導くこともできます。
 

一方,<α|[,φr(,)]|β> 

(i)<α|{∂φr(,)/∂t}|β> より, 

<α|[,φr(,)|β> 

i<α|{∂φr(,)/∂t'}|β>
 

つまり,-1rs<α|[,φg(,)|β> 

i--1rs<α|{∂φs(,)/∂t'}|β>,
 

または,rs<α|[-1,φg(,)]|β> 

irs<α|{∂φs(,)/∂t'}|β> 

です。
 

ユニタリ変換であるなら,Wは正則行列なので,結局, 

[-1,φr(,)]i∂φr(,-t')/∂t' 

を得ます。
 

ところが,対応原理によれば,H=P0であって, 

がユニタリなLorentz変換に対応する演算子なら, 

μνを時間反転に対応するLorentz変換:μ →aμνν 

の係数として,-1,=a0ννと書けるはずです。
 

したがって,時間反転してt'=-tとするとき, 

[,φr(,)]=-i∂φr(,)/∂tなる理論が不変 

なら,-1=-H or =-Hが必要です。
 

(15-1終わり※)
 

しかし,変換の前後でHの固有状態の固有値は真空はゼロですが 

それ以外は正値でなければならないので,-1=-Hとなる 

ことは物理的基盤から考えて,受け容れることができません。
 

何故なら,|α>=|α>でが線型ユニタリなら,|α> 

=E|α>となるため,-1=-Hなら,-H|α>=E|α> 

ですが,これはE>0であれば矛盾し,不可能だからです。
 

こうした状況故に,Mechanicsの第5章におけると同じく 

時間反転変換:,非ユニタリとして「全てのc数について 

複素共役を取れ」という指令:にユニタリ:を掛けたもの 

として与えられると考えます。
 

すなわち,KU-1=H が成立すれば,  

[,φr(,)]=-i∂φr(,)/∂tはの下で不変です。
 

Lagrangian密度:-jμ()extμ()の言葉でいえば,次の 

ような性質を持ち,正準交換関係を不変に保つようなが存在すれば 

理論は時間反転不変です。

 すなわち,TL(,)-1(,-t). 

および.μ(,)-1=jμ(,-t)なる性質です。
 

よって,電磁カレントは逆向きになり,電荷は時間反転で不変です。
 

これは外場が時間反転でAextμ(,) → Aextμ(,-t)と変換 

されるので,古典論との対応から要求されることです。
 

そこで,μ(,)-1=jμ(,-t)によって, 

μ(,)extμ(,) → jμ(,-t)extμ(,-t) 

が得られます。
 

そこで,は作用:(2,1)=∫12dt∫d3(,) 

次のように変換します。 

すなわち,(2,1)-1=∫12dt∫d3(,-t) 

=∫-t2-ttdt∫d3(,)=J(-t1,-t2)です。
 

(-t1,-t2)はJ(2,1)を時間のずらし(平行移動)だけ 

変えますが,時間のずらしは理論の1つの対称性変換です。 

それ故TL(,)-1(,-t).および. 

μ(,)-1=jμ(,-t)を満たすが存在することが, 

時間反転不変のための満足できる規準を与えます。
 

(15-2):(-t1,-t2) =∫-t2-ttdt∫d3(,) 

=∫12dt∫d3(,t-(1+t2))ですから, 

これはt→t-(1+t2)なる時間の平行移動です。
 

すなわち,(,t-(1+t2)) 

exp{i(1+t2)}(,)exp{i(1+t2)}であり, 

それ故,(-t1,-t2) 

exp{i(1+t2)}(2,1)exp{i(1+t2)}です。
 

したがって, 

[exp{i(1+t2)}](2,1)[exp{i(1+t2)}]-1 

=J(2,1)となり,[exp{i(1+t2)}]という 

時間反転と時間のずらしを組み合わせた変換が対称性変換 

となります。
 

しかし,以上の考察は私自身にも奇異に感じられます。
 

むしろ,次のように考えるのが伝統的場の理論であり,自然です。 

すなわち.は反線型な演算子であると考えます。

これは,(|α>+b|β>)=a|α>+b|β>,および, 

<α||β>=<α|UK|β> 

=<α||β>=<β|α>=<α|β> を意味します。
 

最後の等式は,実は,反ユニタリ性を実現するための物理的要請 

です。つまり,時間反転演算子はユニタリでなく-1です。
 

しかし,作用積分が時間反転の下で不変であるという要請は 

<α|12dt∫d3(,-t)|β> 

=<α|12dt∫d3(,)|β> 

と表現されます。
 

すなわち,<α|(-t1,-t2)|β>=<α|(2,1)|β> 

です。
 

ところが,任意の<α{,|β>について< α||β>=<α|β> 

が成り立つという等式は, 

<α|12dt∫d3(,-t)|β> 

=<α|TT-1(-t1,-t2)|β> 

=<α|-1(-t1,-t2)|β>* の成立を意味します。
 

他方,JはHermite演算子なので. 

<α|(2,1)|β>=<α|(2,1)|β>です。
 

よって,作用積分の不変性: 

<α|12dt∫d3(,-t)|β> 

=<α|(2,1)|β>は, 

 <α|-1(-t1,-t2)|β>* =<α|(2,1)|β> 

と同値です。
 

それ故,-1(-t1,-t2)=J(2,1)です。
 

つまり,JがHermiteであることから,作用の不変性が 

-(-t1,-t2)=J(2,1)という形でなく, 

-1(-t1,-t2)=J(2,1),または 

-(2,1)-1=J(-t2,-t2)という形で表わされること 

がわかりました。したがって,こういう意味で 

TL(,)-1(,-t).および. 

μ(,)-1=jμ(,-t)を満たすが存在すれば理論 

が不変であることが保証されます。

 (15-2終わり※)
 

(15-3):量子論が,ある変換の下で不変であることは, 

状態ベクトルを位相を無視した射線(ray)=同値類と考えたとき, 

観測される物理量(observable):Oの行列要素のノルム(絶対津): 

|<α||β>{が変換の前後で不変なことが要求されるのみです。
 

したがって,変換で状態が,|α> → |α'>, |β> → |β'> 

と変わるとき,|<α'||β'>{|<α||β>{ さえ, 

満たされれば,<α'||β'>=<α||β>:つまり, 

ユニタリか?,<α'||β'>=<α||β>つまり, 

反ユニタリか?は問われません。
 

しかし,恒等変換;|α'>=|α,|β'>=|β> から 

連続的に移行できる連続変換対称性(proper symmmetry)では, 

行列要素の連続性から変換はユニタリであるべきで,
 

反ユニタリとなる可能性は,不連続変換対称性 

(Imprpoer symmetry)の変換の中にあるのみです。
 

もっとも,ここでは射線としての期待値や確率だけを実在 

と考える立場で状態の位相を無視しましたが,量子論の深層 

では,状態の位相は,"量子のもつれ(entanglement)"の1つ 

として意味を持ち,観測可能なAharanov-Bohm効果や,仮説 

ですが,Diracのモノポール理論における電荷や磁荷の量子化,
 

または,物質場の位相変換は謂わゆるゲージ変換という意味 

で重要であり,例えばFermi粒子の電磁相互作用では光子場 

の線積分がスピノル場の位相として働くとき,アノマリーに 

寄与したりしますから,単純に位相を無視するのが常に妥当 

とは限りませんが。。 

 (15-3終わり※)
 

さて,ここまでの章で,論じてきた様々な自由場について 

陽に作ることを考えます。
 

まず,電磁場(光子場)から始めます。
 

時間反転で外電磁場がAextμ(,) → Aextμ(,-t) 

と変換されるのと同じく,(,)-1=-(.-t) 

であるべきです。
 

この変換は,()=-(1/4)μνμν 

=-(1/2)(νμ-∂μν)νμ 

(1/2)(22)で与えられる,Coulombゲージ(縦波ゲージ) 

Maxwellの自由lagrangian密度に対して, 

TL(,)-1(,-t) を満足します。
 

そして因子Kがあるおかげで,同時刻交換関係: 

[μ(,),ν(,)]0,,[πk(,),πj(,)]0, 

 [πk(,),0(,)]0,および, 

 [πk(,),j(,)]iδtrijδ3(x-) 

が不変に保たれます。 

( (δtrijδ3(x-)=∫d3(2π)-3exp{i()} 

×(δij-kij/2) です。)
 

(15-4): [πk(,),j(,)]iδtrijδ3(x-) 

のみを考察します。